(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】リレーアタック検出装置及びリレーアタック検出方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20220204BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20220204BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20220204BHJP
H04B 1/3822 20150101ALI20220204BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
E05B49/00 J
B60R25/24
H04B1/3822
(21)【出願番号】P 2017163975
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】飯波 久太郎
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-342545(JP,A)
【文献】特開2012-046918(JP,A)
【文献】特開2016-183489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
E05B 49/00
B60R 25/24
H04B 1/3822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出装置において、
前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得手段と、
前記3軸受信強度取得手段で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定手段と、
を備え
、
前記リレーアタック判定手段は、同じLFアンテナから送信された信号同士を比較することを特徴とするリレーアタック検出装置。
【請求項2】
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出装置において、
前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得手段と、
前記3軸受信強度取得手段で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定手段と、
を備え、
前記リレーアタック判定手段は、車外用の信号と車内用の信号とを比較して判定することを特徴とするリレーアタック検出装置。
【請求項3】
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出装置において、
前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得手段と、
前記3軸受信強度取得手段で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定手段と、
を備え、
前記車両からの信号を送信するLFアンテナは、同じ時間では車内用及び車外用の一つのみが作動することを特徴とするリレーアタック検出装置。
【請求項4】
前記リレーアタック判定手段は、少なくとも、
車両に対して解錠要求が入力された解錠入力時、及び、前記解錠入力時より早いタイミングで且つ前記無線通信が成立した無線通信成立時の2つのタイミングにおける前記3軸受信強度を比較して前記リレーアタックの判定を行う
ことを特徴とする請求項1
乃至3の何れか1項に記載のリレーアタック検出装置。
【請求項5】
前記3軸アンテナによる前記車両からの信号の総受信強度を検出する総受信強度検出手段を備え、
前記リレーアタック判定手段は、
前記比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満で且つ前記総受信強度検出手段で検出された前記無線通信成立時の総受信強度に対する前記解錠入力時の総受信強度の変化量が予め設定された規定変化量未満である場合にリレーアタックがなされていると判定する
ことを特徴とする請求項
4に記載のリレーアタック検出装置。
【請求項6】
前記車両に設けられた車両側受信用アンテナによる前記携帯機からの信号の車両側受信強度を検出する車両側受信強度検出手段を備え、
前記リレーアタック判定手段は、
前記比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満で且つ前記車両側受信強度検出手段で検出された前記無線通信成立時の車両側受信強度に対する前記解錠入力時の車両側受信強度の変化量が予め設定された規定変化量未満である場合にリレーアタックがなされていると判定する
ことを特徴とする請求項
4又は
5に記載のリレーアタック検出装置。
【請求項7】
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出方法において、
前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得工程と、
前記3軸受信強度取得
工程で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定工程と、
を備え
、
前記リレーアタック判定工程は、同じLFアンテナから送信された信号同士を比較することを特徴とするリレーアタック検出方法。
【請求項8】
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出方法において、
前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得工程と、
前記3軸受信強度取得工程で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定工程と、
を備え、
前記リレーアタック判定工程は、車外用の信号と車内用の信号とを比較して判定することを特徴とするリレーアタック検出方法。
【請求項9】
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出方法において、
前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得工程と、
前記3軸受信強度取得工程で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定工程と、
を備え、
前記車両からの信号を送信するLFアンテナは、同じ時間では車内用及び車外用の一つのみが作動することを特徴とするリレーアタック検出方法。
【請求項10】
前記リレーアタック判定工程は、少なくとも、
車両に対して解錠要求が入力された解錠入力時、及び、前記解錠入力時より早いタイミングで且つ前記無線通信が成立した無線通信成立時の2つのタイミングにおける前記3軸受信強度を比較して前記リレーアタックの判定を行う
ことを特徴とする請求項
7乃至9の何れか1項に記載のリレーアタック検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーアタック検出装置及びリレーアタック検出方法、特に、車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出装置及びリレーアタック検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば鍵の代わりに携帯機を所持し、この携帯機と車両との間で無線通信を行い、両者が適正に認識できた場合に、車両を施解錠したり車両(エンジン)を運転(スタート)可能状態としたりする、例えばキーレスアクセスと呼ぶ車両通信システムが普及している。この車両通信システムにおける携帯機と車両との間の無線通信は、予め設定された範囲(領域)でのみ可能とされており、正規の携帯機を持たない者は車両を解錠したり運転したりすることができないようになっている。
【0003】
しかし、最近、この種の車両通信システムを搭載した車両に対し、リレーアタックと呼ばれる手法により、正規の携帯機を持たない者によって車両が解錠されたり運転されたりしてしまうような状況が生じていると報告されている。リレーアタックとは、本来、車両と携帯機との間でのみ行われる無線通信を別の中継機で中継し、これにより車両を不正に解錠したり運転したりしようとするものである。中継機は、車両の近傍と携帯機の近傍の夫々に配置され、車両からの信号を車両側中継機から携帯機側中継機を介して携帯機に送信するものが基本構成であり、携帯機からの信号を携帯機側中継機から車両側中継機を介して車両に送信できるものもある。この中継機は、リレーアタックツールとも呼ばれる。
【0004】
このリレーアタック対策として、下記特許文献1では、車両側から送信される信号の信号レベルを経時的に変化させ、携帯機側は、例えば、その信号レベルを模倣した信号を創生して送信し、車両側は、受信した信号の信号レベルと送信した信号の信号レベルを比較し、両者が同等である場合に、受信信号が正規の携帯機から送信されたものであると判定することで、リレーアタックを回避できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1記載のリレーアタック対策は、リレーアタックツールが受信した信号の信号レベルを模倣できないことに基づいている。しかしながら、受信した信号の信号レベルを模倣可能なリレーアタックツールが開発されつつあるという情報もあり、そうすると、信号レベルを経時的に変化させる手法以外のリレーアタック対策が必要となる。具体的には、できるだけ簡易な構成で確実にリレーアタックを検出できる装置や方法が望まれる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で確実にリレーアタックを検出することが可能なリレーアタック検出装置及びリレーアタック検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのリレーアタック検出装置は、
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出装置において、 前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得手段と、前記3軸受信強度取得手段で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するためのリレーアタック検出方法は、
車両と携帯機との間で行われる無線通信を個別の中継機で中継するリレーアタックの検出方法において、前記携帯機に設けられた3軸アンテナが受信している前記車両からの信号の各受信感度軸の3軸受信強度を取得する3軸受信強度取得工程と、前記3軸受信強度取得工程で取得された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度を比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満である場合にリレーアタックがなされていると判定するリレーアタック判定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
一般に、車両からの信号を確実に受信するために、携帯機には3軸アンテナが設けられているが、リレーアタック中、携帯機と携帯機側中継機との位置関係(正確には相対姿勢)は変化しない又は殆ど変化しないので、携帯機の3軸アンテナによる各受信感度軸の3軸受信強度の相互関係は変化しない又は殆ど変化しない。これは、携帯機の付近で、携帯機側中継器を使用して不正な通信を行おうとする者は、必然的に大きく動けないからである。これに対し、例えば携帯機が車両に接近しつつあるとき、携帯機と車両との位置関係(相対姿勢)は変化するので、3軸受信強度の相互関係は変化する。即ち、3軸受信強度の相互関係が変化している状態は、正当な使用者による使用であると判断することが可能である。従って、携帯機の3軸アンテナによる3軸受信強度を少なくとも2つの異なるタイミングで比較し、比較された少なくとも2つの異なるタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満である、つまり3軸受信強度の相互関係の変化がないか又は小さいときにリレーアタックがなされていると判定することができる。これにより、特に新たな構成部材を付加することなく、簡易な構成で確実にリレーアタックを検出することができる。
【0011】
また、上記リレーアタック検出装置において、前記リレーアタック判定手段は、少なくとも、車両に対して解錠要求が入力された解錠入力時、及び、前記解錠入力時より早いタイミングで且つ前記無線通信が成立した無線通信成立時の2つのタイミングにおける前記3軸受信強度を比較して前記リレーアタックの判定を行うことを特徴とする。
【0012】
また、上記リレーアタック検出方法において、前記リレーアタック判定工程は、少なくとも、車両に対して解錠要求が入力された解錠入力時、及び、前記解錠入力時より早いタイミングで且つ前記無線通信が成立した無線通信成立時の2つのタイミングにおける前記3軸受信強度を比較して前記リレーアタックの判定を行うことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、無線通信成立時及び解錠入力時の3軸受信強度の相互関係を用いてリレーアタックの判定を行うことができるので、正規の携帯機を所持して車両に接近した者以外に対して、車両を解錠しないことが可能となる。
【0014】
また、上記リレーアタック検出装置において、前記3軸アンテナによる前記車両からの信号の総受信強度を検出する総受信強度検出手段を備え、前記リレーアタック判定手段は、前記比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満で且つ前記総受信強度検出手段で検出された前記無線通信成立時の総受信強度に対する前記解錠入力時の総受信強度の変化量が予め設定された規定変化量未満である場合にリレーアタックがなされていると判定することを特徴とする。
【0015】
リレーアタック中、携帯機と携帯機側中継機との位置関係は変化しない又は殆ど変化しないので、携帯機の3軸アンテナによる総受信強度は変化しない又は殆ど変化しない。これに対し、例えば携帯機が車両に接近しつつあるとき、携帯機と車両との位置関係は変化するので、3軸アンテナの総受信強度は携帯機が車両に接近するほど大きくなる。従って、少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満で且つ、無線通信成立時の携帯機の総受信強度に対する解錠入力時の携帯機の総受信強度の変化量(増加量)が規定変化量未満である場合にリレーアタックがなされていると判定する。これにより、特に新たな構成要素を付加することなく、簡易な構成で確実にリレーアタックを検出することができる。
【0016】
また、上記リレーアタック検出装置において、前記車両に設けられた車両側受信用アンテナによる前記携帯機からの信号の車両側受信強度を検出する車両側受信強度検出手段を備え、前記リレーアタック判定手段は、前記比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態未満で且つ前記車両側受信強度検出手段で検出された前記無線通信成立時の車両側受信強度に対する前記解錠入力時の車両側受信強度の変化量が予め設定された規定変化量未満である場合にリレーアタックがなされていると判定することを特徴とする。
【0017】
リレーアタック中、車両と車両側中継機との位置関係は変化しない又は殆ど変化しないので、車両の車両側受信用アンテナによる車両側受信強度は変化しない又は殆ど変化しない。これは、車両の付近で、車両側中継器を使用して不正な通信を行おうとする者は、必然的に大きく動けないからである。これに対し、例えば携帯機が車両に接近しつつあるとき、携帯機と車両との位置関係は変化するので、車両側受信強度は携帯機が車両に接近するほど大きくなる。従って、少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満で且つ、無線通信成立時の車両側受信強度に対する解錠入力時の車両側受信強度の変化量(増加量)が規定変化量未満である場合にリレーアタックがなされていると判定する。これにより、特に新たな構成要素を付加することなく、簡易な構成で確実にリレーアタックを検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、携帯機の3軸アンテナによる各受信感度軸の3軸受信強度を取得し、取得された3軸受信強度を少なくとも2つの異なるタイミングで比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満である、つまり3軸受信強度の相互関係の変化がないか又は小さいときにリレーアタックがなされていると判定する構成としたため、特に新たな構成部材を付加することなく、簡易な構成で確実にリレーアタックを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のリレーアタック検出装置及びリレーアタック検出方法が適用された車両及び携帯機の概略構成の説明図である。
【
図2】
図1の車両及び携帯機のシステム構成図である。
【
図3】
図2の携帯機に設けられた3軸アンテナ及びその受信強度の説明図である。
【
図5】
図2の車両側制御部で行われる演算処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図2の車両側制御部で行われる演算処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図2の車両側制御部で行われる演算処理を示すフローチャートである。
【
図8】正規の携帯機と車両間の通信時の3軸受信強度の説明図である。
【
図9】リレーアタック時の3軸受信強度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明のリレーアタック検出装置及びリレーアタック検出方法の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この実施の形態のリレーアタック検出装置及びリレーアタック検出方法が適用された車両及び携帯機の概略構成を示す説明図である。この実施の形態の車両10は、例えばステーションワゴン型のような乗用車両であり、例えばキーレスアクセスと呼ばれる車両通信システムを備える。この車両通信システムは、前述のように、車両10毎に設定された携帯機12と該当する車両10の間で行われる無線通信であり、通常は、鍵の代わりに所持する携帯機12と車両10の相互通信で、車両10を解錠したり運転可能状態としたりする。そのため、車両10には、車両通信システム制御を司るコントロールユニットとしての車両側制御部14が設けられ、携帯機12にも後述する携帯機側制御部16が設けられている。なお、機械的な鍵が携帯機12にセットされていることもある。また、この実施の形態の車両10は、駆動源として、少なくとも図示しないエンジンを備えて構成される。
【0021】
この車両通信システムのために、車両10には、車室外に向けて信号(電波)を送信するための車室外LFアンテナ32や車室内に信号(電波)を送信するための車室内LFアンテナ34が設けられている。車室外LFアンテナ32は、例えばドアハンドルに内装され、車室内LFアンテナ34は、例えばダッシュ部に設けられている。車室外LFアンテナ32は、これ以外にも、例えばバンパやリヤゲート(トランクリッド)などにも設けられることがある。同様に、車室内LFアンテナ34は、前述以外にも、例えばカーゴルーム(トランク)内部やセンターコンソール、リヤシートなどにも設けられることがある。これらの車室外LFアンテナ32及び車室内LFアンテナ34は、何れも携帯機12に向けて信号を送信するためのものであり、一般的に、周波数30~300kHzの長波(LF:Low Frequency)からなる電波を送信する。携帯機12に向けた信号に長波が用いられるのは、車室内と車室外のどちらに携帯機12があるのかを判断できるようにするためである。なお、LF信号送信用のアンテナは、一般的に、外形が大きくなる傾向にある。
【0022】
これに対し、携帯機12には、例えば
図2に示すように、車両10からのLF信号を受信するための受信用LFアンテナ42が設けられている。この携帯機12に設けられた受信用LFアンテナ42には、携帯機12が如何なる姿勢でも車両10からのLF信号を確実に受信するため、3軸アンテナが用いられている。この3軸アンテナ(受信用LFアンテナ)42は、例えば
図3(a)に示すように、例えばx軸、y軸、z軸の互いに直交する3軸方向に受信感度を有するものであり、何れの受信感度軸の受信信号からも信号内容を読み取ることができるように構成されている。なお、この実施の形態では、例えば
図3(b)のx、y、zのように表される携帯機12の3軸アンテナ42の各受信感度軸の受信強度(3軸受信感度)を携帯機側制御部16で検出し、その情報を送信信号に組合せて車両10に向けて送信できるように構成した。また、車両10からのLF信号は、携帯機12に対して問い合わせる意味合いを有するので、このLF信号をポーリング信号とも呼ぶ。
【0023】
一方、携帯機12から車両10に向けて送信される信号には、その到達距離が要求されるため、一般的に周波数300MHz~3GHzの極超短波(UHF:Ultra High Frequency)の電波が用いられる。なお、キーレスアクセスの場合、この信号はRF信号と呼ぶ。そのため、
図2に示すように、携帯機12には、RF信号を送信するための送信用RFアンテナ44が設けられ、車両10には、RF信号を受信するための受信用RFアンテナ36が設けられている。前述した車両10からのLF信号にも、車両10を識別するための識別子(ID)が含まれており、同様に、携帯機12からのRF信号にも、携帯機12を識別するためのIDが含まれているが、前述のように車両10からのLF信号をポーリング信号と定義したので、携帯機12からのRF信号をID信号とも呼ぶ。なお、ポーリング信号もID信号も、車両10の状態や車両10と携帯機12との相対的な状態に応じて変更されるものであるが、ここでは、単に車両10からの送信(LF)信号をポーリング信号、携帯機12からの送信(RF)信号をID信号として扱う。
【0024】
図2は、
図1の車両10及び携帯機12の概略システム構成図である。車両10には、前述のキーレスアクセスと呼ぶ車両通信システムを司るコントロールユニットとしての車両側制御部14が設けられている。この車両側制御部14は、例えばマイクロコンピュータのような図示しない演算処理装置を備えて構成される。この演算処理装置は、コンピュータシステムと同様の高度な演算処理機能を有する演算処理部を備え、合わせてプログラムやデータを記憶する記憶部14aを備えるほか、外部との通信に必要な入出力部なども備えて構成される。この記憶部14aには、携帯機12に向けて送信される信号に組込む車両IDも記憶されている。
【0025】
また、車両10には、車両側制御部14からの指令に従って、車室外LFアンテナ32からLF信号を送信するための車室外LF送信部18や、車室内LFアンテナ34からLF信号を送信するための車室内LF送信部20、携帯機12からのRF信号を受信用RFアンテナ36で受信するためのRF受信部22も備えて構成される。これらLF送信部18、20やRF受信部22を車両側制御部14とユニット化することも可能であるが、この実施の形態では、車室外LF送信部18と車室外LFアンテナ32、車室内LF送信部20と車室内LFアンテナ34、受信用RFアンテナ36とRF受信部22を、夫々、ユニット化している。
【0026】
同様に、携帯機12には、例えばマイクロコンピュータのような演算処理装置を備えた携帯機側制御部16が設けられている。この携帯機側制御部16の演算処理装置も、コンピュータシステムと同様の高度な演算処理機能を有する演算処理部を備え、合わせてプログラムやデータを記憶する記憶部16a、外部との通信に必要な入出力部などを備えて構成される。また、携帯機12は、携帯機側制御部16からの指令に従って、車両10からのLF信号を前述の3軸アンテナ(受信用LFアンテナ)42で受信するためのLF受信部38や、送信用RFアンテナ44からRF信号を送信するためのRF送信部40を備える。これら携帯機側制御部16やLF受信部38、RF送信部40は、一般に、携帯機12を構成する1つの筐体内に収納されている。
【0027】
また、車両10のドア10aには、図示しないロック機構を施解錠駆動するためのロックアクチュエータ24や、解錠入力を検出するための解錠センサ26、施錠入力を検出するための施錠スイッチ28が設けられている。ロックアクチュエータ24は、ドア10aだけでなく、リヤゲート(トランクリッド)にも設けられている。解錠センサ26は、例えばドアハンドルなどに設けられ、これ以外にも、例えばリヤゲートハンドル(トランクリッドハンドル)などにも設けられ、これ以外に、サイドシルの下方に設けられる場合もある。また、施錠スイッチ28は、例えばドアハンドルなどに設けられ、これ以外に、ドアハンドルの近傍に設けられる場合もある。
【0028】
また、車両10には、車両10の運転を可能にするためのスタートスイッチ30が設けられている。このスタートスイッチ30は、エンジンのイグニッションスイッチに相当するが、近年、車両が走行していない、所謂アイドリング状態では、エンジンを停止する制御が多用されている。こうした制御を行う車両では、スタートスイッチ30を操作しても、エンジンは運転(スタート)されない場合が多い。そのため、この実施の形態では、正規の携帯機12を所持してスタートスイッチ30が操作されたら、車両10を運転可能な状態にするものとする。勿論、イグニッションスイッチと同様に、エンジンをスタート(運転)する形態であっても差し支えない。なお、この実施の形態では、車両10が運転可能でない(又はエンジンスタートしていない)状態で且つスタートスイッチ30が操作(入力)されていない状態では、車室外LFアンテナ32からのみLF信号(ポーリング信号)が送信され、スタートスイッチ30が操作された後に車室内LFアンテナ34からのみLF信号(ポーリング信号)が送信されるものとした。
【0029】
この実施の形態では、前述したリレーアタックを検出するための演算処理を車両側制御部14で行う。この演算処理の説明の前に、リレーアタックの概要について説明する。このリレーアタックは、例えばキーレスアクセスと呼ぶ車両-携帯機間の車両通信システムに介入して、車両10を不正に解錠したり運転したりしようとするものである。通常の車両通信システムは、
図1に示すように、車両10側からのポーリング信号、携帯機12側からのID信号が互いに受信できる範囲内で、例えば車両10側からのポーリング信号を携帯機12で受信し、携帯機12からID信号を送信する。ポーリング信号には車両10のIDが、ID信号には携帯機12のIDが、夫々、含まれているので、相互にIDが認識(同定)できた場合に、ドア10aのロックアクチュエータ24を解錠作動させたり、車両10を運転可能状態(エンジンスタート許可)とさせたりする。
【0030】
リレーアタックでは、例えば
図4に示すように、車両10の近傍及び携帯機12の近傍の夫々に中継機A、Bを配置する。具体的に、車両側中継機Aは車両10からのポーリング信号を受信できる範囲、携帯機側中継機Bは携帯機12からのID信号を受信できる範囲に配置する。中継機A、B同士は、比較的長い距離の送受信機能(中継能力)を有する。そこで、車両10からのポーリング信号を車両側中継機Aで受信して携帯機側中継機Bに向けて送信し、その送信信号を受信した携帯機側中継機Bがポーリング信号に変換して携帯機12に向けて送信する。ポーリング信号を受信した携帯機12はID信号を送信するから、そのID信号を携帯機側中継機Bで受信して車両側中継機Aに向けて送信し、その送信信号を受信した車両側中継機AがID信号に変換して車両10に向けて送信する。その結果、携帯機側制御部16は車両10のIDを、車両側制御部14は携帯機12のIDを、夫々、認識(同定)できるので、車両10を不正に解錠したり運転したりすることができるとされる。
【0031】
図5は、リレーアタック検出のために車両側制御部14で行われる演算処理の一部を示すフローチャートである。この演算処理は、例えば予め設定された規定サンプリング周期でタイマ割込み処理により実行され、まずステップS1で、解錠入力フラグF
2が0のリセット状態であるか否かを判定し、解錠入力フラグF
2がリセット状態である場合にはステップS2に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0032】
ステップS2では、車室外LF(ポーリング)信号が出力されているか否かを判定し、車室外LF(ポーリング)信号が出力されている場合にはステップS3に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0033】
ステップS3では、ポーリングフラグF1が0のリセット状態であるか否かを判定し、ポーリングフラグF1がリセット状態である場合にはステップS4に移行し、そうでない場合にはステップS11に移行する。
【0034】
ステップS4では、RF(ID)信号を受信したか否かを判定し、RF(ID)信号を受信した場合にはステップS5に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0035】
ステップS5では、携帯機12の3軸アンテナ受信強度情報の請求信号出力を指令してからステップS6に移行する。
【0036】
ステップS6では、3軸アンテナ受信強度情報を取得したか否かを判定し、3軸アンテナ受信強度情報を取得した場合にはステップS7に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
【0037】
ステップS7では、3軸アンテナ受信強度の請求信号の停止を指令してからステップS8に移行する。
【0038】
ステップS8では、3軸アンテナ42による総受信強度を算出してからステップS9に移行する。3軸アンテナ42による総受信強度は、例えば各受信感度軸の受信強度の2乗和平方根などによって算出することができる。
【0039】
ステップS9では、ステップS6で取得された3軸受信強度及びステップS8で算出された総受信強度をポーリング時(無線通信成立時)の3軸受信強度及び総受信強度として記憶してからステップS10に移行する。
【0040】
ステップS10では、ポーリングフラグF1を1にセットしてからステップS11に移行する。
【0041】
ステップS11では、前述した解錠センサ26による解錠入力が検出されたか否かを判定し、解錠入力があった場合にはステップS12に移行し、そうでない場合にはステップS18に移行する。
【0042】
ステップS12では、携帯機12の3軸アンテナ受信強度情報の請求信号出力を指令してからステップS13に移行する。
【0043】
ステップS13では、3軸アンテナ受信強度情報を取得したか否かを判定し、3軸アンテナ受信強度情報を取得した場合にはステップS14に移行し、そうでない場合にはステップS12に移行する。
【0044】
ステップS14では、3軸アンテナ受信強度の請求信号の停止を指令してからステップS15に移行する。
【0045】
ステップS15では、3軸アンテナ42による総受信強度を算出してからステップS16に移行する。3軸アンテナ42による総受信強度は、前述と同様に、例えば各受信感度軸の受信強度の2乗和平方根などによって算出することができる。
【0046】
ステップS16では、ステップS13で取得された3軸受信強度及びステップS15で算出された総受信強度を解錠入力時の3軸受信強度及び総受信強度として記憶してからステップS17に移行する。
【0047】
ステップS17では、解錠入力フラグF2を1にセットしてから復帰する。
【0048】
また、ステップS18では、ポーリングフラグF1がセットされてから規定時間が経過したか否かを判定し、セットから規定時間が経過した場合にはステップS19に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0049】
ステップS19では、ポーリングフラグF1を0にリセットしてから復帰する。
【0050】
図6も、リレーアタック検出のために車両側制御部14で行われる演算処理の一部を示すフローチャートであり、前述した
図5の演算処理の後続の演算処理と考えてよい。この演算処理は、例えば予め設定された規定サンプリング周期でタイマ割込み処理により実行され、まずステップS20で、解錠入力フラグF
2が1のセット状態であるか否かを判定し、解錠入力フラグF
2がセット状態である場合にはステップS21に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0051】
ステップS21では、図示しない個別の演算処理に従って、記憶されているポーリング時3軸受信強度と解錠入力時3軸受信強度の比較を行う。
【0052】
次にステップS22に移行して、ステップS21で比較されたポーリング時3軸受信強度と解錠入力時3軸受信強度とで、3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態以上であるか否かを判定し、3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態以上である場合にはステップS25に移行し、そうでない場合にはステップS23に移行する。この3軸受信強度相互関係の変化状態の判定は、例えばステップS21において受信強度の変化量が逆向き(正負)で且つその変化率の絶対値の大きい受信感度軸を2軸抽出し、それらの受信強度の変化率の絶対値の1つ以上が規定値以上である場合に、3軸受信強度相互関係の変化状態が規定変化状態以上であるとする。
【0053】
ステップS23では、図示しない個別の演算処理に従って、記憶されているポーリング時総受信強度と解錠入力時総受信強度の比較を行ってからステップS24に移行する。
【0054】
ステップS24では、ステップS23で比較されたポーリング時総受信強度と解錠入力時総受信強度とで、解錠入力時総受信強度がポーリング時総受信強度より予め設定された規定変化量以上大きいか否かを判定し、解錠入力時総受信強度がポーリング時総受信強度より規定変化量以上大きい場合にはステップS25に移行し、そうでない場合にはステップS27に移行する。この総受信強度の判定は、例えばステップS23において解錠入力時受信強度からポーリング時総受信強度を減算して総受信強度変化量を算出し、この総受信強度変化量が規定変化量以上である場合に、解錠入力時総受信強度がポーリング時総受信強度より規定変化量以上大きいとする。即ち、このステップS24では、ポーリング時総受信強度に対する解錠入力時総受信強度の変化量(増加量)が規定変化量以上であるか否かを判定している。
【0055】
ステップS25では、例えば車両側制御部14で行われている個別の解錠演算処理に対して、解錠許可指令を出力してからステップS26に移行する。
【0056】
ステップS26では、ポーリングフラグF1及び解錠入力フラグF2を夫々0にリセットすると共に、解錠許可フラグF3を1にセットしてから復帰する。
【0057】
一方、ステップS27では、リレーアタックがなされている可能性があると判定し、例えば車両側制御部14で行われている個別の解錠演算処理に対して、解錠不許可指令を出力してからステップS28に移行する。
【0058】
ステップS28では、解錠入力フラグF2を0にリセットしてから復帰する。
【0059】
図7も、リレーアタック検出のために車両側制御部14で行われる演算処理の一部を示すフローチャートであり、前述した
図6の演算処理の後続の演算処理と考えてよい。この演算処理は、例えば予め設定された規定サンプリング周期でタイマ割込み処理により実行され、まずステップS30で、解錠許可フラグF
3が1のセット状態であるか否かを判定し、解錠許可フラグF
3がセット状態である場合にはステップS31に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0060】
ステップS31では、車室内LF(ポーリング)信号が出力されているか否かを判定し、車室内LF(ポーリング)信号が出力されている場合にはステップS32に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0061】
ステップS32では、RF(ID)信号を受信したか否かを判定し、RF(ID)信号を受信した場合にはステップS33に移行し、そうでない場合にはステップS42に移行する。
【0062】
ステップS33では、携帯機12の3軸アンテナ受信強度情報の請求信号出力を指令してからステップS34に移行する。
【0063】
ステップS34では、3軸アンテナ受信強度情報を取得したか否かを判定し、3軸アンテナ受信強度情報を取得した場合にはステップS35に移行し、そうでない場合にはステップS33に移行する。
【0064】
ステップS35では、3軸アンテナ受信強度の請求信号の停止を指令してからステップS36に移行する。
【0065】
ステップS36では、ステップS34で取得された3軸受信強度を乗車時3軸受信強度として記憶してからステップS37に移行する。
【0066】
ステップS37では、図示しない個別の演算処理に従って、記憶されている解錠入力時3軸受信強度と乗車時3軸受信強度の比較を行ってからステップS38に移行する。なお、解錠入力時3軸受信強度に代えて、ポーリング時3軸受信強度と乗車時3軸受信強度の比較を行ってもよい。
【0067】
ステップS38では、ステップS37で比較された解錠入力時3軸受信強度と乗車時3軸受信強度とで、3軸受信強度の相互関係の変化状態が予め設定された規定変化状態以上であるか否かを判定し、3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態以上である場合にはステップS40に移行し、そうでない場合にはステップS39に移行する。この3軸受信強度相互関係の変化状態の判定は、前述と同様に、例えばステップS37において受信強度の変化量が逆向き(正負)で且つその変化率の絶対値の大きい受信感度軸を2軸抽出し、それらの受信強度の変化率の絶対値の1つ以上が規定値以上である場合に、3軸受信強度相互関係の変化状態が規定変化状態以上であるとする。なお、ステップS37でポーリング時3軸受信強度と乗車時3軸受信強度の比較を行った場合には、ポーリング時3軸受信強度と乗車時3軸受信強度とで相互関係の判定を行う。
【0068】
また、ステップS42では、解錠許可フラグF3がセットされてから規定時間が経過したか否かを判定し、解錠許可フラグF3がセットされてから規定時間が経過した場合にはステップS39に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0069】
ステップS39では、リレーアタックがなされている可能性があると判定し、例えば車両側制御部14で行われている個別の車両(エンジン)運転許可演算処理に対して、車両(エンジン)運転不許可指令を出力してから復帰する。
【0070】
また、ステップS40では、例えば車両側制御部14で行われている個別の車両(エンジン)運転許可演算処理に対して、車両(エンジン)運転許可指令を出力してから復帰する。
【0071】
これらの演算処理では、車室外LF(ポーリング)信号に対してRF(ID)信号が受信されたときの携帯機12の3軸アンテナ42の各受信感度軸の受信強度をポーリング時(無線通信成立時)3軸受信強度として記憶すると共に、その3軸受信強度から算出された総受信強度をポーリング時総受信強度として記憶する。また、解錠センサ26が解錠入力を検出したときの携帯機12の3軸アンテナ42の各受信感度軸の受信強度を解錠入力時3軸受信強度として記憶すると共に、その3軸受信強度から算出された総受信強度を解錠入力時総受信強度として記憶する。そして、ポーリング時3軸受信強度と解錠入力時3軸受信強度の比較を行い、ポーリング時3軸受信強度の相互関係と解錠入力時3軸受信強度の相互関係スの変化状態が規定変化状態未満である場合に、更にポーリング時総受信強度と解錠入力時総受信強度の比較を行い、ポーリング時総受信強度に対する解錠入力時総受信強度の変化量が規定変化量未満である場合に、リレーアタックがなされている可能性があるとして車両10の解錠を許可しない。
【0072】
また、この実施の形態では、スタートスイッチ30が操作された結果、送信されている車室内LF(ポーリング)信号に対してRF(ID)信号が受信されたときの携帯機12の3軸アンテナ42の各受信感度軸の受信強度を乗車時3軸受信強度として記憶し、解錠入力時3軸受信強度と乗車時3軸受信強度の比較を行い、解錠入力時3軸受信強度の相互関係と乗車時3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満である場合に、リレーアタックがなされている可能性があるとして車両10(又はエンジン)の運転を許可しない。この比較判定は、ポーリング時3軸受信強度と乗車時3軸受信強度の間で行ってもよい。なお、3軸アンテナによる3軸受信強度の相互関係は、3軸アンテナの各受信感度軸における受信強度のバランス(配分状態)であるともいえる。
【0073】
図8は、正規の携帯機と車両間の通信時の3軸受信強度の説明図、
図9は、リレーアタック時の3軸受信強度の説明図であり、何れも分図(a)がポーリング時3軸受信強度、分図(b)が解錠入力受信強度、分図(c)が乗車時3軸受信強度を示す。リレーアタック中、携帯機12と不正に通信しようとしている携帯機側中継機Bの所持者は、不要に動き回ったり携帯機側中継機Bを大きく動かしたりできないため、携帯機側中継機Bと携帯機12の位置関係(正確には相対姿勢)は変化しない又は殆ど変化しないから、携帯機12の3軸アンテナ42によるLF(ポーリング)信号の3軸受信強度は変化しない又は殆ど変化しない。一方、正規の携帯機12を所持する者が、車両に接近したり車両に乗り込んだりすると、携帯機12と車両10の位置関係(相対姿勢)は変化するのがほぼ当然であるから、携帯機12の3軸アンテナ42によるLF(ポーリング)信号の3軸受信強度は原則的に変化する。従って、正規の携帯機12を所持している場合には、車両10から離間していると考えられるポーリング時(無線通信成立時)の3軸受信強度と車両10に極接近していると考えられる解錠入力時の3軸受信強度を比較し、それらの3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満、つまり3軸受信強度の相互関係が変化しない又は殆ど変化しない場合に、リレーアタックがなされている可能性があると判定して車両10の解錠を許可しない。
【0074】
また、確度は極めて小さいと考えられるが、正規の携帯機12を所持して車両10に接近した場合であっても、ポーリング時(無線通信成立時)の3軸受信強度と解錠入力時の3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満である可能性がある。一方、リレーアタック中、携帯機側中継機Bと携帯機12の位置関係は変化しない又は殆ど変化しないから、携帯機12の3軸アンテナ42によるLF(ポーリング)信号の総受信強度は変化しない又は殆ど変化しない。これに対し、正規の携帯機12を所持して車両10に接近した場合、解錠入力時の3軸アンテナ42による総受信強度はポーリング時の3軸アンテナ42による総受信強度よりも確実に大きい。
【0075】
そこで、この実施の形態では、ポーリング時(無線通信成立時)の3軸受信強度と解錠入力時の3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満で且つポーリング時の総受信強度に対する解錠入力時の総受信強度の変化量が規定変化量未満である場合に、リレーアタックがなされている可能性があると判定して車両10の解錠を許可しない。一方、ポーリング時(無線通信成立時)の3軸受信強度と解錠入力時の3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満であっても、ポーリング時の総受信強度に対する解錠入力時の総受信強度の変化量が規定変化量以上である場合には、車両10の解錠を許可する。
【0076】
更に、この実施の形態では、乗車時3軸受信強度の相互関係と解錠入力時(又はポーリング時)3軸受信強度の相互関係の比較も行う。乗車前、つまり解錠入力時(ポーリング時)のLF(ポーリング)信号は、ドアハンドルなどに設けられた車室外LFアンテナ32から送信され、乗車時、つまりスタートスイッチ操作時のLF(ポーリング)信号は、ダッシュ部に設けられた車室内LFアンテナ34から送信されるので、正規の携帯機12を所持して乗車した場合、車室外LFアンテナ32と3軸アンテナ42の位置関係(相対姿勢)と、車室内LFアンテナ34と3軸アンテナ42の位置関係(相対姿勢)とは明らかに異なることから、両者の3軸受信強度の相互関係は明らかに異なる。これに対し、リレーアタック中、携帯機側中継機Bと携帯機12との位置関係(相対姿勢)は変化しない又は殆ど変化しないので、解錠入力時3軸受信強度の相互関係と乗車時3軸受信強度の相互関係は変化しない又は殆ど変化しない。従って、正規の携帯機12を所持している場合には、車室外にいると考えられる解錠入力時(又はポーリング時)の3軸受信強度と車室内にいると考えられる乗車時の3軸受信強度を比較し、それらの3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満、つまり3軸受信強度の相互関係が変化しない又は殆ど変化しない場合に、リレーアタックがなされている可能性があると判定して車両10(エンジン)の運転を許可しない。
【0077】
なお、この実施の形態では、リレーアタックがなされている可能性がある場合に、車両10の解錠を不許可にしたり、車両10(エンジン)の運転を不許可にしたりする制御のみを行っている。これらリレーアタックがなされている可能性の判定(検出)時に、その他の付加的な制御を行うことは随意可能である。このような付加的な制御としては、例えばブザやハザードランプなどによる警報処理が挙げられる。また、スマートフォンや携帯電話に情報を通知する処理なども考えられる。
【0078】
このように、この実施の形態のリレーアタック検出装置及びその方法では、携帯機12の3軸アンテナ42による3軸受信強度を少なくとも2つの異なるタイミングで比較し、比較された少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満である、つまり3軸受信強度の相互関係の変化がないか又は小さいときにリレーアタックがなされていると判定することにより、特に新たな構成部材を付加することなく、簡易な構成で確実にリレーアタックを検出することができる。
【0079】
また、ポーリング時(無線通信成立時)及び解錠入力時の3軸受信強度の相互関係を用いてリレーアタックの判定を行うことにより、正規の携帯機12を所持して車両10に接近した者以外に対して、車両10を解錠しないことが可能となる。
【0080】
また、携帯機12の3軸アンテナ42による総受信強度を算出(検出)し、少なくとも2つのタイミングにおける3軸受信強度の相互関係の変化状態が規定変化状態未満で且つ、ポーリング時(無線通信成立時)の携帯機12の総受信強度に対する解錠入力時の携帯機12の総受信強度の変化量(増加量)が規定変化量未満である場合にリレーアタックがなされていると判定することにより、特に新たな構成要素を付加することなく、簡易な構成で、より一層確実にリレーアタックを検出することができる。
【0081】
なお、前述の実施の形態では、解錠入力時とポーリング時(無線通信成立時)で携帯機12の3軸アンテナ42による総受信強度を比較したが、これに代えて又はこれに加えて、車両10に設けられた車両側受信用アンテナ(受信用RFアンテナ)36による携帯機12からの信号(RF信号)の受信強度を検出し、それを解錠入力時とポーリング時(無線通信成立時)で比較し、ポーリング時の車両側受信強度に対する解錠入力時の車両側受信強度の変化量が規定変化量未満である場合にリレーアタックされていると判定するようにしてもよい。前述したように、リレーアタック中、携帯機側中継機Bと携帯機12との距離は殆ど変化することがないが、リレーアタック中は、車両側中継機Aと車両10との距離もさほど変化するとは考えられないので、車両10側の受信強度の変化量でリレーアタックがなされているか否かの判定を行うことも可能である。また、これを携帯機12側の受信強度の比較に組合せることも可能である。
【0082】
また、前述の実施の形態では、リレーアタック検出を車両側制御部14で行うものとしたが、原理的には、携帯機側制御部16で行うことも可能である。しかしながら、携帯機12側の演算処理装置は、携帯機12が小型である必要から、演算処理能力に限りがあるのに加え、ボタン電池など電力的な制限も多い。従って、演算処理能力が高く且つ車載バッテリを使用可能な車両側制御部14で行うのが望ましい形態である。
【0083】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0084】
10 車両
12 携帯機
14 車両側制御部
16 携帯機側制御部
24 ロックアクチュエータ
26 解錠センサ
30 スタートスイッチ
32 車室外LFアンテナ
34 車室内LFアンテナ
36 受信用RFアンテナ(車両側受信用アンテナ)
42 3軸アンテナ(受信用LFアンテナ)
44 送信用RFアンテナ