(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】熱収縮性積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220204BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018025906
(22)【出願日】2018-02-16
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪内 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】莨谷 新吾
(72)【発明者】
【氏名】石田 聖二郎
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 翔太
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035466(JP,A)
【文献】特開平01-270535(JP,A)
【文献】特開2005-170011(JP,A)
【文献】特開2016-007792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯層の両面に表面層が積層されてなり、
前記芯層が密度0.915~0.930g/cm
3の直鎖状低密度ポリエチレン(a-1)60~95重量%と、密度0.935~0.965g/cm
3の直鎖状高密度ポリエチレン(a-2)及び/又は高密度ポリエチレン(a-3)5~40重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物(A)からなり、
前記表面層がポリプロピレン系樹脂(b)を主成分として含むポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなり、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物(B)は示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が106℃未満であることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂組成物(A)に含まれる直鎖状低密度ポリエチレン(a-1)と、直鎖状高密度ポリエチレン(a-2)及び/又は高密度ポリエチレン(a-3)との密度差が0.010g/cm
3以上であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が106℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂(b)は、エチレン含有量が3~7%のプロピレンーエチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
熱収縮性積層フィルム全体に含まれるポリエチレン系樹脂の割合が50重量%超であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項6】
前記芯層の厚さをta、前記表面層の厚さをそれぞれtb
1、tb
2としたとき、tb
1+tb
2≦ta≦2(tb
1+tb
2)であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項7】
半折自動包装機に用いることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装に用いられる積層構成の熱収縮性フィルム、特に、低温収縮性、耐熱性、機械的強度、透明性に優れるとともに、溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生することを抑制することができる熱収縮性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被包装物を熱収縮性フィルムで被覆し、接合部を溶断シールさせた後、加熱収縮オーブンを通過させる、熱風を吹き付けるなどの方法により、熱収縮性フィルムを熱収縮させ、被包装物を包装する熱収縮性フィルム包装が行われている。この熱収縮性フィルム包装は経済性、作業性、高速性に優れており、包装分野において盛んに使用されている。熱収縮性フィルム包装に用いる熱収縮性フィルムとして、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等からなる種々の熱収縮性フィルムが知られているが、低価格、使用後の廃棄処理の容易さなどの観点から、特に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系熱収縮性フィルムが好んで用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリエチレン系熱収縮性フィルムは、比較的低温で収縮できること、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いた熱収縮性フィルムの場合には、溶断シール部の耐衝撃性が優れていること、透明性が優れていること等の特徴を有しているが、延伸加工が困難、耐熱性に劣る等の欠点を有している。一方、ポリプロピレン系熱収縮性フィルムは、低温収縮性、耐衝撃性、耐引裂性には乏しいが、延伸加工性や耐熱性に優れることから、それぞれの欠点を改善すべく、用途に応じて両者を積層した熱収縮性フィルムが使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、低温収縮性、耐熱性に優れた積層熱収縮性フィルムとして、両最外層が結晶性ポリプロピレン系樹脂からなり、中間層に密度が0.890~0.905g/cm3でビカット軟化点が60~80℃の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、又は該樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いたポリオレフィン系積層熱収縮性フィルムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、延伸加工性、低温収縮性、スリップ性に優れた積層熱収縮性フィルムとして、密度が0.90~0.93g/cm3のエチレン系共重合体と密度が0.87~0.91g/cm3のエチレン系共重合体とからなるポリエチレン系熱収縮性フィルム層と、プロピレンを主成分とした樹脂からなるポリプロピレン系熱収縮性フィルム層とからなるポリオレフィン系積層熱収縮性フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-214446
【文献】特開昭63-173641
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したポリオレフィン系積層熱収縮性フィルムは、低温収縮性と耐熱性に優れ、機械的強度も比較的高いという特徴を有している。しかしながら、自動包装機における溶断シール性は必ずしも満足できるものではなかった。例えば、L型半折自動包装機において、加熱収縮オーブン等を通過した後に、溶断シール部にピンホール状のシール欠陥(穴)が発生するという問題があった。このピンホール状の穴が発生すると熱収縮フィルムの熱収縮時にエア抜けが発生し、収縮不良(シワ、アバタ模様)を起こして包装仕上がりが悪化したり、穴の発生により被包装物の防塵性、ディスプレー性等が損なわれたりする問題を引き起こす。
【0008】
また、L型半折自動包装機は、ピロー型自動包装機に比べて低速であるが小型であり、溶断シール後に包装体が加熱収縮オーブンへすぐに搬送されてフィルムが収縮される為、溶断シール直後のシール強度、つまりは溶断シール部の溶融粘着力(ホットタック性)が強いことが求められる。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、低温収縮性、耐熱性、機械的強度、透明性に優れるとともに、自動包装機等で溶断シールされた場合においても溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生することを抑制することができる熱収縮性積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
先ず、本発明者らは、溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生する原因について検討したところ、この問題は溶断シール部のシール強度にバラつきがあり、部分的にシール強度が弱い箇所が存在する場合に、フィルム収縮時の応力によって発生することを見出した。つまり、自動包装機等の溶断シールは、加熱された鋭利な溶断刃(金属線、金属刃)の先端でフィルムを切断すると同時に、加熱された溶断刃の側面で切断面を溶かしてシールするものである為、溶断刃がフィルムから離れる際、厳密には溶断刃に溶融樹脂が部分的に取られる箇所とそうでない箇所が存在する。すると、溶断シール部における樹脂だまりが不均一となる為、溶断シール部にはシール強度の強い箇所と弱い箇所とが存在することとなり、このシール強度の弱い箇所がフィルム収縮時の応力によって破断し、ピンホール状のシール欠陥となる。
【0011】
そこで、本発明者らは、溶断シールの際に溶断刃に溶融樹脂が部分的にとられ、溶断シール部における樹脂だまりが不均一となることを防ぐにはフィルムの結晶化温度、結晶化速度を高め、溶断刃にとられる溶融樹脂を減らすことが溶断シール部のピンホール状のシール欠陥を抑制することに有効であるとの考察のもとに鋭意検討した結果、芯層に主成分として含まれる結晶化温度が比較的低い直鎖状低密度ポリエチレンへ結晶化温度が高い直鎖状高密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンをブレンドすることにより、芯層の結晶化温度を高く、結晶化速度を速くすることができ、延いては溶断シール部のシール強度のバラつきが小さく、シール強度に優れるフィルムとすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明によれば、
(1)芯層の両面に表面層が積層されてなり、前記芯層が密度0.915~0.930g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(a-1)60~95重量%と、密度0.935~0.965g/cm3の直鎖状高密度ポリエチレン(a-2)及び/又は高密度ポリエチレン(a-3)5~40重量%とからなるポリエチレン系樹脂組成物(A)からなり、前記表面層がポリプロピレン系樹脂(b)を主成分として含むポリプロピレン系樹脂組成物(B)からなり、前記ポリプロピレン系樹脂組成物(B)は示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が106℃未満であることを特徴とする熱収縮性積層フィルムが提供され、
(2)前記ポリエチレン系樹脂組成物(A)に含まれる直鎖状低密度ポリエチレン(a-1)と、直鎖状高密度ポリエチレン(a-2)及び/又は高密度ポリエチレン(a-3)との密度差が0.010g/cm3以上であることを特徴とする(1)記載の熱収縮性積層フィルムが提供され、
(3)前記ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が106℃以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の熱収縮性積層フィルムが提供され、
(4)前記ポリプロピレン系樹脂(b)は、エチレン含有量が3~7%のプロピレンーエチレンランダム共重合体であることを特徴とする(1)乃至(3)の何れかに記載の熱収縮性積層フィルムが提供され、
(5)熱収縮性積層フィルム全体に含まれるポリエチレン系樹脂の割合が50重量%超であることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載の熱収縮性積層フィルムが提供され、
(6)前記芯層の厚さをta、前記表面層の厚さをそれぞれtb1、tb2としたとき、tb1+tb2≦ta≦2(tb1+tb2)であることを特徴とする(1)乃至(5)の何れかに記載の熱収縮性積層フィルムが提供され、
(7)半折自動包装機に用いることを特徴とする(1)乃至(6)の何れかに記載の熱収縮性積層フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱収縮性積層フィルムは、低温収縮性、耐熱性、機械的強度、透明性に優れるとともに、自動包装機等を用いて溶断シールされた場合においても、溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生することを抑制することができる為、極めて良好な包装仕上がりを得ることができる。また、本発明の熱収縮性積層フィルムは、ホットタック性に優れる為、L型半折自動包装機等に使用する包装材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る熱収縮性積層フィルムの拡大断面図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る熱収縮性積層フィルムの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、種々の形態をとることができる。
【0016】
[熱収縮性積層フィルム(実施形態1)]
図1は、本発明の実施形態1に係る熱収縮性積層フィルムの拡大断面図である。
図1に示すように、本発明の熱収縮性積層フィルム1は、芯層2の両面に表面層3が積層された多層構成である。なお、本発明の目的を達成しうる範囲で各層の間に他の層を設けることも可能である。
【0017】
[芯層]
芯層は、ポリエチレン系樹脂組成物(A)から形成されるものであり、主として熱収縮性積層フィルムの低温収縮性、機械的強度、溶断シール性、ホットタック性等に寄与する層である。
【0018】
<ポリエチレン系樹脂組成物(A)>
ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、密度が0.915~0.930g/cm3である直鎖状低密度ポリエチレン(a1)を60~95重量%と、密度が0.935~0.965g/cm3である直鎖状高密度ポリエチレン(a2)及び/又は高密度ポリエチレン(a3)を5~40重量%とからなる。本発明においては、結晶化温度が比較的低く、低温収縮性に優れる直鎖状低密度ポリエチレン(a1)と、結晶化温度が高い直鎖状高密度ポリエチレン(a2)及び/又は高密度ポリエチレン(a3)とをブレンドすることにより、芯層の結晶化温度を高く、結晶化速度を速くすることができ、延いては溶断シール部のシール強度のバラつきが小さく、シール強度に優れるフィルムとすることができるものである。
【0019】
<直鎖状低密度ポリエチレン(a1)>
ポリエチレン系樹脂組成物(A)に含まれる直鎖状低密度ポリエチレン(a1)は、エチレンに基づく単量体単位とαオレフィンに基づく単量体単位とが共重合された重合体であり、エチレンに基づく単量体単位の含有量が直鎖状低密度ポリエチレン(a1)の全重量(100重量%)に対して50重量%以上の重合体である。直鎖状低密度ポリエチレン(a1)におけるα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどを例示することができるが、1-ヘキセンや1-オクテンが製膜性安定性の観点から望ましい。
【0020】
直鎖状低密度ポリエチレン(a1)は、密度が0.915~0.930g/cm3である。密度は0.915~0.925g/cm3であることが好ましく、0.915~0.923g/cm3であることがより好ましい。密度が上記範囲の直鎖状低密度ポリエチレン(a1)は、結晶化温度が比較的低く、低温収縮性、機械的強度(引張破断強度、引張弾性率、伸び、引裂荷重、溶断シール部の耐衝撃性)に優れる。密度が上記範囲より小さいと、機械的強度が低くなるため好ましくなく、密度が上記範囲より大きいと、低温収縮性が悪くなる恐れがある。なお、本発明における密度はJIS-K7112に準拠して測定された値をいう。
【0021】
直鎖状低密度ポリエチレン(a1)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が90~110℃であることが好ましい。結晶化温度は92~107℃であることがより好ましく、95~105℃であることがさらに好ましい。
【0022】
示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度の測定は、基本的にはJIS-K7121に準拠して行うが、本発明においては以下のように結晶化温度を求めることとする。まず試料約10mgをアルミパンに封入し、窒素気流下にて10℃/minの昇温速度で230℃まで昇温し、1分間保持の後、10℃/minの降温速度で0℃まで降温して結晶化させた時の最も高温側の結晶化ピークの頂点の温度とする。
【0023】
直鎖状低密度ポリエチレン(a1)のMFR(メルトフローレート:溶融流量)は、特に制限するものではないが、製膜加工、延伸加工の安定性の観点から、0.1~10g/10分であることが好ましい。MFRは0.3~8g/10分であることがより好ましく、0.5~5g/10分であることが特に好ましい。MFRが上記範囲より小さいと、押出時のモーター負荷が大きくなる等の問題点があり、MFRが上記範囲より大きいと、延伸安定性が低下する恐れがある。なお、本発明におけるMFRはJIS-K7210に準拠して測定された値をいう。
【0024】
<直鎖状高密度ポリエチレン(a2)>
ポリエチレン系樹脂組成物(A)に含まれる直鎖状高密度ポリエチレン(a2)は、エチレンに基づく単量体単位とαオレフィンに基づく単量体単位とが共重合された重合体であり、エチレンに基づく単量体単位の含有量が直鎖状高密度ポリエチレン(a2)の全重量(100重量%)に対して50重量%以上の重合体である。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどを例示することができるが、1-ヘキセンや1-オクテンが製膜性安定性の観点から望ましい。
【0025】
直鎖状高密度ポリエチレン(a2)は、密度が0.935~0.965g/cm3である。密度は0.935~0.955g/cm3であることが好ましく、0.935~0.945g/cm3であることがより好ましい。密度が上記範囲の直鎖状高密度ポリエチレン(a2)は、結晶化温度が高く、結晶化速度が速い為、ホットタック性に優れる。密度が上記範囲より小さいと、得られたフィルムが低温収縮性に優れるが、芯層の結晶化温度が低く、シール強度のバラつきが大きくなる恐れがあり、密度が上記範囲より大きいと、低温収縮性が小さくなる恐れがある。
【0026】
直鎖状高密度ポリエチレン(a2)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が108℃以上であることが好ましい。結晶化温度は110℃以上であることがより好ましく、112℃以上であることがさらに好ましい。
【0027】
直鎖状高密度ポリエチレン(a2)のMFRは、特に制限するものではないが、製膜加工、延伸加工の安定性の観点から、MFRが0.1~10g/10分であることが好ましい。MFRは0.3~8g/10分であることがより好ましく、0.5~5g/10分であることが特に好ましい。MFRが上記範囲より小さいと、押出時のモーター負荷が大きくなる等の問題点があり、MFRが上記範囲より大きいと、延伸安定性が低下する恐れがある。
【0028】
<高密度ポリエチレン(a3)>
高密度ポリエチレン(a3)は、単量体単位のエチレンを重合した重合体であり、分子鎖の枝分かれが少なく直鎖状に結合した重合体である。
【0029】
高密度ポリエチレン(a3)は、密度が0.935~0.965g/cm3である。密度は0.945~0.965g/cm3であることが好ましく、0.955~0.965g/cm3であることがより好ましい。密度が上記範囲の高密度ポリエチレン(a3)は、結晶化温度が高く、結晶化速度が速い為、ホットタック性に優れる。密度が上記範囲より小さいと、芯層の結晶化温度が低く、ホットタック性が悪くなる恐れがあり、密度が上記範囲より大きいと、低温収縮性が小さくなる恐れがある。
【0030】
高密度ポリエチレン(a3)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が110℃以上であることが好ましい。結晶化温度は112℃以上であることがより好ましく、115℃以上であることがさらに好ましい。
【0031】
高密度ポリエチレン(a3)のMFRは、特に制限するものではないが、製膜加工、延伸加工の安定性の観点から、MFRが0.1~10g/10分であることが好ましい。MFRは0.3~8g/10分であることがより好ましく、0.5~5g/10分であることが特に好ましい。MFRが上記範囲より小さいと、押出時のモーター負荷が大きくなる等の問題点があり、MFRが上記範囲より大きいと、延伸安定性が低下する恐れがある。
【0032】
ポリエチレン系樹脂組成物(A)に含まれる直鎖状低密度ポリエチレン(a1)と直鎖状高密度ポリエチレン(a2)及び/又は高密度ポリエチレン(a3)との密度差が0.010g/cm3以上であることが好ましい。密度差は0.015g/cm3以上であることがより好ましく、0.020g/cm3以上であることがさらに好ましく、0.035g/cm3以上であることが特に好ましい。密度差が上記範囲よりも小さいと、ポリエチレン系樹脂組成物(A)の結晶化温度が低く、結晶化速度が遅い為、シール強度のバラつきが大きくなり、シール強度が低下する恐れがある。
【0033】
ポリエチレン系樹脂組成物(A)における直鎖状低密度ポリエチレン(a1)と直鎖状高密度ポリエチレン(a2)及び/又は高密度ポリエチレン(a3)との配合割合は、60~95重量%:40~5重量%である。配合割合は65~90重量%:35~10重量%が好ましく、70~85重量%:30~15重量%がより好ましく、70~83重量%:30~17重量%が特に好ましい。直鎖状高密度ポリエチレン(a2)及び/又は高密度ポリエチレン(a3)の配合割合が上記範囲よりも少ないと、芯層の結晶化温度が低く、シール強度のバラつきが大きくなり、シール強度が低下する恐れがある。配合割合が上記範囲よりも多いと、延伸加工においてフィルムの切断、白化やネッキング等が起き、フィルムが安定して得られない恐れがある。
【0034】
ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が106℃以上であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂組成物(A)の結晶化温度が106℃以上であれば、シール強度のバラつきが小さく、シール強度に優れたフィルムとすることができ、自動包装機等において、溶断シール後の被包装物を加熱収縮オーブン等に通過させた後に、溶断シール部にピンホール状のシール欠陥(穴)が発生することを抑制することができる。結晶化温度は108℃以上であることがより好ましく、109℃以上であることがさらに好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。結晶化温度の上限は特に制限するものではないが、直鎖状高密度ポリエチレン(a2)はその結晶化温度が114℃程度、高密度ポリエチレン(a3)はその結晶化温度が117℃程度のものまで入手可能であり、これが本発明におけるポリエチレン系樹脂組成物(A)の結晶化温度の現時点での上限となる。なお、ポリエチレン系樹脂組成物(A)の結晶化温度は、ポリエチレン系樹脂組成物(A)に含まれる各成分が溶融状態で混練された工程を得たペレットやフィルム等から測定すれば良く、例えば、東洋精機製作所製のラボプラストミルを用い、各成分を加工温度200℃、回転数60rpmの条件で混練したサンプルから測定した値とすれば良い。
【0035】
ポリエチレン系樹脂組成物(A)は、直鎖状低密度ポリエチレン(a1)、直鎖状高密度ポリエチレン(a2)、高密度ポリエチレン(a3)以外に他の熱可塑性樹脂を配合しても良い。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のαオレフィンとの共重合体等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリエチレン系樹脂組成物(A)が他の熱可塑性樹脂を含む場合、他の熱可塑性樹脂の配合量は、直鎖状低密度ポリエチレン(a1)と直鎖状高密度ポリエチレン(a2)及び/又は高密度ポリエチレン(a3)との合計量(100重量部)に対して、0.1~30重量部であることが好ましく、0.5~20重量部であることがより好ましく、0.5~10重量部であることがさらに好ましい。
【0036】
[表面層]
表面層はポリプロピレン系樹脂組成物(B)から形成されるものであり、主として熱収縮性積層フィルムの耐熱性、製膜加工・延伸加工の安定性等に寄与する層である。
【0037】
<ポリプロピレン系樹脂組成物(B)>
ポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、ポリプロピレン系樹脂(b)を主成分として含むものである。なお、本発明において、「主成分とする」とは、樹脂組成物を構成する樹脂成分のうち、構成比率が50重量%以上であることを意味するものであり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0038】
<ポリプロピレン系樹脂(b)>
ポリプロピレン系樹脂(b)は、ホモポリプロピレン、又はプロピレンに基づく単量体単位とα-オレフィンに基づく単量体単位とが共重合された共重合体であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有量がポリプロピレン系樹脂(b)の全重量(100重量%)に対して50重量%以上のプロピレン-αオレフィン共重合体である。またプロピレン-αオレフィン共重合体は、その単量体の配列によりブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体に分けられるが、本発明においてはこのいずれであっても構わない。プロピレンと共重合するα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどを例示することができるが、エチレンが製膜加工・延伸加工の安定性の観点から望ましい。
【0039】
ポリプロピレン系樹脂(b)は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(b1)であることが好ましく、プロピレン-エチレンランダム共重合体(b1)を主成分として含むポリプロピレン系樹脂組成物(B)を表層に用いた熱収縮性積層フィルムは、製膜加工・延伸加工の安定性に優れる。プロピレン-エチレンランダム共重合体(b1)は、エチレン含有量が2~10重量%であることが好ましく、エチレン含有量は3~7重量%であることがより好ましく、4~6重量%であることがさらに好ましい。エチレン含有量が上記範囲より小さいと、収縮率が足りず、所望の収縮率とした熱収縮性積層フィルムが得られない恐れがあり、エチレン含有量が上記範囲より大きいと、被包装物を熱収縮性積層フィルムで被覆し、熱収縮させた際にタイトな包装仕上がりが得られない恐れがある。
【0040】
ポリプロピレン系樹脂(b)のMFRは、特に制限するものではないが、製膜加工、延伸加工の安定性の観点から、MFRが0.1~10g/10分であることが好ましい。MFRは0.3~8g/10分であることがより好ましく、0.5~5g/10分であることが特に好ましい。MFRが上記範囲より小さいと、押出時のモーター負荷が大きくなる等の問題点があり、MFRが上記範囲より大きいと、延伸安定性が低下する恐れがある。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂(b)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が90~106℃であることが好ましい。結晶化温度は95~104℃であることがより好ましく、97~102℃であることがさらに好ましい。
【0042】
ポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、示差走査熱量計(DSC)を用いた示差走査熱量分析における結晶化温度が106℃未満である。結晶化温度は105℃未満であることが好ましく、104℃未満であることがより好ましく、102℃未満であることが特に好ましい。理由は定かではないが、ポリプロピレン系樹脂組成物(B)の結晶化温度が106℃以上であると、溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生しやすくなる恐れがある。結晶化温度の下限は特に制限するものではないが、ポリプロピレン系樹脂(b)はその結晶化温度が90℃程度のものが入手可能であり、これが本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物(B)の結晶化温度の現時点での下限となる。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物(B)の結晶化温度は、上述した方法で測定すれば良い。
【0043】
ポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、組成物中に含まれる造核剤の配合量が2500ppm未満であることが好ましい。理由は定かではないが、ポリプロピレン系樹脂組成物(B)に含まれる造核剤の配合量が2500ppmを超えると、溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生しやすくなる恐れがある。ポリプロピレン系樹脂組成物(B)に含まれる造核剤は2000ppm未満であることがより好ましい。造核剤の種類は、特に制限するものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、安息香酸類の金属塩、芳香族リン酸エステル金属塩、芳香族リン酸エステル金属塩とアルカリ金属塩との混合物、ジベンジリンデンソルビトール類、アミノ酸金属塩、ロジン酸金属塩などの有機系造核剤、タルク、クレイ、炭酸カルシウムなどの無機系造核剤が挙げられる。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂組成物(B)は、ポリプロピレン系樹脂(b)以外に他の熱可塑性樹脂を配合しても良い。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のαオレフィンとの共重合体等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
熱収縮性積層フィルムは、熱収縮性積層フィルム全体(100重量%)に含まれるポリエチレン系樹脂を50重量%超とすることが好ましい。熱収縮性積層フィルム全体に含まれるポリエチレン系樹脂を50重量%超とすることにより、低温収縮性、耐熱性、機械的強度、透明性に優れるとともに、結晶化温度が高く、結晶化速度が速い熱収縮性積層フィルムとすることができ、延いては溶断シール部のシール強度のバラつきが小さく、シール強度に優れる熱収縮性積層フィルムとすることができる。また、被包装物を熱収縮性積層フィルムで被覆し、接合部を溶断シールして加熱収縮オーブン等で熱収縮させると、溶断シール部の端部に略円錐状の膨らみ(ツノ)が発生するが、このツノが硬いと消費者等がケガをする恐れがある為、このツノは小さく、又柔らかいことが求められる。ポリエチレン系樹脂を50重量%を超えて含む熱収縮性積層フィルムであれば、溶断シール部の端部に発生するツノを小さく、又柔らかくすることができる。
【0046】
熱収縮性積層フィルムの厚みは、特に制限するものではないが、機械的強度や作業性等の観点から、5~50μmであることが好ましく、7~30μmであることがより好ましい。
【0047】
熱収縮性積層フィルムの各層の厚み比は、特に制限するものではないが、例えば、芯層の厚さをta、両表面層の厚さをそれぞれtb1、tb2としたとき、tb1+tb2≦ta≦2(tb1+tb2)であることが好ましい。芯層の厚さを両表面層の厚さ以上とすることにより、結晶化温度が高く、結晶化速度が速い熱収縮性積層フィルムとすることができ、延いては溶断シール部のシール強度のバラつきが小さく、シール強度に優れる熱収縮性積層フィルムとすることができる。なお、芯層に積層一体化されている両表面層の厚みは、同じであることが好ましいが、必ずしも同一でなくても良い。
【0048】
本発明の熱収縮性積層フィルムを構成する各層には、本発明の目的を損なわない範囲において、通常熱可塑性樹脂に使用する公知の酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、造核剤、防曇剤、帯電防止剤、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤などの添加剤を配合することができる。
【0049】
[熱収縮性積層フィルム(実施形態2)]
図2は、本発明の実施形態2に係る熱収縮性積層フィルムの拡大断面図である。本発明の熱収縮性積層フィルムは上述したように芯層の両面に表面層がそれぞれ積層一体化されて成るものであるが、層間接着強度や再生還元等を考慮して芯層と表面層との間に中間層を設けても良い。具体的には
図2に示すように、熱収縮性積層フィルム11は、第1表面層13/第1中間層14/芯層12/第2中間層14/第2表面層13の順に積層された多層構成である。なお、本発明の目的を達成しうる範囲で各層の間に他の層を設けることも可能である。
【0050】
[中間層]
中間層は、生産時に生じる不適合品等を溶融して再生還元したものであり、中間層には芯層を形成するポリエチレン系樹脂組成物(A)及び表面層を形成するポリプロピレン系樹脂組成物(B)が含まれるが、中間層にはポリエチレン系樹脂組成物(A)が50重量%を超えて含まれることが好ましい。
【0051】
中間層の厚さは、生産時に生じる不適合品等の量を考慮して決めればよく、特に制限するものではないが、例えば、全層の厚さをt、第1中間層の厚さをtc1、第2中間層の厚さをtc2としたとき、0.2t≦(tc1+tc2)≦0.4tであることが好ましい。なお、中間層の厚みは、それぞれ同じであることが好ましいが、必ずしも同一でなくても良い。
【0052】
[熱収縮性積層フィルムの製造方法]
本発明の熱収縮性積層フィルムの製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えば上述した両表面層を形成するためのポリプロピレン系樹脂組成物(B)と、芯層を形成するためのポリエチレン系樹脂組成物(A)と、必要に応じて中間層を形成するための再生還元樹脂とを、別々の押出機の供給し、1つのダイスから押出すインフレーション共押出法やTダイ共押出法等により未延伸の多層フィルムを製膜し、次工程で延伸する方法が挙げられる。未延伸の多層フィルムの厚みは、特に制限するものではないが、例えば、200~500μmである。
【0053】
また上記共押出法にて製膜された未延伸多層フィルムは、延伸処理を施すことにより、熱収縮性を有するフィルムとすることができる。延伸方法としては、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えばテンター式二軸延伸成型法、チューブラー式二軸延伸成型法等の方法が挙げられる。未延伸多層フィルムの延伸条件は、要求される性能等にあわせて適宜決定すれば良く、特に制限するものではないが、例えば延伸速度10~100m/分、延伸温度90~130℃の条件にて、多層フィルムを縦横各2~10倍に延伸すれば良い。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の包装フィルムについて、実施例に基づき説明する。なお、各熱収縮性積層フィルムにおいて行った測定・評価方法は以下の通りである。
【0055】
(1)結晶化温度
明細書の本文中に記載した方法により測定した。
(2)引張強度、引張伸び、引張弾性率
ASTM D 882に準拠し、引張速度5mm/min、初期つかみ具間隔50mmで測定した。
(3)引裂荷重
ASTM D 1922に準拠して測定した。
(4)ヘイズ
日本電色工業株式会社製「NDH2000」にて、JIS-K7105に準拠して測定した。尚、光源はD65を用いた。
(5)熱収縮率
JIS Z1709-1995に準拠して測定した。なお、熱溶媒はグリセリン、浸漬時間は10秒として、90℃、100℃、110℃、120℃における熱収縮率を測定した。
(6)溶断シール部のシール欠陥評価
L型半折自動包装機(ハナガタ社製 標品名「HP-10」、溶断刃:先端の鋭利な金属刃、刃受け:テフロンシート)を用いて直方体の包装箱(幅200mm×奥行120mm×高さ30mm)20個をフィルムによって連続的に被覆して溶断シール(溶断刃温度:190℃、シール時間:1秒)し、次いで加熱収縮オーブン(オーブン温度:160℃、通過時間:6秒)に通して熱収縮包装した後、各包装体における溶断シール部のシール欠陥の発生状況を、目視により確認した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
シール部に異常がないものを5点、シール部にピンホール等のシール欠陥が発生したものを1点、シール部が全幅に亘って裂けたものを0点とし、各包装体の点数の合計点で評価。
◎:70点を超え、100点以下
○:50点を超え、70点以下
△:30点を超え、50点以下
×:10点を超え、30点以下
××:10点以下
【0056】
各実施例、比較例で使用した原料は以下の通りである。
<直鎖状低密度ポリエチレン>
・LLDPE(1)[密度:0.916g/cm3、結晶化温度:102.2℃]
・LLDPE(2)[密度:0.912g/cm3、結晶化温度:93.3℃]
<直鎖状高密度ポリエチレン>
・LHDPE[密度:0.940g/cm3、結晶化温度:113.6℃]
<高密度ポリエチレン>
・HDPE[密度0.957g/cm3、結晶化温度:116.7℃]
<ポリプロピレン系樹脂>
・r-PP[プロピレン-エチレンランダム共重合体、MFR:2.3g/10min、エチレン含有量:4.2~5.0%、結晶化温度:101.7℃]
尚、密度はJIS-K7112に準拠して測定された値であり、MFRはJIS-K7210に準拠して測定された値である。
【0057】
[実施例1乃至5、比較例1乃至4]
表1に示す樹脂組成物を用いて、インフレーション共押出法にて、第1表面層/第1中間層/芯層/第2中間層/第2表面層の未延伸フィルムを製膜し、次いで、チューブラー延伸法によって同時二軸延伸(縦4.3倍、横4.5倍)を行い、厚み13.5μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。なお、第1表面層と第2表面層の厚み、第1中間層と第2中間層の厚みはそれぞれ同じである。
【0058】
【0059】
表1に示すように、芯層に主成分として含まれる密度が0.915~0.930g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンへ、密度が0.935~0.965g/cm3の直鎖状高密度ポリエチレンを配合した実施例1乃至3の熱収縮性積層フィルムは、低温収縮性、機械的強度、透明性に優れるとともに、芯層の結晶化温度が106℃を超える為、L型半折自動包装機による溶断シールにおいて、溶断シール部に発生するピンホール状のシール欠陥を効果的に抑制する結果を示した。また、芯層に主成分として含まれる密度が0.915~0.930g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンへ、密度が0.935~0.965g/cm3の高密度ポリエチレンを配合した実施例4及び5の熱収縮性積層フィルムは、低温収縮性、機械的強度、透明性に優れるとともに、芯層の結晶化温度が106℃を超える為、L型半折自動包装機による溶断シールにおいて、溶断シール部に発生するピンホール状のシール欠陥を効果的に抑制する結果を示した。
【0060】
一方、表1に示すように、芯層に主成分として含まれる密度が0.915~0.930g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンへ、密度が0.935~0.965g/cm3の直鎖状高密度ポリエチレン或いは高密度ポリエチレンを配合しなかった比較例1及び2の熱収縮性積層フィルムは、低温収縮性、機械的強度、透明性は実施例1乃至5と同程度であるものの、芯層の結晶化温度が106℃未満であるため、L型半折自動包装による溶断シールにおいて、殆んど全てのサンプルの溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生する結果を示した。また表面層の結晶化温度を高める為、表面層に主成分として含まれるポリプロピレン系樹脂へ造核剤を配合した比較例3の熱収縮性フィルムは、低温収縮性、機械的強度、透明性は実施例1乃至5と同程度であるものの、芯層の結晶化温度が106℃未満であり、表面層の結晶化温度が106℃を超える為、L型半折自動包装による溶断シールにおいて、全てのサンプルの溶断シール部が全幅に亘って裂ける結果を示した。
【0061】
さらに、表1に示すように、芯層に主成分として含まれる密度が0.915~0.930g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンへ、密度が0.935~0.965g/cm3の高密度ポリエチレンを配合し、表面層に主成分として含まれるポリプロピレン系樹脂へ造核剤を配合した比較例4の熱収縮性フィルムは、低温収縮性、機械的強度、透明性は実施例1乃至5と同程度であるものの、表面層の結晶化温度が106℃を超える為、L型半折自動包装による溶断シールにおいて、全てのサンプルの溶断シール部にピンホール状のシール欠陥が発生するか、全幅に亘って裂けが発生する結果を示した。
【符号の説明】
【0062】
1、11:熱収縮性積層フィルム
2、12:芯層
3、13:表面層
14:中間層