(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-03
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】画像表示装置、画像表示システム、画像表示方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 5/10 20060101AFI20220204BHJP
【FI】
G09G5/10 B
(21)【出願番号】P 2021520031
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2019020553
(87)【国際公開番号】W WO2020235109
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391010116
【氏名又は名称】EIZO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】安田 哲也
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0285516(US,A1)
【文献】特表2015-510600(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013125(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを表示する医療用の画像表示装置であって、
画像表示部と、映像処理部とを備え、
前記映像処理部は、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを前記画像表示部に表示するように構成され、
第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)以上であり、
第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)未満であり、
第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、
第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置であって、
演算処理部を更に備え、
前記演算処理部は、拡張JND差算出部と、目標JND値算出部と、目標輝度算出部とを有し、
前記拡張JND差算出部は、予め定められた関係を用いて最小輝度から仮最小輝度を算出し、且つ、拡張JND差を算出し、
前記予め定められた関係は、前記最小輝度が与えられると、前記最小輝度に対応する最小JND値よりn(n≧1)大きいJND値に対応する輝度を、再帰的に算出可能であり、
前記仮最小輝度は、前記予め定められた関係を用いて各輝度を再帰的に算出することを繰り返したときに、初めて予め定められた輝度以上となる輝度であり、
前記予め定められた輝度は、0.05(cd/m
2
)以上であり、
前記最小輝度は、0.05(cd/m
2)未満であり、
前記拡張JND差は、前記仮最小輝度を算出する
際の各輝度を再帰的に算出することを繰り返した回数であり、
前記目標JND値算出部は、前記画像表示部の最大輝度に対応する最大JND値と、前記拡張JND差と、前記仮最小輝度に対応する仮最小JND値と、階調数とに基づいて、各階調の目標JND値を算出し、
前記目標輝度算出部は、前記目標JND値に基づいて目標輝度を算出し、
前記目標JND値は、第1及び第2階調特性の前記JND値に対応し、
前記目標輝度は、第1及び第2階調特性の前記対応輝度に対応している、画像表示装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の画像表示装置であって、
第1階調特性の前記JND値には、1以上の実数が割り当てられ、
第2階調特性の前記JND値には、1未満の実数が割り当てられている、画像表示装置。
【請求項4】
画像データを表示する医療用の画像表示装置であって、
画像表示部と、映像処理部とを備え、
前記映像処理部は、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを前記画像表示部に表示するように構成され、
第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2
)以上であり、
第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2
)未満であり、
第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、
第1及び第2階調特性は、JNDインデックスとこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められ、
第1階調特性の前記JNDインデックスには、1以上の整数が割り当てられ、
第2階調特性の前記JNDインデックスには、1未満の整数が割り当てられている、画像表示装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の画像表示装置であって、
第2階調特性の前記JNDインデックスには、負の整数が割り当てられている、画像表示装置。
【請求項6】
画像データを表示する医療用の画像表示システムであって、
画像表示部と、映像処理部とを備え、
前記映像処理部は、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを前記画像表示部に表示するように構成され、
第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)以上であり、
第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)未満であり、
第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、
第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、画像表示システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の画像表示システムであって、
演算処理部を更に備え、
前記演算処理部は、拡張JND差算出部と、目標JND値算出部と、目標輝度算出部とを有し、
前記拡張JND差算出部は、予め定められた関係を用いて最小輝度から仮最小輝度を算出し、且つ、拡張JND差を算出し、
前記予め定められた関係は、前記最小輝度が与えられると、前記最小輝度に対応する最小JND値よりn(n≧1)大きいJND値に対応する輝度を、再帰的に算出可能であり、
前記仮最小輝度は、前記予め定められた関係を用いて各輝度を再帰的に算出することを繰り返したときに、初めて予め定められた輝度以上となる輝度であり、
前記予め定められた輝度は、0.05(cd/m
2
)以上であり、
前記最小輝度は、0.05(cd/m
2)未満であり、
前記拡張JND差は、前記仮最小輝度を算出する
際の各輝度を再帰的に算出することを繰り返した回数であり、
前記目標JND値算出部は、前記画像表示部の最大輝度に対応する最大JND値と、前記拡張JND差と、前記仮最小輝度に対応する仮最小JND値と、階調数とに基づいて、各階調の目標JND値を算出し、
前記目標輝度算出部は、前記目標JND値に基づいて目標輝度を算出し、
前記目標JND値は、第1及び第2階調特性の前記JND値に対応し、
前記目標輝度は、第1及び第2階調特性の前記対応輝度に対応している、画像表示システム。
【請求項8】
請求項
6又は請求項7に記載の画像表示システムであって、
第1階調特性の前記JND値には、1以上の実数が割り当てられ、
第2階調特性の前記JND値には、1未満の実数が割り当てられている、画像表示システム。
【請求項9】
画像データを表示する医療用の画像表示システムであって、
画像表示部と、映像処理部とを備え、
前記映像処理部は、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを前記画像表示部に表示するように構成され、
第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2
)以上であり、
第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2
)未満であり、
第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、
第1及び第2階調特性は、JNDインデックスとこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められ、
第1階調特性の前記JNDインデックスには、1以上の整数が割り当てられ、
第2階調特性の前記JNDインデックスには、1未満の整数が割り当てられている、画像表示システム。
【請求項10】
請求項
9に記載の画像表示システムであって、
第2階調特性の前記JNDインデックスには、負の整数が割り当てられている、画像表示システム。
【請求項11】
画像データを表示させる医療用の画像表示方法であって、
表示ステップを備え、
前記表示ステップでは、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを画像表示部に表示し、
第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)以上であり、
第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)未満であり、
第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、
第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、方法。
【請求項12】
コンピュータに、画像データを表示させる医療用の画像表示方法を実行させるコンピュータプログラムであって、
表示ステップを備え、
前記表示ステップでは、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを画像表示部に表示し、
第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)以上であり、
第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m
2)未満であり、
第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、
第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、画像表示システム、画像表示方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理技術の向上により、コントラスト比が高い画像を表示可能な画像表示装置を製造することが可能となっている。このような画像表示装置は、0.05(cd/m2)未満の輝度に対応する階調を設定することが可能である。ここで、医療用の画像表示装置の階調特性には、DICOM規格(以下、DICOMと称する)のGSDF(グレースケール標準表示関数)に準拠することが求められている。そこで、GSDFに準拠した階調特性の画像を表示可能な画像表示装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。なお、DICOMのGSDFはBarten-Modelと呼ばれる理論に基づいている。
【0003】
特許文献1に記載の画像表示装置は、最大輝度に対応するJND値と最小輝度に対応するJND値とを算出し、これらのJND値に基づいて各階調の目標輝度を算出している。特許文献1において、算出された目標輝度は、GSDFに準拠した階調特性を示す。ここで、DICOMで規定されている各JNDインデックスに対応する対応輝度は、0.05(cd/m2)以上である。このため、画像表示装置に予め設定される最小輝度が0.05(cd/m2)以上である場合には、特許文献1に記載の画像表示装置はGSDFに準拠した画像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DICOMには、0.05(cd/m2)未満の輝度に対応するJNDインデックス(JND値)が明示されていない。このため、コントラスト比が高い画像を表示可能な画像表示装置に特許文献1に記載の技術を適用したときにおいて、画像表示装置に予め設定される最小輝度が0.05(cd/m2)未満である場合、低階調の表示画像の輝度はGSDFから外れると考えられる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、GSDFと互換性がある階調特性が、0.05(cd/m2)未満の輝度領域に拡張されている、画像表示装置、画像表示システム、画像表示方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、画像データを表示する医療用の画像表示装置であって、画像表示部と、映像処理部とを備え、前記映像処理部は、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを前記画像表示部に表示するように構成され、第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)以上であり、第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、画像表示装置が提供される。
【0008】
本発明では、第1及び第2階調特性に基づいて画像データを画像表示部に表示するように構成されている。ここで、第1階調特性(輝度が0.05(cd/m2)以上の階調特性)は、DICOM規格のGSDFの階調特性に準拠しており、JND値(JNDインデックス)とこれに対応する対応輝度との関係を満たす。また、第2階調特性(輝度が0.05(cd/m2)未満の階調特性)もJND値(JNDインデックス)とこれに対応する対応輝度との関係を満たす。したがって、本発明では、GSDFと互換性がある階調特性が、0.05(cd/m2)未満の輝度領域に拡張されている。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、第2階調特性における前記関係は、目標JND値とこれに対応する目標輝度との関係に対応しており、前記目標輝度は、前記対応輝度に対応し、前記目標JND値は、最大JND値と、拡張JND差と、仮最小JND値と、階調数とに基づいて算出され、前記最大JND値は、前記画像表示部の最大輝度に対応し、前記仮最小JND値は、仮最小輝度に対応し、且つ、前記仮最小JND値は、予め定められた関係を用いて最小輝度から算出され、前記最小輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、前記予め定められた関係は、前記最小輝度が与えられると、前記最小輝度に対応する最小JND値よりn(n≧1)大きいJND値に対応する輝度を、再帰的に算出可能な関係であり、前記仮最小輝度は、前記予め定められた関係を用いて各輝度を再帰的に算出することを繰り返したときに、初めて予め定められた輝度以上となる輝度であり、前記拡張JND差は、前記仮最小輝度を算出するときに用いられる、前記仮最小輝度よりも小さい輝度の数に対応している、画像表示装置が提供される。
好ましくは、演算処理部を更に備え、演算処理部は、拡張JND差算出部と、目標JND値算出部と、目標輝度算出部とを有し、拡張JND差算出部は、予め定められた関係を用いて最小輝度から仮最小輝度を算出し、且つ、拡張JND差を算出し、予め定められた関係は、前記最小輝度が与えられると、前記最小輝度に対応する最小JND値よりn(n≧1)大きいJND値に対応する輝度を、再帰的に算出可能であり、仮最小輝度は、前記予め定められた関係を用いて各輝度を再帰的に算出することを繰り返したときに、初めて予め定められた輝度以上となる輝度であり、最小輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、拡張JND差は、前記仮最小輝度を算出するときに用いられる、前記仮最小輝度よりも小さい輝度の数に対応し、目標JND値算出部は、前記画像表示部の最大輝度に対応する最大JND値と、前記拡張JND差と、前記仮最小輝度に対応する仮最小JND値と、階調数とに基づいて、各階調の目標JND値を算出し、目標輝度算出部は、前記目標JND値に基づいて目標輝度を算出し、目標JND値は、第1及び第2階調特性の前記JND値に対応し、目標輝度は、第1及び第2階調特性の前記対応輝度に対応している、画像表示装置が提供される。
好ましくは、前記JND値は演算処理部で用いられ、第1階調特性の前記JND値には、1以上の実数が割り当てられ、第2階調特性の前記JND値には、1未満の実数が割り当てられている、画像表示装置が提供される。
好ましくは、JNDインデックスは演算処理部で用いられ、第1階調特性の前記JNDインデックスには、1以上の整数が割り当てられ、第2階調特性の前記JNDインデックスには、1未満の整数が割り当てられている、画像表示装置が提供される。
好ましくは、第2階調特性の前記JNDインデックスには、負の整数が割り当てられている、画像表示装置が提供される。
【0010】
本発明の実施形態の別の観点によれば、画像データを表示する医療用の画像表示システムであって、画像表示部と、映像処理部とを備え、映像処理部は、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを前記画像表示部に表示するように構成され、第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)以上であり、第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、画像表示システムが提供される。
好ましくは、第2階調特性における前記関係は、目標JND値とこれに対応する目標輝度との関係に対応しており、前記目標輝度は、前記対応輝度に対応し、前記目標JND値は、最大JND値と、拡張JND差と、仮最小JND値と、階調数とに基づいて算出され、前記最大JND値は、前記画像表示部の最大輝度に対応し、前記仮最小JND値は、仮最小輝度に対応し、且つ、前記仮最小JND値は、予め定められた関係を用いて最小輝度から算出され、前記最小輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、前記予め定められた関係は、前記最小輝度が与えられると、前記最小輝度に対応する最小JND値よりn(n≧1)大きいJND値に対応する輝度を、再帰的に算出可能な関係であり、前記仮最小輝度は、前記予め定められた関係を用いて各輝度を再帰的に算出することを繰り返したときに、初めて予め定められた輝度以上となる輝度であり、前記拡張JND差は、前記仮最小輝度を算出するときに用いられる、前記仮最小輝度よりも小さい輝度の数に対応している、画像表示システムが提供される。
好ましくは、演算処理部を更に備え、前記演算処理部は、拡張JND差算出部と、目標JND値算出部と、目標輝度算出部とを有し、前記拡張JND差算出部は、予め定められた関係を用いて最小輝度から仮最小輝度を算出し、且つ、拡張JND差を算出し、前記予め定められた関係は、前記最小輝度が与えられると、前記最小輝度に対応する最小JND値よりn(n≧1)大きいJND値に対応する輝度を、再帰的に算出可能であり、前記仮最小輝度は、前記予め定められた関係を用いて各輝度を再帰的に算出することを繰り返したときに、初めて予め定められた輝度以上となる輝度であり、前記最小輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、前記拡張JND差は、前記仮最小輝度を算出するときに用いられる、前記仮最小輝度よりも小さい輝度の数に対応し、前記目標JND値算出部は、前記画像表示部の最大輝度に対応する最大JND値と、前記拡張JND差と、前記仮最小輝度に対応する仮最小JND値と、階調数とに基づいて、各階調の目標JND値を算出し、前記目標輝度算出部は、前記目標JND値に基づいて目標輝度を算出し、前記目標JND値は、第1及び第2階調特性の前記JND値に対応し、前記目標輝度は、第1及び第2階調特性の前記対応輝度に対応している、画像表示システムが提供される。
好ましくは、前記JND値は演算処理部で用いられ、第1階調特性の前記JND値には、1以上の実数が割り当てられ、第2階調特性の前記JND値には、1未満の実数が割り当てられている、画像表示システムが提供される。
好ましくは、JNDインデックスは演算処理部で用いられ、第1階調特性の前記JNDインデックスには、1以上の整数が割り当てられ、第2階調特性の前記JNDインデックスには、1未満の整数が割り当てられている、画像表示システムが提供される。
好ましくは、第2階調特性の前記JNDインデックスには、負の整数が割り当てられている、画像表示システムが提供される。
【0011】
本発明の実施形態の別の観点によれば、画像データを表示させる医療用の画像表示方法であって、表示ステップを備え、前記表示ステップでは、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを画像表示部に表示し、第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)以上であり、第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、方法が提供される。
【0012】
本発明の実施形態の別の観点によれば、コンピュータに、画像データを表示させる医療用の画像表示方法を実行させるコンピュータプログラムであって、表示ステップを備え、前記表示ステップでは、第1及び第2階調特性に基づいて前記画像データを画像表示部に表示し、第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)以上であり、第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)未満であり、第1階調特性は、DICOM規格のGSDF(グレースケール標準表示関数)の階調特性に準拠しており、第1及び第2階調特性は、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たすように定められている、コンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る画像表示装置1を備える画像表示システム100の機能ブロック図である。
【
図2】最小輝度が0.05(cd/m
2)未満である場合における、データの説明図である。
【
図3】最小輝度が0.05(cd/m
2)以上である場合における、データの説明図である。
【
図4】LUT(Look Up Table)データと
図5に示すフローチャートで取得する目標輝度とを対応付けるためのフローチャートである。
【
図5】
図4に示すフローチャートのステップS5(目標輝度の算出ステップ)の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】
図6AはBarten-Modelから導かれるコントラスト感度関数を示し、
図6Bは、Barten-Modelから導かれ、任意の輝度から次の1JND差に対応する輝度を算出する式を示す。
【
図7】
図7AはDICOMに規定される、輝度をJND値へ変換する式であり、
図7BはDICOMに規定される、JND値を輝度へ変換する式である。
【
図8】
図8AはΔJNDを算出するときに用いる式を示し、
図8Bは最小輝度が0.05未満の場合において目標JND値を算出するときに用いる式を示し、
図8Cは最小輝度が0.05以上の場合において目標JND値を算出するときに用いる式を示す。
【
図9】コントラスト感度関数を用いて最小輝度から仮最小輝度を算出することを説明する模式図である。
【
図10】拡張JNDインデックスを算出することを説明する模式図である。
【
図11】各階調と目標JND値と目標輝度とを示した表である。
【
図12】第1及び第2階調特性を示すグラフである。
【
図13】実施形態に係る画像表示システム100の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0015】
1 階調特性について
1-1 DICOM規格
医療用の画像表示装置は、医師等が正確な読影や診断を可能とするため、画像表示の一貫性が確保されることが好ましい。これを受け、画像表示装置には、医療用のデジタル画像の国際標準規格であるDICOM規格(以下、DICOMと称する)に準拠したものが提案されている。
DICOMでは、GSDF(グレースケール標準表示関数)という階調特性を示す関数が規定されている。人間の視覚特性は明るさに対して非線形であるが、GSDFは視覚的直線性が成立するように定められている。具体的には、GSDFは画像表示の人間の視覚特性に基づいているBarten-Modelから導出されている。
【0016】
DICOMでは、JND(Just-Noticeable Difference)インデックスと呼ばれる指標が用いられている。JNDインデックスでは、0.05(cd/m2)をスタート地点として"1"と定義され、"2"以降は平均的観察者が識別可能である、画像の最小の輝度差を1JNDごとに数字が増加している。つまり、JNDインデックスに対応する対応輝度は、JNDインデックスにおける1ステップが弁別域である輝度差に帰着するように、定められており、一意に決まる。
【0017】
なお、ここで説明したJNDインデックスは正の整数で規定されている。一方、JND値は、各階調に対応付けられた値であり、整数以外の値もとり得る。但し、JNDインデックス及びJND値は整数であるか否かの相違はあるが、JNDインデックスもJND値も本質的には同じであり、Barten-Modelに準拠した値である。
【0018】
1-2 実施形態の階調特性
DICOMには、0.05(cd/m2)未満の輝度に対応するJNDインデックスが明示されていない。換言すると、DICOMに規定されるGSDFは、0.05(cd/m2)未満の輝度に対して適用できない。このため、画像表示装置の表示階調に、0.05(cd/m2)未満の輝度が割り当てられている場合には、画像表示装置の階調特性がDICOMのGSDFから外れることなる。そこで、実施形態では、0.05(cd/m2)未満の輝度に対応するJNDインデックスをGSDFの算出に使用された同一のBarten Model及び同一のパラメータを使って、規定する。また、本発明の実施形態においては、DICOM規格のJNDインデックスとの互換性を持たせるために本来は取りえない0及び負の整数を使って0.05cd/m2未満のJNDインデックスを定義して拡張する。JND値も同様に0及び負で表現され、整数以外の値(例えば、実数)もとり得る。具体的には、実施形態に係る画像表示装置1の階調特性は、第1及び第2階調特性から構成される。
【0019】
第1階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)以上である。そして、第1階調特性は、DICOMのGSDFの階調特性に準拠している。つまり、第1階調特性は、DICOMに既に明示されているJNDインデックスと、このJNDインデックスに対応する対応輝度と、によって表される。
【0020】
第2階調特性の輝度は、0.05(cd/m2)未満である。好ましくは、第2階調特性の輝度は、0.001(cd/m2)以上であって0.05(cd/m2)未満である。上述したように、DICOMのGSDFは0.05(cd/m2)未満の輝度に対して適用ができない。このため、実施形態では、GSDFの適用範囲を、0.05(cd/m2)以上の輝度から0.05(cd/m2)未満の輝度へ、拡張するため、Barten-Modelに基づいて第2階調特性のJNDインデックスを取得する。第2階調特性のJNDインデックスは、1以上の整数で規定されるGSDFのJNDインデックスから拡張されたJNDインデックスであり、1未満の整数で規定される。このため、実施形態において、第2階調特性のJNDインデックスは、拡張JNDインデックスと称する場合があり、また、第2階調特性は、拡張されたGSDFの階調特性と称する場合がある。拡張JNDインデックスの取得方法は後述する。
【0021】
2 全体構成説明
実施形態に係る画像表示装置1を含む画像表示システム100の全体構成について説明する。本実施形態の画像表示システム100は、
図1に示すように、画像表示装置1と、情報処理装置2とを備えている。画像表示装置1は、演算処理部1Aと、LUT(Look Up Table)1Bと、映像処理部1Cと、画像表示部1Dと、記憶部1Eと、操作部1Fと、制御部1Gと、センサ1Hと、を備える。
【0022】
上記の各構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよく、ハードウェアによって実現してもよい。ソフトウェアによって実現する場合、CPUがコンピュータプログラムを実行することによって各種機能を実現することができる。プログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。ハードウェアによって実現する場合、ASIC、FPGA、又はDRPなどの種々の回路によって実現することができる。本実施形態においては、様々な情報やこれを包含する概念を取り扱うが、これらは、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、上記のソフトウェア又はハードウェアの態様によって通信や演算が実行され得るものである。
【0023】
実施形態に係る画像表示装置1は、例えば、医療用の読影システムや医療用の画像診断システムに適用することができる。また、実施形態に係る画像表示装置1は、例えば、医療用の画像を用いた診断方法に適用することもできる。画像表示装置1は、情報処理装置2から画像データを取得し、映像処理された画像データを画像表示部1Dに出力する。情報処理装置2は、画像表示装置1の制御及びセンサ1Hの制御を行う。また、情報処理装置2は画像表示部1Dに表示させる画像の画像データを画像表示装置1へ出力する。センサ1Hは画像表示部1Dの輝度を測定する。なお、実施形態において、センサ1Hは画像表示装置1に内蔵されているものとして説明するが、この形態に限定されるものではない。
【0024】
3 画像表示装置1の詳細構成説明
3-1 演算処理部1A
【0025】
演算処理部1Aは、記憶部1Eに記憶されたプログラムを読み出して種々の演算処理を実行するものであり、例えば、CPU等により構成される。演算処理部1Aは、拡張JND差算出部10と、変換部11と、目標JND値算出部12と、目標輝度算出部13と、近似式生成部14とを備える。上述したJND値やJNDインデックスは、演算処理部1Aで用いられる。
【0026】
次に説明するように、最小輝度Lminが0.05(cd/m2)未満の場合と、0.05(cd/m2)以上の場合とによって、演算処理部1Aが発揮する機能が異なる。最小輝度Lminが0.05(cd/m2)未満の場合には、演算処理部1Aは、第1及び第2階調特性の両方の階調特性に関わる処理を実行する。それに対し、最小輝度Lminが0.05(cd/m2)以上の場合には、演算処理部1Aは、第1階調特性の階調特性に関わる処理を実行する。この場合には従来の処理と同様である。まず、最小輝度Lminが0.05(cd/m2)未満の場合について説明する。
【0027】
3-1-1 最小輝度Lminが0.05(cd/m
2)未満の場合
(拡張JND差算出部10)
拡張JND差算出部10は、各種パラメータと、最小輝度Lminとを取得する。なお、各種パラメータとは、Barten-Modelのパラメータであり、例えば
図6Aに示すM
opt等のパラメータである。各種パラメータは、記憶部1Eに格納されている。また、画像表示装置1の操作者が、操作部1Fを用いて最小輝度Lminの値を入力することで、拡張JND差算出部10は最小輝度Lminを取得する。
【0028】
拡張JND差算出部10は、予め定められた関係を用いて最小輝度Lminから仮最小輝度Lmin_tmpを算出する機能を有する(第1機能)。予め定められた関係は、Barten-Modelに基づいた、
図6Bに示す式である。
また、拡張JND差算出部10は、
図6Bに示す式を用いて輝度を算出する機能を有する(第2機能)。
【0029】
・第1機能:仮最小輝度Lmin_tmpの算出
図6Bに示す式は、
図6Aに示すコントラスト感度関数から導出される。q
1~q
3の値は
図6Aに示す数値で表され、また、M
optは光変調伝達関数であり、C
sphは主瞳孔径依存構成要素であり、dは瞳孔の直径であり、σ
0は小瞳孔径の光学LSF(Line Spread Function)の標準偏差である。
この予め定められた関係は、最小輝度Lminが与えられると、最小輝度よりn(n≧1且つ、正の整数)大きいJND値に対応する対応輝度を、再帰的に算出可能である。予め定められた関係を用いて、輝度を再帰的に算出する過程を、
図9に基づいて説明する。
【0030】
図9において、L
0は最小輝度である。なお、各輝度の数番は便宜的に付している。つまり、
図9の各輝度の数番(0~19)は、DICOMに規定されているJNDインデックス表のJNDインデックス(1~19)とは異なる。
図9において、最小輝度L
0は0.05(cd/m
2)未満であり、DICOMのJNDインデックス表に規定されていない輝度である。
最小輝度L
0が与えられると、
図6Bに示す式を用いることで、輝度L
1が算出される。この再帰的な演算を繰り返していくと、L
19で初めて0.05(cd/m
2)を超える。実施形態において、初めて0.050(cd/m
2)を超えた輝度を、仮最小輝度Lmin_tmpと定義する。つまり、仮最小輝度Lmin_tmpは、予め定められた関係を用いて各輝度を再帰的に算出することを繰り返したときに、初めて予め定められた輝度(実施形態では0.05)以上となる輝度である。したがって、
図9では、L
19が仮最小輝度Lmin_tmpである。
【0031】
・第2機能:拡張JND差Jextの算出
図9に示す各輝度は、拡張JNDに対応する対応輝度である。拡張JNDの数は、各輝度のうち小さい方の輝度から順番に数える。つまり、最小輝度L
0のJNDの数番は、0が割り当てられ、輝度L
1のJNDの数番は1が割り当てられる。輝度L
2以降の輝度も、順次、割り当てられる。ここで、拡張JND差Jextは、
図9に示すように、輝度が0.05(cd/m
2)未満のJNDの数に対応する。換言すると、拡張JND差Jextは、仮最小輝度Lmin_tmpよりも小さいJNDの数に対応する。
図9において、仮最小輝度Lmin_tmpに対応するL
19よりも輝度が小さい値は、L
0~L
18の合計19個である。このため、
図9において、拡張JND差Jextは、19である。
【0032】
・第2機能:拡張JNDインデックスの算出
拡張JND差算出部10は、次に説明するように、拡張JNDインデックスを取得することもできる。
図9において、仮最小JND値Jmin_tmpは、JNDインデックス=1の輝度(=0.05(cd/m
2))とは異なる値であった。ここで、拡張JND差算出部10は、仮最小JND値Jmin_tmpがJNDインデックス=1の輝度と一致するように、最小輝度L
0(開始輝度)を定める。
具体的には、
図10に示すように、拡張JND差算出部10は、最小輝度L
0を0.0010(cd/m
2)に定める。そして、拡張JND差算出部10が、第2機能で説明した演算を順番に行い、輝度L
0~輝度L
19を算出する。ここで、拡張JND差算出部10が最小輝度L
0を0.0010(cd/m
2)に定めた場合には、仮最小JND値Jmin_tmpに対応するL
19は0.05(cd/m
2)となり、JNDインデックス=1の輝度と一致する。このため、L
0~L
18は、1未満のJNDインデックスに対応する輝度と規定することができる。つまり、L
18は、JNDインデックスが0に対応する輝度であり、L
17は、JNDインデックスが-1に対応する輝度であり、・・・L
0は、JNDインデックスが-18に対応する輝度である。このように、拡張JND差算出部10は、1未満のJNDインデックス、すなわち拡張JNDインデックスと、これに対応する輝度と、を取得することができる。
【0033】
(変換部11)
変換部11は、仮最小輝度Lmin_tmpと、最大輝度Lmaxとを取得する。
図2に示すように、変換部11は、仮最小輝度Lmin_tmpを拡張JND差算出部10から取得する。また、画像表示装置1の操作者が、操作部1Fを用いて最大輝度Lmaxの値を入力することで、変換部11は最大輝度Lmaxを取得する。仮最小輝度Lmin_tmp及び最大輝度Lmaxは、共に、0.05(cd/m
2)以上であるため、DICOMに規定される式3を適用可能である。つまり、変換部11は、
図7Aに示すように、DICOMに規定される式3に基づいて、輝度をJND値へ変換する機能を有する。具体的には、
図2に示すように、変換部11は、拡張JND差算出部10が算出した仮最小輝度Lmin_tmpを仮最小JND値Jmin_tmpへ変換する。また、変換部11は、最大輝度Lmaxを最大JND値Jmaxへ変換する。
【0034】
(目標JND値算出部12)
目標JND値算出部12は、仮最小JND値Jmin_tmp及び最大JND値Jmaxを、変換部11から取得する。また、目標JND値算出部12は、拡張JND差Jextを拡張JND差算出部10から取得する。目標JND値算出部12は、最大JND値Jmaxと、拡張JND差Jextと、仮最小JND値Jmin_tmpと、階調数とに基づいて、各階調の目標JND値Jm_targetを算出する。なお、実施形態において、階調は0~255まであるものとして説明するが、これに限定されるものではない。目標JND値Jm_targetを算出する過程について次に説明する。
【0035】
まず、目標JND値算出部12は、
図8Aに示す式5に基づいてΔJNDを算出する。ΔJNDは、隣接する階調間のJND値の差分である。隣接する階調間のJND値の差分は、どの隣接する階調間においても、同じである。実施形態においては、最大輝度Lmaxが1000(cd/m
2)とされているものとする。このとき、最大JND値は810.49である。また、
図9に示すように、最小輝度が0.0015(cd/m
2)とされているものとする。このとき、再帰的な演算で算出される、仮最小輝度に対応するL
19は、0.05268(cd/m
2)である。このため、仮最小JND値Jmin_tmpは1.62(cd/m
2)である。また、上述したように、Jextは19である。したがって、
図8Aに示すように、ΔJNDは、3.246となる。
【0036】
次に、目標JND値算出部12は、
図8Bに示す式6に基づいて、各階調の目標JND値Jm_targetを算出する。式6におけるmは0~255の整数である。各階調と目標JND値との関係は
図11に示す通りである。
図11において、
図11に示す破線で示した矩形内の6つの目標JND値は、値が1未満であり、拡張JNDインデックス(-19~0)に対応している。
【0037】
(目標輝度算出部13)
目標輝度算出部13は、各階調の目標JND値に基づいて、第1及び第2階調特性(
図12参照)の目標輝度を算出する。目標JND値が1以上の範囲(第1階調特性の範囲)において、目標輝度算出部13は、
図7Bに示す式4に基づいて、目標JND値を目標輝度へ変換する。つまり、第1階調特性は、DICOMのGSDFの階調特性に準拠している。換言すると、第1階調特性は、1以上のJND値(JNDインデックス)とこれに対応する対応輝度との関係(
図12の実線参照)を満たすように定められる。
【0038】
式4は、目標JND値が1未満の場合には適用することができない。このため、目標JND値が1未満の範囲(第2階調特性の範囲)において、目標輝度算出部13は、後述する近似式Lapproxに基づいて、目標JND値を目標輝度へ変換する。
拡張JND差算出部10が取得する拡張JNDインデックスはJND値が整数であるが、近似式Lapproxは整数以外のJND値も適用可能である。つまり、拡張JNDインデックス及びこれに対応する対応輝度と、近似式Lapproxとは、適用可能なJND値が整数以外を含むか否かという違いはあるが、本質的には同じ階調特性である。つまり、近似式Lapproxは、1未満のJND値(JNDインデックス)とこれに対応する対応輝度との関係を示した式である。つまり、実施形態において、近似式Lapprox(
図12の破線参照)は、第2階調特性を定める式である。そして、第2階調特性は、1未満のJND値(JNDインデックス)とこれに対応する対応輝度との関係(
図12の破線の近似式Lapprox)を満たすように定められる。
【0039】
このように、第1階調特性(輝度が0.05(cd/m2)以上の階調特性)は、DICOMのGSDFの階調特性に準拠しており、JND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たす。また、第2階調特性(輝度が0.05(cd/m2)未満の階調特性)もJND値とこれに対応する対応輝度との関係を満たす。したがって、実施形態では、GSDFと互換性がある階調特性が、0.05(cd/m2)未満の輝度領域に拡張されている。
【0040】
(近似式生成部14)
式4は、JND値を輝度へ変換する式であるが、JND値が1未満の場合には適用することができない。また、拡張JNDインデックスは整数であるが、各階調の目標JND値は整数とは限らない。これらを踏まえ、近似式生成部14は、JND値が1未満であり且つJND値が整数以外であったとしても、JND値を輝度へ適切に変換することができる関係式を生成する。
【0041】
ここで、GSDFに対応する既存のJND値とこれに対応する対応輝度とを、第1階調特性に関する値V1と称する(
図2参照)。また、拡張JND値とこれに対応する対応輝度を、第2階調特性に関する値V2と称する。近似式生成部14は、第1及び第2階調特性に関する値V1、V2に基づいて、近似式Lapproxを生成する。なお、近似式Lapproxの形式は、実施形態において5次関数を仮定しているが、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0042】
近似式Lapproxが、GSDFに基づく曲線(JNDインデックスが1以上の範囲の曲線)と滑らかにつながるように、近似式生成部14は第2階調特性に関する値V2に加えて第1階調特性に関する値V1も用いて近似式Lapproxを生成する(
図12参照)。
第1階調特性に関する値V1は、例えば、拡張JNDインデックスと同程度の数のJNDインデックスを有するとよい。つまり、実施形態では第2階調特性に関する値V2は、-18~0のJNDインデックスとこれに対応する対応輝度とを有するので、第1階調特性に関する値V1は、1~19のJNDインデックスとこれに対応する対応輝度とを有するとよい。近似式生成部14は、第1及び第2階調特性に関する値V1、V2を近似式Lapproxに代入し、回帰分析をすることで、近似式Lapproxの係数a~e及び切片fを取得する。これにより、近似式生成部14は、近似式Lapproxを生成することができる。
【0043】
3-1-2 最小輝度Lminが0.05(cd/m
2)以上の場合
(変換部11)
図3に示すように、変換部11は、最小輝度Lminと、最大輝度Lmaxとを取得する。画像表示装置1の操作者が、操作部1Fを用いて、最小輝度Lminの値及び最大輝度Lmaxの値を入力することで、変換部11は最小輝度Lmin及び最大輝度Lmaxを取得する。変換部11は、最小輝度Lminを最小JND値Jminへ変換し、最大輝度Lmaxを最大JND値Jmaxへ変換する。
【0044】
(目標JND値算出部12)
目標JND値算出部12は、次に説明するように公知の方法で目標JND値Jm_targetを算出する。
図3に示すように、目標JND値算出部12は、最小JND値Jmin及び最大JND値Jmaxを、変換部11から取得する。目標JND値算出部12は、最小JND値Jminと、最大JND値Jmaxと、階調数とに基づいて、各階調の目標JND値Jm_targetを算出する。具体的には、目標JND値算出部12は、
図8Cに示す式7に基づいて目標JND値Jm_targetを算出する。
【0045】
(目標輝度算出部13)
目標輝度算出部13は、各階調の目標JND値に基づいて、第1階調特性の目標輝度を算出する。目標輝度算出部13は、
図7Bに示す式4に基づいて、目標JND値を目標輝度へ変換する。
【0046】
3-2 LUT1B
LUT1Bは、LUTデータを有する。LUTデータは、入力データに対応付けられた出力データのテーブル(変換テーブル)として構成される。入力データは、情報処理装置2から取得する画像データに対応し、LUT1Bを介して変換された画像データは映像処理部1Cに入力される。画像表示装置1がLUT1Bを備えることで、容易にLUTデータの対応付けを変えることができる。LUTデータの階調表現ができる数(ビット深度)は画像表示装置1固有のものであり、一般的に入力データよりも出力データのほうがビット数は多い。
【0047】
後述する
図4のキャリブレーションの実行プロセスとして、画像表示装置1のLUTデータがデフォルト値に設定される。そして、画像表示部1Dの輝度が一般的に目標となる最大輝度値以上になるように、制御部1Gは白の輝度を調整する。測定に使用する画像は情報処理装置2からの画像データを表示してもよいし、画像表示装置1があらかじめ保存しておいた指定の画像データを表示してもよい。センサ1Hが指定の階調値(測定階調値)における画像表示部1Dの輝度を測定する。ここで、画像表示装置1において、測定階調値及びこれに対応する測定輝度は、画像表示装置1の基本特性のLUTデータとして対応付けられる。そして、目標輝度算出部13が各階調の目標輝度を取得すると、各階調の目標輝度にするために適切なLUTデータが基本特性のLUTデータから選択される。輝度が0.05(cd/m
2)以上の領域において、目標輝度算出部13が取得する目標輝度は、GSDFに準拠している。また、輝度が0.05(cd/m
2)未満の領域において、目標輝度算出部13が取得する目標輝度は、拡張されたGSDFに対応している。このため、LUT1Bは、GSDF又は拡張されたGSDFに対応したLUTデータが選択されることになる。なお、測定階調値の間のLUTデータの輝度は補間することで取得可能である。
【0048】
3-3 映像処理部1C及び画像表示部1D
映像処理部1Cは、LUTデータ(出力)に基づいて映像処理を行い、画像表示部1Dは当該映像処理がなされたデータを表示する。画像表示部1Dは、画像データ(静止画及び動画を含む)を画像として表示するものである。画像表示部1Dは、例えば、液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等で構成することができる。
【0049】
3-4 記憶部1E
記憶部1Eは、種々のデータやプログラムを記憶する。記憶部1Eには、例えば、Barten-Modelパラメータ、
図6A~
図8Cに示す式1~式7等が記憶されている。また、記憶部1Eには、センサ1Hの測定用の画像データが格納されている。
【0050】
3-5 操作部1F
操作部1Fは、画像表示装置1を操作するものであり、例えば、ボタン、タッチパネル及び音声入力装置等で構成することができる。なお、実施形態において、最小輝度Lminや最大輝度Lmaxは、情報処理装置2が有するアプリケーションを介して入力されるが、操作部1Fを用いて入力されてもよい。
【0051】
3―6 制御部1G
制御部1Gは、後述するフローチャートのキャリブレーションを実施するときにおいて、画像表示部1Dに表示される画像の輝度を制御(調整)する。
【0052】
3 フローチャート
3-1 全体構成
図4に基づいて、画像表示システム100の制御フローチャートの一例を説明する。
図4のフローチャートは、キャリブレーションの基本的なプロセスを示しており、白画面の輝度調整(ステップS3)、各階調の表示輝度を目標輝度にするために適切なLUTデータを選択するためのLUT調整と(ステップS6)、を有する。
【0053】
操作者は情報処理装置2のアプリケーションを介して最小輝度Lminや最大輝度Lmaxを入力することで、画像表示装置1が最小輝度Lminや最大輝度Lmaxを取得する(ステップS1)。なお、最小輝度Lminは、センサ1Hの測定値を用いることもできる。演算処理部1Aは記憶部1Eに予め格納されているLUTデータのデフォルト値をLUTに書き込む(ステップS2)。制御部1Gは白画面データを画像表示部1Dに表示させ、センサ1Hが画像表示部1Dの輝度を測定し、制御部1Gは画像表示部1Dの輝度を調整する(ステップS3)。なお、予め定められた輝度範囲に収まるまで、画像表示部1Dの輝度変更とセンサ1Hの測定とを繰り返す。
【0054】
記憶部1Eに格納されている指定の複数の階調の画像データを、画像表示部1Dに表示させ、センサ1Hが画像表示部1Dの輝度を測定する(ステップS4)。なお、測定しなかった階調の測定輝度は補間によって取得することができる。
【0055】
演算処理部1Aは目標輝度を取得する(ステップS5)。ステップS5の詳細は、「3-2目標輝度算出フロー」で詳しく説明する。そして、演算処理部1Aは、ステップS4で取得した測定輝度と、ステップS5で取得した目標輝度とに基づいて、目標輝度にするために適切なLUTデータを選択する(ステップS6)。
【0056】
3-2 目標輝度算出フロー
図5に基づいて、目標輝度を取得するフローチャートの一例を説明する。
【0057】
(ステップS11)
演算処理部1Aは最小輝度Lminが0.05(cd/m2)未満であるか否かを判定する。最小輝度Lminが0.05(cd/m2)未満である場合には、ステップS12に移行し、最小輝度Lminが0.05(cd/m2)以上である場合には、ステップS19に移行する。
ステップS11からステップS12に移行する場合は、最小輝度Lminが0.05(cd/m2)未満であるため、画像表示装置1は第1階調特性だけでなく第2階調特性も加味して画像データを表示する必要がある。このため、演算処理部1Aは後述するステップを実行し、拡張JND値を取得する。
一方、ステップS11からステップS19に移行する場合は、最小輝度Lminが0.05(cd/m2)以上であるため、第1階調特性(GSDF)を加味して画像データを表示すればよい。この場合には、既存の方法と同様の方法で目標輝度を取得することができる。
【0058】
(ステップS12~ステップS14:再帰的演算によりLmin_tmpとJextを取得)
拡張JND差算出部10は、最小の拡張JNDインデックスに対応する最小輝度L
0を
図6Bに示す式に代入し、次の拡張JNDインデックスに対応する輝度L
1を算出する(ステップS12)。実施形態において最小輝度L
0は0.00150であり、輝度L
1は0.00246である。拡張JND差算出部10は、次の拡張JNDインデックスに対応する輝度L
1が0.05(cd/m
2)以上であるか否かを判定する(ステップS13)。輝度L
1は0.05(cd/m
2)以上ではないので、ステップS12に演算を繰り返す。ステップS12及びステップS13は、0.05268(cd/m
2)である輝度L
19が算出されるまで繰り返される。そして、拡張JND差算出部10は、ステップS12及びステップS13の繰り返し演算の結果、仮最小輝度Lmin_tmp(=L
19)と、拡張JND差Jextとを取得する(ステップS14)。
【0059】
(ステップS15:輝度→JND値)
変換部11は、
図7Aに示す式3に基づいて、最大輝度Lmaxを最大JND値Jmaxに変換するとともに仮最小輝度Lmin_tmpを仮最小JND値Jmin_tmpへ変換する。実施形態において、最大輝度Lmaxは1000(cd/m
2)であるので、最大JND値Jmaxは810.49であり、仮最小輝度Lmin_tmpは0.05268(cd/m
2)であるので、仮最小JND値Jmin_tmpは1.62である。
【0060】
(ステップS16及びステップS17:ΔJND及び目標JND値の算出)
目標JND値算出部12は、
図8Aに示す式5に基づき、最大JND値Jmaxと、拡張JND差Jextと、仮最小JND値Jmin_tmpと、階調数とを用いて、ΔJNDを算出する(ステップS16)。実施形態において、最大JND値Jmaxは810.49であり、仮最小JND値Jmin_tmpは1.62であり、拡張JND差Jextは19である。このため、実施形態において、ΔJNDは3.246である。次に、目標JND値算出部12は、
図8Bに示す式6に基づいて、各階調の目標JND値を取得する(ステップS17)。
【0061】
(ステップS18:近似式Lapproxの生成及び目標輝度の算出)
近似式生成部14は、第1及び第2階調特性に関する値V1、V2に基づいて近似式Lapproxを生成する。第2階調特性に関する値V2は、ステップS12~ステップS14の再帰的演算において取得される。また、近似式生成部14は、第1階調特性に関する値V1を記憶部1Eから取得することができる。
目標輝度算出部13は、各階調の目標JND値に基づいて、第1及び第2階調特性の目標輝度を算出する。目標JND値が1以上である場合、目標輝度算出部13は、
図7Bに示す式4に基づいて、目標JND値を目標輝度へ変換する。また、目標JND値が1未満である場合、目標輝度算出部13は、近似式Lapproxに基づいて、目標JND値を目標輝度へ変換する。
【0062】
(ステップS19~ステップS21:既存の方法による目標輝度の算出)
変換部11は、
図7Aに示す式3に基づいて、最大輝度Lmaxを最大JND値Jmaxに変換するとともに最小輝度Lminを最小JND値Jminへ変換する(ステップS19)。
目標JND値算出部12は、
図8Cに示す式7に基づき、最大JND値Jmaxと、最小JND値Jminと、階調数とを用いて、各階調の目標JND値Jm_targetを算出する(ステップS20)。
目標輝度算出部13は、
図7Bに示す式4に基づいて、各階調の目標JND値を目標輝度へ変換する。
【0063】
4 変形例
図13に示すように、画像表示システム100は、演算処理部1Aが情報処理装置2に備えられていてもよい。つまり、情報処理装置2が実施形態で説明したJND値とこれに対応する輝度との関係を予め取得しており、画像表示装置1が情報処理装置21から当該関係を取得する構成であってもよい。
また、本変形例において、センサ1Hは、画像表示装置1に内蔵されておらず、画像表示装置1の外部に備えられている。本変形例では、情報処理装置2が、センサ1Hを制御し、センサ1Hの検出結果を受け取る。また、情報処理装置2には指定の複数の階調の画像データが格納されている。情報処理装置2が各階調の画像データやセンサ1Hの測定輝度を画像表示装置1に出力することで、実施形態で説明した
図4のキャリブレーションが実施される。本変形例であっても、実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
5 その他の実施形態
実施形態に係る画像表示装置1はカラー画像を表示可能な画像表示装置であってもよい。例えば、画像表示装置1は、グレースケールの画像を表示する場合に、第1及び第2階調特性で画像を表示することができればよい。
【符号の説明】
【0065】
1:画像表示装置、1A:演算処理部、1C:映像処理部、1D:画像表示部、1E:記憶部、1F:操作部、1G:制御部、1H:センサ、2:情報処理装置、10:拡張JND差算出部、11:変換部、12:目標JND値算出部、13:目標輝度算出部、14:近似式生成部、100:画像表示システム、Jext:拡張JND差、Jm_target:目標JND値、Jmax:最大JND値、Jmin:最小JND値、Jmin_tmp:仮最小JND値、Lmax:最大輝度、Lmin:最小輝度、Lmin_tmp:仮最小輝度