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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】構造物の切断方法、及び、切断装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20220204BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20220204BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
E04G23/08 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020165145
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502345278
【氏名又は名称】株式会社誠和ダイア
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】谷内 健治
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝
(72)【発明者】
【氏名】田近 正春
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069529(JP,A)
【文献】特開2017-052223(JP,A)
【文献】特開2021-024226(JP,A)
【文献】特開平02-311603(JP,A)
【文献】特開昭63-151790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E01D 19/12
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリと従動プーリと切断時の支点となるガイド手段としての一方側プーリと切断時の支点となるガイド手段としての他方側プーリとに掛け渡されて、循環移動を行うことにより、接触する構造物の切断対象部位を切断可能なように構成された無端環状のワイヤーと、
駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させるワイヤーの駆動機構とを有し
ワイヤーの駆動機構により、駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させることによって、一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分に接触する構造物の切断対象部位を切断する切断装置を用い構造物の切断方法において、
ガイド手段としての一方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段と、ガイド手段としての他方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段とを設け、
一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分で構造物の切断対象部位を切断中に、動力付与手段を操作して、ガイド手段をワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させながら構造物を切断することを特徴とする構造物の切断方法。
【請求項2】
駆動プーリと従動プーリと切断時の支点となるガイド手段としての一方側プーリと切断時の支点となるガイド手段としての他方側プーリとに掛け渡されて、循環移動を行うことにより、接触する構造物の切断対象部位を切断可能なように構成された無端環状のワイヤーと、
駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させるワイヤーの駆動機構とを備え
ワイヤーの駆動機構により、駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させることによって、一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分に接触する構造物の切断対象部位を切断する切断装置において、
一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分で構造物の切断対象部位を切断中に一方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段と、
一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分で構造物の切断対象部位を切断中に他方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段とを備えたことを特徴とする切断装置。
【請求項3】
構造物は、鉄筋コンクリート製の床版であり、
切断対象部位は、床版における桁の上面との境界近傍部分であり、
桁の延長方向に沿って延長して桁と平行に対向するように、左右のガイドレールが配置され、
左右のガイドレールのうちの一方のガイドレールにガイド手段としての一方側プーリがガイドレールに沿って移動可能なように取付けられて、当該一方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段としてのシリンダを備えるとともに、
左右のガイドレールのうちの他方のガイドレールにガイド手段としての他方側プーリがガイドレールに移動可能なように取付けられて、当該他方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段としてのシリンダを備えたことを特徴とする請求項2に記載の切断装置。
【請求項4】
ガイドレールに沿って移動可能となった2つのスライダと、
ガイド手段としてのプーリに掛けられるワイヤーの下方への移動を規制する規制部材としてのローラとを備え、
ガイド手段としてのプーリが一方のスライダに取付けられ、
規制部材としてのローラの一端部が一方のスライダに取付けられるとともに、ローラの他端部が他方のスライダに取付けられ、
シリンダの一端側が一方のスライダに取付けられて、かつ、シリンダの他端側がガイドレールに取付けられたことを特徴とする請求項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだビーズを一定間隔に装着した無端環状のダイヤモンドワイヤー等のワイヤーを備えが切断装置を用いて構造物を切断する際の切断方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、橋梁の構造物としてのコンクリート床版(以下、床版という)を更新する工事においては、現存の桁を再利用することから、桁の上面に取付けられた古い床版を切断して撤去し、新しい床版と桁とを接合するようにしている。
当該橋梁の床版を更新する際の解体工事においては、桁の上面に取付けられた床版と桁の上面との境界近傍部分を、ダイヤモンドワイヤー等のワイヤーを備えた切断装置を用いて切断する切断方法(ワイヤーソー工法)が知られている。
例えば、当該切断装置を床版の下面側に設置して切断する方法(特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-145668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の切断装置を使用した切断方法では、ワイヤーによる構造物の切断位置がワイヤーの切断作業時においてワイヤーの支点となるプーリの位置から遠く離れている、ワイヤーの長さが長い、ワイヤーが掛け渡されるプーリの数が多い等の要因により、切断時においてワイヤー全体に必要とされる良好なテンション(張力)が維持されず、ワイヤーにかかるテンションが不安定となって、不安定な切断動作となってしまうことがあった。例えば、切断時にワイヤーが弛緩して(たるんで)切断面が波打つような切断面となってしまうことがあった。
本発明は、ワイヤーの切断作業時においてワイヤー全体にかかるテンションを調整できるようにして、良好な切断動作を実現可能とした、構造物の切断方法、及び、切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る構造物の切断方法は、駆動プーリと従動プーリと切断時の支点となるガイド手段としての一方側プーリと切断時の支点となるガイド手段としての他方側プーリとに掛け渡されて、循環移動を行うことにより、接触する構造物の切断対象部位を切断可能なように構成された無端環状のワイヤーと、駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させるワイヤーの駆動機構とを有し、ワイヤーの駆動機構により、駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させることによって、一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分に接触する構造物の切断対象部位を切断する切断装置を用い構造物の切断方法において、ガイド手段としての一方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段と、ガイド手段としての他方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段とを設け、一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分で構造物の切断対象部位を切断中に、動力付与手段を操作して、ガイド手段をワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させながら構造物を切断することを特徴とするので、ワイヤーの切断作業時においてワイヤー全体にかかるテンションを調整でき、良好な切断動作を実現できるようになった。また、良好な切断動作を実現できるようになったため、切断作業に係る作業時間を短縮できるようになった。
また、本発明に係る切断装置は、駆動プーリと従動プーリと切断時の支点となるガイド手段としての一方側プーリと切断時の支点となるガイド手段としての他方側プーリとに掛け渡されて、循環移動を行うことにより、接触する構造物の切断対象部位を切断可能なように構成された無端環状のワイヤーと、駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させるワイヤーの駆動機構とを備え、ワイヤーの駆動機構により、駆動プーリを回転させるとともに、駆動プーリ及び従動プーリの両方又はいずれか一方を移動させてワイヤーを循環移動させることによって、一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分に接触する構造物の切断対象部位を切断する切断装置において、一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分で構造物の切断対象部位を切断中に一方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段と、一方側プーリと他方側プーリとの間のワイヤーの部分で構造物の切断対象部位を切断中に他方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段とを備えたことを特徴とする。
また、構造物は、鉄筋コンクリート製の床版であり、切断対象部位は、床版における桁の上面との境界近傍部分であり、桁の延長方向に沿って延長して桁と平行に対向するように、左右のガイドレールが配置され、左右のガイドレールのうちの一方のガイドレールにガイド手段としての一方側プーリがガイドレールに沿って移動可能なように取付けられて、当該一方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段としてのシリンダを備えるとともに、左右のガイドレールのうちの他方のガイドレールにガイド手段としての他方側プーリがガイドレールに移動可能なように取付けられて、当該他方側プーリをワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段としてのシリンダを備えたことを特徴とする。
また、ガイドレールに沿って移動可能となった2つのスライダと、ガイド手段としてのプーリに掛けられるワイヤーの下方への移動を規制する規制部材としてのローラとを備え、ガイド手段としてのプーリが一方のスライダに取付けられ、規制部材としてのローラの一端部が一方のスライダに取付けられるとともに、ローラの他端部が他方のスライダに取付けられ、シリンダの一端側が一方のスライダに取付けられて、かつ、シリンダの他端側がガイドレールに取付けられたことを特徴とする。
本発明に係る切断装置によれば、ワイヤーの切断作業時においてワイヤー全体にかかるテンションを調整できて、良好な切断動作を実現でき、切断作業に係る作業時間を短縮できる切断装置を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】床版の下面に取付けられた切断装置を上方から見た平面図。
図2図1のA方向から見た状態を示す図。
図3図1のB方向から見た場合のプーリの配置例を示す図。
図4】ワイヤー張力調整機構を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係る構造物の切断方法及び切断装置を、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は橋梁の床版を更新する際の解体工事において、床版の下面に取付けられた切断装置を上方から見た平面図であるが、床版3の切断対象部位3A及び桁2以外の部分の図示は省略してある。図2は、図1のA方向から見た状態において床版と切断装置との関係を示す断面図である。図3は、図1のB方向から見た状態においてプーリ群を構成する各プーリの配置を示す図である。図4は、ガイドレールとガイド手段と動力付与手段とが組み合わされて構成されたワイヤー張力調整機構を示す斜視図である。
尚、本明細書において、幅方向は、各図において「W」で示した方向、切断方向は、各図において「S」で示した方向、上下方向は、各図において「V」で示した方向と定義して説明する。
【0008】
実施形態に係る構造物の切断方法は、例えば、橋梁の床版を更新する際の解体工事において、図2に示すように、ワイヤー10を備えた切断装置(ワイヤーソー)1を用いて、桁2の上面2tに取付けられた構造物としての鉄筋コンクリート製の床版3と桁2の上面2tとの境界近傍における床版3の切断対象部位3Aを切断する方法(ワイヤーソー工法)である。
この場合、例えば、切断装置1を床版3の下面3uに取付けて切断装置1を床版3に支持させた状態でワイヤー10を駆動して、床版3における桁2の上面2tとの境界近傍部分である切断対象部位3Aを切断することにより、床版更新工事において、床版周辺の利用、すなわち、道路の利用を損なうことなく、かつ、再利用する桁2を損傷する可能性を低くできる。
尚、切断対象部位3Aは、例えば、桁2の上面2tの幅方向Wの両端側より上方に向けて傾斜する傾斜下面3utに形成された床版3のハンチ(テーパ)部分における桁2の上面2tとの境界近傍部分である。
また、床版3の下面3uは、ハンチ部分の傾斜下面3ut以外の下面である。
【0009】
切断装置1は、ワイヤー10と、ワイヤー10のガイド手段と、ワイヤー10の駆動装置と、ワイヤー10による床版3の切断中にガイド手段をワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段とを備える。
【0010】
ワイヤー10は、例えば、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだビーズを一定間隔に装着した無端環状のダイヤモンドワイヤーにより形成され、当該無端環状のワイヤー10が複数のプーリに掛け渡されて、循環移動を行うことにより、床版3の切断対象部位3Aに接触して当該切断対象部位3Aを切断可能なように構成されている。
【0011】
実施形態に係る切断装置1では、図1に示すように、切断対象部位3Aの幅方向Wの左右両側に配置された切断時の支点となる一方側のプーリ20と他方側のプーリ20と間のワイヤー10の部分を切断方向Sに移動させて、ワイヤー10を切断対象部位3Aに押し込むようにして切断対象部位3Aを切断する構成のものを例示している。
【0012】
即ち、切断装置1は、例えば図1図2に示すように、床版3の切断対象部位3Aの幅方向Wの左右両側における床版3の下面3u側において、桁2の延長方向に沿って延長して桁2と平行に対向するように、左右のガイドレール30,30が配置される。
そして、ワイヤー10を切断対象部位3Aに押し込む際の支点となるプーリ20,20(以下、支点プーリという)、及び、当該支点プーリ20,20に掛けられるワイヤー10の下方への移動を規制する規制部材としての例えばローラ40,40が、ガイドレール30,30に沿って移動可能なように、当該左右のガイドレール30,30にそれぞれ取付けられる。
さらに、ワイヤー10による床版3の切断中に当該支点プーリ20,20及びローラ40,40をワイヤー10の弛緩又は緊張を解消する方向に移動させる動力付与手段としての例えば油圧シリンダ50,50を備えている。
【0013】
つまり、切断装置1は、ガイドレール30に移動可能なように取付けられたガイド手段としての支点プーリ20及びローラ40と、当該ガイド手段としての支点プーリ20及びローラ40をガイドレールに沿って移動させる動力付与手段としての油圧シリンダ50とを備え、ワイヤー10による床版3の切断中にワイヤー10の弛緩又は緊張を解消するためにワイヤー10の張力を調整するワイヤー張力調整機構5を、床版3の切断対象部位3Aの幅方向Wの左右両側に備えた構成とした。
【0014】
即ち、ワイヤー張力調整機構5は、両端側が取付部材41及び床板3に打ち込まれたアンカーボルト39(図2参照)等によって床版3の下面3uに固定されたガイドレール30に、支点プーリ20及びローラ40がガイドレール30に沿って移動可能なように取付けられ、さらに、支点プーリ20及びローラ40をガイドレール30に沿って移動させるための油圧シリンダ50が設けられて構成されている。
【0015】
ワイヤー張力調整機構5は、より具体的には、例えば図4に示すように構成されている。
まず、ガイドレール30の外周囲を囲むように取付けられてガイドレール30に沿って移動可能となった筒状の2つのスライダ11,12を備える。
そして、支点プーリ20のプーリ20aを回転可能に取付けたプーリ中心軸20bが取付板13を介して一方のスライダ11に取付けられる。
また、ローラ40のローラ40aを回転可能に取付けたローラ中心軸40bの一端部が取付板14を介して一方のスライダ11に取付けられるとともに、ローラ中心軸40bの他端部が取付板15を介して他方のスライダ12に取付けられる。尚、ローラ中心軸40bの一端部が取付板14に設けられた軸受孔14aに回転可能に取付けられ、ローラ中心軸40bの他端部が取付板15に設けられた軸受孔15aに回転可能に取付けられた構成であってもよい。
さらに、油圧シリンダ50の一端側である例えばピストンロッド51の先端側51aが一方のスライダ11に取付板16を介して取付けられて、かつ、油圧シリンダ50の他端側である例えばシリンダチューブ52の底端側52aが取付板17を介して固定部としてのガイドレール30に取付けられた構成となっている。
【0016】
ワイヤー張力調整機構5によれば、ピストンロッド51を伸長させることで、支点プーリ20及びローラ40が切断方向Sに移動し、かつ、ピストンロッド51を縮退させることで、支点プーリ20及びローラ40を切断方向Sとは反対側に戻すことができる。
【0017】
従って、ワイヤー10の駆動装置を起動して、ワイヤー10を駆動させることにより、床版3の切断対象部位3Aを切断している際に、切断装置1の操作者、その他の現場作業者等が、切断状況を監視しながら、例えば、ワイヤー10に弛みが生じないように、ワイヤー張力調整機構5の油圧シリンダ50を操作して、ワイヤー10の張力をできるだけ一定に維持させることにより、良好な切断動作を実現できる。
【0018】
尚、ワイヤー10の駆動装置は、例えば、後述する駆動プーリや従動プーリの位置を制御することで、ワイヤー10の張力を調整する張力調整機能を有しているものもあるが、上述したように、ワイヤー10による構造物の切断位置が支点プーリ20,20の位置から遠く離れていたり、ワイヤー10の長さが長かったり、ワイヤー10が掛け渡されるプーリの数が多い等の様々な要因によって、ワイヤー10の駆動装置による張力調整機能だけでは、例えばワイヤー10に弛みが生じやすく、また、当該弛みを早急に解消できないことが多い。
そこで、実施形態に係る切断装置1では、ワイヤー張力調整機構5を設けたことにより、例えば、ワイヤー10に弛みが生じないように、油圧シリンダ50を操作して、逐次、ワイヤー10全体の張力を調整できて、ワイヤー10全体の張力を一定に維持できるようになるので、ワイヤー10による良好な切断動作を実現できるようになる。
また、実施形態に係る切断装置1では、ワイヤー10による良好な切断動作を実現できるようになるため、切断作業に係る作業時間を短縮できるようになった。
【0019】
また、実施形態に係る切断装置1によれば、ワイヤー張力調整機構5を備えているため、ワイヤー10の駆動装置が張力調整機能を備えていない場合でも、良好な切断動作を実現できるようになる。
【0020】
以下、ガイド手段、駆動装置、取付板14の一例を説明する。
【0021】
ガイド手段を構成するプーリ群としては、ワイヤー10を水平面上でガイドする水平方向配列プーリ群と、ワイヤー10を垂直面上でガイドする垂直方向配列プーリ群と、ワイヤー10を、水平面上から垂直面上、あるいは、垂直面上から水平面上に導く垂直水平方向変換プーリ群とを備える。
【0022】
水平方向配列プーリ群は、例えば図1に示すように、切断時において支点となる上述した2つの支点プーリ20,20とコーナ用プーリ21とで構成される。
【0023】
垂直方向配列プーリ群は、例えば図3に示すように、駆動プーリ22と、複数の方向変換用の従動プーリ23,24,25,26,27とを備える。
【0024】
垂直水平方向変換プーリ群は、ワイヤー10を水平面に導く際の方向を変更可能に構成された可変プーリ28と、ワイヤー10を水平面に導く際の方向が一定の固定プーリ29とを備える。
【0025】
即ち、ワイヤー10は、一方の支点プーリ20から、可変プーリ28、従動プーリ23,24,25,26、駆動プーリ22、従動プーリ23、固定プーリ29、他方の支点プーリ20に掛け渡されて構成される。
そして、ワイヤー10の駆動装置により、駆動プーリ22を回転させるとともに、駆動プーリ22及び従動プーリ25の両方又はいずれか一方を上下方向Vに移動させることにより、一方の支点プーリ20と他方の支点プーリ20との間のワイヤー10の部分が切断対象部位3Aに押し込まれて、切断対象部位3Aが切断されることになる。
【0026】
図3に示すように、駆動プーリ22は、上下方向に延長する第1垂直支持体35に上下方向に往復動可能なように取付けられている。この第1垂直支持体35は、例えば、上端に設けられた取付部材35Aを介して床版3の下面3uに取付けられる。
また、従動プーリ25は、上下方向に延長する第2垂直支持体36に上下方向に往復動可能なように取付けられている。この第2垂直支持体36は、例えば、上端に設けられた取付部材36Aを介して床版3の下面3uに取付けられる。
また、従動プーリ24は、従動プーリ25よりも上方に位置されるように図外の取付部材を介して第2垂直支持体36に取付けられている。
さらに、従動プーリ23,26,27は、例えば、水平支持体37の所定に位置にそれぞれ図外の取付部材を介して取付けられている。この水平支持体37は、例えば、第1垂直支持体35と第2垂直支持体36とに図外の連結部材を介して連結されている。
また、可変プーリ28、固定プーリ29は、例えば図外の取付部材を介して水平支持体37に取付けられている。
【0027】
ワイヤー10の駆動装置は、駆動プーリ22を回転させるとともに、駆動プーリ22を上下方向Vに直線往復移動させる駆動プーリ制御装置6と、従動プーリ25を上下方向Vに直線往復移動させる図外の従動プーリ制御装置とを備えて構成される。
駆動プーリ制御装置6は、図示しないが、例えば、駆動プーリ22の図外の中心軸に連結された回転駆動源としてのプーリ回転用モータ、駆動プーリ22の回転中心軸を回転可能に支持する軸受、駆動プーリ22を第1垂直支持体35に沿って上下方向Vに往復動させる直線移動機構とを備える。
【0028】
直線移動機構は、例えば、第1垂直支持体35側に設けられたラック34(図2参照)と駆動プーリ22側に設けられてラック34と噛み合う図外のピニオンとで構成されたラックピニオン機構と、ピニオンを回転させる駆動源としての図外のプーリ移動用モータ(例えば油圧モータ)と、当該プーリ移動用モータの制御回路等とを備えて構成される。
即ち、ピニオンを回転させることで、ラック34の延長方向、即ち、第1垂直支持体35の上下方向Vに駆動プーリ22が往復動可能となるように構成されている。
【0029】
従動プーリ制御装置は、従動プーリ25を第2垂直支持体36に沿って上下方向Vに往復動させる直線移動機構を備え、当該直線移動機構は、駆動プーリ制御装置6の直線移動機構と同様に構成される。
【0030】
取付部材41は、例えば、図4に示すように、床版3の下面3uにアンカーボルト39等で取付けられる床側取付部材43と、ガイドレール30に取付けられるガイドレール側取付部材44とを備え、ガイドレール側取付部材44が床側取付部材43の上下延長板43bに対して上下方向に移動可能となるように取付けられていることにより、ガイドレール30の上下位置高さを調整できてワイヤー張力調整機構5の上下位置を調整可能な上下位置調整機構を備えた構成となっている。
即ち、取付部材41は、ガイドレール30を床版3の下面3uに固定するとともに、ガイドレール30の上下位置を調整するための上下位置調整機構を備えた構成となっている。
【0031】
床側取付部材43は、アンカーボルト39等で床版3の下面3uに固定される固定板43aと、固定板43aの板面より当該板面と直交する下方に延長する上下延長板43bと、上下延長板43bの下端より上下延長板43bの板面と直交する方向に延長する落下防止板43cとを備える。
固定板43aにはアンカーボルト39を貫通させる貫通孔43dが形成され、上下延長板43bには上下延長板43bの延長方向に延長するように形成された長孔43eが形成され、落下防止板43cには上下調整用のねじ47が螺着される図外の貫通ねじ孔が形成されている。
【0032】
ガイドレール側取付部材44は、溶接、又は、ボルト,ナット等の連結具でガイドレール30に連結された連結板44aと、連結板44aの一端より連結板44aの板面と直交する方向に延長して板面と上下延長板43bの板面とが接触した状態で上下延長板43bに連結される上下移動連結板44bとを備える。上下移動連結板44bには、連結ボルト45が貫通する図外の貫通孔が形成されている。
【0033】
取付部材41は、ガイドレール側取付部材44の上下移動連結板44bの上端が床側取付部材43の固定板43a側に位置されるように、上下移動連結板44bの板面と床側取付部材43の上下延長板43bの板面とを接触させ、かつ、ガイドレール側取付部材44の連結板44aの下面を形成する板面と落下防止板43cの上面を形成する板面とを対向させた状態で、連結ボルト45を上下移動連結板44bの貫通孔44c及び上下延長板43bの長孔43eに通して、長孔43eより突出する連結ボルト45の先端側にナット46を締結することにより、ガイドレール側取付部材44と床側取付部材43とが連結される。
そして、上下調整用のねじ47を、例えば、二重ナット48,49のねじ孔及び落下防止板43cの貫通ねじ孔に貫通させて、ねじ47の先端を連結板44aの下面を形成する板面に接触させることにより、取付部材41が構成される。
【0034】
従って、ガイドレール30の両端側にそれぞれ設けられた当該取付部材41,41の固定板43a,43aがアンカーボルト39等で床版3の下面3uに固定されたことによって、ガイドレール30が床版3に固定され、ワイヤー張力調整機構5が床版3に支持された構成となる。
そして、当該取付部材41が床版3に固定された状態で、連結ボルト45の先端側に締結されたナット46を緩めて、上下調整用のねじ47を上下動させることにより、連結板44aに連結されたガイドレール30の上下位置を調整できるようになるため、支点プーリ20の上下位置を調整できるようになり、ワイヤー10による切断位置の上下位置調整が可能となる。
【0035】
そして、上下位置調整が完了したら、連結ボルト45の先端側のナット46を締結するとともに、二重ナット48,49を締結することにより、支点プーリ20の上下位置が固定されることになる。
【0036】
実施形態の切断装置1及び切断装置1を用いた切断方法によれば、切断装置1が床版3の下面3uに固定された状態で、駆動プーリ22を回転させるとともに、駆動プーリ22及び従動プーリ25の両方又はいずれか一方を上下方向Vに移動させることにより、駆動プーリ22や従動プーリ25がワイヤー10を牽引することによって、一方の支点プーリ20と他方の支点プーリ20との間のワイヤー10の部分が切断対象部位3Aに押し込まれる。そして、ワイヤー10による切断動作が進行するにつれてワイヤー10が図1の想像線に示すように図1の上方側に移動して、切断対象部位3Aが切断されることになる。
そして、実施形態の切断装置1及び切断装置1を用いた切断方法によれば、切断作業の際、切断装置1の操作者、その他の現場作業者等が、切断状況を監視しながら、例えば、ワイヤー10に弛みが生じないように、ワイヤー張力調整機構5の油圧シリンダ50を操作して、ワイヤー10の張力をできるだけ一定に維持させることにより、良好な切断動作を実現できるようになる。
【0037】
尚、上述したワイヤー張力調整機構5では、支点プーリ20に掛けられるワイヤー10の下方への移動を規制する規制部材としてのローラ40を備えたものを例示したが、規制部材は必ずしもローラである必要はなく、支点プーリ20に掛けられるワイヤー10の下方への移動を規制できるものであればよい。
【0038】
また、規制部材を備えないワイヤー張力調整機構であってもよい。
【0039】
また、動力付与手段としては、油圧シリンダ50に限らず、空気圧シリンダ、水圧シリンダ、電動シリンダ等の動力シリンダ、あるいは、その他のアクチュエータを用いてもよい。
【0040】
また、本発明のワイヤー張力調整機構5を備えた切断装置1によれば、ワイヤー10による床版3の切断中にワイヤー10が緊張しすぎている状態の場合に、支点プーリ20等のガイド手段をワイヤー10の緊張を解消させる方向に移動させながら切断作業を行うことも可能となり、スムーズで良好な切断動作を実現できるようになる。
【0041】
また、実施形態では、切断装置1を下面3uに取り付けた構成を例示したが、切断装置1を、床版3のハンチ部分の傾斜下面3utに取付けるようにしても良い。例えば、取付部材41を床版3のハンチ部分の傾斜下面3utに取付けるようにしても良い。
【0042】
また、切断装置は、床版3の下面3uに取付ける構成でなくともよい。例えば、床版3の下方に専用の支持装置(フレーム)を設置して、当該支持装置に取付けて切断する切断装置であってもよい。
また、切断装置は、ワイヤー10の駆動装置等が床版3の上方に設置されるものであってもかまわない。
【0043】
また、実施形態では、切断装置1の操作者、その他の現場作業者等が、切断状況を監視しながら、ワイヤー張力調整機構5のアクチュエータ(油圧シリンダ50)を操作する方法、装置を例示したが、本発明の切断装置は、ワイヤー10の張力を検出する張力検出手段と、張力検出手段から出力される張力値に基づいてアクチュエータを制御する制御手段とを備えて、張力検出手段で検出されるワイヤー10の張力があらかじめ設定された張力値に維持されるように、制御手段が張力検出手段からの出力値に基づいてアクチュエータのフィードバック制御を行う機能を備えた切断装置であってもよい。
【0044】
また、実施形態では、コンクリート構造物としての床版を切断対象として切断する方法を例示したが、切断対象は、床版以外のコンクリート構造物や鋼構造物等の構造物であってもよい。
例えば、本発明は、道路架橋、鉄道架橋、又は、ボックスカルバート、壁高欄等の構造物を切断する場合にも適用でき、良好な切断動作を実現できる。
【符号の説明】
【0045】
1 切断装置、3 床版(構造物)、10 ワイヤー、
20 支点プーリ(ガイド手段)、40 ローラ(ガイド手段、規制部材)、
50 油圧シリンダ(動力付与手段)。
【要約】
【課題】ワイヤーの切断作業時においてワイヤー全体にかかるテンションを調整できるようにして、良好な切断動作を実現可能とした、構造物の切断方法、及び、切断装置を提供する。
【解決手段】ワイヤー10と、ワイヤーの駆動機構と、ワイヤーをガイドするガイド手段とを有した切断装置1を用いて、ワイヤーにより構造物を切断する構造物の切断方法において、ワイヤーによる構造物の切断中にガイド手段をワイヤーの弛緩又は緊張を解消する方向に移動させながら構造物を切断することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4