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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】鉄道車両復線装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 2/00 20060101AFI20220204BHJP
   E01B 5/18 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
E01B2/00
E01B5/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018063472
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173420
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一人
(72)【発明者】
【氏名】立川 正勝
(72)【発明者】
【氏名】栗原 巧
(72)【発明者】
【氏名】及川 祐也
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-239204(JP,A)
【文献】特開2006-176982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 2/00
E01B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道床に設けられたレール対の上を走行する鉄道車両が前記レール対から脱線した場合に、その鉄道車両を前記レール対に復線させる鉄道車両復線装置であって、
前記レール対における各レールの外側に配設されており、上面が前記鉄道車両の進行方向に向かって徐々に高くなるように形成された軌間外側スロープ板と、
前記レール対における各レールの内側に配設されており、上面が前記鉄道車両の進行方向に向かって徐々に高くなるように形成された軌間内側スロープ板と、
前記軌間外側スロープ板の上端部の高さを維持するように、その上端側から延在して前記レールに沿って配設されている軌間外側踏面板と、
前記軌間内側スロープ板の上端部の高さを維持するように、その上端側から延在して前記レールに沿って配設されている軌間内側踏面板と、
少なくとも前記軌間内側踏面板の上面に配設されており、前記鉄道車両が前記軌間内側踏面板の上面を走行する場合に、前記鉄道車両の車輪の内側の側面に当接することによってその車輪を前記レール上に誘導する誘導部材と、
を備え、
前記軌間外側スロープ板と前記軌間内側スロープ板は同じ勾配を有するとともに、それぞれの上端部は前記鉄道車両の進行方向において同じ位置にあり、
前記軌間外側スロープ板の上端部の高さが前記レールの上面の高さであるとき、前記軌間内側スロープ板の上端部の高さが前記軌間外側スロープ板の上端部の高さよりも低くなるように、前記軌間外側スロープ板よりも前記軌間内側スロープ板の方が前記レールに沿う方向の長さが短く形成されていることを特徴とする鉄道車両復線装置。
【請求項2】
前記軌間内側スロープ板の上端部の高さは、前記軌間外側スロープ板の上端部の高さよりも、前記車輪のフランジ高さ分低いことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両復線装置。
【請求項3】
前記誘導部材は、前記軌間内側スロープ板から前記軌間内側踏面板に亘って漸次前記レールに近接するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道車両復線装置。
【請求項4】
前記軌間外側スロープ板及び前記軌間内側スロープ板及び前記誘導部材における所定の高さ未満の部分は鋼材を用いて形成されており、所定の高さ以上の部分はコンクリートを用いて形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄道車両復線装置。
【請求項5】
前記誘導部材は、樹脂層を介して前記道床に固定されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄道車両復線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱線した鉄道車両を復線させる鉄道車両復線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震の発生などによって脱線した鉄道車両を復線させる軌道構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この軌道構造は、レール対の内外であって、各レールの左右両側にスロープ板とガイド部材とを備えている。
そして、鉄道車両がレール上から左右どちらかの側に脱線してその勢いのまま走行する場合に、レール対の内外のスロープ板が道床と車輪との間に介在して鉄道車両をその上面で走行させつつ、車輪の踏面や下端面をレールの頂面以上の高さに押し上げるとともに、ガイド部材が車輪の側面に当接することによってその車輪をレール上に案内するようにして復線させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-176982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の軌道構造においてレール対の内外のスロープ板の勾配が異なる場合には、復線するようスロープ板上を走行する鉄道車両がヨーイングしてしまうことがあり、その鉄道車両の走行安定性が悪化することがあるという問題があった。
そこで、本発明者らが鋭意検討して、脱線した鉄道車両をスムーズに復線させるための技術を開発するに至った。
【0005】
本発明の目的は、脱線した鉄道車両を好適に復線させることができる鉄道車両復線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
道床に設けられたレール対の上を走行する鉄道車両が前記レール対から脱線した場合に、その鉄道車両を前記レール対に復線させる鉄道車両復線装置であって、
前記レール対における各レールの外側に配設されており、上面が前記鉄道車両の進行方向に向かって徐々に高くなるように形成された軌間外側スロープ板と、
前記レール対における各レールの内側に配設されており、上面が前記鉄道車両の進行方向に向かって徐々に高くなるように形成された軌間内側スロープ板と、
前記軌間外側スロープ板の上端部の高さを維持するように、その上端側から延在して前記レールに沿って配設されている軌間外側踏面板と、
前記軌間内側スロープ板の上端部の高さを維持するように、その上端側から延在して前記レールに沿って配設されている軌間内側踏面板と、
少なくとも前記軌間内側踏面板の上面に配設されており、前記鉄道車両が前記軌間内側踏面板の上面を走行する場合に、前記鉄道車両の車輪の内側の側面に当接することによってその車輪を前記レール上に誘導する誘導部材と、
を備え、
前記軌間外側スロープ板と前記軌間内側スロープ板は同じ勾配を有するとともに、それぞれの上端部は前記鉄道車両の進行方向において同じ位置にあり、
前記軌間外側スロープ板の上端部の高さが前記レールの上面の高さであるとき、前記軌間内側スロープ板の上端部の高さが前記軌間外側スロープ板の上端部の高さよりも低くなるように、前記軌間外側スロープ板よりも前記軌間内側スロープ板の方が前記レールに沿う方向の長さが短く形成されているようにした。
【0007】
かかる構成の鉄道車両復線装置は、同じ勾配を有する軌間外側スロープ板と軌間内側スロープ板を備えているため、脱線した鉄道車両の車輪をレール上に押し上げるように、鉄道車両が軌間外側スロープ板及び軌間内側スロープ板の上を昇る方向に走行する際、ヨーイングすることなくスムーズに走行できるので、その鉄道車両を好適にレールに復線させることができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記軌間内側スロープ板の上端部の高さは、前記軌間外側スロープ板の上端部の高さよりも、前記車輪のフランジ高さ分低いようにする。
【0009】
こうすることで、軌間外側スロープ板に連続する軌間外側踏面板の上面の高さを、レールの上面と同じ高さにでき、軌間内側スロープ板に連続する軌間内側踏面板の上面の高さを、レールの上面よりも車輪のフランジ高さ分低くすることができるので、鉄道車両の一方の車輪が軌間外側踏面板からレールにスムーズに移り、鉄道車両の他方の車輪が軌間内側踏面板からレールにスムーズに移るように、良好に復線させることができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記誘導部材は、前記軌間内側スロープ板から前記軌間内側踏面板に亘って漸次前記レールに近接するように設けられているようにする。
【0011】
こうすることで、軌間内側スロープ板上を走行する鉄道車両の車輪に当接した誘導部材によって、その車輪をレールに徐々に寄せていき、軌間内側踏面板上を走行する鉄道車両の車輪に誘導部材が当接することによって、その車輪をレール上に誘導することができる。
【0012】
また、望ましくは、
前記軌間外側スロープ板及び前記軌間内側スロープ板及び前記誘導部材における所定の高さ未満の部分は鋼材を用いて形成されており、所定の高さ以上の部分はコンクリートを用いて形成されているようにする。
【0013】
軌間外側スロープ板や軌間内側スロープ板や誘導部材における厚みが薄い部分を鋼材で形成することで、その部分の強度を好適に確保することができる。
【0014】
また、望ましくは、
前記誘導部材は、樹脂層を介して前記道床に固定されているようにする。
【0015】
誘導部材が、接着性を有する樹脂層を介して道床に固定されていれば、誘導部材はその誘導部材に車輪が当接したことによる横方向への反力に抗しやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脱線した鉄道車両を好適に復線させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の鉄道車両復線装置を示す斜視図である。
図2】本実施形態の鉄道車両復線装置を示す上面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4図2のIV-IV線における断面図である。
図5図2のV-V線における断面図である。
図6図2のVI-VI線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る鉄道車両復線装置の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
鉄道車両復線装置100は、道床Fに設けられたレール対(一対のレールR)上を走行する鉄道車両Tがレール対から脱線した場合に、その鉄道車両Tをレール対に復線させるための装置である。
【0019】
本実施形態の鉄道車両復線装置100は、例えば、図1図2図3図6に示すように、レール対における各レールRの外側に配設されており、上面が鉄道車両Tの進行方向の前方から後方へ向かって徐々に高くなるように形成され、脱線した鉄道車両Tの車輪Wをレール対の一方のレール高さまで押し上げ可能な軌間外側スロープ板10と、レール対における各レールRの内側に配設されており、上面が鉄道車両Tの進行方向の前方から後方へ向かって徐々に高くなるように形成され、脱線した鉄道車両Tの車輪Wをレール対の他方のレール高さまで押し上げ可能な軌間内側スロープ板20と、軌間外側スロープ板10の上端部10aの高さを維持するように、その上端側から延在してレールRに沿って配設されている軌間外側踏面板30と、軌間内側スロープ板20の上端部20aの高さを維持するように、その上端側から延在してレールRに沿って配設されている軌間内側踏面板40と、少なくとも軌間内側踏面板40の上面に配設されており、鉄道車両Tが軌間内側踏面板40の上面を走行する場合に、鉄道車両Tの車輪Wの内側の側面に当接することによってその車輪WをレールR上に誘導する誘導部材50等を備えている。
なお、図1及び図2の図中、鉄道車両Tの進行方向を矢印で示している。
また、図中、道床F上の枕木や、その枕木にレールRを固定する締結器等の図示は省略している。
また、本実施形態での道床Fは、軌道スラブであるものとする。
【0020】
軌間外側スロープ板10は、その上面が傾斜面に形成されている長尺な板状部材であり、レールRの外側に沿って配設されている。
軌間外側スロープ板10は、ボルトを用いて道床Fに固定されており、鉄道車両Tの進行方向に昇り傾斜となる向きに設置されている。
この軌間外側スロープ板10は、鉄道車両Tがレール対から脱線して走行する場合に、道床Fと鉄道車両Tの車輪Wとの間に介在して鉄道車両Tをその上面で走行させつつ、車輪Wをレール対の一方のレールRの高さまで押し上げる機能を有している。
【0021】
この軌間外側スロープ板10における所定の高さ未満の部分は鋼材を用いて形成されており、所定の高さ以上の部分はコンクリートを用いて形成されている。本実施形態では、高さ95mm未満の部分は鋼材、高さ95mm以上の部分はダクタルコンクリートを用いて形成されている。
軌間外側スロープ板10の厚みが薄い部分を鋼材で形成することで、鉄道車両Tが走行するための強度を好適に確保することができる。
【0022】
軌間内側スロープ板20は、その上面が傾斜面に形成されている長尺な板状部材であり、レールRの内側に沿って配設されている。
軌間内側スロープ板20は、ボルトを用いて道床Fに固定されており、鉄道車両Tの進行方向に昇り傾斜となる向きに設置されている。
また、軌間内側スロープ板20と道床Fの間には、接着性を有する樹脂層60が設けられている。
この軌間内側スロープ板20は、鉄道車両Tがレール対から脱線して走行する場合に、道床Fと鉄道車両Tの車輪Wとの間に介在して鉄道車両Tをその上面で走行させつつ、車輪Wをレール対の他方のレールRの高さまで押し上げる機能を有している。
【0023】
この軌間内側スロープ板20における所定の高さ未満の部分は鋼材を用いて形成されており、所定の高さ以上の部分はコンクリートを用いて形成されている。本実施形態では、高さ95mm未満の部分は鋼材、高さ95mm以上の部分はダクタルコンクリートを用いて形成されている。
軌間内側スロープ板20の厚みが薄い部分を鋼材で形成することで、鉄道車両Tが走行するための強度を好適に確保することができる。
【0024】
そして、この鉄道車両復線装置100における軌間外側スロープ板10と軌間内側スロープ板20は、同じ勾配(傾斜角度)を有している。
また、軌間外側スロープ板10と軌間内側スロープ板20のそれぞれの上端部10a,20aはレールRを挟んで並ぶ位置にある。換言すれば、軌間外側スロープ板10と軌間内側スロープ板20のそれぞれの上端部10a,20aは鉄道車両Tの進行方向において同じ位置にある。
特に、軌間外側スロープ板10の上端部10aの高さがレールRの上面の高さであるとき、軌間内側スロープ板20の上端部20aの高さが軌間外側スロープ板10の上端部10aの高さよりも低くなるようにするため、軌間外側スロープ板10よりも軌間内側スロープ板20の方がレールRに沿う方向の長さが短く形成されている。
換言すれば、同じ勾配を有し、上端部10a,20aの高さが異なる軌間外側スロープ板10と軌間内側スロープ板20を、その上端部10a,20aを並べて配置するため、軌間外側スロープ板10の下端部10bよりも軌間内側スロープ板20の下端部20bの方が、鉄道車両Tの進行方向の後方に位置するように設置されている。
具体的に、軌間内側スロープ板20の上端部20aの高さは、軌間外側スロープ板10の上端部10aの高さよりも、車輪Wのフランジ高さ分(例えば、25mm)低く設計されている。
【0025】
軌間外側踏面板30は、軌間外側スロープ板10の上端部10aの高さを有する長尺な平板状部材であり、レールRの外側に沿って配設されている。
この軌間外側踏面板30は、コンクリート(ダクタルコンクリート)を用いて形成されており、ボルトを用いて道床Fに固定されている。
【0026】
軌間内側踏面板40は、軌間内側スロープ板20の上端部20aの高さを有する長尺な平板状部材であり、レールRの内側に沿って配設されている。
この軌間内側踏面板40は、コンクリート(ダクタルコンクリート)を用いて形成されており、ボルトを用いて道床Fに固定されている。
また、軌間内側踏面板40と道床Fの間には、接着性を有する樹脂層60が設けられている。
【0027】
誘導部材50は、軌間内側スロープ板20から軌間内側踏面板40に亘って漸次レールRの内側に近接するように設けられている。
なお、誘導部材50の始端側と終端側は道床F上に設けられている。
そして、誘導部材50は、その始端側から徐々に軌間内側スロープ板20の上に載りかかり、軌間内側スロープ板20の途中から軌間内側踏面板40にかけては、誘導部材50全体がその上に載りかかった態様になっている。
この誘導部材50は、ボルトを用いて道床Fに固定されている。
また、誘導部材50と道床Fの間には、接着性を有する樹脂層60が設けられている。
【0028】
この誘導部材50における所定の高さ未満の部分は鋼材を用いて形成されており、所定の高さ以上の部分はコンクリートを用いて形成されている。本実施形態では、高さ95mm未満の部分は鋼材、高さ95mm以上の部分はダクタルコンクリートを用いて形成されている。
誘導部材50の厚みが薄い部分を鋼材で形成することで、鉄道車両Tの車輪Wと接触して誘導するための強度を好適に確保することができる。
また、誘導部材50と軌間内側スロープ板20が重なっている部分(誘導部材50が軌間内側スロープ板20に載りかかっている部分)であって、高さ95mm以上の部分はダクタルコンクリートを用いて誘導部材50と軌間内側スロープ板20とが一体形成されている。
また、誘導部材50と軌間内側踏面板40が重なっている部分はダクタルコンクリートを用いて誘導部材50と軌間内側踏面板40とが一体形成されている。
つまり、この誘導部材50(軌間内側スロープ板20と一体の誘導部材50、軌間内側踏面板40と一体の誘導部材50)は、樹脂層60を介して道床Fに固定されている。
【0029】
次に、本実施形態の鉄道車両復線装置100が、レールR(レール対)から脱線した鉄道車両TをそのレールRに復線させる作用について説明する。
図3は、レールRから進行方向の右側に脱線した鉄道車両Tを部分的に示す説明図であり、その鉄道車両Tの車輪WとレールRとの位置関係を示している。
【0030】
図3に示すように、レールR上から脱線した鉄道車両Tがその勢いのままに道床F上を走行すると、図4に示すように、進行方向の右側の車輪Wが軌間外側スロープ板10に載り、進行方向の左側の車輪Wが軌間内側スロープ板20に載って、そのスロープ板上を鉄道車両Tが走行する。
このとき、軌間外側スロープ板10と軌間内側スロープ板20は同じ勾配を有しているので、鉄道車両Tはそのスロープ板上をスムーズに走行するようになっており、従来技術のようにヨーイングしてしまうことはない。
こうして鉄道車両Tがスロープ板(軌間外側スロープ板10、軌間内側スロープ板20)上を昇るように走行することに伴い、鉄道車両Tの車輪Wが徐々にレールR上に押し上げられている。
【0031】
鉄道車両Tの車輪Wが軌間外側スロープ板10と軌間内側スロープ板20に載った状態で、その鉄道車両Tが走行を続けると、図5に示すように、進行方向の左側の車輪Wの内側の側面に誘導部材50が当接することによって、その車輪Wを進行方向の左側のレールRに寄せるように案内する。
また、進行方向の左側の車輪Wが左側のレールRに寄せられたことに伴い、進行方向の右側の車輪Wが右側のレールRに寄せられる。
ここで、軌間内側スロープ板20と道床Fの間には接着性を有する樹脂層60が設けられており、軌間内側スロープ板20と一体の誘導部材50は、樹脂層60を介して道床Fに固定されているので、誘導部材50が車輪Wに当接したことによる横方向への反力に抗しやすくなっている。
なお、図5に図示した領域ではないが、誘導部材50と道床Fの間には接着性を有する樹脂層60が設けられている。
【0032】
鉄道車両Tが更に走行を続け、図6に示すように、進行方向の右側の車輪Wが軌間外側踏面板30に載り、進行方向の左側の車輪Wが軌間内側踏面板40に載って、その鉄道車両Tが走行すると、進行方向の左側の車輪Wの内側の側面に当接している誘導部材50が、その車輪Wを進行方向の左側のレールR上に誘導する。
また、進行方向の左側の車輪Wが左側のレールR上に誘導されたことに伴い、進行方向の右側の車輪Wが右側のレールR上に誘導される。
ここで、軌間内側踏面板40と道床Fの間には接着性を有する樹脂層60が設けられており、軌間内側踏面板40と一体の誘導部材50は、樹脂層60を介して道床Fに固定されているので、誘導部材50が車輪Wに当接したことによる横方向への反力に抗しやすくなっている。
【0033】
このとき、軌間外側踏面板30の上面は、レールRの上面と同じ高さであるので、進行方向の右側の車輪Wは、軌間外側踏面板30からレールRにスムーズに移ることができる。
また、軌間内側踏面板40の上面は、レールRの上面よりも車輪Wのフランジ高さ分低いので、進行方向の左の車輪Wは、軌間内側踏面板40からレールRにスムーズに移ることができる。
こうして進行方向の右側の車輪Wを右側のレールR上に載せ、進行方向の左側の車輪Wを左側のレールR上に載せたことで、脱線した鉄道車両TのレールR(レール対)への復線が完了する。
【0034】
このように、本実施形態の鉄道車両復線装置100であれば、同じ勾配を有する軌間外側スロープ板10と軌間内側スロープ板20を備えているため、脱線した鉄道車両Tの車輪WをレールR上に押し上げるように、その鉄道車両Tが軌間外側スロープ板10及び軌間内側スロープ板20の上を昇る方向に走行する際、ヨーイングすることなくスムーズに走行できるので、その鉄道車両Tを好適にレールRに復線させることができる。
【0035】
このような鉄道車両復線装置100を所定の設備の手前、例えば、トンネルの手前、鉄橋の手前、踏切の手前、駅ホームの手前、分岐器の手前など、脱線した鉄道車両Tが衝突した場合に被害が大きくなる可能性のある設備の手前に設置しておけば、地震の発生などによって鉄道車両Tが脱線した場合に、その鉄道車両Tを速やかに復線させることができ、その設備に鉄道車両Tが衝突する被害を抑えることができる。
【0036】
また、上記した実施形態では、レールRから進行方向の右側に脱線した鉄道車両Tを復線させる場合を例に説明したが、レールRから進行方向の左側に脱線した鉄道車両Tを復線させる場合も同様に、その鉄道車両Tを好適にレールRに復線させることができる。
【0037】
なお、以上の実施の形態においては、軌間外側スロープ板10、軌間内側スロープ板20、誘導部材50における所定の高さ未満の部分は鋼材を用いて形成されており、所定の高さ以上の部分はコンクリートを用いて形成されているとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、軌間外側スロープ板10、軌間内側スロープ板20、誘導部材50が鋼材のみで形成されていても、コンクリートのみで形成されていてもよい。
【0038】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10 軌間外側スロープ板
10a 上端部
10b 下端部
20 軌間内側スロープ板
20a 上端部
20b 下端部
30 軌間外側踏面板
40 軌間内側踏面板
50 誘導部材
60 樹脂層
100 鉄道車両復線装置
T 鉄道車両
W 車輪
R レール(レール対)
F 道床
図1
図2
図3
図4
図5
図6