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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】貯蔵タンク及び温度制御装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/00 20060101AFI20220207BHJP
   B65D 88/06 20060101ALI20220207BHJP
   F24H 9/00 20220101ALI20220207BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20220207BHJP
【FI】
B65D90/00 H
B65D88/06 Z
F24H9/00 E
F24H1/18 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017192398
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2019064701
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(72)【発明者】
【氏名】関 篤史
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-70524(JP,A)
【文献】特表2016-517349(JP,A)
【文献】特開2013-105359(JP,A)
【文献】特開昭58-72838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00-90/66
F24H 9/00
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する流入口及び流体が流出する流出口を有し、前記流体を貯蔵するタンク本体と、
前記タンク本体の内部に設けられ、前記流入口から流入する流体の流入方向及び前記流出口から流出する流体の流出方向の少なくとも一方と交差するように互いに間隔を隔てて配置された複数の板状部材を有し、前記流入口から流入する流体及び前記流出口から流出する流体の少なくとも一方を流通させる流通口が開口された拡散部材とを備え、
前記複数の板状部材のうち、隣接する2つの板状部材の流通口は、前記流体の流入方向及び流出方向の少なくとも一方に沿って当該流通口の径が大きくなる組み合わせと、前記流体の流入方向及び流出方向の少なくとも一方に沿って当該流通口の径が小さくなる組み合わせの双方を有する貯蔵タンク。
【請求項2】
前記複数の板状部材のうち、前記流入口又は前記流出口から最も離間した板状部材には、前記流通口が開口されていない請求項1に記載の貯蔵タンク。
【請求項3】
前記複数の板状部材のうち、前記流入口又は前記流出口から最も離間した板状部材には、前記流通口が開口された前記板状部材とは異なる位置に前記流通口が開口されている請求項1に記載の貯蔵タンク。
【請求項4】
前記複数の板状部材は、前記流入口から流入する流体の流入方向又は前記流出口から流出する流体の流出方向の少なくとも一方と直交するように配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の貯蔵タンク。
【請求項5】
前記拡散部材は、前記流入口及び流出口の双方にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の貯蔵タンク。
【請求項6】
混合比が調整された低温側流体及び高温側流体からなる温度制御用流体が流れる温度制御用流路を有する温度制御手段と、
低温側の予め定められた第1の温度に調整された前記低温側流体を供給する第1の供給手段と、
高温側の予め定められた第2の温度に調整された前記高温側流体を供給する第2の供給手段と、
前記第1の供給手段と前記第2の供給手段に接続され、前記第1の供給手段から供給される前記低温側流体と前記第2の供給手段から供給される前記高温側流体とを混合して前記温度制御用流路に供給する混合手段と、
前記温度制御用流路を流通した温度制御用流体を前記第1の供給手段と前記第2の供給手段に流量を制御しつつ分配する流量制御弁と、
前記低温側流体を貯蔵する第1の貯蔵タンクと、
前記高温側流体を貯蔵する第2の貯蔵タンクと、
を備え、
前記第1及び第2の貯蔵タンクとして、請求項1乃至5のいずれかに記載の貯蔵タンクを用いたことを特徴とする温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンク及び温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度制御装置などにおいては、温度が制御された流体を一時的に貯蔵するために貯蔵タンクが使用される場合がある。かかる貯蔵タンクに関連する技術としては、例えば、特許文献1等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、噴出手段の構造を簡素化し、貯湯タンクに貯める湯の拡散性を向上することを目的として、水を加熱し、湯にする加熱装置と、前記加熱装置の湯水を循環する循環ポンプと、前記循環ポンプにより湯水を搬送する配管と、前記配管から搬送される湯水を切り替える三方弁と、前記三方弁により湯水を貯える貯湯タンクとを備え、前記貯湯タンク内に湯水を面状均一に流入する噴出手段を配設したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-24986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、流体が流入又は流出するタンク本体の内部における流体の温度を均一化させた貯蔵タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、流体が流入する流入口及び流体が流出する流出口を有し、前記流体を貯蔵するタンク本体と、
前記タンク本体の内部に設けられ、前記流入口から流入する流体の流入方向及び前記流出口から流出する流体の流出方向の少なくとも一方と交差するように互いに間隔を隔てて配置された複数の板状部材を有し、前記流入口から流入する流体及び前記流出口から流出する流体の少なくとも一方を流通させる流通口が開口された拡散部材とを備え
前記複数の板状部材のうち、隣接する2つの板状部材の流通口は、前記流体の流入方向及び流出方向の少なくとも一方に沿って当該流通口の径が大きくなる組み合わせと、前記流体の流入方向及び流出方向の少なくとも一方に沿って当該流通口の径が小さくなる組み合わせの双方を有する貯蔵タンクである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、前記複数の板状部材のうち、前記流入口又は前記流出口から最も離間した板状部材には、前記流通口が開口されていない請求項1に記載の貯蔵タンクである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、前記複数の板状部材のうち、前記流入口又は前記流出口から最も離間した板状部材には、前記流通口が開口された前記板状部材とは異なる位置に前記流通口が開口されている請求項1に記載の貯蔵タンクである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、前記複数の板状部材は、前記流入口から流入する流体の流入方向又は前記流出口から流出する流体の流出方向の少なくとも一方と直交するように配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の貯蔵タンクである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、前記拡散部材は、前記流入口及び流出口の双方にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の貯蔵タンクである。
【0013】
請求項6に記載された発明は、混合比が調整された低温側流体及び高温側流体からなる温度制御用流体が流れる温度制御用流路を有する温度制御手段と、
低温側の予め定められた第1の温度に調整された前記低温側流体を供給する第1の供給手段と、
高温側の予め定められた第2の温度に調整された前記高温側流体を供給する第2の供給手段と、
前記第1の供給手段と前記第2の供給手段に接続され、前記第1の供給手段から供給される前記低温側流体と前記第2の供給手段から供給される前記高温側流体とを混合して前記温度制御用流路に供給する混合手段と、
前記温度制御用流路を流通した温度制御用流体を前記第1の供給手段と前記第2の供給手段に流量を制御しつつ分配する流量制御弁と、
前記低温側流体を貯蔵する第1の貯蔵タンクと、
前記高温側流体を貯蔵する第2の貯蔵タンクと、
を備え、
前記第1及び第2の貯蔵タンクとして、請求項1乃至5のいずれかに記載の貯蔵タンクを用いたことを特徴とする温度制御装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体が流入又は流出するタンク本体の内部における流体の温度を均一化させた貯蔵タンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る貯蔵タンクを示す断面構成図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る貯蔵タンクの要部を示す斜視構成図である。
図3】拡散部材を示す構成図である。
図4】拡散部材の他の例を示す構成図である。
図5】拡散部材の他の例を示す構成図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る貯蔵タンクの作用を示す断面構成図である。
図7】拡散部材の作用を示す斜視構成図である。
図8】本発明の実施の形態1に係る貯蔵タンクを適用したチラー装置を示す構成図である。
図9】本発明の実施の形態2に係る貯蔵タンクを示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る貯蔵タンクを示す断面構成図、図2は貯蔵タンクの要部を示す拡大斜視図である。
【0018】
貯蔵タンク1は、図1に示すように、上下方向に沿った両端部がそれぞれ閉塞された略円筒形状に形成されたタンク本体2を備えている。タンク本体2は、円筒形状に形成された円筒部3と、円筒部3の上下方向に沿った両端部にそれぞれ配置された外側に向けて凸型に湾曲した円板状の鏡板部4,5とから密閉された状態で構成されている。円筒部3と鏡板部4,5は、例えば、溶接等の手段により一体的に接続されてタンク本体2を構成している。なお、タンク本体2の外周は、図示しない断熱材によって被覆されるか、又はタンク本体2を二重に構成し中間の中空層を真空状態にして断熱処理が施される。
【0019】
タンク本体2の下端部には、貯蔵タンク1に流体を流入させるL字形状に形成された流入管6が接続されている。流入管6は、タンク本体に溶接等の手段で固定された流入側の接続管7に外部連通管8を介して螺合等の手段により接続され固定されている。
【0020】
タンク本体2の内部には、流入側の接続管7に螺合等の手段により接続固定された内部連通管9を介して流入側の拡散部材10が設けられている。流入側の拡散部材10は、流入管6からタンク本体2の内部に流入する流体を拡散させて、タンク本体2の内部に存在する流体11と均一になるよう混合するための部材である。拡散部材10は、図2に示すように、流入管9からタンク本体2の内部に流入する流体の流入方向(図中、上下方向)と交差する方向(図示例では、直交する方向)に互いに間隙を介して配置された複数(図示例では6つ)の板状部材である拡散板12~12を備えている。拡散板12~12の数は、特に限定されるものではないが、流体の拡散性を考慮すると、5~10枚程度設けるのが望ましい。各拡散板12~12は、図3に示されるように、ステンレス等の金属や耐熱性を有する合成樹脂等によって円板状に形成されている。また、各拡散板12~12の中央には、流入管から流入する流体を挿通させる挿通口の一例としての流路用孔13~13が開口されている。ただし、複数の拡散板12~12のうち、流入管9から最も離間した拡散板12には、流路用孔13が開口されておらず閉塞されている。なお、複数の拡散板12~12のうち、流入管9から最も離間した拡散板12には、図3(c)に示すように、他の拡散板12~12と異なる位置、例えば、中心から半径方向外方向に向けて半径よりも短いスリット状の流路用孔13aを互いに90度の角度を成す位置に開口しても良い。流路用孔13aの位置は、他の拡散板12~12と異なる位置であれば、図3(c)に示す以外の位置に設けても良い。さらに、各拡散板12~12の外周には、複数の拡散板12~12を互いに固定するための複数(図示例では、4つ)の固定用ネジ孔14~14が開口されている。
【0021】
各拡散板12~12に開口される流路用孔13~13は、すべて同一の直径を有するように設定されている。各拡散板12~12の流路用孔13~13は、例えば、内部連通管9の内径と等しい直径を有するように構成される。また、各拡散板12~12に開口される流路用孔13~13は、すべて同一の直径を有するように設定するのではなく、図4(a)に示されるように、流入管9に最も近接した位置から離間するに従って徐々に直径が小さくなるように設定しても良い。さらに、各拡散板12~12に開口される流路用孔13~13は、図4(b)に示されるように、流入管9に最も近接した位置から離間するに従って徐々に直径が大きくなるように設定しても良い。また、各拡散板12~12に開口される流路用孔13~13は、図5に示されるように、直径が大きい流路用孔13,13,12と直径が小さい流路用孔13,13とが交互に配置されるように構成しても良い。
【0022】
複数の拡散板12~12は、図2及ぶ図3に示すように、固定用ネジ孔14~14に挿通されて締結されたボルト14及びナット15と、各拡散板12~12の間に介在された間隙設定部材としての円筒形状のカラー部材16を介して互いに一定の間隙を介して平行に配置されるように固定されている。また、上述したように、複数の拡散板12~12のうち、流入管9に最も離間した拡散板12としては、図3(b)に示すように、流路用孔13が開口されておらず閉塞されたものが配置されている。
【0023】
また、拡散部材10には、流入管9に最も近接した位置に拡散板12~12と同一形状であって肉厚に形成された基盤17が設けられている。基盤17は、内部連通管9にネジ止めや溶接等の手段で固定されている。
【0024】
一方、タンク本体2の上端部には、図1に示すように、タンク本体2に貯蔵された流体を外部に流出させる流出管18が設けられている。流出管18は、外部連通管19を介してタンク本体2の上端部に設けられた流出側の接続管20に螺合等の手段により接続され固定されている。タンク本体2内の上端部には、内部連通管21を介して流出側の拡散部材22が設けられている。流出側の拡散部材22は、流入側の拡散部材10と同様に構成されている。拡散部材10,22は、タンク本体2の流入側及び流出側の少なくとも一方に設ければ良いが、タンク本体2に流入する流体及びタンク本体2から流出する流体の拡散性をより一層向上させるためには、拡散部材10,22をタンク本体2の流入側及び流出側の双方に設けるのが望ましい。なお、タンク本体2の流入側における流体の流量のばらつきを解消するためには、拡散部材10を少なくともタンク本体2の流入側に設けるのが望ましい。
【0025】
貯蔵タンク1の内部に貯蔵される流体11としては、特に限定されるものではなく、水等の液体や気体などであっても良い。貯蔵タンク1の内部に貯蔵される流体11としては、例えば、温度制御装置(チラー装置)に使用される-30~+120℃程度の温度範囲において使用可能なフロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体やエチレングリコール等の熱媒体(ブライン)が挙げられる。また、貯蔵タンク1の内部に貯蔵される流体11としては、温度範囲が+5~+80℃程度であれば、水(純水)なども好適に使用することができる。
【0026】
また、貯蔵タンク1の容積は、特に限定されるものではなく、例えば、20L程度に設定されるが、目的に応じてこれより大きくても小さくても良いことは勿論である。
【0027】
<貯蔵タンクの作用>
本実施の形態1に係る貯蔵タンク1では、図1に示されるように、タンク本体2の内部に所要温度の流体11が貯蔵されている。タンク本体2の内部には、例えば、流入管6からタンク本体2の内部に貯蔵された流体11より温度が高い流体が流入する。
【0028】
流入管6からタンク本体2の内部に流入した流体は、内部連通管9を介して拡散部材10へと到達する。拡散部材10へと到達した流体は、図6及び図7に示すように、複数の拡散板12~12に開口された流路用孔13~13を介して流入管6から離間した拡散板12~12へと次第に流れる。その際、各拡散板12~12の間には、タンク本体2の内部に貯蔵された所要温度の流体11が存在する。そのため、流路用孔13~13を介して流入管9から離間した拡散板12~12へと次第に流れる流体は、各拡散板の流路用孔13~13を通過する毎に、タンク本体2の内部に既に貯蔵された所要温度の流体11と混合されつつ、一部が各拡散板12~12の表面に平行な方向(図示例では、水平方向)に移動する。そして、複数の拡散板12~12の流路用孔13~13を通過して流路用孔13が開口されていない最後の拡散板13に到達して流体は、当該最後の拡散板13の表面に平行な方向(図示例では、水平方向)に移動してタンク本体2の内部に既に貯蔵された所要温度の流体11と混合される。
【0029】
このように、本実施の形態1に係る貯蔵タンク1では、流入管6から流入する流体が複数の拡散板12~12の流路用孔13~13を通過する間に、タンク本体2の内部に既に貯蔵された所要温度の流体11と混合されつつ、一部が各拡散板12~12の表面に平行な方向(図示例では、水平方向)に移動して拡散し、拡散部材10の周囲に存在する貯蔵流体11と混合される。そのため、本実施の形態1に係る貯蔵タンク1では、拡散部材10を設けない貯蔵タンクと比較して、流入管6からタンク本体2の内部に流入する流体の拡散性を向上させることができ、タンク本体2内の流体11の温度を均一化することができる。
【0030】
一方、タンク本体2の内部から流出管18によって流出する流体は、タンク本体2の内部から拡散部材22を介して流出管18に連結された内部連通管21へと到達する。その際、タンク本体2の内部から拡散部材22へと到達した流体は、流出管18から流体の流出に伴って圧力が低下する複数の拡散板12~12に開口された流路用孔13~13へと流入する。このとき、タンク本体2の内部の流体11は、複数の拡散板12~12の表面に沿った方向に各拡散板12~12の間隙へと流入し、各拡散板12~12の流路用孔13~13を通過して内部連通管21を介して流出管18からタンク本体2の外部へと流出する。
【0031】
そのため、拡散部材22へと到達した流体は、タンク本体2の内部に既に貯蔵された流体11と混合されつつ、複数の拡散板12~12の表面に沿った方向に流れて各拡散板12~12の流路用孔13~13を通過する間に、タンク本体2の上部に存在する流体11と新たにタンク本体の上部へと移動する流体とが拡散されて混合されることで温度が均一化されつつ、流出管18から混合された流体が流出する。
【0032】
このように、本実施の形態1に係る貯蔵タンク1では、流出管18から流出する流体が複数の拡散板12~12の流路用孔13~13を通過する間に、タンク本体2の上部に存在する流体11と新たにタンク本体2の上部へと移動する流体と混合される。そのため、本実施の形態1に係る貯蔵タンク1では、拡散部材22を設けない貯蔵タンクと比較して、流出管18からタンク本体2の外部に流出する流体の混合性(拡散性)を向上させ流体11の温度を均一化することができる。
【0033】
なお、複数の拡散板12~12のうち、流入管9から最も離間した拡散板12には、図3(c)に示すように、他の拡散板12~12と異なる位置、例えば、中心から半径方向外方向に向けて半径よりも短いスリット状の流路用孔(拡散孔)13aを互いに90度の角度を成す位置に開口することにより、流入管9及び流出管18から最も離間した拡散板12の背面側(流入管9及び流出管18の反対側)の領域において流体11が滞留するのを抑制することができる。
【0034】
<温度制御装置の構成>
図8は本発明の実施の形態1に係る温度制御装置の一例としての恒温維持装置(チラー装置)の概略を示す配管構成図である。
【0035】
このチラー装置100は、例えば、温度制御対象装置200としてのプラズマ処理装置の静電チャックに保持される温度制御対象(ワーク)の温度を所要の温度に制御するために使用される。チラー装置100は、図8に示すように、大別して、低温側の予め定められた一定の温度(例えば、-20℃)に調整された低温側流体を供給する低温側のブライン温調回路101と、高温側の予め定められた一定の温度(例えば、+100℃)に調整された高温側流体を供給する高温側のブライン温調回路102と、低温側のブライン温調回路101から供給される低温側流体と高温側のブライン温調回路102から供給される高温側流体を混合して所要の温度に調整する第1の流量制御用三方弁103と、温度制御対象装置200を流れた温度制御用流体を所要の分配比で低温側のブライン温調回路101と高温側のブライン温調回路102とに分配する第2の流量制御用三方弁106と、低温側のブライン温調回路101から供給される低温側流体の一部と第2の流量制御用三方弁106により分配される温度制御用流体とを所要の混合比で混合して低温側のブライン温調回路101に還流させる第3の流量制御用三方弁107と、第3の流量制御用三方弁107によって低温側のブライン温調回路101に還流される温度制御用流体を貯蔵する低温側の貯蔵タンク108と、高温側のブライン温調回路102から供給される高温側流体の一部と第2の流量制御用三方弁106により分配される温度制御用流体とを所要の混合比で混合して高温側のブライン温調回路102に還流させる第4の流量制御用三方弁109と、第4の流量制御用三方弁109によって高温側のブライン温調回路102に還流される温度制御用流体を貯蔵する高温側の貯蔵タンク110とを備えている。
【0036】
温度制御用流体としては、上述したように、例えば、-30~+120℃程度の温度範囲において使用可能なフロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体やエチレングリコール等の熱媒体(ブライン)が用いられる。また、温度制御用流体としては、温度範囲が+5~+80℃程度であれば、水(純水)なども好適に使用することができる。
【0037】
<チラー装置の動作>
チラー装置では、次のようにして温度制御対象の温度が制御される。
【0038】
本実施の形態に係るチラー装置100においては、例えば、図8に示すように、低温側のブライン温調回路101から所要の温度(例えば、-20℃)に調整された低温側流体が供給される。また、高温側のブライン温調回路102から所要の温度(例えば、+100℃)に調整された高温側流体が供給される。
【0039】
低温側のブライン温調回路101から供給される低温側流体と、高温側のブライン温調回路102から供給される高温側流体は、第1の流量制御用三方弁103によって所要の混合比で混合され、所要の温度の温度制御用流体として温度制御対象装置200に供給される。
【0040】
温度制御対象装置200の温度が+20℃に設定されている場合には、温度制御用流体の温度が+20℃となるように、低温側のブライン温調回路101から供給される低温側流体と、高温側のブライン温調回路102から供給される高温側流体とが第1の流量制御用三方弁103によって混合される。
【0041】
また、チラー装置100は、図8に示すように、温度制御対象装置200を流れた温度制御用流体を第2の流量制御用三方弁106によって低温側のブライン温調回路101と高温側のブライン温調回路102とに分配する。
【0042】
この第2の流量制御用三方弁106における低温側のブライン温調回路101と高温側のブライン温調回路102との分割比は、基本的に、第1の流量制御用三方弁103における低温側流体と高温側流体との混合比と等しい値に設定される。ただし、第1の流量制御用三方弁103によって所要の混合比で混合された温度制御用流体は、温度制御対象装置200を流れて第2の流量制御用三方弁106に到達するため、当該第1の流量制御用三方弁103から第2の流量制御用三方弁106に温度制御用流体が到達するまでに要する時間だけ遅延して、第2の流量制御用三方弁106における分割比が制御される。
【0043】
第2の流量制御用三方弁106によって低温側のブライン温調回路101と高温側のブライン温調回路102とに分配される温度制御用流体は、同一の温度である。
【0044】
第2の流量制御用三方弁106によって低温側のブライン温調回路101に分配された温度制御用流体は、第3の流量制御用三方弁107によって低温側のブライン温調回路101から供給される低温側流体と第2の流量制御用三方弁106によって低温側のブライン温調回路101に分配された温度制御用流体との混合比が制御された状態で混合される。
【0045】
第3の流量制御用三方弁107によって所要の混合比で混合された低温側流体と温度制御用流体とは、低温側の貯蔵タンク108に供給される。
【0046】
第1の流量制御用三方弁103によって温度制御対象装置200に低温側流体のみが供給されている状態では、低温側の貯蔵タンク108に貯蔵されている流体は、低温側のブライン温調回路101から供給される低温側流体の温度、すなわち-20℃と等しい温度となっている。一方、温度制御対象装置200の温度が+20℃である場合には、第2の流量制御用三方弁106によって低温側のブライン温調回路101に分配された温度制御用流体と等しい温度である+20℃と等しい温度となっている。
【0047】
そのため、低温側の貯蔵タンク108に流入する流体の温度は、-20℃の低温側流体と+20℃の温度制御用流体とを混合した温度となる。よって、低温側の貯蔵タンク108の内部では、例えば、低温側の貯蔵タンク108内に既に貯蔵されている-20℃の低温側流体と、-20℃の低温側流体と+20℃の温度制御用流体とを混合した流体が混合されることになる。
【0048】
ところで、低温側の貯蔵タンク108の内部には、図1に示すように、流入側及び流出側の拡散部材10,22が設けられている。その結果、低温側の貯蔵タンク108の内部においては、低温側の貯蔵タンク108内に既に貯蔵されている-20℃の低温側流体と、-20℃の低温側流体と+20℃の温度制御用流体とを混合した流体が、流入側及び流出側の拡散部材10,22によって拡散されて混合された状態となり、流体の温度が均一化される。
【0049】
そして、低温側の貯蔵タンク108からは、温度が均一化された-20℃の低温側流体と+20℃の温度制御用流体との混合流体が低温側のブライン温調回路101に供給される。
【0050】
同様に、高温側の貯蔵タンク110からは、温度が均一化された+100℃の高温側流体と+20℃の温度制御用流体との混合流体が高温側のブライン温調回路102に供給される。
【0051】
[実施の形態2]
図9は本発明の実施の形態2に係る貯蔵タンクを示す断面構成図である。
【0052】
本実施の形態2では、図9に示されるように、タンク本体2を円筒部3と鏡板部4,5との溶接によって構成するのではなく、タンク本体2を円筒部3と下部鏡板部4及び上部蓋板部20とをOリング21を介してクランプ部材22,23で挟持することによって構成している。
【0053】
タンク本体2の円筒部3とタンク本体2の下部鏡板部4及び上部蓋板部20には、互いに接合することにより密閉するフランジ部3a及び4a、更にはフランジ部20aがそれぞれ設けられている。
【0054】
また、タンク本体2の上部蓋板部20には、温度測定用の開口部を形成するテーパー付き雌ネジに螺合された2本の測定管25が装着されている。
【0055】
なお、前記実施の形態1では、貯蔵タンク108,101を低温側のブライン温調回路101及び高温側のブライン温調回路102の還流(帰還)側に設けた場合について説明したが、貯蔵タンク108,101を低温側のブライン温調回路101及び高温側のブライン温調回路102の供給側に設けるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1…貯蔵タンク
2…タンク本体
3…円筒部
4,5…鏡板部
6…流入管
10,22…拡散部材
12~12…拡散板
13~13…流路用孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9