(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーアジュバントを含む新規な免疫原性処方物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20220204BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220204BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220204BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220204BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/09 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/10 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/102 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/095 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/112 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/085 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/118 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/04 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/205 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20220204BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220204BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220204BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220204BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/108 20060101ALI20220204BHJP
A61K 39/15 20060101ALI20220204BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
A61K39/39
A61P37/04
A61K39/00 H
A61K48/00
A61K35/76
A61K39/08
A61K39/09
A61K39/10
A61K39/102
A61K39/095
A61K39/112
A61K39/085
A61K39/118
A61K39/04
A61K39/29
A61K39/145
A61K39/205
A61K39/245
A61K39/12
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/18
A61K9/08
A61K39/108
A61K39/15
A61P31/12 171
(21)【出願番号】P 2019518171
(86)(22)【出願日】2017-06-15
(86)【国際出願番号】 US2017037745
(87)【国際公開番号】W WO2017218819
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-02
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519064665
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム アニマル ヘルス ユーエスエイ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518447566
【氏名又は名称】サノフィ パスツール
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】リゴー ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】パリゾ アレクシ ギー アンドレ リュシアン
(72)【発明者】
【氏名】デ ルカ カレル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレオーニ クリスティーヌ ミシェル ピエレット
(72)【発明者】
【氏名】ルモリュ リディ
(72)【発明者】
【氏名】ガリノー マリー
(72)【発明者】
【氏名】コット ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】プロベック-クレクト パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ハンスラー ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シャンボン ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】タラガ フィリップ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507336(JP,A)
【文献】特開昭61-205213(JP,A)
【文献】特表平11-502191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0044242(US,A1)
【文献】J.Macromolecular Science, Part A: Pure and Applied Chemistry, 2010, Vol.47, No.5, pp.445-451 ,https://doi.org/10.1080/10601321003659705
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 48/00
A61K 35/00-35/768
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのワクチン物質および、ワクチン組成物のアジュバントとし
て直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩
を含む、ワクチン組成物であって、前記ポリアクリル酸ポリマー塩が350から650kDaの範囲の重量平均分子量Mw
および4より低いか若しくは等しい多分散指数を有
し、
前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満の酸化剤を含み、前記ポリアクリル酸ポリマー塩がアクリル酸ユニットのみで構成されることを特徴とする、前記
ワクチン組成物。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸ポリマー塩が、アクリル酸の塩
であるアクリル酸ユニットのみで構成されるか、またはアクリル酸の遊離酸形
であるアクリル酸ユニットおよびアクリル酸の塩
であるアクリル酸ユニットのみで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の
ワクチン組成物。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にし
て0.001%w/w未満の酸化剤および前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満または0.001%w/w未満の過硫酸塩を含むことを特徴とし、前記ポリアクリル酸ポリマーがNa
+を有する塩であってもよい、請求項1または2に記載の
ワクチン組成物。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸ポリマー塩が、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数を有するか、または380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いか若しくは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いか若しくは等しい多分散指数を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の
ワクチン組成物。
【請求項5】
前記ポリアクリル酸ポリマー塩が、0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の
ワクチン組成物。
【請求項6】
前記直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩が、特にリン酸緩衝液で、またはトリス、Hepes、ヒスチジン若しくはクエン酸緩衝液で緩衝された水溶液中に存在することを特徴とする、請求項5に記載の
ワクチン組成物。
【請求項7】
前記直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩が、透析ろ過または滅菌されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の
ワクチン組成物。
【請求項8】
前記直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩が、ワクチン組成物を用いて得られるTh1免疫応答を強化するために用いられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の
ワクチン組成物。
【請求項9】
1用量につき0.1から8 mg、好ましくは0.1から4 mg、より好ましくは0.1から2 mgのアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩を含むことを特徴とする、請求項
1から8のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのワクチン物質が、抗原または抗原を発現するベクター、例えばウイルスベクターまたは核酸であることを特徴とする、請求項
1から9のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
抗原が、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Clostridium diphtheriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)B型、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、シゲラ属種(Shigella sp.)、チフス菌(Salmonella typhi)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)若しくはプニューモニアエ(pneumoniae)、またはストレプトコッカス属種(Streptococcus sp.)に由来する細菌抗原であるか、または肝炎A、B若しくはC型ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、西ナイルウイルス、狂犬病ウイルス、ポリオウイルス、HIVウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、サイトメガロウイルス若しくはヘルペスウイルスに由来するウイルス抗原であるか、またはマラリア原虫属種(Plasmodium sp.)、リーシュマニア属種(leishmania sp.)若しくは住血吸虫属種(schistosoma sp.)に由来する寄生生物抗原であるか、または腫瘍抗原であることを特徴とする、請求項
10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのワクチン物質が抗原またはベクター、例えば抗原をコードする組換えウイルスまたは核酸であり、前記抗原が黄色ブドウ球菌由来またはサイトメガロウイルス由来であることを特徴とする、請求項
1から11のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
獲得Th1免疫応答の強化および/または獲得Th1およびTh2免疫応答間の均衡を有する、個体、特に人間の免疫応答の惹起に使用される、請求項
1から11のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
以下の連続工程:
a)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を得る工程;
b)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を精製して不純物を除去する工程
;
c)ポリアクリル酸ポリマーの精製溶液を滅菌する工程;
および
d)ポリアクリル酸ポリマーおよび少なくとも1つのワクチン物質を含むワクチン組成物を調製する工程;
を含み、
前記精製が、透析、透析ろ過、限外ろ過またはサイズ排除クロマトグラフィーによって実施され、
透析ろ過が用いられる場合、約1から約80kDa、または約2から約50kDaのカットオフの膜を用いて実施される、
請求項1から
13のいずれか1項に記載の
ワクチン組成物の製造方法。
【請求項15】
精製が、以下を有する溶液中のポリアクリル酸ポリマーの入手を可能にする条件下で実施されることを特徴とする、請求項
14に記載の製造方法:
-精製後に得られる前記ポリアクリル酸ポリマーの全乾燥重量を基準に、0.005%未満、好ましくは0.001%w/w未満の酸化剤、および/または精製後に得られる前記ポリアクリル酸ポリマーの全乾燥重量を基準に、0.005%未満、好ましくは0.001%w/w未満の過硫酸塩、
-精製後に得られる前記ポリアクリル酸ポリマーの全乾燥重量を基準に、0.005%w/w未満の遊離酸の形または塩の形のアクリル酸モノマー、
-ポリアクリル酸ポリマー塩については、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数、または380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いか若しくは等しい多分散指数、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いか若しくは等しい多分散指数。
【請求項16】
治療的に有効な量の抗原成分、医薬的若しくは獣医的に許容できる担
体を含
み、
前記直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩が、アジュバント
として約350kDAから約650kDaのMwおよび約4未満若しくは約2未満の多分散指数を有する非架橋ポリアクリル酸(PAA)ポリマーを含むかまたは前記非架橋ポリアクリル酸ポリマーから本質的に成る、
請求項1から13のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
抗原成分が、弱毒化組換えウイルスベクター、天然若しくは遺伝子操作生弱毒化ウイルス若しくは微生物、不活化ウイルス若しくは微生物、コクシジウム系微生物、早熟コクシジウム系微生物、タンパク質性サブユニット、単細胞性寄生生物、多細胞性寄生生物、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項
16に記載
のワクチン組成物。
【請求項18】
抗原成分が以下を含む、請求項
16に記載
のワクチン組成物:アイメリア属種(Eimeria sp.)若しくはその抗原、大腸菌(Escherichia coli(E.coli))若しくはその抗原、マイコプラズマ・ヒオプニューモニアエ(Mycoplasma hyopneumoniae(M.hyo(M.ヒオ)))、ウシ下痢ウイルス(BDV)抗原、少なくとも1つの防御免疫原を含みそのin vivo発現の能力を有する組換えカナリアポックスベクター、不活化完全長狂犬病糖タンパク質、エリシペロスリクス属種(Erysipelothrix sp.)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、豚丹毒菌由来表面防御抗原(SpaA)、少なくとも1つの追加免疫原の少なくとも一部分を含むSpaA融合タンパク質、SpaA-FlaB融合タンパク質、SpaA-FlaB-His融合タンパク質、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)(C.パーフリンゲンス)B/C毒素、C. パーフリンゲンスD毒素、C.セプチクム(C. septicum)毒素、C.ノビイ(C. novyi)毒素、破傷風菌(C. tetani)毒素、またはそれらの任意の組合せ。
【請求項19】
(a)
アジュバントとしての前記直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩が、約350kDAから約650kDaの平均Mwを有する非架橋PAAを含
み;
(b)以下から選択される原生動物抗原:(1)1つ以上の組換え発現タンパク質、(2)前記原生動物から通常的手段によって単離される1つ以上のタンパク質または他の巨大分子、(3)前記原生動物の全細胞抽出物または調製物、
および(4)アイメリア・アセルブリナ(Eimeria (E.) acervulina)、E.アデノエイデス(E.adenoeides)、E.ブルネッチィ(E.brunetti)、E.コルキシ(E.colchici)、E.クルバタ(E.curvata)、E.ディスペルサ(E.dispersa)、E.デュオデナリス(E.duodenalis)、E.フラテルクラエ(E.fraterculae)、E.ガロパボニス(E.gallopavonis)、E.インノクア(E.innocua)、E.プラエコクス(E.praecox)、E.マキシマ(E.maxima)、E.メレアグリディス(E.meleagridis)、E.メレアグリミチス(E.meleagrimitis)、E.ミチス(E.mitis)、E.ネカトリクス(E.necatrix)、E.ファシアニ(E.phasiani)、E.プロセラ(E.procera)、E.テネラ(E.tenella)およびそれらの組合せから選択される不活化、生または生早熟コクシジウム
、を含む;in ovo投与のためのトリコクシジウム症ワクチンである、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
抗原成分が、M.ヒオ、FIV、癌抗原、イヌコロナウイルス(CCV)、ウシロタウイルス、またはイヌインフルエンザウイルス(CIV)を含む、請求項
17に記載
のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)本出願は、US仮特許出願No.62/351,492(2016年6月17日出願(前記出願は参照によりその全体が本明細書に取り込まれる))に対し優先権を主張する。
(参照による取り込み)一切の先行する出願物とその中でまたは前記出願物の審査中に引用された全ての文書(“出願物引用文書”)および当該出願物引用文書で引用または参照された全ての文書、並びに本明細書で引用または参照された全ての文書(“本明細書引用文書”)および本明細書引用文書で引用または参照された全ての文書は、本明細書にまたは参照により本明細書に取り込まれる一切の文書に記述された一切の製品についての製造業者の指示、説明、製品明細書およびプロダクトシートと一緒に参照により本明細書に取り込まれ、本発明の実施で利用することができる。一切のそのような文書の本出願における引用または認識は、そのような文書が本発明前に先行技術として利用可能であることを容認するものではなく、かつそのような引用特許文書の有効性、特許性および/または法的強制力に関する見解に一切影響を与えない。GenBankアクセッション番号によって本明細書に参照される全ての配列は、参照によってそれらの全体が本明細書に取り込まれ、かつ前記配列は、本出願の出願日付けでGenBankに示されているとおりである。
(技術分野)
本発明はワクチンの分野に属する。特に、本発明は、特定のアジュバントおよびアジュバント添加組成物並びにそのようなアジュバントおよびアジュバント添加組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸ユニットを含むポリマーをワクチン組成物のアジュバントとして使用することは既に提唱されている。ほとんどの事例で、アジュバントとして推奨されるポリアクリル酸ポリマーは架橋ポリマーである。例えば、US 3,790,665およびUS 3,919,411は、ポリアリル糖で架橋されるアクリル酸ポリマーのアジュバントとしての使用を記載している。特にショ糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルにより架橋されたアクリルまたはメタクリル酸のポリマーに相当するアジュバントもまたUS 7,163,926に記載されている。そのような種類のポリマーはCARBOPOL(商標)の名称で販売されている。CARBOPOL 974P、934Pおよび971Pは、US 7,163,926、EP 1058558およびWO 2009/118523に記載されている。前記は高いMwを有する架橋ポリマーであり、すなわち製造者が提供するデーターによれば974Pについては3百万である。
いくらかの研究努力は、直鎖ポリアクリル酸ポリマー(低重量を有する)の使用またはアクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーに集中した。
WO 2005/065712は、アクリル酸またはその塩から誘導されるユニットを含む分子量分布幅が狭いポリマー、および病原生物若しくは癌または1つ以上の抗原若しくは免疫原に対して薬理学的活性を有する物質を含む複合物を提唱する。当該ポリマーはホモポリマーまたはアクリル酸若しくはメタクリル酸またはその塩のコポリマーであり得る。100,000以下の分子量が推奨される。
【0003】
US 6,610,310およびEP 0804234は、陰イオン性構成的反復モノマーユニットおよび疎水性構成的反復モノマーユニットを有するポリマーの使用を記載している。特に、EP0804234は、部分的にアクリル酸ユニット(構成的陰イオン性反復ユニット)およびアクリル酸ユニットのエステル(構成的疎水性反復ユニット)から成るポリマーの水溶液でのワクチンアジュバントとしての使用を開示している。これらの文書では、ポリアクリル酸ポリマーCARBOPOL(商標)907は、その推奨される同族の部分的にエステル化されたポリアクリル酸ポリマーと比較され、より貧弱な免疫応答を提供する。同様に、複数の刊行物(L.Hilgers et al.in Vaccine, 2000, 18, 3319-3325;およびVaccine 1998 Vol.16, No.16, 1575-1581)がまたそのようなエステル化されたポリマーを開示し、ポリアクリル酸のアルキルエステルの使用は大半の事例でより良好な免疫応答を提供することを教示する。CARBOPOL(商標)907は、今日ではもはや利用できないポリアクリル酸ポリマーであり、その特徴は確実には決定し得ない。前記は、架橋ポリマーとして知られているCARBOPOLファミリーに属する。このポリマーは、文書間で相違する重量平均分子量Mwを有し、ある刊行物(Vaccine, 1998 Vol.16, No.16, page 1575 to 1581)は450kDaの重量平均分子量Mwを提供し、その決定に用いられた方法に関する精度は示されていない。前記刊行物は、その多分散指数を記載していない。対照的に、"Liquid Detergents"(界面活性剤シリーズサイエンス)の67巻、147ページ(1996, CRC Press, Publisher: Kuo-Yann Lai)は、サンプルポリマーについて603.3kDaの重量平均分子量Mw(ゲル浸透によるクロマトグラフィー技術(GPC)によって決定)および4.124の多分散指数IPを提供した。CARBOPOL(商標)907の特徴に関しては疑わしさが存在する。加えて、ほとんどの場合、製造者によって提供されるMwデータは、本特許出願の例で示すように、標準化方法によって決定し得るMwと相違する。
現存のポリマーアジュバントの厳密な特徴に関する不確実さに加えて、改善された安全性及び有効性特性を有する新しいアジュバントの開発の要望が現在なお存在する。本開示は、非架橋アクリル酸ポリマーアジュバントを含む安全で有効な免疫学的およびワクチン処方物を提供することによってこれらの要望を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の特徴では、本開示は、ワクチンアジュバントとして新しいクラスのポリマーを含む処方物を提供する。本明細書に開示するように、このクラスのポリマーは、多種多様な動物種の投与で使用される、多種多様な抗原に及ぶ処方物のアジュバント添加で安全性及び有効性を提示する。このクラスのポリマーは、先行技術で用いられるポリアクリル酸ポリマーの他のファミリーと比較して、有益なアジュバント特性をもたらす。
第一の特徴のある実施態様では、本発明は、アジュバントとして特に有効なポリマーファミリーを提供する。個別の実施態様では、本発明は、予期に反し強力なTh-1応答をTh-2応答に加えて助長するポリマークラスを提供する。
加えて、本発明にしたがって選択されるいくつかのポリマーはアジュバント組成物を生じ、結果としてワクチン組成物をもたらす。個別の実施態様では、本開示のワクチン組成物はより安全であり、特に再現性および夾雑物質(ワクチンの保存安定性としばしば相いれない)の減少に関してより安全である。さらに個別の実施態様では、選択されるポリマーはまた安定であり、オートクレーブで滅菌できる。
この文脈では、本発明は、ワクチン組成物でアジュバントとして使用される、直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩に関し、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は350から650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有することを特徴とする。
特に、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、アクリル酸の塩に相当するユニットのみで構成されるか、またはアクリル酸の遊離酸形に相当するユニットおよびアクリル酸の塩に相当するユニットのみで構成される。
【0005】
有利には、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にしてw/wで0.005%未満、好ましくは0.001%未満の酸化剤を含むか、および/または前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にしてw/wで0.005%未満、好ましくは0.001%未満の過硫酸塩を含む。
さらに個別の実施態様では、前記ポリアクリル酸ポリマーはNa+を有する塩である。
個別の実施態様では、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、約4より低いかまたは等しい、好ましくは約2.5より低いかまたは等しい多分散指数を有する。
個別の実施態様では、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数を有するか、または380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いかまたは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いかまたは等しい多分散指数を有する。
有利には、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして、遊離酸の形または塩の形のアクリル酸モノマーを0.005%w/w未満含む。
有利な実施態様にしたがえば、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は透析ろ過され滅菌される。
有利には、本発明に記載するポリアクリル酸ポリマー塩は、ワクチン組成物で得られるTh1免疫応答を強化するために用いられる。当該Th1免疫応答は、より低い分子量Mwのポリアクリル酸ポリマー塩がアジュバントとして用いられるときよりも強い。
【0006】
本発明の別の特徴はまた、本発明に記載するポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の製造方法に関し、前記は以下の連続工程を含む:
a)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を得る工程;
b)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を精製して不純物を除去する工程;および
c)ポリアクリル酸ポリマーの精製溶液を滅菌する工程。
本発明はまた、本発明に記載するポリアクリル酸ポリマー塩の溶液の保存方法に関し、前記方法は、得られたポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の溶液の保存工程が後に続く製造方法を含む。
【0007】
第三の特徴では、本発明はまたワクチン組成物に関し、前記は、少なくとも1つのワクチン物質(vaccine agent)(例えば免疫原または免疫原をコードする核酸)および本発明に記載するポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩を含む。個別の実施態様では、免疫原は以下から選択できる:不活化病原体、弱毒化病原体、部分ユニット抗原、精製抗原、非精製抗原、または組換えにより生成される(細菌、酵母、植物、昆虫若しくは動物細胞または発現ベクター(プラスミドを含む)を用いる)抗原など。抗原は当業界で周知の手段によって精製できる。前記手段には限外ろ過、超遠心分離、サイズ排除ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィーおよびPEG精製が含まれるが、ただしこれらに限定されない。病原体は細菌、ウイルス、原生動物または真菌起源であり得る。または免疫原は抗毒素を構成することができる。
さらに別の特徴では、本発明は、病原体に対する免疫応答をワクチン接種動物で誘発する方法を提供し、前記方法は本発明のワクチン組成物をワクチン接種動物に投与する工程を含む。
【0008】
本開示および特に特許請求の範囲では以下のことが指摘される:用語、例えば“comprises”、“comprised”、“comprising”(含む)などは、米国特許法のそのような用語に帰すると考えられる意味を有することができる。例えば前記用語は、“includes”、“included”、“including”(含む)などを意味することができる。さらに、例えば“consisting essentially of”および“consists essentially of”(本質的に~から成る)という用語は、米国特許法でそれらに割り当てられた意味を有することができ、例えば、それらは、明確に列挙されていない成分を許容するが、ただし先行技術で見出されるか、または本発明の基本的若しくは新規な特徴に影響を及ぼす成分を除外する。
本明細書で用いられる用語“about(約)”は、approximately(おおよそ)、in the region of(~の範囲の)、roughly(おおざっぱに)、またはaround(辺り)を意味する。“約”という用語が数字の範囲と一緒に用いられるとき、当該用語は、示された数値の上下の境界を広げることによって当該範囲を修正する。一般的には、用語“約”は、記載の値の上下の数値を10%変動させることによって修正するために本明細書では用いられる。ある特徴では、“約”という用語は、当該用語が一緒に用いられる数字の20%プラスまたはマイナスの数値を意味する。したがって、約50%は45%-55%の範囲であることを意味する。本明細書で終末点によって列挙される数字の範囲は、当該範囲内に包含される全ての数および分数を含む(例えば1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4および5を含む)。全ての数およびその分数は“約”という用語によって修正されると推定されることもまた理解されるべきである。
これらおよび他の実施態様は開示されているかまたは下記の「詳細な説明」から明白あり、さらに「詳細な説明」に包含される。
当業者への完全かつ可能なかぎりの本発明の開示(その最良の態様を含む)は、本明細書の残りの部分でより詳細に示される(添付の図面に対する言及を含む)。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、各マウスの各注射につき2.5μgのPS5-rEPAを用いD0、D21およびD35に免疫されたOF1マウスの抗体力価(IgG1およびIgG2a)を示すグラフである。マウスには前記が単独でまたは200μgのCARBOPOL、PAA20若しくはPAA225000のいずれかとともに注射された。
【
図2】
図2は、2μgのhCMV-gBおよびスクワレンエマルジョン、PAA3000、PAA6000、PAA50000、PAA60000、PAA20またはPAA225000を用いて免疫されたC57BL/6マウスのグループの血清における中和抗体の幾何平均力価(GMT)を示すグラフである。前記はMRC5線維芽細胞で測定された。
【
図3】
図3は、ARPE-19細胞(ヒト上皮細胞)での血清中和によって測定された、
図2のグループのGMTを示すグラフである。
【
図4】
図4は、ELISAで決定された、
図2のグループのhCMV-gB抗原に対する血清IgG1抗体を示すグラフである。
【
図5】
図5は、ELISAで決定された、
図2のグループのhCMV-gB抗原に対する血清IgG2抗体を示すグラフである。
【
図6】
図6は、CBA Flexセットキットを用いて測定された、
図2のグループのIL5サイトカインレベルを示すグラフである。
【
図7】
図7は、CBA Flexセットキットを用いて測定された、
図2のグループのIFNγサイトカインレベルを示すグラフである。
【
図8】
図8は、不活化狂犬病+PAA225000、AF03、PAA60000、またはスクワレンエマルジョンを用いてワクチン免疫されたイヌのグループの狂犬病血清学を提示するグラフである。
【
図9】
図9は、(1)PBS;(2)CARBOMER(4mg/mL);(3)PAA60000(4mg/mL);または(4)PAA225000(4mg/mL)とともにカナリアポックスベクター化(canarypox-vectored)組換えインフルエンザを用いてワクチン免疫されたイヌのグループのCIV血清学を提示するグラフである。グループ5はPBSのみを与えられた(すなわち組換えインフルエンザ抗原もアジュバントも無し)。
【
図10】
図10は、
図9で示した血清学データの41日目までの延長を提示するグラフである。
【
図11】
図11は、下記(A)から(E)の1つとともにvCP1533+vCP2242(各々はインフルエンザのHA遺伝子を保持する)および破傷風毒素を用いてワクチン免疫されたウマのグループのSRH決定平均インフルエンザ抗体力価を示すグラフである:(A)CARBOMER(4mg/mL);(B)PAA60000(4mg/mL);(C)PAA225000(4mg/mL);(D)ADVAX1(20mg/mL);(E)ADVAX2(20mg/mL)。グループ(F)はPBSのみを与えられた(すなわち抗原もアジュバントも無し)。
【
図12】
図12は、D35までの各ウマグループの破傷風血清学を示すグラフである。グループ:
図11に示したものと同じ。
【
図13】
図13は、D63に達するまでのウマ破傷風血清学を示すグラフである。
【
図14】
図14は、各ブタグループの平均SpaA血清学(D59まで)を示すグラフである。グループ:(G1)SpaA+TS6;(G2)SpaA+PAA60000;(G3)SpaA+PAA225000;SpaA-FlaB-His+PBS;(G5)SpaA-FlaB-His+PAA225000;(G6)PBS。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明の他の目的、特色および特徴は下記の詳細な説明で開示されまたは当該詳細な説明から明白である。本考察は、例示的実施態様の記載であり、本発明のより広い特徴を制限することを意図しないことは当業者には理解されよう(前記のより広い特徴は例示的な解説で具体化される)。実際、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、多様な修正および改変を為し得ることは当業者には明白であろう。例えば、ある実施態様の部分として例示および記載された特色を別の実施態様で用いて、さらにまた別の実施態様を得ることができる。添付の請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入る修正および変型を本発明がカバーすることが意図される。本出願を通して引用された全ての参照物、公開された特許および特許の内容は参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。
【0011】
ポリアクリル酸ポリマーの特色
本発明で用いられるポリマーは直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーであるが、架橋ポリマーではない。“ポリアクリル酸ポリマー”によって、我々は、アクリル酸ユニットのみで構成されるポリマーを指すことを意図する。したがって、塩の形では、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、アクリル酸の塩に相当するユニットのみで構成されるか、またはアクリル酸の遊離酸の形に相当するユニットおよびアクリル酸の塩に相当するユニットのみで構成される。
直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーは、モノマーとしてアクリル酸のみを重合化することによって得られる。重合化は、ほとんどの場合、開始剤または触媒として酸化剤を用いるラジカル重合反応によって実施される。最も多く用いられる酸化剤は、過硫酸塩(ペルオキシ二硫酸塩)、例えば過硫酸ナトリウムまたはカリウムである。分枝ポリアクリル酸ポリマーは例えば以下に記載されている:Macromolecules 2011, 44, 5928-5936。本発明のポリマーが直鎖であるとき、そのマルクホウインクの傾きは0.7より高いかまたは同等である(Yan J.K., Pei J.J., Ma H.L., Wang Z.B.2015.Effects of ultrasound on molecular properties, structure, chain conformation and degradation kinetics of carboxylic curdlan.Carb.Polymers.121, 64-70)。
【0012】
ポリアクリル酸ポリマーの“医薬的に許容できる塩”によって、我々は、当該ポリマーの陰イオン形と陽イオン、特に一価の陽イオン(医薬的に許容できる)との塩を指すことを意図する。一価陽イオンの例は、アルカリ金属陽イオン(例えばNa+またはK+)、またはアンモニウム陽イオン(例えばNH4
+)である。5.5から8の(例えば7に近い)pHの水溶液中で、ポリアクリル酸ポリマーの酸性基は陰イオン形であり、当該水溶液に存在する陽イオンと塩を形成するであろう。当該ポリマーで、我々は、遊離酸形である当該酸基をもつアクリル酸ユニットおよび塩を形成する陰イオン形である当該酸基をもつ他のユニットを有することができる。pHに応じて、ポリマーの酸基はもっぱら遊離酸形で存在してもよく、または塩の事例ではポリマーの酸基はもっぱら塩の形で存在してもよく、或いはいくつかの酸基は酸性形で他のものは塩の形で存在してもよい。本発明のポリアクリル酸ポリマーの好ましい塩はNa+との塩である。したがって、本発明に記載する実施態様がいずれであれ、ポリアクリル酸ポリマーは、好ましくはナトリウム塩の形であり、その場合には、全ての特徴(Mw、IP、モノマーおよび過硫酸塩の含有量…)は当該ポリアクリル酸ポリマーの塩(すなわちナトリウム塩)に関係する。
本特許出願の明細書では、この“ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩”は単に“ポリアクリル酸ポリマー塩”と称され、好ましくはポリアクリル酸ポリマーのナトリウム塩である。
ポリアクリル酸ポリマー塩は、固体形(沈殿物または粉末)としてまたは好ましくは液体処方物として存在し得る。好ましくは、そのような処方物は5.5から8.0の範囲のpHを有する。このpHは塩基(例えばNaOH)を水溶液中に取り込むことによって得ることができる。水溶液は緩衝水溶液であることができ、緩衝液、例えば、リン酸緩衝液、トリス(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、Hepes(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(acide 4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazine ethane sulfonique)、ヒスチジンまたはクエン酸緩衝液を用いて得ることができる。液体処方物はまた、1つまたはいくつかの追加の塩(例えばNaCl)を含むことができる。
【0013】
本発明にしたがえば、以下の複数の特徴の1つを有する(それらが互いに排除しあうことがない場合には以下の特徴の任意の組合せまたは全てすら有する)、ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物をアジュバントとして用いることが提案される:
-ポリアクリル酸ポリマー塩は、350から650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有する;
-ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にしてw/wで0.005%未満、好ましくは0.001%未満の酸化剤、および/または前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にしてw/wで0.005%未満、好ましくは0.001%未満の過硫酸塩を含む;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は、4より低いかまたは等しい、好ましくは2.5より低いかまたは等しい多分散指数を有する;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数を有する;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いかまたは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いかまたは等しい多分散指数を有する;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する。
-ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして、遊離酸の形または塩の形のアクリル酸モノマーを0.005%w/w未満含む。
【0014】
特に、以下の特徴を有する、ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物をアジュバントとして用いることが提案される:
-380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する、または
-380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する、または
-400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する、または
-400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する。
【0015】
有利には、液体処方物のポリアクリル酸ポリマー塩は透析ろ過される。
有利には、ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物は滅菌される。ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物が透析ろ過されるとき、滅菌は透析ろ過後に行われる。
本発明にしたがえば、重量平均分子量Mwはサイズ排除クロマトグラフィーによって得られる。有利には、サイズ排除クロマトグラフィーカラムの後ろで3つの検出器(直角光散乱検出器、屈折率検出器、および4毛管示差圧粘度計)が用いられる。Mw、IP(多分散指数)、ポリマー濃度およびマルクホウインクの傾きの決定のために、実施例で提供される詳細な手順が好ましくは本発明にしたがって用いられる。Mwの決定のために用いられるdn/dcは、好ましくは既知濃度のポリアクリル酸ポリマーのパネルとともに屈折率検出器を用いて決定される。
過硫酸塩の含有量および遊離酸の形または塩の形のアクリル酸モノマーの含有量は、導電率検出による高速陰イオン交換クロマトグラフィーによって決定できる。好ましくは、実施例で詳述されるプロトコル(特に、“I.2 過硫酸塩およびアクリル酸塩モノマーの決定”のパラグラフB)を用いることができる。
【0016】
ポリアクリル酸ポリマーの調製および保存
ポリアクリル酸ポリマー原料には、重合されなかったアクリル酸またはアクリル酸塩の含有量に相当する残留モノマーの含有量が存在する。ポリアクリル酸ポリマーの重合では、重合開始剤(ほとんどの場合、酸化剤(例えば過硫酸塩))が触媒として用いられて重合を開始させる。ポリアクリル酸ポリマー原料では、重合プロセスによって消費されなかった重合開始剤(ほとんどの場合、酸化剤(例えば過硫酸塩))の残留含有量がそのまま存在し得る。
市場のポリアクリル酸ポリマーは、残留モノマーおよび酸化剤含有量並びにそれらの正確なMwおよびそれらのオリゴマー含有量についての明細をしばしば欠いている。
本発明の好ましい実施態様にしたがえば、購入したポリアクリル酸ポリマー原料を系統的に精製しそれをアジュバント組成物の調製に用いて、有害であり得るそのような化合物の残留含有量を含むリスクを回避し、アジュバント組成物およびアジュバントを含むワクチン組成物の安定性および/またはワクチン組成物の毒性に注意を払うことが提案される。加えて、本発明にしたがえば、顕著な含有量の酸化剤(例えば過硫酸塩)は、熱処理下でポリマーの安定性に有害でありオートクレーブによる滅菌を禁じることが認識された。
【0017】
本発明は、ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩、特にパラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”で規定されるポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の製造方法に関し、前記方法は以下の連続工程を含む:
a)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を得る工程;
b)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を精製して不純物を除去する工程;および
c)ポリアクリル酸ポリマーの精製溶液を滅菌する工程。
工程a)、b)およびc)では、当該溶液は、そのまま所望の医薬的に許容できる塩の形、または少なくとも部分的にはその遊離酸の形のポリアクリル酸ポリマーの溶液であり得る。工程a)で当該溶液が遊離酸形のポリアクリル酸ポリマーの溶液である場合、工程b)の精製の後で塩化を実行し、工程c)の滅菌は所望の医薬的に許容できる塩の溶液で実施することができる。工程c)の滅菌を遊離酸形のポリアクリル酸ポリマーの溶液で実施し滅菌後に塩化を実行することもまた可能である。
いずれの段階でも、塩化が要求される場合、それは塩基(例えば所望される塩に応じてNaOHまたはKOH)の導入によって達成できる。
【0018】
例えば、精製および/または滅菌は、ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の溶液で実施される。この溶液は、例えば緩衝水溶液、特にリン酸緩衝液またはトリス、Hepes、ヒスチジンもしくはクエン酸緩衝液による緩衝水溶液である。ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の水溶液はまた、1つまたはいくつかの追加の塩(例えばNaCl)を含むことができる。そのような事例では、本発明の方法は、ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩(特に、パラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”で規定されるポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩)の調製のために、以下の連続工程を含む:
a)ポリアクリル酸ポリマーの選択された医薬的に許容できる塩の溶液を得る工程;
b)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を精製して不純物を除去する工程;および
c)得られたポリアクリル酸ポリマーの精製溶液を滅菌する工程。
有利には、工程a)の溶液のポリアクリル酸ポリマーは、0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する。溶液であるときには、ポリアクリル酸ポリマーは塩の形であり、このマルクホウインクの傾きは当該ポリアクリル酸ポリマー塩に関する。
【0019】
精製は小分子を除去するであろう。精製は、透析、透析ろ過またはサイズ排除クロマトグラフィーによって実施され得る。透析ろ過および限外ろ過は、多孔性膜上で交差流ろ過(タンジェンシャルフローろ過とも称される)を用いる。ポリアクリル酸ポリマーを含む溶液は当該膜上を循環し、小分子を含む溶液部分は当該膜を通り抜ける浸透物中に除去される。精製ポリアクリル酸ポリマーを含む、当該溶液の別の部分(リテンテートと称される)は、当該膜の表面上を循環するであろう。リテンテートは循環ループ中を循環し、数回透析ろ過または限外ろ過される。溶媒(典型的には水性緩衝液または食塩水溶液)が、循環リテンテートに浸透物の流速と同じ速度で添加されて浸透物体積を入れ替え、リテンテートの体積を一定に維持する。除去分子のサイズは膜のカットオフによって決定される。有利には、1から80kDa、好ましくは2から50kDaのカットオフを有する膜を用いることができる。そのような膜は、例えばメルクミリポア(Merck Millipore)で入手できる。膜のカットオフは、当該膜の通常分子量限界(Normal Molecular Weight Limit(NMWL))または当該膜の分子量カットオフ(MWCO)にしたがって格付けされる。例えば、30kDで格付けされたUF膜は、30キロダルトンの分子量を有する試験タンパク質を排除する。当該試験タンパク質の90%がリテンテートに残留し、10%が膜を通過し、当該プロセス中に緩衝液または食塩水溶液がリテンテートに添加されない場合にはタンパク質の濃縮を生じるであろう。
【0020】
通常、リテンテート循環流は50から80L/H/m2である。膜間圧(TMP)は例えば0.9±0.1 barである。
したがって、工程b)の精製は、透析、透析ろ過、限外ろ過またはサイズ排除クロマトグラフィーによって実施できる。精製は、2から50mg/mL、好ましくは10から30mg/mLのポリアクリル酸ポリマーを含む溶液で実施できる。溶液中で当該ポリマーが塩の形で存在するとき、この濃度は当該ポリマー塩に関する。
有利には、精製は、1から80kDa、好ましくは2から50kDaのカットオフを有する膜を用いる透析ろ過によって実施される。
好ましくは、精製は、溶液中の以下を有するポリアクリル酸ポリマーの回収を可能にする条件下で実施される:
-精製(特に透析ろ過)後に得られる溶液の全乾燥物を基準にして、0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満の過硫酸塩、またはより一般的には精製(特に透析ろ過)後に得られる溶液の全乾燥物を基準にして、0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満の酸化剤、および/または
-精製(特に透析ろ過)後に得られる溶液の全乾燥物を基準にして、0.005%w/w未満の遊離酸形または塩の形のアクリル酸モノマー。
回収されたポリアクリル酸ポリマーの重量平均分子量Mwは350から650KDaの範囲であり、その多分散指数は4より低いかまたは同等である。
【0021】
精製装置は、所望の不純物を除去するために選択されるであろう。例えば、限外ろ過または透析ろ過が精製に用いられるときは、膜のカットオフは、除去されるべき不純物に応じて選択されるであろう。少なくとも20kDaのカットオフにより、本質的には過硫酸塩およびモノマーのような小分子は交差ろ過によって除去される。20kDaより大きいカットオフでより大きな分子(例えばオリゴマー)もまた除去され、結果として精製はIPの低下およびMwの増加をもたらす。
-好ましくは、透析ろ過または限外ろ過は用いられる膜のカットオフで実施され、またはより一般的には、精製は、溶液中の以下を有するポリアクリル酸ポリマーの回収を可能にする条件下で実施される:380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いかまたは等しい多分散指数;または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いかまたは等しい多分散指数、および
-精製(特に透析ろ過)後に得られる溶液の全乾燥物を基準にして、0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満の過硫酸塩、またはより一般的には精製(特に透析ろ過)後に得られる溶液の全乾燥物を基準にして、0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満の酸化剤、および/または
-精製(特に透析ろ過)後に得られる溶液の全乾燥物を基準にして、0.005%w/w未満の遊離酸形または塩の形のアクリル酸モノマー。
【0022】
有利には、精製工程後に得られる溶液は、2から50mg/mLのポリアクリル酸ポリマー塩、特に少なくとも10mg/mLのポリアクリル酸ポリマー塩を含む。
精製プロセスの主要な成果は、小分子、例えば酸化剤(すなわち過硫酸塩)およびアクリル酸塩モノマーの除去である。
そのような精製工程を系統的に実施することによって、アジュバントとして用いられるポリマー組成物の特徴はより明確に範囲が規定され、組成物はより安全かつより安定である。胎児毒性および催奇性が疑われるアクリル酸モノマー含有量は顕著に削減される。
上記で説明したとおり、装置使用(特に膜のカットオフ)に応じて、透析ろ過、透析、限外ろ過またはサイズ排除クロマトグラフィーは、得られるポリアクリル酸ポリマーの重量平均分子量Mwの増加およびその多分散指数(IP)の低下をもたらす。実際、用いられる技術に応じて、特に透析ろ過、透析および限外ろ過で用いられる膜のカットオフ、またはサイズ排除クロマトグラフィーで用いられるゲルの浸透特性に応じて、オリゴマーもまた除去され、結果としてMwは増加しIPは低下するであろう。これらの事例では、ポリマー塩の組成はより一層制御されるであろう。
滅菌は、ろ過物を滅菌することによって、または好ましくはオートクレーブすることによって実施できる。除菌ろ過は孔0.2μmの膜で実施できる。酸化剤の除去は、薬局方が推奨するオートクレーブによる滅菌の使用を可能にする。オートクレーブは100から150℃の温度で5分から1時間実施できる。精製工程により、得られたポリマーは時間の経過に対してより安定で、熱処理に対してより抵抗性である。
【0023】
本発明はまた、ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩、特にパラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”で規定されるポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の保存方法に関し、前記方法は、本発明に規定される製造方法、その後に続く、当該ポリアクリル酸ポリマーの得られた医薬的に許容できる塩の溶液での保存工程を含む。保存工程は1日から2年間継続できる。保存温度は、ほとんどの場合、0から30℃の範囲、特に2-8℃または室温、一般的には22℃辺りであろう。保存は工程c)の滅菌の後そのまま実施できる。
液体形のアジュバントのそのような保存は、乾燥形の保存と比較して非常に有益であり、追加の操作を回避する(後者は、ワクチン組成物の調製のためにポリマーの再懸濁/希釈を必要とする)。
【0024】
特に、ポリアクリル酸ポリマー塩の液体溶液が、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満の酸化剤および/または、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満の過硫酸塩を含むとき、当該溶液は特に安定である。
保存工程は、ポリアクリル酸ポリマー塩の溶液を容器内に置きそれを保存することによって実施される。保存時に、保存溶液は、例えば2から50mg/mLのポリアクリル酸ポリマー塩を含む。希釈または濃縮工程は、例えば工程b)の調製プロセスの後で所望の濃度を得るために実施できる。保存時に、ポリアクリル酸ポリマー塩は水溶液にまたは緩衝水溶液に存在し得る。保存溶液のpHは、通常5.5から8の間、より好ましくは6.5から7.5の間(例えば約7)である。安定なpHは、緩衝液(例えばトリス緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、Hepes緩衝液またはヒスチジン緩衝液)の使用によって維持できる。
水溶液はまた1つまたはいくつかの追加の塩(例えばNaCl)を含むことができる。
保存は、ポリアクリル酸ポリマー塩の溶液を光から離して維持することによって実施できる。そのために、暗色のまたは不透明な容器を用いることができる。
【0025】
ポリアクリル酸ポリマーのアジュバントとしての使用
本発明はまた、ワクチン組成物のアジュバントとして使用される、または個体(特に人間)の免疫応答の惹起に際してワクチン物質へのアジュバントとして使用される、上記パラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”に関連して本発明で規定される(記載の実施態様が何であれ)、ポリアクリル酸ポリマー塩に関する。
ワクチンのためのアジュバント組成物もまた本発明の目的であり、前記組成物は、上記パラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”に関連して本発明で規定される(記載の実施態様が何であれ)、ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の水溶液を含む。
本明細書で用いられる“アジュバント”はワクチン組成物の免疫原性を修正する化合物を指す。ワクチン組成物は古典的にはワクチン物質を含み、前記は、抗原または抗原をコードするベクター(生組換えウイルスベクターまたは核酸)であり得る。より厳密には、アジュバントは、組成物に存在するまたは組成物に存在する核酸によってコードされる抗原の免疫原性を調節する。“免疫原性を調節する”には、抗原によって誘発される免疫応答の強さおよび/または持続期間の増強が含まれ、特に、抗体(特にウイルス中和抗体または細菌性抗体)応答の強化および/または細胞性免疫応答の強化(CD4+および/またはCD8+ T細胞応答の強化)が含まれる。
本発明にしたがって選択されるポリマーは実施例によって示される弁別的利点を有する。例えば、類似するより低いMwの直鎖または分岐ポリマーと比較して、本発明にしたがって選択されるポリマーは増強された免疫応答をもたらす。
【0026】
CD4+リンパ球(“ヘルパー”T細胞とも称される)は免疫応答メディエーターである。古典的には、エフェクターCD4+ Tヘルパー細胞応答の2つのタイプ(Th1およびTh2と称される)は、サイトカインプロファイルおよび抗体サブタイプによって特徴づけられる。本発明で規定されるポリアクリル酸ポリマーの使用は、Th2応答(マウスではIL-4、IL-5およびIgG1抗体に関する結果が得られた)に加えて、強力なTh1応答(マウスではIFN-γ、IFN-αおよびIgG2a抗体に関する結果が得られた)を促進する利点を有する(Th2応答は先行技術の人間用アジュバント(アルミニウム塩、水中油エマルジョン)によって一般的に誘発される)。強力なTh1免疫の誘発はウイルスおよび細胞内細菌感染とともに癌との戦いで重要である。なぜならば、Th1免疫応答は、マクロファージおよび他のキラー細胞(例えばCD8+ Tリンパ球または細胞傷害性Tリンパ球)の活性化を支持し、細胞内病原体、感染細胞および腫瘍細胞を殺滅するからである。
本発明のポリアクリル酸ポリマー塩およびワクチン物質は、同じ組成物、特に水性組成物中に処方されるか、または2つの異なる組成物中に処方されて投与直前に混合され得る。
【0027】
複数の部分によるキットの形態でワクチン組成物を得ることもまた可能である。ワクチン組成物は2つのバイアルを含むことができ、1つはワクチン物質を含有し、他方はポリアクリル酸ポリマー塩を含有する。特に、液体処方物中のポリアクリル酸ポリマー塩は第一のバイアルに入れられ、フリーズドライまたは凍結乾燥形のワクチン物質(特に選択されたフリーズドライまたは凍結乾燥形抗原)は第二のバイアルに入れられる。アクリル酸ポリマー塩の処方物は、ワクチン物質(特に選択抗原)の再水和のために用いられるであろう。
本発明はまた、得られるTh1免疫応答を強化するおよび/または得られるTh1およびTh2免疫応答を均衡させるワクチン組成物のアジュバントとして使用される、上記パラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”に関連して本発明で規定される(記載の実施態様が何であれ)、ポリアクリル酸ポリマー塩に関する。特に、本発明で規定されるポリアクリル酸ポリマー塩は、個体(特に人間)で免疫応答を惹起し、さらに得られるTh1免疫応答を強化しおよび/または得られるTh1およびTh2免疫応答を均衡させるために、ワクチン物質へのアジュバントとして使用される。
【0028】
ワクチン組成物およびワクチン物質
本発明のワクチン組成物は、ワクチンで用いることができる任意のワクチン物質、例えば抗原または抗原をコードするベクター(生ウイルスベクターまたは核酸(DNAおよびRNA)を含む)を含むことができる。
本発明の目的のために、“抗原”という用語は、免疫学的応答を引き起こす、1つ以上のエピトープ(線状、立体またはその両方)を含む任意の分子を意味することが意図される。本発明のワクチン組成物で用いることができる抗原は、生、弱毒化、死滅、不活化または非感染性全微生物、微生物の抽出物若しくは分割物、天然の抗原のサブユニット、組換え型、またはハイブリッド型であり得る。前記がサブユニット型であるとき、抗原の本質はほとんど重要ではない。抗原は、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖類、糖脂質、リポタンパク質、リポペプチド、VLP(ウイルス様粒子)などであり得る。
組成物に存在するワクチン物質は、抗原または抗原をコードするベクター(組換えウイルスまたは核酸)であり、前記抗原は、人間または人間以外の動物に影響を与え得る多様な疾患の治療または予防に用いられるか、または用いるために適切であり、それら疾患には特に以下が含まれる:ジフテリア、破傷風、ポリオ、狂犬病、百日咳、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、黄熱病、腸チフス、水痘、麻疹、おたふくかぜ、風疹、日本脳炎、インフルエンザ、髄膜炎、コレラ、以下によって引き起こされる伝染病(ロタウイルス、ノロウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、西ナイルウイルス、デングウイルス、チクングンヤウイルス、HIV(エイズ))、以下によって引き起こされる細菌性疾患(連鎖球菌、クラミジア・トラコマチスおよびプニューモニアエ、淋菌および髄膜炎菌(Neisseria gonorrhoeaeおよびN.meningitidis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)B型)、リステリア症、細菌性赤痢、サルモネラ症、結核、ライム病、癌、寄生虫症(例えばマラリア、リーシュマニア症、シャーガス病、住血吸虫症など。
【0029】
抗原は細菌性、ウイルス性または寄生生物性であり得る。本発明の主題のために適切な抗原では特に以下が挙げられる:以下に由来する細菌性抗原(破傷風菌、ジフテリア菌(Clostridium diphtheriae)、百日咳菌、インフルエンザ菌B型、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、シゲラ属種、チフス菌、黄色ブドウ球菌若しくは表皮ブドウ球菌、結核菌、クラミジア・トラコマチスおよびプニューモニアエ、またはストレプトコッカス属種)、以下に由来するウイルス性抗原(肝炎A、B若しくはCウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、西ナイルウイルス、狂犬病ウイルス、ポリオウイルス、HIVウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、サイトメガロウイルスまたはヘルペスウイルス)、以下に由来する寄生生物抗原(マラリア原虫属種、リーシュマニア属種または住血吸虫属種)、および腫瘍抗原。これらの抗原は、遺伝子組み換え方法を用いて、または当業界で周知の抽出方法を用いて入手できる。
特に、組成物に存在するワクチン物質は、黄色ブドウ球菌に由来するかまたはサイトメガロウイルスに由来する抗原または抗原をコードするベクター(組換えウイルスまたは核酸)である。
本発明のワクチン組成物は、単一病原体または癌に対する免疫を意図する組成物であるか(言い換えれば、前記組成物は単一病原体または癌の1つ以上のワクチン物質、特に1つ以上の抗原を含むか)、またはいくつかの病原体または癌に対する免疫を意図する組成物であり得る。
本発明のワクチン組成物はまた、1つまたはいくつかの固有のワクチン物質、特に単一疾患の1つまたはいくつかの抗原を含むことができるが、前記ワクチン物質はこの疾患の異なるカテゴリーに属する(当該物質の本質に応じて複数の血清型若しくは株、またはクレード)。
【0030】
本発明のポリアクリル酸ポリマー塩およびワクチン物質は、医薬的に許容できるベヒクルを含む組成物中で処方することができる。本発明の文脈では、“医薬的に許容できるベヒクル”という表現は、哺乳動物(特に人間)への投与のために生理学的に許容でき、一方で本発明の組成物の生理学的活性(すなわち免疫応答を誘発するその能力)を維持するベヒクルを指す。ある例示的な医薬的に許容できるベヒクルは、生理学的食塩水の緩衝液である。他の生理学的に許容できるベヒクルは当業者には公知であり、例えば下記刊行物に記載されている:Remington's Pharmaceutical Sciences (18th edition), ed.A.Gennaro, 1990, Mack Publishing Company, Easton, Pa。
組成物のpHは通常は5.5から8、より好ましくは6.5から7.5(例えば7)である。安定なpHは、緩衝液(例えば、トリス緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、Hepes緩衝液またはヒスチジン緩衝液)の使用によって維持され得る。したがって組成物は一般的に緩衝液を含む。組成物は無菌的および/または発熱物質フリーであり得る。組成物はヒトに関して等張であり得る。
【0031】
組成物はまた1つまたはいくつかの追加の塩(例えばNaCl)を含む。
本発明の組成物はワクチン物質の免疫学的に有効な量を含む。“免疫学的に有効な量”は、対象動物に投与されたとき、用いられた抗原またはベクターおよび/または核酸発現で生成された抗原に対して免疫応答を引き起こすために有効な量である。この量は、治療されるべき対象動物の健康および身体条件、それらの齢、抗体を生成する対象動物の免疫系の能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方、治療医師による医学的状況の判定に応じて変動し得る。
本発明のワクチン組成物はまた、アレルゲン、特にアレルギー治療での脱感作のためのアレルゲンを含むことができる。
【0032】
本発明のワクチン組成物は、ワクチンの投与のために一般的に用いられる任意のルートによって投与され得る。期待される免疫応答の誘発をもたらすレジメンが用いられるであろう。通常、免疫スケジュールは数回の投与を含む。投与される組成物の量は所望の免疫応答を生じるために十分である。
好ましくは、ワクチン組成物は、製造がより安価な液体形の使用を可能にするポリアクリル酸ポリマーの良好な安定性特性が考慮に入れられた液体形である。
非経口注射(筋肉内、皮下、皮内および静脈内)もまた好ましい。ポリアクリル酸ポリマーは皮内注射後に局所の明白な副作用を引き起こさない。これは、皮内ルートでは時に反応原性である他のほとんどのアジュバント(アルミニウム塩を含む)より有利であり得る。
本発明の好ましいワクチン組成物を以下に記載する。
本発明のワクチン組成物は、少なくとも1つのワクチン物質およびポリアクリル酸ポリマーの医薬的許容できる塩を含み、前記ポリアクリル酸ポリマー塩は、350から650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有する。
有利には、本発明のワクチン組成物は、ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩を1用量当たり0.1から8 mg、好ましくは0.1から4 mg、より好ましくは0.1から2 mg含む。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つのワクチン物質は抗原または抗原をコードするベクター(ウイルスベクターまたは核酸)であり、前記抗原は、以下に由来する細菌性抗原(破傷風菌、ジフテリア菌(Clostridium diphtheriae)、百日咳菌、インフルエンザ菌B型、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、シゲラ属種、チフス菌、黄色ブドウ球菌若しくは表皮ブドウ球菌、結核菌、クラミジア・トラコマチス若しくはプニューモニアエ、またはストレプトコッカス属種)、以下に由来するウイルス性抗原(肝炎A、B若しくはCウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、西ナイルウイルス、狂犬病ウイルス、ポリオウイルス、HIVウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、サイトメガロウイルスまたはヘルペスウイルス)、特に以下に由来する寄生生物抗原(マラリア原虫属種、リーシュマニア属種または住血吸虫属種)、および腫瘍抗原である。特に、組成物に存在するワクチン物質は、黄色ブドウ球菌またはサイトメガロウイルスに由来する抗原または抗原をコードするベクター(組換えウイルスまたは核酸)である。
好ましい実施態様では、本発明のワクチン組成物は、5.5から8.0の範囲のpHを有する液体形である。例えば、それらはリン酸緩衝液またはトリス、Hepes、ヒスチジン若しくはクエン酸緩衝液を含む。
【0034】
ワクチン組成物に存在するポリアクリル酸ポリマー塩は、以下の特徴の1つ、そのような特徴の任意の組合せ、またはそれらが互いに排除しあわないならば以下の特徴の全てすら有する。
-ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%未満w/w、好ましくは0.001%w/w未満の酸化剤、および/または前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満の過硫酸塩を含む;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は、4より低いかまたは等しい、好ましくは2.5より低いかまたは等しい多分散指数を有する;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数を有する;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いかまたは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いかまたは等しい多分散指数を有する;
-ポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する。
-ポリアクリル酸ポリマー塩またはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして、遊離酸の形または塩の形のアクリル酸モノマーを0.005%w/w未満含む。
-直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩は透析ろ過されるか、および/または滅菌される。
【0035】
特に、ワクチン組成物に存在するポリアクリル酸ポリマー塩は以下の特徴を有する:
-380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する、または
-380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する、または
-400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する、または
-400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いかまたは等しい多分散指数、ポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の過硫酸塩の含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満、好ましくは0.001%w/w未満、並びにポリアクリル酸ポリマー塩中のまたはポリアクリル酸ポリマー塩の液体処方物中の遊離酸形または塩形のアクリル酸モノマーの含有量は、前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満;有利にはこのポリアクリル酸ポリマー塩は0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有する。
【0036】
本発明はまた、個体(特に人間)の免疫応答の惹起で使用される本発明のワクチン組成物に関する。本発明の主題はまた、個体(特に人間)で免疫応答を惹起する方法を包含し、前記方法は、その必要がある個体に本発明の組成物の免疫学的に有効な量を投与する工程を含む。当該個体には人間または動物が含まれ、前記動物は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマまたはヒツジ種とともにイタチ類および鳥類種から選択される。
本発明はまた、得られるTh1免疫応答が強化される、個体(特に人間)の免疫応答の惹起で使用される本発明のワクチン組成物に関する。本発明の主題はまた、得られるTh1免疫応答が強化される免疫応答を個体(特に人間)で惹起する方法を包含し、前記方法は、その必要がある個体に本発明の組成物の免疫学的に有効な量を投与する工程を含む。
【0037】
ワクチン組成物の調製
有利には、ポリアクリル酸ポリマーまたはポリアクリル酸ポリマー塩は、ワクチン組成物に添加される前に精製(例えば透析ろ過)に付されている。より厳密には、ポリアクリル酸ポリマーまたはポリアクリル酸ポリマー塩は、ワクチン組成物に導入される前に精製(例えば透析ろ過)とその後に続く滅菌に付されている。滅菌は、ろ過物を滅菌することによって、または好ましくはオートクレーブすることによって実施できる。
本発明にしたがえば、ワクチン組成物は、ポリアクリル酸ポリマー塩(特に水溶液または緩衝水溶液の液体形である)およびワクチン物質の懸濁物、並びに当該組成物に存在し得る他の成分を単純に混合することによって調製できる。前記は、選択した1つ以上のワクチン物質をポリアクリル酸ポリマー塩に、特に水溶液または緩衝水溶液の液体形であるポリアクリル酸ポリマー塩に添加することによって、またはポリアクリル酸ポリマーを、特に水溶液または緩衝水溶液の液体形であるポリアクリル酸ポリマーを、選択されたワクチン物質を既に含む懸濁物に添加することによって達成することができる。他方、複数のワクチン物質を含むワクチン組成物を処方することが所望される事例では、最初にポリアクリル酸ポリマー塩を1つ以上のワクチン物質と混合する工程を実施し、後で他のものを取り込むことが好ましい。
また別には、ワクチン物質がフリーズドライまたは凍結乾燥生成物として処方される場合、当該凍結乾燥された物質をポリアクリル酸ポリマー塩を含む処方物(水溶液または緩衝水溶液)で直に再水和することによって、ワクチン組成物を入手することができる。
【0038】
本発明はまた、少なくとも1つのワクチン物質を含むワクチン組成物の製造における、上記パラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”に関連して本発明で規定される(記載の実施態様が何であれ)ポリアクリル酸ポリマー塩の使用に関する。
上記パラグラフ“ポリアクリル酸ポリマーの特色”に関連して本発明で規定される(記載の実施態様が何であれ)ポリアクリル酸ポリマー塩と少なくとも1つのワクチン物質との混合を実施するワクチン組成物の方法もまた本発明の目的である。
便利なように、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられるある種の用語がここに集められる。
本明細書で用いられる、“動物”という用語は人間を含むすべての脊椎動物を含む。前記用語はまた、発育の全段階(胚性期および胎児期を含む)の個々の動物を含む。特に、“脊椎動物”という用語は、人間、イヌ科の動物(例えばイヌ)、ネコ科の動物(例えばネコ)、ウマ科の動物(例えばウマ)、ウシ属の動物(例えば乳牛、畜牛)、ブタ類(例えばブタ)とともに鳥類を含むが、ただしこれらに限定されない。本明細書で用いられる、“乳牛”および“畜牛”という用語は、一般的に任意の齢のウシ属起源の動物を指すために用いられる。互換可能な用語には、“ウシ属の動物(bovine)”、“仔牛(calf)”、“若い去勢雄牛(steer)”、“非去勢雄牛(bull)”、“若い雌牛(heifer)”、“乳牛(cow)”などが含まれる。互換可能な用語には、“仔豚(piglet)”、“雌豚(sow)”などが含まれる。本明細書で用いられる、“鳥類”という用語は、分類学上のクラスのavaの任意の種または亜種を指し、例えばニワトリ(交配鶏、肉用鶏、採卵鶏)、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラスおよび走鳥類(ダチョウ、エミュおよびヒクイドリを含む)である。“ブタ(pig)”または“仔豚”はブタ類起源の動物を意味し、一方、“雌豚”は繁殖齢および繁殖能力を有する雌を指す。
【0039】
本明細書で用いられる、“病毒性”という用語は、動物宿主で感染性であるその能力を保持する単離株を意味する。
本明細書で用いられる、“不活化ワクチン”という用語は、もはや複製または増殖することができない感染性生物または病原体を含むワクチン組成物を意味する。病原体は細菌性、ウイルス性、原生動物、または真菌起源であり得る。不活化は、以下を含む多様な方法によって達成できる:凍結融解、化学的処理(例えばホルマリンによる処理)、音波処理、照射、熱、または当該生物の免疫原性を維持しながら複製若しくは増殖を妨げるために十分な任意の他の通常的な手段。
本明細書で用いられる、“免疫原性”という用語は、1つの抗原または複数の抗原に対して宿主動物で免疫応答を生じることができることを意味する。この免疫応答は、特異的な感染性生物に対するワクチンによって惹起される防御免疫の基礎を形成する。
本明細書で用いられる、“免疫応答”という用語は動物で惹起される応答を指す。免疫応答は、細胞性免疫(CMI)、液性免疫を指すことができ、または両方を含むことができる。本発明はまた、免疫系の一部に限定される応答を意図する。例えば、本発明のワクチン組成物はガンマインターフェロン応答の増加を特異的に誘発することができる。
本明細書で用いられる、“抗原”または“免疫原”という用語は、宿主動物で特異的な免疫応答を誘発する物質を意味する。抗原は、全生物(死滅、弱毒化または生);生物のサブユニットまたは部分;免疫原性特性を有する挿入物を含む組換えベクター;宿主動物への提示に際して免疫応答を誘発することができるDNAの断片またはフラグメント;タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン、毒素、抗毒素;またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0040】
本明細書で用いられる、“多価”という用語は、2つ以上の抗原を含むワクチン(同じ種由来であれ(すなわち異なるFMDウイルス血清型の単離株)、異なる種であれ(すなわちパスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)およびパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)の両方の単離株))、または異なる属に由来する抗原の組合せを含むワクチン(例えば、パスツレラ・ムルトシダ、サルモネラ属、大腸菌、ヘモフィルス・ソムヌス(Haemophilus somnus)およびクロストリジウム属由来の抗原を含むワクチン)を意味する。
本明細書で用いられる、“医薬的に許容できる担体”および“医薬的に許容できるベヒクル”という用語は相互に取り換えることが可能であり、不利な作用を生じることなく宿主に注射できるワクチン抗原混合のための液体ベヒクルを指す。当業界で公知の医薬的に許容できる適切な担体には、滅菌水、食塩水、グルコース、デキストロース、または緩衝溶液が含まれる。担体は補助剤を含むことができ、前記補助剤には、希釈剤、安定剤(すなわちショ糖およびアミノ酸)、保存料、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、粘度強化添加物、着色剤などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0041】
本明細書で用いられる、“ワクチン組成物”という用語は、宿主で免疫応答を誘発するために有用な少なくとも1つの抗原または免疫原を医薬的に許容できるベヒクル中に含む。ワクチン組成物は、医療業界または獣医業界の業者にとって周知の投薬量および技術で投与できるが、齢、性別、体重、種および投与動物の状態、並びに投与ルートのような要件が考慮される。投与ルートは、経皮的、経粘膜(例えば口、鼻、肛門、膣)投与、または非経口(皮内、筋肉内、皮下、静脈内または腹腔内)ルートであり得る。ワクチン組成物は単独投与されるか、または他の処置または治療法とともに同時投与若しくは連続投与され得る。投与形態には以下が含まれ得る:懸濁物、シロップまたはエリキシル、および非経口、皮下、皮内若しくは静脈内投与(例えば注射可能投与)のための調製物、例えば無菌的懸濁物若しくはエマルジョン。ワクチン組成物は、スプレーとして投与されるか、または食物および/または水に混合されるか、または適切な担体、希釈剤、または賦形剤(例えば滅菌水、生理学的食塩水、グルコースなど)との混合物としてデリバリーされ得る。組成物は、所望される投与および調製ルートに応じて補助物質を含むことができ、前記補助物質は、例えば湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲル化若しくは粘度強化添加物、保存料、香料、着色剤などである。標準的な製薬に関する成書(例えば“Remington's Pharmaceutical Sciences,”(1990))を参考にして、必要以上の実験を行うことなく適切な調製物を製造することができる。
【0042】
本発明での使用に適切な免疫原または抗原は、不活化病原体、弱毒化病原体、免疫原性サブユニット(例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン)、または組換え発現ベクター(免疫原性挿入物を有するプラスミドを含む)から成る群から選択できる。本発明のある実施態様では、免疫原は不活化または死滅微生物である。本発明の別の実施態様では、ワクチン組成物は、以下を含む(ただしこれらに限定されない)トリ病原体のグループから選択される免疫原を含む:サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・エンテリチディス(Salmonella enteritidis)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、産卵低下症候群ウイルス(EDS)、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)、トリインフルエンザウイルス、およびそれらの組合せ。
また別には、ワクチン組成物は、ネコの病原体、例えばネコヘルペスウイルス(FHV)、ネコカリシウイルス(FCV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、狂犬病ウイルス、およびそれらの組合せから選択される免疫原を含む。
さらに別の実施態様では、本発明のワクチン組成物は、以下を含む(ただしこれらに限定されない)イヌ病原体から選択される免疫原を含む:狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス(CHV)、イヌパルボウイルス(CPV)、イヌコロナウイルス、レプトスピラ・カニコラ(Leptospira canicola)、レプトスピラ・イクテロヘモラジアエ(Leptospira icterohaemorragiae)、レプトスピラ・グリッポチフォサ(Leptospira grippotyphosa)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボルデテーラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)など、およびそれらの組合せ。
【0043】
本発明のさらに別の実施態様では、組成物は、ウマの病原体、例えばウマヘルペスウイルス(1型または4型)、ウマインフルエンザウイルス、破傷風、西ナイルウイルスなど、またはそれらの組合せから選択される免疫原を含む。
本発明のさらに別の実施態様では、組成物は、ウシの病原体、例えば口蹄疫ウイルス(FMDV)、狂犬病ウイルス、ウシロタウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス3型(bPIV-3)、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルス(IBR)、大腸菌、P.ムルトシダ、P.ヘモリチカおよびそれらの組合せから選択される免疫原を含む。
【0044】
本発明のさらに別の実施態様では、組成物は、ブタ病原体から選択されるワクチン物質(免疫原および免疫原をコードする核酸を含む)を含み、前記ブタ病原体は例えば以下である(ただしこれらに限定されない):ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタシルコウイルス2型(PCV-2)、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRS)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、ブタパルボウイルス(PPV)、FMDV、M.ヒオプニューモニアエ、エリシペロスリクス・リュシオパシアエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、パスツレラ・ムルトシダ、ボルデテーラ・ブロンキセプチカ、大腸菌など、およびそれらの組合せ。
ウイルス、細菌、真菌などを含むワクチン物質は、適切な培養液または宿主細胞株および当業者に周知の通常方法を用いるin vitro培養方法によって製造できる。例えば、PRRSは、適切な細胞株(例えばMA-104細胞株)で培養できる(例えば米国特許5,587,164号、5,866,401号、5,840,563号、6,251,404号を参照されたい)。同様な態様で、PCV-2はPK-15細胞株を用いて培養できる(US6,391,314を参照されたい)。SIVは卵で培養でき(US6,048,537)、M.ヒオプニューモニアエは適切な培養液中で培養できる(US5,968,525、US5,338,543)。
【0045】
不活化された免疫学的またはワクチン組成物を得るために、病原体は、採集後に(場合によって清澄化に付した後で)、例えばホルマリン若しくはホルムアルデヒド、ベータ-プロピオラクトン、二元性エチレンイミン(BEI)を用いる化学的処理、および/または物理的処理(例えば熱処理または音波処理)の手段によって好ましくは不活化される。不活化の方法は当業者には周知である。例えば、FMDウイルスは、エチレンイミンによって(Cunliffe, HR, Applied Microbiology, 1973, p.747-750)、または高圧によって(Ishimaru et al., Vaccine 22 (2004) 2334-2339)不活化できる。PRRSウイルスは、ベータ-プロピオラクトン処理によって(Plana-Duran et al., Vet.Microbiol., 1997, 55: 361-370)、またはBEIによって(US5,587,164)不活化できる。PCV-2の不活化は、エチレンイミン処理を用いてまたはベータ-プロピオラクトン処理(米国特許シリアル番号6,391,314)によって達成できる。ブタインフルエンザウイルスは、洗剤(例えばトリトン)を用いてまたはホルムアルデヒド処理(US6,048,537)で不活化できる。細菌M.ヒオプニューモニアエは、ホルムアルデヒド処理によって(Ross R.F.上掲書)、エチレンイミンまたはBEI処理によって不活化できる。
不活化病原体は、通常の濃縮技術によって(特に限外ろ過によって)濃縮でき、および/または通常の精製手段によって、特にクロマトグラフィー技術を用いて精製できる。前記クロマトグラフィー技術には、ゲルろ過、シュクロース勾配での超遠心分離、または(特にPEGの存在下での)選択的沈殿が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0046】
本発明のワクチン組成物で有用な免疫原にはまた発現ベクターが含まれる。そのようなベクターには、in vivo組換え発現ベクター(例えばポリヌクレオチドベクターまたはプラスミド(EP-A2-1001025;Chaudhuri P, Res.Vet.Sci.2001, 70: 255-6))、ウイルスベクター(例えばアデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター(例えば鶏痘ベクター(US5,174,993、US5,505,941およびUS5,766,599)またはカナリアポックスベクター(US5,756,103))であるが、ただしこれらに限定されない)、または細菌ベクター(大腸菌またはサルモネラ属種)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明はまた多価免疫学的組成物または組合せワクチン組成物の処方物を包含する。例えば、本発明にしたがって作製される組合せウシバクテリンで有用な抗原には、マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)、パスツレラ属種(特にP.ムルトシダおよびP.ヘモリチカ)、ヘモフィルス属種(特にH.ソムヌス)、クロストリジウム属種、サルモネラ属、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、連鎖球菌属、ブドウ球菌属、モラキセラ属(Moraxella)、大腸菌などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0047】
本発明はまた宿主(例えば動物)で免疫応答を誘発する方法を提供し、前記方法は、本発明の免疫学的組成物またはワクチンを当該宿主に投与する工程を含む。この態様で惹起される免疫応答は、特に抗体および/または細胞性免疫応答、特にγ-インターフェロン応答である。
特に、本発明は、病原性生物による動物の感染(例えばウイルス、細菌、真菌による感染または原生動物の寄生)に対して免疫するか、または前記動物の感染によって引き起こされる症状を予防または緩和する方法を提供する。本発明の方法は脊椎動物で有用であり、前記脊椎動物には、人間、イヌ科の動物(例えばイヌ)、ネコ科の動物(例えばネコ)、ウマ科の動物(例えばウマ)、ウシ属の動物(例えば畜牛)、およびブタ類(例えばブタ)とともに鳥類(ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラスおよび走鳥類(ダチョウ、エミュおよびヒクイドリなど)が含まれるが、ただしこれらに限定されない)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明の個別の特徴では、これらの方法は、本発明にしたがって作製されたワクチン組成物の投与による分娩前の妊娠雌のワクチン接種から成る。これらの方法はさらに、ワクチン接種プロトコルによって惹起される防御抗体の誘発およびこれらの防御抗体のワクチン接種妊娠雌からそれらの仔への移転を含み、当該仔を感染および疾患から防御する。
【0048】
本発明にしたがって作製されたワクチン組成物の投薬量は、ワクチン接種される動物の種、血統、齢、サイズ、ワクチン接種歴、および健康状態に左右されるであろう。他の要件、例えば抗原濃度、追加のワクチン成分、および投与ルート(すなわち皮下、皮内、経口、筋肉内または静脈内投与)もまた有効な投薬量に影響するであろう。投与されるべきワクチン投薬量は、ワクチンの抗原濃度、投与ルート並びにワクチン接種されるべき動物の齢および状態を基準にして容易に決定できる。抗原の各バッチを個々に較正することができる。また別には、種々の投薬量の秩序だった免疫原性試験とともにLD50試験および他のスクリーニング手順を用いて、不必要な実験を行うことなく本発明のワクチン組成物の有効な投薬量を決定できる。下記に提示する実施例から、どんな概算投薬量およびどんな概算体積が本明細書に記載するワクチン組成物の使用のために適切であるかは容易に明白であろう。重要な要件は、当該投薬量が自然感染に対して少なくとも部分的な防御効果(自然感染に伴う死亡率および有病率の減少によって立証される)を提供するということである。適切な体積は同様に当業者によって容易に確認される。例えば、鳥類種では、1用量の体積は約0.1mLから約0.5mL、有利には約0.3mLから約0.5mLであり得る。ネコ、イヌおよびウマの種については、1用量の体積は約0.2mLから約3.0mL、有利には約0.3mLから約2.0mL、より有利には約0.5mLから約1.0mLであり得る。ウシおよびブタの種については、1用量の体積は約0.2mLから約5.0mL、有利には約0.3mLから約3.0mL、より有利には0.5mLから約2.0mLであり得る。
【0049】
周期的な時間間隔での反復ワクチン接種は、初回にまたは最後の投与から長期間が過ぎたときに免疫応答を強化するために所望し得る。本発明のある実施態様では、ワクチン組成物は非経口注射として(すなわち皮下、皮内または筋肉内)投与される。組成物は1回投与として投与するか、また別の実施態様では、約2回から約5回投与の反復投与として投与でき、後者では約2から約6週間、好ましくは約2から約5週間の間隔で投与される。しかしながら、当業者は、投与回数およびワクチン接種間隔は、多数の要件(ワクチン接種動物の齢、動物の状態、免疫ルート、1用量当たりの利用可能な抗原量が含まれが、ただしこれらに限定されない)に左右されることを認識しているであろう。最初のワクチン接種については、期間は一般的に1週間より長く、好ましくは約2から約5週間であろう。以前にワクチン接種された動物については、約1年間隔のブースターワクチン接種(妊娠前または妊娠中)を実施できる。
【0050】
本発明はさらに宿主(例えば動物)を治療する方法に関し、前記方法は、本発明にしたがって作製され、下記から成る群から選択される少なくとも1つの免疫原を含む医薬組成物を宿主に投与する工程を含む:タンパク質若しくはペプチド、不活化若しくは弱毒化ウイルス、抗体、アレルゲン、CpG ODN、成長因子、サイトカインまたは抗生物質、特にCpG ODNまたはサイトカイン。これらの医薬組成物を用いて、動物(例えばニワトリ、ブタ、乳牛または畜牛)の成長状況を改善することができる。
ある実施態様では、本開示は、アジュバント処方物、治療的に有効な量の抗原成分、および医薬的または獣医的に許容できる担体を含む免疫学的またはワクチン組成物を提供し、ここでアジュバント処方物は、約350kDaから約650kDaの重量平均分子量(AMw)を有する非架橋ポリアクリル酸(PAA)ポリマーを含む。いくつかの実施態様では、抗原成分は以下を含むことができる:弱毒化組換えウイルスベクター、天然または遺伝的に操作された生弱毒化ウイルス若しくは微生物、不活化ウイルス若しくは微生物、コクシジウム微生物、早熟コクシジウム微生物、タンパク質性サブユニット、単細胞寄生生物、多細胞性寄生生物または前記先行するものの任意の組合せ。
【0051】
個別の実施態様では、抗原成分は以下を含む:イヌコロナウイルス(CCV)抗原、イヌジステンパーウイルス(CDV)抗原、イヌパルボウイルス(CPV)抗原、イヌパラインフルエンザ(CPI)抗原、ネコカリシウイルス(FCV)抗原、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)抗原、ネコヘルペスウイルス(FHV)抗原、ネコ白血病ウイルス(FeLV)抗原、癌抗原(Her2-neu、チロシナーゼ、Il-2など)、アイメリア属種若しくはその抗原、大腸菌若しくはその抗原、マイコプラズマ・ヒオプニューモニアエ(M.ヒオ)、ウシ下痢ウイルス(BDV)抗原、少なくとも1つの防御免疫原を含みそのin vivo発現が可能な組換えカナリアポックスベクター、不活化完全長狂犬病糖タンパク質、エリシペロスリクス属種、豚丹毒菌、豚丹毒菌由来表面防御抗原(SpaA)、少なくとも1つの追加免疫原の少なくとも1つの部分を含むSpaA融合タンパク質、SpaA-FlaB融合タンパク質、SpaA-FlaB-His融合タンパク質、クロストリジウム・パーフリンゲンスB/C毒素、C.パーフリンゲンスD毒素、C.セプチクム毒素、C.ノビイ毒素、破傷風菌毒素、または前記先行するものの任意の組合せ。
【0052】
別の実施態様では、抗原成分は、不活化完全長狂犬病糖タンパク質を含むかまたは前記から成る。抗原成分はまた、C.パーフリンゲンスB/C毒素、C.パーフリンゲンスD毒素、C.セプチクム毒素、C.ノビイ毒素、破傷風菌毒素またはそれらの組合せを含むか若しくは前記からなり得る。個別の実施態様では、免疫学的またはワクチン組成物は、C.パーフリンゲンスB/C毒素、C.パーフリンゲンスD毒素、C.セプチクム毒素、C.ノビイ毒素、および破傷風菌毒素を含む抗原成分を含むことができる。本明細書に開示するPAAアジュバントは“投与量節約”を提供する。
さらに別の実施態様では、抗原成分はSpaA抗原またはSpaA抗原を含む融合タンパク質を含む。
別の実施態様では、抗原成分は、インフルエンザ遺伝子を含みそのin vivo発現が可能な弱毒化アビポックスウイルスまたはDNAプラスミドを含む。抗原成分はまた、狂犬病糖タンパク質遺伝子を含みそのin vivo発現が可能な弱毒化アビポックスウイルスまたはDNAプラスミドを含む。
別の特徴では、多様な治療方法が提供される。例えば、本開示は、細菌によって引き起こされる感染に対してウシを治療する方法を提供し、前記方法は、約350kDaから約650kDaの範囲のMwを有するPAAポリマーを含むワクチン組成物を当該ウシに投与する工程を含む。個別の実施態様では、約450kDaのMwを有するPAAが、動物(ウシを含む)の防御免疫応答の惹起に並外れて有用である。
ある実施態様では、本開示は、インフルエンザによって引き起こされる感染に対してイヌまたはウマを治療する方法を提供し、前記方法は、インフルエンザ抗原を含みそのin vivo発現が可能なアビポックスまたはDNAプラスミドを含むワクチンをイヌまたはウマに投与する工程を含む。個別の実施態様では、インフルエンザ抗原はHA遺伝子である。
別の実施態様では、本開示は、狂犬病ウイルスによって引き起こされる感染に対してイヌを治療する方法を提供し、前記方法は、不活化狂犬病糖タンパク質および約350kDaから650kDaのMwを有するPAAを含むワクチン組成物をイヌに投与する工程を含む。
【0053】
本発明はまた、in ovo投与のためのトリワクチン(トリコクシジウム症ワクチンを含む)を提供し、前記ワクチンは、約350kDaから約650kDaの平均Mwを有する非架橋PAAを含むアジュバントおよび以下の(1)から(5)から選択される原生動物抗原を含む:
(1)1つ以上の組換え発現タンパク質、(2)前記原生動物から通常的手段によって単離される1つ以上のタンパク質または他の巨大分子、(3)前記原生動物の全細胞抽出物または調製物、(4)アイメリア・アセルブリナ、E.アデノエイデス、E.ブルネッチィ、E.コルキシ、E.クルバタ、E.ディスペルサ、E.デュオデナリス、E.フラテルクラエ、E.ガロパボニス、E.インノクア、E.プラエコクス、E.マキシマ、E.メレアグリディス、E.メレアグリミチス、E.ミチス、E.ネカトリクス、E.ファシアニ、E.プロセラ、E.テネラおよびそれらの組合せから選択される不活化、生または生早熟コクシジウム。
個別の実施態様では、PAAは約450kDaの平均Mwを有する。
【0054】
本発明はまた、大腸菌またはM.ヒオによって引き起こされる感染に対してウシを治療する方法を提供し、前記方法は、PAAおよび大腸菌またはM.ヒオを含むワクチン組成物をウシに投与する工程を含む。
別の実施態様では、免疫学的またはワクチン組成物は、ネコの感染および/または病的状態の原因である物質に相当する抗原を含む。当該抗原はネコ免疫不全ウイルス(FIV)を含むことができる。本発明はまた、FIVによって引き起こされる感染に対してネコを治療する方法を提供し、前記方法は、FIV抗原およびPAAを含むワクチンをネコに投与する工程を含む。
さらに別の実施態様では、本開示は癌抗原を含むワクチン組成物を提供する。関連する実施態様では、本開示は、癌に対して対象動物を治療する方法を提供し、前記方法は、癌抗原およびPAAを含むワクチン組成物を対象動物に投与する工程を含む。
図と参照される以下の実施例は、本発明で用いられるポリマーの特性および利点を強調する。これらの実施例では、NaPAAは、本発明によるか否かにかかわらずポリマーのナトリウム塩を指す。
指定がなければ、“分子量”は“重量平均分子量”を意味する。
【実施例】
【0055】
実施例1-ポリマーの特徴付けのための材料と方法
Mw、マルクホウインクの傾き、IP、モノマーおよび過硫酸塩含有量のいずれの決定も以下の手順にしたがって実施した。
I.1-Mw、マルクホウインクの傾きおよびIPの決定
1.化学物質および試薬
水はMilli-Q-UF系(Millipore, Milford, MA, USA)で精製した。リン酸緩衝食塩水(PBS 1C;6.5mMol.L-1 Na2HPO4, 2H2O;1.5mMol.L-1 KH2PO4;2.7mMol.L-1 KCl;137mMol.L-1 NaCl;pH6.8)は社内で調製した。ゲル浸透特性の決定は、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich(Saint Quentin Fallavier, France))のDNA(CAS番号73049-39-5)およびVWR(Darmstadt, Germany)のシュクロース(CAS番号57-50-1)を用いて行った。系の較正として用いた標準物は、プルラン(Pullulan)100kDaについてはマルバーン(Malvern(Malvern, UK))から、プルラン400kDaについてはアジレント(Agilent(Santa Clara, CA))から入手した。
【0056】
2.三重検出によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
ビスコテックGPCmax VE2501系(Viscotek GPCmax VE2501 system(Malvern Instrument, Malvern, UK))(脱気装置内蔵HPLCポンプおよび100μL注入ループを有するオートサンプラーを含む)を用いて、HE-SEC分析を実施した。ビスコテックTDA302検出系(屈折率検出器、直角光散乱検出器および4毛管示差圧粘度計を有する)をオンラインSECシグナル検出のために用いた。検出器は以下の順番で存在した:LS(直角光散乱検出器)-RI(屈折率検出器)-VIS(4毛管示差圧粘度計)。0.22μmのナイロンプレフィルターをカラムと検出器の間に置いた。OmmiSEC 4.7ソフトウェアプログラムをSECデータの入手および分析に用いた。全検出器を100kDaプルラン標準物を用いPBS 1Cの移動相で較正した。PBS 1C移動相は0.22μmミリポア(Millipore)硝酸セルロースフィルターを通過させ、使用前に脱気した。NaPAAサンプルの分離は、連続接続した2つのA6000M(8mm IDx30cm L)カラム(Malvern)により達成された。溶出は流速0.6mL/分で均一濃度であった。Mw、IPおよびマルクホウインクの傾きの測定のためには、100μLサンプルを目標NaPPA濃度で約0.4 mg/分により注入した。プルラン400kDa標準物を“コントロール”サンプルとして全分析で用いた。カラムの空隙体積(V0)および全浸透体積(Vt)をそれぞれ高分子量DNAおよびシュクロースの注入によって決定した。
【0057】
3.標準物およびサンプルの調製
プルラン、DNAおよびシュクロース標準物は、原料をそれぞれ最終濃度1、0.1および2 mg/mLでPBS 1Cに溶解することによって調製した。NaPPAを処方し、目標濃度にPBS 1Cで希釈した。
【0058】
4.NaPAA dn/dc値の決定並びにMw、マルクホウインクの傾きおよびIP測定
dn/dc係数は以下の関係にしたがってモル質量と関係する(Zimm, 1948, J.chem.Phys., 16, 1099-1116)。
【0059】
【0060】
式中、Kは以下の等式で記載される個別の散乱系についてのdn/dcを含む光学定数であり、Cはサンプル中のNaPPAの濃度であり、Rθは角度θで散乱される光の過剰強度であり、Mwは重量平均分子量であり、A2は第二ビリアル係数(個々のサンプル部分が極めて低濃度であるために0とすることができる)である。P(θ)は、光散乱強度の角度依存性を表す粒子散乱関数であり、ポリマー分子の回転運動の半径(Rg)と関係する。
【0061】
【0062】
ここで、n0はサンプル中の溶媒の屈折率、NAはアボガドロ数、λ0は真空中のレーザー光線の波長である。
そのサイズがλ0/20より小さい小分子については、散乱光の強度は散乱角度に依存しないと仮定され、したがって全ての角度についてP(θ)=1である。
結果として以下のように表される:
【0063】
【0064】
NaPAAのdn/dcは、NaPAAの既知濃度を0.4から1 mg/mLへ増加させながらSEC三重検出系を用いてOmniSECソフトによって自動的に算出された。各濃度を2つずつ注入した。この実験を、既知濃度の異なる代表的NaPAAバッチを用いて同じ条件下で繰り返した。最終的なdn/dc係数はこれらの決定値の平均と一致し、0.172mL/gであると決定した。このdn/dc値を更なる分子量決定に用いた。
Mw、IPおよびマルクホウインクの傾きの決定はPBS 1C中のポリアクリル酸ポリマー塩の溶液を用いて実施した。当該ポリアクリル酸ポリマー塩の既知濃度、例えば0.4 mg/mLを用いた。ポリアクリル酸塩は、ポリアクリル酸ポリマー塩の乾燥重量の95%を超えるので、乾燥物の重量はポリアクリル酸ポリマー塩の乾燥重量であるとみなした。
NaPAAの固有粘度(IV)はその分子量および立体構造と関係し、マルクホウインクのダイアグラムで表される:
【0065】
【0066】
式中、“a”および“K”は与えられた溶質-溶媒系のための定数であり、指数“a”は0(固体球)から2(棒状形)に変化する。
マルクホウインクの傾き“a”はこの式IV=K・MWaから決定された。
0.7を超えるかまたは等しい傾き“a”は、NaPAAを直鎖と考え得ることを意味する。多分散指数(IP)はMw/Mnと定義される(Mnは数平均分子量である)。NaPAAのMnはOmniSECソフトによって自動的に算出された。
【0067】
I.2 過硫酸塩およびアクリル酸モノマーの決定
A.原料の場合
1.化学物質及び試薬
水はMilli-Q-UF系(Millipore, Milford, MA, USA)で精製した。25mM(A相)および200mM(B相)の水酸化ナトリウム溶液を、46-51%濃縮水酸化ナトリウム(Fisher Scientific(Illkirch, France))を用いて調製した。0.1Nの水酸化ナトリウムはVWR(Darmstadt, Germany)由来であった。較正に用いた標準物は、過硫酸ナトリウムについてはフィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific(Illkirch, France))から、アクリル酸ナトリウムについてはシグマアルドリッチ(Saint Quentin Fallavier, France)から入手した。サンプル調製物の偏差の修正に用いた内部標準物はシグマアルドリッチ(Saint Quentin Fallavier, France)のシュウ酸ナトリウムであった。
【0068】
2.導電率検出による高速陰イオン交換クロマトグラフィー
NaPAAサンプルのアクリル酸塩および過硫酸塩不純物は、導電率検出による高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)によって同時に分析した。ICS-3000(Dionex, Thermo Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)イオンクロマトグラフィー系を用いた。前記は、SP-1ポンプ、サーモスタット付きオートサンプラー(5℃)、サーモスタット付きカラム(40℃)および導電率検出器区画(30℃)を備えていた。ATC3 RFIC(9x24mm)炭酸トラップカラム(Thermo Fisher Scientific)をカラムの前に配置し、水の炭酸陰イオンを捕捉して全体的な分析感度を改善した。分析的な分離は、陰イオン交換AS-11HCカラム(250x4mm)(Dionex, Thermo Fisher Scientific)で25mM(A相)から200mM(B相)の水酸化ナトリウム溶液の勾配溶出により実施した。勾配プログラムは以下の通りであった:0% B(12分)、0-40% B(5分)、40-100% B(8分)、100% B(25分)、100-0% B(1分)、0% B(9分)。移動相の流速は1mL/分であり、注入体積は50μLであった。AG-11HCプレカラム(50x4mm)(Dionex, Thermo Fisher Scientific)を用いて、分析用カラムを保護した。ディオネクス(Dionex)伝導率サプレッサー(AERS 082540, Thermo Fisher Scientific)を検出器区画の前に配置してシグナルを改善した。これらのクロマトグラフィー条件では、アクリル酸塩、シュウ酸塩および過硫酸塩の保持時間はそれぞれ4、11および45分辺りであった。
【0069】
3.サンプルの調製
クロマトグラフィー分析の前に、高分子量種をサンプルから除去する。略記すれば、NaPAAサンプルを水で10倍に希釈し(NaPAAで10mg/mLの濃度を生じる)、内部標準物シュウ酸ナトリウムを添加して50μg/mLの濃度を得る。続いて500μLのサンプルを14000gで30分遠心分離し連続的にアミコンウルトラセル(Amicon Ultracel)0.5ml-100kおよびアミコンウルトラセル0.5ml-3k遠心分離フィルター(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)に通す。使用前に、アミコン遠心分離フィルターを連続的に水および0.1NのNaOHで洗浄してグリセロールを除去する。
【0070】
4.較正および結果
過硫酸塩およびアクリル酸塩不純物の定量は市販の標準物で調製した外部較正によって実施した。1-100μg/mLの範囲のアクリル酸ナトリウムおよび過硫酸ナトリウムの6つの濃度を水に混合し、500μg/mLのシュウ酸ナトリウムの内部標準物の200μLを各濃度に添加した。較正曲線は過硫酸塩については直線モデルにしたがい、アクリル酸塩については二次方程式モデルであった。不純物含有量は、%w/w(乾燥NaPAA重量に対するアクリル酸塩または過硫酸塩不純物の%重量)または原料NaPAAの1グラム当たりの過硫酸塩またはアクリル酸塩不純物のμgで表された。
【0071】
B.精製後に得られるNaPAAポリマーの場合
精製工程(透析、限外ろ過またはゲルろ過)後のNaPAAサンプル中の過硫酸塩および残留アクリル酸不純物を、NaPAA原料サンプルでそれらについて上記に記載したように決定した。しかしながら、精製サンプルでは、10倍希釈工程をサンプル調製手順から省略した。過硫酸塩については、クロマトグラフィー条件は原料NaPAAの場合と同じで、分析は100ng/mL検出限界を有する限界試験として扱われた。アクリル酸については、同じHPAEC系を用いたが、分析的分離は、陰イオン交換CarboPacTM SA10カラム(250x4mm)(Dionex, Thermo Fisher Scientific)で30mM(A相)から200mM(B相)の水酸化ナトリウム溶液での勾配溶出を用いて達成された。勾配プログラムは以下の通りであった:0% B(14分)、0-100% B(6分)、100% B(15分)、100-0% B(1分)、0% B(9分)。移動相の流速は1mL/分であり、注入体積は50μLであった。CarboPacTM SA10Gカラム(50x4mm)(Dionex, Thermo Fisher Scientific)を用いて、分析用カラムを保護した。ディオネクス伝導率サプレッサー(AERS 082540, Thermo Fisher Scientific)を検出器区画の前に配置してシグナルを改善した。これらのクロマトグラフィー条件では、アクリル酸塩の保持時間は11分辺りであった。残留アクリル酸不純物は、PBS 1C中の20-500ng/mLの外部アクリル酸標準物を用いて構築した直線状較正曲線から決定した。結果は、上記のように%w/w(乾燥NaPAA重量に対するアクリル酸塩または過硫酸塩不純物の%重量)またはNaPAAアジュバント溶液の1mL当たりの過硫酸塩またはアクリル酸塩不純物のμgで表した。
【0072】
実施例2-アジュバント活性の試験
1)黄色ブドウ球菌抗原に対する従来技術の2つのPAAと比較した本発明のPAAのアジュバント効果の評価
モデル抗原として、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)の組換え外毒素A(rEPA)と複合化させた黄色ブドウ球菌の5型多糖類(PS5)を用い、ポリマー基剤処方物のアジュバント活性を非近交マウスで試験した。
抗原を以下の態様で調製した:
黄色ブドウ球菌(レイノルズ(Reynolds)株)をSATA-1ブロス培地で攪拌しながら(100rpm)72時間増殖させ、続いて1/1(v/v)のフェノール/エタノール溶液を最終濃度2%w/vで添加することによって不活化した。細菌細胞を16000gで75分間沈降させた。細胞ペーストを50mMトリス-2mM MgSO4(pH7.5)に1mLにつき0.5g(湿潤重量)で再懸濁した。リゾスタフィン(100μg/mL)を添加し、懸濁物を37℃で攪拌しながら4時間インキュベートした。その後、ベンゾナーゼを5U/mLの濃度で添加し、さらに2時間インキュベーションを継続した。反応混合物をタンジェンシャルフローろ過(30000Da分子量カットオフ)によって濃縮した。得られた濃縮材料をベンゾナーゼ(5U/mL)で37℃6時間、続いてプロナーゼ(4U/mL)で37℃15時間、適切な緩衝液(1mM MgCl2および1mM CaCl2を含む50mMトリス(pH8.0))中で消化した。5000gで30分間遠心分離した後、上清をタンジェンシャルフローろ過(30000Da分子量カットオフ)によって濃縮した。続いて、この溶液を50mMトリス-HCl(pH7.5)の最終濃度に調整した。50mMトリス-HCl(pH7.5)で平衡化させたQセファロース(20mL)カラムに前記アリコットをローディングした。カラムを2mL/分の流速で溶出させ、5mLの分画を収集した。カラムを出発緩衝液の5体積を用いて洗浄した。続いて、50mMトリス-HCl(pH7.5)中の0.5M NaClの直線勾配250mLで多糖類を溶出させた。多糖類を含むがタイコ酸を含まない分画(210nmの光学吸収によってまたは高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)によって検出)を透析しさらに凍結乾燥させた。
【0073】
精製多糖類を続いてアジピン酸ジヒドラジド(ADH)によってNaCl中で活性化させた。pHを4.9に調整し、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDAC)を添加した。活性化(周囲温度で90分間持続)のとき、pHは0.1N HClで定常的に4.9の値に調整された。NaOHを中和(7.0)まで添加することによって反応を停止させた。続いて、活性化多糖類を500mM NaCl水溶液に対し、続いて水に対して透析した。続いて、活性化させて透析した多糖類を凍結乾燥した。官能化パーセンテージは約5.9%(w/w)と概算された。
活性化多糖類の溶液をNaClおよびEDAC中で担体タンパク質(rEPA)と混合した。複合化は4℃で生じ、pHを0.1N HClの添加により5.7に維持した。90分後、0.2N NaOHを中和(7.0)まで添加することによって反応を停止させた。続いて、複合化抗原をNaCl水溶液に対して透析し、続いて、10mMリン酸緩衝液(pH7.2)中の200mM NaClで平衡化させたセファロースC1-4Bカラムでサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。複合化物を含み(206nmおよび278nmでの光学吸収によって検出)、主としてカラムのデッドボリュームで溶出する分画をまとめた。
【0074】
ポリマー処方物を以下の態様で調製した:
製品名PAA225000(Ref.18613、ナトリウム塩)を濃縮溶液の形態で業者(Polysciences Europe(Eppelheim, Germany))から入手した。前記を水で希釈して濃度20mg/mLを得て、攪拌しながら室温で12時間維持した。HClでpHを7.55に調整し、2kDaカットオフ透析カセット(Thermo Fischer Scientific, Courtaboeuf, France)を用いて前記溶液を150mMのNaCl水溶液に対して室温で透析した(3回連続水浴)。続いて滅菌のために溶液を0.22μmのPVDF膜でろ過した。続いてポリマー塩の分子量を測定した。分子量は488,550Daである。そのMnは129,070Daであり、そのIPは3.8である。
続いて、当該ポリマーを150mM NaCl水溶液に20mg/mLのポリマーを含む溶液として+4℃で保存した。この溶液を続いて10倍濃縮PBS 1Cおよび滅菌水と混合して、2mg/mLのポリマー塩を含む食塩水溶液を得た。
製品名PAA20をナトリウム塩として乾燥粉末の形態で業者(Polymer Expert(Pessac, France))から入手した。前記を水で20mg/mLの濃度に再水和させ、室温で12時間攪拌しながら維持した。続いて溶液を滅菌のために0.22μmのPVDF膜でろ過した。ポリマー塩の分子量は100,700Daと測定された。そのMnは46,700DaでそのIPは2.2である。続いて、当該ポリマーを150mM NaCl水溶液に20mg/mLのポリマー塩を含む溶液として+4℃で保存した。この溶液を続いてPBS 10Cおよび滅菌水と混合して、2mg/mLのポリマー塩を含む食塩水溶液を得た。
網状PAAポリマーであり数百万Daの分子量を有するCARBOPOL(商標)974P(CARBOPOL(商標)と称される)をPBSで希釈して2mg/mLのポリマーを含む溶液を得た。
動物に注射されるアジュバント添加処方物は、抗原溶液および当該ポリマー溶液のvol/vol混合によって調製された。各注射1用量は、PBS 1C溶液に200μgのポリマーおよび2.5μgの多糖類を有していた。
【0075】
免疫:
5から10匹のOF1マウス(7から9週齢)のグループをPAA20、PAA225000若しくはCARBOPOL(商標)単独で(これらは陰性コントロールとして用いられた)、または抗原およびアジュバントの両方を含む処方物で免疫した。1グループのマウスにはPS5-rEPAだけを注射した。D0、D21およびD35に皮下ルートで投与量が肩甲骨領域に投与された。免疫応答分析のために、D42に血液サンプルを収集した。
凝固活性化因子および血清分離ゲルを含むバキュテイナー管(Becton Dickinson, Meylan, France)に血液サンプルを収集した。管を2600gで20分間遠心分離し、細胞から血清を分離した。血清をディープウェルプレートに移し、その後のアッセイでの使用まで-20℃で保存する前に56℃で30分間熱不活化した。
【0076】
当該試験は以下のように種々のグループを含んでいた:
PBS
Carbopol(商標)
PAA20
PAA225000
PS5-rEPA
PS5-rEPA+Carbopol
PS5-rEPA+PAA20
PS5-rEPA+PAA225000
血液サンプルを用いて、免疫マウスによって産生された特異的IgG1およびIgG2aを検査した。
【0077】
ELISA試験は、被覆用抗原として活性化多糖類PS5(ADH複合化PS5:PS5-AH)を利用した。簡単に記せば、PBS 1C中の活性化多糖類溶液1μg/mLでELISAプレートを100μL/ウェルで被覆した。プレートを4℃で12時間インキュベートし、プレートを逆さまにすることによってプレートを空にした。飽和緩衝液1(PBS 1C/Tween 0.05%w/v/ウシ血清アルブミン1%w/v)の150μLを添加し、37℃で1時間インキュベートすることによってウェルを遮断した。逆さまにしてELISAプレートを空にした。各血清の2倍段階希釈(12倍)をELISAプレートで直接実施した。希釈緩衝液として緩衝液1を用い最終体積をウェル当たり100μLとした。プレートを37℃で90分インキュベートし、続いて緩衝液2(PBS 1C/Tween 0.05%w/v)で3回(250μL/ウェル)洗浄した。抗マウスIgG1または抗マウスIgG2aペルオキシダーゼ複合化物を緩衝液1で希釈し(1/8000)、二次抗体として用いた(100μL/ウェル)。37℃で90分インキュベートした後、ELISAプレートを緩衝液2で3回(250μL/ウェル)洗浄した。100μLのテトラメチルベンジジン基質溶液を各ウェルに添加して反応をデベロップさせ、室温で30分後に1N HCl(100μL/ウェル)で反応を停止させた。450-650nmで吸収を測定した。抗体力価は、OD450nm=1の血清希釈の逆数に相当する恣意的単位で表し、SoftmaxProソフトを用いた。
【0078】
得られた結果は
図1に要約され、以下を示している:
1)PBS 1Cまたはポリマー基剤処方物のみを注射された免疫マウスの陰性コントロール血清ではバックグラウンドは測定されなかった(<1.3Log)(データは示されていない)。
2)PS5多糖類に対する特異的免疫応答(主として抗PS5 IgG1(4.8Log))は、PS5-rEPA複合化物のみによる3回目の免疫後に得られた。単独注射されたPS5-rEPAによって惹起された抗PS5抗体応答は主としてTh2駆動であり、IgG1/IgG2a比は126に近かった。
3)抗PS5 IgG1力価は、PS5-rEPA複合化物がCarbopol(商標)、PAA20またはPAA225000のいずれかとともに処方されたときには増加せず、抗PS5力価の算術平均は4.8Logに近かった。Carbopol(商標)またはPAA20の共同注射は抗PS5 IgG2a力価の増加を引き出したが、これらの抗Ps5抗体応答はなお主としてTh2駆動であり、IgG1/IgG2a比はそれぞれ50および63に近かった。抗PS5 IgG2a力価の強い増加(4.5Log)は、PS5-rEPA複合化物がPAA225000と共同注射されたときに観察された。PAA225000の共同注射はTh1偏向抗PS5抗体応答を惹起し、IgG1/IgG2a比は2に近かった。
結論すれば、この試験は、抗原単独は主としてTh2応答を誘発するが、本発明のアジュバントは他の被検ポリマーと比較してはるかに強力なTh-1免疫応答をTh-2応答に影響を与えることなく誘発できることを示した。
【0079】
血液サンプルはまた、人間の抹消単核球(hPMN)のオプソニン活性を誘発するそれらの能力について検査された。この試験のために、ローエンシュタイン(Lowenstein)株(ATCC 49521)を用い、各グループのプール血清を10倍段階希釈で検査した。前記株は、単独または補充(定常期)TSB培地で20時間37℃で増殖させた。
健康な志願者のヒト末梢血液をヘパリンナトリウムバキュテイナーに収集した。ドナー当たり10ミリリットルを要求した。赤血球を塩化アンモニウム溶解緩衝液で溶解させることによって白血球を単離した。細胞をPBS 1Cで2回洗浄し、最後に5mLのOPA培地(5% BSAおよび2mMグルタミンを補充したRPMI-Hepes)に懸濁させた。続いて大きな白血球(主としてhPMN(95%))をマルチサイザーコウルターカウンターで数え、OPA培地中の濃度を0.25x106/mLに調整した。
20時間増殖させた後、細菌をPBS 1Cで2回洗浄し、5mLのPBS 1Cに再懸濁した。細菌濃度はOPA培地中で108 CFU/mLに調整した。
酸化バーストアッセイを96ウェルのポリプロピレンディープウェルプレートで実施した。試薬の連続的添加に際してプレートを氷上で維持した。試薬をウェルに以下の順序で添加した:1/10から1/640の決定希釈の特異的熱不活化血清50μL、細菌250μL、1/10の幼若(baby)ウサギ補体50μL、白血球100μL、および1mg/mLのDHR(分子プローブ、D632)50μL。反応の最終体積は500μLであった。続いてプレートを穏やかに振盪しながら+37℃で25分間暗所でインキュベートした。最終的な細菌/大白血球比は100:1であり、血清および補体の最終希釈は1/100から1/6400の範囲であり、DHRの最終濃度は0.1mg/mLであった。インキュベーション期間の終了時に、プレートを氷上に置いて反応を停止させた。分析はCytomics FC500で実施した。DHRの酸化形、ローダミン123は488nmでの励起に際して明るい蛍光を放出する。(FSC/SSC)ドットプロットで、ゲートを白血球の大きな顆粒集団に限定して、PMN集団と区別した。このゲートで各ウェルから3000事象を得た。結果は、全PMN集団に対する蛍光活性化PMN(ローダミン123陽性PMN)のパーセンテージとして表した。
結果は下記の表1に示される。
【0080】
表1:
1:全PMS集団に対する活性化PMSの%:+++(1/1000血清希釈で80%-100%)、
++(1/100血清希釈で80%-100%)、+(1/100血清希釈で30%-70%)
【0081】
表1のこれらの結果は以下を示している:
1)PBSまたはポリマー基剤処方物単独注射で免疫されたマウスの陰性コントロール血清では活性化PMNは検出されなかった(データは示されていない)。
2)PS5-rEPA複合化物は、細菌の存在下でhPMNを弱く活性化できる抗PS5血清抗体を引き出すことができた。酸化バーストを生じるhPMNのパーセンテージは1/100血清希釈で30%から70%と概算された。
3)CarbopolまたはPAA20とのPS5-rEPAの共同注射は、黄色ブドウ球菌ローエンシュタイン株の表面を認識する抗PS5血清抗体の能力をわずかに増加させた。酸化バーストを生じるhPMNのパーセンテージは1/100血清希釈で80%から100%と概算された。
4)PAA225000とのPS5-rEPAの共同注射は、黄色ブドウ球菌ローエンシュタイン株の表面を認識する抗PS5血清抗体の能力を明瞭に改善した(10倍増加)。酸化バーストを生じるhPMNのパーセンテージは1/1000血清希釈で80%から100%と概算された。
【0082】
PAA225000およびPAA20を用いて得られた血清、または抗原単独で免疫されたマウスで得られた血清もまた、ヒトPMNの存在下で黄色ブドウ球菌ローエンシュタイン細菌を殺滅する能力について検査された。
この試験のために、EFS(Etablissement Francais du Sang)によって、全血が健康な人間ドナーからクエン酸ナトリウムバッグに収集され、人間の新鮮な多形核白血球(PMN)が以下の手順にしたがって単離された。5mLの血液および45mLの溶血緩衝液を+20℃で10分間インキュベートすることによって赤血球を溶解させた。PMNをHEPES緩衝食塩水(HBSS w/o CaMg, ref pH7.4)で2回洗浄した。PMNの生存率は90%を超えていた(トリパンブルー排除によって示される)。PMN懸濁物を107細胞/mLに希釈した。
ローエンシュタイン黄色ブドウ球菌株をTSB培地で12時間培養した。細菌細胞をペレット化し、OPA培地(RPMI+5%SVF+0.05%Tween20)で洗浄し、通常食塩水に5x107細胞/mLで懸濁させた。以下の物質を各管に添加した:0.25mL PMN、50μLの希釈被検血清、50μLの同族黄色ブドウ球菌(比率は1細胞/1細菌)、50μLの0.5%w/vウサギ補体およびOPA培地(500μL/ウェルの完成体積にする)。PMN、被検血清または補体単独の存在下の黄色ブドウ球菌を有するコントロール管もアッセイに加えた。アッセイ管を振盪しながら+37℃で1時間インキュベートした。希釈を3段階で実施し(3* 1/15希釈)、異なる希釈の50μLをTSAゲロース(gelose)に6回滴下し、12時間インキュベートした。細菌生存パーセンテージを、可能ならば各希釈点で以下の式を用いて示した:(生存細胞数/最初の接種物)x100
2つの独立した分析で得られたデータを下記表2に示す(ONS=非特異的オプソニン貪食作用):
【0083】
表2:
表2に提示されたこれらの結果は以下を示している:
1)PBSまたはポリマー基剤処方物単独注射で免疫されたマウスの陰性コントロール血清では細菌殺滅は検出されなかった(データは示されていない)。
2)PS5-rEPA複合化物は、hPMNの存在下で弱い殺滅活性を示す抗PS5血清抗体を引き出し、39%の細菌殺滅パーセンテージを1/100血清希釈で示した。血清プールを1/500に希釈したときは細菌殺滅活性はもはや測定されなかった。
3)PAA20とのPS5-rEPAの共同注射は、ブドウ球菌ローエンシュタイン株を殺滅する抗PS5血清抗体の能力を改善しなかった。
4)細菌殺滅に対するPAA225000のアジュバント効果が試験1で観察され、1/100血清希釈では無アジュバントPS5-rEPAの39%に対して50%の細菌殺滅パーセンテージを示し、1/500血清希釈では無アジュバントPS5-rEPAの9%に対して23%の細菌殺滅パーセンテージを示した。
ブドウ球菌属抗原に関するこの試験の全般的結論は、本発明のアジュバントは低分子量のアジュバントと比較して優れた有効性を示したということである。
【0084】
2)hCMV-gBによって誘発される免疫応答における種々のポリマーのアジュバント効果の試験
本実験の目的は、アジュバント効果に対するポリアクリル酸(PAA)ポリマーの分子量の影響を評価することであった。前記は、ヒトサイトメガロウイルスのgB糖タンパク質(hCMV-gB)に由来する組換えタンパク質をモデル抗原として用いることによって実施された。
この組換えタンパク質は、改変gB遺伝子を含む0708985pEE14.4と称されるプラスミドをトランスフェクトされた組換えCHO株によって産生された。CHO株によるこの組換えタンパク質の産生を促進するために、gB遺伝子(その配列はU.S.Pat.No.5,834,307に記載されている)は事前に以下のように改変された:gBタンパク質のトランスメンブレン領域(バリン677およびアルギニン752の間の配列と一致する)をコードする遺伝子部分を欠失させ、切断部位に3つの点変異を導入した。CHO株によって産生されるタンパク質(gBdMTと称される)は、切断部位およびトランスメンブレン領域を欠く切端gBタンパク質に一致する。
培養培地で産生されたgBdTMタンパク質を続いてクロマトグラフィーによって精製し、ストック溶液の形で保存した。ストック溶液はリン酸緩衝液にgBdTMを>0.2mg/mL含む。
種々の分子量を有するPAAは以下の通りであった:
“1)黄色ブドウ球菌抗原に対する従来技術の2つのPAAと比較した本発明のPAAのアジュバント効果の評価”のパラグラフで記載および調製されたPAA20およびPAA225000。
PAA3000(Ref.06568)、PAA6000(Ref.06567)、PAA50000(Ref.00627)およびPAA60000(Ref.18611)はNaPAAであり、乾燥粉末の形で(PAA6000)または濃縮溶液の形で(その他のもの)ポリサイエンシーズ(Polysciences)から提供された。
PAA20は20mg/mLの濃度に水と混合し、攪拌しながら12時間室温で維持した。続いてこの溶液を0.22μmのPVDF膜でろ過し、150mM NaCl水溶液中に20mg/mLのポリマーを含む溶液として+4℃で保存した。続いて前記溶液をPBS 10Cおよび滅菌水と混合して、2mg/mLのポリマーを含む食塩水溶液を得た。
ポリサイエンシーズのPAAを滅菌水で20mg/mLの濃度に希釈し、NaOHまたはHClでpHを7.4辺りに調整し(ただしpHを調整しなかったPAA60000を除く)、2kDaカットオフ透析カセット(Thermo Fischer Scientific, Courtaboeuf, France)を用いて150mM NaClに対して透析した(3回連続水浴)。続いて滅菌のために溶液を0.22μmのPVDF膜でろ過した。Mw、MnおよびIPを決定し、このポリマーを150mM NaCl水溶液中に20mg/mLのポリマー塩を含む溶液として+4℃で保存した。
ポリマーの分子量(MwおよびMn)およびPIは下記の表3に示されている。
【0085】
【0086】
ノバルチス(Novartis)のMF59(商標)スクァレンエマルジョンと同じ成分を含むスクァレンエマルジョンをミクロ流動化によって調製し、種々のポリマーのアジュバント活性を参照物として用いられる先行技術のアジュバントの活性と比較した。
アジュバント添加処方物を抗原溶液とアジュバント溶液とのvol/vol混合によって調製した。
アジュバント量は1注射用量につきポリマー200μgであるか、またはエマルジョンの場合には最終ワクチン用量は2.5%v/vのスクァレンを含んでいた。
試験した種々の処方物は以下の通りであった(各処方物でgBはhCMV-gB:2μgに一致する)。
-gB単独
-gB+スクァレンエマルジョン
-gB+PAA3000
-gB+PAA6000
-gB+PAA50000
-gB+PAA60000
-gB+PAA20(PBS)
-gB+PAA225000
【0087】
C57BL/6マウス(8-10匹/グループ)が、アジュバントと一緒にまたはアジュバント無しに組換えhCMV-gB抗原(2μg/注射)により2回(0日目および28日目)、IMルート(左四頭筋に最終体積50μL)で免疫された。試験にはコントロールとしてhCMV-gB抗原単独で免疫されるグループが含まれた。
血液サンプルが、麻酔下で顎下静脈からD28(中間採血)におよびD41の頸動脈切開による放血後に全動物から採取された。麻酔はイマルジーン(ケタミン1.6 mg)およびロンパン(キシラジン0.32 mg)によって実施され、前記は腹腔内ルート(IP)により150μLの体積で投与された。
D28の液性応答アッセイのために、凝固活性化因子および血清分離装置を含むバイアル(Becton Dickinson Microtainer SST, ref 365951)に200μLの血液を収集した。+4℃で一晩後に、血液を10000rpmで5分間遠心分離し、血清を収集し分析まで-20℃で保存した。D41に、1mLの血液を凝固活性化因子および血清分離装置を含むバイアル(BD Vacutainer SST ref 367783)に1mLの血液を収集した。+4℃で12時間後に、血液を3000rpmで20分間遠心分離し、血清を収集し分析まで-20℃で保存した.
D41の細胞性応答アッセイのために、各グループにつき5匹のマウスから脾臓を無菌的条件下で収集した。脾細胞を以下のように単離した:新鮮収集脾臓をジェントルマクス分離装置(Gentlemax dissociator(Miltenyi Biotec))を用いて分離させ、細胞懸濁物を細胞ふるいに通し、RPMI培養液で洗浄した。赤血球を赤血球溶解緩衝液(Sigma)を用いて溶解させた。洗浄後、脾細胞を計測し、直ちに細胞アッセイに用いた。
【0088】
血清中和アッセイ:
本技術を用いて、hCMV-gB免疫動物の血清に存在する機能性中和抗体の力価を測定した。サイトメガロウイルスのMRC5線維芽細胞およびARPE-19細胞(ヒト上皮細胞)への感染能力を土台にして、HCMV-gBに対する特異的な機能性抗体を含む血清は当該細胞のウイルス感染を阻害することができる。
a.MRC5におけるSN50
略記すれば、1x104 MRC-5線維芽細胞を、5%CO2細胞培養インキュベーターで96ウェルの平底プレートによりDMEM 1%FBS中で37℃1日間培養した。幼若ウサギ補体を補充したDMEM(ダルベッコーの改変イーグル培養液)1%FBS(ウシ胎児血清)で免疫動物の熱不活化血清を段階希釈し、hCMVタウン(Towne)株の3.3log CCID50(50%細胞培養感染用量50%)/mLと一緒に(vol/vol)1時間細胞培養インキュベーターでインキュベートした。続いて、この血清/ウイルス混合物をMRC-5細胞単層上に移した。7日間インキュベートした後、培養上清を除去し、細胞をPBS 1Cで4回洗浄し、続いて、水に85%アセトンの100μLで15分間、-20℃で固定した。プレートをPBS 1Cで3回洗浄し風乾した。比色反応により感染細胞を検出した。2つの特異的なhCMVビオチン化抗体(抗IE1 CH160および抗gB CH177 HCMVタンパク質)の混合物を0.5μg/mLでウェルに添加した(室温、1時間)。ホスファターゼアルカリストレプトアビジン(室温(22℃)、1時間)を添加する前に、プレートをPBS 1C/0.05%Tween20(PBST)で洗浄した。プレートをPBSTで洗浄し、色原体NBT/BCIPの100μLを用い暗所で染色した(室温、30分)。洗浄後、プレートを風乾し、比色ELISPOTプレートリーダー(Microvision Instruments, Evry, France)を用いてスキャンした。細胞変性効果を表す暗く染まった核が各ウェルで観察された。対応するウェルで暗巣が観察されない場合に当該血清希釈により中和されたと考えられる。各血清希釈の4複製を試験した。各希釈について、50%中和(SN50)を最小二乗回帰によって算出した。SN50値(log10)は、感染ウェル数が50%減少する最高希釈の逆数と定義される。算術平均中和抗体力価をマウスの各グループについて算出した。
【0089】
b.ARPE-19におけるμPRNT50
略記すれば、2.5x10
4 ARPE-19細胞をマイクロ中和(MN)アッセイの前日に96ウェル暗色プレートに加えた。D0に、血清を56℃で30分間熱不活化した。96ディープウェルプレートで血清サンプルをDMEM/F12 1%FBSで2倍段階希釈し(1/10から開始し1/10240まで)、BADrUL131-Y4 HCMVウイルス株の4.2log FFU/mLとともに5%CO
2細胞培養インキュベーターでインキュベートした(37℃、60分)。血清/ウイルス混合物を続いてARPE-19細胞上に移し、5%CO
2細胞培養インキュベーターでインキュベートした(37℃、4日間)。
D4に、細胞上清を除去した後、細胞を100μLの1%ホルマリン(PBS 1C)で固定した(室温、1時間)。続いて、プレートをPBS 1Cで3回洗浄し室温で風乾してから、各ウェルの感染細胞を計測するためにマイクロビジョン蛍光プレートリーダーで分析した。
コントロールとして、細胞コントロール(無ウイルス)の2ウェルおよび4.2log FFU/mLを含むウイルス希釈の半分を感染させた細胞の6ウェルを各プレートに置いた。これら6ウェルの算術平均は、特異的シグナル値の50%と決定される血清中和の閾値を定める。
中和終点力価は、算出された50%特異的シグナル値より低くなる最後の希釈の逆数と定義された。中和力価(μPRNT50)は、各々個々の血清について感染細胞の50%減少を誘発する最後の希釈(すなわち、算出された50%特異的シグナル値よりも少ない感染細胞を生じる最後の希釈)と定義された。幾何平均中和抗体力価を各グループについて算出した。
免疫マウスの各グループについて得られたGMT(幾何平均中和抗体力価)の結果は
図2および3に提示されている。
類似するプロフィールが、分析グループがいずれであれ、MRC5線維芽細胞およびARPE上皮細胞の両血清中和アッセイで観察された。ゼロまたは低い中和抗体力価が無アジュバントhCMV-gBで免疫されたマウスで検出された(GMT=6)。
本発明のポリアクリル酸ポリマーははるかに最良の応答を提供した。
【0090】
IgG1およびIgG2c抗体応答:
hCMV-gB抗原に対する血清IgG1およびIgG2c抗体を、以下の手順にしたがってロボットELISAアッセイによって力価を測定した。
ダイネクス(Dynex)96ウェルマイクロプレートを0.05M炭酸/重炭酸緩衝液(pH9.6)(Sigma)中のhCMV-gB(1μg/ウェル)で12時間4℃で被覆した。続いて、プレートをPBS Tween-ミルク(PBS(pH7.1)、0.05% Tween20、1%(w/v)脱脂粉乳(DIFCO))で37℃で1時間遮断した(150μL/ウェル)。次の全てのインキュベーションを最終体積100μLで実施し、続いてPBS(pH7.1)、0.05% Tween20で3回洗浄した。血清サンプルの2倍段階希釈(1/100または1/1000で開始)をPBS-Tween-ミルクで実施し、ウェルに添加した。プレートを37℃で90分インキュベートした。洗浄後、PBS-Tween-ミルクで1/2000に希釈した抗マウスIgG1またはIgG2cペルオキシダーゼ複合化物(Southern Biotech)をウェルに添加し、プレートを37℃で90分インキュベートした。さらにプレートを洗浄し、使用準備済みテトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液(TEBU)(100μL/ウェル)とともに20℃で30分、暗所でインキュベートした。反応を100μL/ウェルの1M HCl(Prolabo)で停止させた。光学濃度(OD)を450nm-650nmでプレートリーダー(Spectra Max-Molecular Devices)を用いて測定した。IgG抗体力価は、CodUnitソフトを用い、0.2から3.0の範囲のOD値については滴定曲線(各プレートに加えた参照マウス高免疫血清)から算出した。前記参照物のIgG力価(恣意的ELISA単位(EU)で表される)は1.0のODを提供する希釈の逆数のlog10に対応する。抗体検出の閾は10ELISA単位(1.0 log10)であった。全ての最終力価はlog10(Log)で表された。
結果は
図4および5に示されている。
これらの結果は、アジュバント添加hCMV-gB抗原は、無アジュバント抗原と比較してIgG1およびIgG2c力価の両方について免疫応答増加を誘発したが、ただし最も小さい分子量を有するPAA3000およびPAA6000は例外であった。
本発明のPAAは、Tヘルパー1型(Th1)の免疫応答の増加に特に有効であることを記載できることは興味深い。本発明のPAAと組み合わされたhCMV-gBで免疫したマウスでIgG2c力価は特に強力であった。
【0091】
サイトカインの測定:
免疫マウスの脾細胞をD41のサクリファイス直後に単離し、96ウェルプレートにウェル当たり2.5x10
5細胞でプレートし、hCMV-gB(5μg/ウェル)、コンカナバリンA(0.25μg/ウェル、陽性コントロール)、または培養液単独(RPMI-GSPβ-10%FCS、バックグラウンド)とともにインキュベートした。6日間インキュベートした後、IL5およびIFNγサイトカインの分泌をCBA Flexセットキットを用いて測定した。結果はpg/mLでのサイトカイン濃度(幾何学平均/グループ)で表された。陽性サイトカイン検出の閾は、IL-5については5pg/mL、IFNγについては2.5pg/mLであった。
結果は
図6および7に示されている。
これらの結果は、エマルジョンアジュバントを用いたときIL-5のレベルは高いが、IFNγのレベルは低いことを示している。興味深いことに、本発明のポリアクリル酸アジュバントは低レベルのIL5を誘発するが高レベルのIFNγを誘発し、これはTh1型に偏向した免疫応答を示す。この結果は、免疫グロブリンサブタイプ決定の結果と一致する。
【0092】
3)本発明の透析ろ過PAAと透析ろ過前のその原料との比較
この試験では、透析ろ過は当該ポリマーのアジュバント特性に影響を与えないことが示された。
0.08mg/mLのhCMV-gB抗原を含む種々の処方物を試験した(前記処方物は、“2)hCMV-gBによって誘発される免疫応答における種々のポリマーのアジュバント効果の試験”のパラグラフに記載されたように入手した)。
ポリサイエンシーズによって提供されたポリアクリル酸ポリマーのナトリウム塩で、2つの異なるプロセス(非透析ろ過調製物および透析ろ過調製物)を適用した。
非透析ろ過調製物のためには、ポリサイエンシーズから入手した製品を単にPBSで希釈し、0.2μmカットオフ膜で滅菌ろ過した。PAA塩の濃度は17.4mg/mLであった。Mw、IPおよびマルクホウインクの傾きを決定した。
透析ろ過処方物のためには、ポリサイエンシーズから入手した製品を以下のプロトコルにしたがって処理した:
a)ポリサイエンシーズによって提供された水溶液をPBS 1C(pH7.4)と攪拌下で15分混合し、14mg/mLのポリマーを含むPBS溶液を得る工程;
b)50kDaのカットオフを有する膜を用いて、工程a)で入手した溶液を5体積のPBSに対して透析ろ過する工程;
c)工程b)で得られた生成物を0.2μm滅菌フィルターでろ過する工程。
得られた溶液はpH7.3で15.9mg/mLのPAA塩を含んでいた。Mw、IPおよびマルクホウインクの傾きを決定した。
透析ろ過前および後で得られたMw、IPおよびマルクホウインクの傾きは表4に提示されている。
【0093】
【0094】
透析ろ過前および後のポリマーの分子量MwおよびPIは、モノマーおよび小さなオリゴマー(特に2000ダルトン未満のもの)は透析ろ過工程によって除去されているという事実と一致する。
ポリサイエンシーズが公表したMw(GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって決定)は887,000Da(透析ろ過前に測定されたMwとはかけ離れている)であったということを報告することもまた重要である。
これら2つの調製物から、免疫処方物を当該ポリマー調製物の1つとgB溶液とを適切な比率で混合することによって調製し、各々が2μgのgBおよび下記のいずれかを含む50μLの用量を得た:
-透析ろ過処方物に由来する25、50、100または200μgのポリマー塩、または
-非透析ろ過処方物に由来する25、50、100または200μgのポリマー塩。
C57BL/6Jマウス(7週齢)を、当該調製処方物の1つで0日目および21日目に筋肉内ルートにより2回免疫した。各調製物を1グループ5匹のマウスで試験した。コントロールとして、5マウスの1グループに抗原のみが投与された。
免疫マウスの細胞性応答(IFNγおよびIL5)および液性応答(IgG抗体サブクラス、血清中和抗体)を、“2)hCMV-gBによって誘発される免疫応答における種々のポリマーのアジュバント効果の試験”のパラグラフの記載と同じ方法で、最後の免疫後2週間モニターした(35日目)。
結果は、以前の試験のように、本発明のアジュバントは、強いウイルス中和抗体の誘発とともに強力なTh-1免疫応答を誘発すること、および透析ろ過処方物で免疫されたマウスと非透析ろ過処方物で免疫されたマウスとの間には有意な差異が存在しないことを示した。
【0095】
4)PAA原料と比較した透析ろ過TAAの安定性実験
本発明のPAAアジュバントの安定性をチェックするために、加速エージング試験でポリマー塩の分子量の変動を分析する実験を実施した。
この試験のために、非透析ろ過調製物および透析ろ過調製物を用いた。精製は50kDaカットオフ膜を用いる透析ろ過によって実施し、得られた透析ろ過調製物は、PBS 1C中で443553 Daの分子量を有するPAAポリマー塩の8mg/mLを含んでいた。
過硫酸アトリウムの含有量は乾燥ポリマーの0.0007%(w/w)未満であり、アクリル酸ナトリウムの含有量は乾燥ポリマーの0.0011%と決定された。
この調製物をガラスのバイアルに充填し、+5℃、+25℃または+37℃で維持した。5℃で24か月、25℃で9か月および37℃で3か月にわたって分析を実施した。この安定性実験で得られた結果は下記の表5に示されている。
【0096】
【0097】
これらの結果は、5℃で24か月保存後、25℃で9か月保存後、37℃で3か月保存後にMwの有意な低下はなかったこと、さらにポリマーの多分散指数は同じものを維持したことを示している。
これは、透析ろ過されてなくて乾燥重量組成物に対して0.42%w/wの濃度の過硫酸ナトリウムを含む同等のPAA塩の10%w/wを含む水溶液に対応する組成物で得られた結果とは対照的である。ポリマー塩の最初のMwは470,269Daと決定されたが、GPCによって決定された供給業者によって公表されたMwは351,100Daであった。
この非透析ポリマー溶液の安定実験中に得られた結果は下記の表6に提示され、時間とともに(特に25℃および37℃での保存後に)分子量が低下することが示されている。
【0098】
【0099】
5)過硫酸塩含有量の有害な作用を示す試験
ポリアクリル酸ポリマーのナトリウム塩(ポリサイエンシーズ提供)をオートクレーブにより121℃で15分間滅菌した。溶液中のPAA塩の濃度は101.8mg/mLであった。以下の表7は、オートクレーブ前および後のPAAのMw、IV(固有粘度)およびマルクホウインクの傾きを示す。
【0100】
【0101】
オートクレーブでの処理はMwおよびIVの劇的な低下をもたらしたようである。加熱下でのポリマーのこの分解の原因となり得るパラメーターを調べるためにその後の実験を実施した。この実験は、ポリマー塩の精製(特に透析ろ過による精製)は、オートクレーブによる滅菌時にポリマーを安定化させることができることを示した。
NaPAAポリマーおよび過硫酸塩の混合物を熱に暴露して、オートクレーブの状態を再現した。120℃で15分間インキュベートする前および後のNaPAA Mwおよび過硫酸塩について組成物の特性を明らかにした。表18は、NaPAA Mwおよび過硫酸塩含有量に関して組成物の特性を詳述する。
【0102】
【0103】
これらの結果は、過硫酸塩の存在は熱処理後にMwの低下をもたらしたことを示している。反対に、過硫酸塩の含有量が非常に少ないPAAは非常に安定なMwを有した。結論すれば、PAA溶液の熱安定性をその過硫酸塩含有量と直接結びつけることができた。本発明の方法で導入された透析ろ過工程はPAA溶液から過硫酸塩不純物を除去し、PAA溶液をオートクレーブによる滅菌に適合できるように熱安定化させることができる。
【0104】
実施例3-PAAは強力な応答を支持し、抗原ペイロードを低下させる
家畜病原体に対するより広範囲の防御の希求は、既存のワクチン処方物または別個の単一抗原ワクチン処方物への抗原の付加を要望する。既存のワクチン処方物は、例えばSINTOXAN(商標)製品であり、前記は概して不活化毒素および/またはバクテリン+水酸化アルミニウムアジュバントを含む。組合せワクチンの提供が市場ではより所望されるので、出願人らは、新しい抗原を付加しながらなお既存の用量体積を維持できることは、良好な安全プロフィールを有するより強力なアジュバントを特定できることを条件として合理的であると考えた。
重要なことには、ワクチンおよび免疫学分野の業者には周知のように、ある分子種が安全かつ有効な免疫原性アジュバントであるか否かを何人も前もって予測することはできない。のみならず、アジュバント特性が新規な分子を不動のものにした後でさえ、これら分野の予測し得ない特性のために、当業者は、種々の状況で当該新規なアジュバントを適用する際に合理的に成功を期待することはできない。新規な処方物が安全で防御的なワクチンとして機能するか否かに影響を与える変数には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):1)アジュバントのタイプ/存在性;2)抗原のタイプ/特性(ペプチド、核酸、殺滅ウイルス、バクテリンなど);3)投与ルート;4)標的病原体のタイプ/株;および5)ワクチン免疫されるべき標的種。したがって新規なワクチンアジュバントの全般的な適用性に関して何らかの有意義な結論を引き出す前に、当該新規なワクチンアジュバントの安全性および有効性がこれら変数の少なくともいくつかの組合せについて示されなければならない。
抗原のタイプがおもに不活化細菌であるような本事例については、出願人らは、究極の新規でより強力な用量節約的アジュバントはリパーゼ耐性でなければならないと合理的に推測した。残念なことに、処方物をリパーゼ耐性にさせることができる化合物はしばしば望ましくない投与副反応を生じ得る。したがって、ワクチン安全性、有効性および安定性の間に好ましいバランスを打ち込む必要があった。
実験SINTOXAN(商標)ワクチン(Merial Brazil-C.パーフリンゲンスB/C;C.パーフリンゲンスD:C.セプチクム:C.ノビイ)を調製し、マウス、モルモットおよびウサギで試験した。例として、モルモット実験の設計および結果をそれぞれ表9および10に提示する。
【0105】
表9:PAA225000ポリアクリル酸アジュバントを用いる用量節約アプローチ
表10:用量節約免疫原性処方物の有効性の要旨
【0106】
【0107】
安全性はモルモット、マウス、およびウサギについては良好であり、有効性は、表10に示すように水酸化アルミニウムを欠く処方物で特に良好であった(例えば以下を参照された:ノビイ、セプチクムおよびソルデリイ(Sordelii)の列、EとDの比較)。これらの結果は全く驚くべきことであった。なぜならば、水酸化アルミニウムと新規ポリマーアジュバントとの組合せ(グループE)は新規ポリマー単独処方物よりも性能が優れているだろうという期待は合理的であったからである。
【0108】
実施例4-PAAは、古典的不活化ワクチンまたは組換えワクチンとともに処方されたとき防御応答を支持する
不活化狂犬病実験:ワクチンを表11にしたがって調製し、結果を
図8に提示する。全被検アジュバントがイヌでの使用について安全であるように思われ、さらに全アジュバントがワクチン接種後7日目までに血清変換を誘発し、70日まで陽性力価を維持した。PAA225000は、不活化狂犬病短期免疫原性の改善のために最も有効であった。
【0109】
表11:不活化狂犬病ワクチン処方物(メリアルのIMRAB(商標)+種々のアジュバント)
* AF03はまた別のスクァレンエマルジョン基剤アジュバントであり、位相反転を用いて製造された(以下を参照されたい:J.Pharm.Sciences, Vol 101, Issue 12, 2012(参照によってその全体が本明細書に含まれる))。
** スクァレンエマルジョンは、水中油エマルジョンを形成するために高圧均一化を用いて調製された。
【0110】
カナリアポックスベクター系(canarypox-vectored)インフルエンザ実験:カナリアポックスベクター系インフルエンザワクチン処方物を調製し、5グループ(各グループは7匹のイヌを含む)で試験し(表12)、結果を
図10に提示する。高レベルのIFNγ産生細胞がD14、D27およびD41に全グループで検出された。上記の古典的不活化ワクチン処方物について観察された傾向と同様に、カナリアポックスベクター系インフルエンザ抗原はより高いMWのPAA(すなわちPAA225000)によってより良好にアジュバント添加されたように思われる。vCP2242はUS7,425,336(Merial)(参照によってその全体が本明細書に含まれる)によって完全に記載され実現させることができる。しかしながら簡単に記せば、vCP2242は、H3N8ウマインフルエンザウイルス(EIV)由来のコドン最適化HA遺伝子を含む組換えALVACである(当該HA遺伝子はALVAC C5遺伝子座に挿入される)。出願人らは、本明細書に開示する結果は、組換えカナリアポックスベクターは本開示の非架橋PAAと適合しかつ良好にアジュバント添加されるという一般的結論を支持していると確信する(例えば
図9参照)。
【0111】
表12:カナリアポックスベクター系イヌインフルエンザワクチン処方物
【0112】
実施例5-非架橋PAAはウマワクチンのための有効なアジュバントである
カナリアポックスベクター系ウマインフルエンザ+破傷風毒素実験:表13の処方物をウマに投与した。下記および
図11-13に示すように、PAAは、2つの無関係の抗原に対し強力なアジュバントであり、ウマで防御的な免疫学応答を惹起する。
【0113】
表13:カナリアポックスベクター系ウマインフルエンザwクチン+破傷風処方物
ADVAX
TMアジュバントはイヌリンから誘導される(Vaccine.2012 Aug 3;30(36):5373-81;およびUS 2014/0314739(Vaxine Pty Ltd.)もまた参照されたい)。ADVAX1は、デルタイヌリン微粒子の保存料フリーの無菌的懸濁物(重炭酸緩衝液中に20mg/mL)であるが、ADVAX2は、デルタイヌリン1 mg当たり10μgの追加CpGジヌクレオチドを含む。
【0114】
結果:D14までに、全てのPAA225000動物が0.05IU/mL以上の防御力価を有した。D14には、カルボマーアジュバント添加ワクチンのグループの8匹の動物のうち6匹がなお0.05IU/mL未満であった。したがって、PAA225000アジュバント添加ワクチン処方物は、カルボマーアジュバント添加免疫学処方物よりも有意に良好な血清変化をもたらした。D49までに(第二回ワクチン接種後)、PAA225000グループの力価は、全ての動物で有意にかつ効果的に高かった。
【0115】
実施例6-PAAはブタワクチンのために有効なアジュバントである
“SpaA”抗原ブタ実験:“SpaA”は、エリシペロスリクス・リュシオパシアエの“表面防御抗原”を意味することが意図される(前記はブタおよび他の動物(イヌを含む)に感染する)。エリシペロスリクス・リュシオパシアエは、グラム陽性、カタラーゼ陰性、こん棒形、非芽胞形成性、非抗酸性、非運動性細菌である。ブタでは、E.リュシオパシアエは“豚丹毒(diamond skin disease)”を引き起こす。“TS6”は、例えばUS 7,371,395(Merial)に記載された水中油エマルジョンを意味する。TS6は、約1部の抗原含有水性成分を約2部の油性成分に添加し続いてこの2つの成分を乳化させて最終的なエマルジョンを形成することによって処方される。
【0116】
表14:グループと処置の定義
1 2/3処置体積(tt)中のSpaAの150μgは100μg SpaA(1/1 tt体積)を意味する。
1 SpaA融合タンパク質の196μgはSpaA単独タンパク質100μgと等価である。したがって、各グループにデリバーされるSpaAの有効量は100μgであった。
【0117】
G1は最良の結果を生じたが、水中油エマルジョンの場合、当該用量体積の多くは非抗原成分によって占められることは注目に値する(上記のように、油性成分対水性抗原成分の比は2:1である)。
【0118】
これから、本発明は以下の番号を付けたパラグラフで要約されるであろう。
1.ワクチン組成物のアジュバントとしての使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩であって、前記ポリアクリル酸ポリマー塩が350から650kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、前記ポリアクリル酸ポリマー塩。
2.前記ポリアクリル酸ポリマー塩がアクリル酸の塩に相当する塩のみで構成されるか、またはアクリル酸の遊離酸形に相当するユニットおよびアクリル酸の塩に相当するユニットのみで構成されることを特徴とする、パラグラフ1に記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
3.前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満の酸化剤を含むことを特徴とする、パラグラフ1または2に記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
4.前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.001%w/w未満の酸化剤を含むことを特徴とする、パラグラフ1から3のいずれかに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
5.前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.005%w/w未満の過硫酸塩を含むことを特徴とする、パラグラフ1から3のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
6.前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして0.001%w/w未満の過硫酸塩を含むことを特徴とする、パラグラフ1から5のいずれかに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
7.前記ポリアクリル酸ポリマーがNa+を有する塩であることを特徴とする、パラグラフ1から6のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
8.前記ポリアクリル酸ポリマー塩が、4より低いかまたは等しい、好ましくは2.5より低いかまたは等しい多分散指数を有することを特徴とする、パラグラフ1から7のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
9.前記ポリアクリル酸ポリマー塩が、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数を有するか、または380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いか若しくは等しい多分散指数を有するか、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いか若しくは等しい多分散指数を有することを特徴とする、パラグラフ1から8のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
10.前記ポリアクリル酸ポリマー塩が、0.7より高いかまたは等しいマルクホウインクの傾きを有することを特徴とする、パラグラフ1から9のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
11.前記ポリアクリル酸ポリマー塩の全乾燥重量を基準にして、遊離酸の形または塩の形のアクリル酸モノマーを0.005%w/w未満含むことを特徴とする、パラグラフ1から10のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
12.5.5から8.0の範囲のpHを有する液体処方物中に存在することを特徴とする、パラグラフ1から11のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
13.特にリン酸緩衝液で、またはトリス、Hepes、ヒスチジン若しくはクエン酸緩衝液で緩衝される水溶液中に存在することを特徴とする、パラグラフ10に記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
14.透析ろ過されていることを特徴とする、パラグラフ1から13のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
15.滅菌されていることを特徴とする、パラグラフ1から14のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
16.ワクチン組成物により得られるTh1免疫応答を強化するために用いられることを特徴とする、パラグラフ1から15のいずれか1つに記載の使用のための直鎖または分枝ポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩。
17.少なくとも1つのワクチン物質および、アジュバントとしてパラグラフ1から16のいずれか1つに記載のポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩を含む、ワクチン組成物。
18.1用量当たり0.1から8 mg、好ましくは0.1から4 mg、より好ましくは0.1から2 mgのアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩を含むことを特徴とする、パラグラフ17に記載のワクチン組成物。
19.前記少なくとも1つのワクチン物質が、抗原または抗原を発現するベクター、例えばウイルスベクターまたは核酸であることを特徴とする、パラグラフ17または18に記載のワクチン組成物。
20.抗原が、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Clostridium diphtheriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)B型、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、シゲラ属種(Shigella sp.)、チフス菌(Salmonella typhi)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)若しくはプニューモニアエ(pneumoniae)、またはストレプトコッカス属種(Streptococcus sp.)に由来する細菌抗原であるか、または肝炎A、B若しくはC型ウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、西ナイルウイルス、狂犬病ウイルス、ポリオウイルス、HIVウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、サイトメガロウイルスまたはヘルペスウイルスに由来するウイルス抗原であるか、またはマラリア原虫属種(Plasmodium sp.)、リーシュマニア属種(leishmania sp.)または住血吸虫属種(schistosoma sp.)に由来する寄生生物抗原であるか、または腫瘍抗原であることを特徴とする、パラグラフ18に記載のワクチン組成物。
21.前記少なくとも1つのワクチン物質が抗原またはベクター、例えば抗原をコードする組換えウイルスまたは核酸であり、前記抗原が黄色ブドウ球菌由来またはサイトメガロウイルス由来であることを特徴とする、パラグラフ17から19のいずれか1つに記載のワクチン組成物。
22.6.0から8.0の範囲のpHを有する液体形で存在することを特徴とする、パラグラフ17から21のいずれか1つに記載のワクチン組成物。
23.特にリン酸緩衝液で、またはトリス、Hepes、ヒスチジン若しくはクエン酸緩衝液で緩衝される水溶液で存在することを特徴とする、パラグラフ21に記載のワクチン組成物。
24.獲得Th1免疫応答の強化および/または獲得Th1およびTh2免疫応答間の均衡を有する、個体(特に人間)の免疫応答の惹起で使用される、パラメーター17から23のいずれ1つに記載のワクチン組成物。
25.以下の連続工程を含む、パラメーター1から16のいずれかに記載のポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の製造方法:
a)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を得る工程;
b)ポリアクリル酸ポリマーの溶液を精製して不純物を除去する工程;および
c)ポリアクリル酸ポリマーの精製溶液を滅菌する工程。
26.工程a)の溶液のポリアクリル酸ポリマーが300から550kDaの範囲の重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、パラメーター25に記載の製造方法。
27.精製が、透析、透析ろ過、限外ろ過またはサイズ排除クロマトグラフィーによって実施されることを特徴とする、パラメーター25または26に記載の製造方法。
28.精製が、1から80kDa、好ましくは2から50kDaのカットオフの膜を用いる透析ろ過によって実施されることを特徴とする、パラメーター27に記載の製造方法。
29.精製が、以下を有する溶液のポリアクリル酸ポリマーの入手を可能にする条件下で実施されることを特徴とする、パラメーター25から28のいずれか1つに記載の製造方法:
-精製後に得られる前記ポリアクリル酸ポリマーの全乾燥重量を基準に、0.005%未満、好ましくは0.001%w/w未満の酸化剤、および/または精製後に得られる前記ポリアクリル酸ポリマーの全乾燥重量を基準に、0.005%未満、好ましくは0.001%w/w未満の過硫酸塩、
-精製後に得られる前記ポリアクリル酸ポリマーの全乾燥重量を基準に、0.005%w/w未満の遊離酸の形または塩の形のアクリル酸モノマー、
-ポリアクリル酸ポリマー塩については、380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび4より低いか若しくは等しい多分散指数、または380から620kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2.5より低いか若しくは等しい多分散指数、または400から600kDaの範囲の重量平均分子量Mwおよび2より低いか若しくは等しい多分散指数。
30.滅菌がオートクレーブで実施されることを特徴とする、パラグラフ25から29のいずれか1つに記載の製造方法.
31.精製および滅菌が、アクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の溶液で実施されることを特徴とする、パラグラフ25から30のいずれか1つに記載の製造方法。
32.精製が、アクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の2から50mg/mLを含む溶液で実施されることを特徴とする、パラグラフ25から31のいずれか1つに記載の製造方法。
33.パラグラフ1から16のいずれかに記載のポリアクリル酸ポリマー塩の溶液の保存方法であって、前記方法が、パラグラフ25から32のいずれか1つに記載の製造方法、その後に続く、得られたポリアクリル酸ポリマーの医薬的に許容できる塩の溶液での保存工程を含む、前記保存方法。
34.保存工程が少なくとも1日から2年まで続くことを特徴とする、パラグラフ33に記載の保存方法。
35.保存工程が、容器中のポリアクリル酸ポリマー塩の溶液を0から30℃の範囲、好ましくは2から8℃の範囲の温度に置くことによって実施されることを特徴とする、パラグラフ33または34に記載の保存方法。
36.保存時にポリアクリル酸ポリマー塩の溶液が光から離して維持されることを特徴とする、パラグラフ33から35のいずれか1つに記載の保存方法。
37.治療的に有効な量の抗原成分、医薬的若しくは獣医的に許容できる担体およびアジュバントを含む免疫学的またはワクチン組成物であって、前記アジュバントが、約350kDAから約650kDaのMwおよび約4未満若しくは約2未満の多分散指数を有する非架橋ポリアクリル酸(PAA)ポリマーを含むかまたは本質的に前記から成る、前記免疫学的またはワクチン組成物。
38.PAAが約400kDaから約600kDaのMwを有する、パラグラフ35に記載の組成物。
39.PAAが約400kDaから約500kDaのMwを有する、パラグラフ36に記載の組成物。
40.抗原成分が、弱毒化組換えウイルスベクター、天然若しくは遺伝子操作生弱毒化ウイルス若しくは微生物、不活化ウイルス若しくは微生物、コクシジウム系微生物、早熟コクシジウム系微生物、タンパク質性サブユニット、単細胞性寄生生物、多細胞性寄生生物、または先行するものの任意の組合せを含む、パラグラフ35に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
41.抗原成分が以下を含む、パラグラフ35に記載の免疫学的またはワクチン組成物:アイメリア属種(Eimeria sp.)若しくはその抗原、大腸菌(Escherichia coli(E.coli))若しくはその抗原、マイコプラズマ・ヒオプニューモニアエ(Mycoplasma hyopneumoniae(M.hyo(M.ヒオ)))、ウシ下痢ウイルス(BDV)抗原、少なくとも1つの防御免疫原を含みそのin vivo発現の能力を有する組換えカナリアポックスベクター、不活化完全長狂犬病糖タンパク質、エリシペロスリクス属種(Erysipelothrix sp.)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、豚丹毒菌由来表面防御抗原(SpaA)、少なくとも1つの追加免疫原の少なくとも一部分を含むSpaA融合タンパク質、SpaA-FlaB融合タンパク質、SpaA-FlaB-His融合タンパク質、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)(C.パーフリンゲンス)B/C毒素、C.パーフリンゲンスD毒素、C.セプチクム(C. septicum)毒素、C.ノビイ(C. novyi)毒素、破傷風菌(C. tetani)毒素、または前記それらの任意の組合せ。
42.抗原成分が不活化完全長狂犬病糖タンパク質を含むかまたは前記糖タンパク質から成る、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
43.抗原成分が、C.パーフリンゲンスB/C毒素、C.パーフリンゲンスD毒素、C.セプチクム毒素、C.ノビイ毒素、破傷風菌毒素、またはその組合せを含むかまたはそれらから成る、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
44.抗原成分が、C.パーフリンゲンスB/C毒素、C.パーフリンゲンスD毒素、C.セプチクム毒素、C.ノビイ毒素、および破傷風菌毒素を含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
45.抗原成分が、SpaA抗原またはSpaA抗原を含む融合タンパク質を含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
46.抗原成分が、インフルエンザ遺伝子を含んでそのin vivo発現の能力を有する弱毒化アビポックスウイルスまたはDNAプラスミドを含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
47.抗原成分が、狂犬病糖タンパク質遺伝子を含んでそのin vivo発現の能力を有する弱毒化アビポックスウイルスまたはDNAプラスミドを含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
48.パラグラフ41に記載のワクチン組成物をウシに投与する工程を含む、細菌によって引き起こされる感染に対してウシを治療する方法。
49.パラグラフ44に記載のワクチン組成物をイヌまたはウマに投与する工程を含む、インフルエンザによって引き起こされる感染に対してイヌまたはウマを治療する方法。
50.パラグラフ44に記載のワクチン組成物をイヌに投与する工程を含む、狂犬病ウイルスによって引き起こされる感染に対してイヌを治療する方法。
51、以下を含む、in ovo投与のためのトリコクシジウム症ワクチン:
(a)約350kDAから約650kDaの平均Mwを有する非架橋PAAを含むアジュバント;および
(b)以下から選択される原生動物抗原:(1)1つ以上の組換え発現タンパク質、(2)前記原生動物から通常的手段によって単離される1つ以上のタンパク質または他の巨大分子、(3)前記原生動物の全細胞抽出物または調製物、(4)アイメリア・アセルブリナ(Eimeria (E.) acervulina)、E.アデノエイデス(E.adenoeides)、E.ブルネッチィ(E.brunetti)、E.コルキシ(E.colchici)、E.クルバタ(E.curvata)、E.ディスペルサ(E.dispersa)、E.デュオデナリス(E.duodenalis)、E.フラテルクラエ(E.fraterculae)、E.ガロパボニス(E.gallopavonis)、E.インノクア(E.innocua)、E.プラエコクス(E.praecox)、E.マキシマ(E.maxima)、E.メレアグリディス(E.meleagridis)、E.メレアグリミチス(E.meleagrimitis)、E.ミチス(E.mitis)、E.ネカトリクス(E.necatrix)、E.ファシアニ(E.phasiani)、E.プロセラ(E.procera)、E.テネラ(E.tenella)およびそれらの組合せから選択される不活化、生または生早熟コクシジウム。
52.パラグラフ39に記載のワクチン組成物をウシに投与する工程を含む、大腸菌またはM.ヒオによって引き起こされる感染に対してウシを治療する方法であって、抗原成分が大腸菌またはM.ヒオを含む、前記方法。
53.抗原成分がM.ヒオを含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
54.パラグラフ51に記載のワクチン組成物をブタに投与する工程を含む、M.ヒオによって引き起こされる感染に対してブタを治療する方法。
55.抗原成分がFIVを含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
56.パラグラフ53に記載のワクチン組成物をネコに投与する工程を含む、FIVによって引き起こされる感染に対してネコを治療する方法。
57.抗原成分が癌抗原を含む、パラグラフ39に記載のワクチン組成物。
58.パラグラフ55に記載のワクチン組成物を対象動物に投与する工程を含む、癌に対して対象動物を治療する方法。
59.抗原成分がイヌコロナウイルス(CCV)を含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
60.パラグラフ57に記載のワクチン組成物をイヌに投与する工程を含む、CCVによって引き起こされる感染に対してイヌを治療する方法。
61.抗原成分がウシロタウイルスを含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
62.パラグラフ59に記載のワクチン組成物をウシに投与する工程を含む、ウシロタウイルスによって引き起こされる感染に対してウシを治療する方法。
63.抗原成分がイヌインフルエンザウイルス(CIV)を含む、パラグラフ39に記載の免疫学的またはワクチン組成物。
64.パラグラフ61に記載のワクチン組成物をイヌに投与する工程を含む、CIVによって引き起こされる感染に対してイヌを治療する方法。
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【0119】
本明細書に開示したように、出願人らは、一定の分子量範囲の非架橋(すなわち直鎖および分枝)ポリアクリル酸(PAA)ポリマーが免疫原性抗原の作用を補強する(adjuvanting)とともに抗原に左右されない免疫学的応答を引き出すために特に適切であることを最初に発見した。重要なことであるが、出願人らは、これらの非架橋PAAアジュバントは驚くべきことに多くの異なる抗原タイプ(弱毒化組換えウイルスベクター、古典的に不活化された狂犬病糖タンパク質、SpaAペプチドサブユニット、および細菌毒素)にわたって広範囲に有用であることを見出した。さらにまた、本開示のPAAアジュバントは多数の動物タイプに対して良好に機能した。したがって、出願人らは、本開示の非架橋PAAは新規で独創的な“汎用アジュバント”であることを提示する。