(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】自動車ドア用シール構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/88 20160101AFI20220204BHJP
B60J 10/40 20160101ALI20220204BHJP
B60J 10/22 20160101ALI20220204BHJP
【FI】
B60J10/88
B60J10/40
B60J10/22
(21)【出願番号】P 2017238803
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 和之
(72)【発明者】
【氏名】木下 尚年
(72)【発明者】
【氏名】庄野 昇
(72)【発明者】
【氏名】三垣 祐介
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182939(JP,A)
【文献】特開2006-193053(JP,A)
【文献】特開2013-209093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0091746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00-10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ドアのウインド開口を形成するように延びるウインドフレームに取り付けられ、該ウインドフレームとウインドガラスとの間をシールするグラスランと、
上記ウインドフレームにおける上記グラスランよりも車室内側に取り付けられるウエザーストリップとを備えた自動車ドア用シール構造において、
上記グラスランは、上記ウインドフレームのフレーム上辺部に沿って車両前後方向に延びるグラスラン上辺部を備え、
上記グラスラン上辺部は、上記フレーム上辺部のグラスラン取付板部が挿入される挿入溝を有するグラスラン本体を備え、
上記グラスラン本体は、上記グラスラン取付板部の上面に沿って延びる上板部と、上記グラスラン取付板部の下面に沿って延びる下板部と、上記上板部の車室外側の端部から上記下板部の車室外側の端部まで上下方向に延びる車室外側板部とを備え、
上記グラスラン本体の上記上板部の車室内側から下方へ突出して上記フレーム上辺部に接触し、車両前後方向に延びるドアパネルシールリップが設けられ、
上記ウエザーストリップは、上記フレーム上辺部の上記グラスラン取付板部よりも車室内側において車室内側部分が車室外側部分に比べて下に位置するように形成された段差部の下側に取り付けられ、該フレーム上辺部に沿って車両前後方向に延びるウエザーストリップ上辺部を備え、
上記ウエザーストリップ上辺部は、車体で圧縮されて弾性変形する中空シール部と、該中空シール部の車室外側から上方へ突出して上記グラスラン本体の上記上板部の車室内側の端面及び上記ドアパネルシールリップの車室内側に接触する外側シールリップとを備え、
上記ウエザーストリップ上辺部と上記グラスラン上辺部との車両前後方向中央部が略平行に車両前後方向に延びる一方、上記ウエザーストリップ上辺部は車両前後方向の一端部に近づけば近づくほど上記グラスラン上辺部から下方へ離れるように延び、
上記ドアパネルシールリップには、上記ウエザーストリップ上辺部が上記グラスラン上辺部から下方へ離れる手前の部分に、該ドアパネルシールリップの形状を変化させる形状変化起点部が設けられ、該ドアパネルシールリップにおける該形状変化起点部よりも上記車両前後方向中央部寄りの部分が上記フレーム上辺部の上記グラスラン取付板部の上面に接触して車室外側へ向けて屈曲し、該ドアパネルシールリップにおける該形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分が
、該ドアパネルシールリップにおける該形状変化起点部よりも上記車両前後方向中央部寄りの部分よりも、下方へ
向けて長く延びていることを特徴とする自動車ドア用シール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車ドア用シール構造において、
上記形状変化起点部は、上記ドアパネルシールリップの下端部から上方に延びる切れ込み部または切り欠き部で構成されていることを特徴とする自動車ドア用シール構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車ドア用シール構造において、
上記グラスラン上辺部における上記車両前後方向中央部は押出成形された押出成形部とされ、該押出成形部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は開閉動作する金型で成形された型成形部を有し、
上記型成形部に上記形状変化起点部が設けられていることを特徴とする自動車ドア用シール構造。
【請求項4】
請求項3に記載の自動車ドア用シール構造において、
上記ドアパネルシールリップにおける上記形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は、下端部に近づけば近づくほど肉厚が薄く設定されていることを特徴とする自動車ドア用シール構造。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車ドア用シール構造において、
上記ドアパネルシールリップにおける上記形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は、上記フレーム上辺部における上記段差部を構成している縦面部に対して車室内側から接触するように配置されていることを特徴とする自動車ドア用シール構造。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車ドア用シール構造において、
上記ドアパネルシールリップにおける上記形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は、上記縦面部と上記外側シールリップとにより厚み方向に挟まれることを特徴とする自動車ドア用シール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車ドアのウインドフレームに配設されるグラスランを備えた自動車ドア用シール構造に関し、特にグラスランとは別体のウエザーストリップが設けられる構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車の側部に設けられるドアとして複数のタイプがあるが、その一つとして、ウインドガラスの周縁部を保持するウインドフレームを有するドアがある。このウインドフレームを有するドアには、ウインドフレームとウインドガラスの周縁部との間をシールするためのグラスランが配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のグラスランは、ウインドフレームに対して車室外側から組み付けられるようになっている。これら文献に開示されているグラスランのようにウインドフレームに対して車室外側から組み付けられるグラスランは、ウインドフレームの一部を車室外側から覆って隠すヒドンタイプと呼ばれるものであり、例えば車両のデザイン上の要求等から採用される場合がある。
【0004】
また、特許文献2では、ウインドフレームの車室内側に中空シール部を有する第1ウエザーストリップが設けられ、またウインドフレームの車室外側にシールリップ部を有する第2ウエザーストリップが設けられており、これらウエザーストリップによってウインドフレームの周縁部と車体の開口部との間をシールしている。第1ウエザーストリップの車室外側部分と、第2ウエザーストリップの車室内側部分とは互いに重なるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2008-518135号公報
【文献】特開2002-103984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高いシール性を確保するために、ヒドンタイプのグラスランの車室内側に、特許文献2の第1ウエザーストリップのような中空シール部を有するウエザーストリップを設ける場合が想定される。
【0007】
この場合、グラスランの車室内側部分にウエザーストリップの車室外側部分を接触させることによってグラスランとウエザーストリップとの間の止水性を確保したいという要求がある。その理由は、グラスランを超えてウエザーストリップ側まで雨水等が浸入すると車室への漏水の懸念が生じるからである。
【0008】
そこで、例えば、
図10に示すように、ウインドフレーム3にグラスラン10と、ウエザーストリップ50とを取り付ける構造において、グラスラン10の車室内側の端部に、ウインドフレーム3に接触するドアパネルシールリップ26を設ける一方、ウエザーストリップ50の車室外側の端部に外側シールリップ58を設け、外側シールリップ58をドアパネルシールリップ26に接触させることでグラスラン10とウエザーストリップ50との間の止水性を確保する構造が考えられる。
【0009】
しかしながら、フロントドアの場合、ウインドフレーム3の上辺部においては、グラスラン10が車両後側へ直線的に延びる一方、ウエザーストリップ50はウインドフレーム3の後端へ行くほど下に位置するように湾曲しながら延びる車両も一般的である。従って、
図10に示す断面よりも車両後側の断面を記載した
図11に示すように、ウエザーストリップ50が
図10に示す位置(
図11では仮想線で示す位置)よりも下に位置することになる(
図11に実線で示す位置)。こうなると、ウエザーストリップ50の外側シールリップ58がウエザーストリップ50のドアパネルシールリップ26から離れてしまい、外側シールリップ58とドアパネルシールリップ26との間に溝200ができ、この溝200に雨水等が浸入して車室内に漏水するおそれがある。
【0010】
また、図示しないが、リヤドアの場合、ウインドフレームの上辺部においては、グラスランが車両前側へ直線的に延びる一方、ウエザーストリップはウインドフレームの前端へ行くほど下に位置するように湾曲しながら延びる車両も一般的であるので、上述したような溝ができてしまい、雨水等が車室内に漏水するおそれがある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウインドフレームにグラスランとウエザーストリップを取り付け、ウインドフレームの上辺部においてウエザーストリップがグラスランから下方に次第に離れる(シール材同士が分かれる状態)ように延びている場合に、ウエザーストリップとグラスランとの間に水の浸入が可能な溝ができないようにして、車室内への漏水を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1の発明は、自動車ドアのウインド開口を形成するように延びるウインドフレームに取り付けられ、該ウインドフレームとウインドガラスとの間をシールするグラスランと、上記ウインドフレームにおける上記グラスランよりも車室内側に取り付けられるウエザーストリップとを備えた自動車ドア用シール構造において、上記グラスランは、上記ウインドフレームのフレーム上辺部に沿って車両前後方向に延びるグラスラン上辺部を備え、上記グラスラン上辺部は、上記フレーム上辺部のグラスラン取付板部が挿入される挿入溝を有するグラスラン本体と、グラスラン本体は、グラスラン取付板部の上面に沿って延びる上板部と、グラスラン取付板部の下面に沿って延びる下板部と、上板部の車室外側の端部から下板部の車室外側の端部まで上下方向に延びる車室外側板部とを備え、該グラスラン本体の上板部の車室内側から下方へ突出して上記フレーム上辺部に接触し、車両前後方向に延びるドアパネルシールリップとを備え、上記ウエザーストリップは、上記フレーム上辺部の上記グラスラン取付板部よりも車室内側において車室内側部分が車室外側部分に比べて下に位置するように形成された段差部の下側に取り付けられ、該フレーム上辺部に沿って車両前後方向に延びるウエザーストリップ上辺部を備え、上記ウエザーストリップ上辺部は、車体で圧縮されて弾性変形する中空シール部と、該中空シール部の車室外側から上方へ突出して上記グラスラン本体の上板部の車室内側の端面および上記ドアパネルシールリップの車室内側に接触する外側シールリップとを備え、上記ウエザーストリップ上辺部と上記グラスラン上辺部との車両前後方向中央部が略平行に車両前後方向に延びる一方、上記ウエザーストリップ上辺部は車両前後方向の一端部に近づけば近づくほど上記グラスラン上辺部から下方へ離れるように延び、上記ドアパネルシールリップには、上記ウエザーストリップ上辺部が上記グラスラン上辺部から下方へ離れる手前の部分に、該ドアパネルシールリップの形状を変化させる形状変化起点部が設けられ、該ドアパネルシールリップにおける該形状変化起点部よりも上記車両前後方向中央部寄りの部分が上記フレーム上辺部のグラスラン取付板部の上面に接触して車室外側へ向けて屈曲し、該ドアパネルシールリップにおける該形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分が、該ドアパネルシールリップにおける該形状変化起点部よりも上記車両前後方向中央部寄りの部分よりも、下方へ向けて長く延びていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ウインドフレームのグラスラン取付板部に対して車室外側からグラスラン上辺部が取り付けられ、また、ウインドフレームのグラスラン取付板部よりも車室内側にウエザーストリップ上辺部が取り付けられる。この状態で、ウエザーストリップ上辺部の外側シールリップがグラスラン上辺部のドアパネルシールリップの車室内側に接触する。
【0014】
ここで、ウエザーストリップ上辺部とグラスラン上辺部との車両前後方向中央部は略平行に車両前後方向に延びているので、ウエザーストリップ上辺部の外側シールリップと、グラスラン上辺部のドアパネルシールリップとが接触して止水性が確保される。一方、ウエザーストリップ上辺部は、車両前後方向の一端部に近づけば近づくほどグラスラン上辺部から下方へ離れるように延びているので、この部分において止水性を確保できなくなるおそれがあるが、この発明では、ドアパネルシールリップに形状変化起点部を設けて、ドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも車両前後方向の一端部寄りの部分が下方へ延びるようにしているので、車両前後方向の一端部寄りの部分においてもウエザーストリップ上辺部の外側シールリップと、グラスラン上辺部のドアパネルシールリップとが接触して止水性が確保される。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記形状変化起点部は、上記ドアパネルシールリップの下端部から上方に延びる切れ込み部または切り欠き部で構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、グラスラン上辺部のドアパネルシールリップに予め切れ込み部または切り欠き部を形成しておくことで、グラスラン上辺部をフレーム上辺部に取り付けるだけでドアパネルシールリップが容易に所望の形状になる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、上記グラスラン上辺部における上記車両前後方向中央部は押出成形された押出成形部とされ、該押出成形部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は開閉動作する金型で成形された型成形部を有し、上記型成形部に上記形状変化起点部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、一様断面となる押出成形部と、断面形状が変化する型成形部とによってグラスラン上辺部が構成される。型成形部に形状変化起点部を設けることで、形状変化起点部が型成形時に一工程で得られる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、上記ドアパネルシールリップにおける上記形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は、下端部に近づけば近づくほど肉厚が薄く設定されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも車両前後方向の一端部寄りの部分が柔軟になり、フレーム上辺部に容易に沿うようになる。
【0021】
第5の発明は、第4の発明において、上記ドアパネルシールリップにおける上記形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は、上記フレーム上辺部における上記段差部を構成している縦面部に対して車室内側から接触するように配置されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、ドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも車両前後方向の一端部寄りの部分とフレーム上辺部の段差部の縦面部との間がシールされる。
【0023】
第6の発明は、第5の発明において、上記ドアパネルシールリップにおける上記形状変化起点部よりも上記車両前後方向の一端部寄りの部分は、上記縦面部と上記外側シールリップとにより厚み方向に挟まれることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、ドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも車両前後方向の一端部寄りの部分が、フレーム上辺部の段差部の縦面部と、外側シールリップとで挟まれるので、縦面部とドアパネルシールリップとの間、ドアパネルシールリップと外側シールリップとの間をそれぞれシールすることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、ウインドフレーム上辺部にグラスラン上辺部とウエザーストリップ上辺部を取り付け、ウエザーストリップ上辺部がグラスラン上辺部から下方に次第に離れるように延びている場合に、ウエザーストリップ上辺部の外側シールリップと、グラスラン上辺部のドアパネルシールリップとを接触させて止水性を確保することができる。
【0026】
第2の発明によれば、形状変化起点部を切れ込み部または切り欠き部で構成したので、グラスラン上辺部をフレーム上辺部に取り付ける際の作業性を悪化させることなく、ドアパネルシールリップを容易に所望の形状にして止水性を確保できる。
【0027】
第3の発明によれば、型成形部に形状変化起点部を設けたので、型成形部の成形時に形状変化起点部を一工程で得ることができる。
【0028】
第4の発明によれば、ドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも車両前後方向の一端部寄りの部分の肉厚を下端部に近づけば近づくほど薄くしたので、ドアパネルシールリップをフレーム上辺部に沿わせて止水性をより一層高めることができる。
【0029】
第5の発明によれば、ドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも車両前後方向の一端部寄りの部分とフレーム上辺部の段差部の縦面部との間をシールすることができる。
【0030】
第6の発明によれば、フレーム上辺部の段差部の縦面部とドアパネルシールリップとの間、ドアパネルシールリップと外側シールリップとの間をそれぞれシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車ドア用シール構造が適用された自動車ドアの左側面図(車外側視)である。
【
図2】自動車ドアのウインドフレームの後側上部の車室内側を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】ウエザーストリップを取り外した状態の
図2相当図である。
【
図6】
図3におけるIV-IV線に相当する面で切断したグラスラン上辺部を車室内側から見た斜視図である。
【
図7】
図2におけるVII-VII線断面図である。
【
図8】
図2におけるVII-VII線に相当する面で切断したグラスラン上辺部及びウエザーストリップ上辺部を車室内側から見た斜視図である。
【
図10】
図2におけるVII-VII線の断面を示し、グラスランとウエザーストリップの前後方向中央部の位置関係を説明する図である。
【
図11】本発明を適用しない場合のグラスランとウエザーストリップの後端部近傍の位置関係を説明する図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る自動車ドア用シール構造が適用された自動車ドアの右側面図(車内側視)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車ドア用シール構造を備えた左側フロントドア(自動車ドア)1を車室外側(左側)から見た側面図である。この左側フロントドア1は、自動車(図示せず)の左側において前側に配設され、自動車の左側において前側に形成された開口部(図示せず)を開閉する。右側フロントドアは図示しないが左側フロントドアと対称に設けられている。また、図示しないが、左右のリヤドアにも本発明に係る自動車ドア用グラスランを設けることができる。また、ドアは、ヒンジ軸周りに開閉するドアに限られるものではなく、例えば車両前後方向にスライドするスライドドアであってもよい。
【0034】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
【0035】
(自動車ドアの構造)
図1に示すように、左側フロントドア1は、該左側フロントドア1の略下半部を構成するドア本体2と、略上半部を構成するウインドフレーム3とを有している。ドア本体2の前端部は、図示しないが、上下方向に延びる回動軸を有するヒンジを介して車体のピラーに取り付けられている。ドア本体2は、鋼板等からなるインナパネル(図示せず)とアウタパネル2aとで構成されており、内部には、昇降動作するウインドガラス4や、ウインドガラス4を昇降動作させるための昇降装置(図示せず)等が収容可能になっている。
【0036】
ウインドフレーム3は、ウインドガラス4の周縁部を保持するサッシュとして機能するものであり、ウインド開口7を形成するように延びている。ウインドフレーム3によって形成されているウインド開口7がウインドガラス4によって開閉されるようになっている。この実施形態のウインドフレーム3は、
図4に示すように鋼板等をプレス成形してなるアウタパネル材5及びインナパネル材6を組み合わせて構成されたものである。尚、ウインドフレーム3は、例えばロール成形法によって構成されたものであってもよい。
【0037】
図1に示すように、ウインドフレーム3は、フレーム上辺部3aとフレーム後辺部3bとで構成されている。フレーム上辺部3aは、ドア本体2の上縁における前部から後側へ延びており、後端に近づくほど上に位置するように湾曲している。フレーム後辺部3bは、ドア本体2の上縁における後部から上方へ延びている。フレーム後辺部3bの上端部と、フレーム上辺部3aの後端部とが接続されてウインドフレーム3が構成されている。
【0038】
尚、ウインドフレーム3の形状は図示した形状に限られるものではなく、全体的に上方へ向けて湾曲した形状であってもよいし、湾曲部の位置やフレーム上辺部3aの傾斜角度曲率も車体のルーフ形状に対応するように任意に設定することができる。また、ウインドフレーム上辺部3aの下部に上下方向に延びるフレーム前辺部(図示せず)を設けてもよい。また、ウインドフレーム上辺部3aの前部下方には、ドアミラー(図示せず)が取り付けられるドアミラー取付部3dが設けられている。
【0039】
図4に示すように、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3aには、車室外側へ延びるグラスラン取付板部8が形成されている。グラスラン取付板部8は、アウタパネル材5及びインナパネル材6の車室外側部分で構成されている。すなわち、アウタパネル材5の車室外側部分は略水平に延びるとともに前後方向に連続して延びている。インナパネル材6の車室外側部分も略水平に延びるとともに前後方向に連続して延びている。アウタパネル材5の車室外側部分の上面に、インナパネル材6の車室外側部分の下面を重ね合わせることでグラスラン取付板部8が構成されている。尚、グラスラン取付板部8は、アウタパネル材5及びインナパネル材6の両方で構成する以外に、アウタパネル材5及びインナパネル材6の一方のパネル材で構成することもできる。
【0040】
フレーム上辺部3aには、グラスラン取付板部8よりも車室内側に、車室内側部分が車室外側部分に比べて下に位置するように形成された段差部3eが設けられている。段差部3eは、縦面部3fと横面部3gとで構成されている。縦面部3fは上下方向に延びる面である。横面部3gは、縦面部3fの下端部から車室内側へ向かって延びる面である。フレーム上辺部3aの前後方向中央部における縦面部3fは長さが殆ど一定で、前後方向に延びていて、グラスラン取付板部8に対する横面部3gの相対的な高さが殆ど変化していない。しかし、フレーム上辺部3aの後側は、フレーム上辺部3aの後端部に近づけば近づくほど縦面部3fの長さが長くなる。このため、グラスラン取付板部8に対する横面部3gの相対的な高さは、フレーム上辺部3aの後端部に近づけば近づくほど下に位置する形状になっている。
【0041】
また、ウインドフレーム3のフレーム後辺部3bの車室外側には、例えば樹脂製の板材からなるガーニッシュ9が取り付けられている。ガーニッシュ9は、フレーム後辺部3bの車室外面に沿って上下方向に延びており、該車室外面を覆う部材である。ガーニッシュ9の上端部は、フレーム上辺部3aの後端部に達している。ガーニッシュ9は省略してもよい。
【0042】
(自動車ドア用シール構造)
自動車ドア用シール構造は、左側フロントドア1のウインドフレーム3に取り付けられ、該ウインドフレーム3とウインドガラス4との間をシールするグラスラン10と、ウインドフレーム3におけるグラスラン10よりも車室内側に取り付けられるウエザーストリップ50とを少なくとも備えている。
【0043】
(自動車ドア用グラスラン10の構成)
図7に示すように、左側フロントドア用グラスラン10は、ウインドフレーム3の少なくとも車室外側を覆い隠す、いわゆるヒドンタイプであり、詳細は後述するが、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3aに対して車室外側から組み付けられ、ウインドフレーム3とウインドガラス4との間をシールするためのシール材として機能する。左側フロントドア用グラスラン10は、ウインドフレーム3の車室外側部分であるグラスラン取付板部8も覆うように形成されている。
【0044】
図1に示すように、左側フロントドア用グラスラン10は、グラスラン上辺部11と、グラスラン前側縦辺部12と、グラスラン後側縦辺部13とを備えている。グラスラン上辺部11、グラスラン前側縦辺部12及びグラスラン後側縦辺部13は一体化されている。グラスラン上辺部11は、ウインドフレーム3の上部であるフレーム上辺部3aに沿って前後方向に延びており、グラスラン取付板部8に組み付けられた状態でフレーム上辺部3aに沿って湾曲している。
【0045】
グラスラン前側縦辺部12は、グラスラン上辺部11の前端部から下方に延びている。グラスラン後側縦辺部13は、グラスラン上辺部11の後端部から下方へ延びている。グラスラン前側縦辺部12及びグラスラン後側縦辺部13の下側は、ドア本体2の内部に達するまで延びており、これらグラスラン前側縦辺部12及びグラスラン後側縦辺部13により、ウインドガラス4の前部及び後部がそれぞれ上下方向に案内される。
【0046】
図4に示すように、左側フロントドア用グラスラン10のグラスラン上辺部11は、フレーム上辺部3aのグラスラン取付板部8へ取り付けられる挿入溝14を有するグラスラン本体20と、該グラスラン本体20の車室外側に組み付けられ、前後方向に延びるモール30とを備えている。モール30は、グラスラン上辺部11を構成するグラスラン本体20にのみ組み付けられており、グラスラン前側縦辺部12及びグラスラン後側縦辺部13にはモール30が組み付けられないようになっている。尚、モール30は無くてもよく、その場合は、後述する上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23b等を省略すればよい。
【0047】
グラスラン本体20は、グラスラン取付板部8の上面に沿って延びる上板部21と、グラスラン取付板部8の下面に沿って延びる下板部22と、上板部21の車室外側の端部から下板部22の車室外側の端部まで上下方向に延びる車室外側板部23とを有している。上板部21、下板部22及び車室外側板部23は一体成形されている。
【0048】
上板部21と下板部22との間に、グラスラン取付板部8に対して取り付けられる挿入溝14が形成されている。挿入溝14は、上板部21の車室内側の端部と、下板部22の車室内側の端部との間に開口しており、前後方向に延びている。挿入溝14の底部は、車室外側板部23によって構成されている。グラスラン取付板部8に対してグラスラン本体20を取り付けた状態で、グラスラン取付板部8の車室外側の端部が、挿入溝14の底部近傍に達するように、挿入溝14の深さ及びグラスラン取付板部8の車室内外方向の寸法(左右方向の寸法)が設定されている。
【0049】
上板部21、下板部22及び車室外側板部23は、曲げ弾性率が2000MPa以上5000MPa以下の高剛性材料で構成されている。このような高剛性材料としては、例えば硬質樹脂(例えばタルクやガラス繊維を混合したポリプロピレン)等を使用することができるが、これらに限られるものではなく、他の材料や各種複合材料等を使用することもできる。上板部21、下板部22及び車室外側板部23を上記高剛性材料で構成することにより、上板部21、下板部22及び車室外側板部23の剛性が高まり、特に上板部21及び下板部22の開きを抑制することができる。これにより、グラスラン取付板部8に対してグラスラン本体20を取り付けた状態で、グラスラン取付板部8を上板部21及び下板部22によって厚み方向にしっかりと挟持することができ、左側フロントドア用グラスラン10がグラスラン取付板部8から外れにくくなり、左側フロントドア用グラスラン10の固定強度を十分に高めることができる。
【0050】
上板部21の下面には、下方へ突出する複数の上側係合突起21aが車室内外方向に互いに間隔をあけて形成されている。上側係合突起21aの下端部はグラスラン取付板部8の上面に接触するように形成することができる。車室内側に位置する上側係合突起21aには、グラスラン取付板部8の上面から上方へ突出する切り起こし部8aに対して車室外側から当接して係合するようになっている。これにより、左側フロントドア用グラスラン10がグラスラン取付板部8から外れにくくなる。
【0051】
下板部22の上面には、上方へ突出する複数の下側係合突起22aが車室内外方向に互いに間隔をあけて形成されている。下側係合突起22aの上端部はグラスラン取付板部8の下面に接触するように形成することもできる。下側係合突起22aの上端部と、上側係合突起21aの下端部との上下方向の距離は、グラスラン取付板部8の厚みと同程度にしてもよいし、組み付けしやすさを考慮し、若干広くしてもよい。
【0052】
グラスラン本体20の車室外側の上部には、自動車の車体100に接触することによって車室外側に向けて撓む上側シールリップ24が上方へ突出するように設けられている。上側シールリップ24の基端部は、上板部21の上面の車室外側部分に固着され、一体化されている。上側シールリップ24が自動車の車体100と接触していないとき、即ち、左側フロントドア1が開状態にあるときには、
図4に示すように略真上に向けて突出する形状である。一方、上側シールリップ24が自動車の車体100と接触しているとき、即ち、左側フロントドア1が閉状態にあるときには、図示しないが、車体100によって車室外側の斜め下方へ押されることによって先端部が基端部よりも車室外側に位置するように弾性変形して車体100に密着する。これにより、上側シールリップ24によるシール性が得られる。車体100は、例えばボディパネル等である。
【0053】
グラスラン本体20の車室内側の上部には、自動車の車体100に接触することによって車室外側に向けて撓む内側シールリップ25が車室外側の斜め上方へ突出するように設けられている。内側シールリップ25の基端部は、上板部21の上面の車室内側部分に固着され、一体化されている。内側シールリップ25が自動車の車体100と接触していないとき、即ち、左側フロントドア1が開状態にあるときには、
図4に示すように車室外側の斜め上方へ突出する形状である。一方、内側シールリップ25が自動車の車体100と接触しているとき、即ち、左側フロントドア1が閉状態にあるときには、図示しないが、車体100によって車室外側の斜め下方へ押されることによって先端部が上側シールリップ24の基端部に接近するように弾性変形して車体100に密着する。これにより、内側シールリップ25によるシール性が得られる。
【0054】
また、グラスラン本体の車室内側には、ドアパネルシールリップ26が設けられている。ドアパネルシールリップ26は、上板部21の車室内側の端部から下方へ突出してフレーム上辺部3aに接触し、前後方向に延びている。ドアパネルシールリップ26は、上板部21の車室内側の端部に固着され、一体化されている。ドアパネルシールリップ26の詳細構造については後述する。また、上板部21の車室内側の端部には、上方へ突出する凸部21cが形成されている。
【0055】
グラスラン本体20の車室外側の下部には、下側シール部27が下方へ突出するように設けられている。下側シール部27の基端部は、下板部22の下面の車室外側部分に固着され、一体化されている。下側シール部27の下部は、車室内側へ向けて屈曲している。この下側シール部27の下部は、閉状態のウインドガラス4の車室外側の面に接触するようになっている。
【0056】
グラスラン本体20の車室内側の下部には、下側シール部28が下方へ突出するように設けられている。下側シール部28の基端部は、下板部22の車室内側の端面に固着され、一体化されている。下側シール部28の下部は、車室内側へ向けて屈曲している。この下側シール部28の下部は、ウインドフレーム3のアウタパネル材5に接触するようになっている。また、下側シール部28は、閉状態のウインドガラス4の車室内側の面にも接触するようになっている。
【0057】
下板部22の下面には、下側シール部27の基端部と、下側シール部28の基端部との間に、中間シールリップ29が設けられている。中間シールリップ29の基端部は、下板部22の下面における車室内外方向の中間部に固着され、一体化されている。中間シールリップ29は、車室外側の斜め下方へ延びるように形成されており、閉状態のウインドガラス4の上端に接触するようになっている。
【0058】
上側シールリップ24、内側シールリップ25、ドアパネルシールリップ26、下側シール部27、下側シール部28及び中間シールリップ29は、上記高剛性材料からなる部材(上板部21、下板部22及び車室外側板部23)に一体化されているので、上記高剛性材料よりも柔らかく弾性変形し易い材料で構成しても組付時の形状維持性を確保できる。上側シールリップ24、内側シールリップ25、ドアパネルシールリップ26、下側シール部27、下側シール部28及び中間シールリップ29を構成する材料としては、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)等のように、弾性を有する材料を使用することができる。上記EPDMやTPOは、発泡材であってもよいし、非発泡材であってもよい。なお、上記高剛性材料をポリプロピレン等の硬質樹脂とした場合は、TPOを使用するのが、好ましい。
【0059】
上側シールリップ24、内側シールリップ25、ドアパネルシールリップ26、下側シール部27、下側シール部28及び中間シールリップ29は、上板部21、下板部22及び車室外側板部23と共に、グラスラン本体20を構成する部分である。
【0060】
図2や
図3に示すように、グラスラン上辺部11における前後方向中央部は押出成形された押出成形部10Aとされている。押出成形部10Aは、従来から周知の押出成形法によって一様断面を有するように成形された部分である。グラスラン上辺部11における押出成形部10Aよりも後端部寄りの部分は、開閉動作する金型(図示せず)で成形された型成形部10Bを有している。型成形部10Bの成形するための成形装置は、例えば上型と下型とを有するとともに、一方の型を他方に対して接離する方向に駆動する型駆動装置を有している。
【0061】
押出成形部10Aと型成形部10Bとの境界は、
図2、
図3や
図6、
図8に一点鎖線Lで示している。ドアパネルシールリップ26の前後方向中央部は、押出成形部10Aで構成される一方、ドアパネルシールリップ26の後端部寄りの部分は、型成形部10Bで構成されている。このような構成にする方法は様々あるが、例えば、ドアパネルシールリップ26の形状を含む長尺状の押出成形部10Aを得た後、この押出成形部10Aの後側におけるドアパネルシールリップ26の形状部分を切除し、その後、押出成形部10Aの後側に、型成形部10Bを一体成形する方法がある。これにより、押出成形部10Aで構成されるドアパネルシールリップ26と、型成形部10Bで構成されるドアパネルシールリップ26とが連続した形態で得られるようになる。
【0062】
図1に示す上記モール30は、車両のデザインの一部として用いられる部材であり、一般的には、ステンレスやアルミニウム等の硬質部材で構成されている。この実施形態では、ステンレス製の板材で構成されている。モール30は、グラスラン本体20に沿って前後方向に長く延びる形状とされており、該モール30の前端部はウインドフレーム3のフレーム上辺部3aの前端部近傍に位置し、該モール30の後端部はウインドフレーム3のフレーム上辺部3aの後端部近傍に位置している。
【0063】
図4及び
図5に示すように、モール30の上部及び下部には、グラスラン本体20の車室外側に嵌合する上部及び下部モール側嵌合部31、32が前後方向に延びるように形成されている。上部モール側嵌合部31は、車室内側へ向けて折り曲げられた後、下方へ屈曲するように形成されており、下方に開放する形状となっている。下部モール側嵌合部32は、車室内側へ向けて折り曲げられた後、上方へ屈曲するように形成されており、上方に開放する形状となっている。モール30における上部モール側嵌合部31と下部モール側嵌合部32との間の部分は、意匠部33とされている。この意匠部33は、車室外側へ向けて緩やかに湾曲している。
【0064】
グラスラン本体20の車室外側には、上部モール側嵌合部31及び下部モール側嵌合部32がそれぞれ嵌合する上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bが前後方向に延びるように形成されている。すなわち、グラスラン本体20の車室外側板部23の車室外面には、基部23cが車室外側へ突出するように形成されている。この基部23cは、車室外側板部23の車室外面の上下方向中央部近傍に位置付けられていて、前後方向に連続している。
【0065】
上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bは、グラスラン本体20の前端部から後端部まで連続して延びており、後述するモール30を組み付ける際に、当該モール30を前後方向に案内するレールとしても機能するレール状部分である。
【0066】
図5に示すように、モール30の上部モール側嵌合部31は、グラスラン本体20の上側本体側嵌合部23aを上方から囲むように配置され、この状態で、上部モール側嵌合部31が上側本体側嵌合部23aに嵌合する。また、モール30の下部モール側嵌合部32は、グラスラン本体20の下側本体側嵌合部23bを下方から囲むように配置され、この状態で、下部モール側嵌合部32が下側本体側嵌合部23bに嵌合する。上部モール側嵌合部31及び下部モール側嵌合部32がそれぞれ上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bに嵌合すると、上部モール側嵌合部31及び下部モール側嵌合部32の形状により、モール30がグラスラン本体20に対して車室内外方向及び上下方向に変位しないようになる。
【0067】
この実施形態では、上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bを車室外側板部23に一体成形しているので、上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bも高剛性材料で構成することができる。よって、上部モール側嵌合部31及び下部モール側嵌合部32がそれぞれ上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bに嵌合した状態で、モール30がグラスラン本体20から外れにくくなる。
【0068】
グラスラン本体20の車室外側には、モール30における車室外面の上部に接触する弾性材からなる上側接触部40が形成されている。上側接触部40は、上側シールリップ24の基端部における車室外側の面から車室外側へ向けて突出するように設けられており、上側接触部40と、上側シールリップ24とは一体成形されている。上側接触部40は、突出方向先端側(車室外側)へ向かって先細となるように形成されており、前後方向に連続して延びている。上側接触部40の先端側の下面が、モール30に対して上方から接触し、これにより、モール30の上部とグラスラン本体20の上部との間に隙間が無くなり、外観見栄えが良好になる。
【0069】
上側接触部40と上側シールリップ24とが厚肉基端部24aを介して一体成形されているので、上側シールリップ24が車室外方向に弾性変形すると、上側接触部40が上側シールリップ24の変形量及び変形方向に対応して若干量変位することになる。例えば、上側シールリップ24は、上述したように左側フロントドア1が開状態にあるときには略真上に向けて突出する形状であり、このとき、上側接触部40の先端側の下面が、モール30に対して上方から接触するように、上側接触部40の位置及び形状が設定されている。また、左側フロントドア1が閉状態にあるときには上側シールリップ24が車室外側の斜め下方へ向けて倒れるように弾性変形するが、厚肉基端部24aを介しているので、上側接触部40が車室外側且つ下方へ向けて若干量変位する。これにより、上側接触部40の先端側の下面が、モール30に対して上方から若干強く接触するので、上側接触部40とモール30とをより密着させることができる。
【0070】
また、グラスラン本体20の車室外側には、上側接触部40から下方に離れた部分に、モール30における車室外面の下部に接触する弾性材からなる下側接触部41が形成されている。下側接触部41は、下側シール部27の車室外側の面から車室外側へ膨出するように設けられており、下側接触部41と下側シール部27とは一体成形されている。下側接触部41は、前後方向に連続して延びている。下側接触部41が、モール30に対して下方から接触し、これにより、モール30の下部とグラスラン本体20の下部との間に隙間が無くなり、外観見栄えが良好になる。
【0071】
下側接触部41と下側シール部27とが一体成形されており、かつ、両者はいずれも基端部27aから下方に延設されているので、下側シール部27が弾性変形すると、下側接触部41が下側シール部27の変形量及び変形方向に対応して変位することになる。例えば、下側シール部27は、上述したようにウインドガラス4が閉状態にあるときに、ウインドガラス4の車室外面に接触するので、このときに車室外側へ向けて弾性変形する場合がある。これにより、下側接触部41が車室外側に変位してモール30に対して下方から強く接触することになるので、下側接触部41とモール30とを確実に密着させることができる。
【0072】
また、グラスラン本体20の車室外側には、モール30の車室内面に接触する突起23dが車室外側に向けて突設されている。突起23dがモール30の車室内面に接触することで、車室外側板部23の広い範囲がモール30に接触するのを回避することができる。突起23dは、車室外側板部23に一体成形することができる。
【0073】
(摺動抵抗低減用の被膜)
この実施形態では、モール30をグラスラン本体20に対して一方の端部から、長手方向にスライドさせて組み付けるようにしており、この組付の際に、組付作業を作業者が手作業で行えるようにするために、モール30の摺動抵抗を低減することが可能な構成を備えている。
【0074】
すなわち、上側接触部40におけるモール30に接触する部分は、弾性を持った上側被膜40aを有している。この上側被膜40aは、モール30に対する摺動抵抗が該上側接触部40における該上側被膜40aによって覆われた部分を構成する弾性材よりも低く設定されている。具体的には、上側接触部40における上側被膜40aによって覆われた部分は、上側シールリップ24等と同様な弾性材で構成されているが、上側被膜40aは、オレフィン系樹脂にシリコンを混合することにより、動摩擦係数を、上側シールリップ24等と同様な弾性材よりも小さくした材料からなる。尚、上側被膜40aの構成する材料は、オレフィン系樹脂にシリコンを混合したもの以外であってもよい。
【0075】
上側被膜40aの動摩擦係数は0.5以下が好ましい。上側被膜40aの動摩擦係数は、混合するシリコンの量によって任意に変更することができる。一方、上側接触部40における上側被膜40aによって覆われた部分を構成する弾性材の動摩擦係数は0.6程度である。
【0076】
ここで、動摩擦係数の測定方法について説明する。動摩擦係数の測定方法は、特開平9-123761号公報に開示されている測定方法を利用することができ、上記動摩擦係数はこの測定方法によって得られた値である。測定機としては、新東科学株式会社製 表面性状測定機「HEIDON-14D」を用意し、板金時計皿を使用して動摩擦係数を測定した。すなわち、特開平9-123761号公報の
図3に記載されているように、板金時計皿を試料の上面に対して荷重1kgfで押し付け、速度1000mm/minで板金時計皿と試料とを相対移動させることによって動摩擦係数を測定する。
【0077】
上側被膜40aの厚さは、0.1mm以上1.0mm以下に設定されている。上側被膜40aの厚さを0.1mm以上確保することで、モール30に対する摺動抵抗が十分に低減される。また、上側被膜40aの厚さを1.0mm以下にすることで、上側被膜40aを有していることによる上側接触部40の柔軟性低下が抑制される。
【0078】
また、下側接触部41におけるモール30に接触する部分は下側被膜41aを有しており、該下側被膜41aは、モール30に対する動摩擦係数が該下側接触部41における該下側被膜41aによって覆われた部分を構成する弾性材よりも低く設定されている。この下側被膜41aは、上側被膜40aと同じ材料で構成されるとともに、同じ厚さに設定することもできる。
【0079】
(自動車ドア用グラスランの組立方法)
次に、上記のように構成された左側フロントドア用グラスラン10を組み立てる方法について説明する。グラスラン本体20は、ウインドフレーム3に取り付けられる前において、フレーム上辺部3aに沿って延びる部分(グラスラン上辺部11)が直線状に形成されている。一方、モール30は、ウインドフレーム3のフレーム上辺部3aに沿うようにあらかじめ湾曲形成されている。
【0080】
そして、モール30の上部モール側嵌合部31及び下部モール側嵌合部32に対して、その長手方向一端部から、グラスラン本体20の上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bの長手方向一端部を嵌合させた後、モール30に対してグラスラン本体20を長手方向にスライドさせてグラスラン本体20を組み付けるスライド組付工程を行う。
【0081】
このスライド組付工程では、始めに、モール30の上部モール側嵌合部31及び下部モール側嵌合部32の前端部に対して、グラスラン本体20の上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bの後端部を嵌合させる。上部モール側嵌合部31及び下部モール側嵌合部32に対して上側本体側嵌合部23a及び下側本体側嵌合部23bを嵌合した後、モール30に対してグラスラン本体20を前側へ向けてスライドさせていく。スライドさせるとき、上述したように、モール30は湾曲しているが、グラスラン本体20のグラスラン上辺部11は直線状であるため、特に、モール30の上部モール側嵌合部31に対してグラスラン本体20の上側接触部40が強く接触する。また、モール30の下部モール側嵌合部32に対してグラスラン本体20の下側接触部41が接触することもある。
【0082】
このとき、上側接触部40におけるモール30に接触する部分がモール30に対する動摩擦係数が、上側接触部40よりも低い上側被膜40aによって覆われているので、モール30の上部と、上側接触部40との間の摺動抵抗が低減する。また、下側接触部41におけるモール30に接触する部分が、モール30に対する動摩擦係数が下側接触部41よりも低い下側被膜41aによって覆われているので、モール30の下部と、下側接触部41との間の摺動抵抗も低減する。よって、作業者が手作業によってモール30に対してグラスラン本体20を容易に組み付けることが可能になるので、モール組付用の機械の導入が不要になる。モール30の前端部がグラスラン本体20のグラスラン上辺部11の前端部まで達したところでスライド動作を停止する。以上のようにしてモール30に対してグラスラン本体20を組み付けることで左側フロントドア用グラスラン10の組立作業が完了する。
【0083】
尚、モール30が上側に向けて湾曲しているので、モール30の上部が下部に比べてグラスラン本体20に強く接触することになる。従って、グラスラン本体20には、上側被膜40aを少なくとも設けておけばよく、下側被膜41aを省略してもよい。
【0084】
また、スライド組付工程において、モール30に対してグラスラン本体20をスライドさせる方法を説明したが、その逆で、グラスラン本体20に対してモール30をスライドさせる方法でもよい。
【0085】
(自動車ドア用グラスランの使用時)
左側フロントドア1に左側フロントドア用グラスラン10を取り付ける際には、ウインドフレーム3のグラスラン取付板部8に対して左側フロントドア用グラスラン10を取り付けると同時に、上板部21の下側係合突起21aと、下板部22の上側係合突起22aが、それぞれ、グラスラン取付板部分8の上面側と下面側に接触する。このようにして左側フロントドア用グラスラン10が取り付けられた状態では、上板部21、下板部22及び車室外側板部23の曲げ弾性率が2000MPa以上5000MPa以下とされているので、グラスラン取付板部8に対するグラスラン本体20の固定強度が高まる。
【0086】
その後、左側フロントドア1を閉じると、グラスラン本体20の上側シールリップ24及び内側シールリップ25が自動車の車体100に接触して車室外側に向けて撓むように弾性変形するので、ウインドフレーム3と車体100との間を上側シールリップ24及び内側シールリップ25によってシールすることができる。このとき、上側シールリップ24の厚肉基端部24aの車室外側に上側接触部40が設けられているので、上側シールリップ24の撓み変形によって上側接触部40も車室外側に若干量変位し、これにより、上側接触部40がモール30における車室外面の上部により接触する。よって、上側接触部40とモール30の間に隙間が無くなり、外観見栄えを良好にすることができる。
【0087】
(ウエザーストリップの構成)
次に、ウエザーストリップ50について説明する。
図2及び
図7に示すように、ウエザーストリップ50は、フレーム上辺部3aの段差部3eの下側を構成している横面部3gに取り付けられ、該フレーム上辺部3aに沿って車両前後方向に延びるウエザーストリップ上辺部51と、該ウエザーストリップ上辺部51の後端部から下方へ延びるウエザーストリップ後辺部52とを備えている。さらに、
図12に示すように、ウエザーストリップ50は、ウエザーストリップ上辺部51の前端部から下方へ延びるウエザーストリップ前辺部53と、ウエザーストリップ後辺部52の下端部からウエザーストリップ前辺部の下端部まで延びるウエザーストリップ下辺部54も備えている。従って、ウエザーストリップ50は、左側フロントドア1の車室内側の周縁部を囲む環状をなしている。
【0088】
また、ウエザーストリップ上辺部51とウエザーストリップ後辺部52の接続部である、ウエザーストリップ後側コーナー部55は、ドアフレーム3の後側の湾曲している部分に取付けられている。また、ウエザーストリップ上辺部51とウエザーストリップ前辺部53の接続部である、ウエザーストリップ前側コーナー部56は、ドアフレーム3の前側の湾曲している部分に取付けられている。さらに、車両によっては、ドアフレーム3の前側や後側の部分において、比較的大きい湾曲部で構成する代りに、角度をつけて互いに突合せするものも存在するが、一般的に、ヒドンタイプ車両においては、湾曲部で構成するものが多いため、ウエザーストリップ50は、環状のほぼ全周を押出成形により作成した、押出成形断面で構成し、エンドレス環状にするための、両端部接続部を、一箇所(例えば、ウェザーストリップ下辺部54)のみで設定することが多い。
【0089】
図7及び
図8に示すように、ウエザーストリップ上辺部51は、中空シール部57と、外側シールリップ58と、取付板部59とを備えている。中空シール部57、外側シールリップ58及び取付板部59は、例えば上記ドアパネルシールリップ26を構成する材料と同様な弾性材料を押出成形することによっても得ることができ、一体成形されている。またさらに、多くの場合は、ウエザーストリップ50全体を発泡材とし、水密性をより向上させている。
【0090】
取付板部59は、フレーム上辺部3aの段差部3eの横面部3gに取り付けられる部分であり、横面部3gに沿うように延びている。取付板部59は、図示しないが、例えばクリップや両面接着テープ等によって横面部3gに取り付けることができる。クリップを用いる場合には、クリップの頭部を、取付板部54を貫通させるとともに、横面部3gに予め形成してある取付穴に挿入し、取付穴の周縁部に係合させればよい。また、両面接着テープを用いる場合には、両面接着テープを取付板部59に貼り付け、接着面を横面部3gに貼り付けるようにすればよい。また、先に横面部3gに両面接着テープを貼り付けるようにして接着してもよい。
【0091】
中空シール部57は、取付板部59の上方かつ車室内側へ向けて膨出するように形成されている。中空シール部57は、左側フロントドア1が閉状態にあるときに、フレーム上辺部3aと車体100との間に配置され、車体100で圧縮されて弾性変形する。これにより、中空シール部57が車体100に密着することになり、シール性を得ることができる。
【0092】
外側シールリップ58は、中空シール部57の車室外側から上方へ突出してグラスラン10の上板部21の車室内側である、端面21やドアパネルシールリップ26の車室内側に接触する。外側シールリップ58は、上端部に近づけば近づくほど肉厚が薄く設定されている。
【0093】
ここで、ウエザーストリップ上辺部51はフレーム上辺部3aの段差部3eと横面部3gに取り付けられているので、横面部3gの形状に沿う形状、即ち、ウエザーストリップ上辺部51の前後方向中央部が前後方向に直線状に延びる一方、
図9に示すように、後端部に近づけば近づくほどウインドフレーム3の縦面部3fの長さが徐々に長くなる事に伴い、全体的に、下に位置する形状になる。また、グラスラン上辺部11は、前後方向中央部が前後方向に直線状に延び、更に後端部まで略同一高さで直線状に延びている。
【0094】
従って、ウエザーストリップ上辺部51とグラスラン上辺部11との前後方向中央部が略平行に前後方向に延びることになる一方、ウエザーストリップ上辺部51は後端部(前後方向の一端部)に近づけば近づくほどグラスラン上辺部11から下方へ離れる(シール材同士が分かれる状態となる)ように延びることになる(
図10と
図11の関係)。
【0095】
ウエザーストリップ上辺部51がグラスラン上辺部11から下方へ離れると、
図11に示すように、ウエザーストリップ50の外側シールリップ58がグラスラン10の上板部21の端部21dやドアパネルシールリップ26から離れてしまい、外側シールリップ58とドアパネルシールリップ26との間に溝200ができ、この溝200に雨水等が浸入して車室内に漏水するおそれがある。
【0096】
(ドアパネルシールリップ26の詳細構造)
本実施形態では、上述した溝200が形成されないようにするために、
図6や
図8に示すように、ドアパネルシールリップ26に形状変化起点部26aを設けている。すなわち、ドアパネルシールリップ26には、ウエザーストリップ上辺部51がグラスラン上辺部11から下方へ離れはじめる手前の部分に、該ドアパネルシールリップ26の形状を変化させるための形状変化起点部26aが設けられている。形状変化起点部26aは、ドアパネルシールリップ26の下端部から上方に延びる切れ込み部または切り欠き部で構成することができる。切れ込み部の場合、例えば切断用の刃等によって形成することができる。切り欠き部の場合、例えば切断用の刃等によってドアパネルシールリップ26の一部を除去する方法と、型成形時に切り欠き部を成形する方法とがあり、どちらの方法を用いてもよい。この実施形態では、型成形部10Bに形状変化起点部26aが設けられているので、型成形部10Bの成形時に一工程で形状変化起点部26aを得ることができる。
【0097】
尚、図示しないが、形状変化起点部26aは、例えば薄肉部等で構成することもでき、ドアパネルシールリップ26の形状を変化させるための部分であればよい。
【0098】
図6に示すように、形状変化起点部26aを設けることにより、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも前後方向中央部寄りの部分26Aと、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも端部寄りの部分26Bとが別々の方向に変形したり、撓むことができるようになる。
図7に示すように、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも前後方向中央部寄りの部分26Aは、フレーム上辺部3aのグラスラン取付板部8の上面に接触して車室外側へ向けて屈曲している。一方、
図9に示すように、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも端部寄りの部分26Bは、下方へ延びている。
【0099】
ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも端部寄りの部分26Bは、押出成形では実現困難であるものの、型成形する事により、下端部に近づけば近づくほど肉厚を薄く設定したり、さらには、下端を極力薄く、鋭利な刃物状にしたりすることもできる。これにより、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも端部寄りの部分26Bに対して、ウエザーストリップ50全体の取付位置が次第に下がっていき、外側シールリップ58が接触しなくなる位置での両者間に発生する隙間(シール段差)を、極小化する事ができ、シール性を更に向上させる事が可能となる。
【0100】
また、
図9に示すように、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも後端部寄りの部分26Bは、フレーム上辺部3aにおける段差部3eを構成している縦面部3fに対して車室内側から接触するように配置されている。そして、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも後端部寄りの部分26Bは、段差部3eを構成している縦面部3fと、ウエザーストリップ上辺部51の外側シールリップ53とにより厚み方向に挟まれている。これにより、フレーム上辺部3aの段差部3eの縦面部3fとドアパネルシールリップ26との間、ドアパネルシールリップ26と外側シールリップ53との間をそれぞれシールすることが可能になる。
【0101】
形状変化起点部26aを設けることで、
図8に仮想線Sで示すように、ウエザーストリップ上辺部51のドアパネルシールリップ26に対する接触部は、ウエザーストリップ上辺部51の下方への湾曲形状に沿うように、かつ、前後方向に連続して延びることになる。
【0102】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、ウインドフレーム3のグラスラン取付板部8に対して車室外側からグラスラン上辺部11を取り付けることができ、また、ウインドフレーム3のグラスラン取付板部8よりも車室内側にウエザーストリップ上辺部51を取り付けることができる。
【0103】
ウエザーストリップ上辺部51とグラスラン上辺部11との前後方向中央部は略平行に車両前後方向に延びているので、ウエザーストリップ上辺部51の外側シールリップ53と、グラスラン上辺部11のドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも前後方向中央部寄りの部分26Aとが接触して止水性を確保できる。一方、ウエザーストリップ上辺部51は、端部に近づけば近づくほどグラスラン上辺部11から下方へ離れるように延びており、この形状に対応するように、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも端部寄りの部分26Bを下方へ延ばすことができる。よって、ドアパネルシールリップ26における形状変化起点部26aよりも端部寄りの部分26Bと、ウエザーストリップ上辺部51の外側シールリップ53とが接触して止水性を確保できる。
【0104】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0105】
本発明は、詳細な説明は省略するが、フロントドアの前側コーナー部においても、同様に適用することができる。すなわち、グラスラン10とウエザーストリップ後コーナー部同士が分かれた状態になる取付構造は、グラスラン10とウエザーストリップ前コーナー部56との間でも、同様な状態の取付構造となるからである。
【0106】
また、本発明は、図示しないが、例えばリヤドアにも適用することもできる。すなわち、リヤドアの場合、ウインドフレームの上辺部においては、グラスランが車両前側へ直線的に延びる一方、ウエザーストリップはウインドフレームの前端へ行くほど下に位置するように湾曲しながら延びるのが一般的であるので、上述したような溝ができてしまい、雨水等が車室内に漏水するおそれがある。本発明を適用することで、グラスラン上辺部のドアパネルシールリップに形状変化起点部を設けることができ、これにより、ウエザーストリップ上辺部の外側シールリップと、グラスラン上辺部のドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも前後方向中央部寄りの部分とが接触して止水性を確保できるとともに、ドアパネルシールリップにおける形状変化起点部よりも端部寄りの部分と、ウエザーストリップ上辺部の外側シールリップとが接触して止水性を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明したように、本発明に係る自動車ドア用シール構造は、自動車のドアにおいて、シール材同士が分かれる状態が発生する全ての部位に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 フロントドア
3 ウインドフレーム
3a フレーム上辺部
3e 段差部
3f 縦面部
4 ウインドガラス
7 ウインド開口
10 グラスラン
10A 押出成形部
10B 型成形部
11 グラスラン上辺部
14 挿入溝
20 グラスラン本体
26 ドアパネルシールリップ
26a 形状変化起点部
26A ドアパネルシールリップにおける前後方向中央部寄りの部分
26B ドアパネルシールリップにおける前後方向の後端部寄りの部分
50 ウエザーストリップ
51 ウエザーストリップ上辺部
54 外側シールリップ