(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】基礎投与のタイミングを調節するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
A61M5/142 530
(21)【出願番号】P 2019511548
(86)(22)【出願日】2017-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2017070588
(87)【国際公開番号】W WO2018036854
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-07-13
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アーラドッティル, ティナ ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ブロックマイヤー, ピート
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン, ヨーナス キルデゴー
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 - 5/52
G16H 20/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のプロセッサ(274)、およびメモリ(192/290)を備える、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画(206)における基礎投与のタイミングを最適化するためのデバイス(250)であって、
前記メモリに記憶されている命令が、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、
(i)循環期間(208)における基礎インスリン薬剤の総量(210)と、(ii)前記循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプ(212)の間のそれぞれの配分(214)と、を指定する、前記被験者向けの前記有効な基礎インスリン投薬計画を得ることと、
第1の複数回の前記循環期間を含む過去の時間的経過にわたる前記被験者の複数のグルコース測定値と、前記複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値(218)について、それぞれの測定が行われた時刻を表すグルコース測定タイムスタンプ(220)とを含む第1のデータセット(216)を得ることと、
停止条件(222)を使用して前記過去の時間的経過にわたる前記複数のグルコース測定値を評価することと、
を含む方法を遂行し、
前記停止条件が満たされたとき、前記方法は、
前記有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間の前記それぞれの配分の変更を含む、推奨される調節を決定することと、
前記推奨される調節を、(i)前記有効な基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する前記被験者、(ii)前記被験者に前記有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または(iii)前記被験者に関連した医療関係者、に通信することと、
をさらに含み、
前記方法が、
前記有効な基礎インスリン投薬計画を適用するために前記被験者によって使用されるインスリンペンから、前記過去の時間的経過にわたる複数のインスリン薬剤記録を含む第2のデータセットを得ることであって、前記複数のインスリン薬剤記録における各インスリン薬剤記録が、(i)前記インスリンペンを使用して前記被験者に前記基礎インスリン薬剤のインスリン薬剤を注射することを表すそれぞれのインスリン薬剤注射イベント、および(ii)前記それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したとき前記インスリンペンによって自動的に発生された対応する電子的タイムスタンプを含む、第2のデータセットを得ることと、
前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる前記被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることにより、前記将来の時間的経過にわたる前記被験者の前記グルコース濃度の複数のシミュレーションを計算することと、
をさらに含み、
前記複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーション(234)が、前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記基礎注射イベントタイプの組にわたる異なる配分(236)に関連づけられ、
前記停止条件を使用して前記過去の時間的経過にわたる前記複数のグルコース測定値を評価することが、各シミュレーションについて血糖リスク指標値(240)を計算することにより、前記複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーションにおいて前記将来の時間的経過にわたる前記被験者の前記グルコース濃度(238)を評価することを含み、
前記複数のシミュレーションにおける第1のシミュレーションが、(i)前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記有効な基礎インスリン投薬計画において指定された前記基礎注射イベントタイプの組にわたる前記配分に基づく、前記将来の時間的経過にわたる前記被験者の前記グルコース濃度の参照シミュレーション(242)、および(ii)前記第1のデータセットにわたる前記被験者の前記グルコース濃度のうち1つと比較して閾値量を超えて、前記血糖リスク指標値を最小化する場合に、前記停止条件は満たされ、
前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記第1のシミュレーションにおける前記基礎注射イベントタイプの組にわたる前記配分が、前記有効な基礎インスリン投薬計画の配分と異なる、デバイス。
【請求項2】
前記血糖リスク指標値が、
(i)前記それぞれのシミュレーションにわたって観測された合計のグルコースレベルの変動性、
(ii)前記それぞれのシミュレーションにわたって計算された複数の空腹時グルコースレベルの変動性、
(iii)前記それぞれのシミュレーションにわたる合計のグルコースレベルが第1の閾値を超えるかまたは第2の閾値未満になる時間の割合、あるいは
(iv)前記それぞれのシミュレーションにわたるHbA1cのレベルが第3の閾値を超えるかまたは第4の閾値未満になる時間の割合、
を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記方法が、
前記被験者に関する前記過去の時間的経過にわたる複数の食事記録を含む食事記録のデータセット(314)を得ることであって、前記食事記録のデータセットにおけるそれぞれの食事記録(316)が、(i)炭水化物摂取イベント(318)、および(ii)前記炭水化物摂取イベントが生じた時刻の対応する電子的炭水化物タイムスタンプ(320)を含む、食事記録のデータセット(314)を得ることをさらに含み、
前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる前記被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることが、前記第1のデータセット、前記第2のデータセット、および前記食事記録のデータセットを使用して前記将来の時間的経過にわたる前記被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記方法が、
前記過去の時間的経過にわたる前記被験者の身体運動を含む第4のデータセット(322)を得ることをさらに含み、
前記第1のデータセットおよび前記第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる前記被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることが、前記第1のデータセット、前記第2のデータセット、第3のデータセット、および第4のデータセットを使用して前記将来の時間的経過にわたる前記被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記循環期間における前記基礎注射イベントタイプの組が「朝基礎」および「夜基礎」から成り、前記循環期間が1日である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1のデータセットの前記複数のグルコース測定値における連続した測定値が、5分以下、3分以下、または1分以下の間隔で前記被験者から自律的に取得される、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記過去の時間的経過が、直前の1週間、直前の2週間、または直前の1か月であり、前記方法が、時間が経つと繰り返され、
前記基礎インスリン薬剤が、12~24時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤または12~24時間の作用持続時間を総体として有するインスリン薬剤の混合物から成る、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための方法であって、
(i)循環期間における基礎インスリン薬剤の総量と、(ii)前記循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分とを指定する、前記被験者向けの前記有効な基礎インスリン投薬計画をコンピュータ
が得ることと、
第1の複数回の前記循環期間を含む過去の時間的経過にわたる前記被験者の複数のグルコース測定値と、前記複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値について、それぞれの測定が行われた時刻を表すタイムスタンプと、を含む第1のデータセットを
コンピュータが得ることと、
停止条件を使用して前記過去の時間的経過にわたる前記複数のグルコース測定値をコンピュータ
が評価することと、
を含み、
前記停止条件が満たされたとき、
前記有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間の前記それぞれの配分の変更を含む、推奨される調節をコンピュータ
が決定することと、
前記推奨される調節を、(i)前記基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する前記被験者、(ii)前記被験者に前記有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または(iii)前記被験者に関連した医療関係者に
、コンピュータ
が通信することと、
をさらに含み、
前記停止条件を使用して前記過去の時間的経過にわたる前記複数のグルコース測定値をコンピュータ
が評価することが、
各シミュレーションについて血糖リスク指標値(240)を計算することにより、複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーションにおいて将来の時間的経過にわたる前記被験者のグルコース濃度(238)を
コンピュータが評価することを含み、
前記被験者のグルコース濃度の複数回のシミュレーションにおける第1のシミュレーションが、(i)前記基礎インスリン薬剤の総量の、前記有効な基礎インスリン投薬計画において指定された前記基礎注射イベントタイプの組にわたる前記配分に基づく、前記将来の時間的経過にわたる前記被験者の前記グルコース濃度の参照シミュレーション(242)、および(ii)前記第1のデータセットにわたる前記被験者の前記グルコース濃度のうち1つと比較して閾値量を超えて、前記血糖リスク指標値を最小化する場合に、前記停止条件は満たされる、方法。
【請求項9】
1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき請求項8に記載の方法を遂行する命令を備える、コンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを記憶している、コンピュータ可読データ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、基礎インスリン薬剤を含む被験者向けの有効なインスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2型真性糖尿病は、通常の生理的インスリン分泌の漸進的破壊によって特徴づけられる。健康な人では、膵臓のβ細胞によって基礎インスリンが連続的に分泌され、食事間の長期間にわたって安定したグルコースレベルを維持する。また、健康な人では、食事に応答する初期の第1段階のスパイク(急増)においてインスリンが急速に放出される食事の分泌があり、長期のインスリン分泌がそれに続き、2~3時間後に基礎レベルへ戻る。
【0003】
インスリンは、インスリン受容体に結合して、グルコース、アミノ酸、および脂肪酸の骨格筋および脂肪への細胞の摂取を促進するとともに、肝臓からのグルコースの出力を阻止することにより、血糖を低下させるホルモンである。通常の健康な人では、生理的な基礎インスリン分泌および食事のインスリン分泌が正常血糖を維持し、これが空腹時血糖値および食後の血漿グルコース濃度に作用する。2型糖尿病では基礎インスリン分泌および食事のインスリン分泌が低下し、初期の食後の応答がない。これらの有害事象に対処するために、2型糖尿病を伴う被験者はインスリン薬剤治療計画を提供される。1型糖尿病を伴う被験者も、インスリン薬剤の治療計画を提供される。これらのインスリン薬剤治療計画の目的は、低血糖および高血糖の推定されたリスクを最小化する所望の空腹時血糖の目標レベルを維持することである。
【0004】
従来のインスリン薬剤送達システムは、インスリン薬剤の、定期的に繰り返す頻繁な投薬をもたらすポンプ機構の使用を含むものであった。最近になって、インスリンペンなどの新たなタイプの送達システムが開発されており、それほど頻繁でないインスリン薬剤注射の形態の自己投与のインスリン薬剤治療計画に使用され得る。そのような送達システムを使用する糖尿病治療のための共通の手法は、有効なインスリン投薬計画に従って長期作用のインスリン薬剤(基礎)投与量を注射して、血糖コントロールを食事イベントと無関係に維持するものである。しかしながら、そのような長期作用のインスリン薬剤(基礎)投与量の最適な送達は、被験者に固有のものである。血糖コントロールをうまく維持するために、ある被験者は基礎投与量を1日当り2回以上の投与量に分割するのが最良であり、他の被験者は基礎投与量を毎日1回で投与するのが最良である。
【0005】
実際には、医療関係者は、一般的には被験者が取り入れるべき合計の日々の量の基礎インスリン薬剤を決定する。その上に、医療関係者は、被験者についての有効な医療データに基づき、この日々の基礎インスリン薬剤の割当てを、その日にわたって単一の注射イベントとして投与するべきか、または複数の注射イベントで投与するべきか、決定する。医療関係者によって決定されたことは、被験者が次に医療関係者を訪問するまで守るべき有効な基礎インスリン投薬計画として正式に承認される。この慣行的実務には2つの短所がある。第1に、従来、医療関係者が有効な基礎インスリン投薬計画を確立するために利用するデータは限られている。したがって、有効な基礎インスリン投薬計画を正式に承認するために使用するデータが限られているために、有効な基礎インスリン投薬計画が所与の被験者にとって最適ではない恐れがある。第2に、被験者は、有効な基礎インスリン投薬計画を真に最適化するほど医療関係者を頻繁に訪問することができない。たとえば、医療関係者を訪問する間に、最善の有効な基礎インスリン投薬計画が訪問の間に起きる健康現象によって変化する可能性がある。最善の有効な基礎インスリン投薬計画におけるこれらの変化は、次に医療関係者を訪問するまで発見されない。慣行的実務に伴うこれらの短所により、被験者によっては、実際には基礎インスリン薬剤を1回の用量として投与される方が優れているはずであるときに、その日を通じて2回以上の用量として投与される。反対に、毎日1回の注射イベントで基礎インスリン薬剤を投与するように指示されている他の被験者は、実際には、日々の基礎インスリン薬剤の投与量をより少ない投与量に分けて、その日を通じて複数回で注射する場合にうまく供給される。
【0006】
Abbott Diabetes Care社の「Methods for Modeling Insulin Therapy Requirements」という名称の米国特許出願公開第20110098548号は、将来のグルコースレベルを、グルコースデータ、炭水化物摂取、インスリン送達履歴および運動履歴の関数として予測して、予測された将来のグルコースレベルに関係のある推奨を後に提供するために、グルコース情報を含む糖尿病関連情報を処理するためのシステムを開示している。しかしながら、米国特許出願公開第20110098548号は、血糖リスクを最小化するために、反復的な基礎インスリン薬剤投与量を注射イベントの離散的な組(たとえば1回の注射イベントまたは複数回の注射イベント)へと配分する方法についての教示は提供していない。
【0007】
Joanneum Res Forschungs GMBHの「Insulin Dosage Proposal System」という名称の国際特許公開第WO2015/169814号には、どのインスリンを糖尿病患者に投与するべきかに従ってその日の用量および割り当てられた時間を含むインスリン投与量の提案を決定するためのシステムおよび方法が開示されている。しかしながら、国際特許公開第WO2015/169814号は、米国特許出願公開第20110098548号と同様に、血糖リスクを最小化するために、反復的な基礎インスリン薬剤投与量を注射イベントの離散的な組(たとえば1回の注射イベントまたは複数回の注射イベント)へと配分する方法についての教示は提供していない。
【0008】
Abbott Diabetes Care社の「Multi-Function Analyte Test Device and Methods Therefore」という名称の国際特許公開第WO2010/091129号には、長期作用薬剤の投与量の計算機能を遂行する命令を含み得る健康監視デバイスが開示されている。長期作用薬剤の1回分の用量は、12時間、24時間、またはより長く持続し得るものである。長期作用薬剤の投与量の計算機能に関する命令は、メモリデバイスに記憶され、健康監視デバイスのプロセッサによって実行されるソフトウェアの形態でよい。一態様では、長期作用薬剤の投与量の計算機能は、患者の検体の現行の濃度に基づくアルゴリズムでよく、長期作用薬剤の投与量の計算機能は、現行の検体濃度値を所定の閾値と比較するものであり、所定の閾値は、特定の検体について臨床的に決定された閾値レベルに基づき得、または医者もしくは他の治療の専門家によって個別の患者向けに調整され得る。現行の検体濃度が所定の閾値を超えている場合には、長期作用薬剤の投与量の計算機能は、長期作用薬剤の推奨される投与量を計算するのに現行の検体濃度値を使用してよい。推奨される薬剤投与量は、一旦計算されると、健康監視デバイスの表示ユニットに表示されてよい。しかしながら、WO2010/091129は、血糖リスクを最小化するために、反復的な基礎インスリン薬剤投与量を注射イベントの離散的な組(たとえば1回の注射イベントまたは複数回の注射イベント)へと配分する方法についての教示は提供していない。
【0009】
上記の背景を所与として、当技術において必要とされるのは、血糖リスクを最小化するとともに、この情報を被験者に通信することにより、基礎インスリン薬剤がインスリンペンを用いて最善の基礎投与のタイミングに従って投与されるように、基礎投与のタイミングを最適化するためのシステムおよび方法である。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、被験者の有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化する技術の必要性に対処し、基礎インスリン薬剤の総量と、循環期間(たとえば1日)における1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、薬剤の総量の、循環期間における注射イベントタイプの間の配分とを指定するものである。被験者の、タイムスタンプを付与されたグルコース測定値が、過去の時間的経過にわたって得られる。この過去の時間的経過は、複数回の循環期間(たとえば循環期間が1日である場合には数日)を備える。グルコース測定値が停止条件を満たしたとき、推奨される調節が決定される。この推奨される調節は、有効な基礎インスリン投薬計画における注射イベントタイプの数の変更、および/またはインスリン薬剤の、循環期間における注射イベントタイプの間の配分の変更を備える。推奨される調節は、有効な基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または被験者に関連した医療関係者に通信される。
【0011】
そのため、本開示の一態様は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画において基礎投与のタイミングを最適化するためのデバイスを提供するものである。このデバイスは、1つまたは複数のプロセッサおよびメモリを備える。メモリに記憶された命令が1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、方法が遂行される。この方法では、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画が得られる。有効な基礎インスリン投薬計画は、(i)循環期間(たとえば1日、2日など)における基礎インスリン薬剤の総量と、(ii)循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)基礎インスリン薬剤の総量の、所与の循環期間における1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分とを指定する。
【0012】
この方法では第1のデータセットも得られる。第1のデータセットは、被験者の、過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を備える。過去の時間的経過は、第1の複数回の循環期間を備える。たとえば、循環期間が1日であれば、過去の時間的経過は数日を備える。複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値について、それぞれの測定が行われた時刻を表すグルコース測定タイムスタンプがある。
【0013】
この方法では、過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値が、停止条件を使用して評価される。この方法は、停止条件が満たされたとき、有効な基礎インスリン投薬計画に対して推奨される調節を決定することをさらに備える。そのため、推奨される調節は、有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分の変更を備える。
【0014】
推奨される調節は、(i)基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、(ii)被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または(iii)被験者に関連した医療関係者に通信される。
【0015】
言い換えれば、このデバイスは、基礎インスリンの量、すなわち合計の基礎インスリンを増やさずに、合計の基礎インスリンの、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプの間の配分を通信する。停止条件は第1のデータセットに基づくデータが解析されたことを指示し、解析されたデータに対して停止条件が評価されるとき、満たされた停止条件は、基礎注射イベントタイプの配分および/または数を変更するべきであることを指示する。解析および停止条件は、測定値に直接基づくものでよく、または測定値に基づく予測に直接基づくものでよい。停止条件は、空腹時期間に関係のあるグルコース測定値の比較でよく、あるいは、基礎注射イベントタイプの配分または数における変更が、血糖リスクに好影響または悪影響を与えるはずであるという指示であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、有効な基礎インスリン投薬計画は、循環期間における単一の基礎注射イベントタイプを指定し、停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することは、過去の時間的経過における1つまたは複数の空腹時イベントを得ることを備える。そのような空腹時イベントのそれぞれが、第1の複数回の循環期間における異なる回の循環期間に関連づけられる。たとえば、循環期間が1日であれば、それぞれの空腹期間は過去の時間的経過における異なる日に関連づけられる。すなわち、循環期間が1日であれば、循環期間の「異なる回」の一例は5月5日火曜日などの特定の日になるであろう。
【0017】
1つまたは複数の空腹時イベントにおけるそれぞれの空腹時イベントについて、(i)それぞれの空腹時イベントの開始に先立つ第1の所定の時間である第1の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の1つまたは複数の第1のグルコース測定値と、(ii)それぞれの空腹時イベントの間または後の所定の時点にある第2の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の1つまたは複数の第2のグルコース測定値との間で比較が行われる。このようにして1つまたは複数の比較が得られる。そのような実施形態では、1つまたは複数の比較によって、それぞれの1つまたは複数の第1のグルコース測定値が、対応するそれぞれの1つまたは複数の第2のグルコース測定値から、閾値量を超えて逸脱していると指示されたとき、停止条件が満たされる。この場合、推奨される調節は、基礎注射イベントタイプの数を2つの基礎注射イベントタイプに増加して、基礎インスリン薬剤の総量を2つの基礎注射イベントタイプの間で配分することである。
【0018】
さらなる代替の態様では、有効な基礎インスリン投薬計画が循環期間における単一の基礎注射イベントタイプを指定し、
停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することが、
過去の時間的経過における複数の空腹時イベントを得ることであって、各空腹時イベントが、第1の複数回の循環期間における異なる回の循環期間に関連づけられる、複数の空腹時イベントを得ることと、
複数の空腹時イベントにおけるそれぞれの空腹時イベントについて、(i)それぞれの空腹の開始に先立つ第1の所定の時間である第1の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の第1のグルコース測定値、および(ii)それぞれの空腹時イベントの間または後の所定の時点にある第2の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の第2のグルコース測定値を得ることと、
複数の空腹時イベントにおける各空腹時イベントの第1のグルコース測定値の第1の中心傾向度、および複数の空腹時イベントにおける各空腹の第2のグルコース測定値の第2の中心傾向度を得ることと、
第1の中心傾向度を第2の中心傾向度と比較することによって比較を得ることとを備え、
比較が、それぞれの第1の中心傾向度が第2の中心傾向度から閾値量を超えて逸脱することを指示するとき停止条件が満たされ、
推奨される調節は、基礎注射イベントタイプの数を2つの基礎注射イベントタイプに増加して、基礎インスリン薬剤の総量を2つの基礎注射イベントタイプの間で配分することである、比較することとを備える。
【0019】
いくつかのそのような実施形態では、1つまたは複数の空腹時イベントを得ることは、複数のグルコース測定値にわたる分散の移動期間
を、次式を使用して計算することにより、第1の複数の循環期間における第1の循環期間における第1の空腹時イベントを識別することを備え、
この式で、G
iは複数のグルコース測定値の部分kにおけるi番目のグルコース測定値であり、Mは複数のグルコース測定値におけるグルコース測定値の数であって過去の時間的経過を表し、
は複数のグルコース測定値から選択されたグルコース測定値の平均値であり、kは第1の循環期間の範囲内にある。そのような実施形態では、第1の空腹時イベントは、第1の循環期間の範囲内の最小の分散の領域
に関連づけられる。代替実施形態では、1つまたは複数の空腹時イベントを得ることは、被験者から1つまたは複数の空腹時イベントにおける各空腹時イベントの指示を受け取ることを備える。さらなる代替実施形態では、1つまたは複数の空腹時イベントを得ることは、被験者が着用しているウェアラブルデバイスから第2のデータセットを受け取ることを備え、第2のデータセットは、1つまたは複数の空腹時イベントの指示である時間的経過の間の被験者の生理的指標値(メトリック)を指示する。
【0020】
いくつかの実施形態では、この方法は、有効な基礎インスリン投薬計画を適用するために被験者によって使用されるインスリンペンから第3のデータセットを得ることをさらに備える。第3のデータセットは複数のインスリン薬剤記録を備える。複数の薬剤記録におけるそれぞれのインスリン薬剤記録が、(i)被験者に注射された基礎インスリン薬剤の量を含むそれぞれのインスリン薬剤注射イベント、および(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したときインスリンペンによって自動的に発生された対応するインスリンイベントの電子的タイムスタンプを備える。この方法では、第3のデータセットおよび有効な基礎インスリン投薬計画は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画に準拠しない、過去の時間的経過における1つまたは複数の循環期間を決定するために使用される。被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画に準拠しない循環期間の間に取得されたグルコース測定値は、停止条件の評価から除外される。
【0021】
いくつかの実施形態では、循環期間における基礎注射イベントタイプの組は「朝基礎」および「夜基礎」から成る。さらに、有効な基礎インスリン投薬計画は循環期間における単一の基礎注射イベントタイプを指定する。またさらに、推奨される調節は、有効な基礎インスリン投薬計画に「夜基礎」の基礎注射イベントタイプを追加して、基礎インスリン薬剤の総量を、「夜基礎」の基礎注射イベントタイプと「朝基礎」の基礎注射イベントタイプの間で配分することである。
【0022】
いくつかの実施形態では、この方法は、有効な基礎インスリン投薬計画を適用するために被験者によって使用されるインスリンペンから第2のデータセットを得ることをさらに備える。第2のデータセットは、過去の時間的経過にわたる複数のインスリン薬剤記録を備える。複数の薬剤記録におけるそれぞれのインスリン薬剤記録が、(i)インスリンペンを使用して被験者に基礎インスリン薬剤のインスリン薬剤を注射することを表すそれぞれのインスリン薬剤注射イベント、および(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したときインスリンペンによって自動的に発生された対応する電子的タイムスタンプを備える。第1のデータセットおよび第2のデータセットは、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることによって将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の複数のシミュレーションを計算するために使用される。複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーションは、基礎インスリン薬剤の総量の、基礎注射イベントタイプの組にわたる異なる配分に関連づけられる。そのような実施形態では、停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することは、各シミュレーションについて血糖リスク指標値を計算することにより、複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーションにおいて将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を評価することを備える。停止条件は、複数のシミュレーションにおける第1のシミュレーションが、(i)基礎インスリン薬剤の総量の、有効な基礎インスリン投薬計画において指定された基礎注射イベントタイプの組にわたる配分に基づく、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の参照シミュレーション、および(ii)第1のデータセットにわたる被験者のグルコース濃度のうち1つと比較して閾値量を超えるだけ、血糖リスク指標値を最小化するとき満たされる。そのような実施形態では、基礎インスリン薬剤の総量の、第1のシミュレーションにおける基礎注射イベントタイプの組にわたる配分は、有効な基礎インスリン投薬計画のものと異なる。いくつかのそのような実施形態では、血糖リスク指標値は、(i)それぞれのシミュレーションにわたって観測された合計のグルコースレベルの変動性、(ii)それぞれのシミュレーションにわたって計算された複数の空腹時グルコースレベルの変動性、(iii)それぞれのシミュレーションにわたる合計のグルコースレベルが第1の閾値を超えるかまたは第2の閾値未満になる時間の割合、あるいは(iv)それぞれのシミュレーションにわたるHbA1cのレベルが第3の閾値を超えるかまたは第4の閾値未満になる時間の割合を備える。
【0023】
いくつかのそのような実施形態では食事記録のデータセットが得られる。食事記録のデータセットは、被験者に関する過去の時間的経過にわたる複数の食事記録を備える。食事記録のデータセットにおけるそれぞれの食事記録は、(i)炭水化物摂取イベント、および(ii)炭水化物摂取イベントが生じた時刻の対応する電子的炭水化物タイムスタンプを備える。そのような実施形態では、第1のデータセットおよび第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることは、第1のデータセット、第2のデータセット、および食事記録のデータセットを使用して、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを備える。
【0024】
いくつかのそのような実施形態では、この方法は、過去の時間的経過にわたる被験者の身体運動を備える第4のデータセットを得ることをさらに備える。そのような実施形態では、第1のデータセットおよび第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることは、第1のデータセット、第2のデータセット、第3のデータセット、および第4のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを備える。
【0025】
いくつかの実施形態では、循環期間における基礎注射イベントタイプの組は「朝基礎」および「夜基礎」から成り、循環期間は1日である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1のデータセットの複数のグルコース測定値における連続した測定値は、5分以下、3分以下、または1分以下の間隔で、被験者から自律的に取得される。
【0027】
いくつかの実施形態では、過去の時間的経過は、直前の1週間、直前の2週間、または直前の1か月であり、この方法は時間が経つと繰り返される。さらに、基礎インスリン薬剤は、12~24時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤または12~24時間の作用持続時間を総体として有するインスリン薬剤の混合物から成る。
【0028】
本開示の別の態様は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための方法を提供するものである。この方法は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画を得ることを備える。有効な基礎インスリン投薬計画は、(i)循環期間における基礎インスリン薬剤の総量と、(ii)循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分とを指定する。この方法では第1のデータセットが得られる。第1のデータセットは、過去の時間的経過にわたる被験者の複数のグルコース測定値を備える。過去の時間的経過は、第1の複数回の循環期間を備える。第1のデータセットは、複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値について、それぞれの測定が行われた時刻を表すタイムスタンプをさらに備える。この方法では、複数のグルコース測定値が、停止条件を使用して、過去の時間的経過にわたって評価される。停止条件が満たされたとき、この方法は、有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または基礎インスリン薬剤の総量のすべてまたは一部分の、1つまたは複数の周期的注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分の変更を備える、推奨される調節を決定することをさらに備える。推奨される調節は、(i)基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、(ii)被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または(iii)被験者に関連した医療関係者に通信される。
【0029】
さらなる態様において提供されるコンピュータプログラムが備える命令が1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、
(i)循環期間における基礎インスリン薬剤の総量と、(ii)循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分とを指定する、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画を得ることと、
第1の複数回の循環期間を備える過去の時間的経過にわたる被験者の複数のグルコース測定値と、複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値について、それぞれの測定が行われた時刻を表すグルコース測定タイムスタンプとを備える第1のデータセットを得ることと、
停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することとの方法が遂行され、この方法は、停止条件が満たされたとき、
有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分の変更を備える、推奨される調節を決定することと、
推奨される調節を、(i)有効な基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、(ii)被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または(iii)被験者に関連した医療関係者に通信することとをさらに備える。
【0030】
さらなる態様では、上記で説明されたように、コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読データ記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】通信ネットワークを通じて任意選択で相互接続される、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための投薬計画調節デバイスと、被験者データを収集するためのデータ収集デバイスと、被験者からのグルコースデータを測定する1つまたは複数のグルコースセンサと、有効な基礎インスリン投薬計画に従ってインスリン薬剤を注射するために被験者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンとを含む、本開示の一実施形態による例示的なシステムトポロジの図解である。
【
図2】本開示の一実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのデバイスの図解である。
【
図3】本開示の別の実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのデバイスの図解である。
【
図4A】本開示の様々な実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのプロセスの流れ図およびデバイスの特徴を提供する図である。破線のボックスによって指示されているのは流れ図の任意選択の要素である。
【
図4B】本開示の様々な実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのプロセスの流れ図およびデバイスの特徴を提供する図である。破線のボックスによって指示されているのは流れ図の任意選択の要素である。
【
図4C】本開示の様々な実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのプロセスの流れ図およびデバイスの特徴を提供する図である。破線のボックスによって指示されているのは流れ図の任意選択の要素である。
【
図4D】本開示の様々な実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのプロセスの流れ図およびデバイスの特徴を提供する図である。破線のボックスによって指示されているのは流れ図の任意選択の要素である。
【
図4E】本開示の様々な実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのプロセスの流れ図およびデバイスの特徴を提供する図である。破線のボックスによって指示されているのは流れ図の任意選択の要素である。
【
図5】本開示の一実施形態による、接続されたインスリンペン(複数可)と、連続型のグルコース監視装置(複数可)と、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのメモリおよびプロセッサとの、例示の統合システムの図解である。
【
図6】本開示の一実施形態による、第2の時間帯からの1つまたは複数のグルコース測定値が第1の時間帯からの1つまたは複数のグルコース測定値よりも高くなる傾向をとる事例(パネルA)と、第2の時間帯からの1つまたは複数のグルコース測定値が第1の時間帯からの1つまたは複数のグルコース測定値よりも低くなる傾向をとる事例(パネルB)との図解である。
【
図7】本開示の一実施形態に従って、最適化アルゴリズムが、シナリオをシミュレートし、成果を測定することにより、有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分の変更を備える、推奨される調節を探索する様子の図解である。次いで、このアルゴリズムは、本開示の一実施形態に従って、最善の成果を伴う推奨される調節を提案する。
【
図8】本開示の一実施形態による、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための例示的アルゴリズムの図解である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
類似の参照数字は、図面のいくつかの視野にわたって対応する部品を指す。
【0033】
本開示は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画において基礎投与のタイミングを最適化するためのシステムおよび方法を提供するものである。
図1は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための統合システム502の一例の図解であり、
図5は、そのようなシステム502のそれ以上の詳細を与える。統合システム502は、1つまたは複数の接続されたインスリンペン104と、1つまたは複数のグルコース監視装置102と、メモリ506と、被験者向けの有効なインスリン投薬計画における基礎/ボーラス比を調節するためのプロセッサ(図示せず)とを含む。いくつかの実施形態では、グルコース監視装置102は連続型のグルコース監視装置である。
図5では、504において、第2のデータセット228の形態の任意選択の生理的測定値230、第1のデータセット216の形態の連続したグルコース測定値、および第3のデータセット302の形態の任意選択のインスリン用量/タイムスタンプ/タイプのデータがフィルタリングされ、メモリ192/メモリ290に記憶され(ステップ506)、ステップ508において、有効なインスリン投薬計画206の調節を推奨するべきかどうか決定される。有効なインスリン投薬計画の調節が推奨されるとき、次いで、これが被験者510に通信される。
【0034】
統合システムを用いて、有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングが被験者向けに最適化され、有効な基礎インスリン投薬計画は、(i)循環期間(たとえば1日)における基礎インスリン薬剤の総量と、(ii)循環期間における1組の基礎注射イベントタイプ(たとえば「朝基礎」、「夜基礎」)における1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分とを指定する。複数回の循環期間を備える過去の時間的経過にわたって、被験者の、タイムスタンプを付与されたグルコース測定値が得られる。グルコース測定値が停止条件を満たすとき、有効な基礎インスリン投薬計画における注射イベントタイプの数の変更および/またはインスリン薬剤の注射イベントタイプの間の配分の変更を備える、推奨される調節が決定される。推奨される調節は、有効な基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または被験者に関連した医療関係者に通信される。
【0035】
ここで実施形態が詳細に参照され、実施形態の例は添付の図面に図解されている。以下の詳細な説明では、本開示の十分な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が明らかにされる。しかしながら、本開示は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることが当業者には明らかであろう。他の場合には、周知の方法、プロシージャ、構成要素、回路、およびネットワークは、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0036】
本明細書では、様々な要素を説明するために、第1の、第2の、などの用語が使用され得るが、これらの要素がこれらの用語によって限定されるべきではないことも理解されよう。これらの用語は、1つの要素を別のものから区別するためにのみ使用されるものである。たとえば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の被験者が第2の被験者と称されることがあり、同様に第2の被験者が第1の被験者と称されることがある。第1の被験者と第2の被験者はどちらも被験者であるが、同一の被験者ではない。その上、「被験者」、「ユーザ」、および「患者」という用語は、本明細書では区別なく使用される。「インスリンペン」という用語は、インスリンの用量に関連したデータをログ記録したり通信したりするように適合されて、インスリンの離散的な用量を与えるのに適切な注射デバイスを意味する。「注射イベント」という用語は、インスリン薬剤の離散用量を与えるのにインスリンペンを使用することを意味する。
【0037】
本開示で使用される用語法は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定するようには意図されていない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲で使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」といった単数形は、文脈が明らかに示さなければ、複数形も含むように意図されている。本明細書で使用されるような「および/または」という用語は、関連する列記された品目のうち1つまたは複数のありとあらゆる可能な組合せを参照し、かつ包含することも理解されよう。「備える」および/または「備えている」といった用語は、本明細書で使用されたとき、明示された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。
【0038】
本明細書で使用されるように、「~であれば」という用語は、文脈に依拠して、「~するとき」または「~したとき」または「~と決定したことに応答して」または「~を検出したことに応答して」、ということを意味するように解釈されてよい。同様に、「~と決定された場合」または「~が検出された場合」という慣用句は、文脈に依拠して、「~と決定したとき」または「~と決定したことに応答して」または「~を検出したとき」または「~を検出したことに応答して」ということを意味するように解釈されてよい。
【0039】
本開示による被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのシステム48の詳細な説明が、
図1、
図2、
図3、および
図5とともに説明される。そのため、
図1、
図2、
図3、および
図5は、本開示によるシステムのトポロジを総体として図解するものである。このトポロジには、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画において基礎投与のタイミングを最適化するための投薬計画調節デバイス(「投薬計画調節デバイス250」)(
図1、
図2、および
図3)と、データ収集のためのデバイス(「データ収集デバイス200」)と、被験者に関連した1つまたは複数のグルコースセンサ102(
図1および
図5)と、被験者にインスリン薬剤を注射するための1つまたは複数のインスリンペン104(
図1および
図5)とがある。本開示の全体にわたって、データ収集デバイス200および投薬計画調節デバイス250は、単に明瞭さのために個別のデバイスとして参照される。すなわち、データ収集デバイス200の開示された機能および投薬計画調節デバイス250の開示された機能は、
図1に図解されているような個別のデバイスに含有されている。しかしながら、実際には、いくつかの実施形態において、データ収集デバイス200の開示された機能および投薬計画調節デバイス250の開示された機能が単一デバイスに含有されることが認識されよう。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200の開示された機能および/または投薬計画調節デバイス250の開示された機能は、グルコース監視装置102またはインスリンペン104である単一デバイスに含有されている。
【0040】
図1を参照して、投薬計画調節デバイス250は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するものである。これを行うために、投薬計画調節デバイス250と電気通信するデータ収集デバイス200は、被験者に対して継続的に取り付けられた1つまたは複数のグルコースセンサ102に由来するグルコース測定値を受け取る。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200はまた、インスリン薬剤を注射するために被験者によって使用される1つまたは複数のインスリンペン104からインスリン薬剤注射データを受け取る。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200は、グルコースセンサ(複数可)102と被験者によって使用されるインスリンペン104とから、そのようなデータを直接受け取る。たとえば、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200は、このデータを無線周波数信号によってワイヤレスで受け取る。いくつかの実施形態では、そのような信号は802.11(Wi-Fi)、BluetoothまたはZigBeeの規格に従うものである。いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200はそのようなデータを直接受け取り、データを解析し、解析されたデータを投薬計画調節デバイス250へ渡す。いくつかの実施形態では、グルコースセンサ102および/またはインスリンペン104は、RFIDタグを含み、RFID通信を使用してデータ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250と通信する。
図2を参照して、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200はまた、(たとえば着用可能な生理的測定デバイス、データ収集デバイス200の内部の磁力計またはサーモスタットなどの測定デバイスなどから)被験者の生理的測定値232を得るかまたは受け取る。
【0041】
いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250が、被験者の近くにはなく、かつ/またはワイヤレス能力がなく、またはそのようなワイヤレス能力が、グルコースデータ、インスリン薬剤注射データ、および/または生理的測定データを獲得する目的には使用されない。そのような実施形態では、グルコースセンサ102(複数可)からのグルコース測定値をデータ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250に通信するため、1つまたは複数のインスリンペン104からのインスリン薬剤注射データをデータ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250に通信するため、ならびに/あるいは1つまたは複数の生理的測定デバイス(図示せず)からの生理的測定データをデータ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250に通信するために、通信ネットワーク106が使用され得る。
【0042】
ネットワーク106の例は、それだけではないが、ワールドワイドウェブ(WWW)、イントラネットおよび/または携帯電話ネットワークなどのワイヤレスネットワーク、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(LAN)および/または都市内ネットワーク(MAN)、ならびにワイヤレス通信による他のデバイスを含む。ワイヤレス通信によって任意選択で使用される複数の通信規格、プロトコル、および技術のうち任意のものには、それだけではないが、グローバル移動体通信システム(GSM)、拡張データGSM環境(EDGE)、高速ダウンリンクパケット接続(HSDPA)、高速アップリンクパケット接続(HSUPA)、Evolution Data-Only(EV-DO)、HSPA、HSPA+、Dual-Cell HSPA(DC-HSPDA)、ロングタームエボリューション(LTE)、近距離無線通信(NFC)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、Bluetooth、Wireless Fidelity(Wi-Fi)(たとえばIEEE 802.11a、IEEE 802.11ac、IEEE 802.11ax、IEEE 802.11b、IEEE 802.11gおよび/またはIEEE 802.11n)、ボイスオーバインターネットプロトコル(VoIP)、Wi-MAX、eメールのためのプロトコル(たとえばインターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)および/またはポストオフィスプロトコル(POP))、インスタントメッセージング(たとえばExtensible Messaging and Presence Protocol(XMPP)、Session Initiation Protocol for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions(SIMPLE)、Instant Messaging and Presence Service(IMPS))、および/またはShort Message Service(SMS)、あるいは本開示の出願日の時点でまだ開発されない通信プロトコルを含む何らかの他の適切な通信プロトコルが含まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、被験者に単一のグルコースセンサ102が取り付けられており、データ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250はグルコースセンサ102の一部分である。すなわち、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250とグルコースセンサ102とは、単一デバイスである。
【0044】
いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250はインスリンペンの一部分である。すなわち、いくつかの実施形態では、データ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250とインスリンペン104とは、単一デバイスである。
【0045】
もちろん、システム48の他のトポロジが可能である。たとえば、1つまたは複数のグルコースセンサ102および1つまたは複数のインスリンペン104は、通信ネットワーク106に頼るよりも、データ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250に情報をワイヤレスで直接伝送してよい。さらに、データ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250は、携帯電子デバイス、サーバコンピュータを構成してよく、あるいはネットワークにおいて互いに連結されたいくつかのコンピュータを実際に構成してよく、クラウドコンピューティングの状況における仮想マシンでもよい。そのため、
図1に示された例示的トポロジは、単に、当業者に容易に理解されるやり方で本開示の一実施形態の特徴を説明するように働くにすぎない。
【0046】
図2を参照して、一般的な実施形態では、投薬計画調節デバイス250は1つまたは複数のコンピュータを備える。図解のために、
図2では、投薬計画調節デバイス250は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための機能をすべて含む単一コンピュータとして表されている。しかしながら、本開示はそのように限定されることはない。いくつかの実施形態では、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための機能は、任意数のネットワーク化されたコンピュータに及び、かつ/またはいくつかのネットワーク化されたコンピュータの各々に存在し、かつ/または通信ネットワーク106にわたってアクセス可能な遠隔地における1つまたは複数の仮想マシン上でホスティングされる。当業者なら、多様な異なるコンピュータトポロジのうち任意のものがこの用途向けに使用され、そのようなトポロジはすべて本開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0047】
前述のことを念頭に
図2へ転じて、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための例示的な投薬計画調節デバイス250は、(CPUの)1つまたは複数の処理ユニット274と、ネットワークまたは他の通信用インターフェース284と、メモリ192(たとえばランダムアクセスメモリ)と、1つまたは複数のコントローラ288によって任意選択でアクセスされる1つまたは複数の磁気ディスク記憶装置および/または永続性デバイス290と、前述の構成要素を相互接続するための1つまたは複数の通信バス213と、ディスプレイ282および入力280(たとえばキーボード、キーパッド、タッチスクリーン)を含むユーザインターフェース278と、前述の構成要素に電力を供給するための電源276とを備える。いくつかの実施形態では、メモリ192のデータは、キャッシングなど既知の計算技術を使用して不揮発性メモリ290とシームレスに共有される。いくつかの実施形態では、メモリ192および/またはメモリ290は、中央処理装置(複数可)274に対して遠隔に配置された大容量記憶装置を含む。言い換えれば、メモリ192および/またはメモリ290に記憶されたいくつかのデータはコンピュータ上でホスティングされてよく、コンピュータは、実際には投薬計画調節デバイス250の外部にあるが、投薬計画調節デバイス250により、ネットワークインターフェース284を使用して、インターネット、イントラネット、または他の形態のネットワークもしくは電子ケーブル(
図2において要素106として図解されている)を通じて電子的にアクセスされ得るものである。
【0048】
いくつかの実施形態では、被験者向けの基礎有効なインスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための投薬計画調節デバイス250のメモリ192は、
・様々な基本システムサービスを扱うためのプロシージャを含むオペレーティングシステム202と、
・基礎タイミング調節モジュール204と、
・循環期間208と、各回の循環期間について1つまたは複数の基礎注射イベントタイプを実行することにより循環期間において投与されるべき基礎インスリン薬剤の総量210とを備える、被験者向けの有効なインスリン投薬計画206であって、各基礎注射イベントタイプ212が基礎インスリン薬剤の総量のそれぞれの配分214に関連づけられる、有効なインスリン投薬計画206と、
・過去の時間的経過にわたる被験者の複数のグルコース測定値と、複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値218についてそれぞれのグルコース測定値が行われた時刻を表すグルコース測定タイムスタンプ220とを備える、第1のデータセット216と、
・過去の時間的経過にわたる被験者の複数のグルコース測定値を評価するのに使用される停止条件222と、
・第1のデータセットに包含されている過去の時間的経過において生じた複数の空腹時イベントを備える空腹時イベントのデータセット224であって、そのような空腹時イベント226のそれぞれが過去の時間的経過の範囲内の異なる循環期間の回208に関連したものである、空腹時イベントのデータセット224と、
・1つまたは複数の生理的指標値と、1つまたは複数の生理的指標値におけるそれぞれの生理的指標値230に関する被験者の1つまたは複数の生理的指標値測定232とを備える、任意選択の第2のデータセット228と、
・将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の複数のシミュレーションであって、それぞれのグルコース濃度シミュレーション234が、第1のデータセットおよび第2のデータセットに基づくものであり、基礎インスリン薬剤の総量の、基礎注射イベントタイプの組にわたる異なる配分236に関連づけられ、それによって、将来の時間的経過にわたるグルコース濃度238および関連する血糖リスク指標値240をもたらす、グルコース濃度の複数のシミュレーションと、
・有効なインスリン投薬計画206において明らかにされるような基礎インスリン薬剤の総量の配分236に基づく、任意選択の、将来の時間的経過にわたる参照グルコースシミュレーション242とを記憶する。
【0049】
いくつかの実施形態では、生理的指標値測定値233は被験者の体温である。いくつかの実施形態では、生理的指標値測定値233は被験者の活動の測定値である。いくつかの実施形態では、これらの生理的指標値測定値は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのさらなる入力として役立つ。いくつかの実施形態では、任意選択の加速度計317、任意選択のGPS 319、ならびに/あるいは投薬計画調節デバイス250の磁力計(図示せず)、または1つもしくは複数のグルコース監視装置102および/または1つもしくは複数のインスリンペン104の内部に任意選択で存在するそのような構成要素が、そのような生理的指標値測定値232を獲得するために使用される。
【0050】
いくつかの実施形態では、基礎タイミング調節モジュール204は、任意のブラウザ(電話、タブレット、ラップトップコンピュータ/デスクトップコンピュータ)の内部でアクセス可能である。いくつかの実施形態では、基礎タイミング調節モジュール204は本来のデバイス構造上で動作し、アンドロイドまたはiOSなどのオペレーティングシステム202を機能させる投薬計画調節デバイス250へのダウンロードが可能である。
【0051】
いくつかの実装形態では、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための投薬計画調節デバイス250の上記で識別されたデータ要素またはモジュールのうち1つまたは複数が、以前に説明されたメモリデバイスのうち1つまたは複数に記憶され、前述の機能を遂行するための1組の命令に対応する。上記で識別されたデータ、モジュールまたはプログラム(たとえば命令のセット)は、個別のソフトウェアプログラム、プロシージャまたはモジュールとして実施される必要はなく、したがって、様々な実装形態において、これらのモジュールの様々なサブセットが組み合わされるかまたは再構成されてよい。いくつかの実装形態では、メモリ192および/またはメモリ290は、上記で識別されたモジュールおよびデータ構造のサブセットを任意選択で記憶する。その上、いくつかの実施形態では、メモリ192および/またはメモリ290は、上記で識別されたものでない追加のモジュールおよびデータ構造を記憶する。
【0052】
いくつかの実施形態では、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための投薬計画調節デバイス250は、スマートフォン(たとえばiPHONE)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、または電子デバイスの他の形態(たとえばゲームコンソール)である。いくつかの実施形態では、投薬計画調節デバイス250は可動性ではない。いくつかの実施形態では、投薬計画調節デバイス250は可動性である。
【0053】
図3は、例示の開示による投薬計画調節デバイス250の具体的な実施形態のさらなる説明を提供するものである。
図3に図解された投薬計画調節デバイス250は、(CPUの)1つまたは複数の処理ユニット274と、周辺機器インターフェース370と、メモリコントローラ368と、ネットワークまたは他の通信用インターフェース284と、メモリ192(たとえばランダムアクセスメモリ)と、ディスプレイ282および入力280(たとえばキーボード、キーパッド、タッチスクリーン)を含むユーザインターフェース278と、任意選択の加速度計317と、任意選択のGPS 319と、任意選択の音声回路372と、任意選択のスピーカ360と、任意選択のマイクロフォン362と、投薬計画調節デバイス250に対する接触の強度を検出するための1つまたは複数の任意選択の強度センサ364(たとえば投薬計画調節デバイス250のタッチセンシティブ表示システム282などのタッチセンシティブ面)と、任意選択の入出力(I/O)サブシステム366と、1つまたは複数の任意選択の光センサ373と、前述の構成要素を相互接続するための1つまたは複数の通信バス213と、前述の構成要素に電力を供給するための電源276とを有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、入力280はタッチセンシティブ面などのタッチセンシティブディスプレイである。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース278は1つまたは複数のソフトキーボードの実施形態を含む。ソフトキーボードの実施形態は、表示されるアイコン上の記号の標準構成(QWERTY)および/または非標準構成を含み得る。
【0055】
図3に図解された投薬計画調節デバイス250は、加速度計(複数可)317に加えて、投薬計画調節デバイス250の配置および配向に関する情報(たとえばポートレートまたはランドスケープ)を得るため、および/または被験者による身体運動の量を決定するための、磁力計(図示せず)およびGPS 319(またはGLONASSもしくは他のグローバルナビゲーションシステム)受信器を任意選択で含む。
【0056】
図3に図解された投薬計画調節デバイス250は、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するために使用され得る多機能デバイスの一例でしかなく、投薬計画調節デバイス250は、示されたものよりも多数または少数の構成要素を任意選択で有し、2つ以上の構成要素を任意選択で組み合わせるか、または構成要素の異なる構成もしくは機構を任意選択で有することを理解されたい。
図3に示された様々な構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはその組合せで実施され、1つまたは複数の信号処理集積回路および/または特定用途向け集積回路を含む。
【0057】
図3に図解された投薬計画調節デバイス250のメモリ192は、高速ランダムアクセスメモリを任意選択で含み、1つまたは複数の磁気ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、または他の不揮発性固体メモリデバイスなどの不揮発性メモリも任意選択で含む。CPU(複数可)274など、投薬計画調節デバイス250の他の構成要素によるメモリ192へのアクセスは、メモリコントローラ368によって任意選択で制御される。
【0058】
いくつかの実施形態では、
図3に図解された投薬計画調節デバイス250のメモリ192は、過去の時間的経過にわたる複数のインスリン薬剤記録を備える第3のデータセット302を任意選択で含む。複数の薬剤記録におけるそれぞれのインスリン薬剤記録304が、(i)1つまたは複数のインスリンペンにおけるそれぞれのインスリンペン104を使用して被験者に注射されたインスリン薬剤の量308を含む、それぞれのインスリン薬剤注射イベント306と、(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したときそれぞれのインスリンペン104によって自動的に発生された対応するインスリンイベントの電子的タイムスタンプ310と、(iii)(a)基礎インスリン薬剤および(b)ボーラスインスリン薬剤のうちの1つから被験者に注射されたそれぞれのタイプのインスリン薬剤312とを備える。
【0059】
いくつかの実施形態では、
図3に図解された投薬計画調節デバイス250のメモリ192は、過去の時間的経過にわたる複数の食事記録を備える食事記録のデータセット314を任意選択で含む。複数の食事記録におけるそれぞれの食事記録316が、(i)炭水化物摂取イベント318(たとえば朝食、昼食、または夕食のような食事)、および(ii)それぞれの炭水化物摂取イベントが生じた時刻を指示する対応する炭水化物タイムスタンプ320を備える。
【0060】
いくつかの実施形態では、
図3に図解された投薬計画調節デバイス250のメモリ192は、過去の時間的経過にわたる被験者の身体運動を備える第4のデータセット322を任意選択で含む。
【0061】
周辺機器インターフェース370は、CPU(複数可)274およびメモリ192に対してデバイスの入力周辺機器および出力周辺機器を結合するために使用され得る。1つまたは複数のプロセッサ274は、投薬計画調節デバイス250の各種機能を遂行し、かつデータを処理するために、基礎タイミング調節モジュール204など、メモリ192に記憶された様々なソフトウェアプログラムおよび/または命令のセットを機能させるかまたは実行する。
【0062】
いくつかの実施形態では、周辺機器インターフェース370、CPU(複数可)274およびメモリコントローラ368は、任意選択で単一チップ上に実施される。他のいくつかの実施形態では、これらは個別のチップ上に実施される。
【0063】
ネットワークインターフェース284のRF(無線周波数)回路は、電磁気信号とも称されるRF信号を送受信する。いくつかの実施形態では、有効なインスリン投薬計画206、第1のデータセット218、空腹時イベントのデータセット224、第2のデータセット228、第3のデータセット302、食事記録のデータセット314、および/または第4のデータセット310が、このRF回路を使用して、被験者に関連したグルコースセンサ102、被験者に関連したインスリンペン104、および/またはデータ収集デバイス200などの1つまたは複数のデバイスから受け取られる。いくつかの実施形態では、RF回路108は、電気信号と電磁気信号の間の変換を行い、電磁気信号によって、通信ネットワークおよび他の通信デバイス、グルコースセンサ102、インスリンペン104および/またはデータ収集デバイス200と通信する。RF回路284が任意選択で含む、これらの機能を遂行するための周知の回路は、それだけではないが、アンテナシステム、RFトランシーバ、1つまたは複数の増幅器、同調器、1つまたは複数の発振器、デジタル信号プロセッサ、CODECチップセット、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリなどを含む。RF回路284は、通信ネットワーク106と任意選択で通信する。いくつかの実施形態では、回路284はRF回路を含まず、実際には1つまたは複数の配線(たとえば光ケーブル、同軸ケーブルなど)によってネットワーク106に接続されている。
【0064】
いくつかの実施形態では、音声回路372、任意選択のスピーカ360、および任意選択のマイクロフォン362が、被験者とタイミング調節デバイス250の間の音声インターフェースをもたらす。音声回路372は、周辺機器インターフェース370から音声データを受け取って電気信号に変換し、電気信号をスピーカ360へ伝送する。スピーカ360は、電気信号を人間にとって可聴の音波に変換する。音声回路372は、マイクロフォン362によって音波から変換された電気信号も受け取る。音声回路372は、電気信号を音声データに変換し、音声データを処理するために周辺機器インターフェース370へ伝送する。音声データは、周辺機器インターフェース370により、任意選択で、メモリ192および/またはRF回路284から取り出され、かつ/またはメモリ192および/またはRF回路284へ伝送される。
【0065】
いくつかの実施形態では、電源276は、電源管理システム、1つまたは複数の電源(たとえばバッテリー、交流(AC))、充電システム、停電検出回路、電力コンバータまたはインバータ、電力状態表示器(たとえば発光ダイオード(LED))、ならびに携帯デバイスの電力の発生、管理および分配に関連した何らかの他の構成要素を任意選択で含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、投薬計画調節デバイス250は、1つまたは複数の光センサ373も任意選択で含む。光センサ(複数可)373は、電荷結合デバイス(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)光トランジスタを任意選択で含む。光センサ(複数可)373は、環境から、1つまたは複数のレンズによって投影された光を受け取って、画像を表すデータに変換する。光センサ(複数可)373は、静止画および/または映像を任意選択で取り込む。いくつかの実施形態では、光センサは、投薬計画調節デバイス250の後部にあって、投薬計画調節デバイス250の正面のディスプレイ282の反対側にあり、その結果、入力280は、静止画および/または動画像の獲得のためのビューファインダとして使用され得る。いくつかの実施形態では、投薬計画調節デバイス250の正面に別の光センサ373があって、(たとえば被験者の健康状態または体調を検証するため、被験者の身体活動レベルを決定するため、被験者の体調を遠隔で診断するのを支援するため、あるいは被験者の目に見える生理的測定値312を獲得するためなどの)被験者の画像が得られる。
【0067】
図3に図解されているように、投薬計画調節デバイス250は、好ましくは様々な基本システムサービスを扱うためのプロシージャを含むオペレーティングシステム202を備える。オペレーティングシステム202(たとえば、iOS、DARWIN、RTXC、LINUX、UNIX、OS X、WINDOWS、またはVxWorksなどの組込み型オペレーティングシステム)は、全体的なシステムタスクの制御および管理(たとえばメモリ管理、記憶装置制御、パワーマネジメントなど)のための様々なソフトウェアコンポーネントおよび/またはドライバを含み、様々なハードウェアとソフトウェアコンポーネントの間の通信を容易にする。
【0068】
いくつかの実施形態では、投薬計画調節デバイス250はスマートフォンである。他の実施形態では、投薬計画調節デバイス250はスマートフォンではなく、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、緊急車両コンピュータまたは他の形態の有線もしくはワイヤレスのネットワーク化されたデバイスである。いくつかの実施形態では、投薬計画調節デバイス250は、
図2または
図3に表された投薬計画調節デバイス250にある回路、ハードウェア構成要素、およびソフトウェアコンポーネントのうちのいずれかまたはすべてを有する。簡潔さおよび明瞭さのために、タイミング調節デバイス250にインストールされている追加のソフトウェアモジュールをより強調するように、投薬計画調節デバイス250の少数の可能な構成要素のみが示されている。
【0069】
図1に開示されたシステム48はスタンドアロンで正常に機能することができるが、いくつかの実施形態では、何らかのやり方で情報を交換するように電子カルテとリンクすることもできる。
【0070】
被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するためのシステム48の詳細が開示されたので、本開示の一実施形態によるプロセスの流れ図およびシステムの特徴に関する詳細が、
図4A~
図4Eを参照しながら開示される。いくつかの実施形態では、そのようなプロセスおよびシステムの特徴は、
図2および
図3に図解された基礎タイミング調節モジュール204によって実行される。
【0071】
ブロック402。
図4Aのブロック402を参照して、1型真性糖尿病または2型真性糖尿病のどちらかを伴う被験者におけるインスリン療法の目的は、空腹時および食後の血漿グルコースを通常の生理的インスリン分泌にできる限り一致させるように制御することである。
図2に図解されているように、投薬計画調節デバイス250は1つまたは複数のプロセッサ274およびメモリ192/メモリ290を備える。メモリが記憶する命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための方法を遂行する。
【0072】
ブロック404~406。
図4Aのブロック404を参照して、この方法では、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画206が得られる。被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画206は、循環期間208における基礎インスリン薬剤の総量210を備える。循環期間208の一例は1日であり、そのような例では、基礎インスリン薬剤の総量210は、被験者が毎日取り入れるべき基礎インスリン薬剤210の量である。本開示は、1日の循環期間に限定されず、より長い循環期間またはより短い循環期間は本開示の範囲内である。
【0073】
有効な基礎インスリン投薬計画206は、循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプをさらに含有している。
図4Aのブロック406を参照して、基礎注射イベントタイプの例には、朝、インスリンペン104を使用して、単一の注射イベントとして注射するべき基礎インスリン薬剤の総量210の部分を表す「朝基礎」と、夜、インスリンペン104を使用して、単一の注射イベントとして注射するべき基礎インスリン薬剤の総量210の部分を表す「夜基礎」とが含まれる。有効な基礎インスリン投薬計画206は、基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプ212の間のそれぞれの配分214をさらに含有する。たとえば、有効な基礎インスリン投薬計画206が「朝基礎」および「夜基礎」の2つの注射イベントタイプから成る例では、それぞれの配分214は、基礎インスリン薬剤の総量210のうち「朝基礎」として投与されるべきものの割合(たとえば40パーセント、50パーセント、60パーセント)と、基礎インスリン薬剤の総量210のうち「夜基礎」として投与されるべきものの割合(たとえば40パーセント、50パーセント、60パーセント)とを示し、それぞれの配分を合計すると、循環期間における基礎インスリン薬剤の総量210になる。したがって、有効な基礎インスリン投薬計画206が「朝基礎」および「夜基礎」の2つの注射イベントタイプから成る例では、「朝基礎」と「夜基礎」のそれぞれの配分を合計すると、循環期間における基礎インスリン薬剤210の100パーセントになる。
【0074】
いくつかの実施形態では、基礎インスリン薬剤投薬計画206によって指定される基礎インスリン薬剤は、12~24時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤または12~24時間の作用持続時間を総体として有するインスリン薬剤の混合物から成る。そのような基礎インスリン薬剤の例は、それだけではないが、Insulin Degludec(NOVO NORDISKによって商標名Tresibaとして開発されたもの)、NPH(Schmid、2007年、「New options in insulin therapy」、J Pediatria(Rio J)。83(Suppl 5):S146~S155)、Glargine(LANTUS、2007年3月2日)、Insulin Glargine[rDNA起源]注射(Dunnら、2003年、「An Updated Review of its Use in the Management of Diabetes Mellitus」、Drugs 63:1743頁)および、Determir(Plankら、2005年、「A double-blind, randomized, dose-response study investigating the pharmacodynamic and pharmacokinetic properties of the long-acting insulin analog detemir」、Diabetes Care 28:1107~1112)を含む。
【0075】
ブロック408~410。
図4Aのブロック408を参照して、この方法では第1のデータセット216が得られる。過去の時間的経過は、第1の複数回の循環期間を備える。いくつかの実施形態では、循環期間は1日であり、過去の時間的経過は複数の日(たとえば2日、3日、4日、または5日以上)を備える。第1のデータセット216は、過去の時間的経過にわたって取得された被験者の複数のグルコース測定値を備える。一般的な実施形態では、グルコース測定値は1つまたは複数のグルコースセンサ102からのものである。
図2は、それぞれのそのようなグルコース測定値218が、それぞれの測定が行われた時刻を表すように、グルコース測定タイムスタンプ220を付与されることを図解している。したがって、いくつかの実施形態では、グルコース測定は人間の介入なしで測定される。すなわち、被験者がグルコース測定を手動で行うことはない。本開示の代替実施形態では、被験者または医療関係者はグルコース測定を手動で行い、そのような手動のグルコース測定は、第1のデータセット216におけるグルコース測定値218として使用される。
【0076】
第1のデータセット216において自律性のグルコース測定が使用される実施形態では、ABBOTT社のFREESTYLE LIBRE CGM(「LIBRE」)などのデバイスは、被験者の複数の自律性のグルコース測定を行うためのグルコースセンサ102として役立ち得る。LIBREは、皮膚表面のコインサイズのセンサと互いに接近したときには近距離無線通信によって較正なしのグルコース測定を可能にするものであり、このセンサは、リーダデバイス(たとえばデータ収集デバイス200および/または投薬計画調節デバイス250)にデータを8時間まで送ることができる。LIBREは、すべての日々の生命活動において14日間着用され得る。
図4Aのブロック410を参照して、いくつかの実施形態では、グルコース測定値218は、5分以下、3分以下、または1分以下の間隔で、被験者から自律的に取得される。いくつかの実施形態では、グルコース測定値218は、5分以下、3分以下、または1分以下の間隔で、1日以上、2日以上、1週間以上、または2週間以上の時間期間にわたって、被験者から取得される。いくつかの実施形態では、グルコース測定値218は自律的に(たとえば人間の努力や人間の介入なしで)取得される。いくつかの実施形態では、投薬計画調節デバイス250はワイヤレス受信器をさらに備え、第1のデータセット216は、被験者に付けたグルコースセンサ102から(たとえば802.11、Bluetooth、またはZigBee規格に従って)ワイヤレスで得られる。
【0077】
図4Aのブロック412を参照して、いくつかの実施形態では、過去の時間的経過は、直前の1週間、直前の2週間、または直前の1か月である。さらに、
図4A~
図4Eに開示された方法は、時間が経つと再発する方式で繰り返される。またさらに、基礎インスリン薬剤は、12~24時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤または12~24時間の作用持続時間を総体として有するインスリン薬剤の混合物から成る。
【0078】
ブロック414~416。
図4Bのブロック414を参照して、この方法は、停止条件222を使用して、過去の時間的経過にわたる第1のデータセット216の複数のグルコース測定値の評価を継続する。この評価の目的は、基礎インスリン薬剤の総量の、注射イベントタイプの間の相対的な配分が最善であることを確認することである。
図7に図解された例では、個々の被験者のインスリン-グルコースダイナミクス(動的関係)を記述するモデルのパラメータを識別するために、第1のデータセット218のグルコース測定値、ならびに任意選択のインスリンペンおよび食事データが使用される。識別されたパラメータを有するモデルにより、異なる基礎インスリン薬剤注射イベントの配分シナリオのシミュレーションが可能になり、そこで基礎注射の異なるタイミングがシミュレートされ、結果が血糖の成果に関して比較される。この実践は、過去の時間的経過にわたる第1のデータセット216の複数のグルコース測定値の停止条件222を使用した評価を構成する。いくつかの実施形態では、この評価には、基礎分割シナリオ(たとえば、モデル化に使用される基礎注射イベントタイプが、より多数の注射イベントタイプを含むように拡張される)、および基礎非分割シナリオ(たとえば、モデル化に使用される基礎注射イベントタイプが、より少数の注射イベントタイプを含むように圧縮される)が含まれる。またさらに、基礎インスリン薬剤の総量の、異なる基礎注射イベントタイプにわたる配分は、モデル化を使用して最適に決定することもできる。
図7では、4つの異なる配分シナリオ(1:100パーセントの夜基礎注射イベント、2:100パーセントの朝基礎注射イベント、3:50パーセントの夜基礎注射イベントと50パーセントの朝基礎注射イベント、および4:30パーセントの夜基礎注射イベントと70パーセントの朝基礎注射イベント)が、停止条件を使用して評価されている。これらの配分シナリオの各々が、停止条件に関して、将来の時間的経過にわたって評価される。たとえば、配分シナリオの各々が、被験者の血糖リスクの予測が現行の有効なインスリン投薬計画206に見られる配分214のものよりも優れているかどうか決定するために評価される。優れていれば停止条件が満たされたと見なされ、基礎インスリン薬剤の総量210の配分が、被験者を血糖リスクからよりよく保護する配分シナリオに従って、有効なインスリン投薬計画206における基礎注射イベントタイプ212にわたって再配分される。
【0079】
図4Bのブロック416を参照して、いくつかの実施形態では、第1のデータセットは、被験者が有効なインスリン投薬計画に忠実な期間のみからのグルコース測定値218が使用されるようにフィルタリングされる。そのような実施形態では、被験者が有効なインスリン投薬計画206に忠実でない期間中に取得されたグルコース測定値は使用されない。たとえば、いくつかの実施形態では、被験者は、有効なインスリン投薬計画206によって指定された配分214に従うことなく基礎インスリン薬剤の総量210を取得しているとき、有効なインスリン投薬計画に忠実でないと見なされる。たとえば、有効なインスリン投薬計画206が、「朝基礎」注射イベントタイプではインスリンペンを用いて基礎インスリン薬剤の総量210の50パーセントを注射し、「夜基礎」注射イベントタイプでは基礎インスリン薬剤の総量210の残り50パーセントを注射するように指定しているにもかかわらず、被験者が、朝、基礎インスリン薬剤の総量210の80パーセントを取得すると、被験者は、その日の有効なインスリン投薬計画206に忠実でないと見なされ、その日取得されたすべてのグルコース測定値218は使用されない。
【0080】
したがって、
図4Bのブロック416によれば、有効な投薬計画の遵守を決定するために、基礎インスリン投薬計画を適用するように被験者によって使用されるインスリンペン104から第3のデータセット302が得られる。第3のデータセットはインスリン薬剤記録を備える。複数の薬剤記録におけるそれぞれの記録304が、(i)被験者に注射された基礎インスリン薬剤の量308を含むインスリン薬剤注射イベント306、および(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したときインスリンペンによって自動的に発生された対応するインスリンイベントの電子的タイムスタンプ310を備える。第3のデータセットおよび有効な基礎インスリン投薬計画は、次いで、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画に準拠しない、過去の時間的経過における1つまたは複数の循環期間を決定するために使用される。これらの日に取得されたグルコース測定値は停止条件の評価から除外される。
【0081】
ブロック418~436。
図4B~
図4Eのブロック418~436は、開示された方法が、停止条件222を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することと、停止条件が満たされたと見なされるときのアクションとの両方をどのように進めるかに関して本開示によるいくつかの異なる実施形態を提供する。詳細には、ブロック418を参照して、停止条件が満たされたとき、有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分の変更を備える調節が推奨される。
【0082】
推奨される調節の一例は、
図7に関連して上記に提示されている。
図7では、4つの異なる配分シナリオ(1:100パーセントの夜基礎注射イベント、2:100パーセントの朝基礎注射イベント、3:50パーセントの夜基礎注射イベントと50パーセントの朝基礎注射イベント、および4:30パーセントの夜基礎注射イベントと70パーセントの朝基礎注射イベント)が、停止条件を使用して評価されている。これらの配分シナリオの各々が、停止条件に関して、将来の時間的経過にわたって評価される。たとえば、配分シナリオの各々が、被験者の血糖リスクの予測が現行の有効なインスリン投薬計画206に見られる配分214のものよりも優れているかどうか決定するために評価される。優れていれば停止条件が満たされたと見なされ、基礎インスリン薬剤の総量210の配分が、被験者を血糖リスクからよりよく保護する配分シナリオに従って、有効なインスリン投薬計画206における基礎注射イベントタイプ212にわたって再配分される。
【0083】
ブロック420は、有効なインスリン投薬計画206に対して推奨される調節を決定することの、別のそのような例を提供するものである。この実施形態では、有効な基礎インスリン投薬計画206は、循環期間208における単一の基礎注射イベントタイプ212を指定する。一例では、基礎インスリン薬剤の総量210の100パーセントが、インスリンペンを用いて単一の「朝基礎」注射イベントとして投与されることになる。この実施形態では、停止条件222を使用して過去の時間的経過にわたるグルコース測定値を評価することは、過去の時間的経過における空腹時イベントを得ることを備える。各空腹時イベント226が、複数回の循環期間における異なる回の循環期間に関連づけられる。たとえば、循環期間が1日である場合には、各空腹時イベント226が、複数の日の過去の時間的経過における異なる日に関連づけられる。すなわち、循環期間が1日であれば、循環期間の「異なる回」の一例は5月5日火曜日などの特定の日になるであろう。1つまたは複数の空腹時イベントにおけるそれぞれの空腹時イベント226について、(i)それぞれの空腹時イベントの開始に先立つ(たとえば2時間前、4時間前、6時間前、8時間前、10時間前、12時間前など)の第1の所定の時間である第1の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の1つまたは複数の第1のグルコース測定値(たとえば単一のグルコース測定値、2つ以上のグルコース測定値の中心傾向度)と、(ii)それぞれの空腹時イベントの間または後(たとえば30分後、1時間後、2時間後、3時間後など)の所定の時点にある第2の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の1つまたは複数の第2のグルコース測定値(たとえば単一のグルコース測定値、2つ以上のグルコース測定値の中心傾向度)とが比較され、それによって1つまたは複数の比較が得られる。そのような比較は、被験者が1日につき1回インスリンの用量を取り込み、グルコース測定値が就寝前は高いが朝食前は低い場合、またはその逆の場合は、基礎を分割するべきであることを指示するということを前提とする。
【0084】
図6のパネルAに図解されている、循環期間にわたる被験者の血中グルコース濃度では、グルコースレベルに対する食事イベントおよび関連する短期間のインスリン薬剤(ボーラス)注射イベントからの寄与が差し引かれている。さらに、パネルAでは、被験者は、基礎インスリン薬剤の総量210の100パーセントを朝基礎ボーラス注射イベント212として取り込んでいる。第1の時間帯におけるグルコース測定値を第2の時間帯におけるグルコース測定値(第1のデータセット216から、グルコース測定タイムスタンプ220を使用して得られる)と比較すると実質的な逸脱があり、第1の時間帯の間のインスリン薬剤が不十分であることを指示する。
図6のパネルBは、別の被験者の循環期間にわたる血中グルコース濃度の図解であり、グルコースレベルに対する食事イベントおよび関連するボーラス注射イベントからの寄与は同様に差し引かれている。さらに、パネルBでは、被験者は、基礎インスリン薬剤の総量210の100パーセントを夜基礎ボーラスとして取り込んでいる。パネルBの被験者に関して、第1の時間帯におけるグルコース測定値を第2の時間帯におけるグルコース測定値と比較すると実質的な逸脱があり、第2の時間帯の間のインスリン薬剤が不十分であることを指示する。したがって、
図6のパネルAとパネルBの両方の状況において、基礎インスリン薬剤は1つの循環期間につき2つの注射イベントに分割されるべきである。
【0085】
したがって、
図6に図解されているように、ブロック420の実施形態における停止条件は、(第1の時間帯の)それぞれの1つまたは複数の第1のグルコース測定値を、対応する(第2の時間帯の)それぞれの1つまたは複数の第2のグルコース測定値と比較して、閾値量を超える(たとえば5パーセント以上、10パーセント以上、15パーセント以上、20パーセント以上、25パーセント以上、30パーセント以上、35パーセント以上、40パーセント以上、45パーセント以上、50パーセント以上、55パーセント以上、60パーセント以上、または65パーセント以上の)逸脱が指示されたとき満たされる。そのような実施形態では、
図6のパネルAおよびパネルBに関して上記で論じたように、推奨される調節は、基礎注射イベントタイプ212の数を2つ(たとえば「朝基礎」および「夜基礎」)に増加する、および、基礎インスリン薬剤の総量210を2つの基礎注射イベントタイプの間で配分することである。
【0086】
ブロック420で説明されたものなどの実施形態は、過去の時間的経過の間の空腹時イベントの識別に頼るものである。
図4Cのブロック422は、本開示による、そのような空腹時イベントが識別されるやり方の1つを提供する。ブロック422によれば、第1の空腹時イベント226は、第1のデータセット216における複数のグルコース測定値に包含された第1のデータセットによって表される過去の時間的経過における第1の複数の循環期間における第1の循環期間(たとえば24時間の期間)において、最初に、複数のグルコース測定値にわたる分散の移動期間
を、次式を使用して計算することにより識別され、
この式で、G
iは複数のグルコース測定値の部分kにおけるi番目のグルコース測定値であり、Mは複数のグルコース測定値におけるグルコース測定値の数であって過去の時間的経過を表し、
は第1のデータセット216の複数のグルコース測定値から選択されたグルコース測定値の平均値であり、kは第1の循環時間期間の範囲内にある。例として、グルコース測定値は5分ごとに取得されて数日または数週間に及び得る。この全体の時間スパンの範囲内の第1の時間期間k(たとえば1日)が選択され、したがって、複数の測定の部分kが、最小の分散の期間を求めて調査される。第1の空腹時期間が、第1の時間期間の範囲内で最小の分散の期間
と見なされる。次に、このプロセスは、最小の分散の別の期間を求めて複数のグルコース測定値の次の部分kを調査することにより、複数のグルコース測定値の部分kに対して繰り返され、それによって別の空腹時期間を割り当てる。
【0087】
その上に、いくつかの実施形態では、有効なインスリン投薬計画206に忠実であると見なされる空腹時イベントのみが使用される。以下の例1は、空腹時イベント226が有効なインスリン投薬計画206に忠実であるかどうかを決定するやり方を例証するものである。その上に、参照によってここで組み込まれる、2016年6月30日出願の「Regimen Adherence Measure for Insulin Treatment Base on Glucose Measurement and Insulin Pen Data」という名称の欧州特許出願第EP16177080.5号は、空腹時イベントを基礎インスリン薬剤投与計画に忠実なものまたは忠実でないものと識別して分類する技術を開示している。いくつかの実施形態では、有効な基礎インスリン投薬計画において基礎投与のタイミングを最適化するために使用されるのは、欧州特許出願第EP16177080.5号に従って「基礎投薬計画に忠実なもの」と分類される空腹時イベントのみである。
【0088】
図4Cのブロック424は、本開示による、空腹時イベント224が識別される別のやり方を提供する。ブロック424によれば、1つまたは複数の空腹時イベントを得ることは、被験者から1つまたは複数の空腹時イベントにおける各空腹時イベントの指示を受け取ることを備える。言い換えれば、いくつかの実施形態では、空腹時イベントのうち1つまたは複数を識別することは、被験者から、1つまたは複数の空腹時イベントにおける各空腹時イベント226の指示をフィードフォワードイベントの形態で受け取ることを備える。それぞれのフィードフォワードイベントは、被験者が、空腹であるか空腹になるところであると指示した場合を表す。たとえば、ユーザは、基礎タイミング調節モジュール204によって提供されるグラフィカルユーザインターフェースを通じて、(たとえば5時間を超えて、6時間を超えて、7時間を超えて、8時間を超えて、9時間を超えて、または10時間を超えて、食事を取っていないなどの)空腹時を指示してよい。
【0089】
図4Cのブロック426は、本開示による、空腹時イベント224が識別されるさらに別のやり方を提供する。ブロック426によれば、1つまたは複数の空腹時イベントを得ることは、被験者が着用しているウェアラブルデバイス(たとえばウェアラブル生理的測定デバイス、磁力計またはサーモスタットなどのデータ収集デバイス200の内部の測定デバイスなど)から第2のデータセット228を受け取ることを備え、第2のデータセットは、1つまたは複数の空腹時イベントの指示である過去の時間的経過の間の被験者の生理的指標値230を指示する。いくつかの実施形態では、生理的指標値測定値230は被験者の体温である。いくつかの実施形態では、生理的指標値測定値230は被験者の活動の測定値である。いくつかの実施形態では、任意選択の加速度計317、任意選択のGPS 319、ならびに/あるいは投薬計画調節デバイス250の磁力計(図示せず)、または1つもしくは複数のグルコース監視装置102および/または1つもしくは複数のインスリンペン104の内部に任意選択で存在するそのような構成要素が、そのような生理的指標値測定値232を獲得するために使用される。いくつかの実施形態では、ブロック422および/またはブロック426において開示されたものなどの自律性の空腹時検出アルゴリズムとブロック424において開示された手動の(ユーザによって指示される)空腹時検出の両方が、空腹時イベントを検出するために使用される。たとえば、いくつかの実施形態では、(たとえばブロック422のアルゴリズムを使用して)自律的に検出された空腹時イベント226は、次いで、ブロック424および/またはブロック426のフィードフォワードイベントを使用して検証される。例証のために、ブロック422に開示されたものなどのアルゴリズムを使用して自律的に検出された空腹時イベント226が、被験者が空腹であることを指示したフィードフォワードイベントおよび/または被験者が空腹であることを指示した生理的指標値230に対して時間が一致したとき(時間的に一致したとき)、空腹時イベント226は検証されたと見なされ、本開示のさらなるステップにおいて使用される。いくつかの実施形態では、空腹時イベント226はこのように検証されなければならず、インスリン投薬計画206に忠実であると見なされる(たとえば以下の例1で開示されるように有効なインスリン投薬計画206に忠実であると見なされる)ことも必要である。
【0090】
図4Cのブロック428を参照して、いくつかの実施形態では、有効なインスリン投薬計画206によって指定される循環期間における可能な基礎注射イベントタイプ212の組は、「朝基礎」および「夜基礎」から成る。いくつかのそのような実施形態では、有効なインスリン投薬計画206は、循環期間における単一の基礎注射イベントタイプ(「朝基礎」注射イベントタイプ)を指定し、ブロック418の推奨される調節は、(たとえば
図6のパネルAのシナリオに応答して)有効なインスリン投薬計画に「夜基礎」の基礎注射イベントタイプを追加して、基礎インスリン薬剤の総量210を「夜基礎」の基礎注射イベントタイプと「朝基礎」の基礎注射イベントタイプの間で配分することである。
【0091】
図4Dのブロック430を参照して、いくつかの実施形態では、この方法は、有効な基礎インスリン投薬計画を適用するために被験者が使用するインスリンペンからデータセット302を得ることをさらに備える。データセット302は、過去の時間的経過にわたる複数のインスリン薬剤記録を備える。複数の薬剤記録における各インスリン薬剤記録304が、(i)インスリンペンを使用する、被験者への基礎インスリン薬剤のインスリン薬剤注射を表す、それぞれのインスリン薬剤注射イベント306と、(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したときインスリンペンによって自動的に発生された対応するインスリンイベントの電子的タイムスタンプ310とを備える。第1のデータセット216およびデータセット302は、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることによって将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の複数のシミュレーションを計算するために使用される。
図7はそのようなシミュレーションを図解するものである。
図7に図解されているように、複数のシミュレーションにおけるそれぞれのグルコース濃度シミュレーション234は、基礎インスリン薬剤の総量の、基礎注射イベントタイプの組にわたる異なる配分236に関連づけられる。たとえば、
・朝、100%取り込まれる
・夜、100%取り込まれる
・朝/夜が80%/20%である
・朝/夜が70%/30%である
・朝/夜が60%/40%である
・朝/夜が50%/50%である
・朝/夜が40%/60%である
・朝/夜が30%/70%である
・朝/夜が20%/80%である
【0092】
そのような実施形態では、停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することは、各シミュレーションについて、血糖リスク指標値240(たとえば、血中グルコース分散、所望のグルコースターゲット範囲の時間、推定されたHbA1c)を計算することにより、複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーションにおいて、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度238を評価することを備える。すなわち第1のデータセットのグルコース測定値218、任意選択の第3のデータセット302のインスリンペンデータ、および任意選択の食事記録のデータセット(
図3)の食事データが、個別の被験者のインスリン-グルコースダイナミクスを記述するモデルのパラメータ(たとえばインスリン感度係数)を識別するために使用される。識別されたパラメータを伴うモデルによって、基礎インスリン薬剤の総量210の、基礎注射イベントタイプの組にわたる配分シナリオのシミュレーションが可能になり、基礎注射の異なるタイミングがシミュレートされて、結果が血糖成果に関して比較される。停止条件は、複数のシミュレーションにおける第1のシミュレーションが、(i)基礎インスリン薬剤の総量の、有効な基礎インスリン投薬計画206において指定された基礎注射イベントタイプの組にわたる配分に基づく、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の参照シミュレーション242、および(ii)第1のデータセットにわたる被験者のグルコース濃度のうち1つと比較して閾値量を超えるだけ、血糖リスク指標値を最小化するとき満たされる。この閾値量は特定用途向けであり、個別の被験者のインスリン-グルコースダイナミクスを記述するモデルのパラメータ、ならびに血糖リスク指標値に依拠するものである。
【0093】
したがって、各循環期間において、基礎インスリン薬剤の総量210の100%の配分が、朝、単一の基礎注射イベント212として取り込まれるべきであると、有効なインスリン投薬計画206が指定する場合を考える。個別の被験者のインスリン-グルコースダイナミクスを使用する、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の参照シミュレーション242は、この100%の配分を伴って取られてよく、この参照シミュレーションについて血糖リスク指標値が評価され得る。また、この個別の被験者の同じインスリン-グルコースダイナミクスを使用する、基礎インスリン薬剤の総量210の朝/夜の配分を50%/50%とした、将来の時間的経過にわたる被験者の各循環期間のグルコース濃度のシミュレーション242と、このシミュレーションに関する血糖リスク指標値とが評価される。基礎インスリン薬剤の総量210の、朝/夜を50%/50%とする配分が、血糖リスク指標値について朝100%の配分よりも優れた値をもたらす場合には停止条件が満たされ、推奨される調節は、基礎インスリン薬剤の総量210の配分を、1つの循環期間につき朝100%の配分から、1つの循環期間につき朝/夜を50%/50%とする配分へと変更することを備える。
【0094】
あるいは、各循環期間において、基礎インスリン薬剤の総量210の100%の配分が、朝、単一の基礎注射イベント212として取り込まれるべきであると、有効なインスリン投薬計画206が指定する場合を再び考える。個別の被験者のインスリン-グルコースダイナミクスを使用する、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の参照シミュレーション242は、この100%の配分では取られない。むしろ、有効なインスリン投薬計画206において100%の配分を課された過去の時間的経過からのグルコース測定値が、血糖リスク指標値を計算するために使用される。また、この個別の被験者について過去の時間的経過の間に獲得されたデータ(たとえばグルコース測定値218など)から導出されたインスリン-グルコースダイナミクスを使用して、基礎インスリン薬剤の総量210の朝/夜の配分を50%/50%とする、将来の時間的経過にわたる被験者の各循環期間のグルコース濃度のシミュレーション242と、このシミュレーションに関する血糖リスク指標値とが評価される。朝/夜を50%/50%とする配分が、血糖リスク指標値について、第1のデータセット216からのグルコース測定値を使用して計算された血糖リスク指標値よりもより優れた値をもたらす場合には停止条件が満たされ、推奨される調節は、基礎インスリン薬剤の総量210の配分を、1つの循環期間につき朝100%の配分から、1つの循環期間につき朝/夜を50%/50%とする配分へと変更することを備える。
【0095】
図4Eのブロック432を参照して、第1の閾値および第2の閾値の例を例証のために
図7を使用すると、いくつかの実施形態では、血糖リスク指標値は、(i)それぞれのシミュレーションにわたって観測された合計のグルコースレベルの変動性、(ii)それぞれのシミュレーションにわたって計算された複数の空腹時グルコースレベルの変動性、(iii)それぞれのシミュレーションにわたる合計のグルコースレベルが第1の閾値702を超えるかまたは第2の閾値704未満になる時間の割合、あるいは(iv)それぞれのシミュレーションにわたるHbA1cのレベルが第3の閾値を超えるかまたは第4の閾値未満になる時間の割合を備える。シミュレーション用に計算された血糖リスク指標値が、第1のデータセットにおいてグルコース測定値を使用して計算された血糖リスク指標値と比較される場合では、第1のデータセットの血糖リスク指標値は、第1のデータセットの内部のグルコース測定値レベルを使用して計算される。
【0096】
図4Eのブロック434を参照して、上記で論じられたように、いくつかの実施形態では、この方法は、被験者の過去の時間的経過にわたる複数の食事記録を備える食事記録のデータセット314を得ることをさらに備える。食事記録のデータセットにおけるそれぞれの食事記録316は、(i)炭水化物摂取イベント318、および(ii)炭水化物摂取イベントが生じた時刻の対応する電子的炭水化物タイムスタンプ320を備える。そのような実施形態では、第1のデータセットおよび第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることは、第1のデータセット、第2のデータセット、および食事記録のデータセットを使用して、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを備える。すなわち、個々の被験者のインスリン-グルコースダイナミクスを記述するモデルのパラメータを識別するために、第1のデータセット218のグルコース測定値、ならびにインスリンペンデータおよび食事データが使用される。次いで、識別されたパラメータを伴うモデルを使用して、異なる基礎インスリン薬剤注射イベントの配分シナリオがシミュレートされ、基礎注射の異なるタイミングがシミュレートされて、各シミュレーションについて血糖リスク指標値が計算される。
【0097】
図4Eのブロック436を参照して、いくつかの実施形態では、過去の時間的経過にわたる被験者の身体運動を備える第4のデータセット322が得られる。そのような実施形態では、第1のデータセット216およびデータセット302を使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることは、第1のデータセット216、データセット302、食事記録のデータセット314、および第4のデータセット322を使用して、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを備える。すなわち、個々の被験者のインスリン-グルコースダイナミクスを記述するモデルのパラメータを識別するために、第1のデータセット218のグルコース測定値、ならびにインスリンペンデータ、食事データおよび身体運動データが使用される。次いで、識別されたパラメータを伴うモデルを使用して、異なる基礎インスリン薬剤注射イベントの配分シナリオがシミュレートされ、基礎注射の異なるタイミングがシミュレートされて、各シミュレーションについて血糖リスク指標値が計算される。
【0098】
ブロック438。
図4Eのブロック438を参照して、この方法は、被験者に対して有効な基礎インスリン投薬計画の調節を推奨するように決定されたとき、有効な基礎インスリン投薬計画への推奨される調節を、(i)有効な基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、(ii)投与量調節命令として、被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課された1つまたは複数のインスリンペンにおける各インスリンペン104、または(iii)被験者に関連した医療関係者に通信することによって継続する。
図8は、
図4A~
図4Eにおいて開示された方法の例示的実施形態を図解するものである。
【0099】
例1:空腹時イベントがインスリン投薬計画に忠実であるかどうか決定するためのグルコース測定値の使用。いくつかの実施形態では、複数のグルコース測定値を備える第1のデータセット216が得られる。いくつかの実施形態では、グルコース測定値は、たとえば連続型のグルコース監視装置102によって自律的に得られる。この例では、自律性のグルコース測定に加えて、有効なインスリン投薬計画206を適用するために被験者が使用する1つまたは複数のインスリンペン104から、インスリン投与イベントが、インスリン薬剤注射イベント306の形態で得られる。これらのインスリン薬剤記録304は任意の形式でよく、実際には複数のファイルまたはデータ構造に及び得るものである。そのため、いくつかの実施形態では、この事例の開示は、過去の投与されたインスリン薬剤のタイミングおよび量を記憶することができるという意味で「賢くなった」インスリン投与ペンの最近の進歩を導入するものである。そのようなインスリンペン104の一例にはNovoPen 5がある。そのようなペンは、患者が用量を記録するのを支援し、2重の投薬を防止する。インスリンペンが、インスリン薬剤用量のボリュームおよびタイミングを送受信することができ、したがって連続型のグルコース監視装置102と、インスリンペン104と、本開示のアルゴリズムとの集積化を可能にすることが企図される。そのため、1つまたは複数のインスリンペン104からのそのようなデータのワイヤレス獲得を含む、1つまたは複数のインスリンペン104からのインスリン薬剤記録304が企図される。
【0100】
いくつかの実施形態では、各インスリン薬剤記録304が、(i)1つまたは複数のインスリンペンにおけるそれぞれのインスリンペン104を使用して被験者に注射されたインスリン薬剤の量308を含むそれぞれのインスリン薬剤注射イベント306、および(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベント306が発生したときそれぞれのインスリンペン104によって自動的に発生された対応するインスリンイベントの電子的タイムスタンプ310を備える。
【0101】
いくつかの実施形態では、空腹時イベント226は、第1のデータセット216における被験者のグルコース測定値218および関連するグルコース測定タイムスタンプ220を使用して識別される。空腹時イベントが一旦識別されると、たとえば上記のブロック422~426のいずれか1つで説明された方法または何らかの他の方法によって、空腹時イベント224に分類が適用される。分類は、「インスリン投薬計画に忠実なもの」および「インスリン投薬計画に忠実でないもの」のうちの1つである。
【0102】
空腹時イベント226の間に獲得された1つまたは複数の薬剤記録304が、有効なインスリン薬剤投薬計画206に対する忠実性を時間的にも量的にも確立するとき、空腹時イベント226はインスリン投薬計画に忠実であると見なされる。空腹時イベント226の間に獲得された1つまたは複数の薬剤記録304に、有効なインスリン投薬計画206に対する忠実性を時間的にも量的にも確立する1つまたは複数の薬剤記録が含まれないとき、空腹時イベント226はインスリン投薬計画に忠実でないと見なされる。いくつかの実施形態では、空腹時イベント226に関連した循環期間に関するインスリン薬剤記録304がないとき、有効なインスリン薬剤投与計画206は、基礎インスリン薬剤の投与量を複数の循環期間におけるそれぞれの循環期間(たとえば1日、12時間の期間)の間に取り込むべきであり、空腹時イベント226はインスリン投薬計画に忠実でないと見なされる、と指定する。様々な実施形態において、複数の循環期間における各循環期間は、2日以下、1日以下、または12時間以下である。したがって、空腹時イベント226を識別するために第1のデータセット216が使用され、有効なインスリン投薬計画206が24時間ごとに基礎インスリン薬剤の投与量Aを取り込むように指定する事例を考える。したがって、この例では循環期間は1日(24時間)である。空腹時イベント226は、タイムスタンプを付与されたグルコース測定値における最小の分散の期間から導出されるため、またはタイムスタンプを付与されたグルコース測定値218の他の形態の解析によって導出されるため、または
図4Cのブロック424およびブロック426において開示されたような他の手段によって導出されるため、生得的にタイムスタンプを付与されている。したがって、グルコース測定タイムスタンプまたはそれぞれの空腹時イベント226によって表される空腹時の期間(空腹時イベント時間期間228)が、空腹時イベントがインスリン投薬計画に忠実であるかどうか調査するための開始ポイントとして使用される。たとえば、それぞれのタイムスタンプに関連した空腹時の期間に5月17日火曜日の午前6時が含まれている場合、インスリン薬剤記録304において探すものは、被験者が5月17日火曜日の午前6時までの24時間の期間(循環期間)に基礎インスリン薬剤の(処方された投与量より多くも少なくもない)投与量Aを取得したという証拠である。被験者が、この循環期間中に、循環期間における基礎注射イベントタイプ212にわたるそれぞれの配分214に従って基礎インスリン薬剤の処方された投与量を取り入れた場合、空腹時イベントはインスリン投薬計画に忠実であると見なされる。被験者がこの循環期間中に基礎インスリン薬剤の用量を取り入れなかった場合、(または有効なインスリン投薬計画206によって指定された基礎インスリン薬剤の用量を超えるものをこの期間中に取り入れた場合、または循環期間における基礎注射イベントタイプ212にわたるそれぞれの配分214に忠実でなかった場合)空腹時イベント224はインスリン投薬計画に忠実でないと見なされる。
【0103】
実施形態のリスト
実施形態1
1つまたは複数のプロセッサ(274)、メモリ(192/290)を備える、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画(206)における基礎投与のタイミングを最適化するためのデバイス(250)であって、メモリに記憶されている命令が1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき、
(i)循環期間(208)における基礎インスリン薬剤の総量(210)と、(ii)循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプ(212)の間のそれぞれの配分(214)とを指定する、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画を得ることと、
第1の複数回の循環期間を備える過去の時間的経過にわたる被験者の複数のグルコース測定値と、複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値(218)について、それぞれの測定が行われた時刻を表すグルコース測定タイムスタンプ(220)とを備える第1のデータセット(216)を得ることと、
停止条件(222)を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することとの方法が遂行され、この方法は、停止条件が満たされたとき、
有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分の変更を備える、推奨される調節を決定することと、
推奨される調節を、(i)有効な基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、(ii)被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または(iii)被験者に関連した医療関係者に通信することとをさらに備える、デバイス(250)。
【0104】
実施形態2
有効な基礎インスリン投薬計画が、循環期間における単一の基礎注射イベントタイプを指定し、
停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することが、
過去の時間的経過における1つまたは複数の空腹時イベントを得ることであって、各空腹時イベント(226)が、第1の複数回の循環期間における異なる回の循環期間に関連づけられる、1つまたは複数の空腹時イベントを得ることと、
1つまたは複数の空腹時イベントにおけるそれぞれの空腹時イベントについて、(i)それぞれの空腹時イベントの開始に先立つ第1の所定の時間である第1の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の1つまたは複数の第1のグルコース測定値を、(ii)それぞれの空腹時イベントの間または後の所定の時点にある第2の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の1つまたは複数の第2のグルコース測定値と比較することにより、1つまたは複数の比較を得ることとを備え、
1つまたは複数の比較によって、それぞれの1つまたは複数の第1のグルコース測定値が、対応するそれぞれの1つまたは複数の第2のグルコース測定値から、閾値量を超えて逸脱していると指示されたとき停止条件が満たされ、
推奨される調節が、基礎注射イベントタイプの数を2つの基礎注射イベントタイプに増加して、基礎インスリン薬剤の総量を2つの基礎注射イベントタイプの間で配分することである、実施形態1に記載のデバイス。
【0105】
実施形態3
有効な基礎インスリン投薬計画が、循環期間における単一の基礎注射イベントタイプを指定し、
停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することが、
過去の時間的経過における複数の空腹時イベントを得ることであって、各空腹時イベント(226)が、第1の複数回の循環期間における異なる回の循環期間に関連づけられる、複数の空腹時イベントを得ることと、
複数の空腹時イベントにおけるそれぞれの空腹時イベントについて、
(i)それぞれの空腹の開始に先立つ第1の所定の時間である第1の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の第1のグルコース測定値、および(ii)それぞれの空腹時イベントの間または後の所定の時点にある第2の時間帯において生じる第1のデータセットにおける被験者の第2のグルコース測定値を得ることと、
複数の空腹時イベントにおける各空腹時イベントの第1のグルコース測定値の第1の中心傾向度、および複数の空腹時イベントにおける各空腹の第2のグルコース測定値の第2の中心傾向度を得ることと、
第1の中心傾向度を第2の中心傾向度と比較することによって比較を得ることとを備え、
比較が、それぞれの第1の中心傾向度が第2の中心傾向から閾値量を超えて逸脱することを指示するとき停止条件が満たされ、
推奨される調節が、基礎注射イベントタイプの数を2つの基礎注射イベントタイプに増加して、基礎インスリン薬剤の総量を2つの基礎注射イベントタイプの間で配分することである、実施形態1に記載のデバイス。
【0106】
実施形態4
1つまたは複数の空腹時イベントを得ることには、複数のグルコース測定値にわたる分散の移動期間
を、次式を使用して計算することにより、第1の複数の循環期間における第1の循環期間における第1の空腹時イベントを識別することであって、
ここにおいて、
G
iは複数のグルコース測定値の部分kにおけるi番目のグルコース測定値であり、
Mは複数のグルコース測定値におけるグルコース測定値の数であって過去の時間的経過を表し、
は複数のグルコース測定値から選択されたグルコース測定値の平均値であり、
kは第1の循環期間の範囲内にある、識別することと、
第1の空腹時イベントを、第1の循環期間の範囲内の最小の分散の領域
に関連づけることとが備わっている、実施形態2または3に記載のデバイス。
【0107】
実施形態5
1つまたは複数の空腹時イベントを得ることが、被験者から1つまたは複数の空腹時イベントにおける各空腹時イベントの指示を受け取ることを備える、実施形態2または3に記載のデバイス。
【0108】
実施形態6
1つまたは複数の空腹時イベントを得ることが、被験者が着用するウェアラブルデバイスから第2のデータセット(228)を受け取ることを備え、
第2のデータセットが、1つまたは複数の空腹時イベントを指示する過去の時間的経過の間の被験者の生理的指標値(230)を指示する、実施形態2または3に記載のデバイス。
【0109】
実施形態7
上記の方法が、
有効な基礎インスリン投薬計画を適用するために被験者によって使用されるインスリンペン(104)から、複数のインスリン薬剤記録を備える第3のデータセット(302)を得ることであって、複数の薬剤記録におけるそれぞれのインスリン薬剤記録(304)が、(i)被験者に注射された基礎インスリン薬剤の量(308)を含むそれぞれのインスリン薬剤注射イベント(306)、および(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したときインスリンペンによって自動的に発生された対応するインスリンイベントの電子的タイムスタンプ(310)を備える、得ることと、
第3のデータセットおよび有効な基礎インスリン投薬計画を使用して、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画に準拠しない、過去の時間的経過における1つまたは複数の循環期間を決定することと、
停止条件の評価から、有効な基礎インスリン投薬計画に準拠しない、過去の時間的経過における1つまたは複数の循環期間におけるグルコース測定値を除外することとをさらに備える、実施形態1から6のいずれか1つに記載のデバイス。
【0110】
実施形態8
循環期間における基礎注射イベントタイプの組が「朝基礎」および「夜基礎」から成り、
有効な基礎インスリン投薬計画が「朝基礎」の循環期間における単一の基礎注射イベントタイプを指定し、
推奨される調節が、有効な基礎インスリン投薬計画に「夜基礎」の基礎注射イベントタイプを追加して、基礎インスリン薬剤の総量を、「夜基礎」の基礎注射イベントタイプと「朝基礎」の基礎注射イベントタイプの間で配分することである、実施形態1に記載のデバイス。
【0111】
実施形態9
上記の方法が、
有効な基礎インスリン投薬計画を適用するために被験者によって使用されるインスリンペンから、過去の時間的経過にわたる複数のインスリン薬剤記録を備える第2のデータセットを得ることであって、複数の薬剤記録における各インスリン薬剤記録が、
(i)インスリンペンを使用して被験者に基礎インスリン薬剤のインスリン薬剤を注射することを表すそれぞれのインスリン薬剤注射イベント、および(ii)それぞれのインスリン薬剤注射イベントが発生したときインスリンペンによって自動的に発生された対応する電子的タイムスタンプを備える、得ることと、
第1のデータセットおよび第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることにより、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の複数のシミュレーションを計算することとをさらに備え、
複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーション(234)が、基礎インスリン薬剤の総量の、基礎注射イベントタイプの組にわたる異なる配分(236)に関連づけられ、
停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することが、各シミュレーションについて血糖リスク指標値(240)を計算することにより、複数のシミュレーションにおけるそれぞれのシミュレーションにおいて将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度(238)を評価することを備え、
停止条件は、複数のシミュレーションにおける第1のシミュレーションが、(i)基礎インスリン薬剤の総量の、有効な基礎インスリン投薬計画において指定された基礎注射イベントタイプの組にわたる配分に基づく、将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度の参照シミュレーション(242)、および(ii)第1のデータセットにわたる被験者のグルコース濃度のうち1つと比較して閾値量を超えることにより、血糖リスク指標値を最小化するとき満たされ、
基礎インスリン薬剤の総量の、第1のシミュレーションにおける基礎注射イベントタイプの組にわたる配分が、有効な基礎インスリン投薬計画のものと異なる、実施形態1に記載のデバイス。
【0112】
実施形態10
血糖リスク指標値が、
(i)それぞれのシミュレーションにわたって観測された合計のグルコースレベルの変動性、
(ii)それぞれのシミュレーションにわたって計算された複数の空腹時グルコースレベルの変動性、
(iii)それぞれのシミュレーションにわたる合計のグルコースレベルが第1の閾値を超えるかまたは第2の閾値未満になる時間の割合、あるいは
(iv)それぞれのシミュレーションにわたるHbA1cのレベルが第3の閾値を超えるかまたは第4の閾値未満になる時間の割合を備える、実施形態9に記載のデバイス。
【0113】
実施形態11
上記の方法が、
被験者に関する過去の時間的経過にわたる複数の食事記録を備える食事記録のデータセット(314)を得ることであって、食事記録のデータセットにおけるそれぞれの食事記録(316)が、(i)炭水化物摂取イベント(318)、および(ii)炭水化物摂取イベントが生じた時刻の対応する電子的炭水化物タイムスタンプ(320)を備える、得ることをさらに備え、
第1のデータセットおよび第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることが、第1のデータセット、第2のデータセット、および食事記録のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを備える、実施形態9または10に記載のデバイス。
【0114】
実施形態12
上記の方法が、
過去の時間的経過にわたる被験者の身体運動を備える第4のデータセット(322)を得ることをさらに備え、
第1のデータセットおよび第2のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることが、第1のデータセット、第2のデータセット、第3のデータセット、および第4のデータセットを使用して将来の時間的経過にわたる被験者のグルコース濃度を複数回シミュレートすることを備える、実施形態11に記載のデバイス。
【0115】
実施形態13
循環期間における基礎注射イベントタイプの組が「朝基礎」および「夜基礎」から成り、循環期間が1日である、実施形態1に記載のデバイス。
【0116】
実施形態14
第1のデータセットの複数のグルコース測定値における連続した測定値が、5分以下、3分以下、または1分以下の間隔で被験者から自律的に取得される、実施形態1から13のいずれか1つに記載のデバイス。
【0117】
実施形態15
過去の時間的経過が、直前の1週間、直前の2週間、または直前の1か月であり、上記の方法が、時間が経つと繰り返され、
基礎インスリン薬剤が、12~24時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤または12~24時間の作用持続時間を総体として有するインスリン薬剤の混合物から成る、実施形態1に記載のデバイス。
【0118】
実施形態16
被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画における基礎投与のタイミングを最適化するための方法であって、
(i)循環期間における基礎インスリン薬剤の総量と、(ii)循環期間における1組の基礎注射イベントタイプにおける1つまたは複数の基礎注射イベントタイプと、(iii)基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分とを指定する、被験者向けの有効な基礎インスリン投薬計画を得ることと、
第1の複数回の循環期間を備える過去の時間的経過にわたる被験者の複数のグルコース測定値と、複数のグルコース測定値におけるそれぞれのグルコース測定値について、それぞれの測定が行われた時刻を表すタイムスタンプとを備える第1のデータセットを得ることと、
停止条件を使用して過去の時間的経過にわたる複数のグルコース測定値を評価することとを備え、停止条件が満たされたとき、
有効な基礎インスリン投薬計画における基礎注射イベントタイプの数の変更、および/または基礎インスリン薬剤の総量の、1つまたは複数の基礎注射イベントタイプにおけるそれぞれの基礎注射イベントタイプの間のそれぞれの配分の変更を備える、推奨される調節を決定することと、
推奨される調節を、(i)基礎インスリン投薬計画の手動調節に関する被験者、(ii)被験者に有効な基礎インスリン投薬計画を実行することを課されたインスリンペン、または(iii)被験者に関連した医療関係者に通信することとをさらに備える方法。
【0119】
実施形態17
1つまたは複数のプロセッサによって実行されたとき実施形態16に記載の方法を遂行する命令を備える、コンピュータプログラム。
【0120】
実施形態18
実施形態17に記載のコンピュータプログラムを記憶している、コンピュータ可読データ記憶媒体。
【0121】
参考文献および代替実施形態
本明細書で引用されたすべての参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれるものであり、すべての目的のために、個々の刊行物または特許または特許出願が、あたかもその全体が、すべての目的のために参照によって組み込まれているかのように、同じ程度まで具体的かつ個々に指示された。
【0122】
本発明は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に組み込まれたコンピュータプログラム機構を備えるコンピュータプログラム製品として実施され得る。たとえば、コンピュータプログラム製品は、
図1、
図2、
図3、
図5の任意の組合せで示されたプログラムモジュールおよび/または
図4で説明されたプログラムモジュールを含有することもできる。これらのプログラムモジュールは、CD-ROM、DVD、磁気ディスク記憶製品、USBキー、または何らかの他の非一時的なコンピュータ可読のデータまたはプログラムの記憶製品に記憶され得る。
【0123】
この発明の多くの修正形態および変形形態が、この発明の精神および範囲から逸脱することなく作製され得ることが、当業者には明白であろう。本明細書で説明された特定の実施形態は、例としてのみ提供されるものである。これらの実施形態は、本発明の原理および実際の用途について最適に説明することにより、他の当業者が、本発明および様々な変更を伴う様々な実施形態を、企図された特定の使用に適するものとして、最もよく利用することを可能にするように選択されて説明されたものである。本発明は、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の完全な範囲と併せて、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。