(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20220207BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61B5/026 120
A61B10/00 E
(21)【出願番号】P 2017058260
(22)【出願日】2017-03-23
【審査請求日】2020-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【氏名又は名称】大竹 裕明
(73)【特許権者】
【識別番号】518070663
【氏名又は名称】株式会社NeU
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆太
(72)【発明者】
【氏名】野澤 孝之
(72)【発明者】
【氏名】池田 純起
(72)【発明者】
【氏名】桂 卓成
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 清
(72)【発明者】
【氏名】吉村 美奈
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/158939(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141423(WO,A1)
【文献】特開2011-229613(JP,A)
【文献】特開2002-119511(JP,A)
【文献】特開2005-198787(JP,A)
【文献】特開2010-240298(JP,A)
【文献】特開2016-189955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/398、10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者がコントロールタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第1検出値と、前記利用者が前記コントロールタスクより認知負荷が大きいユニットタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第2検出値と、前記利用者が対象タスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第3検出値とを格納する記憶部と、
前記第3検出値に基づく第3測定値から前記第1検出値に基づく第1測定値を減算した値を、前記第2検出値に基づく第2測定値から前記第1測定値を減算した値で除算することで前記対象タスクの指標値を算出する演算部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記第1測定値は、前記第1検出値の時間平均値であり、
前記第2測定値は、前記第2検出値の時間平均値であり、
前記第3測定値は、前記第3検出値の時間平均値である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
情報処理装置を用いた情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、
利用者がコントロールタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第1検出値と、前記利用者が前記コントロールタスクより認知負荷が大きいユニットタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第2検出値と、前記利用者が対象タスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第3検出値とを取得し、
前記第3検出値に基づく第3測定値から前記第1検出値に基づく第1測定値を減算した値を、前記第2検出値に基づく第2測定値から前記第1測定値を減算した値で除算することで前記対象タスクの指標値を算出する、
ことを
特徴とする情報処理方法。
【請求項4】
コンピュータが
利用者がコントロールタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第1検出
値と、前記利用者が前記コントロールタスクより認知負荷が大きいユニットタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第2検出値と、前記利用者が対象タスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第3検出値とを取得し、
前記第3検出値に基づく第3測定値から前記第1検出値に基づく第1測定値を減算した値を、前記第2検出値に基づく第2測定値から前記第1測定値を減算した値で除算することで前記対象タスクの指標値を算出する、
ことを実行するための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドセットと呼ばれる頭部装着装置に、近赤外線照射部と近赤外線検出部を設け、脳表面の血流量の変化を検出し、検出されたデータをデータ処理装置で処理することで、脳の活動状態を示す情報を取得する計測システムが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の利用者(被験者)に対して、様々なタスク(作業、行動)を行った際の脳活動状態を計測することが行われている。あるタスク(作業、行動)を行った際の脳活動状態は、当該タスクに含まれる様々な性質や利用者の属性等の影響を受けていると考えられる。しかし、脳活動状態を定量的に評価する指標がないため、過去と現在、利用者間等で、脳活動状態の比較をすることが困難である。
【0005】
本発明は、脳活動状態を定量的に評価する指標を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
【0007】
即ち、第1の態様は、
利用者がコントロールタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第1検出値と、前記利用者が前記コントロールタスクより認知負荷が大きいユニットタスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第2検出値と、前記利用者が対象タスクを行う際の前記利用者の頭部の血流量を検出した第3検出値とを格納する記憶部と、
前記第3検出値に基づく第3測定値を用いて、前記第1検出値に基づく第1測定値と前記第2検出値に基づく第2測定値との差分を基準とする前記対象タスクの指標値を算出する演算部と、
を備える情報処理装置である。
【0008】
開示の態様は、プログラムが情報処理装置によって実行されることによって実現されてもよい。即ち、開示の構成は、上記した態様における各手段が実行する処理を、情報処理装置に対して実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を情報処理装置が実行する方法をもって特定されてもよい。開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を行う情報処理装置を含むシステムとして特定されてもよい。
【0009】
プログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくても、並列的または個別に実行される処理を含む。プログラムを記述するステップの一部が省略されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、脳活動状態を定量的に評価する指標を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る計測システムの情報処理に関与する構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、頭部装着装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の計測システムの動作フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0013】
〔実施形態〕
(構成例)
図1は、本発明の一実施形態に係る計測システムの情報処理に関与する構成を例示する図である。本計測システムは、利用者の頭部から血流量の変化を示す計測データ(検出値ともいう)を検出し、利用者の脳の活動状態を示す脳活動情報(脳活動波形)を取得する。
【0014】
図1のように、本計測システムは、頭部装着装置10と演算装置20とを有する。
【0015】
図2は、頭部装着装置の構成例を示す図である。頭部装着装置10は、情報処理の側面としては、制御部11と、無線通信部13と、一対のセンサ115、125とを有する。制御部11は、頭部装着装置10の計測と通信を制御する。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、あるいはDSP(Digital Signal Processor)等のプロ
セッサとメモリとを有し、メモリ上に実行可能に展開されたコンピュータプログラム、ファームウェア等により処理を実行する。ただし、制御部11は、無線通信部13とセンサ115、125を起動し、各構成要素との連携処理を実行する専用のハードウェア回路、FPGA(Field Programmable Gate Array)等であってもよい。また、制御部11は、
CPU、DSP、専用のハードウェア回路等が混在したものであってもよい。
【0016】
頭部装着装置10は、鉢巻き状に利用者の頭部に巻きつけて装着され、固定用部材を締めつけることによって利用者の頭部に固定される構造を有する。
【0017】
無線通信部13は、所定のインターフェースによって、制御部11およびセンサ115、125と接続される。ただし、無線通信部13は、制御部11を介して、センサ115、125からデータを取得する構成であってもよい。無線通信部13は、ネットワークN1を介して、演算装置20と通信する。ネットワークN1は、例えば、Bluetooth(登録
商標)、無線LAN(Local Area Network)、ZigBee(登録商標)等の規格にしたがったネットワークワークである。無線通信部13が転送手段の一例である。ただし、本計測システムにおいて、無線通信部13の無線インターフェースの規格に限定はない。
【0018】
ネットワークN1での通信時、通信ヘッダのヘッダ部分、あるいは、通信データ中の利用者データ部分(ペイロード部分)に、頭部装着装置10を識別する識別子を埋め込んで、演算装置20が利用者(被験者)を識別できるようにする。
【0019】
また、本計測システムにおいて、無線通信部13に代えて、あるいは、無線通信部13
とともに有線で通信を行う通信部を設けてもよい。すなわち、頭部装着装置10と演算装置20とが有線通信のインターフェースで接続されてもよい。この場合の有線通信のインターフェースに限定がある訳ではなく、計測システムの用途に応じてUSB(Universal Serial Bus)、PCI Express等の各種インターフェースを使用できる。
【0020】
センサ115、125は、いずれも近赤外線を頭部に照射し、脳の大脳皮質付近で一部吸収されて散乱された近赤外線を受光し、電気信号に変換する。脳の大脳皮質は、例えば、脳の活動状態に応じて、血流量が異なる。その結果、大脳皮質の各部において、血液中の酸素と結合したヘモグロビンの量と、酸素と結合していないヘモグロビンの量が変化する。ヘモグロビンの量の変化、酸素量の変化等に起因して、大脳皮質付近での近赤外線の吸収特性、あるいは、散乱特性が変化する。センサ115、125は、このような大脳皮質付近の血流の状態に応じた近赤外線吸収率の変化あるいは透過率の変化により光量が変化する近赤外線を電気信号に変換して出力する。センサ115、125が、検出手段の一例である。
【0021】
センサ115、125は、例えば、近赤外線を照射する近赤外線光源と、近赤外線を受光する受光部を含む。近赤外線光源は、例えば、LED(Light Emitting Diodes)、赤
外線ランプ等である。また、受光部は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の光電素子と、増幅器と、AD(Analog Digital)コンバータとを含む。なお、近赤外線光源と受光部とが対にして設けられなくてもよい。例えば、1つの近赤外線光源に対して、複数の受光部を設けてもよい。
【0022】
図3は、演算装置の構成例を示す図である。演算装置20は、頭部装着装置10から、利用者の大脳皮質付近での近赤外線の吸収率または透過率の変化データを取得し、利用者の脳の活動状態に関連する様々な情報処理を含むサービスを提供する。演算装置20は、情報処理装置(コンピュータ)の一例である。演算装置20は、PC(Personal Computer)、スマートフォン、携帯電話、タブレット型端末、カーナビゲーション装置、PDA
(Personal Digital Assistant)のような専用または汎用のコンピュータ、あるいは、コンピュータを搭載した電子機器を使用して実現可能である。演算装置20は、例えば、フィットネスクラブ、学習塾などに設置され得る。
【0023】
演算装置20は、CPU21と、メモリ22と、無線通信部23と、公衆回線通信部24と、表示部25と、操作部26と、出力部27と、撮像部28と、測位部29と、物理センサ部2Aを有する。CPU21は、メモリ22に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより、演算装置20としての処理を実行する。演算装置20としての処理とは、例えば、上記利用者の脳の活動状態に関連する様々な情報処理を含むサービスである。このようなコンピュータプログラムを実行するCPU21は、演算部の一例である。
【0024】
メモリ22は、CPU21で実行されるコンピュータプログラム、あるいは、CPU21が処理するデータを記憶する。メモリ22は、揮発性メモリと不揮発性メモリを含んでよい。メモリ22は、記憶部の一例である。
【0025】
無線通信部23は、頭部装着装置10の無線通信部13と同様である。無線通信部23は、受信手段の一例である。また、演算装置20は、無線通信部23に代えて、あるいは、無線通信部23とともに有線で通信を行う通信部を有してもよい。
【0026】
公衆回線通信部24は、図示しない上位のネットワークを介して、当該ネットワーク上のサーバ等と通信する。当該ネットワークは、公衆回線網であり、例えば、携帯電話網である。当該ネットワークが携帯電話網である場合には、公衆回線通信部24は、携帯電話網の基地局を介して当該ネットワークに接続する。ただし、当該ネットワークは、インタ
ーネット接続業者の通信装置へのアクセス網とインターネットを含むネットワークであってもよい。インターネット接続業者の通信装置へのアクセス網は、例えば、通信事業者が提供する光ネットワーク、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等である。当該ネットワークは公衆無線ネットワークの一例である。また、公衆回線通信部24は公衆無線通信手段の一例である。ただし、本計測システムにおいて、当該ネットワークが公衆回線網に限定されず、例えば、LAN(Local Area Network)等の構内ネットワーク、企業、事業者、役所、学校、研究機関等の専用回線、VPN(Virtual Private Network
)等の広域ネットワークであってもよい。以下、企業、事業者、役所、学校、研究機関等を企業等ともいう。
【0027】
表示部25は、例えば、液晶ディスプレイ、EL(Electro-Luminescence)パネル等であり、CPU21からの出力情報を表示する。操作部26は、例えば、押しボタン、タッチパネル等であり、利用者の操作を受け付ける。出力部27は、例えば、振動を出力するバイブレータ、音響あるいは音声を出力するスピーカ等である。撮像部28は、例えば、固体撮像素子を含むカメラである。固体撮像素子としては、CCD(Charge-coupled device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を利用できる。
【0028】
測位部29は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機であり、GPS
衛星からの電波を受信し、現在位置(緯度、経度等)、時刻等を算出する。ただし、測位部29としては、GPS受信機を有するものに限定される訳ではない。例えば、公衆回線通信部24が携帯電話網である場合には、測位部29は、携帯電話基地局からの距離を基に測位を実行してもよい。
【0029】
物理センサ部2Aは、例えば、加速度センサ、あるいは角加速度センサ等である。ただし、物理センサ部2Aは、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、または水圧センサであってもよい。
【0030】
〈動作例〉
本実施形態の計測システムの動作例について説明する。
【0031】
図4は、本実施形態の計測システムの動作フローの例を示す図である。本実施形態の計測システムの頭部装着装置10は、それぞれ、利用者(被験者)の頭部に装着されており、脳活動状態(脳血流量)を測定できる状態である。頭部装着装置10は、それぞれ、演算装置20に接続されている。頭部装着装置10のキャリブレーション等は既に行われているとする。
【0032】
S101では、演算装置20は、頭部装着装置10を装着した利用者にコントロールタスクを、所定時間、行わせる。コントロールタスクとは、利用者の脳活動のベースとなるタスク(作業、行動)である。コントロールタスクは、脳活動のベースラインを決定するタスクである。コントロールタスクとして、背外側前頭前野がほとんど賦活(活動)せず、かつ、利用者の認知状態を統一できるものが望ましい。背外側前頭前野は、認知機能を統合する役目を果たしていると言われており、ヒトの総合的な認知を司っている。背外側前頭前野の活動を測定することで、総合的な脳活動の評価を行うことができる。
【0033】
コントロールタスクは、利用者に何もさせないことであってもよいが、何もさせないときの脳活動状態の波形は安定しないことが多いため何らかのタスクを行わせることが望ましい。演算装置20は、コントロールタスクを行わせる際、表示部25の所定の情報を表示させ、出力部27に所定の音声を出力させて、利用者にコントロールタスクを行わせる。また、演算装置20は、コントロールタスクの開始の合図及び終了の合図としての情報
や音声の出力を、表示部25や出力部27を通じて行う。演算装置20は、コントロールタスクの開始の合図及び終了の合図の操作の入力を、操作部26を通じて、利用者等により受け付けてもよい。
【0034】
コントロールタスクの具体例として、ボタン押しタスク、物体追跡タスク、メディテーションタスク、指タップタスク等が挙げられる。ボタン押しタスクは、画面に表示される点滅するマークに合わせて、ボタンを押すタスクである。物体追跡タスクは、画面に表示されるランダムに移動するマークを目で追うタスクである。メディテーションタスクは、何らかのリズムに合わせて呼吸を行うタスクである。指タップタスクは、親指と人差し指とを任意のペースでタップするタスクである。これらをコントロールタスクとすることで、脳活動状態の検出値のベースラインを安定化させることができる。コントロールタスクは、これらに限定されるものではない。
【0035】
利用者にコントロールタスクを行わせている際、演算装置20は、頭部装着装置10に利用者の脳活動状態を測定させる。脳活動状態は、所定のサンプリング周波数で測定される。頭部装着装置10は、センサ115及び125により利用者の脳活動状態を測定し、無線通信部13を介して、当該脳活動状態を示す検出値を演算装置20に送信する。演算装置20は、無線通信部23を介して頭部装着装置10から脳活動状態を示す検出値(脳活動波形)を受信すると、メモリ22等の記憶手段に格納する。ここで、検出値は、測定された値そのものでもよいし、測定された値を演算装置20に送信しやすいように処理した情報でもよいし、又は一定期間に測定された値をまとめた情報などでもよい。検出値は、頭部装着装置10が頭部の血流変化を測定した値に基づいた値であればよい。脳活動状態を示す検出値は、時系列データとして、時刻情報、コントロールタスクの識別子、利用者の識別子と共に格納される。演算装置20は、常時、測定結果としての脳活動状態を示す検出値を取得し、コントロールタスクを行わせている間の脳活動状態を示す検出値を抽出してもよい。検出値(脳活動波形)は、例えば、脳血流量の時間変化、脳血流量の時間微分である。
【0036】
S102では、演算装置20は、頭部装着装置10を装着した利用者にユニットタスクを、所定時間、行わせる。ユニットタスクを行わせる所定時間は、コントロールタスクを行わせる所定時間と異なってもよい。ユニットタスクとは、脳活動における指標値の1単位分に相当する負荷を脳に与えるタスクである。ユニットタスクとして、利用者によらず認知負荷が一定であり、利用者のタスク慣れによる認知負荷の変動が小さいことが望ましい。利用者によらず認知負荷が一定であることで、ユニットタスク中の脳活動の大きさに差が存在しても、それらの脳活動は同じ認知負荷の下で生じたものとみなされる。利用者のタスク慣れによる認知負荷の変動が小さいタスクとすることで、指標と認知負荷との関係性が崩れることを防ぐことができる。また、ユニットタスクとして、利用者によらず背外側前頭前野を広く賦活させるタスクが望ましい。頭部装着装置10による脳活動状態の測定では、利用者に装着する毎にセンサの位置がずれるため、測定される脳部位もずれることになる。背外側前頭前野を広く賦活させることで、頭部装着装置10のセンサの位置のずれの影響を軽減することができる。演算装置20は、ユニットタスクを行わせる際、表示部25の所定の情報を表示させ、出力部27に所定の音声を出力させて、利用者にユニットタスクを行わせる。また、演算装置20は、ユニットタスクの開始の合図及び終了の合図としての情報や音声の出力を、表示部25や出力部27を通じて行う。演算装置20は、ユニットタスクの開始の合図及び終了の合図の操作の入力を、操作部26を通じて、利用者等により受け付けてもよい。
【0037】
ユニットタスクの具体例として、単語記憶・想起タスク、単純計算タスク、単語属性判定タスク、ストループタスク、Nバックタスク等が挙げられる。単語記憶・想起タスクは、連続的に表示される所定数(例えば10個)の単語を記憶し、できる限り正確に想起す
るタスクである。単純計算タスクは、1桁の四則演算を行うタスクである。単語属性判定タスクは、事前に提示されるルールに従って、その後表示される2つの単語の属性が一致するか否かを判定するタスクである。ストループタスクは、色を示す単語(例えば、赤、青)が提示され、その単語が書かれている文字の色を答えるタスク、または、単語の意味を答えるタスクである。Nバックタスクは、連続的に提示される数字を記憶し、N個前に提示された数字が現在提示されている数字と一致するか否かを判定するタスクである。ユニットタスクは、利用者の脳に一定の負荷をかけるタスクである。ユニットタスクの負荷は、コントロールタスクの負荷よりも大きい。ユニットタスクは、これらに限定されるものではない。上記の条件に適合する適切なコントロールタスク及びユニットタスクを選択することで、利用者の違い等に影響されない指標値を算出することができる。
【0038】
利用者にユニットタスクを行わせている際、演算装置20は、頭部装着装置10に利用者の脳活動状態を測定させる。ユニットタスクを行わせている際の脳活動状態の測定は、上記のコントロールタスクを行わせている際の脳活動状態の測定と同様である。
【0039】
S103では、演算装置20は、頭部装着装置10を装着した利用者に対象タスクを、所定時間、行わせる。対象タスクを行わせる所定時間は、コントロールタスクを行わせる所定時間、ユニットタスクを行わせる所定時間と異なってもよい。対象タスクとは、例えば、動画視聴、ゲームのプレイ、音楽鑑賞、運動、飲食、試験、瞑想、睡眠、ヨガ、アプリケーションのプレイなどである。対象タスクは、特定のアプリケーションにおける特定の行動であってもよい。アプリケーションには、例えば、脳トレーニングアプリケーションが含まれる。対象タスクは、これらに限定されるものではない。例えば、演算装置20は、動画視聴を行わせる際には、表示部25に動画を表示させ、出力部27に動画に伴う音声を出力させて、利用者に動画を視聴させる。また、演算装置20は、ゲームのプレイを行わせる際には、表示部25及び出力部27にゲーム用の画像や音声を出力させ、操作部26により利用者にゲームを操作させることにより、ゲームのプレイを行わせる。また、演算装置20は、対象タスクとしての所定の運動の開始の合図及び終了の合図を、画像や音声により表示部25や出力部27を通じて出力する。演算装置20は、対象タスクとしての所定の運動の開始の合図及び終了の合図の操作の入力を、操作部26を通じて、受け付けてもよい。
【0040】
利用者に対象タスクを行わせている際、演算装置20は、頭部装着装置10に利用者の脳活動状態を測定させる。対象タスクを行わせている際の脳活動状態の測定は、上記のコントロールタスクを行わせている際の脳活動状態の測定と同様である。
【0041】
S104では、演算装置20は、対象タスクの指標値を算出する。指標値は、コントロールタスク実行時の測定値と、ユニットタスク実行時の測定値との差分を基準とする、任意のタスクの実行時の脳活動量(賦活量)を定量的に評価するための値である。演算装置20のCPU21は、各タスクを行わせている際に測定した脳活動状態の検出値の平均値(時間平均値)を算出する。ここでは、各タスクの時間平均値を各タスクの測定値とする。測定値は、脳活動の度合いを示す値であり、測定値が大きいほど、脳が活発に活動していることを示す。CPU21は、次の式に基づいて、対象タスクの指標値を算出する。
【0042】
【0043】
対象タスクの指標値は、コントロールタスクの実行時に脳活動状態が非常に低い状態で
あるとすると、ユニットタスクの負荷に対する対象タスクの負荷の度合いを表す。指標値が大きいほど、対象タスクの負荷が、ユニットタスクに対して大きいことを表す。ここで、この式により、ユニットタスクの指標値は、1となる。
【0044】
CPU21は、算出した対象タスクの指標値をメモリ22等の記憶手段に格納する。また、CPU21は、表示部25や出力部27等により、算出した指標値を出力してもよい。
【0045】
S101、S102、S103の順序は入れ替わってもよい。例えば、利用者に対象タスクを最初に行わせてもよい。
【0046】
(実施形態の作用、効果)
本実施形態の計測システムにおいて、演算装置20は、利用者にコントロールタスク、ユニットタスク、対象タスクを行わせている際の脳活動状態を、頭部装着装置10によって測定する。演算装置20は、頭部装着装置10から送信される脳活動状態を取得する。演算装置20は、測定された各タスクの脳活動状態の測定値に基づいて、対象タスクの指標値を算出する。指標値は、コントロールタスクの測定値及びユニットタスクの測定値によって規格化されている。
【0047】
認知負荷であるタスクを実行した場合でも、個人差や頭部装着装置10の装着位置の違いなどにより、脳活動状態の測定値が異なることがある。本実施形態の指標値を用いることにより、現在と過去との間や利用者間での、タスクの負荷の比較が、可能となる。ユニットタスクの測定値及びコントロールタスクの測定値で規格化された指標値は、定量的な指標となる。即ち、ここで求める対象タスクの指標値は、脳活動状態の検出値の、過去と現在との間、利用者間、頭部装着装置10の装着位置等によるばらつきの影響を排除して、比較することができる。よって、任意の対象タスクを実行した際の認知負荷を定量的に評価することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 頭部装着装置
11 制御部
13 無線通信部
115 センサ
125 センサ
20 演算装置
21 CPU
22 メモリ
23 無線通信部
24 公衆回線通信部
25 表示部
26 操作部
27 出力部
28 撮像部
29 測位部
2A 物理センサ部