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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/317 20210101AFI20220204BHJP
   H01M 50/325 20210101ALI20220204BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220204BHJP
【FI】
H01M50/317 101
H01M50/325
H01M50/209
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018085633
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019192548
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
(72)【発明者】
【氏名】寺島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-508518(JP,A)
【文献】特開2005-026037(JP,A)
【文献】特開2018-060671(JP,A)
【文献】特開2015-170473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/317
H01M 50/325
H01M 50/209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体と、前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記電極積層体に設けられた内部空間と連通された第1連通孔を有する枠体とを有するモジュール本体と、
前記モジュール本体に取り付けられ、前記第1連通孔と連通された第2連通孔を有する圧力調整弁と、
を備え、
前記圧力調整弁は、前記第2連通孔を塞ぐ第1部分と、第2部分とを有する弾性部材を備え、
前記第1部分は、第1ガス透過度を有する第1材料を含み、
前記第2部分は、前記第1ガス透過度よりも小さい第2ガス透過度を有する第2材料を含み、
前記圧力調整弁は、前記第2連通孔を有する第1部材と、前記弾性部材を前記第1部材に対して押圧する第2部材と、を備え、
前記第1部分が、前記第2連通孔を塞ぐシール面を有する第1板状部と、前記第2部材によって押圧される押圧面を有する第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結し、前記シール面に交差する方向に延在する軸を有する柱状部と、を有し、
前記第2部分が、前記柱状部を取り囲む環状部材である、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているような薄型電池が知られている。特許文献1に記載の薄型電池は、正極、負極及び集電体を有するバイポーラ電極と、セパレータ及び電解液を含む電解質層と、集電体の一方の主面に正極を取り囲むように配置された第1シール部と、集電体の他方の主面に負極を取り囲むように配置された第2シール部と、第2シール部を貫通するチューブとを備えている。チューブの一端は、セパレータ、集電体及び第2シール部で画成された内部空間に臨み、チューブの他端は、第2シール部の外部空間に臨んでいる。電池内部に発生したガスは、チューブを介して電池外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-287451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、チューブは、内部空間の圧力が上昇すると、内部空間のガスを排出する圧力調整弁として機能する。一方、圧力調整弁が、内部空間と連通する連通孔を塞ぐ弾性部材を備えることがある。この場合、例えば充電時又は過放電時に発生したガスにより内部空間の圧力が上昇すると、弾性部材が押されて連通孔の縁と弾性部材との間に隙間が生じるので、当該隙間からガスが排出される。
【0005】
圧力調整弁が閉じた状態においても、内部空間で発生したガスの一部は、弾性部材を透過して圧力調整弁の外部空間に漏れ出る。ところが、弾性部材を透過するガスの透過量が多すぎる場合がある。
【0006】
本発明の一側面は、圧力調整弁が閉じた状態におけるガス透過量が抑制された圧力調整弁を有する電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電池モジュールは、複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体と、前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記電極積層体に設けられた内部空間と連通された第1連通孔を有する枠体とを有するモジュール本体と、前記モジュール本体に取り付けられ、前記第1連通孔と連通された第2連通孔を有する圧力調整弁と、を備え、前記圧力調整弁は、前記第2連通孔を塞ぐ第1部分と、第2部分とを有する弾性部材を備え、前記第1部分は、第1ガス透過度を有する第1材料を含み、前記第2部分は、前記第1ガス透過度よりも小さい第2ガス透過度を有する第2材料を含む。
【0008】
上記電池モジュールでは、内部空間においてガスが発生した場合、圧力調整弁が閉じた状態で、当該ガスの一部が、弾性部材を透過して圧力調整弁の外部空間に漏れ出る。弾性部材の第2部分は低いガス透過度を有する第2材料を含むので、弾性部材のガス透過量を小さくできる。したがって、圧力調整弁が閉じた状態におけるガス透過量を抑制できる。
【0009】
前記圧力調整弁は、前記第2連通孔を有する第1部材と、前記弾性部材を前記第1部材に対して押圧する第2部材と、を備え、前記第1部分が、前記第2連通孔を塞ぐシール面を有し、前記シール面に交差する方向に延在する軸を有する第1柱状部材であり、前記第2部分は、前記第2部材によって押圧される押圧面を有し、前記シール面に交差する方向に延在する軸を有する第2柱状部材であってもよい。この場合、第2柱状部材の高さを調整することによって、弾性部材のガス透過量を高精度に制御できる。
【0010】
前記圧力調整弁は、前記第2連通孔を有する第1部材と、前記弾性部材を前記第1部材に対して押圧する第2部材と、を備え、前記第1部分が、前記第2連通孔を塞ぐシール面を有する第1板状部と、前記第2部材によって押圧される押圧面を有する第2板状部と、前記第1板状部と前記第2板状部とを連結し、前記シール面に交差する方向に延在する軸を有する柱状部と、を有し、前記第2部分が、前記柱状部を取り囲む環状部材であってもよい。この場合、第2部分がシール面の面圧に与える影響を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、圧力調整弁が閉じた状態におけるガス透過量が抑制された圧力調整弁を有する電池モジュールが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
図2】電池モジュールの概略断面図である。
図3】電池モジュールの概略斜視図である。
図4】電池モジュールの一部を示す分解斜視図(一部断面を含む)である。
図5】電池モジュールが備える圧力調整弁の斜視図である。
図6】圧力調整弁の一部を示す断面図である。
図7】第1変形例に係る圧力調整弁の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。図1において、蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両のバッテリとして使用される。蓄電装置1は、複数(ここでは3つ)の電池モジュールとしてのバイポーラ電池2を備えている。バイポーラ電池2は、例えばニッケル水素二次電池である。
【0015】
複数のバイポーラ電池2は、金属製の導電板3を介して積層されている。導電板3は、積層方向(Z軸方向)の両端に位置するバイポーラ電池2の外側にも配置されている。バイポーラ電池2及び導電板3は、例えば積層方向から見て矩形状(平面視矩形状)を呈している。導電板3は、隣り合うバイポーラ電池2と電気的に接続されている。これにより、複数のバイポーラ電池2が積層方向に直列接続されている。
【0016】
積層方向の一端(ここでは下端)に位置する導電板3には、正極端子4が接続されている。積層方向の他端(ここでは上端)に位置する導電板3には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に垂直な方向(X軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施することができる。
【0017】
導電板3は、バイポーラ電池2において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに垂直な方向(Y軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、バイポーラ電池2からの熱を効率的に外部に放出することができる。
【0018】
また、蓄電装置1は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に拘束する拘束ユニット6を備えている。拘束ユニット6は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に挟む1対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
【0019】
拘束プレート7は、鉄等の金属で形成されている。各拘束プレート7と導電板3との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状を呈している。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7に設けられた挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、バイポーラ電池2、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。
【0020】
図2は、バイポーラ電池2の概略断面図である。図3は、バイポーラ電池2の概略斜視図である。図2及び図3において、バイポーラ電池2は、複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。バイポーラ電池2は、モジュール本体11と、このモジュール本体11の一側面に取り付けられた複数(ここでは4つ)の圧力調整弁12とを備えている。
【0021】
モジュール本体11は、複数のバイポーラ電極13がセパレータ14を介して積層されてなる電極積層体15と、この電極積層体15を取り囲むように配置された枠体16とを備えている。
【0022】
バイポーラ電極13及びセパレータ14は、例えば平面視矩形状を呈している。セパレータ14は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極13の間に配置されている。バイポーラ電極13は、集電体であるニッケル箔17と、このニッケル箔17の上面17a(一方面)に形成された正極18と、ニッケル箔17の下面17b(他方面)に形成された負極19とを有している。
【0023】
バイポーラ電極13の正極18は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極13の負極19と対向している。バイポーラ電極13の負極19は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極13の正極18と対向している。
【0024】
電極積層体15の最下層には、正極側終端電極20が配置されている。正極側終端電極20は、ニッケル箔17と、このニッケル箔17の上面17aに形成された正極18とを有している。電極積層体15の最上層には、負極側終端電極21が配置されている。負極側終端電極21は、ニッケル箔17と、このニッケル箔17の下面17bに形成された負極19とを有している。正極側終端電極20の正極18は、セパレータ14を挟んで最下層のバイポーラ電極13の負極19と対向している。負極側終端電極21の負極19は、セパレータ14を挟んで最上層のバイポーラ電極13の正極18と対向している。正極側終端電極20及び負極側終端電極21のニッケル箔17は、積層方向に隣り合う導電板3(図1参照)に接続されている。
【0025】
正極18は、ニッケル箔17の一方面に正極活物質を塗工することにより形成されている。正極活物質としては、例えばコバルト(Co)酸化物コートが施された水酸化ニッケルが用いられる。負極19は、ニッケル箔17の他方面に負極活物質を塗工することにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が用いられる。ニッケル箔17の縁部17cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。
【0026】
セパレータ14は、正極18と負極19との間に配置され、正極18と負極19とを隔離する。セパレータ14は、積層方向から見てニッケル箔17よりも小さく且つ正極18及び負極19よりも大きい。セパレータ14は、例えばシート状に形成されている。セパレータ14は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、もしくはPE、PP、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはメチルセルロース等からなる不織布または織布等で形成されている。また、セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されていてもよい。なお、セパレータ14の形状としては、特にシート状に限られず、袋状であってもよい。
【0027】
枠体16は、電極積層体15の周囲に配置され、各ニッケル箔17の縁部17cをそれぞれ保持する複数の一次シール部22と、これらの一次シール部22の周囲に配置された二次シール部23とを有している。
【0028】
各一次シール部22は、積層方向に沿ってニッケル箔17毎に配置されている。一次シール部22は、枠状に形成されている。一次シール部22は、ニッケル箔17の縁部17cに熱溶着により接合されている。
【0029】
積層方向に隣り合うニッケル箔17間には、ニッケル箔17、正極18、負極19及び一次シール部22によって画成された内部空間Vが設けられている。従って、電極積層体15には、複数の内部空間Vが設けられている。セパレータ14内を含む内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。一次シール部22は、内部空間Vを封止する。バイポーラ電池2の各セルは、2つのニッケル箔17、正極18、負極19、セパレータ14及び一次シール部22により構成され、内部空間Vを有している。
【0030】
二次シール部23は、角筒状を有している。二次シール部23は、内部空間Vを更に封止する。二次シール部23は、各一次シール部22に接合されている。二次シール部23は、例えば射出成形等により形成されている。
【0031】
一次シール部22及び二次シール部23は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)または変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等の樹脂で形成されている。
【0032】
枠体16を構成する一の壁部16aには、圧力調整弁12が取り付けられる複数(ここでは4つ)の圧力調整弁取付領域24が設けられている。一次シール部22の各圧力調整弁取付領域24には、図4に示されるように、複数(ここでは6つ)の連通孔25(第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔25は、各圧力調整弁取付領域24において2列3段(Y軸方向に2列、Z軸方向に3段)に配列されている。従って、連通孔25は、壁部16aにおいて8列3段に配列されている。各連通孔25は、異なるセルの内部空間Vとそれぞれ連通されている。
【0033】
二次シール部23の各圧力調整弁取付領域24には、図4に示されるように、各連通孔25と連通された複数(ここでは6つ)の連通孔26(第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔26は、一次シール部22側から二次シール部23の外側面に向かって徐々に幅広となるようにテーパ状に形成されている。連通孔26は、各圧力調整弁取付領域24において2列3段に配列されている。
【0034】
連通孔25,26は、内部空間Vに電解液を注入するための注液孔として機能する。また、連通孔25,26は、電解液が注入された後は、内部空間Vで発生したガスが流れる流路となる。
【0035】
二次シール部23の各圧力調整弁取付領域24の外側面には、略枠状の接合用突起27がそれぞれ設けられている。接合用突起27は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路28を連通孔26と協働して形成する。従って、流路28は、各圧力調整弁取付領域24において2列3段に配列されている。流路28は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で矩形状を呈している。一方の列の流路28は、他方の列の流路28に対して積層方向(Z軸方向)にずれている。
【0036】
接合用突起27は、一方の列の流路28と他方の列の流路28とを仕切る隔壁29を有している。隔壁29は、Z軸方向に直線状に延在している。隔壁29の幅寸法は、接合用突起27における隔壁29以外の部分の幅寸法よりも大きい。
【0037】
圧力調整弁12は、図4に示されるように、ケース33(第1部材)と、複数(ここでは6つ)の弁体34(弾性部材)と、カバー35(第2部材)とを有している。ケース33は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。ケース33は、底面を含む底壁部36を有している。底壁部36には、底面からカバー35側に向けて貫通した複数(ここでは6つ)の連通孔37(第2連通孔)が設けられている。これらの連通孔37は、モジュール本体11の各連通孔26とそれぞれ連通されている。連通孔37は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で円形状を呈している(図5参照)。
【0038】
ケース33の底面には、略枠状の接合用突起38がそれぞれ設けられている(図5参照)。接合用突起38は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路39を形成する。接合用突起38は、モジュール本体11の接合用突起27と接合される。接合用突起38は、接合用突起27に対応する形状及び寸法を有している。従って、流路39は、X軸方向に垂直な方向に切った断面で矩形状を呈している。一方の列の流路39は、他方の列の流路39に対してZ軸方向にずれている。
【0039】
接合用突起38は、図5に示されるように、一方の列の流路39を形成する枠部40と、他方の列の流路39を形成する枠部41とを有している。枠部40,41は同じ形状を有しており、Z軸方向において互いにずれている。枠部40,41間にはZ軸方向に延在する隙間が形成されている。なお、図5は、圧力調整弁12の斜視図である。
【0040】
また、ケース33は、図4に示されるように、弁体34を収容する複数(ここでは6つ)の収容凹部44aを形成する内壁部44を有している。内壁部44は、底壁部36と一体化されている。収容凹部44aは、X軸方向に垂直な方向に切った断面で円形状を呈している。収容凹部44aは、連通孔37と連通可能となっている。
【0041】
弁体34は、連通孔37を塞ぐように収容凹部44aに収容されている。弁体34は、連通孔37を開閉させる。弁体34の側面34cと内壁部44の内壁面との間には、隙間Gが設けられている(図6参照)。
【0042】
カバー35は、ケース33の開口を塞ぐ板状部材である。カバー35は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。カバー35は、ケース33の開口端面に熱溶着により接合されている。カバー35は、複数の弁体34をケース33の底壁部36に押し付ける押圧部材としても機能する。ケース33の内壁部44とカバー35との間には、収容凹部44aと連通した収容空間Sが設けられている。また、カバー35には、複数(ここでは2つ)の排気口45が設けられている。排気口45は、収容空間Sと連通されている。
【0043】
このような圧力調整弁12において、ケース33の連通孔37は、二次シール部23の連通孔26及び一次シール部22の連通孔25を通してモジュール本体11の内部空間Vと連通されている。内部空間Vの圧力が設定圧よりも低いときは、連通孔37が弁体34によって塞がれた閉弁状態に維持される。内部空間Vの圧力が上昇して設定圧以上になると、弁体34が底壁部36から離間するように弾性変形し、連通孔37の閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、内部空間Vからのガスが弁体34の側面34cと内壁部44の内壁面との隙間G及び収容空間Sを通って排気口45から排出されるようになる(図6参照)。
【0044】
図6は、圧力調整弁12の一部を示す断面図である。図6に示されるように、弁体34は、連通孔37を塞ぐシール面34aと、カバー35によって押圧される押圧面34bと、シール面34aと押圧面34bとを接続する側面34c(外側面)とを有する。弁体34は、シール面34aに交差する方向に延在する軸を有する柱状部材(例えば円柱状部材)である。
【0045】
シール面34aは、ケース33の底壁部36と弁体34との間をシールする。シール面34aは、連通孔37の縁に設けられた突起37aに接触している。シール面34aの縁は、連通孔37の外側に位置しており、例えば円形状を有する。押圧面34bの縁は、シール面34aの縁と同じ形状を有している。弁体34の側面34cと内壁部44の内壁面との間には、収容空間Sと連通された隙間Gが設けられている。したがって、隙間Gは、収容空間S及び排気口45を介して圧力調整弁12の外部空間と連通されている。
【0046】
弁体34は、第1部分50と第2部分51とを有する。第1部分50と第2部分51とは互いに別体である。第1部分50及び第2部分51は、弁体34の軸方向に沿って並んで配置される。第1部分50は、連通孔37を塞ぐシール面34aを有する。第1部分50は、シール面34aに交差する方向に延在する軸を有する第1柱状部材(例えば円柱状部材)である。第1部分50は第1ガス透過度を有する第1材料を含む。第1材料は、高い耐アルカリ性を有し、高いシール性を有する。第1材料は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴムを含む。第1部分50の全質量を基準として第1材料の組成比は例えば90質量%以上である。第1材料は、例えば熱可塑性エラストマー等の樹脂であってもよい。
【0047】
第2部分51は、カバー35によって押圧される押圧面34bを有する。第2部分51は、シール面34aに交差する方向に延在する軸を有する第2柱状部材(例えば円柱状部材)である。第2部分51は、側面34cにおいて露出している。第2部分51は、第1ガス透過度よりも小さい第2ガス透過度を有する第2材料を含む。第2材料は、例えばゴムと添加剤とを含む。ゴムとしては、第1材料と同じ種類のゴムが使用され得る。第2部分51の全質量を基準として第2材料の組成比は例えば90質量%以上である。添加剤の添加量を調整することによって、第2材料の第2ガス透過度を調整することができる。
【0048】
第2ガス透過度は、例えば、常温(25℃)において水素ガスに対して1×10-11mol/(m・s・Pa)以下である。第2ガス透過度は、第1透過係数よりも低く、透過係数が低いほど望ましい。第2ガス透過度は、JIS K 6275-1における圧力センサ法に従って測定される。第2材料は、例えば熱可塑性エラストマー等の樹脂であってもよいし、金属であってもよい。
【0049】
弁体34は、複数の第1部分50と複数の第2部分51とを備え、柱状の弁体34の軸方向に沿って第1部分50と第2部分51とが交互に配列されてもよい。例えば、複数の第1部分50間に第2部分51としての金属箔を介在させてもよい。
【0050】
上述のバイポーラ電池2では、内部空間Vにおいてガスが発生した場合、ガスは、連通孔25,26,37を通って弁体34のシール面34aに到達する。ここで、ガスの一部は、圧力調整弁12が閉じた状態で、シール面34aから弁体34を透過して側面34cから隙間Gに漏れ出る。隙間Gに漏れ出たガスは、収容空間S及び排気口45を経由して圧力調整弁12の外部空間に排出される。弁体34の第2部分51は低いガス透過度を有する第2材料を含むので、弁体34のガス透過量を小さくできる。したがって、圧力調整弁12が閉じた状態におけるガス透過量を抑制できる。また、第2部分51が、シール面34aに交差する方向に延在する軸を有する第2柱状部材であるので、第2柱状部材の高さを調整することによって、弁体34のガス透過量を高精度に制御できる。
【0051】
図7は、第1変形例に係る圧力調整弁112の一部を示す断面図である。図7に示される圧力調整弁112は、弁体34に代えて弁体134を備えること以外は図6の圧力調整弁12と同じ構成を有する。弁体134は、連通孔37を塞ぐシール面134aと、カバー35によって押圧される押圧面134bと、シール面134aと押圧面134bとを接続する側面134c(外側面)とを有する。弁体134は、シール面134aに交差する方向に延在する軸を有する柱状部材(例えば円柱状部材)である。シール面134a、押圧面134b及び側面134cは、シール面34a、押圧面34b及び側面34cとそれぞれ同じ構成を有する。
【0052】
弁体134は、第1部分150と第2部分151とを有する。第1部分150と第2部分151とは互いに別体である。第1部分150は、連通孔37を塞ぐシール面34aと、カバー35によって押圧される押圧面134bとを有する。第1部分150は、シール面34aを有する第1板状部150aと、押圧面134bを有する第2板状部150bと、第1板状部150aと第2板状部150bとを連結し、シール面34aに交差する方向に延在する軸を有する柱状部150cとを有する。第1板状部150a及び第2板状部150bの径は、柱状部150cの径よりも大きい。第1部分150の第1材料は、第1部分50の第1材料と同じである。
【0053】
第2部分151は、第1部分150の柱状部150cを取り囲む環状部材(例えば円環状部材)である。第2部分151は、柱状部150cを全周又はその一部にわたって取り囲む。第2部分151は、側面134cにおいて露出している。第2部分151の外径は、第1板状部150a及び第2板状部150bの径と同じである。第2部分151の内径は、柱状部150cの径と同じである。第2部分151の第2材料は、第2部分51の第2材料と同じである。
【0054】
図7のバイポーラ電池2では、内部空間Vにおいてガスが発生した場合、ガスは、連通孔25,26,37を通って弁体134のシール面134aに到達する。ここで、ガスの一部は、圧力調整弁112が閉じた状態で、シール面134aから弁体134を透過して側面34cから隙間Gに漏れ出る。隙間Gに漏れ出たガスは、収容空間S及び排気口45を経由して圧力調整弁112の外部空間に排出される。弁体134の第2部分151は低いガス透過度を有する第2材料を含むので、弁体134のガス透過量を小さくできる。したがって、圧力調整弁112が閉じた状態におけるガス透過量を抑制できる。また、第1部分150が第1板状部150a、第2板状部150b及び柱状部150cを有し、第2部分151が環状部材であるので、第2部分151がシール面134aの面圧に与える影響を抑制できる。例えば、弁体134の軸方向における第2部分151の寸法を短くすると、第2部分151がシール面134aの面圧に与える影響を更に抑制できる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0056】
上記実施形態では、連通孔37を有するケース33が第1部材であるが、第1部材は、連通孔37を有する他の部材(例えば底壁部36のみの部材)であってもよい。また、上記実施形態では、弁体34を押圧するカバー35が第2部材であるが、第2部材は、弁体34を押圧する他の押圧部材であってもよい。
【0057】
第1部分及び第2部分の形状は、図6及び図7に示される形状に限定されない。例えば、図7において第2部分151が押圧面134bの一部又は全部を有してもよい。
【0058】
上記実施形態では、電池モジュールとしてのバイポーラ電池2はニッケル水素二次電池であるが、本発明は、特にニッケル水素二次電池には限られず、リチウムイオン二次電池等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
2…バイポーラ電池(電池モジュール)、11…モジュール本体、12,112…圧力調整弁、13…バイポーラ電極、15…電極積層体、16…枠体、25,26…連通孔(第1連通孔)、33…ケース(第1部材)、34,134…弁体(弾性部材)、34a,134a…シール面、34b,134b…押圧面、35…カバー(第2部材)、37…連通孔(第2連通孔)、50,150…第1部分、51,151…第2部分、150a…第1板状部、150b…第2板状部、150c…柱状部、V…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7