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特許7019010管路内壁の調査装置およびコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】管路内壁の調査装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20220204BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20220204BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20220204BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20220204BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20220204BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20220204BHJP
   B63B 59/10 20060101ALI20220204BHJP
   B60F 3/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B64C39/02
B64D47/08
B64C13/18 Z
B64F1/36
B63C11/48 D
B63C11/00 B
B63B59/10 A
B60F3/00 A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020176524
(22)【出願日】2020-10-21
(62)【分割の表示】P 2018518300の分割
【原出願日】2017-05-16
(65)【公開番号】P2021011266
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2016098133
(32)【優先日】2016-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397028016
【氏名又は名称】株式会社日水コン
(73)【特許権者】
【識別番号】513203071
【氏名又は名称】ブルーイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】浦部 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 尚
(72)【発明者】
【氏名】滝本 麻理奈
(72)【発明者】
【氏名】熊田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和也
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/104691(WO,A1)
【文献】特開2014-104797(JP,A)
【文献】特開2005-077352(JP,A)
【文献】特開2007-151481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64D 47/08
B64C 13/18
B64F 1/36
B63C 11/48
B63C 11/00
B63B 59/10
B60F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内を無人で飛行可能な飛行ドローンと、
前記飛行ドローンに追従して前記管路内を移動する中継移動機と、
前記中継移動機と第1ケーブルを介して通信するデータ収集解析機と、を備える管路内壁の調査装置であって、
前記飛行ドローンは、
垂直方向における上方向および下方向の壁に向かって赤外線またはレーザ光を発振し、その反射波または反射光を受信する垂直送受信機と、
進行方向に垂直な断面における右方向および左方向の壁に向かって赤外線またはレーザ光を発振し、その反射波または反射光を受信する水平送受信機と、
管路内壁を撮影して撮影データを取得するカメラと、
前記垂直送受信機における発振および受信のタイミングに基づいて飛行ドローンと上方および下方の壁面との距離が所定範囲内となるように制御する上下制御手段と、
前記水平送受信機における発振および受信のタイミングに基づいて飛行ドローンと右方および左方の壁面との距離が所定範囲内となるように制御する左右制御手段と、
管路内における前記飛行ドローンの現在位置を把握するための現在位置データを取得する現在位置把握手段と、
を備え、
前記中継移動機は、
前記飛行ドローンに追従して前記管路内の水面を推進するプロペラと、
前記カメラによる被写体へ光を照射する光源と、
前記飛行ドローンから前記撮影データおよび前記現在位置データを受信するとともに、当該撮影データおよび当該現在位置データを前記データ収集解析機へ送信するデータ通信手段と、
を備え、
前記データ収集解析機は、前記中継移動機から受信した前記撮影データに対して前記現在位置データを紐付けて記録する撮影データ記録手段を備えることを特徴とする管路内壁の調査装置。
【請求項2】
前記中継移動機は、前記飛行ドローンと第2ケーブルを介して通信し、
前記データ通信手段は、前記飛行ドローンから前記第2ケーブルを介して前記撮影データおよび前記現在位置データを受信するとともに、前記第1ケーブルを介して当該撮影データおよび当該現在位置データを前記データ収集解析機へ送信することを特徴とする請求項1に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項3】
前記中継移動機は、
前記第2ケーブルの接続部分に設けられ、前記第2ケーブルのテンションを把握するテンションメータと、
前記テンションメータによる測定値に基づいて、前記第2ケーブルのテンションを維持するように前記プロペラの出力を制御するプロペラ制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項4】
前記データ収集解析機は、
前記撮影データおよび前記現在位置データを解析することによって前記飛行ドローンの移動および/または撮影データの取得に対する必要な制御データを算出する制御データ算出手段と、
前記制御データ算出手段が算出した前記制御データを前記中継移動機を介して前記飛行ドローンへ送信する制御データ送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項5】
前記制御データ算出手段は、前記中継移動機から受信した前記撮影データが不鮮明である場合に、当該撮影データに紐付けられた前記現在位置データが示す位置に前記飛行ドローンが戻る際に当該位置おける前記撮影データを前記飛行ドローンに再度取得させる制御データを算出することを特徴とする請求項4に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項6】
前記現在位置把握手段は、管路内に複数の無電源ICタグが予め設けられている場合において、
その無電源ICタグと管路内における位置との対応テーブルを記憶している対応位置テーブル記憶手段と、
前記無電源ICタグとの間で短距離無線通信を実行する短距離無線通信装置と、
を前記飛行ドローンに備え、
その短距離無線通信装置が無電源ICタグとの無線通信をしたことによって前記対応位置テーブル記憶手段を用いて前記飛行ドローンの前記現在位置データを取得することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項7】
前記現在位置把握手段は、
予め管路内壁の画像データを記憶している管路内壁画像テーブルと、
管路内壁の画像データを取得するビジョンセンサと、を備え、
そのビジョンセンサが取得した画像データと前記管路内壁画像テーブルとを用いて前記飛行ドローンの前記現在位置データを取得することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項8】
前記データ収集解析機は、
前記中継移動機から受信した前記撮影データおよび前記現在位置データを出力するデータ出力手段と、
そのデータ出力手段が出力した前記撮影データおよび前記現在位置データを検証した操作者が飛行ドローンの移動および/または撮影データの取得に対する必要な操作者制御データを入力する制御データ入力手段と、
その制御データ入力手段にて入力された前記操作者制御データを前記中継移動機を介して前記飛行ドローンへ送信する操作者制御データ送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項9】
前記中継移動機は、管路内に水があってもなくても移動可能な水陸両用とすることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項10】
前記データ収集解析機およびその運搬装置は、再生されたエネルギ燃料を動力源とするとともに、
前記飛行ドローンを収納して運搬可能とすることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項11】
前記飛行ドローンには、管路内における所定のガスの濃度を検知するためのガス濃度計を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項12】
前記現在位置把握手段は、
管路内に複数のバーコードが予め設けられている場合において、そのバーコードと管路内における位置との対応テーブルを記憶している対応位置テーブル記憶手段と、
前記バーコードを読み取るバーコードリーダと、
を前記飛行ドローンに備え、
そのバーコードリーダが前記バーコードを読み取ったことによって前記対応位置テーブル記憶手段を用いて前記飛行ドローンの前記現在位置データを取得することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項13】
垂直方向の孔の長手方向に沿って所定の深さまで降ろし、飛行ドローンの発着ボートを形成するドローン発着ポートを備え、
垂直方向へ降ろして用いる垂直ポールと、
その垂直ポールに対して回動可能であるように支持されるポート支持フレームと、
そのポート支持フレームの回動角度を規制する支持機構と、
前記ポート支持フレームにおける前記支持機構とは反対側で支持されるポート本体と、を備え、
そのポート本体は、前記飛行ドローンの発着のための発着面を備えており、
前記支持機構は、前記ポート支持フレームの長手方向が前記垂直ポールの長手方向となす角度が鋭角となるような第一ポジション、および前記発着面を垂直ポールから離した上で水平となるような第二ポジション、をとることを可能とするように前記ポート支持フレームを支持することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項14】
前記発着面の周囲には、前記の第二ポジションをなしている際の発着面における垂直方向の投影面積を拡開させるサポート板を備え、
そのサポート板は、前記第一ポジションをなしている際には発着面における垂直方向の投影面積を狭めるように折り畳み可能であるように形成することを特徴とする請求項13に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項15】
前記ポート本体の下側には、下端が管路の下面内壁へ接した場合に前記発着面を水平とするための脚部を備え、
その脚部は、管路に液体が存在する場合にその液体の流れに当たる面積が小さくなる構造とすることを特徴とする請求項13または14に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項16】
前記サポート板は、少なくとも発着面の面にクッション性のある材質の板状部材を備えることを特徴とする請求項14に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項17】
前記発着面へ着陸している前記飛行ドローンに対する充電を実施可能な充電設備を備えることを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項18】
前記発着面へ着陸している前記飛行ドローンに格納されている所定のデータを受信するドローン格納データ受信手段と、
そのドローン格納データ受信手段が受信した所定のデータを、前記垂直方向の孔における外へ設置されたデータ受信蓄積手段へ送信するドローン格納データ送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項13から17のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項19】
垂直方向の孔の長手方向に沿って所定の深さまで降ろし、前記飛行ドローンを回収するドローン回収装置を備え、
そのドローン回収装置は、
垂直方向へ降ろして用いるワイヤと、
そのワイヤの先端に固定して、前記管路内を流れる液体に流されてくる前記飛行ドローンを引っ掛けるドローン引っ掛け具と、
を備えることを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項20】
前記ドローン引っ掛け具は、流体の出し入れによって膨張収縮するものであって、液体を注入した場合に、前記管路内を流れる液体に流されてくるドローンを引っ掛けるのに適した形状となるとともに、
注入した液体を抜き取った場合には、前記垂直方向の孔における長手方向を昇降させやすい形状となるように形成することを特徴とする請求項19に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項21】
垂直方向の孔の長手方向に沿って降ろすとともに調査対象である前記管路内の長手方向へ連続して到達させるスケールワイヤと、
そのスケールワイヤに対して等間隔に固定された等間隔固定体と、
を備えた位置確認具を備え、
前記飛行ドローンにおける前記現在位置把握手段は、前記等間隔固定体が近接したことを認識することで現在位置を把握することを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の管路内壁の調査装置。
【請求項22】
管路内の位置を把握しつつ管路内を無人で飛行するとともに管路内壁を撮影して撮影データを取得する飛行ドローンと、
前記飛行ドローンに追従して前記管路内の水面を推進するプロペラと、前記飛行ドローンのカメラによる被写体へ光を照射する光源と、を備える中継移動機と、
前記中継移動機と第1ケーブルを介して通信するデータ収集解析機と、を備える管路内壁の調査装置を制御するコンピュータプログラムであって、
前記中継移動機が前記飛行ドローンから受信した前記撮影データおよび管路内における前記飛行ドローンの現在位置を把握するための現在位置データを、前記第1ケーブルを介して受信するデータ受信手順と、
前記データ受信手順にて受信した前記撮影データ対して前記現在位置データを紐付けて記録するデータ記録手順と、
を前記データ収集解析機のコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項23】
前記データ受信手順にて受信した前記撮影データおよび前記現在位置データを解析することによって前記飛行ドローンの移動および/または前記撮影データの取得に対する必要な制御データを算出する制御データ算出手順と、
その制御データ算出手順にて算出した前記制御データを、前記中継移動機を介して前記飛行ドローンへ送信する制御データ送信手順と、
を前記データ収集解析機のコンピュータに実行させることを特徴とする請求項22に記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
前記データ収集解析機には、前記データ受信手順にて受信した前記撮影データおよび前記現在位置データを出力させるデータ出力手段と、
そのデータ出力手段が出力した前記撮影データおよび前記現在位置データを検証した操作者が前記飛行ドローンの移動および/または前記撮影データの取得に対する必要な操作者制御データを入力する制御データ手段と、
を備え、
前記制御データ送信手順は、前記操作者制御データを、前記中継移動機を介して前記飛行ドローンへ送信することを特徴とする請求項23に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本出願は、2016年5月16日に、日本国において出願された特願2016-98133号に基づいて優先権を主張した特願2018-518300の分割出願であり、当該出願に記載された内容は、本明細書へ援用する。また、本願において引用した特許、特許出願および文献に記載された内容は、本明細書へ援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、下水管の内壁におけるクラック、水漏れなどの異常箇所の発見や点検、調査する装置、およびそれらを実行するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
公共インフラとしての下水管は、点検による異常箇所や劣化箇所を早期に発見し、補修や交換などの手を打ちたい。
一方で、下水管は、そのほとんどが地中に存在し、通常は水をたたえているので、その点検作業は容易ではない。
特許文献1には、管内の形状を光により全方位に照射し、その撮像画像と管内の移動量に基づいて管内面の三次元形状を演算し、管内面の劣化状態を正確に且つ迅速に測定することが可能な管内面形状測定装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、内部に汚泥、粘土、スラリ、シルト、砂、瓦礫などの異物が堆積した管路などであっても、これらの異物に埋まったり、異物を噛み込んだりすることがなく、また水中の藻や草などが絡まることもなく、安定して走行し、簡単な操作で短時間の内に効率的に管路内を検査することができ、操作性、取扱い性に優れ、不具合の発生箇所を簡便かつ確実に記録可能な技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、橋梁などの構造物に関する点検を、無人の空中移動機(いわゆる「飛行ドローン」)にて撮影したり、損傷状況を調査したりする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許3837431号公報
【文献】特許5575158号公報
【文献】特開2015-34428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(下水管への機器運搬)
特許文献1、特許文献2に開示された技術については、検査対象となる管路へ作業者が潜行する必要がなくなるなど、ある程度の実績がある。
しかし、特許文献2に開示された管路内検査装置としての走行車は、検査対象となる地点に運搬するために人力での運搬は不可能な大きさや重量がある。そのため、縦穴の上げ下ろしには専用車両が必要となるなど、準備および撤収に対して大がかり設備を前提としている。
【0008】
検査対象である管路内に飛行ドローンを飛行させ、管路内壁を撮影することができるのであれば、飛行ドローンの大きさや重量は、管路内検査装置としての走行車よりも小さくて軽量なものを採用できる可能性が高い。
しかし、飛行ドローンを橋梁などの構造物に関する点検に用いるという前提として、飛行ドローンは、GPSによる位置の把握や、屋外という開放空間での飛行を前提としている。
検査対象である管路内は、GPSの電波が届かず、上下左右が囲まれた閉鎖空間での飛行が前提となるので、現在の技術をそのまま採用することはできない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、管路の内壁を点検するために飛行ドローンを採用する場合、その飛行ドローンを安定して飛行させること、管路内壁における異常箇所の発見することおよびその場所を特定すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(管路内での安定飛行)
管路内で安定して飛行することをテーマとした場合、更にそのテーマは以下のように細分化できる。
第一に、飛行ドローンを非GPS環境下で飛行させること、すなわち、自らの位置を特定すること(以下、「課題A-1」とする)。
第二に、閉鎖系で自らを安定させること(以下、「課題A-2」とする)。
第三に、閉鎖系における長手方向へ進行させること(以下、「課題A-3」とする)。
第四に、壁面へ接触してしまった場合の損傷を防止または抑制すること(以下、「課題A-4」とする)。
第五に、壁面へ接触してしまって安定性を損なったり墜落したりした場合に復帰させること(以下、「課題A-5」とする)。
第六に、復帰できなかった場合に何らかのバックアップ体制を取れること(以下、「課題A-6」とする)。
なお、以上で全ての課題を網羅しているわけではなく、各課題が独立しているわけでもない。更に、本願発明において、全ての課題を解決するということでもない。
【0011】
(管路内壁における異常箇所の発見およびその場所特定)
管路内壁において異常箇所を発見し、その異常箇所を特定することをテーマとした場合、更にそのテーマは以下のように細分化できる。
第一に、管路内壁の撮影のために、光無しに撮影可能な機能を備える、または十分な光を照射すること(以下、「課題B-1」とする)。
第二に、管路内壁の撮影において、ぶれずに撮影すること(以下、「課題B-2」とする)。
第三に、管路内壁の撮影において、焦点を定めて(ピントを合わせて)撮影すること(以下、「課題B-3」とする)。
第四に、水面下の内壁であっても撮影できること(以下、「課題B-4」とする)。
第五に、撮影した映像から異常箇所を発見できること(以下、「課題B-5」とする)。
第六に、異常箇所の場所を特定できること(以下、「課題B-6」とする)。
なお、以上で全ての課題を網羅しているわけではなく、各課題が独立しているわけでもない。更に、本願発明において、全ての課題を解決するということでもない。
【0012】
(第一の発明)
本願における第一の発明は、管路(たとえば下水管10)内を無人で飛行可能な飛行ドローン(20)を用いた管路内壁の調査装置に係る。
前記の飛行ドローン(20)には、垂直方向における上方向および下方向の壁に向かって赤外線またはレーザ光を発振し、その反射波または反射光を受信する垂直送受信機と、
進行方向に垂直な断面における右方向および左方向の壁に向かって赤外線またはレーザ光を発振し、その反射波または反射光を受信する水平送受信機と、
前記の垂直送受信機における発振および受信のタイミングに基づいて飛行ドローン(20)と上方および下方の壁面との距離が所定範囲内となるように制御する上下制御手段と、
前記の水平送受信機における発振および受信のタイミングに基づいて飛行ドローン(20)と右方および左方の壁面との距離が所定範囲内となるように制御する左右制御手段と、
管路内壁を撮影して撮影データを取得するカメラ(22)と、
管路内における前記の飛行ドローン(20)の現在位置を把握するための現在位置把握手段と、
その現在位置把握手段を用いて前記のカメラによる撮影データに対して撮影位置を紐付けて記録する撮影データ記録手段と、
を備える(図2、11参照)。
【0013】
(用語説明)
「管路」とは、下水管、農業用水路、石油パイプラインなど、液体を移動させるための管である。
飛行ドローン(20)は、管壁へプロペラが衝突することを防止するためのプロペラガードを備えていることが望ましい。飛行速度は、撮影環境など、さまざまな環境、条件によって異なるが、毎秒1メートルの飛行では、全天球カメラによる画像データ取得にて、管路内壁の腐食箇所を判明することが可能であった。
管路における中央付近を飛行するために、管路の内壁からの距離を知るため、赤外線またはレーザ光を発振し、赤外線の反射波またはレーザ光の反射光を受信するのが、垂直送受信機および水平送受信機である。「垂直送受信機および水平送受信機」としては、たとえば、上下、左右の2方向への赤外線の発振と受信とが可能なPSD測距センサ(赤外線LEDとPSD(Position Sensitive Detector)とを使った三角測量方式によって対象物までの距離に応じたアナログ電圧を出力するセンサ)を採用する。
「管」とは、上下水道の管、各種の液体(たとえば石油)や気体(たとえば都市ガス)などを移動させるパイプなどである。
【0014】
「カメラ(22)」は、たとえば、全天球カメラ(全方位カメラ)を採用する。赤外線カメラである場合には照明が不要となる場合があるが、一般には、管の内壁面を照射するための光源(たとえばライト23)を備える。カメラのレンズは、明るい(F値が低い)ほうが望ましい。なお、光源にLEDを採用した実験では、管内壁の撮影には、100ルクス以上の照度が確保されていることが望ましい(管路内壁における鉄筋の露出、骨材の劣化状況、クラック存在などを発見可能)ことが判明した。ただし、照度が高すぎると(たとえば300ルクス以上)、撮影画像が白くなってしまう。
前記のカメラに加えて、または前記のカメラの代わりに、管路内壁へレーザ光を照射して反射してくる超音波を受信して記録するレーザ超音波計測機を備えることとしてもよい。「レーザ赤外線計測機」とは、傷や欠陥を把握できる装置である。すなわち、レーザ光が照射された材料の内部において赤外線が励起される。その励起された赤外線は、当該材料における傷や欠陥によって散乱波となる。その散乱波を受信することで、傷や欠陥を把握できる。
壁面との距離についての「所定範囲内」とは、飛行ドローン(20)の大きさや性能、管路の内径(D)などによって異なるが、たとえば管内径の20~40%である。
「現在位置把握手段」が把握した現在位置のデータは、カメラ(22)が取得した撮影データおよび/またはレーザ赤外線計測機が受信した赤外線データとの紐付けがなされる。
【0015】
(作用)
垂直送受信機が垂直方向における上方向の壁および下方向の壁または水面に向かって赤外線またはレーザ光を発振し、その反射波またはレーザ光を受信する。垂直送受信機における発振および受信のタイミングに基づいて、飛行ドローン(20)と上方および下方の壁面との距離が所定範囲内となるように、上下制御手段が制御する。
また、水平送受信機が進行方向に垂直な断面における右方向および左方向の壁に向かって赤外線またはレーザ光を発振し、その反射波または反射光を受信する。水平送受信機における発振および受信のタイミングに基づいて、飛行ドローン(20)と右方および左方の壁面との距離が所定範囲内となるように、左右制御手段が制御する。
飛行ドローン(20)は、上下および左右の壁面との距離を調整しながら、カメラ(22)が管路内壁を撮影する。撮影したその画像データは、撮影データ記録手段にて撮影位置を紐付けて記録されているので、管内壁の状態を撮影場所ごとに診断したり、異常箇所を特定したりすることに寄与する。
なお、飛行ドローン(20)にレーザ赤外線計測機が搭載されている場合には、管路内壁へレーザ光を管路内壁へ照射し、反射してくる赤外線を受信し、その赤外線データを記録する。
【0016】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明における飛行ドローン(20)には、前記のカメラ(23)にて管路内壁を撮影する際の光源(23)を備えることとしてもよい(図1参照)。
【0017】
光源(23)は、たとえば、150ルクス以上が好ましい。飛行速度やカメラの解像度などの条件によって異なるが、毎秒1メートル程度の飛行速度の場合には、170~230ルクスがより好ましい。照射角度や壁面の角度によって、300ルクスでは取得した画像に「白飛び」が発生する事象が発生した。
【0018】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の現在位置把握手段は、管路内に複数の無電源ICタグ(たとえばRFID15A,15B,15C,・・・)が予め設けられている場合において、その無電源ICタグと管路内における位置との対応テーブルを記憶している対応位置テーブル記憶手段と、前記の無電源ICタグとの間で短距離無線通信を実行する短距離無線通信装置を飛行ドローン(20)に備える。
そして、その短距離無線通信装置が無電源ICタグとの無線通信をしたことによって前記の対応位置テーブル記憶手段を用いて飛行ドローン(20)の現在位置データを取得することとしてもよい。
【0019】
(作用)
飛行ドローン(20)は、管路内を進行することによって、無電源ICタグとの短距離無線通信を実行する。対応位置テーブル記憶手段を用いて飛行ドローン(20)の現在位置データを取得する。
取得した現在位置データは、カメラ(22)にて撮影した画像データ(および/またはレーザ赤外線計測機が受信した赤外線データ)と紐づけたり、飛行記録として残したりする。
【0020】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の現在位置把握手段は、予め管路内壁の画像データを記憶している管路内壁画像テーブルと、管路内壁の画像データを取得するビジョンセンサと、を備える。
そのビジョンセンサが取得した画像データと前記の管路内壁画像テーブルとを用いて飛行ドローン(20)の現在位置データを取得することとしてもよい。
【0021】
飛行ドローン(20)の現在位置の把握は、ビジョンセンサのみで行う場合のほか、前述した無線ICタグとの短距離無線通信との組合せを用いる場合もある。複数種類の現在位置把握の手段を組合せてデータを比較し、妥当な位置を現在位置とするなどとする。
【0022】
(第一の発明のバリエーション4)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の飛行ドローン(20)に追従して管路内を移動する中継移動機(たとえばフロート式ドローン30または水陸両用ドローン50)と、
その中継移動機(30or50)との間で通信するデータ収集解析機(たとえば管路の外に位置しているサポートカー40に内蔵されている)と、を備え、
前記の中継移動機(30or50)は、飛行ドローン(20)から撮影データおよび現在位置データを受信するとともに、受信した撮影データおよび現在位置データを前記のデータ収集解析機(40)へ送信し、
前記のデータ収集解析機(40)は、前記の中継移動機(30or50)から受信した撮影データおよび現在位置データを記録することとしてもよい(図5参照)。
【0023】
(作用)
中継移動機(30or50)は、飛行ドローン(20)に追従して管路内を移動しつつ、飛行ドローン(20)から撮影データおよび現在位置データを受信する。そして、データ収集解析機(40)へ撮影データおよび現在位置データを送信する。
データ収集解析機(40)では、中継移動機(30or50)から受信した撮影データおよび現在位置データを記録する。
【0024】
(第一の発明のバリエーション5)
第一の発明における前述のバリエーション4は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のデータ収集解析機(40)は、撮影データおよび現在位置データを解析することによって前記の飛行ドローン(20)の移動および/または撮影データの取得に対する必要な制御データを算出する制御データ算出手段と、その制御データ算出手段が算出した制御データを前記の中継移動機(30or50)を介して前記の飛行ドローン(20)へ送信する制御データ送信手段と、を備えることとしてもよい(図9,10参照)。
【0025】
データ収集解析機(40)が撮影データおよび現在位置データを解析する。そして、飛行ドローン(20)に予め搭載された飛行制御プログラムには存在しないような事態が発生したと判断できたとする。
データ収集解析機(40)における制御データ算出手段は、飛行ドローン(20)の移動および/または撮影データの取得に対する必要な制御データを算出する。そして、必要な制御データは、前記の飛行ドローン(20)へ制御データ送信手段が中継移動機(30or50)を介して送信する。
【0026】
(第一の発明のバリエーション6)
第一の発明における前述のバリエーション4および/または5は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の中継移動機(30or50)を介してから受信した撮影データおよび現在位置データを出力するデータ出力手段と、そのデータ出力手段が出力した撮影データおよび現在位置データを検証した操作者が飛行ドローン(20)の移動および/または撮影データの取得に対する必要な操作者制御データを入力する制御データ入力手段と、を備える。
そして、前記の制御データ送信手段は、前記の操作者制御データを前記の中継移動機を介して前記の飛行ドローン(20)へ送信することとしてもよい。
【0027】
(作用)
前述したバリエーション5では飛行ドローン(20)の制御データを自動作成したが、その場合と異なり、撮影データおよび現在位置データを検証した操作者が、飛行ドローン(20)の制御用データ(操作者制御データ)を入力する。
入力された操作者制御データは、中継移動機(30or50)を介して前記の飛行ドローン(20)へ操作者制御データ送信手段が送信する。
【0028】
(第一の発明のバリエーション7)
第一の発明における前述のバリエーション4から6における中継移動機は、管路内に水があってもなくても移動可能な水陸両用としてもよい(図8参照)。
【0029】
(第一の発明のバリエーション8)
第一の発明におけるバリエーション4から7は、前記のデータ収集解析機およびその運搬装置(例えば水素エンジン搭載のサポートカー40)は、再生されたエネルギ燃料を動力源とするとともに、運搬装置は、前記の飛行ドローン(20)を収納して運搬可能としてもよい(図5参照)。
【0030】
「エネルギ燃料」としては、下水の排熱を利用して製造された水素、廃棄プラスチックなどから製造された軽油などの再生エネルギのほか、そうした再生エネルギを用いた発電装置による電気エネルギ、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギによる電気エネルギも含む。
なお、飛行ドローン(20)のみならず、中継移動機(30or50)が存在するバリエーションにおいては、中継移動機(30or50)をも収納して運搬可能としてもよい。
【0031】
(第一の発明のバリエーション9)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の飛行ドローン(20)には、前記の管路(10)内における所定のガスの濃度を検知するためのガス濃度計を備えることするのである。
ここで、「ガス濃度計」とは、たとえば、硫化水素の濃度を検知する硫化水素濃度計、酸素濃度を検知する酸素濃度計などである。
【0032】
こうしたガスの発生は、管路が腐食する要因となることから、その腐食箇所を特定できる可能性がある。
また、たとえば硫化水素は臭気の原因として代表的なものであるので、臭気の発生場所の特定にも寄与する。なお、硫化水素は空気よりも重たいので、下水管においては管路の下や水面近くに滞留していることが多い。しかし、飛行ドローン(20)の飛行に伴って撹拌されるので、濃度測定のために管路の下側や水面に近づく必要がない。
【0033】
(第一の発明のバリエーション10)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の現在位置把握手段は、管路内に複数のバーコード(たとえば、一次元バーコード、または二次元バーコード)が予め設けられている場合において、そのバーコードと管路内における位置との対応テーブルを記憶している対応位置テーブル記憶手段と、前記のバーコードを読み取るバーコードリーダと、を前記の飛行ドローン(20)に備える。
そして、そのバーコードリーダが前記のバーコードを読み取ったことによって前記の対応位置テーブル記憶手段を用いて飛行ドローン(20)の現在位置データを取得することとしてもよい。
「バーコード」が二次元バーコードである場合、バーコードリーダは、前記のカメラが兼用することができる。
【0034】
(第一の発明のバリエーション11)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、垂直方向の孔(人孔13)の長手方向に沿って所定の深さまで降ろし、飛行ドローン(20)の発着ボートを形成するドローン発着ポート(折り畳みポート70A)を備えるのである。
そのドローン発着ポート(折り畳みポート70A)は、垂直方向へ降ろして用いる垂直ポール(伸縮ポール71)と、その垂直ポール(71)に対して回動可能であるように支持されるポート支持フレーム(72)と、そのポート支持フレーム(72)の回動角度を規制する支持機構(支持リンク73)と、前記のポート支持フレーム(72)における前記の支持機構(73)とは反対側で支持されるポート本体(74)と、を備える。
そのポート本体(74)は、前記の飛行ドローン(20)の発着のための発着面(74A)を備える。
前記の支持機構(73)は、前記のポート支持フレーム(72)の長手方向が前記の垂直ポール(71)の長手方向となす角度が鋭角となるような第一ポジション、および前記の発着面(74A)を垂直ポール(71)から離した上で水平となるような第二ポジション、をとることを可能とするように前記のポート支持フレーム(72)を支持することとする。
【0035】
前記のドローン発着ポート(折り畳みポート70A)は、第一の発明とは独立した発明としても提供可能である。すなわち、飛行ドローンを用いた管路内壁の調査装置の一部としてではなく、単なるドローン発着ポート(折り畳みポート70A)として提供しても、有益である。垂直方向の孔(人孔13)の入り口から調査対象となる管路まで、ドローンを運ぶ簡易な方法が提供されていないからである。
【0036】
(ドローン発着ポートのバリエーション1)
前述した第一の発明のバリエーション11は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の発着面(74A)の周囲には、前記の第二ポジションをなしている際の発着面(74A)における垂直方向の投影面積を拡開させるサポート板(77)を備える。そのサポート板(77)は、前記の第一ポジションをなしている際には発着面(74A)における垂直方向の投影面積を狭めるように折り畳み可能であるように形成するのである。
【0037】
垂直方向の投影面積を狭めるように折り畳むことで、垂直方向の孔(人孔13)をポート本体(74)等が移動する際、孔(13)の壁へぶつかる確率を減らすことに寄与する。
【0038】
(ドローン発着ポートのバリエーション2)
前述した第一の発明のバリエーション11は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のポート本体(74)の下側には、下端が管路の下面内壁へ接した場合に前記の発着面(74A)を水平とするための脚部(78)を備えることとする。そして、その脚部(78)は、管路に液体が存在する場合にその液体の流れに当たる面積が小さくなる構造とする。
【0039】
(ドローン発着ポートのバリエーション3)
前述した第一の発明のバリエーション11は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記のサポート板(77)は、少なくとも発着面(74A)の面にクッション性のある材質の板状部材を備えることとする。
【0040】
(ドローン発着ポートのバリエーション4)
前述した第一の発明のバリエーション11は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の発着面(74A)へ着陸している飛行ドローン(20)に対する充電を実施可能な充電設備を備えることとしてもよい。
飛行ドローン(20)は、発着面(74A)へ着陸している際に充電し、新たな飛行の際の航続距離を伸ばすことが可能となる。
【0041】
(ドローン発着ポートのバリエーション5)
前述した第一の発明のバリエーション11は、以下のように形成してもよい。
すなわち、前記の発着面(74A)へ着陸している飛行ドローン(20)に格納されている所定のデータを受信するドローン格納データ受信手段と、
そのドローン格納データ受信手段が受信した所定のデータを、前記の垂直方向の孔の外へ設置されたデータ受信蓄積手段へ送信するドローン格納データ送信手段と、を備えることとしてもよい。
【0042】
「所定のデータ」とは、たとえば、カメラ(22)が取得した撮影データや、その撮影データに紐付けられた撮影場所に関する位置データなどである。
飛行ドローン(20)が発着面(74A)へ着陸している際に、そうした所定のデータに関するバックアップを取ることができる。そのため、バックアップ後に飛行ドローン(20)へトラブルが発生したりしても、バックアップしたデータについては、確実に回収できることとなる。
【0043】
(第一の発明のバリエーション12)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、垂直方向の孔(人孔13)の長手方向に沿って所定の深さまで降ろし、ドローン(20、30,50)を回収するドローン回収装置を備える。
そのドローン回収装置は、垂直方向へ降ろして用いるワイヤ(吊りワイヤ80)と、そのワイヤ(80)の先端に固定して、下水に流されてくるドローン(20、30,50)を引っ掛けるドローン引っ掛け具(粘着テープ91,回収用網92)と、を備える。
【0044】
前記のドローン回収装置もまた、第一の発明とは独立した発明としても提供可能である。すなわち、飛行ドローンを用いた管路内壁の調査装置の一部としてではなく、単なるドローン回収装置として提供しても、有益である。管路内壁の調査装置の一部である各種のドローン(20、30,50)が下水に流された場合に、それらを回収する手段は提供されていないからである。
【0045】
(第一の発明におけるドローン回収装置のバリエーション)
第一の発明に用いるドローン回収装置における前記のドローン引っ掛け具は、以下のように形成してもよい。
すなわち、流体の出し入れによって膨張収縮するものであって、液体を注入した場合に、前記の管路内を流れる液体に流されてくるドローンを引っ掛けるのに適した形状となるとともに、
注入した液体を抜き取った場合には、前記の垂直方向の孔における長手方向を昇降させやすい形状となるように形成するのである(図20参照)。
【0046】
「流体の出し入れによって膨張収縮する」ドローン引っ掛け具とは、たとえば、一方の口から他方の口までが連通したチューブで形成され、液体が入っていない状態では萎ませて小さくすることができることによって、垂直方向の孔の長手方向を移動させるのに便利であり、液体が注入されると、飛行ドローンが調査対象とする管路の内径に広がった編み目をなすようなものである(図20参照)。
液体の注入は、たとえばポンプを用い、液体としてはたとえば水を用いる。
【0047】
(第一の発明のバリエーション13)
第一の発明は、以下のように形成してもよい。
すなわち、垂直方向の孔の長手方向に沿って降ろすとともに調査対象である前記の管路内の長手方向へ連続して到達させるスケールワイヤ(61)と、
そのスケールワイヤ(61)に対して等間隔に固定された等間隔固定体(たとえば、フロートボール63)と、を備えた位置確認具(60)を備え、
前記の飛行ドローン(20)における前記の現在位置把握手段は、前記の等間隔固定体(63)が近接したことを認識することで現在位置を把握するのである(図21参照)。
【0048】
「等間隔固定体(63)」は、管路内を流れる液体に対して浮くような素材を採用するのが望ましい。液体が流れていない場合には、管路の内壁にこすられることとなるので、摩耗に強い素材を採用することが望ましい。飛行ドローン(20)がこの「等間隔固定体」を認識する手段としては、たとえば、RFIDを内蔵することによって短距離無線通信をする場合、表面の色や模様を異ならせておいて飛行ドローン(20)が内蔵するカメラにて視認させる場合、などがある。
「スケールワイヤ(61)」は、管路内を液体が流れている場合には、柔軟な紐状体でもよいが、液体が流れていない場合にも使えるようにするためには、押して送り出せる程度の堅さのある鋼材のワイヤ等を採用する。
【0049】
前記の位置確認具(60)は、第一の発明とは独立した発明としても提供可能である。すなわち、飛行ドローンを用いた管路内壁の調査装置の一部としてではなく、単なる位置確認具として提供しても、有益である。調査対象となる管路における長手方向の位置を把握する簡易な方法が提供されていないからである。
【0050】
(第二の発明)
本願における第二の発明は、管路内の位置を把握しつつ管路内を無人で飛行するとともに管路内壁を撮影して撮影データを取得する飛行ドローン(20)と、前記の飛行ドローン(20)に追従して管路内を移動する中継移動機と、その中継移動機との間で通信するデータ収集解析機と、を備えた管路内壁の調査装置を制御するコンピュータプログラムに係る。
そのコンピュータプログラムは、前記の中継移動機を介して前記の飛行ドローン(20)から撮影データおよび現在位置データを受信するデータ受信手順と、そのデータ受信手順にて受信した撮影データおよび現在位置データを記録するデータ記録手順と、を前記のデータ収集解析機のコンピュータに実行させるものである。
上記の各手順は、ハードウェアとしての中央演算処理装置(CPU)と、コンピュータプログラムとの協働によって実行される。
【0051】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明は、以下のようにしてもよい。
すなわち、前記のデータ受信手順にて受信した撮影データおよび現在位置データを解析することによって前記の飛行ドローン(20)の移動および/または撮影データの取得に対する必要な制御データを算出する制御データ算出手順と、
その制御データ算出手順にて算出した制御データを前記の中継移動機を介して前記の飛行ドローン(20)へ送信する制御データ送信手順と、
をデータ収集解析機のコンピュータに実行させることとしてもよい。
【0052】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明は、以下のようにしてもよい。
すなわち、前記のデータ収集解析機には、前記の前記のデータ受信手順にて受信した撮影データおよび現在位置データを出力させるデータ出力手段と、そのデータ出力手段が出力した撮影データおよび現在位置データを検証した操作者が飛行ドローン(20)の移動および/または撮影データの取得に対する必要な操作者制御データを入力する制御データ手段と、を備えることとする。
そして、前記の制御データ送信手順は、前記の操作者制御データを前記の中継移動機を介して前記の飛行ドローン(20)へ送信することとしてもよい。
【0053】
(第二の発明の提供手段)
第二の発明に係るコンピュータプログラムは、記録媒体へ格納して提供することもできる。また、通信回線を介して提供することもできる。
ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないコンピュータプログラムを担持することができる媒体であり、例えば、ハードディスク、CD-R、DVD-R、などである。
【発明の効果】
【0054】
第一の発明によれば、管路の内壁を点検するための飛行ドローンを安定して飛行させること、管路内壁における異常箇所の発見することおよびその場所を特定することができる管路内壁の調査装置を提供することができた。
第二の発明によれば、管路の内壁を点検するための飛行ドローンを安定して飛行させること、管路内壁における異常箇所の発見することおよびその場所を特定することができる管路内壁の調査装置を制御するためのコンピュータプログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】第一の実施形態の全体を示す概念図である。
図2】第一の実施形態における管路の長手方向の断面と無人の空中移動機(飛行ドローン)との関係を示す図である。
図3】第一の実施形態において用いる無人の空中移動機(飛行ドローン)と、その進行方向との関係を示す概念図である。
図4】第一の実施形態における管路および空中移動機(飛行ドローン)との長手方向の位置を示す概念図である。
図5】第二の実施形態の全体を示す概念図である。
図6】第二の実施形態に用いる中継移動機(フロート式ドローン)を示す概念図である。
図7】第二の実施形態に用いる無人の空中移動機(飛行ドローン)を示す概念図である。
図8】第三の実施形態の全体を示す概念図である。
図9】第三の実施形態に用いる無人の空中移動機(飛行ドローン)、中継移動機(水陸両用ドローン)、およびサポートカーにおけるデータの授受を示す概念図である。
図10】サポートカーに搭載されたデータ収集解析装置(パーソナルコンピュータ)における操作例を示す概念図である。
図11】いくつかの実施形態におけるハードウェア構成を、入力手段、演算手段/制御手段、および出力手段に整理したブロック図である。
図12】第四の実施形態の全体を示す概念図である。
図13】第五の実施形態の全体を示す概念図である。
図14】飛行ドローンの離発着をさせるドローン発着ポートの一例を示す平面図および側面図である。
図15】ドローン発着ポートのバリエーションとしての水避けポートを示す図である。
図16】ドローン発着ポートのバリエーションとして、吊りワイヤによる片持ちポートを示す図である。
図17】ドローン発着ポートのバリエーションとして、滑車式ポートを示す図である。
図18】下水管内にて落水してしまって飛び立てなくなった飛行ドローンなどを回収するためのドローン回収具を示す図である。
図19】ドローン回収具のバリエーションを示す図である。
図20】ドローン回収具のバリエーションを示す図である。
図21】管路の長手方向の位置を飛行ドローンが認識するために用いる位置確認具を示す概念図である。
図22】ドローン発着ポートの多機能化(ドローンの充電、ドローン格納データの回収)を示す概念図である。
図23】飛行ドローンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明をいくつかの実施形態および図面によって更に詳しく説明する。
ここで使用する図面は、図1から図23である。
【0057】
図1
図1では、第一の実施形態の全体を概念的に示している。
検査の対象としているのは、地下に埋設された下水管10である。この実施形態における下水管10は、その管内径(D)を2.2メートルとしており、垂直方向に長手方向をなす人孔13と呼ばれる孔によって、地上と繋がっている。
その人孔13に近い場所まで、無人で自立飛行が可能な飛行ドローン20(空中移動機)をサポートカー40にて運搬し、人孔13から下水管10の内部である下水管溝内11へ進入させる。
なお、管の内径が2メートルよりも大きい場合には、特に問題なく飛行可能である。管の内径が2メートルよりも小さい場合には、採用する飛行ドローンのサイズが小さいモノを採用する必要性が生じる。
【0058】
飛行ドローン20には、下水管10の内壁を撮影するためのカメラ22と、そのカメラ22にて撮影するための光量を得るためのライト23とが搭載されている。なお、カメラ22に加えて(あるいはカメラに代えて)、管路内壁へレーザ光を照射して反射してくる赤外線を受信して記録するレーザ赤外線計測機を備えていてもよい。図示を省略しているが、飛行ドローン20には、磁気コンパスも搭載している。
下水管10には、下水12が存在する場合がほとんどである。飛行ドローン20は、下水面12Aの上であって、管内壁に接しないように飛行するのである。図1では、飛行ドローン20が移動の前提としてホバリングをする際に、反射風が下水面12Aおよび管内壁を伝って飛行ドローン20を押し下げることがあり得る旨を表現している。
【0059】
図2
図2では、飛行ドローン20が、下水管10の長手方向における垂直な断面上において、ほぼ中央に位置するためのメカニズムを概念的に示している。
図2では詳細なハードウェアの図示を省略しているが、飛行ドローン20には、赤外線垂直送受信機、赤外線水平送受信機を搭載している。赤外線の代わりに、レーザ光を発振し、その反射光を受信(受光)するものでもよい。
【0060】
なお、赤外線に代わって超音波(超音波センサ)を用いる場合、管路の内径が小さいと乱反射が発生し、距離を正確に測れない場合が確認された。換言すれば、管路の内径が大きい場合には、超音波を用いることも可能であると推測される。
【0061】
赤外線垂直送受信機は、垂直方向における上方向および下方向の壁に向かって赤外線を発振し、その反射波を受信する。それによって、上下の壁面までの距離を飛行ドローン20が把握する。そして、その位置を維持した方がよいのか、上へまたは下へ移動した方がよいのか、などを判断し、必要に応じてプロペラへの制御信号を上下制御手段として発する。
【0062】
赤外線水平送受信機は、進行方向に垂直な断面における右方向および左方向の壁に向かって赤外線を発振し、その反射波を受信する。それによって、左右の壁面までの距離を飛行ドローン20が把握する。そして、その位置を維持した方がよいのか、右へまたは左へ移動した方がよいのか、などを判断し、必要に応じてプロペラへの制御信号を左右制御手段として発する。
なお、水平方向および垂直方向へ発振する赤外線の周波数は、異ならせている。受信した反射波を錯綜しないようにするためである。
【0063】
図3
図3に示すのは、飛行ドローン20の拡大図であり、下水管の長手方向に向かって飛行する状態を併せて示している。
進行方向に対しては、図示を省略するが、赤外線を送信するとともに、その赤外線が反射してきた場合にはその反射波を受信する進行方向赤外線送受信機を備えている。
反射波を受信した場合には、障害物があると認識できる。なお、進行方向へ発振する赤外線の周波数は、図2に示した水平方向、垂直方向へ発振する赤外線の周波数とは異ならせている。
【0064】
ここに示す飛行ドローン20は4つのプロペラ21を備えるとともに、機体の中央部分にはライトとカメラとを備えている。ライトは、機体の上側を照らす上ライト23Aと、機体の下側を照らす下ライト23Bとからなる。カメラは、機体の上側を撮影する上カメラ22Aと、機体の下側(下水管の下半分)を撮影する下カメラ22Bとからなる。ライトおよびカメラによって、この飛行ドローン20は、下水管の内壁面を連続的に撮影することができる。
【0065】
図示を省略しているが、プロペラ21にはガードを備え、壁面などへ接触してもプロペラ21が損傷する事態を抑制している。
なお、図示は省略するが、カメラ22A,22Bのほかにビジョンセンサを備えている。ビジョンセンサが取得した内壁の撮影データと、予め取得してある内壁面の画像データとを照合することで現在位置を把握するのである。
【0066】
図4
図4では、飛行ドローン20が下水管のどこにいるのかを把握するための技術としての一例を概念的に示している。
下水管10の内壁上面付近には、等間隔(例えば1メートルごと)でRFID15A,15B,15C,・・・を埋設している。RFIDとは、無電源ICタグとも言われ、固体識別が可能なICチップを内蔵している。自らは電源を持たないが、電源を備えた専用の受信機を近づけると、その受信機とRFIDとが双方向通信を実行する。受信機としては、固体識別が可能なICチップが近くにあることを認識できることとなる。
【0067】
図4に示した飛行ドローン20は、上述したようなRFIDとの短距離無線通信が可能な専用の受信機を備えている。
図4では、飛行ドローン20がRFID15Aを通過し、15Bとの双方向通信を実行中である旨を図示している。飛行ドローン20には、無電源ICタグと管路内における位置との対応テーブルを記憶した対応位置テーブル記憶チップが予め備えられているので、下水管のどこにいるのかを自ら把握することができる。
【0068】
所定のRFIDとの通信開始時刻および通信が終了した時刻を記録することで、それらの時刻に飛行ドローン20がRFID15Bの付近を飛行していたことが分かる。前述したカメラによる撮影データとの紐付けをすることで、その撮影データがどの位置にて撮影されたデータであるか、も把握できる。
なお、二つのRFIDの間において、二つのRFIDとの双方向通信を実行する場合がありえるが、電波の強弱までをデータ化することができれば、更に細かい位置の把握が可能となる。
【0069】
図示を省略するが、RFID15A,15B,15C,・・・の代わりに、一次元バーコードを印刷したプレートを所定間隔にて配置固定し、その一次元バーコードを、飛行ドローン20が搭載するバーコードリーダにて読み取ることとしてもよい。
また、一次元バーコードを二次元バーコードとしてもよい。二次元バーコードを採用する場合には、バーコードリーダに代えて、カメラが二次元バーコードを読み取って、所定のデータへ変換する。
【0070】
なお、RFIDとバーコードは、二者択一ではなく、併用してもよい。併用することによって、いずれかの読み取りに不具合があっても、位置の特定がまったくできなくなる事態の発生を抑制できる。
【0071】
図5
図5では、中継移動機を採用した第二の実施形態を説明している。
この実施形態における中継移動機とは、飛行ドローン20に追従して下水管10の内部を移動するフロート式ドローン30である。詳細は、図6を用いて後述する。
このフロート式ドローン30は、下水12に浮き、飛行ドローン20と多機能ケーブル25にて接続されている。また、サポートカー40に搭載(内蔵)されているデータ収集解析機と、電源等ゲーブル35にて接続されている。
【0072】
図6
図6に示すように、フロート式ドローン30は、比重が小さな本体であるフロート31と、そのフロート31に固定されて水面を推進する推進用のプロペラ32と、飛行ドローン20のカメラ22による被写体へ光を照射するライト33とを備えている。
なお、このライト33が存在するので、飛行ドローン20は図3に示していたようなライト23を搭載していない。
【0073】
飛行ドローン20と接続される多機能ケーブル25は、飛行ドローン20が撮影した撮影データを受信したり、飛行ドローン20の制御データを送信したりすることに使われる。
また、サポートカー40と接続される電源等ケーブル35は、飛行ドローン20が撮影した撮影データを送信したり、飛行ドローン20の制御データを送信したり、フロート式ドローン30および/または飛行ドローン20へ供給される電気エネルギを受け取ったりする。
【0074】
図7
図7には、前述したように、ライト23を搭載していない飛行ドローン20Aを示している。
フロート式ドローン30のライト33が照らす下水管10の壁面を撮影するためのカメラ(上カメラ22A,下カメラ22B)が搭載されている。
また、上カメラ22A,下カメラ22Bにて撮影した撮影データは、多機能ケーブル25を介してフロート式ドローン30へ送信する。
【0075】
多機能ケーブル25は、テンションは掛からないが、水面には触れない程度のたるんだ状態を保つことが望ましい。しかし、飛行ドローン20Aの進行速度がフロート式ドローン30よりも速い場合にはテンションが掛かってしまう。この場合、フロート式ドローン30のプロペラ32の出力を上げ、飛行ドローン20Aの進行速度にフロート式ドローン30を追い付かせるように制御される。
【0076】
この制御を実行するため、フロート式ドローン30における多機能ケーブル25の接続部分には、テンションを把握できるテンションメータが備えられており、そのテンションメータによる測定値を用いてプロペラ32の制御装置がプロペラ32の出力を制御している。
なお、前記のテンションメータは、多機能ケーブル25がどれだけの長さであるかをも把握できる。そのため、フロート式ドローン30と飛行ドローン20Aとの距離がおよそ把握できる。電源等ケーブル35がどのくらいの長さを繰り出したか、を把握することで、飛行ドローン20Aの位置も把握できる。
【0077】
電源等ケーブル35は、サポートカー40において、どれだけの長さが引き出されたのかを把握できるようになっており、フロート式ドローン30とサポートカー40との距離が大凡把握できる。すなわち、飛行ドローン20Aの位置も大凡把握できることとなる。
【0078】
図8
図8に示す第三の実施形態では、中継移動機として水陸両用ドローン50を採用している。
水陸両用ドローン50とは、フロート式ドローン30では進行できないような下水が少ないまたは無い下水管であっても、飛行ドローン20へ追従できるように、車輪走行も可能となっている。
また、この実施形態に示す水陸両用ドローン50は、飛行ドローン20とは無線通信をするためのアンテナ51を備えており、フロート式ドローン30と異なり、多機能ケーブル25を備えていない。
【0079】
この実施形態に示す水陸両用ドローン50は、ライトを備えておらず、飛行ドローン20にライト23が備えられている(第一の実施形態と同じ)。
この実施形態では、水陸両用ドローン50とサポートカー40との接続は、電源等ケーブルではなく通信用ケーブル36が採用されている。水陸両用ドローン50にライトを備えておらず消費電力が小さいので、通信用ケーブル36は、飛行ドローン20から受信する撮影データや位置データなどを送信したり、飛行ドローン20へ送信すべき各種のデータ(制御信号を含む)をデータ収集解析機から受信したりするだけの機能を備える。
【0080】
図9
飛行ドローン20は、被写体をライトにて照らしてカメラで撮影し、その撮影データや別途把握した位置データを水陸両用ドローン50へ無線通信によって送信する(1)。水陸両用ドローン50は、通信用ケーブル36を介して撮影データや位置データをデータ収集解析機へ転送する(2)。
撮影データや位置データを受信したデータ収集解析機は、その撮影データや位置データを解析し、制御データを算出する(3)。
【0081】
たとえば、ある位置データの撮影データが不鮮明である、というような場合には、飛行ドローンが戻ってくる際に、もう一度その位置データにおける撮影データを取得するように制御データを自動作成し、制御データを水陸両用ドローン50へ送信するのである(4)。
その制御データを受信した水陸両用ドローン50は、飛行ドローン20へその制御データを転送する(5)。
【0082】
図10
図9を用いて前述した制御データは、データ収集解析機が自動作成した例を示したが、図10では、操作者が制御データを作成する場合を例示している。
まず、水陸両用ドローン50から転送されてきた飛行ドローン20による撮影データや現在位置データを、データ収集解析機がモニタへ出力させる(1)。その出力データを閲覧した操作者は、飛行ドローン20の状態などを検証する(2)。
操作者は、必要であると判断した場合に飛行ドローン20を操作するための制御データを入力(またはデータ収集解析機に作成させて入力)し、水陸両用ドローン50を介して飛行ドローン20へ送信する(3)。
【0083】
送信した制御データによって、飛行ドローン20が操作者の意図通りになっているかどうか、操作者が検証するため、飛行ドローン20による撮影データや現在位置データを再び出力させる(4)。
そして、出力された撮影データや現在位置データを操作者が検証する(5)。
図示は省略しているが、更に制御データが必要である場合には、再び制御データの入力、飛行ドローン20への送信を実行する。
【0084】
図11
図11は、飛行ドローンに搭載されているハードウェアや機能を、入力手段、演算手段/制御手段、および出力手段に大別し、それらの関係性を図示したものである。
入力手段としては、カメラ、赤外線前方送受信機、赤外線垂直送受信機、赤外線水平送受信機、短距離無線通信装置が含まれる。制御データを受信するという意味で中継移動機も入力手段と解釈してもよい。
【0085】
制御手段としては、赤外線垂直送受信機からの反射波を受信してそれを解析して制御信号を作成する上下制御手段、赤外線水平送受信機からの反射波を受信してそれを解析して制御信号を作成する左右制御手段、短距離無線通信装置との無線通信にて現在位置を把握する現在位置把握手段、などが含まれる。
出力手段としては、各種の動きや位置の変更をするための制御信号を受けて駆動するプロペラ、撮影データを得るためのカメラの被写体への光を照射するライト、撮影データや現在位置データをデータ収集解析機へ送信するための中継移動機などが含まれる。
【0086】
図12
図12に示す第四の実施形態は、図8に示した実施形態との相違点を中心に説明する。
中継移動機としての水陸両用ドローン50には、ライト53を搭載しており、飛行ドローン20にはライトを搭載していない。
一方、飛行ドローン20と水陸両用ドローン50との間は、無線通信である。この無線通信に代えて、多機能ケーブル25を採用してもよい。
【0087】
図13
図13に示す第五の実施形態は、図5に示した実施形態との相違点を中心に説明する。
中継移動機としてのフロート式ドローン30には、アンテナ31を搭載することによって飛行ドローン20との間を無線通信としている。一方、ライトを搭載していないので、飛行ドローン20にはライト23を搭載している。
ところで、カメラに代えて、管路内壁へレーザ光を照射して反射してくる赤外線を受信して記録するレーザ赤外線計測機を飛行ドローンに搭載している場合には、前述してきたライト23(または53)は不要となる。
一方、カメラおよびレーザ赤外線計測機を飛行ドローンに搭載している場合には、管路内壁の異常発見を二種類の機器で実行できることとなるので、見落としの可能性を低めることができる。
【0088】
第一から第五までの実施形態によれば、飛行ドローン20(20Aも)を管路(下水管10)内で安定して飛行させること、管路内壁における異常箇所の発見すること、およびその場所を特定することに寄与する技術を提供している。
たとえば、図4を用いて説明した技術により、非GPS環境下での飛行、自らの位置特定が可能となる(課題A-1を解決)。
図2を用いて説明した技術により、閉鎖系で自らを安定させることが可能となる(課題A-2を解決)。
図3を用いて説明した技術により、閉鎖系における長手方向へ進行させることが可能となる(課題A-3を解決)。
プロペラ21にはガードを備えることで、壁面へ接触してしまった場合の損傷を防止または抑制することが可能となる(「課題A-4」を解決)。
【0089】
図10を用いて説明した技術により、壁面へ接触してしまって安定性を損なったり墜落したりした場合に復帰させることが可能となる(「課題A-5」を解決)。
操作者の操作が複雑となるであろうが、図10を用いて説明した技術により、復帰できなかった場合に何らかのバックアップ体制を取れる可能性もある(「課題A-6」を解決)。
【0090】
図3図6を用いて説明したように、飛行ドローン20または中継移動機30(または50)に対して、ライト23(またはライト33、53)を備えることとして、管路内壁の撮影を可能とする(課題B-1を解決)。
図2を用いて説明した技術により、ぶれずに撮影したり、焦点を定めて撮影したりすることを可能とする(課題B-2,3を解決)。
図3を用いて説明した技術、すなわち、下ライト23Bおよび下カメラ22Bを備えることとして、水面下の内壁であっても撮影できることとした(課題B-4を解決)。
【0091】
撮影した映像データは、飛行ドローン20が持ち帰ったり、データ収集解析装置へ転送されたりするので、専門家が確認できる。よって、撮影した映像から異常箇所を発見可能とした(課題B-5を解決)。
図4を用いて説明した技術により、異常箇所の場所を特定可能とした(課題B-6を解決)。
【0092】
図14
図14は、人孔13の地上側から飛行ドローン20を下水管10との交差部分へ降ろし、下水管10の長手方向(水平方向)への飛行を開始させるためのポート本体74を備えたドローン発着ポート70の構造を示す。
このドローン発着ポート70は、飛行ドローン20の離発着に便利であるとともに、人孔13の長手方向(垂直方向)を移動させる際には、垂直方向の投影面積を狭めることができる折り畳みポート70Aとなっている。
【0093】
この折り畳みポート70Aは、人孔13の長手方向(垂直方向)の所定位置まで前ポート本体74を移動させるための直パイプである伸縮ポール71と、その伸縮ポール71に対して、フレーム支軸75を中心に回動可能であるように軸支持されるポート支持フレーム72と、ポート支持フレーム72の回動角度を規制するための支持リンク73と、を備えている。
【0094】
ポート支持フレーム72は、クランク形状をなした二本のフレームで形成されており、平面形状においてフレーム支軸75と反対側の端部は、ポート本体74を挟むように位置しており、ポート本体74に対して回動可能であるように、ポート支軸76にてポート本体74を軸支持している。
ポート支持フレーム72の長手方向は、伸縮ポール71の長手方向と直角となる位置まで回動し、支持リンク73によってその位置で安定する。
【0095】
支持リンク73は、ポート支持フレーム72に対しては回動可能であるとともに、伸縮ポール71に対してはスライド可能であるように固定されている。
支持リンク73における上端は、伸縮ポール71に内蔵された支持リンク操作ワイヤ73Aを固定している。その支持リンク操作ワイヤ73Aを引っ張ったり、弛めたりすることでポート支持フレーム72の折り畳み機構を実現している。
【0096】
前記のポート本体74は、ポート支持フレーム72における支持リンク73とは反対側で、ポート支軸76に軸支持される半球形状の発着ポートを形成している。半球形状の上面が発着面74Aとなる。
前記の折り畳み機構は、ポート支持フレーム72の長手方向が垂直ポール71の長手方向となす角度が鋭角となるような第一ポジション、および前記の発着面(74A)を垂直ポール(71)から離した上で水平とする第二ポジション、をとることを可能としている。
ポート本体74は、全体をメッシュ素材で形成しており、飛行ドローン20が離着陸の際にプロペラから生じる気流を受けにくくしている。
【0097】
ポート本体74の周囲には、前記の第一ポジションをなしている際の発着面74Aにおける垂直方向の投影面積を拡開させる多数のサポート板77を備えている。このサポート板77は、発着面74Aから見て外側へ膨らむような曲面をなし、発着面74Aと連続している。
そして、前記の第二ポジションの際の発着面74Aを上から見た場合には発着面74Aを中心として花弁が広がるような形状をなし、発着面74A側は、それぞれ重なるようになっている。
【0098】
また、サポート板77は、前記の第一ポジションをなしている際には発着面74Aにおける垂直方向の投影面積を狭めるように折り畳み可能であるように形成している。
第一ポジションから第二ポジションへ動かした後に、伸縮ポール71の内部を通じて地上までつながるサポート板操作ワイヤ77Cを弛めるなどの操作をすることによって、発着面74Aにおける垂直方向の投影面積を拡開させるように回動する。
【0099】
第二ポジションから第一ポジションへ動かすと、伸縮ポール71側のサポート板77が伸縮ポール71に接触して回動し、サポート板77の内側面が発着面74Aへ近づくように回動する。伸縮ポール71に接触していないサポート板77も、接触していたサポート板77との重なり部分があるので、サポート板77の内側面が発着面74Aへ近づくように回動する。これによって、第二ポジションをなしている際には発着面(74A)における垂直方向の投影面積を狭めることとなる。
【0100】
第一ポジションとした折り畳みポート70Aは、人孔13への導入時に発着面74Aに飛行ドローン20Bを搭載し、人孔13における下水管10との交点まで、発着面74Aが到達するように降ろす。
第一ポジションでは、サポート板77が発着面74Aを囲うように閉じており、その閉じた中に飛行ドローン20Bが収まっているので、飛行ドローン20Bを傷つけるおそれが小さい。
【0101】
第一ポジションの状態のまま、人孔13における下水管10との交点まで発着面74Aを到達させたら、支持リンク操作ワイヤ73Aを弛める。すると、支持リンク73における伸縮ポール71側の端部が下がり、ポート支持フレーム72は、その長手方向が水平となるまで回動する。その際、支持リンク73における伸縮ポール71側の端部は、最下端へ到達し、それよりも下がらないように規制されている。
【0102】
なお、フレーム支軸76は、ポート支持フレーム72は、その長手方向が水平よりも下がらないように、ギアなどで規制することとしてもよい。
ポート支持フレーム72の長手方向が水平となると、サポート板77が自重で開き、飛行ドローン20Bが発着面74Aから飛び立ちやすくする。
【0103】
第二ポジションとなった折り畳みポート70Aは、サポート板77が発着面74Aに連続するように開いているので、飛行ドローン(ガード付きドローン20B)が着陸する際に発着面74Aの中央から若干外れていても、サポート板77によって発着面74Aへ導かれる。
また、発着面74Aから発進する際は、サポート板77が邪魔になりにくい。
【0104】
前記の伸縮ポール71は、所定長さのパイプ(またはロッド)を連結して形成されている。そのため、折り畳みポート70Aを使わない場合(使う前の状態、使い終えた後の状態)には、連結を外し、持ち運びや保管に便利なようにしている。
【0105】
伸縮ポール71におけるポート本体74の近傍には、図示を省略したライトとともに発着面74A付近を撮影可能な離発着カメラ71Aを備えている。飛行ドローン20Bの離発着を地上のスタッフが確認するためである。
【0106】
図15
図15では、ドローン発着ポート70のバリエーションとして、下水管の下面内壁へ接する脚部78を備えた水避けポート70Bを示す。
この水避けポート70Bは、細長い複数の棒状体にて形成されており、下端部が下水管の下面内壁へ接した場合に、前記の発着面74Aを水平とするものである。したがって、下水管の下面内壁が湾曲している場合には、脚部78をなす複数の棒状体の長さも、固定される部位によって異なる。
【0107】
脚部78を細長い複数の棒状体にて形成するのは、下水管に水流がある場合に、その水流に当たる面積を小さくする。水流に当たる面積が大きいと、ドローン発着ポート70が不安定になりやすいためである。
【0108】
水避けポート70Bは、複数の吊りワイヤ80にて吊り下げられている。半楕円状のリングである吊りリング79の両端は、ポート本体74へ軸支持されており、その吊りリング79も吊りワイヤ80が固定されており、その吊りワイヤ80は上方向へ引っ張られている。そして、その吊りリング79は、人孔13における下水管10との交点まで発着面74Aを到達させたら、その吊りリング79を引っ張っていた吊りワイヤ80を弛ませ、発着面74Aの上側には存在しないようにする。そうすることによって、飛行ドローン20Bを発着面74Aから飛び立ちやすくする。
【0109】
この水避けポート70Bにおいては、サポート板77にも吊りワイヤ80が固定されている。その吊りワイヤ80が緊張している場合には、発着面74Aにおける垂直方向の投影面積を狭めるように折り畳まれる。吊りワイヤ80が弛んでいる場合には、発着面(74A)における垂直方向の投影面積を広げるように、サポート板77の下端が軸支持されている。
人孔13の内壁に最も近づく吊りワイヤ80には、人孔13の内壁へ当接する管壁当接部材81を複数、等間隔に備えている。その管壁当接部材81が人孔13の内壁へ当接することで、人孔13の長手方向(垂直方向)を安定して水避けポート70Bを上下動させることができる。
【0110】
図16
図16では、ドローン発着ポート70のバリエーションとして、人孔13の縦内壁へ接する管壁当接部材81を備えた吊りワイヤ80による片持ちポート70Cを示す。
この片持ちポート70Cは、ポート本体74における水平方向の一端を固定した釣りワイヤ80で吊り下げる。その吊りワイヤ80には、人孔13の内壁へ当接する管壁当接部材81を複数備えることで、人孔13の長手方向(垂直方向)を安定して片持ちポート70Cを上下動させることができる。
【0111】
また、ポート本体74における水平方向の他端にも吊りワイヤ80を固定しているが、こちらの吊りワイヤ80は、弛ませると発着面74Aを広げる開き板77Bに固定している。
一方、管壁当接部材81を備えた方の吊りワイヤ80は、発着面74A側の面にクッション性のある素材を備えたクッション板77Aとしている。クッション板77Aは、飛行ドローン20Bが発着面74Aへ着陸した際、衝突してもそのダメージを小さくする役割を果たす。
【0112】
図17
図17では、ドローン発着ポート70のバリエーションとして、人孔13の縦内壁へ固定されたハンガー固定部材81A、ハンガー83、滑車82などを用いた滑車式ポート70Dを示す。
この滑車式ポート70Dは、前記のハンガー固定部材81Aにハンガー83を固定し、そのハンガー83に軸支持される滑車82と、その滑車82へ巻き付けられる巻きワイヤ80Aとを備える。
滑車82には、図示を省略したワイヤ巻き取りドラムを備える。ワイヤ巻き取りドラムが巻きワイヤ80Aを送り出すことで、ポート本体74が人孔13を下降し、ワイヤ巻き取りドラムが巻きワイヤ80Aを巻き取ることで、ポート本体74が人孔13を上昇する。
【0113】
この滑車式ポート70Dの場合、管壁当接部材81は巻きワイヤ80Aに備えるのではなく、別の手段(たとえば別のワイヤ)にて、人孔13の内壁へ位置させる。その管壁当接部材81によって、人孔13の長手方向(垂直方向)を安定して滑車式ポート70Dを上下動させることができる。
なお、ポート本体74において、クッション板77A、開き板77Bを備えるのは、片持ちポート70Cの場合と同様である。
【0114】
図18
図18および図19では、下水管10内にて落水してしまって飛び立てなくなった飛行ドローン20B、故障などによって動けなくなってしまったフロート式ドローン30、水陸両用ドローン50などを回収するためのドローン回収具90を示す。
【0115】
図18に示すドローン回収具90は、複数の吊りワイヤ80の下端に耐水性の粘着テープ91を固定することで、粘着式ドローン回収装置としている。人孔13の内壁に最も近づく吊りワイヤ80には、人孔13の内壁へ当接する管壁当接部材81を複数、等間隔に備えている。
また、粘着テープ91の下端付近には、図示を省略した水感知センサを備えている。その水感知センサが水の存在を感知することで、流れる下水に対して粘着テープ91がどの程度漬かっているかを把握し、回収のミスを軽減させる。
【0116】
なお、飛行ドローン20Bには、水没を防ぐため、比重が極めて軽いフロート部材または水によって反応するエアバッグなど、機体を水に沈ませない部材を機体のどこかに備えておくこととするのが望ましい。
【0117】
回収作業の便宜のため、ドローン回収具90における粘着テープ91の近傍には、上流側を見るための上流確認用カメラ94や、粘着テープ91に引っ掛かったものを見るための回収確認用カメラ95を備える。
【0118】
粘着テープ91に代えて、または粘着テープ91と併用して、磁石(電磁石を含む)を、ドローンの回収手段としてもよい。ドローンの少なくとも一部には磁性体材料が使われているからである。
【0119】
図19
図19に示すドローン回収具90は、複数の吊りワイヤ80の下端に回収用網92を固定するとともに、その回収用網92の下端に吊り下げた錘93を備えることで、網式ドローン回収装置90Bとしている。
また、人孔13の内壁に最も近づく吊りワイヤ80には、人孔13の内壁へ当接する管壁当接部材81を複数、等間隔に備えている。
【0120】
こちらの網式ドローン回収装置90Bでは、錘93に図示を省略した水感知センサを備える。水感知センサの機能は、粘着式ドローン回収装置と同様である。
また、回収作業の便宜のための上流確認用カメラ94、回収確認用カメラ95は、図18に示した実施形態と同様である。
【0121】
図20
図20には、ドローン回収具のバリエーションとして、合成ゴムの管で形成された伸縮フレーム96を備えた液体膨張型ドローン回収具90Cを示している。
この液体膨張型ドローン回収具90Cは、図20(b)に図示するポンプ97によって流体の出し入れによって伸縮フレーム96を膨張収縮させるものである。図20(c)、(d)に示すように、液体を注入した場合に前記の管路内を流れる液体に流されてくるドローンを引っ掛けるのに適した、網形状となる。
注入した液体を抜き取った場合には、図20(b)に図示するように、前記の垂直方向の人孔13における長手方向を昇降させやすい形状となる。
【0122】
液体の注入、および抜き取りは、図示を省略したポンプを地上に設置して実施する。
膨張させるために用いるのは、水が最も一般的であるが、回収のための条件によっては他の液体を選択してもよい。
【0123】
この実施形態に示すドローン回収具90Cでは、全体を合成ゴムの管で形成したとして説明しているが、下水管10に到達する部位(ドローン引っ掛け具に相当する部位)のみを合成ゴムの管で形成することとしてもよい。
ドローン回収具90Cの素材も、合成ゴムに限るものでもない。
【0124】
図21
図21に示すのは、飛行ドローンが現在位置を把握するために用いる位置確認具60である。
この位置確認具60は、垂直方向の孔の長手方向に沿って降ろすとともに調査対象である前記の管路内の長手方向へ連続して到達させるスケールワイヤ61と、そのスケールワイヤ61に対して等間隔に固定されたフロートボール63と、前記のスケールワイヤ61の巻き取りおよび送り出しを行うワイヤ巻き取りドラム62と、を備える。
ワイヤ巻き取りドラム62は、内壁の調査を実行した管路の端部まで、フロートボール63が達するように、スケールワイヤ61を送り出す。フロートボール63が等間隔に固定されているので、人孔13の高さ方向を差し引くことで、現在位置の把握手段を敷設することができることとなる。
前記の飛行ドローン(20)における前記の現在位置把握手段は、前記の等間隔固定体(63)が近接したことを認識することで現在位置を把握するのである(図21参照)。
【0125】
フロートボール63は、管路内を流れる液体に対して浮くような素材を採用している。また、一つ一つの表面模様が異なっている。加えて、RFIDを内蔵している。飛行ドローン20が搭載したカメラによって、フロートボールを視認し、RFIDとの短距離通信をすることで、現在位置を確認できる。
なお、液体が流れていない場合には、管路の内壁にこすられることとなるので、摩耗に強い素材を採用することが望ましい。
【0126】
スケールワイヤ61は、管路内を液体が流れている場合には、柔軟な紐状体でもよいが、液体が流れていない場合にも使えるようにするためには、押して送り出せる程度の堅さのある鋼材のワイヤ等を採用する。
【0127】
図22
図22では、図14から図17に示したようなドローン発着ポート70に対して、二つの機能を追加した旨を示す概念図である。
まず、ドローン発着ポート70の発着面74Aへ着陸した飛行ドローン20Bが順電できるように、充電設備を備えている。図22に示した充電設備は、地上とつながっていない状態として図示しており、バッテリ式であることを前提としているが、バッテリ式に限られるものではない。また、発着面74Aへ接触しなくても給電が可能な無線給電システムを採用してもよい。
【0128】
また、ドローン発着ポート70の発着面74Aへ着陸した飛行ドローン20Bから、管路の内壁の画像データやそれに紐づけられた位置データなどを吸い上げるドローン格納データ受信手段を備えている。
このドローン格納データ受信手段もまた、発着面74Aへ飛行ドローン20Bが接触していなくても、データの吸い上げが可能な無線通信システムを採用してもよい。
【0129】
ドローン格納データ受信手段が受信したデータは、地上にあるデータ受信蓄積手段へシリアル通信にて送られる。データ受信蓄積手段は、たとえば、地上のサポートカー40に備えられておくこととして図示している。
【0130】
図23
図23には、飛行ドローン20(プロペラガードを外した状態)の寸法を示している。
6センチメートル角のセンターフレームに、4つのプロペラを配している。それぞれのプロペラの直径は23センチメートル(9インチ)であり、全幅を50センチメートル以内としている。
ただし、飛行ドローンのサイズやタイプなどは、対象となる管路の種類によって適宜選択されるものである。図23に示したのは、管径2.2メートルの下水管の内壁を撮影する際に用いた一つである。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、GPSの電波が届かず、上下左右が囲まれた閉鎖系での飛行を前提とした無人飛行ドローンの製造業、飛行制御のコンピュータプログラムを開発するソフトウェア開発業、下水管を敷設する土木建築業、管路内の保守点検をするサービス業、などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0132】
D ;配管(下水管)の内径
10 ;下水管 11 ;下水管溝内
12 ;下水 12A;水面
13 ;人孔
15 ;RFID
20 ;飛行ドローン 20A;飛行ドローン(ライト無し)
21 ;プロペラ
22 ;カメラ 22A;上カメラ
22B;下カメラ
23 ;ライト 23A;上ライト
23B;下ライト
25 ;多機能ケーブル
30 ;フロート式ドローン(データ中継機、中継移動機)
31 ;フロート
32 ;プロペラ 33 ;ライト
35 ;電源等ゲーブル 36 ;通信用ケーブル
40 ;ドローンサポートカー(データ収集解析機)
50 ;水陸両用ドローン(データ中継機)
51 ;アンテナ 53 ;ライト
60 ;位置確認具 61 ;スケールワイヤ
62 ;ワイヤ巻き取りドラム 63 ;フロートボール
70 ;ドローン発着ポート 70A;折り畳みポート
70B;水避けポート 70C;片持ちポート
70D;滑車式ポート
71 ;垂直ポール(伸縮ポール) 71A;離発着確認用カメラ
72 ;ポート支持フレーム
73 ;支持機構(支持リンク) 73A;支持リンク操作ワイヤ
74 ;ポート本体 74A;発着面
75 ;フレーム支軸 76 ;ポート支軸
77 ;サポート板 77A;クッション板
77B;開き板 77C;サポート板操作ワイヤ
78 ;脚部 79 ;吊りリング
80 ;吊りワイヤ
81 ;管壁当接部材 82 ;滑車
83 ;ハンガー
90 ;ドローン回収装置 90A;粘着式ドローン回収装置
90B;網式ドローン回収装置 90C;液体膨張型ドローン回収装置
91 ;粘着テープ 92 ;回収用網
93 ;錘 94 ;上流確認用カメラ
95 ;回収確認用カメラ 96 ;伸縮フレーム
97 ;ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23