IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トップ グローブ インターナショナル エスディーエヌ ビーエイチディーの特許一覧

特許7018886手袋のフィルムをエンボス加工する方法及びこの方法で製造される手袋のフィルム
<>
  • 特許-手袋のフィルムをエンボス加工する方法及びこの方法で製造される手袋のフィルム 図1
  • 特許-手袋のフィルムをエンボス加工する方法及びこの方法で製造される手袋のフィルム 図2
  • 特許-手袋のフィルムをエンボス加工する方法及びこの方法で製造される手袋のフィルム 図3
  • 特許-手袋のフィルムをエンボス加工する方法及びこの方法で製造される手袋のフィルム 図4
  • 特許-手袋のフィルムをエンボス加工する方法及びこの方法で製造される手袋のフィルム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】手袋のフィルムをエンボス加工する方法及びこの方法で製造される手袋のフィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20220204BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20220204BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20220204BHJP
   B29L 31/48 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
B29C59/04 C
A41D19/04 A
A41D19/015 210A
B29L31:48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018534999
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 MY2017050068
(87)【国際公開番号】W WO2019039932
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-10-26
(31)【優先権主張番号】PI2017703151
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518234346
【氏名又は名称】トップ グローブ インターナショナル エスディーエヌ ビーエイチディー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】フエ,コン ファー
(72)【発明者】
【氏名】オング,アー チェ
(72)【発明者】
【氏名】ング,トング アン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ヨーク メング
(72)【発明者】
【氏名】チョング,エレイン ニュク ツィ
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-193454(JP,A)
【文献】特開平08-197622(JP,A)
【文献】特開2000-355809(JP,A)
【文献】特開2010-269507(JP,A)
【文献】国際公開第2012/102178(WO,A1)
【文献】特開2009-274389(JP,A)
【文献】国際公開第2007/063653(WO,A1)
【文献】特開2007-062073(JP,A)
【文献】特開昭58-039415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00 - 59/18
A41D 19/04
A41D 19/015
B29L 31/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋のフィルムを金属製ローラー及びゴム製ローラーである一対のローラーの間を通すステップを備え、前記手袋のフィルムは前記金属製ローラー及び前記ゴム製ローラーから得られた重なり合うエンボスを有するようにされており、前記金属製ローラーはテクスチャ加工された表面を有し前記ゴム製ローラーは粗い表面を有し、
前記金属製ローラーによって前記手袋のフィルムの一方の面に形成されるエンボスと、前記ゴム製ローラーによって前記手袋のフィルムの他方の面に形成されるエンボスとは異なり、
前記金属製ローラーの表面にテクスチャ加工されたエンボスパターンは規則的な配列であり、前記ゴム製ローラーの粗い表面は不規則な粗い表面であり、
前記ゴム製ローラーの粗い表面は研削加工によって作られる、手袋のフィルムをエンボス加工する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記金属製ローラーの前記テクスチャ加工された表面が、ひし形、八角形、波、宝石及び正方形の形状を備えるエンボスパターンを有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記手袋のフィルムが80-120μmのエンボス深さを有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋の製造方法に関し、特に手袋の製造の際に手袋のフィルムをエンボス加工する方法に関する。より詳細には、本発明は、一対のローラーを使用して手袋のフィルムをエンボス加工する方法について記述し、各ローラーは手袋のフィルムに重なり合うエンボスを作るために異なるエンボスパターンを有する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー(TPE)の手袋は、食品の取扱、身の回りの世話、美容院及び医療分野で広く利用されている。一般的に、TPEの手袋を製造するために、低密度ポリエチレン(LDPE)とメタロセン線状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)およびそれらに限定されない熱可塑性材料、エラストマー及び酸化物質や粘着防止剤やポリマー加工剤のようなサポート添加剤がまず、TPEのフィルムを製造するために制御された温度分布の下、押出機内で共に混合される。次に、フィルムは押出され、エンボス加工として知られているプロセスにおいて、滑らかな表面を有する一対のローラーの間に通される。続いて、フィルムについて、望ましい手袋を形成するために、引っ張り、端のトリミング、端の曲げ部横切り、曲げ及び刻印がなされる。上記のプロセスからの最終製品は、滑らかな表面を有するTPEの手袋である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
滑らかな表面を有するTPEの手袋の主な不利益は、握り及び粘着の性能が悪いことである。手袋の滑らかな表面のために、ユーザーは、特に滑り易い表面が付いている物を運ぶ難しさに直面する場合がある。その結果、関心の対象となる物を握り保持するために、ユーザーの手に付加的な力が必要とされる。更なる把持力が使われるので、これによりユーザーの手に疲労が生じ、そして最悪の場合、物を保持出来なくなり得る。
【0004】
握り及び粘着の性能が悪いという問題に取り組むための現状の解決策は、テクスチャ加工されたTPEの手袋を提供することであり、それにより、フィルムの製造の際に手袋がエンボス加工されるというものである。エンボス加工は、柔らかい生地で広く利用されているカレンダー処理の技術のタイプの一つである。手袋のエンボスには一般的に一対のローラーの使用が必要とされ、これらのローラーはテクスチャ加工されたローラー及び滑らかな表面を有するローラーから成る。エンボス加工によって、テクスチャ加工されたフィルムを製造するために、テクスチャ加工されたローラーからの対応するエンボスパターンが手袋のフィルムに付与される。
【0005】
それにもかかわらず、TPEの手袋の表面の従来のエンボスパターンは、効果的に手袋の握り及び粘着の性能を解決しない。握り及び粘着の特性の改善は軽度にすぎないことが実証されている。更に、従来のエンボス加工の方法はまた、手袋の強度に影響することが報告されている。すなわち、手袋がエンボス加工される時、手袋のエンボス加工される部分の厚みが減少し、それによって手袋が裂け易くなるというものである。従って上記の観点から、TPEの手袋の握り特性を有意に高めることができるエンボス加工方法を提供することが望まれている。更に、手袋の強度にあまり影響を与えないエンボス加工方法を提供することもまた望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の面の少なくとも一つに、部分的あるいは全体的に合致し、本発明の実施形態は、手袋のフィルムを金属製ローラー及びゴム製ローラーである一対のローラーの間を通すステップを備え、前記フィルムは前記金属製ローラー及び前記ゴム製ローラーから得られた重なり合うテクスチャを有するようにされており、前記金属製ローラーはテクスチャ加工された表面を有し前記ゴム製ローラーは粗い表面を有する、手袋のフィルムをエンボス加工する方法を記述する。
好ましくは、前記金属製ローラーの前記テクスチャ加工された表面が、ひし形、八角形、波、宝石及び正方形の形状を備えるエンボスパターンを有する。
好ましくは、前記ゴム製ローラーの粗い表面は研削加工によって作られる。
好ましい実施形態によれば、前記金属製ローラーは約100μmより大きな平均表面粗さを有する。
もう一つの好ましい実施形態によれば、前記ゴム製ローラーは約15μmより大きな平均表面粗さを有する。
好ましくは、本発明のエンボス加工方法により準備される手袋は、約15-30μmの平均表面粗さ及び80-120μmのエンボス深さを有する。
【0007】
本発明の好ましい本実施形態は、新規な特徴及び、以下十分に説明されて添付図面において示され、添付の請求項において特別に指示される部分の組合せから成る;細部における様々な変形が当業者によりもたらされ得ることは理解されるが、本発明の範囲から離れず、本発明のいずれの利益を犠牲にすることもない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の主要な面として、完成品の握り性能を高めることができる手袋のフィルムをエンボス加工する方法を提供することができる。
本発明のもう一つの面として、特に熱可塑性エラストマー(TPE)ポリマーで作られた手袋の粘着性を改善する手袋のフィルムをエンボス加工する方法を提供することができる。
また、本発明のもう一つの面として、手袋の強度にあまり影響を与えない手袋のフィルムをエンボス加工する方法を提供することができる。
更に、本発明のもう一つの面として、ユーザーが容易に着用できる手袋のフィルムをエンボス加工する方法を提供することができる。
【0009】
本発明の理解を容易にするために、以下の説明と関連させて考察して本発明、その構成、動作、およびその多くの利点が容易に理解され認識され得るという観点から、添付図面に示される好ましい実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】テクスチャ加工されたフィルムを形成するために、テクスチャ加工された金属製ローラー及び粗い表面を有するゴム製ローラーを使うエンボス加工を示す図である。
図2】好ましい実施形態の一つによる、テクスチャ加工された金属製ローラーの表面のエンボスパターンを示す図である。
図3】好ましい実施形態の一つによる、粗い表面を有するゴム製ローラーの表面のエンボスパターンを示す図である。
図4】好ましい実施形態の一つによる、本発明の方法を使用してエンボス加工された手袋のフィルムの表面のエンボスパターンを示す図である。
図5】エンボス加工の際の手袋のフィルムの厚さの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明は、本発明の好ましい本実施形態により、そして添付の説明及び図面を参照して記載される。しかしながら、その記載を本発明の好ましい実施形態及び図面に限定することは本発明の記述を単に容易にするためであると理解されるべきで、当業者が添付の請求項の範囲から離れないで様々な変形例を案出する場合があると予想される。
【0012】
本発明は、手袋のフィルムを金属製ローラー及びゴム製ローラーである一対のローラーの間を通すステップを備え、前記フィルムは前記金属製ローラー及び前記ゴム製ローラーから得られた重なり合うテクスチャを有するようにされており、前記金属製ローラーはテクスチャ加工された表面を有し前記ゴム製ローラーは粗い表面を有する、手袋のフィルムをエンボス加工する方法に関する。
【0013】
本発明の手袋のフィルムは、好ましくは熱可塑性エラストマー(TPE)のようなエラストマーを基にした材料で作られるが、ポリオレフィン、スチレンブロック共重合体やスチレンエチレンブロック共重合体のような他の適したタイプの熱可塑性プラスチック材料もまた含まれてもよい。
【0014】
図1を参照すると、手袋のフィルム3は押出機4から新たに押出され、エンボス加工のために一対のローラーの間を通される。好ましくは、新たに押出された手袋のフィルムは半固体の形態で、フィルムの成形を容易にするために高い変形性を有する。相対的に均一な厚さのフィルムを提供するために、新たに押出された手袋のフィルムが一対のローラーの間を通されることが好ましい。好ましくは、エンボス加工で使用される一対のローラーは、金属製ローラー1及びゴム製ローラー2である。好ましい実施形態によれば、金属製ローラーはテクスチャ加工された表面を有する一方でゴム製ローラーは粗い表面を有する。
【0015】
図2は、好ましい実施形態による金属製ローラーのテクスチャ加工された表面を示している。金属製ローラーのテクスチャ加工された表面のエンボスパターンは、好ましくは規則的な配列で多数の個々のエンボスを備える。好ましくは、このエンボスは似た形状及び構成であり、この好ましい形状はひし形、八角形、波、宝石及び正方形の形状およびそれらに限定されない。カメ、格子、麻織や玉虫のような他の適正なエンボスパターンが含まれていてもよい。本発明に従うと、テクスチャ加工された金属製ローラーは好ましくは100μmより大きな平均表面粗さを有する。より好ましくは、テクスチャ加工された金属製ローラーの平均表面粗さは約100-400μmである。
【0016】
図3に示されるように、ゴム製ローラーは硬いゴム材料の多数の粒子によりもたらされる粗い表面を有する。好ましい実施形態に従うと、このゴム製ローラーの粗い表面は好ましくは研削加工により作られる。好ましくは、ゴム製ローラーが不規則な粗い表面を実現するために研削される。不規則な粗い表面が砥石、カッター刃、又はいずれかの適正な研削工具を用いて作られることが好ましい。更に、粗い表面を有するゴム製ローラーが15μmより大きな平均表面粗さを有することが好ましい。より好ましくは、ゴム製ローラーの平均表面粗さは約15-30μmである。
【0017】
図4に示されるように、本発明のエンボス加工方法を用いて製造された手袋のフィルムの完成品は、テクスチャ加工された金属製ローラー及び粗い表面を有するゴム製ローラーの両方のエンボス加工により付与された重なり合うエンボスパターンを有する。エンボスの形状はフィルムの表面に広くわたって異なって現れる。更に、重なり合うエンボスパターンにより手袋のフィルムが輝いて見え、これにより手袋に美的な効果がもたらされ得る。エンボス加工された手袋のフィルムの視覚的な輝きの効果により、ユーザーが本発明の手袋を他の手袋製品から識別できるという利便性ももたらされる。
【0018】
本発明のエンボス加工された手袋のフィルムを用いた手袋を製造するために、その手袋のフィルムは引っ張り、端のトリミング、端の曲げ部横切り、曲げ及び刻印の工程に送られる。好ましくはエンボス加工された手袋のフィルムの2つの層は、機能的なエンボス加工された手袋を形成するために、適正な温度、圧力及び熱の下で刻印されて密封される。好ましい実施形態に従うと、エンボス加工された手袋は好ましくは、良好な握り性能をもたらすために約15-30μmの平均表面粗さを有する。より好ましくは、エンボス加工された手袋の平均表面粗さは約25μmである。
【0019】
更に、エンボスは好ましくは手袋の少なくとも1つの面に適用される。より好ましくは、エンボスは手袋の外面及び内面の両方に適用される。好ましい実施形態では、エンボス加工された手袋は内面では摩擦係数(COF)が小さく外面ではCOFが大きい。このようにエンボス加工された手袋を提供することで、ユーザーは粘着性が良好な手袋を容易に着用できることを、当業者により十分に理解されるであろう。
【0020】
エンボスが手袋の強度に影響することが知られており、そこでエンボス加工される手袋の製造の際に表面改質剤が一般的に使用されてきた。しかしながら、本発明に従うと、前述の説明で記載したようにエンボス加工される手袋の製造に添加剤は不要である。これは、好ましくは約80-120μmである適正なエンボス深さのエンボス加工された手袋を提供することで実現される。このようなエンボス深さを有することで、図5に示されるようなエンボス加工の際に手袋の厚さが不利に影響することはない。従って、手袋がユーザーに着用され長期間使用されても、簡単に裂け易くなることはない。
【0021】
本発明が詳細に説明され示されてきたが、図示や例示によって同様の内容が理解されるものの、限定して解釈されるべきではない。本発明の真意及び範囲は添付の請求項の文言によってのみ限定されるべきである。
【実施例
【0022】
本発明の種々の面及び実施形態を示すために、以下実施例が提供される。この実施例は決して開示された発明を限定するためのものではなく、本発明は請求項によってのみ限定される。
【0023】
手袋の握り及び粘着性の分析
本発明のエンボス加工された手袋の握り及び粘着の性能がエンボス加工無しの手袋と比較される。比較結果が表1に示される。
【0024】
【表1】
【0025】
手袋の物理的特性
本発明のエンボス加工された手袋の物理的特性がエンボス加工無しの手袋と比較される。比較結果が表2に示される。
【0026】
【表2】
【0027】
手袋の摩擦係数の分析
手袋の外面及び内面の表面で摩擦係数が測定される。本発明のエンボス加工された手袋(サンプルNo.3)の摩擦係数が比較され比較結果が表3に示される。
【0028】
【表3】
【符号の説明】
【0029】
1 金属製ローラー
2 ゴム製ローラー
3 手袋のフィルム
4 押出機
図1
図2
図3
図4
図5