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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】多孔質膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/54 20060101AFI20220204BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20220204BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220204BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20220204BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B01D71/54
B01D61/00
B01D69/00
C08J9/26 102
C08J9/26 CFF
C08G18/50 003
C08G18/72
C08G18/32 003
C08G18/65 011
C08G18/75 010
C08G18/76 092
C08G18/76 014
C08G18/73
C08G18/76 057
C08G18/76 078
C08G18/75 080
C08G18/08 038
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019507296
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2017069898
(87)【国際公開番号】W WO2018029131
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】16183379.3
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ディ ニコロ, エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ペトルッチ, シルヴィア リータ
(72)【発明者】
【氏名】カンパネッリ, パスクヮーレ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ボーフォル, リオネル
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-116352(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0194574(US,A1)
【文献】特開昭59-169508(JP,A)
【文献】特開平03-027184(JP,A)
【文献】特開昭60-044012(JP,A)
【文献】Journal of Applied Polymer Science,2003年,Vol.89,P.2902-2916
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 - 69/14
C02F 1/44
B01D 39/00 - 41/04
C08G 18/00 - 18/87
C08J 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]であって、前記F-TPUポリマーは、
任意選択で()ポリエーテル型ジオール、ポリエステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオールおよびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
b)一方または両方の鎖末端が少なくとも1個の-OH基で終端する2つの鎖末端を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R pf )]を含む、少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含む、F-TPUポリマー;ならびに
- 任意選択で少なくとも1種のさらなる原料
を含む組成物[組成物(C)]から得られる少なくとも1つの層を含む、多孔質膜であって、
前記鎖(R pf )は、式
-O-D-(CFX z1 -O(R )(CFX z2 -D -O-
[式中、
z1およびz2は、互いに等しいかまたは異なり、1以上であり;X およびX は、互いに等しいかまたは異なり、-Fまたは-CF であり、但し、z1および/またはz2が1を超える場合、X およびX は、-Fであり;
DおよびD は、互いに等しいかまたは異なり、1~6個、さらにより好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキレン鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1個のペルフルオロアルキル基で任意選択で置換されており;
(R )は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位R°は、
(i)-CFXO-(式中、Xは、FまたはCF である)、
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現するごとに等しいかまたは異なり、FまたはCF であり、但し、Xの少なくとも1つは、-Fであることを条件とする);
(iii)-CF CF CW O-(式中、Wのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、F、Cl、Hである);
(iv)-CF CF CF CF O-;
(v)-(CF -CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは一般式-O-R (f-a) -Tの基であり、R (f-a) は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:-CFXO-、-CF CFXO-、-CF CF CF O-、-CF CF CF CF O-の中で選択され、Xのそれぞれは、独立して、FまたはCF であり、Tは、C ~C ペルフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される]
の鎖である、多孔質膜
【請求項2】
前記膜が、少なくとも0.0001μmおよび最大で50μmの平均細孔直径を有する、請求項1に記載の多孔質膜。
【請求項3】
前記任意選択の少なくとも1種の(a)が、ポリ(エチレン)グリコール、ポリ(プロピレン)グリコール、ポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG)、ポリ(1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(エタンジオール-1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(1,6-ヘキサンジオール-ネオペンチル)グリコールアジペート、ポリ-カプロラクトン-ジオール(PCL)およびポリカーボネート-ジオールを含む群の中で選択される、請求項1に記載の多孔質膜。
【請求項4】
前記少なくとも1種のモノマー(c)が、4,4’-メチレン-ジフェニレン-ジイソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサン-ジイソシアネート(HDI)、2,4-トルエン-ジイソシアネート、2,6-トルエン-ジイソシアネ-ト、キシリレン-ジイソシアネート、ナフタレン-ジイソシアネート、パラフェニレン-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシル-メタン-ジイソシアネートおよびシクロヘキシル-1,4-ジイソシアネートを含む群の中で選択される、請求項1に記載の多孔質膜。
【請求項5】
前記少なくとも1種のモノマー(d)が、エチレン-グリコール、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,6-ヘキサンジオール(HDO)、N,N-ジエタノールアミンおよびN,N-ジイソプロパノールアニリンを含む群の中で選択される、請求項1に記載の多孔質膜。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法であって、
(i)
- 少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]であって、
任意選択で()ポリエーテル型ジオール、ポリエステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオールおよびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
)一方または両方の鎖末端が少なくとも1個の-OH基で終端する2つの鎖末端を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R pf )]を含み、前記鎖(R pf )は請求項1で定義される、少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含む、F-TPUポリマー;ならびに
- 任意選択で少なくとも1種のさらなる原料
を含む組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii)前記組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と、
(iii)工程(ii)で提供された前記フィルムを加工し、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む、方法。
【請求項7】
1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相の濾過方法であって、
1種以上の固体混入物を含む前記液相および/または気相を、請求項1~のいずれか一項に定義されたとおりの少なくとも1種の多孔質膜と接触させることを含む、方法。
【請求項8】
前記固体混入物が、細菌、藻類、真菌、原虫ならびにウイルスからなる群から選択される微生物である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記多孔質膜が、少なくとも0.001μmおよび最大で5μmの平均細孔直径を有する、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質膜が、少なくとも5μmおよび最大で50μmの平均細孔直径を有する、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの層が、請求項1~のいずれか一項に定義されたとおりの多孔質膜を含む、少なくとも2つの層を含む布。
【請求項12】
前記多孔質膜が、少なくとも0.001μmおよび最大で5μmの平均細孔直径を有する、請求項11に記載の布。
【請求項13】
少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]および少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒を含む液体組成物[組成物(C)]であって、前記F-TPUポリマーは、
任意選択で()ポリエーテル型ジオール、ポリエステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオールおよびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
)一方または両方の鎖末端が少なくとも1個の-OH基で終端する2つの鎖末端を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(R pf )]を含み、前記鎖(R pf )は請求項1で定義される、少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含み、
前記少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒が、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエートおよびトリエチルホスフェート(TEP)からなる群の中で選択される、液体組成物[組成物(C )]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月9日に出願された欧州特許出願第16183379.3号に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、多孔質膜、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔質膜は、それらと接触状態の化学種の浸透を適度にする個別的な、薄い界面である。多孔質膜の重要な特性は、膜それ自体を通っての化学種の浸透速度を制御するその能力である。この特徴は、分離用途(水およびガス)または薬物送達用途のような多くの異なる用途において利用されている。
【0004】
芳香族ポリマー(例えば、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホン)、部分フッ素化ポリマー(例えば、フッ化ポリビニリデン)およびポリアミドは、それらの良好な機械的強度および熱安定性のために、精密濾過膜および限外濾過膜の調製において広く使用されている。
【0005】
精密濾過および限外濾過としての使用のために適するポリマー膜は典型的には、液体またはガスの通過が対流流れによって主として支配されるので、「ふるい」メカニズム下で透過を制御する。そのようなポリマー膜は、空隙の非常に大きい分率(多孔率)のアイテムに高めることができる相転換法によって主として製造される。
【0006】
多孔質ポリマー膜は、相転換法によって主として製造され、これらはアイテムに空隙の大きい分率(言い換えれば、高い多孔率)を与える。
【0007】
ポリマー、好適な溶媒および/または共溶媒ならびに、任意選択で、1種以上の添加剤を含有する均一なポリマー溶液(「ドープ溶液」とも称される)は典型的には、キャスティングによってフィルムに加工され、次いで、それを非溶媒媒体と接触させることによって、いわゆる非溶媒誘起相分離(Non-Solvent Induced Phase Separation)(NIPS)法によって沈澱させられる。非溶媒媒体は通常、水もしくは水と界面活性剤との混合物、アルコールおよび/または溶媒それ自体である。
【0008】
沈澱はまた、ポリマー溶液の温度を下げることによって、いわゆる熱誘起相分離(Thermal Induced Phase Separation)(TIPS)法によって得ることができる。
【0009】
あるいは、沈澱は、キャスティングによって加工されたフィルムを、非常に高い水蒸気含有量での空気と接触させることによって、いわゆる蒸気誘起相分離(Vapour Induced Phase Separation)(VIPS)法によって誘起され得る。
【0010】
さらに、沈澱は、キャスティングによって加工されたフィルムからの溶媒の蒸発によって、いわゆる蒸発誘起相分離(Evaporation Induced Phase Separation)(EIPS)法によって誘起され得る。典型的には、この方法では、低い沸点を有する有機溶媒(例えば、THF、アセトン、MEKなど)が、水(いわゆる「非溶媒」)と混合して使用される。ポリマー溶液は、最初に押し出され、次いで、揮発性溶媒の蒸発および非溶媒の豊富化によって沈殿する。
【0011】
上記方法は、組み合わせておよび/または順次に使用されて、特定の形態学および性能を有する膜を与えることができる。例えば、EIPS法は、凝固プロセスを完了させるために、VIPS法とNIPS法とに組み合わせることができる。
【0012】
EIPS法は、多孔質膜を製造するためにポリウレタンポリマーが使用される場合、「熱凝固法」として公知である。この場合、ドープ溶液は、プレポリマーと一緒に調製され、膜が形成されるにつれて、それは、熱後処理によって安定化されて、多孔質構造を固定し、プレポリマーを架橋する。
【0013】
例えば、膜-分離プロセスにおける、表面改質性巨大分子およびその適用は、例えば、KHAYET,M.ら、Study on surface modification by surface-modifying macromolecules and its applications in membrane separation processes.Journal of Applied POlymer Science.2003,vol.89,p.2902-2916.およびNAM WOO KIMら、Preparation of water repellent polyuethane coating films using perfluoroalkyl alcohol. Korean Chem.Eng.Res..2016, vol.54,no.3,p.387-393に開示されている。しかしながら、これらの2つの論文は、ペルフルオロポリエーテル鎖を含まない、部分フッ素化アルコールを開示するのみである。
【発明の概要】
【0014】
それにもかかわらず、良好な機械的特性および撥水性と撥油性との両方を示す多孔質膜を提供することは鍵のままである。
【0015】
第1の態様では、本発明は、
- 少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]であって、前記F-TPUポリマーは、
任意選択で[モノマー(a)]ポリエーテル型ジオール、ポリエステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオールおよびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
[モノマー(b)]少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含む、F-TPUポリマー;ならびに
- 任意選択で少なくとも1種のさらなる原料
を含む組成物[組成物(C)]から得られる少なくとも1つの層を含む、多孔質膜に関する。
【0016】
前記少なくとも1種のさらなる原料は、好ましくは少なくとも1種の有機溶媒[媒体(L)]である。前記媒体(L)は、有利には極性非プロトン性溶媒から選択される。
【0017】
第2の態様では、本発明は、上で定義されたとおりの少なくとも1種のF-TPUポリマーおよび少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒を含む、液体組成物[組成物(C)]に関する。
【0018】
第3の態様では、本発明は、多孔質膜の製造方法であって、
(i)上で定義されたとおりの組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii)組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と;
(iii)工程(ii)で提供されたフィルムを加工し、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む、方法に関する。
【0019】
本発明の多孔質膜は、有利には本発明の方法によって得られ得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書の目的のために、
- 用語「(ペル)フルオロポリマー」は、「完全または部分フッ素化ポリマー」を示すことが意図される;
- 表現「(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖」は、部分または完全フッ素化、直鎖または分岐のポリオキシアルキレン鎖を示すことが意図される;
- 化合物、化学式または式の部分を特定する記号または数字の前後の括弧の使用は、それらの記号または数字を本文の残りからより良く区別する単なる目的を有し、したがって、前記括弧は省略することもできる;
- 用語「膜」は、それと接触状態の化学種の浸透を適度にする、個別的で、一般に薄い界面を示すことが意図され、前記膜は有限寸法の細孔を含有する;
- 表現「に由来する繰り返し単位を含むF-TPUポリマー」は、F-TPUポリマーが、モノマー(b)、モノマー(c)およびモノマー(d)、ならびに任意選択でモノマー(a)およびモノマー(e)を、例えば、縮合反応によって、少なくとも一緒に反応させることによって得られる繰り返し単位から構成されることを示すことが意図される。
【0021】
それらの厚さの全体にわたって均一に分布された細孔を含有する膜は、一般に対称性(または等方性)膜として公知であり;それらの厚さの全体にわたって不均一に分布されている細孔を含有する膜は、一般に非対称性(または非等方性)膜として公知である。
【0022】
本発明の方法によって得られ得る多孔質膜は、対称性膜または非対称性膜のいずれであってもよい。
【0023】
本発明の方法によって得られ得る非対称性多孔質膜は、典型的にはそれらの厚さの全体にわたって不均一に分布されている細孔を含有する1つ以上の層からなる。
【0024】
本発明の方法によって得られ得る非対称性多孔質膜は、1つ以上の内層中の細孔の平均細孔直径よりも小さい平均細孔直径を含有する外層を含む。
【0025】
本発明の多孔質膜は、好ましくは少なくとも0.001μm、より好ましくは少なくとも0.005μm、さらにより好ましくは少なくとも0.01μmの平均細孔直径を有する。本発明の多孔質膜は、好ましくは最大で50μm、より好ましくは最大で20μm、さらにより好ましくは最大で15μmの平均細孔直径を有する。
【0026】
本発明の多孔質膜中の平均細孔直径の決定のための適当な技術は、例えば、Handbook of Industrial Membrane Technology,Edited by PORTER.Mark C.Noyes Publications,1990.p.70-78に記載されている。平均細孔直径は、好ましくは走査電子顕微鏡法(SEM)によって決定される。
【0027】
本発明の多孔質膜は、典型的には、膜の全容量に基づいて、5容量%~90容量%、好ましくは10容量%~85容量%、より好ましくは30容量%~90容量%に含まれる重量多孔率を有する。
【0028】
本発明の目的のために、用語「重量多孔率」は、多孔質膜の全容量に対する空隙の分率を意味することが意図される。
【0029】
本発明の多孔質膜の重量多孔率の決定のための適当な技術は、例えば、SMOLDERS K.et al.Terminology for membrane distillation.Desalination.1989,vol.72,p.249-262に記載されている。
【0030】
本発明の多孔質膜は、自立性多孔質膜、または基材上に支持された多孔質膜のいずれであってもよい。
【0031】
基材上に支持された多孔質膜は、典型的には前記基材を前記多孔質膜でコーティングすることによって、または前記基材を上で定義されたとおりの前記組成物(C)で含侵させるか、もしくは浸漬させることによって得られる。
【0032】

本発明の多孔質膜は、少なくとも1つの層をさらに含んでもよい。基材層は、本発明の多孔質膜によって部分的または完全に相互侵入されていてもよい。
【0033】
基材の性質は、特に限定されない。基材は、一般に多孔質膜の選択性に最小限の影響を有する材料からなる。基材層は、好ましくは不織材料、ガラス繊維および/またはポリマー材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートからなる。
【0034】
好ましくは、F-TPUポリマーは、ブロックコポリマー、すなわちブロック(「セグメント」とも称される)を含み、各ブロックが、上で定義されたとおりの、任意選択のモノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)またはモノマー(d)に由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0035】
好ましくは、前記F-TPUポリマーは、30,000~約70,000Daの数平均分子量を有する。
【0036】
好ましくは、前記F-TPUポリマーは、約120℃~約240℃の融点(T)を有する。
【0037】
好ましくは、前記任意選択の少なくとも1種のモノマー(a)は、500~4,000Da、より好ましくは1,000~4,000の数平均分子量を有する。
【0038】
好ましくは、前記任意選択の少なくとも1種のモノマー(a)は、ポリ(エチレン)グリコール、ポリ(プロピレン)グリコール、ポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG)、ポリ(1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(エタンジオール-1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(1,6-ヘキサンジオール-ネオペンチル)グリコールアジペート、ポリ-カプロラクトン-ジオール(PCL)およびポリカーボネート-ジオールを含む群の中で選択される。ポリ(テトラメチレン)グリコール、ポリ-カプロラクトン-ジオールおよびポリカーボネート-ジオールが、特に好ましい。
【0039】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(b)は、ヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー]、すなわち、2つの鎖末端を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(Rpf)]を含むポリマーであり、ここで、一方または両方の鎖末端は、少なくとも1個の-OH基で終端する。
【0040】
好ましくは、前記鎖(Rpf)の少なくとも1つの鎖末端は、式:
-CH(OCHCH-OH (I)
(式中、
tは0、または1~5である)
の基で終端する。
【0041】
より好ましくは、前記鎖(Rpf)の両方の鎖末端が、上で定義されたとおりの式(I)の基で終端する。
【0042】
好ましくは、前記鎖(Rpf)は、式
-O-D-(CFXz1-O(R)(CFXz2-D-O-
[式中、
z1およびz2は、互いに等しいかまたは異なり、1以上であり;XおよびXは、互いに等しいかまたは異なり、-Fまたは-CFであり、但し、z1および/またはz2が1を超える場合、XおよびXは、-Fであり;
DおよびDは、互いに等しいかまたは異なり、1~6個、さらにより好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1個のペルフルオロアルキル基で任意選択で置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位は、
(i)-CFXO-(式中、Xは、FまたはCFである)、
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現するごとに等しいかまたは異なり、FまたはCFであり、但し、Xの少なくとも1つは、-Fであることを条件とする);
(iii)-CFCFCWO-(式中、Wのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、F、Cl、Hである);
(iv)-CFCFCFCFO-;
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中で選択され、Xのそれぞれのそれぞれは、独立して、FまたはCFであり、Tは、C~Cペルフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される]
の鎖である。
【0043】
より好ましくは、鎖(R)は、以下の式(R-a)~式(R-c):
(R-a) -(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)
(式中、m、n、p、qは、0、または鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、但し、pおよびqが同時に0である場合、nは0でなく、mが0以外の場合、m/n比は好ましくは0.1~20であり、(m+n)が0以外の場合、(p+q)/(m+n)は好ましくは0~0.2であることを条件とする);
(R-b) -(CFCF(CF)O)(CFCFO)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、a、b、c、dは0、または鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、但し、a、cおよびdの少なくとも1つは0でなく、bが0以外の場合、a/bは、好ましくは0.1~10であり、(a+b)が0以外の場合、(c+d)/(a+b)は、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.01~0.2であることを条件とする);
(R-c) -(CFCF(CF)O)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、e、f、gは、0、または鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、eが0以外の場合、(f+g)/eは好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.01~0.2である)
から選択される。
【0044】
鎖(R)が、pおよびqが0である、上で定義されたとおりの式(R-a)に適合するPFPEポリマーが、本発明で特に好ましい。
【0045】
好ましい実施形態では、前記PFPEポリマーは、以下の式(PFPE-I):
HO-(CHCHO)-CH-(Rpf)-CH(OCHCH-OH(PFPE-I)
(式中、
tおよびuは、それぞれ独立して、0、または1~5であり、
pfは上で定義されたとおりである)
に適合する。
【0046】
好ましくは、前記PFPEポリマーは、400~10,000Da、より好ましくは1,000~5,000の数平均分子量を有する。
【0047】
好ましい実施形態では、モノマー(a)(存在する場合)とモノマー(b)との間のモル比は、2~20、より好ましくは2~10である。
【0048】
好ましい実施形態では、モノマー(b)の量は、F-TPUポリマーが、F-TPUポリマーの重量に基づいて1~80重量%、好ましくは1~70重量%のフッ素を含むようなものである。
【0049】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(c)は、500Da以下、好ましくは10~500Daの数分子量を有する。
【0050】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(c)は、4,4’-メチレン-ジフェニレン-ジ-イソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサン-ジイソシアネート(HDI)、2,4-トルエン-ジイソシアネート、2,6-トルエン-ジイソシアネート、キシリレン-ジイソシアネート、ナフタレン-ジイソシアネート、パラフェニレン-ジイソシアネート、ヘキサマエチレン(hexamaethylen)-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシル-メタン-ジイソシアネート、およびシクロヘキシル-1,4-ジイソシアネートを含み、好ましくはこれらからなる群の中で選択される。MDIおよびHDIが、特に好ましい。
【0051】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(d)は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,6-ヘキサンジオール(HDO)、N,N-ジエタノールアミンおよびN,N-ジイソプロパノールアニリンを含み、好ましくはこれらからなる群の中で選択される。BDOおよびHDOが、特に好ましい。
【0052】
好ましい実施形態では、モノマー(c)およびモノマー(d)に由来するブロックの合計は、F-TPUポリマーの全重量に基づいて10~60重量%である。
【0053】
当業者は、存在する場合モノマー(b)および存在する場合モノマー(a)に由来する繰り返し単位を含むブロックがゴム様ブロックである一方で、モノマー(c)およびモノマー(d)に由来する繰り返し単位を含むブロックが硬いブロックであることを容易に理解する。
【0054】
好ましい実施形態では、前記モノマー(b)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックB]の少なくとも80%は、それらの末端の少なくとも1つで、モノマー(c)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックC]を介してモノマー(a)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックA]に結合される。言い換えれば、ブロックBの少なくとも80%は、以下のタイプ:-[A-C-B-C]-の配列に含まれる。
【0055】
有利には、F-TPUポリマーは、当技術分野で公知の方法、例えば、押出し、射出成形、上で定義されたモノマーの溶液のキャスティングに従って、または米国特許第5332798号明細書(AUSIMONT S.P.A.)に開示された手順に従って調製され得る。
【0056】
本発明による多孔質膜の製造方法の工程(i)の下で、組成物(C)は、典型的には、任意の慣用技術によって製造される。
【0057】
本発明による多孔質膜の製造方法の工程(ii)の下で、慣用技術は、組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供するために使用され得る。
【0058】
用語「フィルム」は、組成物(C)の層であって、本発明の方法の工程(ii)の下でそれの加工後に得られる、組成物(C)の層を意味するために使用される。用語「フィルム」は、その通常の意味で本明細書で使用され、すなわち、それは、個別的で、概して薄い高密度層を意味する。
【0059】
膜の最終形態に応じて、フィルムは、平膜が必要とされる場合に、平らであるか、または管状膜または中空繊維膜が必要とされる場合に、形状が管状である、のいずれであってもよい。
【0060】
本発明の第1の実施形態によれば、多孔質膜の製造方法は、液相中で行われる。
【0061】
この第1の実施形態による方法は、好ましくは、
(i^)
- 上で定義されたとおりの少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と、
(ii^)工程(i)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と、
(iii^)工程(ii)において提供されたフィルムを沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0062】
用語「溶媒」は、その通常の意味で本明細書で使用され、すなわち、それは、別の物質(溶質)を溶解させて分子レベルで一様に分散された混合物を形成することができる物質を示す。ポリマー溶質の場合、得られる混合物が透明であり、かつ相分離が系の中でみられない場合の溶媒中のポリマーの溶液を意味することが一般的実務である。相分離は、溶液がポリマー凝集体の形成のために濁るまたは曇るようになる、「曇点」としばしば称される、ポイントであると解釈される。
【0063】
媒体(L)は好ましくは、少なくとも1種の有機溶媒を含む。有機溶媒の適切な例は、
- より特には、パラフィン、例えば、特にペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはシクロヘキサンを含む脂肪族炭化水素、ならびにナフタレンおよび芳香族炭化水素、より具体的には、芳香族炭化水素、例えば、特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、アルキルベンゼンの混合物から構成される石油留分;
- より特には、過塩素化炭化水素、例えば、特にテトラクロロエチレン、ヘキサクロロエタンを含む、脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素、
- 部分塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、トリクロロエチレン、1-クロロブタン、1,2-ジクロロブタン、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、または異なるクロロベンゼンの混合物;
- 脂肪族、脂環式または芳香族エーテルオキシド、より特には、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルテルチオブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド;ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF);
- ジメチルスルホキシド(DMSO);
- グリコールエーテル、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル;
- グリコールエーテルエステル、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;
- 多価アルコールを含むアルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール;
- ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン;
- 線状または環状エステル、例えば、イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレート、γ-ブチロラクトン;
- 線状または環状カルボキサミド、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミドまたはN-メチル-2-ピロリドン(NMP);
- 有機カーボネート、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート;
- リン酸エステル、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル(TEP);
- 尿素、例えば、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素;
- メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエート(商品名Rhodialsov Polarclean(登録商標))の下で商業的に入手可能)である。
【0064】
好ましくは、前記少なくとも1種の有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒から、さらにより好ましくはN-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエート(商品名Rhodialsov Polarclean(登録商標)の下で市販される)およびトリエチルホスフェート(TEP)からなる群の中で選択される。
【0065】
媒体(L)は、好ましくは、前記媒体(L)の全重量に基づいて、少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%の少なくとも1種の有機溶媒を含む。媒体(L)は、好ましくは、前記媒体(L)の全重量に基づいて、最大で100重量%、より好ましくは最大で99重量%の少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0066】
媒体(L)は、少なくとも1種の非溶媒媒体[媒体(NS)]をさらに含んでもよい。媒体(NS)は、水を含んでもよい。
【0067】
工程(i^)の下で、組成物(C)は、任意の慣用技術によって製造される。例えば、媒体(L)が、F-TPUポリマーに添加されてもよく、または好ましくは、F-TPUポリマーが、媒体(L)に添加されてもよく、またはさらには、F-TPUポリマーおよび媒体(L)が同時に混合されてもよい。
【0068】
任意の好適な混合装置が使用されてもよい。好ましくは、混合装置は、最終的な膜に欠陥を生じさせ得る、組成物(C)中に閉じ込められた空気の量を減少させせるように選択される。F-TPUポリマーおよび媒体(L)の混合は、不活性雰囲気下に任意選択で保持された、密封容器中で都合よく行われてもよい。不活性雰囲気、より正確には窒素雰囲気は、組成物(C)の製造に特に有利であると分かった。
【0069】
工程(i^)の下で、透明な均一組成物(C)を得るために必要とされる攪拌中の混合時間は、成分の溶解速度、温度、混合装置の効率、組成物(C)の粘度などに依存して広く変わり得る。
【0070】
工程(ii^)の下で、組成物(C)は、典型的には液相中で加工される。
【0071】
工程(ii^)の下で、組成物(C)は、典型的にはキャストし、それによってフィルムを提供することによって加工される。
【0072】
キャスティングは一般に、典型的にはキャスティングナイフ、ドローダウン棒またはスロットダイが、適当な媒体(L)を含む液体組成物の平らなフィルムを適当な支持体にわたって広げるために使用される、溶液キャスティングを含む。
【0073】
工程(ii^)の下で、組成物(C)がキャスティングによって加工される温度は、組成物(C)が撹拌下に混合される温度と同じであってもなくてもよい。
【0074】
異なるキャスティング技術が、製造される膜の最終形態に応じて使用される。
【0075】
最終生成物が平膜である場合、液体組成物(C)は、典型的にはキャスティングナイフ、ドローダウン棒またはスロットダイを用いて、平支持基材、典型的にはプレート、ベルトもしくは布、または別の微小孔性支持膜の上にフィルムとしてキャストされる。
【0076】
工程(ii^)の第1の実施形態によれば、組成物(C)は、平支持基材の上にキャストして、平フィルムを提供することによって加工される。
【0077】
工程(ii^)の第2の実施形態によれば、組成物(C)は、管状フィルムを提供するために加工される。
【0078】
工程(ii^)のこの第2実施形態の変形によれば、管状フィルムは、紡糸口金を使用して製造される。
【0079】
用語「紡糸口金」は、少なくとも2つの同心毛細管、すなわち、組成物(C)の通過用の第1外側毛細管、および一般に「ルーメン」と称される、支持流体の通過用の第2内側毛細管を含む環状ノズルを意味すると本明細書によって理解される。
【0080】
中空繊維膜および毛細管膜は、工程(ii^)の第2実施形態のこの変形によるいわゆる紡糸プロセスによって製造されてもよい。本発明の第2実施形態のこの変形によれば、組成物(C)は、一般に紡糸口金を通してポンプ送液される。ルーメンは、組成物(C)のキャスティングのための支持体として作用し、中空繊維前駆体または毛細管前駆体の穴を開いた状態に維持する。ルーメンは、ガス、または、好ましくは、媒体(NS)もしくは媒体(NS)と媒体(L)との混合物であってもよい。ルーメンおよびその温度の選択は、それらが膜における細孔のサイズおよび分布に著しい影響を与え得るので、最終的な膜に必要とされる特性に依存する。
【0081】
本発明のこの第1の実施形態による多孔質膜の製造方法の工程(iii^)の下で、空気中または制御雰囲気中での短い滞留時間後の、紡糸口金の出口で、中空繊維前駆体または毛細管前駆体は、沈澱させられ、それによって中空繊維膜または毛細管膜を提供する。
【0082】
支持流体は、最終的な中空繊維膜または毛細管膜の穴を形成する。
【0083】
管状膜は、それらのより大きい直径のために、中空繊維膜の製造のために用いられる方法とは異なる方法を使用して一般に製造される。
【0084】
本出願人は、所与の温度での本発明の方法の工程(ii^)および工程(iii^)のいずれか1つでの溶媒/非溶媒混合物の使用が有利にも、その平均多孔孔率を含めて最終多孔質膜の形態学の制御を可能にすることを見出した。
【0085】
本発明の第1の実施態様による方法の工程(ii^)および工程(iii^)のいずれか1つで提供されるフィルムと、媒体(NS)との間の温度勾配が、最終的な多孔質膜における細孔サイズおよび/または細孔分布に影響を与え得るが、その理由は、それが、一般に組成物(C)からのポリマー(A)の沈殿速度に影響を与えるからである。
【0086】
本発明の第1の実施形態の第1変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^)工程(i^)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と;
(iii^)工程(ii^)で提供されたフィルムを非溶媒媒体[媒体(NS)]中で沈澱させ、それによって多孔質膜を得る工程と
を含む。
【0087】
工程(i^)の下で、媒体(L)は、好ましくは水をさらに含む。
【0088】
工程(iii^)の下で、媒体(NS)は、好ましくは水、および任意選択で、少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0089】
本発明の第1の実施形態の第2の変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^**
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^**)工程(i^**)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを得る工程と;
(iii^**)工程(ii^**)で得られたフィルムを冷却によって沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0090】
工程(i^**)の下で、組成物(C)の媒体(L)は、有利には少なくとも1種の潜在的(latent)有機溶媒を含む。
【0091】
本発明の目的のために、用語「潜在的な」は、ある特定の温度よりも上に加熱された場合にのみ、活性溶媒として挙動する有機溶媒を意味することが意図される。
【0092】
工程(ii^**)の下で、フィルムは、典型的には組成物(C)を均一溶液として維持するのに十分高い温度で加工される。
【0093】
工程(ii^**)の下で、フィルムは、典型的には60℃~250℃、好ましくは70℃~220°、より好ましくは80℃~200℃に含まれる温度で加工される。
【0094】
工程(iii^**)の下で、工程(ii^**)で提供されたフィルムは、典型的には任意の慣用技術を使用して、典型的には100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは40℃未満の温度に冷却することによって沈殿される。
【0095】
工程(iii^**)の下で、冷却は、典型的には工程(ii^**)で提供されたフィルムを液体媒体[媒体(L’)]と接触させることによって行われる。
【0096】
工程(iii^**)の下で、媒体(L’)は、好ましくは水を含み、より好ましくはそれからなる。
【0097】
あるいは、工程(iii^**)の下で、冷却は、工程(ii^**)で提供されたフィルムを空気と接触させることによって行われる。
【0098】
工程(iii^**)の下で、媒体(L’)または空気のいずれかは、典型的には100未満、好ましくは℃60℃未満、より好ましくは40℃未満の温度で維持される。
【0099】
本発明の第1の実施形態の第3の変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^***
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^***)工程(i^***)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と;
(iii^***)工程(ii^***)で提供されたフィルムを、水蒸気相からの非溶媒媒体[媒体(NS)]の吸収によって沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0100】
工程(iii^***)の下で、工程(ii^***)で提供されたフィルムは好ましくは、水蒸気相から水の吸収によって沈殿される。
【0101】
工程(iii***)の下で、工程(ii^***)で提供されたフィルムは、典型的には10%より高い、好ましくは50%より高い相対湿度を有する、空気の下で沈殿される。
【0102】
本発明の第1の実施形態の第4の変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^****
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^****)工程(i^****)で提供された組成物(C)を加工する工程と;
(iii^****)媒体(L)を蒸発させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0103】
好ましくは、媒体(L)が2種以上の有機溶媒を含む場合、工程(ii^****)は、組成物(C)を加工して、フィルムを得る工程を含み、これは、次いで、最低沸点を有する溶媒の沸点より上の温度での媒体(L)の蒸発によって工程(iii^****)で沈殿される。
【0104】
好ましい実施形態によれば、工程(ii^****)は、組成物(C)を高圧電場で加工することによって行われる。
【0105】
本発明の目的のために、用語「非溶媒媒体[媒体(NS)]」によって、所与の温度で組成物(C)を溶解させることができない1種以上の液体物質からなる媒体が意味される。
【0106】
媒体(NS)は典型的には、水、および任意選択で、アルコールもしくはポリアルコール、好ましくは短鎖、例えば1~6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、より好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびエチレングリコールから選択される少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0107】
媒体(NS)は一般に、組成物(C)の調製のために使用される媒体(L)と混和性のものの中で選択される。
【0108】
媒体(NS)は、媒体(L)をさらに含んでもよい。
【0109】
より好ましくは、媒体(NS)は、水からなる。水は最も安価な非溶媒媒体であり、大量に使用され得る。
【0110】
媒体(L)は有利には、水に可溶性であり、それは、本発明の方法の追加の利点である。
【0111】
第1の実施形態による多孔質膜の製造方法は、上で定義されたとおりの第1、第2、第3および第4の変形の任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、本発明による多孔質膜は、本発明の第1の実施形態の第2の変形による方法、続いて本発明の第1の実施形態の第1の変形による方法によって得られ得てもよい。
【0112】
第1の実施形態による方法によって得られ得る多孔質膜は、追加の後処理工程、例えば、すすぎ洗い工程および/または延伸工程を受けてもよい。
【0113】
本発明の第1の実施形態による方法によって得られ得る多孔質膜は典型的には、媒体(L)と混和性の液体媒体を使用してすすぎ洗いされる。
【0114】
本発明の第1の実施形態による方法によって得られ得る多孔質膜は有利には、その平均多孔率を増加させるために延伸されてもよい。
【0115】
本発明の第2の実施形態によれば、多孔質膜の製造方法は、溶融相で行われる。
【0116】
本発明の第2の実施形態による方法は、好ましくは以下の工程:
(i^^)上で定義されたとおりの少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む、固体組成物[(組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^^-A) (i^^)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と、(iii^^-A)工程(ii^^-A)で提供されたフィルムを延伸し、それによって多孔質膜を提供する工程;または
(ii^^-B)工程(i^^)で提供された組成物(C)を加工し、それによって繊維を提供する工程と、(iii^^-B)工程(ii^^-B)で提供された繊維を加工し、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0117】
工程(ii^^-A)の下で、組成物(C)は、好ましくは溶融相で加工される。
【0118】
溶融成形は一般に、フィルム押出によって、好ましくはフラットキャストフィルム押出によってまたはインフレートフィルム押出によって高密度フィルム膜を作製するために使用される。
【0119】
この技術によれば、組成物(C)は、ダイを通して押し出されて、溶融テープを得、これは、次いで、必要とされる厚さおよび幅を得るまで、2方向に較正および延伸される。組成物(C)は、溶融組成物を得るために溶融配合される。一般に、溶融配合は押出機で行われる。組成物(C)は、一般に250℃未満、好ましくは200℃未満の温度で、ダイを通して典型的には押し出され、それによってストランドを提供し、これは典型的には切断され、それによってペレットを提供する。
【0120】
二軸スクリュー押出機が、組成物(C)の溶融配合を達成するための好ましい装置である。
【0121】
次いで、フィルムは、そのようにして得られたペレットを伝統的なフィルム押出技術によって加工することによって製造され得る。フィルム押出は好ましくは、フラットキャストフィルム押出法またはホットインフレートフィルム押出法によって達成される。フィルム押出はより好ましくは、ホットインフレートフィルム押出法によって達成される。
【0122】
工程(iii^^-A)の下で、工程(ii^^-A)で提供されたフィルムは、溶融相中で、または冷却時のその固化後のいずれかで延伸されてもよい。
【0123】
本発明の方法によって得られ得る多孔質膜は、好ましくは少なくとも30℃の温度で、典型的には乾燥される。
【0124】
乾燥は、空気下でまたは改善雰囲気下で、例えば、典型的には水分を除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含有量)、不活性ガス下で行うことができる。乾燥は、あるいは真空下で行うことができる。
【0125】
本発明の多孔質膜は、平膜の形態であっても、または管状膜の形態であってもよい。
【0126】
高い表面積を有するコンパクトモジュールが必要とされる用途では、中空繊維膜が特に有利であるのに対して、高いフラックスが必要とされる場合には、平膜が一般に好ましい。
【0127】
平膜は、好ましくは10μm~200μm、より好ましくは15μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0128】
管状膜は典型的には、3mm超の外径を有する。0.5mm~3mmの間の外径を有する管状膜は典型的には、中空繊維膜と称される。0.5mm未満の直径を有する管状膜は典型的には、毛細管膜と称される。
【0129】
本明細書の範囲内で使用される場合、「組成物(C)」は、特に断りのない限り、液体組成物[組成物(C)]および固体組成物[組成物(C)]の両方を含むことが意図される。
【0130】
好ましい実施形態によれば、組成物(C)は可塑剤を含まず、すなわち、可塑剤は、組成物(C)に添加されないか、またはそれらは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の量で存在する。
【0131】
好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて0.1~100重量%の量で前記F-TPUポリマーを含む。
【0132】
好ましくは、組成物(C)は、少なくとも1種のさらなる原料を含み、より好ましくは、前記少なくとも1種のさらなる原料は、前記組成物(C)の全重量に基づいて0.1~30重量%の量である。
【0133】
前記任意選択的な少なくとも1種のさらなる原料は、好ましくは上で定義されたとおりの極性非プロトン性溶媒[媒体(L)]、細孔形成剤、核形成剤、充填剤、潜在的有機溶媒、界面活性剤、ならびにF-TPUポリマーとは異なるポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよび水素化熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリマーなど、を含む群の中で選択される。
【0134】
F-TPUポリマーと異なる前記ポリマーは、好ましくは、組成物(C)の全重量に基づいて0.1~15重量%の量で組成物(C)に添加される。
【0135】
細孔形成剤は典型的には、通常0.1重量%~30重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%の範囲の量で組成物(C)に添加される。適当な細孔形成剤は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)であり、PVPが好ましい。
【0136】
細孔形成剤は一般に、本発明の第1の実施形態による多孔質膜の製造方法の工程(iii)下で、もしあれば、媒体(NS)中の多孔質膜から、完全ではない場合には、少なくとも部分的に除去される。
【0137】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0138】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、最大で99重量%、より好ましくは最大で95重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0139】
さらにより好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、55~90重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0140】
組成物(C)は、前記組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、最大で99重量%、より好ましくは最大で95重量%の量で少なくとも1種の媒体(L)を含む。
【0141】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%の量で少なくとも1種の媒体(L)を含む。
【0142】
さらにより好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、10~45重量%の少なくとも1種の媒体(L)を含む。
【0143】
さらに、加えて、F-TPUポリマーのための限定量の媒体(NS)が、曇点に達するために必要とされるレベルよりも一般に下の量で、典型的には、組成物(C)の全重量に基づいて、0.1重量%~40重量%の量で、好ましくは0.1重量%~20重量%の量で、組成物(C)に添加されてもよい。
【0144】
この理論により拘束されることなく、液体組成物(C)への媒体(NS)の添加は、本発明の第1の実施形態による多孔質膜の製造方法の工程(iii)下での脱混合/凝固の速度を高め、それによってより有利な膜形態学を提供することが一般に理解される。
【0145】
組成物(C)は、同じ量で、組成物(C)のために上に開示されたものから選択される少なくとも1種のさらなる原料を任意選択で含む。
【0146】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0147】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、最大で99.8重量%、より好ましくは最大で99重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0148】
さらにより好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、92~99重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0149】
組成物(C)は、同じ量で、組成物(C)のために上に開示されたものから選択される、少なくとも1種のさらなる原料を任意選択で含む。
【0150】
本発明による多孔質膜は、特に液相および/もしくは気相の濾過のために、いくつかの技術分野で使用され得るか、またはそれは、いわゆる「通気性布(breathable fabric)」を提供するために、多層化布に埋め込まれるか、もしくは積層される。
【0151】
したがって、第4の態様では、本発明は、1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相の濾過のための、本発明の多孔質膜の使用に関する。
【0152】
第5の態様では、本発明は、1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相の濾過方法であって、1種以上の固体混入物を含む前記液相および/または気相を本発明の多孔質膜と接触させることを含む、方法に関する。
【0153】
1種以上の混入物を含む液相および気相は、「懸濁液」とも称され、すなわち、不均一混合物は、連続相(または液体または気体の形態である、「分散媒体」)中に分散された少なくとも1種の固体粒子(混入物)を含む。
【0154】
前記少なくとも1種の固体混入物は、好ましくは細菌、例えば、スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)およびシュードモナス エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、藻類、真菌、原虫およびウイルスから選択される、微生物を好ましくは含む。
【0155】
一実施形態では、本発明による2つ以上の多孔質膜が、液相および/または気相の濾過のために一連で使用され得る。有利には、第1の濾過工程は、1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相を5μmより高い、より好ましくは5~50μmの平均細孔直径を有する本発明による多孔質膜と接触させることにより行われ;そして第2の濾過工程は、同じ液相および/または気相を0.001~5μmの平均細孔直径を有する本発明による多孔質膜と接触させることによって、前記第1の濾過工程の後に行われる。
【0156】
あるいは、本発明による少なくとも1種の多孔質膜は、本発明による組成物(C)と異なる組成物から得られる少なくとも1種の多孔質膜と一連で使用される。
【0157】
次いで、第6の態様では、本発明は、少なくとも2つの層を含む布であって、少なくとも1つの層は、0.001~5μmの平均細孔直径を有する本発明による多孔質膜を含む、布に関する。
【0158】
通気性布は、典型的には風、雨および身体熱の損失からの保護を与える衣服での使用のために設計される。通気性布はまた、典型的には、液体水の浸透および吸収を防止するために、防水性(したがって、防水通気性布、WBFと称される)である。用語「通気性の」は、布が、身体からの発汗による水蒸気が布を通して拡散し、なおさらに外側からの液体水の浸透を防止することを受動的に可能にすることを示すことが意図される。
【0159】
WBFは、典型的には1.5~2メートル幅および100~5000メートル長さの連続ロールとして製造される。WBFは、例えば、以下のとおりに製造され得る:
- 基材、例えば、織り基材またはポリマー基材などを提供する工程;
- 前記基材を上で定義されたとおりの組成物(C)と接触させる工程と;
- 任意選択で、トランスコーティングする工程と;
- 積層する工程。
【0160】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0161】
本発明は、以下の実験の項に含まれる実施例によってより詳細に以下に例証され;実施例は、例証的であるに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0162】
材料
- モノマー(a):
約2,000の分子量(Mw)および約56mgKOH/gの-OH価を有するCAPA(商標)2201(Perstorp製)ポリカプロラクトン-ジオール(PLC);
- 式:
H(OCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHO(CHCHO)
(p=4.7および約2,000のMwである)
を有するモノマー(b)
- モノマー(c):
ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)
- モノマー(d):
1,4-ブタンジオール(BDO)
- 触媒:
ネオデカン酸亜鉛
- 溶媒および添加剤は、Sigma Aldrichから入手した:
ジメチルアセトアミド(DMAc)およびトリエチルホスフェート(TEP)ポリエチレングリコール(PEG)200、イソプロピルアルコール(IPA)
- H-TPU1:市販の脂肪族ポリカプロラクトンベース熱可塑性水素化ポリウレタンを比較として使用した。
【0163】
方法
F-TPUポリマー試験片の調製
F-TPUポリマー試験片1~4および比較のH-TPU2は、上述のモノマーから出発し、上で引用した米国特許第5,332,798号明細書(Ausimont Ss.p.A.に付与)に詳述された同じ手順に従って調製した。モノマーは、以下の表1に報告されるモル比で使用した。
【0164】
【0165】
溶液の調製
溶液は、それぞれのポリマーおよび添加剤を溶媒DMACまたはTEPに添加することによって調製した。混合後、メカニカルアンカーを用いて撹拌を60℃で4時間行った。
【0166】
多孔質膜の調製
方法A:
自動化キャスティングナイフによって滑らかなガラス支持体の上で、上に開示された手順に従って調製された溶液をフィルム化することによって、平シート多孔質膜を調製した。膜キャスティングは、ポリマーの時期尚早の沈澱を防止するために、ドープ溶液、キャスティングナイフおよび支持体の温度を25℃に保つことによって行った。ナイフ隙間は、250μmに設定した。キャスティング後に、ポリマーフィルムを、相反転を誘起するために直ちに凝固浴に浸漬した。凝固浴は、純脱イオン水、または混合物イソプロピルアルコール(IPA)/水 50/50v/vからなった。凝固後に、膜を次の数日間に純水中で数回洗浄して残存痕跡の溶媒を除去した。膜は常に、水中で(湿式)保管した。
【0167】
方法B:
商業的フィルタをTHF中10重量/重量%のF-TPU 3溶液(「溶液の調製」で上に開示した手順に従って調製)に浸漬させることによって、以下の手順、すなわち、測定して6×6cmのフィルタを上記溶液に2分間浸漬させ、次いで、真空オーブン中50℃で4時間乾燥させることによって、平シート多孔質膜を得た。
【0168】
接触角(CA)の測定
水およびヘキサデカン(C16)に対する接触角は、ASTMD5725-99に従ってDSA10機器(Kruss GmbH、独国製)を使用することによって25℃で評価した。測定は、膜の上側(空気との界面)で行った。
【0169】
機械的特性
平シート多孔質膜に関する機械的特性は、ASTM D 638標準手順(タイプV、グリップ距離=25.4mm、初期長さLo=21.5mm)に従って、室温(23℃)で評価した。速度は、1~50mm/分であった。水中に保管されたヒラシート多孔質膜を容器ボックスから取り出し、直ちに試験した。
【0170】
上に開示されたとおりの方法Aに従って調製した膜について得られた結果を、以下の表2および表3に要約する。
【0171】
【0172】
上記結果は、本発明による多孔質膜が、非常に疎水性で、非常に疎油性の両方であることを示す。一方で、水素化ポリウレタンポリマー(H-TPU1および2)で得られた多孔質膜は、本発明による多孔質膜よりも疎水性でなく、また疎油性でなく、すなわち、ヘキサデカンの滴は膜中に浸透する(表2中「濡れ」)。
【0173】
【0174】
膜1と膜4()、および膜2と膜6()とを比較すると、上記結果は、本発明による多孔質膜が、水素化ポリウレタンポリマー(H-TPU)で得られた多孔質膜よりもより良好な機械的特性を有することを示す。
【0175】
上に開示されたとおりの方法Bに従って調製した膜について得られた結果を、以下の表4に要約する。非処理商業的フィルタを比較として使用した。
【0176】