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特許7019087ブロックチェーンを活用したデジタルコンテンツのアクセス権保証の為の、コンテンツ管理システム、コンテンツ管理プログラム及びコンテンツ管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】ブロックチェーンを活用したデジタルコンテンツのアクセス権保証の為の、コンテンツ管理システム、コンテンツ管理プログラム及びコンテンツ管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/62 20130101AFI20220204BHJP
【FI】
G06F21/62 318
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021102452
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2022020557
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020124076
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515031333
【氏名又は名称】株式会社メディアドゥ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 恭嗣
【審査官】行田 悦資
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/080145(WO,A1)
【文献】特開2006-238226(JP,A)
【文献】特開2004-032220(JP,A)
【文献】特表2013-508863(JP,A)
【文献】特開2020-065216(JP,A)
【文献】特開2019-219780(JP,A)
【文献】特開2010-200215(JP,A)
【文献】特表2020-513183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/62
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子的なコンテンツのアクセス権を管理するコンテンツ管理システムであって、
アクセス権処理受付部、コンテンツ配信部及び、分散台帳処理部を備え、
前記アクセス権処理受付部は、前記コンテンツを利用者に提供する複数の提供サービス処理装置と通信可能に構成され、前記提供サービス処理装置を介して前記利用者の入力に基づくアクセス権情報の記録要求を受け付けて、前記記録要求を前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記記録要求は、新たな前記アクセス権情報を登録するための前記コンテンツの識別情報及び前記利用者の利用者IDハッシュ値、又は記録済みの前記アクセス権情報を一意に特定できる情報を含み、
前記分散台帳処理部は、前記記録要求に応じて、分散台帳データベースにおいて、前記コンテンツの識別情報及び利用者の利用者IDハッシュ値を含むアクセス権情報を記録可能に構成され、
前記コンテンツ配信部は、前記アクセス権情報を一意に特定できる情報及び前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む、前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けて、前記配信要求を行った前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む前記アクセス権情報が存在する場合に配信可能と判断、前記アクセス権情報における前記コンテンツの識別情報によって特定される前記コンテンツを、前記利用者に対して配信可能に構成され
前記提供サービス処理装置は、
自身が管理する前記利用者について、利用者ID及び利用者IDハッシュ値の対応を示すマッピング情報を保持し、
前記利用者の入力に基づいて前記利用者IDを受信し、前記記録要求又は配信要求における前記利用者の識別情報として、当該利用者IDに対応する前記利用者IDハッシュ値を前記マッピング情報により特定して前記アクセス権処理受付部に送信す
コンテンツ管理システム。
【請求項2】
前記コンテンツ管理システムは、記憶部を備え、
前記記憶部は、前記コンテンツの識別情報に対応付けてコンテンツごとの配信可否を記憶し、
前記コンテンツ配信部は、前記配信要求を行った前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む前記アクセス権情報が存在し、かつ前記アクセス権情報における前記コンテンツの識別情報によって特定される前記コンテンツが前記記憶部において配信可能に設定されている場合に、前記コンテンツを配信可能と判断する
請求項1に記載のコンテンツ管理システム。
【請求項3】
前記分散台帳処理部は、前記アクセス権情報に配信可否を示す配信可否情報を付与して記録可能に構成され、
前記コンテンツ配信部は、前記配信要求を行った前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む前記アクセス権情報が存在し、かつ、当該アクセス権情報において配信可能であることを示す前記配信可否情報が記憶されている場合に、前記コンテンツを配信可能と判断する
請求項1又は請求項2に記載のコンテンツ管理システム。
【請求項4】
前記アクセス権処理受付部は、前記コンテンツへの前記アクセス権情報が記録された前記利用者から他の利用者への、前記アクセス権の移転要求であって、前記アクセス権情報を一意に特定できる情報を含む前記移転要求を受け付けた場合、前記アクセス権情報を参照し、前記移転要求を行った前記利用者の利用者IDハッシュ値に基づいて、前記アクセス権の移転の可否を判断し、
移転が可能な場合、前記アクセス権情報を特定する情報及び移転先の前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む前記移転要求を、前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記分散台帳処理部は、前記移転要求に基づいて、前記分散台帳データベースに記録された前記アクセス権情報を更新するために、アクセス権の移転を前記分散台帳データベースに記録する
請求項1から請求項3の何れかに記載のコンテンツ管理システム。
【請求項5】
前記分散台帳処理部は、前記アクセス権処理受付部が前記移転要求を受け付けた場合、移転前の前記アクセス権の所有者である前記利用者に対する前記コンテンツの配信が不可となったことを示す情報を、前記分散台帳データベースにおいて記録させる
請求項4に記載のコンテンツ管理システム。
【請求項6】
前記コンテンツ配信部は、前記アクセス権を有する前記利用者から、前記コンテンツの配信要求としてオフライン利用要求を受け付けると、前記利用者の端末に有効期限付きの前記コンテンツをダウンロードさせるとともに、前記アクセス権情報を特定する情報及び前記有効期限を含む配信情報を前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記分散台帳処理部は、前記配信情報に基づいて前記アクセス権の移転可否を示す移転可否情報を前記アクセス権情報に付与して記録可能に構成され、
前記移転可否情報は、前記有効期限又は、前記有効期限に応じて変化するステータスを含み、
前記アクセス権処理受付部は、前記移転可否情報に基づいて、前記有効期限内の場合には前記アクセス権の移転を不可と判断する
請求項4又は請求項5に記載のコンテンツ管理システム。
【請求項7】
前記アクセス権の移転は、前記コンテンツの貸出を実現するための一時移転を含み、
前記アクセス権処理受付部は、前記移転要求として貸出期限を含む一時移転要求を受け付け、前記一時移転が可能な場合、前記一時移転要求を前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記分散台帳処理部は、
前記一時移転要求に基づいて、前記分散台帳データベースに記録された前記アクセス権の所有者を、前記一時移転の相手である前記利用者に更新するとともに、前記貸出期限を前記アクセス権情報に付与する旨の情報を前記分散台帳データベースに記録し、
前記貸出期限が切れた場合に、前記アクセス権の所有者を、前記一時移転を行う前の前記利用者に変更する旨の情報を前記分散台帳データベースに記録する
請求項4から請求項6の何れかに記載のコンテンツ管理システム。
【請求項8】
前記コンテンツ配信部は、前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けると前記アクセス権情報を参照し、前記利用者に対して、前記利用者IDハッシュ値を組み込んだ前記コンテンツを配信可能に構成される
請求項1から請求項7の何れかに記載のコンテンツ管理システム。
【請求項9】
電子的なコンテンツのアクセス権を管理するコンテンツ管理プログラムであって、
コンピュータを、アクセス権処理受付部、コンテンツ配信部及び、分散台帳処理部として機能させ、
前記アクセス権処理受付部は、前記コンテンツを利用者に提供する複数の提供サービス処理装置と通信可能に構成され、前記提供サービス処理装置を介して前記利用者の入力に基づくアクセス権情報の記録要求を受け付けて、前記記録要求を前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記記録要求は、新たな前記アクセス権情報を登録するための前記コンテンツの識別情報及び前記利用者の利用者IDハッシュ値、又は記録済みの前記アクセス権情報を一意に特定できる情報を含み、
前記分散台帳処理部は、前記記録要求に応じて、分散台帳データベースにおいて、前記コンテンツの識別情報及び利用者の利用者IDハッシュ値を含むアクセス権情報を記録可能に構成され、
前記コンテンツ配信部は、前記アクセス権情報を一意に特定できる情報及び前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む、前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けて、前記配信要求を行った前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む前記アクセス権情報が存在する場合に配信可能と判断、前記アクセス権情報における前記コンテンツの識別情報によって特定される前記コンテンツを、前記利用者に対して配信可能に構成され
前記提供サービス処理装置は、
自身が管理する前記利用者について、利用者ID及び利用者IDハッシュ値の対応を示すマッピング情報を保持し、
前記利用者の入力に基づいて前記利用者IDを受信し、前記記録要求における前記利用者の識別情報として、当該利用者IDに対応する前記利用者IDハッシュ値を前記マッピング情報により特定して前記アクセス権処理受付部に送信す
コンテンツ管理プログラム。
【請求項10】
電子的なコンテンツのアクセス権を管理するコンテンツ管理方法であって、コンピュータが、
前記コンテンツを利用者に提供する複数の提供サービス処理装置と通信可能に構成され、前記提供サービス処理装置を介して前記利用者の入力に基づくアクセス権情報の記録要求を受け付け、
前記記録要求は、新たな前記アクセス権情報を登録するための前記コンテンツの識別情報及び前記利用者の利用者IDハッシュ値、又は記録済みの前記アクセス権情報を一意に特定できる情報を含み、
分散台帳データベースにおいて、前記記録要求に応じて、前記コンテンツの識別情報及び利用者の利用者IDハッシュ値を含むアクセス権情報を記録し、
前記アクセス権情報を一意に特定できる情報及び前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む、前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けて、前記配信要求を行った前記利用者の利用者IDハッシュ値を含む前記アクセス権情報が存在する場合に配信可能と判断、前記アクセス権情報における前記コンテンツの識別情報によって特定される前記コンテンツを、前記利用者に対して配信し
前記提供サービス処理装置は、
自身が管理する前記利用者について、利用者ID及び利用者IDハッシュ値の対応を示すマッピング情報を保持し、
前記利用者の入力に基づいて前記利用者IDを受信し、前記記録要求における前記利用者の識別情報として、当該利用者IDに対応する前記利用者IDハッシュ値を前記マッピング情報により特定して前記コンピュータに送信す
コンテンツ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックチェーンを活用したデジタルコンテンツのアクセス権保証の為の、コンテンツ管理システム、コンテンツ管理プログラム及びコンテンツ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では様々なコンテンツが電子的に利用可能となっており、数多くのデジタルコンテンツ提供サービスが、インターネットを通じてコンテンツを配信している。このような電子的なコンテンツは、そのデータ自体を譲渡するのではなく、コンテンツへのアクセス権(コンテンツの利用権)が貸与される形式で提供されることも多い。
【0003】
例えば特許文献1には、デジタルコンテンツの販売サイトを提供する複数の販売サーバ装置とデジタルコンテンツ管理サーバ装置とが通信可能に構成され、各販売サイトにおける購入履歴に基づいてコンテンツを配信する、デジタルコンテンツ流通システムが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、コンテンツを利用する権利を他の利用者に容易に譲渡するための二次流通システムにおいて、ブロックチェーンに登録される情報に基づいてコンテンツの再生可否を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-106656号公報
【文献】国際公開第2019/207655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような、利用者に対してコンテンツへのアクセス権を与えるシステムにおいては、言うまでもなくアクセス権の管理が肝要である。従ってアクセス権の記録内容が改ざんされたり意図せず消失したりしないよう、確実な管理が求められていた。
【0007】
従来の技術では、個々の販売者等によりそれぞれアクセス権が集中的に管理されており、例えばその販売者において問題が生じたりサービスを終了したりした場合にはアクセス権が保証されないという課題があった。
【0008】
また特許文献2には、コンテンツを利用する権利の取り引きに関する情報をブロックチェーンに登録することが記載されているが、登録された情報に基づいてコンテンツを配信することはできなかった。
【0009】
そこで本発明では、アクセス権を有する利用者に対しコンテンツを配信するサービスにおいて、アクセス権を分散管理し、確実に保証するための新規な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、電子的なコンテンツのアクセス権を管理するコンテンツ管理システムであって、
コンテンツ配信部及び、分散台帳処理部を備え、
前記分散台帳処理部は、分散台帳データベースにおいて、アクセス権情報を一意に特定するコンテンツ発行ID、前記コンテンツの識別情報及び、利用者の識別情報を含むアクセス権情報を記録可能に構成され、
前記コンテンツ配信部は、前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けて、前記アクセス権情報に基づき前記コンテンツが配信可能と判断される場合、前記アクセス権情報における前記コンテンツの識別情報によって特定される前記コンテンツを、前記利用者に対して配信可能に構成される。
【0011】
このような構成とすることで、分散台帳データベースにアクセス権が記録され、これに基づいてコンテンツが配信されるため、複数主体によって共同してアクセス権の管理を行うことができ、アクセス権の改ざん等のリスクを下げてより安定したアクセス権管理を実現できる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記コンテンツ配信部は、前記コンテンツの識別情報に対応付けて事前に設定されたコンテンツごとの配信可否を参照して、前記アクセス権情報により特定される前記コンテンツが配信可能か否かを判断する。
このような構成とすることで、デジタルコンテンツの販売後に配信を停止したい場合等に、全てのアクセス権情報を変更することなく、コンテンツごとの配信可否の変更のみで容易かつ即時性をもって対応が可能となる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、アクセス権処理受付部を備え、
前記アクセス権処理受付部は、利用者の入力に基づくアクセス権情報の記録要求を受け付けて、前記記録要求を前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記記録要求は、新たな前記アクセス権情報を登録するための前記コンテンツの識別情報及び前記利用者の識別情報、又は記録済みの前記アクセス権情報を特定するための情報を含む。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記アクセス権処理受付部は、前記コンテンツの前記利用者への提供を行う複数の提供サービス処理装置と通信可能に構成され、前記提供サービス処理装置を介して前記利用者から、前記コンテンツへの前記アクセス権の記録要求を受け付ける。
このような構成とすることで、複数の提供サービスでの販売等に関するアクセス権をまとめて管理することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記分散台帳処理部は、前記アクセス権に配信可否を示す配信可否情報を付与して記録可能に構成され、
前記コンテンツ配信部は、前記配信可否情報及び前記配信要求を行った前記利用者の識別情報に基づいて、前記コンテンツの配信の可否を判断する。
このような構成とすることで、例えば再販売やダウンロード等、様々な利用の形態に応じて適切なコンテンツ配信を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記分散台帳処理部は、前記コンテンツの識別情報及び前記利用者の識別情報を含む前記記録要求に基づいて、一意のコンテンツ発行IDを含む前記アクセス権を、前記分散台帳データベースに記録させることで、前記利用者による前記コンテンツへの前記アクセス権を発生させる。
このような構成とすることで、新たなアクセス権を発生させ、新しいコンテンツの譲渡等を実現できる。また一意のコンテンツ発行IDを記録することで、個々のアクセス権を区別することができ、有体物の流通と同様に個々を区別した電子的なコンテンツの流通を実現できる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記アクセス権処理受付部は、前記コンテンツへの前記アクセス権が記録された前記利用者から他の利用者への、前記アクセス権の移転要求を受け付けた場合、前記アクセス権を参照し、前記移転要求を行った前記利用者の識別情報に基づいて、前記アクセス権の移転の可否を判断し、
移転が可能な場合、前記アクセス権を特定する情報及び移転先の前記利用者の識別情報を含む前記移転要求を、前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記分散台帳処理部は、前記移転要求に基づいて、前記分散台帳データベースに記録された前記アクセス権を更新する。
このような構成とすることで、アクセス権の移転を分散台帳データベースに記録し、安全にコンテンツの再販売や貸出等を実現できる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記分散台帳処理部は、前記アクセス権処理受付部が前記移転要求を受け付けた場合、移転前の前記アクセス権の所有者である前記利用者に対する前記コンテンツの配信が不可であることを示す情報を、前記分散台帳データベースにおいて記録させる。
このような構成とすることで、コンテンツのアクセス権所有者である利用者が再販売要求を行った後に、継続してコンテンツの利用をする不正を防止できる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記コンテンツ配信部は、前記アクセス権を有する前記利用者から、前記コンテンツの配信要求としてオフライン利用要求を受け付けると、前記利用者の端末に有効期限付きの前記コンテンツをダウンロードさせるとともに、前記アクセス権を特定する情報及び前記有効期限を含む配信情報を前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記分散台帳処理部は、前記配信情報に基づいて前記アクセス権の移転可否を示す移転可否情報を前記アクセス権に付与して記録可能に構成され、
前記アクセス権処理受付部は、前記移転可否情報に基づいて前記アクセス権の移転の可否を判断する。
このような構成とすることで、オフライン利用が可能な期間中には利用者がコンテンツの再販売を行うことができなくなる。これにより、利用者がコンテンツを利用者の端末にダウンロードしてオフラインで利用を続けながら、再販売や貸出等を行うことを防止できる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記アクセス権の移転は、前記コンテンツの貸出を実現するための一時移転を含み、
前記アクセス権処理受付部は、前記移転要求として貸出期限を含む一時移転要求を受け付け、前記一時移転が可能な場合、前記一時移転要求を前記分散台帳処理部に受け渡し、
前記分散台帳処理部は、
前記一時移転要求に基づいて、前記分散台帳データベースに記録された前記アクセス権の所有者を、前記一時移転の相手である前記利用者に更新するとともに、前記貸出期限を前記アクセス権に付与して記録し、
前記貸出期限が切れた場合に、前記アクセス権の所有者を、前記一時移転を行う前の前記利用者に更新する。
このような構成とすることで、期限を指定したコンテンツの貸出を、アクセス権の一時移転により実現できる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記分散台帳データベースに記録される前記アクセス権は、前記利用者の識別情報としてハッシュ値を含み、
前記コンテンツ配信部は、前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けると前記アクセス権を参照し、前記利用者に対して、前記ハッシュ値を組み込んだ前記コンテンツを配信可能に構成される。
このような構成とすることで、仮にコンテンツが不正流通した場合に、不正流通させた利用者を特定できる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明は、電子的なコンテンツのアクセス権を管理するコンテンツ管理プログラムであって、
コンピュータを、コンテンツ配信部及び、分散台帳処理部として機能させ、
前記分散台帳処理部は、分散台帳データベースにおいて、アクセス権情報を一意に特定するコンテンツ発行ID、前記コンテンツの識別情報及び、利用者の識別情報を含むアクセス権情報を記録可能に構成され、
前記コンテンツ配信部は、前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けて、前記アクセス権情報に基づき前記コンテンツが配信可能と判断される場合、前記アクセス権情報における前記コンテンツの識別情報によって特定される前記コンテンツを、前記利用者に対して配信可能に構成される。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明は、電子的なコンテンツのアクセス権を管理するコンテンツ管理方法であって、コンピュータが、
分散台帳データベースにおいて、アクセス権情報を一意に特定するコンテンツ発行ID、前記コンテンツの識別情報及び、利用者の識別情報を含むアクセス権情報を記録し、
前記利用者からの前記コンテンツの配信要求を受け付けて、前記アクセス権情報に基づき前記コンテンツが配信可能と判断される場合、前記アクセス権情報における前記コンテンツの識別情報によって特定される前記コンテンツを、前記利用者に対して配信する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アクセス権を分散管理し、確実に保証するための新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るコンテンツ管理システムの構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンテンツ管理サーバの機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態におけるデータ構造を示す図である。
図4】本発明の一実施形態におけるアクセス権情報の内容を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態におけるコンテンツ購入時の処理の流れを示す図である。
図6】本発明の一実施形態におけるコンテンツ配信時の処理の流れを示す図である。
図7】本発明の一実施形態におけるコンテンツ再販売要求時の処理の流れを示す図である。
図8】本発明の一実施形態におけるコンテンツ再販売時の処理の流れを示す図である。
図9】本発明の一実施形態におけるコンテンツ配信時の処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明に係るコンテンツ管理システムは、コンテンツの作者やコンテンツを管理する企業から受け取った、電子化されたコンテンツの情報を管理し、当該コンテンツへのアクセス権を持つ利用者に対してコンテンツを配信する。本実施形態では、利用者に対しコンテンツの販売(コンテンツへのアクセス権の販売)や無償提供等の譲渡を行うインターネット上のデジタルコンテンツ提供サービス(以下、単に「提供サービス」と言う)が複数存在する。本実施形態のコンテンツ管理システムは、複数の提供サービスにおける購入(譲渡)履歴やアクセス権を、これらの提供サービス等がそれぞれ管理する複数のコンピュータを用いて実現される分散台帳データベースに記録することで、アクセス権を複数主体により共同して管理する。
【0027】
なお、本実施形態においては、コンテンツとして電子書籍を取り扱うコンテンツ管理システムを示すが、本発明はこれに限るものではない。例えば、コンテンツとして楽曲データを取り扱う場合には、提供サービスは音楽配信サイトなど、コンテンツ提供者は、楽曲の製作者や、あるいはレコード会社の担当者などであってよい。同様に、コンテンツがテレビ番組や映画などの動画像データや、トレカ等静的画像データであれば、提供サービスは動画・トレカ配信サイトなど、コンテンツ提供者はテレビ局や配給会社の担当者などであってよい。更には、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどのコンピュータ装置上で動作するアプリケーションプログラムや、家庭用ゲーム機やパーソナルコンピュータ上で動作するゲームソフトなど、種々のコンテンツについて、本発明に係るコンテンツ管理システムによる流通の管理を行うことができる。また、上述したような種別の内の複数を取り扱うような構成としてもよい。
【0028】
また本発明において分散台帳データベースに記録されるコンテンツへのアクセス権は、少なくともコンテンツ及び利用者を特定する情報を含む。これにより各コンテンツへのアクセス権の所有者が特定される。本実施形態では、分散台帳データベース上のそれぞれの取引情報は時系列連鎖によって構成され、各取引は直前の取引のハッシュ値の情報を含むため、何れかの取引の改ざんが行われると不整合が生じ、不正が発見できるハッシュチェーン構造となっている。また分散台帳データベースへの取引記録は複数のノードによって構成され、ノード間で同一のデータをそれぞれ保管するため、一部のノードでデータが改ざんされても他のノードには正しいデータが残り、安全性が保たれる。これにより本実施形態のコンテンツ管理システムではアクセス権の情報の安全性が向上している。
【0029】
また本発明において「コンテンツが配信可能に設定されている」とは、少なくとも、分散台帳データベースに、当該コンテンツを特定する情報を含み、更にアクセス権の所有者として対象の利用者を特定する情報を含むアクセス権が記録されていることを指す。また本実施形態においては、アクセス権にステータスやオフラインでのコンテンツ利用期限を含む配信可否情報が付与され、「コンテンツが配信可能に設定されている」とは、更に当該コンテンツ及び当該利用者を特定する情報を含むアクセス権において配信可能なステータスが付与されていること、又はオフラインでのコンテンツ利用期限外であること等を指す。
【0030】
図1に、本実施形態に係るコンテンツ管理システムの構成を示す。なお、図1及び図2の構成は一例であり、各種の装置の機能が複数のコンピュータ装置に分散して備えられ、複数のコンピュータ装置が協働することで本実施形態の各装置が実現されてもよい。本実施形態に係るコンテンツ管理システムは、利用者へと提供するデジタルコンテンツを管理するコンテンツ管理サーバ1と、利用者へのコンテンツの新規販売や利用者からのコンテンツの再販売等の窓口としての提供サービスを実現する、21から2iまでの複数の提供サービス処理装置2と、利用者の利用する31から3jまでの利用者端末3と、がそれぞれネットワークを介して通信可能に構成される。
【0031】
またコンテンツ管理サーバ1は、分散台帳ネットワークシステムBCに接続されており、アクセス権の登録要求や登録されているアクセス権の照会等を行う。本実施形態ではブロックチェーン技術を利用した分散台帳ネットワークシステムBCにより分散台帳データベースが実現される。ここで本実施形態では提供サービス処理装置2を含む複数のコンピュータが分散台帳ネットワークシステムBCのノードとして機能するが、分散台帳ネットワークシステムBCに参加するコンピュータは任意に変更してよい。コンテンツ管理サーバ1は、コンテンツの流通を管理する管理者等により、図示しない端末装置を用いて管理される。また図面においては記載を省略するが、コンテンツ管理サーバ1は、コンテンツの作者や管理企業の担当者等のコンテンツ提供者が利用する端末装置とも接続され、コンテンツの登録に関する情報の送受信が可能であることが好ましい。
【0032】
本実施形態においては、コンテンツとして、電子書籍を取り扱うシステムを例示する。
すなわち、提供サービス処理装置2によって提供される提供サービスとは、利用者からのアクセスに応じて電子書籍の販売等を行う、電子書籍提供サービスや電子書店と呼ばれるウェブサイトである。あるいは、利用者端末3より、専用アプリケーションを用いたアクセスを受けて電子書籍の販売等を行うような構成としてもよい。なお、提供サービス処理装置2は、各提供サービスの管理者により、図示しない端末装置を用いて管理されるものである。そして、コンテンツ提供者は、書籍の作者であってもよいし、複数の作者の有する著作権の管理を一括して行う出版社の担当者などであってもよい。
【0033】
コンテンツ管理サーバ1としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、提供サービス処理装置2及び利用者端末3や分散台帳ネットワークシステムBCへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、サーバ装置等の一般的なコンピュータ装置を利用することができる。演算装置が後述の各処理部の処理を実行することで、コンピュータ装置が本実施形態におけるコンテンツ管理サーバ1として機能する。
【0034】
また提供サービス処理装置2を含む、分散台帳ネットワークシステムBCを構成するノードについても同様に、サーバ装置等の一般的なコンピュータ装置を利用することができる。
【0035】
利用者端末3としては、演算装置、記憶装置、提供サービス処理装置2やコンテンツ管理サーバ1への接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、スマートフォンやタブレット型端末等の任意のコンピュータ装置を利用することができる。その他、PC(Personal Computer)を利用者端末3として利用してもよい。提供サービス処理装置2やコンテンツ管理サーバ1との間で各種情報の入力及び送受信を行うための専用のアプリケーションや、提供サービス(ウェブサイト)にアクセスするためのブラウザアプリケーション等が記憶装置に記憶され、演算装置が各種の処理を実行することで、任意のコンピュータ装置が本発明の利用者端末3として機能する。
【0036】
図2は、本実施形態のコンテンツ管理サーバ1の機能ブロック図である。コンテンツ管理サーバ1は、アクセス権処理受付部100と、コンテンツ配信部103と、分散台帳処理部104と、利用者登録部105と、コンテンツマスタ記憶部106と、コンテンツデータ記憶部107と、購入履歴記憶部108と、提供サービス情報記憶部109と、利用者情報記憶部110と、を備える。なお本願において記憶部とは、コンテンツマスタ記憶部106、コンテンツデータ記憶部107、購入履歴記憶部108、提供サービス情報記憶部109、及び利用者情報記憶部110を含む、各種の情報を記憶する記憶部の総称である。
【0037】
アクセス権処理受付部100は、新たなアクセス権の発生に関する処理を行う発生処理部101と、アクセス権の移転に関する処理を行う移転処理部102と、を備える。ここで本発明においてアクセス権の記録要求とは、新たなアクセス権の発生を求める発生要求と、記録済みのアクセス権の更新を求める更新要求と、を含む概念である。
【0038】
発生処理部101は、利用者の入力に基づくアクセス権の発生要求を受け付けて、発生要求を分散台帳処理部104に受け渡す。より詳細には、提供サービス処理装置2から対象のコンテンツ及び利用者を特定する情報を受信すると、購入情報を分散台帳処理部に受け渡してアクセス権の記録を行わせる。アクセス権の発生は、提供サービスからユーザへの、コンテンツの新規販売や無償提供等に対応する処理である。即ち、新たなコンテンツ発行IDを発行して、新たなアクセス権を発生させることを意味する。
【0039】
移転処理部102は、コンテンツへのアクセス権が記録された利用者から他の利用者への、アクセス権の移転要求を受け付けた場合、アクセス権を特定する情報及びアクセス権の移転先の利用者の識別情報を含む移転要求を分散台帳処理部104に受け渡す。
【0040】
本実施形態では、アクセス権の移転として、コンテンツの再販売と、貸出と、を実施する。再販売においては、販売側の利用者からの再販売要求と購入側の利用者からの再販売の購入要求とを、移転処理部102が提供サービス処理装置2を介してそれぞれ受け付け、販売側と購入側のマッチングが成立した場合に再販売が行われる。そして再販売が行われた場合に、上述の通り再販売情報を分散台帳処理部104に受け渡して分散台帳ネットワークシステムBCに記録されたアクセス権を更新することで、再販売によるアクセス権の移転が行われる。なお金銭やポイント等の授受を伴う再販売だけでなく、無償の譲渡によるアクセス権の移転が行われてもよい。
【0041】
また貸出においては、貸出側の利用者及び借入側の利用者それぞれの識別情報及び貸出期限を含む一時移転要求を、移転処理部102が受け付ける。ここで貸出においても再販売と同様のマッチングが行われてもよいし、利用者同士で交渉の上、双方の識別情報を含む一時移転要求が利用者端末3から送信されてもよい。そして、移転処理部102が貸出要求を分散台帳処理部104に受け渡して分散台帳ネットワークシステムBCに記録されたアクセス権を更新することで、貸出によるアクセス権の一時移転が行われる。この際、分散台帳ネットワークシステムBCには、移転先の利用者の識別情報とともに、貸出期限が記録される。
【0042】
本実施形態の移転処理部102は、利用者から移転要求を受け付けると、当該利用者が移転を希望するコンテンツへのアクセス権を参照し、当該利用者が正当なアクセス権の所有者であることを確認した場合にアクセス権の移転が可能であると判断する。また本実施形態では移転処理部102が更にアクセス権の移転可否情報も確認して、アクセス権の移転が可能な場合に再販売要求を登録するとともに、再販売要求が登録された場合に当該ステータスを配信不可に設定する。ここで本実施形態では、移転可否情報としてアクセス権に付与されるステータスと、オフライン利用期限と、貸出期限と、を参照する。なお、ステータスとして移転可否を特定する情報を記録しておき、移転可否情報としてはステータス単体で移転可否を判断してもよい。
【0043】
コンテンツ配信部103は、利用者からのコンテンツの配信要求を受け付けると分散台帳ネットワークシステムBCに記録されたアクセス権を参照し、コンテンツが配信可能に設定されている場合、利用者に対して、コンテンツデータ記憶部107に記憶されたコンテンツを配信する。具体的には、配信要求に基づいて、当該コンテンツを特定する情報を含み、かつアクセス権の所有者として当該利用者を特定する情報を含むアクセス権が記録されているか、即ち、当該利用者がコンテンツへの正当なアクセス権を有するかを確認して、正当なアクセス権が記録されている場合に、利用者に対してコンテンツを配信する。
【0044】
ここで本実施形態では更にコンテンツ配信部103がアクセス権の配信可否情報を確認し、配信可能である場合に、利用者に対してコンテンツを配信する。本実施形態では、配信可否情報としてアクセス権に付与されるステータスを参照する。なお、この他、貸出期限を配信可否情報として用いてもよい。
【0045】
分散台帳処理部104は、アクセス権処理受付部100から受け取った記録要求に基づいて、分散台帳ネットワークシステムBCに、アクセス権の記録を要求する。また本実施形態の分散台帳処理部104は、移転要求が受け渡された場合にはアクセス権の所有者を変更する更新を分散台帳ネットワークシステムBCに要求する。更に分散台帳処理部104は、発生要求や移転要求の受付に伴って、分散台帳ネットワークシステムBCに記録されたアクセス権のステータスや貸出期限の変更を要求する。
【0046】
利用者登録部105は、提供サービス処理装置2から少なくとも利用者の識別情報を含む利用者情報を受信して利用者情報記憶部110に格納することで利用者の登録を行う。
本実施形態では利用者情報として、どの提供サービスの利用者であるのかを示す提供サービスの識別情報が含まれる。
【0047】
図3は、コンテンツの新規販売に関するデータ構造を示すER図(Entity Relationship Diagram)である。これは、コンテンツ管理サーバ1、提供サービス処理装置2、及び分散台帳ネットワークシステムBCがそれぞれレコードごとに持つ情報、及びそれらの情報の関連性を模式的に示すものである。
【0048】
まず、コンテンツマスタ記憶部106は、コンテンツを一意に識別するためのコンテンツID、そのコンテンツのタイトル、作者、出版社などの権利者の情報等、販売するコンテンツに関するマスタ情報(コンテンツマスタ)を有する。この他、初回の発行後に再流通を許容する回数を指定する情報を有していてもよい。
【0049】
また、コンテンツデータ記憶部107は、ファイルを一意に識別するためのファイルIDと、当該ファイルがどのコンテンツに関するものかを示すコンテンツID、ファイル名等、コンテンツデータに関する種々の情報を有する。また、コンテンツデータ記憶部107はコンテンツデータ本体も記憶しており、コンテンツ配信部103がコンテンツデータ記憶部107に記憶された情報を配信することで、利用者に対してコンテンツを提供する。
【0050】
ここで、コンテンツマスタとコンテンツデータとは、1のコンテンツに対して複数のコンテンツデータが紐づけ可能な、1対他の関係となっている。このような構成とすることによって、複数のファイルによって構成される1のコンテンツや、複数のファイルフォーマットの内からユーザの希望などに基づいてファイルフォーマットを選択可能なコンテンツなどを取り扱うことができる。
【0051】
コンテンツマスタ及びコンテンツファイルは、コンテンツ提供者が使用する端末装置からの電子メールや図示しないファイルサーバを介しての受け渡しなど、任意の手段によってコンテンツ管理サーバ1へと提供され、登録される。このようにして、コンテンツマスタ記憶部106及びコンテンツデータ記憶部107には、複数のコンテンツ提供者より提供されるデジタルコンテンツが集約される。
【0052】
購入履歴記憶部108は、購入履歴を一意に識別するための購入IDと、購入されたコンテンツを示すコンテンツID、購入が行われた提供サービスを示す提供サービスID、購入を行った利用者の利用者IDハッシュ値、購入金額、通貨と購入日時等の情報を含む、購入履歴のレコードを記憶する。これは、提供サービスに紐づいた情報として取り扱われ、1の提供サービスから複数の利用者が各々複数のコンテンツを購入するため、1の提供サービスに対して複数の購入履歴が紐づく形で関連付けられている。また購入に限らず、この他、アクセス権の移転や無償でのアクセス権の発行履歴等が更に管理されてもよい。
【0053】
提供サービス情報記憶部109は、提供サービスを一意に識別する提供サービスIDと、提供サービス名称やURL(Uniform Resource Locator)といった基本情報等を含む提供サービス情報を記憶する。
【0054】
利用者情報記憶部110は、提供サービスを利用する利用者に関する情報として、同一提供サービス内でユーザを一意に識別可能な利用者IDハッシュ値及び提供サービスIDを記憶する。ここでは利用者のメールアドレスや支払い情報等の個人情報は記憶せず、これらの情報は提供サービス処理装置2において管理される。利用者IDハッシュ値は、他の提供サービスの利用者との間で重複する場合であっても提供サービスID及び利用者IDハッシュ値の組み合わせによって一意に利用者を特定可能であるが、他の提供サービスの利用者とも重複しないものであってもよい。なおここでは利用者の識別情報として利用者IDハッシュ値を用いており、コンテンツ管理サーバ1を含む、利用者IDと利用者IDハッシュ値のマッピング情報を持たないサーバでは、利用者IDハッシュ値から利用者を特定することはできない。
【0055】
また提供サービス処理装置2は、コンテンツ管理サーバ1の有する購入履歴記憶部108が記憶する情報のうち、当該提供サービス処理装置2が管理する提供サービスに関する購入履歴のレコードを記憶する。
【0056】
また、提供サービス処理装置2は、コンテンツ管理サーバ1の有する利用者情報記憶部110が記憶する情報のうち、当該提供サービス処理装置2が管理する提供サービスの利用者に関する利用者情報のレコードを記憶する。なお利用者情報は、利用者端末3を介して提供サービス処理装置2に登録され、その一部又は全部がコンテンツ管理サーバ1に送信されて利用者情報記憶部110に登録されることにより、コンテンツ管理サーバ1及び提供サービス処理装置2の間で共有される。
【0057】
提供サービス処理装置2は、利用者情報として、利用者ID及び提供サービスIDに加え、メールアドレスや支払い情報、ログインパスワード等の個人情報も管理している。また、提供サービス処理装置2は更に、自身が管理する利用者について、利用者IDと利用者IDハッシュ値の対応を示すマッピング情報を保持している。これにより、自サービスの利用者については、アクセス権情報に記憶された所有者IDハッシュ値から特定することができる。なお、ある提供サービス処理装置2が提供サービスを終了するような場合には、分散台帳ネットワークシステムBCを構成する他の提供サービス処理装置2やコンテンツ管理サーバ1等に、マッピング情報を引き継ぐことが好ましい。これにより、仮に提供サービスが終了しても、アクセス権は継続的に保証することが可能になる。
【0058】
また、提供サービス処理装置2は、提供サービスよりユーザへ提供するコンテンツの情報を、コンテンツ情報として保持する。これは、各提供サービスにおいて配信が許諾されている各コンテンツについて、コンテンツマスタ記憶部106等の情報に基づいて登録される情報である。
【0059】
そして、分散台帳ネットワークシステムBCにおいては、アクセス権がブロックに記録される。アクセス権の情報としては、アクセス権ごとに発行される一意のコンテンツ発行ID、コンテンツを特定する識別情報としてのコンテンツID、同一コンテンツID中で一意となるシリアルナンバー、アクセス権の発行日時、ステータス、当該アクセス権の所有者である利用者の利用者IDハッシュ値、オフライン利用期限、貸出期限の情報が含まれる。アクセス権は1種類のコンテンツに対して複数発行されるため、1のコンテンツに対して複数のアクセス権が紐づく形で関連付けられている。
【0060】
図4は、アクセス権として記憶される情報の内容を説明する表である。図の通り、コンテンツ発行IDは、アクセス権が発行されるごとに発行されるユニークIDであり、全てのアクセス権において互いに重複しない値を持つ。本実施形態では、新たなアクセス権を記録する際に分散台帳ネットワークシステムBC側で発行される取引ナンバーを、コンテンツ発行IDとして用いる。この他、任意の方法でUUIDを発行して本発明のコンテンツ発行IDとして用いることができる。
【0061】
またコンテンツIDとはコンテンツごとに決まったIDであり、同一のコンテンツは同一のIDを持つ。例えばAという書籍の1巻と2巻、また例えば同一タイトルのA出版者版とB出版者版には、それぞれ異なるコンテンツIDが付与されるが、同一のコンテンツに対するアクセス権が複数ある場合、その全てでコンテンツIDが同一になる。一方シリアルナンバーは同一コンテンツID中で一意となる文字列であり、同一のコンテンツに対して複数のアクセス権が存在する場合、その全てにおいて互いに異なるシリアルナンバーが付与される。
【0062】
また発行日時としては、アクセス権の最初の発行日時が記録される。例えば本実施形態では、コンテンツの再販売が可能であるが、再販売が行われた場合にはアクセス権の所有者IDが更新される一方、発行日時は当初のまま変更されない。また発行日時の他に、所有者IDやステータス、オフライン利用期限等、何らかの情報更新の度に、最新の更新があった日時を更新日時として記録してもよい。なお、分散台帳ネットワークシステムBCにおいては全てのアクセス権変更履歴が永続的に管理される。
【0063】
オフライン利用期限とは、利用者がオフラインでのコンテンツ利用を求めた場合に設定される、オフラインでのコンテンツ利用が可能な期限である。従って、アクセス権の所有者IDにより特定される利用者が、オフラインでの利用を求めない場合、オフライン利用期限は設定されない。この期限は、利用者端末3にダウンロードされるコンテンツの有効期限と同一である。本実施形態では、利用者の申請により、オフライン利用期限の延長は可能であるが、短縮は不可である。
【0064】
貸出期限とは、利用者が他の利用者に対してアクセス権の一時移転を行った場合に設定される、アクセス権移転の期限である。即ち、一時移転によりアクセス権の所有者IDハッシュ値は、一時的に移転先の利用者のものに書き換えられるが、貸出期限が切れると再度所有者IDハッシュ値が変更され、元の利用者のものになる。貸出期限もオフライン利用期限と同様に、一時移転要求がない場合には設定されない。また、貸出期限内の状態では、その時点の所有者(借入側の利用者)はオフライン利用が可能であるが、このときオフライン利用期限としては、貸出期限内の期限が適用される。
【0065】
次に、本実施形態における種々のアクセス権の状態について説明する。本実施形態で設定されるステータスは、利用者端末3にコンテンツを保管することなくオンライン状態で利用する「オンライン利用」、利用者端末3にコンテンツをダウンロードし、所定期間(オフライン利用期限までの期間)保存して利用する「オフライン利用」、及び、コンテンツの再販売要求を行った「売り出し中」の3種類である。
【0066】
本実施形態では、ステータスと、オフライン利用期限と、貸出期限と、の設定内容に基づいて、コンテンツの配信可否及びアクセス権の移転可否が判断される。より詳細には、本実施形態では、配信可否情報は、ステータスを含む概念であり、移転可否情報は、ステータスと、オフライン利用期限と、貸出期限と、を含む概念である。具体的には、図4に示す通り、オフライン利用期限と貸出期限がともに期限外又は未登録の場合には、コンテンツの配信及びアクセス権の移転は共に可能であり、ステータスが売り出し中の場合にはコンテンツの配信及びアクセス権の移転は共に不可能である。また、オフライン利用期限内の場合、又は貸出期限内の場合には、その時点のアクセス権の所有者に対するコンテンツ配信は可能であるが、アクセス権の移転は不可能である。
【0067】
なお、オフライン利用期限及び貸出期限を参照することなく、各ステータスにおいて、コンテンツ配信及びアクセス権移転の可否が設定され、ステータスのみで配信可否及びアクセス権の移転可否が判断されてもよい。具体的には、例えば、オンライン利用の場合にはコンテンツ配信及びアクセス権移転ともに可能、オフライン利用の場合、又は貸出中の場合にはコンテンツ配信は可能でありアクセス権移転は不可能、売り出し中の場合にはコンテンツ配信及びアクセス権移転ともに不可能とすればよい。なお本実施形態では、貸出中の場合、貸出による一時移転も再販売による移転もともに不可能であるが、貸出中の場合にも、貸出期限の範囲内で更に他のユーザへの一時移転、即ちいわゆる又貸しが許容されてもよい。
【0068】
移転処理部102及びコンテンツ配信部103は、このような移転可否情報や配信可否情報に基づいて、アクセス権の移転及びコンテンツ配信の可否をそれぞれ判断する。これにより、利用者端末3内にコンテンツを保管した状態でアクセス権の移転を行ったり、アクセス権の移転を行った後にコンテンツの利用を継続したりすることを防止することができる。なお、初期状態では「オンライン利用」のステータスが設定され、その後、後述のオフライン利用やアクセス権移転の処理に応じて変更される。
【0069】
次に、利用者によるコンテンツの新規購入に関する処理を説明する。図5は、コンテンツ新規購入時の処理の流れを示す図である。まずステップS11において、利用者端末3が利用者からコンテンツを指定した購入の希望の入力を受け付け、提供サービス処理装置2に新たなアクセス権の発生要求を送信する。この時、提供サービスへのログインが行われ、コンテンツを特定する識別情報としてのコンテンツID及び、利用者を特定する識別情報としての利用者IDが送信される。提供サービス処理装置2は、ステップS12において、利用者の情報に基づいて決済処理を行う。
【0070】
そしてステップS13では、提供サービス処理装置2が受信した発生要求に基づいて更にコンテンツ管理サーバ1に対して発生要求を送信する。ここで送信される情報はステップS11で送信された利用者IDを、提供サービス処理装置2が保持するマッピング情報によって利用者IDハッシュ値に置き換えた情報である。コンテンツ管理サーバ1では、発生処理部101が発生要求を受信する。
【0071】
コンテンツ管理サーバ1においては、ステップS14で、発生処理部101が、発生要求に基づいてシリアルナンバーを発行する。本実施形態では、シリアルナンバーはコンテンツIDごとの連番として管理される。そしてステップS15で、発生要求を分散台帳処理部104に受け渡し、分散台帳処理部104は、発生要求に基づいて、分散台帳ネットワークシステムBCに、利用者によるコンテンツへのアクセス権の登録要求を送信する。
発生要求には、購入者である利用者の識別情報である利用者IDハッシュ値と、アクセス権発行対象であるコンテンツの識別情報であるコンテンツIDと、が含まれる。
【0072】
分散台帳ネットワークシステムBCは、購入情報とともにアクセス権の登録要求を受け取ると、ステップS16でコンテンツ発行IDを発行して、新たなアクセス権をブロックチェーンに記録する。コンテンツ発行IDは、UUID(Universally Unique Identifier)として発行され、アクセス権ごとに一意の値となる。
つまり、分散台帳ネットワークシステムBCを構成するノードによって、重複しない一意のコンテンツ発行IDが発行される。
【0073】
分散台帳への記録は、分散台帳ネットワークシステムBC上で実行される「チェーンコード」を介して行われる。本実施形態では、分散台帳処理部104がアクセス権の登録要求を送信すると、分散台帳ネットワークシステムBC上の各ノードがチェーンコードを実行、互いに処理結果を検証し、結果が承認されると、分散台帳への書き出しが行われる。
それぞれの取引はハッシュチェーンによって構成され、改竄困難な形で管理される。
【0074】
そしてステップS17で分散台帳ネットワークシステムBCが登録結果を送信し、コンテンツ管理サーバ1がそれを受信する。ここで、図示しないが、受信した登録結果に基づいて購入履歴が購入履歴記憶部108に記録される。
【0075】
更にステップS18で登録結果がコンテンツ管理サーバ1から提供サービス処理装置2に送信される。ここでもステップS17と同様に、提供サービス処理装置2においても提供サービス別購入履歴が記録される。
【0076】
そして、ステップS19で提供サービス処理装置2が利用者端末3に、利用者の希望したコンテンツの購入処理が完了した旨を通知して、処理を終了する。なお、上記の処理は一例であり、分散台帳ネットワークシステムBCへの詳細な記録手順や、コンテンツ管理サーバ1及び提供サービス処理装置2における購入履歴の記録等の手順は任意に変更が可能である。分散台帳ネットワークシステムBCにアクセス権が記録されるという結果が得られる方法であれば、処理手順等は当業者が任意に決定してよい。
【0077】
このようにしてアクセス権が分散台帳ネットワークシステムBCに記録されると新たなアクセス権が発生する。なお、分散台帳ネットワークシステムBCに記録された取引の履歴は永続的に管理されるが、本実施形態ではアクセス権発生の処理と同様の手順でアクセス権の破棄も可能である。具体的には、アクセス権処理受付部100が、利用者の入力に基づくアクセス権の破棄要求を受け付けて分散台帳処理部104に受け渡し、分散台帳処理部104が分散台帳ネットワークシステムBCに対してアクセス権の破棄の記録要求を送信する。ここで、利用者から送信されるアクセス権の破棄要求は少なくとも利用者の識別情報を含み、分散台帳処理部104が送信するアクセス権の破棄の記録要求は、アクセス権を特定するための情報を含んでいる。破棄の履歴が記録されたアクセス権は、以降存在しないものと認識される。このようにアクセス権の破棄を可能とすることで、利用者は所持していたくないコンテンツを有体物と同様に「捨てる」ことが可能となり、またこれにより流通数の減少が生じるため市場価値が向上することが期待される。
【0078】
次に、アクセス権が登録された後に利用者がコンテンツを利用する際の処理について、図6を用いて説明する。まずステップS21で、利用者端末3が、利用者の入力に応じてコンテンツ管理サーバ1にコンテンツの配信要求を行う。この際に、利用者の識別情報として登録済みの利用者IDと、コンテンツの識別情報としてコンテンツIDと、が送信される。なおここで送信される情報は、アクセス権を一意に特定できる任意の情報であればよい。
【0079】
またこの時、利用者はコンテンツのオンライン利用又はオフライン利用を選択し、ステップS21では利用者に選択された利用の形態に関する配信要求が送信される。ここでは、オフライン利用、すなわち利用者端末3にコンテンツデータをダウンロードし、一定期間保管してコンテンツを利用する場合について説明する。なお、ここでの入力は、提供サービス処理装置2によって提供されるウェブページや、提供サービス処理装置2へのログインを行った状態で利用される専用のアプリケーション上で行われる。図6においては提供サービス処理装置2の記載を省略したが、提供サービス処理装置2を介してコンテンツ管理サーバ1に配信要求が送信されてもよい。
【0080】
コンテンツ管理サーバ1では、ステップS21でコンテンツ配信部103が配信要求を受信すると、受け取った情報を分散台帳処理部104に受け渡し、分散台帳処理部104が分散台帳ネットワークシステムBCにアクセス権の照会を要求する。
【0081】
分散台帳処理部104がアクセス権の照会要求を送信すると、ステップS23で、分散台帳ネットワークシステムBC上の各ノードがチェーンコードを実行して互いに処理結果を検証し、結果が承認されると、アクセス権の照会が実行される。そしてステップS24で、実行結果としてアクセス権の照会結果がコンテンツ管理サーバ1に返される。
【0082】
ここで利用者がコンテンツへのアクセス権を所有している(所有者IDハッシュ値が利用者IDハッシュ値と一致するアクセス権情報が分散台帳ネットワークシステムBCに記録されている)ことが確認されると、更にオフライン利用のためのアクセス権情報更新が行われる。
【0083】
具体的には、ステップS21で受信した配信要求がオフライン利用を求めるオフライン利用要求である場合、コンテンツ配信部103は、コンテンツの識別情報及び利用者に配信するコンテンツの有効期限を含む配信情報を分散台帳処理部104に受け渡す。分散台帳処理部104は受け取った配信情報に基づいて、分散台帳ネットワークシステムBCに対して、有効期限と同一のオフライン利用期限の設定を要求する(ステップS25)。またこのとき、アクセス権のステータスが「オフライン利用」でない場合には、分散台帳処理部104はステータスについても「オフライン利用」への更新を要求してもよい。なお、ステップS24で受け取ったアクセス権の照会結果において、既にアクセス権にオフライン利用期限が設定されており、かつ、その時点でオフライン利用期限前である場合には、オフライン利用期限の更新は行われない。
【0084】
ステップS26では分散台帳ネットワークシステムBCが、オフライン利用期限を設定又は更新するトランザクションを構成し、これが含まれるブロックが確定することで、アクセス権におけるオフライン利用期限の更新が行われる。
【0085】
オフライン利用期限の更新が完了すると、ステップS27でその実行結果がコンテンツ管理サーバ1に送信される。そしてコンテンツ管理サーバ1では、ステップS28で、コンテンツ配信部103が、アクセス権に含まれる所有者IDハッシュ値を組み込んだコンテンツデータを生成する。
【0086】
そして、更にステップS27で送信された実行結果に含まれるオフライン利用期限と同一の有効期限が付与された、ステップS28のコンテンツデータを利用者端末3に配信する(ステップS29)。利用者端末3は、受け取ったコンテンツデータを保存し、専用のアプリケーションやブラウザアプリケーション上でコンテンツを利用する。
【0087】
なおダウンロードしたコンテンツには有効期限が設定されるため、有効期限が切れるとコンテンツデータが削除される等、ダウンロードしたコンテンツの利用ができない状態となる。このように有効期限が切れた場合には、再度図6の処理を実行し、ステップS25~ステップS28において、利用者からの要求に応じて新たなオフライン利用期限を設定することにより、再度オフラインでのコンテンツ利用が可能となる。
【0088】
ここで本実施形態においては、移転可否情報としてオフライン利用期限を含むため、オフライン利用期限の設定や期限切れに伴うステータスの更新は不要であるが、オフライン利用期限が過ぎたときに分散台帳ネットワークシステムBCにおけるアクセス権のステータスが「オンライン利用」に変更されてもよい。具体的には、例えばコンテンツ管理サーバ1の記憶部にシリアルナンバーや特定ID等のアクセス権を特定する情報とともにオフライン利用期限が記憶されており、オフライン利用期限が切れた場合に分散台帳処理部104が分散台帳ネットワークシステムBCに対してアクセス権の更新要求を行うことで、オフライン利用期限が過ぎた場合に分散台帳データベースに記録されたアクセス権を更新することができる。また、その他分散台帳ネットワークシステムBC側でオフライン利用期限を監視し、オフライン利用期限が過ぎた場合に自動的に当該アクセス権のステータスを「オンライン利用」に変更するとともに変更結果をコンテンツ管理サーバ1に通知してもよい。
【0089】
なお、ここでは利用者端末3におけるコンテンツデータの保管を伴うオフライン利用について説明したが、オンライン利用の場合はステップS25~ステップS27は不要である。この場合、ステップS29において、コンテンツ配信部103は、ブラウザアプリケーション上で閲覧するためのコンテンツデータを配信する。オンライン利用においては、コンテンツの利用中に定期的に利用者端末3とコンテンツ管理サーバ1との間で通信を行い、その都度ステップS21~ステップS24を実行し、アクセス権の確認を行うことが好ましい。
【0090】
次に、アクセス権の移転について説明する。本実施形態では、利用者がオフライン利用を行っておらず、貸出期限内ではない(貸出中ではない)場合に、アクセス権の移転を受け付ける。ここでは再販売を行う場合について詳しく説明するが、アクセス権の所有者IDハッシュ値の変更については貸出(アクセス権の一時移転)の場合も同様である。
【0091】
本実施形態では再販売要求と再販売の購入要求を移転処理部102がそれぞれ受け付け、これらのマッチングが成立した場合に分散台帳処理部104がアクセス権の移転の記録を分散台帳ネットワークシステムBCに要求する。なお本発明はこれに限らず、例えば再販売要求を受け付けた時点で提供サービスがコンテンツを購入してその時点でアクセス権の所有者を更新し、その後、提供サービスが他の利用者に対してコンテンツを販売する、従来の古本屋と同様の形式で再販売が行われてもよい。
【0092】
図7は、再販売要求の登録に関する処理の流れを示す図である。利用者がアクセス権を所有するコンテンツについて、他の利用者への再販売を希望する場合、まずステップS31において利用者端末3が提供サービス処理装置2に対して再販売要求を送信する。この時、再販売を行う利用者の識別情報として登録済みの利用者IDと、コンテンツの識別情報としてコンテンツIDと、が送信される。なおここで送信される情報は、アクセス権を一意に特定できる任意の情報であればよい。
【0093】
次にステップS32では提供サービス処理装置2が、ステップS31で受け取った情報に基づいてコンテンツ管理サーバ1に再販売要求を送信する。コンテンツ管理サーバ1では、移転処理部102が再販売要求を分散台帳処理部104に受け渡し、分散台帳処理部104が再販売要求に基づいて、分散台帳ネットワークシステムBCに対してアクセス権の照会要求を行う(ステップS33)。
【0094】
ステップS34~S37では、分散台帳ネットワークシステムBC上の各ノードがチェーンコードを実行し、アクセス権の確認(ステップS34)、再販可否判断(ステップS35)、再販売登録(ステップS36)、アクセス権更新(ステップS37)、の処理を順次実行する。
【0095】
具体的には、再販売要求を行った利用者の利用者IDハッシュ値が所有者IDハッシュ値として記録され、かつ移転可否情報に基づき再販売が可能な状態のコンテンツのアクセス権が、分散台帳ネットワークシステムBCに記録されていた場合に再販売が可能であると判断する(ステップS35)。またコンテンツマスタ情報において、初回の発行後の再流通回数が指定されている場合には、当該アクセス権が過去に移転された回数を確認し、コンテンツマスタ情報において指定された回数を超えない場合に再販売が可能であると判断する。
【0096】
再販売が可能であると判断された場合、ステップS36において再販売の登録が行われる。これにより、再販売と購入希望のマッチングが可能となる。なお、再販売の管理は提供サービス処理装置2やその他のサービスにおいて行われてもよく、その場合には、再販売の管理を行う装置に対して再販売の登録要求が送信される。
【0097】
そしてステップS37では、アクセス権ステータスを「売り出し中」に変更する。分散台帳ネットワークシステムBCは、アクセス権の更新をブロックチェーンに記録する。具体的なブロックチェーンへの記録手順は図6のステップS26と同様である。ここで売り出し中のステータスの場合にはコンテンツ配信が不可能であるため、本実施形態ではこの「売り出し中」のステータスを示す情報が、「移転前の所有者である利用者に対するコンテンツの配信が不可であることを示す情報」として扱われる。
【0098】
このようにして再販売が登録されると、再販売の購入要求とのマッチングが成立した場合に、アクセス権の移転、すなわち分散台帳ネットワークシステムBCに記録されたアクセス権における所有者IDハッシュ値の変更が行われる。
【0099】
図8は、再販売によるアクセス権の移転における処理の流れを示す図である。コンテンツIDを指定した、再販売及び再販売の購入要求がある場合、ステップS41で移転処理部102がマッチングを行う。マッチングは任意の方法で行われればよく、フリーマーケットのように購入者が再販売の内容を確認して選択する形式でもよいし、登録順等でもよい。
【0100】
マッチングが成立すると、移転処理部102が、再販売情報を分散台帳処理部104に受け渡す。ここで再販売情報は、アクセス権を一意に特定するための情報と、購入側の利用者を特定するための情報であり、本実施形態では販売側の利用者IDハッシュ値、コンテンツID、及び購入側の利用者IDハッシュ値の組み合わせである。ただし再販売情報の内容は当業者が任意に変更してよい。
【0101】
次に分散台帳処理部104が、分散台帳ネットワークシステムBCに対して再販売情報に基づいてアクセス権の更新要求を行う(ステップS42)。なお、再販売ではなく貸出による一時移転の場合には、ここで更新要求として貸出期限が送信される。
【0102】
分散台帳ネットワークシステムBCは、ステップS43でアクセス権の所有者IDハッシュ値を購入側(移転先)の利用者IDハッシュ値に変更するとともに、ステータスを「オンライン利用」に変更する更新を、ブロックチェーンに記録する。
【0103】
ステップS44では分散台帳処理部104がアクセス権の更新結果を受信し、更にステップS45で再販売の結果を提供サービス処理装置2に送信する。提供サービス処理装置2は、コンテンツ代金を購入側の利用者から販売側の利用者に支払わせる決済処理を行い(ステップS46)、再販売結果を販売側及び購入側の双方の利用者端末3に対して通知(ステップS47)して処理を終了する。
【0104】
以上のように、アクセス権の移転を分散台帳データベースに記録することにより、コンテンツの再販売を安全に実現できる。なお、一時移転の場合には、図8の処理によりアクセス権の所有者IDハッシュ値が一時的に移転先の利用者のものに書き換えられるが、貸出期限が切れると再度所有者IDハッシュ値が元の利用者のものに変更され、再度元の持ち主がコンテンツを利用可能になる。
【0105】
本実施形態のコンテンツ管理システムによれば、複数の提供サービスが販売するコンテンツの情報を一括して管理するとともに、その購入者に付与されるアクセス権を複数主体で分散して安全に管理できる。これにより、仮に提供サービスが閉鎖されても、分散台帳データベースに記録された情報に基づき、当該提供サービスでコンテンツを購入した利用者のアクセス権が保証される。
【0106】
更に、アクセス権のステータスを分散台帳データベースに記録することで、利用者がコンテンツデータを利用者端末3に保存した状態でアクセス権を再販売することを防止できる。
【0107】
なお、分散台帳データベースに記録されたアクセス権の情報は、外部に提供されてもよい。例えば、特定のコンテンツへのアクセス権を有する利用者のリストを返すAPI(Application Programming Interface)を介して、外部にアクセス権の所有者の情報を提供することが考えられる。これにより、例えば、特定の書籍の読者限定イベントの開催や、握手券等の特典を、コンテンツへのアクセス権の所有者に対して外部の第三者が提供することが可能になる。
【0108】
<コンテンツ配信>
本発明では、単にアクセス権情報の照会を行うだけではなく、その結果に基づいてコンテンツデータの配信を行う。ここで、コンテンツの発売後に、例えば著作権の問題等により配信を中止したい場合がある。従って本実施形態では、コンテンツマスタ記憶部106が、コンテンツマスタとしてコンテンツの識別情報に対応付けられた配信可否を更に記憶し、これに基づいてコンテンツの配信が行われる。以下、コンテンツデータの配信について、図9を用いて詳細に説明する。
【0109】
図9は、本実施形態において利用者端末3から配信要求を受け付け、対象のコンテンツを特定してコンテンツの配信を行うまでの流れを示すシーケンス図である。なお、図6と同様の処理であるが、オフライン利用期限の更新については既に述べたため、ここでは説明を省略する。
【0110】
まずステップS51~S53では、ステップS21~S23と同様にして、利用者端末3からコンテンツ管理サーバ1に配信要求が送信され、分散台帳ネットワークシステムBCにおいて配信要求に基づきアクセス権の確認が行われる。次にステップS54では、アクセス権応答として、所有者IDハッシュ値が利用者IDハッシュ値と一致するアクセス権情報の記録の有無が返されるとともに、分散台帳ネットワークシステムBCにアクセス権情報が記録されている場合、コンテンツ管理サーバは、当該アクセス権情報に含まれるコンテンツIDを受信する。
【0111】
そしてコンテンツ配信部103は、コンテンツの配信を行うために、コンテンツマスタに基づいてステップS54で受信したコンテンツIDに対応するコンテンツを特定する。更にステップS55で当該コンテンツのコンテンツマスタにおいてコンテンツIDに対応付けて設定された配信可否(コンテンツごとの配信可否)を確認し、配信可能であった場合には、コンテンツを配信可能と判断してステップS56に進む。一方、配信不可の場合には、その旨を示す情報を利用者端末3に送信して処理を終了する。
【0112】
ステップS56では、ステップS55において特定されたコンテンツのコンテンツデータに基づき、不正流通防止情報が付与されたコンテンツが生成される。ここで不正流通防止情報とは、アクセス権に含まれる所有者IDハッシュ値及びダウンロードコンテンツの有効期限を含む、コンテンツの不正流通を防止するための任意の情報を指す。
【0113】
そして生成されたデータをステップS57で利用者端末3に送信することにより、アクセス権情報においてコンテンツIDにより特定されるコンテンツを、利用者端末3に配信することができる。
【0114】
以上のように、本発明では、アクセス権情報に基づいて対象のコンテンツを特定し、利用者端末3に対して配信することができる。なお、最新のアクセス権の状態を確認する際に、必ずしも毎回分散台帳ネットワークシステムBCの記録を参照する必要はなく、分散台帳ネットワークシステムBCの情報に基づき更新されるデータベースを別途用いてもよい。例えば、コンテンツ発行IDに対応付けて、コンテンツID、シリアルナンバー、ステータス、所有者IDハッシュ値、オフライン利用期限等の最新の情報を、別途記憶するデータベースを備え、当該データベースが分散台帳ネットワークシステムBCの記録により更新される形態であってもよい。この場合、図9のステップS53~ステップS56における処理は、データベースに記憶された最新の情報に基づいて行われる。
【符号の説明】
【0115】
1 :コンテンツ管理サーバ
2 :提供サービス処理装置
3 :利用者端末
100 :アクセス権処理受付部
101 :発生処理部
102 :移転処理部
103 :コンテンツ配信部
104 :分散台帳処理部
105 :利用者登録部
106 :コンテンツマスタ記憶部
107 :コンテンツデータ記憶部
108 :購入履歴記憶部
109 :提供サービス情報記憶部
110 :利用者情報記憶部
BC :分散台帳ネットワークシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9