(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】鉄道システム
(51)【国際特許分類】
B61F 9/00 20060101AFI20220207BHJP
B61F 5/44 20060101ALI20220207BHJP
B61F 5/00 20060101ALI20220207BHJP
B61K 13/00 20060101ALI20220207BHJP
B61D 49/00 20060101ALI20220207BHJP
B60M 1/12 20060101ALI20220207BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
B61F9/00
B61F5/44
B61F5/00
B61K13/00 A
B61D49/00 A
B61D49/00 Z
B60M1/12 D
B60L15/00 Z
(21)【出願番号】P 2020066332
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2020-12-06
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】398036748
【氏名又は名称】長島 彬
(72)【発明者】
【氏名】長島 彬
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-323839(JP,A)
【文献】特開2001-010492(JP,A)
【文献】特開平04-322103(JP,A)
【文献】特開2011-172420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 1/00-99/00
B61K 13/00
B61D 17/00-49/00
B60M 1/00
B60L 15/00
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道台車に装備される車輪のレール接触面を円筒に形成することと、4車輪全てが車輪とレールの接触点を中心として前進後進等しく操蛇可能に機械的に構成し、前記個々の車輪はレールの中心を走行するために、個々の車輪に設置された中心位置感知センサーからの情報によって個々に操蛇されて、前記台車が忠実にレール上をトレース走行できるように構成するとともに、地震や横風等の外乱による脱線事故を、レール側面を脱線阻止部として利用する「脱線防止装置」を個々の車輪に設けて脱線を機械的に防止するとともに、この脱線防止装置が分岐線やレール付属部材やロングレール接続部などと干渉する場所においては、前記脱線防止装置が破壊しないようレール上面に退避できるように構成したことを特長とする台車を用いた新しい鉄道システム。
【請求項2】
前記台車の操蛇可能車輪4個はそれぞれに動力を矛盾無く伝える可撓性の継ぎ手によって、駆動モータからの動力を得て、それぞれ最適の回転数で駆動され、前記台車に付属する集電装置によって電力を得て、台車単独でも自動走行できる様に構成して1車体に対し2個以上の台車を用い車両となし、この車両を複数連結して列車として運行する
請求項1に該当する鉄道システム。
【請求項3】
前記集電装置に給電するトロリー線は開放部を狭く形成された断面持つ絶縁体によるトロリー線保持部材によって保持され、レールとトロリー線の相対的位置を高精度に維持できるよう前記トロリー線保持部材は給電体位置決め部材によって枕木に設置され、トロリー線の設置や維持管理が簡易になるよう線路の左右両脇に断続的に設置
したことを特長とする請求項1または2、いずれかに該当する鉄道システム。
【請求項4】
列車のすれ違い時の衝撃を緩和するため先頭車両形状が側面への気流を最小限にするための車体前端部から車体屋根まで連続した凸部を形成したことを特長にする
請求項1,2,3のいずれか1項に該当する鉄道システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニアに匹敵する高速走行を通常の鉄路で行うものである
【背景技術】
【0002】
鉄道における高速走行において現行の新幹線では絶え間ない横振動と集電の絶え間ないアーク発生や巨大地震による脱線の問題が残されており、また架線のトラブル、信号のトラブル、ポイント故障等のシステム的に内在する問題が残っていることが否めない。一方、高速走行の実用化を目指しているリニアにおいては、効率の悪さによるエネルギーの浪費と電力供給問題、乗降時の磁気遮蔽の問題、横振動、地上設備の設置費用と保守問題、コイル側壁による騒音、等々の新たな解決困難な問題を内包しながらの実用化を目指しているのが現状である。
【0003】
加えて、1編成を走らせるために専用の電力供給設備が必要であることから原理的に増便が難しい。単線時代に閉塞区間を設けその中に1編成の列車のみの運行されたように、リニア構想のフレキシビリティーは極度に悪いという根本的な問題もある。
【0004】
従って、リニアの実験線で多くのテストを繰り返して走行を確認しても、磁気シールドの必要性以外、上記の根本的な問題は顕在化せず、またその対策が検討されないまま実用化を推進することの是非を考えなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】エネルギー問題としてのリニア新幹線 阿部修治 「科学」VOL83、Nov.(2013) p1290-1299
【文献】DDM方式による独立回転車輪台車の構造と高速安定性 鉄道総研報告 徳田憲暁 VOL,No2,Feb.2008 p5-10
【文献】特開平8-40269 日立 1軸
【文献】特表平8-506295 レール傾斜 ビショップ
【文献】再公表特許(A1)国際公開番号 W02006/075756
【文献】特開2015-16709 東大
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄道の高速化の記録としてはフランスTGVが2007年4月3日時速574.8kmの記録を残しているが、営業運転として雨天時等のレール摩擦力の低下や、絶え間ない横振動の増加、パンタグラフからの騒音問題等によって時速360kmくらいが限界と考えられ、さらに高速にニーズに対応するため東京名古屋間のリニア新幹線の建設が開始されている。
【0007】
しかし、リニア新幹線の実用化には下記に示すようにリニア方式の根本的な欠点を残していることが指摘されている。
1、エネルギー効率の低さ。リニアモータはいったん規格を決めて建設してしまうと,そのシステムを変えることはほとんど不可能となる。モータという機械を地上の長大インフラとして建設しなければならない。(非特許文献1)
2、ガイドの中を走行する弊害として常に上下左右の小刻み振動が発生して原理的に除去困難、乗り心地不良。列車側面の凸部とガイドウエイとの間隙による騒音の除去が原理的に困難。
3、乗降時に強磁気のシールドが必須。乗降ホームに多数の磁気シールドの通路が並ぶことになる。また非常時の途中降車などでは磁気被爆防止が困難。
4、閉塞区間に1編成運行許容度は増便困難、単線運転時のような硬直したダイヤ。
5、運行制御を全て中央に集中するので中央の故障、破壊より壊滅的打撃を受けやすい。
6、助走する間に使用するゴムタイヤは可燃物でトンネル内の火災に弱い。
等々、基本的に多くの解決しがたい問題を残している。従って、いくら改善を重ねても完璧なものになりにくい技術、いわゆる「筋の悪い技術」と指摘されている。
【0008】
一方現行新幹線や在来線でも、ポイント故障、架線故障、信号故障等による運行遅延等
の発生は日常的であり、巨大地震の発生時や巨大台風による脱線転覆の恐れも増大している。また高速走行時の台車の蛇行は徐々に改良はされてきているが高速走行の未解決問題として残る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鉄道台車に装備される車輪のレール接触面を円筒に形成することと、4車輪全てが車輪とレールの接触点を中心として前進後進等しく操蛇可能に機械的に構成し、前記個々の車輪はレールの中心を走行するために、個々の車輪に設置された中心位置感知センサーからの情報によって個々に操蛇して、前記台車が忠実にレール上を精度良くトレース走行できるように構成するとともに、地震や横風等の外乱による脱線事故を、レール側面を脱線阻止部として利用する「脱線防止装置」を個々の車輪に設けて脱線を機械的に防止するとともに、この脱線防止装置が分岐線やレール付属部材やロングレール接続部などと干渉する場所においては、前記脱線防止装置が破壊しないようレール上面に退避できるように構成した台車を用いて高速化と経済性を両立させる。
【発明の効果】
【0010】
従来のレールを使用した鉄道において、蛇行問題と脱線危険が減少して鉄道の乗り心地を飛躍的に上げ、レールや車輪の摩耗を減らしたことを、スマホで培われた無線技術とAIロボット技術と自動車の自動運転技術等の完成した技術を融合することで、リニアモータを使用しないで鉄道の超高速化を推進することが出来るとともに架線を無くして車窓景色から架線の支柱を無くすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本案の実施例1の鉄道台車斜図である。
【
図2】
図2は本案の実施例1の鉄道台車構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は本案の実施例1の鉄道台車の車輪構造を示す斜図である。。
【
図4】
図4は本案の実施例1のレール中心を検知方法に関する説明図である。
【
図5】
図5は本案の実施例1の分岐部での断線防止部材の作動範囲の説明図である。
【
図6】
図6の本案の実施例1の台車下側から見た動力伝達減速機透視説明図である。
【
図7】
図7は本案の実施例1の鉄道台車の集電装置の説明図である。
【
図8】
図8は車体に設置される中心ピンの外観と台車の連結部の構造説明図である。
【
図11】
図11は本案の列車のトンネル内のすれ違い模様である。
【
図12】
図12は本案の実施例2のコンテナ貨物車両と車両限界を示す説明図である。
【
図13】
図13は実施例3の狭軌の鉄道に採用したときの正面図である。
【
図14】
図14は実施例4のLRTに本案を適用したときの側面図である。
【
図15】
図15は実施例5の台車をパイロットして単独走行させるときの斜図である。
【
図16】
図16は実施例6の台車を3個としてさらに高速を得る仕様の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
台車の4輪全部を独立懸架し、個々に個別のモータで駆動できるフレキシブルな動力伝達装置に4輪駆動(4WD)とし、また全ての車輪は舵取り出来る回動軸を設定することによって的確にレール上を精度良くトレースできるように4輪操舵 (4 Wheel Steering、4WS)の機能を持たせるとともに、レール状況を多数のセンサーからのデータや、走行鉄路の3次元データを総合的に駆使してレールの中央を正確にトレースできる自走形台車を用いてボギー車を形成する。
【実施例1】
【0013】
本案の台車システム40は
図3 において 車輪1は一対の車輪支持部材2に内蔵された2個の軸受け(図示なし)で回転可能に保持され、前記車輪支持部材2は上下振動吸収用のバネ部材収納部3aとブレーキ用油圧装置の収納部6aにレールからの振動吸収用のバネ部材3とブレーキ装置6を4個対称的に具備し、加えて脱線防止装置7を設置するための収納部7bと、車輪1がレール80のほぼ中央を走行するためのレール中央位置検知装置8を取り付け部8aに、
図3に示す集電装置31を取り付け部31aに設置して、車輪1と同じ動きをするいわゆる「バネ下荷重」を構成する。
【0014】
前記バネ部材収納部3aにバネ材3を設置しては台車本体9の進行方向を変えるため回動軸10を持つ車輪操蛇部材4と連結して操蛇ユニットとして構成し、台車本体9の構成部材のサブフレーム部材14の車輪操蛇軸軸受け部10の中心を軸にして前記操蛇ユニットがサブフレーム材14と相対的な舵取り角度が得られるようする。なお、ホイールベース2.5mの新幹線台車で半径200mの曲線通過の必要操蛇角は0.4度弱になるので、操舵装置のリンクや作動用スクリューは与圧し高分解能、高停止精度のサーボモータの使用が推奨される。
【0015】
前記車輪操蛇部材4がサブフレーム部材14の車輪操蛇軸軸受け部10の中心に確実に操舵できるように、2個の前後方向の規制ローラ11と、左右方向の規制ローラ12を車輪操蛇軸軸受け部10の中心と同心の円弧を持つ規制部に与圧して接触させて前後方向、左右方向の倒れを規制する。
【0016】
車輪操蛇軸軸受け部10の中心とする円弧に接する方向に回動軸を持つ6個の荷重受けローラ13は車輪1に加わる上下方向の全荷重を受ける。前記車輪操蛇軸軸受け部10には車輪舵取り軸軸受け5が用いられ操蛇力を小さくし、また車輪回動軸固定部材19によって車輪操蛇部材4とサブフレーム部材14の分離が防止され、サブフレーム14の中に舵取り可能な車輪1が独立懸架で駆動輪として機能するようサブフレームユニットとして構成する。
【0017】
図1に示す様に、フレーム20に4個のサブフレーム部材14の取り付け部に前記サブフレームユニットを対向して取り付け4輪操舵 (4 Wheel Steering、4WS)、独立懸架の鉄道用台車40を構成する。さらに前記サブフレーム部材14は左右連結部材15によって連結され、この左右連結部材15に左右の車輪にモータ16からの出力を伝達する減速機17をそれぞれ設置する。
【0018】
前記走行モータ16の出力は平歯車17aによって車軸1aとの距離を離す方向に構成し、この平歯車17aの減速軸17bに減速傘歯車列17cを使用し減速された動力を出力軸17dに出力し、十分な長さのフレキシブル継ぎ手18によって車軸1aと接続し、舵取りや上下振動によって軸心が常に一致しない車輪1を駆動して4輪駆動(4WD)の台車とする。
【0019】
前記鉄道用台車40は車輪構成部5の前後にレーザー距離測定器や磁気体センサーなど複数内蔵した、左右のズレを検知するレール位置検知装置8を設置して常にレール80との相対距離、例えば
図4において、8a=8bあるいは8c=8dになるよう、レール80と車輪1が舵取りアクチュエータ21をもって、車輪1の舵取りを適切に行い車輪1が常にレール80の中央上を走行するように制御し走行する。
【0020】
前記車輪構成部5にはさらに、ブレーキ装置6と上下に進退自在の脱線防止装置7と、レール中央位置検知装置8を含んで構成される。
【0021】
前記脱線防止装置7は2本レールそれぞれの両側に配置して車輪1が脱線する可能性が上がる地震や強風時の脱線を強制的に防止する。線路の分岐部等でレールより下に突出した脱線防止装置7が分岐線等と干渉衝突する場所を通過するときは、干渉や衝突を瞬時に回避するためレール80の上面より上に移動できる脱線防止装置用アクチュエータ7aを備える。
【0022】
前記4個の車輪1の回動中心に空気バネ24を4個設けて、上部の低摩擦摺動体24aによって曲線通過時の車体に対する台車の40の向きを幾何学的に適切な角度を保証し、台車本体9の動力と横方向の規制を車体50が受ける部材「中心ピン56」は球分を持ち、この球分によって台車と車体の相対的傾斜や垂直軸方向の回転を許容し、この球分に包む、内部が球分、外周が円筒形の上下摺動部材57によって車体と台車の上下の位置変化を許容する。この機構によって曲線通過時の傾斜補助や、乗客の多少、上下振動などの台車と車体の相対位置の変化を幾何学的な矛盾なく吸収する。この構造によって、ボルスタレスでもボルスタ付の機能、すなわち、動力の伝達、振動の吸収、曲線通過時の対応、幾何学的な矛盾無くすべてを満たすことが出来る。
【0023】
集電装置31は前記車輪構成部5を形成する車輪保持部材2の中央に絶縁体を用いて車輪1と平行して設置し車輪の動きと同期し、内蔵の集電装置アクチュエータ31aによって上下させて給電線32と接触離反できる接触部材34によって集電する。
【0024】
前記接触部材34は接触端子35と導電性の金属による端子支持部材36をもって構成され、給電線32と複数点の接触が得られるよう前記端子支持部材36は不等間隔のスリット37で分割され共振点をずらしてアークの発生を防止する。
【0025】
台車集電装置31に対応した給電システム85は枕木81によって直接支持される。トロリー線保持部材82は、レール80とトロリー線83との縦横方向の相対的な位置を高精度に維持するため、給電体位置決め部材84によって枕木81からの位置調整はレール基準の設置ゲージを使用すればミリ単位の高精度で一意に固定できる。
【0026】
前記トロリー線保持部材82はトロリー線83によって人が感電しないよう、絶縁十分な厚さと手指が入りにくい入り口82aと手指が入りにくい曲部82bで構成して錯誤や故意の感電を防止し騒音伝播も押さえられる。
【0027】
給電システム85は全体の熱膨張による生じる問題を防止するため、長手方向を自由端として、走行する台車システム40への給電が途絶えないようレール80の両側に給電システム85を交互に設置するとよい。ポイント(レール分岐部)では台車の通過に支障ないよう外側のレールに沿った給電システムが使用される。
【0028】
台車中央の総合制御部材38は、集電した電力と各所のセンサーからの入力を合わせて走行モータ6の回転数や舵取りアクチュエータ21、空気バネ25、空圧バネ部材3を統合的に制御するとともに内蔵空圧ポンプ、油圧ポンプの作動制御を行う。
【0029】
走行モータ6は制御電力を総合制御部材38の制御値による制御部材39の出力を得て刻々変わる所定の値で駆動される。
【0030】
以上の構成によってなる台車システム40は1車輪に4個のバネ部材を用いて独立懸架とし、4個の舵取り可能の4輪操舵 (4 Wheel Steering、4WS)と4輪全部に走行モータ6を備え4輪駆動(4WD)となって、単体で走行する「自動運転を指向した自動車」と同等の機能を持つ鉄路上の走行体と位置づけられる。この台車システム40を2台ボギー台車として用い運転されるので車体50は座席やエアコン等の乗車設備のみを具備すれば足る。
【0031】
連結して列車を構成するには車体50を連結するので無く台車システム40の前後のバンパー40に装着した連結部材オス41と連結部材メス42を連結して列車とする。
【0032】
台車システム40と車体50の接合は車体50に設置された前記中心ピン26と円筒の軸受け部材27を台車のフレーム22上に開閉自在の円筒穴を形成する一対の中心ピン接合部材28によって走行台車からの前後左右の力を車体50に伝える。上下方向の荷重は前記空気バネ24によって受けている。
【0033】
このように構成することで台車システム40が空気バネ24の空気圧を減じて空気バネ24の高さを低く保ち、車体50は下を台車システム40が自走できる空間を設けて静置させ、台車システム40を自走させて前記中心ピン56と前記中心ピン接合部材28を位置合わせして閉じて、中心位置を定め、台車システム40に設置した空気バネ24の圧力を上げて車体50と台車システム40とをクレーン等を用いずに合体させることが出来る。
【0034】
車体50にはドアの開閉を始め、照明や空調その他の多くの電気設備のための電力の供給が必要である。この電力は手作業で台車システム40と車体50との電力線を結合する方法もあるが、前記台車システム40の中央部両端の前記中心ピン56と同心の球分を持つ給電端子27と車体側の球分を持つ受電端子28の接触導通によって、台車システム40の電力の一部を、電線の接続作業を行うこと無く車体50と台車システム40の合体によって自動的に電気的な接続がなされる。また車体50は空調設備設置空間として連続した側面収納部50bを持ち多数の分散した空調設備を収納する。
【0035】
車輪1を2個のモータで駆動するので車両60(車体50と台車システム40の合体)は1両あたり16個のモータの出力を利用出来る。時速500kmで効率良く走行するためさらに連結された車両の空気抵抗を少なくして、車体50の長さを新幹線の半分12.5mに設定すれば、車両1編成の側面の空気流れを乱す車体接続部間隔25cを小さくでき、その間隙を空気袋、発泡剤製の車体間隙部材56によって埋めて編成全体の側面をなめらかにして空気抵抗を最小限にできる。また車輪の数が2倍になって新幹線16両編成に相当する長さ400mでは32両編成となって走行モータ数は512個になる。1編成あたり多数使用するので、走行モータ16の量産量、信頼性が上がり、鉄道の高速限界を上げる効果が期待できる。
【0036】
鉄道の高速化における問題として、すれ違い時のショックを低減が必要ある。特に東京名古屋間のリニアルートのように、大部分がトンネル内の走行になる路線では、先頭車体51の前部は、トンネル出口の形状等である程度対策できる微気圧波の対策よりも、すれ違い性能を優先することが必要になる。その対策として車両先端部から車体上部まで連続した凸部51bによって側方への気流を制限することが推奨される。
【0037】
車輪1の外周部は浅く、細く、転がり抵抗を損なわない形のトレッドパターン(図示無し)を車輪本体金属または強化処理表面に付加して雨天等による粘着係数の低下を少なくすることが推奨される。また前記車輪1は摩耗によって車輪外径が小さくならないよう外周に耐摩耗性能の高い硬質厚メッキを行い、このメッキ層に前記トレッドパターンを付けることによって車輪1の摩耗による外径の減少を防ぐことが推奨される。
【実施例2】
【0038】
実施例2は第10図に示す様に貨物車に使用すると自走出来る貨車となり、貨物列車は連結器で接続されない状態で列車として運行できる。目的駅に着いた貨車が分岐路へ操蛇して抜けることが可能になるので、従来のように貨車を遠方の行き先順にあらかじめ並べる操車作業が不要になる。また台車の蛇行が無くなり走行が安定する効果があるので車輪径を小さくして従来の車両限界内で高さが高い2896mmのコンテナを取り扱うことが可能になる。
【実施例3】
【0039】
第11図に示すように在来線の狭軌で本案を用いることが出来る。本案の実施によってポイント、架線、信号が不要となって保線作業が大幅に簡略になるとともに大きな事故時にヘリコプターの活用が期待できる。
【実施例4】
【0040】
第12図に示すようにLRTに応用すると、車輪にフランジが不要なので路面に溝を無くすとで道路がほとんど平坦にできる。レールはわずかに舗装面より出ていれば良くなりLRTが事故等で脱線してもレールの損傷は生じることは無く復旧が容易である。また駅が多いので駅ごとに充電設備を設けてれば蓄電池駆動ができ、空中架線を不要できることから、美しい街並みと、災害に強い街が取り戻せる。
【実施例5】
【0041】
さらに高速を目指した仕様として
図15に示す様に車体の中間に第3の台車を追加した車両99にすることも出来る。中間の台車40と車体の中心ピン56は台車の中心に対し曲率に合わせた偏倚を許容する構造により曲線を幾何学的矛盾無く通過する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
実施例1に示すよう円筒車輪と脱線防止部材を用いた台車を全輪駆動、全輪操蛇に構成し、台車の単独走行(自走台車)を基本コンセプトにすることによって台車メーカと車体メーカを分離し、台車は操蛇を基本として発達した自動車メーカに委ねることが可能になる。この自走台車を列車の前をパイロットとして走らせれば突発的な土砂崩れ等による線路破壊による破滅的な事故を未然に防ぐことが可能になる。
【0043】
鉄道は1789年に土木技師のウィリアム・ジェソップが、レールの上面は平らにし車輪側にフランジを取り付けた形式を使用して以来、蛇行に伴う横振動によって、常に「つり革が揺れる状態」はヨーダンパーによって小さくする工夫で補ってきたが、速度を上げるにつれて顕在化する技術問題として根本的な解決に至っていない。
この高速化に伴いこの横振動問題を本案によって根本的な解決して、路面からの上下振動と軌道走行の横振動両方を少なくして、速いと言うだけで多くの問題点をかかえるリニアに代わる「車輪を利用する超高速鉄道」の実用化が期待できる。
【0044】
本案に台車蛇行動による横振動が抜本的に減らすことによって鉄道の乗り心地をよくするとともに、架線を無くし、ポイント無くし、信号機を無くしたことによって鉄道の保守管理はレールと枕木に設置されるトロリー線のみを維持すれば足りることになり、電化以前、複線化以前の簡素な管理に戻ることができ、事故が起きたときも架線が無いので起重機やヘリコプター等による迅速な回復作業が容易になり、鉄道の総合的な管理費用を大幅に削減して、交通機関としての優位性を一層高める効果が期待できる。また、架線の支柱が無くなることより車窓からの景色が大きく改善でき、鉄道旅行の魅力が増して鉄道利用の一層の拡大が図れる。
【符号の説明】
【0045】
1 車輪
2 車輪支持部材
3 バネ部材
4 車輪操蛇部材
5 車輪舵取り軸軸受け
6 ブレーキ装置 (1車輪あたり4個)
7 脱線防止装置 (1車輪あたり4個)
7a 脱線防止ローラ (1車輪あたり4個)
7b 脱線防止装置用アクチュエータ (1車輪あたり4個)
8 レール中央位置検知装置 (1車輪あたり2個)
8a 反対側レールとの距離1
8b 反対側レールとの距離2
8c レール端部までの距離1
8d レール端部までの距離2
10 車輪操蛇軸軸受け部
11 前後方向の規制ローラ (1車輪あたり2個)
12 左右方向の規制ローラ (1車輪あたり2個)
13 荷重受けローラ (1車輪あたり6個)
14 サブフレーム部材 (1台車あたり4個)
15 サブフレーム連結部材
16 走行モータ (1車輪あたり 1個または2個)
17 減速機
17a モータ出力軸ピニオン
17b 減速ギア
17c 小傘歯車
17d 大傘歯車
17e 減速機出力軸
18 フレキシブル継ぎ手
19 車輪回動軸固定部材
20 フレーム
21 舵取りアクチュエータ
22 連接部材
23 舵取り支点
24 空気バネ
24a 低摩擦摺動体
26 中心ピン固定装置
31 集電装置 (1車輪あたり 1個)
31a 集電装置アクチュエータ (1車輪あたり 1個)
32 制御部材集合体
33 電力線
34 モータ制御体
35 車体給電接触部材
36 バンパー
37 連結器オス
38 連結器メス
40 台車
50 車体 (乗員や貨物を乗せる部分)
50a 車体接続部間隔
50b 連続した側面収納部
51 先頭車体
51a 連続した凸部
55 台車と車体の接続部
56 中心ピン
57 上下摺動部材 (1車体あたり 2個)
58 車体間隙部材
60 中間車両 (車体50と台車システム40の合体物)
61 先頭車両
61a 連続した凸部
70 列車 (複数の車両60連結して運行するもの)
71 新幹線規格トンネル
72 リニア規格トンネル
80 レール
81 枕木
82 トロリー線絶縁部材
82a 手指が入りにくい入り口
83 トロリー線
84 トロリー線保持部材
85 受電摺動部材
86 受電摺動部材保持バネ
87 受電アーム
88 受電アームアクチュエータ
90 車両限界
91 High Cubeコンテナ
92 貨物用台車
93 貨物車体
94 在来線車体
95 在来線台車
96 LRT用台車
97 LRT用車体
98 安全確認用単独走行台車
99 超高速車両
101 脱線防止部材の機能が有効な範囲
102 脱線防止部材の機能が一部無効な範囲