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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220204BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018004144
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019124517
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕
(72)【発明者】
【氏名】片山 智三
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-218784(JP,A)
【文献】特開平06-347426(JP,A)
【文献】特開2007-101391(JP,A)
【文献】特開2005-030966(JP,A)
【文献】特許第4670572(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230468(US,A1)
【文献】特開2012-103232(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114117(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102189331(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する検出器と、
前記放射線源と前記検出器との間に介在し、被検体を載置可能なステージと、
前記ステージを移動させるステージ移動機構と、
前記ステージ上の前記被検体の全体像を撮像する全体像撮像部と、
少なくとも前記ステージ移動機構を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記被検体上に複数の分割領域と各分割領域に対する放射線照射順序を設定する設定部と、
前記全体像撮像部により撮像された前記被検体の全体像と、前記放射線照射順序を示す順序情報を表示する表示部と、
を有し、
前記表示部は、前記分割領域を前記全体像上に表示するとともに、前記全体像上に表示された前記分割領域に対して当該分割領域の撮影条件を視覚的に結び付けて表示し、
前記設定部は、前記ステージ上に載置される複数の検査箇所を設定し、各検査箇所の撮影順序を示す検査箇所間の放射線照射順序を更に設定することで、個々の前記検査箇所内での前記分割領域間の前記放射線照射順序と前記検査箇所間の放射線照射順序とを別個に設定し、
前記表示部は、前記検査箇所に対する前記検査箇所間の放射線照射順序を示す順序情報を更に表示すること、
を特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記被検体の全体像を拡大表示すること、
を特徴とする請求項1記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記全体像撮像部は、赤外線、可視光線又は両方を検出可能な光学カメラであること、
を特徴とする請求項1又は2記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記順序情報は、順番を示す数字、放射線照射領域の遷移を示す矢印の画像、又は両方であること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記全体像撮像部の光軸は、前記検出器が拡がる面と直交すること、
を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の放射線検査装置。
【請求項6】
前記検出器を前記ステージ周りで回動させる検出器移動機構と、
前記全体像撮像部を前記ステージ周りで回動させる撮像部移動機構と、
を備え、
前記撮像部移動機構は、前記検出器の回動に合わせて、前記光軸を前記検出器が拡がる面と直交するように、前記全体像撮像部を回動させること、
を特徴とする請求項記載の放射線検査装置。
【請求項7】
前記検出器移動機構及び前記撮像部移動機構は、
前記放射線源と前記検出器と前記全体像撮像部が設置されて、回動するアームを備えること、
を特徴とする請求項記載の放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体を透過した放射線を検出して被検体の画像を形成する放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を代表とする放射線を被検体に照射し、被検体を透過することで減弱した放射線の二次元分布を検出して画像化することで、被検体の非破壊検査を行う放射線検査装置が知られている。例えば、この放射線検査装置により被検体内部に存在するボイドを発見することができる。
【0003】
近年、被検体内部の微細構造を高精度に検査すべく、放射線検査装置の高分解能化が進展しており、より微細な構造を検査するため、一度に撮影可能な撮像視野は被検体全体に対して小さくなっている。そのため、被検体の全体領域を複数区画に分割し、各分割領域に撮像視野を移しながら、被検体の全体を検査する手法が採られている。そのため、検査担当者は、被検体の何れの領域が撮影されているのか速やかに把握することが困難であった。
【0004】
そこで、放射線検査装置に光学カメラを備え、被検体全体を撮影して画面に表示し、画面上に表示されている被検体の全体像に対して撮像視野を示す枠や撮影方向を示すベクトルを描画する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。検査担当者は枠及びベクトルを参照することで、被検体全体に対する現在の撮影領域及び向きを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4670572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被検体上の各分割領域の撮影順番を把握したい場合がある。例えば管電流は時間経過に応じて変動する。従って各分割領域の透過像には濃淡の差が生じることがある。検査担当者は、撮影順番を把握しておけば、濃淡の差が生じた原因探求の一助となる。しかしながら、放射線検査装置が現在撮影中の撮像視野と向きを提示するのみである場合、検査担当者は、撮像視野の遷移を記憶しておかねばならず、検査に対する集中力が削がれてしまう。また、過去に設定した撮影計画を読み出して使用するとき、分割領域の位置及び範囲を示す設定座標データから撮影順番を推測しなくてはならず、撮影計画の読み出し間違いがあった場合に、検査担当者がその間違いに気づくことが困難であった。
【0007】
本実施形態は、上述の課題を解決すべく、被検体上の各分割領域の撮影順番を把握できる放射線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本実施形態の放射線検査装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する検出器と、前記放射線源と前記検出器との間に介在し、被検体を載置可能なステージと、前記ステージを移動させるステージ移動機構と、前記ステージ上の前記被検体の全体像を撮像する全体像撮像部と、少なくとも前記ステージ移動機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記被検体上に複数の分割領域と各分割領域に対する放射線照射順序を設定する設定部と、前記全体像撮像部により撮像された前記被検体の全体像と、前記放射線照射順序を示す順序情報を表示する表示部と、を有すること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】放射線検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】制御部の動作を示すフローチャートである。
図3】制御部の構成を示すブロック図である。
図4】撮影計画設定画面を示す模式図である。
図5】撮影計画設定画面の操作過程の一例を示す模式図である。
図6】撮影計画設定画面の他の操作過程の例を示す模式図である。
図7】撮影計画設定画面の更に他の操作過程の例を示す模式図である。
図8】撮影計画設定画面の更に他の操作過程の例を示す模式図である。
図9】放射線検査装置の構成の他の例を示すブロック図である。
図10】放射線検査装置の構成の更に他の例を示すブロック図である。
図11】放射線検査装置の構成の更に他の例を示すブロック図である。
図12】撮影計画設定画面の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る放射線検査装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、放射線検査装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、放射線検査装置1は、被検体100に放射線を照射し、被検体100を透過した放射線を検出し、検出結果によって被検体内の画像を形成する。被検体100内の画像は、透視画像、断層画像又は3D画像である。即ち、放射線検査装置1には、透視装置、及び各所各方向から得た放射線の強度分布から被検体100の断層像を再構成するCT装置が含まれる。この放射線検査装置1は、放射線源2、検出器3、ステージ4、光学カメラ5、制御部6、ステージコントローラ6h及び放射線コントローラ6gを備えている。
【0011】
放射線源2は、施設の天井側に位置し、被検体100に向けて放射線ビームを照射する。放射線は例えばX線である。放射線ビームは、焦点を頂点として円錐形状に拡大する放射線の束である。この放射線源2は例えばX線管である。X線管は、フィラメントとタングステン等のターゲットとを0°以上のターゲット角度を設けて対向させている。フィラメントは撮影計画に従った管電流及び管電圧が印加されて、電子線を出射する。ターゲットは、加速された電子線の衝突よりX線を発生させる。
【0012】
検出器3は、施設の床側に位置し、放射線源2の焦点と対向する。この検出器3は、放射線を検出する二次元状に拡がる面を有し、放射線の透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出する。この二次元分布を透過像と呼ぶ。検出器3は、例えばイメージインテンシファイア(I.I.)とカメラにより構成される。I.I.は、放射線に励起されると発光するヨウ化セシウム等により成るシンチレータ面を2次元状に拡げ、入射した放射線の二次元分布を蛍光像に変換しつつ、蛍光像の光度を増倍させる。カメラは、CCDやCMOS等の撮像素子を並設し、蛍光像を撮像する。この検出器3はフラットパネルディテクタ(FPD)であってもよい。FPDは、シンチレータ面に沿ってフォトダイオードとTFTスイッチを有する。フォトダイオードは、蛍光像を電荷に変換して蓄積し、TFTスイッチは、ON信号を与えられると、フォトダイオードに蓄積されていた電荷を出力させる。
【0013】
ステージ4は、被検体100の載置台である。ステージ4は、放射線源2と検出器3との間に介在し、載置面を放射線源2に向け、放射線ビームの光軸2aと直交して拡がる。このステージ4は、放射線源2及び検出器3に対して位置可変である。即ち、ステージ4は移動機構41を備える。移動機構41はステージ4を並進及び昇降させる。並進方向はX軸方向及びY軸方向である。X軸方向は、ステージ4が拡がる平面に沿う一方向である。Y軸方向は、ステージ4が拡がる平面に沿い、X軸方向と直交する方向である。昇降方向はZ軸方向である。Z軸方向は、ステージ4と直交し、換言すると放射線源2に接離する方向である。尚、放射線源2及び検出器3は、X軸及びY軸方向の位置関係については固定されている。一方、放射線源2及び検出器3は、光軸2aに沿ったZ軸方向については接近又は離反可能となっている。
【0014】
この移動機構41がステージ4を並進移動させると、撮像視野(FOV)の位置が変化する。また移動機構41によってステージ4を昇降移動させると、撮像倍率が変化する。撮像視野は、一度の放射線照射で撮像可能な範囲である。撮像倍率は、焦点から被検体100までの撮影距離(FOD)と、焦点から検出器3までの検出距離(FDD)の比率である。被検体100の大きさ又は撮像倍率によっては、被検体100の全体は一つの撮像視野内に収まらない。そこで、被検体100を複数の撮像視野で分割し、撮像視野を各分割領域に合わせていく。移動機構41は、放射線ビームの光軸と各分割領域を位置合わせするように、ステージ4を順次並進移動させていく。
【0015】
光学カメラ5は、被検体100の全体像を撮像する。この光学カメラ5は、赤外線又は可視光線に応答するCCDやCMOS等の撮像素子を並設する。光学カメラ5は、放射線源2側に設置され、ステージ4の載置面に視野を向ける。そして、光学カメラ5は、被検体100の全体が視野に収まるようにステージ4と距離を取って設置される。光学カメラ5の光軸5aは、放射線ビームの光軸2aと平行である。換言すると、光学カメラ5の光軸5aは、検出器3が拡がる面と直交する。
【0016】
制御部6は、所謂コンピュータである。即ち、制御部6は、プログラムに従って命令を実行するCPU6a、プログラムが展開され、また命令の実行結果や処理対象のデータを一時記憶するメモリ6b、プログラムやデータを記憶するストレージ6cを備えている。この制御部6は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示部6d、マウス等の操作部6e、及び放射線検査装置1の各部と有線接続されたインターフェース6fを備えている。
【0017】
図2は、この制御部6の概略動作を示すフローチャートである。図2に示すように、被検体100がステージ4に載置された後(ステップS01)、制御部6は光学カメラ5に被検体100の全体像を撮像させる(ステップS02)。そして、制御部6は、被検体100の全体像を表示しつつ、被検体100の撮影計画を設定する(ステップS03)。撮影計画としては、X線光子の平均エネルギーに係る管電圧やX線量に係る管電流等の放射線に関する項目、並びに撮像倍率、撮影全領域、分割領域及び撮像順等の被検体100の移動に関する項目が挙げられる。撮影計画は、自動又は操作部6eを用いた操作に応じて設定される。
【0018】
撮影計画が設定されると、制御部6は、撮影計画に従って放射線検査装置1を制御し、放射線照射によって被検体100を撮影させる(ステップS04)。典型的には、制御部6は、ステージコントローラ6h及び放射線コントローラ6gと接続されており、ステージコントローラ6h及び放射線コントローラ6gに撮影計画を反映した制御信号を出力する。ステージコントローラ6h及び放射線コントローラ6gはドライバ回路を含み構成され、制御部6の制御信号に従って電力供給をオンオフし、パルス信号を生成して出力し、またはゲート信号を送出する等して、放射線源2及びステージ4の移動機構41を駆動させる。
【0019】
これにより、被検体100が載置されたステージ4に向けて放射線源2から放射線ビームが照射され、被検体100を透過した放射線が検出器3により検出され、電気信号に変換された透過像が制御部6に入力される。制御部6は、透過像をグレースケールやRGB等により表されるビットマップ等の画像データに変換し(ステップS05)、画像データを記憶しつつ(ステップS06)、検査担当者が視覚的に把握できるように表示する(ステップS07)。
【0020】
即ち、図3に示すように、制御部6は、ステージコントローラ6h及び放射線コントローラ6gと協働して、設定部61、装置制御部62、画像生成部63、データ記憶部64及び画像表示部65を備える。尚、制御部6は、ソフトウェアに依らずハードウェアロジックによって、これら各部を備えていてもよい。
【0021】
設定部61は、CPU6a、表示部6d、操作部6e及び光学カメラ5のインターフェース6fを含み構成される。この設定部61は、ステップS02及びステップS03の全体像撮像処理及び撮影計画設定処理を担う。この設定部61は、操作部6eを用いて撮影計画の設定指示が入力されると、光学カメラ5に対して撮影を指示する制御信号を出力する。そして、光学カメラ5から入力された画像データを受け取り、表示部6dに表示する。
【0022】
尚、光学カメラ5の設置の都合上、光学カメラ5の光軸5aを被検体100と一致させることができない場合、設定部61は、ステージ4の移動機構41に制御信号を出力してステージ4を並進移動させ、被検体100と光軸5aを一致させておいてから、光学カメラ5に撮像を指示する制御信号を出力する。一方、光学カメラ5の光軸を被検体100に向けて屈折させるプリズムが配置されることで、ステージ4の並進移動を伴わずとも、被検体100と光軸5aを一致させることができる。
【0023】
図4は、設定部61が表示部6dに表示させる画面を示す模式図である。設定部61は、撮影計画の設定に際し、表示部6dに撮影計画設定画面611を表示する。撮影計画設定画面611には、光学カメラ5が撮像した被検体100の全体が写る全体画像51を配置する。放射線により被検体100を分割して撮影する場合、設定部61は、被検体100の全体像51上に各分割領域612を明瞭化する枠画像613を描画する。また、設定部61は、各分割領域612の撮像順序を示す順序情報614を描画する。順序情報614は、例えば数字による撮像順番、撮像される分割領域612の遷移を示す矢印、又はこれらの両方である。
【0024】
典型的には、設定部61は、光学カメラ5から得られた画像データをメモリ6bに割り当てられたビデオメモリに書き込むことで、表示部6dに被検体100の全体が写る全体画像51を表示させればよい。設定部61が分割領域612を自動設定する場合、設定部61は、画像データの走査によりステージ4以外の画素値を有する画像領域を検出する。検出結果は被検体100の全体像51の位置及び範囲を示す。被検体100の全体像51が一度に撮影可能な範囲である撮像視野からはみ出す大きさの場合、被検体100の全体像51を包含するように、撮像視野を行列に並べ、各撮像視野を各分割領域612として枠画像613で縁取る。撮像視野の縦横は撮像倍率をパラメータとして計算する。
【0025】
そして、この設定部61は、予め設定された撮影順序の規則に従って、分割領域612の撮像順序を決定し、順序情報614を描画させる。撮影順序の規則は、例えば縦横の何れか一方への移動を優先し、且つ移動距離が最短となることである。例えば、矩形の分割領域612が2行2列に並ぶ場合、画面の左上から時計回りに撮影順序が決定される。設定部61は、画面上で分割領域612と撮影順序を決定すると、撮影順序が隣合う分割領域612の中心間距離を画面座標系からステージ4の実空間座標系に変換して、撮影計画に含める。
【0026】
装置制御部62は、CPU6a、インターフェース6fを含み構成され、ステップS04の被検体100の撮影処理を担う。この装置制御部62は、撮影計画に従って放射線検査装置1の各部を制御し、被検体100を放射線により撮像させる。詳細には、装置制御部62は、管電流及び管電圧等の放射線照射に関する情報を含んだ制御信号を放射線コントローラ6gに出力する。ステージコントローラ6hには、撮像倍率に応じて昇降移動の制御信号を出力する。また、一区画の分割領域612の撮影が終了すると、設定部61が設定した中心間距離と移動向きを示す制御信号をステージコントローラ6hに出力し、ステージ4の移動機構41を次の区画の分割領域612に向けて並進移動させる。
【0027】
画像生成部63は、CPU6aと検出器3とのインターフェース6fを含み構成され、ステップS05の画像化処理を担う。この画像生成部63は、検出器3から入力された透過像を、グレースケール又はRGB等の透過像表現形式を有するビットマップ等の画像データに変換する。検出器3が入力する信号がアナログ形式である場合には、画像生成部63は当該信号を量子化する。対数変換等を行ってもよい。
【0028】
データ記憶部64はストレージ6cを含み構成され、ステップS06のデータ記憶処理を担い、画像生成部63が生成した画像データと撮影条件とを関連づけて記憶する。撮影条件は、撮影計画に対する実際の結果であり、撮影計画と項目は同じだが内容が異なる項目が存在する。このデータ記憶部64は、分割領域612ごとの画像データに、分割領域ごとの撮影条件を関連付ける。例えば、データ記憶部64は、実際に放射線を分割領域に照射したときの管電流や管電圧を放射線源2から受け取り、実際の管電流や管電圧を画像データに関連づけて記憶する。典型的には、データ記憶部64は画像データのヘッダに撮影条件を書き込むようにすればよい。
【0029】
画像表示部65はビデオメモリを管理するCPU6aと表示部6dを含み構成され、ステップS07の表示処理を担い、画像生成部63が生成した画像データ5dを表示部6dに表示する。典型的には、画像生成部63が生成した画像データをビデオメモリ上にレイアウトする。画像データはRAMDACのリフレッシュレートに応じて読み出されて表示部6d上に表示される。
【0030】
このような放射線検査装置1では、検査担当者は撮影計画設定画面611から分割領域612の範囲及び分割領域612の撮影順序を把握可能となる。そのため、検査担当者は、放射線照射による各分割領域612の撮像結果を閲覧する際、各分割領域612に濃淡差が生じていても、撮影順序による管電流の低下に起因する可能性を考慮できる。
【0031】
図5は、撮影計画設定画面611に対する操作を示す模式図である。図5の(a)は操作前であり、図5の(b)は操作後である。図5の(a)に示すように、設定部61は、撮影計画設定画面611上にカーソル615を表示してもよい。操作部6eを用いた操作に応じて、設定部61はカーソル615の表示位置を変更する。設定部61は、カーソル615が枠画像613の隅に位置した状態でのドラッグ操作をイベント発生として捉え、このイベント発生に対して、設定部61は、図5の(b)に示すように、全体画像51を拡大表示する。拡大表示によって、検査担当者は、特に関心のある領域が属する分割領域612の撮影順序を把握できる。
【0032】
図6は、撮影順序の変更過程を示す撮影計画設定画面611の模式図である。図6の(a)は1番目の操作過程であり、図6の(b)は2番目の操作過程であり、図6の(c)は最後の操作過程である。図6の(a)に示すように、設定部61は、カーソル615が順序情報614上に位置し、図6の(b)に示すように、順序情報614の内容が変更されると、撮影計画に含める撮影順序を変更する。また、図6の(c)に示すように、設定部61は、変更された順序情報614と、この順序情報614と重複する他の分割領域612の順序情報614とを入れ替える。
【0033】
例えば、数字の順序情報614上にカーソル615が位置した状態でのダブルクリック等の選択操作をイベント発生として捉える。設定部61は、このイベント発生に続く数字キーを用いた数字入力に応じて、入力された数字に順序情報614を書き換える。また、書き換えられた順序情報614と、書き換えられた順序情報614と重複した他の順序情報614を入れ替える。
【0034】
また、図7の(a)に示すように、矢印の順序情報614上にカーソル615が位置した状態で、図7の(b)に示すように、ドラッグ操作等の順序変更操作がなされると、設定部61は、図7の(c)に示すように、矢印の向き先を変更する。
【0035】
そして、設定部61は、順序情報614の変更に応じて撮影計画を変更する。この順序変更の処理によって、検査担当者は、特に関心の高い領域を含む分割領域612の撮影順序を早めることができ、特に関心の高い領域に設定した管電流に近い実際値で放射線照射でき、関心の高い領域を相対的に高品質で撮像できる。
【0036】
図8は、撮影計画設定画面611に対する他の操作を示す模式図である。設定部61は、分割領域612上にカーソル615が載せられるイベント発生に応じて、分割領域612に設定されている撮影計画をテキスト617で表示する。例えば、管電流、管電圧及び照射時間を表示させる。この撮影計画のテキスト617が操作部6eのキー入力等によって変更されると、設定部61は撮影計画に変更内容を反映させる。検査担当者は、撮影順序を把握しながら、管電流等の他の撮影計画を変更することができるので、例えば管電流の変化を予測して撮影順序の遅い分割領域612に設定する管電流を予め上げておく等の処置が可能となり、各分割領域612の品質を向上させることができる。
【0037】
以上のように、この放射線検査装置1は、放射線源2、検出器3、被検体100を載置可能なステージ4、ステージ4を移動させる移動機構41、及び少なくとも移動機構41を制御する制御部6を備えている。そして、この放射線検査装置1は、ステージ4上の被検体100の全体画像51を撮像する光学カメラ5を備えるようにした。また、制御部6は、被検体100上に複数の分割領域612と各分割領域612に対する放射線照射順序を設定する設定部61と、光学カメラ5により撮像された被検体100の全体画像51と、放射線照射順序を示す順序情報614を表示する表示部6dを備えるようにした。
【0038】
これにより、検査担当者は、放射線検査装置1が分割領域612と放射線照射順序を自動設定した際、その放射線照射順序を把握することができる。従って、検査担当者は、放射線照射による各分割領域612の撮像結果を閲覧する際、各分割領域612に濃淡差が生じていても、撮影順序による管電流の低下に起因する可能性を考慮できる。
【0039】
ここで光学カメラ5は、撮影計画設定画面611に表示する被検体100の全体画像51を撮像する全体像撮像部の一例である。この全体画像51が撮像できれば、光学カメラ5に限られない。放射線源2からステージ4を離間させることで放射線ビームを被検体100全体に照射できる場合又は分割して全体を撮影できる場合には、放射線源2及び検出器3を全体像撮像部として用いてもよい。放射線源2及び検出器3を全体像撮像部とする場合、全体画像51は被検体100全体の透過像となる。
【0040】
また、図9に示すように、放射線源2を施設の床側に配置し、検出器3を施設の天井側に設置するようにしてもよい。この放射線検査装置1の態様であっても、被検体100の全体画像51を撮像する光学カメラ5は、施設の天井側に配置され、ステージ4の載置面を視野に収める。
【0041】
また、図10に示すように、放射線検査装置1は、検出器3をステージ4の回りで回動させる移動機構(不図示)を備えるようにしてもよい。この場合、光学カメラ5にもステージ4の回りで回動させる移動機構(不図示)を備えるようにする。そして、検出器3の傾きに対応して、光学カメラ5の光軸を検出器3の拡がりと直交するように、光学カメラ5の向きも変更する。これにより、光学カメラ5は、検出器3より得られる透過像と同じ向きの全体画像51を撮像でき、精度の高い撮影計画が設定できる。
【0042】
一方、検出器3の回動に代えて放射線源2をステージ4の回りで回動させるようにしてもよい。この場合であっても、光学カメラ5の光軸2aは検出器3の拡がりと直交させることが望ましい。但し、検査担当者に順序情報614を報知する限りにおいては、光学カメラ5が被検体100の全体を視野に収めることができれば足り、光学カメラ5の光軸を検出器3の拡がりと直交させる必要はない。このとき、放射線源2と検出器3も全体像撮像部として用い、分割領域612を設定するための透過像を撮像させればよい。
【0043】
また、図11に示すように、放射線源2と検出器3と光学カメラ5をCアーム7の両端部に分けて設置し、Cアーム7の回動によって放射線源2と検出器3と光学カメラ5をステージ4の回りで回動させてもよい。尚、このCアーム7によって、光軸2aと直交するX軸及びY軸方向については、放射線源2と検出器3と光学カメラ5の相対的な位置関係が固定される一方、光軸2aに沿ったZ軸方向については接近又は離反するように移動可能としてもよい。
【0044】
更に、この放射線検査装置1において表示部6dは、操作部6eを用いた操作に応答して、被検体100の全体画像51を拡大表示するようにした。これにより、検査担当者は、特に関心のある領域が属する分割領域612の撮影順序を把握できる。尚、設定部61は、検出した被検体100の全体が撮影計画設定画面611に大きく拡がるように自動で拡大表示するようにしてもよい。
【0045】
図12は、検査箇所100aが複数存在し、分散している状態での撮影計画設定画面611を示す模式図である。検査内容によっては複数の検査箇所100aを撮影したい場合がある。検査箇所100aは、同一被検体100に属するが位置が離間した複数の領域、又はステージ4上に離間して載置された複数の被検体100である。この場合、設定部61は、各検査箇所100aの撮影順序も自動設定するようにしてもよい。設定部61は、各検査箇所100aを設定し、分割領域612を各々の検査箇所100aにおいて決定する。
【0046】
撮影計画設定画面611上では、各検査箇所100aの各々に分割領域612を示す枠画像613を描画する。そして、各分割領域612の順序情報614に加えて、各検査箇所100aの撮影順序を示す順序情報616も描画する。分散している検査箇所100aの撮影順序を示す順序情報616も例えば順番を表す数字、矢印、又はこれらの両方である。
【0047】
設定部61は、ステージ4を示す画素値以外で占められる領域を複数箇所に検出すると、それら各検出箇所を検査箇所100aとし、予め設定された撮影順序に規則に従って、各被検体100の撮影順序を決定すればよい。撮影順序の規則は、例えば縦横の何れか一方への移動を優先し、且つ移動距離が最短となることである。
【0048】
また、この放射線検査装置1では、撮影計画設定画面611というプレビュー時点で各分割領域612の撮影順序を表示し、分割領域612の他の撮影計画を表示するようにしたが、放射線による各分割領域612の画像が得られた後であっても、分割領域612の撮影順序を表示し、また分割領域612の他の撮影条件を表示するようにしてもよい。
【0049】
即ち、画像表示部65は、撮影計画設定画面611と同じ画面を表示部6eに表示させる。但し、検出器3から得られてデータ記憶部64に記憶された各分割領域612の透過像を組み合わせて、被検体100の全体を再現する。そして、画像表示部65は、各分割領域612を枠画像613で囲い、順序情報614を付し、カーソル615が分割領域612内に入ると、分割領域612の画像データに付帯した撮影条件のテキスト617を表示する。
【0050】
これにより、検査担当者は、撮影順序と各種撮影条件を同時に把握でき、撮像結果に濃淡の差が生じてしまっている場合には、撮影順序による管電流の低下の可能性を事後的に判断することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 放射線検査装置
2 放射線源
2a 光軸
3 検出器
4 ステージ
41 移動機構
5 光学カメラ
5a 光軸
51 全体画像
6 制御部
6a CPU
6b メモリ
6c ストレージ
6d 表示部
6e 操作部
6f インターフェース
6g 放射線コントローラ
6h ステージコントローラ
61 設定部
611 撮影計画設定画面
612 分割領域
613 枠画像
614 順序情報
615 カーソル
616 順序情報
617 テキスト
62 装置制御部
63 画像生成部
64 データ記憶部
65 画像表示部
7 Cアーム
100 被検体
100a 検査箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12