(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】カメラユニット内蔵歯科用インスツルメント及び該歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 1/08 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
A61C1/08 Z
(21)【出願番号】P 2017240257
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100069420
【氏名又は名称】奈良 武
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
(72)【発明者】
【氏名】熊地 智
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112377(JP,A)
【文献】特開2002-301016(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026263(WO,A1)
【文献】特開平11-008414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0040305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌・消毒対応型の歯科用インスツルメント本体のヘッド部の近傍に、撮像窓を有するカメラユニットを内蔵したカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントであって、
前記カメラユニットは、撮像窓を兼ねるレンズと、内蔵した保持基板により保持した撮像素子とを備えるとともに、前記撮像素子による撮像信号を耐熱性ケーブルを経て前記カメラユニットの外部に出力可能とし、
前記撮像窓を兼ねるレンズが硬化部材によって成形されるとともに、硬化部材により前記撮像窓を兼ねるレンズとカメラユニットとの隙間を気密に封止し、かつ、前記レンズと撮像素子とを一体化し、
前記耐熱性ケーブルの前記カメラユニットの筐体からの導出部における隙間部を前記硬化部材によって封止し、
前記硬化部材は、初期状態では流動体であって少なくとも熱、光、紫外線、化学反応、酸素のいずれかの変化を与えることによって硬化して固体化し、固体状態ではオートクレーブ滅菌温度で耐熱性を有し、かつ可視光を透過する部材であることを特徴とするカメラユニット内蔵歯科用インスツルメント。
【請求項2】
前記保持基板は、平板又はメッシュ状板により形成され、前記硬化部材の硬化時における空気抜き用の貫通穴又はメッシュ穴を備えることを特徴とする請求項1記載のカメラユニット内蔵歯科用インスツルメント。
【請求項3】
前記硬化部材は溶融ガラスであることを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載のカメラユニット内蔵歯科用インスツルメント。
【請求項4】
前記歯科用インスツルメントは、歯科用ハンドピースである請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラユニット内蔵歯科用インスツルメント。
【請求項5】
前記歯科用インスツルメントは、歯科用シリンジである請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラユニット内蔵歯科用インスツルメント。
【請求項6】
前記歯科用インスツルメントは、歯科用スケーラである請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラユニット内蔵歯科用インスツルメント。
【請求項7】
レンズ用の成型面を有する型に硬化前の硬化部材を入れる工程と、
前記型内の硬化前の硬化部材に、撮像素子を保持し、空気流通部を有するとともに撮像素子用の耐熱性ケーブルを接続配置した保持基板を内装したカメラユニットを構成する筐体の一端部を埋入し、前記筐体の一端部側に撮像窓を兼ねる硬化前のレンズを形成しこのレンズの外周部で前記筐体の一端部外周を覆う工程と、
前記筐体の一端部内側から撮像素子側に浸入する硬化前の硬化部材の一部により前記筐体内壁、保持基板の撮像素子側の一面、撮像素子により画される領域を充満させる工程と、
前記筐体の他端部側から前記空気流通部を経て前記硬化前の硬化部材に空気吸引力を作用して前記硬化部材を硬化させ、硬化時に発生する空気を前記空気流通部から逃がした後離型する工程と、
前記耐熱性ケーブルの前記カメラユニットの筐体の他端部からの導出部における隙間部に硬化前の硬化部材を付着させ硬化させて前記隙間部を硬化部材によって気密に封止する工程と、
を含み、
前記筐体の一端部の隙間部が封止され、かつ、この一端部に撮像窓を兼ねる硬化した硬化部材からなり前記撮像素子と一体化したレンズを備え、前記筐体の他端部の隙間部が封止されたカメラユニットを得ることを特徴とし、
前記硬化部材は、初期状態では流動体であって少なくとも熱、光、紫外線、化学反応、
酸素のいずれかの変化を与えることによって硬化して固体化し、固体状態ではオートクレーブ滅菌温度で耐熱性を有し、かつ可視光を透過する部材であることを特徴とする歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法。
【請求項8】
前記空気流通部は、前記保持基板に設けた貫通穴により、又は、前記保持基板であるメッシュ状板のメッシュ穴により形成されることを特徴とする請求項7に記載の歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法。
【請求項9】
前記硬化部材は、溶融ガラスであることを特徴とする請求項7又は8のいずれかに記載の歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラユニット内蔵歯科用インスツルメント及び該歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法に関し、詳しくは、滅菌・消毒対応型に構成された歯科用インスツルメントに内蔵されるカメラユニットをも滅菌・消毒対応型としたカメラユニット内蔵歯科用インスツルメント、及び、該歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの簡略な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科用ハンドピース、歯科用シリンジ等の歯科用インスツルメントにおいては、患者の口腔内の歯列等の患部の治療、処置等を行った後に、以後の再使用に備えて歯科用インスツルメント本体に対するオートクレーブ、ケミクレーブ等を実行することが清潔性、安全性の確保の観点から要請される。
【0003】
このため、歯科用インスツルメント本体については、滅菌・消毒対応(耐オートクレーブ性、耐ケミクレーブ性)型に構成することがほとんどである。
一方、近年においては、患部の治療、処置等を行う際に、当該患部やその周辺部位の画像を視覚による画像認識で確認するために、歯科用インスツルメント本体のヘッド部近傍に患部撮像用の小型のカメラを内蔵したカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントも提案され実用化されている。
【0004】
このようなカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントの場合、内蔵するカメラユニットに関しては滅菌・消毒対応型とするためには格別の配慮が必要となる。
【0005】
例えば、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)を行う場合、歯科用インスツルメント本体は摂氏135度というような高温雰囲気に晒されるだけでなく、歯科用インスツルメント本体内に配置したカメラユニットへの高温水蒸気の侵入が懸念される。
【0006】
特許文献1、
図10には、本発明に関連する技術として、対物レンズ群の最先端に配置され、内視鏡の先端面表面を構成するように配置される光学窓となる第1レンズと、被写体像を結像する対物レンズ群と、結像された被写体像を撮像するCCDと、このCCDに関わる電気信号を処理するコンデンサやIC等の電子部品を実装した基板と、前記対物レンズ群を保持する気密隔壁部材である金属製のレンズ枠と、前記レンズ枠の基端部に嵌合する前記CCDを保持する気密隔壁部材である金属製のCCD枠と、このCCD枠の基端に設けられたハーメチックコネクタと、前記レンズ枠と前記CCD枠とにまたがって嵌合配置される金属製の気密保持パイプと、前記ハーメチックコネクタに接続されるCCDケーブルとで主に構成した内視鏡用の撮像ユニットが開示されている。
【0007】
前記ハーメチックコネクタは、金属製のコネクタ本体に形成されている透孔に金属製の接点ピンを配置し、気密接合手段の1つである溶融ガラスからなる絶縁気密封止部剤を前記透孔に流し込み、接点ピンをコネクタ本体に対して絶縁して配設している。
【0008】
また、前記第1レンズは、レンズ枠に対して気密接合手段の1つである溶融ガラスによって接合されている。
しかし、この特許文献1の撮像ユニットの場合、前記CCD枠とコネクタ本体との間に生じる隙間はレーザ光照射により溶接して封止する構成であり、また、前記気密保持パイプとCCD枠との突き当て部、及び、前記気密保持パイプとレンズ枠との重ね合わせ部も各々レーザ光照射により溶接して封止する複雑な構成であり、溶融ガラスのみで撮像ユニットに生じる隙間部を封止するものではない。
【0009】
すなわち、滅菌・消毒対応型の歯科用インスツルメント本体に撮像手段であるカメラユニットを内蔵した構成で、かつ、内蔵したカメラユニットについても滅菌・消毒対応型に、すなわち、歯科用インスツルメント全体として滅菌・消毒対応型としたようなカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントは見当たらないのが現状である。
【0010】
特に高温蒸気滅菌を行う際に発生する高圧水蒸気のカメラユニット内への侵入を防御し得るようなカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントは存在しないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2000-107120号公報(
図10等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする問題点は、患部の治療等を行った後の滅菌、消毒後の歯科用インスツルメント本体全体としての清潔性、安全性を十分に確保することができるとともに、高温蒸気滅菌を行う際に発生する高圧水蒸気の侵入を簡略な構成の基に防御できるカメラユニットを備えたカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントが存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、滅菌・消毒対応型の歯科用インスツルメント本体のヘッド部の近傍に、撮像窓を有するカメラユニットを内蔵したカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントであって、前記カメラユニットは、撮像窓を兼ねるレンズと、内蔵した保持基板により保持した撮像素子とを備えるとともに、前記撮像素子による撮像信号を耐熱性ケーブルを経て前記カメラユニットの外部に出力可能とし、前記撮像窓を兼ねるレンズが硬化部材によって成形されるとともに、硬化部材により前記撮像窓を兼ねるレンズとカメラユニットとの隙間を気密に封止し、かつ、前記レンズと撮像素子とを一体化し、前記耐熱性ケーブルの前記カメラユニットの筐体からの導出部における隙間部を前記硬化部材によって封止し、前記硬化部材は、初期状態では流動体であって少なくとも熱、光、紫外線、化学反応、酸素のいずれかの変化を与えることによって硬化して固体化し、固体状態ではオートクレーブ滅菌温度で耐熱性を有し、かつ可視光を透過する部材であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、前記カメラユニットは、撮像窓を兼ねるレンズと、内蔵した保持基板により保持した撮像素子とを備えるとともに、前記撮像素子による撮像信号を耐熱性ケーブルを経て前記カメラユニットの外部に出力可能とし、前記撮像窓を兼ねるレンズが硬化部材によって成形されるとともに、硬化部材により前記撮像窓を兼ねるレンズとカメラユニットとの隙間を気密に封止し、かつ、前記レンズと撮像素子とを一体化し、前記耐熱性ケーブルの前記カメラユニットの筐体からの導出部における隙間部を前記硬化部材によって封止した構成とし、前記硬化部材としては、初期状態では流動体であって少なくとも熱、光、紫外線、化学反応、酸素のいずれかの変化を与えることによって硬化して固体化し、固体状態ではオートクレーブ滅菌温度で耐熱性を有し、かつ可視光を透過する部材を採用しているので、前記レンズと前記撮像素子とを一体化してカメラユニットの筐体に対して気密に封止することが可能であり、前記硬化部材によりレンズ機能と気密封止の双方の機能を兼ねさせることが可能であるカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントを提供することができる。
【0018】
また、請求項1記載の発明によれば、前記硬化部材の封止機能により、オートクレーブ等の高圧蒸気滅菌動作を実行することで生ずる高温水蒸気が、カメラユニットを構成する撮像素子に侵入することがなく、撮像素子等が劣化したりショートしたりする問題が生じない。
【0019】
さらに、カメラユニット内の光路中に接着剤を使用する必要がないので、高圧蒸気滅菌による伸縮の影響を受けにくく、気密封止性が維持される。
【0020】
また、前記硬化部材によって成形されるレンズは光透過性が高く、さらには前記硬化部材は流動性が良好なので隙間部の細部に至るまで充填し確実に気密封止することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、前記保持基板は、平板又はメッシュ状板により形成され、前記硬化部材硬化時における空気抜き用の貫通穴又はメッシュ穴を備える構成としているので、硬化部材硬化時に生ずる空気溜りを無くした高性能のレンズを備えるカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントを提供することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項1乃至2いずれかに記載の発明において前記硬化部材を溶融ガラスとしたことにより、前記溶融ガラスの優れた柔軟性、耐久性、耐熱性、熱硬化性からなる各特性を利用して請求項1乃至4記載のいずれかの効果を奏するカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントを提供することができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3記載のいずれかの効果を奏するカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントの他例であるカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースを提供することができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至3記載のいずれかの効果を奏するカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントの別例であるカメラユニット内蔵歯科用シリンジを提供することができる。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至3記載のいずれかの記載の効果を奏するカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントのさらに別例のカメラユニット内蔵歯科用スケーラを提供することができる。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、レンズ用の成型面を有する型に硬化前の硬化部材を入れる工程と、前記型内の硬化前の硬化部材に、撮像素子を保持し、空気流通部を有するとともに撮像素子用の耐熱性ケーブルを接続配置した保持基板を内装したカメラユニットを構成する筐体の一端部を埋入し、前記筐体の一端部側に撮像窓を兼ねる硬化前のレンズを形成しこのレンズの外周部で前記筐体の一端部外周を覆う工程と、前記筐体の一端部内側から撮像素子側に浸入する硬化前の硬化部材の一部により前記筐体内壁、保持基板の撮像素子側の一面、撮像素子により画される領域を充満させる工程と、前記筐体の他端部側から前記空気流通部を経て前記硬化前の硬化部材に空気吸引力を作用して前記硬化部材を硬化させ、硬化時に発生する空気を前記空気流通部から逃がした後離型する工程と、前記耐熱性ケーブルの前記カメラユニットの筐体の他端部からの導出部における隙間部に硬化前の硬化部材を付着させ硬化させて前記隙間部を硬化部材によって気密に封止する工程を含む一連の簡略な工程により、筐体の一端部を気密封止するとともに、この一端部に撮像窓を兼ねる硬化した硬化部材からなり前記撮像素子と一体化したレンズを備え、筐体の他端部の隙間部も気密封止した構成で、滅菌・消毒対応型のカメラユニットを得ることができる歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法を提供することができる。
【0027】
請求項8記載の発明によれば、前記空気流通部が、前記保持基板に設けた貫通穴により、又は、前記保持基板であるメッシュ状板のメッシュ穴により形成される構成として、硬化部材の硬化時に生じ易い空気溜りを無くしつつ請求項7記載の発明と同様な効果を奏する歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法を提供することができる。
【0028】
請求項9記載の発明によれば、請求項8又は9のいずれかに記載の発明において、前記硬化部材を溶融ガラスとしたことにより、前記溶融ガラスの優れた柔軟性、耐久性、耐熱性、熱硬化性及び高い光透過性からなる各特性を利用して請求項7又は8のいずれかの効果を奏するカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースの部分切欠正面図である。
【
図2】
図2は本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースにおいて歯科用ホース部側のカップリング部がグリップ部側のカップリング部に対して着脱可能であることを示す部分切欠概略説明図である。
【
図3】
図3は本実施例1に係るカメラユニット内蔵ハンドビースにおけるグリップ部側のカップリング部と歯科用ホース部側のカップリング部とを分離状態とした構造説明図である。
【
図4】
図4は本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースを構成するハンドピース本体の概略図である。
【
図5】
図5本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースを構成するハンドピース本体の後端側から見た側面図である。
【
図7】
図7は本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースを構成するハンドピース本体におけるヘッド部の拡大底面図である。
【
図9】
図9は本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースを構成するカメラユニット及びエアーガイドの拡大正面図である。
【
図10】
図10は本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースを構成するカメラユニット及びエアーガイドの拡大断面図である。
【
図11】
図11は本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピースを構成するカメラユニット及びエアーガイドの拡大端面図である。
【
図12】
図12は本実施例1に係るカメラユニットの概略斜視図である。
【
図13】
図13は本実施例1に係るカメラユニットの概略断面図である。
【
図14】
図14は本実施例1に係るカメラユニットにおける保持基板等の変形例の構造を示す概略部分断面図である。
【
図15】
図15は本実施例1に係るカメラユニットにおける変形例の保持基板等を筐体の他端側から見た形態を示す概略説明図である。
【
図16】
図16は本実施例1に係るカメラユニットにより撮像した患部の画像の画面表示例を示す図である。
【
図17】
図17本発明の実施例2に係るカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントの他例であるカメラユニット内蔵歯科用シリンジを示す概略正面図である。
【
図18】
図18は本発明の実施例3に係るカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントのさらに別の例であるカメラユニット内蔵歯科用スケーラを示す概略正面図である。
【
図19】
図19は本発明の実施例4に係る歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造工程を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、患部の治療等を行った後の滅菌、消毒後の歯科用インスツルメント本体全体としての清潔性、安全性を十分に確保することができるとともに、高温蒸気滅菌を行う際に発生する高圧水蒸気の侵入を簡略な構成の基に防御できるカメラユニットを備えたカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントを提供するという目的を、滅菌・消毒対応型の歯科用インスツルメント本体のヘッド部の近傍に、撮像窓を有するカメラユニットを内蔵したカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントであって、前記カメラユニットには、少なくともレンズと、前記カメラユニットの外部に撮像信号を出力可能とした撮像素子とを内蔵し、前記カメラユニットの内部を密封するために、このカメラユニットに生ずる隙間部である前記撮像窓の外周部とカメラユニットの筐体との間、及び、前記撮像素子に接続される耐熱性ケーブルにおける前記カメラユニットの筐体からの導出部に生ずる隙間を硬化部材である溶融ガラスによって封止した構成により実現した。
【0031】
以下に本発明の実施例に係るカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントについて図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0032】
本実施例1のカメラユニット内蔵歯科用インスツルメントは、歯科用インスツルメントの一種である例えばエアータービン駆動型の歯科用ハンドピースにカメラユニットを内蔵してカメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1としたものである。
【0033】
本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1及びその部分的な変形例について、
図1乃至
図16を参照して詳細に説明する。
【0034】
本実施例1のカメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1は、
図1乃至
図5に示すように、
図1に示す患部Pの治療用の切削工具4を着脱可能に装着するヘッド部3を先端側に備えるとともに、後端側の内部にカップリング部10aを備えるグリップ部6からなり、滅菌・消毒対応(耐オートクレーブ性、耐ケミクレーブ性)型に構成した歯科用インスツルメント本体としてのハンドピース本体2と、前記グリップ部6のカップリング部10aに着脱可能なカップリング部10bを備える歯科用ホース部11とを有している。
【0035】
前記ハンドピース本体2におけるグリップ部6には、前記ヘッド部3の近傍に、
図8に示すようにカメラ本体収容穴部5を設け、また、グリップ部6の外周部の一部、例えばグリップ部6の後端側の外周部に一定の容積の略直方体状の収容領域を有する収容突部7を一体に突設している。
【0036】
前記収容突部7は、
図5に示すように、グリップ部6の後方から見て右利き仕様の場合はグリップ部6の長さ方向に対して所定角度(例えば40~50度)左に傾けた配置としている。
【0037】
また、左利き仕様の場合には、図示しないが、グリップ部6の長さ方向に対して所定角度(例えば40~50度)右に傾けた配置とするものである。
【0038】
前記カップリング部10a(ハンドピース本体2側)と、前記カップリング部10b(歯科用ホース部11側)とにより、カップリング10を構成している。
【0039】
そして、前記カメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1において、前記カップリング部10a、10bは、
図2、
図3に示すように、軸受結合により同軸配置で回転可能に、かつ、着脱可能に結合されるように構成している。
【0040】
前記歯科用ホース部11は、図示しない歯科用治療ユニットに接続される接続ホース12を備えている。
【0041】
この接続ホース12内に、図示しない歯科用治療ユニットから供給される圧縮空気を導く空気流路系を構成する空気パイプ13、及び加圧水を導く水流路系を構成する水パイプ14、発光素子駆動用の電気ケーブル15を内装している。
【0042】
そして、歯科用ホース部11、カップリング部10a、ヘッド部3を含むグリップ部6内には、詳細構造は省略するが、前記歯科用ホース部11を経てハンドピース本体2のヘッド部3内に圧送されるエアータービン用の空気流、及び、ヘッド部3から切削工具4に向けて噴射する空気流用の圧縮空気を導く
図8に示す空気流路系21を設けている。
【0043】
また、前記歯科用ホース部11を経てハンドピース本体2のヘッド部3に圧送されヘッド部3から切削工具4に向けて噴射する水流用の加圧水を導く
図8に示す水流路系22を設けている。
【0044】
尚、前記ヘッド部3に装着する切削工具4を回転させる前記エアータービン8への空気流路及びヘッド部3内の水流路については詳細説明を省略する。
【0045】
前記グリップ部6内には、照明用の例えばLED(Light Emitting Diode)素子(例えば駆動電圧DC3.3Vのもの)等からなる光源部16を配置するとともに、前記グリップ部6における前記ヘッド部3の近傍位置に一端が露出し、他端を前記光源部16の近傍に臨ませる配置でロッドファイバ17を配置し、前記光源部16が発光する光を前記ロッドファイバ17を経て導光し、前記一端から前記切削工具4による対象部位(患部P)の領域に照明光として射出するように構成している。
【0046】
前記ハンドピース本体2における前記カメラ本体収容穴部5からグリップ6内を経て収容突部7にわたって以下に詳述するカメラ本体32、及び、このカメラ本体32を構成するスリーブ(筐体)35の外周に装着されるとともに前記空気流路系21に連通させた
図9、
図10に示すエアーガイド51、耐熱性ケーブル33、防水コネクタ(メス)34を配置している。
【0047】
ここで、前記カメラユニット31について、
図4乃至
図13を参照して詳述する。
【0048】
前記カメラユニット31は、各部品が耐熱性素材仕様であり、カメラ本体32と、耐熱性ケーブル33と、前記収容突部7内に配置した防水仕様構造の防水コネクタ(メス)34とを具備している。
【0049】
前記カメラ本体32は、円筒状で、ステンレス又は耐熱性樹脂(摂氏135度以上)等からなるスリーブ35と、円板状で、透明な多成分ガラス、石英ガラス等からなり、前記スリーブの一端側に配置されるとともに、ヘッド部の端面近傍に患部、その周辺領域等を撮影した光が入射する撮像窓を構成する撮像用透明体36と、前記スリーブ35内で前記撮像用透明体36の隣りに配置した金属、ステンレス又はアルミニューム等からなる円板状で、絞り機能を備えた絞り体37と、前記スリーブ35内で前記絞り体37の隣りに配置したガラス非球面レンズ等からなるレンズ38と、前記スリーブ35内で、前記レンズ38の隣りに配置した撮像素子支持体である空気抜き用の貫通穴39bを設けた保持基板39により撮像面を前記撮像用透明体36側に向けて支持されたCMOS(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等から構成した撮像素子(カラーイメージセンサ)40と、金属、ステンレス又はアルミニューム等からなる円板状で、前記スリーブ35の他端側に配置した端部板41と、前記端部板41、保持基板39を貫いて一端側を前記撮像素子40に接続した耐熱性ケーブル33と、を有している。
【0050】
前記耐熱性ケーブル33は、テフロン(登録商標)被覆電線等からなり、その他端側は、前記収容突部7内に配置した防水コネクタ(メス)34に接続している。 前記防水コネクタ(メス)34に対しては、
図1に示すように、撮像信号出力ケーブル44を備えたコネクタ(オス)43が着脱自在に装着されるようになっている。
【0051】
前記耐熱性樹脂としては、PTFE(4フッ化エチレン)、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルケトン:スーパーエンジニアリングプラスチック)、PEI(ポリエーテルイミド)等の例を挙げることができる。
【0052】
前記カメラユニット31のカメラ本体32は、さらに、その内部を密封するために、
図13に示すように、前記スリーブ35と撮像窓を構成する撮像用透明体36との間の隙間部、及び、前記撮像素子40に接続される耐熱性ケーブル33における前記スリーブ35からの導出部に生ずる隙間部を硬化させた硬化部材である溶融ガラス42a、42bによって封止した構成としている。
【0053】
ここで、前記溶融ガラス42a、42bを構成する硬化部材について詳述する。
【0054】
前記溶融ガラス42a、42bを構成する硬化部材としては、有機材料の柔軟性、無機材料の耐久性を併せ持つ熱硬化型の有機無機ハイブリッドガラスからなる溶融ガラスを主として使用する。
【0055】
すなわち、一般にプラスチックに代表される有機材料は、軽くて加工性に優れ、柔軟性があるが耐熱性は無機材料に劣る。一方、シリカやガラスの等の無機材料は耐久性や耐熱性に優れる反面、重くて衝撃に弱く、製造コストも高くなる。
【0056】
本実施例1においては、前記硬化部材として有機無機ハイブリッドガラスからなる溶融ガラスを採用するものである。
【0057】
有機無機ハイブリッドガラスは、上述した有機材料、無機材料両者の長所を取り込んだ材料で、有機成分と無機成分を分子レベル?ナノレベルで組み合わせて得られる材料から構成される。
【0058】
尚、有機無機ハイブリッドガラスは高い光透過率を有することから、後述する実施例4で述べるようにレンズを溶融ガラスによって成型できるという利点も有する。
【0059】
また、有機無機ハイブリッドガラスは、オートクレーブ滅菌温度(120度から135度)でも耐熱性を有するものである。
【0060】
さらに、有機無機ハイブリッドガラスは、硬化前の流動体である有機無機ハイブリッドガラスを常温状態で所定の箇所に塗布あるいは盛って加熱することで硬化させることができる。
【0061】
他の溶融ガラスの例としては、熱可塑性ガラスを使用することができる。600度位で加熱した熱可塑性ガラスを軟化流動させた状態で塗布或いは盛って封止し、常温で硬化させてもよい。この場合、前記溶融ガラスはオートクレーブ滅菌温度(120度から135度)でも固化した状態で耐熱性を有することができる。
【0062】
これら溶融ガラスは、カメラユニット31のカメラ本体32を構成するステンレスまたは耐熱性樹脂からなるスリーブ35と熱膨張係数が近似するので、固化した状態でもオートクレーブ等による加熱の繰り返しによってスリーブ35と溶融ガラスの間に隙間が生じることはなく完全に封止しカメラユニット31の内部への水蒸気の侵入を防ぐことができる。
【0063】
さらに上述した溶融ガラスの他に考えられる材料としては、熱硬化性の全フッ素化樹脂、液状熱硬化型のエポキシ樹脂や、熱硬化性シリコン樹脂が考えられる。また、これらは透明素材を使用することで透明封止材として高い光透過率を有することができるし、オートクレーブ滅菌温度(120度から135度)耐熱可能である。
【0064】
また、その他に採用可能な材料としては、熱(温度)により溶媒を気化して硬化させる溶液系樹脂、酸素(空気)の遮断によって硬化させる嫌気性樹脂、重合や硬化剤などの化学反応により硬化させるたり、2液混合により化学変化を起こして硬化させるエポキシ樹脂、透明エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、光または紫外線の変化によって硬化させる光硬化樹脂や紫外線硬化樹等の例を挙げることができる。さらには、カメラユニット31のカメラ本体32を構成するスリーブ35の材料と、熱膨張係数が近似する材料であることが望ましい。
【0065】
本実施例1においては、前記スリーブ35と前記撮像用透明体36の外周部に生じる隙間を硬化させた溶融ガラス42aにより封止し、また、前記スリーブ35と端部板41との外周部との間の隙間、及び、前記耐熱性ケーブル33における端部板41の貫通部に生じる隙間を硬化させた略円錐形状を呈する溶融ガラス42bにより封止する構成としている。
【0066】
さらに、前記絞り体37の外周部と前記スリーブ35の内壁との間、及び、前記レンズ38の外周部と前記スリーブ35の内壁との間、前記保持基板39の外周部と前記スリーブ35の内壁との間も、上述した場合と同様に溶融ガラスにより密着結合する構成としてもよい。
【0067】
前記スリーブ35の一端側の外周には略円筒状のエアーガイド51を装着している。
【0068】
前記エアーガイド51は、
図9乃至
図11に示すように、ステンレス又は耐熱性樹脂(摂氏135度以上)からなり、略二重円筒状に形成したガイド筒52を具備している。
【0069】
すなわち、前記エアーガイド51を構成するガイド筒52は、前記スリーブ35が嵌装される内孔53aを中央部に有する内側筒部53と、内側筒部53の外側で、かつ、内側筒部53の外周との間に一定の隙間を有するように同心配置に形成した外側筒部54と、を有し、前記内側筒部53、外側筒部54の
図10における上端部間を端板部52aにより閉塞し、
図10における下端部間は開口して、前記内側筒部53、外側筒部54間に下端側のみ開口した空気流通穴部55を設けた構成としている。
【0070】
また、空気流通穴部55は、
図11に示すように、前記内側筒部53の外壁と、外側筒部54の内壁とにわたって分離配置に形成した4つの仕切り片56により例えば4つに仕切られている。
【0071】
さらに、端板部52aを貫通するように前記空気流路系21から分岐した一本の空気分岐管路57が配置され、前記空気流路系21、空気分岐管路57、空気流通穴部55を経て、前記エアーガイド51の下方へエアーを吹き出すように構成し、これにより、エアーカーテン効果で、撮像用透明体36の撮像面の曇りを防止し得るように構成している。
【0072】
前記仕切り片56は、空気流通穴部55の開口端から前記端板部52aの空気流通穴部55に臨む下面より例えば5乃至10mm下側の位置までとされており、これにより、一本の空気分岐管路57から空気流通穴部55内にエアーを供給するだけで、4つに仕切られた空気流通穴部55の各穴からエアーを吹き出すことが可能となっている。
【0073】
図16は、本実施例1に係るカメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1により撮像した患部Pの画像を詳細は省略するが表示手段60の画面に表示した例を示すものである。
【0074】
本実施例1のカメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1によれば、滅菌・消毒対応型のハンドピース本体2に加えて内蔵したカメラユニット31をも前記溶融ガラス42a、42bにより滅菌・消毒対応型としてこれら両者を一体化でき、患部Pの治療を行った後の滅菌、消毒後の前記ハンドピース本体2全体の清潔性、安全性を確保することができ、さらには、全体構成の簡略化、取扱い容易化を実現でき、加えて、カメラユニット31による患部Pの撮像によって、患部Pの画像を視覚により確認することもでき、施術者側における治療操作性の向上、患者側の治療、処置等の内容への理解促進を図ることも可能なカメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1を提供することができる。
【0075】
特に、前記ハンドピース本体2に内蔵したカメラユニット31内に、オートクレーブ等の高圧蒸気滅菌動作を実行することで生ずる高温水蒸気がカメラユニット31内に侵入することがないので、カメラユニット31を構成する撮像素子40等の電子部品が水蒸気に晒されて、劣化したりショートしたりする問題がなく、光路中に設けられている接着剤が変質して視野が妨げられることがなくなる。
【0076】
尚、前記溶融ガラス42a、42bの特徴として、金属と近い線膨張係数に設定できることから、繰り返し高圧蒸気滅菌による伸縮の影響を受けにくく、これによりカメラユニット31の封止性が維持される。
【0077】
さらに、本実施例1によれば、前記エアーガイド51から撮像用透明体36の下方へ、すなわち、前記切削工具4側へエアーを吹き出すように構成しているので、これにより、カメラユニット31による患部Pの撮像に際してエアーカーテン効果により撮像用透明体36の撮像面の曇りを防止し、患部Pの高品質の画像を得ることもできるカメラユニット内蔵歯科用ハンドピース1を提供することができる。
【0078】
図14は、本実施例1に係るカメラユニット31における保持基板39の変形例であるメッシュ穴39cを備えるメッシュ状板39A(
図15においてクロス斜線を付して示す)の構造を示し、また、
図15は、変形例のメッシュ状板39A等をスリーブ35の他端側から見た形態を示すものである。
【0079】
このようなメッシュ穴39cを備えるメッシュ状板39Aを採用した場合でも、前記保持基板39の場合と同様な機能を発揮させることができる。
【実施例2】
【0080】
本発明の実施例2について
図17を参照して説明する。
【0081】
本実施例2は、滅菌・消毒対応型の歯科用インスツルメントの他例である例えば歯科用シリンジ(マルチウェイシリンジ)71に上述した場合と同様な構成の基にカメラユニット31を内蔵して
図17に概略的に示すカメラユニット内蔵歯科用シリンジ71としたものである。
尚、
図17に示すカメラユニット内蔵歯科用シリンジ71において、実施例1の場合と同一の要素には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0082】
本実施例2において、前記カメラユニット内蔵歯科用シリンジ71を構成する滅菌・消毒対応型のシリンジ本体72は、公知のように加圧された流体(水又は薬液)の管路と、圧縮空気の管路と、それらの管路を夫々制御する制御弁とを備えており、歯科処置に応じて複数種の歯科用作用流体を噴射ノズル73から患部Pに選択的に噴射し、患部Pを処置する構成とするとともにカメラユニット31により患部Pやその周辺領域の画像を撮像可能に構成している。
【0083】
また、シリンジ本体72の外周の一部に、実施例1の場合と同様な収容突部74を一体に設け、前記シリンジ本体72における噴射ノズル73の取り付け部の近傍位置に、実施例1の場合と同様な構成の基にカメラユニット31のカメラ本体32を、前記収容突部74に防水コネクタ(メス)34を各々配置し、さらにシリンジ本体72内にカメラユニット31のカメラ本体32と防水コネクタ34とを接続する耐熱性ケーブル33を配置している。
【0084】
本実施例2のカメラユニット内蔵歯科用シリンジ71におけるカメラ本体32とシリンジ本体72との固定連結部、収容突部74と防水コネクタ34との固定連結部のシール構造は各々実施例1の場合と同様である。
【0085】
本実施例2のカメラユニット内蔵歯科用シリンジ71は、さらに図示していないが、実施例1の場合と同様な接続コネクタ(オス)43、撮像信号出力ケーブル44を備えている。
【0086】
本実施例2によれば、シリンジ本体72に加えて前記カメラユニット31をも滅菌・消毒対応(耐オートクレーブ性、耐ケミクレーブ性)型としてこれら両者を一体化でき、本実施例2のカメラユニット内蔵歯科用シリンジ71を使用して患部Pの治療を行った後の滅菌、消毒後の前記シリンジ本体72の清潔性、安全性を確保することができ、さらには、全体構成の簡略化、取扱い容易化を実現できるカメラユニット内蔵歯科用シリンジ71を提供することができる。
【0087】
また、前記カメラユニット内蔵歯科用シリンジ71により患部Pの処置を実行する際に、カメラユニット31により患部Pの撮像を行うことによって、実施例1の場合と同様、
図16に示すような患部Pの画像を視覚により確認することもでき、これにより、施術者側における処置操作性を高めつつ口腔内の各部、例えば根管口、髄角、髄床底、窩洞陰影部等の視認による死角領域の低減、さらには、患者側の処置内容への理解促進を図ることも可能なカメラユニット内蔵歯科用シリンジ71を提供することができる。
【実施例3】
【0088】
本発明の実施例3について
図18を参照して説明する。
【0089】
本実施例3は、滅菌・消毒対応型の歯科用インスツルメントの他例である例えば歯科用スケーラに上述した場合と同様な構成の基にカメラユニット31を内蔵して
図18に概略的に示すカメラユニット内蔵歯科用スケーラ81としたものである。
【0090】
尚、
図18に示すカメラユニット内蔵歯科用スケーラ81において、実施例1の場合と同一のヨウ素には同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0091】
前記カメラユニット内蔵歯科用スケーラ81は、例えば、詳細説明は省略するが、超音波振動源(圧電素子)と振動伝達部材(ホーン)とが一体形成された超音波振動子を滅菌・消毒対応型のスケーラ本体82に配置し、患部Pに有効に作用する歯科用チップ83をスケーラ本体82の先端に配置して、超音波振動により歯科用チップ83を駆動して、口腔内の歯面,歯間、歯肉縁下のスケーリング(歯石取り)等を行うとともに、カメラユニット31により患部Pやその周辺領域の画像を撮像可能に構成している。
【0092】
また、スケーラ本体82の外周の一部に、実施例1の場合と同様な収容突部84を一体に設け、前記スケーラ本体82における歯科用チップ83の取り付け部の近傍位置に、実施例1の場合と同様な構成の基にカメラユニット31のカメラ本体32を、前記収容突部84に防水コネクタ(メス)34を各々配置し、さらにスケーラ本体82内にカメラユニット31のカメラ本体32と防水コネクタ34とを接続する耐熱性ケーブル33を配置している。
【0093】
本実施例3のカメラユニット内蔵歯科用スケーラ81におけるカメラ本体32とスケーラ本体82との固定連結部、収容突部84と防水コネクタ34との固定連結部のシール構造は各々実施例1の場合と同様である。
【0094】
本実施例3のカメラユニット内蔵歯科用スケーラ81は、さらに図示していないが、実施例1の場合と同様な接続コネクタ(オス)43、撮像信号出力ケーブル44を備えている。
【0095】
本実施例3によれば、スケーラ本体82に加えて前記カメラユニット31をも滅菌・消毒対応(耐オートクレーブ性、耐ケミクレーブ性)型としてこれら両者を一体化でき、本実施例3のカメラユニット内蔵歯科用スケーラ81を使用して患部Pの治療を行った後の滅菌、消毒後の前記スケーラ本体82の清潔性、安全性を確保することができ、さらには、全体構成の簡略化、取扱い容易化を実現できるカメラユニット内蔵歯科用スケーラ81を提供することができる。
【0096】
また、前記カメラユニット内蔵歯科用スケーラ81により患部Pの処置を実行する際に、カメラユニット31により患部Pの撮像を行うことによって、実施例2の場合と同様、
図14に示すような患部Pの画像を視覚により確認することもでき、これにより、施術者側における処置操作性を高めつつ口腔内の各部、例えば根管口、髄角、髄床底、窩洞陰影部等の視認による死角領域の低減、さらには、患者側の処置内容への理解促進を図ることも可能なカメラユニット内蔵歯科用スケーラ81を提供することができる。
【実施例4】
【0097】
次に、本発明の実施例4に係る歯科用インスツルメントに内蔵するカメラユニットの製造方法について、
図19、
図20を参照して説明する。
【0098】
本実施例4に係るカメラユニットの製造方法は、実施例1のカメラユニット31に近似した構成からなるカメラユニット31Aを製造するものであり、以下に一連の工程について詳述する。
【0099】
尚、本実施例4において実施例1の要素と同一の要素については同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0100】
本実施例4に係るカメラユニット31Aの製造方法は、
図19(a)、(b)に示すように、レンズ用の成型面92を有する型91内に実施例1で述べたような特性を有する硬化部材である硬化前の溶融ガラス93aを入れ、次いで前記型91内の硬化前の溶融ガラス93aに、撮像素子40を保持し、空気流通用の貫通穴39bを有するとともに撮像素子40用の耐熱性ケーブル33を接続配置した保持基板39を内装したスリーブ35の一端部を埋入する。
【0101】
これにより、前記スリーブ35の一端部側に撮像窓を兼ねる硬化前のレンズ94aを形成しこのレンズ94aの外周部分でスリーブ35の一端部外周を覆うとともに、前記スリーブ35の一端部内側から撮像素子40側に浸入する硬化前の溶融ガラス93aの一部により前記スリーブ35内壁、保持基板39の撮像素子40側の一面、撮像素子40により画される領域を充満させる。
【0102】
次に、
図19(c)、(d)に示すように、図示しない空気吸引手段を使用し、前記スリーブ35の他端部側から前記貫通穴39bを経て前記硬化前の溶融ガラス93aに空気吸引力を作用して硬化時に発生する空気を前記貫通穴39bを経て外部に逃がしつつ前記溶融ガラス93aを硬化させ硬化した溶融ガラス93とした後、前記型91から離型する。また、前記空気吸引手段は硬化前の硬化部材の粘性率が小さい場合は、前記スリーブ35の一端部を埋入する時の埋入力のみを作用して硬化時に発生する空気を前記貫通穴39bを経て外部に逃がしつつ前記溶融ガラス93aを硬化させてもよい。
【0103】
次に、
図19(e)に示すように、端部板41を前記スリーブ35の他端部側に取り付けるとともに、前記スリーブ35と端部板41の外周部との間の隙間、及び、前記耐熱性ケーブル33における前記端部板41の貫通部に生じる隙間に、実施例1で述べたような特性を有する硬化部材である硬化前の溶融ガラスを略円錐形状を呈するように付着させ硬化させて溶融ガラス95として前記各隙間を封止する。
【0104】
これにより、
図20に示すように、前記スリーブ35の一端部の隙間が封止され、かつ、この一端部に撮像窓を兼ねる硬化した溶融ガラス93からなり前記撮像素子40と一体化したレンズ94を備え、さらに、前記スリーブ35の他端部の隙間も封止された
図20に示すカメラユニット31Aを得ることができる。
【0105】
図20に示すカメラユニット31Aによれば、前記レンズ94が溶融ガラス93によって成形され、前記レンズ94と前記撮像素子40とを一体化して前記スリーブ35に対して気密に封止することが可能なので、前記溶融ガラス93によりレンズ機能と気密封止の双方の機能を兼ねさせることが可能である。
【0106】
また、前記カメラユニット31Aによれば、オートクレーブ等の高圧蒸気滅菌動作を実行することで生ずる高温水蒸気が、カメラユニット31Aを構成する撮像素子40に侵入することがなく、撮像素子40等が劣化したりショートしたりする問題が生じない。
【0107】
さらに、前記カメラユニット31A内の光路中に接着剤を使用する必要がないので、高圧蒸気滅菌による伸縮の影響を受けにくく、気密封止性が維持されることは実施例1の場合と同様である。
【0108】
尚、本実施例4において、前記保持基板39の替りに前記メッシュ状板39Aを用いたスリーブ35を採用する場合においても上述した場合と同様な機能を発揮することができるカメラユニット31Aとすることができる。
【0109】
以上説明した本実施例4によれば、実施例1記載のカメラユニット31と同様な効果を奏するカメラユニット31Aを提供できる。
【0110】
また、上述した一連の簡略な工程により、溶融ガラスの硬化時に生じ易い空気溜りを無くした高性能のレンズ94を備え、歯科用ハンドピース、歯科用シリンジ、歯科用スケーラ等に対して内蔵可能な滅菌・消毒対応型のカメラユニット31Aを簡略、安価に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、各々カメラユニットを内蔵する構成とするエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、レーザーハンドピース、各種シリンジ又は各種スケーラ等のような種々の歯科用インスツルメントに対して広範に適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 カメラユニット内蔵歯科用ハンドピース
2 ハンドピース本体
3 ヘッド部
4 切削工具
5 カメラ本体収容穴部
6 グリップ部
7 収容突部
8 エアータービン
10 カップリング
10a カップリング部
10b カップリング部
11 歯科用ホース部
12 接続ホース
13 空気パイプ
14 水パイプ
15 電気ケーブル
16 光源部
17 ロッドファイバ
21 空気流路系
22 水流路系
31 カメラユニット
31A カメラユニット
32 カメラ本体
33 耐熱性ケーブル
34 防水コネクタ(メス)
35 スリーブ(筐体)
36 撮像用透明体
37 絞り体
38 レンズ
39 保持基板
39A メッシュ状板
39b 貫通穴
39c メッシュ穴
40 撮像素子
41 端部板
42a 溶融ガラス
42b 溶融ガラス
43 コネクタ(オス)
44 撮像信号出力ケーブル
51 エアーガイド
52 ガイド筒
52a 端板部
53 内側筒部
53a 内孔
54 外側筒部
55 空気流通穴部
56 仕切り片
57 空気分岐管路
60 表示手段
71 カメラユニット内蔵歯科用シリンジ
72 シリンジ本体
73 噴射ノズル
74 収容突部
81 カメラユニット内蔵歯科用スケーラ
82 スケーラ本体
83 歯科用チップ
84 収容突部
91 型
92 成型面
93 硬化した溶融ガラス
93a 硬化前の溶融ガラス
94 レンズ
94a 硬化前のレンズ
95 硬化した溶融ガラス
P 患部