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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】パンクレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20220204BHJP
   B60C 7/10 20060101ALI20220204BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B60C7/00 B
B60C7/10 E
B60C19/00 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020078908
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021172261
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2020-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520150027
【氏名又は名称】伊澤 光輝
(74)【代理人】
【識別番号】100148068
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 光輝
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103085602(CN,A)
【文献】仏国特許出願公開第00360887(FR,A1)
【文献】仏国特許出願公開第00328075(FR,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03343890(DE,A)
【文献】中国特許出願公開第102764510(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0140999(US,A1)
【文献】特開2007-210378(JP,A)
【文献】特開2018-083458(JP,A)
【文献】特開2018-069984(JP,A)
【文献】特表2007-504057(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00151473(GB,A)
【文献】中国特許出願公開第102712217(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008343(US,A1)
【文献】特表2017-502868(JP,A)
【文献】特開2011-093369(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181271(JP,U)
【文献】特開2003-039920(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0360598(KR,Y1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0369870(KR,Y1)
【文献】登録実用新案第3153558(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106751849(CN,A)
【文献】特開平01-103502(JP,A)
【文献】特開2005-227752(JP,A)
【文献】中国実用新案第204915101(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
B29D 30/02
B60B 9/00
B60B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム、弾性樹脂、又は、ゴム及び弾性樹脂を結合させた高分子複合体(以下、それらを単に「弾性材」という。)を用いて構成される環状本体部と、
前記環状本体部においてホイールリムに対向する位置かつ前記ホイールリムの2つの内側壁に挟まれる中央から2つの前記内側壁側に配置される2つのビード部と、
前記ビード部の内部かつ前記ホイールリムに設けられた前記内側壁の近傍(すなわち、2つある前記ビード部であって前記内側壁の上端よりも前記ホイールリムの中心側の各部分)において略環状に配置される2つのビード環状部と、前記ホイールリムに設けられたバルブ穴から露出する程度の長さを有して前記ビード環状部から前記ホイールリムの径方向内側に延びるとともに前記ホイールリムに固定されるビード線状部と、を有するビードワイヤと、
を備えることを特徴とするパンクレスタイヤ。
【請求項2】
前記弾性材は、発泡処理されていないEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のパンクレスタイヤ。
【請求項3】
前記環状本体部は、その内部において前記環状本体部と同心となるように配置される環状穴と、を更に有しており、
前記環状穴は、楕円形断面、二等辺三角形断面、台形断面により構成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパンクレスタイヤ。
【請求項4】
前記環状本体部は、前記環状本体部の外部と前記環状穴とを接続する貫通孔と、を更に有する
ことを特徴とする請求項3に記載のパンクレスタイヤ。
【請求項5】
前記環状本体部は、前記ビード部が前記ホイールリムに装着された際に前記ビード部と前記ホイールリムとの間に設けられる閉じた空間と前記環状穴とを接続する貫通孔と、を更に有する
ことを特徴とする請求項3に記載のパンクレスタイヤ。
【請求項6】
前記ビード部の内部に配置されており前記ホイールリムの径方向外側に向かって発光する発光部と、を備えており、
前記弾性材は、前記発光部が発した光を透過する程度の透明性を有する
ことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のパンクレスタイヤ。
【請求項7】
前記発光部は、前記ホイールリムが取り付けられる乗り物のブレーキ、ウィンカー、リバースに連動して発光する
ことを特徴とする請求項に記載のパンクレスタイヤ。
【請求項8】
前記発光部は、前記操作がないときに発光する通常発光色と前記操作により発光する操作発光色とが異なるように発光する
ことを特徴とする請求項に記載のパンクレスタイヤ。
【請求項9】
前記弾性材は、前記発光部が発した光を拡散する光拡散材を含有する
ことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載のパンクレスタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクレスタイヤに係り、例えば、ホイールリムに固定したり、ライト代わりに使用したりすることに好適に利用できるパンクレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパンクレスタイヤの一例として、特許文献1記載のパンクレスタイヤチューブが挙げられる。
【0003】
従来のパンクレスタイヤチューブにおいて、エラストマーを原材料として中空長尺状に押出成形された略円形状の筒体を所定長さに切断すると共に、その両端部を結合することで環状に構成し、さらにチューブのリムと対向する周面に適宜間隔をもって複数の非貫通孔を穿設している。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-043830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のパンクレスタイヤチューブは中空環状に形成されており、パンクレスタイヤチューブに外力が加わるとパンクレスタイヤチューブがねじれて変形するため、ホイールリムにパンクレスタイヤチューブを固定することが困難であるという問題があった。パンクレスタイヤチューブがホイールリムから簡単に外れてしまうようでは交通安全性を高めることができない。
また、従来のパンクレスタイヤチューブは、タイヤ本来の機能以外の交通安全機能を持たせたいという期待もあった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、種々の交通安全性を高めることができるパンクレスタイヤを提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前述した目的を達成するため、本発明のパンクレスタイヤは、ゴム、弾性樹脂、ゴム及び弾性樹脂を結合させた高分子複合体その他のタイヤの材料に好適な弾性材を用いて構成される環状本体部と、環状本体部においてホイールリムに対向する位置に配置されるビード部と、ビード部の内部かつホイールリムに設けられた内壁の近傍において略環状に配置されるビード環状部と、ホイールリムに設けられたバルブ穴から露出する程度の長さを有してビード環状部からホイールリムの径方向内側に延びるビード線状部と、を有するビードワイヤと、を備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、環状本体部が従来のタイヤよりもねじれやすくてビード部がホイールリムから外れやすい場合であっても、ビード部の内部に設けたビードワイヤのビード線状部がホイールリムのバルブ穴から露出するため、ホイールリムにビード線状部を固定することによりホイールリムから不意に外れてしまうことを防ぐことができる。
【0009】
(2)また、本発明のパンクレスタイヤは、ホイールリムとビード部との間又はビード部の内部に配置されておりホイールリムの径方向外側に向かって発光する発光部と、を更に備えており、弾性材は、発光部が発した光を透過する程度の透明性を有することを特徴とすることが好ましい。
【0010】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、ヘッドライト、ポジションライト、テールライトその他の夜間走行用ライトの役割を果たすことができる。
【0011】
(3)また、本発明のパンクレスタイヤにおいて、発光部は、ホイールリムが取り付けられる乗り物のブレーキ、ウィンカー、リバースその他の操作に連動して発光することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、ブレーキ操作に連動して点灯するブレーキランプのように操作連動ライトの役割を果たすことができる。
【0013】
(4)また、本発明のパンクレスタイヤにおいて、発光部は、操作がないときに発光する通常発光色と操作により発光する操作発光色とが異なるように発光することが好ましい。
【0014】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、夜間走行用ライトと操作連動ライトの役割を同時に果たすことができる。
【0015】
(5)また、本発明のパンクレスタイヤにおいて、弾性材は、発光部が発した光を拡散する光拡散材を含有することが好ましい。
【0016】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、光拡散材が光を全方向に拡散するため、発光時の視認性を向上させることができる。
【0017】
(6)また、本発明のパンクレスタイヤにおいて、弾性材は、発泡処理されていないEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)であることを特徴とすることが好ましい。
【0018】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、軽量、高弾性及び高耐久性を有することができる。
【0019】
(7)また、本発明のパンクレスタイヤにおいて、環状本体部は、その内部において環状本体部と同心となるように配置される環状穴と、を更に有しており、環状穴は、楕円形断面、二等辺三角形断面、台形断面その他のホイールリムの径方向と平行かつ環状本体部の中心を通過する対称軸を有する線対称断面により構成されることが好ましい。
【0020】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、ホイールリムの幅方向における環状本体部の弾性力を均等に保ちつつ、ホイールリムの径方向における環状本体部の弾性力を好適に調整することができる。
【0021】
(8)また、本発明のパンクレスタイヤにおいて、環状本体部は、環状本体部の外部と環状穴とを接続する貫通孔と、を更に有することが好ましい。
【0022】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、貫通孔がオリフィスの役目を果たし、環状穴に閉じ込められた気体が貫通孔を通して環状本体部の外部と環状穴とを出入りすることによって環状本体部がオリフィス式ショックアブソーバと同様の機能を発揮するので、環状本体部の弾性力を好適に調整することができる。
【0023】
(9)また、本発明のパンクレスタイヤにおいて、環状本体部は、ビード部がホイールリムに装着された際にビード部とホイールリムとの間に設けられる閉じた空間と環状穴とを接続する貫通孔と、を更に有することが好ましい。
【0024】
これにより、本発明のパンクレスタイヤは、貫通孔がオリフィスの役目を果たし、環状穴に閉じ込められた流体が貫通孔を通して環状穴と閉じた空間とを出入りすることによって環状本体部がオリフィス式ショックアブソーバと同様の機能を発揮するので、環状本体部の弾性力を好適に調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のパンクレスタイヤは、パンクレスタイヤに内蔵されたビードワイヤが有するビート線状部がホイールリムに固定されていたり、発光部がライト代わりに発光したりするので、種々の交通安全性を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本実施形態のパンクレスタイヤを示す部分断面図である。
図2図2は、本実施形態のパンクレスタイヤを示す側面図である。
図3図3は、本実施形態のビード線状部が台座付きビード固定板を用いてホイールリムに固定された状態を示す概要図である。
図4図4は、本実施形態の発光部を示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態のパンクレスタイヤが自転車に装着された状態を示す側面図である。
図6図6は、本実施形態のビード環状部が1つである場合のパンクレスタイヤを示す部分断面図である。
図7図7は、本実施形態のビード環状部が3つである場合のパンクレスタイヤを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本実施形態のパンクレスタイヤ1を説明する。
【0028】
[パンクレスタイヤ1]本実施形態のパンクレスタイヤ1は、図1及び図2に示すように、従来のタイヤと同様、ホイールリム6の外周に装着される。このパンクレスタイヤ1は、環状本体部2と、ビード部21と、ビードワイヤ4と、を備えている。また、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、発光部5と、を更に備えていることが好ましい。
【0029】
[環状本体部2]環状本体部2は、パンクレスタイヤ1を構成する構成要素のうち、ビード部21、トレッド部22、ビードワイヤ4などの各構成要素をパンクレスタイヤ1から除いた残りの部分をいう。ただし、環状本体部2は、例えば、ビードワイヤ4などのように別体構成によって他の構成要素と物理的に分離しているときもあれば、ビード部21やトレッド部22などのように他の構成要素と物理的に分離していなくても機能的に区別することによって概念的に分離されていることもある。
【0030】
この環状本体部2は、ゴム、弾性樹脂、ゴム及び弾性樹脂を結合させた高分子複合体その他のタイヤの材料に好適な弾性材を用いて構成される。
【0031】
弾性材は、発泡処理されていないEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)であることが好ましい。
【0032】
また、弾性材は、発光部5が発した光を透過する程度の透明性を有することが好ましい。上記したEVA樹脂はその配合により透明性を有することも可能である。
【0033】
さらに、弾性材は、発光部5が発した光を拡散する光拡散材を含有することが好ましい。発光部5から照射される光がLED光である場合、LED光は強い直進性を有することから照射範囲外が照射範囲内よりも暗くなりやすい。そのため、LED光が光拡散材によって全方向に乱反射し、照射周辺を明るくすることができる。
【0034】
光拡散材としては、BaSO(硫酸バリウム)、ZnO(酸化亜鉛)、ZnS(硫化亜鉛)、CaCO(炭酸カルシウム)、TiO(酸化チタン)などの光拡散性を有する無機化合物が挙げられる。弾性材が上記した透明性を有するEVA樹脂である場合、硬化前のEVA樹脂に光拡散材を均一に混ぜた上でそれを硬化させるなどして、光拡散材を弾性材に均等に混ぜればよい。
【0035】
環状本体部2の作成方法としては、種々の方法がある。例えば、直線状に形成した弾性材の両端を接合することにより環状本体部2を作成してもよい。また、金型充填成形などの射出成型により接合部のない環状本体部2を作成してもよい。
【0036】
[ビード部21]ビード部21は、環状本体部2においてホイールリム6に対向する位置に配置される。ビード部21の幅寸法は、ホイールリム6の内側壁61間の幅と同じ又はそれ以上の寸法であって、ビード部21を弾性変形させながらホイールリム6に挿入することができる程度の寸法になっている。
【0037】
[トレッド部22]トレッド部22は、環状本体部2においてビード部21の反対側に配置される。トレッド部22に形成されるトレッドバターンは従来のタイヤと同様である。
【0038】
[環状穴3]また、上記した環状本体部2は、環状穴3と、貫通孔31と、を更に有していることが好ましい。この環状穴3は、環状本体部2の内部において環状本体部2と同心となるように配置される。同心とは、環状本体部2の中心と環状穴3の中心とが一致することである。そのため、環状穴3の断面は、ビード部21とトレッド部22との間に配置される。
【0039】
環状穴3の断面がビード部21とトレッド部22との中間よりもトレッド部22側に配置されているか、それともビード部21側に配置されているかによって、パンクレスタイヤ1が乗り上げた段差などにより外力がトレッド部22に加わったときの環状本体部2の変形の仕方が変わる。環状穴3の断面がトレッド部22とビード部21との中間に位置する場合を「中間位置状態の環状穴3」として以下に環状本体部2の変形の仕方を説明する。
【0040】
例えば、図1を参照してみると、環状穴3の断面がトレッド部22とビード部21との中間よりもトレッド部22側に配置されている場合、中間位置状態の環状穴3と比較して、トレッド部22から環状穴3までの環状本体部2の厚さが薄くなるとともに、ビード部21から環状穴3までの環状本体部2の厚さが厚くなる。そのため、外力がトレッド部22に加わると、トレッド部22側の環状本体部2が変形しやすくなるとともに、ビード部21側の環状本体部2が変形しにくくなる。その結果、トレッド部22に加わる外力はトレッド部22側の環状本体部2が変形することにより吸収されるため、外力が加わって凹んだ一部分を除き、環状本体部2の全体厚さWDはさほど変わらない。
【0041】
それに対し、環状穴3の断面がトレッド部22とビード部21との中間よりもビード部21側に配置されている場合、中間位置状態の環状穴3と比較して、トレッド部22から環状穴3までの環状本体部2の厚さが厚くなるとともに、ビード部21から環状穴3までの環状本体部2の厚さが薄くなる。そのため、外力がトレッド部22に加わると、トレッド部22側の環状本体部2が変形しにくくなるとともに、トレッド部22側の環状本体部2が変形しやすくなる。その結果、トレッド部22に加わる外力はビード部21側の環状本体部2が変形することにより吸収されるため、ホイールリム径方向において外力が加わった部分の環状本体部2の全体厚さWDがつぶれたように減少する。
【0042】
また、環状穴3の断面形状としては、円形、縦長楕円形(ホイールリム6の径方向と平行する直径を長径とする楕円形)、横長楕円形(ホイールリム6の幅方向と平行する直径を長径とする楕円形)、多角形その他の種々の形状が挙げられる。環状穴3の断面形状が異なれば、その形状に依存して環状本体部2の変形の仕方が異なってくる。一般的に、環状穴3の断面が横長になると環状本体部2の断面におけるワイドウォール23が薄くなるため、外力がトレッド部22に加わったときの環状本体部2の吸収性が高まる。それに対し、環状穴3の断面が縦長になると環状本体部2のワイドウォール23が厚くなるため、外力がトレッド部22に加わったときの環状本体部2の強度が高まる。
【0043】
つまり、環状穴3の配置や断面形状によって環状本体部2の変形の仕方が変わる。そのため、環状穴3の配置、環状穴3の断面形状、環状本体部2に用いる弾性材の強度などを調整することにより、パンクレスタイヤ1の強度や乗り心地を悪化させることなく、環状本体部2の全体厚さWDを従来のタイヤよりも薄くしたり、環状本体部2を軽量にしたり、環状本体部2に用いる弾性材の使用量を減らしたりすることができる。
【0044】
ここで、環状穴3は、図1に示すように、楕円形断面、二等辺三角形断面、台形断面その他のホイールリム6の径方向と平行かつ環状本体部2の断面中心CCを通過する対称軸SAを基準とする線対称断面により構成されることが好ましい。このような線対称断面によって環状穴3が構成されていると、ホイールリム6の幅方向における環状本体部2の断面形状は左右均一になるため、その結果として、環状本体部2の弾性力が均一化する。
【0045】
[貫通孔31]貫通孔31は、環状本体部2の外部と環状穴3とを接続する。この貫通孔31は、環状穴3の内部に充填された空気などの流体が環状本体部2の外部と環状穴3とを出入りするオリフィスの役目を果たす。そのため、貫通孔31の口径は、環状本体部2の弾性力、及び、環状穴3の内部に充填された流体が出入りする流量、などを考慮した寸法となっている。
【0046】
また、貫通孔31は、ビード部21がホイールリム6に装着された際にビード部21とホイールリム6との間に設けられる閉じた空間CSと環状穴3とを接続することが好ましい。この場合、上記した閉じた空間CSが環状本体部2の外部となる。
【0047】
環状穴3の内部には、従来の空気タイヤに用いられる空気が充填されている。ただし、空気の代わりに、窒素などの水分を吸収しない安定的な気体、ショックアブソーバに用いられるダンパオイルなどの液体、又は、環状本体部2に用いる弾性材と異なる弾性係数を有する弾性材などの固体が充填されていてもよい。空気以外の流体が環状穴3の内部に充填される場合、上記した閉じた空間CSには上記した流体以外の物体が出入りしないように密封しておく。
【0048】
[ビードワイヤ4]ビードワイヤ4は、図1に示すように、ビード環状部41と、ビード線状部42と、を有する。
【0049】
ビードワイヤ4としては、従来のビードと同様の強度を有する樹脂ワイヤ、金属ワイヤその他の従来のビードに用いられる素材が用いられる。
【0050】
[ビード環状部41]ビード環状部41は、図1から図3に示すように、従来のビードワイヤ4と同様、ビード部21の内部かつホイールリム6に設けられた内壁61の近傍において略環状に配置されている。「略環状」であると記載した理由は、ビード環状部41が線状のビードの両端を結合させてなるような閉じた環状だけでなく、線状のビードの両端を結合させずに近接させたような開いた環状をも含む意味である。
【0051】
ビード環状部41の断面としては、円形、四角形、その他の従来のビードに用いられた形状が好ましい。
【0052】
また、本実施形態のビード環状部41は、ビード部21の内部であってホイールリム6の2つの内側壁61の近くに1つずつ合計2つ配置されている。
【0053】
ただし、ビード環状部41は2つに限定されない。例えば、このビード環状部41は、図6に示すように、1つであってもよい。ビード環状部41が1つである場合、ビード部21のねじれ変形を抑制するため、ビード環状部41の幅はホイールリム6の内側壁61間の幅と同等よりもわずかに狭くすることが好ましい。
【0054】
また、このビード環状部41は、図7に示すように3以上であってもよい。ビード環状部41が3つ以上である場合、ビード部21のねじれ変形を抑制するため、上記したビード環状部41が1つ又は2つである場合の配置方法を応用して3つのビード環状部41が配置されることが好ましい。
【0055】
[ビード線状部42]ビード線状部42は、図2及び図3に示すように、ホイールリム6に設けられた従来のバルブ穴63から露出する程度の長さを有して、ビード環状部41からホイールリム6の径方向内側に延びる。このビード線状部42は、ビード環状部41の一部に接合されていてもよいし、一本のビードワイヤ4を折り曲げてビード環状部41とビード線状部42とを一体形成されていてもよい。
【0056】
本実施形態のビードワイヤ4は、ビード線状部42がビード環状部41の一部に接合されるように構成されていている。そのため、本実施形態のパンクレスタイヤ1がホイールリム6に装着された際、本実施形態のビード線状部42はホイールリム6に設けられたバルブ穴63から4本のビードワイヤ4が露出する。
【0057】
[台座付きビード固定板9]パンクレスタイヤ1が装着されるホイールリム6は、図3に示すように、そのバルブ穴63に隣接して、台座付きビード固定板9と、を有することが好ましい。台座付きビード固定板9はビード線状部42をホイールの径方向内側に固定する役目を果たす。この台座付きビード固定板9は、台座部91と、固定板92と、ねじ93と、を有する。
【0058】
[台座部91]台座部91は、ホイールリム6においてスポーク64が取り付けられるスポーク取付面62に沿って折り曲げられている。また、台座部91は、その中心において、ホイールリム6のバルブ穴63と同等又はそれよりも大きな通過孔94を有する。この台座部91は、その通過孔94がホイールリム6のバルブ穴63に重なるように配置される。
【0059】
[固定板92、ねじ93]固定板92は、2枚の四角形の平板からなる。一方の平板はその法線がホイールリム6の中心軸と平行となるように台座部から起立している。他方の平板はねじ93を用いて一方の平板にねじ止めされている。
【0060】
パンクレスタイヤ1がホイールリム6に装着された際、ビード線状部42は、ホイールの径方向の外側から内側に向かって、ホイールリム6のバルブ穴63及び台座部91の通過孔94をそれぞれ通過する。それらを通過したビード線状部42は、2枚の固定板92に挟まれた後、ねじ93により固定される。ビード線状部42が固定されたら、台座付きビード固定板9から飛び出たビード線状部42の余分な部分が切除されることが好ましい。
【0061】
[発光部5]発光部5は、図1に示すようにホイールリム6とビード部21との間、又は、図示しないがビード部21の内部に配置されており、ホイールリム6の径方向外側(=ビード部21からトレッド部22への方向)に向かって発光することが好ましい。この発光部5は、図5に示すような自転車10などの軽車両の灯火規定を守るためにも重要な役割を果たす。
【0062】
発光部5としては、図1及び図4に示すように、パンクレスタイヤ1の内周と同程度の長さ、かつ、ビード部21の幅と同程度の幅を有する帯状に構成されており、複数のLED(発光ダイオード)素子51が等間隔に配置されたLED可撓板であることが好ましい。この場合、既存の発光部5を用いることができるため、発光部5はホイールリム6とビード部21との間に配置されることが好ましい。
【0063】
この発光部5は、ヘッドライトのように、図示しない電源スイッチのオンにより常時点灯又は点滅してもよい。発光部5がヘッドライトの役割を果たす場合、この発光部5を有するパンクレスタイヤ1は前輪に用いられることが好ましい。
【0064】
また、発光部5は、ホイールリム6が取り付けられる自転車10や自動車などの乗り物のブレーキ、ウィンカー、リバースその他の操作に連動して発光してもよい。発光部5がブレーキライトの役割を果たす場合、この発光部5を有するパンクレスタイヤ1は後輪に用いられることが好ましい。
【0065】
また、発光部5は、操作がないときに発光する通常発光色と操作により発光する操作発光色とが異なるように発光することが好ましい。
【0066】
[LED素子51]例えば、発光部5は、白色光、赤色光の二色を発光する複数のLED素子51を有している。このとき、発光部5は、電源入力以外の操作がないときに通常発光色として白色光を点灯し、ブレーキを操作したときは操作発光色として赤色光を点灯する。
【0067】
これにより、前輪及び後輪に設置されたパンクレスタイヤ1は、電源入力以外の操作がないとき、白色のヘッドライト又はポジションライトとして機能する。また、前輪及び後輪のパンクレスタイヤ1が白色に発光している場合であっても、ブレーキを操作したとき、後輪のパンクレスタイヤ1における白色のヘッドライト又はポジションライトは消灯するとともに赤色のブレーキライトが点灯する。ブレーキの操作が終了したとき、後輪のパンクレスタイヤ1における赤色のブレーキライトは消灯するとともに白色のヘッドライト又はポジションライトが点灯する。
【0068】
[信号ケーブル52、電源ケーブル53]発光部5に接続される信号ケーブル52は、ホイールリム6のバルブ穴63に固定された台座付きビード固定板9の通過孔94を通過する。
【0069】
発光部5に接続される信号ケーブル52、電源ケーブル53その他のケーブル類は、ホイールリム6のバルブ穴63に固定された台座付きビード固定板9の通過孔94を通過する。信号ケーブル52は操作レバーや操作ペダルなどの操作系8に接続される。電源ケーブル53は、蓄電装置や発電コイルなどの電源部7に接続される。
【0070】
[効果]次に、本実施形態のパンクレスタイヤ1の効果を説明する。
【0071】
(1)本実施形態のパンクレスタイヤ1は、ゴム、弾性樹脂、ゴム及び弾性樹脂を結合させた高分子複合体その他のタイヤの材料に好適な弾性材を用いて構成される環状本体部2と、環状本体部2においてホイールリム6に対向する位置に配置されるビード部21と、ビード部21の内部かつホイールリム6に設けられた内壁61の近傍において略環状に配置されるビード環状部41と、ホイールリム6に設けられたバルブ穴63から露出する程度の長さを有してビード環状部41からホイールリム6の径方向内側に延びるビード線状部42と、を有するビードワイヤ4と、を備えることを特徴とする。
【0072】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、環状本体部2が従来のタイヤよりもねじれやすくてビード部21がホイールリム6から外れやすい場合であっても、ビード部21の内部に設けたビードワイヤ4のビード線状部42がホイールリム6のバルブ穴63から露出するため、ホイールリム6にビード線状部42を固定することによりホイールリム6から不意に外れてしまうことを防ぐことができる。
【0073】
(2)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、ホイールリム6とビード部21との間又はビード部21の内部に配置されておりホイールリム6の径方向外側に向かって発光する発光部5と、を更に備えており、弾性材は、発光部5が発した光を透過する程度の透明性を有することを特徴とすることが好ましい。
【0074】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、ヘッドライト、ポジションライト、テールライトその他の夜間走行用ライトの役割を果たすことができる。
【0075】
(3)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1において、発光部5は、ホイールリム6が取り付けられる乗り物のブレーキ、ウィンカー、リバースその他の操作に連動して発光することを特徴とすることが好ましい。
【0076】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、ブレーキ操作に連動して点灯するブレーキランプのように操作連動ライトの役割を果たすことができる。
【0077】
(4)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1において、発光部5は、操作がないときに発光する通常発光色と操作により発光する操作発光色とが異なるように発光することが好ましい。
【0078】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、夜間走行用ライトと操作連動ライトの役割を同時に果たすことができる。
【0079】
(5)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1において、弾性材は、発光部5が発した光を拡散する光拡散材を含有することが好ましい。
【0080】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、光拡散材が光を全方向に拡散するため、発光時の視認性を向上させることができる。
【0081】
(6)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1において、弾性材は、発泡処理されていないEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)であることを特徴とすることが好ましい。
【0082】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、軽量、高弾性及び高耐久性を有することができる。
【0083】
(7)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1において、環状本体部2は、その内部において環状本体部2と同心となるように配置される環状穴3と、を更に有しており、環状穴3は、楕円形断面、二等辺三角形断面、台形断面その他のホイールリム6の径方向と平行かつ環状本体部2の中心を通過する対称軸SAを有する線対称断面により構成されることが好ましい。
【0084】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、ホイールリム6の幅方向における環状本体部2の弾性力を均等に保ちつつ、ホイールリム6の径方向における環状本体部2の弾性力を好適に調整することができる。
【0085】
(8)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1において、環状本体部2は、環状本体部2の外部と環状穴3とを接続する貫通孔31と、を更に有することが好ましい。
【0086】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、貫通孔31がオリフィスの役目を果たし、環状穴3に閉じ込められた気体が貫通孔31を通して環状本体部2の外部と環状穴3とを出入りすることによって環状本体部2がオリフィス式ショックアブソーバと同様の機能を発揮するので、環状本体部2の弾性力を好適に調整することができる。
【0087】
(9)また、本実施形態のパンクレスタイヤ1において、環状本体部2は、ビード部21がホイールリム6に装着された際にビード部21とホイールリム6との間に設けられる閉じた空間CSと環状穴3とを接続する貫通孔31と、を更に有することが好ましい。
【0088】
これにより、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、貫通孔31がオリフィスの役目を果たし、環状穴3に閉じ込められた流体が貫通孔31を通して環状穴3と閉じた空間CSとを出入りすることによって環状本体部2がオリフィス式ショックアブソーバと同様の機能を発揮するので、環状本体部2の弾性力を好適に調整することができる。
【0089】
すなわち、本実施形態のパンクレスタイヤ1は、パンクレスタイヤ1に内蔵されたビードワイヤ4が有するビート線状部42がホイールリム6に固定されていたり、発光部5がライト代わりに発光したりするので、種々の交通安全性を高めることができるという効果を奏する。
【0090】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 パンクレスタイヤ
2 環状本体部
3 環状穴
4 ビードワイヤ
5 発光部
6 ホイールリム
7 電源部
8 操作系(例:操作レバー)
9 台座付きビード固定板
10 自転車
21 ビード部
22 トレッド部
31 貫通孔
41 ビード環状部
42 ビード線状部
51 LED(発光ダイオード)素子
52 信号ケーブル
53 電源ケーブル
61 (ホイールリムの)内壁
62 (ホイールリムの)スポーク取付面
63 (ホイールリムの)バルブ穴
64 スポーク
91 台座部
92 固定板
93 ねじ
94 通過孔
CC 断面中心
CS 閉じた空間
SA 対称軸
WD 環状本体部の全体厚さ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7