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  • 特許-刈払機用回転刃 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】刈払機用回転刃
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/73 20060101AFI20220207BHJP
   B23D 61/02 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A01D34/73 Z
B23D61/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019153260
(22)【出願日】2019-08-23
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2016-11-01
(65)【公開番号】P2019216740
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2019-08-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日 時 :平成28年10月12日 展示会名:第6回 国際道工具・作業用品EXPO 場 所 :幕張メッセ国際展示場(千葉県千葉市美浜区)
(73)【特許権者】
【識別番号】516327893
【氏名又は名称】株式会社カネシカ
(74)【代理人】
【識別番号】100188776
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 吉男
(72)【発明者】
【氏名】金鹿 功
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3181616(JP,U)
【文献】特開2012-211010(JP,A)
【文献】特開2015-104408(JP,A)
【文献】実開平07-033602(JP,U)
【文献】特開2014-147362(JP,A)
【文献】特開2011-160693(JP,A)
【文献】特開平07-276305(JP,A)
【文献】特開平04-051814(JP,A)
【文献】登録実用新案第3206079(JP,U)
【文献】特開2016-135117(JP,A)
【文献】特開2009-183241(JP,A)
【文献】登録実用新案第3124220(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0181806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/73
B23D 61/02 - 61/10
B26D 1/14 - 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板で形成された円板状の台金と、
前記台金の中心に形成された刈払機の回転軸への取付孔を有する中心部と、
前記台金の外周縁に連続して形成された刃部と、
前記中心部から前記刃部の間に形成された複数の軽量孔を有する孔部とを備え、
前記複数の軽量孔の形状が平面充填可能な多角形であり、
前記複数の軽量孔が、前記複数の軽量孔の外周の台金のみを網目状に残す形態
で隙間なく連続して前記孔部に設けられていること
を特徴とする刈払機用回転刃。
【請求項2】
前記平面充填可能な多角形の形状が正六角形であることを特徴とする請求項1に記載の刈払機用回転刃。
【請求項3】
前記回転刃の外接円の面積に対する前記複数の軽量孔の総面積の割合が20%~35%であることを特徴する請求項1又は2に記載の刈払機用回転刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機に装着する金属製の回転刃に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な刈払機は、作業者が刈払機本体に取り付けられたベルトを肩にかけて、竿状のハンドル付操作軸の先端に装着された回転刃が地面に沿って左右に移動するようにハンドルを動かすことで、草等が刈り取られる仕組みになっている。
このような作業形態から、刈払機先端の回転刃の重量は、作業時の身体にかかる負荷に影響を及ぼす。
【0003】
そこで、回転刃の軽量化のために実用新案登録第3124220号広報(以下「特許文献1」という。)に円板状の本体に孔を設けたものが提案されている。
しかし、特許文献1のような円形の孔では、孔と孔とを近接させることができず、軽量化には限界があった。
また、残った部分が傘の骨のような形状になるように孔を設けることもできるが、回転刃の強度が使用に耐えず実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3124220号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、使用に耐える強度を確保しながら、より軽量化された刈払機用の回転刃を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するための本発明は、回転刃の取付孔から刃部の間に強度を確保できる形態で連続する複数の軽量孔を設けたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、第一の本発明に係る刈払機用の回転刃は、金属板で形成された円板状の台金と、台金の中心に形成された刈払機の回転軸への取付孔を有する中心部と、台金の外周縁に連続して形成された刃部と、中心部から刃部の間に形成された複数の軽量孔を有する孔部とを備え、複数の軽量孔の形状が平面充填可能な多角形であり、複数の軽量孔が、複数の軽量孔の外周の台金のみを網目状に残す形態で隙間なく連続して孔部に設けられていることを特徴とする刈払機用回転刃である。
【0008】
平面充填とは、平面を隙間なく敷き詰めることをいい、全て同じ形状で平面充填が可能な多角形は三角形、四角形、六角形の3つである。
この3つの多角形の軽量孔であれば、軽量孔の外周のみを網目状に残す形態で連続して複数の軽量孔を設けることができる。
この中でも軽量孔の形状としては三角形と六角形が好ましい。三角形と六角形は外力に対しての強度があるからである。
【0009】
そして第二の本発明に係る刈払機用の回転刃は、第一の本発明における平面充填可能な多角形の形状が正六角形であることを特徴とする。
【0010】
板状である刈払機用の回転刃の台金に、平面充填可能な多角形の形状をした軽量孔を開ければ、強度を大きく損なわずに軽量化を実現することができる。そして軽量孔の数を増やしていけば最終的には軽量孔の周囲を形成するだけの台金による枠構造が残る。
このとき軽量孔を小さくすれば強度は増すが、単位面積当たりの台金の量は増える。そこで軽量孔の面積を一定にして最も台金の量が少なくなる軽量孔の開け方、つまり同じ面積の図形による平面充填で軽量孔の周位の長さが最も短くなる図形は何かを考えると、その図形は正六角形になる。
【0011】
このように、同じ面積の軽量孔を回転刃の台金に連続して設ける場合には、その軽量孔の形状を正六角形とすることで最も軽量化できることが分かる。
さらに正六角形は平面充填が可能であることに加えて、ある方向から力が加わった際には、その衝撃が他の5辺に分散して伝わるという特質を持っている。
この特質により回転刃の強度を確保しながら、軽量化と衝撃吸収力の向上が可能となる。
【0012】
さらに第三の本発明に係る刈払機用の回転刃は、第一又は第二の本発明に係る回転刃において、回転刃の外接円の面積に対する複数の軽量孔の総面積の割合が20%~35%であることを特徴する。
【0013】
軽量孔とそれに隣接する軽量孔との間の台金が形成する枠構造の幅を同一にすれば、軽量孔を小さくすればするほど回転刃の強度は増すが、残った台金による枠構造の総重量は増える。
逆に軽量孔を大きくすればするほど残った台金による枠構造の総重量は減少するが、回転刃の強度は減少する。
すなわち、平面充填可能な形状の軽量孔を連続して設ける本発明においては、軽量孔の総面積が回転刃の総重量と強度に影響を与えることになる。
【0014】
ところで本発明においては、軽量孔の形状が平面充填可能な多角形であるから、軽量孔の大きさを変えることで容易に軽量孔の総面積を設定することができる。
そこで種々実験の結果、複数の軽量孔の総面積が回転刃の外接円の面積の20%~35%になるように設定すれば 使用に耐える強度を維持しながら、軽量孔のない回転刃に比べて最大30%の軽量化を実現できることが分かった。
【発明の効果】
【0015】
本発明の回転刃は、台金に平面充填可能な形状の軽量孔を平面充填する態様にて連続して設けられているため、強度を維持しながら、軽量化を図ることができる。
【0016】
また、軽量孔の形状を正六角形とすることで、衝撃吸収力が増し、作業中に回転刃を石やコンクリート、金属に当ててしまった時の甲高い嫌な衝撃音が低減されると共に刃先の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の回転刃の平面図である。(実施例1)
図2】本発明の回転刃の側面図である。(実施例1)
図3】既存の回転刃の平面図である。(比較例1)
図4】既存の回転刃の平面図である。(比較例2)
図5】本発明の回転刃の総重量計算の説明図である。(実施例1)
図6】比較用回転刃の総重量計算の説明図である。(比較例3)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の回転刃は、一般的な刈払機用回転刃の中心部と刃部の間に平面充填する形態で複数の軽量孔を連続して設けたものである。軽量孔が平面充填する形態で連続して設けられるため、軽量孔の周囲には網目状の台金が残る。
【0019】
以下に本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第一の実施例(以下「実施例1」という。)を説明する。図1および図2は実施例1の平面図と側面図である。
【0021】
図1に示すように、回転刃2は金属板で形成された円板状の形状を有し、中心部10とその外側の孔部12と、さらにその外側の刃部14とで構成されている。刃部14にはチップ8が装着されている。回転刃2の直径は255mmである。
中心部10は所定の厚さ(1.25mm)で平坦に形成され中心に刈払機の回転軸に装着するための直径25.4mmの取付孔6を有する。
【0022】
そして取付孔6の周囲には複数の正六角形の軽量孔16が設けられた蜂の巣状の形態を有する孔部12が形成されている。軽量孔16は対向する辺の間隔が7mmの正六角形の形状をしており、平面充填をする形態で378個設けられ、全て台金4を貫通している。
【0023】
図3は既存の回転刃(以下「比較例1」という。)の平面図である。実施例1との違いは軽量孔の有無のみである。
そして図4は他の既存の回転刃(以下「比較例2」という。)の平面図である。
比較例2には、中心から外縁に向かって順番に直径5mmが30個、直径5.5mmが30個、直径6.0mmが30個、直径6.5mmが30個、直径7.0mmが30個、直径7.5mmが30個、直径8.0mmが60個、直径8.5mmが30個の合計270個の軽量孔が設けられている。
【0024】
「実験1」
ここで、実施例1及び比較例1並びに比較例2の回転刃を用いて衝撃試験を行い、そのときの衝撃音を比較した。
衝撃試験の方法は「刈払機用超硬刈刃の衝撃試験方法(日農工規格:0004-200X)」に準じて所定の速度で回転させた回転刃をコンクリートブロックに当てる方法で行った。回転刃をコンクリートブロックに当てるときの荷重は5Kgfである。
3つの回転刃について、同じ試験を50回実施して測定した衝撃音の平均値は、実施例1が124.8dB、比較例2が127.6dB、比較例1が128.9dBであった。
実施例1が比較例1と比べて4.1dB、比較例2と比べて2.8dB低い衝撃音になっていることから、六角形の網目状の孔部の構造により、衝撃吸収力に優れていることが証明された。
【0025】
実施例1が衝撃吸収力に優れているという特質は、使用に際して回転刃が石やコンクリートに当たったときのいやな衝撃音を小さくできるばかりでなく、異物への接触による刃先の劣化やチップの脱落も防止できるという効果を発揮する。
【0026】
「実験2」
次に実施例1及び比較例1並びに比較例2を対象に、回転刃の直径方向の荷重試験を行った。
回転刃の直径方向に1000Nの荷重を与えた場合の最大変位量は、実施例1が15.74mm、比較例2が7.69mm、比較例1が0.39mmであった。
そして、どの回転刃もこの実験では座屈せず、荷重を開放すると元の形状に復帰した。
【0027】
「実験3」
次に、同じ回転刃を対象にして、5mmの変位が生じるときの回転刃の直径方向に加えた荷重を測定した。
結果は、実施例1が650.5N、比較例2が798.8N、比較例1が1000N以上となった。これより実施例1が小さな力でよくたわむということが分かった。
【0028】
「回転刃の総重量の比較」
図5図6は本発明の実施例1比較例3の総重量計算の説明図である。
最初に図5図6を参照して総重量を比較する。
図5は実施例1を示すが、実施例1は対辺の間隔が7mmの正六角形の軽量孔が378個平面充填された回転刃である。一方図6は直径7mmの円形の軽量孔が378個設けられた回転刃(以下「比較例3」という。)である。
図5、6のとおり実施例1は総重量339gであり、比較例3は総重量354gである。軽量孔を有さない比較例1の総重量は496gであるから、実施例1は軽量孔を有さない従来の回転刃に比べて32%の軽量化が実現されている。
また、正六角形の軽量孔の方が、円形の軽量孔よりも軽量化に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、円板状の台金の外周縁にチップが装着された回転刃(チップソー)に限らず、刃先が台金に一体的に形成された回転刃を含む草木等の刈払いに使用される全ての回転刃に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
2 回転刃
4 台金
6 取付孔
8 チップ
10 中心部
12 孔部
14 刃部
16 軽量孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6