(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20220207BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20220207BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/54
(21)【出願番号】P 2017207886
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】大井手 竜二
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038044(WO,A1)
【文献】特開2015-222631(JP,A)
【文献】特開2014-017053(JP,A)
【文献】特開2013-196959(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038042(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/031442(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0141709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062792(US,A1)
【文献】特開2016-195015(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159099(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が積層構造をとる電極組立体と、前記電極組立体との間で授受する導電部材と、前記電極組立体と前記導電部材が収容されたケースと、を備えた蓄電装置であって、
前記電極組立体の端部から突出したタブ群を有し、
前記タブ群が、それぞれ、前記電極組立体の積層方向に二つに分かれた第1タブ群と第2タブ群を有し、
前記第1タブ群および前記第2タブ群は、それぞれ前記電極組立体における
前記積層方向の中央位置に集箔し、前記中央位置で湾曲もしくは屈曲した第1曲げ部及び第2曲げ部を有し、
前記第1曲げ部および前記第2曲げ部から前記タブ群が延出した第1延出部および第2延出部を有し、
前記第1延出部および前記第2延出部が、前記積層方向において前記電極組立体と向き合う前記ケースの内面に向って伸び
、かつ、前記積層方向において、同一方向に延出しており、
前記第1延出部および前記第2延出部で、前記導電部材と接合している接合部位を
有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記第1タブ群と前記第2タブ群が、前記電極組立体の前記タブ群が突出した前記端部に沿った方向において、前記端部から突出する位置が重なっていないことを特徴とする請求項1記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、原動機となる電動機への供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。この種の二次電池は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の二次電池150は、
図7に示すように、ケース151内に電極組立体152を収容するとともに、その電極組立体152に端子部材153を接続することによって構成されている。電極組立体152は、金属箔154aに負極活物質層154bが塗工された負極電極154と、金属箔155aに正極活物質層155bが塗工された正極電極155とを備えている。そして、電極組立体152は、負極電極154と正極電極155の間にセパレータ156を介在させて層状に形成されている。
【0003】
こうした特許文献1のような二次電池150を備えた蓄電装置では、例えば負極電極154の金属箔154aと正極電極155の金属箔155aとのそれぞれに、活物質が塗工されていない領域であるタブが形成されている。そして、このタブが複数集められたものがタブ群として端子部材153と接続されている。タブ群は、例えば複数のタブが集められた状態で、電極組立体152の積層方向における一方から他方に向けて湾曲もしくは屈曲されている。そして、タブ群では、湾曲もしくは屈曲された部分から電極組立体152の積層方向の他方に延出された延出部が、端子部材153と接触して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タブ群は端子部材153と溶接されることにより接続されている。溶接によってタブ群と端子部材153とが接合されると、その接合面積の大きさが端子部材153での集電効率に反映される。すなわち、接合面積が大きいほど電気抵抗値が低くなり、接合面積が小さくなるほど電気抵抗値が高くなる。また、接合面積を維持したまま、接合する電極の積層枚数を増やすと、接合に必要な熱量も積層枚数に応じて増加する。このため、同じ熱量で積層した電極を接合する場合、電極の積層枚数を増やすと接合面積は小さくなる。
【0006】
本発明の目的は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、接合面積をより大きくすることで、タブと端子間の集電効率の低下を防ぐことのできる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
【0008】
上記目的を達成する蓄電装置は、電極が積層構造をとる電極組立体と、電極組立体との間で授受する導電部材と、電極組立体と導電部材が収容されたケースと、を備えた蓄電装置である。本発明の蓄電装置には、電極組立体の端部から突出したタブ群があり、タブ群がそれぞれ電極積層方向に二つに分かれており、第1タブ群と第2タブ群と呼ぶ。電極積層方向から見て、第1タブ群及び第2タブ群は、それぞれ電極組立体の中央部位に集箔し、導電部材の中央部位で湾曲もしくは屈曲した第1曲げ部及び第2曲げ部と、第1曲げ部及び第2曲げ部からタブ群が延出した第1延出部および第2延出部を有している。第1延出部および第2延出部が、電極積層方向において電極組立体と向き合うケースの内面に向って伸びており、第1延出部及び第2延出部で、導電部材と接合している接合部位を持つことを特徴としている。
【0009】
かかる構成によれば、タブ群と導電部材を同一装置および同一熱量で接合させるとき、タブ群を第1タブ群と第2タブ群の2つに分けた場合のほうが、タブ群を分けない場合に比べて、接合面積を大きくすることができる。これによれば、タブ群の導電部材の接合面積を大きくすることで、接合部位の電気抵抗値を下げることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、タブと導電部材の接合面積をより大きく持つことのできる蓄電装置の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、蓄電装置を具体化した第1の実施形態を
図1~
図4に従って説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、蓄電装置としての二次電池10には、ケース21に電極組立体11が収容されている。ケース21は、四角箱状のケース本体22と、ケース本体22の開口部22aを閉塞する矩形平板状の蓋体23と、で構成されている。ケース本体22と蓋体23とは、いずれも金属製(例えば、ステンレス製やアルミニウム製)である。また、本実施形態の二次電池10は、リチウムイオン電池であり、外郭が角型である角型電池である。
【0014】
電極組立体11には、電極組立体11との間で電気を授受する電極端子としての正極端子26及び負極端子27が電気的に接続されている。これら正極端子26及び負極端子27は、蓋体23に所定の間隔をあけて並設された一対の孔23a,23bからケース21の外部に露出されている。そして、正極端子26及び負極端子27には、ケース21から絶縁するためのリング状の絶縁部材26a,27aがそれぞれ取り付けられている。また、図示は省略しているが、ケース21を構成するケース本体22の内面には、ケース本体22と、ケース本体22の内部に収容された電極組立体11とを絶縁するための絶縁シートが取着されている。
【0015】
図3に示すように、電極組立体11は、正極金属箔13(例えばアルミニウム箔)の両面に正極活物質が塗工された正極活物質層14を有する正極電極12と、負極金属箔17(例えば銅箔)の両面に負極活物質が塗工された負極活物質層18を有する負極電極16とを有している。そして、電極組立体11は、正極電極12と負極電極16との間に、これらを絶縁するセパレータ20を介在させて層状である積層構造とされている。電極組立体11は、複数の正極電極12と複数の負極電極16とを積層して構成される。すなわち、電極組立体11には、正極電極12と、負極電極16と、セパレータ20とからなる組が複数組、設けられている。
【0016】
正極電極12は、縁部12aから突出した形状の正極金属箔13からなる正極タブ15を有している。負極電極16は、縁部16aから突出した形状の負極金属箔17より構成される負極タブ19を有している。正極タブ15及び負極タブ19は、正極電極12及び負極電極16が積層された状態で、正極タブ15と負極タブ19とが重ならない位置にそれぞれ設けられている。本実施形態において、各正極タブ15は同じ大きさに形成されており、各負極タブ19は同じ大きさに形成されている。
電極組立体11を構成する各正極電極12は、それぞれの正極タブ15が列状に配置されるように積層される。同様に、電極組立体11を構成する各負極電極16は、それぞれの負極タブ19が列状に配置されるように積層される。そして、電極組立体11の上面11aには、
図1に示すように、各正極タブ15が、電極組立体11における積層方向の一方から他方までの範囲で集められて正極タブ群15aが設けられている。また、電極組立体11の上面11aには、各負極タブ19も同様に、電極組立体11における積層方向の一方から他方までの範囲で集められて負極タブ群19aが設けられている。
正極タブ群15aには、電極組立体11と正極端子26とを電気的に接続するための金属製(例えばアルミニウム製)の正極導電部材24が接合されている。また、負極タブ群19aには、電極組立体11と負極端子27とを電気的に接続するための金属製(例えば銅製)の負極導電部材25が接合されている。本実施形態の正極導電部材24及び負極導電部材25は、矩形平板状である。
【0017】
次に、正極タブ群15aと正極導電部材24、及び負極タブ群19aと負極導電部材25の接合構造について、
図4にしたがって詳しく説明する。なお、
図4には、負極タブ群19aと負極導電部材25との接合構造を図示しているが、この接合構造は正極タブ群15aと正極導電部材24との接合構造と同一構造である。このため、以下では負極タブ群19aと負極導電部材25との接合構造について説明する。以下の説明では、負極タブ19を正極タブ15、負極タブ群19aを正極タブ群15a、負極タブ19の先端部19bを正極タブ15の先端部15b、負極導電部材25を正極導電部材24と読みかえれば、正極タブ群15aと正極導電部材24の接合構造の説明となる。
【0018】
図4に示すように、本実施形態における負極タブ群19aは、第1タブ群31と第2タブ群32とで構成されている。第1タブ群31と第2タブ群32とは、電極組立体11の積層方向Lの一方から他方までの範囲内に位置する負極タブ19の全枚数のうち、均等の枚数ずつ2つに分割された複数の負極タブ19をそれぞれ有している。
【0019】
なお、電極組立体11における負極タブ19の全枚数が偶数であって、電極組立体11の積層方向Lにおける最外層にそれぞれ負極電極16が配置される場合では、多くの場合は電極組立体11における正極タブ15の全枚数が奇数となる。このため、複数の正極タブ15によって第1タブ群31と第2タブ群32とを形成する場合では、電極組立体11の積層方向Lの一方から他方までの範囲内に位置する正極タブ15の全枚数が均等に2つに分割されることにより、構成する正極タブ15に1枚の枚数差のある第1タブ群31と第2タブ群32とが形成されることとなる。
【0020】
本実施形態では、具体的には、第2タブ群32は、最も外側に配置される負極タブ19のうち一方の負極タブH1に、電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mにある負極電極16から延びている最も外側に配置される負極タブ19のうち他方の負極タブH2が接近するように集められることにより形成されている。第1タブ群31は、最も外側に配置される負極タブ19のうちの一方の負極タブH4に、電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mにある負極電極16から延びている最も外側に配置される負極タブ19のうちの他方の負極タブH3が接近するように集められることにより形成されている。
【0021】
第1タブ群31は、電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mから、積層方向Lの外側へ向けてそれぞれ湾曲された第1曲げ部33と、その第1曲げ部33から積層方向Lの外側へ向けて延出された第1延出部35とを備えている。第2タブ群32は、電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mから、積層方向Lの外側へ向けてそれぞれ湾曲された第2曲げ部34と、その第2曲げ部34から電極組立体11における積層方向Lの外側へ向けて延出された第2延出部36とを備えている。第1タブ群31及び第2タブ群32は、第1曲げ部33と第2曲げ部34が電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mに向かってそれぞれ集箔するように曲げられている。そして、第1延出部35の一部と負極導電部材25は電気的に接合されている。第2延出部36の一部も負極導電部材25と電気的に接合されている。負極導電部材25は、第1延出部35および第2延出部36とケース21の蓋体23との間に配置されている。
【0022】
本実施例では、抵抗溶接により第1延出部35および第2延出部36がそれぞれ負極導電部材25と接合されて、接合部位Wが形成されることにより、電気的に接続される。抵抗溶接は、接合対象(
図4ではタブ群31,32、負極導電部材25)を、一対の溶接用電極で挟み込んで溶接する方式である。
【0023】
以下、本実施形態の二次電池10の作用を説明する。
【0024】
本実施例のタブ群15a,19aは、電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mで集箔し、曲げ部33,34で曲げられ、導電部材24,25に沿って外側へ伸びる延出部35,36が形成されている。そして、延出部35,36の一部と導電部材25を直接溶接して接合部位Wを形成されている。タブ群15a,19aを、二つのタブ群31,32に分割することで、抵抗溶接するとき、一回の抵抗溶着のエネルギーを同一とした場合、タブ群15a,19aを分割しないときと比べて、接合部位Wを大きくすることが可能となる。
【0025】
また、第1タブ群31及び第2タブ群32は電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mに集箔され、曲げ部33,34を経て、中央位置Mからケース本体22の方へ導電部材24,25に沿って伸びるように延出部35,36が設けられている。こうしたタブ群15a,19aでは、第1タブ群31と第2タブ群32とで、電極組立体11の上面11aから接合部位Wまでのタブ15,19の距離の差が比較的小さい状態となる。したがって、第1タブ群31と第2タブ群32とのいずれにおいても、タブ15,19の先端部15b,19bをケース21のケース本体22の内面から離間した位置に位置させることができる。さらに、導電部材24,25と第1タブ群31及び第2タブ群32は抵抗溶接により直接溶接されているため、ケース本体22の内側とタブ15,19が電気的に接触しないように、ケース本体22の内側に絶縁部材などの介在物を設置しなくて良い。
【0026】
以上説明したように、本実施形態によれば以下に示す効果を得ることができる。
【0027】
(1)第1タブ群31と第2タブ群32は、第1延出部35及び第2延出部36が導電部材24,25と直に溶接された状態(接合部位W)で、電気的に導電部材24,25と接合されている。溶接は、一対の溶接用電極で挟む事のできる厚みをもつ接合対象しか対応できず、また、接合対象の厚みが厚くなるほど、接合部位Wの厚み方向は大きくなり、それに伴い接合面積は小さくなる。本実施例では、電極組立体11のタブ群を積層方向Lにおいて2つのタブ群31,32に分割しているため、タブ群を分割しない場合に比べて接合部位Wの面積を大きく取ることが可能となり、接合部位Wの電気抵抗を下げることができる。
【0028】
(2)タブ群15a,19aは、電極組立体11における積層方向Lの中央位置Mで集箔し、曲げ部33,34で曲げられ、導電部材24,25に沿って外側へ伸びる延出部35,36が形成されている。このため、タブ群15a,19aの電極組立体11の上面11aから接合部位Wまでのタブ15,19の距離の差が小さくなり、曲げ部33,34の曲げ方向において外周側に位置する延出部35,36の飛び出し量を抑えることができる。したがって、タブ15,19とケース21との短絡の発生を抑制することができる。
【0029】
(3)導電部材24,25とタブ群の溶接について、電極組立体11のタブ群を積層方向Lにおいて2つのタブ群31,32に分割しているため、タブ郡を分割しない場合に比べ、タブ群15a,19aと導電部材24,25との抵抗溶接時の位置ずれを抑制することができる。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
○
図5に示すように、第1タブ群31と第2タブ群が、縁部12a,16aに沿った方向において、縁部12a,16aから突出する位置が重なっていない。この実施形態の場合、第1タブ群31と第2タブ群は同一方向に延出部35,36を向いている。抵抗溶接をする際、同一面上で続けて溶接ができるため、溶接における工数を低減できる。
○
図6に示すように、第1タブ群31と第2タブ群が、縁部12a,16aに沿った方向において、縁部12a,16aから突出する位置が重なっていない。
図5の実施形態の場合、第1タブ群31と第2タブ群は同一方向に延出部35,36を向いている。
図6の実施形態の場合、第1タブ群31と第2タブ群は反対方向に延出部35,36を向いている。この実施形態の場合、抵抗溶接をする際、同一面上で続けて溶接ができるため、溶接における工数を低減できる。
○ 第1タブ群31が第2タブ群32よりもタブ15,19の枚数が多くなるように、複数のタブ15,19を分割させても良い。これは、例えば、複数のタブ15,19の全枚数が奇数であり、第1タブ群31と第2タブ群32とでタブ15,19の枚数を均等に分割させると、第1タブ群31の方が第2タブ群32よりもタブ15,19の枚数が1枚多くなるためである。また、複数のタブ15,19の全枚数が奇数か偶数かによらず、第1タブ群31の方が第2タブ群32よりもタブ15,19の枚数が多くなるようにタブ15,19を分割させても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 二次電池
11 電極組立体
12 正極電極
13 正極金属箔
14 正極活物質層
15 正極タブ
16 負極電極
17 負極金属箔
18 負極活物質層
19 負極タブ
20 セパレータ
21 ケース
22 ケース本体
23 蓋体
24 正極導電部材
25 負極導電部材
26 正極端子
27 負極端子
31 第1タブ群
32 第2タブ群
33 第1曲げ部
34 第2曲げ部
35 第1延出部
36 第2延出部
M 中央位置
L 電極組立体11の積層方向
W 接合部位