(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】白質卒中の治療のための幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞
(51)【国際特許分類】
A61K 35/30 20150101AFI20220204BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220204BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220204BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220204BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220204BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220204BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220204BHJP
【FI】
A61K35/30 ZMD
A61P25/28
A61P9/10
A61K9/10
A61K9/107
A61K47/36
A61K47/42
(21)【出願番号】P 2018527857
(86)(22)【出願日】2016-08-15
(86)【国際出願番号】 US2016047109
(87)【国際公開番号】W WO2017031092
(87)【国際公開日】2017-02-23
【審査請求日】2019-08-13
(32)【優先日】2015-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514000015
【氏名又は名称】アステリアス バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】6300 Dumbarton Circle, Fremont, California 94555 UNITED STATES OF AMERICA
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルト,エドワード,ディー.,サード
(72)【発明者】
【氏名】カーマイケル,スタンリー,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ロレンソ ジョレンテ,アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】マンリー,ネイサン,シー.
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-532079(JP,A)
【文献】特表2005-517717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0315805(US,A1)
【文献】特表2013-532690(JP,A)
【文献】特開2014-076048(JP,A)
【文献】Stem Cell Research,2010年,Vol.5,pp.91-103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳虚血傷害により損傷を受けた運動または認知機能の治療薬を製造するための、治療有効量のヒト幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞の使用であって、前記ヒト幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞がネスチン、NG2、及びPDGR-Rαを発現
し、梗塞中心部から0.05mm~3mmに投与される、使用。
【請求項2】
前記傷害が卒中である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記傷害が皮質下白質卒中である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ヒト幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞が、虚血傷害の亜急性期中に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記オリゴデンドロサイト前駆細胞が、ヒト胚性幹細胞(hESC)由来である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記オリゴデンドロサイト前駆細胞が、ヒト誘導性多能性幹細胞(iPSC)由来である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記ヒト幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞が、デポー送達系を使用して投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記デポー送達系がハイドロゲルを含む、
請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ヒト幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を含み、前記オリゴデンドロサイト前駆細胞がネスチン、NG2、及びPDGR-Rαを発現
し、梗塞中心部から0.05mm~3mmに投与される、皮質下白質卒中の治療のための医薬組成物。
【請求項10】
デポー送達系をさらに含む、
請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記デポー送達系がハイドロゲルを含む、
請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ハイドロゲルがヒアルロナンおよび/またはゼラチンを含む、
請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ハイドロゲルがチオール化ヒアルロン酸を含む、
請求項11又は12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ハイドロゲルがチオール化ゼラチンを含む、
請求項11から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ハイドロゲルが架橋結合剤を含む、
請求項11から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記前駆細胞が成体幹細胞由来である、
請求項9から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記前駆細胞が誘導性多能性幹細胞(IPSC)由来である、
請求項9から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記前駆細胞が、胚性胎児組織から得られたものではない幹細胞由来である、
請求項9から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、その内容が本明細書に全体が組み込まれる、2015年8月15日に出願された米国特許仮出願第62/205,723号の優先権を主張する。
【0002】
様々な実施形態では、インビトロにおいて分化させたオリゴデンドロサイト前駆細胞、および脳虚血傷害の治療にそれを使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
米国では、皮質下白質卒中(WMS)は、毎年新たに生じる卒中795,000例の25%をも占めており、認知症の第2の主要原因である。正常なヒトの老化過程において、脳の白質領域は明白であるが臨床症状を示さない虚血に関連する進行性の損傷を受ける。この種の虚血は、大脳動脈を閉塞することなく生じ、卒中損傷に典型的な臨床症状を伴わずに生じることがあるので、しばしば「小血管疾患」と呼ばれる(Gorelickら(2011)Stroke 42(9):2672)。WMSの指標となる脳の白質病変は、卒中に罹患したことがない無症候性の個体の脳画像で検出され(DebetteおよびMarkus(2010)British Medical Journal 341:c3666)、年齢と共に蓄積するので80歳を超える個体の事実上全てにおいて存在する(de Leeuwら(2001)J Neurol Neurosurg Psychiatry 70:9)。白質傷害の程度は認知、平衡および歩調の異常と密接に相関し、死亡する危険性が増加する(Zhengら(2011)Stroke 42(7):2086;DebetteおよびMarkus、(2010)British Medical Journal 341:c3666)。この虚血性白質傷害の蓄積進行は、認知症の第2の主要原因で、アルツハイマー病と相互作用するとこの疾病は悪化し、ことによると加速する可能性もある(Gorelickら(2011)Stroke 42(9):2672;DeCarliら(2013)J Alzheimers Dis.33(Suppl 1):S417)。現在のところ、WMSに利用可能な療法はない。
【0004】
WMSの患者において神経機能を修復するために有望で実行可能な一つの療法は細胞移植である。WMSは、伝統的な卒中モデルで生じる細胞傷害とは非常に異なるパターンを有する。WMSで損傷を受けた神経要素は、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)、星状細胞および軸索を含む。ヒト胚性幹細胞由来オリゴデンドロサイト細胞(hESC-OPC)は、WMS療法の魅力的な候補である。これらの細胞は、白質虚血において最も損傷を受けた細胞要素、オリゴデンドロサイト系列の細胞に一致する系列にあり、脳の白質領域のミエリン化細胞であるオリゴデンドロサイトの元となる(Richardsonら(2011) Neuron 70(4):661)。さらに、WMSにおいて脳の白質病変は集密的かつ広範で、したがっていかなる細胞療法の候補も注射点から傷害部位に移動する必要がある。OPCは、CNS傷害モデルにおいて広範囲に移動することが示されたことがある(Goldmanら(2012)Science 338(6106):491;Sunら(2013)PLoS One 8(2);e57534)。最後に、OPCは、虚血性白質に対して直接的に修復作用をもたらすことができる、BDNFなどの分泌性神経栄養因子の源である。
【0005】
AST-OPC1は、ヒト胚性幹細胞(hESC)から特異的な分化法を使用して産生されるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の集団である(Nistorら(2005)Glia 49(3):385)。AST-OPC1は、ネスチン、PDGRFαおよびNG2を含むオリゴデンドロサイト前駆体に関連するいくつかの分子の発現によって特徴付けられた。この細胞はさらに、ニューロン、星状細胞、内胚葉、中胚葉およびhESCなどのその他の細胞種に存在することが知られているマーカーの発現が最小限であるか、または欠如していることが特徴である。インビトロにおいて、AST-OPC1はまた、感覚ニューロンからの神経突起伸長を支持する拡散性因子を産生する(Zhangら(2006)Stem Cells Dev.15(6):943)。AST-OPC1は、脊髄傷害モデルにおいて広範囲に移動することが示されたことがある(Keirsteadら、(2005)Neurosci 25(19):4694)。
【発明の概要】
【0006】
WMSを含む脳の虚血傷害のための新規療法を開発することが必要である。さらに、WMSなどのミエリン修復および/または再ミエリン化を必要とする状態のための細胞治療で使用する高純度で臨床グレードのオリゴデンドロサイト前駆細胞が必要である。本明細書で記載した組成物および方法は、これらの必要性ならびにこの分野におけるその他の必要性を満たす。
【0007】
本明細書で記載した様々な実施形態では、特に、脳虚血傷害後の対象を治療するための方法を提供する。一部の実施形態では、脳虚血傷害は白質の皮質下卒中である。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。様々な実施形態では、本方法は、一般的に、治療有効量の多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を、対象の脳内に投与することを含む。一部の実施形態では、オリゴデンドロサイト前駆細胞はヒト胚性幹細胞由来である。その他の実施形態では、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、成体幹細胞、誘導性多能性幹細胞などのヒト胚性幹細胞以外の原料由来である。一部の実施形態では、本方法は、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を梗塞中心部内に投与することを含む。その他の実施形態では、本方法は、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を梗塞中心部に直接隣接して投与することを含む。
【0008】
ある特定の実施形態では、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞は、虚血傷害後の亜急性期中に投与される。一部の実施形態では、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞は、虚血傷害後の亜急性期早期中に投与される。その他の実施形態では、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞は、亜急性期後期中に投与される。
【0009】
ある特定の実施形態では、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞は、デポー送達系を使用して投与される。一部の実施形態では、デポー送達系はハイドロゲルを含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルはヒアルロン酸を含む。その他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ヒアルロン酸を含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルはゼラチンを含む。さらにその他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ゼラチンを含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルはヒアルロン酸およびゼラチンを含む。その他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ヒアルロン酸およびチオール化ゼラチンを含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルは架橋結合剤を含む。その他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ヒアルロン酸、チオール化ゼラチンおよび架橋結合剤を含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、脳虚血傷害後の対象の運動および/または認知機能および/または発話を改善するための方法であって、治療有効量の多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を、前記対象の脳の梗塞中心部内に、または梗塞中心部に直接隣接して投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞は、ヒト胚性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞である。その他の実施形態では、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、成体幹細胞、誘導性多能性幹細胞などのヒト胚性幹細胞以外の原料由来である。一部の実施形態では、脳虚血傷害は白質の皮質下卒中である。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、本方法は、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を梗塞中心部内に投与することを含む。その他の実施形態では、本方法は、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を梗塞中心部に直接隣接して投与することを含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、本開示は、白質卒中の治療のための医薬組成物を含む容器を提供し、この医薬組成物は、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を含む。ある特定の実施形態では、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞は、ヒト胚性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞である。その他の実施形態では、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、成体幹細胞、誘導性多能性幹細胞などのヒト胚性幹細胞以外の原料由来である。
【0012】
さらに他の実施形態では、本開示は、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞を含む、皮質下白質卒中の治療のための医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態では、多能性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞は、ヒト胚性幹細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞である。その他の実施形態では、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、成体幹細胞、誘導性多能性幹細胞などのヒト胚性幹細胞以外の原料由来である。ある特定の実施形態では、医薬組成物はさらにデポー送達系を含む。一部の実施形態では、デポー送達系はハイドロゲルを含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルはヒアルロン酸を含む。その他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ヒアルロン酸を含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルはゼラチンを含む。さらにその他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ゼラチンを含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルはヒアルロン酸およびゼラチンを含む。その他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ヒアルロン酸およびチオール化ゼラチンを含む。一部の実施形態では、ハイドロゲルは架橋結合剤を含む。その他の実施形態では、ハイドロゲルはチオール化ヒアルロン酸、チオール化ゼラチンおよび架橋結合剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】左半球皮質下卒中の2日後に撮影したヒト白質卒中の代表的な核磁気共鳴画像である。矢印は、同じ患者の以前のスキャンと比較して新しい高強度の白質を示す(元々Sozmenら(2009)J.Neurosci Methods 180(2):261において公表された)。
【
図2】白質卒中のマウスモデルにおいてAST-OPC1を試験する試験1の実験予定表を示した図である。卒中の7日後のAST-OPC1移植および細胞移植の15日後の組織処理を含む、実験計画の重要な時点を示す。AST-OPC1用量=1回の注射1μLとして細胞100,000個/マウス。略語:L-NIO=N5-(1-イミノエチル)-L-オルニチン、2塩酸塩。
【
図3】L-NIOの注射部位を示すマウス脳冠状切断を示した図である。青い矢印は、局所性虚血病変を誘導するために各マウス脳の脳梁内に直接36°の角度で送達したL-NIOの3つの注射部位を示す。略語:Cx=皮質;Str=線条体;WM=白質。
【
図4】卒中によって傷害を受けたマウス脳における星状細胞活性化および軸索損失の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、傷害を受けていない対側半球(
図4A、対照)および卒中で傷害を受けた半球(
図4B、白質卒中)における卒中傷害の3週間後の星状細胞(GFAP)および軸索(NF200)の蛍光免疫染色を示す。
図4Aでは、左の列はGFAP(緑)およびNF200(赤)の統合蛍光画像を示し、中央の列はGFAP単独を示し、右の列はNF200単独を示す。
図4Bでは、左の列はNF200単独を示し、中央の列はGFAP単独を示し、右の列はGFAP(緑)およびNF200(赤)の統合蛍光画像を示す。行は、病変領域(
図4B)および対側(
図4A)の倍率レベルの増加を示す。上の列=40×、中央の列=200×、下の列=600×。白い四角は、下のパネルで拡大した領域を示す。
図4Aの白い点線は、脳梁のおよその境界を示す。アスタリスクは、側脳室を示す。略語:Cx=皮質;GFAP=グリア線維酸性タンパク質;NF200=神経フィラメント200;Str=線条体;WM=白質。
【
図5】卒中傷害を受けたマウス脳において活性化したミクログリア/免疫細胞の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。
図5Aは、
図5B~5Dで示した領域を示すマウス脳冠状切断の図形である。Iba1標識(紫)によって判定した卒中傷害の3週間後の相対的ミクログリア/免疫細胞活性化を、傷害を受けていない対側脳梁(
図5B)および傷害を受けた同側脳梁(
図5C~5E)で示す。
図5Dおよび
図5Eは、
図5Cで示した領域の高倍率画像を示す。
図5Cの白い点線は、梗塞中心部と梗塞周辺組織の間のおよその境界を示す。倍率:
図5Bおよび
図5C=600×;
図5Dおよび
図5E=1000×。略語:Iba1=イオン化カルシウム結合アダプター分子1。
【
図6】卒中傷害を受けたマウス脳におけるミエリン損失およびオリゴデンドロサイト応答の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。傷害を受けていない対側脳梁(
図6A、
図6B)および傷害を受けた同側脳梁(
図6Cおよび
図6D)における卒中傷害3週間後の相対的ミエリン損失(MBP、緑)およびオリゴデンドロサイトの存在(OLIG2、赤)。
図6Aおよび
図6Cでは、左のパネルは、MBPおよびOLIG2の統合画像を示し、中央のパネルはMBP単独を示し、右のパネルはOLIG2単独を示す。
図6Bおよび
図6Dは、
図6Aおよび
図6Cの統合画像の高倍率画像を示す。
図6Eは、
図6A~6Dで示した領域を示すマウス脳冠状切断の図形である。倍率:
図6Aおよび
図6C=600×;
図6Bおよび
図6D=1000×。略語:MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図7】卒中傷害を受けたマウス脳における内在性神経新生の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。卒中傷害の3週間後の病変した脳梁について、相対的神経新生(DCX、白)、ミエリンの存在(MBP、緑)、オリゴデンドロサイトの存在(OLIG2、赤)およびミクログリア/免疫細胞活性化(IBA-1、青)を示す。上のパネル:
図7Aは上のパネル類の統合画像であり、
図7BはDCX単独、
図7CはMBP単独、
図7DはOLIG2単独である。下のパネル:
図7Eは下のパネル類の統合画像であり、
図7FはIBA-1単独、
図7GはDCX単独、
図7HはOLIG2単独である。
図7Aの赤い四角は
図7Eで拡大した領域である。
図7Bの青い楕円は、DCX陽性細胞を示す。倍率:
図7A~7D=200×;
図7E~7H=600×。略語:DCX=ダブルコルチン、IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子1、MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図8】傷害を受けていない脳梁内への細胞注射部位を示すマウス脳冠状切断を示した図形である。矢印は、傷害を受けていない脳梁内のおよその細胞注射部位を示す。略語:Cx=皮質;Str=線条体;WM=白質。
【
図9】AST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていないマウス脳における星状細胞およびミクログリア/免疫細胞活性化の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、傷害を受けていない脳梁内へのAST-OPC1移植の2週間後の対側(
図9A、
図9C)および同側(
図9B、
図9D)内の星状細胞(GFAP)および活性化したミクログリア/免疫細胞(Iba1/IBA-1)の蛍光免疫染色を示す。
図9Aおよび
図9Cでは、左の列はGFAP(緑)およびIba1(赤)の統合蛍光画像を示し、中央の列はGFAP単独を示し、右の列はIba1単独を示す。
図9Bおよび
図9Dでは、左の列はIba1単独を示し、中央の列はGFAP単独を示し、右の列はGFAP(緑)およびIba1(赤)の統合蛍光画像を示す。
図9Aおよび
図9Bの白い四角は、
図9Cおよび
図9Dで示した拡大領域を示す。倍率:
図9Aおよび
図9B=40×;
図9Cおよび
図9D=600×。略語:Cx=皮質;GFAP=グリア線維酸性タンパク質;Iba1/IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子1;Str=線条体。
【
図10】AST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていないマウス脳においてミエリン損失がなく、未成熟ニューロンの移動が最小限であることを示した代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、傷害を受けていない脳梁内へのAST-OPC1移植の2週間後の対側(
図10A、
図10C)および同側(
図10B、
図10D)内のミエリン(MBP)および未成熟ニューロン(DCX)の蛍光免疫染色を示す。
図10Aおよび
図10Bでは、左の列はMBP(緑)およびDCX(赤)の統合蛍光画像を示し、中央の列はMBP単独を示し、右の列はDCX単独を示す。
図10Cおよび
図10Dでは、拡大した小領域においてMBP染色のみが示される。
図10Eは、蛍光顕微鏡で示した領域を示すマウス冠状脳切断の図形である。倍率:
図10Aおよび
図10B=40×;
図10Cおよび
図10D=600×。略語:DCX=ダブルコルチン;MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図11】AST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていないマウス脳において増加したオリゴデンドロサイト応答を示した代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、傷害を受けていない脳梁内へのAST-OPC1移植の2週間後の対側(
図11A~11B)および同側(
図11C~11D)内のオリゴデンドロサイト(OLIG2)、ミエリン(MBP)および活性化したミクログリア/免疫細胞(IBA-1)の蛍光免疫染色を示す。
図11Aでは、パネル1(一番左)は、MBP(緑)およびOLIG2(赤)およびIBA-1(青)の統合蛍光画像を示し、パネル2はIBA-1単独を示し、パネル3はMBP単独を示し、パネル4はOLIG2単独を示す。
図11Bでは、
図11AのIBA-1およびOLIG2の統合画像を示す。
図11Cでは、パネル1(一番左)はOLIG2単独を示し、パネル2はMBP単独を示し、パネル3はIBA-1単独を示し、パネル4はMBP(緑)およびOLIG2(赤)およびIBA-1(青)の統合蛍光画像を示す。
図11Dでは、
図11CのIBA-1およびOLIG2の統合画像を示す。
図11Aと
図11Cの間の図形は、蛍光顕微鏡で示した領域を示す。倍率=200×。略語:Iba1/IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子;MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図12】卒中病変した脳梁内への細胞注射部位を示すマウス脳冠状切断の図形を示した図である。青い矢印は、卒中病変を誘導するためのL-NIOのおよその注射部位を示す。黒い矢印は、卒中病変中心部(赤い領域)内の細胞注射部位のおよその位置を示す。およその病変中心部は青で示す。略語:Cx=皮質;Str=線条体;WM=白質。
【
図13】卒中傷害および病変中心部内部のAST-OPC1移植の後のマウス脳における星状細胞およびミクログリア/免疫細胞活性化の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていない対側半球(
図13A~13C)および卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球(
図13D~13F)における星状細胞(GFAP)および活性化したミクログリア/免疫細胞(IBA-1)の蛍光免疫染色を示す。
図13A、
図13B、
図13Dおよび
図13Eは、低倍率(
図13A、
図13D)および高倍率(
図13B、
図13E)のGFAP免疫染色を示す。
図13Cおよび
図13Fは、左パネルでGFAP(緑)およびIBA-1(オレンジ)の統合画像、中央のパネルでGFAP単独、右パネルでIBA-1単独を高倍率で示す。アスタリスクは、およその病変中心部を示す。倍率:
図13Aおよび
図13D=40×;
図13Bおよび
図13E=200×;
図13Cおよび
図13F=600×。略語:Cx=皮質;GFAP=グリア線維酸性タンパク質;IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子;Str=線条体。
【
図14】卒中傷害および病変中心部内部のAST-OPC1移植の後のマウス脳における星状細胞活性化および軸索損失の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球における星状細胞(GFAP)および軸索(NF200)の蛍光免疫染色を示す。
図14Aは、卒中病変内のGFAP(赤)およびNF200(青)の統合画像を示す。
図14Bは、NF200染色単独を示し、
図14CはGFAP染色単独を示す。
図14A~14Cの白い点線は、脳梁のおよその境界を示す。
図14A~14Cのアスタリスクは、卒中病変のおよその中心部を示す。
図14Dは、
図14A~14Cで示した領域を示すマウス脳冠状切断の図形である。倍率=200×。略語:Cx=皮質;GFAP=グリア線維酸性タンパク質;Str=線条体。
【
図15】卒中傷害および病変中心部内部のAST-OPC1移植の後のマウス脳におけるAST-OPC1位置、ミエリン損失および内在性神経新生の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球におけるAST-OPC1(Hnuc)およびミエリン(MBP)および未成熟ニューロン(DCX)の蛍光免疫染色を示す。
図15A~15Cのパネル1(一番左)は、卒中病変内のHnuc(青)、MBP(緑)およびDCX(赤)の統合画像を示す。
図15Dは、
図15A~15Cで示した領域を示すマウス脳冠状切断の図形である。倍率:
図15A=200×、
図15B=1200×、
図15C=2000×。略語:DCX=ダブルコルチン;Hnuc=抗ヒト核;MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図16】卒中傷害および病変中心部内部のAST-OPC1移植の後のマウス脳におけるミクログリア/免疫細胞活性化、ミエリン損失およびオリゴデンドロサイト応答の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球(
図16A、
図16C)および傷害を受けていない対側半球(
図16B、
図16D)における活性化ミクログリア/免疫細胞(Iba1/IBA-1)、ミエリン(MBP)およびオリゴデンドロサイト(OLIG2)の蛍光免疫染色を示す。
図16Aでは、パネル1(一番左)は卒中病変内のIBA-1(青)、MBP(緑)およびOLIG2(赤)の統合画像を示す。パネル2は、IBA-1単独を示し、パネル3はMBP単独を示し、パネル4はOLIG2単独を示す。
図16Bでは、パネル1(一番左)はOLIG2単独を示し、パネル2はMBP単独を示し、パネル3はIBA-1単独を示し、パネル4は3つの染色全ての統合画像を示す。
図16Cおよび
図16Dは、IBA-1(青)およびOLIG2(赤)単独の統合画像を示す。
図16Aと
図16Bの間の図形は、蛍光顕微鏡で示した領域を示す。倍率=200×。略語:IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子、MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図17】卒中病変に隣接した脳梁内の細胞注射部位を示すマウス脳冠状切断を示した図形である。青い矢印は、卒中病変を誘導するためのL-NIOのおよその注射部位を示す。黒い矢印は、卒中病変中心部(赤い領域)に隣接した細胞注射部位のおよその位置を示す。およその病変中心部は青で示す。略語:Cx=皮質;Str=線条体;WM=白質。
【
図18】卒中傷害および病変中心部に隣接したAST-OPC1移植の後のマウス脳における星状細胞およびミクログリア/免疫細胞活性化の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていない対側半球(
図18A~18B)および卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球(
図18C~18E)における星状細胞(GFAP)および活性化したミクログリア/免疫細胞(IBA-1)の蛍光免疫染色を示す。
図18Aおよび
図18Bでは、左のパネルは、GFAP(緑)およびIBA-1(オレンジ)の統合画像を示し、中央のパネルはGFAP単独を示し、右のパネルはIBA-1単独を示す。
図18Aの白い四角は
図18Bで示した拡大領域を示す。
図18C~18Dでは、左のパネルは、IBA-1単独を示し、中央のパネルはGFAP単独を示し、右のパネルは統合画像を示す。
図18Eでは、左のパネルは、GFAP(緑)およびIBA-1(オレンジ)の統合画像を示し、中央のパネルはGFAP単独を示し、右のパネルはIBA-1単独を示す。
図18Cおよび
図18Dの白い四角はそれぞれ、
図18Dおよび
図18Eで示した拡大領域を示す。
図18Dおよび
図18Eのアスタリスクは、画像パネル間共通の目印を示す。倍率:
図18Aおよび
図18C=40×、
図18B=600×、
図18D=100×および
図18E=1000×。略語:Cx=皮質;GFAP=グリア線維酸性タンパク質;IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子;Str=線条体。
【
図19】卒中傷害および病変中心部に隣接したAST-OPC1移植の後のマウス脳におけるAST-OPC1位置、反応性星状細胞および活性化したミクログリア/免疫細胞の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていない対側半球(
図19A)および卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球(
図19B)におけるAST-OPC1(Hnuc)および反応性星状細胞(GFAP)および活性化したミクログリア/免疫細胞(IBA-1)の蛍光免疫染色を示す。
図19Aおよび
図19Bでは、パネル1(一番左)は脳梁(
図19Aおよび
図19Bの間の図形によって示した通り)内のHnuc(青)、GFAP(緑)およびIBA-1(赤)の統合画像を示す。倍率=600×。略語:GFAP=グリア線維酸性タンパク質;Hnuc=抗ヒト核;IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子。
【
図20】卒中傷害および病変中心部に隣接したAST-OPC1移植の後のマウス脳におけるAST-OPC1位置、ミエリン損失の低減および内在性神経新生の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。
図20Aは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球におけるAST-OPC1(Hnuc)およびミエリン(MBP)および未成熟ニューロン(DCX)の蛍光免疫染色を示す。一番左のパネルは、MBP(緑)およびDCX(赤)(上および中央のパネル)またはHnuc(青)およびMBP(緑)(下のパネル)の統合画像を示す。パネルの中央の列は、MBPまたはHnucの単一染色を示し、右の列のパネルはDCXまたはMBPの単一染色を示す。
図20Bは、
図20Aで示した領域を示す図形である。倍率:(上の行)=200×、(中央の行)=600×、(下の行)=1000×。略語:DCX=ダブルコルチン;Hnuc=抗ヒト核;MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図21】卒中傷害および病変中心部に隣接したAST-OPC1移植の後のマウス脳におけるミクログリア/免疫細胞活性化、ミエリン損失およびオリゴデンドロサイト応答の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていない対側半球(
図21A、
図21C)および卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球(
図21B、
図21D)における活性化ミクログリア/免疫細胞(IBA-1)、ミエリン(MBP)およびオリゴデンドロサイト(OLIG2)の蛍光免疫染色を示す。
図21Aでは、パネル1(一番左)は対側脳梁内のIBA-1(青)、MBP(緑)およびOLIG2(赤)の統合画像を示す。パネル2は、IBA-1単独を示し、パネル3はMBP単独を示し、パネル4はOLIG2単独を示す。
図21Bでは、パネル1(一番左)はOLIG2単独を示し、パネル2はMBP単独を示し、パネル3はIBA-1単独を示し、パネル4は3つの染色全ての統合画像を示す。
図21Cおよび
図21Dは、IBA-1(青)およびOLIG2(赤)単独の統合画像を示す。パネル
図21Aと
図21Bの間の図形は、蛍光顕微鏡で示した領域を示す。倍率=200×。略語:IBA-1=イオン化カルシウム結合アダプター分子、MBP=ミエリン塩基性タンパク質。
【
図22】卒中傷害および病変中心部に隣接したAST-OPC1移植の後のマウス脳におけるAST-OPC1位置の代表的な蛍光顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、卒中の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の傷害を受けていない対側半球(
図22A、
図22C)および卒中傷害を受けた/AST-OPC1移植した半球(
図22B、
図22D)におけるAST-OPC1(Hnuc、青)の蛍光免疫染色を示す。図の中央の図形は
図22A~22Dで示した領域を示す。倍率=200×。略語:Hnuc=抗ヒト核。
【
図23】卒中傷害およびAST-OPC1移植の後のマウス脳における梗塞体積およびグリア性瘢痕体積の定量を示した図である。
図23Aは、卒中(または偽手術)の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の各治療群の平均梗塞体積を示す。
図23Bは、卒中(または偽手術)3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の各治療群の平均グリア性瘢痕体積を示す。治療群標識:WMS=白質卒中単独;OPC=偽手術およびAST-OPC1移植;WMS+OPC ins=卒中および卒中病変内部へのAST-OPC1移植;WMS+OPC out=卒中および卒中病変に隣接したAST-OPC1移植。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【
図24】卒中傷害およびAST-OPC1移植の後の脳梁病変内のミエリン塩基性タンパク質免疫反応性およびオリゴデンドロサイト応答の定量を示した図である。
図24Aは、卒中(または偽手術)の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の各治療群の平均ミエリン塩基性タンパク質(MBP)免疫反応性を示す。
図24Bは、卒中(または偽手術)の3週間後およびAST-OPC1移植の2週間後の各治療群のOLIG2陽性細胞の平均数を示す。治療群標識:Naive=傷害を受けておらず、移植もしていない;WMS=白質卒中単独;OPC=偽手術およびAST-OPC1移植;WMS+OPC ins=卒中および卒中病変内部へのAST-OPC1移植;WMS+OPC out=卒中および卒中病変に隣接したAST-OPC1移植。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
【
図25】白質卒中のマウスモデルにおける機能回復および白質温存に対するAST-OPC1の効果を試験する試験2の実験予定表を示した図である。卒中7日後のAST-OPC1移植および毎月の行動試験を含む実験計画の重要な時点を示す。AST-OPC1用量=1回の注射1μLとして細胞100,000個/マウス。
【
図26】病変部位に隣接したAST-OPC1移植によって、グリッド歩行試験における卒中傷害マウスの能力が改善することを示した図である。グリッド歩行試験における平均能力(%フットフォールトで示す)は、時間(卒中後)の関数として各治療群について示す。卒中の1週間後は、AST-OPC1移植の前日に対応する。アスタリスクおよびハッシュタグは、2元配置ANOVAおよびテゥーキーHSDポスト-ホック解析を使用して、傷害を受けていない対照群に対する有意性を示す(p<0.05)。卒中の4カ月後、全卒中傷害群(+/-AST-OPC1)は、対照の傷害を受けていない動物とは有意に異なっており、持続的な欠損が示された。卒中の6カ月後に、卒中単独群および梗塞内部に高用量のAST-OPC1を投与した卒中群(卒中+内部への高用量細胞)のみが対照の傷害を受けていない動物とは有意に異なっており、その他の卒中傷害を受けたAST-OPC1治療群においては正の回復が示された。治療群標識:対照=傷害を受けておらず、移植もしていない;卒中=卒中単独;卒中+内部への高用量細胞=卒中傷害+卒中病変内部へ100,000個のAST-OPC1細胞を移植;卒中+外部への高用量細胞=卒中傷害+卒中病変に隣接して100,000個のAST-OPC1細胞を移植;卒中+外部への低用量細胞=卒中傷害+卒中病変に隣接して10,000個のAST-OPC1細胞を移植;高用量の細胞=傷害を受けていない脳梁内に100,000個のAST-OPC1細胞を移植;低用量の細胞=傷害を受けていない脳梁内に10,000個のAST-OPC1細胞を移植。
【
図27】病変部位に隣接したAST-OPC1移植によって、シリンダー試験における卒中傷害マウスの能力が改善することを示した図である。各治療群について、シリンダー試験における平均能力(傷害前ベースラインに対する運動障害として示す)を時間(卒中後)の関数として示す。卒中の1週間後は、AST-OPC1移植の前日に対応する。アスタリスクは、2元配置ANOVAおよびテゥーキーHSDポスト-ホック解析を使用して、卒中単独群に対する有意性を示す(p<0.05)。卒中の4カ月後、AST-OPC1を投与された全卒中傷害群は卒中単独動物とは有意に異なっており、AST-OPC1治療後の能力の改善が示された。治療群標識:対照=傷害を受けておらず、移植もしていない;卒中=卒中単独;卒中+内部への高用量細胞=卒中傷害+卒中病変内部へ100,000個のAST-OPC1細胞を移植;卒中+外部への高用量細胞=卒中傷害+卒中病変に隣接して100,000個のAST-OPC1細胞を移植;卒中+外部への低用量細胞=卒中傷害+卒中病変に隣接して10,000個のAST-OPC1細胞を移植;高用量の細胞=傷害を受けていない脳梁内に100,000個のAST-OPC1細胞を移植;低用量の細胞=傷害を受けていない脳梁内に10,000個のAST-OPC1細胞を移植。
【
図28】白質卒中傷害およびAST-OPC1移植の後のニッスル染色マウス脳の代表的な顕微鏡写真を示した図である。画像パネルは、各治療群の病変(左)および傷害を受けていない対側(右)半球における脳梁および側脳室の代表的なニッスル染色を示す。脳梁における組織温存の増加および同側の側脳室拡大の低減はAST-OPC1治療群において明らかで、病変部位に隣接して高用量のAST-OPC1を投与した卒中傷害群において最も著しい。治療群標識:対照=傷害を受けておらず、移植もしていない;白質卒中=卒中単独;卒中+内部への高用量細胞=卒中傷害+卒中病変内部へ100,000個のAST-OPC1細胞を移植;卒中+外部への高用量細胞=卒中傷害+卒中病変に隣接して100,000個のAST-OPC1細胞を移植;卒中+外部への低用量細胞=卒中傷害+卒中病変に隣接して10,000個のAST-OPC1細胞を移植。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物および方法を記載する前に、記載した特定の工程、組成物または方法は変動することがあるので、本明細書で開示した本発明はこれらに限定されないことを理解されたい。この記載で使用した用語は、特定の種類または実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。別段の規定がない限り、本明細書で使用した技術的および科学的用語は全て、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載したものと類似または同等のいかなる方法および材料も、本開示の実施形態の実行または試験において使用することができる。
【0015】
様々な実施形態では、本明細書で記載した方法および組成物は、WMSのマウスモデルにおいて脳虚血傷害後にAST-OPC1を移植すると回復が増強するという発見に関する。亜急性時点(卒中の7日後)に病変中心部に直接隣接して、または内部にAST-OPC1を移植すると、AST-OPC1は皮質下白質の全体にわたって広範な移動を生じ、損傷した白質内でのミエリン化の増加および反応性星状細胞増多症および炎症の測定値の低減を引き起こす。AST-OPC1を病変中心部に直接隣接して移植した後の白質のMRI画像は、マウスモデルおよびヒトWMSの両方において白質損傷の特徴である高強度の低減を示した。行動評価によって、2つの運動機能試験において改善が示された。これらの結果は、AST-OPC1移植がWMSにおける白質修復および回復を促進することを示す。
【0016】
様々な実施形態では、白質卒中などの脳虚血傷害の治療におけるAST-OPC1の使用のための方法を提供する。白質卒中の細胞をベースにした臨床療法における使用に適した医薬組成物および製剤も本明細書で提供する。
【0017】
本発明の細胞の使用
ヒト胚性幹細胞から高純度の特徴付けられたオリゴデンドロサイト前駆細胞を多数産生する方法は以前に記載されたことがある(例えば、米国特許仮出願第62/162,739号および第62/144,921号)。ヒト胚性幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を誘導することによって、脳の虚血傷害の治療を含む、いくつかの重要な治療、研究、開発および商用目的のためのOPCの再生可能で大規模な原料がもたらされる。オリゴデンドロサイト前駆細胞はヒト胚性幹細胞以外の原料由来であってもよいことも認められている。このような原料としては、これらに限定されないが、成体幹細胞、誘導性多能性幹細胞IPSC、培養した幹細胞系などが挙げられる。
【0018】
「AST-OPC1」という用語は、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)および本明細書で開示した特異的な分化法によって未分化幹細胞から得られたその他の特徴付けられた細胞種の混合物を含有する、特異的で、特徴付けられた、インビトロにおいて分化させた細胞集団を意味する。
【0019】
AST-OPC1の免疫細胞化学(ICC)、フローサイトメトリーおよび定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)による組成分析は、細胞集団は主にオリゴデンドロサイト表現型の神経系列細胞を含んでなることを示す。その他の神経系列細胞、すなわち、星状細胞およびニューロンは低頻度で存在する。集団中で唯一検出された非神経細胞は上皮細胞である。中胚葉、内胚葉系列細胞およびuhESCは、通常アッセイの定量または検出を下回っている。
【0020】
本明細書では、「オリゴデンドロサイト前駆細胞」(OPC)という用語は、オリゴデンドロサイトに分化することができる、中枢神経系に見いだされる細胞種の特徴を有する神経外胚葉/グリア系列の細胞を意味する。これらの細胞は典型的に、特徴的なマーカー、ネスチン、NG2およびPDGR-Rαを発現する。
【0021】
本明細書では「治療」、「治療する」、「治療した」または「治療している」という用語は、治療的療法または予防的もしくは防御的処置の両方を意味することができ、その目的は所望しない生理学的状態、症状、障害もしくは疾患を防御するか、または鈍化させる(減少させる)こと、または有益な、もしくは所望する臨床結果を得ることである。一部の実施形態では、この用語は治療および防御の両方を意味してもよい。本開示の目的において、有益な、または所望する臨床結果としては、これらに限定されないが、以下:症状の軽減;状態、障害または疾患の範囲の減少、状態、障害または疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、状態、障害または疾患の発症の遅延または進行の緩徐化、状態、障害もしくは疾患状態の緩解、および検出可能か検出不可能かにかかわらず、状態、障害または疾患の寛解(部分的または全体的)または増強または改善の1つまたは複数を挙げることができる。治療は、臨床的に重要な応答の惹起を含む。治療はまた、治療を受けなかった場合に予測される生存と比較して延長した生存も含む。ある特定の実施形態では、特に脳虚血の場合、治療には、運動制御の改善または復活、発話の改善または復活、平衡の改善または復活、認知の改善(例えば、様々な認知機能アッセイのいずれかによって測定したとき)などを含めることができる。
【0022】
本明細書では、「対象」という用語は、これらに限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類ならびにネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウサギ、マウスおよびラットなどの齧歯類などの任意の動物を含む野生動物、飼育動物および家畜などの非ヒト脊椎動物を含む。一部の実施形態では、「対象」という用語は雄を意味する。一部の実施形態では、「対象」という用語は雌を意味する。
【0023】
AST-OPC1は、細胞療法の必要なヒト患者またはその他の対象におけるミエリン修復または再ミエリン化を促進する。以下は、ミエリン修復または再ミエリン化を必要とする状態、疾患および病態の非限定的例である:白質卒中、多発性硬化症、白質ジストロフィー、ギランバレー症候群、シャルコーマリートゥース神経障害、テイサックス病、ニーマンピック病、ゴーシェ病、ハーラー症候群および急性脊髄傷害などのミエリン化の損失を引き起こす外傷性疾患を含む脳虚血傷害。
【0024】
ミエリン修復または再ミエリン化に加えて、AST-OPC1は虚血組織に直接修復作用をもたらすことができる神経栄養因子、例えば、BDNFを分泌する。
【0025】
OPCは、企図する組織部位に存在させ、融合させ、および/または移動させる方法で投与される。細胞の対象への投与は、当業界で公知の任意の方法によって実現することができる。例えば、細胞は、細胞移植を必要とする器官または組織に外科的に直接投与することができる。あるいは、非侵襲的な手法を使用して細胞を対象に投与することができる。非侵襲的送達方法の例は、細胞療法を必要とする器官または組織に細胞を送達するためのシリンジおよび/またはカテーテルおよび/またはカニューレの使用を含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、OPCは、梗塞中心部内に投与される。その他の実施形態では、OPCは、梗塞中心部に直接隣接して投与される。本明細書では「直接隣接して」とは、場合によっては部分的卒中損傷の領域を表す梗塞中心部の外側の領域を意味し、その他の場合では、「直接隣接して」とは梗塞領域の外側の健康な組織を意味する。一部の実施形態では、OPCは、梗塞中心部から0.01mmから10mmに投与される。一部の実施形態では、OPCは、梗塞中心部から0.05mmから3mmに投与される。一部の実施形態では、OPCは、梗塞中心部から0.1mmから2mmに投与される。一部の実施形態では、OPCは、梗塞中心部から0.5mmから1mmに投与される。一部の実施形態では、OPCは、梗塞中心部から0.3mmから0.6mmに投与される。
【0027】
ある特定の実施形態では、OPCは、亜急性期中に対象に投与される。本明細書では「亜急性」とは、卒中傷害による初期の損傷および細胞死が終了する急性期と慢性期の間の期間を意味する。本明細書では、ヒト対象における「亜急性早期」とは卒中後1カ月までを意味し、「亜急性後期」とは卒中後1~3カ月の期間を意味する。
【0028】
ある特定の実施形態では、本発明のOPCを投与されている対象は、移植した細胞の免疫拒絶を低減させるために治療することができる。検討した方法としては、これらに限定されないが、タクロリムス、シクロスポリンAのような伝統的な免疫抑制薬の投与(Dunnら、Drugs 61:1957、2001)または多能性幹由来細胞の一致した集団を使用した免疫寛容の誘導(国際公開第02/44343号パンフレット;米国特許第6,280,718号;国際公開第03/050251号パンフレット)が挙げられる。ある特定の実施形態では、抗炎症薬(プレドニゾンなど)および免疫抑制薬の組み合わせを使用してもよい。ある特定の実施形態では、OPCは、ヒトに投与するために十分滅菌した条件下で調製した等張賦形剤を含む、医薬組成物の形態で供給することができる。
【0029】
医薬製剤の一般的な原理については、読者は「Allogeneic Stem Cell Transplantation、LazarusおよびLaughlin編、Springer Science+Business Media LLC 2010」および「Hematopoietic Stem Cell Therapy、E.D.Ball、J.Lister & P.Law、Churchill Livingstone、2000」を参照すること。細胞賦形剤および組成物に付随する任意の要素の選択は、投与するために使用する経路および装置に従って適応させる。組成物はまた、増殖させた標的細胞の生着または機能動員を容易にする1つまたは複数のその他の成分を含むかまたは伴っていてもよい。適切な成分には、標的細胞種の接着を支持もしくは促進する、または移植した組織の血管新生を促進するマトリックスタンパク質を含めることができる。
【0030】
本発明の医薬組成物
オリゴデンドロサイト前駆細胞はそれ自体を、療法を必要とする対象に投与することができる。あるいは、細胞は、適切な担体と混合した医薬組成物で、および/またはデポー送達系を使用して、療法を必要とする対象に投与することができる。
【0031】
本明細書では、「医薬組成物」という用語は、生理学的に適切な担体および賦形剤などのその他の成分と組み合わせて治療剤または治療剤類を含む調製物を意味する。
【0032】
本明細書では、「治療剤」という用語は、対象において生物学的効果を及ぼす本発明の細胞を意味する。本発明の実施形態によって、「治療剤」は本発明のオリゴデンドロサイト前駆細胞を意味することができる。さらに、または代わりに、「治療剤」は、神経修復を助ける役割を有する本発明のオリゴデンドロサイト前駆細胞によって分泌される1つまたは複数の因子を意味してもよい。
【0033】
本明細書では、「治療有効量」という用語は、所望する結果を生じるために十分な用量、投薬レジメンまたは量を意味する。
【0034】
本明細書では、「担体」「生理学的に許容される担体」および「生物学的に許容される担体」という用語は同義に使用することができ、対象において重大な有害作用または刺激作用を引き起こさず、治療剤の生物学的活性または効果を実質的に阻害しない希釈剤または担体物質を意味する。「賦形剤」という用語は、治療剤の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加した物質を意味する。
【0035】
本発明の組成物は、注射、例えば、ボーラス注入または連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。組成物は、約15分間から約24時間にわたって皮下に連続注入することによって投与することができる。注射用の製剤は、単位投与形態、例えば、アンプルまたは複数投与容器に入れて、保存剤を添加して調製することができる。組成物は、懸濁液、溶液または油性もしくは水性媒体中のエマルジョンのような形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。
【0036】
本明細書で記載した治療剤は、2014年5月12日に出願された米国特許出願第14/275,795号および米国特許第8,324,184号および第7,928,069号に記載されたものなどのハイドロゲルの成分として投与することができる。ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)(PHEMA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)などの合成ポリマーを含む、および/またはコラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、フィブリン、アルギン酸塩、アガロースおよびキトサンなどの天然由来の材料を含むハイドロゲルは当業界では公知である(Peppasら(2006)Advanced Materials 18:1345;Leeら(2001)Chem.Rev.101:1869)。様々な化学修飾によって形成された共有的に架橋結合したハイドロゲルはまた以前に記載されたことがある(Vercruysseら(1997)Bioconjugate Chem.8:686;Prestwichら(1998)J.Controlled Release 53:93;Burdickら(2005)Biomacromolecules 6:386;Gaminiら(2002)Biomaterials 23:1161;米国特許第7,928,069号;米国特許第7,981,871号)。
【0037】
ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)(商標名HyStem(登録商標))と架橋結合したヒアルロン酸(HA)およびブタゼラチンのチオール修飾誘導体をベースにしたハイドロゲルは、細胞培養、薬物送達などを含む多くの適用に適応させる特有の化学的、生物学的および物理学的特質を有する(Shuら(2004)J of Biomed Mat Res Part A 68:365;Shuら(2002)Biomacromolecules 3:1304;Vanderhooftら(2009)Macromolecular Biosci 9:20)。HyStem(登録商標)を含む架橋結合したHAハイドロゲルは、角膜上皮創傷治癒(Yangら(2010)Veterinary Opthal 13:144)、角膜組織工学(Espandarら(2012)Archives of Opthamol 130:202)、および網膜修復(Liuら(2013)Tissue Engineering Part A 19:135)の動物モデルにおける使用に成功したことがある。
【0038】
生理活性を維持し、生物製剤の放出を遅延させるためにハイドロゲルを前臨床で使用することは記載されたことがある(Caiら(2005)Biomaterials 26:6054;Zhang(2011)Biomaterials 32:9415;Overmanら(2012)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 109:E2230;Garbernら(2011)Biomaterials 32:2407;Koutsopoulosら(2009)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 106:4623)。さらに、細胞送達におけるこれらの使用は、細胞生存能および移植後の局在化を改善することが示されたことがある(Laflammeら(2007)Nature Biotechnology 25:1015;Zhongら(2010)Neurorehabilitation and Neural Repair 24:636;Compteら(2009)Stem Cells 27:753)。いくつかの異なるハイドロゲルは、FDA承認の眼用低分子治療薬において、眼表面での滞留時間を延長させるための賦形剤として使用されたことがある(Kompellaら(2010)Therapeutic Delivery 1:435)。
【0039】
さらに、2つの新規ハイドロゲル製剤は、治療用細胞の送達において有望性を示すことが報告されたことがある(Balliosら(2010)Biomaterials 31:2555;Caiccoら(2012)Journal of Biomedical Materials Research Part A 101:1472;Yangら(2010)Veterinary ophthalmology 13:144;Mazumderら(2012)Journal of Biomedical Materials Research Part A 100:1877)。
【0040】
材料および方法
動物対象。使用した手法は全て、有資格の獣医師によって承認され、米国国立衛生研究所の実験動物の管理と使用に関する指針に従って実施された。NSGマウス(Shultzら(2007)Nat Rev Immunol.7(20:118;jaxmice.jax.org/nod-scid-gamma)は、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME)から入手した。動物対象は全て、明暗12時間周期の標準的条件下で飼育し、食物および水は自由に与えた。
【0041】
L-Nioを使用した局所的虚血病変の誘導。中等度から進行型のヒト白質虚血または血管性認知症で認められる大きな白質病変を模倣した、以前に確立された皮質下白質卒中のマウスモデル(Sozmenら(2009)J.Neurosci Methods 180(2):261;Hinmanら(2013)Stroke 44(1):182)を使用した。簡単に説明すると、局所性虚血病変を誘導するために、
図3に例示したように、N5-(1-イミノエチル)-L-オルニチン2塩酸塩(L-Nio、Calbiochem)を各マウス脳の脳梁に3次元定位座標で直接注射した。
【0042】
hESCからのAST-OPC1の分化。WA01(H1)hESC系列は、フィーダーを含まない条件下で増殖させた。hESCコロニーは、コラゲナーゼおよび手作業で擦過して採取し、次に超低接着面フラスコ内で肺葉体形成を刺激するために塩基性繊維芽細胞増殖因子(FGF)4ng/mLおよび上皮成長因子(EGF)20ng/mLを含有する50%hESC増殖培地および50%グリア前駆細胞培地(GPM)に接種した(0日目)。1日目に、培地をEGF20ng/mLおよびオールトランス型レチノイン酸(RA)10μΜを含有する50%hESC増殖培地/50%GPMと交換した。2~8日目に、培地をEGF20ng/mLおよびRA10μMを含有する100%GPMと毎日交換した。9~26日目に、RAを含まないGPM/EGF培地で肺葉体を維持し、培地は2日毎に交換した。28日目に、マトリゲルをコーティングしたフラスコに肺葉体を播種し、GPM/EGF培地で2日毎に培地を交換しながら7日間培養した。34日目に、細胞をトリプシンで収集し、マトリゲルをコーティングしたフラスコに再播種し、GPM/EGF培地で2日毎に培地を交換しながらさらに7日間培養した。41日目に、細胞をトリプシンで収集し、残存する細胞凝集物を除去するために濾過し、液体窒素中で凍結保存した。
【0043】
分化したAST-OPC1のフローサイトメトリーによる分析。分化したAST-OPC1試料の表面および細胞内マーカーの存在を標準的なフローサイトメトリーを使用してアッセイした。表面マーカー染色のために、41日目にAST-OPC1試料を10%熱不活性化ヤギ血清(HI FBS)でブロックし、次いで1次抗体および/またはアイソタイプ対照(0.5μg/細胞5×l05個、NG2、Invitrogen #37-2300;マウスIgG1 BD Biosciences #55412)で2~8℃で30分間インキュベートし、洗浄し、次いで2次抗体(ヤギ抗マウスIgGl-A488 Invitrogen A21121 0.25μg/細胞5×l05個)で2~8℃で30分間インキュベートした。生育不能な細胞を排除するために、取得直前にヨウ化プロピジウム(Sigma P4864 1μg/mL)を染色した試料に添加した。次に、試料は全て取得し、データはBD Biosciences FACSCalibur(商標)血球計数機システムで、Cellquest Proソフトウェアを使用して分析した。
【0044】
細胞内マーカー染色のために、41日目に死細胞識別のためにAST-OPC1試料をエチジウムモノアジド(Sigma E2028 5μg/mL)でタグ付けし、次いで2%パラホルムアルデヒド(PFA)を使用して固定し、次に90%冷メタノールで透過化した。細胞を5% HI FBS(Oct4用)または10%熱不活性化ヤギ血清(ネスチン用)でブロックし、次いで1次抗体および/またはアイソタイプ対照(ヤギ抗Oct4 Santa Cruz SC8629、正常なヤギIgG SC2028 0.15~0.5μg/細胞5×l05個;ネスチン Millipore MAB5326;MoIgG1 BD Biosciences 554121 0.5μg/細胞5×l05個)で2~8℃で30分間インキュベートし、染色緩衝液で洗浄し、2次抗体(ロバ抗ヤギIgG-A488 Invitrogen A11055またはヤギ抗マウスIgG1-A488 Invitrogen A21121 0.25μg/細胞5×l05個)で2~8℃で30分間インキュベートした。次に、試料は全て取得し、データはBD Biosciences FACSCalibur(商標)血球計数機システムで、Cellquest Proソフトウェアを使用して分析した。
【0045】
NSGマウスにおけるAST-OPC1移植。AST-OPC-1細胞は、Asterias Biotheraputics,Incからドライアイスに入れて受け取り、「AST-OPC1 Dose Preparation Procedure」(AST-GEN-0021バージョン0.2)法に従った。動物の5つの異なる群にAST-OPC1を投与した。卒中の7日後に細胞を定位的に移植した。マウスの体温をモニターし、直腸内プローブおよび温熱パッドを使用して36.5~37.5℃に維持した。ハミルトンシリンジにAST-OPC1を充填し、定位固定アームに固定し、圧力ポンプに連結した。表1に示した座標に、36°の角度で切開を形成し、細胞を2回注射して投与した。高用量群には1μL中全部で約100,000個の細胞を投与し、低用量群には1μL中全部で約10,000個の細胞を投与した。針は1回目の注射後2分間、2回目の注射後は4分間生体位に留置した。
【0046】
【0047】
免疫蛍光法のための脳組織処理。手術後生存期間(15日間)の後、各マウスにイソフルランを過剰投与し、0.1Mリン酸緩衝生理食塩水、次いで4%パラホルムアルデヒドで経心的に灌流した。脳を取り出し、4%パラホルムアルデヒドで一晩後固定(postfix)し、30%スクロースで2日間凍結保護した。その後、脳を取り出して凍結した。脳組織をクリオスタット(Leica CM 0530)を使用して200μm間隔で40μm切片に切断した。
【0048】
ヒト核抗原(HuNu)、ミクログリア/マクロファージマーカーIBA-1、ニューロンマーカーNF200、星状細胞マーカーGFAP、汎オリゴデンドロサイトマーカーOlig2、成熟オリゴデンドロサイトマーカーMBPおよび未成熟ニューロンマーカーDCxの免疫染色は、正常なロバ血清5%で室温で1時間ブロックし、1次抗体でセ氏4度で一晩インキュベートし、2次抗体で室温で1時間インキュベートし、切片をコーティングスライド(subbed slides)にマウントし、空気乾燥することによって行った。次にアルコールおよびキシレンの濃度を上昇させてマウントした切片を脱水し、DPXと共にカバーガラスをかけた。1次抗体は、マウス抗HuNu(1:150、Millipore)、ウサギ抗Iba-1(1:500、Wako Chemicals)、ウサギ抗NF200(1:500、Sigma)、ラット抗ミエリン塩基性タンパク質(MBP、1:500、Millipore)、ウサギ抗Olig2(1:500、Millipore)、ラット抗GFAP(1:500、Millipore)、ヤギ抗ダブルコルチン(1:500、Santa Cruz Biotechnologies)およびマウスモノクローナルhNuc(1:100、Millipore)であった。2次抗体は全て、Cy2(青色)またはCy3(黄色)(Jackson Immunoresearch)色素にコンジュゲートしたロバF(ab’)2断片で、1:1000の希釈で使用した。
【0049】
高解像度共焦点画像をZ-スタックで取得した(Nikon C2共焦点システム)。梗塞中心部、IBA-1、GFAP、HuNu、DCXおよびOlig2陽性細胞の領域測定は、光学分流装置プローブおよび神経解剖学的定量ソフトウェア(Stereoinvestigator、MBF Bioscience)を使用して立体解析学的に定量した。NF200およびMBPで染色した白質軸索投影は、強度プロファイル(ImageJ、NIH)で定量した。
【0050】
ニッスル染色。ニッスル染色は、組織学的検査およびニューロン損失の測定のために使用した。40μm脳切片のスライドは段階的エタノール(50%、70%、95%および100%)で脱水し、50%エタノール-50%クロロホルムで1時間洗浄し、段階的エタノール(100%、95%、70%、50%)で再脱水した。切片はクレシルバイオレット溶液で45秒間染色し、蒸留水で濯ぎ、数滴の氷酢酸を含有する70%エタノールで洗浄し、段階的エタノール(70%、95%および100%)で再脱水し、キシレン中に入れ、封入剤を使用してカバーガラスをかけた。染色した切片は、Leica DM LB蛍光顕微鏡で可視化した。
【0051】
核磁気共鳴画像法(MRI)。マウスを麻酔し、Bruker 7T小動物用MRI(Bruker Biospin、Switzerland)に設置した。MRI画像法は、卒中後0、7日目および6カ月後に実施した。呼吸数は、手法全体にわたってモニターし、体温は37±0.5℃に維持した。一連のT2強調画像を取得した:迅速取得緩和促進因子(rapid acquisition relaxation enhancement factor)8、反復時間5300ms、エコー時間15.00ms、面内解像度0.0156_0.0156_0.50mm、13枚の連続スライス。
【0052】
トラクトグラフィー。スピンエコーシングルショットエコープラナー法(EPI)パルスシークエンスで、以下のパラメータ:TR/TE:5000/35ms;シグナル平均10、拡散強調b=1000s/mm2およびb=0s/mm2での30ノンコリニア拡散勾配スキームおよび視野3.5×3.5cmを使用して、処置して0、7日後および6カ月後にトラクトグラフィー、拡散テンソルデータ(DTI)を取得した。データは、96×96マトリクスによるシングルショットEPIシークエンスで30方向を使用して取得し、k空間にゼロ充填して128×128画像マトリクスを構築した。画像はmedlnria、マルチプラットフォーム医学用画像処理および可視化ソフトウェアを使用して得た。DTIトラクトグラフィーデータは、1群当たり動物n=6を使用して病変領域で実施した。DTIトラクトグラフィー画像の拡大病変部位の3次元図は、Para View4.1.0ソフトウェアを使用して表した。
【実施例】
【0053】
以下の実施例は、本発明者が本発明とみなすものの範囲を限定するものではなく、以下の実験が実施した全実験または唯一の実験であることを表すものでもない。
【実施例1】
【0054】
AST-OPC1の誘導および特徴付け
AST-OPC1(以前はGRNOPC1として知られていた)は、材料および方法で記載したようにマスター細胞バンク(MCB)からWA01(HI)hESCを分化させることによって生成した。AST-OPC1を産生するための分化工程は41日を要し、hESCを未分化細胞コロニーから胚様体に移行させて、収穫され、凍結保存される接着性の分散した細胞集団となる必要がある。
【0055】
41日目の分化したAST-OPC1のフローサイトメトリーおよび免疫細胞化学(ICC)による分析は以前に記載されたことがある(米国特許仮出願第62/162,739号および第62/144,921号)。ICCおよびフローサイトメトリーの結果は、細胞集団が早期オリゴデンドロサイト前駆細胞表現型の神経系列細胞のほとんどを含んでなることを示した。フローサイトメトリーによって、細胞の90%超がネスチン陽性で、>50%がNG2、オリゴデンドロサイト前駆細胞によって発現された神経/グリアプロテオグリカンが陽性であった。さらに、多能性幹細胞マーカー、Oct4のレベルは、定量レベルを下回り(<0.2%)、残存hESCが欠如していることを示した。代替的なハイコンテンツ画像分析アッセイを使用して、AST-OPC1におけるOct4+細胞の頻度が0.05%未満であることをさらに判定した。定義されたAST-OPC1分化工程を使用して、AST-OPC1を75ロット超産生し、集団の組成を評価し、所望しない細胞種の可能性を検出するために、41日目に外胚葉、中胚葉、内胚葉および多能性細胞種の複数のマーカーの存在をICCによってさらに特徴付けた。フローサイトメトリーの結果と一致して、ICCによるプロファイルは、細胞集団が主に早期オリゴデンドロサイト前駆細胞から構成され、成熟したニューロンも星状細胞もほとんどないことを示した。内胚葉、中胚葉または多能性細胞種の存在は、分化したAST-OPC1細胞集団の<1%まで検出されなかった。
【実施例2】
【0056】
試験1-白質卒中のNSGマウスモデルにおけるAST-OPC1移植
AST-OPC1異種移植の完全な試験を可能にするために、中等度から進行型のヒト白質虚血または血管性認知症において認められる大きな白質病変を模倣した、以前に確立された皮質下白質卒中のマウスモデル(Sozmenら(2009)Neurosci Methods 180(2):261;Hinmanら(2013)Stroke 44(1):182)を免疫不全NSGマウスに適応させた(Shultzら(2007)Nat Rev Immunol.7(20:118;jaxmice.jax.org/nod-scid-gamma)。簡単に説明すると、局所性虚血病変を誘導するために、
図3に例示したように、N5-(1-イミノエチル)-L-オルニチン2塩酸塩(L-Nio、Calbiochem)を各マウス脳の脳梁に、3次元定位座標で直接注射した。実験の予定表を
図2に例示する。研究の目標およびパラメータは表2に詳細に記載する。脳組織は、卒中誘導して15日後(すなわち、AST-OPC1または偽注射の2週間後)に処理し、ミエリン化の範囲、軸索損失、星状細胞活性化、ミクログリア/マクロファージ応答およびオリゴデンドロサイト応答を判定するために蛍光免疫染色を実施した。代表的な結果を
図1~24に示す。
【0057】
【実施例3】
【0058】
試験2-行動回復のためのAST-OPC1の有効性試験
実施例2で記載したようなWMSのNSGマウスモデルを使用して、行動回復に対するAST-OPC1移植の効果ならびにMRIおよびエキソビボ組織化学染色に基づいてAST-OPC1移植が白質保存を改善するかどうかを評価した。実験の予定表を
図25に例示する。試験の目標およびパラメータは表3に詳細に記載する。行動試験(シリンダー試験およびグリッド歩行)は以下に詳細に記載する。代表的な結果を
図26~28に示す。
【0059】
【0060】
シリンダー試験。マウスの探索行動によって、空間および運動行動に基づいて神経を調査することが可能で、脳機能のアッセイとして使用することができる。シリンダー試験は、齧歯類の自発的な前肢使用を評価する方法で、卒中のいくつかの運動系傷害モデルで使用されたことがある。前肢障害を評価するために、動物を透明なプレキシガラス製シリンダーに入れ、観察する。マウスは後肢で棒立ちになることによって垂直な表面を活発に探索し、前肢および感覚毛で表面を探索する。シリンダー中において行動を評価する場合、自主的に右前肢、左前肢および両前肢を同時に壁に配置する回数を観察して記録した。一側性脳損傷を有する動物は、垂直探索中の前肢の使用が非対称となる。
【0061】
シリンダー課題は客観的で、使用および採点が容易で、その他のものでは検出できない慢性障害に感受性があり、評価者間信頼性が高いことが見いだされた。
【0062】
グリッド歩行試験。しばしばフットフォールト課題と呼ばれるグリッド歩行課題は、齧歯類の四肢機能の運動欠陥(最も一般的には後肢であるが、前肢も評価されたことがある)および移動運動中の配置障害を評価する比較的簡単な方法である。この課題は、卒中後の運動協調障害およびリハビリテーション効果を客観的に示すことが見いだされた。動物を開口部を有する高い平らなグリッドに配置した。脳損傷を有さない動物は典型的に足を正確にワイヤの枠に配置して、グリッドに沿って移動する間自分自身を保持する。足が開いたグリッドからすべる度に、「フットフォールト」を記録する。各四肢の対側および同側フォールト両方の数を歩行数全体と比較し、次にフットフォールト係数を使用して採点する。無処置の動物は全体的にフットフォールトをほとんど示さないかまたは全く示さず、フォールトが生じた場合、非対称である。虚血動物は典型的に無処置の動物よりも有意に多くの対側フットフォールトを示す。フットフォールト試験は、齧歯類における虚血後の感覚運動機能の欠陥を検出するための敏感な指標であることが示された。