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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ジャンプ傘
(51)【国際特許分類】
   A45B 25/16 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
A45B25/16 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017216930
(22)【出願日】2017-11-10
(65)【公開番号】P2019084285
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】721000398
【氏名又は名称】原田 豊成
(73)【特許権者】
【識別番号】517393651
【氏名又は名称】▲高▼松 清美
(72)【発明者】
【氏名】原田 豊成
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 清美
【審査官】柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-113622(JP,U)
【文献】実開昭61-196616(JP,U)
【文献】特開2011-092557(JP,A)
【文献】実開昭47-021861(JP,U)
【文献】登録実用新案第3206417(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸柄と、
該軸柄の最上部に固定された上ロクロと、
該上ロクロの下側にあって前記軸柄を上下にスライドする中ロクロと、
該中ロクロの下側に設けられた下ロクロと、
該下ロクロと前記中ロクロに挟まれ、前記下ロクロと前記中ロクロと一体となって前記軸柄に沿って上下にスライドする中バネと、
前記軸柄の最下部近辺に配置された下ハジキと、
該下ハジキの下側に取り付けられ該下ハジキと一体となった押しボタンと、
該押しボタンの下側にある握柄と、
前記軸柄の前記上ロクロから前記下ハジキの間の位置に、爪部を下向きにして、故に、前記中ロクロと前記中バネと前記下ロクロの、前記軸柄に沿った下降の通過を常に可能とし、上昇の通過は止めることの出来る中ハジキを配置していて、
前記軸柄の外側に、前記軸柄と軸心を同一にし、且つ前記中ロクロと前記中バネと前記下ロクロの内側に、前記中ハジキの位置から前記握柄の近辺まで外管を配置し、該外管は少なくとも前記中ハジキの湾曲した爪部の長さ以上の距離を前記軸柄に沿って上下にスライド可能で、前記外管には、前記中ハジキの位置に、少なくとも前記中ハジキの爪部の長さより長い両端が閉じたスリットが開けられていて、故に、前記中ハジキの爪部がそこから突出可能で、前記軸柄には、前記中ハジキと前記下ハジキが、それぞれの上端が固定されて取り付けられていることを特徴とするジャンプ傘。
【請求項2】
軸柄と、
該軸柄の最上部に固定された上ロクロと、
該上ロクロの下側にあって前記軸柄を上下にスライドする中ロクロと、
該中ロクロの下側に設けられた下ロクロと、
該下ロクロと前記中ロクロに挟まれ、前記下ロクロと前記中ロクロと一体となって前記軸柄に沿って上下にスライドする中バネと、
前記軸柄の最下部近辺に配置された下ハジキと、
該下ハジキの下側に取り付けられ該下ハジキと一体となった押しボタンと、
該押しボタンの下側にある握柄と、
前記軸柄の前記上ロクロから前記下ハジキの間の位置に、爪部を下向きにして、故に、前記中ロクロと前記中バネと前記下ロクロの、前記軸柄に沿った下降の通過を常に可能とし、上昇の通過は止めることの出来る中ハジキを配置していて、
前記軸柄の内側に、前記軸柄と軸心を同一にして、前記中ハジキの位置から前記握柄の近辺まで内管を配置し、該内管は少なくとも前記中ハジキの湾曲した爪部の長さ以上の距離を前記軸柄に沿って上下にスライド可能で、前記内管には、前記中ハジキの位置に前記中ハジキを、そして前記下ハジキの位置に前記下ハジキと押しボタンを、それらの上端を前記内管に固定して取付けられ、一方、前記軸柄には、前記中ハジキの位置に、前記中ハジキの爪部が突出する長さの両端が閉じたスリットが開けられ、前記下ハジキの位置には前記下ハジキの爪部と押しボタンの長さに、少なくとも前記中ハジキの爪部の長さを加えた長さのスリットが開けられていることを特徴とするジャンプ傘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人々が雨天などで用いるジャンプ傘に属する。
【背景技術】
【0002】
傘を開くには、親骨を支える各受骨を束ねたロクロを、傘の軸柄に沿って押し上げる必要があり、現在は、これをバネの力を利用して自動化したジャンプ傘が普及している。そしてこのジャンブ傘には、従来の上ロクロと下ロクロに加えて新たに中ロクロが設けられている。ジャンプ傘は元々、自動車の降車時に両手を差し出して傘を開きにくかったことに鑑みて発明され、片手で傘を開けることが出来るという特徴を持つものである。両手を用いる必要が無いために、自動車の降車時に限らず、荷物を持って片手が塞がった時などにも便利なものである。傘を閉じる時にバネの力を蓄えて、ハジキと呼ばれる留め具で下ロクロを留めるのであるが、このハジキによる留めを外すことを便利にする為に、このハジキにはボタンが付いている。片手で傘を持ち、その片手の親指でこのボタンを押すだけで、傘を自動で開くことが出来るので、こうしたジャンプ傘はワンタッチ傘とも呼ばれ重宝されている。下記に示す特許文献はこれらのジャンプ傘の軽量化や製作上の安全性などについて改善したものである。 因みに、従来の竹製の番傘でも、軸柄の中間にハジキの爪を上向きに追加して、傘の親骨等の自重を利用して傘を半開きにしておくことが可能なものも有った。しかし、バネの力で常に開く力を有しているジャンプ傘と従来の番傘とではハジキの爪の向きは逆であることと、番傘の中間ハジキでは吹き上げる風圧に対しては無力であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-61527号公報
【文献】特開2006-14758号公報
【文献】特開2011-92557号公報
【文献】特許5138660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の地球環境の温暖化に伴い、日本でも竜巻の発生が珍しくなくなり、雨風の強度も年々増してきている。そして、人々は風雨が強くなると、両手を使い傘を半開き状態にして傘に当たる風圧を少なくし、傘が壊れる事を防いでいる。傘の半開と全開では傘の描く円の半径は2倍も違わないのであるが、円の面積は半径の2乗に比例するので、少しの半開状態でも風圧に対する効果は相当に大きくなるからである。 しかし、半開状態では、特にジャンプ傘には常に全開になろうとする力が強く働いており、これを途中で保持し続けなければならない。従って、ちょっと油断すれば、風の力でいきなりに全開になり、さらに強い風圧で傘が壊れる事が多々あった。また、荷物を持っている時などは片手が塞がってしまい、半開を維持する自由が利かないという問題もあった。一方、人混みの中でジャンプ傘を勢いよく開くと周囲の人々に迷惑が掛かり、混雑の中で傘を全開にして歩くことはエチケットにも反する事であった。また、車からの降車時にジャンプ傘をいきなり全開しようとすると大きなスペースを使う事になり、安全上及びエチケット上の問題があった。
【0005】
本発明の第一の課題は、このような問題に対して、ジャンプ傘を半開状態に維持したまま片手でさすことが出来るようにすることである。また、半開状態であっても、従来の番傘の中間ハジキでは成し得なかった風圧に対して安定感を得て安全にすることも併せて課題である。
【0006】
そして、本発明の第二の課題は、この様にいきなり全開にするしかなかった従来のジャンプ傘を改良し、手元の操作の仕方により、ジャンプ傘を半開状態に開いて固定したり、或はその半開状態から同様に手元の操作一つで全開にしたり、或は、従来通りにいきなり全開にすることなどが自在に行えるジャンプ傘を提供することである。もちろん、ジャンプ傘は片手での操作が生命線であるので、加えてこれらの操作も片手で行えるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記した第一の課題を解決する為の手段を第一の手段として、軸柄の、上ロクロの部位から最下部近辺の下ハジキの部位までの間に、新たなハジキを設ける方法を考案した。追加する新たなハジキは、軸柄の空洞内に設けるのであるが、軸柄自身に固定するか、それ以外の軸柄内部の別物に固定するかは、第一の課題の手段としては問わないことにする。従って、先ず最初には、いずれのハジキも取付対象は特定せずに、位置関係で表現することにする。しかし、いずれにしても新たなハジキは、軸柄に設けられたスリットから突出したり押し込められたりする構造とする。従来のジャンプ傘は、傘を自動で開く為の力を、中ロクロと下ロクロの間にコイル状の中バネを挿入して、傘を閉じた時にこの中バネを圧縮して力を蓄えている。そして、この中バネを圧縮した力を保持する為に、押しボタンの付いたハジキを軸柄の最下部に、軸柄の中に仕込んでいて、軸柄にその一部を固定している。この従来のハジキを下ハジキと呼称する。これに対して軸柄の上ロクロと下ハジキの間に配置する新たなハジキは、従来の傘には無いもので、本発明ではこれ中ハジキと命名する。中ハジキとしたのは、従来の傘に、全開状態を維持するハジキを上ハジキと呼称している例があるのでそれとは区別する為である。ハジキとはバネの力でスリットから爪部を突出させてロクロの移動を止めるものである。傘を閉じた時は、この下ハジキの爪部を下ロクロの穴に係合させて、下ロクロが上昇しないように仮に固定できるようになっている。 そして、押しボタンを押すと、中ロクロと下ロクロの間に設けられたコイル状の中バネを圧縮して蓄えた力により、下ロクロと共に中ロクロも上昇を開始する。 この時、本発明で考案した新たな中ハジキの爪部が軸柄のスリットから突出していれば、中ロクロはここで上昇を止められて傘は半開になり、更に中ハジキの爪部を軸柄の中に一旦押し込めば、両ロクロは上昇を再開し、軸柄の最上部に到達して傘は全開する。
【0008】
次に、第二の課題を実現する為に、本発明では、上記の新たに追加した中ハジキを、遠隔で操作する為に、軸柄の同軸上の外側あるいは内側に、軸柄に密接して上下にスライドするパイプ状の管を用いる手段を考案した。そして、この管を以下の記述では、主軸管である軸柄の内側に設けられるものを内管、外側に設けられるものを外管と呼称する。いずれも中ロクロと中バネと下ロクロの内側に配置されたことになる。軸柄に設けられたスリットは、ジャンプ傘においてはいずれも爪は下向きで、上昇する中ロクロや下ロクロを確実に停止させるために、下側は軸柄に直角の面を有して切り立っているが、逆にこの両ロクロなどが下降する時はそれらをスムーズに通過させる為に、突出する爪部は上方から下方に盛り上がる湾曲した曲線を有する構造となっている。従って、軸柄のスリットから突出している中ハジキの爪部の上側から下に、管状のものをスライドさせてその一端を中ハジキの爪部に当てると、中ハジキの爪部部は軸柄の内部に押し込められる。そして、本発明者は、中ハジキの爪部を出し入れするこの管状のものの一端は、中ハジキの固定方法に応じて、前記した外管に開けたスリットの一端でも良く、あるいは、軸柄自身に開けたスリットの一端でも良い事をも併せて見出した。
【0009】
主軸管である軸柄の外側に外菅を配置する場合は、中ハジキの上端は軸柄そのものに固定して、爪部は軸柄に開けたスリットから突出する。一方、軸柄の最下部近辺から中ハジキの位置までの軸柄を覆う外管の最上部には、やはり少なくとも中ハジキの爪部が突出する両端が閉じたスリットが開けられていて、中ハジキの突出部は軸柄と外管の両方のスリットから突出できる構造となっている。この場合、軸柄そのものは上下しないので、中ハジキも上下しない。外管を軸柄の最下部近くから指で下にスライドさせると、外管のスリットの一端が中ハジキの爪部に当たり、さらに中ハジキの爪部を軸柄の中に押し込める事が出来る。この逆に、外管を上にスライドさせると中ハジキは自身のバネの力で再び爪部を軸柄のスリットから突出させる。こうして外管により自在に傘を半開や全開を選択できるようになる。
【0010】
上記とは逆に、主軸管である軸柄の空洞の内部、軸柄と軸を同一にして、内管を配置する場合は、中ハジキは内管に開けられたスリット内に仕込み、その上端は軸柄ではなく内管の方に固定する。この内管は軸柄内部を貫通して設置されるので、中ハジキは内管と共に外見上も軸柄内部に仕込まれているという構造になり、第一の手段とは矛盾しない。こうして、中ハジキは外管と軸柄に設けられた二つのスリットから突出して中ロクロの上昇を止める。内管を軸柄の最下部近くから指で上にスライドさせると、軸柄の中ハジキの位置のスリットの一端が中ハジキの爪部に当たり、さらに中ハジキの爪部を内管の中へ、したがって軸柄そのものの内部に押し込める事が出来る。この逆に、内管を下にスライドさせると、中ハジキは自身のバネの力で再び軸柄のスリットから爪部を突出させる。こうして内管の上下のスライドにより自在に傘を開くときに半開や全開を選択できるようになる。
【0011】
この時、押しボタンと一体となった下ハジキも中ハジキと同様に内管の中に仕込んで、その一端を内管に固定させておけば、この押しボタンで下ハジキの爪部の押込みが出来るのみでなく、内管の上下操作も出来るようになる。その為には、軸柄の最下部には、下ハジキの爪部と押しボタンが顔を出し、押しボタンを上にスライドさせる時に、少なくともその障害とならないだけの長さを有したスリットを内パイプには開けておく。傘を閉じる時には、下ロクロが下ハジキを通り越して押しボタンに当たり、下ハジキと一体となっている内管をも最下部まで押し下げる。そして、下ハジキは下ロクロの穴に係合して傘は閉状態を維持する。一方、中ハジキの爪部は内管と軸柄の二つの対応したスリットから突出し、傘を半開状態で止める状態になっている。 傘がこの閉状態にある時に、押しボタンを真下に押せば、内管は動かないので、中ハジキの突出した爪部により傘は半開状態まで開いて止まる。次に、押しボタンを上にスライドさせれば、中ハジキの爪部は内パイプ内に押し込まれて、傘は全開状態になる。また、傘が閉状態にある時に、押しボタンを真下に押すと同時に上にスライドさせると、下ロクロが下ハジキを外れて上昇し、中ハジキの位置に到達する間に、中ハジキの爪部は、上にスライドされる内管により軸柄の内部に押し込まれるので、傘は一気に全開状態にすることも出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、片手でジャンプ傘を半開にして固定したり、半開状態から全開にしたり、或は従来通りいきなり全開にしたりすることが自在に出来るようになる。しかも、半開状態は、傘が開こうとする力を新たに追加した中ハジキがしっかりと受け止めているので、片手で傘を持っていてもとても安定している。こうして、例え、傘を持たないもう一方の片手に荷物を持っていても、風雨の強い時には傘を安定した半開状態に出来て安全である。また、人混みで傘を全開にして他人に迷惑を掛ける事も少なくなり、車の降車時のエチケットや安全が確保できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例1によるジャンプ傘の部分概念図
図2】本実施例1によるジャンプ傘の作動時の位置関係を示す説明図
図3】本実施例2によるジャンプ傘の部分概念図
図4】本実施例2によるジャンプ傘の作動時の位置関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ずは、本発明の第一の課題を実現する為の、本発明の全体から見れば基礎となる実施形態について、図1から外管8を除外した部分について説明する。図1はジャンプ傘全体から本発明に関係する部分のみを抽出しているものである。従来のジャンプ傘は、軸柄の最上部に上ロクロが固定され、その下側に中バネを挟んで中ロクロと下ロクロが一体となって前記軸柄を上下にスライドし、前記軸柄の最下部近辺には下ハジキと、該下ハジキの下側に取り付けられた押しボタンが備わっている。本発明では、前記軸柄の、前記上ロクロから前記下ハジキの間の位置に、爪部を下向きにして、故に、前記中ロクロと前記中バネと前記下ロクロの、前記軸柄に沿った下降の通過は常に可能とし、上昇の通過は止めることの出来る中ハジキを配置している。該中ハジキ自体の構造と固定方法は従来と同様である。
【0015】
図1に即して説明すると、先ず、従来のジャンプ傘と同様に、主軸管である軸柄1に沿って、中ロクロ4と、コイル状の中バネ5と、下ロクロ3がそれらの中心部に軸柄1を通して上下に移動し、軸柄1の最下部の握柄2に近い部分には下ハジキ9とそれと一体となった押しボタン10を配置し、軸柄1の前記した間の部分には中ハジキ11を配置する。従って、軸柄1には中ハジキ11の爪部が突出できるスリット13が開けられ、下ハジキ9と中ハジキ11は、その上端が軸柄1に固定されるか、軸柄1内部の後述する内パイプに固定されるかのいずれかである。このような本発明の基礎となる実施形態については、前者の固定方法を示す図1から、後述する外管8を除外した形で参照することが出来る。ジャンプ傘は勢いよく開くので、中ロクロ4は中ハジキ11の爪部に強く衝突して停止する。従って中ロクロ4の中ハジキ11の爪部と当たる部分は金属製の例えば鉄製の、ワッシャーとかパイプにする事が好ましい。
【0016】
次に、前述の第二の課題を実現するために、本発明の基礎となる実施形態に加えて、前記第二の手段によって発展させた第一の実施形態について図1図2を用いて説明する。上述の様に、本発明の基礎形態においては、下ハジキ9と中ハジキ11の固定先は特定していないが、この第一の実施形態においては下ハジキ9と中ハジキ11は、それらの上端を、主軸管である軸柄1の内部に、軸柄1自身に固定して取り付ると共に、軸柄1の外側に軸心を同一にした外管8を新たに配置することが特徴である。その外管8は、下側は下ハジキ9の位置から、上側は中ハジキ11の位置までを、軸柄1を自身の管内部に通し、自らは中ロクロ4とコイル状の中バネ5と下ロクロ3の内側の穴を通って、少なくとも中ハジキ11の爪部の長さに相当する距離以上を上下にスライド可能とする。また、外管8には、中ハジキ11の配置位置に、中ハジキ11の爪部が突出できる長さの両端を閉じたスリット12を開けてある。このスリット12は両端を閉じているので、外管8は正確には中ハジキ11の爪部の位置より、スリットを閉じる端の分だけわずかに上側まで伸びていることになる。
【0017】
中ハジキ11の爪部は先に説明したように、上側から下側に突出が増大する湾曲した形状になっている。従って外管8に開けたスリット12から中ハジキ11の爪部が突出している状態で、外管8を軸柄1に沿って下にスライドさせると、両端を閉じたスリット12の上端が中ハジキ11の爪部の上側に当たり、この爪部の湾曲の為に、爪部を軸柄1に押し込む力が発生する。爪部の湾曲とは軸柄1の内部から中ハジキ11がなだらかに盛り上がって突出する爪部の形状を指していて、爪部の湾曲の長さとは、軸柄1から顔を出した位置から、突出して盛り上がっていき、軸柄1と並行になる位置までを指す。爪部が極端に三角である場合は頂点までの長さになる。この位置まで爪部を外管8に開けたスリット12の上端がスライドすれば、爪部を軸柄1に充分に押し込むことのできる長さになる。本発明は、中ハジキ11の爪部の湾曲の特徴を利用して、この爪部への力の作用する向きを直角に変換することに成功し、現状のジャンプ傘の形状に大きな変更を加えることなく中ハジキ11の遠隔操作を可能とする事が出来た。また、傘の構造によっては不可欠ではないものの、外管8の最下部には、外管8がスライドする際に下ハジキ9が邪魔にならない程度にスリット14が開けてある。こうして、下ハジキ9の近辺で指を使って外管8を上下にスライドさせる事により、中ハジキ11の突出を遠隔操作が出来るようになり、片手で傘の半開状態を制御出来るようになる。
【0018】
更に、上述した第一の実施形態とは本質的作用は同じであるが、別構造の第二の実施形態を図3図4を用いて以下に説明する。こちらの考案は、従来のジャンプ傘の部品をそのまま使えて、製造も簡単であり、外観もシンプルで、しかも操作は押しボタン一つで操作出来るなどの特徴を持つものである。図1の外管8に変えて、主軸管である軸柄21の内部に、軸柄21と軸心を同一にした内管28を設けること、そして、中ハジキ11と下ハジキ9は軸柄21自身ではなく、軸柄21の内部に設けられた内管28の方に固定することが本発明の第一の実施形態とは大く異なる点である。先ず、主軸管である軸柄21には、中ハジキ31の位置に中ハジキ31の爪部が突出するだけの長さを有した両端の閉じたスリット32と、下ハジキ29の位置に下ハジキ29の爪部と押しボタン30の軸の長さを加えた長さに、更に少なくとも中ハジキ31の爪部の長さを加えた長さ以上のスリット34が開けられている。このことは、中ハジキ31の爪部を押し込めるには、その爪部の長さ以上の距離を内管28がスライドして、結果としてスリット34の上端が中ハジキ31の爪部を押し込めることを可能とする為である。
【0019】
内管28は、主軸管である前記軸柄21の内部に、下側は下ハジキ29の位置から、上側は中ハジキ31の位置まで配置される。そして内管28には、中ハジキの位置に中ハジキ31を、下ハジキの位置に下ハジキ29を配置すると共に、これらの両ハジキの上端を自らの内管28の内部に固定して取り付ける。中ハジキ31は爪部の軸柄21に対する直角な面を下側にするので、内管28の上側は中ハジキ31の上端までは配置されることになる。図3を一見すると、前記両ハジキと押しボタン30を取り付けた内パイプ28を軸柄21の内部に配置することは不可能に見える。しかし、実際の組立手順は、何も取り付けていない内パイプ28を組立前の軸柄21に挿入して、それぞれのスリット32と33、及び34と35の位置と向きを合致させた上で、これらのスリットに中ハジキ31と、下ハジキ29と押しボタン30を押し込んで固定する。この新しい方法は従来傘のハジキの固定方法の延長で本発明者が見出したものである。
【0020】
こうして、内管28は、中ハジキ31と、下ハジキ29と、下ハジキ29と、それと繋がった押しボタン30と一体となって、軸柄21の内部を上下にスライドする。このスライドする距離は、上述した第一の実施形態の外管の移動量と同じく、少なくとも中ハジキ31の爪部の湾曲の長さに相当する距離であり、中ハジキ31の爪部の出し入れに必要なものである。この様に組み立てられた、押しボタン30を真下に押せば下ハジキ29の爪部が軸柄21の内部に押し込まれ、下ロクロと中ロクロは上昇して停止ライン16で止まり傘は半開になる。そして、次に押しボタン30を上にスライドさせれば、今度は中ハジキ31の爪部が軸柄21のスリット33に当たり、この爪部は軸柄21の内部に押し込まれて傘は半開から全開になる。押しボタン30を先ずは真下に押した後に、直ちに上にスライドさせる動作を、前記両ロクロが移動する時間より素早く連続して行えば、傘は閉じた状態からいきなり全開にするという従来と同様の操作も自在に行えることが出来る。
【実施例1】
【0021】
本発明による第一の実施形態の実施例1を図1図2を用いて説明する。図1は部分概念図であり、図2は作動説明図である。図2の(A)は、傘が閉状態から脱して、前記両ロクロが上昇を開始した時の様子で、間もなく中ハジキ11による停止線で止まり半開状態となる様子を表している。図2の(B)は、外管8による中ハジキ11の遠隔操作で中ハジキ11の爪部が軸柄1の内部に押し込まれて、前記両ロクロが再び上昇を開始する様子を表している。この図2の(A)と(B)により前記作動の位置関係を明示しており、いずれも本発明に関わる部分のみを抽出したものである。従って、上ロクロ4にある受骨6を集めて固定する部分や下ロクロ3の支骨7を集めて固定する部分や親骨を集める傘の先端部分は図では捨象している。
【0022】
以下、構成の詳細を説明する。軸柄1は従来から使用される中が空洞の鉄製のパイプで外径は7.8mmである。この軸柄1の、握柄2に一番近い部分としての最下部には、従来と同じく押しボタン10が付いた下ハジキ9の上端を、軸柄1に開けた穴に入れて上下動が出来ないように固定している。後述する実施例2の場合であるが、図4の39にはこの固定方法の一例を示しているので参考に出来る。そして、軸柄1の最下部から約23cmの中間部位に新たに中ハジキ11を、下ハジキ9と同様に爪部を下向きに仕込み、その上端を軸柄1に固定している。傘に用いるハジキの爪部の形状は、ロクロを停止させる側は切り立っているものの、反対側は、ロクロを常に下降可能とするために、前述したようになだらかな湾曲になっていて、この湾曲部分の8mmを含めた爪部の長さは約10mmである。そして、この爪部の下側からハジキの上端までは約40mmある。このことを利用して中ハジキ11を遠隔で操作して、軸柄1の内部の空洞にその突出部分の出入りをさせる為に、外管8は、中ハジキ11の爪部の下側から少なくとも約40mm上側の位置から、軸柄1の最下部近くの下ハジキ9までの位置を軸柄1に密接して被せているものの、上下約10mmのスライドは可能となっている。そして、外管8には中ハジキ11の爪部が突出できるように中ハジキ11に対応して長さ約10mmの両端を閉じたスリット12を開けている。
【0023】
外管8には内径が8mm、外径が9mmで厚さ0.5mmの薄肉アルミパイプを用いた。そして、この外管8には、前記のスリット12の他に、自身を下側にスライドした折に、最下部が下ハジキ9に当たらないように最下部にはスリット14を開けている。図2の(B)で示すように、この状態で外管8を、移動を示す矢印17のように、具体的には約8mmm以上の距離を下にスライドさせるだけで中ハジキ11の突出部は軸柄1の空洞内に押し込まれ、傘は半開から全開状態に変える事が出来る。傘を開くときに、予め外管8を下に移動させておけば、傘は半開状態を素通りしていきなり全開にすることも出来る。この外管8は、握柄2の近くで片手で上下に動かすので、その最下部には指が滑らないように、ミニ取手20とか滑り止めラバー21などがついていることが好ましい。また、下ロクロ3の軸柄1を通す貫通穴は、従来は軸柄1が通過すれば良く、軸柄1の横触れを少なくするために軸柄1よりわずかに穴径が大きければ良かったが、本発明では外管8を通過させるために、穴径は9.5mmとした。
【0024】
また、上ロクロ4には軸柄1と外管8が通過する内側には、外径が10mmで内径が8.9mmの鉄製のパイプを配置した。こうすることで中ハジキ11との強い当たりによる損傷を避ける工夫をしている。なお、図2のaで示す下ロクロ3の下側と、上ロクロ4の下側は、外管8をスムーズに通過させるために入り口を丸めてく必要がある。また、外管8は薄肉で軽量であることが好ましいが、必ずしもアルミ製に拘らない。
【実施例2】
【0025】
本発明による実施例2を図3図4を用いて説明する。図3図2とは表示方向を変えた本実施例2の部分概念図であり、図4はその作動説明図である。図4の(B)は、傘が閉状態から脱して、中ハジキ31による停止線16で止まっている状態を示し、(A)はその時の軸柄21内部にあって外観では見えない内管28とそれに取り付けられた中ハジキ31と下ハジキ29とその固定ヵ所38、39を示している。(C)は(A)の側面図で、(D)は内パイプ28が上にスライドされて中ハジキ31の爪部が軸柄21の内部に押し込められる位置関係を表している。前記した実施例1では軸柄1の外側に外管が配置され、中ハジキと下ハジキはそれぞれ軸柄に固定され、前記両ハジキは軸柄のスリットから爪部を突出させていた。しかし、本実施例2では主軸管である軸柄21の内側に内管28が配置され、前記両ハジキは、前述した方法で内管28に固定するところが大きく異なる。先ず、本実施例が完成した様子を図3で説明する。軸柄21は鉄製の管で外径が10mm、内径が9mmで、上ロクロ24とバネ25と下ロクロ23の関係は従来のジャンプ傘と同じである。そして、軸柄21の中間部分に長さ12mmの両端が閉じられたスリット33が開けられていて、軸柄1の最下部には長さ約20mmの両端が閉じられたスリット35が開けられている。図4の(A)示す外径が8.8mmの鉄製の内管28には、、前記両ハジキの配置位置に相当する位置に、それぞれスリット32と34が約12mmの長さで開けられている。また、その少し上の両ハジキの固定ヵ所38,39には穴が開けられていて、この穴で両ハジキを固定している。
【0026】
こうして出来上がった実施例2を示すのが図3と、図4の(B)である。ジャンプ傘が閉じると、下ロクロ23は押しボタン30を押し下げて、下ハジキ29と下ロクロ23の係合穴20が係合して傘の閉状態は維持される。この時、親指を使って押しボタン30を軸柄21の内部に押せば、この係合が外れて下ロクロ23と共に上ロクロ24は上昇を開始して、図4の(B)の状態となり、停止線16で停止して傘は半開状態になる。そして、さらに押しボタン30を上に約10mm押し上げると、内管28は中ハジキ31と共に図4の(D)の位置まで上がる。この時に軸柄21は動かないので、上ハジキ31はスリット33の爪部の端に当たり湾曲部分を押されて、内管28の空洞内に押し込まれる。すると、上ロクロ24は下ハジキ29の爪部が当たらなくなり、軸柄21の先端まで上昇して傘は全開となる。こうして、ジャンプ傘は先ずは半開状態にして、次に全開状態にするという二段階操作が可能となる。
【0027】
一方、二段階操作を不要とする時は、押しボタン30を押し込みつつ同時に上にスライドさせる。こうすると、上下のロクロは上昇を開始するものの、停止線16に到達する前に中ハジキ31が軸柄21押し込まれるので、傘を通常の動作と同様にいきなり全開にする事も出来る。また、上ロクロ24には、軸柄21と内管28が通過する内側に、外径が10mmで内径が8.9mmの鉄製のパイプを配置した。こうすることで中ハジキ31との強い当たりによる損傷を避ける工夫をしている。また、下ハジキ29を内管28の中に配置することにより、下ハジキ29は軸柄21のスリット34を超える分突出部が突出する高さが減じられてしまう。そこで、下ハジキ29が確実に下ロクロ23の係合穴20に係合し損傷を避ける為にも、係合穴20の最下部は金属にして、軸柄21と出来るだけ密接する事が好ましい。なお、図2のaで示す下ロクロ23の下側と、上ロクロ24の下側は、内管28をスムーズに通過させるため、実施例1の場合と同様に入り口を丸めておく必要がある。また、内管28は薄肉で軽量であることが好ましいが、必ずしも材料には拘らなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によるジャンプ傘は、人々が強風下や人混みなどで使用する時に大きな便宜を提供するものである。
【符号の説明】
【0029】
1,21 軸柄
2 握柄
3,23 下ロクロ
4,24 中ロクロ
5,25 中バネ
6 受骨
7 支骨
8 外管
9 ,29 下ハジキ
10,30 押しボタン
11,31 中ハジキ
12,13,34,35 スリット
16 停止線
17 移動を示す矢印
18 ミニ取手
19 滑止めラバー
20 下ロクロの係合穴
28 内管
38 下ハジキの固定点
39 中ハジキの固定点
図1
図2
図3
図4