(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】耐振固定構造を備えた回路部品、基板、回路組立体、および車両用電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20220204BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20220204BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20220204BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20220204BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
H05K1/18 C
F04B39/00 106Z
H01G2/06 Z
H01G2/10 M
H01G4/40 321A
(21)【出願番号】P 2020104378
(22)【出願日】2020-06-17
(62)【分割の表示】P 2016004239の分割
【原出願日】2016-01-13
【審査請求日】2020-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】鷹繁 貴之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 博人
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161188(JP,A)
【文献】特開2015-095611(JP,A)
【文献】特開2015-144522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0160629(US,A1)
【文献】特開2011-258754(JP,A)
【文献】特開平10-106879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0153153(US,A1)
【文献】国際公開第2015/045391(WO,A1)
【文献】中国実用新案第202189683(CN,U)
【文献】国際公開第2013/094209(WO,A1)
【文献】特開2006-049556(JP,A)
【文献】特開平10-256796(JP,A)
【文献】特開2013-038192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/18
H01G 2/10
H01G 4/40
H01G 2/06
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品本体および部品ケースを含む回路部品
と、
前記回路部品が接続される基板と、
前記基板および前記回路部品を収容する回路ケースと、を備え、
前記部品本体は、
板状の一対の第1接続端子および第2接続端子を備え、
前記部品ケースは、前記部品本体を収容する収容部と、前記収容部の両側に
前記収容部の側面から側方へ突出して設けられ
て前記回路ケースに固定される第1固定部および第2固定部と、を備え、
前記第1接続端子は、前記第2固定部よりも前記第1固定部に近接して配置され、
前記第2接続端子は、前記第1固定部よりも前記第2固定部に近接して配置され、
前記第1接続端子および前記第2接続端子は、
前記第1固定部と前記第2固定部とを結ぶ固定ラインを間に挟んで対向し、それぞれの位置
における前記基板の一面と前記回路ケースとの間で前記部品本体から側方へと突出
する突出部と、前記突出部に対し、
前記基板に向けて屈曲して前記基板に接合される接合部と、を含む、回路組立体。
【請求項2】
前記第1接続端子および前記第2接続端子のそれぞれは、
前記固定ラインに直交する方向に沿って横断面の長手方向が設定されている、
請求項1に記載の回路
組立体。
【請求項3】
前記部品本体は、
前記部品ケースに収容され、電荷を蓄える蓄電部と、前記蓄電部に設けられた前記第1接続端子および前記第2接続端子とを含むコンデンサである、
請求項1または2に記載の回路
組立体。
【請求項4】
前記第1固定部および前記第2固定部は、
板厚方向に沿って前記基板と直交する方向における位置が相違している、
請求項
1から3のいずれか一項に記載の回路組立体。
【請求項5】
前記第1固定部および前記第2固定部の少なくとも一方は、
前記第1接続端子および前記第2接続端子が接続される前記
基板を介さずに前記回路ケースに固定されている、
請求項
1から4のいずれか一項に記載の回路組立体。
【請求項6】
前記部品本体は、
前記基板が前記回路ケースに固定されている箇所の付近に位置している、
請求項
1から5のいずれか一項に記載の回路組立体。
【請求項7】
車両に搭載される車両用電動圧縮機であって、
請求項
1から
6のいずれか一項に記載の回路組立体と、
前記回路組立体から駆動電流が供給されるモータと、
前記モータから伝達される動力により流体を圧縮する圧縮機構と、を備える、車両用電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ等の回路部品の耐振固定構造を備えた回路組立体、および回路部品を有する回路組立体を備えた車両用電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の空気調和機を構成する電動圧縮機は、モータを駆動制御するための回路を有する回路組立体を備えている。回路組立体は、種々の回路部品と、それらの回路部品が接続される基板と、回路部品および基板を収容する回路ケースとを備えている。回路ケースは、電動圧縮機のハウジングに設けられている。
回路部品には、スイッチング素子やIC(Integrated Circuit)チップ等の比較的小型のものと、ノイズカット用のコンデンサおよびコイル等の比較的大型のものとがある。
特許文献1では、回路ケース内でコンデンサが基板の下方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に設けられている回路部品は、エンジンの振動や路面振動等の影響を受ける厳しい振動環境下にある。
本発明は、そうした厳しい振動環境下にあっても、回路部品や基板の破損を防止するために十分な耐振固定構造を備えた回路組立体、および車両用電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、部品本体および部品ケースを含む回路部品であって、部品本体は、一対の第1接続端子および第2接続端子を備え、部品ケースは、部品本体を収容する収容部と、収容部の両側に設けられる第1固定部および第2固定部と、を備え、第1接続端子は、第2固定部よりも第1固定部に近接して配置され、第2接続端子は、第1固定部よりも第2固定部に近接して配置され、第1接続端子および第2接続端子は、第1固定部と第2固定部とを結ぶ固定ラインを間に挟んで対向し、それぞれの位置で部品本体から側方へと突出して、接続対象に向けて延びている。
【0006】
本発明の回路部品において、第1接続端子および第2接続端子のそれぞれは、固定ラインに直交する方向に沿って横断面の長手方向が設定されていることが好ましい。
【0007】
本発明の回路部品において、部品本体は、部品ケースに収容され、電荷を蓄える蓄電部と、蓄電部に設けられた第1接続端子および第2接続端子とを含むコンデンサであることが好ましい。
【0008】
本発明の基板は、上述の回路部品を備える。
【0009】
本発明の回路組立体は、上述の回路部品と、回路部品が接続される基板と、を備える。
【0010】
本発明の回路組立体において、第1固定部および第2固定部は、板厚方向に沿って基板と直交する方向における位置が相違していることが好ましい。
【0011】
本発明の回路組立体は、基板および回路部品を収容する回路ケースを備えることが好ましい。
ここで、第1固定部および第2固定部の少なくとも一方は、第1接続端子および第2接続端子が接続される基板を介さずに回路ケースに固定されていることが好ましい。また、部品本体は、基板が回路ケースに固定されている箇所の付近に位置していることが好ましい。
【0012】
本発明は、車両に搭載される車両用電動圧縮機であって、上述の回路組立体と、回路組立体から駆動電流が供給されるモータと、モータから伝達される動力により流体を圧縮する圧縮機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定部の近傍で接続端子が基板に固定されており、接続端子が基板に固定されている位置で回路部品の振動振幅が小さい。そのため、接続端子や基板に過大な負荷が加えられないので、接続端子や基板の破損を防ぐことができる。
また、第1固定部と第2固定部とを結ぶ固定ラインを間に挟むように一対の接続端子を配置したり、第1固定部の高さと第2固定部の高さとを相違させたりすることにより、剛性を高めて、回路部品や基板の破損をより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用電動圧縮機を示す縦断面図である。
【
図2】回路ケース、基板、およびコンデンサを示す斜視図である。
【
図3】回路ケースに固定されたコンデンサを示す斜視図である。
【
図9】(a)および(b)は、本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1に示す電動圧縮機10は、モータ11と、圧縮機構12と、モータ11および圧縮機構12を収容するハウジング13と、モータ11を駆動制御する回路を有する回路組立体20とを備えている。
電動圧縮機10は、車両に搭載される空気調和機を構成している。
【0016】
モータ11は、ハウジング13に固定されるステータ111と、ステータ111に対して回転されるロータ112とを備えている。
ロータ112にはシャフト14が結合されている。
【0017】
圧縮機構12は、ハウジング13に固定される固定スクロール121と、固定スクロール121に対して公転旋回される旋回スクロール122とを備えている。
旋回スクロール122は、シャフト14の端部に設けられた偏心ピン141に結合されている。
【0018】
ハウジング13は、シャフト14に沿った軸線を有する円筒状に形成されている。
ハウジング13は、図示しないブラケットにより車両のエンジンに取り付けられる。このときシャフト14は水平に配置されている。
【0019】
電動圧縮機10は、次のように動作する。
回路組立体20によりモータ11のステータ111に三相の駆動電流を供給すると、モータ11が駆動され、モータ11が出力する回転駆動力によりシャフト14が回転する。シャフト14の回転が伝達されることで旋回スクロール122が旋回されると、固定スクロール121と旋回スクロール122との間の圧縮室にハウジング13内の冷媒が吸入される。圧縮機構12は、旋回スクロール122の旋回に伴う圧縮室の容積減少により冷媒を圧縮し、図示しない冷媒回路へと吐出する。
【0020】
次に、回路組立体20の構成について説明する。
回路組立体20は、
図2に示すように、基板21と、基板21に接続されるコンデンサ30等の回路部品と、基板21およびコンデンサ30を収容する回路ケース20Cとを備えている。
回路組立体20は、ハウジング13に一体化される(
図1)。
【0021】
回路ケース20Cは、ハウジング13の内部と回路組立体20の内部とを仕切る隔壁22(
図1、
図3)と、隔壁22の周縁から立ち上がる周壁23と、ハウジング13に締結される固定部24と、図示しない蓋とを備えている。
回路ケース20Cは、ハウジング13の一端側に形成された開口部130(
図1)を塞いでいる。開口部130の周縁部と回路ケース20Cとの間は、図示しないシール部材により封止されている。
【0022】
隔壁22には、複数のボス25,26(
図3)が立設されている。ボス25,26には、基板21やコンデンサ30が締結される。
周壁23は、基板21およびコンデンサ30を包囲している。周壁23の先端部には、図示しない蓋が固定される。
回路ケース20Cの内側には、
図2に示すように、ハウジング13(
図1)の形状に対応した円筒状のスペース201と、スペース201に連続した矩形状のスペース202とからなる収容空間が存在している。
コンデンサ30の設置に必要な領域を除いて回路ケース20C内の領域のほぼ全域に亘り、基板21が配置されている。
基板21における複数の箇所が、回路ケース20Cのボス26(
図3)にねじで固定されている。ボス26に固定される基板21の固定箇所は、コンデンサ30の付近にも存在する。
図4に、
図3のボス26に対応する基板21の孔211を示す。
【0023】
基板21に設けられた種々の回路素子27(そのうち一部のみを
図2に示す)と、コンデンサ30とを含んで、モータ11をインバータ制御する駆動回路が構成されている。
駆動回路は、図示しないバッテリから供給される直流を昇圧し、スイッチングすることにより、モータ11に供給される三相交流を生成して出力する。
【0024】
スイッチング素子は、
図2に示す基板21の下に隠れている。スイッチング素子は、放熱のため、ハウジング13内の冷媒に接触する隔壁22に熱伝導可能に配置されることが好ましい。スイッチング素子を隔壁22にねじ等で固定することもできる。
【0025】
コンデンサ30は、スイッチングにより生じたノイズを低減するために用いられている。コンデンサ30に加えて、コイルが用いられていてもよい。
コンデンサ30のように、基板21に設けられる回路素子27と比べて大型で重量も大きい回路部品は、回路ケース20Cに固定される。
【0026】
コンデンサ30は、回路ケース20C内の矩形状のスペース202の一角に配置されており、回路ケース20Cのボス25(
図3)に固定されている。
コンデンサ30は、回路ケース20Cに機械的に固定されるとともに、基板21に電気的に接続される。
コンデンサ30の他にも、基板21に実装されない回路部品があれば、当該回路部品を基板21の下に配置し、回路ケース20Cに固定することができる。
【0027】
電動圧縮機10が車両に搭載されているため、回路組立体20は、特に厳しい振動環境下にある。
振動源としては、車両のエンジン、路面の凹凸に起因する振動、電気自動車やハイブリッド自動車に装備されている走行用のモータ、エンジンやモータ等の動力源から出力される駆動力を伝達して車輪を駆動する駆動系統、そして電動圧縮機10の圧縮機構12等が挙げられる。
そういった振動源から伝わる振動により、基板21やコンデンサ30、回路ケース20Cがそれぞれ加振されても、基板21やコンデンサ30が破損しないようにする必要がある。
【0028】
本実施形態は、コンデンサ30の耐振性を十分に確保するため、以下に説明する耐振固定構造を備えている。
まず、
図5~
図7を参照し、コンデンサ30の構成を説明する。
コンデンサ30は、部品本体31と、部品本体31を収容するコンデンサケース40とを備えている。
【0029】
部品本体31は、電荷を蓄える蓄電部31A(
図6)と、蓄電部31Aを被覆する略直方体状の樹脂モールド31B(
図5)と、蓄電部31Aに設けられた2つの端子部材32,33(
図6)とを備えている。
【0030】
端子部材32,33(
図6)は、板金材料から打ち抜き、折り曲げることによって形成されている。これらの端子部材32,33は、矩形状の横断面を呈する。
端子部材32は、蓄電部31Aの内部から取り出されたプラス電極(またはマイナス電極)であり、基板21に接続される接続端子32Aと、駆動回路を構成する図示しない要素に接続される端子32Bとを有している。
端子部材33は、蓄電部31Aの内部から取り出されたマイナス電極(またはプラス電極)であり、基板21に接続される接続端子33Aと、駆動回路を構成する図示しない要素に接続される端子33Bとを有している。
【0031】
端子部材32は、
図5および
図6に示すように、コンデンサ30の幅方向D1の一端側から部品本体31の底面31Cを経由して他端側まで引き出され、端子部材33は、端子部材32とは逆に、部品本体31の他端側から、部品本体31の底面31Cを経由して一端側まで引き出されている。
図7に示すように、部品本体31の一端側には一対の接続端子32A,33Aが位置しており、部品本体31の他端側には一対の端子32B,33Bが位置している。
【0032】
接続端子32A,33Aは、
図5および
図6に示すように、基板21の直下で部品本体31から側方へと突出している突出部P1と、突出部P1に連続し、基板21に向けて延びている先端部P2とをそれぞれ有している。先端部P2は、突出部P1に対して屈曲している。
【0033】
端子32B,33Bは、
図5および
図6に示すように、基板21が無いところで部品本体31から側方へと突出しており、
図7に示すように円環状に形成されている。
【0034】
コンデンサケース40は、
図7に示すように、蓄電部31Aおよび樹脂モールド31Bを開口40Bから収容する収容部40Aと、収容部40Aの両側に設けられる第1固定部41および第2固定部42とを備えている。
コンデンサケース40は、絶縁性を有する樹脂から一体成形されている。
収容部40Aは、略直方体の箱状に形成されている。
収容部40A内に、蓄電部31Aおよび樹脂モールド31Bが嵌め込まれるか、あるいは圧入される。
【0035】
コンデンサケース40には、接続端子32A,33Aを保持する保持部43,43と、端子32B,33Bを保持する保持部44,44とが形成されている。
端子32B,33Bは、保持部44に挿入される金属製のねじ(図示しない)により、端子32B,33Bのそれぞれに重ねられる他の円環状端子(図示しない)と接触導通される。
【0036】
接続端子32A,33Aの各々の先端部P2は、
図7に示すように、保持部43から突出している。
各先端部P2は、基板21(
図4)に施された端子パターン(図示しない)に電気的に接続されるとともに、基板21に機械的に固定される。
本実施形態の先端部P2は、基板21に形成された孔210を介して基板21を厚み方向に貫通し、先端部P2と基板21の端子パターンとが図示しないはんだにより接合されることで基板21に機械的に固定されるとともに電気的に接続される。
【0037】
第1固定部41および第2固定部42は、それぞれ、回路ケース20Cのボス25(
図3)にねじ28で強固に固定される。第1固定部41および第2固定部42により、部品本体31が両側で回路ケース20Cに固定される。第1固定部41および第2固定部42の各々には、ねじ28が挿入される孔が形成されている。
第1固定部41および第2固定部42は、部品本体31の重心位置を間に挟んで部品本体31を両持ち支持している。
【0038】
図3に示すように、第1固定部41とボス25との間に基板21は介在していない。第2固定部42とボス25との間も同様である。つまり、これら第1固定部41および第2固定部42は、基板21を介さずに回路ケース20Cに固定されている。
本実施形態では、第1、第2固定部41,42が基板21と共締めされていないため、第1、第2固定部41,42には基板21の振動が入力されない。そのため、基板21からコンデンサ30への振動の入力が抑制されるので、コンデンサ30と基板21との相対振動による接続端子32A,33Aや第1、第2固定部41,42、基板21の破損防止に寄与できる。
【0039】
第1固定部41は、
図7に示すように、コンデンサ30の幅方向D1の一端側に位置し、第2固定部42は、コンデンサ30の幅方向D1の他端側に位置している。
第1固定部41は、接続端子32A,33Aを保持する保持部43,43の間に位置し、かつ、コンデンサ30の側面31Dから側方へと保持部43,43を超える位置まで突出している。
この第1固定部41の近傍には、接続端子32A,33Aが位置している。
【0040】
第2固定部42は、端子32B,33Bを保持する保持部44,44の間に位置し、かつ、コンデンサ30の側面31Eから側方へと保持部44,44を超える位置まで突出している。
この第2固定部42の近傍には、端子32B,33Bが位置している。
【0041】
本実施形態の基本的な特徴は、回路ケース20Cに固定された第1固定部41の近傍で接続端子32A,33Aが基板21に固定されていることである。これは、接続端子32A,33Aの構成に関係している。
図8に示すように、典型的な接続端子82A,83Aは、基板21に対向するコンデンサ80の上端から上方に向けて直線的に突出している。この場合は、回路ケース(図示しない)に固定された固定部801,802から遠い位置で接続端子82A,83Aが基板21に固定されることとなる。
これに対して、本実施形態(
図5)の接続端子32A,33Aのように、部品本体31から側方へと引き出されていると、部品本体31の側方に位置する第1固定部41の近傍で接続端子32A,33Aを基板21に固定することが可能である。
【0042】
ところで、部品本体31から側方へと引き出されていると、接続端子32A,33Aがコンデンサ30の上方にはなく、コンデンサ30の上方にはんだ付けするためのスペースが不要であるため、回路ケース20C内の高さの上限(蓋の位置)までコンデンサ30の容積をとれる。本実施形態のコンデンサ30の上端部は、
図5に示すように、隣接する基板21から上方へと突出している。
【0043】
接続端子32A,33Aは、第1固定部41の近傍で、かつ、
図7に示すように、第1固定部41と第2固定部42とを結ぶライン(以下、固定ラインL1)を間に挟み、固定ラインL1に対して対称に配置されている。
【0044】
また、
図5に示すように、第1固定部41および第2固定部42は、板厚方向に沿って基板21と直交する方向(高さ方向)における位置が相違している。
具体的には、基板21の裏側(隔壁22側)に位置している第1固定部41に対して、基板21に隠されずに露出している第2固定部42の方が高い位置にある。第1固定部41の高さと第2固定部42の高さとの差をΔHで示している。
第1固定部41の高さは、接続端子32A,33Aの突出部P1の高さとほぼ同様である。
第2固定部42の高さは、基板21の高さとほぼ同様である。
なお、本実施形態とは異なり、第2固定部42よりも第1固定部41の方が高い位置にあったとしても、ねじ28を固定できる限り、許容される。
【0045】
本実施形態の回路組立体20による作用効果を説明する。
まず、コンデンサ30の振動の状態について述べる。
コンデンサ30が第1固定部41および第2固定部42により側方で固定されていると、第1、第2固定部41,42から遠いコンデンサ30の中央部付近では、固定されている第1、第2固定部41,42の位置に比べて、コンデンサ30の振動振幅が大きい。これは、
図8に示す典型例のコンデンサ80でも同様である。
【0046】
典型例(
図8)では、固定部801,802から遠いコンデンサ80の中央部で接続端子82A,83Aが基板21に固定されている。接続端子82A,83Aが基板21に固定されている位置では、コンデンサ80の振動振幅が大きいため(矢印参照)、基板21とコンデンサ80との間の相対的な変位が大きい。
【0047】
一方、本実施形態(
図5)では、第1固定部41および第2固定部42のうち第1固定部41の近傍で接続端子32A,33Aが基板21に固定されている。接続端子32A,33Aが基板21に固定されている位置では、コンデンサ30の振動振幅が小さいため、基板21とコンデンサ30との相対的な変位が小さい。そのため、接続端子32A,33Aや基板21に過大な負荷が加えられないので、接続端子32A,33Aや基板21の破損を防ぐことができる。
したがって、本実施形態によれば、厳しい振動環境下にあっても、コンデンサ30や基板21の破損を防止するために十分な耐振性を確保することができる。
【0048】
さらに、本実施形態は、回路ケース20C内におけるコンデンサ30の位置に関する構成によっても、耐振性を向上させている。
コンデンサ30は、回路ケース20C内において基板21が固定されているボス26の付近に配置されている(
図3)。そうすると、固定されているため振動振幅が小さい基板21の部位に、コンデンサ30の接続端子32A,33Aが固定されているので、コンデンサ30と基板21との相対振動による接続端子32A,33Aや基板21、第1固定部41および第2固定部42の破損防止に寄与できる。
【0049】
以上に加えて、耐振性を向上させるため、次に述べる構成が採用されていることが好ましい。
以下、本実施形態で採用されている構成(1)~(3)を列挙する。
(1)まず、
図7に示すように、第1固定部41と第2固定部42とを結ぶ固定ラインL1を間に挟むように接続端子32A,33Aが配置されており、固定ラインL1の両側で接続端子32A,33Aが基板21に固定されているので、固定ラインL1の軸周りにコンデンサ30が倒れる方向(矢印参照)の剛性が向上する。そのため、剛性に対応するバネ定数Kを向上させ、共振を避けるために固有振動数fを増加させることができる(下記の基本式参照)。
固定ラインL1の軸周りに倒れる方向の剛性を向上させるため、固定ラインL1とは直交する方向に沿って接続端子32A,33Aが配置されることが最も好ましい。
コンデンサ30が倒れる方向の剛性が向上することで、第1、第2固定部41,42や接続端子32A,33A、基板21の破損防止に寄与できる。
【0050】
【0051】
(2)次に、本実施形態の接続端子32A,33Aは、矩形状の横断面を呈するところ、
図7に示すように、横断面の長辺が、固定ラインL1と直交する方向D2に沿うように配置されている。つまり、接続端子32A,33Aの横断面の長手方向は、固定ラインL1に直交する方向に沿って設定されている。
これにより、固定ラインL1の軸周りに関し、接続端子32A,33Aの断面二次モーメントが増大するので、接続端子32A,33Aを有するコンデンサ30の剛性が向上する。
【0052】
(3)
図5に示すように、第1固定部41および第2固定部42によりコンデンサ30が異なる高さで回路ケース20Cに固定されていることによっても、コンデンサ30が倒れる方向の剛性が向上する。
さらに、第1固定部41および第2固定部42がコンデンサ30の重心Xを間に挟んで配置されていることが好ましい。そうすると、これらの第1固定部41および第2固定部42により重心Xに働いた加振力をバランスよく受け持つことができ、剛性を向上させることができる。
【0053】
以上の構成(1)~(3)によれば、固定部の数を増やしたり固定部41,42の板厚増加により剛性を向上させたりしなくても、コンデンサ30が倒れる方向の剛性を高めることができる。
上記の構成(1)~(3)から適宜に選択される1つ以上を採用することができる。
【0054】
図9(a)は、本発明の変形例を示している。
図9(a)では、第1固定部41の近傍に接続端子32Aが位置し、第2固定部42の近傍に接続端子33Aが位置している。そして、接続端子32Aの先端部P2が第1固定部41の近傍で基板21に固定され、接続端子33Aの先端部P2が第2固定部42の近傍で基板21に固定されている。
また、上記実施形態と同様に、接続端子32A,33Aが、固定ラインL1に交差する方向に沿って配置されている。
図9(a)に示す構成は、回路ケース20Cに固定された第1固定部41の近傍で接続端子32Aが基板21に固定され、同じく回路ケース20Cに固定された第2固定部42の近傍で接続端子33Aが基板21に固定されている基本的特徴を備えている。
この基本的特徴により、上記実施形態と同様に、接続端子32A,33Aが基板21に固定されている位置では、コンデンサ30の振動振幅が小さいため、基板21とコンデンサ30との相対的な変位が小さい。そのため、接続端子32A,33Aや基板21に過大な負荷が加えられないので、接続端子32A,33Aや基板21の破損を防ぐことができる。
【0055】
また、
図9(a)では、接続端子32Aおよび接続端子33Aがコンデンサ30の重心Xを間に挟んで配置されている。第1固定部41および第2固定部42も同様である。
そうすると、第1固定部41および接続端子32Aと、第2固定部42および接続端子33Aとによって、重心Xに働いた加振力をバランスよく受け持つことができ、剛性を向上させることができる。
さらに、
図9(a)および(b)に示すように、上述した(1)~(3)の構成を適用することにより、倒れる方向のコンデンサ30の剛性を向上させることが好ましい。
【0056】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
回路ケース20C内におけるコンデンサ30の位置は上記実施形態に限られず、コンデンサ30の全体が基板21の下に配置されていてもよい。その場合、第1固定部41および第2固定部42の両方が、基板21の一面21A(
図5)と隔壁22との間に配置されている。
【0057】
また、本発明において、第1固定部41および第2固定部42の一方または両方が、同じねじ28によって基板21と共に回路ケース20Cのボスに固定されることも許容される。
【0058】
コンデンサ30から側方へと引き出されて基板21に固定される接続端子32A,33Aの数は、特に限定されない。1つ以上の接続端子を備えていて、接続端子が固定部の近傍で基板に固定されている限り、本発明の回路部品に包含される。
また、固定部の数も限定されてない。第1固定部41および第2固定部42以外に、部品本体31を回路ケース20Cに固定する他の固定部を追加することも許容される。
【0059】
接続端子を基板21に固定および導通する方法は、はんだ付けに限らない。例えば、接続端子に形成された圧入部を基板21の孔内に圧入することにより、接続端子を基板21に固定および導通することができる。
【0060】
本発明の電動圧縮機が備える圧縮機構の種類や、モータの種類は問わない。
本発明の回路組立体が備える回路部品は、コンデンサに限らず、例えば、チョークコイル等であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 電動圧縮機
11 モータ
12 圧縮機構
13 ハウジング
14 シャフト
20 回路組立体
20C 回路ケース(ケース)
21 基板
22 隔壁
23 周壁
24 固定部
25 ボス
26 ボス
27 回路素子
28 ねじ
30 コンデンサ(回路部品)
31 部品本体
31A 蓄電部
31B 樹脂モールド
31C 底面
31D 側面
31E 側面
32 端子部材
32A 接続端子
32B 端子
33 端子部材
33A 接続端子
33B 端子
40 コンデンサケース
40A 収容部
40B 開口
41 第1固定部
42 第2固定部
43 保持部
44 保持部
80 コンデンサ
82A,83A 接続端子
111 ステータ
112 ロータ
121 固定スクロール
122 旋回スクロール
130 開口部
201 スペース
202 スペース
210 孔
801,802 固定部
D1 幅方向
D2 方向
L1 固定ライン
P1 突出部
P2 先端部
X 重心