(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/22 20060101AFI20220204BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20220204BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20220204BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220204BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20220204BHJP
H01L 21/203 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
C23C14/22 F
C23C14/34 U
H05H1/46 C
H05H1/46 A
H01L21/316 Y
H01L21/318 B
H01L21/203 S
(21)【出願番号】P 2016152154
(22)【出願日】2016-08-02
【審査請求日】2019-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000192567
【氏名又は名称】神港精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】冨山 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 和也
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-118008(JP,A)
【文献】特開2005-281726(JP,A)
【文献】特開2004-083974(JP,A)
【文献】特開平01-240648(JP,A)
【文献】特開平04-263068(JP,A)
【文献】特開2005-320601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/22
C23C 14/34
H05H 1/46
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料室と、
前記試料室の中に配置され、成膜用基板を配置可能な試料台と、
前記試料室の中に配置され、第1元素が含まれる第1ターゲット材料を配置可能な第1ターゲット材料配置部と、スパッタ用プラズマを発生させる第1スパッタ用プラズマ発生部と、を有し、前記スパッタ用プラズマのイオンを前記第1ターゲット材料に衝突させ、前記第1元素の粒子を飛散させることによって、前記第1元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第1スパッタ部と、
前記第1スパッタ部における前記第1元素の粒子の供給量を制御する第1スパッタ制御部と、
プラズマ生成用ガスが供給され、電子サイクロトロン共鳴を利用することによって前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを生成するプラズマ供給部であって、プラズマ供給口を介して前記試料室とつながっているプラズマ生成室と、前記プラズマ供給口と対向する位置に配置されたマイクロ波導入窓を介して前記プラズマ生成室とつながっており、前記プラズマ生成室にマイクロ波を導入するマイクロ波導波管と、を有し、前記プラズマ生成室で生成された前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを前記成膜用基板に供給するプラズマ供給部と、
前記プラズマ供給部における前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量を制御するプラズマ制御部と、を備え、
前記第1スパッタ制御部による前記第1元素の粒子の供給量の制御と、前記プラズマ制御部による前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量の制御は独立して行われ、前記第1元素の膜、又は前記第1元素とプラズマ生成用ガスに含まれる元素との化合物の膜を成膜し、
前記第1スパッタ部は、マグネトロンスパッタを行うための第1スパッタ用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界である第1スパッタ部発散磁界と、を発生させる第1スパッタ用磁界発生部を有し、
前記プラズマ供給部は、電子サイクロトロン共鳴を発生させるための電子サイクロトロン共鳴用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界を発生させるプラズマ供給用磁界発生部を有し、
前記第1スパッタ部発散磁界の向きと前記プラズマ供給部発散磁界の向きは、共に前記成膜用基板に向かう方向であるか、又は共に前記成膜用基板に向かう方向と反対の方向である成膜装置。
【請求項2】
前記試料室の中の圧力は、略均一である請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記プラズマ供給部による前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給方向は、前記成膜用基板の法線に対して傾いている請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1ターゲット材料配置部は、前記成膜用基板の法線に対して略平行に移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更可能である請求項1~3のいずれかの請求項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1ターゲット材料配置部は、前記成膜用基板の法線に対して略垂直、又は略傾斜に移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更可能である請求項1~4のいずれかの請求項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記試料室の中に配置され、前記第1元素又は前記第1元素と異なる第2元素が含まれる第2ターゲット材料を配置可能な第2ターゲット材料配置部と、スパッタ用プラズマを発生させる第2スパッタ用プラズマ発生部と、を有し、前記スパッタ用プラズマのイオンを前記第2ターゲット材料に衝突させ、前記第1元素又は前記第2元素の粒子を飛散させることによって、前記第1元素又は前記第2元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第2スパッタ部を備える請求項1~5のいずれかの請求項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第2スパッタ部における前記第1元素又は前記第2元素の粒子の供給量を制御する第2スパッタ制御部と、を備え、
前記第1スパッタ制御部による前記
第1元素の粒子の供給量の制御と、前記第2スパッタ制御部による前記第1元素又は前記第2元素の粒子の供給量の制御は、独立して行われる請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
試料室の中の試料台に成膜用基板を配置する成膜用基板配置工程と、
第1元素が含まれる第1ターゲット材料を第1ターゲット材料配置部に配置する第1ターゲット材料配置工程と、
スパッタ用プラズマを発生させるスパッタ用プラズマ発生工程と、
前記スパッタ用プラズマのイオンを前記第1ターゲット材料に衝突させ、前記第1元素の粒子を飛散させることによって、前記第1元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第1スパッタ工程と、
前記第1スパッタ工程における前記第1元素の粒子の供給量を制御する第1スパッタ制御工程と、
プラズマ生成室にプラズマ生成用ガスを供給し、マイクロ波導入窓を介して前記プラズマ生成室にマイクロ波を導入し、電子サイクロトロン共鳴を利用することによって、前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを生成し、前記プラズマ生成室で生成した前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを前記マイクロ波導入窓と対向する位置のプラズマ供給口から前記成膜用基板に供給するプラズマ供給工程と、
前記プラズマ供給工程における前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量を制御するプラズマ供給制御工程と、を備え、
前記第1スパッタ制御工程における前記第1元素の粒子の供給量の制御と、プラズマ供給制御工程における前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量の制御を独立して行い、前記成膜用基板に、前記第1元素の膜、又は前記第1元素とプラズマ生成用ガスに含まれる元素との化合物の膜を成膜し、
マグネトロンスパッタを行うための第1スパッタ用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界である第1スパッタ部発散磁界と、を発生させる第1スパッタ用磁界発生工程と、
電子サイクロトロン共鳴を発生させるための電子サイクロトロン共鳴用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界を発生させるプラズマ供給用磁界発生工程と、を備え、
前記第1スパッタ部発散磁界の向きと前記プラズマ供給部発散磁界の向きは、共に前記成膜用基板に向かう方向であるか、又は共に前記成膜用基板に向かう方向と反対の方向である成膜方法。
【請求項9】
前記試料室の中の圧力は、略均一に保たれる請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給方向は、前記成膜用基板の法線に対して傾いている請求項8又は9に記載の成膜方法。
【請求項11】
第1ターゲット材料を、前記成膜用基板の法線に対して略平行に移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更する工程を備える請求項8~10のいずれかの請求項に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記第1ターゲット材料を、前記成膜用基板の法線に対して略垂直、又は傾斜に移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更する工程を備える請求項8~11いずれかの請求項に記載の成膜方法。
【請求項13】
第2ターゲット材料配置部に第2ターゲット材料を配置する第2ターゲット材料配置工程と、
スパッタ用プラズマで前記第2ターゲット材料をスパッタすることによって、前記第2ターゲット材料に含まれる第2元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第2スパッタ工程と、
前記第2スパッタ工程における前記第2元素の粒子の供給量を制御する第2スパッタ制御工程と、を備え、
前記第1スパッタ制御工程による前記
第1元素の粒子の供給量の制御と、前記第2スパッタ制御工程による前記第2元素の粒子の供給量の制御は、独立して行われる請求項8~12のいずれかの請求項に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance。以下、ECRということがある。)を利用することによって生成した高密度プラズマが利用された成膜装置及び成膜方法が知られている(特許文献1参照)。この様な成膜装置及びこの様な成膜方法は、ECRプラズマ成膜装置及びECRプラズマ成膜方法と称される。
【0003】
特許文献1(
図5)のECRプラズマ成膜装置は、スパッタターゲット43と、ECRプラズマ供給部21~33と、を備える。このECRプラズマ成膜装置においては、ECRを利用することによって生成された高密度プラズマの他に、スパッタターゲット43付近においてもプラズマが生成される。スパッタターゲット43付近において生成されたプラズマに含まれるイオンがターゲットに衝突し、ターゲット構成元素が放出される。放出されたターゲット構成元素は、成膜用基板上に付着し、膜を形成する。更に、このECRプラズマ成膜装置においては、ECRによって生成した高密度プラズマに含まれる元素のイオンも成膜用基板に供給される。ECRによって生成した高密度プラズマに含まれる元素が反応性元素(反応性ガス)である場合は、成膜用基板上に形成される膜は、ターゲット構成元素と反応性元素の化合物の膜となる。ECRによって生成した高密度プラズマに含まれる元素が不活性元素(不活性ガス)である場合は、成膜用基板上に形成される膜は、ターゲット構成元素の膜となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ECR成膜装置及びECR成膜方法は、様々な要求に対応できる自由度が高いものが望ましい。例えば、成膜される膜の膜厚の偏差の許容度が変わっても、対応できる自由度を有していることが望ましい。しかし、特許文献1には、様々な要求に対応するための手法や構造の記載はなく、特許文献1のECR成膜装置及びECR成膜方法は、自由度が高いものとはいえない。
【0006】
また、ECR成膜装置の構造は、単純な構造であることが望ましい。しかし、特許文献1のECR成膜装置は、マイクロ波導波管30が2つに分岐しており、且つマイクロ波導入窓32が2つ必要となっている。したがって、特許文献1のECR成膜装置の構造は、単純な構造とはいえない。
【0007】
本発明は、自由度が高く、単純な構造のECR成膜装置及びECR成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、試料室と、前記試料室の中に配置され、成膜用基板を配置可能な試料台と、前記試料室の中に配置され、第1元素が含まれる第1ターゲット材料を配置可能な第1ターゲット材料配置部と、スパッタ用プラズマを発生させる第1スパッタ用プラズマ発生部と、を有し、前記スパッタ用プラズマのイオンを前記第1ターゲット材料に衝突させ、前記第1元素の粒子を飛散させることによって、前記第1元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第1スパッタ部と、前記第1スパッタ部における前記第1元素の粒子の供給量を制御する第1スパッタ制御部と、プラズマ生成用ガスが供給され、電子サイクロトロン共鳴を利用することによって前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを生成するプラズマ生成室であって、プラズマ供給口を介して前記試料室とつながっているプラズマ生成室と、前記プラズマ供給口と対向する位置に配置されたマイクロ波導入窓を介して前記プラズマ生成室とつながっており、前記プラズマ生成室にマイクロ波を導入するマイクロ波導波管と、を有し、前記プラズマ生成室で生成された前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを前記成膜用基板に供給するプラズマ供給部と、前記プラズマ供給部における前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量を制御するプラズマ制御部と、を備え、前記第1スパッタ制御部による前記第1元素の粒子の供給量の制御と、前記プラズマ制御部による前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量の制御は独立して行われる成膜装置に関する。
【0009】
また、前記第1スパッタ部は、マグネトロンスパッタを行うための第1スパッタ用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界である第1スパッタ部発散磁界と、を発生させる第1スパッタ用磁界発生部を有し、前記プラズマ供給部は、電子サイクロトロン共鳴を発生させるための電子サイクロトロン共鳴用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界を発生させるプラズマ供給用磁界発生部を有し、前記第1スパッタ部発散磁界の向きと前記プラズマ供給部発散磁界の向きは、共に前記成膜用基板に向かう方向であるか、又は共に前記成膜用基板に向かう方向と反対の方向であってもよい。
【0010】
また、前記試料室の中の圧力は、略均一であってもよい。
【0011】
また、前記プラズマ供給部による前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給方向は、前記成膜用基板の法線に対して傾いてもよい。
【0012】
前記第1ターゲット材料配置部は、前記成膜用基板の法線に対して略平行に移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更可能であってもよい。
【0013】
前記第1ターゲット材料配置部は、前記成膜用基板の法線に対して略垂直に移動、又は略傾斜移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更可能であってもよい。
【0014】
前記試料室の中に配置され、前記第1元素又は前記第1元素と異なる第2元素が含まれる第2ターゲット材料を配置可能な第2ターゲット材料配置部と、スパッタ用プラズマを発生させる第2スパッタ用プラズマ発生部と、を有し、前記スパッタ用プラズマのイオンを前記第2ターゲット材料に衝突させ、前記第1元素又は前記第2元素の粒子を飛散させることによって、前記第1元素又は前記第2元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第2スパッタ部を備えていてもよい。
【0015】
また、前記第2スパッタ部における前記第1元素又は前記第2元素の粒子の供給量を制御する第2スパッタ制御部と、を備え、前記第1スパッタ制御部による前記1元素の粒子の供給量の制御と、前記第2スパッタ制御部による前記第1元素又は前記第2元素の粒子の供給量の制御は、独立して行われてもよい。
【0016】
また、本発明は、試料室の中の試料台に成膜用基板を配置する成膜用基板配置工程と、
第1元素が含まれる第1ターゲット材料を第1ターゲット材料配置部に配置する第1ターゲット材料配置工程と、スパッタ用プラズマを発生させるスパッタ用プラズマ発生工程と、前記スパッタ用プラズマのイオンを前記第1ターゲット材料に衝突させ、前記第1元素の粒子を飛散させることによって、前記第1元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第1スパッタ工程と、前記第1スパッタ工程における前記第1元素の粒子の供給量を制御する第1スパッタ制御工程と、プラズマ生成室にプラズマ生成用ガスを供給し、マイクロ波導入窓を介して前記プラズマ生成室にマイクロ波を導入し、電子サイクロトロン共鳴を利用することによって、前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを生成し、前記プラズマ生成室で生成した前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマを前記マイクロ波導入窓と対向する位置のプラズマ供給口から前記成膜用基板に供給するプラズマ供給工程と、前記プラズマ供給工程における前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量を制御するプラズマ供給制御工程と、を備え、前記第1スパッタ制御工程における前記第1元素の粒子の供給量の制御と、プラズマ供給制御工程における前記プラズマ生成用ガスの高密度プラズマの供給量の制御を独立して行い、前記成膜用基板に、前記第1元素が含まれる膜、又は前記第1元素とプラズマ生成用ガスに含まれる元素との化合物の膜を成膜する成膜方法に関する。
【0017】
また、マグネトロンスパッタを行うための第1スパッタ用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界である第1スパッタ部発散磁界と、を発生させる第1スパッタ用磁界発生工程と、電子サイクロトロン共鳴を発生させるための電子サイクロトロン共鳴用磁界と、前記成膜用基板との間に形成される発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界を発生させるプラズマ供給用磁界発生工程と、を備え、前記第1スパッタ部発散磁界の向きと前記プラズマ供給部発散磁界の向きは、共に前記成膜用基板に向かう方向であるか、又は共に前記成膜用基板に向かう方向と反対の方向であってもよい。
【0018】
また、料室の中の圧力は、略均一に保たれてもよい。
【0019】
また、前記プラズマ生成用ガスのプラズマの供給方向は、前記成膜用基板の法線に対して傾いてもよい。
【0020】
また、第1ターゲット材料を、前記成膜用基板の法線に対して略平行に移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更する工程を備えていてもよい。
【0021】
前記第1ターゲット材料を、前記成膜用基板の法線に対して略垂直に移動、又は略傾斜移動することによって、前記成膜用基板と前記第1ターゲット材料との距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更する工程を備えていてもよい。
【0022】
第2ターゲット材料配置部に第2ターゲット材料を配置する第2ターゲット材料配置工程と、スパッタ用プラズマで前記第2ターゲット材料をスパッタすることによって、前記第2ターゲット材料に含まれる第2元素の粒子を前記成膜用基板に供給する第2スパッタ工程と、前記第2スパッタ工程における前記第2元素の粒子の供給量を制御する第2スパッタ制御工程と、を備え、前記第1スパッタ制御工程による前記1元素の粒子の供給量の制御と、前記第2スパッタ制御工程による前記第2元素の粒子の供給量の制御は、独立して行われてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、自由度が高く、単純な構造のECR成膜装置及びECR成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】は、本発明の第1実施形態の成膜装置1を示す図である。
【
図2】は、本発明の成膜装置1におけるスパッタ用磁界発生用磁石の構成を示す図である。
【
図3】は、本発明の第2実施形態の成膜装置1Aを示す図である。
【
図4】は、本発明の第3実施形態の成膜装置1Bを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の成膜装置1を示す図である。
図2は、本発明の成膜装置1におけるスパッタ用磁界発生用磁石の構成を示す図である。
【0026】
図1に示されるように、成膜装置1は、試料室10と、試料台11と、スパッタ部20と、スパッタ制御部25と、プラズマ供給部30と、プラズマ制御部38と、を備える。
なお、スパッタ部20は、特許請求の範囲の第1スパッタ部の好適な一例に相当する。
【0027】
試料室10は、成膜が行われる空間を提供する部屋である。試料室10の中には、試料台11が配置される。試料台11は、成膜用基板12を配置するための台である。
図1には、成膜用基板12が試料台11に配置されている様子が示されている。試料台11は、回転可能に構成されている。そのため、成膜用基板12は、試料台11と共に回転可能である。成膜用基板12は、例えば、半導体基板(シリコン基板、化合物半導体材料の基板等)や圧電基板(ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リチウム基板等)である。成膜用基板12は、円板状の基板である。また、試料室10には、真空ポンプ13がつながっている。真空ポンプ13は、試料室10を真空排気するためのポンプである。
【0028】
スパッタ部20は、ターゲット材料配置部21と、スパッタ電源22と、スパッタ用磁界発生用磁石23と、第1ガス供給部24と、を備える。スパッタ部20は、マグネトロンスパッタを行う部分であり、ターゲット材料26に含まれる元素(例えば、シリコン)を成膜用基板12に供給する部分である。なお、スパッタ電源22及び第1ガス供給部24は、特許請求の範囲の第1スパッタ用プラズマ発生部の好適な一例に相当する。スパッタ用磁界発生用磁石23は、特許請求の範囲の第1スパッタ用磁界発生部の好適な一例に相当する。
【0029】
ターゲット材料配置部21は、ターゲット材料26を配置するための台である。
図1には、ターゲット材料26がターゲット材料配置部21に配置されている様子が示されている。ターゲット材料26は、例えば、シリコンである。スパッタ電源22は、ターゲット材料配置部21を介してターゲット材料26に電源を供給するための電源である。なお、シリコンは、特許請求の範囲の第1元素の好適な一例に相当する。
【0030】
スパッタ用磁界発生用磁石23は、ターゲット材料配置部21におけるターゲット材料26が配置された面の反対面に配置される。
図1及び
図2に示されるように、スパッタ用磁界発生用磁石23は、外側磁石23Aと、内側磁石23Bとで構成される。
図2に示されるように、外側磁石23Aは、リング状の磁石であり、上側がS極、下側がN極の磁石である。内側磁石23Bは、円柱状の磁石である。内側磁石23Bの上側がN極、内側磁石23Bの下側がS極である。スパッタ用磁界発生用磁石23は、マグネトロンスパッタを行うための磁界(スパッタ用のプラズマを閉じ込めるための磁界)であるスパッタ用磁界SMを発生させる磁石である。スパッタ用磁界SMは、ターゲット材料26の表面近傍に発生する。
【0031】
図1及び
図2に示されるように、スパッタ用磁界発生用磁石23は、スパッタ用磁界SMを発生させると共に、スパッタ部発散磁界DSMも発生させる。スパッタ用磁界SMは、内側磁石23Bの上面のN極から外側磁石23Aの上面のS極に向けて発生する磁界である。一方、スパッタ部発散磁界DSMは、成膜用基板12との間に形成される発散磁界であり、外側磁石23Aの上面のS極に向けて発生する磁界である。スパッタ部発散磁界DSMは、マグネトロンスパッタに直接寄与する磁界ではないが、スパッタ用磁界発生用磁石23から不可避的に発生する磁界である。なお、発散磁界とは、磁界を発生させる部分(ここでは、スパッタ用磁界発生用磁石23)から離れるに従って磁束密度が小さくなるような磁界のことである。
【0032】
第1ガス供給部24は、試料室10にガスを供給するガス供給部である。供給されるガスは、アルゴン等の不活性ガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスである。この不活性ガス、あるいは混合ガスは、主として、スパッタ用のプラズマの原料となるガスである。また、この不活性ガス、あるいは混合ガスは、試料室10の圧力を所定の圧力に保つものでもある。スパッタ制御部25は、スパッタ電源22及び第1ガス供給部24を制御する制御部である。スパッタ制御部25は、スパッタ電源22の電源供給における電力、電圧、デューティー比、周波数等を制御する。また、スパッタ制御部25は、第1ガス供給部24における不活性ガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)も制御する。なお、スパッタ制御部25は、特許請求の範囲の第1スパッタ制御部の好適な一例に相当する。
【0033】
プラズマ供給部30は、プラズマ生成室31と、プラズマ供給用磁界発生部32と、マイクロ波源33と、マイクロ波導波管34と、マイクロ波導入窓35と、第2ガス供給部36と、プラズマ供給口37と、を備える。プラズマ供給部30は、電子サイクロトロン共鳴を利用することによって生成した高密度プラズマを成膜用基板12に供給する部分である。なお、「高密度」とは、プラズマ生成室31の中における電流密度が10mA/cm2以上の電流密度を意味する。
【0034】
プラズマ生成室31は、電子サイクロトロン共鳴を利用して、高密度プラズマを生成する空間を提供する部屋である。プラズマ供給用磁界発生コイル32は、プラズマ生成室31の周囲にまかれたソレノイドコイルである。プラズマ供給用磁界発生コイル32に流されると、プラズマ生成室31においては、電子サイクロトロン共鳴を発生させるために必要な磁界である電子サイクロトロン共鳴用磁界CMが発生し、試料室10における成膜用基板12との間には、発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界DCMが発生する。なお、プラズマ供給用磁界発生コイル32は、特許請求の範囲のプラズマ供給用磁界発生部の好適な一例に相当する。なお、上述したように、発散磁界とは、磁界を発生させる部分(ここでは、プラズマ供給用磁界発生コイル32)から離れるに従って磁束密度が小さくなるような磁界のことである。
【0035】
マイクロ波源33は、プラズマ生成室31に供給するためのマイクロ波を発生させる部分である。マイクロ波の周波数は、例えば、2.45GHzである。マイクロ波導波管34は、マイクロ波源33で発生させたマイクロ波をプラズマ生成室31に導くための導波管である。マイクロ波導入窓35は、プラズマ生成室31にマイクロ波を供給するための窓である。マイクロ波導入窓35は、例えば、板状の石英、アルミナ等で形成される。
【0036】
第2ガス供給部36は、プラズマ生成室31にガスを供給するガス供給部である。供給されるガスは、アルゴン等の不活性ガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスである。アルゴン等の不活性ガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスは、特許請求の範囲のプラズマ生成用ガスの好適な一例に相当する。なお、後述するように、第1実施形態の成膜装置1においては、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが使用される。
【0037】
プラズマ供給口37は、プラズマ生成室31で生成されたプラズマを試料室10に供給するための供給口である。プラズマ供給口37は、マイクロ波導入窓35と対向する位置に存在する。プラズマ生成室31は、プラズマ供給口37を介して試料室10とつながっている。よって、試料室10とプラズマ生成室31とで、全体として密閉された空間が提供される。
【0038】
マイクロ波導入窓35は、プラズマ供給口37対向する位置に1つだけ配置されている。そして、マイクロ波導波管34は、マイクロ波源33からマイクロ波導入窓35に向けて分岐しない1本の管のみで構成されている。よって、プラズマ供給部30は、分岐するマイクロ波導波管を有するプラズマ供給部(例えば、特許文献1のECR成膜装置のもの)と比較すると、全体として単純な構造となっている。
【0039】
プラズマ制御部38は、マイクロ波源33及び第2ガス供給部36を制御する制御部である。プラズマ制御部38は、マイクロ波源33のパワーを制御する。また、プラズマ制御部38は、第2ガス供給部36におけるガスの流量(供給量)も制御する。
【0040】
次に、
図1を参照しながら、成膜装置1の動作について説明する。
まず、真空ポンプ13によって、試料室10及びプラズマ生成室31の中の気体が排気される。その後、試料室10には、第1ガス供給部24からアルゴンガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが供給される。一方、プラズマ生成室31には、第2ガス供給部36から窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが供給される。試料室10内のアルゴンガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)は、スパッタ制御部25によって制御される。プラズマ生成室31の窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)は、プラズマ制御部38によって制御される。その結果、試料室10及びプラズマ生成室31は、所定の圧力に維持される。試料室10の圧力及びプラズマ生成室31の圧力は、略均一(又は均一)となる。
【0041】
スパッタ部20においては、ターゲット材料配置部21に対して、スパッタ電源22から直流電圧が印加される。なお、直流電圧は、パルス状の電圧であってもよい。一方、試料台11及び成膜用基板12は、所定の電位(例えば、フローティング)に設定されている。よって、スパッタ部20と成膜用基板12との間には、所定の電圧が発生する。その結果、スパッタ部20と成膜用基板12との間には、第1ガス供給部24から供給されたアルゴンガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマであるスパッタ用プラズマSPが発生する。
【0042】
上述したように、スパッタ部20において、
図1に示されるように、ターゲット材料26の表面には、スパッタ用磁界発生用磁石23によるスパッタ用磁界SMが発生する。
図1に示されるように、スパッタ用磁界SMによって、スパッタ用プラズマSPはターゲット材料26の表面近傍に集中することになる。よって、スパッタ用プラズマSPのイオン(アルゴンのイオン、又はアルゴン及び窒素のイオン)は、効率的にターゲット材料26に衝突し、ターゲット材料に含まれる元素であるシリコンの粒子SEが飛散する。飛散したシリコンの粒子SEは、成膜用基板12に向かう方向(供給方向α)に向かうことになる。よって、スパッタ部20は、ターゲット材料26に含まれるシリコンの粒子SEを飛散させることによって、シリコンの粒子SEを成膜用基板12に供給することになる。このように、スパッタ部20は、マグネトロンスパッタを行うための磁界であるスパッタ用磁界SMを利用してマグネトロンスパッタを行う。
【0043】
スパッタ制御部25は、スパッタ電源22の電源供給における電力、電圧、デューティー比等を制御したり、第1ガス供給部のアルゴンガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)を制御したりすることによって、スパッタ用プラズマSPの状態を制御する。スパッタ用プラズマSPの状態が制御されると、飛散するシリコンの粒子SEの供給量も制御される。よって、スパッタ制御部25は、シリコンの粒子SEの供給量を制御することができる。このように、スパッタ制御部25は、スパッタ電源22の電源供給における電力、電圧、デューティー比、周波数等を制御したり、第1ガス供給部のアルゴンガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)を制御したりすることによって、シリコンの粒子SEの供給量を制御することができる。
【0044】
プラズマ供給部30においては、プラズマ供給用磁界発生コイル32に電流が流されることによって、プラズマ生成室31には、電子サイクロトロン共鳴用磁界CMが発生し、試料室10には、発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界DCMが発生する。なお、電子サイクロトロン共鳴用磁界CM及びプラズマ供給部発散磁界DCMは、プラズマ供給用磁界発生コイル32に電流が流されることによって生じる1つのつながった磁界である。
【0045】
また、マイクロ波源33からは、マイクロ波導波管34及びマイクロ波導入窓35を介して、プラズマ生成室31にマイクロ波が導入される。プラズマ生成室31において、電子サイクロトロン共鳴用磁界CMが発生した状態でマイクロ波が導入されると、電子サイクロトロン共鳴が生じ、高密度プラズマとしてのECRプラズマEPが発生する。このECRプラズマEPは、プラズマ供給口37から、プラズマ供給部発散磁界DCMに沿って成膜用基板12に向かう方向(供給方向β)供給される。このECRプラズマEPは、第2ガス供給部36から供給された窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマである。
図1に示されるように、ECRプラズマEPの供給方向βは、成膜用基板12の法線NLに対して傾いている。なお、法線NLは、試料台11における成膜用基板12が配置される面の法線でもある。
【0046】
プラズマ制御部38は、マイクロ波源33のマイクロ波のパワーを制御したり、第2ガス供給部36から供給される窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)を制御したりすることによって、プラズマ生成室31で生成される窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマの量を制御する。よって、プラズマ制御部38は、成膜用基板12に供給される窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマの供給量を制御することができる。このように、プラズマ制御部38は、マイクロ波源33のマイクロ波のパワーを制御したり、第2ガス供給部36から供給される窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)を制御したりすることによって、ECRプラズマEP(ここでは、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマ)の供給量を制御することができる。
【0047】
上述したように、成膜用基板12には、スパッタ部20からシリコンの粒子SEが供給され、プラズマ供給部30から窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマが供給される。成膜用基板12の表面付近において、シリコンの粒子SEと窒素ガスのプラズマとが反応し、成膜用基板12には、シリコンと窒素の化合物の膜である窒化シリコンの膜が形成される。すなわち、成膜装置1を動作させることによって、成膜用基板12に窒化シリコンの膜を成膜することができる。このとき、成膜用基板12は、試料台11と共に回転していてもよい。成膜用基板12が回転することにより、成膜用基板12に成膜される膜厚はより均一にされ得る。
【0048】
また、成膜装置1においては、スパッタ制御部25によるシリコンの粒子SEの供給量の制御と、プラズマ制御部38による窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマの供給量の制御は独立して行われる。すなわち、スパッタ制御部25によって行われるスパッタ電源22の電源供給における電力、電圧、デューティー比、周波数等の制御や第1ガス供給部のアルゴンガス、あるいは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)を制御と、プラズマ制御部38によって行われるマイクロ波源33のマイクロ波のパワーの制御や第2ガス供給部36の窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの流量(供給量)の制御は、互いに独立して行われる。
【0049】
次に、
図1を用いて、スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きについて、説明する。
【0050】
スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きのうち、一方が成膜用基板12に向かう方向であり、他方が成膜用基板12に向かう方向と反対の方向に設定された場合、プラズマ供給部30から供給される窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマ(ECRプラズマEP)が、適切に成膜用基板12に供給されないことがあり得る。
【0051】
理由は以下の通りである。
スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きのうち、一方が成膜用基板12に向かう方向であり、他方が成膜用基板12に向かう方向と反対の方向になっている場合、スパッタ部発散磁界DSMとプラズマ供給部発散磁界DCMとがつながってしまう事があり得る。そして、このつながった磁界の中に窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマ(ECRプラズマEP)やスパッタ用プラズマSPが閉じ込められてしまうことがあり得る。窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマ(ECRプラズマEP)がつながった磁界に閉じ込められた場合、適切に成膜用基板12に供給されないことがあり得る。
【0052】
第一実施形態の成膜装置1においては、つながった磁界の発生を抑制するため、
図1に示されるように、スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きが、共に成膜用基板12に向かう方向と反対の方向に設定されている。スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きが、このように設定されることによって、スパッタ部発散磁界DSMとプラズマ供給部発散磁界DCMとは反発することになり、つながった磁界の発生は抑制される。
【0053】
なお、スパッタ部発散磁界DSMの向きは、外側磁石23Aの極性に依存する。外側磁石23Aは、内側磁石23Bと比較して、広い上面及び下面を有している。更に、外側磁石23Aは、内側磁石23Bと同じ材料で構成された磁石である。よって、スパッタ部発散磁界DSMの向きは、外側磁石23Aの上側の磁極であるS極に向かう向きとなる。プラズマ供給部発散磁界DCMの向きは、プラズマ供給用磁界発生コイル32に流す電流の向きによって決まる。
【0054】
第1実施形態の成膜装置1は、試料室10と、試料室10の中に配置され、成膜用基板12を配置可能な試料台11と、試料室10の中に配置され、シリコンが含まれるターゲット材料26を配置可能な第1ターゲット材料配置部21と、スパッタ用プラズマSPを発生させるスパッタ電源22及び第1ガス供給部24と、を有し、スパッタ用プラズマSPのイオンを第1ターゲット材料26に衝突させ、シリコンの粒子SEを飛散させることによって、シリコンの粒子SEを成膜用基板12に供給するスパッタ部20と、スパッタ部20におけるシリコンの粒子の供給量を制御するスパッタ制御部25と、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが供給され、電子サイクロトロン共鳴を利用することによって窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスの高密度プラズマを生成するプラズマ生成室31であって、プラズマ供給口37を介して試料室10とつながっているプラズマ生成室31と、プラズマ供給口と対向する位置に配置されたマイクロ波導入窓35を介してプラズマ生成室31とつながっており、プラズマ生成室31にマイクロ波を導入するマイクロ波導波管34と、有し、プラズマ生成室31で生成された窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマを成膜用基板12に供給するプラズマ供給部30と、プラズマ供給部30におけるプラズマ生成用ガスのプラズマの供給量を制御するプラズマ制御部38と、を備え、スパッタ制御部25によるシリコンの粒子の供給量の制御と、プラズマ制御部38による窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマの供給量の制御は独立して行われる成膜装置である。よって、自由度が高く、単純な構造のECR成膜装置及びECR成膜方法を提供することができる。例えば、成膜される膜の膜厚の偏差の許容度が変わっても、対応が容易である。
【0055】
また、第1実施形態の成膜装置1において、スパッタ部20は、マグネトロンスパッタを行うためのスパッタ用磁界SMと、成膜用基板12との間に形成される発散磁界であるスパッタ部発散磁界DSMと、を発生させるスパッタ用磁界発生用磁石23を有し、プラズマ供給部30は、電子サイクロトロン共鳴を発生させるための電子サイクロトロン共鳴用磁界SDMと、成膜用基板12との間に形成される発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界DCMを発生させるプラズマ供給用磁界発生コイル32を有し、スパッタ部発散磁界DSMの向きとプラズマ供給部発散磁界の向きは、共に成膜用基板12に向かう方向と反対の方向である。よって、プラズマ供給部30から供給される窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマ(ECRプラズマEP)は、より適切に成膜用基板12に供給される。また、シリコンの粒子SEは、より適切に成膜用基板12に供給される。
【0056】
また、第1実施形態の成膜装置1においては、以下の成膜方法が行われる。
試料室10の中の試料台11に成膜用基板12を配置する成膜用基板配置工程と、シリコンが含まれるターゲット材料26をターゲット材料配置部21に配置する第1ターゲット材料配置工程と、スパッタ用プラズマSPを発生させるスパッタ用プラズマ発生工程と、スパッタ用プラズマSPのイオンをターゲット材料26に衝突させ、シリコンの粒子SEを飛散させることによって、シリコンの粒子を成膜用基板12に供給する第1スパッタ工程と、第1スパッタ工程におけるシリコンの粒子SEの供給量を制御する第1スパッタ制御工程と、プラズマ生成室31に酸素ガスを供給し、マイクロ波導入窓を介してプラズマ生成室31にマイクロ波を導入し、電子サイクロトロン共鳴を利用することによって、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマを生成し、プラズマ生成室31で生成した窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマをマイクロ波導入窓と対向する位置のプラズマ供給口から成膜用基板12に供給するプラズマ供給工程と、プラズマ供給工程における窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマの供給量を制御するプラズマ供給制御工程と、を備え、第1スパッタ制御工程におけるシリコンの粒子SEの供給量の制御と、プラズマ供給制御工程における窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマの供給量の制御を独立して行い、成膜用基板12に、窒化シリコンの膜(シリコンと窒素ガスに含まれる窒素との化合物の膜)を成膜する成膜方法。よって、自由度が高く、単純な構造のECR成膜装置及びECR成膜方法が提供される。例えば、成膜される膜の膜厚の偏差の許容度が変わっても、対応が容易である。なお、シリコンと窒素ガスに含まれる窒素との化合物の膜とは、シリコンと混合ガスに含まれる窒素(プラズマ生成用ガスに含まれる元素)との化合物が主成分として含まれる膜のことを意味する。
【0057】
また、第1実施形態の成膜装置1において行われる成膜方法において、マグネトロンスパッタを行うためのスパッタ用磁界SMと、成膜用基板12との間に形成される発散磁界であるスパッタ部発散磁界DSMと、を発生させるスパッタ用磁界発生工程と、電子サイクロトロン共鳴を発生させるための電子サイクロトロン共鳴用磁界CMと、成膜用基板12との間に形成される発散磁界であるプラズマ供給部発散磁界DCMを発生させるプラズマ供給用磁界発生工程と、を備え、スパッタ部発散磁界DSMの向きとプラズマ供給部発散磁界DCMの向きは、共に前記成膜用基板12に向かう方向と反対の方向である。よって、プラズマ供給部30から供給される窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマ(ECRプラズマEP)は、より適切に成膜用基板12に供給される。
【0058】
また、第1実施形態の成膜装置1において、試料室の中の圧力は、略均一に保たれる。よって、より簡易な成膜の実現が可能である。
【0059】
また、第1実施形態の成膜装置1において、プラズマ供給部30による窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスのプラズマの供給方向は、成膜用基板12の法線NLに対して傾いている。よって、より精度の高い成膜の実現が可能である。
【0060】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の第2実施形態による成膜装置1Aの断面図である。第2実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については、詳細な説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、
図3においては、磁界(スパッタ用磁界SM、スパッタ部発散磁界DSM、電子サイクロトロン共鳴用磁界CM及びスパッタ部発散磁界DSM)及びプラズマ(スパッタ用プラズマSP及びECRプラズマEP)の図示は省略されている。
【0061】
成膜装置1Aにおいては、スパッタ部20は、ターゲット材料配置部21と、スパッタ電源22と、スパッタ用磁界発生用磁石23と、第1ガス供給部24と、ターゲット移動部27と、を備える。ターゲット材料配置部21、スパッタ電源22、スパッタ用磁界発生用磁石23及び第1ガス供給部24は、第1実施形態の成膜装置1と同様のものである。
【0062】
ターゲット移動部27は、ターゲット材料配置部21を移動させるための台である。ターゲット移動部27は、スパッタ用磁界発生用磁石23の下部に配置される。ターゲット移動部27は、成膜用基板12の法線NLに対して略平行(又は正確に平行)に移動可能である。よって、成膜用基板12とターゲット材料26との縦方向(
図3におけるY方向)の距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更可能である。
【0063】
また、ターゲット移動部27は、成膜用基板12の法線NLに対して略垂直(又は垂直)に移動することによって、成膜用基板12とターゲット材料26との横方向(
図3におけるX方向)の距離及び角度のいずれか一方又は両方を変更可能である。また、ターゲット移動部27は、Y方向及びX方向の距離を変えることによって、法線NLに対して傾斜に移動させることも可能である。
【0064】
第2実施形態の成膜装置1Aによれば、より自由度が高い成膜が可能になる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明の第3実施形態による成膜装置1Bの断面図である。第3実施形態については、主として、第1実施形態又は第2実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態又は第2実施形態と同様な構成については、詳細な説明を省略する。特に説明しない点は、第1実施形態又は第2実施形態についての説明が適宜適用される。また、
図4においては、磁界(スパッタ用磁界SM、スパッタ部発散磁界DSM、電子サイクロトロン共鳴用磁界CM及びスパッタ部発散磁界DSM)及びプラズマ(スパッタ用プラズマSP及びECRプラズマEP)の図示は省略されている。
【0066】
第3実施形態の成膜装置1Bは、第2スパッタ部40と、第2スパッタ制御部45と、を更に備える。すなわち、第1実施形態の成膜装置1及び第2実施形態の成膜装置1Aは、スパッタ部が1つであったのに対し、第3実施形態の成膜装置1Bは、スパッタ部20及び第2スパッタ部40という2つのスパッタ部を備える。第2スパッタ部40は、第2ターゲット材料配置部41と、第2スパッタ電源42と、第2スパッタ用磁界発生用磁石43と、を備える。第2ターゲット材料配置部41には、第2ターゲット材料46が配置される。第2スパッタ部40は、第1ガス供給部24をスパッタ部20と共用する。第2スパッタ電源42及び第1ガス供給部24は、特許請求の範囲の第2スパッタ用プラズマ発生部の好適な一例に相当する。なお、スパッタ用磁界発生用磁石23及び第2スパッタ用磁界発生用磁石43の極性は、プラズマ供給部30、スパッタ用磁界発生用磁石23及び第2スパッタ用磁界発生用磁石43の距離関係等に応じて、適宜最適なものに設定され得るため、
図4における極性の図示は省略されている。
【0067】
第2ターゲット材料46は、例えば、ターゲット材料26と同様にシリコンである。第2ターゲット材料46は、シリコン以外の材料、例えば、アルミニウムやタンタル等であってもよい。アルミニウムやタンタル等は、特許請求の範囲の第2元素の好適な一例に対応する。また、第2スパッタ制御部45は、第2スパッタ電源42の電源供給における電力、電圧、デューティー比等を制御する。よって、第2スパッタ制御部45は、シリコンの粒子SE2の供給量を制御することができる。また、スパッタ制御部25によるシリコンの粒子SEの供給量の制御と、第2スパッタ制御部45によるシリコンの粒子SE2の供給量の制御は、必要に応じて独立して行われ得る。
【0068】
第3実施形態の成膜装置1Bによれば、より自由度が高い成膜が可能になる。
【0069】
以上、本発明の第1実施形態~第3実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において種々に変形可能である。
【0070】
第1実施形態~第3実施形態において、スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きは、共に成膜用基板12に向かう方向と反対の方向に設定されていたが、これに限定されない。スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きは、共に成膜用基板12に向かう方向に設定されていてもよい。より具体的には、外側磁石23Aの上側がN極、下側がS極となり、内側磁石23Bの上側がS極、下側がN極となる。また、プラズマ供給用磁界発生コイル32に流される電流の向きは、第1実施形態~第3実施形態の向きと逆になる。すなわち、スパッタ部発散磁界DSMの向き及びプラズマ供給部発散磁界DCMの向きのうち、一方が成膜用基板12に向かう方向であり、他方が成膜用基板12に向かう方向と反対の方向に設定されることがなければよい。
【0071】
第1実施形態~第3実施形態において、外側磁石23Aと内側磁石23Bは、同じ材料で構成されていたが、これに限定されない。外側磁石23Aと内側磁石23Bとは同じ材料で構成されていなくてもよい。外側磁石23Aと内側磁石23Bとで構成されるスパッタ用磁界発生用磁石23は、スパッタ部20において、マグネトロンスパッタが行われる程度にスパッタ用磁界SMを発生させることが可能なように構成されていればよい。
【0072】
第1実施形態~第3実施形態において、窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスがプラズマ生成用ガスとして使用されていたが、これに限定されない。プラズマ生成用ガスは、酸素ガス等の反応性ガス、酸素ガスとアルゴンガスの混合ガス又は不活性ガスのみであってもよい。酸素ガス、又は酸素ガスとアルゴンガスの混合ガスが使用された場合、成膜用基板12には、酸化シリコンの膜が成膜される。プラズマ生成用ガスとして、不活性ガスが使用される場合、且つ第1ガス供給部24からも不活性ガスのみが供給される場合は成膜用基板12には、シリコン膜が成膜される。このシリコン膜は、特許請求の範囲の第1元素の膜の好適な一例に相当する。なお、シリコンの膜(第1元素の膜)とは、シリコン(第1元素)が主成分として含まれる膜のことを意味する。
【0073】
また、プラズマ生成用ガスとして、不活性ガスが使用される場合、且つ第1ガス供給部24からは窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスが供給される場合は、成膜用基板12にシリコン窒化膜が形成され得る。更に、プラズマ生成用ガスとして、不活性ガスが使用される場合、且つ第1ガス供給部24からは酸素ガスとアルゴンガスの混合ガスが供給される場合は、成膜用基板12にシリコン酸化膜が形成され得る。
【0074】
第1実施形態~第3実施形態において、スパッタ部20や第2スパッタ部40は、共に直流スパッタを行う部分であったが、RFスパッタを行う部分であってもよい。また、スパッタ部20及び第2スパッタ部40の一方が直流スパッタを行う部分であり、他方がRFスパッタを行う部分であってもよい。
【0075】
第1実施形態及び第2実施形態において、ターゲット材料26としてシリコンが使用されていたが、これに限定されない。アルミニウム、タンタル等がターゲット材料26として使用され得る。また、第3実施形態においては、ターゲット材料26及び第2ターゲット材料は、共にシリコンであったが、これに限定されない。ターゲット材料26及び第2ターゲット材料46は、シリコン以外の材料(例えば、アルミニウム、タンタル等)であってもよい。また、ターゲット材料26及び第2ターゲット材料46は、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0076】
第2実施形態において、ターゲット移動部27は、シリコンの粒子SEが供給される方向に対して、平行に移動可能であり、シリコンの粒子SEが供給される方向に対して垂直、又は傾斜して移動可能でもあったが、これに限定されない。ターゲット移動部27は、シリコンの粒子SEが供給される方向に平行にのみ移動可能であってもよい。また、ターゲット移動部27は、シリコンの粒子SEが供給される方向に対して垂直、又は傾斜にのみ移動可能であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1、1A、1B 成膜装置
10 試料室
11 試料台
12 成膜用基板
13 真空ポンプ
20 スパッタ部
21 ターゲット配置台
22 スパッタ電源(第1スパッタ用プラズマ発生部)
23 スパッタ用磁界発生用磁石(第1スパッタ用磁界発生部)
23A 外側磁石
23B 内側磁石
24 第1ガス供給部(第1スパッタ用プラズマ発生部、第2スパッタ用プラズマ発生部)
25 スパッタ制御部
30 プラズマ供給部
31 プラズマ生成室
32 プラズマ供給用磁界発生コイル(プラズマ供給用磁界発生部)
33 マイクロ波源
34 マイクロ波導波管
35 マイクロ波導入窓
36 第2ガス供給部
37 プラズマ供給口
38 プラズマ制御部
40 第2スパッタ部
41 第2ターゲット配置台
42 第2スパッタ電源(第2スパッタ用プラズマ発生部)
43 第2スパッタ用磁界発生用磁石
45 第2スパッタ制御部
SM スパッタ用磁界
DSM スパッタ部発散磁界
CM 電子サイクロトロン共鳴用磁界
DCM プラズマ供給部発散磁界