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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】ゴム摩耗を測定するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20220204BHJP
   G01N 19/02 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
G01N3/56 G
G01N19/02 B
G01N3/56 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019513936
(86)(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017072440
(87)【国際公開番号】W WO2018050531
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】16306165.8
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソエッタ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ギベール, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ルベ, ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】テブネ, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネル, ロイク
(72)【発明者】
【氏名】ファン, モンロン
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-300657(JP,A)
【文献】特開2011-158448(JP,A)
【文献】特開平04-215039(JP,A)
【文献】特開2007-127551(JP,A)
【文献】特開2009-198276(JP,A)
【文献】特開2011-209187(JP,A)
【文献】特表2004-502131(JP,A)
【文献】特開2016-090417(JP,A)
【文献】特開2011-125957(JP,A)
【文献】特開平06-208017(JP,A)
【文献】特開平11-326145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/56
G01N 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の摩耗および摩擦特性を試験するための装置であって、
第1のモータ(16)によって駆動される垂直シャフト(6)に固定された回転ディスク(5)、
前記回転ディスク(5)に設けられた摩擦面(17)、
試料面を前記摩擦面(17)と接触した状態に保持するための試料ホルダー(10)、
試料面と前記摩擦面との断続的な係合を提供し、前記断続的な係合中に加えられる力を測定するための手段であって、動的アクチュエータ(14)と、前記試料ホルダー(10)に接続された3軸ロードセル(2)とを備える手段、
摩耗を検出するための前記試料ホルダー(10)の動きから独立したカメラ(4)
を備え、
前記動的アクチュエータ(14)、前記試料ホルダー(10)、および前記3軸ロードセル(2)は、前記回転ディスク(5)に対して水平方向および垂直方向の変位を提供する駆動システムに取り付けられており、前記システムは、第2のモータ(13)によって水平方向に駆動される機械的支持体(8)と、前記機械的支持体(8)と共に移動するためにそれに取り付けられ、第3のモータ(12)によって垂直方向に駆動される垂直支持体(1)とを備え、第1のモータ(16)、第2のモータ(13)および第3のモータ(12)は互いに独立して駆動され
温度測定装置(3)が、試験中に実際の試料温度を測定するために、前記試料ホルダー(10)と接触するように配置され、
試料と前記摩擦面(17)の表面とが接触するたびに、前記カメラ(4)、前記3軸ロードセル(2)、および前記温度測定装置(3)の出力が取得され、かつ
前記出力は、データ取得システムに接続されている
装置。
【請求項2】
前記試料面と前記摩擦面との間の角度が0±10°の間に含まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記摩擦面(17)が、研磨されたステインスチール、花崗岩、ガラスおよびサンドペーパからなる群から選択される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記動的アクチュエータ(14)が圧電アクチュエータである、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記カメラ(4)が前記機械的支持体(8)に取り付けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置の周囲温度を0~80℃の間に含まれる範囲に調節するための加熱および/または冷却ユニット(7)をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも摩擦面(17)と、試料ホルダー(10)と、加熱および/または冷却ユニット(7)とを封じ込める温度制御チャンバ(15)をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の装置と、前記試料ホルダー(10)に取り付けられた試料(11)とを備えるアセンブリ。
【請求項9】
前記試料(11)が円筒形、半球体またはシートの形態にある、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の装置を使用して試料の摩耗および摩擦特性を試験する方法であって、
試料(11)を準備するステップ;前記試料(11)を試料ホルダー(10)に取り付けるステップ;回転ディスク(5)または前記回転ディスク(5)に支持される摩擦面(17)を選択するステップ;ディスク回転速度を設定するために第1のモータ(16)を作動させるステップ;第2のモータ(13)および第3のモータ(12)を作動させて、前記摩擦面(17)上の前記試料(11)の水平位置および垂直位置を設定するステップ;動的アクチュエータ(14)を作動させて垂直負荷を前記試料(11)に加え、前記試料(11)を前記摩擦面(17)と断続的に係合させるステップ;および試料の摩耗および摩擦特性に関連するパラメータの評価のために、3軸ロードセル(2)およびカメラ(4)の出力を記録するステップを含み、
試験中に選択された間隔で、静的押込みにおける垂直力対変位曲線が記録され、垂直力の変動が前記3軸ロードセル(2)によって測定され、変位が前記カメラ(4)で測定され、かつ
試験に沿った力対変位曲線のシフトが次に評価され、それは試料の厚さの変化、すなわち物質の損失に直接関係し、それは次に重量損失に関して表すことができる、
方法。
【請求項11】
前記試験の持続期間が1~20時間の間に含まれることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記装置の周囲温度を0~80℃の範囲に調節するステップをさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料に加えられる前記垂直力が1~100Nの範囲である、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水平方向の変位が前記試験中にリアルタイムで変更される、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
選択された間隔で、前記回転ディスク(5)の回転が停止され、固定された垂直力における試料(11)の前記水平方向の変位が前記カメラ(4)で測定される、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年9月14日に出願された欧州特許出願第16306165.8号に基づく優先権を主張し、この出願の内容全体はすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は摩耗および摩擦試験に関し、特に実際の使用条件を表す様々な実験条件下でのゴム材料の摩擦および摩耗測定のための新規な装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
トライボロジーは相対運動における表面の相互作用の科学である。それは摩擦と摩耗の研究を含む。摩擦計は、経時的な圧力および速度を含む様々な条件下で試験されたときの摩擦および摩耗に関連する材料の性能を測定するために使用される。
【0004】
当技術分野では、選択された速度で回転または直線移動しながら動く摩擦面が、移動不可能な試験試料と接触し、この間、連続的に制御された圧力を摩擦面上の試験試料にかける試験装置の使用を含む技術が知られている。この試験方法は、データ収集期間を開始する前に比較的長いならし期間を必要とする。数時間または数日の標準化された時間間隔の後、試験試料が装置から取り出され、そして選択された圧力および速度での摩耗率を重量損失の関数として決定するために秤量される。
【0005】
あるいは、摩耗測定は、国際公開第01/61315号パンフレットおよび米国特許第4966030号明細書に提案されているような動的測定システムによって行うことができ、ここで試料の摩耗に関するパラメータは、試料を取り出して秤量する必要なく、試料が置かれる支持体に取り付けられたセンサーによって測定される。
【0006】
国際公開第01/61315号パンフレットでは、装置の中に力測定装置が存在し、それは試料の設置面積で力を測定し、かくして選択された表面について試験される試料の摩擦特性(例えば摩擦係数)を示す信号を与える。
【0007】
米国特許第4966030号明細書では、近接センサーが試験試料の支持構造に取り付けられ、試験試料自体と共に移動する。近接センサーは摩擦面ディスクに面し、支持構造と摩擦面ディスクとの間の距離の変化を測定する。試験が行われると、試験試料に圧力が加えられ、摩擦表面ディスクは設定速度で回転されて所望の圧力および速度を経時的に与える。試験開始から試験終了までの支持構造と試験試料との間の間隙は、試験中に失われた材料の量を示し、特定の条件下で達成される摩耗量を示す。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0037681号明細書は、パッドを有する回転プラテンと、処理されるべき物体、例えば半導体ウェハを支持し、プラテンに対して半径方向の移動を実行する回転ヘッドと、プロセスの終点を検出するための複数の感知装置を含む研磨プロセス制御システムとを含む、研磨プロセスを実行し制御するための装置を開示している。感知装置は、回転ヘッドの構成要素に組み込まれた高周波音響放射センサーの一群、および/または回転ヘッドおよびプラテンの様々な要素に接続された力/トルクセンサーのいずれかであり得る。第1の場合、装置は、物体とパッドとの間の界面に生じる変化に対応する高周波音響放射信号を測定する。第2の場合、研磨プロセスの終点を決定するために、処理すべき物体とパッドとの間の摩擦係数の変動が検出される。
【0009】
当技術分野ではまた、試料を支える摩擦要素と接触する可動摩擦面を備える装置を利用する技術も知られ、ここで摩擦面上の試料の負荷は特定の頻度によって試験の間変えることができる。
【0010】
米国特許出願公開第2013/0047699号明細書は、可動摩擦要素と押圧される摩擦要素との摩擦対と、第1の力センサーを使用して摩擦対に制御された力を加えるためのクランプとを備える装置を開示している。この装置は、表面材料の摩耗特性に対する高摩擦負荷の影響を測定するために使用される。試料が支持されているホルダーに取り付けられた移動センサーは、摩擦要素上の試料の摩耗によるホルダーの移動を測定する。
【0011】
Z.Mane et al,Wear,306(2013),149-169は、制御された環境条件下で、タイヤの補強材料と路面との間の界面における摩損を再現するために開発された回転摩擦計を開示している。路面とタイヤトレッドとの間の断続的な接触は、回転ディスク上に接着された補強ゴム材料の薄板上をこする研磨されたステンレス鋼球によって表される。試料上を滑り通過する間のディスクの回転速度、2回の通過間の時間および回転数が制御される。こすり球体を保持するシャフト上に配置された光レーザ装置は、摩耗面のトポグラフィ、摩耗パターンの種類およびそれらの寸法に関する情報を与える。したがって、摩擦計は、通過回数の関数として摩擦係数および重量損失の進展を測定することを可能にする。しかしながら、このタイプの摩擦計を使用して実施される試験は時間がかかる。
【0012】
試料と摩擦面との間の連続的または断続的な接触を含む先行技術の摩擦計を用いて摩擦および摩耗を試験することは長い時間を必要とし、新しいゴム材料の開発におけるボトルネックとなる。試験期間は多くの場合50~4,000時間の範囲内である。摩耗測定値は、装置から取り出された試料を分析することによって、または試料の近くで装置に配置された動的測定システムによって得られる。
【0013】
低い厳しさの条件を含む、接触、頻度および温度の点で実際の使用条件に近い実験室条件において、異なる材料および/または表面粗さの摩擦面と接触したときにいくつかの試料の摩耗および摩擦特性をより迅速に測定するための改良された装置が必要である。
【0014】
広い範囲の滑り速度を用いて、そして試験中の滑り速度および動的接触特性の変化を独立して制御しながら試験を実施することを可能にする装置もまた必要とされている。
【0015】
さらに、その場での摩耗および摩擦パラメータの改良された動的測定システムを有する装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、実際の使用条件を表す様々な実験条件下での異なる材料の試料が改良され、加速されそして定量的な摩擦および摩耗測定のための装置および方法を提供する。
【0017】
したがって、本発明の目的は、異なる摩擦面と接触している様々な材料の試料の摩擦および摩耗特性を迅速に試験するための装置および方法を提供することである。
【0018】
本装置および方法は、実際の使用条件を表す様々な実験条件下で異なる摩擦面と接触したときの一連の試料の摩擦および摩耗特性を測定するのに特に適している。
【0019】
より具体的には、本装置および方法は、様々な滑り速度および負荷条件におけるタイヤトレッドなどのエラストマー試料と異なる摩擦面との間の摩擦係数を測定するのに適している。
【0020】
概して、本発明による装置は、接触を生じさせるために動的負荷が試料に加えられる「オープンサイクル」条件において、試料を断続的な接触により回転ディスクと接触させることに基づいている。
【0021】
本明細書中、「オープンサイクル」という表現は、試験中に摩耗したくずが接触領域から排除されるので試料と回転ディスクとの間の接触領域に摩擦ごみがない試験中の作業条件を指すのに使用される。
【0022】
装置は、任意の性質および粗さの摩擦面を容易かつ迅速に変えるように構成されている。
【0023】
回転ディスクの動きと試料の動きは完全に独立した方法で制御され、それによって滑り速度、動的負荷条件、および試料と回転ディスクの摩擦面との間の接触時間を別々にかつ独立して変えることが可能になる。
【0024】
試料と摩擦面との間の滑り速度および接触時間の独立した運動学的制御は、異なる材料の試料の摩耗と粘弾性特性との間の関係の評価を可能にする。この評価は先行技術の摩擦計では不可能である。それというのもそれらは連続的な接触を提供するだけであるからであり、あるいは先行技術の試験はある回転ホイールまたは試料に基づき、この際滑り速度と接触頻度の両方が摩擦面に対する試料の回転速度によって決定されるからである。
【0025】
回転ディスクは、第1のモータによって駆動される垂直シャフトに固定されている。
【0026】
摩擦面は、回転ディスク上に取り外し可能に支持することができ、または回転ディスク自体の表面を表すことができる。摩擦面は、異なる摩擦面上でおよび/または異なる試験条件で特定の試料を試験するのに所望され得るように、異なる材料および/または粗さの他の摩擦要素と容易に交換することができる。
【0027】
第2の独立したモータは、試料の水平方向の変位を提供する。水平変位は、回転ディスクを駆動する垂直シャフト軸から所与の距離で(すなわち、所与の半径で)回転ディスク上に試料を位置決めするために使用される。水平変位は試験中にリアルタイムで変化させることができ、それによって回転ディスク上の新しい接触領域を使用することができる。これにより、摩擦および/または摩耗試験が真の「オープンサイクル」条件で確実に実行される。
【0028】
試料は、摩擦面に対して実質的に垂直な垂直方向の移動を提供し、垂直負荷の動的変調および接触時間、接触頻度および滑り速度の完全に独立した制御による摩擦面との接触を可能にする可動部分に固定される。垂直方向の移動は第3の独立したモータによって行われる。
【0029】
試料の変形および摩耗は、高解像度カメラを用いてリアルタイムでその場で測定される。
【0030】
カメラの位置決めは、試料の垂直方向の移動とは無関係であり、試料の位置の正確な測定および機器の柔軟性を可能にする。
【0031】
装置は、異なる温度条件および環境条件(例えば湿度比)をシミュレートするために温度制御された筐体内に封じ込めることができる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、プロセッサがすべての動作、パラメータ設定およびデータ取得を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による装置の概略側面図である。
図2】本発明による装置の様々な部品の全体図である。
図3】動的アクチュエータ(14)の全体図である。
図4】試料Aの摩耗試験中に連続的に記録された一連の力対変位曲線を示す。
図5】摩耗試験に沿った力対変位曲線の移動(図4の曲線から得られる)と重量損失との間の相関関係を示す。
図6】実施例1の試料Aについて直接測定された試料厚さと重量損失の変化の光学的測定の結果を示す。
図7】試料Aおよび試料Bについて実施例1に従って評価された摩耗検出の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の第1の目的は、材料の摩耗および摩擦特性を試験するための装置であって、
・第1のモータ(16)によって駆動される垂直シャフト(6)に固定された回転ディスク(5)、
・回転ディスク(5)に設けられた摩擦面(17)、
・試料面を摩擦面(17)と接触した状態に保持するための試料ホルダー(10)、
・試料面と摩擦面との断続的な係合を提供し、前記断続的な係合中に加えられる力を測定するための手段であって、動的アクチュエータ(14)と、前記試料ホルダー(10)に接続された3軸ロードセル(2)とを備える手段、
・摩耗を検出するための試料ホルダーの動きから独立したカメラ(4)
を備え、
-動的アクチュエータ(14)、試料ホルダー、および3軸ロードセルは、回転ディスクに対して水平方向および垂直方向の変位を提供する駆動システムに取り付けられ、前記システムは、第2のモータ(13)によって水平方向に駆動される機械的支持体(8)と、前記機械的支持体(8)と共に移動するためにそれに取り付けられ、第3のモータ(12)によって垂直方向に駆動される垂直支持体(1)とを備え、第1のモータ(16)、第2のモータ(13)および第3のモータ(12)は互いに独立して駆動される、装置である。
【0035】
ここで図1図3を詳細に参照すると、本発明の装置は、第1のモータ(16)によって駆動される垂直シャフト(6)に固定された回転ディスク(5)を備える。回転ディスクはシャフトから持ち上げることで簡単に取り外すことができる。
【0036】
第1のモータ(16)によって駆動されるシャフト(6)に沿った回転ディスクの独立した動きは、広範囲の滑り速度を提供する。
【0037】
好ましい滑り速度はタイヤが使用中に経験するものに匹敵し、そしてより好ましくは0.001~1m/s、典型的には0.005~0.50m/s、好ましくは0.01~0.10m/sで変動する。
【0038】
十分な大きさのトルクを得るために減速ギアボックスがシャフトに取り付けられるので、回転速度は試料が接触する間摩擦による影響を受けない。
【0039】
異なる厚さおよび直径を有する回転ディスクを使用することができる。回転ディスクは、1.0~5.0cm、典型的には1.0~4.0cmの厚さを有することができる。回転ディスクは、15~50cm、典型的には15~45cm、好ましくは20~40cmの直径を有することができる。
【0040】
好ましい実施形態では、厚さ1.0~3.0cmおよび直径25~35cmの回転ディスクが使用される。厚さ2.0cmおよび直径30cmの回転ディスクを用いて良好な結果が得られた。
【0041】
任意の性質および粗さの摩擦面を有する回転ディスクを使用することができる。摩擦面(17)は、様々な異なる面のうちの任意の1つであってよい。好ましくは、摩擦面は、磨かれたステインスチール、花崗岩、ガラスまたはサンドペーパから作られる。
【0042】
摩擦面は、例えば、粗い、滑らかな、溝のある等の異なるテクスチャを有することができる。摩擦面のテクスチャは、所望の試験条件または試験の厳しさに応じて調整することができる。
【0043】
摩擦面は、回転ディスク上に取り外し可能に支持することができ、または回転ディスク自体の表面を表すことができる。摩擦面は、異なる摩擦面上でおよび/または異なる試験条件下に特定の試料を試験するのに所望され得るように、異なる材料および/または粗さの他の摩擦要素と容易に交換することができる。表面を交換することは、回転ディスク上に支持された摩擦面を置き換えることによって、または回転ディスク全体をシャフト(6)から持ち上げて、それを異なる摩擦面を担持する回転ディスクと置き換えることによって達成することができる。
【0044】
装置は、第2のモータ(13)によって水平方向に駆動される機械的支持体(8)を備える。
【0045】
機械的支持体(8)上には垂直支持体(1)が取り付けられており、この垂直支持体(1)は一緒に動くと共に第3のモータ(12)によって垂直方向にも駆動される。垂直支持体は、動的アクチュエータ(14)、3軸ロードセル(2)、および下端に取り付けられた試料ホルダー(10)を運ぶ。
【0046】
垂直支持体の動きは垂直案内レール(21)によって厳密に垂直であるように制約される。
【0047】
静的試料の水平方向および垂直方向の変位の調節は、それぞれ第2のモータ(13)および第3のモータ(12)の動きによって保証される。これにより、試料は回転ディスク上に支持された摩擦面(17)に対して適切な位置に確実に保持される。
【0048】
試料の垂直変位の調節は、試料に加えられる垂直負荷(垂直力F)を決定する。
【0049】
試料に加えられる垂直力は、1~100Nの範囲、好ましくは10~50Nの範囲、より好ましくは20~40Nの範囲であり得る。さらにより好ましくは、垂直力は40Nである。
【0050】
第2のモータ(13)は、機械的支持体の、ひいては試料の水平方向の変位を提供する。水平方向の変位は、回転ディスクのシャフト(6)軸から所与の距離(すなわち、所与の半径)に試料を位置決めするために使用される。水平方向の変位は試験中にリアルタイムで変化させることができ、したがって試料とディスク摩擦面の未使用部分との接触を提供する。これにより、摩擦および/または摩耗試験が真の「オープンサイクル」条件で確実に実行される。
【0051】
第1のモータ(16)、第2のモータ(13)および第3のモータ(12)は、互いに独立して駆動される。それらは電力調節装置および/または変動装置を介して電力を供給される。
【0052】
動的アクチュエータ(14)は、摩擦面上への試料の垂直方向の動的変位を制御し、回転ディスク上に支持された摩擦面との試料の断続的な係合を提供するように構成され、接触時間、接触頻度、および滑り速度の完全に独立した制御を保証する。
【0053】
好ましい動的アクチュエータ(14)は、振幅が1mm程度の大振幅アクチュエータであり、これにより、ミリ秒(ms)の範囲で、非常に短い応答時間で最大100Nの最大負荷が可能になる。好ましくは、動的アクチュエータは圧電アクチュエータである。
【0054】
試料ホルダーの上部に配置された3軸ロードセル(2)は、3軸にわたって試料に加えられる力を測定し、摩擦面に対する試料の垂直方向および接線方向の負荷の値をリアルタイムで与える。3軸セルの時間分解能は1kHz程度である。
【0055】
ロードセルの出力はデータ取得システムに接続される。
【0056】
好ましい実施形態では、スペーサ(20)が動的アクチュエータ(14)と試料ホルダー(10)との間に配置される。
【0057】
試料ホルダー(10)は、任意の適切な幾何学的形状であることができ、円筒形が好ましい。
【0058】
試験中に実際の試料温度を測定するために、温度測定装置(3)が試料ホルダーと接触させて配置される。
【0059】
垂直支持体(1)上に取り付けられた位置合わせ装置(19)は、試料面と摩擦面とが平行に配置されること、またはそれらの間に一定の角度が形成されることを確実にする。好ましくは、位置合わせ装置は締め付けられた球形固定具から作られる。
【0060】
試料面と摩擦面との間の角度は有利には0~±10°の間、典型的には0~±5°の間に含まれ得る。
【0061】
試料の変形は、試料と摩擦面との間の距離のリアルタイム絶対測定によって、カメラ(4)を用いてその場で測定される。
【0062】
カメラは装置上に水平位置に置かれ、および試料の移動とは無関係に置かれる。それは試料まで一定の距離に保たれる。
【0063】
カメラは光学またはデジタルカメラであってよい。カメラは、好ましくは高解像度デジタル光学である。好ましい実施形態では、カメラは、機械的支持体(8)に取り付けられ、それと共に移動する。
【0064】
カメラは、試験を通しての試料の高解像度の視覚化、および各接触中の試料の変形の動的なリアルタイム記録を可能にする。
【0065】
磨耗を受けた試料の厚さは、磨耗試験中にマイクロメートルの精度にてリアルタイムで測定される。一定の力レベルにおける測定された垂直変位のずれは、試料の厚さの変化に、すなわち試験中に失われる物質の量に関連し、これは重量損失で表すことができる。したがって、有利には、本発明的装置は、装置から試料を取り出してその重量を決定する必要なしに、その場で試料の摩耗、すなわち重量損失を決定することを可能にする。性能試験を通して、試料の摩耗を監視することができる。
【0066】
好ましい実施形態では、光源(9)が、光学的可視化のために高いコントラストを作り出すために、カメラの前で、試料の後ろの背景に配置される。
【0067】
光学カメラを使用して正確な垂直試料位置を決定し、ディスク面に近い試料の垂直位置を調整することもできる。
【0068】
装置は、冬および夏の条件などの異なる温度および環境条件(例えば湿度比)をシミュレートし、試料に対する温度変動の影響を評価するために温度制御チャンバ内に封じ込めることができる。
【0069】
装置の周囲温度は、適切な加熱および/または冷却ユニット(7)によって、0~80℃の間に含まれる範囲、好ましくは20~60℃の間に含まれる範囲に調節することができる。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、装置は、装置が使用されていないときには少なくとも摩擦面と試料ホルダーとを封じ込め、装置使用時には試料ホルダーと試料とを封じ込める温度制御チャンバ(15)を含む。さらなる好ましい実施形態では、温度制御チャンバはさらに加熱および/または冷却ユニット(7)を封じ込める。
【0071】
チャンバの上壁は、ハンドルによって開けることができる。これにより、試料、回転ディスク、および摩擦面を簡単かつ迅速に交換することができる。
【0072】
装置は、摩擦面を清掃するための、すなわち摩擦面から摩耗くずを除去するための適切な方法を含む。
【0073】
本発明の好ましい実施形態では、プロセッサが、すべての動作、パラメータ設定、およびデータ取得:静的試料の水平方向および垂直方向の変位;ディスク回転;垂直負荷の制御;信号トリガ;動的変位の制御;データ取得を制御する。
【0074】
プロセッサはデータをさらに分析し、結果の測定値を、好ましくは表および/またはグラフの形で提供する。
【0075】
本発明の第2の目的は、前述の装置と材料の試料(11)とを含むアセンブリである。試料を試料ホルダー(10)の中に入れる。試験されるべき試料の表面が回転ディスク(5)の摩擦面(17)と接触するために利用できるように、試料(11)は試料ホルダー(10)に取り付けられる。
【0076】
試料(11)は、試料ホルダーに適合する任意の幾何学的形状のものであることができる。好ましくは、試料は円筒形、半球体またはシートの形状である。
【0077】
試料(11)は、適切な手段によって試料ホルダーに取り外し可能に取り付けられる。
【0078】
好ましくは、試料の厚さは1~5mmであり、より好ましくは約2mmである。
【0079】
好ましい実施形態では、試料は、5~10mmの間に含まれる範囲の直径および約2mmの厚さを有する円筒形のエラストマー試料である。
【0080】
別の好ましい実施形態では、エラストマー試料は、5~10cmの間の好ましい半径の半球形状を有する。
【0081】
別の好ましい実施形態では、試料は厚さ2mmのエラストマーのシートである。この好ましい実施形態では、エラストマーシートは、5~10cmの間の好ましい半径の摩擦面に平行な軸を有するシリンダー上で調整され、次いで前記シリンダーは取り外し可能に試料ホルダーに取り付けられる。
【0082】
本明細書中、エラストマーという用語は、IUPACによって提供される意味で使用され、「ゴム様弾性を示すポリマー」、すなわち、わずかな適用応力下で容易に変形し、大きな可逆性の伸びを示すポリマーを指す。エラストマー(E)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される、-150℃~+300℃の間、例えば-150℃~+20℃の間の少なくとも1つのガラス転移温度(Tg)を示すと好ましい。
【0083】
本発明のさらなる目的は、前述の装置を使用することによって試料の摩耗および摩擦特性を試験する方法を提供することにある。
【0084】
この方法は、以下のステップを含む。試料(11)を準備するステップ;試料を試料ホルダー(10)に取り付けるステップ;回転ディスク(5)または回転ディスク(5)上に支持される摩擦面(17)を選択するステップ;ディスク回転速度を設定するために第1のモータ(16)を作動させるステップ;第2のモータ(13)および第3のモータ(12)を作動させて、摩擦面(17)上の試料(11)の水平位置および垂直位置を設定するステップ;動的アクチュエータ(14)を作動させて垂直負荷(垂直力)を試料に加え、試料(11)を摩擦面(17)と断続的に係合させるステップ;試料の摩耗および摩擦特性に関連するパラメータの評価のために、3軸ロードセル(2)およびカメラ(4)の出力を記録するステップ。
【0085】
この方法は、摩耗試験中に選択された間隔で静的押込み(滑り速度なし、一時的にディスク回転を抑制することによる)で力対変位曲線を実行することによる試料厚さのその場測定を含み、ここで垂直力変動が3軸負荷センサーによって測定され、変位は高解像度カメラで測定される。
【0086】
試験の期間は、1~20時間の間、好ましくは1~10時間の間、より好ましくは2~5時間の間に含まれる。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、摩擦面を別の異なる摩擦面と交換して、異なる面に関する試料の特性を予測するステップをさらに含む。
【0088】
方法は、試料面と回転ディスク上の摩擦面との間に、研磨剤スラリーも潤滑剤も、広く言えばいかなる液体も存在せずに実施するのが好ましい。
【0089】
好ましい実施形態では、方法は、0~80℃の間、好ましくは20~60℃の間に含まれる範囲で温度を調節するステップを含む。
【0090】
好ましい実施形態では、本発明は、トレッド部品のタイヤの摩耗および摩擦特性を予測する方法を提供する。
【0091】
試料と摩擦面の表面とが接触するたびに、カメラ、3軸ロードセル、および温度センサーの出力が取得される。特に、以下のパラメータがシステムによって測定され取得される。
・試料の厚さ、
・3軸にわたる試料の変位、
・3軸にかかる力、
・試料温度。
【0092】
出力は、試料の磨耗および摩擦特性に関連するいくつかのパラメータ:
- リアルタイムにおける垂直負荷の関数としての接線負荷:F=f(F);
- 垂直負荷および接線負荷と摩擦係数の時間発展:μ=f(t);
- 1回の接触中の変位、垂直および接線力;
を評価するためのデータ取得システムに接続されている。
【0093】
磨耗試験中に選択された間隔で、静的押込み(滑り速度なし、一時的にディスク回転を抑制することによる)における垂直力対変位曲線を記録する。垂直力の変動は3軸負荷センサーによって測定され、変位は高解像度カメラで測定される。
【0094】
試験に沿った力対変位曲線のシフトが次に評価され、それは試料の厚さの変化、すなわち物質の損失に直接関係し、それは次に重量損失に関して表すことができる。
【0095】
磨耗測定値は、単位接触面積当たりの単位スリップ長さ当たりの重量損失として表され、w=hAd/1000として計算され、式中、wは重量損失値(単位mg)であり、hは平均垂直変化(試料の厚さの変化、単位μm)であり、Aは接触表面積(単位mm)であり、dは材料の密度(単位g/cm)である。
【0096】
したがって、有利には、本発明的方法は、装置から試料を取り出してその重量を決定する必要なしに、その場で試料の摩耗、すなわち重量損失を決定することを可能にする。
【0097】
1接触当たりのスリップ長さは、滑り速度(ディスクの回転速度に試料と回転ディスクの軸との間の距離を乗じることによって与えられる)に滑り接触持続時間を乗じたものとして定義される。
【0098】
接触面積は、好ましくは10~100mmの間である。
【0099】
摩擦係数は、垂直負荷Fに対する接線負荷Fの比として計算される。
【0100】
摩擦面と接触したときに試料の摩耗および摩擦特性を試験する提案された方法によって提供される利点には、とりわけ、短い試験時間、ならびに異なる温度条件下で摩耗および摩擦特性を評価する可能性が含まれる。試料変位および回転ディスクのモータを独立して動かすことにより、滑り速度、動的負荷条件、および試料と摩擦面との間の接触時間を別々にかつ独立して変えることができるので有利である。これにより、様々な厳しい条件下に摩耗を簡単に評価することが可能になる。
【0101】
さらに、摩擦面および試料の容易な交換は、異なる摩擦面に接触される一連の試料の摩耗および摩擦特性の迅速な評価を可能にする。
【0102】
「独立した」という用語は、他のモータと機械的に接続されておらず、したがって他のモータの動きとは無関係に駆動することができるモータを指すのに使用される。
【0103】
本明細書で使用される際「断続的係合」という用語は、特定の接触頻度および持続時間で、時間の経過とともに不連続的に発生する試料と摩擦面との間の接触を指す。
【0104】
本発明につながる研究は、欧州連合第7次フレームワークプログラムから資金を受けている(助成金契約番号314463の下で[FP7/2007-2013]。
【0105】
参照により本明細書に組み込まれるいずれかの特許、特許出願、および刊行物の開示内容が、用語を不明瞭にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先されるものとする。
【0106】
以下の実施例は本発明を説明するが、その範囲を限定するものではない。
【実施例
【0107】
実施例1
2種類のゴム組成物(AおよびB)を10.380リットルのHaake様密閉式混合機中で調製し、そして150℃で加硫した。エラストマー100部当たりの重量部(phr)として表される試料AおよびBの組成を下記の表Iに示す。
【0108】
【0109】
直径10mmおよび18mmおよび厚さ2mmの円筒形試料をそれぞれ組成物AおよびBから調製した。
【0110】
試料AおよびBは、ISO規格ASTM D 2240に従って計算して、同様のショアA硬度を示す。3秒後に与えられた値は、試料Aについて68であり、試料Bについて67である。
【0111】
表IIのように設定した本発明の装置で試料AおよびBを試験した。
【0112】
【0113】
研磨したステンレス鋼の摩擦面を有する回転ディスクを使用した。
【0114】
掃除用ティッシュをディスク表面に適用することでディスク表面を掃除することによって2つの連続する接触の間に接触領域から摩耗ごみを除去した。さらに、500回接触するごとに、消しゴムを使用することによってディスクを完全に掃除し、試料の表面をアセトンで洗浄した。
【0115】
結果
試料の厚さの変化を記録し、そして、試料AおよびBについて、0、500、1000、1500、2000、2500、3000および3500の接触回数において、例えばディスク回転を抑制することによる静的条件下の力対変位曲線を記録した。
【0116】
図4において、試料Aについて記録された力対変位曲線が報告されている。
【0117】
各曲線の相対的な移動は、試料の厚さの変化を示し、定量化する。
【0118】
次いで、力対変位曲線の移動は、摩耗試験に沿った重量損失と相互に関連付けられる。
【0119】
図5において、力対変位曲線の移動と直接測定された重量損失(Δ重量、mg)との相関関係が報告されている。
【0120】
試料の厚さの変化の光学的測定および直接測定された重量損失との相関の結果が試料Aについて図6に報告されている。
【0121】
異なる試料の摩耗性能を図7に示すように区別することができる。
【0122】
結果は、直接重量損失測定によって得られる値を反映する重量損失の計算された値を与える本発明の摩耗測定方法の信頼性を実証する。
【0123】
本発明による装置は、直接的で時間のかかる重量測定を必要とせずに摩耗および摩擦係数の迅速で信頼性のある評価を可能にするという利点を達成する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7