(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】鋼管接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
E04B1/58 503H
(21)【出願番号】P 2017207714
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-08-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年8月1日、平成29年度土木学会全国大会 in Fukuoka 第72回年次学術講演会講演概要集(CD)で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年9月11日、12日、13日、平成29年度土木学会全国大会 in Fukuoka 第72回年次学術講演会、九州大学伊都キャンパスで発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隼人
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-207772(JP,A)
【文献】実公昭36-015236(JP,Y1)
【文献】特開平07-207771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する鋼管の端部同士を接合してなる鋼管接合構造であって、
前記鋼管の端部にはフランジ部が形成されており、
前記対向する鋼管の端部を内部空間に前記フランジ部を含んだ形態で収容する収容体と、
前記収容体の内部空間を満たすように充填され、前記鋼管の端部の表面を覆う充填材と、
を備え
、
前記収容体は、少なくとも2つのセグメント鋼管部材が締結部材によって結合された構造を有しており、
前記内部空間に前記充填材が充填された状態で前記締結部材が締め付けられることで、前記内部空間が収縮されるように構成されていることを特徴とする鋼管接合構造。
【請求項2】
対向する鋼管の端部同士を接合してなる鋼管接合構造であって、
前記鋼管の端部にはフランジ部が形成されており、
前記対向する鋼管の端部を内部空間に前記フランジ部を含んだ形態で収容する収容体と、
前記収容体の内部空間を満たすように充填され、前記鋼管の端部の表面を覆う充填材と、
を備え
、
前記収容体は、前記鋼管を中心にして配置されその鋼管の外周面との間に空間を形成する筒部と、前記筒部の両端に設けられ当該筒部と前記鋼管の外周面との間を塞ぐ蓋状部と、を有しており、
前記蓋状部は、前記鋼管の軸方向に凸状に膨らんだ形状又は凹状に凹んだ形状を呈していることを特徴とする鋼管接合構造。
【請求項3】
前記充填材は、膨張モルタルであることを特徴とする請求項
1又は2に記載の鋼管接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管同士を施工性よく接合できる鋼管接合構造に係り、例えば対向配置された既設の構造物の間に施工性よく構築できる鋼管接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管同士を長手方向に接合する手法として、鋼管端部に形成された雄ネジ継手部と雌ネジ継手部とを結合させるねじ式の接合方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、鋼管端部に形成されたフランジ部を突き合わせ、その突き合わせたフランジ部をカップリング部材で締結する接合方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-60652号公報
【文献】特開2001-3459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の接合方法の場合、雄ネジ継手部と雌ネジ継手部の肉厚が薄いことに起因する接合部分の強度に関する問題や、そのネジ部が錆び付いてしまっていると接合することが困難になるという問題があった。
また、上記特許文献2の接合方法の場合、対向するフランジ部を現場で突き合わせる位置合わせ作業が困難なことがあり、特にフランジ部の突き合わせ面を現場で好適に密接させる調整が困難なことがあるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、鋼管同士を施工性よく強固に接合できる鋼管接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
対向する鋼管の端部同士を接合してなる鋼管接合構造であって、
前記鋼管の端部にはフランジ部が形成されており、
前記対向する鋼管の端部を内部空間に前記フランジ部を含んだ形態で収容する収容体と、
前記収容体の内部空間を満たすように充填され、前記鋼管の端部の表面を覆う充填材と、
を備え、
前記収容体は、少なくとも2つのセグメント鋼管部材が締結部材によって結合された構造を有しており、
前記内部空間に前記充填材が充填された状態で前記締結部材が締め付けられることで、前記内部空間が収縮されるように構成されているようにした。
なお、鋼管の端部は閉塞されているものとする。
なお、セグメント鋼管部材は、収容体が2分割された形態であっても、3分割された形態などであってもよく、その分割数は任意である。
かかる構成の鋼管接合構造は、接合対象の鋼管の端部を対向させて配置し、対向する鋼管の端部をその端部のフランジ部を含んで内部に収容するように収容体を設置し、その収容体の内部空間に充填材を充填することで構築することができる。
特に、対向する鋼管の端部(フランジ部)を現場で突き合わせ、その突き合わせた端面を密接させるような調整作業を行うことなく鋼管接合構造を構築することで対向する鋼管同士を接合できるので、施工性よく鋼管を接合することができる。
そして、例えば、この鋼管接合構造において対向する鋼管が離間する方向に引かれるような張力が作用した場合、鋼管のフランジ部と収容体の内壁面との間の充填材に圧縮力が作用するコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで鋼管が拘束されるので、この鋼管接合構造によって対向する鋼管を強固に接合することができる。
つまり、この鋼管接合構造であれば、対向する鋼管を施工性よく強固に接合することができる。
また、収容体の内部空間に充填材が充填された状態でその内部空間が収縮されると、充填材が圧縮されるようになり、充填材に圧縮力が作用したことによるコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで対向する鋼管が拘束されるので、対向する鋼管を強固に接合することができる。
【0007】
また、上記目的を達成するため、この発明は、
対向する鋼管の端部同士を接合してなる鋼管接合構造であって、
前記鋼管の端部にはフランジ部が形成されており、
前記対向する鋼管の端部を内部空間に前記フランジ部を含んだ形態で収容する収容体と、
前記収容体の内部空間を満たすように充填され、前記鋼管の端部の表面を覆う充填材と、
を備え、
前記収容体は、前記鋼管を中心にして配置されその鋼管の外周面との間に空間を形成する筒部と、前記筒部の両端に設けられ当該筒部と前記鋼管の外周面との間を塞ぐ蓋状部と、を有しており、
前記蓋状部は、前記鋼管の軸方向に凸状に膨らんだ形状又は凹状に凹んだ形状を呈しているようにした。
なお、鋼管の端部は閉塞されているものとする。
かかる構成の鋼管接合構造は、接合対象の鋼管の端部を対向させて配置し、対向する鋼管の端部をその端部のフランジ部を含んで内部に収容するように収容体を設置し、その収容体の内部空間に充填材を充填することで構築することができる。
特に、対向する鋼管の端部(フランジ部)を現場で突き合わせ、その突き合わせた端面を密接させるような調整作業を行うことなく鋼管接合構造を構築することで対向する鋼管同士を接合できるので、施工性よく鋼管を接合することができる。
そして、例えば、この鋼管接合構造において対向する鋼管が離間する方向に引かれるような張力が作用した場合、鋼管のフランジ部と収容体の内壁面との間の充填材に圧縮力が作用するコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで鋼管が拘束されるので、この鋼管接合構造によって対向する鋼管を強固に接合することができる。
つまり、この鋼管接合構造であれば、対向する鋼管を施工性よく強固に接合することができる。
また、例えば、蓋状部が外側に凸に膨らんだ形状を有している収容体の内部空間に充填材が加圧充填されると、収容体が充填材を鋼管に向けて圧密する圧縮力が作用する。その圧縮力が充填材に作用したことによるコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで対向する鋼管が拘束されるので、対向する鋼管を強固に接合することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記充填材は、膨張モルタルであるようにする。
【0009】
収容体の内部空間に充填材として膨張モルタルを充填すると、その膨張モルタルが固化する際に膨張する。
収容体の内部空間に充填された充填材が膨張すると、その膨張圧に抗する収容体によって充填材が圧縮されるようになり、充填材に圧縮力が作用したことによるコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで鋼管が拘束されるので、対向する鋼管を強固に接合することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鋼管同士を施工性よく強固に接合できる鋼管接合構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1の鋼管接合構造を示す正面図(a)と、側面図(b)である。
【
図2】実施形態1の鋼管接合構造を一部断面視して示す正面図(a)と、側面図(b)である。
【
図3】実施形態2の鋼管接合構造を一部断面視して示す正面図である。
【
図4】実施形態3の鋼管接合構造を一部断面視して示す側面図である。
【
図5】実施形態4の鋼管接合構造を一部断面視して示す正面図である。
【
図6】鋼管接合構造からなる補強構造体によって補強された橋梁を示す断面図であり、レールに垂直な断面図(a)と、レールに平行な断面図(b)である。
【
図7】鋼管接合構造からなる補強構造体によって補強された橋梁を示す断面図であり、レールに垂直な断面図(a)と、レールに平行な断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る鋼管接合構造の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
本実施形態の鋼管接合構造は、鋼管同士を長手方向に接合する場合に、対向する鋼管の端部同士が接していない状態でもそれらを強固に接合できる技術を実現したものである。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1の鋼管接合構造100は、例えば、
図1(a)(b)、
図2(a)(b)に示すように、その端部にフランジ部11が形成されている鋼管10同士が接合されてなる接合構造であり、対向する鋼管10の端部(フランジ部11)を内部空間Sに収容する収容体20と、収容体20の内部空間Sを満たすように充填され、鋼管10の端部表面を覆う充填材30等を備えている。
【0018】
鋼管10は、鋼製の管状部材であり、その端部には鋼管10の外周面から外方に張り出した鍔状のフランジ部11が設けられている。
なお、フランジ部11が設けられている鋼管端部の開口は、閉栓部材12で塞がれている。
【0019】
収容体20は、例えば、2つの半割外鋼管21が締結部材22によって結合された構造を有している。
この半割外鋼管21は、セグメント鋼管部材である。また、締結部材22は、ボルトとナットで構成されている。
2つの半割外鋼管21が結合されてなる収容体20は、鋼管10を軸心にしてその鋼管10との間に空間(内部空間S)を形成する筒部20aと、筒部20aと鋼管10の外周面との間を塞ぐ蓋状部20bと、締結部材22が取り付けられる縁部20cとを有している。
なお、この収容体20には、内部空間Sに充填材30を充填するための逆止弁付注入口(図示省略)と、その充填時に内部空間Sから空気を逃がすための逆止弁付脱気口(図示省略)が設けられている。
【0020】
充填材30は、例えばモルタルなどのグラウトからなり、収容体20の内部空間Sに充填された後に固化し、フランジ部11を含む鋼管10の端部表面を覆うようになっている。
【0021】
このような構成の鋼管接合構造100は、接合対象の鋼管10の端部を対向させて配置し、対向する鋼管10の端部(フランジ部11)に2つの半割外鋼管21を被せるようにして収容体20を設置し、その収容体20の内部空間Sに充填材30を充填することで構築することができる。
特に、対向する鋼管10の端部(フランジ部11)を現場で突き合わせ、その突き合わせた端面を密接させるような調整作業を行うことなく鋼管接合構造100を構築することで鋼管10同士を接合できるので、鋼管10同士を施工性よく接合することができる。
【0022】
このように構築された鋼管接合構造100によれば、例えば、
図2(a)に示すように、対向する鋼管10が離間する方向に引かれるような張力が作用した場合、鋼管10のフランジ部11と収容体20の蓋状部20bとの間の充填材30に圧縮力が作用するコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで鋼管10が拘束されるので、この鋼管接合構造100によって対向する鋼管10を強固に接合することができる。
また、対向する鋼管10が近接する方向に押されるような押圧力が作用した場合、対向するフランジ部11の間の充填材30に圧縮力が作用するコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで鋼管10が拘束されるので、この鋼管接合構造100によって対向する鋼管10を強固に接合することができる。
特に、鋼管10のフランジ部11の端面同士が接することなく隙間が空いていても、この鋼管10と同等以上の断面積を有する外鋼管である収容体20によって剛性が担保されているので、この鋼管接合構造100によって対向する鋼管10は強固に接合されている。
【0023】
以上のように、本実施形態1の鋼管接合構造100であれば、鋼管10同士を施工性よく強固に接合することができる。
【0024】
なお、上記実施形態では、充填材30はモルタルなどの固化材料であるとしたが、それに限らず、例えば、アスファルトにフィラーを混入してなる粘弾性材料であってもよい。
所定の粘性抵抗を有する粘弾性材料からなる充填材30であれば、充填材30に圧縮力が作用した際のコンファインド効果で対向する鋼管10を拘束するように、それら鋼管10を強固に接合することができる。
【0025】
(実施形態2)
次に、本発明に係る鋼管接合構造の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0026】
実施形態2の鋼管接合構造100では、充填材30として膨張モルタルを用いた。
例えば、
図3に示すように、収容体20の内部空間Sに充填材30として膨張モルタルを充填すると、その膨張モルタルが固化する際に膨張する。
収容体20の内部空間Sに充填された充填材30が膨張すると、その膨張圧に抗する収容体20によって充填材30が圧縮されるようになり、充填材30に圧縮力が作用したことによるコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで鋼管10が拘束されるようになる。
このような膨張モルタルによるコンファインド効果によって対向する鋼管10が拘束されるので、実施形態2の鋼管接合構造100によっても対向する鋼管10を施工性よく強固に接合することができる。
【0027】
(実施形態3)
次に、本発明に係る鋼管接合構造の実施形態3について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0028】
実施形態3の鋼管接合構造100における収容体20には、例えば、
図4に示すように、対を成す半割外鋼管21の間を繋ぐ伸縮目地23が設けられている。
伸縮目地23は、例えば、ゴム製の帯状部材であり、対を成す半割外鋼管21の間に接着されている。
【0029】
そして、対を成す半割外鋼管21からなる収容体20の内部空間Sに充填材30を充填すると伸縮目地23が伸長し、その2つの半割外鋼管21の間に隙間が生じる。
その2つの半割外鋼管21の間の隙間を閉じるように締結部材22を締め付け、収容体20の内部空間Sを収縮することで、実施形態3の鋼管接合構造100が構築される。
【0030】
このように、収容体20の内部空間Sに充填材30が充填された状態でその内部空間Sが収縮されると、充填材30が圧縮されるようになり、充填材30に圧縮力が作用したことによるコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで対向する鋼管10が拘束されるようになる。
このような手順で構築された鋼管接合構造100であれば、コンファインド効果によって対向する鋼管10が拘束されるので、実施形態3の鋼管接合構造100によっても対向する鋼管10を施工性よく強固に接合することができる。
【0031】
(実施形態4)
次に、本発明に係る鋼管接合構造の実施形態4について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0032】
実施形態4の鋼管接合構造100における収容体20の蓋状部20bは、例えば、
図5に示すように、鋼管10の軸方向に凸状に膨らんだ形状を有している。
また、この収容体20の内部空間Sに充填材30を充填する際、注入圧をかけて加圧充填することが好ましい。なお、ポンプを用いて充填材30を充填する場合、そのポンプの注入圧がかかるようになっている。
【0033】
蓋状部20bが外側に凸に膨らんだ形状を有している収容体20の内部空間Sに充填材30が加圧充填されると、収容体20が充填材30を鋼管10に向けて圧密する圧縮力が作用するので、充填材30に圧縮力が作用したことによるコンファインド効果により充填材の耐力が高まることで対向する鋼管10が拘束されるようになる。
【0034】
このような実施形態4の鋼管接合構造100であっても、コンファインド効果によって対向する鋼管10が拘束されるので、対向する鋼管10を施工性よく強固に接合することができる。
なお、ここでは、蓋状部20bが外側に凸に膨らんだ形状を有している収容体20の例に説明したが、蓋状部20bが鋼管10の軸方向に凹状に凹んだ形状(内側に凹んだ形状)を有している収容体20であってもよい。
【0035】
以上のように、本実施形態の鋼管接合構造100であれば、対向する鋼管10を施工性よく強固に接合することができる。
【0036】
次に、本実施形態の鋼管接合構造100を、対向配置された支持構造物の間に架け渡されている主桁を補強するための補強構造体に適用した使用例について説明する。
【0037】
例えば、
図6(a)(b)に示す橋梁は、対向配置された支持構造物である橋脚1と、橋脚1の間に架け渡されている互いに平行な複数(本実施形態では4本)の主桁2を備えている。なお、主桁2は支承3を介して橋脚1上に設置されている。この支承3は、例えばゴム支承である。
複数(4本)の主桁2の両端部には、主桁2と交差する方向に延在して隣り合う主桁2同士を連結した端横桁4が設けられている。端横桁4は主桁2と一体に成型されている。
また、複数(4本)の主桁2における橋脚1間に相当する箇所には、主桁2と交差する方向に延在して隣り合う主桁2同士を連結した中間横桁5が設けられている。中間横桁5は主桁2と一体に成型されている。
この主桁2は、主桁2の上部に固定された床版6を支持しており、その床版6の上には、路盤コンクリート7と軌道スラブ8を介してレール9が敷設されて鉄道用の軌道が設けられている。
【0038】
このような橋梁の主桁2を補強するための補強構造体を端横桁4と中間横桁5の間に構築するのに、本実施形態の鋼管接合構造100の技術を適用した。ここでは、径間中央に一本の中間横桁5が設けられているので、一方の端横桁4と中間横桁5の間と、他方の端横桁4と中間横桁5の間にそれぞれ補強構造体を構築した。
【0039】
具体的には、
図6(a)(b)に示すように、端横桁4と中間横桁5の壁面にベースプレート15とアンカーを介して第1鋼管10aを設置し、その第1鋼管10aの間に第2鋼管10bを配置して、対向する第1鋼管10aの端部と第2鋼管10bの端部に被せるように収容体20を設置し、その収容体20の内部に充填材30を充填するように鋼管接合構造100を構築して、鋼管接合構造100からなる補強構造体を構築した。
なお、第1鋼管10aの端部と第2鋼管10bの端部にはフランジ部11(
図1、
図2参照)が形成されている。
【0040】
そして、本実施形態の鋼管接合構造100は、対向する鋼管10の端部(フランジ部11)の端面を密接させるような調整作業を行うことなく、鋼管10同士を接合できる技術であるので、既設の端横桁4と中間横桁5の間で施工性よく鋼管接合構造100を構築するように、補強構造体を構築できる。
つまり、既設の端横桁4と中間横桁5の間の寸法に応じた長さの第1鋼管10aや第2鋼管10bを製造し、それら鋼管の端部(フランジ部11)の端面を密接させて接合するような高い精度が求められる施工によって補強構造体を構築するのに比べ、本実施形態の鋼管接合構造100の技術を適用した補強構造体であれば、対向配置された既設の端横桁4と中間横桁5の間に施工性よく構築できる。
【0041】
特に、本実施形態の鋼管接合構造100では、コンファインド効果に起因する充填材30の耐力向上よって、対向する第1鋼管10aと第2鋼管10bが拘束されて強固に接合されているので、鋼管が本来持っている剛性が低下していないため、鋼管接合構造100からなる補強構造体の剛性は高く、主桁2に沿う向きの補強構造体を端横桁4と中間横桁5の間に設置することで、鋼管接合構造100からなる補強構造体によって主桁2にかかる荷重を支えるようにして、主桁2を補強することができる。
なお、第1鋼管10aと第2鋼管10bのフランジ面同士が接することなく、間が空いていても、この鋼管と同等以上の断面積を有する外鋼管である収容体20によって、剛性が担保されている。
【0042】
また、
図7(a)(b)に示すように、補強構造体としての鋼管接合構造100の第2鋼管10bと床版6とを接続している応力伝達部材16を備えてもよい。ここでは、鋼管からなる3つの応力伝達部材16が設けられている。なお、応力伝達部材16の上端部には、応力伝達部材16を床版6に接続するための接続部が設けられている。
このような応力伝達部材16を備えた補強構造体(鋼管接合構造100)であれば、より好適に主桁2の剛性を高め、主桁2を補強することができる。
【0043】
このように、本実施形態の鋼管接合構造100を適用した補強構造体は、既設の端横桁4と中間横桁5の間に施工性よく構築でき、主桁2を好適に補強することができる。
なお、鋼管接合構造100の技術を適用した補強構造体は、主桁2を補強するために、既設の端横桁4と中間横桁5の間に構築されるものに限らず、例えば、対向配置された既設の構造物の間に構築して、その既設の構造物が支持している任意の構造物などを補強するのに適用してもよい。
また、本実施形態では、鉄道構造物を補強するのに、鋼管接合構造100を適用した補強構造体を構築したが、補強対象は鉄道構造物に限らず、任意の構造物を補強するのに本発明を適用してもよい。
【0044】
なお、以上の実施の形態においては、鋼管10の端部の外周面にフランジ部11を設け、鋼管端部の開口を閉栓部材12で塞いだものを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、鋼管10の端部に鋼管10の径よりも大きな径の円盤部材を配設して、鋼管端部の開口を塞ぐとともにフランジ部を形成するようにしてもよい。
【0045】
また、以上の実施の形態においては、2つの半割外鋼管21の両端部を締結部材22で結合してなる収容体20を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、2つの半割外鋼管21の一端部はヒンジ構造によって回動可能に繋がれており、他端部を締結部材22で結合するようにした収容体20であってもよい。
【0046】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10 鋼管
10a 第1鋼管
10b 第2鋼管
11 フランジ部
12 閉栓部材
20 収容体
20a 筒部
20b 蓋状部
20c 縁部
21 半割外鋼管(セグメント鋼管部材)
22 締結部材
23 伸縮目地
30 充填材
100 鋼管接合構造
S 内部空間
1 橋脚
2 主桁
3 支承
4 端横桁
5 中間横桁
6 床版
7 路盤コンクリート
8 軌道スラブ
9 レール