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特許7018939眼疾患の治療のための組成物ならびに使用および調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】眼疾患の治療のための組成物ならびに使用および調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20220204BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220204BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220204BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220204BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/22
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/127
A61K9/50
A61K45/00
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/44
A61K47/26
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019516537
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2017084994
(87)【国際公開番号】W WO2018054077
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-04-08
(31)【優先権主張番号】201610849023.9
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519099047
【氏名又は名称】ルヤン (スーチョウ) バイオロジー サイエンス アンド テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シュファ
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン,ジウェン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,シンティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ツォンジエン
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041294(WO,A1)
【文献】特表2015-523995(JP,A)
【文献】特開2003-313119(JP,A)
【文献】特表2015-535293(JP,A)
【文献】特表2018-524327(JP,A)
【文献】特表2018-521120(JP,A)
【文献】J. Controlled Release, 2015.01, 200, pp.71-77
【文献】Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.,2015年,Vol.56,p.7897-7907
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 45/00
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)0.5~20mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩、
(2)50~200mg/mLの中鎖トリグリセリド、
(3)5~30mg/mLの大豆レシチン、
(4)2~20mg/mLのコレステロール、
(5)5~50mg/mLのグリセリン、
(6)0.05~0.5mg/mLの塩化ベンザルコニウム、および
(7)0.1~1mg/mLのビタミンE
を含む、血管新生が関与する眼疾患の治療のための医薬組成物。
【請求項2】
1mg/mL~約4mg/mL、または約1mg/mL~約3mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
約0.5mg/mL~約4mg/mL、または約1mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
点眼剤、眼軟膏剤、洗眼剤、軟膏、ゲル、液剤、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、または眼内注射調製物である、請求項1-3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
約5~約9、約6.5~約7.5の範囲のpH値、6.8または7.5のpH値を有する、請求項1-4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(a)AMD治療剤、
(b)血管新生阻害剤、
(c)VEGF阻害剤、PDGF阻害剤、またはFGF阻害剤、
(d)持続放出眼内インプラント、ここで、持続放出眼内インプラントは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、プルラン、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、ヒアルロン酸、カゼイン、寒天、アカシア、デキストリン、エチルセルロース、メチルセルロース、キチン、キトサン、マンナン、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アルブミン、乳酸-グリコール酸コポリマー、またはこれらの組合せを含む、
(e)薬学的に許容される担体または賦形剤、ここで、賦形剤は、界面活性剤、ゲル化剤、有機共溶媒保存剤、殺真菌剤もしくは抗菌剤、pH調整剤、等張剤、キレート剤、緩衝剤、安定剤、抗酸化剤、増粘剤、またはこれらの組合せを含み、担体は、オレオイルポリエチレングリコールグリセリド、リノレオイルグリコールグリコールグリセリド、ラウロイルポリグリコールグリセリド、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、軟質パラフィン(ペトロラタム)、硬質パラフィン、ワックス、ヒマシ油、ピーナツ油、ゴマ油、中鎖トリグリセリド、セテアリルアルコール、ラノリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、または水を含む、
(f)流動パラフィン、無水ラノリン、塩化ベンザルコニウム、ワセリン、無水ラノリン、大豆レシチン、コレステロール、トリグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油、グリセリン、ビタミンE、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、またはこれらの組合せ、ここで、トリグリセリドは中鎖トリグリセリドである、および/または
(g) 結合剤、香味剤、滑沢剤、流動化剤、崩壊剤、遅延剤、またはこれらの組合せ、
をさらに含む、請求項1-5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
眼疾患が、加齢黄斑変性(「AMD」)、脈絡膜血管新生(「CNV」)、網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜色素上皮の萎縮、網膜色素上皮の肥大、網膜静脈閉塞症、脈絡膜網膜静脈閉塞症、黄斑浮腫、前部血管新生、角膜血管新生、翼状片、網膜下浮腫、脈絡膜血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、網膜上膜、黄斑円孔、血管の線条、網膜色素変性、シュツットガルト病、緑内障、白内障、炎症状態、難治性異常、円錐角膜、未熟児網膜症、網膜浮腫、および強度近視、AMDまたはCNVである、請求項1-6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
眼内、硝子体内、静脈内、皮下、経口的、または腹腔内に投与される、請求項1-7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
治療毎の各眼の有効量が0.5μg~25μg、1μg~25μg、2.5μg~10μgまたは2.5μg~5μgのニンテダニブエタンスルホン酸塩である、請求項1-8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
1~20mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩、
を含む、医薬点眼製剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
7~15mg/mL、または10mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
(a)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートまたはポリオキシエチレンヒマシ油、
(b)持続放出眼内インプラント、ここで、持続放出眼内インプラントは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、プルラン、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、ヒアルロン酸、カゼイン、寒天、アカシア、デキストリン、エチルセルロース、メチルセルロース、キチン、キトサン、マンナン、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アルブミン、乳酸-グリコール酸コポリマー、またはこれらの組合せを含む、
(c)薬学的に許容される担体または賦形剤、ここで、賦形剤は、界面活性剤、ゲル化剤、有機共溶媒保存剤、殺真菌剤もしくは抗菌剤、pH調整剤、等張剤、キレート剤、緩衝剤、安定剤、抗酸化剤、増粘剤、またはこれらの組合せを含み、担体は、オレオイルポリエチレングリコールグリセリド、リノレオイルグリコールグリコールグリセリド、ラウロイルポリグリコールグリセリド、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、軟質パラフィン(ペトロラタム)、硬質パラフィン、ワックス、ヒマシ油、ピーナツ油、ゴマ油、中鎖トリグリセリド、セテアリルアルコール、ラノリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、または水を含む、
(d)流動パラフィン、無水ラノリン、塩化ベンザルコニウム、ワセリン、無水ラノリン、大豆レシチン、コレステロール、トリグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油、グリセリン、ビタミンE、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、またはこれらの組合せ、ここで、トリグリセリドは中鎖トリグリセリドである、および/または、
(e)結合剤、香味剤、滑沢剤、流動化剤、崩壊剤、遅延剤、またはこれらの組合せ、
をさらに含む、請求項10または11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
5~9、6.5~7.5、または5~9の範囲のpH値を有する、請求項10-12のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(d)に基づいて2016年9月26日出願の中国特許出願番号CN App.No.2016108490239の優先権を主張し、これを参照により組み込む。
【0002】
本開示は、眼疾患(例えば、加齢黄斑変性)の治療のための組成物ならびに使用および調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
進行性網膜疾患である加齢黄斑変性(「AMD」)は、特に65歳超の患者間で、失明の主な原因となっている。米国では、約1,500万人の患者がAMDを患っており、高齢患者間のこの疾患の有病率は、この10年間で急激に増加している。AMDを患う患者は、徐々に視力の悪化を覚え、視野の中心領域(または黄斑)において視界のゆがみ、または視覚喪失を最終的に発症する。滲出型血管新生(滲出型(wet form))および非血管新生(委縮型(dry form))は、2大AMD型である。委縮型(dry form)では、黄斑の菲薄化および色素沈着障害が認められ、滲出型(wet form)では、網膜および黄斑下での異常な血管の成長を伴うことが多い。滲出型(wet form)により引き起こされる視力低下は、委縮型(dry form)より急速に進行する。脈絡膜血管新生(CNV)を特徴とする滲出型(wet form)は、AMDを伴って80%~90%の重度の失明を引き起こす。
【0004】
血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤は、AMDおよび多岐にわたる他の網膜疾患、例えば、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症(RVO)、血管新生緑内障、未熟児網膜症(ROP)、および眼内腫瘍の治療に一般に使用される。VEGF阻害剤(ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、またはアフリベルセプト)の硝子体内注射を行うと、湿性AMDの治療において、その有効性が明らかとなった。
【0005】
しかし、VEGF阻害剤の硝子体内注射は、注射後および薬物分類に関連する有害事象のリスクを生じさせる。患者1人あたりの感染性眼内炎の発症率が0.019~1.6%の範囲であると報告された。Scottら、Retina、27:10~12ページ(2007)を参照されたい。VEGF阻害剤の硝子体内注射はまた、眼内炎症、裂孔原性網膜剥離、眼圧上昇、および眼出血と関連する。Falavarjaniら、Eye、27、787~794ページ(2013)を参照されたい。抗VEGF療法により必要とされる毎月の注射および臨床評価は、患者にさらなる排出を課し、臨床医は、厳密で面倒な治療計画に従うことを要求する。
【0006】
CNVでは、有効で実証された療法は未だない。限られた集団においてCNVを除去するためにレーザー光凝固術を使用することが可能であるが、この手順はまた、CNVを患っている視覚領域を覆う生視細胞に影響し、即時型視力喪失を生じ得る。光線力学療法は、覆っている視覚領域に対する副作用を回避することができるが、光線力学療法の治療を受ける患者では、数日間、眼圧が上昇し、光に対して敏感になることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらは、より有効で容易に投与可能な方法、あるいは眼疾患(例えば、AMDおよびCNV)を治療するための、または眼疾患に起因する失明および/もしくは視界のゆがみの発生を遅延もしくは反転させるための医薬組成物の必要性を強調する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ニンテダニブ(IUPAC名:メチル(3Z)-3-[[4-[メチル-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセチル]アミノ]アニリノ]-フェニルメチリデン]-2-オキソ-1H-インドール-6-カルボキシレート)は、最近に見出された血管新生阻害剤であり、これは、血管新生に関与する3つの鍵となる重要な受容体ファミリー:血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)および線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)に同時に作用することができる。ニンテダニブの構造を図1に示す。ニンテダニブは、特発性肺線維症(IPF)の治療用にFDAおよびEMAにより認可され、また、第1の選択化学療法後の組織学的方法により診断された成人患者において、腺癌である局所進行性または転移性または局所再発性非小細胞肺がん(NSCLC)へ使用されるドセタキセルとの併用にてEMAにより認可された。
【0009】
本開示は、眼疾患を治療する方法であって、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む、有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象の眼に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
一態様では、本開示はまた、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、多形体、またはこれらの組合せを含む、眼疾患の治療のための医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、5~20mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩、50~200mg/mLの中鎖トリグリセリド、5~30mg/mLの大豆レシチン、2~20mg/mLのコレステロール、0.05~0.5mg/mLの塩化ベンザルコニウム、および0.1~1mg/mLのビタミンEを含む、医薬点眼製剤を提供する。別の実施形態では、この製剤は、Tween80および/またはポリオキシエチレンヒマシ油を含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象への投与に適した医薬製剤を調製する方法であって、(a)ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む組成物を微粒子化するステップ、および(b)微粒子化した組成物を他の成分と混合するステップを含む、方法を提供する。別の実施形態では、本発明の方法は、混合物を超音波処理してエマルジョンを形成するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ニンテダニブおよびニンテダニブエタンスルホン酸塩の化学構造式である。
図2】実験動物の眼底撮影(「FP」)および後期相蛍光血管造影(「FFA」)の画像である。
図3】平均蛍光漏出と用量との間の関連性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明の読後、種々の代替的実施形態および代替的応用において本発明を実行する方法が当業者に明らかとなる。しかし、本発明の実施形態のすべてを記載してはいない。本明細書に提示する実施形態は、制限ではなく、例示のみを目的として示すことが理解される。種々の代替的実施形態についての本発明の詳細な説明は、本発明の範囲または広がりを制限するものとして解釈されるべきではない。
【0014】
本発明の開示および説明に先立って、以下に記載の態様が特定の組成物に制限されず、このような組成物を調製する方法、またはその使用が変化し得ることが理解されるべきである。使用する用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、制限となることを意図していないこともまた理解されるべきである。
【0015】
定義
他に定義しない限り、使用する技術的および科学的用語はすべて、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0016】
本明細書および下記の特許請求の範囲では、以下の意味を有すると定義されるべきいくつかの用語について言及する。
【0017】
本明細書において使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を制限することを意図していない。本明細書において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明白に指示しない限り、複数形をも含むことを意図する。
【0018】
範囲を含む、すべての数値表示、例えば、pH、温度、時間、濃度、量、および分子量は、必要に応じて(+)または(-)10%、1%、もしくは0.1%で変化する近似値である。常に明示的には記述しないが、すべての数値表示の前に用語「約」を置き得ることが理解される。常に明示的には記述しないが、本明細書に記載の試薬は単なる例示であり、このような等価物は当分野において公知であることもまた理解される。
【0019】
用語「含む(comprising)」または「含む(comprise)」は、組成物および方法が列挙する要素を含むが、その他を除外しないことを意味することを意図する。「本質的にからなる」は、組成物および方法を定義するために使用する場合、その組合せにいくらか本質的に意味のある他の要素を除外することを意味する。例えば、本質的に本明細書に定義する要素からなる組成物は、主張する発明の基本的および新規の特性に実質的に影響しない他の要素は除外しない。「からなる」は、微量を超える他の成分および列挙する実質的方法ステップを除外することを意味する。このような変遷する用語のそれぞれにより定義する実施形態は、本発明の範囲内である。
【0020】
本明細書において使用する用語「眼疾患」は、任意の眼疾患を指す。眼疾患の非限定的な例としては、加齢黄斑変性(「AMD」)、脈絡膜血管新生(「CNV」)、網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜色素上皮の萎縮、網膜色素上皮の肥大、網膜静脈閉塞症、脈絡膜網膜静脈閉塞症、黄斑浮腫、前部血管新生、角膜血管新生、翼状片(pterygium conjunctiva)、網膜下浮腫、脈絡膜血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、網膜上膜、黄斑円孔、血管の線条、網膜色素変性(pigmented retinitis)、シュツットガルト病、緑内障、白内障、炎症状態、難治性異常、円錐角膜、未熟児網膜症、網膜浮腫、および強度近視が挙げられる。一実施形態では、眼疾患はAMDである。別の実施形態では、眼疾患はCNVである。
【0021】
本明細書において使用する用語「加齢黄斑変性」または「AMD」は、当分野において公知の網膜疾患を示す。いくつかの実施形態では、AMDは、任意の段階の網膜疾患であり、カテゴリー2(初期段階)、カテゴリー3(中間段階)およびカテゴリー4(進行段階)のAMDを含むが、これらに限定されない。
【0022】
一実施形態では、AMDは、委縮型(dry form)と滲出型(wet form)の2つの型に一般に分類される。用語「委縮型(dry form)」はAMDの1つの型を指し、この場合、網膜の変質が、黄斑下に小さな黄色の沈着(ドルーゼン)の形成を伴う。いくつかの実施形態では、委縮型(dry form)AMDは、網膜色素上皮の萎縮に起因する、脈絡膜毛細管の萎縮、線維化、ブルッフ膜の肥厚、および黄斑萎縮変性を伴うことが多い。
【0023】
用語「滲出型(wet form)」は、黄斑周辺の網膜下で発症する異常な血管を伴うAMDを示す。異常血管は、破損および出血した場合、黄斑を傷害し、その基部から黄斑を転位させ得る。滲出型(wet form)AMDの症状は、ブルッフ膜の破壊、ガラス膜(glass membrane)、脈絡膜血管新生(CNV)を形成する、網膜下の脈絡膜への血管侵入、次いで、漿液性または出血性円板状剥離を引き起こし最終的に円板状瘢痕となる、黄斑網膜色素上皮下または神経上皮下の血管侵入を含むが、これらに限定されない。臨床的知見によれば、萎縮型はまた、滲出型に変化し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、湿性AMDはまた、脈絡膜血管新生(「CNV」)とも呼ばれる。CNV(または滲出型(wet form))は、「古典的(classic)」CNVおよび「潜在的(occult)」CNVにさらに分類され得る。古典的(classic)CNVは、中間および後期相フレームに漏出を有する血管造影の移行相にわたる明るい高蛍光の境界明瞭な領域を一般に特徴とする。潜在的(occult)CNVは、線維血管性色素上皮剥離を含む。CNVに起因する新生血管は、血液および体液を漏出させる傾向を有し、暗点および変視症の症状を引き起こす。この新生血管は、線維組織の増殖を伴う。新生血管と線維組織のこの複合体は、視細胞を破壊し得る。この病変は、黄斑にわたって成長し続け、進行性で重度かつ不可逆的な失明を生じ得る。個人の片眼がCNVを発症すると、5年以内に約50%の確率で他眼に同様のCNV病変が生じる。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示のCNV病変は、潜在的(occult)CNVを含む。一実施形態では、CNV病変は、古典的(classic)CNVを含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。別の実施形態では、CNV病変は、古典的(classic)CNVおよび潜在的(occult)CNVの両方を含む。
【0026】
本明細書において使用する用語「溶媒和物」は、その溶媒分子が化学量論的複合固体を形成する化合物を指す。溶媒分子の非限定的な例としては、エタノール、メタノール、または塩が挙げられる。
【0027】
用語「水和物」は、溶媒和物の特定の形態を指し、ここで、溶媒分子は水である。一実施形態では、本発明の化合物またはその塩の水和物は、水を含んだ、化合物または塩の化学量論的組成物、例えば、半水和物、一水和物、または二水和物である。
【0028】
用語「塩」は、本発明における化合物の薬学的に許容される塩を意味する。一実施形態では、適した薬学的に許容される塩は、無機または有機酸の塩である。有機酸の非限定的な例としては、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸およびマンデル酸が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、薬学的に許容される塩は、無機塩基の塩、例えば、アルカリ陽イオン(例えば、Li+、Na+またはK+)、アルカリ土類陽イオン(例えば、Mg2+、Ca2+またはBa2+)、アンモニウム陽イオンを含有する塩;および有機塩基の酸性塩(例えば、脂肪族および芳香族置換アンモニウムならびに第四級アンモニウム陽イオン、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジエチルアミン、N,N-ジシクロヘキシルアミン、リジン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノン-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、およびこれらのプロトン化または完全にアルキル化した塩由来のもの)を含む。
【0029】
本明細書において使用する用語「治療剤」は、対象(例えば、ヒトまたは動物)に投与した場合、所望の生物学的または薬理学的作用をもたらす薬剤または化合物を示す。例えば、AMD治療剤は、AMDを患う対象に投与した場合、所望の生物学的または薬理学的作用をもたらす。一実施形態では、AMD治療剤は、VEGF阻害剤、PDGF阻害剤、またはFGF阻害剤を含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。
【0030】
別の実施形態では、AMD治療剤は、E10030、シロリムス、インフリキシマブ、POT-4、JSM6427、ボロシキシマブ、ALG-1001、ATG003、AdPEDF.11、メトトレキサート、3剤併用療法(ベルテポルフィン-ラニビズマブ-デキサメタゾン)を含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。一実施形態では、医薬組成物は、眼内、硝子体内、静脈内、皮下、経口的、または腹腔内に投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、点眼剤、眼軟膏剤(oculentum)、洗眼剤(collyrium)、軟膏、リソソーム、ゲル、液剤、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、または眼内注射の形態である。
【0031】
互換的に使用する用語「持続放出」、「徐放」、「制御放出」、「調節放出」、および「延長放出」は、即放剤形と比較してよりゆっくりと生じる有効成分の放出を示す。一実施形態では、組成物の持続放出特性は、in vitro溶解法およびin vivo血中濃度-時間プロファイルにより測定、および確認する。
【0032】
一実施形態では、持続放出組成物は、2時間後に放出される有効成分の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%未満、4時間後に放出される有効成分の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%未満、6時間後に放出される有効成分の約30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%未満、8時間後に放出される有効成分の約40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%未満、10時間後に放出される有効成分の約50%、60%、70%、80%もしくは90%未満、12時間後に放出される有効成分の約60%、70%、80%もしくは90%未満、および/または16時間後に放出される有効成分の約70%、80%もしくは90%未満のin vitro溶解率を有する。
【0033】
本開示において互換的に使用する用語「微粒子化する」、「微粒子化した」、および「微粒子化」は、物質粒子の平均サイズの低減を示す。一実施形態では、生成される粒子がわずか数マイクロメートル(μm)または直径1μm未満である場合、微粒子化を使用する。微粒子化は、ジェットミル、パールボールミル、高圧均質化、RESS法(超臨界流体の急速膨張法(Rapid Expansion of Supercriticacl Solution))、SAS法(超臨界抗溶媒法(Supercritical Anti-Solvent))、またはPGSS法(ガス飽和流体からの粒子生成法(Particles from Gas Saturated Solution))を含むが、これらに限定されない方法により達成することができる。
【0034】
一実施形態では、微粒子化した物質の平均粒径は、約5μm~約200μmの間である。別の実施形態では、平均粒径は、少なくとも約5μmである。別の実施形態では、平均粒径は、少なくとも約10μmである。別の実施形態では、塩基粒状デンプンの平均粒径は、約5μm~約20μmの間である。別の実施形態では、塩基粒状デンプンの平均粒径は、約5μm~約100μmの間である。別の実施形態では、微粒子化組成物の平均粒径は、約2μm~約4μmの間である。別の実施形態では、平均粒径は、約3μm未満である。別の実施形態では、平均粒径は、約2μm未満である。別の実施形態では、平均粒径は、約1μm未満である。
【0035】
用語「持続放出眼内インプラント」は、眼域に植え込まれた徐放組成物または成分を指す。
【0036】
本明細書において使用する用語「マトリックス」は、生体系と相互作用して、任意の組織または組織の機能を物質に応じて恒久的にまたは一時的に治療、増強、または置き換えるように意図した物質を指す。マトリックスは、その中に組み込むニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体)の送達装置として、および/または細胞内殖マトリックスとして役立つ。
【0037】
本明細書に記載のマトリックスは、液体前駆成分から形成され、これは、体外または体内の必要な部位に足場を形成することが可能である。いくつかの実施形態では、マトリックスは、液体、ペースト等の半固体、または固体の形態である。前駆物質の種類に応じて、マトリックスは、水で膨張させることができるが水に溶解し得ない。すなわち、ヒドロゲルを形成し、一定期間体内に留まる。
【0038】
用語「患者」、「対象」、「個体」等は、本明細書において互換的に使用し、in vitroであろうと、またはin situであろうと、本明細書に記載の方法に適する任意の動物、またはその細胞を指す。好ましい実施形態では、患者、対象、または個体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、モルモット、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、または家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ)である。好ましい実施形態では、患者、対象、または個体は、ヒトである。
【0039】
用語「治療すること」または「治療」は、ヒト等の対象における本明細書に記載の疾患または障害の治療を包含し、(i)疾患もしくは障害を阻害すること、すなわち、発症を阻止すること、(ii)疾患もしくは障害を軽減すること、すなわち、障害の退行を生じること、(iii)障害の進行を遅らせること、および/または(iv)疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状の進行を阻害、軽減、もしくは遅らせることを含む。例えば、眼疾患の治療は、眼疾患の発生の消失、低下もしくは予防、眼疾患のリスクの低減、または眼疾患の進行の阻止を含むが、これらに限定されない。
【0040】
用語「ニンテダニブ」は、ニンテダニブ化合物、ニンテダニブ誘導体、ニンテダニブ類似体、ニンテダニブ塩、ニンテダニブ溶媒和物、ニンテダニブ水和物、ニンテダニブ多形体、またはそれらの一部を指し、これらは、通常、ニンテダニブと関連する、生体応答の少なくとも1つを有する、または促進することが可能である。一実施形態では、ニンテダニブは、ニンテダニブエタンスルホン酸塩である。ニンテダニブ多形体の非限定的な例は、WO2016178064および米国特許第7,119,093号に開示されており、これらのそれぞれは、全体が参照により組み込まれる。
【0041】
薬剤を対象へ「投与すること」または「投与」の用語は、対象に化合物を導入または送達して、その意図した機能を果たすような任意の経路を含む。投与は、眼内、硝子体内、経口的、鼻腔内、非経口的(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、または局所的経路を含む、任意の適した経路により実行することができる。投与は、自己投与および他の人間による投与を含む。
【0042】
用語「類似体」は、1つまたは複数の個々の原子または官能基が、異なる原子または異なる官能基で置き換えられており、類似の特性を有する化合物を一般に生じる化合物を指す。いくつかの態様では、類似体は、別の構造と類似しているが、1つまたは2つの成分が異なる構造を指す。
【0043】
用語「誘導体」は、別の分子または原子を開始化合物に結合させることにより類似の開始化合物から形成される化合物を指す。さらに、本発明による誘導体は、1つもしくは複数の原子もしくは分子を加えることにより、または2つ以上の前駆化合物を合わせことにより前駆化合物から形成された1つまたは複数の化合物を包含する。
【0044】
用語「薬学的に許容される担体」は、当分野で慣習的に使用されて保存、投与、および/または生理活性剤の治癒効果を促進する担体を示す。薬学的に許容される担体の非限定的な例としては、オレオイルポリエチレングリコールグリセリド、リノレオイルグリコールグリコールグリセリド、ラウロイルポリグリコールグリセリド、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、軟質パラフィン(ペトロラタム)、硬質パラフィン、ワックス、ヒマシ油、ピーナツ油、ゴマ油、中鎖トリグリセリド、セテアリルアルコール、ラノリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、または水が挙げられる。
【0045】
本明細書において使用する用語「賦形剤」は、医薬組成物に添加されて所望の稠度または安定作用をもたらす非治療剤を指す。賦形剤の非限定的な例としては、界面活性剤、ゲル化剤、有機共溶媒保存剤、殺真菌剤もしくは抗菌剤、pH調整剤、等張剤、キレート剤、緩衝剤、安定剤、抗酸化剤、増粘剤、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0046】
本明細書において使用する用語「界面活性剤」は、疎水性および親水性部分の両方を含む分子を示し、これにより、水系において安定化し疎水性分子および疎水性分子の凝集体を分散することが可能となる。
【0047】
用語「ゲル化剤」は、ゲルを形成する組成物の特性を促進する物質を指す。本明細書において使用する場合、用語「ゲル」は、程度の差はあるが、固体のように挙動する強固で粘着性の内部構造を指す。一実施形態では、ゲルは流動しない、すなわち、その安定状態にあって実質的に流動しない。
【0048】
用語「保存剤」または「防腐剤」は、生成物中の微生物の増殖を阻害し、それにより組成物の無菌性の維持を助けるための点眼用組成物中の薬剤を指す。
【0049】
用語「エマルジョン」は、以下、水および有機薬剤(例えば、油)を含む任意の混合物を指している。いくつかの実施形態では、エマルジョンは、凝集体、小胞、ミセル、逆ミセル、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、リポソームまたはこれらの任意の組合せの形態である。用語「乳化剤」は、ポリマー、オリゴマーまたはモノマーとして提供され、非イオン性、陰イオン性もしくは陽イオン性洗剤および/または界面活性剤である、任意の物質または分子を指す。一実施形態では、乳化剤は、例えば、少なくとも1つの極性または荷電原子を含む飽和または非飽和の長鎖アルキルのように、親油性および親水性部分の両方を含む。
【0050】
用語「水」は、水または水溶液を指す。いくつかの実施形態では、水は、任意の天然のもしくは精製した、蒸留した、ろ過した、脱イオン化した水、水懸濁液、水混和性溶媒もしくは希釈液、水混和性水相もしくは水混和性エマルジョンまたはこれらの任意の組合せである。
【0051】
用語「カプセル」は、物質の任意の送達システムを指す。いくつかの実施形態では、カプセルは、眼に送達される有効成分を含む。一実施形態では、カプセルは、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む。
【0052】
用語「等張剤」は、製剤の等張性を部分的に維持し、かつ/または製剤中に存在する治療上有効成分のレベル、割合、もしくは比率を少なくとも部分的に維持するように機能する成分を指す。
【0053】
本明細書において使用する用語「pH調整剤」は、酸性、塩基性、またはpH緩衝剤を指す。pH調整剤は、溶液中のpHを調整するために使用され、それにより、溶液のpHが選択されたpH値の範囲内となる、または選択されたpH値を超えて増大する。
【0054】
本明細書において使用する用語「キレート剤」は、キレート基および少なくとも1つのペンダントリンカー基を有する多官能化合物に関し、ここで、キレート基は、別の分子でキレート化することが可能であり、ペンダントリンカー基は、1つまたは複数の標的分子に共有結合することが可能である。
【0055】
本明細書において使用する用語「w/v」は、重量/体積を指す。例えば、ある特定の化合物を1%w/vの濃度で含む溶液では、1Lのこの溶液は10gのこの化合物を含む。
【0056】
用語「治療有効量」または「有効量」は、投与した場合、所望の効果を生じさせるのに十分である薬剤の量を指す。例えば、組成物の有効量は、眼疾患に関連する症状または状態を治療、制御、緩和、または改善するのに十分な量であり得る。薬剤の治療有効量は、治療する病原体およびその重症度ならびに治療を受ける患者の年齢、体重に応じて変化し得る。当業者は、このような因子および他の因子に応じて適切な用量を決定することが可能である。組成物はまた、1つまたは複数の追加の治療剤または化合物と組み合わせて投与することができる。本明細書に記載の方法では、治療化合物は、疾患または障害の1つまたは複数の徴候または症状を有する対象に投与することができる。
【0057】
ニンテダニブ(IUPAC名:メチル(3Z)-3-[[4-[メチル-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)アセチル]アミノ]アニリノ]-フェニルメチリデン]-2-オキソ-1H-インドール-6-カルボキシレート)は、最近に見出された血管新生阻害剤であり、血管新生に関与する3つの鍵となる重要な受容体ファミリー:血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)および線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)に同時に作用することができる。ニンテダニブの構造を図1に示す。
【0058】
ニンテダニブは、特発性肺線維症(IPF)の治療用にFDAおよびEMAにより認可され、また、第1の選択化学療法後の組織学的方法により診断された成人患者において、腺癌である局所進行性または転移性または局所再発性非小細胞肺がん(NSCLC)へ使用されるドセタキセルとの併用にてEMAにより認可された。
【0059】
主に45歳以降に生じ、年齢とともに有病率が増大する加齢黄斑変性(AMD)は、現在、高齢者において失明を引き起こす重要な疾患のうちの1つである。この疾患は、2つの型:乾燥(非滲出とも呼ばれる)および湿性(滲出とも呼ばれる)に分類される。委縮型(dry form)は主に、網膜色素上皮の萎縮に起因する、脈絡膜毛細管の萎縮、線維化、ブルッフ膜の肥厚、および黄斑萎縮変性が挙げられ、滲出型(wet form)は主に、ブルッフ膜の破壊、ガラス膜、脈絡膜血管新生(CNV)を形成する、網膜下の脈絡膜への血管侵入、次いで、漿液性または出血性円板状剥離を引き起こし最終的に円板状瘢痕となる、黄斑網膜色素上皮下または神経上皮下の血管侵入が挙げられる。臨床的知見によれば、萎縮型はまた、滲出型に変化し得る。
【0060】
血管内皮増殖因子(VEGF)受容体経路は、多重固形腫瘍および湿性加齢黄斑変性(AMD)の治療に使用され得る古典的(classic)な血管新生シグナル伝達経路である。FDAにより認可されている、VEGFを標的とするモノクローナル抗体または融合タンパク質は、アバスチン、ルセンティス、アイリーア、サイラムザ、およびコンベルセプト(Conbercept)(「ルミチン(Lumitin)」としても知られる)を含み、これらは、中国企業により開発され、2013年に上市された。しかし、VEGF、PDGF、およびFGFを標的とする、眼症状の治療のための低分子薬物は、着手されていない。
【0061】
これは、AMD等の眼疾患を治療するより有効な方法を考案し、眼疾患に対する治療効果が向上した医薬組成物を見出す差し迫ったニーズを浮き彫りにする。
【0062】
前述を考慮して、ニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体)の点眼医薬組成物としての使用を提供することが本発明の目的である。組成物は、眼、特に眼の裏側に(例えば、網膜、ブルッフ膜、および脈絡膜域中に)適用した場合、十分な安定性を有し、眼疾患に対して有効である。
【0063】
一実施形態では、眼疾患は、加齢黄斑変性(「AMD」)、脈絡膜血管新生(「CNV」)、網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜色素上皮の萎縮、網膜色素上皮の肥大、網膜静脈閉塞症、脈絡膜網膜静脈閉塞症、黄斑浮腫、前部血管新生、角膜血管新生、翼状片、網膜下浮腫、脈絡膜血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、網膜上膜、黄斑円孔、血管の線条、網膜色素変性、シュツットガルト病、緑内障、白内障、炎症状態、難治性異常、円錐角膜、未熟児網膜症、網膜浮腫、または強度近視を含む。
【0064】
眼疾患を治療する方法
加齢黄斑変性(AMD)は、重度で不可逆的な失明を引き起こし、高齢者における失明の主な原因である。AMDには2つの主要なカテゴリー、委縮型(dry form)および滲出型(wet form)がある。委縮型(dry form)の患者は、網膜色素上皮(RPE)においてドルーゼンおよび萎縮性の変化を特徴とすることが多い。脈絡膜血管新生(CNV)としても知られる滲出型(wet form)は、AMDによる重度の失明の大半の原因となる。CNVは、ブルッフ膜の外面の破壊による脈絡膜毛細管の内殖により生じる。毎年、米国では65歳超の個体70,000人超がCNVを発症する。CNV(または滲出型(wet form))は、「古典的(classic)」CNVおよび「潜在的(occult)」CNVにさらに分類され得る。古典的(classic)CNVは、中間および後期相フレームに漏出を有する血管造影の移行相にわたる明るい高蛍光の境界明瞭な領域を一般に特徴とする。潜在的(occult)CNVは、線維血管性色素上皮剥離を含む。CNVに起因する新生血管は、血液および体液を漏出させる傾向を有し、暗点および変視症の症状を引き起こす。この新生血管は、線維組織の増殖を伴う。新生血管と線維組織のこの複合体は、視細胞を破壊し得る。この病変は、黄斑にわたって成長し続け、進行性で重度かつ不可逆的な失明を生じ得る。個体の片眼がCNVを発症すると、5年以内に約50%の確率で他眼に同様のCNV病変が生じる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示のCNV病変は、潜在的(occult)CNVを含む。一実施形態では、CNV病変は、古典的(classic)CNVを含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。別の実施形態では、CNV病変は、古典的(classic)CNVおよび潜在的(occult)CNVの両方を含む。古典的(classic)CNVの領域が0%超であるが50%未満を占める病変は、「低度に古典的(minimally classic)」であると呼ばれる。古典的(classic)CNVの領域が病変全体の領域の少なくとも50%を占める病変は、「優位に古典的(predominantly classic)」であると呼ばれる。
【0066】
したがって、本開示は、眼疾患を治療する方法であって、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む、有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象の眼に投与するステップを含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる、方法を提供する。一実施形態では、医薬組成物は0.01mg/mL~20mg/mL、0.1mg/mL~5mg/mL、0.5mg/mL~約4mg/mL、1mg/mL~4mg/mL、2mg/mL~3mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。一実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約4mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約3mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、25mg/mL、50mg/mLもしくは100mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、ニンテダニブの塩は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩である。
【0067】
別の態様では、医薬組成物中のニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体)の濃度は、少なくとも0.001%w/v、0.01%w/v、0.1%w/v、1%w/v、5%w/vまたは10%w/v、15%w/v、20%w/v、30%w/v、40%w/vまたは50%w/vである。別の実施形態では、この濃度は0.001%w/v~50%w/v、0.001%w/v~30%w/v、0.01%w/v~20%w/v、0.01%w/v~10%w/v、0.1%w/v~10%w/vまたは1%w/v~5%w/vである。いくつかの実施形態では、ニンテダニブの塩は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩である。
【0068】
眼に適用される、本発明に記載の点眼剤の医薬組成物の総量は通常、毎回投与される用量であり、片目あたり0.01~50mg、好ましくは0.02~10mg、より好ましくは0.05~5mgの投与量で、1日1回または1回超、好ましくは最大5回、最も好ましくは最大3回投与される。
【0069】
本発明の点眼液の化学安定性は1日、7日、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、8ヶ月、16ヶ月、または24ヶ月超である。いくつかの実施形態では、化学安定性は、有効成分が保存中に著しくは劣化しないことを意味する。
【0070】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象の眼の任意の領域に投与される。一実施形態では、医薬組成物は、眼の中心領域に適用される。一実施形態では、医薬組成物は、黄斑に適用される。
【0071】
別の態様では、医薬組成物は0.01mg/mL~20mg/mL、0.1mg/mL~5mg/mL、0.5mg/mL~約4mg/mL、1mg/mL~4mg/mL、2mg/mL~3mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、25mg/mL、50mg/mLまたは100mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。一実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、約5mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。
【0072】
別の実施形態では、医薬組成物は、AMD治療剤をさらに含む。一実施形態では、AMD治療剤は、VEGF阻害剤、PDGF阻害剤、またはFGF阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、AMD治療剤はE10030、シロリムス、インフリキシマブ、POT-4、JSM6427、ボロシキシマブ、ALG-1001、ATG003、AdPEDF.11、メトトレキサート、3剤併用療法(ベルテポルフィン-ラニビズマブ-デキサメタゾン)を含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。一実施形態では、医薬組成物は、眼内、硝子体内、静脈内、皮下、経口的、または腹腔内に投与される。別の実施形態では、医薬組成物は、点眼剤、眼軟膏剤、洗眼剤、軟膏、リソソーム、ゲル、液剤、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、または眼内注射の形態である。
【0073】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、血管新生阻害剤をさらに含む。非限定的な血管新生阻害剤は、スクアラミン、スクアラミン乳酸塩(Evizon(商標)、Genaear Corp.)、およびクルクミン;ペガプタニブ(Macugen(登録商標)、Eyetech/Pfizer)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標)、Genentech,Inc.)、濃縮サメ軟骨抽出物(Neovastat(登録商標)、Eterna Zentaris)、PTK787(バタラニブ、Schering AG/Novartis)、リボザイム抗血管新生剤(Angiozyme(登録商標)、Sirma Therapeutics,Inc./Chiron Corp.);AZD6474(Zactima(登録商標)、AstraZeneca AB Ltd.)、抗血管新生キメラモノクローナル抗体特異的VEGF受容体2(IMC-1C11、ImClone Sys.Inc.)、イソクマリン2-(8-ヒドロキシ-6-メトキシ-1-オキソ-1H-2-ベンゾピラン-3-イル)プロピオン酸(NM-3、Ilex Oncology Inc.)、SU668(Pfizer)、イソプロポキシメチル-12-(3-ヒドロキシプロピル)イデノ[2,1-a]ピロ[3,4-c]カルバゾールe-5-オン(CEP-5214、Cephalon)、CEP-7055(CEP-5214のN,N-ジメチルグリシンエステルプロドラッグ、Cephalon)、およびPTC299(PTC Therapeutics)を含む血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤;インテグリン拮抗薬、例えば、抗αvβ3抗体(Vitaxin(登録商標)、Medimmune Inc.);RDGペプチド模倣剤、例えば、S137およびS247(Pfizer)、立体構造的に制限された二環ラクタムArg-Gly-Asp含有擬ペプチド、例えば、ST1646(Sigma Tau S.p.A.);DPC A803350(Bristol-Myers Squibb)、およびo-グアニジン(3D Pharmaceuticals Inc.);マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、プリノマスタット(AG3340、Pfizer)、(ISV-616、InSite Vision)、(TIMP-3、NIH);S3304(塩野義製薬株式会社);BMS275291(Celltech/Bristol-Myers Squibb);SC77964(Pfizer);ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)、Genentech,Inc.);ABT518(Abbott Labs.);CV247(Ivy Medical);NX-278-L抗VEGFアプタマー(EyeTech Pharm.);2’-O-メトキシエチルアンチセンスC-raf癌遺伝子阻害剤(ISIS-13650、Isis Pharm.,Inc./iCo Therapeutics,Inc.);ビトロネクチンおよびオステオポンチン拮抗薬(3D Pharm.);コンブレタスタチンA-4リン酸塩(CA4P、OxiGene,Inc.);fab断片α-V/β-1インテグリン拮抗薬(Eos-200-F、Protein Design Labs);α-v/β-3インテグリン拮抗薬(Abbott Labs.);ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子断片(A6、Angstrom Pharm.);VEGF拮抗薬(AAV-PEDF、Chiron Corp.;VEGF-R、Johnson&Johnson/Celltech;SU10944、Sugen/Pfizer;VEGF-TRAP、Regeneron;SP-(V5.2)C、Supratek Pharm.Inc.;エンドスタチンVEGF拮抗薬、EntreMed,Inc.(Rockville,Md.);kdrチロシンキナーゼ阻害剤(EG-3306、Ark Therapeutics);サイトカラシンE(NIH);カリクレイン結合タンパク質(Medical Univ.,SC);コンブレタスタチン類似体(MV-5-40、Tulane);色素上皮由来増殖因子(Med.Univ.SC);AdPEDF、GenVec,Inc.を含む);プラスミノーゲンクリングル(Medical Univ.SC);ラパマイシン;サイトカイン合成阻害剤/p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ阻害剤(SB-220025、GlaxoSmithKline);FGF1受容体拮抗薬/チロシンキナーゼ阻害剤(Pfizer/Sugen);ブラジキニンB1受容体拮抗薬(B-9858、Cortech,Inc.);殺菌性/透過性増強タンパク質(Neuprex(登録商標)、Xoma Ltd.);プロテインキナーゼC阻害剤(Hypericin、Sigma-Aldrich、St.Louis、Mo.);リボキシスタウリンメシル酸塩(LY-333531、Eli Lilly&Co.);ポリスルホン酸誘導体(富士フイルム株式会社)、増殖因子拮抗薬、例えば、TBC-2653およびTBC-3685(Texas Biotech.Corp.);内膜内皮細胞キナーゼ(Tunica internal endothelial cell kinase)(Amgen Inc.)を含む。
【0074】
一態様では、治療毎の各眼の有効量は0.01μg~50μg、0.1μg~25μg、0.5μg~25μg、1μg~25μg、2.5μg~10μgまたは2.5μg~5μgのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、多形体、またはこれらの組合せである。一実施形態では、治療毎の各眼の有効量は0.1μg~25μgのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、多形体、またはこれらの組合せである。
【0075】
いくつかの実施形態では、治療毎の各眼の有効量は0.5μg~25μgのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、多形体、またはこれらの組合せである。別の実施形態では、治療毎の各眼の有効量は2.5μg~10μgのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、多形体、またはこれらの組合せである。異なる実施形態では、治療毎の各眼の有効量は2.5μg~5μgのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、多形体、またはこれらの組合せである。
【0076】
別の態様では、眼疾患は、加齢黄斑変性(「AMD」)、脈絡膜血管新生(「CNV」)、網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜色素上皮の萎縮、網膜色素上皮の肥大、網膜静脈閉塞症、脈絡膜網膜静脈閉塞症、黄斑浮腫、前部血管新生、角膜血管新生、翼状片、網膜下浮腫、脈絡膜血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、網膜上膜、黄斑円孔、血管の線条、網膜色素変性、シュツットガルト病、緑内障、白内障、炎症状態、難治性異常、円錐角膜、未熟児網膜症、網膜浮腫、または強度近視である。いくつかの実施形態では、眼疾患はAMDである。一実施形態では、眼疾患はCNVである。
【0077】
別の実施形態では、医薬組成物は、結合剤、香味剤、滑沢剤、流動化剤、崩壊剤、遅延剤、またはこれらの組合せをさらに含む。一実施形態では、結合剤は1つまたは複数のデンプン、加工デンプン、セルロース、変性セルロース、ビール酵母、ショ糖、デキストロース、乳清、リン酸二カルシウム、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、香味剤は1つまたは複数の乾燥レバー、レバーエキス、チーズ、チーズ製品、天然香料、人工香料、ミルク風味製品、大豆風味製品、ビール酵母、またはこれらの組合せを含む。さらなる実施形態では、滑沢剤は1つまたは複数のステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、デンプン、加工デンプン、変性セルロース、またはこれらの組合せを含む。さらに別の実施形態では、流動化剤は1つまたは複数の二酸化ケイ素、変性シリカ、ヒュームドシリカ、タルク、これらの組合せを含む。異なる実施形態では、崩壊剤は1つまたは複数のクロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、加工デンプン、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、遅延剤は1つまたは複数のステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、デンプン、加工デンプン、メタクリル酸ポリマー、またはこれらの組合せを含む。
【0078】
一実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。一実施形態では、賦形剤は、界面活性剤、ゲル化剤、有機共溶媒保存剤、殺真菌剤もしくは抗菌剤、pH調整剤、等張剤、キレート剤、緩衝剤、安定剤、抗酸化剤、増粘剤、またはこれらの組合せを含む。
【0079】
別の実施形態では、担体は、オレオイルポリエチレングリコールグリセリド、リノレオイルグリコールグリコールグリセリド、ラウロイルポリグリコールグリセリド、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、軟質パラフィン(ペトロラタム)、硬質パラフィン、ワックス、ヒマシ油、ピーナツ油、ゴマ油、中鎖トリグリセリド、セテアリルアルコール、ラノリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、または水を含む。
【0080】
医薬組成物
本開示はまた、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、多形体、またはこれらの組合せを含む、眼疾患の治療のための医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は0.01mg/mL~20mg/mL、0.1mg/mL~5mg/mL、0.5mg/mL~約4mg/mL、1mg/mL~4mg/mL、2mg/mL~3mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。一実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約4mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mL~約3mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、25mg/mL、50mg/mLまたは100mg/mLのニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む。別の態様では、医薬組成物中のニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体)の濃度は、少なくとも0.001%w/v、0.01%w/v、0.1%w/v、1%w/v、5%w/vまたは10%w/v、15%w/v、20%w/v、30%w/v、40%w/vまたは50%w/vである。別の実施形態では、この濃度は0.001%w/v~50%w/v、0.001%w/v~30%w/v、0.01%w/v~20%w/v、0.01%w/v~10%w/v、0.1%w/v~10%w/vまたは1%w/v~5%w/vである。
【0081】
いくつかの実施形態では、ニンテダニブの塩は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩である。一実施形態では、医薬組成物は0.01mg/mL~20mg/mL、0.1mg/mL~5mg/mL、0.5mg/mL~約4mg/mL、1mg/mL~4mg/mL、2mg/mL~3mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、25mg/mL、50mg/mLまたは100mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。一実施形態では、医薬組成物は、約1mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、約5mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。
【0082】
医薬組成物は、点眼剤、眼軟膏剤、洗眼剤、軟膏、リソソーム、ゲル、液剤、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、または眼内注射として使用することができる。
【0083】
医薬組成物のpH値は、有効成分、他の成分、温度、および多くの周囲条件に応じて変化し得る。一方、pH値は、医薬組成物中の有効成分の治療効果に影響し得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は5~9の範囲のpH値を有する。別の実施形態では、医薬組成物は6.5~7.5の範囲のpH値を有する。一実施形態では、医薬組成物は6.8のpH値を有する。別の実施形態では、医薬組成物は7.5のpH値を有する。
【0084】
別の実施形態では、医薬組成物は、AMD治療剤をさらに含む。一実施形態では、AMD治療剤は、VEGF阻害剤、PDGF阻害剤、またはFGF阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、AMD治療剤はE10030、シロリムス、インフリキシマブ、POT-4、JSM6427、ボロシキシマブ、ALG-1001、ATG003、AdPEDF.11、メトトレキサート、3剤併用療法(ベルテポルフィン-ラニビズマブ-デキサメタゾン)を含む、または本質的にからなる、あるいはさらにからなる。
【0085】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、血管新生阻害剤をさらに含む。非限定的な血管新生阻害剤は、スクアラミン、スクアラミン乳酸塩(Evizon(商標)、Genaear Corp.)、およびクルクミン;ペガプタニブ(Macugen(登録商標)、Eyetech/Pfizer)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標)、Genentech,Inc.)、濃縮サメ軟骨抽出物(Neovastat(登録商標)、Eterna Zentaris)、PTK787(バタラニブ、Schering AG/Novartis)、リボザイム抗血管新生剤(Angiozyme(登録商標)、Sirma Therapeutics,Inc./Chiron Corp.);AZD6474(Zactima(登録商標)、AstraZeneca AB Ltd.)、抗血管新生キメラモノクローナル抗体特異的VEGF受容体2(IMC-1C11、ImClone Sys.Inc.)、イソクマリン2-(8-ヒドロキシ-6-メトキシ-1-オキソ-1H-2-ベンゾピラン-3-イル)プロピオン酸(NM-3、Ilex Oncology Inc.)、SU668(Pfizer)、イソプロポキシメチル-12-(3-ヒドロキシプロピル)イデノ[2,1-a]ピロ[3,4-c]カルバゾールe-5-オン(CEP-5214、Cephalon)、CEP-7055(CEP-5214のN,N-ジメチルグリシンエステルプロドラッグ、Cephalon)、およびPTC299(PTC Therapeutics)を含む血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤;インテグリン拮抗薬、例えば、抗αvβ3抗体(Vitaxin(登録商標)、Medimmune Inc.);RDGペプチド模倣剤、例えば、S137およびS247(Pfizer)、立体構造的に制限された二環ラクタムArg-Gly-Asp含有擬ペプチド、例えば、ST1646(Sigma Tau S.p.A.);DPC A803350(Bristol-Myers Squibb)、およびo-グアニジン(3D Pharmaceuticals Inc.);マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、プリノマスタット(AG3340、Pfizer)、(ISV-616、InSite Vision)、(TIMP-3、NIH);S3304(塩野義製薬株式会社)、BMS275291(Celltech/Bristol-Myers Squibb);SC77964(Pfizer);ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)、Genentech,Inc.);ABT518(Abbott Labs.);CV247(Ivy Medical);NX-278-L抗VEGFアプタマー(EyeTech Pharm.);2’-O-メトキシエチルアンチセンスC-raf癌遺伝子阻害剤(ISIS-13650、Isis Pharm.,Inc./iCo Therapeutics,Inc.);ビトロネクチンおよびオステオポンチン拮抗薬(3D Pharm.);コンブレタスタチンA-4リン酸塩(CA4P、OxiGene,Inc.);fab断片α-V/β-1インテグリン拮抗薬(Eos-200-F、Protein Design Labs);α-v/β-3インテグリン拮抗薬(Abbott Labs.);ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子断片(A6、Angstrom Pharm.);VEGF拮抗薬(AAV-PEDF、Chiron Corp.;VEGF-R、Johnson&Johnson/Celltech;SU10944、Sugen/Pfizer;VEGF-TRAP、Regeneron;SP-(V5.2)C、Supratek Pharm.Inc.;エンドスタチンVEGF拮抗薬、EntreMed,Inc.(Rockville,Md.);kdrチロシンキナーゼ阻害剤(EG-3306、Ark Therapeutics);サイトカラシンE(NIH);カリクレイン結合タンパク質(Medical Univ.,SC);コンブレタスタチン類似体(MV-5-40、Tulane);色素上皮由来増殖因子(Med.Univ.SC);AdPEDF、GenVec,Inc.を含む);プラスミノーゲンクリングル(Medical Univ.SC);ラパマイシン;サイトカイン合成阻害剤/p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ阻害剤(SB-220025、GlaxoSmithKline);FGF1受容体拮抗薬/チロシンキナーゼ阻害剤(Pfizer/Sugen);ブラジキニンB1受容体拮抗薬(B-9858、Cortech,Inc.);殺菌性/透過性増強タンパク質(Neuprex(登録商標)、Xoma Ltd.);プロテインキナーゼC阻害剤(Hypericin、Sigma-Aldrich、St.Louis、Mo.);リボキシスタウリンメシル酸塩(LY-333531、Eli Lilly&Co.);ポリスルホン酸誘導体(富士フイルム株式会社);増殖因子拮抗薬、例えば、TBC-2653およびTBC-3685(Texas Biotech.Corp.);内膜内皮細胞キナーゼ(Tunica internal endothelial cell kinase)(Amgen Inc.)を含む。
【0086】
本発明による製剤は、少なくとも眼疾患(例えば、AMDおよびCNV)の治療に関連する所望の局所性または全身性生理学的または薬理学的作用を得るのに有効な有効成分の制御的および持続放出をもたらす上で特定の適用性を有する。一実施形態では、医薬組成物は、持続放出眼内インプラント、マトリックス調製物、カプセル調製物、またはこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、持続放出眼内インプラントは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、プルラン、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、ヒアルロン酸、カゼイン、寒天、アカシア、デキストリン、エチルセルロース、メチルセルロース、キチン、キトサン、マンナン、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アルブミン、乳酸-グリコール酸コポリマー、またはこれらの組合せを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。一実施形態では、賦形剤は、界面活性剤、ゲル化剤、有機共溶媒保存剤、殺真菌剤もしくは抗菌剤、pH調整剤、等張剤、キレート剤、緩衝剤、安定剤、抗酸化剤、増粘剤、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、担体は、オレオイルポリエチレングリコールグリセリド、リノレオイルグリコールグリコールグリセリド、ラウロイルポリグリコールグリセリド、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、軟質パラフィン(ペトロラタム)、硬質パラフィン、ワックス、ヒマシ油、ピーナツ油、ゴマ油、中鎖トリグリセリド、セテアリルアルコール、ラノリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、または水を含む。
【0088】
別の実施形態では、医薬組成物は、流動パラフィン、無水ラノリン、塩化ベンザルコニウム、ワセリン、無水ラノリン、大豆レシチン、コレステロール、トリグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油、グリセリン、ビタミンE、Tween80、またはこれらの組合せを含む。一実施形態では、トリグリセリドは、中鎖トリグリセリドである。
【0089】
一実施形態では、医薬組成物は、結合剤、香味剤、滑沢剤、流動化剤、崩壊剤、遅延剤、またはこれらの組合せをさらに含む。
【0090】
本開示の医薬組成物は、種々の型の眼疾患の治療に使用可能である。一実施形態では、眼疾患は、加齢黄斑変性(「AMD」)、脈絡膜血管新生(「CNV」)、網膜剥離、糖尿病網膜症、網膜色素上皮の萎縮、網膜色素上皮の肥大、網膜静脈閉塞症、脈絡膜網膜静脈閉塞症、黄斑浮腫、前部血管新生、角膜血管新生、翼状片、網膜下浮腫、脈絡膜血管新生、嚢胞様黄斑浮腫、網膜上膜、黄斑円孔、血管の線条、網膜色素変性、シュツットガルト病、緑内障、白内障、炎症状態、難治性異常、円錐角膜、未熟児網膜症、網膜浮腫、および強度近視を含む。一実施形態では、眼疾患はAMDである。別の実施形態では、眼疾患はCNVである。
【0091】
点眼製剤または局所眼用製剤
本開示はまた、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む、医薬点眼製剤または局所眼用製剤を提供する。
【0092】
点眼製剤中のニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体)の量は0.01%w/v~10%w/v、0.3%w/v~5%w/v、0.5%w/v~1%w/v、または0.5%w/vの間の範囲であり得る。他の割合は0.1%w/v、0.15%w/v、0.2%w/v、0.3%w/v、0.4%w/v、0.5%w/v、0.6%w/v、0.7%w/v、0.8%w/v、0.9%w/v、1.0%w/v、1.5%w/v、2%w/v、3%w/v、3.5%w/v、4%w/vおよび5%w/vを含む。別の実施形態では、割合は0.001%w/v、0.01%w/v、0.1%w/v、1%w/v、5%w/vまたは10%w/v、15%w/v、20%w/v、30%w/v、40%w/vまたは50%w/vである。いくつかの実施形態では、ニンテダニブの塩はニンテダニブエタンスルホン酸塩である。
【0093】
本開示において使用する塩化ベンゼトニウムまたは塩化ベンザルコニウムは、殺菌作用を有し、この使用中の点眼剤への微生物のあらゆる混入を防ぐことができる。点眼製剤中の塩化ベンザルコニウムの量は0.01%w/v~10%w/v、好ましくは0.05%w/v~4%w/v、より好ましくは0.1%w/v~1%w/v、および最も好ましくは0.1%w/v~0.15%w/vの間の範囲であり得る。他の割合は0.01%w/v、0.02%w/v、0.03%w/v、0.04%w/v、0.05%w/v、0.06%w/v、0.07%w/v、0.08%w/v、0.09%w/v、0.1%w/v、0.125%w/v、0.15%w/v、0.2%w/v、0.3%w/v、0.4%w/v、0.5%w/v、0.6%w/v、0.7%w/v、0.8%w/v、0.9%w/v、1.0%w/v、1.5%w/v、2%w/v、3%w/v、3.5%w/v、4%w/vおよび5%w/vを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、点眼製剤は1~20mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩、50~200mg/mLの中鎖トリグリセリド、5~30mg/mLの大豆レシチン、2~20mg/mLのコレステロール、5~50mg/mLのグリセリン、0.05~0.5mg/mLの塩化ベンザルコニウムおよび0.1~1mg/mLのビタミンEを含む。別の実施形態では、製剤は7~15mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩、100~200mg/mLの中鎖トリグリセリド、10~20mg/mLの大豆レシチン、2~6mg/mLのコレステロール、15~30mg/mLのグリセリン、0.05~0.2mg/mLの塩化ベンザルコニウムおよび0.2~0.5mg/mLのビタミンEを含む。別の実施形態では、点眼製剤は0.1~100mg/mL、1~50mg/mL、2~20mg/mLまたは5~15mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。別の実施形態では、点眼製剤は1~20mg/mL、2~15mg/mLまたは5~12mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。好ましい実施形態では、製剤は10mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩、150mg/mLの中鎖トリグリセリド、15mg/mLの大豆レシチン、4mg/mLのコレステロール、20mg/mLのグリセリン、0.1mg/mLの塩化ベンザルコニウムおよび0.3mg/mLのビタミンEを含む。別の実施形態では、医薬製剤は10mg/mLのニンテダニブエタンスルホン酸塩を含む。
【0095】
一実施形態では、医薬点眼製剤は、Tween80またはポリオキシエチレンヒマシ油をさらに含む。別の実施形態では、製剤は、眼軟膏剤、洗眼剤、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、または眼内注射の形態である。
【0096】
眼軟膏は、活性剤の眼との接触を懸濁剤および確実には液剤よりも長く維持する傾向がある。場合によっては、軟膏は涙液により容易には除去されないため、視界をゆがませる傾向がある。いくつかの実施形態では、軟膏は、日中使用する点眼剤の補助療法として夜に使用する。一実施形態では、軟膏は、日中使用する。一実施形態では、本開示の軟膏は、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体を含む。
【0097】
医薬製剤のpH値は5~9の範囲にわたる。一実施形態では、pH値は6.5~7.5の範囲である。別の実施形態では、pH値は5~9の範囲である。
【0098】
無菌性は、眼用製剤には重要である。汚染された製剤は、眼感染症を生じる可能性があり、これは既存の眼疾患を悪化させ得るか、または新たな疾患を引き起こし得る。汚染により、特に緑膿菌(P.aeruginosa)微生物が含まれる場合、最終的に失明が生じ得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の眼用製剤は、無菌性を保証する本発明の組成物の液剤、ゲル、懸濁剤および軟膏が特有である技術を使用して調製する。滅菌製剤は、滅菌容器にパッケージングされている。多くの局所眼用製品は、多投与剤形に一般にパッケージングされている。このため、滅菌容器にパッケージされていない使用中の無菌製品への微生物混入は、保存剤により防ぐことができる。点眼製剤に適した保存剤の非限定的な例としては、第四級アンモニウム化合物(塩)、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、セトリミド、臭化ベンゾドデシニウムおよび塩化ベンゾキソニウム;チオサリチル酸のアルキル水銀塩、例えば、チメロサール;パラベン、例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベン;キレート剤、例えば、エデト酸二ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム;他の薬剤、例えば、クロロブタノール、ホウ酸、ソルビン酸、フェニルエタノール;Purite(登録商標)二酸化塩素;polyquad(登録商標)ポリクオタニウム-1;およびAldox(登録商標)ミリスタミドプロピルジエチルアミン;または当業者に公知の他の薬剤が挙げられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、持続放出眼内インプラント、マトリックス調製物、カプセル調製物、またはこれらの組合せをさらに含む。一実施形態では、持続放出眼内インプラントは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、プルラン、ゼラチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、ヒアルロン酸、カゼイン、寒天、アカシア、デキストリン、エチルセルロース、メチルセルロース、キチン、キトサン、マンナン、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アルブミン、乳酸-グリコール酸コポリマー、またはこれらの組合せを含む。
【0100】
一実施形態では、医薬製剤は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。一実施形態では、賦形剤は、界面活性剤、ゲル化剤、有機共溶媒保存剤、殺真菌剤もしくは抗菌剤、pH調整剤、等張剤、キレート剤、緩衝剤、安定剤、抗酸化剤、増粘剤、またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、担体は、オレオイルポリエチレングリコールグリセリド、リノレオイルグリコールグリコールグリセリド、ラウロイルポリグリコールグリセリド、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、軟質パラフィン(ペトロラタム)、硬質パラフィン、ワックス、ヒマシ油、ピーナツ油、ゴマ油、中鎖トリグリセリド、セテアリルアルコール、ラノリン、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、または水を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、主張する医薬製剤は、流動パラフィン、無水ラノリン、塩化ベンザルコニウム、ワセリン、無水ラノリン、大豆レシチン、コレステロール、トリグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油、グリセリン、ビタミンE、Tween80、またはこれらの組合せをさらに含む。一実施形態では、医薬製剤は、結合剤、香味剤、滑沢剤、流動化剤、崩壊剤、遅延剤、またはこれらの組合せを含む。
【0102】
医薬組成物または製剤は1つまたは複数の単位製剤を含む。各単位製剤に含有される有効成分の重量は、有効成分の有効用量のn倍であり、ここで、nは0.1~1の間の数であり、好ましくは、nは1である。一実施形態では、薬物が点眼剤である場合、単一の単位調製製剤は、1滴を意味する。薬物が眼軟膏剤である場合、1単位調製製剤は、ペーストの1cmの長さである。薬物が洗眼剤である場合、1単位製剤は5mlの量を指す。薬物がリポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェアまたは眼内注射である場合、1単位製剤は0.05mLの注射体積を指す。
【0103】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中の有効成分(例えば、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体)の有効治療用量は0.1~25μg/回/眼である。一実施形態では、医薬組成物中の有効成分(例えば、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体)の有効治療用量は0.5~25μg/回/眼である。別の実施形態では、医薬組成物中の有効成分(例えば、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体)の有効治療用量は2.5~10μg/回/眼である。別の実施形態では、医薬組成物中の有効成分(例えば、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体)の有効治療用量は2.5~5μg/回/眼である。
【0104】
上記技術スキームを実装するため、本発明は、少なくとも次の利点を有する。実験研究では、ニンテダニブおよびその塩または溶媒和物は、脈絡膜血管新生等の眼疾患に対する有意な治療効果を有することが見出されており、点眼剤は、広範な用量(例えば0.1~25μg/回/眼)において、より良い活性を示し、良好な安全性および効果を示した。
【0105】
本発明の点眼剤は、本発明の目的を損なわない限り、前述の成分に加えて点眼剤に通常使用される他の成分を含むことができる。このような他の添加剤は、例えば、緩衝剤、等張剤、界面活性剤およびキレート剤を含む。緩衝剤の例は、リン酸塩、ホウ酸塩および有機塩基である。等張剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸およびホウ酸ナトリウムが挙げられる。界面活性剤の例は、ポリソルベート80およびポリオキシエチレン-硬化ヒマシ油60である。
【0106】
医薬組成物を調製するプロセス
さらに、本開示は、それを必要とする対象に投与するのに適した医薬製剤を調製する方法に関する。医薬組成物を調製する方法はまた、CN App.No.201510908457.7に開示されており、その全体を参照により組み込む。
【0107】
本発明の方法は、ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む組成物を微粒子化するステップ、微粒子化した組成物を他の成分と混合するステップ、およびこの混合物を超音波処理するステップを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物により、エマルジョンを形成する。
【0108】
ニンテダニブ、またはその塩、誘導体、類似体もしくは多形体、またはこれらの組合せを含む組成物は、微粒子化して本開示の実施形態を形成する。微粒子化は、粒径低減に関して当業者に既知の任意の様式で達成することができる。微粒子化の非限定的な例としては、ボール微粒子化、メディア微粒子化、流動床ジェット微粒子化、スパイラルジェット微粒子化、空気分級微粒子化、ユニバーサルピン微粒子化、ハンマーおよびスクリーン微粒子化、摩擦微粒子化、コーン微粒子化、および/または顆粒化が挙げられる。
【0109】
一実施形態では、微粒子化組成物の平均粒径は、約5μm~約200μmの間である。別の実施形態では、平均粒径は、少なくとも約5μmである。別の実施形態では、平均粒径は、少なくとも約10μmである。別の実施形態では、ベースの顆粒デンプンの平均粒径は、約5μm~約20μmの間である。別の実施形態では、ベースの顆粒デンプンの平均粒径は、約5μm~約100μmの間である。別の実施形態では、微粒子化組成物の平均粒径は、約2μm~約4μmの間である。別の実施形態では、平均粒径は、約3μm未満である。別の実施形態では、平均粒径は、約2μm未満である。別の実施形態では、平均粒径は、約1μm未満である。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、混合物またはエマルジョンをろ過するステップをさらに含む。一実施形態では、本発明の方法は、エマルジョンを蒸発させて均一なリポソーム懸濁液を得るステップを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、リポソーム懸濁液は、均一である。別の実施形態では、本発明の方法により医薬製剤を点眼剤、眼軟膏剤、洗眼剤、軟膏、リソソーム、ゲル、液剤、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、または眼内注射として調製する。
【0112】
いくつかの実施形態では、他の成分は、流動パラフィン、無水ラノリン、塩化ベンザルコニウム、ワセリン、無水ラノリン、大豆レシチン、コレステロール、トリグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油、グリセリン、ビタミンE、Tween80、またはこれらの組合せを含む。一実施形態では、他の成分は、持続放出眼内インプラント、マトリックス調製物、カプセル調製物、またはこれらの組合せを含む。
【0113】
一実施形態では、本発明の方法は、pH値を約5~約9の間に調整するステップを含む。一実施形態では、pH値は、約6.5~約7.5の間に調整する。
【0114】
医薬組成物(例えば、点眼剤)を調製する方法は、溶液Aを溶液Bと混合するステップ、pH値を調整するステップ、および前記溶液Aと前記溶液Bとの混合物を乳化するステップを含み、ここで、前記溶液Aが、中鎖トリグリセリド、大豆レシチン、グリセロール、コレステロール、および界面活性剤(例えばTween80またはポリオキシエチレンヒマシ油)、ニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体、例えば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩)を含み、この溶液Bが、ビタミンE、塩化ベンザルコニウム(または臭化ベンザルコニウム)、および水を伴った界面活性剤(例えばTween80またはポリオキシエチレンヒマシ油)を含む。
【0115】
一実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリオキシエチレンヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、ショ糖エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポロキサマー、チロキサポール(Tyloxapol)、Tween80またはこれらの組合せを含む。別の実施形態では、界面活性剤は、Tween80またはポリオキシエチレンヒマシ油を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、ニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体、例えば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩)を微粒子化する。本出願の他の部分に開示のように、微粒子化は、粒径低減に関して当業者に既知の任意の様式で達成することができる。微粒子化の非限定的な例としては、ボール微粒子化、メディア微粒子化、流動床ジェット微粒子化、スパイラルジェット微粒子化、空気分級微粒子化、ユニバーサルピン微粒子化、ハンマーおよびスクリーン微粒子化、摩擦微粒子化、コーン微粒子化、および/または顆粒化が挙げられる。
【0117】
乳化混合物は、さらに滅菌され得る。一実施形態では、混合物を湿熱で滅菌する。湿熱の温度は、最低100℃、120℃、140℃、160℃、180℃または200℃である。いくつかの実施形態では、湿熱は、少なくとも120℃である。一実施形態では、湿熱は、121℃である。滅菌時間は、少なくとも1分、5分、10分、30分、50分、60分、または100分であり得る。いくつかの実施形態では、混合物を30分間滅菌する。
【0118】
いくつかの実施形態では、溶液Aが、(1)加熱および撹拌して中鎖トリグリセリド、大豆レシチン、グリセロールを界面活性剤(例えば、Tween80またはポリオキシエチレンヒマシ油)と混合すること、(2)コレステロールを加えること、(3)この混合物をろ過して溶液を作製すること、ならびに(4)ニンテダニブ(またはその塩、誘導体、類似体、溶媒和物、水和物、もしくは多形体、例えば、ニンテダニブエタンスルホン酸塩)をこの溶液に溶解することにより作製する。
【0119】
一実施形態では、溶液Bが、(1)水中でビタミンE、塩化ベンザルコニウム(または臭化ベンザルコニウム)を界面活性剤(ポリオキシエチレンヒマシ油またはTween80)と混合すること、(2)水中の混合物をろ過すること、および(3)この混合物を乳化することにより作製する。
【0120】
一実施形態では、混合物は、ホモジナイザーにより乳化する。ホモジナイザーの速度は100rpm、200rpm、300rpm、400rpm、500rpm、600rpm、700rpm、800rpm、900rpm、1,000rpm、2,000rpm、3,000rpm、4,000rpm、5,000rpm、6,000rpm、7,000rpm、8,000rpm、9,000rpm、10,000rpm、20,000rpm、30,000rpmまたは40,000rpmである。ホモジナイズ時間は、少なくとも1分、5分、10分、20分、40分、60分、100分、200分、500分、または1,000分である。
【0121】
一実施形態では、pH値は5~9、6~8または6.5~7.5に調整する。別の実施形態では、pH値は6.5~7.5に調整する。
【0122】
実施例
以下の実施例は、例示目的のみのものであり、主張する本発明の制限として解釈されるべきものではない。当業者に利用可能な種々の代替技術および手順があり、これらは目的とする本発明の実施に当業者が成功することを同様に可能とする。
【実施例1】
【0123】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩眼軟膏剤の調製
ニンテダニブエタンスルホン酸塩眼軟膏剤を、Cレベルの清浄区域内のクリーンベンチ(例えば、無菌キャビネット)で調製した。調製では、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の微細粉および塩化ベンザルコニウムを含有する混合物を適切な容器に加えた。
【0124】
次いで、混合物を滅菌、ろ過、および冷却し、その後、流動パラフィンを加えた。パラフィンが固体になると、混合物を微細なペーストに粉砕し、6番の篩で篩にかけ、ろ過、滅菌したラノリンおよびワセリンマトリックスに徐々に加え、次いで、撹拌して均一に混合し、その後、混合物を冷却した。
【0125】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩眼軟膏剤100g毎に、調製物は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩1g、流動パラフィン10g、無水ラノリン10gおよび塩化ベンザルコニウム0.01gを含有していた。残りの成分は、ワセリンである。
【実施例2】
【0126】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩リポソーム点眼剤の調製
ニンテダニブエタンスルホン酸塩リポソーム点眼剤を、Cレベルの清浄区域内のクリーンベンチ(例えば、無菌キャビネット)で調製した。調製では、10mLのエーテルに無菌的に溶解した、ニンテダニブエタンスルホン酸塩の微細粉、大豆レシチン、コレステロール、および塩化ベンザルコニウムを含有する混合物で油相を調製した。塩酸または水酸化ナトリウムを用いた0.9%の塩化ナトリウム溶液10mLで、pHを6.8に調整して水相を調製した。
【0127】
2つの相を混合し、安定な水/油(W/O)エマルジョンが形成されるまで30分間、間欠的に超音波処理した。ロータリーエバポレーター上でエマルジョンを蒸発させて有機溶媒を除去した(水浴温度:30℃、回転速度:75rpm)。フラスコ壁上にゲルを形成後、ロータリーエバポレーターによる蒸発を継続してゲルを落下させ、水和させて均一なリポソーム懸濁液を得た。0.45μmの微孔膜でろ過し、4℃で保存することにより懸濁液を滅菌した。
【0128】
調製したニンテダニブエタンスルホン酸塩リポソーム点眼剤溶液は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩0.2g、大豆レシチン1g、コレステロール0.4gおよび塩化ベンザルコニウム0.002gをおおよそ含有する。
【実施例3】
【0129】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩エマルジョン点眼剤の調製
Cレベルの清浄区域内のクリーンベンチ(例えば、無菌キャビネット)において、中鎖トリグリセリド、大豆レシチン、グリセリン、およびポリオキシエチレンヒマシ油の半分を加熱、撹拌して混合した。次いで、コレステロールを混合物中に溶解し、これをろ過して油相を形成した。微粒子化したニンテダニブエタンスルホン酸塩を無菌条件下で油相中に溶解した。ビタミンE、塩化ベンザルコニウム、およびもう半分のポリオキシエチレンヒマシ油を水中に加え、ろ過して溶液中に水相を形成した。1,000rpmで10分間、水相を均一に乳化し、その後、油相を水相に速やかに加えた。
【0130】
塩酸または水酸化ナトリウムを使用してpH(7.5に)および浸透圧を調整した。3000rpmで30分間、溶液を均一に乳化し、点眼剤の容器に無菌的に分注し、湿熱(121℃、30分)で滅菌した。水を加えて100mlの溶液を作製した。これは、ニンテダニブエタンスルホン酸塩1g、中鎖トリグリセリド15g、ポリオキシエチレンヒマシ油0.1g、大豆レシチン1.5g、コレステロール0.4g、グリセリン2g、塩化ベンザルコニウム0.01gおよびビタミンE0.03gを含有する。
【実施例4】
【0131】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩エマルジョン点眼剤の調製
Cレベルの清浄区域内のクリーンベンチ(例えば、無菌キャビネット)において、中鎖トリグリセリド、大豆レシチン、グリセリン、およびTween80の半分を加熱し、撹拌して混合した。次いで、コレステロールを混合物中に溶解し、これをろ過して油相を形成した。微粒子化したニンテダニブエタンスルホン酸塩を、無菌条件下で油相中に溶解した。ビタミンE、塩化ベンザルコニウム、およびもう半分のTween80油を水中に加え、ろ過して水溶液中に水相を形成した。1,000rpmで10分間、水相を均一に乳化し、その後、油相を水相に速やかに加えた。
【0132】
塩酸または水酸化ナトリウムを使用してpH(6.8に)および浸透圧を調整した。3000rpmで30分間、溶液を均一に乳化し、点眼剤の容器に無菌的に分注し、湿熱(121℃、30分)で滅菌した。水を加えて100mlの溶液を作製した。これは、ニンテダニブエタンスルホン酸塩1g、中鎖トリグリセリド15g、Tween80を0.1g、大豆レシチン1.5g、コレステロール0.4g、グリセリン2g、塩化ベンザルコニウム0.01gおよびビタミンE0.03gを含有する。
【実施例5】
【0133】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩エマルジョン点眼剤の調製
Cレベルの清浄区域内のクリーンベンチ(例えば、無菌キャビネット)において、中鎖トリグリセリド、大豆レシチン、グリセリン、およびポリオキシエチレンヒマシ油の半分を加熱し、撹拌して混合した。次いで、コレステロールを混合物中に溶解し、次いで、これをろ過して油相を形成した。微粒子化したニンテダニブエタンスルホン酸塩を、無菌条件下で油相中に溶解した。ビタミンE、塩化ベンザルコニウム、およびもう半分のポリオキシエチレンヒマシ油を水中に加え、ろ過して溶液中に水相を形成した。1,000rpmで10分間、水相を均一に乳化し、その後、油相を水相に速やかに加えた。
【0134】
塩酸または水酸化ナトリウムを使用してpH(6.5に)および浸透圧を調整した。3000rpmで30分間、溶液を均一に乳化し、点眼剤の容器に無菌的に分注し、湿熱(121℃、30分)で滅菌した。
【0135】
水を加えて100mlの溶液を作製した。これは、ニンテダニブエタンスルホン酸塩1g、中鎖トリグリセリド15g、ポリオキシエチレンヒマシ油を0.1g、大豆レシチン1.5g、コレステロール0.4g、グリセリン2g、塩化ベンザルコニウム0.01gおよびビタミンE0.03gを含有する。
【0136】
実施例3~5において調製したニンテダニブエタンスルホン酸エマルジョンタイプ点眼剤のpH、浸透圧、粘度、透明度の検出および平均粒径は、加速試験により測定した。結果を表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
表1は、本発明の点眼剤が、加速試験(40℃、RH75%)において良好な安定性を有しており、そのpH、浸透圧、粘度、透明度、および平均粒径は、点眼剤の要件に準じていたことを示す。
【実施例6】
【0139】
ウサギの角膜血管新生に対するニンテダニブエタンスルホン酸塩エマルジョン点眼剤
18匹の健常なニュージーランドウサギを秤量し、3%のペントバルビタールナトリウム(1mL/kg)で麻酔した。局所麻酔剤である塩酸リドカインを眼球表面に20μL/眼の用量で投与した。直径9mmのろ紙を水酸化ナトリウム溶液1mol/Lに約10秒間、ピンセットを用いて浸した。このろ紙を乾燥ろ紙上に置いて過剰な水酸化ナトリウム溶液を除去し、その後、ウサギの角膜の中心に60秒間置いた。次いで、この紙を除去し、角膜を20mLの生理食塩水で洗浄瓶を使用して速やかに洗い流した。1日2回、抗生物質(クロルテトラサイクリン眼軟膏剤)を適用して感染症を予防した。
【0140】
モデル化後にウサギを5つの群:1)熱傷群、2)ニンテダニブエタンスルホン酸塩エマルジョン点眼剤(10mg/mL、実施例3において調製したもの)で処置したA群、3)ニンテダニブエタンスルホン酸塩エマルジョン点眼剤(5mg/mL、実施例3において調製したもの)で処置したB群、および4)ニンテダニブエタンスルホン酸塩を含まないエマルジョン点眼剤マトリックス(実施例1において調製したもの)で処置したC群に分けた。
【0141】
モデルを構築した日を0日目として数えた。この日からA、B、C群に、対応する点眼剤を5回/日および毎回50μL/眼与えた。この投与を10日間継続した。追加のニュージーランドウサギ2匹を正常群として使用した。連日投与と同時に、眼において角膜血管新生(NV)の増殖および他の炎症応答が観察された。
【0142】
点眼剤適用後10日目にウサギを3%のペントバルビタールナトリウム(1mL/kg)で麻酔した。局所麻酔剤である塩酸リドカインを眼球表面に20μL/眼の用量で投与した。10倍の対物レンズ下の細隙灯により角膜NVの発症を観察した。次いで、10倍および16倍の対物レンズでNVを撮影した。角膜NVの領域をImage Pro Plusで処理した。領域を算出する式は、S=C/12×3.1416×[R-(R-L)](式中、Cは、画像におけるNV増殖からNV無増殖までの角膜縁の時間数を表し、Rは、画像における強膜と接する角膜縁と角膜の中心との間の長さを表し、Lは、画像における強膜と接する角膜縁中のNVの根と角膜中のNVの末端との間のNV長を表す)である。
【0143】
最長の血管もまた撮影し、そのデータをT検定分散分析により分析した。データを
【0144】
【数1】

として表し、
【0145】
【数2】

は平均であり、sは標準偏差である。結果を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
角膜血管新生領域に対する効果:10日目の角膜NV領域データの分析結果を、ニンテダニブエタンスルホン酸塩を含まないエマルジョンマトリックスで処置したアルカリ熱傷群と比較して表2に示す。
【0148】
ニンテダニブエタンスルホン酸塩エマルジョン(5mg/mLまたは10mg/mL)で処置すると、角膜NVの増殖が有意に阻害され(P<0.05)、10mg/mLの点眼剤ではNV領域が低減、5mg/mLよりも良好な効果を示した。ニンテダニブエタンスルホン酸塩を含まないエマルジョンマトリックスは、角膜血管新生の増殖を阻害せず、熱傷群のNV領域よりも広いNV領域を有した。
【実施例7】
【0149】
ラットの角膜血管新生におけるニンテダニブエタンスルホン酸塩点眼剤
特定病原体除去(SPF)グレードのブラウンノルウェー(BN)ラット(雌雄半数ずつ)に眼底レーザー光凝固術を処置し、この日をD0として数えた。D8に、同様の蛍光漏出領域を有する32匹のラットを選択し、8つの群に分けた。この各群は4匹のラットを含んだ(雌雄半数ずつ)。
- 1群は、いかなる処置も行わないモデル群である。
- 2群は、コンベルセプトをラットの眼の硝子体腔内に50μg/眼の投与量で1日6回注射した陽性対照群である。
- 3群では、ラットの両眼にニンテダニブエタンスルホン酸塩を125μg/眼の投与量で1日6回、8日目から15日目(D8~D15)に投与した。
- 4群では、ラットの両眼にニンテダニブエタンスルホン酸塩を25μg/眼の投与量で1日6回、8日目から15日目(D8~D15)に投与した。
- 5群では、ラットの両眼にニンテダニブエタンスルホン酸塩を5μg/眼の投与量で1日6回、8日目から15日目(D8~D15)に投与した。
- 6群では、ラットの両眼にニンテダニブエタンスルホン酸塩を2.5μg/眼の投与量で1日6回、8日目から15日目(D8~D15)に投与した。
- 7群では、ラットの両眼にニンテダニブエタンスルホン酸塩を0.5μg/眼の投与量で1日6回、8日目から15日目(D8~D15)に投与した。
- 7群では、ラットの両眼にニンテダニブエタンスルホン酸塩を0.1μg/眼の投与量で1日6回、8日目から15日目(D8~D15)に投与した。
【0150】
投与の1日前および投与の8日後に、すべてのラットを眼底撮影(「FP」)および眼底蛍光血管造影(「FFA」)により試験した。CNVの程度を蛍光漏出の程度により段階分けした。結果を使用して、ラットのCNVに対するニンテダニブエタンスルホン酸塩の効果を評価した。この結果を図2に示す。
【0151】
3および4群の動物のいくつか(角膜混濁)を除いて、他の群の動物では、有意な副作用を生じなかった。
【0152】
光点率
投与の1日前に、モデル群と他の群との間のCNV病変の比率に有意差はなかった(p>0.05)。この比率は、蛍光血管造影の初期相と末期相とを比較することにより算出される。光点の蛍光漏出を次のように段階分けした:グレード0(漏出なし)、グレード1(軽微な漏出、漏出領域は光点のサイズの1%~50%である)、グレード2(中等度の漏出、漏出領域は光点のサイズの50%~100%である)、およびグレード3(強い漏出、漏出領域は光点のサイズよりも広い)。ある特定のグレードの光点の比率を次のように算出した。
光点率(%)=(ある特定のグレードにおける光点数÷4種の光点の和)×100
【0153】
処置後、モデル群と比較して、グレード3の光点率は、陽性対照群および3~6群において有意に低下した。グレード1の光点率は、3~6群において増大した。3~6群におけるグレード1の光点率は、増大した(p≦0.05)。結果は、光凝固術の1週間後、4~6群における処置により、ラットのCNVが有意に阻害されたことを示唆する。
【0154】
陽性対照群と比較して、3~6群におけるグレード3の光点率は低下した。すべての群におけるグレード1の光点率は増大した(5番目の群は有意に増大したp≦0.05)。他の群の間でレベル0およびレベル2の光点率に有意差はなかった(p>0.05)。結果は、第1の群における漏出が、陽性対照群の漏出よりわずかに強く阻害されることを示唆した。
【0155】
平均蛍光漏出スコア
投与の1日前に、対照群と処置した他の群との間の平均蛍光漏出スコアに有意差はなかった(p>0.05)。平均蛍光漏出スコアを次のように算出した。
平均蛍光漏出スコア=[(グレード0光点数×0)+(グレード1光点数×1)+(グレード2光点数×2)+(グレード3光点数×3)]÷4種の光点の和
【0156】
処置後、陽性対照群および3~6群の平均蛍光漏出スコアは、モデル群(いかなる処置も行わない群)と比較して有意に低下した。7群と8群との間に統計学的有意差はなかった。理論により拘束されることなく、結果は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩がCNVに起因する漏出を阻害可能であることを示す。陽性対照群と比較して、漏出は5群において有意に低下した(p≦0.05)(図3)。
【0157】
理論により拘束されることなく、結果は、ニンテダニブエタンスルホン酸塩点眼剤を種々の投与量(125μg/眼、25μg/眼、5μg/眼、2.5μg/眼、0.5μg/眼)で投与すると、光点率および平均蛍光漏出スコア、ならびにレーザー光凝固術を導入したラットにおけるCNVの発症を阻害可能であることを示す。
【0158】
等価物
上記の実施形態とともに本開示を説明してきたが、前述の記載および実施例は、例示を意図するものであり、本開示の範囲の制限を意図するものではないことが理解される。本開示の範囲内にある他の態様、利点および改変は、本開示の属する分野の当業者に明白である。
【0159】
他に指示しない限り、本明細書において使用する技術的および科学的用語はすべて、本開示の属する分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0160】
本明細書に例示的に記載する実施形態は、本明細書に特に開示しない任意の要素(単数または複数)、または任意の制限(単数または複数)の限定がない場合は、好適に実施され得る。したがって、例えば、用語「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」等は、広くかつ制限なしに解読される。さらに、本明細書において用いられる用語および表現は、制限のための用語ではなく説明のための用語として使用されており、このような用語および表現の使用において、明示および説明する特徴の任意の等化物またはその部分を除外する意図はないが、本開示の範囲内で種々の改変が可能であることが認識される。
【0161】
したがって、本開示は、特定の実施形態および任意の特徴によって詳細に開示されているが、本明細書に開示の実施形態の改変、改良、および変形は、当業者に用いられ、このような改変、改良、および変形は、本開示の範囲内であるとみなされることが理解されるべきである。本明細書において提供する材料、方法、および実施例は、特定の実施形態の代表であり、例示であり、本開示の範囲の制限として意図しない。
【0162】
本開示の範囲は、本明細書において広範かつ一般的に記載している。一般的開示の範囲内にある狭義の種および亜属の分類のそれぞれもまた、本開示の部分を形成する。これは、除外された題材が本明細書に詳細に記載されているかどうかにかかわらず、任意の主題をその属から除外する条件または消極的制限を有する一般的記載を含む。
【0163】
さらに、本開示の特徴または態様をマーカッシュ群により記載する場合、当業者は、これによって、本開示の実施形態もまた、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたは複数のメンバーの亜群により記載され得ることを認識する。
【0164】
本明細書において言及する公開公報、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、それぞれを参照により個別に組み込む場合と同程度に、その全体を参照により明示的に組み込む。競合する場合は、定義を含めて本明細書が支配する。
図1
図2
図3