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特許7019074単細胞を物理化学的に処理するマイクロ流体チップ、マイクロ流体装置及びそれらを用いて単細胞を物理化学的に処理する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】単細胞を物理化学的に処理するマイクロ流体チップ、マイクロ流体装置及びそれらを用いて単細胞を物理化学的に処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220204BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220204BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220204BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220204BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N37/00 101
C12N1/00 Z
C12N5/071
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020560229
(86)(22)【出願日】2018-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2018095750
(87)【国際公開番号】W WO2019237449
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】201810598384.X
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520411537
【氏名又は名称】深▲せん▼韋拓生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】林 小貞
(72)【発明者】
【氏名】呉 潔
(72)【発明者】
【氏名】房 ▲炎▼晶
【審査官】中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0194012(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108102877(CN,A)
【文献】国際公開第2017/031017(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107904163(CN,A)
【文献】特開2007-292506(JP,A)
【文献】特表2009-536313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単細胞を物理化学的に処理するマイクロ流体チップであって、
前記マイクロ流体チップの本体は、スイッチバック式単細胞処理回収通路、第1試薬流入通路、第2試薬流入通路、試薬混合通路、第3試薬流入通路、逆洗浄通路、及び負圧と廃液の共用通路を含む液体通路層と、
液体通路層の各通路の開放と閉鎖を制御する空気圧マイクロ弁群を含むガス通路層と、
液体通路層とガス通路層との間に挟まれた弾性薄膜と、
を含み、
第1試薬流入通路、第2試薬流入通路はそれぞれ試薬混合通路の入口に連通し、前記試薬混合通路、第3試薬流入通路、逆洗浄通路、及び負圧と廃液の共用通路はそれぞれスイッチバック式単細胞処理回収通路に連通し、第3試薬流入通路と逆洗浄通路はそれぞれ独立した通路又は共用通路であり、
スイッチバック式単細胞処理回収通路は、細胞ローディング通路、細胞処理領域及び細胞回収通路を含み、
細胞ローディング通路と細胞回収通路は細胞処理領域上流の同じところで細胞処理領域に連通し、単細胞はローディング、処理及び回収の過程において通路に沿ってスイッチバック式に移動する、
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
細胞ローディング通路は外部の細胞ローダに連通する細胞吸込口に接続され、細胞回収通路は細胞を回収する細胞回収孔に接続されている、
ことを特徴とする請求項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記細胞回収孔は細胞回収通路末端に設置されたマイクロウェルを含み、マイクロウェルは円形のマイクロ孔であり、その垂直深さは細胞回収通路より深く、又はそれと一致する、
ことを特徴とする請求項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記細胞回収孔はさらに前記マイクロウェルを取り囲む環状マイクロピラーアレイを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記試薬混合通路、第3試薬流入通路、逆洗浄通路、及び負圧と廃液の共用通路と、それぞれのスイッチバック式単細胞処理回収通路との連通部にはいずれもマイクロピラーアレイが設置される、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
細胞処理領域と、負圧と廃液の共用通路との連通部に円弧状のマイクロピラーアレイが設置されている、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項7】
負圧と廃液の共用通路は細胞ローディング過程において外部の負圧源に連通し、細胞処理と回収過程において廃液槽に連通する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項8】
空気圧マイクロ弁群は6つの空気圧マイクロ弁を含み、第1試薬流入通路、第2試薬流入通路及び試薬混合通路は1つの空気圧マイクロ弁(V1)を共用し、負圧と廃液の共用通路、細胞ローディング通路及び細胞回収通路はそれぞれ1つの空気圧マイクロ弁(V5、V3、V4)により制御され、第3試薬流入通路と逆洗浄通路がそれぞれ独立した通路である場合、それぞれ1つの空気圧マイクロ弁(V2、V6)により制御され、第3試薬流入通路と逆洗浄通路が共用通路である場合、1つの空気圧マイクロ弁(V2)は第3試薬の流れ込みを制御し、別の空気圧マイクロ弁(V6)により細胞処理領域に対する洗浄と逆洗浄の切り替えを実現する、ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項9】
単細胞を物理化学的に処理する自動化マイクロ流体装置であって、
請求項1~のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ、気圧発生制御モジュール、ロジック制御回路及び光ファイバーセンシングモジュールを含む、
ことを特徴とするマイクロ流体装置。
【請求項10】
光ファイバーセンシングモジュールは細胞の位置を監視するのに用いられ、ロジック制御回路は細胞センシング信号をリアルタイムに読み取ることによって細胞が所定位置に達したか否かを判断し、さらに次の操作を実行するか否かを判断する、
ことを特徴とする請求項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載のマイクロ流体チップ或いは請求項8又は9に記載のマイクロ流体装置を用いて単細胞を物理化学的に処理する方法であって、
(1)単細胞を細胞ローダに滴下し、負圧をオンにして単細胞をチップに吸い込むことと、
(2)細胞処理領域で前記細胞を捕捉した時、光ファイバーセンシングモジュールにより細胞センシング信号を検出すると、空気圧マイクロ弁群を制御することによって順に異なる割合の第1試薬、第2試薬及び第3試薬を用いて前記細胞を物理化学的に処理する、物理化学的処理プロセスを起動することと、
(3)処理完了後、第3試薬を用いて細胞回収孔で捕捉されるまで前記細胞を細胞回収通路内に逆洗浄し、余分の第3 試薬を排出し続け、残留体積が1マイクロリットルを超えないところまで排出した時、細胞回収孔栓を抜き細胞抽出ツールを用いて前記細胞を吸い出し、回収を完了させることと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ流体分野に関し、具体的には単細胞を物理化学的に処理するマイクロ流体チップ、マイクロ流体装置及びそれらを用いて単細胞を物理化学的に処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの発展や生物医学、ヒト生殖補助及び畜産業における品種の維持と育成のニーズに伴って、細胞の凍結融解技術は60年以上の発展を経て、細胞及び生体組織を保存するための確実に実現可能な方法となっている。
【0003】
この中で、ヒト卵子の凍結保存が最も注目され、応用の見通しも最も広い。中国の不妊率は1992年の3%から現在の約20%に増加し、不妊症を治療する主な医学的方法は体外受精(IVF,In Vitro Fertilization)である。中国では、2009年時点で、IVF機関が合計138施設あり、2012年時点で、ヒト生殖補助医療(ART,Assisted Reproductive Technology)行為を行うことが承認された機関が合計356施設であり、精子バンクが17施設である。短い3年間で機関数は倍増しているが、一線都市(首都およびそれに準じる機能を持つ中核都市)でのIVF施術の順番待ち時間は平均して半年以上となり、そのニーズに対応できない深刻な状態である。このような状態になった主な原因は現在の細胞凍結処理技術の効率が低いことである。
【0004】
生殖細胞の一般的な凍結保護剤は、グリセリン、プロピレングリコール及びジメチルスルホキシド等の浸透性保護剤を含み、これらがいずれも中性低分子物質であるため、溶液中で水和作用が発生し、溶液の粘度を向上させ、水分子の結晶化を抑制する。凍結保護剤はさらにスクロース、エチレングリコール及びアルブミン等の非浸透性保護剤を含み、このような物質は溶液を過冷却状態にさせ、特定の温度下で溶質の濃度を低下させることによって保護作用を奏する。
【0005】
近年、細胞産業の高度な発展及び市場ニーズの急成長に伴って、従来の細胞凍結の手作業の制限が日々顕著になっている。一部の業界大手企業が細胞工場と冷凍装置を市場に出しているが、これらの装置の操作プロセスは依然として従来の手作業プロセスに基づいており、細胞に対する細かい操作が不可能である。
【0006】
現在、市場では一部のマイクロ流体チップが細胞凍結の自動化操作を実現しているが、このようなマイクロ流体チップは細胞を細かく操作する処理能力が不足している。確実な細胞捕捉構造に欠けているだけでなく、単細胞特に価値の高い卵細胞が紛失するリスクがあり、また、液体流速を調節する精度が不足し、さらに自動化プロセス処理の効果に影響を与えており、マイクロ弁システムに欠けているため、各液体通路の間で確実に閉鎖することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の実施形態は単細胞を物理化学的に処理するマイクロ流体チップ、マイクロ流体装置、及び前記マイクロ流体チップ又は装置を用いて単細胞を物理化学的に処理する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様によれば、本願の実施形態は単細胞を物理化学的に処理するマイクロ流体チップを提供し、前記マイクロ流体チップの本体は、スイッチバック式単細胞処理回収通路、第1試薬流入通路、第2試薬流入通路、試薬混合通路、第3試薬流入通路、逆洗浄通路、及び負圧と廃液の共用通路を含む液体通路層と、液体通路層の各通路の開放と閉鎖を制御するための空気圧マイクロ弁群を含むガス通路層と、液体通路層とガス通路層との間に挟まれた弾性薄膜と、を含んでもよい。第1試薬流入通路、第2試薬流入通路はそれぞれ試薬混合通路の入口に連通されてもよく、前記試薬混合通路、第3試薬流入通路、逆洗浄通路、及び負圧と廃液の共用通路はそれぞれスイッチバック式単細胞処理回収通路に連通されてもよく、第3試薬流入通路と逆洗浄通路はそれぞれ独立した通路又は共用通路であってもよい。
【0009】
一実施形態において、スイッチバック式単細胞処理回収通路は細胞ローディング通路、細胞処理領域及び細胞回収通路を含むことができ、細胞ローディング通路と細胞回収通路は細胞処理領域上流の同じところで細胞処理領域に連通されてもよく、それにより単細胞はローディング、処理及び回収の過程において通路に沿ってスイッチバック式移動可能である。
【0010】
別の実施形態において、細胞ローディング通路は外部の細胞ローダに連通するための細胞吸込口、即ち外部のチップに対する(world-to-chip)インタフェースに接続されてもよく、細胞回収通路は細胞を回収するための細胞回収孔、即ちチップの外部に対する(chip-to-world)インタフェースに連通されてもよい。
【0011】
一実施形態において、細胞ローダは上部キャップ、ボルト本体及び下部キャップで構成されてもよい。ボルト本体の広い上半分は細胞を含有する液体を盛り込み、狭い下半分はマイクロ流体チップに接続され、細胞を含有する液体を輸送する。細胞を含有する液体は負圧の駆動下で液体通路層に吸い込まれることができる。
【0012】
一実施形態において、細胞回収孔は細胞回収通路末端に設置されたマイクロウェルを含むことができ、マイクロウェルは円形のマイクロ孔であってもよく、その垂直深さは細胞回収通路よりやや深く、例えば30乃至100ミクロン深く、又はそれと一致する。好ましくは、細胞回収孔はさらにマイクロウェルを取り囲む環状のマイクロピラーアレイを含む。
【0013】
また別の実施形態において、試薬混合通路、第3試薬流入通路、逆洗浄通路、及び負圧と廃液の共用通路と、それぞれのスイッチバック式単細胞処理回収通路との連通部にはマイクロピラーアレイが設置されてもよい。好ましくは、細胞処理領域と、負圧と廃液の共用通路と、の連通部には円弧状のマイクロピラーアレイが設置されてもよい。
【0014】
さらに別の実施形態において、負圧と廃液の共用通路は細胞ローディング過程において外部の負圧源に連通し、細胞処理と回収過程において廃液槽に連通されてもよい。
【0015】
また別の実施形態において、空気圧マイクロ弁群は6つの空気圧マイクロ弁を含むことができ、第1試薬流入通路、第2試薬流入通路及び試薬混合通路は1つの空気圧マイクロ弁(V1)を共用してもよく、負圧と廃液の共用通路、細胞ローディング通路及び細胞回収通路はそれぞれ1つの空気圧マイクロ弁(V5、V3、V4)により制御されてもよく、第3試薬流入通路と逆洗浄通路がそれぞれ独立した通路である場合、それぞれ1つの空気圧マイクロ弁(V2、V6)により制御されてもよく、第3試薬流入通路と逆洗浄通路が共用通路である場合、1つの空気圧マイクロ弁(V2)により第3試薬の流れ込みを制御し、別の空気圧マイクロ弁(V6)により細胞処理領域に対する洗浄と逆洗浄の切り替えを実現する。
【0016】
第2態様によれば、本願の実施形態は単細胞を物理化学的に処理する自動化マイクロ流体装置を提供し、上記第1態様に記載のマイクロ流体チップ、気圧発生制御モジュール、ロジック制御回路及び光ファイバーセンシングモジュールを含んでもよいんでもよい。
【0017】
一実施形態において、光ファイバーセンシングモジュールは細胞の位置を監視するのに用いられ、ロジック制御回路は細胞センシング信号をリアルタイムに読み取ることによって細胞が所定の位置に達したか否かを判断し、さらに次の操作を実行するか否かを判断する。
【0018】
第3態様によれば、本願の実施形態は第1態様に記載のマイクロ流体チップ又は第2態様に記載のマイクロ流体装置を用いて単細胞を物理化学的に処理する方法を提供し、該方法は、
(1)単細胞を細胞ローダに滴下し、負圧をオンにして単細胞をチップに吸い込むことと、
(2)細胞処理領域で前記細胞を捕捉した時、光ファイバーセンシングモジュールにより細胞センシング信号を検出すると、空気圧マイクロ弁群を制御することによって順に異なる割合の第1試薬、第2試薬及び高速の第3試薬を用いて前記細胞を物理化学的に処理する、物理化学的処理プロセスを起動することと、
(3)処理完了後、第3試薬を用いて細胞回収孔のマイクロウェルのところで捕捉さるまで前記細胞を細胞回収通路内に逆洗浄し、余分の第3試薬を排出し続け、残留体積が1マイクロリットルを超えないところまで排出した時、細胞回収孔栓を抜き、専用の細胞抽出ツールを用いて前記細胞を吸い出し、回収を完了させることと、を含む。
【0019】
一実施形態において、細胞を物理化学的に処理するプロセスにおいて、第1試薬と第2試薬の用量比は100:0から0:100に徐々に勾配変化してもよく、第3試薬の流量は第1試薬又は第2試薬の平均流量の4~20倍であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によるスイッチバック式単細胞処理チップの3層構成図であり、3層構造上方の細胞ローダと細胞回収孔栓を含む。
図2A】本発明の一実施形態によるスイッチバック式単細胞処理チップの上面図である。
図2B】本発明の別の実施形態によるスイッチバック式単細胞処理チップの上面図である。
図3】細胞処理領域と、それぞれの第3試薬流入通路、負圧と廃液の共用通路との連通部にマイクロピラーアレイが設置されている状況を示す。
図4】細胞回収孔の拡大図であり、マイクロウェルと環状マイクロピラーアレイを含む。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかるマイクロ流体チップは、直径50~400ミクロンの単細胞、特に単一生殖細胞を物理化学的に処理するのに用いられる。生殖細胞自体の希少性のため、全体的処理過程では細胞の完全性を保証しなければならない。それにより、このような生殖細胞を処理するマイクロ流体チップに対する要求は、大量の未分化細胞を処理するマイクロ流体チップと根本的に異なる。
【0022】
具体的には、本発明にかかるマイクロ流体チップは細胞凍結前の処理過程をより良く制御し、全過程の自動化制御を実現する上、細胞が破損されないように保証することができる。図1に示すように、本発明にかかるマイクロ流体チップの本体は液体通路層1、ガス通路層3、及びその間に挟まれた弾性薄膜2を含んでもよい。ガス通路層3における空気圧制御通路内に高圧ガスを注入する時、空気圧制御通路の下方の弾性薄膜2は下へ湾曲し、弾性薄膜の下方の液体通路を押し付け、高圧ガスが取り除かれた時、弾性薄膜2が回復し、空気圧マイクロ弁の制御を実現する。このような制御方法はマイクロ流体分野において周知のものである。ガス通路層3は、液体通路層1における各通路の開放と閉鎖を制御する空気圧マイクロ弁群を含んでもよい。
【0023】
図2Aはマイクロ流体チップ本体の模式図である。図2Aに示すように、液体通路層1はスイッチバック式単細胞処理回収通路、第1試薬流入通路101、第2試薬流入通路102、試薬混合通路103、第3試薬流入通路1041、逆洗浄通路1042、及び負圧と廃液の共用通路105を含んでもよい。第1試薬流入通路101、第2試薬流入通路102はそれぞれ試薬混合通路103の入口に連通されてもよく、試薬混合通路103、第3試薬流入通路1041、逆洗浄通路1042、負圧と廃液の共用通路105はそれぞれスイッチバック式単細胞処理回収通路に連通されてもよい。好ましくは、試薬混合通路103、第3試薬流入通路1041、逆洗浄通路1042、及び負圧と廃液の共用通路105のそれぞれの出口の内径はいずれも細胞の外径より小さくてもよく、よって細胞がこれらの通路出口から流出することを防止することができる。図2Aにおいて、第3試薬流入通路1041と逆洗浄通路1042はそれぞれ独立した通路である。この場合、逆洗浄用の試薬は第3試薬と異なるその他の試薬であってもよいが、第3試薬を用いることが好ましい。
【0024】
スイッチバック式単細胞処理回収通路は細胞ローディング通路106、細胞処理領域107、及び細胞回収通路108を含んでもよく、細胞が破損されないように、これらの通路の内径は細胞の外径より大きくならなければならない。細胞ローディング通路106と細胞回収通路108は細胞処理領域107上流の同じところ(図中の網掛け部分を参照)で細胞処理領域107に連通されてもよく、それにより単細胞はローディング、処理及び回収の過程において通路に沿ってスイッチバック式に移動することができる。本発明のこのようなスイッチバック式通路の設計は圧力通路と空気圧マイクロ弁の数を減少することによって、チップの製造と処理のコストを節約することができ、従来技術に用いられる細胞の捕捉のみを目的とする循環通路の設計と完全に異なる。
【0025】
細胞ローディング通路106は細胞吸込口、即ち外部のチップに対するインタフェースに接続されてもよく、該細胞吸込口を介してマイクロ流体チップと外部の細胞ローダ4とを接続することができる。図1に示すように、細胞ローダ4は本発明における特別に設計された本発明のマイクロ流体チップに適合する専用装置であり、上部キャップ、ボルト本体及び下部キャップで構成され、細胞を含有する液体を盛り込むのに用いられる。ボルト本体の上半分は広く、細胞を含有する液体は基本的に該部分に保存され、ボルト本体の下半分は狭く、マイクロ流体チップに接続され、細胞を含有する液体を輸送するのに用いられる。細胞をローディングする必要がある場合、細胞ローダ4をマイクロ流体チップにおける細胞吸込口に設置し、上部キャップを開け、細胞を含有する液体は負圧ポンプ110の駆動下で液体通路層1内に入って流れる。本発明のこのような特別な外部のチップに対するインタフェースの設計は、負圧吸い込み方式に適合し、一般的な実験室の細胞操作とマイクロ流体チップの操作とがシームレスに接続できるようにする。さらに、本発明のこのような外部のチップに対するインタフェースはマイクロリットルレベルの溶液の直接滴下と吸い込み、必要な時細胞を取り出して使用することができるが、従来の細胞ローディング方法では正圧を用いて外部の管路から大量の細胞を含有する溶液をチップに送り込むことが一般的である。
【0026】
細胞回収通路108は細胞回収孔111、即ちチップの外部に対するインタフェースに接続されてもよい。細胞回収孔111は細胞回収通路108末端に設置されたマイクロウェルを含んでもよい。図4に示すように、マイクロウェルは円形のマイクロ孔であり、その垂直深さは細胞回収通路108よりやや深く、又はそれと一致してもよい。処理される細胞が重く、又は溶媒における濃度が低い時、細胞は沈降する可能性があり、この場合、マイクロウェルの垂直深さは細胞回収通路108より30~100ミクロン深いことが好ましい。この具体的な範囲は処理される細胞のサイズにより決められ、細胞が大きいほど、マイクロウェルの垂直深さが深い。細胞が専用の細胞抽出ツールによりチップから抽出されることを保証するために、単細胞は捕捉された後に依然として、例えば1マイクロリットルを超えない第3試薬の残留のような微量試薬を必要とする。1つの好ましい実施形態において、細胞回収孔111はマイクロウェルを取り囲む環状のマイクロピラーアレイをさらに含んでもよい。細胞回収孔111は液体通路層1から上方へ弾性薄膜2とガス通路層3を通過する孔通路の一端に連通され、孔通路の他端には細胞回収孔栓5が取り付けられてもよい。本発明のこのような特別なチップの外部に対するインタフェースの設計によれば、細胞と処理液とを効率的に分離することができる一方、一般的な実験室の後続細胞操作とのシームレスな接続を実現する。これは一般的な細胞を処理するマイクロ流体チップと根本的に異なり、前者は細胞の分類、カウント、培養又は観察等を目的とすることが一般的であり、細胞が関連する処理後に廃棄されるが、本発明にかかるマイクロ流体チップは入手困難で廃棄できない高価値の細胞に対するものであり、処理後に完全に回収しなければならない。
【0027】
ガス通路層3における空気圧マイクロ弁群は6つの空気圧マイクロ弁を含んでもよく、図2において具体的に、第1試薬流入通路101、第2試薬流入通路102及び試薬混合通路103が1つの空気圧マイクロ弁V1を共用し、第3試薬流入通路1041、逆洗浄通路1042、負圧と廃液の共用通路105、細胞ローディング通路106及び細胞回収通路108がそれぞれ1つの空気圧マイクロ弁(それぞれV2、V6、V5、V3、V4に対応する)により制御されている。
【0028】
図2Bはマイクロ流体チップ本体の別のレイアウトを示す。図2Aに比べて、唯一の相違点は第3試薬流入通路1041と逆洗浄通路1042が共用通路であること、具体的には局所共用通路であること、即ち第3試薬流入通路1041が空気圧マイクロ弁V2を通過した後、依然として逆洗浄通路1042に延在し続け、それに連通することである。この場合、空気圧マイクロ弁V2は依然として第3試薬の流入を制御するのに用いられ、別の空気圧マイクロ弁V6は細胞処理領域に対する洗浄と逆洗浄の切り替えを実現するのに用いられる。これにより、図2Aにおいて第3試薬の逆洗浄液槽(Reg3-BF)及び独立した一部の逆洗浄通路1042はいずれも省略することができる。
【0029】
本発明によれば、試薬混合通路103、第3試薬流入通路1041、逆洗浄通路1042、及び負圧と廃液の共用通路105と、それぞれのスイッチバック式単細胞処理回収通路との連通部にはいずれも細胞が細胞処理領域107から離れることを防止するためのマイクロピラーアレイが設置されてもよい。例えば、図3はスイッチバック式単細胞処理回収通路の細胞処理領域107と、それぞれの第3試薬流入通路、負圧と廃液の共用通路との連通部にマイクロピラーアレイが設置されている状況を示しており、好ましくは、細胞処理領域107と、負圧と廃液の共用通路105との連通部には円弧状のマイクロピラーアレイが設置されてもよい。
【0030】
本発明において、マイクロピラーの形状は円筒体、直方体、台形、円錐体、オープン式溝型構造等のいずれか又はそれらの組み合わせから選ばれてもよい。マイクロピラーアレイは少なくとも2つのマイクロピラーを含み、隣接するマイクロピラーの間には、単細胞の通過を止めることが出来るが液体は通過できる隙間が形成されている。マイクロピラーアレイが直線、円弧状、環状等の形状になるように配列してもよく、これは細胞の通過を止める効果、細胞を破損させる可能性、加工の難易度等により決められる。マイクロピラーの間の間隔は処理される細胞の具体的なサイズにより決定されてもよく、細胞の通過を止めることができることを保証すると同時に液体の抵抗をできる限り小さくしなければならない。要するに、マイクロピラーのサイズ、数及びマイクロピラーの間隔は通路の総幅により異なり、主に細胞の体積と直径により具体的に決定される。
【0031】
本発明によれば、負圧と廃液の共用通路105は細胞ローディング過程において外部の負圧源110に連通し、細胞処理と回収過程において廃液槽109に連通されてもよい。このような設計はチップ内の通路総数を効果的に減少し、チップの加工をしやすくする。
【0032】
本発明にかかるマイクロ流体チップは気圧発生制御モジュール、ロジック制御回路及び光ファイバーセンシングモジュールとともに相互動作することができ、マイクロ流体装置を構成することにより、単細胞に対する全自動化物理化学的処理を実現する。気圧発生制御モジュールは、ガス源、負圧ポンプ110、圧力調節弁、切替弁SV1-4及び流量計を含んでもよい。光ファイバーセンシングモジュールは光ファイバーヘッド及び光ファイバーアンプを含んでもよい。ロジック制御回路はプログラム命令を実行することによってガス圧、切替弁の位置の切り替えを自動的に制御することができ、さらにマイクロ流体チップにおける液体流速及び空気圧マイクロ弁の開閉を制御し、流量値をリアルタイムに読み取り、ガス圧をフィードバック調節することによって液体流速の安定化を保証し、光ファイバーセンシング信号をリアルタイムに読み取ることによって細胞が所定の位置に達したか否かを判断し、さらに次の操作を実行するか否かを判断し、それにより単細胞に対する自動化処理を実現する。本発明にかかるマイクロ流体装置は光ファイバーセンシングを用いることによって、感度を高くするだけでなく、チップ内部に内蔵する必要もなくなり、電気インピーダンスセンシングなどのようなその他の従来のセンシング方法に比べて、このような非侵襲的センシング方式の細胞に対する破損は殆どない。
【0033】
以下、本発明にかかるマイクロ流体チップ又はマイクロ流体装置を用いて単細胞を物理化学的に処理するプロセスを説明する。具体的には、本発明の処理方法は以下のステップを含んでもよい。
【0034】
(1)空気圧マイクロ弁V3とV5が開放され、V4が閉鎖された場合、単細胞を細胞ローダ4に滴下し、負圧をオンにして単細胞をチップに吸い込ませること。
【0035】
(2)細胞処理領域107で前記細胞を捕捉した場合、光ファイバーセンシングモジュールにより細胞センシング信号を検出すると、空気圧マイクロ弁V3とV4が閉鎖され、V5が開放された場合、空気圧マイクロ弁V1とV2を制御することによって、順に異なる割合の第1試薬Reg1、第2試薬Reg2及び高速の第3試薬Reg3を用いて前記細胞を物理化学的に処理する、物理化学的処理プロセスを起動すること。
【0036】
(3)処理完了後、空気圧マイクロ弁V4が開放され、V5が閉鎖された場合、細胞回収孔のマイクロウェルで捕捉されるまで第3試薬Reg3を用いて前記細胞を細胞回収通路108内に逆洗浄し、余分の第3試薬を排出し続け、極めて少量が残った時、細胞回収孔栓を抜き、専用の細胞抽出ツールを用いて前記細胞を吸い出し、回収を完了させること。ここで、第3試薬流入通路1041と逆洗浄通路1042がそれぞれ独立した通路である場合、空気圧マイクロ弁V6が開放され、V2が閉鎖された場合、第3試薬Reg3で細胞を逆洗浄するように駆動し(図2Aに示すように)、第3試薬流入通路1041と逆洗浄通路1042が局所共用される時(図2Bに示すように)、空気圧マイクロ弁V6が閉鎖され、V2が開放された場合、第3試薬Reg3で細胞を逆洗浄するように駆動する。
【0037】
ステップ(1)において単細胞をローディングする前に、マイクロ流体チップに対して前処理を行ってもよい、即ち第1試薬Reg1を用いてチップを洗浄してもよい。
【0038】
ステップ(2)において、物理化学的処理プロセスは具体的に、I、空気圧マイクロ弁V1を開放し、第1試薬Reg1がチップに入るように駆動し、II、第2試薬Reg2がチップに入るように駆動し、III、Reg1とReg2の流量比を徐々に変更し、混合後に細胞を洗浄し、ここでReg1とReg2の用量比は徐々に100:0から0:100に勾配変化し、IV、空気圧マイクロ弁V1を閉鎖し、V2を開放し、第3試薬Reg3が細胞を洗浄するように駆動することであってもよく、ここで、第3試薬の流量は第1試薬又は第2試薬の平均流量の4~20倍、例えば120~600マイクロリットル/分であってもよく、これは具体的に処理される細胞により決定される。
【0039】
この3種類の試薬を用いて細胞を物理化学的に処理する本質は、浸透圧によって細胞内物質との置換を実現するように駆動することである。本発明によれば、第1試薬Reg1と第2試薬Reg2は細胞をゆっくり処理し、細胞と緩やかに反応し、ここでReg1の用量は100%から0に徐々に勾配減少し、逆にReg2の用量は0から100%に徐々に勾配増加してもよい。第1、第2試薬流量のこのような勾配変化は、細胞内外の浸透圧が緩やかに変化することを保証するのに有利である。後述の実施例に示すように、合計15分間の処理に対して、Reg1とReg2の流量は下表のとおり勾配制御を行ってもよい。
【0040】
【表1】
【0041】
第3試薬Reg3の主な作用は細胞内の水分と置換するために細胞に侵入することである。Reg3で処理する時間が短いため、120から600マイクロリットル/分のようなより高い流量による処理、即ち高速処理を必要とする。
【0042】
本発明によれば、第1試薬Reg1の主要成分はM199緩衝液とヒトアルブミン等であってもよく、第2試薬Reg2の主要成分はM199緩衝液、エチレングリコール及びジメチルスルホキシド等であってもよく、第3試薬Reg3の主要成分はM199緩衝液、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド及び糖等であってもよい。
【0043】
本発明にかかるマイクロ流体チップ、マイクロ流体装置及び単細胞を処理する方法は生殖細胞の凍結装置と協働して全自動且つ一体化の操作を実現することができ、安定性が高く、正確に制御することができ、それにより日々成長する産業のニーズを満たすことができる。さらに、本発明は細胞の完全性を保証することができる場合、100%の捕捉率を実現し、これは希少且つ貴重な生殖細胞にとって非常に重要であり、また、凍結回復における細胞の生存率を改善し安定化するのに役立つ。
【実施例
【0044】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明する。
【0045】
本実施例にかかるマイクロ流体チップは細胞サイズ120~150ミクロンのヒト卵子、ウシ卵子又はウシ胚細胞を処理するのに用いられ、各通路の内径はいずれも約200ミクロンである。細胞回収通路108末端の内径は200ミクロンから300ミクロンに徐々に遷移し、さらに内径が約650ミクロンの細胞回収孔に遷移する。マイクロピラーは長さ、幅、高さが100ミクロン×100ミクロン×200ミクロンの直方体であり、マイクロピラーの間隔は約50ミクロンに設置されている。
【0046】
実施例1、図2Aに示すように、該マイクロ流体チップを用いてウシ胚細胞を処理し、詳細な操作過程は以下のとおりである。
【0047】
ステップ1:第1試薬Reg1を用いてチップを洗浄する。
【0048】
第3試薬流入通路1041入口の液槽(Reg3)及び逆洗浄通路1042入口の液槽(Reg3-BF)内に第1試薬Reg1を置く。続いてガス切替弁SV1、SV2、SV3、SV4のガス圧方向を液体通路方向に調整し(図2の黒線で示すように)、同時に負圧装置を閉鎖する。
【0049】
ガス通路CH2に増圧して切替弁SV2をV1位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V1を閉鎖し、ガス通路CH4に増圧し、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V3を閉鎖し、ガス通路CH1とCH6に増圧し、Reg1がチップ内の液体通路の管路を洗浄するように駆動し、最後に負圧と廃液の共用通路105を介してチップの外部の廃液槽109内に排出させる。
【0050】
ステップ2:細胞処理試薬を準備する。
【0051】
第1試薬流入通路101、第2試薬流入通路102、第3試薬流入通路1041及び逆洗浄通路1042の各入口の液槽内の試薬を準備し、各液槽内の試薬を液槽番号に対応させる。ガス通路CH1に増圧して切替弁SV1をV2位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V2を閉鎖し、ガス通路CH6に増圧して切替弁SV4をV6位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V6を閉鎖し、ガス通路CH5に増圧してチップ内蔵空気圧マイクロ弁V4を閉鎖する。
【0052】
ステップ3:処理待ち単細胞をローディングする。
【0053】
細胞ローダ4をチップの細胞吸込口に挿入する。処理待ち単細胞をペトリ皿から取り出し、付属の培地とともに細胞ローダ4内に注入する。CH4への増圧を停止し、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V3を開放し、負圧ポンプ110を起動し、細胞は負圧の作用下でチップの細胞処理領域107に吸い込まれる。細胞が処理領域内の所定の位置に達した場合、光ファイバーセンシングモジュールは細胞を検出してロジック制御回路に信号を発し、後者は直ちに負圧ポンプの作動を停止する。続いてガス通路CH4に増圧し、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V3を閉鎖する。
【0054】
ステップ4:細胞を処理する。
【0055】
切替弁SV2をReg1液槽の方向に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V1を開放し、ガス通路CH2の圧力を調節し、Reg1がチップに入るように駆動し、切替弁SV3をReg2液槽の方向に切り替え、ガス通路CH3の圧力を調節し、第2試薬Reg2がチップに入るように駆動し、下表に従って徐々にReg1とReg2の流量比を変更し、混合後に細胞を洗浄する。
【0056】
【表2】
【0057】
切替弁SV2をV1位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V1を閉鎖し、切替弁SV1を第3試薬Reg3液槽の方向に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V2を開放し、ガス通路CH1の圧力を調節し、Reg3が細胞を洗浄するように駆動し、Reg3の流量は約300マイクロリットル/分である。
【0058】
試薬Reg1~Reg3はいずれも、それぞれ所定の設計により、整然としてチップに勾配注入し、細胞処理領域107内にて細胞と反応させ、所定の細胞処理要求を満たすようにする。
【0059】
細胞処理過程において、操作者は、さらに細胞形態の観察結果に基づいて何時でも一時停止し、処理パラメータを修正することができる。
【0060】
ステップ5:細胞を回収する。
【0061】
切替弁SV1をV2位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V2を閉鎖し、ガス通路CH5への増圧を停止し、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V4を開放する。切替弁SV3をV5位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V5を閉鎖する。切替弁SV4をReg3-BF位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V6を開放し、ガス通路CH6の圧力を調節し、第3試薬Reg3が逆洗浄通路1042に沿って進行するように駆動し、この時にReg3の流れ方向は、ステップ4の左から右へ細胞処理領域107を流れることから、右から左へ細胞処理領域を流れ、さらに細胞を細胞回収孔に送り込むことに変更する。
【0062】
続いてReg3の注入を停止し、後続の気流で細胞周囲の試薬液体を完全に除去する。試薬が完全に排出された後、細胞回収孔栓を抜き、ストローを用いて処理完了の細胞を抽出する。
【0063】
実施例2
図2Bに示すように、該マイクロ流体チップを用いてヒト卵子を処理し、詳細な操作過程は以下のとおりである。
【0064】
ステップ1:第1試薬Reg1を用いてチップを洗浄する。
【0065】
第3試薬流入通路1041入口の液槽内に第1試薬Reg1を置く。続いてガス切替弁SV1、SV2、SV3のガス圧方向を液体通路方向に調整し(図2の黒線で示すように)、同時に負圧装置を閉鎖に保持する。
【0066】
ガス通路CH2に増圧して切替弁SV2をV1位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V1を閉鎖し、ガス通路CH4に増圧し、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V3を閉鎖し、ガス通路CH1に増圧し、Reg1がチップ内の液体通路の管路を洗浄するように駆動し、最後に負圧と廃液の共用通路105を介してチップの外部の廃液槽109内に排出させる。
【0067】
ステップ2:細胞処理試薬を準備する。
【0068】
第1試薬流入通路101、第2試薬流入通路102及び第3試薬流入通路1041の各入口の液槽内の試薬を準備し、各液槽内の試薬を液槽番号に対応させる。ガス通路CH1に増圧して切替弁SV1をV2位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V2を閉鎖し、ガス通路CH5に増圧して切替弁SV4をV4位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V4を閉鎖する。
【0069】
ステップ3:処理待ち単細胞をローディングする。
【0070】
細胞ローダ4をチップの細胞吸込口に挿入する。処理待ち単細胞をペトリ皿から取り出し、付属の培地とともに細胞ローダ4内に注入する。チップ内蔵空気圧マイクロ弁V3を開放し、負圧ポンプ110を起動し、細胞は負圧の作用下でチップの細胞処理領域107に吸い込まれる。細胞が処理領域内の所定の位置に達した場合、光ファイバーセンシングモジュールは細胞を検出してロジック制御回路に信号を発し、後者は直ちに負圧ポンプの作動を停止する。続いてガス通路CH4に増圧してチップ内蔵空気圧マイクロ弁V3を閉鎖する。
【0071】
ステップ4:細胞を処理する。
【0072】
切替弁SV2をReg1液槽の方向に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V1を開放し、ガス通路CH2の圧力を調節し、Reg1がチップに入るように駆動し、切替弁SV3をReg2液槽の方向に切り替え、ガス通路CH3の圧力を調節し、第2試薬Reg2がチップに入るように駆動し、徐々にReg1とReg2の流量比を変更し、混合後に細胞を洗浄する。
【0073】
切替弁SV2をV1位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V1を閉鎖し、切替弁SV1を第3試薬Reg3液槽の方向に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V2を開放し、ガス通路CH1の圧力を調節し、Reg3が細胞を洗浄するように駆動する。
【0074】
試薬Reg1~Reg3はいずれも、それぞれ所定の設計により、整然としてチップに勾配注入し、細胞処理領域107内にて細胞と反応させ、所定の細胞処理要求を満たすようにする。試薬Reg1~Reg3の流量制御は実施例1と同様である。
【0075】
細胞処理過程において、操作者は、さらに細胞形態の観察結果に基づいて何時でも一時停止し、処理パラメータを修正してもよい。
【0076】
ステップ5:細胞を回収する。
【0077】
切替弁SV4をV6位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V6を閉鎖し、同時にチップ内蔵空気圧マイクロ弁V4を開放する。切替弁SV3をV5位置に切り替え、チップ内蔵空気圧マイクロ弁V5を閉鎖する。ガス通路CH1の圧力を調節し、第3試薬Reg3が第3試薬流入通路1041と逆洗浄通路1042に沿って進行するように駆動し、この時にReg3の流れ方向は、ステップ4の左から右へ細胞処理領域107を流れることから、右から左へ細胞処理領域を流れ、さらに細胞を細胞回収孔に送り込むことに変更する。
【0078】
続いてReg3の注入を停止し、後続の気流で細胞周囲の試薬液体を完全に除去する。試薬が完全に排出された後、細胞回収孔栓を抜き、ストローを用いて処理完了の細胞を抽出する。
【符号の説明】
【0079】
1:液体通路層、 2:弾性薄膜、 3:ガス通路層、 4:細胞ローダ、 101:第1試薬流入通路、 102:第2試薬流入通路、 103:試薬混合通路、 1041:第3試薬流入通路、 1042:逆洗浄通路、 105:負圧と廃液の共用通路、 106:細胞ローディング通路、 107:細胞処理領域、 108:細胞回収通路、 109:廃液槽、 110:負圧ポンプ、 111:細胞回収孔、 V1-6:チップ内蔵空気圧マイクロ弁、 SV1-4:切替弁、 CH1-6:圧力ポンプ通路
図1
図2A
図2B
図3
図4