(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】消去部材付筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20220204BHJP
B43K 25/02 20060101ALI20220204BHJP
B43K 24/08 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B43K29/02 F
B43K25/02 110
B43K24/08 150
B43K25/02 190
(21)【出願番号】P 2019113649
(22)【出願日】2019-06-19
(62)【分割の表示】P 2014239150の分割
【原出願日】2014-11-26
【審査請求日】2019-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-071180(JP,U)
【文献】特開2014-124899(JP,A)
【文献】実開平07-027887(JP,U)
【文献】特開平09-295492(JP,A)
【文献】特開2008-055740(JP,A)
【文献】特開平09-254586(JP,A)
【文献】実開昭56-044189(JP,U)
【文献】実開平01-125691(JP,U)
【文献】特開2005-254777(JP,A)
【文献】特開2011-031424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
5/00- 8/24
21/00-21/26
24/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙面に筆記した筆跡を消去可能な消去部材を軸筒の後端部に備え、前記軸筒の後端部には前記消去部材を覆って保護する天冠が着脱可能に取り付けられ、前記天冠をノックすることによって前記軸筒の先端部からリフィルのペン先を出没させ、前記軸筒の内部には熱変色性インクが収容された筆記用のリフィルがあり、前記リフィルによって筆記された筆跡は、前記消去部材によって擦過した際に生じる摩擦熱で熱変色可能であるノック式の消去部材付筆記具において、
前記消去部材は、前記筆記具の前記軸筒内に設けられ、前記天冠のノック操作で前記リフィルのペン先に出没動作を行わせるノック機構の最も前記後端部側に位置するノック棒に接続し、
前記ノック棒の外周面には突条が円環状に設けられ、前記天冠の内面には突起が設けられ、前記天冠が前記ノック棒に取り付けられると、前記突起が前記突条を乗り越えて係止され、
前記天冠の底面には通気孔が設けられ、
前記天冠の外周面には、リブ状の突出部が複数条設けられており、
前記リブ状の突出部が、前記天冠の軸線方向に平行であ
り、
前記天冠の前記外周面には、クリップが設けられ、前記クリップを除く部分に、前記リブ状の突出部が形成されており、
前記天冠の底面がある側で、前記天冠の外周面からの高さが次第に低くなるテーパ部が形成されていることを特徴とする消去部材付筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具で紙面に筆記した筆跡を消去可能な消去部材を保護する保護部材を備える消去部材付筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱変色性インクを使用したボールペンやカラーマーカー等の筆記具が普及している。このような熱変色性インクを使用した筆記具の軸筒の後方(筆記具のペン先側を前方、反対側を後方とする)には、弾性材料で形成された摩擦体が設けられており、筆記した筆跡を摩擦体で擦って生じる熱で熱変色性インクを熱変色させて筆跡を消去している。尚、ここで言う、筆跡は、紙面に書かれている文字や絵の両方を意味するものとする(大辞林第三版参照)。
【0003】
このような熱変色性インクを使用した筆記具では、摩擦体が軸筒の後方に露出した状態で設けられているために、非使用時に摩擦体に埃や手垢が付着することがある。このため、筆記後に埃や手垢が付着した摩擦体で筆跡を擦ると、埃や手垢が紙面に移って紙面を汚す場合があった。
【0004】
そこで、非使用時には摩擦体をカバーで覆うようにした熱変色性筆記具が特許文献1に開示されている。特許文献1では、摩擦体が露出状態で取り付けられた筆記具の軸筒の後端開口部の周囲に雄ネジを形成し、摩擦体に被せるカバーの開口部の内周面には雌ネジを形成して、カバーを軸筒の後端部に螺合させて非使用時の摩擦体を隠している。
【0005】
そして、特許文献1では、筆記具の軸筒の後端部に螺合させたカバーが、軸筒の後端部から外れないようにするために、カバーを軸筒の後端部に螺合させて摩擦体に被せた時に、カバーの底部が摩擦体に圧着するようにして、螺合部に摩擦体の弾発力を作用させている。また、特許文献1には、カバーの底部にスポンジを貼り付けたり、ブラシを取り付けたりして、カバーを筆記体の軸筒に螺合させた時に、螺合部にスポンジやブラシによる弾発力が作用する構造も開示されている。
【0006】
ところが、特許文献1に記載の熱変色性筆記具では、カバーを軸筒の後端部に完全に螺合させるまでには、カバーと軸筒の後端部とを何周も相対回転させる必要があり、カバーの軸筒の後端部への装着までに時間がかかるという課題があった。また、カバーを軸筒の後端部に完全に装着させるまでの相対回転数が多いために、装着が完了したと思って回転を途中でやめた場合には、カバーと軸筒の後端部との螺合強度が小さく、カバーが外れてカバーを紛失するという課題もあった。
【0007】
そこで、カバー(以後、天冠と言う)に内周方向に突起を設け、摩擦体が設けられた軸筒の後端部の外周面に、天冠側の突起に係合する突条を設け、天冠を軸筒に取り付ける時に、天冠側の突起が軸筒の後端部の外周面に設けた突条を乗り越えて突条に係止されるようにして、天冠を軸筒の後端部に取り付ける構造が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-124810号公報
【文献】特開2014-141077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の熱変色性筆記具は、天冠側の内周面に設けられた突起を、軸筒の後端部側の突条を乗り越えさせて天冠を軸筒の後端部に取り付ける構造であり、天冠の取り付け時には問題ないが、天冠を軸筒の後端部から外す時に、天冠が軸筒の後端部から外し難いという課題があった。これは、天冠を軸筒の後端部に嵌める時は、天冠の後端部の端面を押すことによって押し込みが容易であるが、天冠を軸筒の後端部から外す時は、天冠の側面を持って取り外すので、天冠が把持し難いからである。
【0010】
本発明は、消去部材付筆記具の消去部材を保護する保護部材(カバー)である天冠を容易に筆記具の軸筒の後端部に取り付けることができると共に、容易に筆記具の軸筒の後端部から取り外すことが可能な消去部材付筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、紙面に筆記した筆跡を消去可能な消去部材を軸筒の後端部に備え、軸筒の後端部には消去部材を覆って保護する天冠が取り付けられる消去部材付筆記具において、天冠の外周面に、天冠の把持を補助する突出部を設けたことを特徴とする消去部材付筆記具が提供される。
【0012】
突出部は、外周面の軸線方向に複数条形成されたリブ状の突条とすることができる。また、突出部は、天冠の外周面に形成されたクリップとすることができる。更に、軸筒の内部には熱変色性インクが収容された筆記用のリフィルがあり、リフィルによって筆記された筆跡は、消去部材によって擦過した際に生じる摩擦熱で熱変色可能である。
【0013】
そして、天冠を軸筒の後端部に取り付ける機構としては以下の態様が考えられる。
(a)天冠の内周面に第1の突条を設け、軸筒の後端部の外周面に第2の突条を設け、第1の突条が第2の突条を乗り越えて天冠が軸筒の後端部に取り付けられる態様。
(b)天冠の内周面に突条を設け、軸筒の後端部の外周面に複数の突起を設け、突条が突起を乗り越えて天冠が軸筒の後端部に取り付けられる態様。
(c)天冠の内周面に複数の突起を設け、軸筒の後端部の外周面に突条を設け、突起が突条を乗り越えて天冠が軸筒の後端部に取り付けられる態様。
(d)天冠の内周面に突条を設け、軸筒の後端部の外周面に円周溝を設け、突条が円周溝に嵌合して天冠が軸筒の後端部に取り付けられる態様。
(e)天冠の内周面に円周溝を設け、軸筒の後端部の外周面に突条を設け、円周溝に突条が嵌合して天冠が軸筒の後端部に取り付けられる態様。
【0014】
更に、消去部材付筆記具がノック式筆記具である場合、ノック式筆記具には以下の態様が可能である。
(1)軸筒と、天冠と、天冠が取り付けられるノック棒とを具備し、天冠を前方に押圧するノック操作を行うことによって、筆記状態と非筆記状態とが切り替え可能なノック式筆記具の態様。
(2)ノック棒の前方に配置され、重力によって軸筒内を前後方向に移動可能なノックロック部材と、軸筒の内面に設けられ、ノックロック部材と係止可能な係止部とを更に具備し、軸筒の前端を上方へ向けると、ノックロック部材が後方へ移動して係止部と係止し、操作部の前方への移動が阻止されるノック式筆記具の態様。
【発明の効果】
【0015】
本発明の消去部材付筆記具によれば、消去部材を保護して筆記具の軸筒の後端部に取り付けられた天冠を、筆記具の軸筒の後端部から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は本発明の第1形態の消去部材付筆記具の、非筆記状態における正面図、(b)は(a)に示した消去部材付筆記具の縦断面図、(c)は(b)に示した消去部材付筆記具の、後ろ側を部分的に拡大した部分拡大断面図である。
【
図2】(a)は
図1(a)に示した消去部材付筆記具から天冠が取り外された状態を示す正面図、(b)は
図1(b)に示した消去部材付筆記具から天冠が取り外された状態を示す縦断面図、(c)は
図1(c)に示した状態から天冠が取り外された状態を示す部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1形態の消去部材付筆記具に使用する第1実施例の天冠の構造を示すものであり、(a)は天冠をノック棒挿入側から見た斜視図、(b)は天冠を後ろ側から見た斜視図、(c)は天冠の正面図、(d)は天冠の左側面図、(e)は天冠の右側面図、(f)は天冠の軸線方向の断面図である。
【
図4】本発明の第1形態の消去部材付筆記具に使用する第1実施例のノック棒の構造を示すものであり、(a)はノック棒を筆記具の先端側から見た斜視図、(b)はノック棒を後ろ側から見た斜視図、(c)はノック棒の正面図、(d)はノック棒の左側面図、(e)はノック棒の右側面図、(f)はノック棒の軸線方向の断面図である。
【
図5】(a)は
図3に示した天冠を
図4に示したノック棒を備える筆記具の後端側から、ノック棒に取り付ける動作を示す斜視図、(b)は(a)に示した状態から天冠がノック棒に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第1形態の消去部材付筆記具に使用する第1から第3実施例のノック棒の後端部分と、これに取り付けられる第1から第3実施例の天冠の、使用可能な組み合わせを示す説明図である。
【
図7】本発明の第1形態の消去部材付筆記具に使用する第4実施例の天冠の構造を示すものであり、(a)は天冠をノック棒挿入側から見た斜視図、(b)は天冠を後ろ側から見た斜視図、(c)は天冠の正面図、(d)は天冠の左側面図、(e)は天冠の右側面図、(f)は(d)に示した天冠のA-A線における断面図である。
【
図8】(a)は本発明の第2形態の消去部材付筆記具の、筆記状態における正面図、(b)は(a)に示した消去部材付筆記具の縦断面図、(c)は(b)に示した消去部材付筆記具の、後ろ側を部分的に拡大した部分拡大断面図である。
【
図9】(a)は
図8(a)に示した消去部材付筆記具が非筆記状態の時に天冠が取り外された状態を示す正面図、(b)は
図8(b)に示した消去部材付筆記具が非筆記状態の時に天冠が取り外された状態を示す縦断面図、(c)は
図8(c)に示した状態から天冠が取り外された状態を示す部分拡大断面図である。
【
図10】本発明の第2形態の消去部材付筆記具に使用する第5実施例の天冠の構造を示すものであり、(a)は天冠の平面図、(b)は天冠をクリップの基部側から見た斜視図、(c)は天冠の正面図、(d)は天冠の左側面図、(e)は天冠の右側面図、(f)は天冠をクリップの先端側から見た斜視図、(g)は天冠の軸線方向における断面図である。
【
図11】(a)は本発明の第2形態の消去部材付筆記具に使用する第4実施例のノック棒の、消去部材側ノック棒の構造を示すものであり、(a)は消去部材側ノック棒を筆記具の先端側から見た斜視図、(b)は消去部材側ノック棒を後ろ側から見た斜視図、(c)は消去部材側ノック棒の正面図、(d)は消去部材側ノック棒の左側面図、(e)は消去部材側ノック棒の右側面図、(f)は第5実施例の消去部材側ノック棒の正面図、(g)は消去部材側ノック棒の軸線方向の断面図である。
【
図12】(a)は
図11に示した消去部材側ノック棒を、第4実施例のノック棒におけるカム側ノック棒に結合する様子を示す正面図、(b)は(a)の断面図、(c)はカム側ノック棒に消去部材側ノック棒が結合された状態の正面図である。
【
図13】(a)は
図10に示した天冠を、
図12(c)に示したノック棒を備える消去部材付筆記具の後端側から、ノック棒に取り付ける動作を示す斜視図、(b)は(a)に示した状態から天冠がノック棒に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図14】(a)は第2形態の消去部材付筆記具に使用する第6実施例の天冠の断面図、(b)は第2形態の消去部材付筆記具に使用する第7実施例の天冠の断面図である。
【
図15】第2形態の消去部材付筆記具に使用する第8実施例の天冠の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0018】
図1(a)は本発明の第1形態の消去部材付筆記具1に第1実施例の天冠10が取り付けられて非筆記状態であるものを正面から見たものであり、
図1(b)は
図1(a)に示した消去部材付筆記具1の縦断面を示している。
図1(a)に示すように、第1形態の消去部材付筆記具1はノック式筆記具であり、クリップ9が本体部に設けられており、筆記側の反対側に天冠10が設けられている。以後の説明では筆記側を前方或いは前側と記し、筆記側の反対側を後方或いは後ろ側と記す。また、消去部材付筆記具1は以後ノック式筆記具1とも記す。ノック式筆記具1は、軸筒が前軸2、後軸3及びクリップ9を備える内筒8を備えている。
【0019】
また、
図1(b)に示すように、ノック式筆記具1の前軸2、後軸3及び内筒8の内部には、一端に筆記部5aを備えた筆記体であるリフィル5と、リフィル5を後方へ付勢するスプリング6と、後軸3の後ろ側の端部(後端部)に配置されたノック機構50がある。リフィル5には、例えば、後述する消去部材で擦られると摩擦熱で変色して透明になる熱変色性インク、或いは後述する消去部材で紙面から剥ぎ取ることができるインクが収容されているものとする。
【0020】
ノック機構50には、天冠10に接続するノック棒30と、ノック棒30とリフィル5との間に設けられた回転子60がある。前軸2の前側はテーパ状に形成され、前側の端部(前端部)にはリフィル5の筆記部5aを突出させるための貫通孔2aが形成されている。天冠10を押圧するノック操作を行うと、ノック棒30と回転子60により、リフィル5の筆記部5aが貫通孔2aから突出する筆記状態と、筆記部5aが貫通孔2aの内側に収容される非筆記状態になる。
【0021】
更に、ノック棒30の後ろ側の端部(後端部)には消去部材7が取り付けられている。消去部材7は、ノック棒30に対して、嵌合(圧入)、接着又は二色成形等によって取り付けることができる。そして、天冠10はこの消去部材7を覆うようにノック棒30の後端部に取り付けられる。前軸2の後ろ側は、後軸3の前端部の内部に挿入され、螺合している。内筒8は、後軸3と一体に形成しても良く、また、前軸2及び後軸3も、一体に形成しても良い。これに加えて、軸筒内において、ノック機構50の前方、すなわちノック棒30の前方には、ノックロック部材4が配置されている。
【0022】
ノックロック部材4は、重力によって後軸3内を前後方向に移動可能であり、筆記部5aが下を向いてノックロック部材4が後軸3内を前軸2側に移動した時には、ノック機構50に作用することなく、天冠10によるノック操作を可能にする。一方、消去部材7が下を向いて、ノックロック部材4が後軸3内を回転子60側に移動した時には、ノック機構50に作用して、天冠10によるノック操作ができないようにする。これは、天冠10が外されて消去部材7を使用して紙面上の筆跡を消去する場合に、消去部材7は本体に対して固定した方が良いからである。
【0023】
なお、天冠10が押圧された時のノック機構50によるノック式筆記具1の筆記状態と非筆記状態の切り換え、及びノックロック部材4の移動による回転子の動作/非動作については、直接本発明と関係がないので、これ以上の説明を省略する。
【0024】
図1(c)は
図1(b)に示したノック式筆記具1の、後ろ側を部分的に拡大して示すものである。ノック棒30の後端部には消去部材取付穴37が設けられており、この消去部材取付穴37に消去部材7が嵌合、圧入、或いは接着によって設けられている。また、消去部材7は、ノック棒30に対して二色成形等によって設けることが可能である。そして、ノック棒30の後端部には、消去部材7を覆う天冠10が着脱可能に取り付けられている。
【0025】
図2(a)は
図1(a)に示したノック式筆記具1から天冠10が取り外された状態を示すものであり、
図2(b)は
図2(a)に示したノック式筆記具1の縦断面を示している。また、
図2(c)は
図1(c)に示した状態から天冠10がノック棒30の後端部から取り外された状態を示している。天冠10を取り外すと消去部材7が露出する。ここで、第1形態のノック式筆記具1に使用する天冠10の、第1実施例の構造及びノック棒30の構造について
図3から
図5を用いて説明する。
【0026】
図3(a)は第1実施例の天冠10をノック棒の挿入側(前方)から見たものであり、
図3(b)は
図3(a)に示した天冠10を反対側から見たものである。また、
図3(c)は
図3(a)に示した天冠10を横にして正面から見たものであり、
図3(d)は
図3(d)に示した天冠10の左側面図であり、
図3(e)は天冠10の右側面図である。更に、
図3(f)は天冠10の軸線方向の断面を示すものである。
【0027】
第1実施例の天冠10は円筒形の筒体の一方の端部に底面15を設けたものであり、開口16に近い側の内周面には、所定の等間隔で突起11を設けてある。また、第1実施例では突起11の数は4個であるが、突起11の数は特に限定されない。しかし、天冠10をノック棒に取り付ける際に、均一な押し込み力で取り付けられるように、突起11は等間隔で設けることが望ましい。突起11の天冠10の内周面からの高さは、
図3(d)から分かるように、ごく僅かである。また、突起11の外形は長円状或いは楕円状である。本実施例の突起11の頂面は平面状であるが、ドーム状に盛り上げても良い。
【0028】
一方、天冠10の外周面には、天冠10の軸線に平行なリブ状の突出部14が複数条設けられている。突出部14は天冠10の外周面に、天冠10の軸線を中心とした放射状に等間隔で突設されており、突出部14は天冠10の底面15がある側で、テーパ部14aにより天冠10の外周面からの高さが次第に低くなるように形成されている。そして、突出部14と突出部14の間の天冠10の外周面は、天冠10を前後方向に連絡する溝13となっており、これが天冠10の誤飲時の気道となるため、第1実施例の天冠の底面15に通気孔は設けられていない。
【0029】
図4(a)は、
図1(b)、
図2(b)に示したノック式筆記具1のノック機構50における、消去部材7を備えた第1実施例のノック棒30を示すものである。また、
図4(b)は
図4(a)に示したノック棒30を反対側から見たものであり、
図4(c)は
図4(a)に示すノック棒30を横にして正面から見たものである。そして、
図4(d)は
図4(c)に示すノック棒30を左側から見たものであり、
図4(e)は右側から見たものである。更に、
図4(f)は
図4(c)に示すノック棒30の軸線方向の断面を示している。
【0030】
第1実施例のノック棒30にはノック機構の回転子に接続する大径部33があり、大径部33に隣接して天冠10の取付部である小径部34がある。大径部33の回転子側(前方)には外周面に突起があり、前端部にカムが形成されており、内部には後述する消去部材取付穴37に連通する連通孔39がある。突起やカムについては本発明と直接関係がないので、ここではこれらの説明を省略する。
【0031】
小径部34は大径部33よりも僅かに小さな直径を有する。大径部33の一部の内部と小径部34の内部には、
図4(f)に示すように、消去部材7を保持する消去部材取付穴37が設けられており、この消去部材取付穴37に消去部材7が取り付けられている。前述のように、消去部材7は、別部品として消去部材取付穴37に対して、嵌合、圧入、又は接着されるか、或いは大径部33と小径部34と共に二色成形によって設けられる。消去部材7の直径は、
図3で説明した天冠10の内径よりも小さい。
【0032】
また、小径部34の外周面には、円環状に突条32が設けられている。突条32の小径部34の外周面からの高さはごく僅かであり、突条32と大径部33との間の距離は、
図3(f)に示した天冠10の、開口16から突起11の底面15側の端部までの距離に等しい。このため、天冠10がノック棒30に取り付けられると、突起11が突条32を乗り越え、
図1(c)に示したように、突起11が突条32によって係止される。
【0033】
図5(a)は
図3に示した天冠10を、
図4に示したノック棒30を備えるノック式筆記具1の後端側から、ノック棒30に取り付ける動作を示すものである。ノック棒30は、ノック式筆記具1の内筒8の後端部にある開口部8aから、小径部34の先端部及び消去部材7が突出した状態でノック式筆記具1に取り付けられている。天冠10をノック式筆記具1の後端側に取り付ける場合は、天冠10を消去部材7に被せて、開口部8aから内筒8に差し込む。すると、天冠10の内周面に設けられた突起11が、小径部34の突条32を乗り越えてノック棒30に取り付けられる。
【0034】
図5(b)は
図5(a)に示した状態から天冠10がノック式筆記具1の内筒8に挿入されてノック棒30に取り付けられた状態を示すものである。この状態では、
図1(c)に示すように、天冠10に設けられた突起11が突条32を乗り越えて、突条32と大径部33との間の小径部34の外周面に位置しており、突起11と突条32が係合している。この結果、ノック式筆記具1の後端部からノック棒30に取り付けた天冠10が抜け難くなる。そして、天冠10に溝13と突出部14があることにより、天冠10を把持し易くなって、天冠10をノック棒30から外し易くなる。突出部14の数や溝13の深さ及び形状は特に限定されるものではなく、ノック棒30に差し込んだ天冠10を外し易ければ良い。したがって、例えば、天冠10が金属製である場合には、天冠10の外表面にローレット加工、梨地加工等を施しても良い。
【0035】
第1実施例の天冠10は、その内周面に突起11が設けられたものであり、第1実施例のノック棒30は、小径部34の外周面に環状の突条32が設けられたものであった。第1実施例の天冠10を、
図6の最も上の右側の図に断面で示し、第1実施例のノック棒30を
図6の最も上の左側の図に、その後端部側の部分のみを示してある。
【0036】
一方、天冠については、
図6の中央の右側の図に断面で示す第2実施例の天冠10A及び
図6の最も下の右側の図に断面で示す第3実施例の天冠10Bが可能である。第2実施例の天冠10Aは、内周面に突起の代わりに環状に突条12が設けられたものである。第3実施例の天冠10Bは、内周面に環状溝18が設けられたものである。環状溝18の位置は第1実施例の天冠10における突起11の位置よりも底面15側に近く、第1実施例のノック棒30との結合時に、突条32を受け入れる位置である。
【0037】
また、ノック棒については、
図6の中央の左側の図に後端部を示す第2実施例のノック棒30A、及び
図6の最も下の左側の図に後端部を示す第3実施例のノック棒30Bが可能である。第2実施例のノック棒30Aは、小径部34の外周面に、突条の代わりに所定間隔で設けられた突起31を備えるものである。第3実施例のノック棒30Bは、小径部34の外周面に第1実施例の天冠10の突起11或いは第2実施例の天冠10Aの突条12を受け入れる環状溝38を備えるものである。このため、環状溝38の位置は第1実施例のノック棒30における突条32の大径部33からの位置よりも大径部33に近い。
【0038】
図6には、第1実施例の天冠10、第2実施例の天冠10A及び第3実施例の天冠10Bと、第1実施例のノック棒30、第2実施例のノック棒30A及び第3実施例のノック棒30Bの、可能な組み合わせが矢印で示してある。第1実施例の天冠10は、第1と第3実施例のノック棒30、30Bと組み合わせることが可能である。また、第2実施例の天冠10Aは、第1から第3実施例のノック棒30、30A、30Bの全てと組み合わせることが可能である。更に、第3実施例の天冠10Bは、第1と第2実施例のノック棒30、30Aと組み合わせることが可能である。
【0039】
図7(a)から(f)は、本発明の第1形態のノック式筆記具1に使用する第4実施例の天冠10Cの構造を示すものであり、
図3(a)から(f)に示した第1実施例の天冠10と同じ状態の図面が示されている。第4実施例の天冠10Cが第1実施例の天冠10と異なる点は、底面15により通気量を確保するための通気孔17が設けられている点のみである。第4実施例の天冠10Cでは、通気孔17は円弧状の長孔であり、2つ設けられているが、通気孔17の形状及び個数は特に限定されず、通気量が増えれば良い。
【0040】
図8(a)は本発明の第2形態のノック式筆記具1Aに第5実施例の天冠20が取り付けられて筆記状態にあるものを正面から見たものであり、
図8(b)は
図8(a)に示したノック式筆記具1Aの縦断面を示している。また、
図9(a)は
図8(a)に示したノック式筆記具1Aが非筆記状態で天冠20が取り外された状態を正面から見たものであり、
図9(b)は
図9(a)に示したノック式筆記具1Aの縦断面を示している。更に、
図8(c)は
図8(b)の後端部を部分的に拡大して示しており、
図9(c)は
図9(b)に示すノック式筆記具1Aの後端部を部分的に拡大して示している。
【0041】
第2形態のノック式筆記具1Aでも本体部の構造は第1形態のノック式筆記具1と同様であり、本体部には前軸2、後軸3及び内筒8を備えている。ノック式筆記具1Aの前軸2、後軸3及び内筒8の内部には、リフィル5、スプリング6及びノック機構50がある点もノック式筆記具1と同様である。ノック機構50にはノック棒40と、ノック棒40とリフィル5との間に設けられた回転子60があり、回転子60はノック式筆記具1と同様であるが、ノック棒40の構造がノック式筆記具1のノック棒30の構造と異なる。ノック棒40の構造については後述する。
【0042】
前軸2の前側がテーパ状に形成され、前側の端部(前端部)にはリフィル5の筆記部5aを突出させるための貫通孔2aが形成されている点もノック式筆記具1と同様である。第2形態のノック式筆記具1Aでも、天冠20を押圧するノック操作を行うと、ノック棒40と回転子60により、リフィル5の筆記部5aが貫通孔2aから突出する筆記状態(
図8(a)、(b))と、筆記部5aが貫通孔2aの内側に収容される非筆記状態(
図9(a)、(b))になる。ノック棒40の前方に配置されたノックロック部材4についても、その機能は第1形態のノック式筆記具1におけるノックロック部材4の機能と同じであり、直接本発明と関係がないので、これ以上の説明を省略する。
【0043】
第2形態のノック式筆記具1Aが第1形態のノック式筆記具1と異なる点は、天冠20の外周面21にクリップ9が設けられている点と、ノック棒40がカム側ノック棒41と消去部材側ノック棒42に分かれている点である。ノック棒40は、通常は一体化しているが、消去部材側ノック棒42がカム側ノック棒41から分離可能である。
図8(c)及び
図9(c)に示すように、カム側ノック棒41は回転子60に結合しており、消去部材側ノック棒42に設けられた消去部材取付穴47に消去部材7が取り付けられている。
【0044】
第5実施例の天冠20は消去部材側ノック棒42に取り付けられる。消去部材7は、消去部材側ノック棒42に対して接着によって取り付けられているが、消去部材7は消去部材側ノック棒42に二色成形等によって設けることができる。カム側ノック棒41と消去部材側ノック棒42の結合部は、ノック式筆記具1Aが筆記状態でも内筒8の開口部8aから外部に露出している。ここで、天冠20とノック棒40について
図10から
図13を用いて説明する。
【0045】
図10(a)から
図10(f)は、本発明の第2形態のノック式筆記具1Aに使用する第5実施例の天冠20を色々な方向から見たものであり、
図10(g)は天冠20の軸線方向における断面を示すものである。天冠20はノック棒の端部に取り付けられた消去部材を覆って屑や手垢等から保護するものであり、消去部材の使用時にノック棒から取り外せるようになっている。天冠20の外周面にはクリップ9が取り付けられているが、天冠20の内周面22には突起物はなく、内周面22の内径は底面26から開口27に向かって、僅かに大きくなっている。
【0046】
図11(a)から
図11(e)は、本発明の第2形態のノック式筆記具1Aに使用する第4実施例のノック棒40の消去部材側ノック棒42を色々な方向から見たものであり、
図11(g)は消去部材側ノック棒42の軸線方向における断面を示すものである。消去部材側ノック棒42には、カム側ノック棒41と結合する結合部43、消去部材7を保持する消去部材保持部44及び結合部43と消去部材保持部44の間に設けられたフランジ部45がある。結合部43の外周面には環状の結合用突条46が2条設けられており、消去部材保持部44の外周面にも環状の係合用突条48が設けられている。係合用突条48は、外周面から僅かに盛り上がる程度の高さを備えている。
【0047】
第4実施例では消去部材側ノック棒42に環状の係合用突条48が設けられているが、係合用突条48を
図11(f)に示すような環状に並ぶ係合用突起48Aとした、第5実施例の消去部材側ノック棒42Aも可能である。また、消去部材保持部44には消去部材取付穴47があり、消去部材取付穴47の中に消去部材7が取り付けられている。消去部材7は別部材として消去部材取付穴47に接着されるか、或いは二色成形によって消去部材保持部44と共に形成することができる。
【0048】
図12(a)は、
図11で説明した第4実施例の消去部材側ノック棒42をカム側ノック棒41と共に示すものであり、
図12(b)は
図12(a)に示したカム側ノック棒41と消去部材側ノック棒42の断面を示している。カム側ノック棒41には消去部材側ノック棒42の結合部43を受け入れる連通孔39が設けられており、連通孔39の内周面には、消去部材側ノック棒42の結合部43の外周面に設けられた2条の結合用突条46を係止する2条の結合用突条49が設けられている。消去部材側ノック棒42がカム側ノック棒41に結合されると、
図12(c)に示すようなノック棒40が形成される。
【0049】
図13(a)は、
図10に示した天冠20を、
図12(c)に示したノック棒40を備えるノック式筆記具1Aの後端側から、ノック棒40に取り付ける動作を示すものである。ノック棒40は、ノック式筆記具1Aの内筒8の後端部にある開口部8aから、カム側ノック棒41及び消去部材7が設けられた消去部材側ノック棒42が突出した状態でノック式筆記具1Aに取り付けられている。天冠20をノック式筆記具1Aの後端側に取り付ける場合は、天冠20を消去部材7に被せて消去部材側ノック棒42に装着する。これにより、天冠20のテーパ状の内周面が、消去部材側ノック棒42の消去部材保持部44の外周面に形成された係合用突条48に摩擦結合して消去部材側ノック棒42に取り付けられる。
【0050】
図13(b)は
図13(a)に示した状態から天冠20がノック棒40に取り付けられた状態を示すものである。この状態では、
図8(c)に示すように、天冠20の内周面が消去部材側ノック棒42の消去部材保持部44の外周面に形成された係合用突条48に摩擦結合して消去部材側ノック棒42に係合している。天冠20にはクリップ9が設けられているので、消去部材側ノック棒42に対して天冠20をクリップ9を利用して取り付けたり外したりが容易にできる。また、消去部材側ノック棒42をカム側ノック棒41から取り外して消去部材7を使用することもできる。
【0051】
図14(a)は第2形態のノック式筆記具1Aに使用する第6実施例の天冠20Aの断面を示すものである。第5実施例の天冠20は、天冠20の内周面には突起物が設けられていなかったが、第6実施例の天冠20Aの内周面22には、開口27の近傍に内周面22から僅かに突出する突条23が設けられている。第6実施例の天冠20Aを消去部材側ノック棒42に取り付けると、突条23が
図9(c)に示した消去部材保持部44の係合用突条48とフランジ部45との間の部分に嵌合するので、天冠20Aと消去部材側ノック棒42との係合強度を増やすことができる。しかし、突条23と消去部材保持部44の係合用突条48との係合はそれほど強いものではないので、天冠20Aに設けられているクリップ9を利用すれば、消去部材側ノック棒42に対する天冠20Aの着脱が容易にできる。
【0052】
図14(b)は第2形態のノック式筆記具1Aに使用する第7実施例の天冠20Bの断面を示すものである。第5実施例の天冠20は、天冠20の内周面には突起物が設けられていなかったが、第7実施例の天冠20Bの内周面22には、開口27の近傍に内周面22から僅かに突出する突起24が設けられている。第7実施例の天冠20Bを消去部材側ノック棒42に取り付けると、突起24が
図9(c)に示した消去部材保持部44の係合用突条48とフランジ部45との間の部分に嵌合するので、天冠20Bと消去部材側ノック棒42との係合強度を強くすることができる。しかし、突起24と消去部材保持部44の係合用突条48との係合はそれほど強いものではないので、天冠20Bに設けられているクリップ9を利用すれば、消去部材側ノック棒42に対する天冠20Bの着脱が容易にできる。
【0053】
図15は、第2形態のノック式筆記具1Aに使用する第8実施例の天冠20Cを示すものである。第8実施例の天冠20Cは、第5実施例の天冠20の外周面21のクリップ9が設けられていない部分に、第1から第4実施例の天冠10、10A、10B及び10Cと同様に、天冠20Cの軸線に平行なリブ状の突出部25が複数条設けられている。突出部25は天冠20Cの外周面のクリップ9が設けられていない部分に、天冠20Cの軸線を中心とした放射状に等間隔で突設すれば良い。突出部25の天冠20Cの底面26がある側にはテーパ部25aが設けられている。天冠20Cの外周面21に突出部25があることにより、天冠20Cが把持し易くなり、天冠20Cと消去部材側ノック棒42との着脱が更に容易になる。突出部25の形状や数は特に限定されるものではなく、天冠20Cを把持し易ければ良い。したがって、例えば、天冠20Cが金属製である場合には、天冠20Cの外表面にローレット加工を施しても良い。
【0054】
以上説明したように、本発明のノック式筆記具では、消去部材7は、使用時以外は、天冠10、10A、10B、10C、20、20A、20B或いは20Cによって覆われていることから、消去部材7の汚れを防止することが可能となっている。また、天冠10、10A、10B、10C、20、20A、20B或いは20Cは、ノック棒に対して簡単に取り付けることができると共に、ノック棒に取り付けられた天冠はノック棒から容易に取り外すことができる。
【0055】
上述した実施例では筆記体であるリフィルには、熱変色性インクが収容されている。この場合、ノック式筆記具は熱変色性筆記具であり、消去部材は紙面を擦った場合に、紙面との間に摩擦熱を発生させる部材で形成され、発生した摩擦熱によって、ノック式筆記具の筆跡を熱変色可能である。なお、筆記体としては、熱変色インクを収容したボールペン、熱変色芯を収容したシャープペンシル、或いは鉛筆ホルダ等が考えられる。また、リフィルに消しゴムで消去可能な消しゴム消去式インクを収容したノック式筆記具が可能である。この場合は、消去部材には、消しゴムと同様に紙面からインクを剥ぎ取る場合に摩耗する部材が選択される。
【0056】
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば65℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-10℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」という。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部材としての摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、即ち、消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0057】
また、消しゴムで消去可能な消しゴム消去式インクを収容したリフィルを使用する筆記具では、消しゴム消去性インクは、水と、平均粒子径1.0~15μmの非熱可塑性着色樹脂粒子をインク組成物全量に対して、3~30重量%と、0.1~15重量%の非着色粒子とを少なくとも含有することが必要である。
【0058】
本発明の水性インクに用いる着色樹脂粒子は、着色された樹脂粒子からなるものであり、非熱可塑性であり、かつ、平均粒子径が1.0~15μmとなるものであり、例えば、樹脂粒子中に顔料からなる着色剤が分散された着色樹脂粒子、樹脂粒子の表面が顔料からなる着色剤で被覆された着色樹脂粒子、樹脂粒子に染料からなる着色剤が染着された着色樹脂粒子などが挙げられる。
【0059】
本実施例では、着色樹脂粒子が非熱可塑性で上記平均粒子径を充足するものであれば、その構造〔中空構造あり、中空構造なし(密実)〕、形状(球状、多角形状、扁平状、繊維状)等は特に限定されるものでないが、好ましくは、優れた消しゴム消去性、筆記性、インクとしての経時安定性を発揮させる点から、ガラス転移点が150℃以上で熱分解温度に近く、更にはメルトフローインデックス値が0.1未満であるような分子内架橋を持つ粒子で粘着性を有せず、かつ、平均粒子径が1.0~15μmとなる球状の着色樹脂微粒子の使用が望ましい。
【0060】
消去部材を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物、市販されている消しゴム等が挙げられる。
【0061】
消去部材は、熱変色筆記具とする場合は、特にポリプロピレン樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、またはポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物から形成され、その配合比率がそれぞれ重量比で1:1~1:4であり、研磨剤、可塑剤、充填剤を含有せず、JIS K6251に規定されたデュロメータ硬度Aが70°~100°となる材質からなり、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以下のものである可塑剤を含有しない低摩耗性の弾性材料から形成される。それによって消去部材は、擦過時に消しカスが生じにくく、熱変色性も優れているので有効である。
【0062】
なお、本発明における「消去」とは、上記熱変色性インクを用いた場合以外にも、筆記した描線、文字等を消しゴム等の消去部で吸着又は削ぎ落とすことをいう。更に、感圧式タッチペンや軸筒等に電導性を付与して静電容量式タッチペンの後端部に、消去部材と天冠を設けるような構成でもよい。したがって、本発明は、筆記具によって筆記された描線(筆跡)を消去できる、消去部材を備えた任意の文房具にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1A 消去部材付筆記具(ノック式筆記具)
7 消去部材
8 内筒
9 クリップ
10、10A、10B、10C、20、20A、20B、20C 天冠
11、24、31 突起
12、23、32 突条
13 溝
14、25 突出部
30、30A、30B、40 ノック棒
41 カム側ノック棒
42 消去部材側ノック棒