(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】獣類捕獲装置
(51)【国際特許分類】
A01M 23/08 20060101AFI20220207BHJP
A01M 23/18 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A01M23/08
A01M23/18
(21)【出願番号】P 2019224929
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591023594
【氏名又は名称】和歌山県
(74)【代理人】
【識別番号】100130199
【氏名又は名称】松永 充弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 光由
(72)【発明者】
【氏名】法眼 利幸
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-274919(JP,A)
【文献】登録実用新案第3024327(JP,U)
【文献】特開2013-110967(JP,A)
【文献】特開2012-110294(JP,A)
【文献】登録実用新案第3156178(JP,U)
【文献】登録実用新案第3180097(JP,U)
【文献】登録実用新案第3224335(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/08
A01M 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生獣類を収容する収容空間を構成する収容部と、
前記収容部の外部から内部へ野生獣類を誘導するとともに、前記収容空間の内部から外部への野生獣類の退出を制限する誘導部と、
を備え、
前記誘導部において、前記収容部の外部から内部へ向かう方向を進入方向として、
前記誘導部は、
野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類によって押し上げられることにより、野生獣類の通過を許容する状態に弾性変形可能である通過部と、
前記進入方向の基端側における高さが、前記進入方向の先端側における高さよりも高くなるように配置されているとともに、野生獣類を前記通過部に誘導する上方規制部と、
前記通過部の上方であって、かつ、前記上方規制部に対して前記進入方向の先端側に、野生獣類が前記上方規制部に乗り上げることを制限する先端側規制部と、
を有する、
獣類捕獲装置。
【請求項2】
前記通過部は、
野生獣類に押し上げられて、野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類の通過を許容する状態に移行するとともに、野生獣類の通過後には、野生獣類の通過を許容しない状態に移行する、
請求項1に記載の獣類捕獲装置。
【請求項3】
前記上方規制部は、
前記進入方向の先端側において、前記通過部に連続するように設けられているとともに、
前記通過部と連動するように変形して、前記通過部を野生獣類の通過を許容する状態から、野生獣類の通過を許容しない状態に移行させる方向に付勢する、
請求項2に記載の獣類捕獲装置。
【請求項4】
前記通過部および前記上方規制部は、
柔軟性および透光性を有するネット状またはシート状の基材を有し、
前記通過部は、
前記進入方向と交差する方向に配置されて前記基材を支持するとともに、野生獣類によって押し上げられることにより、野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類の通過を許容する状態に弾性変形可能である第1支持部材、をさらに有し、
前記上方規制部は、
前記第1支持部材と交差するように配置されて前記基材を支持するとともに、前記進入方向の基端側における高さが、前記進入方向の先端側における高さよりも高くなるように配置されており、前記通過部と連動するように変形して、前記通過部を野生獣類の通過を許容する状態から、野生獣類の通過を許容しない状態に移行させる方向に付勢する第2支持部材、をさらに有する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の獣類捕獲装置。
【請求項5】
前記第1支持部材は、
前記通過部が野生獣類の通過を許容しない状態において、設置面との間に間隙を形成するように配置されており、
前記間隙は、匍匐状態にある野生獣類の頭部高さ以下に設定される、
請求項4に記載の獣類捕獲装置。
【請求項6】
前記第2支持部材は、
前記通過部が野生獣類の通過を許容しない状態において、
設置面からの高さが100cmである部分を第1部分とし、前記進入方向の先端側の部分を第2部分として、前記第1部分および前記第2部分を結ぶ仮想線と設置面とが成す角度が30度以上、70度以下となるように配置されている、
請求項4または請求項5に記載の獣類捕獲装置。
【請求項7】
前記誘導部は、
前記第1支持部材および前記第2支持部材を支持する枠体をさらに有する、
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の獣類捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野生獣類を捕獲するための獣類捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、野生獣類による農林業被害や自然生態系への影響が深刻化している。野性獣類による影響を抑制するため、防護柵によって農地等を防御するとともに、捕獲による個体数の調整が行われている。
【0003】
野生獣類の個体数を効率的に調整するには、持続的な捕獲が必要である。シカを例に挙げて説明すると、シカの捕獲に用いられるワナとして、囲いワナが知られている(例えば、特許文献1参照)。囲いワナを用いることにより、一度に複数頭の捕獲が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、囲いワナには落下式の開閉扉が用いられることが多い。落下式の開閉扉は、金属製である場合が多く、開閉扉を落下させて囲いワナに進入したシカを捕獲する際に大きな音を発生させる。シカは警戒心が強く、開閉扉の落下音は、囲いワナの周囲に近づいていたシカを驚かせることとなる。囲いワナに対するシカの警戒心を高めてしまうと、捕獲困難な個体(シカの場合は、いわゆるスマートディア)を増加させるおそれがある。
【0006】
また、落下式の開閉扉には、引き糸といわれる糸が取り付けられている。囲いワナに進入したシカが引き糸に引っ掛かるようにしておき、これをトリガーとして開閉扉が落下する仕組みである。引き糸の取り付けは、調整が難しく高度な技術が必要である。このため、経験の少ない設置者にとっては、落下式の開閉扉を有する囲いワナを適切に設定することは容易ではない。
【0007】
落下式の開閉扉を設定する困難性に鑑みて、近年はセンサー等のICT(Information and Communication Technology)技術を利用した囲いワナも開発されている。しかしながら、囲いワナの価格が非常に高価になるとともに、囲いワナの設置やメンテナンスに専門知識が要求されるため、広く普及するには至っていない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、野生獣類の警戒心を高めることなく捕獲することができるとともに、設置が容易であり、かつ、設置費用を抑制することができる獣類捕獲装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の獣類捕獲装置は、
野生獣類を収容する収容空間を構成する収容部と、
前記収容部の外部から内部へ野生獣類を誘導するとともに、前記収容空間の内部から外部への野生獣類の退出を制限する誘導部と、
を備え、
前記誘導部において、前記収容部の外部から内部へ向かう方向を進入方向として、
前記誘導部は、
野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類によって押し上げられることにより、野生獣類の通過を許容する状態に移行する通過部と、
前記進入方向の基端側における高さが、前記進入方向の先端側における高さよりも高くなるように配置されているとともに、野生獣類を前記通過部に誘導する上方規制部と、
を有する
【発明の効果】
【0010】
本発明の獣類捕獲装置によれば、野生獣類の警戒心を高めることなく捕獲することができるとともに、設置が容易であり、かつ、設置費用を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る獣類捕獲装置の平面図である。
【
図4】
図4は、野生獣類としてのシカが誘導部付近まで誘引された状態を示す側面図である。
【
図5】
図5は、シカが通過部を押し上げながら通過する状態を示す側面図である。
【
図6】
図6は、収容空間にシカが進入した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる獣類捕獲装置は、
野生獣類を収容する収容空間を構成する収容部と、
前記収容部の外部から内部へ野生獣類を誘導するとともに、前記収容空間の内部から外部への野生獣類の退出を制限する誘導部と、
を備え、
前記誘導部において、前記収容部の外部から内部へ向かう方向を進入方向として、
前記誘導部は、
野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類によって押し上げられることにより、野生獣類の通過を許容する状態に移行する通過部と、
前記進入方向の基端側における高さが、前記進入方向の先端側における高さよりも高くなるように配置されているとともに、野生獣類を前記通過部に誘導する上方規制部と、
を有する(第1の構成)。
【0013】
上記構成によれば、誘導部は、野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類によって押し上げられることにより、野生獣類の通過を許容する状態に移行する通過部と、進入方向の基端側における高さが、進入方向の先端側における高さよりも高くなるように配置されているとともに、野生獣類を通過部に誘導する上方規制部と、を有している。
野生獣類は、農林地の作物等を狙って防御柵の柵下の隙間から潜り込む習性を有している。また、農林地に侵入すると食物が得られることを学習している個体も存在している。
野生獣類は、収容部内に設置されたエサ等によって誘導部まで誘引され、上方規制部によって通過部まで誘導される。通過部まで誘導された野生獣類は、上記習性により通過部を押し上げるようにして通過して収容空間の内部に進入する。
収容空間の内部に野生獣類が進入すると、収容空間の内部には野生獣類を通過部に案内する上方規制部のようなものがないため、収容空間の内部に進入した野生獣類は、通過部を押し上げて退出しようとはせず、野生獣類は収容部に捕獲された状態となる。
このように、野生獣類の習性を利用して捕獲するため、捕獲時に開閉扉の落下音のような大きな音が発生せず、また、捕獲された個体も捕獲されたとの認識がなく激しく暴れることもない。よって、獣類捕獲装置の周囲に近づいている他の野生獣類の警戒心を高めることなく、連続的、継続的に野生獣類を捕獲することができる。
また、獣類捕獲装置を簡易に構成することができ、センサーやトリガー等も不要であるため、獣類捕獲装置の設置が容易であり、かつ、設置費用を抑制することができる。
【0014】
上記第1の構成において、
前記通過部は、
野生獣類に押し上げられて、野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類の通過を許容する状態に移行するとともに、野生獣類の通過後には、野生獣類の通過を許容しない状態に移行してもよい(第2の構成)。
【0015】
上記構成によれば、通過部を簡易な構成とすることができるとともに、野生獣類の通過後には、野生獣類の通過を許容しない状態に移行させることができる。よって、通過部から進入した野生獣類は収容部から退出しにくくなり、野生獣類を捕獲しやすくなる。
【0016】
上記第2の構成において、
前記上方規制部は、
前記進入方向の先端側において、前記通過部に連続するように設けられているとともに、
前記通過部と連動するように変形して、前記通過部を野生獣類の通過を許容する状態から、野生獣類の通過を許容しない状態に移行させる方向に付勢してもよい(第3の構成)。
【0017】
上記構成によれば、野生獣類の警戒心を高めることなく、上方規制部から通過部に誘導することができるとともに、野生獣類の通過後には、通過部を速やかに野生獣類の通過を許容しない状態に移行させることができる。よって、通過部から進入した野生獣類は収容部から退出しにくくなり、野生獣類を捕獲しやすくなる。
【0018】
上記第1から第3のいずれかの構成において、
前記通過部および前記上方規制部は、
柔軟性および透光性を有するネット状またはシート状の基材を有し、
前記通過部は、
前記進入方向と交差する方向に配置されて前記基材を支持するとともに、野生獣類によって押し上げられることにより、野生獣類の通過を許容しない状態から、野生獣類の通過を許容する状態に弾性変形可能である第1支持部材、をさらに有し、
前記上方規制部は、
前記第1支持部材と交差するように配置されて前記基材を支持するとともに、前記進入方向の基端側における高さが、前記進入方向の先端側における高さよりも高くなるように配置されており、前記通過部と連動するように変形して、前記通過部を野生獣類の通過を許容する状態から、野生獣類の通過を許容しない状態に移行させる方向に付勢する第2支持部材、をさらに有してもよい(第4の構成)。
【0019】
上記構成によれば、獣類捕獲装置を単純かつ軽量な構成にすることができ、山林のような急傾斜地であっても獣類捕獲装置を容易に持ち運んで設置することができる。また、透光性を有するネット状またはシート状の基材は、野生獣類に警戒されにくいため、連続的、継続的に野生獣類を捕獲することができる。
【0020】
上記第4の構成において、
前記第1支持部材は、
前記通過部が野生獣類の通過を許容しない状態において、設置面との間に間隙を形成するように配置されており、
前記間隙は、匍匐状態にある野生獣類の頭部高さ以下に設定されてもよい(第5の構成)。
【0021】
上記構成によれば、第1支持部材をこのように配置することにより、野生獣類は、習性により鼻先を間隙に押し込んで通過部を押し上げるようにして通過して収容空間の内部に進入する。一方、収容空間の内部に進入した野生獣類は、通過部を押し上げて退出しようとしなくなる。このため、野生獣類を収容部に捕獲された状態とすることができる。
【0022】
上記第4または第5の構成において、
前記第2支持部材は、
前記通過部が野生獣類の通過を許容しない状態において、
設置面からの高さが100cmである部分を第1部分とし、前記進入方向の先端側の部分を第2部分として、前記第1部分および前記第2部分を結ぶ仮想線と設置面とが成す角度が30度以上、70度以下となるように配置されていてもよい(第6の構成)。
【0023】
上記構成によれば、第2支持部材をこのように配置することにより、野生獣類は、習性により上方規制部によって通過部まで誘導される。通過部まで誘導された野生獣類は、習性により通過部を押し上げるようにして通過して収容空間の内部に進入する。このため、野生獣類を収容部に捕獲された状態とすることができる。
【0024】
上記第4から第6のいずれかの構成において、
前記誘導部は、
前記第1支持部材および前記第2支持部材を支持する枠体をさらに有してもよい(第7の構成)。
【0025】
上記構成によれば、獣類捕獲装置を単純かつ軽量な構成にすることができ、山林のような急傾斜地であっても獣類捕獲装置を容易に持ち運んで設置することができる。
【0026】
上記第1から第7のいずれかの構成において、
前記誘導部は、
前記通過部の上方であって、かつ、前記上方規制部に対して前記進入方向の先端側に、野生獣類が前記上方規制部に乗り上げることを制限する先端側規制部をさらに有してもよい(第8の構成)。
【0027】
上記構成によれば、先端側規制部によって、収容部に捕獲された状態の野生獣類が上方規制部に乗り上げて暴れることを抑制することができる。
【0028】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態1に係る獣類捕獲装置100を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0029】
[全体構成]
まず、獣類捕獲装置100の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る獣類捕獲装置100の平面図である。本実施形態の獣類捕獲装置100は、野生獣類WLとして主にニホンジカ(以下、単にシカという場合がある)を捕獲することを目的とした構成を有している。しかしながら、本発明に係る獣類捕獲装置の捕獲対象は、ニホンジカに限定されず、野生獣類全般の捕獲に適用可能である。例えば、シカ類ではエゾジカ、ヤクシカ、ツシマジカなど各地に生息しているシカの捕獲に適用可能である。また、シカ類以外に例えば、イノシシ、ニホンザル、アライグマ、タヌキ、アナグマ、ハクビシン、ノウサギ等の捕獲にも適用可能である。
【0030】
本実施形態で示した寸法や比率は一例であり、寸法や比率が限定されるものではない。以下の図では、矢印Rは獣類捕獲装置100の右方向を示し、矢印Lは左方向を示す。矢印Uは上方向、矢印Dは下方向を示す。矢印Fは前方向、矢印Bは後方向を示す。
【0031】
図1に示すように、獣類捕獲装置100は、収容部10、および誘導部30を有している。
【0032】
収容部10は、野生獣類WL(例えば、シカ)を収容する収容空間11を構成している。収容部10は、第1側壁121、第2側壁122、第3側壁123、および第4側壁124を有している。収容部10は、第1側壁121および第2側壁122が、野生獣類WLの進入口となる誘導部30に連続するように配置されている。第1側壁121、第2側壁122、第3側壁123、および第4側壁124は、誘導部30を含めて平面視で長方形となるように配置されている。第3側壁123には、設置者が収容部10に出入りするための開閉扉(図示せず)が設けられている。
【0033】
第1側壁121、第2側壁122、第3側壁123、および第4側壁124は、複数枚のワイヤーメッシュ(溶接金網)13を組み合わせることで構成されている(
図2参照)。ワイヤーメッシュ13は、入手が容易な規格サイズのものを用いることができる。本実施形態では、幅×長さが1m×2m、編目の寸法が100mm×100mmのワイヤーメッシュを複数枚接続して、収容部10の前後×左右×高さが、おおよそ3m×4m×2mとなるように構成している。ワイヤーメッシュ13は、設置面(地面)GLに自立させてもよく、支柱や樹木等で支えてもよい。
【0034】
ワイヤーメッシュ13の編目の寸法は、捕獲対象となる野生獣類WLの大きさに応じて変更してもよい。収容部10の前後×左右×高さ方向の寸法も、捕獲対象となる野生獣類WLの大きさ、捕獲数等に応じて変更してもよい。本実施形態では、収容部10の上部は閉鎖せずに開放しているが、例えば、捕獲した野性獣類WLが跳躍して逃げるおそれがある場合、収容部10の上部を閉鎖してもよく、ワイヤーメッシュ13の上端を内側に向けて延ばしてもよい。また、収容部10の高さをさらに高くしてもよい。
【0035】
収容部10の形状は、平面視で長方形としたが、長方形に限定されず、正方形や円形の他、様々な形状にしてもよい。例えば、獣類捕獲装置100を設置する場所に樹木が存在している場合には、収容部10を樹木に支持させるために、収容部10の平面形状を樹木の配置に合わせた形状としてもよい。
【0036】
誘導部30は、野生獣類WLの進入口となる部分である。具体的には、誘導部30は、収容部10の外部から内部へ野生獣類WLを誘導するとともに、収容空間11の内部から外部への野生獣類WLの退出を制限する。誘導部30は、枠体40、通過部50、上方規制部70、先端側規制部80、および側方規制部90を有している。以下の説明では、誘導部30において、収容部10の外部から内部へ向かう方向を進入方向DTとする。
【0037】
枠体40は、複数の枠部材41を上下方向と水平方向に組み合わせて接続されることで構成されている。本実施形態では、枠部材41として金属パイプを用いている。金属パイプは、入手が容易な規格サイズのものを用いている。金属パイプで枠体40を構成することにより、分解した状態で設置場所に搬入し、接続金具を用いて容易に組み立てることができる利点がある。
【0038】
枠体40は、基端側縦部材42、先端側縦部材43、基端側横部材45、先端側横部材46、前後方向横部材47、および傾斜部材48を有している。
【0039】
基端側縦部材42は、枠部材41を上下方向に配置したものである。基端側縦部材42は、進入方向DTにおける基端側に、前後方向に間隔をおいて2本配置されている。間隔をおいて配置された2本の基端側縦部材42は、野生獣類WLが誘導部30へ進入する際の進入口となる。
【0040】
先端側縦部材43は、枠部材41を上下方向に配置したものである。先端側縦部材43は、基端側縦部材42よりも進入方向DTにおける先端側に、前後方向に間隔をおいて2本配置されている。間隔をおいて配置された2本の先端側縦部材43は、野生獣類WLが誘導部30から収容部10へ進入する際の進入口となる。
【0041】
基端側横部材45は、枠部材41を水平方向に配置したものである。基端側横部材45は、2本の基端側縦部材42に支持されるように、前後方向に向けて配置されている。基端側横部材45は、上下方向に間隔をおいて第1基端側横部材451、第2基端側横部材452、および第3基端側横部材453を有している(
図2参照)。
【0042】
先端側横部材46は、枠部材41を水平方向に配置したものである。先端側横部材46は、2本の先端側縦部材43に支持されるように、前後方向に向けて配置されている。先端側横部材46は、上下方向に間隔をおいて第1先端側横部材461、および第2先端側横部材462を有している(
図2参照)。
【0043】
前後方向横部材47は、枠部材41を水平方向に配置したものである。前後方向横部材47は、基端側縦部材42および先端側縦部材43に支持されるように、左右方向に向けて配置されている。
【0044】
傾斜部材48は、枠部材41を傾斜させて配置したものである。傾斜部材48は、設置面GLに対して傾斜するように配置されている(
図2参照)。
【0045】
本実施形態では、誘導部30は、平面視で長方形に配置された収容部10の内側に含まれるように配置されているが、誘導部30を平面視で収容部10に対して突出するように配置してもよい。
【0046】
通過部50は、枠体40の進入方向DTにおける先端側に配置されている。通過部50は、野生獣類WLの通過を許容しない状態から、野生獣類WLの通過を許容する状態に移行することにより、収容部10の外部から内部へ野生獣類WLを進入させる部分である(
図4、
図5参照)。通過部50は、基材60、および第1支持部材51で構成されている。
【0047】
基材60は、通過部50を構成するとともに、上方規制部70を構成するものでもある。基材60は、柔軟性および透光性を有するネット状の素材で形成されている。本実施形態では、基材60として、いわゆる防獣ネットを用いている。防獣ネットは、編目の繊維の中に金属線や強化繊維が入れられており、野生獣類WLを捕獲する際に切断されにくく、かつ、耐久性が高い。
【0048】
基材60は、枠体40の内側において、進入方向DTの基端側が高く、進入方向DTの先端側が低くなるように湾曲させた状態に配置されている(
図2参照)。このため、基材60の外形は、前後方向の長さよりも左右方向の長さを長くした略長方形状とされている。また、基材60を枠体40の内側で弛ませて配置できるように、基材60の寸法は、枠体40の内側の寸法よりも大きくなるように設定されている。通過部50は、基材60の前端61側の部分を用いて構成されている。
【0049】
ここで、本明細書における透光性とは、基材60を通して基材60の向こう側が視認できる材質を意味している。ネット状材は編目を有しており、編目を通してネット状材の向こう側を視認することができる。基材60が透光性を有していて野生獣類WLの視界を遮らないことにより、野生獣類WLの警戒心を高めにくく、野生獣類WLを安心させた状態で獣類捕獲装置100に接近させることができる。
【0050】
基材60として、ネット状の素材だけでなく、柔軟性と透光性を有するシート状の素材を用いることもできる。シート状の素材についても、野生獣類WLを捕獲する際に切断されにくく、かつ、耐久性が高いものであることが好ましい。
【0051】
第1支持部材51は、枠体40の進入方向DTにおける先端側に配置され、基材60を支持する部材である。第1支持部材51は、野生獣類WLによって押し上げられることで弾性変形する素材を用いることが好ましい。第1支持部材51として、例えば、弾性変形可能な棒状体、管状体等を用いることができる。本実施形態では、宇部エクシモ株式会社製の繊維強化プラスチック製の細パイプであるダンポール(登録商標)を用いている。また、第1支持部材51は、棒状体や管状体に限定されず、例えばゴムベルト等の他の素材を用いることもできる。
【0052】
第1支持部材51の長さは、前後方向に間隔をおいて配置された2本の傾斜部材48の間隔よりも長くなるように設定されている。第1支持部材51と基材60は、基材60の前端61の編目に第1支持部材51を縫い通すようにして接続されている。第1支持部材51の両端部は、2本の傾斜部材48の下を通しており、傾斜部材48に固定されずに前後方向への移動が許容されている。このため、第1支持部材51の中央部が野生獣類WLに押し上げられた場合に、第1支持部材51は、上方に向けて湾曲するように弾性変形することが可能である。
【0053】
上方規制部70は、枠体40の進入方向DTにおける基端側から先端側に配置されている。上方規制部70は、誘導部30に進入してきた野生獣類WLを通過部50に誘導する部分である(
図4、
図5参照)。上方規制部70は、進入方向DTの先端側において、通過部50に連続するように設けられている。上方規制部70は、基材60、第2支持部材71、および第3支持部材75で構成されている。
【0054】
基材60は、前述のように、通過部50を構成するとともに、上方規制部70を構成するものである。基材60の前端61側の部分が通過部50を構成しており、その部分よりも後端62側の部分が上方規制部70を構成している。
【0055】
第2支持部材71は、第1支持部材51と交差するように配置されて基材60を支持する部材である。第2支持部材71は、通過部50が野生獣類WLによって押し上げられた場合に、これに連動して弾性変形する素材を用いることが好ましい。第2支持部材71として、例えば、弾性変形可能な棒状体、管状体等を用いることができる。本実施形態では、第1支持部材51と同様に宇部エクシモ株式会社製の繊維強化プラスチック製の細パイプであるダンポール(登録商標)を用いている。また、第1支持部材51は、棒状体や管状体に限定されず、他の素材を用いることもできる。
【0056】
第2支持部材71は、進入方向DTの基端側における高さが、進入方向DTの先端側における高さよりも高くなるように配置されている。具体的には、第2支持部材71の先端部72は、第1支持部材51と交差させた状態で第1支持部材51と接続されている。第2支持部材71の後端部73は、第1基端側横部材451と交差させた状態とされている。第2支持部材71と基材60は、基材60の編目に第2支持部材71を縫い通すようにして接続されている。第2支持部材71は、通過部50を下方に向けて付勢するように、下方に向けて湾曲するように設置されている(
図2参照)。
【0057】
第3支持部材75は、第2支持部材71が上方に浮き上がることを抑制するための部材である。第3支持部材75は、通過部50および第2支持部材71が野生獣類WLによって押し上げられた場合に、これに連動して弾性変形する素材を用いることが好ましい。第3支持部材75として、本実施形態では、第1支持部材51および第2支持部材71と同様に宇部エクシモ株式会社製の繊維強化プラスチック製の細パイプであるダンポール(登録商標)を用いている。また、第1支持部材51は、棒状体や管状体に限定されず、ゴムベルト等の他の素材を用いることもできる。
【0058】
先端側規制部80は、枠体40の進入方向DTにおける先端側に配置されている。先端側規制部80は、収容部10に収容された野性獣類WLが上方規制部70に乗り上げることを制限する。先端側規制部80は、収容部10と同様のワイヤーメッシュ13を用いて構成されている。先端側規制部80は、第1先端側横部材461、第2先端側横部材462、および2本の先端側縦部材43で構成される開口部を閉鎖するように設けられている(
図2参照)。
【0059】
側方規制部90は、第1側方規制部91および第2側方規制部92を有している。第1側方規制部91および第2側方規制部92は、誘導部30に進入してきた野生獣類WLを通過部50に向けて側方から案内する部分である。第1側方規制部91および第2側方規制部92は、収容部10と同様のワイヤーメッシュ13を用いて構成されている。第1側方規制部91および第2側方規制部92は、それぞれ、基端側縦部材42、先端側縦部材43、および前後方向横部材47で構成される開口部を閉鎖するように設けられている(
図2参照)。
【0060】
図2は、獣類捕獲装置100の側面図である。
図2に示すように、枠体40は、基端側縦部材42、先端側縦部材43、基端側横部材45、先端側横部材46、前後方向横部材47、および傾斜部材48を有している。
【0061】
基端側横部材45は、2本の基端側縦部材42に支持されるように、前後方向に向けて配置されている。基端側横部材45は、上下方向に間隔をおいて第1基端側横部材451、第2基端側横部材452、および第3基端側横部材453を有している。
【0062】
先端側横部材46は、2本の先端側縦部材43に支持されるように、前後方向に向けて配置されている。先端側横部材46は、上下方向に間隔をおいて第1先端側横部材461、および第2先端側横部材462を有している。
【0063】
傾斜部材48は、進入方向DTにおける基端側が第3基端側横部材453に支持され、かつ設置面GLに対して傾斜するように配置されている。傾斜部材48の進入方向DTにおける先端側は、設置面GLに対して差し込まれていてもよい。
【0064】
通過部50は、枠体40の進入方向DTにおける先端側に配置されている。また、通過部50に連続するように、上方規制部70が配置されている。前述のように、通過部50は、弾性変形可能な第1支持部材51と基材60によって構成されている。上方規制部70は、弾性変形可能な第2支持部材71および第3支持部材75と、基材60とによって構成されている。通過部50は、第2先端側横部材462に接続された紐状体55によって上方に引き上げられた状態とされている。このため、通過部50は、設置面GLに対して一定の高さが維持されるとともに、上方への弾性変形は許容されている。
【0065】
通過部50は、野生獣類WLに押し上げられることで、野生獣類WLの通過を許容しない状態から、野生獣類WLの通過を許容する状態に弾性変形することが可能である。
【0066】
上方規制部70は、通過部50と連動するように変形して、通過部50を、野生獣類WLの通過を許容する状態から野生獣類WLの通過を許容しない状態に移行させる方向に付勢している。また、通過部50自体も、第1支持部材51の弾性力により、野生獣類WLの通過を許容しない状態に移行させる方向に付勢されている。このため、通過部50は、野生獣類WLの通過後には、野生獣類WLの通過を許容しない状態に移行する。
【0067】
以下の説明では、野生獣類WLの通過を許容しない状態を第1状態PA1とする。また、野生獣類WLによって押し上げられることにより、野生獣類の通過を許容する状態を第2状態PA2とする(
図5参照)。通過部50は、野生獣類WLに押し上げられて、第1状態PA1から第2状態PA2に弾性変形するとともに、野生獣類WLの通過後には、第2状態PA2から第1状態PA1に復帰する。なお、説明の便宜上、通過部50は、野生獣類WLの通過後には、第2状態PA2から元の第1状態PA1に復帰するものとして説明するが、必ずしも完全に元の位置に戻らなくてもよい。
【0068】
先端側規制部80は、枠体40の進入方向DTにおける先端側に配置されている。先端側規制部80は、収容部10に収容された野性獣類WLが上方規制部70に乗り上げることを制限する。先端側規制部80は、第1先端側横部材461、第2先端側横部材462、および2本の先端側縦部材43で構成される開口部を閉鎖するように設けられている。
【0069】
図3は、
図1のA―A線における断面図である。
図3では、通過部50および上方規制部70の前後方向における略中央部での断面形状が示されている。
【0070】
図3に示すように、通過部50は、野生獣類WLの通過を許容しない状態(第1状態PA1)において、設置面GLとの間に間隙D1を形成するように配置されている。間隙D1は、匍匐状態にある野生獣類WLの頭部高さ以下に設定されている。
【0071】
ここで、匍匐状態にある野生獣類WLの頭部高さは、捕獲対象となる野生獣類WLの種類によって異なっている。また、同じ種類の野生獣類WLであっても、地域によって大きさが異なる場合もある。例えば、捕獲対象を肩高70cmから80cm程度のニホンジカに設定した場合、間隙D1は、10cmから50cmの範囲に設定することが好ましく、20cmから40cmの範囲に設定することがより好ましい。間隙D1を10cmから50cmの範囲に設定することで、ニホンジカは通過部50を通過して収容部10内に進入しやすく、収容部10に進入したニホンジカが収容部10から退出しにくくなる。
【0072】
実証実験によれば、ニホンジカの場合、間隙D1を30cm、または40cmにすると、収容部10に進入した個体が収容部10から退出しにくくなり、間隙D1を20cmにすると、収容部10に進入したほとんどの個体が収容部10から退出しにくくなることが判明した。
【0073】
一方、間隙D1を50cmより大きくすると、ニホンジカは通過部50を通過して収容部10内に進入するが、収容部10に進入したニホンジカが収容部10から退出する場合があり、間隙D1を10cmより小さくすると、ニホンジカは通過部50を通過することを躊躇する場合があることが判明した。
【0074】
なお、野生獣類WLの通過を許容しない状態(第1状態PA1)から、野生獣類WLによって押し上げられて野生獣類の通過を許容する状態(第2状態PA2)になるまでの変位量は、間隙D1の大きさにもよるが、第2状態PA2における高さが50cm程度となるように変形すればよい。
【0075】
また、上方規制部70を構成する第2支持部材71は、通過部50が野生獣類WLの通過を許容しない状態(第1状態PA1)において、設置面GLとの間の角度が所定の角度となるように設定されている。
【0076】
具体的には、通過部50が野生獣類WLの通過を許容しない第1状態PA1において、設置面GLからの高さH1が100cmである部分を第1部分P1とする。また、進入方向DTの先端側の部分を第2部分P2とする。そして、第1部分P1および第2部分P2を結ぶ仮想線をL1とし、仮想線L1と設置面GLとが成す角度θが30度以上、70度以下となるように第2支持部材71が配置されている。本実施形態では、θは約45度とされている。
【0077】
角度θが30度よりも小さい場合、進入方向DTの基端側における上方規制部70の高さが低くなり、上方規制部70によって野生獣類GLを通過部50まで誘導しにくくなる場合がある。また、角度θが70度よりも大きい場合、第2支持部材71が通過部50を下方に付勢する付勢力が強くなるとともに弾性変形しにくくなり、野生獣類WLが通過部50を押し上げにくくなる。
【0078】
[獣類捕獲装置の動作]
次に、シカを捕獲する場合の獣類捕獲装置100の動作について説明する。
図4は、野生獣類としてのシカWLが誘導部30付近まで誘引された状態を示す側面図である。
図5は、シカWLが通過部50を押し上げながら通過する状態を示す側面図である。
図6は、収容空間11にシカWLが進入した状態を示す側面図である。
【0079】
図4に示すように、獣類捕獲装置100は、通過部50が野生獣類WLの通過を許容しない状態(第1状態PA1)となるようにして、設置面GLに設置されている。収容空間11の内部には、シカWLを誘引するためのエサ(図示せず)を配置する。エサは、シカWLが好む、アルファルファや、アルファルファを粉砕して圧縮したもの(ヘイキューブ)などを用いることができる。
図4では、野生獣類WLがエサによって誘導部30付近まで誘引された状態を示している。
【0080】
上方規制部70は、進入方向DTの基端側における高さが、進入方向DTの先端側における高さよりも高くなるように配置されている。エサによって誘引されたシカWLは、上方規制部70によって通過部50に向けて誘導される。
【0081】
図5では、シカWLが通過部50を押し上げながら通過する状態を示している。シカWLは、農林地の作物等を狙って防御柵の柵下の隙間から潜り込む習性を有している。また、農林地に侵入すると食物が得られることを学習している個体も存在している。通過部50まで誘導されたシカWLは、上記習性により通過部50の下にまず鼻先を入れ、鼻先から頭によって通過部50を押し上げながら収容空間11の内部に進入しようとする。通過部50は、シカWLによって押し上げられることにより、シカWLの通過を許容しない状態(第1状態PA1)から、シカWLの通過を許容する状態(第2状態PA2)に移行する。
【0082】
図6では、収容空間11にシカWLが進入して捕獲された状態を示している。収容空間11の内部にシカWLが進入すると、通過部50は、シカWLの通過を許容する状態(第2状態PA2)から、シカWLの通過を許容しない状態(第1状態PA1)に移行する。通過部50が第1状態PA1に移行することで、シカWLが通過した痕跡が消失すること、および、収容空間11の内部にはシカWLを通過部50に案内する上方規制部70のようなものがないことから、収容空間11の内部に進入したシカWLは、通過部50を押し上げて退出しようとはせず、シカWLは収容部10に捕獲された状態となる。
【0083】
また、収容空間11の内部には、先端側規制部80が配置されている。先端側規制部80は、収容部10に収容された野性獣類WLが上方規制部70に乗り上げたり、激突することを制限している。先端側規制部80の下を潜って上方規制部70に乗り上げる場合もあるが、その場合でも、シカWLが上方規制部70に激突することは防止できるため、上方規制部70や通過部50の損傷を抑制することができる。
【0084】
[実証実験]
本発明に係る獣類捕獲装置の実証実験として、前後方向の長さ3m、左右方向の長さ4mの獣類捕獲装置を設置したところ、翌日にシカ1頭が捕獲され、その後も約3か月間で7頭のシカを捕獲することができた。獣類捕獲装置に設置したカメラで撮影した動画からは、獣類捕獲装置に進入したシカは、暴れることがなく、獣類捕獲装置の周囲のシカも平常であることが観察され、本発明の効果が確認できた。
【0085】
[実施形態1の効果]
獣類捕獲装置100によれば、野生獣類WLは、収容部10内に設置されたエサ等によって誘導部まで誘引され、上方規制部70によって通過部50まで誘導される。通過部50まで誘導された野生獣類WLは、通過部50を押し上げるようにして通過して収容空間11の内部に進入する。
収容空間11の内部に野生獣類WLが進入すると、収容空間11の内部には野生獣類WLを通過部50に案内する上方規制部70のようなものがないため、収容空間11の内部に進入した野生獣類WLは、通過部50を押し上げて退出しようとはせず、野生獣類WLは収容部10に捕獲された状態となる。
このように、野生獣類WLの習性を利用して捕獲するため、捕獲時に開閉扉の落下音のような大きな音が発生せず、また、捕獲された個体も捕獲されたとの認識がなく激しく暴れることもない。よって、獣類捕獲装置100の周囲に近づいている他の野生獣類WLの警戒心を高めることなく、連続的、継続的に野生獣類WLを捕獲することができる。
また、獣類捕獲装置100を簡易に構成することができ、センサーやトリガー等も不要であるため、獣類捕獲装置100の設置が容易であり、かつ、設置費用を抑制することができる。
【0086】
[変形例]
本発明に係る獣類捕獲装置は、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば、獣類捕獲装置の形状は、本実施形態の形状に限定されない。また、本実施形態では、基材60は、通過部50および上方規制部70が連続するとして共通のものとしたが、通過部50および上方規制部70を別構成とすることもできる。
【0087】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
100 獣類捕獲装置
10 収容部
11 収容空間
30 誘導部
50 通過部
70 上方規制部
PA1 第1状態
PA2 第2状態
DT 進入方向
WL 野生獣類