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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】タイヤ損傷検出システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/06 20060101AFI20220204BHJP
   B60C 23/04 20060101ALI20220204BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
B60C23/06 A
B60C23/04 160A
B60C19/00 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020566586
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 IB2019054384
(87)【国際公開番号】W WO2019229634
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】102018000005907
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ アレバ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ パスクッチ
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-248916(JP,A)
【文献】特開2003-063221(JP,A)
【文献】特開2015-101123(JP,A)
【文献】特表2004-515395(JP,A)
【文献】特開2005-084003(JP,A)
【文献】特開平05-254316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/06
B60C 23/04
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得装置(11)及び処理装置/システム(12、12A、12B)を含む、タイヤ損傷検出システム(1、1A、1B)であって;
前記取得装置(11)は:
・タイヤが取り付けられた2以上のホイールを備えた自動車(2)に搭載されており;
・前記自動車(2)の車両バス(20)に結合されており;
・以下のように構成されており、すなわち:
―前記車両バス(20)から、前記自動車(2)のホイールの速度を示す信号を取得し、
―前記ホイールの速度を示す量を出力する;
ように構成されており、
前記処理装置/システム(12、12A、12B)は:
・以下のように構成されており、すなわち:
―様々な基準ホイール速度値に関連する所定閾値の組と、様々な基準ホイール速度値に関連する所定時間長さの組と、を含む、所定タイヤ損傷モデルを格納し、
―前記取得装置(11)から前記ホイールの速度を示す量を受け取る;
ように構成されており;
・以下のようにプログラムされており、すなわち:
―スライド時間ウィンドウにより前記ホイールの速度を分析し、
―前記スライド時間ウィンドウの直前及び/又は直後のホイール速度値又はホイール速度値の平均である、与えられた基準ホイール速度値に基づいて、前記所定閾値のうちの1つと前記所定時間長さのうちの1つとを、選択し、ここで、前記スライド時間ウィンドウは、選択された前記所定時間長さを有し、
―前記スライド時間ウィンドウ内で前記ホイールの速度の最大値及び最小値を検出し、
―前記最大値及び最小値どうしの差を計算し、
―前記与えられた基準ホイール速度値に対する前記最大値及び最小値どうしの差の比を計算し、
―前記与えられた基準ホイール速度値に対する前記最大値及び最小値どうしの差の比が、選択された前記所定閾値を超える場合、前記自動車の前記ホイールのタイヤへの潜在的な損傷を検出する、
ようにプログラムされている、タイヤ損傷検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ損傷検出システムであって、
前記取得装置(11)は、以下のように構成されており、すなわち:
・前記車両バス(20)から、前記自動車(2)の前記ホイールの前記タイヤのタイヤ空気圧を示す信号をも取得し;
・前記タイヤ空気圧を示す量を出力する;
ように構成されており、
前記所定閾値は、様々な基準ホイール速度値及び様々なタイヤ空気圧値に関連しており;
前記処理装置/システム(12、12A、12B)は、前記取得装置(11)から、前記タイヤ空気圧を示す量をも受け取るように構成されているとともに、前記与えられた基準ホイール速度値及び前記タイヤ空気圧に応じて前記所定閾値のうちの1つを選択するようにプログラムされている、タイヤ損傷検出システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ損傷検出システムであって、
前記処理装置/システム(12、12A、12B)によって前記自動車(2)の前記ホイールの前記タイヤへの潜在的な損傷が検出された場合に、前記自動車(2)に関連するユーザ(3)に、前記検出された潜在的な損傷を通知するように構成された、通知装置(13、13A、13B)を、さらに含む、タイヤ損傷検出システム。
【請求項4】
請求項3に記載のタイヤ損傷検出システムであって、
前記処理装置/システム(12)は、前記取得装置(11)に無線及び遠隔で接続されたクラウドコンピューティングシステム(12A)であり、
前記通知装置(13)は、前記ユーザ(3)に関連付けられているとともに、1つまたは複数の有線及び/又は無線ネットワークを介して前記クラウドコンピューティングシステム(12A)に遠隔で接続された、電子通信装置(13A)である、タイヤ損傷検出システム。
【請求項5】
請求項3に記載のタイヤ損傷検出システムであって、
前記処理装置/システム(12)は、前記自動車(2)に搭載された電子制御ユニット(12B)であり、
前記通知装置(13)は、前記自動車(2)に搭載されたヒューマンマシンインターフェース(13B)である、タイヤ損傷検出システム。
【請求項6】
予備ステップとタイヤ損傷検出ステップとを含む、タイヤ損傷検出方法であって、
前記タイヤ損傷検出ステップは、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ損傷検出システム(1、1A、1B)を操作するステップを含んでおり;
前記予備ステップは、以下を含む、すなわち:
・様々な自動車速度で様々な障害物に対して/上でテストタイヤ衝撃を含むテストを実行するステップと;
・実行されるテスト中にテスト関連のホイールの速度を測定/取得するステップと:
・前記テストタイヤ衝撃に対応する前記テスト関連のホイールの速度と、関連付けられたテスト関連の基準ホイール速度値と、に基づいて、前記タイヤ損傷検出ステップで前記タイヤ損傷検出システム(1、1A、1B)によって使用される前記所定タイヤ損傷モデルを決定するステップと;
を含む、タイヤ損傷検出方法。
【請求項7】
自動車(2)のホイールの速度を示す量を受け取るように設計されているとともに、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ損傷検出システム(1、1A)の前記処理装置/システム(12)としてプログラムされた、クラウドコンピューティングシステム(12A)。
【請求項8】
前記自動車(2)に搭載されるとともに、前記自動車(2)のホイールの速度を示す量を受け取るように、設計され、請求項1~3及び5のいずれか一項に記載のタイヤ損傷検出システム(1、1B)の前記処理装置/システム(12)としてプログラムされた、電子制御ユニット(12B)。
【請求項9】
・自動車のホイール(2)の速度を示す量を受け取るように設計された処理装置/システム(12、12A、12B)にロード可能であり;
・ロードされたときに、前記処理装置/システム(12、12A、12B)が、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ損傷検出システム(1、1A、1B)の前記処理装置/システム(12、12A、12B)としてプログラムされるようにする;
ような1つ又は複数のソフトウェア及び/又はファームウェアコード部分を備えた、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物に対する/上の衝撃による自動車のタイヤへの潜在的な損傷を検出するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、歩道、ポットホール、又はスピードバンプ等の障害物に対する/上の自動車のホイールの衝撃は、ホイールのタイヤ、特にカーカス(すなわち、タイヤのケーシング)に損傷を与え得る。
【0003】
特に、タイヤのサイドウォールの外部から見える膨らみは、通常、障害物に対する/上の衝撃により、コードがカーカス内で破損していることを示す。実際、縁石、スピードバンプ、ポットホール等の物体上を走行すると、個々のコードが破損する可能性がある。
【0004】
損傷したタイヤ(例えば、コードが損傷しているタイヤ)が、迅速に検出されず、したがって、損傷したタイヤのまま走行を続けることにより、迅速に修理/交換されない場合、タイヤのカーカスを完全に破断/破壊するおそれがあり、さらにはホイールリム及び/又はサスペンションを損傷するおそれがある(例えば、損傷したタイヤが他の障害物に対し/上に衝突した場合)。
【0005】
そのため、自動車分野では、自動車のタイヤの潜在的な損傷を自動的かつ迅速に検出できるタイヤ損傷検出技術の必要性が著しく感じられている。
【0006】
例えば、この種の既知の解決策は、DE102016105281A1(特許文献1)で提供されている。この文献は、ホイールの衝撃検出及びドライバー警告システムに関連している。
特に、DE102016105281A1(特許文献1)は、車両のホイール衝撃検出システムを開示しており、このホイール衝撃検出システムは以下を含む:
・車両のホイールへの衝撃に起因する車両のホイールの加速度を測定する少なくとも1つのセンサー;
・加速度測定の関数として、車両のホイールへの衝撃の重大度を決定するプロセッサ;及び
・前記決定された車両のホイールへの衝撃の重大度に基づいて、車両のホイールの潜在的な損傷をドライバーに警告する出力装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102016105281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、例えばDE102016105281A1(特許文献1)によるもの等の現在知られているタイヤ損傷検出技術よりも効率的かつ信頼性の高い方法でタイヤ損傷検出を実行するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この及び他の目的は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、タイヤ損傷検出システム及びタイヤ損傷検出方法に関連するという点で、本発明によって達成される。
【0010】
本発明をよりよく理解するために、純粋に非限定的な例として意図されている好ましい実施形態を、添付の図面(全て縮尺どおりではない)を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、様々な自動車速度で歩道やスピードバンプ等の障害物に対し/上に衝突した場合のホイール速度の例を示している。
図2図2は、様々な自動車速度で歩道やスピードバンプ等の障害物に対し/上に衝突した場合の正規化されたホイール速度の例を示している。
図3図3は、自動車速度の関数としての正規化されたホイール速度の相対的なピークツーピーク差の例を示している。
図4図4は、本発明の好ましい実施形態によるタイヤ損傷検出システムを概略的に示している。
図5図5は、図4のタイヤ損傷検出システムの特定の好ましい実施形態を概略的に示している。
図6図6は、図4のタイヤ損傷検出システムの特定の好ましい実施形態を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の議論は、当業者が本発明を作成及び使用することを可能にするために提示される。実施形態への様々な修正は、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明は、示されかつ説明される実施形態に限定されることが意図されておらず、本明細書に開示され、添付の特許請求の範囲で定義される、原理及び特徴に一致する最も広い範囲の保護を与えられるべきである。
【0013】
出願人は、既存の解決策に対して効率と信頼性が向上した革新的なタイヤ損傷検出技術を考案及び開発するために、詳細な研究を実施した。この詳細な研究中に、出願人は、様々な自動車速度(例えば、40 km/hから90km/hまで)で、様々な障害物(例えば、歩道、スピードバンプ、ポットホール)を使用して、いくつかのテストを実行した。各テストでは、自動車速度とホイール速度とが取得/測定された。この点に関して、図1は、実行されたテスト中において、様々な自動車速度で、歩道やスピードバンプ等の障害物に対し/上に衝突した場合に、取得/測定されたホイール速度の例を示している。
【0014】
取得/測定された各ホイール速度は、対応する自動車速度に対するホイール速度のパーセンテージ比を得るために、対応する自動車速度に関して正規化されている。この点に関し、図2は、実行されたテスト中において、様々な自動車速度で、歩道やスピードバンプ等の障害物に衝突した場合に、計算された正規化されたホイール速度の例を示している。図2に示すように、歩道やスピードバンプに対し/上に衝突した場合、正規化されたホイール速度は、極小値をとり、次に極大値をとる。さらに、ポットホール等の、歩道やスピードバンプとは異なる障害物を使用して実行された他のテストから、出願人は、正規化されたホイール速度とは「反対の」動作、つまり、最初は極大値の存在、次に、極小値の存在を、確認した。
【0015】
したがって、実行されたテストの結果から、出願人は、正規化されたホイール速度の2つの連続する反対のピークの存在が、障害物に対する/上のホイールの衝撃を示していると推測した。さらに、出願人はまた、障害物に対する/上のホイールの衝撃を示す、正規化されたホイール速度の2つの連続する反対のピーク間の時間距離が、自動車の速度が増加するにつれて、減少することに気付いた。
【0016】
それ以来、出願人は、これらの特性を利用してタイヤの損傷を検出するという賢明なアイデアを持った。これに関連して、図3は、自動車速度の関数としての正規化されたホイール速度の相対的なピークツーピーク差の例を示している。図3のグラフは、y = Ce-αxのタイプの負の指数関数的な傾向を実質的に示している。
【0017】
したがって、上記の観察、推論及び直観から始めて、出願人は、予備ステップ及びタイヤ損傷検出ステップを含むタイヤ損傷検出方法を考案した。予備ステップは、以下を含む:
・様々な自動車速度での様々な障害物に対する/上のタイヤの衝撃のテストを含むテストを実行するステップ、及び
・実行されたテストの結果に基づいて、自動車の1つ又は複数のタイヤへの潜在的な損傷を検出するために、タイヤ損傷検出ステップで使用される1つ又は複数の所定タイヤ損傷モデルを決定するステップ。
【0018】
特に、上記の一般的な方法論から始めて、出願人は、以下で詳細に説明されるタイヤ損傷検出ステップの3つの好ましい態様を考案した。
【0019】
この目的のために、図4は、本発明の好ましい実施形態による、タイヤ損傷検出システム(全体として1で示される)の機能的アーキテクチャを(特に、ブロック図によって)概略的に示す。
【0020】
特に、タイヤ損傷検出システム1は:
・取得装置11であって、
―それぞれにタイヤが取り付けられた2つ以上のホイールを備えた自動車(図4に図示せず―例えば、スクーター、バイク、車、バン、トラック等)に搭載されており、
―前記自動車の車両バス20(例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス規格に基づく)に結合されている;
取得装置11と、
・処理装置/システム12であって、
―有線又は無線の方式で取得装置11に接続されており、
―所定タイヤ損傷モデル(これは、前に説明したように、予備ステップで決定されている)を格納するように構成されている、
処理装置/システム12と、
を含む。
【0021】
タイヤ損傷検出ステップの第1の好ましい態様によれば、
・取得装置11は、以下のように構成されており、すなわち:
―車両バス20から、自動車及び当該自動車のホイールの速度を示す信号(便利には、時速キロメートル又はマイルで表される速度信号)を取得し;
―自動車及びそのホイールの速度を示す量を出力する;
ように構成されており、
・処理装置/システム12は、取得装置11から、自動車及び前記自動車のホイールの速度を示す量を受け取るように構成され、次のようにプログラムされている、すなわち:
―自動車及びそのホイールの速度を示す量に基づいて、自動車速度に対するホイール速度の比(好ましくはパーセンテージ比)を示す第1の正規化されたホイール速度を計算し、
―所定タイヤ損傷モデルと第1の正規化されたホイール速度とに基づいて、自動車のホイールのタイヤへの潜在的な損傷(例えば、タイヤのカーカス/コードへの潜在的な損傷)を検出する、
ようにプログラムされている。
【0022】
例えば、次の数式を使用して、一般的な時刻tkでの第1の正規化されたホイール速度を計算することができる。
vN1(tk) = (vW(tk) * 100)/vV(tk)
ここで、vN1(tk)、vW(tk)、及びvV(tk)は、それぞれ、上記の一般的な時刻tkでの第1の正規化されたホイール速度、ホイール速度、及び自動車速度を示す。
【0023】
好ましくは、所定タイヤ損傷モデルは、様々な自動車速度値に関連する第1の所定閾値の組と、様々な自動車速度値に関連する第1の所定時間長さの組と、を含む(ここで、前記第1の所定閾値及び前記第1の所定時間長さは、予備ステップで決定されると便利である)。
さらに、処理装置/システム12は、好ましくは、以下のようにプログラムされる、すなわち:
・自動車の速度に応じて、第1の所定閾値のうちの1つと、第1の所定時間長さのうちの1つとを、選択し、
・第1の所定時間長さが選択された第1のスライド時間ウィンドウにより、第1の正規化されたホイール速度を分析し、
・第1のスライド時間ウィンドウ内で、第1の正規化されたホイール速度の最大値及び最小値を検出し、
・上記の最大値及び最小値どうしの差が、選択された第1の所定閾値を超えた場合、自動車のホイールのタイヤへの潜在的な損傷を検出する、
ようにプログラムされる。
【0024】
言い換えれば、それぞれタイヤ損傷検出及び第1のスライド時間ウィンドウのために処理装置/システム12によって使用される実際の第1の所定閾値及び実際の第1の所定時間長さは、実際の自動車の速度値に応じて、前記処理装置/システム12によって選択される。
【0025】
さらに、タイヤの損傷の検出は、タイヤの空気圧にも基づいて便利に行うことができる(実は、タイヤの空気圧が低下すると、タイヤが損傷するリスクが高まる)。
この場合、取得装置11は、以下のように便利に構成されている、すなわち:
・車両バス20から、自動車のホイールのタイヤのタイヤ空気圧を示す信号も取得し、
・上記のタイヤ空気圧を示す量を出力する、
ように便利に構成されている。
【0026】
さらに、第1の所定閾値は、様々な自動車速度値及び様々なタイヤ空気圧値に便利に関連しており、処理装置/システム12は、取得装置11から、タイヤ空気圧を示す量も受け取るように便利に構成され、かつ、自動車速度とタイヤの空気圧とに応じて、第1の所定閾値のうちの1つを選択するように、便利にプログラムされている。
【0027】
換言すれば、タイヤ損傷検出のために処理装置/システム12によって使用される実際の第1の所定閾値は、実際の自動車速度値及び実際のタイヤ空気圧値に応じて、前記処理装置/システム12によって選択される。
【0028】
代わりに、タイヤ損傷検出ステップの第2の好ましい態様によれば、
・取得装置11は、以下のように構成されており、すなわち:
―車両バス20から、自動車のホイールの速度を示す信号(便利には、時速キロメートル又はマイルで表されるホイール速度信号)を取得し、
―ホイール速度を示す量を出力する;
ように構成されており、
・処理装置/システム12は、取得装置11から、ホイール速度を示す量を受け取るように構成され、次のようにプログラムされている、すなわち:
―ホイール速度を示す量に基づいて、自動車速度を示す平均ホイール速度に対するホイール速度の比(好ましくはパーセンテージ比)を示す第2の正規化されたホイール速度を計算し、
―所定タイヤ損傷モデルと第2の正規化されたホイール速度とに基づいて、自動車のホイールのタイヤへの潜在的な損傷を検出する、
ようにプログラムされている。
【0029】
例えば、次の数式を使用して、一般的な時刻tkでの第2の正規化されたホイール速度を計算することができる:
vN2(tk) = (vW(tk) * 100)/vA(tk)
ここで、vN2(tk)とvW(tk)は、それぞれ、一般的な時刻tkでの第2の正規化されたホイール速度及びホイール速度を示す。 vA(tk)は、前記一般的な時刻tkに関連する平均ホイール速度を示す。便利には、平均ホイール速度vA(tk)は、一般的な時点tkの前及び/又は後にあり得る時点での複数のホイール速度値の平均として計算され得る。ここで、前記複数のホイール速度値はまた、一般的な時刻tkでのホイール速度値をも含み得る。
【0030】
好ましくは、所定タイヤ損傷モデルは、様々な平均ホイール速度値に関連する第2の所定閾値の組と、様々な平均ホイール速度値に関連する第2の所定時間長さの組と、を含む(ここで、前記第2の所定閾値及び前記第2の所定時間長さは、予備ステップで決定されると便利である)。さらに、処理装置/システム12は、好ましくは、以下のようにプログラムされる、すなわち:
・平均ホイール速度に応じて、第2の所定閾値のうちの1つと第2の所定時間長さのうちの1つを選択し、
・選択された第2の所定時間長さを有する第2のスライド時間ウィンドウにより、第2の正規化されたホイール速度を分析し、
・第2のスライド時間ウィンドウ内で第2の正規化されたホイール速度の最大値及び最小値を検出し、
・上記の最大値及び最小値どうしの差が、選択された第2の所定閾値を超えた場合、自動車のホイールのタイヤへの潜在的な損傷を検出する、
ようにプログラムされる。
【0031】
さらに、タイヤ損傷検出ステップの第2の好ましい態様によれば、タイヤ損傷検出は、便利には、タイヤ空気圧にも基づいて行うことができる。この場合、取得装置11は、便利には、以下のように構成される、すなわち:
・車両バス20から、自動車のホイールのタイヤのタイヤ空気圧を示す信号も取得し、
・上記のタイヤ空気圧を示す量を出力する、
ように構成される。
【0032】
さらに、第2の所定閾値は、便利には、様々な平均ホイール速度値及び様々なタイヤ空気圧値に関連し、処理装置/システム12は、便利には、取得装置11から、タイヤ空気圧を示す量も受け取るように構成され、かつ、便利には、平均ホイール速度及びタイヤ空気圧に応じて、第2の所定閾値のうちの1つを選択するようにプログラムされる。
【0033】
代わりに、タイヤ損傷検出ステップの第3の好ましい態様によれば、
・取得装置11は、以下のように構成され、すなわち:
―車両バス20から、自動車のホイールの速度を示す信号(便利には、時速キロメートル又はマイルで表されるホイール速度信号)を取得し、
―ホイール速度を示す量を出力する;
ように構成され、
・所定タイヤ損傷モデルは、様々な基準ホイール速度値に関連する第3の所定閾値の組と、様々な基準ホイール速度値に関連する第3の所定時間長さの組と、を含み(ここで、前記第3の所定閾値及び前記第3の所定時間長さは、予備ステップで決定されると便利である);
・処理装置/システム12は、取得装置11から、ホイール速度を示す量を受け取るように構成され、次のようにプログラムされる、すなわち:
―第3のスライド時間ウィンドウによりホイール速度を分析し、
―第3のスライド時間ウィンドウの直前及び/又は直後のホイール速度値又はホイール速度値の平均である、与えられた基準ホイール速度値に基づいて、第3の所定閾値のうちの1つと第3の所定時間長さのうちの1つとを、選択し(前記与えられた基準ホイール速度値は、自動車速度を示すと想定される)、ここで、前記第3のスライド時間ウィンドウは、選択された第3の所定時間長さを有し、
―第3のスライド時間ウィンドウ内でホイール速度の最大値及び最小値を検出し、
―上記最大値及び最小値どうしの差を計算し、
―与えられた基準ホイール速度値に対する上記最大値及び最小値どうしの差の比を計算し、
―与えられた基準ホイール速度値に対する上記最大値及び最小値どうしの差の比が、選択された第3の所定閾値を超える場合、自動車のホイールのタイヤへの潜在的な損傷を検出する、
ようにプログラムされる。
【0034】
さらに、タイヤ損傷検出ステップの第3の好ましい実施によっても、タイヤ損傷検出は、便利には、タイヤ空気圧にも基づいて行うことができる。この場合、取得装置11は、便利には、以下のように構成される、すなわち:
・車両バス20から、自動車のホイールのタイヤのタイヤ空気圧を示す信号も取得し;
・上記タイヤ空気圧を示す量を出力する、
ように構成される。
【0035】
さらに、第3の所定閾値は、便利には、様々な基準ホイール速度値及び様々なタイヤ空気圧値に関連し、処理装置/システム12は、便利には、取得装置11から、タイヤ空気圧を示す量も受け取るように構成され、かつ、便利には、与えられた基準ホイール速度値及びタイヤ空気圧に応じて、第3の所定閾値のうちの1つを選択するようにプログラムされる。
【0036】
タイヤ損傷検出ステップの第1、第2、及び第3の好ましい態様によれば、取得装置11は、便利には、50 Hz以上、好ましくは100Hz以上のサンプリング周波数にて、車両バス20から取得された前記速度を示す信号をサンプリングすることによって、ホイール速度を示す量を生成するように構成され得る。
【0037】
さらに、タイヤ損傷検出ステップの第1の好ましい態様によれば、取得装置11は、便利には、ホイール速度に使用されるものと同じサンプリング周波数、又はより低いサンプリング周波数(例えば、5又は10 Hz)にて、車両バス20から取得された前記速度を示す信号をサンプリングすることによって、自動車速度を示す量を生成するように構成され得る。
【0038】
再び図4を参照すると、タイヤ損傷検出システム1は、自動車のホイールのタイヤへの潜在的な損傷が処理装置/システム12によって検出された場合に、検出された潜在的な損傷を、前記自動車に関連するユーザ(例えば、そのドライバー及び/又は所有者)に通知するように構成された、通知装置13をさらに含む。
【0039】
前述のことから、タイヤ損傷検出システム1が、自動車の各ホイールのタイヤ損傷検出を実行するように便利に構成され得ることが、当業者にはすぐに明らかである。実際、この目的のために:
・取得装置11は、便利には、信号を取得し、その後、自動車の各ホイールの速度を示す量を出力するように、構成されることができ、
・処理装置/システム12は、便利には、前述の検出動作を自動車の各ホイールの速度に適用するようにプログラムされることができ、
・通知装置13は、便利には、自動車のホイールのタイヤに潜在的な損傷が検出された場合に、どのタイヤが損傷しているかをユーザに通知するように構成されることができる。
【0040】
便利には、処理装置/システム12は、以下を格納することができる:
・自動車の全てのホイールに使用される単一の所定タイヤ損傷モデル;又は
・例えばそれぞれ各ホイールのための所定タイヤ損傷モデル等の様々な所定タイヤ損傷モデル、又は、1つは前ホイールに使用されてもう1つは後ホイールに使用される、2つの異なる所定タイヤ損傷モデル。
【0041】
図5及び図6は、タイヤ損傷検出システム1の2つの特定の好ましい実施形態を概略的に示している。
【0042】
特に、図5を参照すると、タイヤ損傷検出システム1の第1の特定の好ましい実施形態(全体として1Aで示される)において:
・処理装置/システム12は、取得装置11に無線でかつ遠隔に接続されたクラウドコンピューティングシステム12Aによって(例えば、GSM、GPRS、EDGE、HSPA、UMTS、LTE、LTE Advanced及び/又は将来の第5世代(又はそれ以降)の無線通信システム等の1つ又は複数の移動通信技術を介して)実装/実行され;
・通知装置13は、自動車(図5では2で示される)に関連したユーザ(図5では3で示される)に関連し(例えば、によって所有及び/又は使用される)、かつ、1つ又は複数の有線及び/又は無線ネットワークを介してクラウドコンピューティングシステム12Aに遠隔に接続された、電子通信装置13A(例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、デスクトップコンピュータ、スマートTV、スマートウォッチ等)によって実装/実行される。
【0043】
好ましくは、クラウドコンピューティングシステム12Aは、自動車2のホイールのタイヤへの潜在的な損傷を検出した場合、損傷通知を電子通信装置13Aに送信するようにプログラムされ、電子通信装置13Aは、ユーザ3に前記損傷通知を提供する。例えば、通知装置13は、便利には、ソフトウェアアプリケーション(すなわち、いわゆるアプリ)がインストールされたスマートフォン又はタブレットであり得る。このアプリは、クラウドコンピューティングシステム12Aから、検出された潜在的な損傷を示すプッシュ通知を受信するように構成される。例えばSMSメッセージ、電子メールメッセージ、又は、より一般的には、テキスト及び/又はオーディオ及び/又は画像及び/又は動画及び/又はマルチメディアタイプのメッセージ等、他のタイプの損傷通知も使用することができる。
【0044】
クラウドコンピューティングシステム12Aは、多くの自動車2に、ひいては多くのユーザ3に、タイヤ損傷検出サービスを提供するために有利に使用され得ることは、注目に値する。
【0045】
代わりに、図6を参照すると、タイヤ損傷検出システム1の第2の特定の好ましい実施形態(全体としてIBによって示される)において:
・処理装置/システム12は、自動車2に搭載された(自動車)電子制御ユニット(ECU: Electronic Control Unit)12Bによって実装/実行され;
・通知装置13は、自動車2に搭載されたヒューマンマシンインターフェース(HMI: Human-Machine Interface)13Bによって実装/実行される。
【0046】
前記第2の特定の好ましい実施形態IBにおいて、ECU12Bは、便利には、HMI13Bによって生成されるグラフィカル及び/又は音声アラートを介して、自動車2のホイールのタイヤに対する検出された潜在的損傷を、自動車2のドライバーに通知し得る(したがって、HMI13Bは、便利には、スクリーン及び/又はグラフィカル/音声警告インジケータを含むことができる)。
【0047】
ECU12Bは、便利には、タイヤ損傷検出専用のECU、又は、タイヤ損傷検出も含むいくつかのタスク専用のECUであり得る。
【0048】
同様に、HMI13Bは、便利には、タイヤ損傷検出専用のHMI、又は、タイヤ損傷検出も含むいくつかのタスク専用のHMI(例えば、車載インフォテレマティックス及び/又はドライバー支援システムのHMI)であり得る。
【0049】
再び本発明によるタイヤ損傷検出方法を参照すると、タイヤ損傷検出ステップは、自動車2の1つ又は複数のタイヤへの潜在的な損傷を検出するように、タイヤ損傷検出システム1を操作するステップを含む。さらに、予備ステップはまた、タイヤ損傷検出ステップの3つの好ましい態様に対応する3つの好ましい態様に従って実行され得る。
【0050】
特に、予備ステップの第1の好ましい態様によれば、前記予備ステップは、以下を含む:
・様々な自動車速度で様々な障害物に対する/上でのテストタイヤ衝撃を含むテストを実行するステップと;
・実行されたテスト中にテスト関連のホイール及び自動車の速度を測定/取得するステップと;
・テスト関連のホイール及び自動車の速度に基づいて、テスト関連の正規化されたホイール速度を計算するステップと;
・テストタイヤ衝撃に対応するテスト関連の正規化されたホイール速度及びテスト関連の自動車速度に基づいて、タイヤ損傷検出ステップでタイヤ損傷検出システム1によって使用される所定タイヤ損傷モデル(便利には、第1の所定閾値及び時間長さ)を決定するステップ。
【0051】
代わりに、予備ステップの第2の好ましい態様によれば、前記予備ステップは、以下を含む:
・様々な自動車速度で様々な障害物に対する/上でのテストタイヤ衝撃を含むテストを実行するステップと;
・実行されるテスト中にテスト関連のホイール速度を測定/取得するステップと;
・テスト関連のホイール速度に基づいて、テスト関連の正規化されたホイール速度を計算するステップと;
・テストタイヤ衝撃に対応するテスト関連の正規化されたホイール速度と関連するテスト関連の平均ホイール速度とに基づいて、タイヤ損傷検出ステップにおいてタイヤ損傷検出システム1によって使用される所定タイヤ損傷モデル(便利には、第2の所定閾値及び時間長さ)を決定するステップ。
【0052】
最後に、予備ステップの第3の好ましい態様によれば、前記予備ステップは、以下を含む:
・様々な自動車速度で様々な障害物に対する/上でのテストタイヤ衝撃を含むテストを実行するステップと;
・実行されるテスト中にテスト関連のホイール速度を測定/取得するステップと;
・テストタイヤ衝撃に対応するテスト関連のホイール速度テストと関連するテスト関連の基準ホイール速度値とに基づいて、タイヤ損傷検出ステップでタイヤ損傷検出システム1によって使用される所定タイヤ損傷モデル(便利には、第3の所定閾値及び時間長さ)を決定するステップ。
【0053】
便利には、予備ステップの第1、第2、及び第3の好ましい形態によれば、前記予備ステップは、さらに以下を含み得る:
・実行されるテスト中に、テスト関連のタイヤ空気圧も測定/取得するステップと;
・実行されるテスト中に測定/取得されたテスト関連のタイヤ空気圧にも基づいて、所定タイヤ損傷モデル(便利には、第1/第2/第3の所定閾値)を決定するステップ。
【0054】
上記を考慮すると、本発明によるタイヤ損傷検出システム及び方法が、リアルタイムで、非常に効率的で、信頼性の高いタイヤ損傷検出を実行することを可能にすることは、明らかである。この点で、本発明がまた、所望の信頼度に従ってタイヤ損傷検出の信頼性を調整することを可能にすることは、注目に値する。実際、多くの様々な信頼性レベルを、タイヤ損傷検出のために、選択でき、ひいては、実装できる。例えば、最も単純なケースでは、単一のタイヤ損傷モデルを、予備ステップで決定し、その後、タイヤ損傷検出ステップで全てのタイヤモデル及び全ての自動車に対して使用できる。代わりに、タイヤ損傷検出の信頼性を高めるために、タイヤ損傷モデルを、予備ステップで各タイヤモデルのそれぞれに対して決定し(それにより、例えば特定のタイヤ寸法等の特定のタイヤの特徴を考慮に入れる)、その後、タイヤ損傷検出ステップで上記タイヤモデルを装着した自動車用に対して使用することができる。さらに、タイヤ損傷検出の信頼性をさらに高めるために、様々なタイヤ損傷モデルを、タイヤモデルごとに決定し(それにより、例えば、前/後及び/又は右/左等の異なる位置を考慮に入れる)、その後、タイヤ損傷検出ステップにおいて当該タイヤモデルを装着した自動車に対して選択的に使用することができる。さらに、様々な自動車の特定の特徴及び/又は様々な障害物の幾何学的特徴も考慮に入れることによって、さらなる信頼性の改善が得られる可能性がある。
【0055】
さらに、タイヤ損傷モデルは、有利には、タイヤ損傷検出ステップで偽陽性エラー及び偽陰性エラー(すなわち、タイヤへの実際の損傷に対応しない検出された潜在的損傷、及び、検出されないタイヤへの実際の損傷)に基づいて、更新され得ることにも、留意する価値がある。それにより、タイヤ損傷検出の信頼性が向上する。例えば、タイヤの実際の損傷が検出されなかった場合、ドライバーは、スマートフォン/タブレットにより、損傷したタイヤの写真を撮り、その後、その写真を、ユーザーフィードバックの受信専用のサーバーに送信することができる。
【0056】
前述のことから、本発明の技術的利点及び革新的な特徴は、当業者にはすぐに明らかである。
【0057】
特に、本発明がリアルタイムで非常に効率的で信頼性の高いタイヤ損傷検出を実行することを可能にするという点を、強調することが重要である。より具体的には、本発明は、例えばDE102016105281A1(特許文献1)によるもの等の現在知られているタイヤ損傷検出技術よりも効率的かつ信頼性の高い方法でタイヤ損傷検出を実行することを可能にする。
【0058】
さらに、本発明は、所望の信頼度に従ってタイヤ損傷検出の信頼性を調整することを可能にする。
【0059】
結論として、添付の特許請求の範囲で定義されているように、本発明に対して多数の修正及び変形を行うことができ、全てが本発明の範囲内にあることは、明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6