(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】圧迫ラップ内に埋め込まれたグロメットにスナップイン式に取り付けるための可撓性振動モジュール
(51)【国際特許分類】
A61H 23/02 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
A61H23/02 370
A61H23/02 330
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020106736
(22)【出願日】2020-06-22
(62)【分割の表示】P 2018227892の分割
【原出願日】2018-12-05
【審査請求日】2020-06-25
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518432377
【氏名又は名称】ブラウンメド,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン イー.ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ジョセフ ブレトン
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0175187(US,A1)
【文献】特開2016-209118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046579(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0013610(US,A1)
【文献】特表2015-504321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを有する振動モジュールであって、
前記ハウジングが整形外科用ラップに取り付けるための手段を含む、振動モジュールと、
前記ハウジング内にオン/オフスイッチを有する充電式電池と、
前記ハウジングから外方へ放射状に広がる複数の可撓性アームであって、
前記可撓性アームがそれぞれ前記充電式電池に電気的に接続されたコインモー
タで終端する、複数の可撓性アームと
を備える振動パッド。
【請求項2】
前記充電式電池が、リチウムイオン電池である、請求項1に記載の振動パッド。
【請求項3】
前記ハウジングが、前記リチウムイオン電池及び前記コインモータに電気的に接続されたプリント回路基板を含む、請求項2に記載の振動パッド。
【請求項4】
前記コインモータ、前記充電式電池、及び前記プリント回路基板を覆うようにともに固定された上部又は頂部パッド部分及び底部パッド部分を有する、請求項3に記載の振動パッド。
【請求項5】
前記オン/オフスイッチが、高周波振動設定、低振動周波数設定、及びパルス設定を有する、請求項1に記載の振動パッド。
【請求項6】
前記複数の可撓性アームが、振動を伝達することが可能なシリコーン材料である、請求項1に記載の振動パッド。
【請求項7】
前記コインモータが、前記可撓性アーム内に埋め込まれており、テキスチャ付きの表面である底面を有する、請求項1に記載の振動パッド。
【請求項8】
前記振動パッドは、前記頂部パッド部分を有し、
前記頂部パッド部分が、可撓性シリコーンポリマーである、請求項4に記載の振動パッド。
【請求項9】
前記複数の可撓性アームは、6つの可撓性アームを有する、請求項1に記載の振動パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動パッド又はモジュール、及びパッドに解放可能に取り付けるための圧迫ラップに関する。どちらも、痛み、炎症、又は外傷のある筋肉及び関節の振動療法のために設計される。
【背景技術】
【0002】
筋肉及び関節のための振動療法及び圧迫ラップはどちらもかねてから存在し、どちらも治療上ある程度成功して使用されてきた。筋肉及び関節のための利用可能なマッサージデバイスは存在するが、その成功又は失敗は、それらの有効性の組合せ、すなわちラップの有効性と振動療法の有効性との両方に大きく依存する。それぞれ他方に影響を及ぼし、集合的に当該デバイス/ラップの治療上の成功に影響を及ぼす。
【0003】
振動誘起モジュールの小型化に伴い、筋肉及び関節に振動及び/又は脈動を効果的に伝える振動モジュール及びラップをさらに創造的に開発する能力が著しく増大している。振動ラップ及び/又はグローブの例は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、本出願の譲受人に譲渡されて本出願の権利者が所有する2017年10月3日発行のブラウン(Brown)らの米国特許第9,775,769号を参照されたい。ブラウン(Brown)の米国特許‘769は、特に、手足の指をマッサージする矯正用圧迫グローブに関する。この矯正用圧迫グローブは、充電式電池を有するコインモータを使用し、このユニットは、伸縮自在の圧迫グローブ内に埋め込まれている。振動膝用ラップの例は、膝蓋骨を取り囲む振動モータを利用する圧迫ラップで膝をマッサージするためのウォルドン(Waldon)の米国特許第8,753,299号に見ることができる。
【0004】
関節が多くの異なる向きに屈曲するのにかかわらずラップ内の固定位置で振動モータを保持することは、多少の困難を伴う。すなわち、振動の有効性を高めるために、コインモータを筋肉又は関節近くに正しい向きで並置する必要がある。
【0005】
上記の理由のため、たとえばアスリートの動いている関節とともに屈曲する振動モジュールを製作するために、労力が払われてきた。これに関しては、2016年4月7日に公開されたPCT出願国際公開WO2016/051414A1を参照されたい。対応する米国出願の対応する公開、又はより正確には補正された公開は、2016年10月20日に公開された米国特許出願第2016/0302996号である。同出願は、ライナ内に配置されたとき、柔軟な着用可能モジュールを用いて高エネルギーの振動を筋肉及び柔組織内深くに送達する着用可能な振動デバイスに関する。この振動デバイスは、位置合わせラップの孔と一列に並べられ、次いでベルクロストラップをぴんと張って、着用可能モジュールを皮膚に当てて保持する。問題は、そのようなユニットが堅固に保持されず、特にアスリートの激しい運動によって、位置合わせが定位置から押し出される可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コインモータ技術及び圧迫ラップ技術が進化するとともに、アスリートが動いたときでも振動モータを着用者の皮膚に当ててしっかりと位置決めしたまま維持するように、パッドが手足又は関節とともに柔軟に曲がることを可能にする改善された可撓性モジュール又はパッドが特に必要であることが示されてきた。
【0007】
さらに、低周波から高周波の範囲での、必要と考えられる場合はさらにパルス変調での振動周波数の修正を可能にするユニットが必要とされている。
【0008】
さらに、両者がともに組み合わせられたとき、向きが一定に同じであることを保証し、したがってラップを患者に取り付けるたびに適切で一貫した向きが実現されるという保証を提供するように、圧迫ラップに取り付けることができる振動パッドが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主な目的は、上記の必要を満足させることである。特に、前述の特有の必要は、ユニット全体にわたって振動をそこから直接患者の柔組織又は関節へ伝達することが可能な可撓性ポリマーから作られた底部及び頂部ハウジングを有するユニットによって満足させられる。
【0010】
本発明で対処される重要なさらなる特徴は、標的とする痛み領域を取り囲む径方向パターンで配置されたモータのアレイの配置、及びラップに固定されたグロメット内へ振動パッドをプレス嵌めすることを含み、グロメットの向きによって振動モジュールが適切に配置されていることを保証する取付け技法である。したがって、一貫した正しい位置で安全が保証される。
【0011】
本発明は、調整可能な振動速度及び所望の場合は脈動する振動の能力を有する可撓性振動モジュールに関し、ユニットは、振動パッドの位置決めを適切に保証する可撓性グロメットに直接取り付けられるように適合される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】可撓性振動パッドをどのように脛骨用ラップのグロメット内へクリック嵌めすることができるかを示す分解図である。
【
図5】可撓性振動パッドの構成要素部分の上面斜視分解図である。
【
図6】可撓性振動パッドの構成要素部分の別の底面斜視分解図である。
【
図7】クリックイン式グロメットを有する腕用ラップの上面図である。
【
図8】クリックイン式グロメットを有する膝用ラップの上面図である。
【
図11】ラップのグロメット内にクリック嵌めされた可撓性振動パッドの側面図である。
【
図13】可撓性振動パッドが
図7の腕用ラップのグロメット内にクリック嵌めされた
図7の腕用ラップの底面図である。
【
図14】パッドが脛骨用ラップのグロメット内にクリック嵌めされた
図7の腕用ラップの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、振動パッド又はモジュール10の構造の詳細に関して、
図1~6とともに全体として示されている。
図7~14は、着用者の筋肉及び/又は関節に対する適切な位置を保証するために、振動モジュール10をラップ(wrap)内の定位置にスナップ嵌めすることを可能にするラップ及び可撓性グロメットを示す。
【0014】
振動モジュール10は、オン/オフスイッチ14を有するハウジング12と、ハウジング12から外方へ放射状に広がる複数の放射状可撓性アーム16、18、20、22、24、及び26とから構成される。アーム16、18、20、22、24、及び26の端部は、電気ワイアコネクタ40、42、44、46、48、及び50によってプリント回路基板(PCB)70に電気的に接続されたコインモータ28、30、32、34、36、及び38を収容し、リチウム電池72もまた、プリント回路基板70上の電気プラグイン75に接続される。モードスイッチ14(プッシュボタンオン/オフ)は、オン/オフスイッチ14が押された回数に応じて、周波数を低周波から高周波、振動パルスへ変更することを可能にする。
【0015】
振動コインモータは周知であり、様々な供給元から入手可能である。本明細書での使用に適した1例は、本発明者らの以前の米国特許第9,775,769(A)号に記載されているものであり、その適した供給者は、深セン市晶科発電子有限公司(Shenzhen Jingkefa Electronics Company Limited)であり、これらの振動モータに適した電池は、3.7ボルトのリチウムイオン電池などのリチウムイオン電池である。振動療法に適した周波数は周知であり、概して20~50Hzの範囲内であると記載されている。74、76、78、及び80で示す所望のLEDディスプレイもまた、ハウジング12内に収容することができ、使用モード及びオン/オフを示すために使用することができる。
【0016】
したがって、ユニットを動作させるために、オン/オフスイッチ14を押下することによって簡単に電源を入れ、次いで何回押すかによってモードを選択し、そのモードがLEDの74、76、78、及び80によって示される。
【0017】
振動パッド16、18、20、22、24、及び26の放射状アームは、可撓性材料、通常はシリコンポリマーなどの高分子材料から作られる。ハウジング12は、当業者にはよく知られている一般にTPEと呼ばれる熱可塑性エラストマ材料から作られる。
【0018】
図示のように、パッド自体は、好ましくは、同じ材料からなる二つの部分から作られ、その頂部60及び底部62は、コインモータ(28~38)及びそれらの電気ワイアコネクタ(40~50)を封入するように中心線の継ぎ目でともに接合される。
【0019】
頂部カバー60の構造は、オーバーモールドプロセスを利用して、可撓性シリコーンのカバーを剛性の内枠59に接合する。内枠59は、内部に収容された中央電子機器の移動又は損傷を防止し、またこれにより成形されたフレックスロック(FlexLOCK)(登録商標)チャネルに耐久性を与える。オーバーモールドを使用することで、剛性材料59をパッド設計に継ぎ目なく一体化しながら、それでもなお快適で柔軟な一体型の頂部カバー60を提供することが可能になる。
【0020】
頂部カバー60は、多段階成形プロセスによって得られるデュアル硬度で作製され、それにより噛合チャネルに対する堅固な固定及びPCBハウジングインターフェースの確実な嵌合が可能になる。多段階プロセスを使用することで、頂部ハウジングの特有の区間内の硬度及び屈曲性を制御することが可能になる。頂部カバーのアームは、80~85ショアA硬度のより低い硬度の材料からなり、パッドの中心部の85~90ショアAまで徐々に増大して、半剛性の中核構造を提供する。硬度が大きければ大きいほど、可撓性パッド10に構造及び形状記憶が提供される。硬質材料は、使用者の手足の方へ振動を反射するアイソレータとして作用する。硬質頂部カバー60は、内部のPCB70及び電池72を収容及び保護する。
【0021】
底部カバー62は、より低い硬度又は70~72ショアA硬度である。これらの薄い壁は、振動及び屈曲性を最大にする。持ち上がった表面を有する軟質材料が使用者の手足を把持し、使用者への振動の伝達を最大にする。また薄い壁により、小型の3.4V電源で40~45分の所望の実行時間をもたらす効率的な消費でコインモータによってもたらされるエネルギーを最大にすることが可能になる。
【0022】
モジュールアセンブリは、シリコーン適合接着剤とそれに伴う成形噛合チャネルとを使用して、追加のハードウェア又はアセンブリを必要とすることなく、衛生的な封止チャネルを可能にする。可撓性のシリコーン適合接着剤及び成形チャネルを使用することで、追加のハードウェア又はファスナから屈曲性を損失することなく、耐久性のあるアセンブリが可能になる。
【0023】
前述したように、可撓性振動モジュール10及びラップのこの組合せは、多くは圧迫ラップと呼ばれる様々な異なるラップとともに使用することができる。これは、たとえば膝用ラップ、肘用ラップ、ふくらはぎ又は脛骨用ラップ、足首又は足用ラップ、上腿用ラップ、下背用ラップ、手首用ラップ、及び肩用ラップと組み合わせて使用することができる。ラップは、たとえば
図7~14に示すスナップイン式グロメットを有する限り、非限定的な特徴である。特に、可撓性グロメット56は、
図11で振動モジュール10とスナップ嵌め関係にあり、
図12でハウジングを横断している状態で示されている。
図13は、振動モジュール底部の内側又は皮膚側を示し、スナップ嵌めされてすぐに巻き付けることができる関係になっている。
図14は頂部側を示し、ハウジング12の頂部だけが示されており、内部は、リード線80が示すように可撓性アーム16、18、20、22、24、及び26に対して点線の関係にある。
図11に示すように、ハウジング12は縁15を有し、縁15はグロメットにスナップ嵌めされてモジュールを定位置に保持する。可撓性グロメット56が可撓性の縁部又はスカート57を有するため、簡単に押し戻すことによってスナップ嵌めを外すこともできる。しかし、可撓性グロメット56は、振動モジュール10のハウジング12の頂部とスナップインスナップアウトの関係で望ましい向きの位置に正確に保持されなければならない。
【0024】
可撓性グロメット56のクリックイン式システムは、振動モジュール10の頂部ハウジング内の成形チャネルからなり、可撓性シリコーンのグロメットスカート57内へロックされる。可撓性グロメット56は、多種多様な布に縫合又は接合することができ、振動モジュールがブレース、ラップ、及び衣類に継ぎ目なく一体化されることを可能にする。グロメット56自体は非常に可撓性が高く、フィット性又は快適さに影響することなく、本体のほぼ理想的な任意の部分を形成するように屈曲及び伸展することが可能である。この「プレスロック(press to lock)」システムにより、本体の異なるラップ又は部分へ振動モジュールを迅速かつ容易に動かすことが可能になる。フレックスロック(FlexLOCK)グロメット56は、嵌合及び配置中に振動モジュール10を確実に定位置で保持して、使用者がパッドを治療区域に容易に取り付けることができることを確実にし、また使用中の移動を防止する。フレックスロック(FlexLOCK)グロメット56はまた、開いた貫通面を利用して、治療中にPCB70インターフェース及び充電ポートへのアクセスを可能にする。使用者は、モード及び電池寿命を容易に識別することができ、ユニットを取り外す必要なく調整を行うことができる。
【0025】
図7及び
図8に示すように、ラップの端部では、ラップを患者の手足で定位置に固定するために、ベルクロ(登録商標)ブランドタイプの典型的な面ファスナ82が使用される。
【0026】
実際の動作では、ユニットは次のように機能する。動作モジュール10、又はより正確にはそのハウジング12の頂部が、可撓性グロメット56を通って押し込まれて、スカート57内の定配置にスナップ嵌めされ、その結果、ラップ、たとえば腕用ラップ52及び膝用ラップ54に取外し可能に固定される。次いでラップは、手足に所望の位置で配置され、ストラップが巻き付けられてフックでしっかりと留められる。オン/オフボタン14が押されて、モードスイッチ74、76、78のうちの一つが選択され、振動が開始する。電池72は、充電レセプタクル75によって必要に応じて充電される。
【0027】
図3及び
図6に最もよく示すように、振動パッド62外面の底部には、患者の皮膚に対して定位置に保持することを助けるためのテキスチャが付けられている。
【0028】
グロメット56の取外し可能であるが確実な保持のため、ユニットは確実に保持されており、自由に回転したり定位置から動いたりすることはできない。したがって、本発明が少なくともその記載の目的のすべてを実現することが理解されよう。