IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図1A
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図1B
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図2
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図3
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図4
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図5
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図6
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図7
  • 特許-注射デバイス用のキャップ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】注射デバイス用のキャップ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019530430
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017081310
(87)【国際公開番号】W WO2018104204
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】16202660.3
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ノーバー
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・タイセン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/183464(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0218089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス用のキャップであって:
ニードルシリンジの部分を受け入れるための凹部を有する本体を含むニードルシールドと;
本体の一部分が凹部と導管の間に位置する初期位置から、導管が本体の前記一部分を通って延び、凹部へのガスの進入を可能にするように凹部と流体連通するキャップ取外し位置まで移動可能な導管と
を含む前記キャップ。
【請求項2】
導管は、キャップ取外し位置まで導管を移動させたときにニードルシールドの本体に穴を開けるように構成された穿孔部材を含む、請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
初期位置からキャップ取外し位置まで導管を移動させるようにニードルシールドの本体に対して移動可能なアクチュエータをさらに含む、請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
アクチュエータは、キャップの遠位端に位置しており、キャップ取外し位置まで導管を移動させるようにキャップの近位端に向かって摺動可能である、請求項3に記載のキャップ。
【請求項5】
外キャップをさらに含み、アクチュエータは、キャップ取外し位置まで導管を移動させるように外キャップに対して移動可能である、請求項3または4に記載のキャップ。
【請求項6】
圧縮容積をさらに含み、導管は、導管がキャップ取外し位置にあるときに圧縮容積を凹部と流体連通させるように構成されており、圧縮容積は、凹部内のガス圧を増大させるように圧縮可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項7】
チャンバおよびピストンをさらに含み、チャンバは圧縮容積を含み、ピストンは、圧縮容積を圧縮するためにチャンバ内で摺動可能である、請求項6に記載のキャップ。
【請求項8】
導管は、ピストンに対して固定される、請求項7に記載のキャップ。
【請求項9】
本体に対するアクチュエータの移動は、チャンバ内で摺動して圧縮容積を圧縮するようにピストンを付勢する、請求項3~6のいずれか1項に従属するときの請求項7または8に記載のキャップ。
【請求項10】
圧縮容積はアクチュエータ内に配置される、請求項9に記載のキャップ。
【請求項11】
導管は、導管がキャップ取外し位置にあるときに凹部を大気と流体連通させるように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項12】
導管は、アクチュエータに対して固定される、請求項3~7のいずれか1項に記載の、または請求項3~5のいずれか1項に従属するときの請求項11に記載のキャップ。
【請求項13】
ニードルシールドは、ニードルシリンジに対して封止するように構成され、請求項1~12のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項14】
ニードルシリンジはニードルハブを含み、本体は、ニードルハブと係合して凹部を封止するように構成される、請求項13に記載のキャップ。
【請求項15】
注射デバイスであって:
ニードルシリンジと;
請求項1~14のいずれか1項に記載のキャップであって、導管が初期位置にあるときにニードルシールドの凹部が封止されるように、凹部がニードルシリンジの部分を受け入れる、キャップと
を含む前記注射デバイス。
【請求項16】
ニードルシリンジは薬剤を含む、請求項15に記載の注射デバイス。
【請求項17】
注射デバイスのキャップを取り外す方法であって、注射デバイスは、薬剤を含むニードルシリンジを含み、キャップは、導管およびニードルシールドを含み、ニードルシールドは、ニードルシリンジの部分を受け入れる凹部を有し、該方法は:
凹部と導管の間にニードルシールドの本体の一部分が位置し、凹部が封止された初期位置から、導管が本体の前記一部分を通って延び、凹部へのガスの進入を可能にするように凹部と流体連通するキャップ取外し位置まで、導管を移動させること
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイス用のキャップおよびキャップを含む注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、自動注射器など、患者の注射部位に薬剤を投薬するための注射デバイスが知られている。そのような注射デバイスは通常、本体およびキャップを含む。本体内にはニードルシリンジが位置する。キャップは、ニードルシリンジの針を隠すために本体に取外し可能に取り付けられている。薬剤を投薬するには最初に、本体からキャップを取り外して針を露出させる。次いで、注射部位において針を患者の体に挿入して薬剤を投薬する。
【0003】
注射デバイスの輸送および保管中に本体からキャップが偶然に外れることがないことを保証する十分な力でキャップが本体上に保持されることが重要である。このことは、針が滅菌された状態に保たれていることを保証し、さらに、鋭利な針が外傷の原因となることを防ぐ。しかしながら、キャップと本体を一体に保持するのに必要なこの力が、特に患者が高齢であったりまたは虚弱であったりする場合に、注射前に患者が意図的に本体からキャップを取り外すことを困難にすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良された注射デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、注射デバイス用のキャップが提供される。このキャップは:ニードルシリンジの部分を受け入れるための凹部を有する本体を含むニードルシールドと;本体の一部分が凹部と導管の間に位置する初期位置から、導管が本体の前記一部分を通って延び、凹部へのガスの進入を可能にするように凹部と流体連通するキャップ取外し位置まで移動可能な導管とを含む。
【0006】
キャップが取り外されるときには、凹部内の圧力が低下し、その結果、吸引効果が生じるように、ニードルシールドの本体が、ニードルシリンジから遠ざかる方向に移動する。この吸引効果の結果、導管を通して凹部に空気が引き入れられて、凹部内の圧力を等しくする。キャップの取外し中にガスが凹部に進入することを可能にする導管をキャップが含まない場合には、この吸引効果が、患者がニードルシリンジからニードルシールドを取り外すことをより困難にするであろう。これは、この吸引効果に打ち勝つために、患者は、キャップにより大きな力をかける必要があるためである。したがって、導管は、ニードルシールドを取り外すために患者がキャップにかけなければならない力を減らす。このことは特に、患者が高齢であったりまたは虚弱であったりする場合に有利である。導管は、初期位置とキャップ取外し位置の間で本体に対して摺動可能とすることができる。
【0007】
一実施形態において、導管は、キャップ取外し位置まで導管を移動させたときにニードルシールドの本体に穴を開けるように構成された穿孔部材を含む。穿孔部材は、凹部と流体連通するための比較的に単純な機構を提供し、当初、穿孔部材によって本体に穴が開けられるまで凹部が封止されることを可能にする。
【0008】
一実施形態において、キャップは、初期位置からキャップ取外し位置まで導管を移動させるようにニードルシールドの本体に対して移動可能なアクチュエータをさらに含む。そのような一実施形態において、アクチュエータは、キャップの遠位端に位置しており、キャップ取外し位置まで導管を移動させるようにキャップの近位端に向かって摺動可能である。したがって、患者は、テーブルの表面などの平坦面にアクチュエータを押し付け、キャップに力を加えてアクチュエータを作動させることができる。この押し付ける運動は、特に患者が高齢であったりまたは虚弱であったりする場合にキャップの操作を単純にする。導管は、アクチュエータに対して固定することができる。
【0009】
キャップは、外キャップをさらに含むことができ、その場合、アクチュエータは、キャップ取外し位置まで導管を移動させるように外キャップに対して移動可能である。
【0010】
一実施形態において、導管は、導管がキャップ取外し位置にあるときに凹部を大気と流体連通させるように構成される。したがって、導管がキャップ取外し位置に置かれると、凹部は大気圧と等圧になって、キャップの取外しを容易にする。
【0011】
一実施形態において、キャップは、圧縮容積をさらに含み、導管は、導管がキャップ取外し位置にあるときに圧縮容積を凹部と流体連通させるように構成されており、圧縮容積は、凹部内のガス圧を増大させるように圧縮可能である。したがって、導管は、圧縮容積内の圧力を凹部内の圧力と等しくして、吸引効果を低減させ、したがってキャップの取外しを容易にする。そのような一実施形態において、本体に対するアクチュエータの移動は、チャンバ内で摺動して圧縮容積を圧縮するようにピストンを付勢する。圧縮容積は、キャップの部分の内側、たとえば外キャップの内側に配置することができる。圧縮容積は、アクチュエータ内に配置することができ、それによってキャップのサイズを低減させることができる。
【0012】
一実施形態において、キャップは、チャンバおよびピストンをさらに含み、チャンバは圧縮容積を含み、ピストンは、圧縮容積を圧縮するためにチャンバ内で摺動可能である。導管は、ピストンに対して固定することができる。
【0013】
一実施形態において、チャンバは、アクチュエータ内に位置する。
【0014】
一実施形態において、ピストンは、圧縮容積を圧縮するためにアクチュエータに対して移動可能である。
【0015】
導管は尖端を含むことができる。導管は、かなり高剛性のものとすることができる。
【0016】
一実施形態において、キャップは、医療用注射デバイス用のキャップである。
【0017】
一実施形態において、ニードルシールドは、ニードルシリンジに対して封止するように構成されており、好ましくは、ニードルシリンジはニードルハブを含み、本体は、ニードルハブと係合して凹部を封止するように構成されている。
【0018】
一実施形態において、アクチュエータは、導管を初期位置からキャップ取外し位置まで移動させるように、第1の位置から第2の位置まで移動可能である。そのような一実施形態において、キャップはさらに、導管を初期位置に保持し、かつ/またはアクチュエータを第2の位置に保持するように構成されたロッキング機構を含む。ロッキング機構は、アクチュエータが第2の位置にあるときに係合する第1および第2のロッキング要素を含むことができる。
【0019】
一実施形態において、凹部は、ニードルシリンジが凹部に受け入れられており、導管が初期位置にあるときに気密封止されている。
【0020】
一実施形態において、キャップはさらに、ニードルシリンジからキャップが取り外されるときに、ニードルシールドを取り外すための力をニードルシールドにかけるように構成された取外し部材を含む。取外し部材は、フランジの形態をとることができる。フランジは、半径方向内側へ延びることができる。代替実施形態では取外し部材が省かれる。そのような一実施形態では、患者によってニードルシリンジからキャップが取り外され、続いてニードルシールドが取り外される。
【0021】
導管は、初期位置とキャップ取外し位置の間で軸方向に移動することができる。初期位置からキャップ取外し位置まで移動するとき、導管は、注射デバイスの近位端に向かって移動することができる。
【0022】
注射デバイスは、医療用注射デバイスとすることができる。
【0023】
ニードルシールドの本体の凹部は、前記ニードルシリンジのニードルハブの少なくとも部分を受け入れるように構成することができる。
【0024】
一実施形態において、医療用注射デバイス用のキャップが提供される。このキャップは:ニードルシリンジのニードルハブの少なくとも部分を受け入れるための凹部を有する本体を含むニードルシールドと;本体の一部分が凹部と穿孔部材の間に位置する初期位置から、穿孔部材がニードルシールドの本体に穴を開け、凹部へのガスの進入を可能にするように凹部と流体連通するキャップ取外し位置に移動可能な穿孔部材とを含む。
【0025】
本発明によればさらに、注射デバイスが提供される。この注射デバイスは:ニードルシリンジと;上述のキャップであって、導管が初期位置にあるときにニードルシールドの凹部が封止されるように、凹部がニードルシリンジの部分を受け入れる、キャップとを含む。一実施形態において、ニードルシリンジは薬剤を含む。注射デバイスは自動注射器を含むことができる。
【0026】
本発明によればさらに、注射デバイスのキャップを取り外す方法が提供される。この方法において、注射デバイスは、薬剤を含むニードルシリンジを含み、キャップは、導管およびニードルシールドを含み、ニードルシールドは、ニードルシリンジの部分を受け入れる凹部を有し、この方法は:凹部と導管の間に本体の一部分が位置し、凹部が封止された初期位置から、導管が本体の前記一部分を通って延び、凹部へのガスの進入を可能にするように凹部と流体連通するキャップ取外し位置まで、導管を移動させることを含む。
【0027】
注射デバイスは、医療用注射デバイスを構成することができる。凹部は、ニードルシリンジのニードルハブの少なくとも部分を受け入れることができる。
【0028】
導管は穿孔部材を含むことができる。この方法は、凹部と穿孔部材の間に本体の一部分が位置し、凹部が封止された初期位置から、凹部へのガスの進入を可能にするために、穿孔部材が、ニードルシールドの本体に穴を開けて凹部と流体連通したキャップ取外し位置まで、穿孔部材を移動させることを含む。
【0029】
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、以下で説明する実施形態から明白となり、それらの実施形態を参照することで解明される。
【0030】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】注射デバイスの本体にキャップが取り付けられた、本発明を実施する自動注射器の概略側面図である。
図1B】本体からキャップが取り外された、図1Aの自動注射器の概略側面図である。
図2】自動注射器の本体にキャップが取り付けられており、アクチュエータが第1の位置にある、本発明の第1の実施形態に基づく自動注射器の部分の概略側断面図である。
図3】自動注射器の本体にキャップが取り付けられており、アクチュエータが第2の位置にある、図2の自動注射器の部分の概略側断面図である。
図4】本体からキャップが取り外されており、アクチュエータが第2の位置にある、図2の自動注射器の部分の概略側断面図である。
図5】自動注射器の本体にキャップが取り付けられており、アクチュエータが第1の位置にある、本発明の第2の実施形態に基づく自動注射器の部分の概略側断面図である。
図6】本体にキャップが取り付けられており、アクチュエータが中間位置にある、図5の自動注射器の部分の概略側断面図である。
図7】本体にキャップが取り付けられており、アクチュエータが第2の位置にある、図5の自動注射器の部分の概略側断面図である。
図8】本体からキャップが取り外されており、アクチュエータが第2の位置にある、図5の自動注射器の部分の概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に記載された薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。送達はたとえば、皮下、筋肉内または静脈内送達とすることができる。このようなデバイスは、患者、または看護士もしくは医師などの医療従事者が操作することができ、さまざまなタイプの安全シリンジ、ペン型注射器または自動注射器を含むことができる。このデバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要があるカートリッジベースのシステムを含むことができる。これらのさまざまなデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5mlから約2mlの範囲とすることができる。別のデバイスは、「大」容量(通常約2mlから約10ml)の薬剤を送達するためにある時間(たとえば約5、15、30、60または120分)の間、患者の皮膚に粘着するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0033】
必要な仕様の範囲内で動作させるために、特定の薬剤との組合せで、本明細書に記載されたデバイスをカスタマイズすることもできる。たとえば、ある時間(たとえば自動注射器では約3から約20秒、LVDでは約10分から約60分)のうちに薬剤を注射するように、デバイスをカスタマイズすることができる。他の仕様は、低レベルもしくは最低レベルの不快感、または人的要因、保管寿命、期限終了、生体適合性、環境的考慮などに関係したある種の条件を含むことができる。このような変更は、たとえば薬物が約3cPから約50cPの範囲の粘度を有することなど、さまざまな要因によって生じることがある。その結果、薬物送達デバイスはしばしば、約25から約31ゲージの範囲のサイズを有する中空針を含む。一般的なサイズは17および29ゲージである。
【0034】
本明細書に記載された送達デバイスはさらに、1つまたはそれ以上の自動化された機能(以後、自動機能)を含むことができる。たとえば、針挿入、薬剤注射および針後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動工程のためのエネルギーを、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給することができる。エネルギー源はたとえば、機械、空気圧、化学または電気エネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、ばね、てこ、エラストマー、またはエネルギーを蓄積もしくは解放する他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて単一のデバイスとすることができる。デバイスはさらに、歯車、弁、またはエネルギーをデバイスの1つもしくはそれ以上の構成要素の運動に変換する他の機構を含むことができる。
【0035】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能を各々、起動機構によって起動することができる。そのような起動機構は、アクチュエータを含むことができ、たとえばボタン、レバー、ニードルスリーブおよび他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、一工程プロセスまたは多工程プロセスとすることができる。すなわち、自動機能を行うために、ユーザは、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要があることがある。たとえば、一工程プロセスでは、薬剤の注射を引き起こすために、ユーザは、体に対してニードルスリーブを押し下げることができる。他のデバイスは、自動機能の多工程起動を必要とすることがある。たとえば、注射を引き起こすために、ユーザは、ボタンを押し下げること、およびニードルシールドを後退させることを実行する必要があることがある。
【0036】
加えて、1つの自動機能の起動が、後続の1つまたはそれ以上の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動が、針挿入、薬剤注射および針後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはさらに、1つまたはそれ以上の自動機能を実行するために、特定の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程のシーケンスによって動作することができる。
【0037】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された(自動注射器で通常見られるような)機械エネルギー源、および(ペン型注射器で通常見られるような)用量設定機構を含むことができる。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態に従って、例示的な薬物送達デバイス10が図1Aおよび1Bに示されている。上述のデバイス10は、患者の体内に薬剤を注射するように構成されている。デバイス10はハウジング11を含み、ハウジング11は通常、注射される薬剤を含むリザーバ(たとえばシリンジ)と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするのに必要な構成要素とを含む。デバイス10はさらに、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップアセンブリ12を含むことができる。通常、ハウジング11からキャップ12を取り外した後でなければ、ユーザはデバイス10を操作することができない。
【0039】
示されているように、ハウジング11は実質的に円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って実質的に一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。用語「遠位」は、注射部位に相対的に近い位置を指し、用語「近位」は、注射部位から相対的に遠い位置を指す。
【0040】
デバイス10はさらに、ニードルスリーブ19を含むことができ、ニードルスリーブ19は、ハウジング11に対するスリーブ19の移動を可能にするようにハウジング11に連結されている。たとえば、スリーブ19は、長手方向軸A-Aに平行な長手方向に移動することができる。具体的には、スリーブ19を近位方向へ移動させることによって、ハウジング11の遠位領域Dから針17を延出させることができる。
【0041】
針17の挿入は、いくつかの機構によって実行することができる。たとえば、ハウジング11に対して固定された状態に針17を配置し、最初は、針17を、延出したニードルスリーブ19内に配置する。スリーブ19の遠位端を患者の体にあてがい、ハウジング11を遠位方向に移動させることによりスリーブ19を近位方向に移動させると、針17の遠位端が露出する。このような相対的移動によって、針17の遠位端は、患者の体内に延入することができる。このような挿入は、スリーブ19に対するハウジング11の移動を患者が手動で行うことによって針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0042】
別の形態の挿入は「自動」挿入であり、これによって針17はハウジング11に対して移動する。このような挿入は、スリーブ19の移動によって、またはたとえばボタン13などの別の起動形態によって行うことができる。図1Aおよび1Bに示されているように、ボタン13はハウジング11の近位端に位置する。しかしながら、他の実施形態では、ハウジング11の側面にボタン13を配置することもできる。
【0043】
他の手動または自動機能は、薬物注射もしくは針後退またはその両方を含むことができる。注射は、針17を通してシリンジ18から薬剤を押し出すために、シリンジ18内の近位位置からシリンジ18内のより遠位方向の位置まで、栓またはピストン14を移動させるプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前まで駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。ハウジング11の近位領域Pの内部に駆動ばねの近位端を固定することができ、駆動ばねの遠位端を、ピストン14の近位表面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動に続いて、駆動ばねに蓄えられたエネルギーの少なくとも一部を、ピストン14の近位表面に加えることができる。この圧縮力は、ピストン14に作用して、ピストン14を遠位方向に移動させることができる。このような遠位方向への移動は、シリンジ18内の液体薬剤を圧縮して、液体薬剤を針17から押し出すように作用する。
【0044】
注射後、スリーブ19内またはハウジング11内に針17を後退させることができる。後退は、ユーザが患者の体からデバイス10を取り外すときにスリーブ19が遠位方向に移動したときに起こりうる。この後退は、針17が、ハウジング11に対して固定された状態に配置されたままであるときに起こりうる。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を超えて移動し、針17が覆われた後、スリーブ19をロックすることができる。このようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ19の近位方向への移動をロックすることを含むことができる。
【0045】
別の形態の針後退は、ハウジング11に対して針17を移動させる場合に起こりうる。このような移動は、ハウジング11内のシリンジ18をハウジング11に対して近位方向に移動させた場合に起こりうる。この近位方向への移動は、遠位領域Dに位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって達成することができる。圧縮された後退ばねは、起動されたときに、シリンジ18を近位方向に移動させるのに十分な力をシリンジ18に供給することができる。十分な後退の後、針17とハウジング11の間の相対的移動をロッキング機構によってロックすることができる。加えて、必要に応じて、ボタン13またはデバイス10の他の構成要素をロックすることもできる。
【0046】
次に図2から4を参照すると、本発明の第1の実施形態に基づく注射デバイス20の部分が示されている。注射デバイス20は、図1Aおよび1Bに関して上で説明した自動注射器10と同様の機能を有する自動注射器20の形態をとっており、これらの図では、同様の機能が同じ参照符号を保持している。第1の実施形態の自動注射器20は、針17とシリンジ18とを含むニードルシリンジを保持したハウジング11を有する。シリンジ18は、針17に取り付けられたニードルハブ18Aを含む。
【0047】
図1Aおよび1Bに関して上で説明した自動注射器10と第1の実施形態の自動注射器20との違いは、キャップ12が省かれており、その代わりに代替キャップ21が使用されていることである。
【0048】
本発明の第1の実施形態の自動注射器20のキャップ21は、ニードルシールド22および外キャップ23を含む。ニードルシールド22は、不透過性材料の本体24を含み、本体24の近位端に凹部25を有する。凹部25は、本体24によって針17が隠されるようにニードルハブ18Aおよび針17を受け入れるように構成されている。凹部25を封止して凹部25への空気の進入を防ぐため、本体24の内面とニードルハブ18Aの外面は摩擦によって係合している。したがって、キャップ21がハウジング11に取り付けられているとき、針17は滅菌された状態に保たれる。
【0049】
外キャップ23は、内部分26および外部分27を含む。内部分および外部分26、27は概ね円筒形である。内部分26は、外部分27よりも小さな直径を有し、外部分27の内側に位置する。内部分と外部分26、27は同心に配置されている。内部分と外部分26、27は互いに、自動注射器20の遠位端に位置する外キャップ23の端壁23Aによって固定された状態で連結されている。
【0050】
外キャップ23の内部分と外部分26、27の間には、概ね環状の第1の空間28Aが位置する。第1の空間28Aは、外キャップ23の端壁23Aまで延びている。第1の空間28Aは、ニードルスリーブ19の遠位端の形状に対応する形状を有する。ニードルスリーブ19は、針17を封止するために最初にキャップ21がハウジング11に取り付けられるときに、第1の空間28Aに受け入れられる。
【0051】
外キャップ23はさらに、ハウジング11から外キャップ23が取り外されるときに、ニードルシールド22を取り外し、したがって針17を露出させるための力をニードルシールド22にかけるように構成された取外し部材29を含む。取外し部材29は、外キャップ23の内部分26の近位端から半径方向内側へ延びるフランジ29の形態をとる。自動注射器20のハウジング11に最初にキャップ21が取り付けられたときに、フランジ29は、本体24の近位表面24Aに当接する。
【0052】
自動注射器20はさらにアクチュエータ30および導管31を含む。アクチュエータ30は、概ね円筒形の周囲壁32と、周囲壁32の遠位端から延びる概ね平らな端壁33とを含む。アクチュエータ30は概ねカップ形である。
【0053】
アクチュエータ30の周囲壁32は、外キャップ23の内部分および外部分26、27と同心で位置合わせされている。アクチュエータ30は、外キャップ23の内部分26の内側の第2の空間28Bに摺動可能に受け入れられている。
【0054】
導管31は穿孔部材31を含む。この実施形態では、穿孔部材31が第2の針31の形態をとる。
【0055】
穿孔部材31は管34を含み、管34の近位端には尖端34Aがある。管34の遠位端は、アクチュエータ30の端壁33に取り付けられており、管34の遠位端の開口部が大気と流体連通するように端壁33を通って延びている。第2の空間28B内でのアクチュエータ30の移動は、アクチュエータ30に取り付けられた穿孔部材31の対応する移動を引き起こす。
【0056】
アクチュエータ30は、アクチュエータ30の部分が外キャップ23から遠位方向に突き出た初期位置(図2に示されている)から、アクチュエータ30の端壁33が外キャップ23の端壁23Aと同一平面をなすまでアクチュエータ30が外キャップ23の内部分26内へ移動するようにアクチュエータ30が近位方向に摺動した第2の位置(図3および4に示されている)まで、外キャップ23に対して摺動可能である。
【0057】
アクチュエータ30が第1の位置にあるとき、穿孔部材31は、アクチュエータ30の端壁33からニードルシールド22の本体24に向かって管34が近位方向に延びた初期位置にある。尖端34Aは、尖端34Aと凹部25の間に本体24の一部分が位置し、したがって凹部25が導管31から封止されるように、本体24から離隔されている。アクチュエータ30を第2の位置まで移動させると、穿孔部材31は、穿孔部材31が本体24の前記部分を貫通し凹部25内へ延びるように尖端34Aが本体24を穿孔したキャップ取外し位置まで移動する。したがって、穿孔部材31がキャップ取外し位置にあるとき、大気は、穿孔部材31の管34を通ってニードルシールド22の凹部25に流入することが可能である。
【0058】
アクチュエータ30を第2の位置に保持するためにロッキング機構35が提供される。ロッキング機構35は、アクチュエータ30が第2の位置にあるときに係合する一対の第1のロッキング要素および一対の第2のロッキング要素35A、35Bを含む。一対の第1のロッキング要素35Aは、外キャップ23の内部分26から半径方向内側へ各々延びる一対の突起35Aを含む。一対の第2のロッキング要素35Bは、ニードルシールド22の本体24の外表面に各々形成された一対の凹部35Bを含む。
【0059】
アクチュエータ30を第1の位置から第2の位置まで移動させると、各突起35Aは、ロッキング機構35のそれぞれの凹部35Bにカチッとはまって、アクチュエータ30を第2の位置に保持する。
【0060】
代替実施形態(図示せず)では、第1のロッキング要素が各々、外キャップの内部分に形成された凹部を含み、第2のロッキング要素が各々、ニードルシールドの本体から半径方向外側へ延び、それぞれの凹部に受け入れられる突起を含む。別の実施形態(図示せず)では、ロッキング要素が、単一の第1のロッキング要素および単一の第2のロッキング要素を含む。一実施形態では、第1のロッキング要素が環状の溝を含み、第2のロッキング要素が、アクチュエータが第2の位置にあるときにその環状の溝に受け入れられる環状のリッジ(ridge)を含む。
【0061】
キャップ21は最初に、針17およびニードルハブ18Aがニードルシールド22の凹部25に受け入れられるようにハウジング11に取り付けられる。したがって、針17は、針17を滅菌された状態に保つため、および針17が患者の外傷の原因となることを防ぐために、ニードルシールド22によって覆われ、気密封止される。キャップ21が最初にハウジング11に取り付けられたとき、ニードルスリーブ19は、外キャップ23の第1の凹部28Aに受け入れられており、アクチュエータ30は、第1の位置(図2に示されている)にあり、穿孔部材31は初期位置にある。
【0062】
薬剤を注射するには最初に、自動注射器20のハウジング11からキャップ21を取り外して針17を露出させる。ハウジング11からのキャップ21の取外しは、患者がアクチュエータ30に(図2の矢印「F」の方向の)力をかけて、アクチュエータ30をハウジング11に向かって近位方向に付勢することによって達成される。これによって、アクチュエータ30は、穿孔部材31が初期位置からキャップ取外し位置まで付勢されるように、第1の位置(図2に示されている)から第2の位置(図3に示されている)まで外キャップ23に対して摺動する。キャップ取外し位置では、凹部25が大気と流体連通するように穿孔部材31がニードルシールド22の本体24を貫通する。アクチュエータ30は、ロッキング機構35によって第2の位置に保持される。
【0063】
次いで、外キャップ23を取り外すため、患者は、外キャップ23を掴み、外キャップ23を遠位方向に引っ張ってハウジング11から離す。これによって、フランジ29は、ニードルシールド22が(図4に示されているように)針17から取り外されるように、ニードルシールド22の本体24の近位表面24Aに対して付勢される。
【0064】
ハウジング11からキャップ21を取り外すと、ニードルスリーブ19がハウジング11の遠位端から突き出て、針17を隠す。次いで、ニードルスリーブ19の遠位端を患者の注射部位に押し当てて、ニードルスリーブ19がハウジング11内へ後退し、針17が注射部位に進入するようにする。次いで、投薬ボタン(図示せず)を押して注射部位に薬剤を投薬する。
【0065】
キャップ21が最初にハウジング11に取り付けられ、アクチュエータ30が第1の位置にあるときには、凹部25内のニードルシールド22の本体24とニードルハブ18Aとの間に空間25Aが配置される。空間25Aは、自動注射器20の組立て中に凹部25に進入したガス、たとえば空気または二酸化炭素を含む。キャップ21が取り外されるときには、ニードルシールド22の本体24が遠位方向に移動してニードルハブ18Aから遠ざかり、したがって空間25Aの容積が増大する。これによって吸引効果が生じ、その結果、穿孔部材31を通して空間25Aに空気が引き入れられて、空間25A内の圧力を大気圧と等しくする。キャップ21の取外し中にガスが凹部25に進入することを可能にする導管31を自動注射器20が含まない場合には、この吸引効果が、患者がニードルハブ18Aからニードルシールド22を取り外すことを困難にするであろう。これは、この吸引効果に打ち勝つために、患者は、キャップ21に大きな力をかける必要があるためである。したがって、導管31は、ニードルシールド22を取り外すために患者がキャップ21にかけなければならない力を減らす。このことは特に、患者が高齢であったりまたは虚弱であったりする場合に有利である。
【0066】
次に図5から8を参照すると、本発明の第2の実施形態に基づく注射デバイス40の部分が示されている。注射デバイス40は、図2から4に関して上で説明した自動注射器20と同様の機能を有する自動注射器40の形態をとっている、これらの図では、同様の機能が同じ参照符号を保持している。違いは、上述の自動注射器20のキャップ21が省かれており、その代わりに代替キャップ41が使用されていることである。
【0067】
第2の実施形態の自動注射器40のキャップ41は、ニードルシールド22および外キャップ23を含む。ニードルシールド22は、不透過性材料の本体24を含み、本体24の近位端に凹部25を有する。凹部25は、本体24によって針17が隠されるようにニードルハブ18Aおよび針17を受け入れるように構成されている。凹部25を封止して凹部25への空気の進入を防ぐため、本体24の内面とニードルハブ18Aの外面は摩擦によって係合している。したがって、キャップ41がハウジング11に取り付けられているとき、針17は滅菌された状態に保たれる。
【0068】
第1の実施形態と同様に、外キャップ23は、内部分26および内部分26の半径方向外側に位置する外部分27を含む。内部分と外部分26、27は互いに、外キャップ23の遠位端に位置する外キャップ23の端壁23Aによって固定された状態で連結されている。最初にキャップ41がハウジング11に取り付けられるときに、内部分と外部分26、27の間の第1の空間28Aに、ニードルスリーブ19が受け入れられる。
【0069】
外キャップ23はさらに、ハウジング11から外キャップ23が取り外されるときに、ニードルシールド22を取り外すための力をニードルシールド22にかけるように構成された取外し部材29を含む。取外し部材29は、ハウジング11にキャップ41が取り付けられたときに本体24の近位表面24Aに当接するフランジ29を含む。
【0070】
自動注射器40はさらにアクチュエータ50および導管51を含む。アクチュエータ50は、概ね円筒形の周囲壁52と、周囲壁52の遠位端から延びる概ね平らな端壁53とを含む。アクチュエータ50は概ねカップ形である。
【0071】
アクチュエータ50の周囲壁52は、外キャップ23の内部分および外部分26、27と同心で位置合わせされている。アクチュエータ50は、外キャップ23の内部分26の内側の第2の空間28Bに摺動可能に受け入れられている。
【0072】
導管51は穿孔部材51を含む。この実施形態では、穿孔部材51が第2の針51の形態をとる。
【0073】
穿孔部材51は管54を含み、管54の近位端には尖端54Aがある。
【0074】
自動注射器40はさらにピストン56を含む。アクチュエータ50の周囲壁52および端壁53はチャンバ57を画成し、ピストン56は、チャンバ57内のピストン56と端壁53の間に圧縮容積58が形成されるようにチャンバ57に摺動可能に受け入れられている。
【0075】
穿孔部材51はピストン56に取り付けられており、近位方向へ延びている。管54は、管54の遠位端の開口部が圧縮容積58と流体連通するようにピストン56を通って延びている。
【0076】
アクチュエータ50は、アクチュエータ50の部分が外キャップ23から遠位方向に突き出た初期位置(図5に示されている)から、アクチュエータ50が外キャップ23内へ近位方向に摺動して外キャップ23の第2の空間28Bに部分的に受け入れられ中間位置(図6に示されている)まで、外キャップ23に対して摺動可能である。中間位置から、アクチュエータ50は、アクチュエータ50の端壁53が外キャップ23の端壁23Aと同一平面をなすまでアクチュエータ50が外キャップ23の内部分26内へ移動するようにアクチュエータ50が近位方向に摺動した第2の位置(図7および8に示されている)まで移動可能である。
【0077】
アクチュエータ50が第1の位置にあるとき、穿孔部材51は、ピストン56からニードルシールド22の本体24に向かって管54が近位方向に延びた初期位置にある。尖端54Aは、尖端54Aと凹部25の間に本体24の一部分が位置し、したがって凹部25が穿孔部材51から封止されるように、本体24から離隔されている。アクチュエータ50を中間位置まで移動させると、穿孔部材51は、穿孔部材51が本体24の前記部分を貫通し凹部25内へ延びるように尖端54Aが本体24を穿孔したキャップ取外し位置(図6に示されている)まで移動する。したがって、穿孔部材51がキャップ取外し位置にあるとき、圧縮容積58内のガスは、穿孔部材51の管54を通ってニードルシールド22の凹部25に流入して、凹部25内の圧力を圧縮容積58内の圧力と等しくすることが可能である。したがって、後に説明するように、圧縮容積58内のガスの圧縮は凹部25内の圧力を増大させる。
【0078】
キャップ41は最初に、針17およびニードルハブ18Aがニードルシールド22の凹部25に受け入れられるようにハウジング11に取り付けられる。したがって、針17は、針17を滅菌された状態に保つため、および針17が患者の外傷の原因となることを防ぐために、ニードルシールド22によって覆われ、気密封止される。キャップ41が最初にハウジング11に取り付けられたとき、ニードルスリーブ19は、外キャップ23の第1の凹部28Aに受け入れられており、アクチュエータ50は、第1の位置(図5に示されている)にあり、穿孔部材51は初期位置にある。
【0079】
薬剤を注射するには最初に、自動注射器40のハウジング11からキャップ41を取り外して針17を露出させる。ハウジング11からのキャップ21の取外しは、最初に患者がアクチュエータ50に(図5の矢印「F」の方向の)力をかけて、アクチュエータ50をハウジング11に向かって近位方向に付勢することによって達成される。これによって、アクチュエータ50は、穿孔部材51が初期位置からキャップ取外し位置まで付勢されるように、第1の位置(図5に示されている)から中間位置(図6に示されている)まで外キャップ23に対して摺動する。キャップ取外し位置では、凹部25が圧縮容積58と流体連通するように穿孔部材51がニードルシールド22の本体24を貫通する。穿孔部材51がキャップ取外し位置にあるとき、ピストン56は、ニードルシールド22の本体24の遠位表面24Bと当接している。
【0080】
アクチュエータ50が第2の位置(図7に示されている)まで移動するようにハウジング11に向かってアクチュエータ50を付勢するために、患者は、(矢印「F」の方向の)力をアクチュエータ50にかけ続ける。これによって、アクチュエータ50の端壁53は、圧縮容積58が圧縮され、したがって圧縮容積58内のガス、たとえば空気または二酸化炭素の圧力が増大するように、ピストン56に向かって移動する。穿孔部材51は、圧縮容積58内の圧力を凹部25内の圧力と等しくし、したがって、中間位置から第2の位置へのアクチュエータ50の移動は、凹部25内のガスの圧力を増大させる。アクチュエータ50はロッキング機構35によって第2の位置に保持される。
【0081】
アクチュエータ50が第2の位置にあるとき、圧縮容積58内および凹部25内の圧力は大気圧よりも高い。したがって、凹部25内のガスは、ニードルシールド22に力をかけてニードルシールド22を遠位方向に付勢しハウジング11から遠ざけるように、ニードルハブ18Aおよび本体24に対して作用する。
【0082】
次いで、外キャップ23を取り外すため、患者は、外キャップ23を掴み、外キャップ23を遠位方向に引っ張ってハウジング11から離す。これによって、フランジ29は、ニードルシールド22が(図8に示されているように)針17から取り外されるように、ニードルシールド22に対して付勢される。ハウジング11からキャップ41を取り外すと、ニードルスリーブ19がハウジング11の遠位端から突き出て、針17を隠す。次いで、ニードルスリーブ19の遠位端を患者の注射部位に押し当てて、ニードルスリーブ19がハウジング11内へ後退し、針17が注射部位に進入するようにする。次いで、投薬ボタン(図示せず)を押して注射部位に薬剤を投薬する。
【0083】
この実施形態では、アクチュエータ50が第2の位置にあるときに凹部25内のガスによってニードルシールド22に及ぼされる力が、ニードルシールド22を移動させてハウジング11から離すには不十分である。言い換えると、前記力は、ニードルハブ18Aとニードルシールド22の本体24との間の摩擦に打ち勝つのに十分な大きさを持たない。しかしながら、アクチュエータ50が第2の位置にあるときに凹部25内のガスによってニードルシールド22に及ぼされる力は、ニードルシールド22を取り外すために患者が外キャップ23にかけなければならない力のサイズを低減させ、したがってキャップ41の取外しをより容易にする。
【0084】
代替実施形態(図示せず)では、アクチュエータ50が第2の位置にあるときに凹部25内のガスによってニードルシールド22に及ぼされる力が、ニードルハブ18Aとニードルシールド22の本体24との間の摩擦に打ち勝つのに十分な大きさを有する。したがって、アクチュエータ50が第2の位置まで移動すると、ニードルシールド22は、ニードルシールド22がニードルハブ18Aから取り外されるように、凹部25内のガス圧力によってニードルシールド22に及ぼされる力によって付勢されてハウジング11から離れる。凹部25からニードルハブ18Aが完全に取り外された後、キャップ41とハウジング11および/またはニードルスリーブ19との間の摩擦は、単純にキャップ41をハウジング11から引き離すことによってキャップ41をハウジング11から容易に取り外して針17を露出させることができるような最小のものとなる。
【0085】
上で説明した実施形態では、導管31、51を初期位置からキャップ取外し位置まで移動させるように、アクチュエータ30、50が外キャップ23に対して摺動可能である。しかしながら、代替実施形態(図示せず)では、アクチュエータが外キャップに対して固定されており、導管を初期位置からキャップ取外し位置まで移動させるように、アクチュエータと外キャップの両方がニードルシールドに対して一緒に移動可能である。
【0086】
いくつかの実施形態(図示せず)では外キャップ23が省かれる。そのような一実施形態では、アクチュエータがニードルシールドに摺動可能に取り付けられ、導管がアクチュエータに取り付けられる。導管を初期位置からキャップ取外し位置まで付勢するために、アクチュエータをニードルシールドに対して摺動させる。
【0087】
上で説明した実施形態では、導管31、51が、ニードルシールド22に対して、自動注射器20、40の長手方向軸A-Aの方向に、初期位置からキャップ取外し位置まで移動する。しかしながら、その代わりに、ニードルシールド22に対して異なる方向に、たとえば長手方向軸A-Aに対して斜めに、初期位置からキャップ取外し位置まで移動するように、導管31、51を構成することもできることを認識すべきである。一実施形態(図示せず)では、導管31、51が、ニードルシールド22に対して半径方向に、初期位置からキャップ取外し位置まで移動する。
【0088】
上記の実施形態では、ニードルハブ18Aが凹部25に受け入れられており、導管31、51が初期位置にあるときに、凹部25が、凹部25への空気またはガスの進入が妨げられるように気密封止されている。しかしながら、代替実施形態(図示せず)では、凹部が、空気またはガスに対して完全に封止されているわけではない。
【0089】
上で説明した実施形態では、外キャップ23が、患者が外キャップ23を取り外すときにニードルシールド22を取り外すように構成された取外し部材29を含む。しかしながら、代替実施形態(図示せず)では、取外し部材が省かれていることを認識すべきである。そのような一実施形態(図示せず)では、患者が最初に外キャップを取り外し、次いでニードルシールドを別個に取り外す。
【0090】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、さまざまなタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組合せを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0091】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0092】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0093】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0094】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0095】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0096】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0097】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0098】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0099】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0100】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0101】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0102】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0103】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0104】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0105】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0106】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0107】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0108】
本明細書に記載された物質、配合、装置、方法、システムおよび実施形態のさまざまな構成要素の変更(付加および/または除去)を、本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく実施することができ、本発明の完全な範囲および趣旨は、このような変更およびそれらの全ての均等物を包含することを当業者は理解するであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8