(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】食道癌の検出および治療のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220204BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220204BHJP
C07K 14/82 20060101ALN20220204BHJP
C07K 16/32 20060101ALN20220204BHJP
G01N 33/574 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P1/04
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
C07K14/82
C07K16/32
G01N33/574 A ZNA
(21)【出願番号】P 2018534930
(86)(22)【出願日】2017-01-02
(86)【国際出願番号】 EP2017050037
(87)【国際公開番号】W WO2017114976
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-12-27
(32)【優先日】2015-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518230511
【氏名又は名称】プロガストリン、エ、カンセル、エス、アー エル、エル
【氏名又は名称原語表記】PROGASTRINE ET CANCERS S.A R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、プリュール
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516437(JP,A)
【文献】Pathology & Oncology Research volume 14, pages449-455,2008年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
A61P 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食道癌の予防または治療用組成物であって、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片を含み、前記抗原結合性断片が6つのCDRを含んでなり、前記プロガストリン結合抗体が、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H
3を含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L
3を含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H
3を含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L
3を含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H
3を含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L
3を含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H
3を含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L
3を含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H
3を含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L
3を含む軽鎖とを含む、抗体;並びに
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H
3を含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L
3を含む軽鎖とを含む、抗体
から選択されるヒト化抗体である、組成物。
【請求項2】
前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片が、ヒト化抗体、キメラ抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体およびIgM抗体から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片が、プロガストリンと特異的に結合するが、ガストリン-17(G17)、ガストリン-34(G34)、グリシン伸長ガストリン-17(G17-Gly)またはグリシン伸長ガストリン-34(G34-Gly)と結合しないものである、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記プロガストリン結合抗体がモノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片が、N末端の抗プロガストリン抗体およびC末端の抗プロガストリン抗体から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片が、中和抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片が、細胞毒性分子と結合したものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記食道癌が転移性のものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項で定義される抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、食道癌の予防または治療用医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項で定義される組成物と、化学療法分子および標的療法分子から選択される抗癌治療分子とを含む、食道癌の予防または治療用パーツキット。
【請求項11】
前記組成物および前記抗癌治療分子が、同時投与、連続投与または別々の投与されるものである、請求項10記載のパーツキット。
【請求項12】
前記化学療法分子が、葉酸拮抗剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、DNAアルキル化分子、DNA架橋剤、抗生物質、白金錯体、プロテアソーム阻害剤、有糸分裂紡錘体毒、トポイソメラーゼ阻害剤およびチロシンキナーゼ阻害剤から選択されるものである、請求項10または11に記載のパーツキット。
【請求項13】
前記標的治療分子が、セツキシマブまたはパニツムマブなどの、EGFRを標的とする抗体、ベバシズマブなどの、VEGFを標的とする抗体、トラスツズマブまたはペルツズマブなどの、HER2を標的とする抗体、ペンブロリズマブなどの、PD-1およびPDL-1を標的とする抗体、イピリムマブなどの、CTLA-4を標的とする抗体、エルロチニブなどの、EGFRを標的とする小分子薬剤、ベムラフェニブまたはダブラフェニブなどの、BRAFを標的とする小分子薬剤、アフリベルセプトなどの、VEGFを標的とする組換え融合タンパク質から選択されるものである、請求項10~12のいずれか一項に記載のパーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌のイン・ビトロ診断、予防および治療に関するものであり、さらに詳細には、食道癌のイン・ビトロ診断方法、ならびに、食道癌の予防または治療のための方法および組成物に関する。この発明による組成物は、プロガストリン結合分子、特に抗hPG抗体を含み、一方この発明による方法は、プロガストリン結合分子、特に抗hPG抗体の使用を含む。
【背景技術】
【0002】
食道癌は、咽喉および胃間の路において、食道細胞から生じるものであり、8番目に多い癌であるといわれており、女性よりも男性への影響が大きく、その割合は国によって大きく異なる。
【0003】
食道癌の2つの最も多い型は、食道扁平上皮癌および食道腺癌である。より稀な亜型もまたいくつか知られている。扁平上皮癌は食道の上皮細胞から生じ、一方、腺癌は食道の下方部に存在する腺細胞から生じる。
【0004】
臨床診断は生検に基づき、通常、内視鏡検査のもとに行われる。この疾患の不良転帰は、特に診断の遅れに起因し、特に初期の兆候および症状がないことに起因する。これまで、食道癌の広範な臨床行為に置き換えられるような分子バイオマーカーはなかった(Kaz et al, Cancer Letters, 2014)。治療は、癌の進行に左右されるが、小さい局所的な腫瘍については、外科手術、または、ことによっては放射線療法と組み合わせた化学療法を通常含む。
【0005】
従って、食道癌の予防または治療のための新規の組成物および方法が未だ要望されているように、素早く、信頼でき、費用対効果の高い食道癌の診断を可能にする方法が未だ要望されている。
【発明の概要】
【0006】
このことが、本発明の目的である。
【0007】
ここで、本発明は、食道癌のイン・ビトロ診断方法を提供するものであって、前記方法は対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの検出を含む。好ましくは、前記サンプル中におけるプロガストリンの量を決定することで、プロガストリンの定量を可能にする。本発明はまた、食道癌の予防または治療用組成物であって、プロガストリンに結合する抗体を含む前記組成物と、プロガストリンに結合する抗体を含む組成物の、単独での使用または食道癌に対するその他の公知の予防法もしくは治療法と組み合わせての使用を含む、食道癌の予防または治療の方法とを提供する。
【0008】
ヒトプレプロガストリンである、101アミノ酸のペプチド(アミノ酸配列リファレンス:AAB19304.1)は、ガストリン遺伝子の一次翻訳産物である。プロガストリンは、プレプロガストリンからはじめの21のアミノ酸(シグナルペプチド)を切断することによって形成される。プロガストリンの80アミノ酸鎖は、切断および修飾酵素によって、いくつかの生物活性ガストリンホルモン形態である、プロガストリンの38~71のアミノ酸を含むガストリン34(G34)およびグリシン伸長ガストリン34(G34-Gly)、プロガストリンの55~71のアミノ酸を含むガストリン17(G17)およびグリシン伸長ガストリン17(G17-Gly)となるように、さらにプロセシングされる。
【0009】
抗ヒトプロガストリン(抗hPG)モノクローナル抗体および診断または治療へのそれらの用途は、以下の文献に記載されている:結腸直腸癌に関して国際公開第2011/083088号、乳癌に関して国際公開第2011/083090号、膵癌に関して国際公開第2011/083091号、結腸直腸癌および消化器癌に関して国際公開第2011/116954号、ならびに、肝臓病変に関して国際公開第2012/013609号および国際公開第2011/083089号。
【0010】
本発明は、本明細書の発明の詳細な説明および添付の図面からさらによく理解されるようになるが、それらは説明の目的のためのみに与えられるものであって、この発明の意図した範囲を限定するものではない。
【発明の具体的説明】
【0011】
第一の側面においては、本発明は、食道癌の存在の危険性についてのイン・ビトロ評価の方法に関するものであって、前記方法は対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンを検出する工程を含む。サンプル中におけるプロガストリンの存在が、食道癌の存在の危険性があることを示唆するものである。
【0012】
このため、第一の態様においては、この発明は、対象における食道癌の存在の危険性のイン・ビトロ評価方法に関するものであって、前記方法は、
a)前記対象からの生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程と、
b)前記サンプル中における前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程とを含み、前記結合は食道癌の存在の危険性を示唆するものである。
【0013】
プロガストリン結合分子の結合は、当業者にとって利用可能である様々なアッセイによって検出することができる。該アッセイを実施する任意の好適な手段は、この発明の範囲に含まれるものであるが、特にFACS、ELISA、RIA、ウエスタンブロットおよびIHCを挙げることが可能である。
【0014】
好ましい態様においては、対象における食道癌の存在の危険性のイン・ビトロ評価のためのこの発明による方法は、
a)前記生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程と、
b)前記生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度を決定する工程とを含み、前記生物サンプル中においてプロガストリンの濃度が少なくとも10pMであることは食道癌の存在の危険性の示唆である。
【0015】
サンプル中に存在するプロガストリンの濃度を決定すると、その結果を、対照のサンプルの濃度と比較することが可能であり、該対照のサンプルは試験サンプルと同様の手法で取得されるが、食道癌に罹患していないことがわかっている個人から取得されるものとする。試験サンプル中においてプロガストリンの濃度が有意に高いほど、そのサンプルが得られた対象は食道癌を有する尤度が高いということが結論付けられ得る。
【0016】
そのため、より好ましい態様においては、この発明の方法は、
c)参照サンプル中における参照のプロガストリンの濃度を決定する工程と、
d)前記生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度を前記参照のプロガストリンの濃度と比較する工程と、
e)工程d)での比較から、食道癌の存在の危険性を評価する工程とである、さらなる工程を含む。
【0017】
他の側面によれば、この発明は、対象における食道癌を診断するイン・ビトロ方法であって、前記方法は、
a)前記対象からの生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程と、
b)前記サンプル中における前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程とを含み、前記結合は前記対象における食道癌の存在を示唆するものである。
【0018】
好ましい態様においては、本発明は、対象における食道癌のイン・ビトロ診断方法であって、
a)前記生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程と、
b)前記生物サンプル中におけるプロガストリンのレベルまたは濃度を決定する工程とを含み、前記生物サンプル中においてプロガストリンの濃度が少なくとも10pMであることは、前記対象における食道癌の存在の示唆である。
【0019】
この発明による方法のさらに特定の態様においては、前記生物サンプル中においてプロガストリンの濃度が少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMであることは、前記対象における食道癌の存在の示唆である。
【0020】
より好ましい態様においては、この発明の方法は、
c)参照サンプル中における参照のプロガストリンの濃度を決定する工程と、
d)前記生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度を前記参照のプロガストリンのレベルまたは濃度と比較する工程と、
e)工程d)での比較から、食道癌の存在を診断する工程とである、さらなる工程を含む。
【0021】
他の側面によれば、この発明は、対象における転移した食道癌を診断するイン・ビトロ方法であって、前記方法は、
a)前記対象からの生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程と、
b)前記サンプル中における前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程とを含み、前記結合は前記対象における転移した食道癌の存在を示唆するものである。
【0022】
好ましい態様においては、本発明は、対象の生物サンプルからの、前記対象における転移した食道癌のイン・ビトロ診断方法であって、
a)前記生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程と、
b)前記生物サンプルにおけるプロガストリンのレベルまたは濃度を生化学アッセイによって決定する工程とを含み、前記生物サンプルにおいてプロガストリンの濃度が少なくとも10pMより高いことは、前記対象における転移した食道癌の存在の示唆である。
【0023】
この発明による方法のさらに特定の態様においては、前記生物サンプル中において、プロガストリンの濃度が少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pM、少なくとも40pMまたは少なくとも50pMであることは、前記対象における転移した食道癌の存在の示唆である。
【0024】
より好ましい態様においては、この発明の方法は、
c)参照サンプル中における参照のプロガストリンの濃度を決定する工程と、
d)前記生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度を前記参照のプロガストリンのレベルまたは濃度と比較する工程と、
e)工程d)での比較から、転移した食道癌の存在を診断する工程とである、さらなる工程を含む。
【0025】
特定の態様においては、本発明は、対象における食道癌のイン・ビトロ診断方法であって、生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定と、その得られた値を参照サンプル中におけるプロガストリンの濃度と比較することとを含む。
【0026】
さらに特定の態様においては、本発明による食道癌の診断の方法では、前記対象の生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させるものであって、前記プロガストリン結合分子は、抗体またはその抗原結合性断片である。
【0027】
「対象における食道癌の存在の危険性を評価すること」という表現は、参照の対象または値と比較したときに、所与の対象について、食道癌に罹患していることの相対的な蓋然性を決定するということを示している。この発明による方法は、臨床検査、生検などの他の方法または指標、および、公知の食道癌のバイオマーカーのレベルの決定と組み合わせる、前記危険性の評価の際のツールを表している。
【0028】
特定の態様によれば、本発明は、対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定を含む、食道癌のイン・ビトロ診断方法であって、前記対象は、食道癌の少なくとも1つの臨床症状を示しているものである。食道癌の臨床症状としては、体重減少、痛みを伴う嚥下または嚥下困難、咳、消化不良および胸やけを含む。
【0029】
他の特定の態様によれば、本発明は、対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定を含む、食道癌のイン・ビトロ診断方法に関するものであって、前記対象は、癌のおよび/または転移の臨床症状を少なくとも1つ示しているものである。
【0030】
したがって、本発明による、食道癌のイン・ビトロ診断方法は、診断プロセスにおけるツールとみなすことが可能である。
【0031】
さらに特定の態様においては、本発明は、対象における食道癌のイン・ビトロ診断方法であって、前記生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定と、公知の食道癌のバイオマーカーの決定とを含む。
【0032】
「プロガストリン」という語は、哺乳動物のプロガストリンペプチドであって、特にヒトプロガストリンを示している。誤解を避けるために、いずれの特定がなければ、「ヒトプロガストリン」という表現は、配列番号1の配列に示されるヒトPGをいう。ヒトプロガストリンは、上記した生物活性なガストリンホルモンの形態には存在しない、N末端およびC末端のドメインを顕著に含む。好ましくは、前記N末端のドメインの配列は、配列番号2で表される。他の好ましい態様においては、前記C末端のドメインの配列は、配列番号3で表される。
【0033】
この発明による方法において、プロガストリンの濃度の決定は、生化学分野の当業者に公知である任意の方法によって行われる。
【0034】
好ましくは、サンプル中のプロガストリンのレベルを決定することは、前記サンプルをプロガストリン結合分子と接触させることと、前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を測定することとを含む。
【0035】
発現のレベルをタンパク質レベルで測定する場合、例えば抗体などの特異的プロガストリン結合分子を用いることによって、特に、ビオチン標識、または、特異的な抗体での免疫沈降法、ウエスタンブロット、ELISAもしくはELISPOT、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫組織化学法(IHC)、免疫蛍光法(IF)、抗体マイクロアレイもしくは免疫組織化学と組み合わせた組織マイクロアレイが後に続く他の同等の技術を用いて染色した細胞膜などの周知の技術を用いることによって、顕著に行われ得る。他の好適な技術としては、単一または多重励起波長を用い、かつ、電気化学的方法(ボルタンメトリーおよびアンペロメトリー技術)などの適合する光学的方法、原子間力顕微鏡、ならびに、例えば多極の共鳴分光法である高周波法、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および、複屈折率または屈折率(例えば、表面プラズモン共鳴法、偏光解析法、共振ミラー法、グレーティングカプラ導波管法、または、干渉法)の共焦点検出および非共焦点検出、細胞ELISA、フローサイトメトリ、ラジオアイソトープの磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE);HPLC-質量分析;液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC-MS/MS)による分析のうちのいずれかを適用する、FRETもしくはBRETのシングルセルの顕微鏡的方法または組織化学的方法を含む。これら技術の全てはこの分野で周知であるため、ここでのさらなる詳述は不要である。これら様々な技術を用いて、プロガストリンのレベルを測定することが可能である。
【0036】
前記方法は、特に、免疫検出に基づく方法、ウエスタンブロットに基づく方法、質量分析に基づく方法、クロマトグラフィーに基づく方法、および、フローサイトメトリに基づく方法から選択してよい。このアッセイを実施するための任意の好適な手段がこの発明の範囲内に含まれるが、FACS、ELISA、RIA、ウエスタンブロット、およびIHCなどの方法が、この発明の方法を実施するために特に有用である。
【0037】
さらに特定の態様においては、この発明による食道癌のイン・ビトロ診断方法は、免疫酵素アッセイを用いて、好ましくはRIAおよびELISAから選択される技術に基づいて、対象からの生物サンプルをプロガストリン結合分子と接触させることを含む。
【0038】
ここで、「生物サンプル」は、例えば食道癌のタンパク質、ポリヌクレオチドもしくは転写物の核酸またはポリペプチドを含む、生物組織または生体液のサンプルである。こうしたサンプルは、プロガストリンの発現レベルの決定を可能にするはずである。プロガストリンは、分泌タンパク質であることが知られている。このため、プロガストリンタンパク質のレベルを決定するのに好ましい生物サンプルには、生体液が含まれる。ここで、「生体液」は、生物由来の物質を含むあらゆる液体を意味する。本発明で用いるのに好ましい生体液には、例えば哺乳類である動物、好ましくはヒト対象の、体液が含まれる。この体液は、任意の体液であってよく、血液、血漿、血清、リンパ液、脳脊髄液(CSF)、唾液、汗、および、尿を含むが、これに限定されない。好ましくは、前記好ましい液体である生物サンプルは、例えば血液サンプル、血漿サンプル、または、血清サンプルなどのサンプルを含む。より好ましくは、生物サンプルは血液サンプルである。実際に、こうした血液サンプルは、患者より収集した完全に害を受けていない血液によって取得することができるため、対象の腫瘍が成長することとなる危険性に関して非侵襲的な評価が可能になる。
【0039】
ここで、「生物サンプル」はまた、癌が固形癌である場合、試験対象の患者の固形癌サンプルを含む。こうした固形癌サンプルにより、当業者は、この発明のバイオマーカーのレベルのあらゆるタイプの測定を行うことが可能となる。一部の場合において、この発明による方法は、患者から固形癌サンプルを得る事前工程をさらに含み得る。「固形癌サンプル」は、腫瘍の組織サンプルを指すものである。癌患者であっても、腫瘍の部位である組織は、非腫瘍の健常組織をなお含んでいる。そのため、「癌サンプル」は、患者から得た腫瘍組織に限定されるべきである。前記「癌サンプル」は、生検標本であるかまたは外科的な切開療法より得たサンプルであり得る。
【0040】
生物サンプルは典型的に真核生物より、最も好ましくは哺乳類、または、鳥、爬虫類、または、魚より取得したものである。実際に、本明細書に記載の方法に供され得る「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ、イノシシ・ブタ(swine)、ヒツジおよびサルを含む哺乳動物、または鳥、爬虫類、または、魚のいずれかであり得る。好ましくは、対象はヒトであり、ヒト対象は「患者」ともいう。
【0041】
「生物サンプルを取得すること」は、本明細書では、この発明に記載の方法で使用する生物サンプルを取得することを意味する。ほとんどの場合、これは動物から細胞サンプルを取り出すことによってなされることとなるが、予め単離しておいた(例えば、別の時点でおよび/または別の目的で、別の人物によって単離された)細胞を用いるか、または、生体内でこの発明の方法を行うことによって、達成することもまた可能である。治療歴または転帰歴を有する記録保管された組織は、特に有用となる。
【0042】
このサンプルは、当業者にとって公知の方法に従って取得され得、必要であれば調製され得る。特に、空腹時の対象よりサンプルを取得するべきであることは、この分野において周知である。
【0043】
プロガストリンの濃度の決定は、サンプルの既知の体積中にあるプロガストリンの量の決定と関係している。プロガストリン濃度は、例えば割合または百分率として、参照サンプルに対して相対的に表すことができる。この濃度はまた、前記濃度の決定に用いられる方法に応じて、信号の強度または局在として表現されてもよい。好ましくは、サンプル中のある化合物の濃度は、前記サンプル中の関連化合物の総濃度を標準化した後で表されるものであって、例えば、サンプル中のタンパク質の総濃度を標準化した後で、あるタンパク質のレベルまたは濃度が表される。
【0044】
好ましくは、前記対象が食道癌に罹患しているという危険性は、前記生物サンプル中で測定されたプロガストリンのレベルを参照レベルと比較することによって決定される。
【0045】
ここで、「参照レベル」という語は、検討中の食道癌マーカー、すなわちプロガストリンの、参照サンプル中での発現レベルをいう。ここで、「参照サンプル」は、対象であって、好ましくは疾患に罹患していないことがわかっている2以上の対象よりか、または、代替として母集団より取得したサンプルを意味する。好適な参照のプロガストリン発現レベルは、いくつかの好適な対象における前記マーカーの発現レベルを測定することによって決定することが可能であり、こうした参照レベルは、特定の対象集団に応じて調整することが可能である。参照の値または参照レベルは、絶対値;相対値;上限もしくは下限を有する値;ある範囲の値;平均値(average value);中央値、中間値(mean value)または特定の対照もしくはベースライン値と比較した値、であることが可能である。参照値は、個々のサンプル値、例えば試験されている対象からのサンプルであるが、時期的には初期の時点でのサンプルから取得した値に基づくことが可能である。参照値は、例えば暦年齢が合致する群の対象の集団からのサンプルなどの大量のサンプルに基づくか、または、試験対象のサンプルを含んだまたは除外したサンプルのプールに基づくことが可能である。
【0046】
有利には、「参照レベル」は、癌に関する公知の特定の状態にある対象からの生物サンプルから取得した、所定のプロガストリンレベルである。特定の態様においては、工程(b)での試験サンプルとの比較に用いられる参照レベルは、健常な対象からの生物サンプルからか、または、癌に罹患している対象からの生物サンプルから取得していたものであり得、参照の発現プロファイルはまた、健常な対象の生物サンプルのプールからか、または、癌を有する対象からのサンプルのプールから取得することも可能であるということが理解される。
【0047】
この発明の方法の特定の態様においては、参照サンプルは、あらゆる癌に、好ましくはあらゆる病理に関与しない対象より収集する。参照サンプルは、患者より収集した生物サンプルの性質にもとづいて、前記生物サンプルと同じ性質の生物サンプルであることとなるということを理解されたい。
【0048】
プロガストリンのレベルは、本方法において、プロガストリン結合分子が、好ましくはプロガストリンを認識する抗体が結合したプロガストリンの量を決定することによって、決定する。
【0049】
「プロガストリン結合分子」は、本明細書において、プロガストリンを結合させるが、ガストリン-17(G17)、ガストリン-34(G34)、グリシン伸長ガストリン-17(G17-Gly)またはグリシン伸長ガストリン-34(G34-Gly)を結合させない、任意の分子を指すものである。本発明のプロガストリン結合分子は、例えば抗体分子または受容体分子などの、任意のプロガストリン結合分子であり得る。好ましくは、プロガストリン結合分子は、抗プロガストリン抗体またはその抗原結合性断片である。
【0050】
特定の態様によれば、本発明は、対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定を含む、食道癌のイン・ビトロ診断方法であって、前記対象は、食道癌の少なくとも1つの臨床症状を示しているものである。
【0051】
他の特定の態様によれば、本発明は、対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定を含む、食道癌のイン・ビトロ診断方法に関するものであって、前記対象は、癌のおよび/または転移の臨床症状を少なくとも1つ示しているものである。
【0052】
「結合性」、「結合している」等は、抗体またはその抗原結合性断片が、生理的条件下で、比較的安定である抗原と複合体を形成するということを意味するものである。2つの分子が結合しているか否かを判断する方法は、この分野において周知であり、例としては、平衡透析、表面プラズモン共鳴法等が挙げられる。特定の態様においては、前記抗体またはその抗原結合性断片は、BSAまたはカゼインなどである非特異的分子に結合する自身の親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性をもつプロガストリンに結合する。さらに特定の態様においては、前記抗体またはその抗原結合性断片は、プロガストリンにのみ結合する。
【0053】
特定の態様においては、この発明による食道癌の診断の方法では、対象からの生物サンプルを、少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させるものであって、プロガストリンに対する前記分子の親和性が、少なくとも100nM、少なくとも90nM、少なくとも80nM、少なくとも70nM、少なくとも60nM、少なくとも50nM、少なくとも40nM、少なくとも30nM、少なくとも20nM、少なくとも10nM、少なくとも5nM、少なくとも100pM、少なくとも10pM、または、少なくとも1pMであり、例えば上記したような方法によって決定される。
【0054】
特定の態様においては、本発明は、食道癌の診断の方法であって、対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の検出を含むものであって、前記生物サンプルを、抗hPG抗体またはその抗原結合性断片と接触させる。
【0055】
ここで、「抗体」という語は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含むことを意味している。抗体(または「免疫グロブリン」)は、ジスルフィド結合によって互いに連結した少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖とを含む糖タンパク質からなる。各重鎖は、重鎖可変領域(またはドメイン)(本明細書では、HCVRまたはVHと省略する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、LCVRまたはVLと省略する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLを含む。VHおよびVLの領域は、主に抗原のエピトープを結合することについて一義的な責任を有する、超可変性の「相補性決定領域」(CDR)または「高頻度可変領域」と称される領域と、より保たれる領域を点在させた、フレームワーク領域(FR)と称される領域とに、さらに細分することが可能である。抗体の軽鎖および重鎖内のCDRを同定し、かつ、それらの配列を決定する方法は、当業者にとって周知である。誤解を避けるために、本文中に反対の示唆が何もなければ、CDRという表現は、IMGTで定義されているような抗体の重鎖および軽鎖の超可変性領域を意味するものであって、IMGT固有ナンバリングにより、フレームワーク領域と、相補性決定領域であるCDR1-IMGT:27~38、CDR2とについての、標準化された境界決定が提供されている。
【0056】
IMGT固有ナンバリングは、抗原受容体、鎖の型または種が何であろうと可変ドメイン同士を比較するように定義された(Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997)/Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999)/Lefranc, M.-P., Pommie, C., Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003))。IMGT固有ナンバリングにおいては、保存アミノ酸は常に同じ位置を有し、例えばシステインでは23(1st-CYS)、トリプトファンでは41(CONSERVED-TRP)、疎水性アミノ酸では89、システインでは104(2nd-CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファンでは118(J-PHEまたはJ-TRP)である。IMGT固有ナンバリングにより、フレームワーク領域(FR1-IMGT:位置1~26、FR2-IMGT:39~55、FR3-IMGT:66~104およびFR4-IMGT:118~128)と相補性決定領域:CDR1-IMGT:27~38、CDR2-IMGT:56~65およびCDR3-IMGT:105~117とについての、標準化された境界決定が提供されている。空隙は占有されていない位置を表しているため、CDR-IMGT長(例えば[8.8.13]のように角括弧内にドットで区切って示される)が、重大な情報となる。IMGT固有ナンバリングは、IMGT Colliers de Perles[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002)/Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]として示される、二次元のグラフィカル図と、IMGT/3Dstructure-DB[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]における三次元構造とにおいて用いられる。
【0057】
VHおよびVLはそれぞれ、3つのCDRおよび4つのFRにより構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ、次の順で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、宿主組織またはファクターとの免疫グロブリンの結合を媒介し得、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一の成分(Clq)を含む。抗体は、様々なアイソタイプのもの(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM)とすることが可能である。
【0058】
さらに特定の態様においては、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、および、IgM抗体からなる群から選択する。
【0059】
「ポリクローナル抗体」は、複数の他の同一でない抗体の中でまたは存在下で産生された抗体である。概して、ポリクローナル抗体は、あるB細胞から、同一でない抗体を産生するいくつかの他のB細胞の存在下で産生される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫動物から直接取得される。
【0060】
「モノクローナル抗体」という語は、ほぼ同質の抗体の集団から生じた抗体を示すものであって、集団は、最小限の割合で観察可能であるいくつかの可能性のある天然の突然変異を除外した、同一の抗体を含む。モノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマなどの単一の細胞のクローンの増殖より生じ、1つのクラスおよびサブクラスの重鎖と、1つの型の軽鎖とによって特徴付けられる。
【0061】
ある抗体の「抗原結合性断片」という表現は、前記抗体のターゲット(概して、抗原とも称される)に、概してそのエピトープに結合する能力を保持し、かつ、前記抗体のアミノ酸配列の、少なくとも5個の隣接アミノ酸残基、少なくとも10個の隣接アミノ酸残基、少なくとも15個の隣接アミノ酸残基、少なくとも20個の隣接アミノ酸残基、少なくとも25個の隣接アミノ酸残基、少なくとも40個の隣接アミノ酸残基、少なくとも50個の隣接アミノ酸残基、少なくとも60個の隣接アミノ酸残基、少なくとも70個の隣接アミノ酸残基、少なくとも80個の隣接アミノ酸残基、少なくとも90個の隣接アミノ酸残基、少なくとも100個の隣接アミノ酸残基、少なくとも125個の隣接アミノ酸残基、少なくとも150個の隣接アミノ酸残基、少なくとも175個の隣接アミノ酸残基、または、少なくとも200個の隣接アミノ酸残基のアミノ酸配列を含む、任意のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を示すことを意味する。
【0062】
特定の態様においては、前記抗原結合性断片は、それが由来する抗体の少なくとも1個のCDRを含む。さらに好ましい態様においては、前記抗原結合性断片は、それが由来する抗体の2、3、4または5個のCDR、より好ましくは6個のCDRを含む。
【0063】
「抗原結合性断片」は、限定することなく、Fv、scFv(scは単鎖)、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFv-Fcの断片もしくは二重特異性抗体、または、XTEN(伸長組換えポリペプチド)もしくはPASモチーフなどの不規則ペプチドとの融合タンパク質、または、ポリ(エチレン)グリコールなどのポリ(アルキレン)グリコールの添加(「ペグ化(PEGylation)」)(ペグ化された断片を、Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab’)2-PEGまたはFab’-PEGと称する)(“PEG”はポリ(エチレン)グリコール)などの化学的修飾によって、もしくは、この発明による抗体の特有のCDRのうち少なくとも1つを有する前記断片をリポソーム中に取り込むことによって、その半減期が増加することとなる任意の断片、からなる群から選択することが可能である。好ましくは、前記「抗原結合性断片」は、その由来である抗体の可変の重鎖または軽鎖の部分的な配列で構成されることとなるまたは含むこととなるものであって、前記部分的な配列は、ターゲットに対して、それが系統を引いている抗体と同様の結合特異性と十分な親和性、好ましくはそれが系統を引いている抗体の親和性の少なくとも1/100と同等、より好ましくは少なくとも1/10である親和性とを保持するのに十分なものである。
【0064】
他の特定の態様においては、この発明による食道癌の診断の方法では、対象からの生物サンプルをプロガストリンに結合する抗体と接触させるものであって、前記抗体は、当業者に公知の免疫法によって取得されたものであり、免疫原として、そのアミノ酸配列がプロガストリンのアミノ酸配列の全体または一部を含んでいるペプチドを用いるものである。さらに詳細には、前記免疫原は、
・そのアミノ酸配列が、完全長プロガストリンのアミノ酸配列、特に配列番号1に示される完全長ヒトプロガストリンを含むまたはからなる、ペプチド
・そのアミノ酸配列が、プロガストリンのアミノ酸配列、特に配列番号1に示される完全長ヒトプロガストリンの一部に対応する、ペプチド
・そのアミノ酸配列が、プロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列の一部または全体に対応するペプチド、特にアミノ酸配列:SWKPRSQQPDAPLG(配列番号2)を含むまたはからなる、ペプチド
・そのアミノ酸配列が、プロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列の一部または全体に対応するペプチド、特にアミノ酸配列:QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN(配列番号3)を含むまたはからなる、ペプチド
・そのアミノ酸配列がプロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列の一部に対応するペプチド、特にプロガストリンの71~80のアミノ酸に対応するアミノ酸配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を含む、ペプチド
から選択されるペプチドを含む。
【0065】
当業者は、こうした免疫法を用いて、所望により、ポリクローナル抗体かモノクローナル抗体かのいずれかを生成することができるということを認識するだろう。これらの抗体の型のそれぞれを取得する方法は、この分野において周知である。そのため、当業者は、任意の所与の抗原に対するポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体を生成する方法を容易に選択して実施するであろう。
【0066】
ヒトプロガストリンの1~14のアミノ酸配列(N末端の端)に対応する、アミノ酸配列“SWKPRSQQPDAPLG”を含む免疫原を用いることによって生成したモノクローナル抗体の例としては、以下の表1から表4に記載するように、mAb3、mAb4、mAb16およびmAb19およびmAb20として示されるモノクローナル抗体が挙げられるが、これに限定されない。他のモノクローナル抗体が既に説明されているが、これら抗体が実際にプロガストリンに結合するか否かは不明である(国際公開第2006/032980号)。エピトープマッピングの実験結果は、mAb3、mAb4、mAb16およびmAb19およびmAb20が、前記hPGのN末端のアミノ酸配列内のあるエピトープを特異的に結合するということを示している。配列番号2で表すプロガストリンのN末端内のあるエピトープを特異的に認識するポリクローナル抗体が、この分野において説明されている(例えば、国際公開第2011/083088号を参照のこと)。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
ヒトプロガストリンの55~80のアミノ酸配列に対応する、アミノ酸配列“QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN”(プロガストリンのC末端部分)を含む免疫原を用いることによって生成することが可能であるモノクローナル抗体の例としては、以下の表5および6に、mAb8およびmAb13として示される抗体が挙げられるが、これに限定されない。エピトープマッピングの実験結果は、mAb13が、前記hPGのC末端のアミノ酸配列内のあるエピトープを特異的に結合するということを示している。
【0072】
【0073】
【0074】
他の例としては、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む免疫原を用いて生成された抗hPGモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体が挙げられる。
【0075】
さらに特定の態様においては、この発明による方法では、前記生物サンプルを、抗hPG抗体またはその抗原結合性断片と接触させるものであって、前記抗hPG抗体は、N末端の抗hPG抗体およびC末端の抗hPG抗体から選択される。
【0076】
「N末端の抗hPG抗体」および「C末端の抗hPG抗体」という語は、それぞれ、hPGのN末端部分に位置するアミノ酸を含むエピトープまたはhPGのC末端部分に位置するアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体を示している。好ましくは、「N末端の抗hPG抗体」という語は、配列番号2で表される配列をもつプロガストリンのドメイン内に位置するエピトープに結合する抗体をいう。他の好ましい態様においては、「C末端の抗hPG抗体」という語は、配列番号3で表される配列をもつプロガストリンのドメイン内に位置するエピトープに結合する抗体をいう。
【0077】
「エピトープ」という語は、抗体が結合する抗原のある領域である。エピトープは、構造または機能として規定されてもよい。機能的なエピトープは、概して、構造的なエピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与するそれらアミノ酸を有する。エピトープはまた、立体構造であってもよい。或る態様においては、エピトープは、アミノ酸、糖の側鎖、リン酸基またはスルホニル基などの、分子の化学的に活性表面の分類である決定因子を含んでよく、また或る態様においては、特定の三次元構造的な特性および/または特定の電荷特性を有してよい。抗体が結合するエピトープの決定は、当業者に公知である、任意のエピトープマッピング技術によって行うことができる。あるエピトープは、タンパク質のアミノ酸配列内に連続的に配置される、様々なアミノ酸を含み得る。あるエピトープはまた、タンパク質のアミノ酸配列内に連続的に配置されない、アミノ酸を含み得る。
【0078】
特定の態様においては、前記抗体は、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号4、5および6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号7、8および9と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号10、11および12の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号13、14および15と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号16、17および18の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号19、20および21と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号22、23および24の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号25、26および27と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号28、29および30の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号31、32および33と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体;並びに
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号34、35および36の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号37、38および39と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である。
【0079】
ここで、核酸またはアミノ酸の2つの配列間における「同一性の百分率」または「~%の同一性」は、好適なアラインメント後に取得される、比較対象の2つの配列間で一致しているヌクレオチドまたはアミノ酸残基の百分率を意味し、この百分率は、純粋に統計的なものであり、この2つの配列間における差異が、それらの長さに沿ってランダムに分布している。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、従来、それらを最適に配列した後で該配列を比較することによって実施されるが、前記比較は、セグメントによってかまたは「アラインメントウィンドウ」を用いることによって行うことが可能である。比較のための配列の最適なアラインメントは、人手による比較に加えて、当業者による公知の方法によって実施することが可能である。
【0080】
参照のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を示すアミノ酸配列に関して、好ましい例としては、該参照配列や、或る修飾であって特に少なくとも1つのアミノ酸の削除、付加もしくは置換や、切断、または、伸長を含むアミノ酸配列が挙げられる。1つまたは複数の連続または非連続のアミノ酸を置換する場合、置換されたアミノ酸が、「同等」のアミノ酸で置き換わるような置換が好ましい。ここで、「同等のアミノ酸」という表現は、構造上のアミノ酸のうちのひとつを置換しようとするものであるが、対応する抗体の生物活性および以下に規定する具体的な例の生物活性を変えることのないように置換される、任意のアミノ酸を示すことを意味する。
【0081】
同等のアミノ酸は、置換されるアミノ酸との構造的な相同性か、または、生成しようとする種々の抗体間の生物活性の比較試験の結果のいずれかにおいて決定することが可能である。
【0082】
他の特定の態様では、この発明の方法で用いられる抗体は、ヒト化抗体である。
【0083】
ここで、「ヒト化抗体」という表現は、非ヒト由来の抗体から生じたCDR領域を含む抗体を意味し、抗体分子のその他の部分は、1つまたはいくつかのヒト抗体から生じたものである。また、骨格セグメントの残基(フレームワークのFRと称される)の一部は、当業者による公知の技術に従って、修飾されて、結合親和性を維持することが可能である(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986)。ヒト化の目指すところは、完全な抗原結合親和性と、抗体の特異性とを維持しながら、ヒトへの導入のために、例えばマウス抗体などの外因性の抗体の免疫原性を減少させることである。
【0084】
この発明のヒト化抗体またはそれらの断片は、当業者にとって公知の技術によって調製することが可能である(例えば、Singer et al., J. Immun., 150:2844-2857, 1992の文献に記載のものなど)。こうしたヒト化抗体は、イン・ビトロ診断または生体内での予防的および/または治療的な治療に関与する方法におけるそれらの使用に関して好ましいものである。他のヒト化技術もまた、当業者にとって公知である。実際に、抗体は、CDRグラフティング(欧州特許第0451261号;欧州特許第0682040号;欧州特許第0939127号;欧州特許第0566647号;米国特許第5,530,101号;米国特許第6,180,370号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,639,641号;米国特許第6,054,297号;米国特許第5,886,152号;および米国特許第5,877,293号)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(欧州特許第0592106号;欧州特許第0519596号;Padlan E. A., 1991 , Molecular Immunology 28(4/5): 489-498;Studnicka G. M. et al., 1994, Protein Engineering 7(6): 805-814;Roguska M.A. et al., 1994, Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A., 91:969-973)およびチェーンシャッフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)を含む、様々な技術を用いてヒト化することが可能である。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法を含む、この分野で公知の様々な方法によって作製することが可能である。米国特許第4,444,887号、第4,716,111号、第5,545,806号および5,814,318号、ならびに、国際特許出願公開番号、国際公開第98/46645号、国際公開第98/50433号、国際公開第98/24893号、国際公開第98/16654号、国際公開第96/34096号、国際公開第96/33735号および国際公開第91/10741号もまた参照されたい。
【0085】
さらに特定の態様においては、前記抗体は、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号4、5および6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号7、8および9と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、ヒト化抗体
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号10、11および12の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号13、14および15と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、ヒト化抗体
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号16、17および18の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号19、20および21と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、ヒト化抗体
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号22、23および24の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号25、26および27と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、ヒト化抗体
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号28、29および30の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号31、32および33と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、ヒト化抗体;並びに
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号34、35および36の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列であるか、または、最適なアライメント後にそれぞれ配列番号37、38および39と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性をもつ配列である、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、ヒト化抗体
からなる群から選択されるヒト化抗体であって、
前記抗体はまた、ヒト抗体から生じた軽鎖および重鎖の定常領域を含む。
【0086】
第一の態様においては、この発明による方法は、生物サンプルを、hPGのエピトープであって、hPGのC末端部分内に位置する前記エピトープにまたはhPGのN末端部分内に位置するエピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含む。
【0087】
さらに具体的な態様においては、この発明による方法は、生物サンプルを、hPGのエピトープであって、hPGの10~14のアミノ酸、hPGの9~14のアミノ酸、hPGの4~10のアミノ酸、hPGの2~10のアミノ酸、および、hPGの2~14のアミノ酸に対応するアミノ酸配列から選択される、プロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含む前記エピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含み、上記hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0088】
さらに具体的な態様においては、この発明による方法は、生物サンプルを、hPGのエピトープであって、hPGの71~74のアミノ酸、hPGの69~73のアミノ酸、hPGの71~80のアミノ酸(配列番号40)、hPGの76~80のアミノ酸、およびhPGの67~74のアミノ酸に対応するアミノ酸配列から選択される、プロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含む前記エピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含み、上記hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0089】
第一の態様においては、この発明による組成物は、プロガストリンのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むエピトープを認識する抗体を含む。
【0090】
さらに具体的な態様においては、この発明による組成物は、プロガストリンのエピトープであって、プロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含む前記エピトープを認識する抗体を含み、前記アミノ酸配列は、hPGの10~14の残基、hPGの9~14の残基、hPGの4~10の残基、hPGの2~10の残基、または、hPGの2~14の残基を含み得、上記hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0091】
さらに具体的な態様においては、この発明による組成物は、プロガストリンのエピトープであって、プロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含む前記エピトープを認識する抗体を含み、前記アミノ酸配列は、hPGの71~74の残基、hPGの69~73の残基、hPGの71~80の残基(配列番号40)、hPGの76~80の残基、またはhPGの67~74の残基を含み得、上記hPGのアミノ酸配列は、配列番号1である。
【0092】
この発明による食道癌のイン・ビトロ診断方法の特定の態様においては、前記方法は、対象からの生物サンプルを、プロガストリンの第一の部分に結合する第一の分子と、プロガストリンの第二の部分に結合する第二の分子とに接触させる工程を含む。さらに特定の態様においては、前記プロガストリン結合分子は抗体であり、対象からの生物サンプルを、プロガストリンの第一のエピトープと結合する抗体と、プロガストリンの第二のエピトープと結合する第二の抗体とに接触させる。
【0093】
好ましい態様において、食道癌の診断の本発明の方法は、ヒト対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの検出を含む。
【0094】
より好ましい態様においては、食道癌の診断の本発明の方法は、ヒト対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の検出を含む。
【0095】
他の特定の態様においては、食道癌の診断の本発明の方法は、ヒト対象からの生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度の検出を含むものであって、前記生物サンプルは、血液、血清および血漿から選択する。
【0096】
さらに好ましい態様においては、本発明の方法は、前記対象からのサンプルを上記したような抗hPG抗体と接触させることを含むものであって、上記サンプル中における前記抗hPG抗体の結合は、前記対象における食道癌の存在を示唆する。
【0097】
さらに特定の態様においては、本発明の方法は、前記対象からのサンプルを上記したような抗hPG抗体と接触させることを含むものであって、前記サンプル中においてプロガストリンの濃度が10pMを超えていることは、前記対象における食道癌の存在の示唆である。
【0098】
より好ましくは、本発明の方法は、前記対象からのサンプルを上記したような抗hPG抗体と接触させることを含むものであって、前記サンプル中においてプロガストリンの濃度が10pM、20pM、30pMまたは40pMを超えていることは、前記対象における食道癌の存在の示唆である。
【0099】
さらにより好ましくは、本発明の方法は、前記対象からのサンプルを上記したような抗hPG抗体と接触させることを含むものであって、前記血漿中においてプロガストリンの濃度が10pM、20pM、30pM、40pMを超えていることは、前記対象における転移した食道癌の存在の示唆である。
【0100】
本発明はまた、例えば化学療法、生物学的療法、免疫療法または抗体療法などの患者における食道癌の治療の有効性を、食道癌の治療前に患者より取得した体液または食道癌の生検などである第一のサンプル中におけるプロガストリンの濃度を決定することと、その後第一のサンプル中におけるプロガストリンの濃度を、治療後の同じ患者より取得した第二のサンプル中におけるプロガストリンの濃度と比較することとによって、モニタリングする方法に関するものであって、前記第一のサンプルと比較した前記第二のサンプル中におけるプロガストリンの濃度の減少が、治療が有効であったことを示唆するものである。
【0101】
特定の態様においては、この発明による方法は、患者より取得した生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度を、サンプル中におけるプロガストリンの濃度についての所定の値と比較することを含み、さらに特定の態様においては、前記所定の値は、食道癌でない集団における値の中間(mean)または平均(average)の決定に基づく、サンプル値の中間または平均、上記患者が食道癌でないことがわかった場合に取得されるプロガストリンの濃度の値、から選択する。
【0102】
特定の態様においては、食道癌のイン・ビトロ診断のこの発明による方法は、前記患者からのサンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定と、食道癌の第二の診断の試験とを含む。さらに特定の態様においては、食道癌のイン・ビトロ診断のこの発明による方法は、前記患者からのサンプル中におけるプロガストリンの濃度の決定と、食道癌の第二の診断の試験とを含む。
【0103】
この発明の特定の態様においては、本発明による方法は、食道癌を治療したまたは治療している患者からのサンプル中における経時的なプロガストリンのレベルの決定を含む。
【0104】
他の側面においては、本発明の主題は、食道癌の予防または治療用組成物に関するものであって、前記組成物は、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0105】
この発明の方法で用いる抗体組成物は、限定するものではないが、非経口、くも膜下腔内、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、点滴または急速投与を含む様々な経路で投与する、水性懸濁液を含むがこれに限定されない様々な剤形として調製することが可能である。いくつかの態様においては、組成物は、非経口投与用に処方され、またいくつかの具体的な態様においては、点滴による静脈内注射用とされる。
【0106】
特定の態様においては、この発明による、食道癌の予防または治療用組成物は、0.001mg/kgから約250mg/kgの範囲をとる有効量のこの発明の抗プロガストリン抗体を含むものであって、それは一回投与かまたは複数回にわたる間隔を空けた投与で与えることができる。
【0107】
特定の態様においては、この発明による、食道癌の予防または治療用組成物は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体、および、IgM抗体から選択される、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片を含む。好ましくは、前記抗体は上述した抗体である。より好ましくは、前記抗体はヒト化抗体である。
【0108】
さらに特定の態様においては、この発明による、食道癌の予防または治療用組成物は、例えば上述した方法によって決定されるような、少なくとも5000nM、少なくとも500nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、7nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、50pM、10pM、5pM、1pM、または、少なくとも0.1pMである、プロガストリンに対する親和性を有するプロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0109】
さらにより特定の態様においては、食道癌の予防または治療用組成物は、プロガストリン結合抗体を含むものであって、前記プロガストリン結合分子またはその抗原結合性断片は、中和抗体である。
【0110】
「中和抗PG抗体」という表現は、PGを結合して、PG依存性信号伝達をブロックし、結果的に腫瘍細胞中での、特に食道腫瘍細胞中でのPG誘発反応を抑制するものである、抗体を示す。食道癌細胞のPG誘発反応の抑制は、細胞分化の抑制、細胞死の抑制、および/または、細胞増殖の刺激によって媒介させることができる。
【0111】
他の特定の態様においては、食道癌の予防または治療用組成物は、プロガストリン結合抗体を含むものであって、前記プロガストリン結合分子またはその抗原結合性断片は、ヒト化抗体である。
【0112】
特定の態様においては、食道癌の予防または治療用組成物は、プロガストリン結合抗体を含むものであって、前記プロガストリン結合分子またはその抗原結合性断片は、細胞毒性分子が結合されている。
【0113】
他の特定の態様においては、患者の食道癌の予防または治療用組成物は、プロガストリン結合抗体を含むものであって、前記患者は本発明による方法によって食道癌と診断されたものであり、プロガストリンの濃度が、参照サンプル中よりも前記患者からの生物サンプル中でより高いものである。
【0114】
さらに特定の側面においては、本発明は、この発明による食道癌の予防または治療用組成物に関するものであって、前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片は、N末端の抗プロガストリン抗体およびC末端の抗プロガストリン抗体から選択される。
【0115】
他の側面においては、本発明は、この発明による食道癌の予防または治療用組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。さらに具体的には、この発明による食道癌の予防または治療用医薬組成物は、上述したような抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0116】
さらに特定の側面においては、本発明は、この発明による食道癌の予防または治療用組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関するものであって、前記抗プロガストリン抗体は、0.001mg/kgから250mg/kgの用量で、好ましくは少なくとも0.005mg/kg、少なくとも0.01mg/kg、少なくとも0.05mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.5mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも5mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも50mg/kgまたは少なくとも100mg/kgの用量で投与される。他の側面においては、本発明は、この発明による食道癌の予防または治療用組成物と、抗癌治療分子とを含むパーツのキットに関する。
【0117】
実際には、本明細書に記載するような抗PGモノクローナル抗体による治療は、他の治療法と組み合わせるかまたは他の治療法を補助することが可能である。他の治療法の非限定的な例としては、化学療法による治療、放射線治療、外科的切除術および抗体療法が挙げられる。
【0118】
他の側面においては、本発明は、この発明による食道癌の予防または治療用組成物と、化学療法分子、標的療法分子から選択される抗癌治療分子とを含むパーツのキットに関する。
【0119】
特定の態様においては、本発明は、同時投与、連続投与または別々の投与のための、この発明による食道癌の治療のための組成物および化学療法分子を含む、パーツのキットに関する。この目的に有用である化学療法分子としては、葉酸拮抗剤、プリン拮抗剤、ピリミジン拮抗剤、DNAアルキル化分子、DNA架橋剤、抗生物質、白金錯体、プロテアソーム阻害剤、有糸分裂紡錘体毒、トポイソメラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤およびその他のものが挙げられるが、これに限定されない。
【0120】
他の特定の態様においては、本発明は、同時投与、連続投与または別々の投与のための、この発明による組成物と他の標的療法分子を含む組成物とを含む、パーツのキットに関する。こうした標的療法分子には、セツキシマブまたはパニツムマブなどの、EGFRを標的とする抗体、ベバシズマブなどの、VEGFを標的とする抗体、トラスツズマブまたはペルツズマブなどの、HER2を標的とする抗体、ペンブロリズマブなどの、PD-1およびPDL-1を標的とする抗体、イピリムマブなどの、CTLA-4を標的とする抗体、エルロチニブなどの、EGFRを標的とする小分子薬剤、ベムラフェニブまたはダブラフェニブなどの、BRAFを標的とする小分子薬剤、アフリベルセプトなどの、VEGFを標的とする組換え融合タンパク質が含まれるが、これに限定されない。
【0121】
他の特定の側面においては、本発明は、食道癌の診断のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片の使用に関する。
【0122】
他の特定の側面においては、本発明は、食道癌の予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片の使用に関する。
【0123】
さらに特定の側面においては、本発明は、患者の食道癌の予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片の使用に関するものであって、前記患者の生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度が決定されて、参照の生物サンプルのプロガストリンの濃度よりも高いものである。
【0124】
さらに特定の側面においては、本発明は、患者の食道癌の予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片の使用に関するものであって、前記患者に転移が認められる。
【0125】
さらにより特定の側面においては、本発明は、患者の食道癌の予防または治療のための、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片の使用に関するものであって、前記患者に転移が認められ、前記患者の生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度が決定されて、参照の生物サンプルのプロガストリンの濃度よりも高いものである。
【0126】
組み合わせにより最大の効能が獲得されるように、組み合わせて構成される成分を、同時に、別々に、または、連続的に投与してよいものであり、投与毎に急速投与から連続灌流までその持続時間を変更することが可能である。
【0127】
ここで、「同時に投与」は、組成物の2つの化合物を単一かつ固有の製剤で投与することをいう。ここで、「別々に投与」は、この発明による組成物の2つの化合物を、別個の製剤で、同時に投与することをいう。ここで、「連続投与」は、この発明による組成物の2つの化合物を、それぞれ別個の製剤で、立て続けに投与することをいう。
【0128】
ここで、「治療効果量」は、疾患の症状を予防、緩和、軽減もしくは改善するかまたは治療中の患者の生存時間を延ばすのに有効である、ある化合物(または化合物)の最小濃度または最小量をいう。
本発明は以下の通りである。
[1]対象における食道癌のイン・ビトロ診断方法であって、
a)前記対象からの生物サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程と、
b)前記サンプル中における前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程とを含み、前記結合は前記対象における食道癌の存在を示唆するものである、方法。
[2]工程b)が、前記プロガストリンの濃度を決定することをさらに含み、前記生物サンプル中においてプロガストリンの濃度が少なくとも10pMであることは、前記対象における食道癌の存在の示唆である、請求項1記載の方法。
[3]c)参照サンプル中における参照のプロガストリンの濃度を決定する工程と、
d)前記生物サンプル中におけるプロガストリンの濃度を前記参照のプロガストリンの濃度と比較する工程と、
e)工程d)での比較から、食道癌の存在を判断する工程とをさらに含む、請求項2記載の方法。
[4]前記プロガストリン結合分子が、抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5]前記抗体またはその抗原結合性断片が、N末端の抗プロガストリンモノクローナル抗体およびC末端の抗プロガストリンモノクローナル抗体から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[6]プロガストリンに結合する前記抗体はが、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ
、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体;並びに
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
[7]前記生物サンプルが、プロガストリンの第一の部分に結合する第一の分子と、プロガストリンの第二の部分に結合する第二の分子とに接触させられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8]生物サンプルが、血液、血清および血漿から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[9]前記生物サンプルが血漿であり、プロガストリンの濃度が少なくとも10pMであることが、前記対象における食道癌の存在の示唆である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
[10]食道癌の予防または治療用組成物であって、前記組成物が、プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片を含む、組成物。
[11]前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片が、ヒト化抗体、単鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体およびIgM抗体から選択される、請求項10記載の組成物。
[12]前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片が、N末端の抗プロガストリン抗体およびC末端の抗プロガストリン抗体から選択される、請求項10または11に記載の組成物。
[13]前記プロガストリン結合分子またはその抗原結合性断片が、中和抗体である、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
[14]前記プロガストリン結合分子が、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、抗体;並びに
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つを含む軽鎖とを含む、抗体
から選択されるヒト化抗体である、請求項10~13のいずれか一項に記載の組成物。
[15]食道癌のイン・ビトロ診断のための、請求項10~14のいずれか一項に記載のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合性断片の使用。
【0129】
この発明の態様の特徴は、以下の実施例についての続く詳細な説明よりさらに明らかになることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】
図1は、食道癌患者(n=12)と対照患者(n=103)とにおける、プロガストリンの血漿濃度の中央値である。マン・ホイットニーの両側検定、***:p<0.001。
【
図2】
図2は、超低接着条件下の、対照(CT Hz)での、または、抗PGヒト化抗体(PG Hz)での、続く治療で形成されたOE33スフィアの数である。両側t検定、*:p<0.05。
【実施例】
【0131】
実施例1:ポリクローナル抗体を用いた、血漿のプロガストリンの濃度の検出
血漿のプロガストリンのレベルを、2つの特異的な抗プロガストリン抗体を用いてELISAによって定量した。捕捉抗体をプレートのウェル上に被覆させて、一方、顕色抗体(revelation antibody)を用いてプロガストリンを検出し、シグナルの顕色を媒介させるようにする。
【0132】
本実施例において、定量は、反応することで光を発する基質を用いることで、捕捉抗体に保持される抗原に結合する抗体の発光量に比例する値を割り当てることを可能にする、ELISA法に基づく。
【0133】
材料
表7に、試薬および装置を列記する。
【0134】
【0135】
ポリクローナル抗体は、標準プロトコルに従って、N末端プロガストリン(配列番号2)で、または、hPGの71~80のアミノ酸に対応し、かつ、配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を有するC末端プロガストリンで、ウサギを免疫することによって取得した。
【0136】
このアッセイで用いるプロガストリンに対するポリクローナル抗体の結合特性は、次のとおりである:G34-Gly、G34、G17-Gly、G17に結合せず、完全長のプロガストリンに結合する。
【0137】
96ウェルプレートを、100mlのミリQ水に1カプセルの内容物を溶解させることによって、50mM、pH9.6の炭酸塩すなわち重炭酸ナトリウムの溶液を調製して被覆した。プロガストリンのC末端、FGRRSAEDEN(配列番号40)を用いることによって取得されるポリクローナル抗体に対応する、捕捉抗体の溶液(3μg/ml)を、炭酸塩バッファー中で調製する。100マイクロリットルの抗体溶液を各ウェルに加え、4℃で16時間(一晩)インキュベートする。その後プレートを、抗体溶液を除去することによってブロックし、300μlの1×PBS/0.1%Tween-20で3回洗浄して、その後1ウェル当たり200μlのブロッキングバッファー(1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSA)を加えて、22℃で2時間インキュベートする。その後ブロッキングバッファーを除去して、ウェルを300μlの1×PBS/0.1%Tween-20で3回洗浄する。
【0138】
血漿の希釈は、次のとおり行う:血漿は純粋なものを使用し、1/2、1/5および1/10に希釈する。希釈液は、純粋な血漿から1×PBS/0.1%Tween20/0.1%BSA中で調製する。
【0139】
対照試験である、プロガストリンの濃度が既知であるELISAに関しては、プロガストリンの希釈は次のとおりに調製される:ストック組換えPG(フランス国パリ、パスツール研究所からの、大腸菌中で産生し、グルタチオンアガロース/タグ除去(Tev)/IMACカウンター精製/透析でアフィニティ精製された完全長ヒトプロガストリン)を、0.45mg/ml(45マイクロM)の濃度に三つ組で調製する。プロガストリンの濃度の範囲は、次のとおりに調製した:
・溶液A:1/10の事前希釈、2μlのストック+18μlのバッファー
・溶液B:1/100の事前希釈、10μlのA+90μlのバッファー
・溶液C:1/1000の事前希釈、10μlのB+90μlのバッファー
・溶液D:500pM、5.55μlのC+494.5μlの希釈液
・溶液E:250pM、250μlのD+250μlの希釈液
・溶液F:100pM、200μlのE+300μlの希釈液
・溶液G:50pM、250μlのF+250μlの希釈液
・溶液H:25pM、200μlのG+200μlの希釈液
・溶液I:10pM、100μlのH+150μlの希釈液
【0140】
組換えPGの範囲は線形であり、そのため使用する抗体に応じて、多少広範囲となることがある。
【0141】
試験サンプルの調製のため、各サンプルおよそ500μlを取り分け、結果物を分析(および必要であれば確認)するまで保存しておく。この範囲の各点および/または血漿について100μlを、純粋な、1/2、1/5および1/10に希釈したものをアッセイし、プレート上で22℃で2時間インキュベートする。
【0142】
この試験の顕色のため、プレートを、300μlの1×PBS/0.1%Tween-20で3回洗浄する。ポリクローナルウサギ抗プロガストリン抗体の溶液であって、前記抗体が、免疫原としてプロガストリンのN末端部を用いて取得され、ビオチンに結合した、0.5μg/mlとなるものである、ポリクローナルウサギ抗プロガストリン抗体の溶液を、1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSAで希釈することによって調製する。この溶液100μlを、各ウェルに加える。22℃で1時間、インキュベーションを行う。ストレプトアビジン-HRPでの顕色は、検出抗体を除去することと、300μlの1×PBS/0.1%Tween-20で3回洗浄することと、その後1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSA中で希釈した20ng/mlのストレプトアビジン-HRPの溶液を調製することとによって行うものであって、100Addの100μlのこの溶液を、22℃で1時間のインキュベーション前に、各ウェルに加える。
【0143】
この検出は、ストレプトアビジン-HRPを除去することと、300μlの1×PBS/0.1%Tween-20での3回の洗浄と、その後1ウェル当たり100μlの化学発光基質溶液を加えることとからなる。この基質溶液は、使用の30分前に、SuperSignal ELISA Femtoキットの2つの溶液を、20ml+20mlで当量で混合することによって調製し、暗闇中、室温で保存する。暗闇中、室温でのインキュベーションの5分後に、発光を読み取る。
【0144】
各条件について、試験は三つ組で行い、各範囲の結果は、プロガストリンの濃度に応じて発光における変化を示すグラフとして表されることとなる。血漿の希釈液毎に、プロガストリンの濃度を、対応する範囲(1/10番とした範囲は1/10で希釈されたサンプル)の線形回帰直線の式を用いて決定する。
【0145】
方法および結果
食道癌を有する患者(n=12)のプロガストリンの血漿濃度の中央値は、42.3pMであるのに対し、対照の患者(n=103)のプロガストリンの血漿濃度の中央値は0pMである(
図1)。これらのデータは、食道癌を有する患者は、彼らの血漿中のプロガストリンの濃度が健常対照の個人と比べて高いということを示している。
【0146】
これらのデータは、食道癌を有する患者は、彼らの血漿中のプロガストリンのレベルが健常対照の個人と比べて高いということを示している。
【0147】
実施例2:モノクローナル抗プロガストリン抗体を用いたプロガストリンの濃度の検出
Nunc MaxiSORP96ウェルプレートのウェルを、次のとおり第一のプロガストリン特異性抗体で被覆する。プロガストリンのカルボキシ末端領域に特異的である抗プロガストリンモノクローナル抗体を、50mM、pH9.6の炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウムバッファーのミリQ水溶液で、3μg/mlの濃度に希釈する。
【0148】
その後、合計100μlの抗体溶液を96ウェルプレートの各ウェルに加えて、4℃で一晩インキュベートした。結合後、抗体溶液をウェルから取り除き、その後ウェルを100μl洗浄バッファー(1×PBS/0.1%Tween-20)で3回洗浄する。その後、合計100μlのブロッキングバッファー(1×PBS/0.1%Tween-20/0.1%BSA)を各ウェルに加えて、22℃で2時間インキュベートする。その後、ブロッキングバッファーを取り除き、ウェルを洗浄バッファーで3回洗浄した。その後、患者より単離した血漿または血清サンプルを、典型的には1:1、1:2、1:5および1:10の希釈液となる希釈系列で、100μlの容量でウェルに加え、その後22℃で2時間インキュベートする。血漿または血清サンプルは、デュプリケートで分析する。
【0149】
アッセイはまた、2つの標準曲線を含む。第一の標準曲線は、1ウェル当たり、最終量1ng、0.5ng、0.25ng、0.1ng、0.05ng、0.01ngおよび0ngの組換えプロガストリンの希釈液を用いて作製する。陰性の対照として機能する第二の標準曲線は、試験サンプルと同じ希釈液で、すなわち1:1、1:2、1:5および1:10で、ブロッキングバッファーで希釈したプロガストリン陰性のヒト血清より作製する。あるいは、血漿サンプルがアッセイされている場合、陰性の対照として機能する第二の曲線は、試験サンプルと同じ希釈液で、すなわち1:1、1:2、1:5および1:10で、ブロッキングバッファーで希釈したプロガストリン陰性のヒト血漿より作製する。
【0150】
血漿または血清サンプルとのインキュベーションの完了後、ウェルの内容物を取り出し、ウェルを100μl/ウェルの洗浄バッファーで3回洗浄し、その後、次のように、プロガストリンが第一の抗体に結合したことを、プロガストリンに対して特異的である第二の抗体を用いて検出する。
【0151】
プロガストリンのアミノ末端領域に対して特異的であるビオチン結合抗プロガストリンモノクローナル抗体を、抗体に応じて、0.1から10μl g/mlの濃度にブロッキングバッファーで希釈する。その後、合計100μlの抗体溶液を各ウェルに加えて、22℃で1時間インキュベートした。
【0152】
第二の抗体の結合の完了後、プレートを100μl/ウェルの洗浄バッファーで3回洗浄し、その後100μlのストレプトアビジン-HRP溶液(ブロッキングバッファー中25ng/ml)を各ウェルに加えて、22℃で1時間インキュベートする。ストレプトアビジン-HRP溶液とのインキュベーションの完了後、プレートを100μl/ウェルの洗浄バッファーで3回洗浄する。その後、Pierce SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity化学発光基質キットを用いて調製した100μlの化学発光基質を、ウェルごとに加えて、暗闇中、室温で5分間インキュベートし、その後ルミノメーターで読み取る。
【0153】
ルミノメーターでの記録に基づいて、線形回帰分析を用いて、標準曲線のデータに対応する直線の式を導く。この式を用いて、その後、様々な患者のサンプル中におけるプロガストリンの濃度を算出する。
【0154】
食道癌を有する患者におけるプロガストリンの血漿濃度の中央値を算出し、対照の患者の血漿中におけるプロガストリンの血漿濃度の中央値と比較する。これらのデータは、食道癌を有する患者は、彼らの血漿中におけるプロガストリンのレベルが健常対照の個人と比べて高かったということを示している。
【0155】
実施例3:癌細胞株における抗hPG抗体の中和活性
3.1.抗hPGモノクローナル抗体の中和活性
TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33は、食道癌の研究に通常用いられる細胞株であり、プロガストリンを産生および分泌する。PGに対するモノクローナル抗体は、これら様々な細胞株中での増殖を阻害するそれらの能力に関して試験される。様々な抗hPGモノクローナル抗体を用いて、TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の各細胞株からの細胞の生存が試験される。
【0156】
実験毎に、50,000個の細胞を、6ウェルプレート内に、ウシ胎児血清含有培地に播種し、8時間インキュベートする。細胞は、一晩血清飢餓状態にし、播種後24時間で開始するものとし(時間“T0”)、細胞を、ウシ胎児血清のない状態で、48時間で12時間毎に、1~20μg/mlのモノクローナル対照抗体(モノクローナル抗体の抗ピューロマイシン)(CT mAb)で、または、1~20μg/mlの抗hPG mAbで、六つ組で処理するものであって、前記mAbは、C末端の抗hPGモノクローナル抗体またはN末端の抗hPGモノクローナル抗体である。
【0157】
前記mAbは、C末端の抗hPG抗体であり、
・配列番号28、29および30のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖と、配列番号31、32および33のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖とを含む、抗体
・配列番号34、35および36のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖と、配列番号37、38および39のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖とを含む、抗体
から選択される。
または、N末端の抗hPG抗体であり、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖と、配列番号7、8および9のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖とを含む、モノクローナル抗体
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖とを含む、抗体
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列であるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列であるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖とを含む、抗体
から選択される。
実験毎に、T0での対照ウェル中の細胞数を計数する。
【0158】
具体的には、48時間目に、対照のウェルと、抗hPG mAbで処理したウェルとの両方にある生細胞数を計数し、その後、各細胞計数とT0で決定した細胞計数との間の差異を算出する。その後、得られた抗hPG mAbで処理した細胞の数を、対照のmABで処理した細胞の数の百分率として表す。
【0159】
抗hPGモノクローナル抗体での処理は、対照の抗体での処理と比べて、細胞数が減少する。統計的有意性は、テューキーのポストホック検定により一元配置ANOVAを用いて決定した:*=p<0.05、**=p<0.01、および、***=p<0.001。各細胞株において、抗hPG抗体が、細胞の生存を減少させる。
【0160】
3.2.細胞生存における抗hPGヒト化抗体の中和活性
PGに対するヒト化抗体は、TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の細胞株の増殖を阻害するそれらの能力に関して試験される。TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の各細胞株からの細胞の生存が、様々な抗hPGヒト化抗体を用いて試験される。
【0161】
実験毎に、50,000個の細胞を、6ウェルプレート内に、ウシ胎児血清含有培地に播種し、8時間インキュベートする。細胞は、一晩血清飢餓状態にし、播種後24時間で開始するものとし(時間“T0”)、細胞は、ウシ胎児血清のない状態で、48時間で12時間毎に、1~20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell社製、抗ヒトFcG1)(CT Hz)で、または、1~20μg/mlの抗hPG Hzで、六つ組で処理するものであって、前記Hzは、C末端の抗hPGヒト化抗体またはN末端の抗hPGヒト化抗体である。実験毎に、T0での対照ウェル中の細胞数を計数する。
【0162】
具体的には、48時間目に、対照ウェルと、抗hPG Hzで処理したウェルとの両方にある生細胞数を計数し、その後、各細胞計数とT0で決定した細胞計数との間の差異を算出する。その後、得られた抗hPG Hzで処理した細胞の数を、対照のmABで処理した細胞の数の百分率として表す。
【0163】
抗hPG Hz抗体での処理は、対照の抗体での処理と比べて、細胞数が減少する。統計的有意性は、テューキーのポストホック検定により一元配置ANOVAを用いて決定した:*=p<0.05、**=p<0.01、および、***=p<0.001。各細胞株において、抗hPG抗体が、細胞の生存を減少させる。
【0164】
3.3.癌幹細胞頻度における抗hPGモノクローナル抗体の中和活性
PGに対するモノクローナル抗体は、Extreme Limiting Dilution Assay(ELDA)を用いて、TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の細胞株における癌幹細胞(CSC)頻度を減少させるそれらの能力が試験される。TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の各細胞株からのCSC頻度が、様々な抗hPGモノクローナル抗体を用いて試験される。
【0165】
実験毎に、細胞は、FACS Ariaフローサイトメーターを用いて、1ウェル当たり決まった細胞濃度で、超低接着(ULA(ultra-low attachment))P96(96ウェルプレート)に播種し、濃度の範囲としては、1ウェル当たり1個から500個の細胞を用いる。該細胞は、最大11日間ULAプレート内でM11培地(Macari et al, Oncogene, 2015)で培養し、1~20μg/mlのモノクローナル対照抗体(モノクローナル抗体の抗ピューロマイシン)(CT mAb)で、または、1~20μg/mlの抗hPG mAbで、3または4日毎に処理するものであって、実施例3.1で記載したように、前記mAbは、C末端の抗hPGモノクローナル抗体またはN末端の抗hPGモノクローナル抗体である。
【0166】
具体的には、インキュベーション段階の最後に、プレートを位相差顕微鏡で観察し、細胞濃度当たりの陽性ウェル数を評価する。最後に、ELDAのウェブツール(http://www.bioinf.wehi.edu.au/software/elda/)を用いて各治療群のCSC頻度を算出し、群間のあらゆる統計上の差異を試験する(修正カイ二乗検定)。
【0167】
抗hPGモノクローナル抗体での処理は、対照の抗体での処理と比べて、CSC頻度が低下する。
【0168】
3.4.癌幹細胞頻度における抗hPGヒト化抗体の中和活性
・スフィア形成アッセイ
【0169】
PGに対するヒト化抗体は、スフィア形成アッセイを用いて、FLO-1、OE19およびOE33の細胞株における癌幹細胞(CSC)頻度を低下させるそれらの能力に関して試験される。
【0170】
実験毎に、200個の細胞を、超低接着(ULA)の24ウェル中に播種する。該細胞は、最大10日間ULAプレート内でM11培地(Macari et al, Oncogene, 2015)で培養し、20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell社製、抗ヒトFcG1)(CT Hz)で、または、20μg/mlの抗hPG Hz(PG Hz)で、3または4日毎に処理するものであって、前記Hzは、C末端の抗hPGヒト化抗体またはN末端の抗hPGヒト化抗体である。
【0171】
具体的には、インキュベーション段階の最後に、ウェルを明視野顕微鏡を介して撮影し、その写真を分析し、平均直径が25μmを超えるスフィアを計数する。
【0172】
抗hPGヒト化抗体での処理は、対照の抗体での処理と比べて、CSC頻度が低下する。
・Extreme Limiting Dilution Assay
【0173】
PGに対するヒト化抗体は、Extreme Limiting Dilution Assay(ELDA)を用いて、TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の細胞株における癌幹細胞(CSC)頻度を低下させるそれらの能力に関して試験される。TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の各細胞株からのCSC頻度が、様々な抗hPGヒト化抗体を用いて試験される。
【0174】
実験毎に、細胞は、FACS Ariaフローサイトメーターを用いて、1ウェル当たり決まった細胞濃度で、超低接着(ULA)P96(96ウェルプレート)に播種し、濃度の範囲としては、1ウェル当たり1個から500個の細胞を用いる。該細胞は、最大11日間ULAプレート内でM11培地(Macari et al, Oncogene, 2015)で培養し、1~20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell社製、抗ヒトFcG1)(CT Hz)で、または、1~20μg/mlの抗hPG Hzで、3または4日毎に処理するものであって、前記Hzは、C末端の抗hPGヒト化抗体またはN末端の抗hPGヒト化抗体である。
【0175】
具体的には、インキュベーション段階の最後に、プレートを位相差顕微鏡で観察し、細胞濃度当たりの陽性ウェル数を評価する。最後に、ELDAのウェブツール(http://www.bioinf.wehi.edu.au/software/elda/)を用いて各治療群のCSC頻度を算出し、群間のあらゆる統計上の差異を試験する(修正カイ二乗検定)。
【0176】
抗hPGヒト化抗体での処理は、対照の抗体での処理と比べて、CSC頻度が低下する。
【0177】
3.5.WNT/βカテニン経路上の抗hPGモノクローナル抗体の中和活性
TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33は、食道癌の研究に通常用いられる細胞株であり、プロガストリンを産生および分泌する。PGに対するモノクローナル抗体は、読出しとして、周知のWNT/βカテニン経路の標的遺伝子であるタンパク質サバイビンの発現を用いて、これら様々な細胞株におけるWNT/βカテニン経路を阻害するそれらの能力に関して試験される。TE-1、TE-4、TE-6およびKYSE30の各細胞株からのサバイビンの発現が、様々な抗hPGモノクローナル抗体を用いて試験される。
【0178】
実験毎に、50,000個の細胞を、6ウェルプレート内に、ウシ胎児血清含有培地に播種し、8時間インキュベートする。細胞は、一晩血清飢餓状態にし、播種後24時間で開始し、細胞を、ウシ胎児血清のない状態で、72時間で12時間毎に、1~20μg/mlのモノクローナル対照抗体(モノクローナル抗体の抗ピューロマイシン)(CT mAb)で、または、1~20μg/mlの抗hPG mAbで、四つ組で処理するものであって、前記mAbは、C末端の抗hPGモノクローナル抗体またはN末端の抗hPGモノクローナル抗体である。
【0179】
具体的には、処理の72時間後に細胞を回収し、RIPAバッファーを用いて全タンパク質を抽出する。その後、CT mAbでまたは抗hPG mAbで処理した細胞からの同量のタンパク質を、抗サバイビン抗体(Cell Signaling社製、モノクローナル抗体、#2802)およびローディングコントロールとしての抗アクチン抗体(シグマ社製、モノクローナル抗体、#A4700)を用いたウエスタンブロットに供する。Syngene社製、GBOX chemi systemを用いて、定量する。
【0180】
抗hPGモノクローナル抗体での処理は、対照の抗体での処理と比べて、サバイビンの発現が低減する。統計的有意性は、独立スチューデントt検定を用いて決定される:*=p<0.05、**=p<0.01、および***=p<0.001。
【0181】
3.6.WNT/βカテニン経路上の抗hPGヒト化抗体の中和活性
PGに対するヒト化抗体は、読出しとして、周知のWNT/βカテニン経路標的遺伝子であるタンパク質サバイビンの発現を用いて、TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の細胞株におけるWNT/βカテニン経路を阻害するそれらの能力に関して試験される。TE-1、TE-4、TE-6、KYSE30、FLO-1、OE19およびOE33の各細胞株からのサバイビンの発現が、様々な抗hPGヒト化抗体を用いて試験される。
【0182】
実験毎に、50,000個の細胞を、6ウェルプレート内に、ウシ胎児血清含有培地に播種し、8時間インキュベートする。細胞は、一晩血清飢餓状態にし、播種後24時間で開始し、細胞を、ウシ胎児血清のない状態で、72時間で12時間毎に、1~20μg/mlのヒト化対照抗体(BioXCell社製、抗ヒトFcG1)(CT Hz)で、または、1~20μg/mlの抗hPG Hzで、四つ組で処理するものであって、前記Hzは、C末端の抗hPGヒト化抗体またはN末端の抗hPGヒト化抗体である。
【0183】
具体的には、処理の72時間後に細胞を回収し、RIPAバッファーを用いて全タンパク質を抽出する。その後、CT Hzでまたは抗hPG Hzで処理した細胞からの同量のタンパク質を、抗サバイビン抗体(Cell Signaling社製、モノクローナル抗体、#2802)およびローディングコントロールとしての抗アクチン抗体(シグマ社製、モノクローナル抗体、#A4700)を用いたウエスタンブロットに供する。Syngene社製、GBOX chemi systemを用いて、定量する。
【0184】
抗hPGヒト化抗体での処理は、対照の抗体での処理と比べて、サバイビンの発現が低減する。統計的有意性は、独立スチューデントt検定を用いて決定される:*=p<0.05、**=p<0.01、および***=p<0.001。
【0185】
参考文献
Kaz et al, Cancer Letters, 2014 Jan 28;342(2):193-9. “Epigenetic biomarkers in esophageal cancer.”
【配列表】