(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】制動可能な長寸ヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05D 11/08 20060101AFI20220207BHJP
E05D 11/00 20060101ALI20220207BHJP
E05D 5/04 20060101ALI20220207BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
E05D11/08 D
E05D11/00
E05D5/04 Z
F16C11/04 F
(21)【出願番号】P 2018172092
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390024453
【氏名又は名称】株式会社三渡工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100079234
【氏名又は名称】神崎 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 嵩晶
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正大
(72)【発明者】
【氏名】小川 安広
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0083987(US,A1)
【文献】特表2001-507419(JP,A)
【文献】特開2007-146591(JP,A)
【文献】実開昭55-134471(JP,U)
【文献】特開2008-007984(JP,A)
【文献】米国特許第04292798(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00-11/10
F16C 11/00-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状である複数個の制動ヒンジ部を2枚の細長いプレートで直線状に連結した制動可能な長寸ヒンジであって、各制動ヒンジ部は中間バレル部および左右の端側リーフを有し、各制動ヒンジ部の両リーフにそれぞれ2個以上の突起を形成するとともに、2枚のプレートには各突起に対応する貫通小径孔を一直線状に設け、開いた状態の各制動ヒンジ部を一直線状に並べてから左右のリーフ上に2枚のプレートを平行に載置し、該プレートの貫通小径孔を各制動ヒンジ部のリーフ上の突起と嵌合してから、各突起を上方からのプレスで押し広げることによって各制動ヒンジ部を両プレートにカシメ止めする制動可能な長寸ヒンジ。
【請求項2】
個々の制動ヒンジ部において、制動プラグはフランジ付の円筒体であり、該制動プラグの長さは中間バレル部の長さの半分以下であり、各2個の制動プラグを中間バレル部の両端から嵌入・係止させると、各プラグのフランジが中間バレル部と端側バレル部との間に介在する請求項1記載のヒンジ。
【請求項3】
同一形状である5個以上の制動ヒンジ部を2枚の細長いプレートで並列に連結する請求項1記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横長の可動体に対して正確且つ容易に取り付けることができ、長寸であっても製造が比較的容易で美観的にも好ましい制動可能な長寸ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属ヒンジは、一連に配列したバレル部に挿入したシャフトによって2枚のリーフを相互に回転可能に接続し、該リーフの一方を蓋体に且つ他方を木ネジや釘で本体に固着する。この種の金属ヒンジは、グランドピアノの鍵盤蓋や開閉ソリッドの場合のように水平に取り付けると、蓋体の荷重がリーフに掛かると該蓋体を任意の開口角度で静止できず、該蓋体を部分的に開いた状態で手を離すと全開になるかまたは元のように閉じてしまう。この開閉作動は衝撃的に行われるので、使用者が蓋体に指を詰めて怪我をしたり、蓋体や本体を損傷しやすい。
【0003】
これに対し、既存の制動ヒンジ部は、従来の金属ヒンジのような衝撃的な開閉を回避し、蓋体を静かに開閉することができる。この種の制動ヒンジ部として、実開昭53-140857号、本出願人が出願した特開平9-217545号、特開2008-14058号などが開示されている。制動ヒンジ部の取り付けにより、家具や建具などの蓋が静かに開閉できるうえに、その蓋を任意の開口角度で静止でき、使用者が蓋体に指を詰めたり本体を損傷することを回避できる。
【0004】
既存の制動ヒンジ部に関して、実開昭53-140857号に開示する蝶番は、金属部材で回転軸を締め付けるため、該回転軸の制動が十分に行われにくく、嫌な金属擦過音が発生するうえに耐久性を欠いている。特開平9-217545号および特開2008-14058号に開示のヒンジは、中間バレル部において制動部材、保持金具および締め付けネジを備え、これらはリーフから突起することにより、該ヒンジの取付個所が人目につく場合には美観的に好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭53-140857号公報
【文献】特開平9-217545号公報
【文献】特開2008-14058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の制動ヒンジ部は、特開2008-14058号から明らかなように、一方のリーフに中間バレル部を他方のリーフに両端バレル部を備えて短寸である。制動ヒンジ部が短寸であると、回転窓やグランドピアノの鍵盤蓋のような取り付け個所が長い場合には、多数個を並べて設置することになる。しかしながら、多数個の制動ヒンジ部を並べて設置する際には、各ヒンジのシャフト軸心を一直線状に合致させることが非常に難しく、各シャフト軸心が正確に合致していないとヒンジ開閉作動がスムースにならず、シャフト軸心が微妙にずれていると開閉作動が取り付け後に次第に悪化する。ヒンジ取付作業は、熟練作業者が少なくなった現在では複数本のシャフト軸心を正確に合致させるのに長時間を要し、しかもヒンジ取り付け後にクレームが発生することが多い。
【0007】
特開2008-14058号に開示の短寸ヒンジでは、該ヒンジの組み立て時に、シャフトを円筒形の制動プラグの中に圧入するために、該シャフトを制動プラグに打ち込むことを要する。シャフト打ち込み作業は、前記公開公報のように制動プラグが比較的短い場合には比較的簡単であっても、仮に長寸ヒンジのように多数個の制動プラグが一連に並んでいる場合には難かしく、間隔をおいた2連以上の制動プラグにシャフトを圧入する作業は非能率になってしまう。また、長い取り付け個所において、多数の短寸の制動ヒンジ部を適当な間隔をおいて配置すると美観的にあまり好ましくない。
【0008】
本発明は、従来の制動ヒンジ部に関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、トルク調整が非常に容易であり、横長の可動体に対して容易に取り付けることができる制動可能な長寸ヒンジを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、美観的に好ましい制動可能な長寸ヒンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制動可能な長寸ヒンジは、同一形状である複数個の制動ヒンジ部を2枚の細長いプレートで直線状に連結している。本発明の長寸ヒンジでは、各制動ヒンジ部は中間バレル部および左右の端側リーフを有し、各制動ヒンジ部の両リーフにそれぞれ2個以上の突起を形成するとともに、2枚のプレートには各突起に対応する貫通小径孔を一直線状に設け、開いた状態の各制動ヒンジ部を一直線状に並べてから左右のリーフ上に2枚のプレートを平行に載置し、該プレートの貫通小径孔を各制動ヒンジ部のリーフ上の突起と嵌合してから、各突起を上方からのプレスで押し広げることによって各制動ヒンジ部を両プレートにカシメ止めする。
【0010】
本発明に係る制動可能な長寸ヒンジにおいて、個々の制動ヒンジ部の制動プラグはフランジ付の円筒体であり、該制動プラグの長さは中間バレル部の長さの半分以下であると好ましく、各2個の制動プラグを中間バレル部の両端から嵌入・係止させると、各プラグのフランジが中間バレル部と端側バレル部との間に介在する。また、同一形状である5個以上の制動ヒンジ部を2枚の細長いプレートで直線状に連結すると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る長寸ヒンジは、短寸の制動ヒンジ部を複数個連結するため、連結前に各制動ヒンジ部についてシャフト圧入によって正確にトルク設定でき、これによってトルク調整が非常に容易であり、顧客の要望するトルクに簡単且つ迅速に適応できるというメリットがある。これに対し、単体の制動ヒンジで同等の長寸に設計するならば、長寸のシャフトを長寸の制動プラグを直接圧入することが困難なため、該シャフトの直径を制動プラグの内径よりもやや小さくなるように設定し、該シャフトを制動プラグに挿入して全体を組み立てた後に、プレスによって該制動プラグを圧縮して所定のトルク値に調整する。このトルク調整は非常に難しく、正確なトルクに設定することが必要な場合には何度も調整作業を行うことを要し、トルク調整作業では長寸ヒンジを一旦プレスから外してトルク値を確認するので、この取り付け・取り外し作業を何度も繰り返すと、作業日数も作業工数も掛かり、ヒンジ製造コストが高騰してしまう。
【0012】
本発明に係る長寸ヒンジは、横長の可動体に対して複数個の短寸ヒンジを一直線状に取り付けるよりも遙かに容易且つ正確に取り付けることができる。本発明の長寸ヒンジは、全長が60cm前後に達するものも存在し、グランドピアノの鍵盤蓋や開閉蓋などの取り付け個所が非常に長い場合に取り付ける際に、1本だけの長寸ヒンジを用いてボルト止めすればよいから取付作業が簡単になる。
【0013】
本発明に係る長寸ヒンジは、各制動ヒンジ部の両リーフの上に細長いプレートが位置することで全リーフが隠れることにより、この長寸ヒンジが複数個の制動ヒンジ部から構成されることが自然に隠蔽され、1個の長寸ヒンジとしての外観を有するので美観的にも好ましい。本発明の制動ヒンジは、短寸の既存制動ヒンジを単に横長に製造する場合と比べて遙かに容易であり、長寸であっても短寸の制動ヒンジとほぼ同様に容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る制動可能な長寸ヒンジを示す平面図である。
【
図2】
図1の長寸ヒンジの裏面を示す平面図である。
【
図3】本発明で用いる細長いプレートを示す斜視図である。
【
図4】本発明で用いる制動ヒンジ部を示す斜視図である。
【
図6】
図4のA-A線に沿って切断した制動ヒンジ部の拡大横断面図である。
【
図7】
図4のB-B線に沿って切断した制動ヒンジ部の拡大横断面図である。
【
図8】制動ヒンジ部の制動プラグを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る長寸ヒンジ1は、通常、
図1および
図2に示すようにヒンジ長さが30cm以上であり、ヒンジ全長が60cm前後に達するものも製造可能である。本発明の長寸ヒンジ1では、複数個(
図1と
図2では5個)の制動ヒンジ部2を2枚の細長いプレート3によって連結しており、並列に連結する制動ヒンジ部2の数は一般に3個以上、好ましくは5個以上であり、小さい制動トルクが望ましい場合には通常の金属ヒンジを一部加えたり、取り付け間隔を広げてもよい。
【0016】
本発明で用いる個々の制動ヒンジ部2は、
図4に例示するように、中間バレル部5を有する第1リーフ6と、両端側バレル部7,7を有する第2リーフ8とを有する。第1および第2リーフ6,8には、2または3個の取り付け用貫通孔10を等間隔に設ける。中間バレル部5の前端面は、中央突出片12を除いてリーフ表面に達しないので、中間バレル部5の両側端面とリーフ表面との間に横間隙14,14(
図6)が形成される。
【0017】
プラスチック制動プラグ16は、用途に応じて任意の色に着色した耐磨耗性のプラスチック製であると好ましい。制動プラグ16は、
図7や
図8に示すようなフランジ18付の円筒体であり、さらに外周面に縦突条20を設けると好ましい。制動プラグ16,16は、
図7に示すように、中間バレル部5の両端面からそれぞれ挿入され且つ第1リーフ6とともに回転可能である。制動プラグ16と中間バレル部5との一体化は、
図4や
図6に示すように、プラグ外周面に形成した縦突条20を中間バレル部5の横間隙14,14に嵌入すればよく、縦突条20の長さは横間隙14の長さとほぼ等しい。フランジ18の外径は中間バレル部5の外径とほぼ同じである。制動プラグ16は、組み立て後にプラグ内周面がシャフト22の後方部24の外周面上を摺動可能であり、プラグ後方部25の外周面は中間バレル部5の内周面と密接する。
【0018】
金属シャフト22は、
図7のように制動ヒンジ部2ごとに通常2本使用する。シャフト22は、図示のような細長い円柱形であり、溝付き頭部26と、該頭部より下方の中間部28と、該頭部および中間部28よりも小径の後方部24とを有する。溝付き頭部26では、その山の径は中間部28の外径および端側バレル部7の内径よりもわずかに大きい。シャフト後方部24は、その直径が制動プラグ16の内径よりもわずかに大きい。
【0019】
2本の金属シャフト22,22は、第2リーフ8の両端側バレル部7,7の外端面からそれぞれ嵌入される。溝付き頭部26は、組み立て時に端側バレル部7内に打ち込まれて該バレル部と一体化する。両シャフト22,22の後方部24は、制動プラグ16内に圧入されて中間バレル部5内に位置することにより、シャフト22の後方部24の外周面と制動プラグ16の内周面とが摩擦面になり、両リーフ6,8を任意の開口角度で静止できる。一方、制動プラグ16のフランジ18は、
図3および
図7から明らかなように、ヒンジ組み立て時にバレル部5,7間に位置し、両バレル部が直接接触することによる金属擦過音の発生を防止する。
【0020】
個々の制動ヒンジ部2は、第1リーフ6の中間バレル部5で制動プラグ16の外周面を取り囲むことにより、長期間使用しても開閉作動は一定を保つ。1個の制動ヒンジ部2について、開閉作動時に作用する約3~15kg重の荷重を制動プラグ16,16の全長で受けることによって数万回以上の開閉試験に耐えることができ、制動ヒンジ部2の数に応じて制動可能な荷重が増大する。制動ヒンジ部2は、ほぼ同形の金属ヒンジと比べて制動プラグ16が部品として増える程度であるので製造コストの上昇は少ない。
【0021】
長寸ヒンジ1に適用させるために、
図4から
図6に示すように、各制動ヒンジ部2の両リーフ6,8において、上向きの円形突起30をそれぞれ2個以上突設し、該円形突起はほぼ貫通孔10,10間に位置するが、該突起の数と位置は任意に設定できる。一方、
図1のように2枚で1組である細長いプレート3(
図3)には、個別の制動ヒンジ部2ごとに円形突起30に対応する貫通小径孔32をそれぞれ設け、さらに各リーフ6,8の取り付け用貫通孔10と合致する貫通大径孔34も設けると好ましい。
【0022】
細長いプレート3について、各組の貫通小径孔32に制動ヒンジ部2の各円形突起30を下側から嵌入すると、該制動ヒンジ部を両プレート3の下で平行に静止できる。一般に3個以上の制動ヒンジ部2をプレート3,3で並列に静止配置すると、各制動ヒンジ部2のリーフ6,8は隣接の制動ヒンジ部2のリーフ6,8と近接しても、両リーフ6,8が接触しないように適切な間隔を有する(
図2参照)。
【0023】
長寸ヒンジ1を製造する際には、全開した制動ヒンジ部2のリーフ6,8の上にプレート3,3を載せ、該制動ヒンジ部の各円形突起30をプレート3の貫通小径孔32に嵌入してから、公知のプレス機によって各円形突起30の中心をプレスすると、該突起の上方は周囲に拡がって貫通小径孔32にカシメ止めされ、制動ヒンジ部2をプレート3,3に固着できる。1個の制動ヒンジ部2を固着すれば、次の制動ヒンジ部2をカシメ止めし、最終的に所望数の制動ヒンジ部2を並列に連結すればよい(
図1と
図2参照)。
【0024】
長寸ヒンジ1は、短寸の制動ヒンジ部2を複数個連結して製造するため、連結前に各制動ヒンジ部2についてシャフト22,22の圧入によって正確にトルク設定できることにより、トルク調整が非常に容易であり、顧客の要望するトルクを簡単且つ迅速に設定できる。長寸ヒンジ1は、
図1および
図2に示すような長さ30cm以上であり、連結制動ヒンジ部2が5個以上である場合に適用すると好ましく、全長が60cm前後の長寸まで製造可能である。長寸ヒンジ1は、取り付け個所が非常に長い場合でも1本だけをボルト止めすればよいから、未熟な作業者であっても容易に取付作業が実施することができ、建具や家具のほかに産業用途に適用することも可能である。
【実施例1】
【0025】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。制動可能な長寸ヒンジ1について、2枚の細長いプレート3は長さが33cmであり、その幅は制動ヒンジ部2の各リーフ6,8のそれとほぼ等しい。各細長いプレート3には、5個の制動ヒンジ部2ごとに円形突起30に対応する貫通小径孔32をそれぞれ設け、さらに各リーフ6,8の取り付け用貫通孔10と合致する貫通大径孔34も設ける。
【0026】
用いる5個の制動ヒンジ部2はそれぞれ長さ65mmであり、中間バレル部5を有する第1リーフ6と、両端側バレル部7,7を有する第2リーフ8とを有する。第1および第2リーフ6,8には、3個の取り付け用貫通孔10を等間隔に設ける。両リーフ6,8において、公知のプレス機によって両リーフを裏側からプレスして上向きの円形突起30をそれぞれ2個突設し、該円形突起はほぼ貫通孔10,10間に位置する。
【0027】
第1リーフ6では、中間バレル部5となる延長部の前端面を中央突出状に加工し、且つ該延長部の根元に該リーフと平行に矩形孔11(
図2)を設け、この延長部を湾曲して中間バレル部5を形成すると、該延長部の中央突出片12が矩形孔11内に入り込んで中間バレル部5の形状が安定する。中間バレル部5の前端面は中央突出片12を除いてリーフ表面に達しないので、中間バレル部5の両側端面とリーフ表面との間に横間隙14,14が形成される。
【0028】
プラスチック制動プラグ16は、黒色に着色した耐磨耗性プラスチックであるPOM製である。制動プラグ16は、
図8に示すようなフランジ18付の円筒体であり、さらに外周面に縦突条20を設ける。制動プラグ16において、その内径はシャフト22の外径よりもやや小さく、その外径は中間バレル部5の内径よりもわずかに小さく、その長さは中間バレル部5の長さの半分以下である。制動プラグ16のフランジ18は、
図4と
図7から明らかなように、ヒンジ組み立て時にバレル部5,7間に位置させる。
【0029】
制動プラグ16の縦突条20の断面は、
図6に示すように、ホルダ周面から外方へ延びる接線とその接線とほぼ平行に延びる直線とで囲まれている。縦突条20には、制動トルクが作用するために多少肉厚である。2個の制動プラグ16を中間バレル部5に嵌めると、その接線面がリーフ表面と接触することにより、該プラグが中間バレル部5内でがたつくことが少ないので好ましい。
【0030】
ステンレス鋼製のシャフト22は、制動ヒンジ部2ごとに2本使用する。シャフト22は、溝付き頭部26と、該頭部より下方の中間部28と、該頭部および中間部28よりも小径の後方部24とを有する。溝付き頭部26は、金型または転造によるセレーション加工によって形成され、その山の径は中間部28の外径および端側バレル部7の内径よりもわずかに大きい。
【0031】
2本の金属シャフト22,22は、第2リーフ8の両端側バレル部7,7の外端面からそれぞれ嵌入される。両シャフト22,22の後方部24は、制動プラグ16内に圧入されて中間バレル部5内に位置することにより、シャフト22の後方部24の外周面と制動プラグ16の内周面とが摩擦面になる。制動プラグ16のフランジ18は、ヒンジ組み立て時にバレル部5,7間に位置し、両バレル部が直接接触することによる金属擦過音の発生を防止する。
【0032】
長寸ヒンジ1を製造する際には、全開した制動ヒンジ部2のリーフ6,8の上にプレート3,3を載せ、該制動ヒンジ部の各円形突起30をプレート3の貫通小径孔32に嵌入してから、公知のプレス機によって各円形突起30の中心をプレスすると、該突起の上方は周囲に拡がって貫通小径孔32にカシメ止めされ、制動ヒンジ部2をプレート3,3に容易に固着できる。1個の制動ヒンジ部2を固着すれば、次の制動ヒンジ部2をカシメ止めし、最終的に所望数の制動ヒンジ部2を並列に連結すればよい。
【0033】
長寸ヒンジ1において、プレート3の貫通大径孔34は、制動ヒンジ部2の取り付け用貫通孔10と合致し、各貫通大径孔34が長寸ヒンジ1の取り付け孔となる。1個の制動ヒンジ部2について、開閉作動時に作用する約3~15kg重の荷重を制動プラグ16,16の全長で受けることができ、制動ヒンジ部2を5個連結すると約15~75kg重の荷重を受けることができる。長寸ヒンジ1は、短寸の制動ヒンジ部2を5個連結して製造するため、連結前に各制動ヒンジ部2についてシャフト22,22の圧入によって正確にトルク設定でき、トルク調整が非常に容易である。
【実施例2】
【0034】
制動可能な長寸ヒンジについて、実施例1で得た制動ヒンジ部2を3個、該制動ヒンジ部と同形の金属ヒンジを2個使用し、これらを交互に配列して実施例1と同様に連結する。この長寸ヒンジは、実施例1の長寸ヒンジ1よりも安価であり、制動可能な荷重が40kg重程度である用途において使用可能である。この長寸ヒンジは、連結前に3個の制動ヒンジ部について両シャフトの圧入によって正確にトルク設定でき、トルク調整が非常に容易である。
【符号の説明】
【0035】
1 長寸ヒンジ
2 制動ヒンジ部
3,3 細長いプレート
5 中間バレル部
6 第1リーフ
7,7 端側バレル部
8 第2リーフ
16 制動プラグ
22,22 金属シャフト
30,30 突起
32,32 貫通小径孔