IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-接合体の製造方法 図1
  • 特許-接合体の製造方法 図2
  • 特許-接合体の製造方法 図3
  • 特許-接合体の製造方法 図4
  • 特許-接合体の製造方法 図5
  • 特許-接合体の製造方法 図6
  • 特許-接合体の製造方法 図7
  • 特許-接合体の製造方法 図8
  • 特許-接合体の製造方法 図9
  • 特許-接合体の製造方法 図10
  • 特許-接合体の製造方法 図11
  • 特許-接合体の製造方法 図12
  • 特許-接合体の製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018136459
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020010917
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 真吾
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-322192(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103820(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090473(WO,A1)
【文献】米国特許第06170145(US,B1)
【文献】特開2003-311355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/28
B21J 5/00-5/12
B21J 13/00-13/14
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の円筒部材の内部に、複数のワイヤからなるワイヤ束の一部を、ロータリースウェージングにおけるダイスの回転方向に沿って回転自由に配置し、
第二の円筒部材の一端側から、前記ワイヤ束の端部を前記第二の円筒部材に挿入し、
前記第一の円筒部材を支持しながら、前記第二の円筒部材をロータリースウェージングによって縮径することにより、前記ワイヤ束を前記第二の円筒部材に結束固定する、
接合体の製造方法。
【請求項2】
前記ワイヤ束の端部のうち、前記第二の円筒部材に挿入する側とは反対側の端部を結束した後に、前記ワイヤ束を前記第一の円筒部材の内部に配置し、
前記ワイヤ束を前記第二の円筒部材に結束固定した後に、前記ワイヤ束を所定形状へと変形加工する請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記ワイヤ束を構成する複数のワイヤとは異なる他のワイヤの端部を、前記第二の円筒部材の他端側から前記第二の円筒部材に挿入し仮固定した後、
前記第二の円筒部材の一端側から、前記ワイヤ束の端部を前記第二の円筒部材に挿入し仮固定し、
前記他のワイヤおよび前記ワイヤ束に張力を付与して緊張状態とした後に、前記第一の円筒部材を支持しながら、かつ前記緊張状態を維持しながら、前記第二の円筒部材をロータリースウェージングによって縮径することにより、前記他のワイヤおよび前記ワイヤ束を前記第二の円筒部材に結束固定する請求項1に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の体内に内視鏡を経由して挿入され、胆石や腎結石等を回収するバスケット型の内視鏡用処置具が知られている。これらの内視鏡用処置具は、例えば特許文献1に示すように、複数の弾性ワイヤ(以下、「ワイヤ」という)が金属パイプによって束ねて固定された構造を有している。ワイヤは、従来ステンレス材料が主に用いられてきたが、近年では、バスケット形状の復元性等に有利な超弾性や形状記憶性を有するNiTi等の機能性合金材料を用いるケースが増えている。
【0003】
複数のワイヤを金属パイプによって結束固定する場合、従来のステンレス材料では半田、ロウ付け、接着、溶接等の方法が用いられていたが、NiTi等の機能性合金材料は熱影響によって超弾性や形状記憶の特性が変動しやすいため、ロウ付けや溶接による接合には不向きであった。また、半田や接着は、ロウ付けや溶接よりも接合強度が低い為、ワイヤを強固に固定したい場合には不向きであった。
【0004】
一方、金属パイプを縮径することにより複数のワイヤを結束固定する機械的締結は、ワイヤの特性に影響を与えない有用なワイヤ接合方法である。その中でも、ロータリースウェージングは、金属パイプの外径を均等に縮径して複数のワイヤを結束固定するため、内視鏡用処置具のようなチューブ状のシース内に収納される構造体に対して適性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-52668公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロータリースウェージングを利用して複数のワイヤを金属パイプに結束固定する場合、ロータリースウェージング装置のダイスを回転させながら金属パイプの外周を打撃することにより金属パイプを縮径する。そのため、金属パイプがダイスの回転方向に連れ回り、それに伴い複数のワイヤが捩じれて変形してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数のワイヤを変形させることなく結束固定することができる接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る接合体の製造方法は、第一の円筒部材の内部に、複数のワイヤからなるワイヤ束の一部を、ロータリースウェージングにおけるダイスの回転方向に沿って回転自由に配置し、第二の円筒部材の一端側から、前記ワイヤ束の端部を前記第二の円筒部材に挿入し、前記第一の円筒部材を支持しながら、前記第二の円筒部材をロータリースウェージングによって縮径することにより、前記ワイヤ束を前記第二の円筒部材に結束固定する。
【0009】
また、本発明に係る接合体の製造方法は、上記発明において、前記ワイヤ束の端部のうち、前記第二の円筒部材に挿入する側とは反対側の端部を結束した後に、前記ワイヤ束を前記第一の円筒部材の内部に配置し、前記ワイヤ束を前記第二の円筒部材に結束固定した後に、前記ワイヤ束を所定形状へと変形加工してもよい。
【0010】
また、本発明に係る接合体の製造方法は、上記発明において、前記ワイヤ束を構成する複数のワイヤとは異なる他のワイヤの端部を、前記第二の円筒部材の他端側から前記第二の円筒部材に挿入し仮固定した後、前記第二の円筒部材の一端側から、前記ワイヤ束の端部を前記第二の円筒部材に挿入し仮固定し、前記他のワイヤおよび前記ワイヤ束に張力を付与して緊張状態とした後に、前記第一の円筒部材を支持しながら、かつ前記緊張状態を維持しながら、前記第二の円筒部材をロータリースウェージングによって縮径することにより、前記他のワイヤおよび前記ワイヤ束を前記第二の円筒部材に結束固定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワイヤ束をロータリースウェージングにおける回転方向に対して固定していないため、ロータリースウェージングの際に第二の円筒部材が前記回転方向に連れ回った際に、ワイヤ束も同期して連れ回る。そのため、ワイヤ束を第二の円筒部材に結束固定する際に、当該ワイヤ束が捩じれて変形することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る接合体の製造方法を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る接合体の製造方法におけるスウェージング工程と、スウェージング工程で用いるロータリースウェージング装置の構成を説明するための断面図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図3の状態からスピンドルを回転させた状態を示す断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係る接合体の製造方法を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施の形態2に係る接合体の製造方法における結束工程、配置工程、第一の挿入工程および第二の挿入工程を説明するための断面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態2に係る接合体の製造方法における変形加工工程を説明するための断面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態3に係る接合体の製造方法を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施の形態3に係る接合体の製造方法における配置工程、第一の挿入工程、第二の挿入工程および仮固定工程を説明するための断面図である。
図10図10は、本発明の実施の形態3に係る接合体の製造方法におけるスウェージング工程を説明するための断面図である。
図11図11は、従来の接合体の製造方法におけるスウェージング工程と、スウェージング工程で用いるロータリースウェージング装置の構成を説明するための断面図である。
図12図12は、従来の接合体の一例を示す断面図である。
図13図13は、従来の接合体のその他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る接合体の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。また、以下で参照する各図面において、同一部分には同一の符号を付して示している。また、以下で参照する一部の断面図では、ワイヤを除いた構成を断面で示している。
【0014】
本発明の説明を行う前に、ロータリースウェージングを利用した従来の接合体の製造方法について、図11図13を参照しながら説明する。まず、複数のワイヤ31の端部を円筒部材34内に配置し、ワイヤ31と円筒部材34とを位置決めして仮固定する。仮固定の方法は、ワイヤ31の端部と円筒部材34とが容易にずれなければ特に限定されないが、一般的にはカシメ加工が用いられている。
【0015】
続いて、図11に示すように、円筒部材34をロータリースウェージング装置2の加工部21に挿入する。このとき、ワイヤ31の少なくとも一方は、ロータリースウェージング装置2の回転方向Rに固定した状態でスウェージング加工を行う。スウェージング加工によって、円筒部材34がダイス212によって縮径され、ワイヤ31が円筒部材34に結束固定される。そして、接合体を加工部21から引き抜いて加工完了となる。
【0016】
複数のワイヤ31と円筒部材34とを接合してなる接合体は、図12に示すように複数のワイヤ31の端部のみを円筒部材34に結束固定した構造でもよく、あるいは図13に示すように複数のワイヤ31の端部と別のワイヤ32の端部とを突き合わせて連結し、円筒部材34に固定した構造でもよい。
【0017】
このような従来の接合体の製造方法では、前記したように、ロータリースウェージングの際に円筒部材34が連れ回ることにより、複数のワイヤ31が捩じれて変形してしまうという問題があった。なお、例えば複数のワイヤ31が太径である場合は、回転方向の力に対する耐性が高いため連れ回りは生じない。しかしながら、内視鏡処置具では、複数のワイヤ31や円筒部材34がいずれも細径であるため、回転方向の力に対する耐性が低く、複数のワイヤ31の捩れによる変形の問題が顕著となる。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る接合体の製造方法について、図1図4を参照しながら説明する。本実施の形態に係る接合体の製造方法は、複数のワイヤからなるワイヤ束を、ロータリースウェージングによって円筒部材に結束固定することにより、接合体を製造する方法であり、図1に示すように、配置工程S1と、第一の挿入工程S2と、第二の挿入工程S3と、スウェージング工程S4と、をこの順で行う。
【0019】
本実施の形態に係る接合体の製造方法では、具体的には図2に示す複数のワイヤ11(ワイヤ束)の端部と、ワイヤ12の端部とを、円筒部材(第一の円筒部材)13およびロータリースウェージング装置2を用いて、円筒部材(第二の円筒部材)14に結束固定する。なお、本実施の形態に係る製造方法で製造した接合体は、例えばバスケットやスネア等の内視鏡用処置具として用いられる。
【0020】
複数のワイヤ11は、具体的にはNiTiからなる細径の弾性ワイヤである。ワイヤ12は、複数のワイヤ11と同様にNiTiからなる細径の弾性ワイヤであり、本実施の形態ではワイヤ11よりも太い径で構成されている。
【0021】
円筒部材13は、複数のワイヤ11を合わせた外径よりも大きな内径を有するパイプである。円筒部材13の内径は、縮径加工後の円筒部材14の外径よりも大きいことが望ましいが、例えば分割可能な構造であれば、縮径加工後の円筒部材14よりも小さくてもよい。また、円筒部材13の材質は特に限定されない。
【0022】
円筒部材14は、ワイヤ12の外径よりも大きな内径を有する金属製のパイプであり、例えばステンレス等で構成されている。なお、本実施の形態および後記する実施の形態2,3で参照する図面では、説明の便宜上、円筒部材13,14内のワイヤ11,12を透過させて示している。
【0023】
ロータリースウェージング装置2は、主に加工部21とモータ22とから構成されている。加工部21は、図2および図3に示すように、スピンドル211と、一対のダイス212と、一対のバッカー213と、ローラ214と、を備えている。モータ22は、加工部21のスピンドル211と連結されている。そのため、モータ22の回転は、スピンドル211に伝達される。
【0024】
一対のダイス212は、スピンドル211の回転軸を中心として対称の位置に配置されている。一対のダイス212は、図3に示すように、スピンドル211の回転に伴う遠心力によって開くが、図4に示すように、ダイス212の外側に配置されたバッカー213がローラ214を通過する際に、当該バッカー213によってスピンドル211の回転軸中心方向に押されて閉じる。
【0025】
ロータリースウェージング装置2では、これらの動作が連続的に行われることにより、一対のダイス212がスピンドル211の回転軸周りに回転しながら開閉を繰り返す。そして、スピンドル211の回転軸に合わせて複数のワイヤ11および円筒部材14を挿入することにより、一対のダイス212によって円筒部材14が端部から徐々に縮径し、複数のワイヤ11が円筒部材14に結束固定される。
【0026】
<配置工程>
配置工程では、複数のワイヤ11の一部を、ロータリースウェージングにおける回転方向Rに対して回転自由に、すなわち回転方向Rに対して固定することなく、非固定状態で円筒部材13の内部に配置する。なお、複数のワイヤ11がロータリースウェージングにおける回転方向Rに対して回転自由であればよいため、回転方向Rに対して固定されていない円筒部材13の内部に複数のワイヤ11を固定してもよい。
【0027】
<第一の挿入工程>
第一の挿入工程では、円筒部材14の一端側から、複数のワイヤ11の端部を円筒部材14に挿入する。なお、本工程では、複数のワイヤ11を、ロータリースウェージングにおける回転方向Rに対して回転自由に、すなわち回転方向Rに対して固定することなく、非固定状態で円筒部材14に挿入する。また、本工程では、複数のワイヤ11に交差等の異常がない状態で、円筒部材14に挿入する。
【0028】
<第二の挿入工程>
第二の挿入工程では、円筒部材14の他端側から、ワイヤ12の端部を円筒部材14に挿入する。なお、本工程では、ワイヤ12を、ロータリースウェージングにおける回転方向Rに対して回転自由に、すなわち回転方向Rに対して固定することなく、非固定状態で円筒部材14に挿入する。
【0029】
<スウェージング工程>
スウェージング工程では、ロータリースウェージング装置2を稼働し、複数のワイヤ11とワイヤ12とが挿入された円筒部材14を、加工部21内に挿入する。そして、円筒部材13を支持しながら、円筒部材14をロータリースウェージングによって縮径することにより、複数のワイヤ11およびワイヤ12を円筒部材14に結束固定する。そして、接合体を加工部21から引き抜き、かつ円筒部材13から接合体を取り外して、加工完了となる。
【0030】
なお、スウェージング工程では、円筒部材14の軸を、スピンドル211の回転軸と一致させた状態で、複数のワイヤ11およびワイヤ12が挿入された円筒部材14を加工部21内に挿入する。また、本工程では、例えば一軸ロボット等を用いて、複数のワイヤ11およびワイヤ12が挿入された円筒部材14を定速で加工部21内に挿入してもよい。
【0031】
以上説明したような本実施の形態1に係る接合体の製造方法によれば、複数のワイヤ11をロータリースウェージングにおける回転方向Rに対して固定していないため、ロータリースウェージングの際に円筒部材14が回転方向Rに連れ回った際に、複数のワイヤ11も同期して連れ回る。そのため、複数のワイヤ11を円筒部材14に結束固定する際に、当該複数のワイヤ11が捩じれて変形することがない。従って、本実施の形態1に係る接合体の製造方法によれば、設計通りの製品形状を実現し接合部の信頼性が高い内視鏡用処置具を提供することができる。
【0032】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る接合体の製造方法について、図5図7を参照しながら説明する。本実施の形態に係る接合体の製造方法は、図5に示すように、結束工程S11と、配置工程S12と、第一の挿入工程S13と、第二の挿入工程S14と、スウェージング工程S15と、変形加工工程S16と、をこの順で行う。なお、本実施の形態における配置工程、第一の挿入工程および第二の挿入工程の内容は、前記した実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0033】
<結束工程>
結束工程では、複数のワイヤ11の端部のうち、円筒部材14に挿入する側とは反対側の端部を結束する。本工程では、具体的には図6に示すようなキャップ15を用いて、複数のワイヤ11の端部を結束する。なお、ワイヤ11の先端は必ずしも結束されてなくてもよく、例えば一本のワイヤ11の先端を折り返した構造であってもよい。
【0034】
<スウェージング工程>
スウェージング工程では、ロータリースウェージング装置2を稼働し、予めキャップ15によって先端が結束された複数のワイヤ11とワイヤ12とが挿入された円筒部材14を、加工部21内に挿入する。なお、加工部21内に挿入する前に、複数のワイヤ11およびワイヤ12を円筒部材14に仮固定してもよい。そして、円筒部材13を支持しながら、円筒部材14をロータリースウェージングによって縮径することにより、複数のワイヤ11およびワイヤ12を円筒部材14に結束固定する。そして、接合体を加工部21から引き抜き、かつ円筒部材13から接合体を取り外して、加工完了となる。
【0035】
なお、本実施の形態で用いる円筒部材13の内径は、キャップ15および縮径加工後の円筒部材14よりも大きいことが望ましいが、例えば分割可能な構造であれば、キャップ15および縮径加工後の円筒部材14よりも小さくてもよい。
【0036】
<変形加工工程>
変形加工工程では、図7に示すように、スウェージング工程において円筒部材14に結束固定された複数のワイヤ11を所定形状へと変形加工する。ワイヤ11の変形加工部111の形状は、同図に示すような屈曲形状であってもよく、あるいは曲線形状(円弧状)であってもよい。また、本工程における変形加工の方法は特に限定されず、複数のワイヤ11が円筒部材14に結束固定された結束固定部の固定力量が著しく低下しなければ、冷間加工と熱間加工のいずれであってもよい。
【0037】
以上説明したような本実施の形態2に係る接合体の製造方法によれば、前記した実施の形態1と同様に、複数のワイヤ11をロータリースウェージングにおける回転方向Rに対して固定していないため、ロータリースウェージングの際に複数のワイヤ11が捩じれて変形することがない。
【0038】
また、例えばスウェージング工程の前に変形加工工程を行おうとすると、変形加工部111に対するダイス212の干渉を防ぐために、図7のB部で示した変形加工部111と円筒部材14との間に、所定長さの直線部を設ける必要がある。従って、スウェージング工程の前に変形加工工程を行う場合は、接合体の形状設計に制約が生じることになる。
【0039】
一方、本実施の形態2に係る接合体の製造方法では、スウェージング工程の後に変形加工工程を行うため、複数のワイヤ11に前記したような直線部を設ける必要がなく、設計自由度の高い高性能の接合体を製造することができる。
【0040】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る接合体の製造方法について、図8図10を参照しながら説明する。本実施の形態に係る接合体の製造方法は、図8に示すように、配置工程S21と、第一の挿入工程S22と、第二の挿入工程S23と、仮固定工程S24と、スウェージング工程S25と、をこの順で行う。なお、本実施の形態における配置工程、第一の挿入工程および第二の挿入工程の内容は、前記した実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
<仮固定工程>
仮固定工程では、図9に示すように、円筒部材14の一端側から挿入した複数のワイヤ11の端部と、円筒部材14の他端側から挿入したワイヤ12の端部とを、円筒部材14に仮固定する。なお、仮固定の順序は限定されず、複数のワイヤ11の端部側もしくはワイヤ12の端部側のいずれからでもよい。また、仮固定の方法は特に限定されないが、例えばカシメ加工を用いることができる。また、カシメ加工には、例えば4インデント圧着ペンチ等を用いることができる。なお、同図に示した仮固定部141の仮固定力は、後の工程でワイヤ12に付与する張力に耐えられる程度とする。
【0042】
<スウェージング工程>
スウェージング工程では、ロータリースウェージング装置2を稼働し、複数のワイヤ11およびワイヤ12が挿入された円筒部材14を加工部21内に挿入する。そして、図10に示すように、複数のワイヤ11およびワイヤ12に張力を付与することにより、複数のワイヤ11およびワイヤ12を緊張状態とする。なお、張力を付与する手段は特に限定されないが、例えば一定張力を付与するエアシリンダや重り等を用いることができる。また、本工程では、複数のワイヤ11およびワイヤ12のうち、少なくともワイヤ12に張力を付与すればよい。
【0043】
次に、円筒部材13を支持しながら、かつ前記した緊張状態を維持しながら、円筒部材14をロータリースウェージングによって縮径することにより、複数のワイヤ11およびワイヤ12を円筒部材14に結束固定する。そして、接合体を加工部21から引き抜き、かつ円筒部材13から接合体を取り外して、加工完了となる。
【0044】
以上説明したような本実施の形態3に係る接合体の製造方法によれば、前記した実施の形態1と同様に、複数のワイヤ11をロータリースウェージングにおける回転方向Rに対して固定していないため、ロータリースウェージングの際に複数のワイヤ11が捩じれて変形することがない。
【0045】
また、複数のワイヤ11およびワイヤ12を円筒部材14に仮固定してロータリースウェージングを行うと、円筒部材14に伸びが生じる。これにより、複数のワイヤ11およびワイヤ12も伸びて弛み、ロータリースウェージング時に一対のダイス212に複数のワイヤ11またはワイヤ12が噛み込まれる不具合が発生しやすくなる。
【0046】
一方、本実施の形態3に係る接合体の製造方法では、複数のワイヤ11およびワイヤ12を緊張状態とすることにより、複数のワイヤ11またはワイヤ12が弛むことがないため、ダイス212への噛み込みを抑制することができる。
【0047】
以上、本発明に係る接合体の製造方法について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
11,12,31,32 ワイヤ
111 変形加工部
13,14,34 円筒部材
141 仮固定部
15 キャップ
2 ロータリースウェージング装置
21 加工部
211 スピンドル
212 ダイス
213 バッカー
214 ローラ
22 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13