(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】開創器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
A61B17/02
(21)【出願番号】P 2017217400
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】593174870
【氏名又は名称】高島産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】本郷 一博
(72)【発明者】
【氏名】堀内 哲吉
(72)【発明者】
【氏名】伊東 清志
(72)【発明者】
【氏名】堤 圭治
(72)【発明者】
【氏名】笠原 賢一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 淳
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-237398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0060194(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0043592(US,A1)
【文献】特表2006-515791(JP,A)
【文献】特開2003-164459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術中に切開された切開創を広げた状態で保持するための開創器であって、
前記切開創に挿入される挿入部を有し形状記憶合金で形成されるとともに棒状または管状に形成される2本の挿入部材と、2本の前記挿入部材と別体で形成され2本の前記挿入部材の一端部を連結する第1連結部材と、2本の前記挿入部材と別体で形成され2本の前記挿入部材の他端部を連結する第2連結部材とを備え、
前記挿入部材の変態点は、常温よりも低い温度となっており、
2本の前記挿入部材は、常温環境下において、2個の前記挿入部の間の少なくとも一部の間隔が広がっている開状態となっているとともに、2個の前記挿入部が前記切開創に挿入される前に、常温環境下で、2個の前記挿入部の間隔が狭まって2個の前記挿入部が互いに近づいた状態となる閉状態に弾性変形させられることを特徴とする開創器。
【請求項2】
前記挿入部材は、棒状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の開創器。
【請求項3】
前記挿入部材は、前記第1連結部材に固定される直線状の第1被固定部と、前記第2連結部材に固定される直線状の第2被固定部とを備え、
前記第1被固定部は
、前記挿入部の一端に繋がり、
前記第2被固定部は
、前記挿入部の他端に繋が
り、
前記挿入部と前記第1被固定部とがなす角度、および、前記挿入部と前記第2被固定部とがなす角度は、90°であり、
前記第1被固定部と前記第2被固定部とは、前記挿入部から同方向に伸びていることを特徴とする請求項1または2記載の開創器。
【請求項4】
前記開状態の2本の前記挿入部材を前記閉状態とするための摘み部を備え、
前記摘み部は、2本の前記挿入部材のうちの一方の前記挿入部材の前記挿入部に固定される第1摘み部材と、他方の前記挿入部材の前記挿入部に固定される第2摘み部材とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の開創器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術中に切開された切開創を広げた状態で保持するための開創器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切開手術を行う際に切開創を広げた状態で保持するための開創器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の開創器は、薄肉の板状体によって構成されている。また、この開創器は、長方形の弾性板に曲げ加工を施すことで形成されており、大径の円筒状に形成されている。この開創器を切開創に装着する際には、手術を行う者や手術を補助する者が、板状体の弾性力に抗して開創器を小径の円筒状に丸め込むとともに丸め込んだ開創器を手で持って切開創に挿入する。切開創に挿入された開創器から手を離すと、板状体の弾性力で開創器が拡径して、切開創の広がった状態が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切開手術を効率的かつ適切に行うためには、手術が行われる患部や手術内容等に応じて、切開創を意図した形に広げた状態で保持することが好ましい。特許文献1に記載の開創器では、切開創を円形状に広げた状態で保持することは可能であるが、切開創をその他の形状に広げた状態で保持することはできない。すなわち、特許文献1に記載の開創器では、必ずしも切開創を意図した形に広げた状態で保持することはできない。また、特許文献1に記載の開創器では、開創器を円筒状に丸め込んだ状態で切開創に挿入するため、切開創に開創器を挿入する際に切開創をある程度広げないと、切開創に開創器を挿入することができない。そのため、特許文献1の開創器の場合、切開創へ開創器を挿入しにくい。
【0005】
そこで、本発明の課題は、切開創を意図した形に広げた状態で保持することが可能であって、かつ、切開創への挿入を比較的容易に行うことが可能な開創器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の開創器は、手術中に切開された切開創を広げた状態で保持するための開創器であって、切開創に挿入される挿入部を有し形状記憶合金で形成されるとともに棒状または管状に形成される2本の挿入部材と、2本の挿入部材と別体で形成され2本の挿入部材の一端部を連結する第1連結部材と、2本の挿入部材と別体で形成され2本の挿入部材の他端部を連結する第2連結部材とを備え、挿入部材の変態点は、常温よりも低い温度となっており、2本の挿入部材は、常温環境下において、2個の挿入部の間の少なくとも一部の間隔が広がっている開状態となっているとともに、2個の挿入部が切開創に挿入される前に、常温環境下で、2個の挿入部の間隔が狭まって2個の挿入部が互いに近づいた状態となる閉状態に弾性変形させられることを特徴とする。
【0007】
本発明の開創器では、形状記憶合金で形成されるとともに棒状または管状に形成される2本の挿入部材が、切開創に挿入される挿入部を備えている。また、本発明では、挿入部材の変態点は、常温よりも低い温度となっており、2本の挿入部材は、常温環境下において、2個の挿入部の間の少なくとも一部の間隔が広がっている開状態となっている。そのため、本発明では、切開創に挿入される2個の挿入部によって切開創を広げた状態で保持することが可能になる。また、本発明では、変態点が常温よりも低い形状記憶合金によって棒状または管状の挿入部材が形成されているため、常温環境下で2本の挿入部材が開状態となっているときの2個の挿入部の形状を、患部や手術内容等に応じて様々な形状にすることが可能になる。したがって、本発明では、切開創に挿入される2個の挿入部によって切開創を意図した形に広げた状態で保持することが可能になる。
【0008】
また、本発明では、2個の挿入部が切開創に挿入される前に、2本の挿入部材は、2個の挿入部の間隔が狭まって2個の挿入部が互いに近づいた状態となる閉状態に弾性変形させられているが、本発明では、棒状または管状に形成される2本の挿入部材の一端部が挿入部材と別体で形成された第1連結部材に固定されるとともに、2本の挿入部材の他端部が挿入部材と別体で形成された第2連結部材に固定されているため、2本の挿入部材が閉状態になっているときの2個の挿入部の幅(2個の挿入部が隣接する方向の幅)を狭めることが可能になる。したがって、本発明では、2個の挿入部が隣接する方向において幅が狭くなっている2個の挿入部を切開創に挿入することが可能になる。そのため、本発明では、2個の挿入部を切開創に挿入する際に切開創をそれほど広げなくても、2個の挿入部を切開創に挿入することが可能になる。その結果、本発明では、2個の挿入部の切開創への挿入を比較的容易に行うことが可能になる。
【0009】
また、本発明では、棒状または管状に形成される2本の挿入部材の一端部が挿入部材と別体で形成された第1連結部材に固定されるとともに、2本の挿入部材の他端部が挿入部材と別体で形成された第2連結部材に固定されているため、2個の挿入部が切開創に挿入されている開状態の2本の挿入部材を比較的容易に閉状態とすることが可能になる。したがって、本発明では、2個の挿入部を切開創から容易に抜き去ることが可能になる。
【0010】
本発明において、挿入部材は、棒状に形成されていることが好ましい。棒状の挿入部材の挿入部によって切開創を広げた状態で保持する保持力と、管状の挿入部材の挿入部によって切開創を広げた状態で保持する保持力とを同じにする場合には、棒状の挿入部材の外径よりも管状の挿入部材の外径を大きくする必要がある。そのため、挿入部材が棒状に形成されていると、挿入部材の外径を小さくしつつ、挿入部によって切開創を広げた状態で保持する保持力を確保することが可能になる。
【0011】
本発明において、挿入部材は、第1連結部材に固定される直線状の第1被固定部と、第2連結部材に固定される直線状の第2被固定部とを備え、第1被固定部は、挿入部の一端に繋がり、第2被固定部は、挿入部の他端に繋がり、挿入部と第1被固定部とがなす角度、および、挿入部と第2被固定部とがなす角度は、90°であり、第1被固定部と第2被固定部とは、挿入部から同方向に伸びていることが好ましい。このように構成すると、2個の挿入部を切開創に挿入する際に、第1連結部材および第2連結部材を切開創から遠ざけることが可能になる。したがって、2本の挿入部材が第1連結部材および第2連結部材によって連結されていても、2個の挿入部の切開創への挿入を容易に行うことが可能になる。
【0012】
本発明において、開創器は、開状態の2本の挿入部材を閉状態とするための摘み部を備え、摘み部は、2本の挿入部材のうちの一方の挿入部材の挿入部に固定される第1摘み部材と、他方の挿入部材の挿入部に固定される第2摘み部材とを備えることが好ましい。このように構成すると、たとえば、開状態の2本の挿入部材を閉状態に弾性変形させる治具を使用しなくても、摘み部を用いて、開状態の2本の挿入部材を閉状態に弾性変形させることが可能になる。したがって、開状態の2本の挿入部材を閉状態に容易に弾性変形させることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の開創器では、切開創を意図した形に広げた状態で保持することが可能になるとともに、開創器の挿入部の、切開創への挿入を比較的容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる開創器の斜視図である。
【
図2】
図1に示す開創器を切開創に装着する手順を説明するための図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態にかかる開創器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(開創器の構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる開創器1の斜視図である。
図2は、
図1示す開創器1を切開創2に装着する手順を説明するための図である。
【0017】
本形態の開創器1は、手術中に切開された患者の切開創2を広げた状態で保持するための器具である。開創器1は、切開創2に挿入される挿入部3aを有する棒状の2本の挿入部材3と、2本の挿入部材3と別体で形成され2本の挿入部材3の一端部を連結する第1連結部材としての連結部材4と、2本の挿入部材3と別体で形成され2本の挿入部材3の他端部を連結する第2連結部材としての連結部材5とを備えている。連結部材4と連結部材5とは、生体毒性の少ない(または生体毒性のない)金属材料で形成されるとともに同形状に形成されている。連結部材4、5は、直方体状に形成されている。また、連結部材4、5は、たとえば、ステンレス鋼で形成されている。なお、連結部材4、5は、チタン合金で形成されていても良いし、タングステンカーバイトで形成されていても良い。
【0018】
挿入部材3は、ニッケルチタン合金等の形状記憶合金で形成されている。また、挿入部材3は、断面形状が円形状となる細長い円柱状の棒材が所定形状に曲げられることで形成されている。挿入部材3の外径は、たとえば、2.5(mm)~3(mm)程度となっている。挿入部材3は、挿入部3aに加えて、連結部材4に固定される第1被固定部としての被固定部3bと、連結部材5に固定される第2被固定部としての被固定部3cとを備えている。被固定部3bと被固定部3cとは、同形状の直線状に形成されている。本形態の挿入部材3は、挿入部3aと被固定部3b、3cとから構成されている。被固定部3bは、挿入部3aに対して90°に折れ曲がった状態で挿入部3aの一端に繋がっている。被固定部3cは、挿入部3aに対して被固定部3bと同方向に90°に折れ曲がった状態で挿入部3aの他端に繋がっている。
【0019】
被固定部3bは、連結部材4に形成される貫通穴に挿入された状態で複数のネジ6によって連結部材4に固定されている。同様に被固定部3cは、連結部材5に形成される貫通穴に挿入された状態で複数のネジ6によって連結部材5に固定されている。また、2個の被固定部3bは、一定の間隔をあけた状態で連結部材4に固定され、2個の被固定部3cは、2個の被固定部3bと同じ方向において同じ間隔をあけた状態で連結部材5に固定されている。なお、被固定部3b、3cは、溶接またはろう付けによって連結部材4、5に固定されていても良い。
【0020】
形状記憶合金で形成される挿入部材3の変態点は、常温よりも低い温度となっている。すなわち、挿入部材3は、超弾性合金で形成されている。2本の挿入部材3は、挿入部材3の変態点を超える温度環境下において、2個の挿入部3aの間の少なくとも一部の間隔が広がっている開状態となっている(
図1(A)参照)。すなわち、2本の挿入部材3は、常温環境下において、開状態となっている。また、常温環境下において、挿入部3aは、たとえば、
図1(A)に示すように、全体的に円弧状に湾曲しており、2本の挿入部材3が開状態となっているときには、2個の挿入部3aのほぼ全体によって楕円形が形成されている。または、常温環境下において、挿入部3aの一部が円弧状に湾曲しており、2本の挿入部材3が開状態となっているときには、2個の挿入部3aの一部によって楕円形が形成されている。
【0021】
あるいは、2本の挿入部材3が開状態となっているときには、たとえば、2個の挿入部3aのほぼ全体によって円形が形成されたり、2個の挿入部3aの一部によって円形が形成されたりする。または、2本の挿入部材3が開状態となっているときには、たとえば、2個の挿入部3aのほぼ全体によって正方形等の四角形や四角形以外の多角形が形成されたり、2個の挿入部3aの一部によって正方形等の四角形や四角形以外の多角形が形成されたりする。
【0022】
2本の挿入部材3は、2個の挿入部3aが切開創2に挿入される前に、常温環境下で、2個の挿入部3aの間隔が狭まって2個の挿入部3aが互いに近づいた状態となる閉状態に弾性変形させられる(
図1(B)参照)。本形態では、
図1(B)に示すように、挿入部3aが略直線状となって閉状態の2本の挿入部材3が互いに略平行になるように、所定の治具(図示省略)を使用して手作業で、開状態の2本の挿入部材3を閉状態に弾性変形させる。
【0023】
切開創2には、治具によって弾性変形させられて2本の挿入部材3が閉状態となっているときの、2個の挿入部3aが挿入される(
図2(A)、(B)参照)。閉状態の2本の挿入部材3の挿入部3aが切開創2に挿入されると、治具が取り外される。挿入部材3の変態点が常温よりも低い温度となっているため、2個の挿入部3aが切開創2に挿入された後に治具が取り外されると、2本の挿入部材3は開状態となり、
図2(C)に示すように、2個の挿入部3aが切開創2を広げた状態で保持する。
【0024】
なお、本形態では、挿入部材3に加工される前の、形状記憶合金製の直線状の棒材の変態点は、常温よりも低い温度となっている。開創器1を製造する際には、まず、この棒材を常温環境下で容易かつ任意の形状に曲げられるように(すなわち、棒材の変態点が常温を超える温度となるように)、この棒材に対して熱処理を行う。熱処理後、被固定部3b、3cが形成されるように2本の棒材を曲げるとともに2本の棒材を連結部材4、5に固定する。その後、2個の挿入部3aによって切開創2を意図した形に広げた状態で保持することが可能となる挿入部3aの最適な形状が形成されるように所定の治具を用いて2本の棒材を曲げるとともに曲げられた2本の棒材を治具に固定し、その状態で、棒材の変態点が常温よりも低い温度となるように、棒材に対して再度、熱処理を行う。この熱処理が完了すると、2本の挿入部材3が常温環境下で開状態となって、開創器1が完成する。
【0025】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、形状記憶合金で形成される挿入部材3の変態点は、常温よりも低い温度となっており、棒状に形成される2本の挿入部材3は、常温環境下において2個の挿入部3aの間の少なくとも一部の間隔が広がっている開状態となっている。そのため、本形態では、常温環境下で2本の挿入部材3が開状態となっているときの2個の挿入部3aの形状を、患部や手術内容等に応じて様々な形状にすることが可能になる。たとえば、上述のように、2本の挿入部材3が開状態となっているときの2個の挿入部3aのほぼ全体または一部によって楕円形、円形または多角形を形成することが可能になる。また、本形態では、閉状態の2本の挿入部材3の挿入部3aが切開創2に挿入されると、2本の挿入部材3が開状態となって、2個の挿入部3aが切開創2を広げた状態で保持する。そのため、本形態では、切開創2に挿入される2個の挿入部3aによって切開創2を意図した形に広げた状態で保持することが可能になる。
【0026】
本形態では、2個の挿入部3aが切開創に挿入される前に、2本の挿入部材3は、2個の挿入部3aの間隔が狭まって2個の挿入部3aが互いに近づいた状態となる閉状態に弾性変形させられているが、本形態では、棒状に形成される2本の挿入部材3の一端部が挿入部材3と別体で形成された連結部材4に固定されるとともに、2本の挿入部材4の他端部が挿入部材3と別体で形成された連結部材5に固定されているため、2本の挿入部材3が閉状態になっているときの2個の挿入部3aの幅(2個の挿入部3aが隣接する方向の幅、
図2(B)の上下方向の幅)を狭めることが可能になる。したがって、本形態では、2個の挿入部3aが隣接する方向において幅が狭くなっている2個の挿入部3aを切開創2に挿入することが可能になる。そのため、本形態では、2個の挿入部3aを切開創2に挿入する際に切開創2をそれほど広げなくても、2個の挿入部3aを切開創2に挿入することが可能になる。その結果、本形態では、2個の挿入部3aの切開創2への挿入を比較的容易に行うことが可能になる。
【0027】
また、本形態では、棒状に形成される2本の挿入部材3の一端部が挿入部材3と別体で形成された連結部材4に固定されるとともに、2本の挿入部材4の他端部が挿入部材3と別体で形成された連結部材5に固定されているため、2個の挿入部3aが切開創2に挿入されている開状態の2本の挿入部材3を、治具を用いて比較的容易に閉状態とすることが可能になる。したがって、本形態では、2個の挿入部3aを切開創2から容易に抜き去ることが可能になる。
【0028】
本形態では、挿入部3aに対して90°に折れ曲がった状態で挿入部3aの一端に繋がる被固定部3bが連結部材4に固定され、挿入部3aに対して被固定部3bと同方向に90°に折れ曲がった状態で挿入部3aの他端に繋がる被固定部3cが連結部材5に固定されている。そのため、本形態では、2個の挿入部3aを切開創2に挿入する際に、連結部材4、5を切開創2から遠ざけることが可能になる。したがって、本形態では、2本の挿入部材3が連結部材4、5によって連結されていても、2個の挿入部3aの切開創2への挿入を容易に行うことが可能になる。
【0029】
(他の実施の形態)
上述した形態において、挿入部材3は、断面形状が多角形状となる細長い角柱状の棒材が所定形状に曲げられることで形成されていても良い。また、挿入部材3は、円管状等の管状に形成されていても良い。ただし、棒状の挿入部材3の挿入部3aによって切開創2を広げた状態で保持する保持力と、管状の挿入部材3の挿入部3aによって切開創2を広げた状態で保持する保持力とを同じにする場合には、棒状の挿入部材3の外径よりも管状の挿入部材3の外径を大きくする必要がある。そのため、上述した形態では、挿入部材3の外径を小さくしつつ、挿入部3aによって切開創2を広げた状態で保持する保持力を確保することが可能になる。
【0030】
上述した形態において、開創器1は、
図3に示すように、開状態の2本の挿入部材3を閉状態とするための摘み部7を備えていても良い。摘み部7は、2本の挿入部材3のうちの一方の挿入部材3の挿入部3aに固定される第1摘み部材としての摘み部材8と、他方の挿入部材3の挿入部3aに固定される第2摘み部材としての摘み部材9とを備えている。摘み部材8、9は、長方形の平板状に形成されるとともに同形状に形成されている。摘み部材8と摘み部材9とは、互い平行になるように配置されている。摘み部材8には、摘み部材8と摘み部材9とが近づく方向および摘み部材8と摘み部材9とが離れる方向へ摘み部材8、9を案内するための2本のガイド軸10が固定され、摘み部材9には、2本のガイド軸10が挿通される貫通穴9aが形成されている。
【0031】
この場合には、摘み部材8と摘み部材9とが近づくように摘み部7を摘むことで、常温環境下で、開状態の2本の挿入部材3を閉状態に変形させることが可能になる。すなわち、開状態の2本の挿入部材3を閉状態に変形させる治具を使用しなくても、摘み部7を用いて開状態の2本の挿入部材3を閉状態に変形させることが可能になる。したがって、2個の挿入部3aが切開創2に挿入される前に、開状態の2本の挿入部材3を閉状態に容易に弾性変形させることが可能になる。また、2個の挿入部3aが切開創2に挿入されている開状態の2本の挿入部材3を容易に閉状態とすることが可能になる。
【0032】
上述した形態において、2本の挿入部材3が閉状態となっているときに、挿入部3aが湾曲していても良い。すなわち、2本の挿入部材3が閉状態となっているときに、閉状態の2本の挿入部材3が互いに略平行になっていなくても良い。また、上述した形態において、挿入部材3は、被固定部3b、3cを備えていなくても良い。この場合には、挿入部材3は、挿入部3aによって構成されており、挿入部3aの一端部が連結部材4に固定されるとともに、挿入部3aの他端部が連結部材5に固定されている。
【符号の説明】
【0033】
1 開創器
2 切開創
3 挿入部材
3a 挿入部
3b 被固定部(第1被固定部)
3c 被固定部(第2被固定部)
4 連結部材(第1連結部材)
5 連結部材(第2連結部材)
7 摘み部
8 摘み部材(第1摘み部材)
9 摘み部材(第2摘み部材)