(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】冷温同時温度調整装置
(51)【国際特許分類】
F25B 29/00 20060101AFI20220207BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220207BHJP
F25B 7/00 20060101ALI20220207BHJP
F25B 30/02 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
F25B29/00 361Z
F25B1/00 399Y
F25B7/00 D
F25B30/02 H
(21)【出願番号】P 2020152452
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2021-11-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 強志
(72)【発明者】
【氏名】高牟禮 英治
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 和利
(72)【発明者】
【氏名】荒川 伸慎
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/069456(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/128668(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/045612(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025318(WO,A1)
【文献】特開2016-048125(JP,A)
【文献】特開2016-053455(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1823469(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0123384(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 29/00
F25B 1/00
F25B 7/00
F25B 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温側冷凍回路および高温側冷凍回路を有して当該低温側冷凍回路内の低温側冷媒と当該高温側冷凍回路内の高温側冷媒とが第1熱交換器において熱交換可能に構成されると共に、冷却対象に供給される第1熱交換流体を前記低温側冷凍回路の第2熱交換器において冷却可能に構成され、かつ加熱対象に供給される第2熱交換流体を前記高温側冷凍回路の第3熱交換器において加熱可能に構成された多元冷凍サイクルと、
前記第1熱交換流体を冷却すべき冷却設定温度、および前記第2熱交換流体を加熱すべき加熱設定温度に応じて前記多元冷凍サイクルの動作を制御する制御部とを備えた冷温同時温度調整装置であって、
第3熱交換流体の循環が可能に構成された流体循環路と、
前記第3熱交換流体および外部熱源の熱交換が可能に配設された第4熱交換器と、
前記冷却対象を冷却した前記第1熱交換流体、および前記第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換した前記第3熱交換流体の両流体の熱交換が可能に配設された第5熱交換器と、
前記第3熱交換器において前記第2熱交換流体と熱交換した前記高温側冷媒、および前記
第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換する前記第3熱交換流体の両流体の熱交換が可能に配設された第6熱交換器と、
前記第3熱交換器において前記第2熱交換流体と熱交換した前記高温側冷媒の前記第1熱交換器の通過量、および当該高温側冷媒の前記第6熱交換器の通過量を調整する第1調整部と、
前記第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換した前記第3熱交換流体の前記第5熱交換器の通過量を調整する第2調整部とを備え、
前記流体循環路は、前記第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換した前記第3熱交換流体が前記第5熱交換器を通過した後に前記第6熱交換器を通過する第1流路と、当該第3熱交換流体が当該第5熱交換器を通過せずに当該第6熱交換器を通過する第2流路とを備え、
前記第2調整部は、前記第3熱交換流体の前記第1流路の流量、および当該第3熱交換流体の前記第2流路の流量を調整することによって当該第3熱交換流体の前記第5熱交換器の通過量を調整可能に構成され、
前記制御部は、前記第1熱交換流体を前記冷却設定温度まで冷却するための当該冷温同時温度調整装置の冷却処理負荷が、前記第2熱交換流体を前記加熱設定温度まで加熱するための当該冷温同時温度調整装置の加熱処理負荷よりも小さいとの第1条件が満たされ、かつ前記外部熱源の温度が、前記冷却設定温度よりも高い予め規定された第1温度以上との第2条件が満たされたときに、前記冷却設定温度に応じて前記第3熱交換流体の前記第1流路の流量、および当該第3熱交換流体の前記第2流路の流量を前記第2調整部に調整させつつ、前記高温側冷媒が前記第6熱交換器を通過する通過量よりも当該高温側冷媒が前記第1熱交換器を通過する通過量の方が多くなるように前記第1調整部に調整させる第1制御態様と、
前記第1熱交換流体の冷却が不要で前記第2熱交換流体の加熱を行うとの第3条件が満たされたときに、前記第2調整部に前記第1流路を閉鎖させ、かつ前記第2流路を介して前記第3熱交換流体を前記第6熱交換器に流入させると共に、前記低温側冷凍回路を停止させ、かつ前記高温側冷凍回路による当該第2熱交換流体の加熱を実行させる第2制御態様とで当該冷温同時温度調整装置を制御可能に構成されている冷温同時温度調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷却処理負荷が前記加熱処理負荷よりも大きいとの第4条件が満たされ、かつ前記外部熱源と熱交換する前記第3熱交換流体の温度が、当該外部熱源の温度よりも高い予め規定された第2温度以上との第5条件が満たされたときに、前記第3熱交換流体の前記第1流路の流量よりも当該第3熱交換流体の前記第2流路の流量の方が多くなるように前記第2調整部に調整させつつ、前記高温側冷媒が前記第1熱交換器および前記第6熱交換器の双方を通過するように前記第1調整部に調整させる第3制御態様で当該冷温同時温度調整装置を制御可能に構成されている請求項1記載の冷温同時温度調整装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御態様において前記高温側冷媒が前記第6熱交換器を通過することなく前記第1熱交換器を通過するように前記第1調整部を制御可能に構成されている請求項1または2記載の冷温同時温度調整装置。
【請求項4】
前記第4熱交換器に対して前記外部熱源としての周囲の空気を送風する送風ファンを備え、
前記制御部は、前記送風ファンを制御して送風量を変更することで前記第4熱交換器における前記第3熱交換流体と前記空気との熱交換量を調整する請求項1から3のいずれかに記載の冷温同時温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多元冷凍サイクルを備えて冷却対象に供給される第1熱交換流体を低温側冷凍回路によって冷却しつつ加熱対象に供給される第2熱交換流体を高温側冷凍回路によって加熱可能に構成された冷温同時温度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の冷温同時温度調整装置として、ヒートポンプ式給湯装置(以下、単に「給湯装置」ともいう)の発明が下記の特許文献に開示されている。この給湯装置は、低段側の冷媒回路内の第1の冷媒(以下、「低段側回路」内の「低段側冷媒」ともいう)と、高段側の冷媒回路内の第2の冷媒(以下、「高段側回路」内の「高段側冷媒」ともいう)とが第1熱交換器において相互に熱交換可能に構成された二元式冷凍サイクルを備えている。また、この給湯装置は、給湯運転(給湯を目的とし、冷暖房を行わない運転)、給湯および暖房運転(以下、「給湯暖房運転」ともいう)、給湯および冷房運転(以下、「給湯冷房運転」ともいう)、暖房運転(暖房を目的とし、給湯を行わない運転)、並びに冷房運転(冷房を目的とし、給湯を行わない運転)の5種類の運転が可能に構成されている。
【0003】
この給湯装置では、給湯運転時に、第1圧縮機から吐出される低段側冷媒のすべてが第1熱交換器および第2熱交換器をこの順で通過した後に室外熱交換器を通過して第1圧縮機に吸入されるように低段側回路の冷媒流路が切り替えられる。この際には、低段側回路の第2熱交換器によって予熱された後に高段側回路の凝縮器によって加熱されることで給湯水が温度上昇させられる。また、給湯暖房運転時には、給湯運転時における低段側冷媒の上記の流路に加え、第1圧縮機から吐出される低段側冷媒の一部が室内熱交換器を通過した後に室外熱交換器を通過して第1圧縮機に吸入されるように冷媒流路が形成される。この際には、給湯運転時と同様に給湯水が温度上昇させられると共に、室内熱交換器において室内の空気が温度上昇させられて室内が暖房される。
【0004】
さらに、給湯冷房運転時には、第1圧縮機から吐出される低段側冷媒の一部が第1熱交換器および第2熱交換器をこの順で通過した後に室内熱交換器を通過して第1圧縮機に吸入され、第1圧縮機から吐出される低段側冷媒の他の一部が室外熱交換器を通過した後に室内熱交換器を通過して第1圧縮機に吸入されるように冷媒流路が切り替えられる。この際には、低段側回路の第2熱交換器によって予熱された後に高段側回路の凝縮器によって加熱されることで給湯水が十分に温度上昇させられると共に、室内熱交換器において室内の空気が温度低下させられて室内が冷房される。
【0005】
また、暖房運転時には、第1圧縮機から吐出される低段側冷媒のすべてが室内熱交換器を通過した後に室外熱交換器を通過して第1圧縮機に吸入されるように冷媒流路が切り替えられることで、室内熱交換器において室内の空気が温度上昇させられて室内が暖房される。さらに、冷房運転時には、第1圧縮機から吐出される低段側冷媒のすべてが室外熱交換器を通過した後に室内熱交換器を通過して第1圧縮機に吸入されるように冷媒流路が切り替えられることで、室内熱交換器において室内の空気が温度低下させられて室内が冷房される。このように、この給湯装置では、低段側冷媒の流路の切り替えによって用途に応じた加熱処理および/または冷却処理を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-263758号公報(第2-4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献に開示の給湯装置には、以下のような課題が存在する。具体的には、上記の給湯装置では、給湯のみを目的とした給湯運転、空調のみを目的とした暖房運転や冷房運転、並びに、給湯および空調の並行処理を目的とした給湯暖房運転や給湯冷房運転を行うことが可能な構成が採用されている。この場合、給湯暖房運転や給湯冷房運転時に規定量の給湯水を規定時間内に規定温度まで加熱するには、高段側回路の凝縮器における給湯水の加熱に必要な量の高段側冷媒を第1熱交換器において蒸発させる必要があり、そのためには、十分な量の低段側冷媒が第1熱交換器に供給され、かつ給湯水の予熱に必要な量の低段側冷媒が第2熱交換器に供給されるように、十分な量の低段側冷媒を第1圧縮機から吐出させる必要がある。
【0008】
また、給湯冷房運転時に必要量の低段側冷媒を第1圧縮機から吐出させるには、室内熱交換器において十分な量の低段側冷媒を蒸発させる必要がある。このため、給湯冷房運転時における冷房設定温度が高いとき(冷房設定温度まで冷房するための冷房処理負荷が小さいときの一例)に、第1圧縮機から吐出させるべき量の低段側冷媒のすべてを室内熱交換器において蒸発させた場合には、室内が冷房設定温度よりも低温まで冷房されることがある。また、冷房設定温度よりも低温まで冷房しない場合には、室内熱交換器における蒸発量が少量となることで必要量の低段側冷媒を第1圧縮機から吐出させることができなくなることがある。さらに、給湯冷房運転時の室温が低いときにも、室内熱交換器における蒸発量が少量となることで必要量の低段側冷媒を第1圧縮機から吐出させることができなくなることがある。
【0009】
一方、上記の給湯装置では、給湯運転時、給湯暖房運転時および暖房運転時(冷却処理を実行しないとき)に室外熱交換器を蒸発器として機能させ、給湯冷房運転時および冷房運転時(冷却処理を実行するとき)に室内熱交換器を蒸発器として機能させるように低段側冷媒の流路を切り替える構成が採用されている。このため、給湯運転時には、大量の低段側冷媒を蒸発させることで室外熱交換器の近傍の外気が低段側冷媒との熱交換によって温度低下するものの、この外気の温度低下に起因する不都合が存在しなければ、第1熱交換器および第2熱交換器において必要とされる低段側冷媒を第1圧縮機から吐出させ続けることができる。
【0010】
しかしながら、加熱処理と冷却処理とを実行可能な冷温同時温度調整装置のなかには、上記の給湯装置とは異なり、冷却処理を実行しているか否かを問わず、冷却処理時に冷却する流体を低温側冷凍回路の蒸発器によって冷却し続ける必要がある構成(上記の給湯装置における室内熱交換器に相当する熱交換器を蒸発器として機能させ続ける必要がある構成:室外熱交換器を蒸発器として機能させるような冷媒流路の切替えができない構成)が採用された装置が数多く存在する。そのような構成の冷温同時温度調整装置では、加熱処理だけを実行しようとしても、実行する必要のない冷却処理が並行して実行される状態となる。
【0011】
つまり、上記の給湯装置の動作状態に例えるならば、室内の冷房が不要な状態において給湯水を加熱するときであっても、第1熱交換器に供給すべき十分な量の低段側冷媒を室内熱交換器において蒸発させる給湯冷房運転を実行することとなる。このため、かかる構成の冷温同時温度調整装置では、室内の空気が不要に温度低下させられる不都合が生じてしまう。また、室内の空気の温度低下が許されない使用環境のときには、給湯水を加熱するのに必要な十分な量の低段側冷媒を第1熱交換器等に供給することができなくなってしまう。
【0012】
また、上記の給湯装置では、給湯冷房運転時における冷房設定温度が低いとき(冷房設定温度まで冷房するための冷房処理負荷が大きいときの一例)に、第1圧縮機から吐出させるべき量の低段側冷媒のすべてを室内熱交換器において蒸発させても、室内を冷房設定温度まで十分に冷房できないことがある。また、冷房設定温度よりも低温まで冷房した場合には、室内熱交換器における蒸発量が多量となることで、第1熱交換器や第2熱交換器に供給すべき量を超える多量の低段側冷媒を第1圧縮機から吐出させることとなる。この結果、第1熱交換器において必要以上に多量の高段側冷媒を蒸発させ、かつ第2熱交換器において必要以上に給湯水を予熱することとなってしまう。さらに、給湯冷房運転時の室温が高いときにも、室内熱交換器における蒸発量が多量となることで、第1熱交換器や第2熱交換器に供給すべき量を超える多量の低段側冷媒を第1圧縮機から吐出させることとなり、結果として、第1熱交換器において必要以上に多量の高段側冷媒を蒸発させ、かつ第2熱交換器において必要以上に給湯水を予熱することとなってしまう。
【0013】
このように、上記特許文献に開示の給湯装置では、使用環境によっては、規定量の給湯水を規定時間内に規定温度まで加熱するのが困難となったり、冷房設定温度に冷房するのが困難となったりすることがある。
【0014】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、第1熱交換流体の冷却処理負荷が小さい使用環境下において第1熱交換流体の冷却および第2熱交換流体の加熱を正常に実行可能で、第1熱交換流体の冷却処理が不要な使用環境下においても第2熱交換流体の加熱を正常に実行し得る冷温同時温度調整装置を提供することを主目的とする。また、第1熱交換流体の冷却処理負荷が大きい使用環境下においても第1熱交換流体の冷却および第2熱交換流体の加熱を正常に実行し得る冷温同時温度調整装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の冷温同時温度調整装置は、低温側冷凍回路および高温側冷凍回路を有して当該低温側冷凍回路内の低温側冷媒と当該高温側冷凍回路内の高温側冷媒とが第1熱交換器において熱交換可能に構成されると共に、冷却対象に供給される第1熱交換流体を前記低温側冷凍回路の第2熱交換器において冷却可能に構成され、かつ加熱対象に供給される第2熱交換流体を前記高温側冷凍回路の第3熱交換器において加熱可能に構成された多元冷凍サイクルと、前記第1熱交換流体を冷却すべき冷却設定温度、および前記第2熱交換流体を加熱すべき加熱設定温度に応じて前記多元冷凍サイクルの動作を制御する制御部とを備えた冷温同時温度調整装置であって、第3熱交換流体の循環が可能に構成された流体循環路と、前記第3熱交換流体および外部熱源の熱交換が可能に配設された第4熱交換器と、前記冷却対象を冷却した前記第1熱交換流体、および前記第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換した前記第3熱交換流体の両流体の熱交換が可能に配設された第5熱交換器と、前記第3熱交換器において前記第2熱交換流体と熱交換した前記高温側冷媒、および前記第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換する前記第3熱交換流体の両流体の熱交換が可能に配設された第6熱交換器と、前記第3熱交換器において前記第2熱交換流体と熱交換した前記高温側冷媒の前記第1熱交換器の通過量、および当該高温側冷媒の前記第6熱交換器の通過量を調整する第1調整部と、前記第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換した前記第3熱交換流体の前記第5熱交換器の通過量を調整する第2調整部とを備え、前記流体循環路は、前記第4熱交換器において前記外部熱源と熱交換した前記第3熱交換流体が前記第5熱交換器を通過した後に前記第6熱交換器を通過する第1流路と、当該第3熱交換流体が当該第5熱交換器を通過せずに当該第6熱交換器を通過する第2流路とを備え、前記第2調整部は、前記第3熱交換流体の前記第1流路の流量、および当該第3熱交換流体の前記第2流路の流量を調整することによって当該第3熱交換流体の前記第5熱交換器の通過量を調整可能に構成され、前記制御部は、前記第1熱交換流体を前記冷却設定温度まで冷却するための当該冷温同時温度調整装置の冷却処理負荷が、前記第2熱交換流体を前記加熱設定温度まで加熱するための当該冷温同時温度調整装置の加熱処理負荷よりも小さいとの第1条件が満たされ、かつ前記外部熱源の温度が、前記冷却設定温度よりも高い予め規定された第1温度以上との第2条件が満たされたときに、前記冷却設定温度に応じて前記第3熱交換流体の前記第1流路の流量、および当該第3熱交換流体の前記第2流路の流量を前記第2調整部に調整させつつ、前記高温側冷媒が前記第6熱交換器を通過する通過量よりも当該高温側冷媒が前記第1熱交換器を通過する通過量の方が多くなるように前記第1調整部に調整させる第1制御態様と、前記第1熱交換流体の冷却が不要で前記第2熱交換流体の加熱を行うとの第3条件が満たされたときに、前記第2調整部に前記第1流路を閉鎖させ、かつ前記第2流路を介して前記第3熱交換流体を前記第6熱交換器に流入させると共に、前記低温側冷凍回路を停止させ、かつ前記高温側冷凍回路による当該第2熱交換流体の加熱を実行させる第2制御態様とで当該冷温同時温度調整装置を制御可能に構成されている。
【0016】
請求項2記載の冷温同時温度調整装置は、請求項1記載の冷温同時温度調整装置において、前記制御部は、前記冷却処理負荷が前記加熱処理負荷よりも大きいとの第4条件が満たされ、かつ前記外部熱源と熱交換する前記第3熱交換流体の温度が、当該外部熱源の温度よりも高い予め規定された第2温度以上との第5条件が満たされたときに、前記第3熱交換流体の前記第1流路の流量よりも当該第3熱交換流体の前記第2流路の流量の方が多くなるように前記第2調整部に調整させつつ、前記高温側冷媒が前記第1熱交換器および前記第6熱交換器の双方を通過するように前記第1調整部に調整させる第3制御態様で当該冷温同時温度調整装置を制御可能に構成されている。
【0017】
請求項3記載の冷温同時温度調整装置は、請求項1または2記載の冷温同時温度調整装置において、前記制御部は、前記第1制御態様において前記高温側冷媒が前記第6熱交換器を通過することなく前記第1熱交換器を通過するように前記第1調整部を制御可能に構成されている。
【0018】
請求項4記載の冷温同時温度調整装置は、請求項1から3のいずれかに記載の冷温同時温度調整装置において、前記第4熱交換器に対して前記外部熱源としての周囲の空気を送風する送風ファンを備え、前記制御部は、前記送風ファンを制御して送風量を変更することで前記第4熱交換器における前記第3熱交換流体と前記空気との熱交換量を調整する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の冷温同時温度調整装置では、制御部が、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも小さいとの第1条件が満たされ、かつ外部熱源の温度が、冷却設定温度よりも高い予め規定された第1温度以上との第2条件が満たされたときに、冷却設定温度に応じて第3熱交換流体の第1流路の流量および第2流路の流量を第2調整部に調整させつつ、高温側冷媒が第6熱交換器を通過する通過量よりも高温側冷媒が第1熱交換器を通過する通過量の方が多くなるように第1調整部に調整させる第1制御態様と、第1熱交換流体の冷却が不要で第2熱交換流体の加熱を行うとの第3条件が満たされたときに、第2調整部に第1流路を閉鎖させ、かつ第2流路を介して第3熱交換流体を第6熱交換器に流入させると共に、低温側冷凍回路を停止させ、かつ高温側冷凍回路による第2熱交換流体の加熱を実行させる第2制御態様とで冷温同時温度調整装置を制御する。
【0020】
したがって、請求項1記載の冷温同時温度調整装置によれば、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも小さく、外部熱源の温度が冷却設定温度よりも高いとき([第2条件]が満たされる状態のとき)には、第1制御態様で冷温同時温度調整装置が制御されて、第2熱交換器による冷却に先立ち、第4熱交換器において外部熱源から第3熱交換流体に吸熱した熱を第5熱交換器において第3熱交換流体から第1熱交換流体に吸熱させて、第2熱交換器において第1熱交換流体の熱を低温側冷媒に十分に吸熱させることで、第1熱交換流体を冷却設定温度まで冷却しつつ第1熱交換流体の過冷却を好適に回避することができ、第2熱交換器において低温側冷媒に吸熱した熱と、圧縮機における圧縮によって生じた熱とを第1熱交換器において高温側冷媒に吸熱させて、第3熱交換器において第2熱交換流体を加熱設定温度まで十分に加熱することができる。また、第1熱交換流体を冷却することなく第2熱交換流体を加熱する必要があるとき([第3条件]が満たされる状態のとき)には、第2制御態様で冷温同時温度調整装置が制御されて低温側冷凍回路が停止させられ、第1熱交換流体の不要な冷却が行われる事態を回避することができると共に、外部熱源から第3熱交換流体に吸熱された熱を利用して第6熱交換器において高温側冷媒を蒸発させる(第3熱交換流体から高温側冷媒に吸熱させる)ことで高温側冷凍回路による第2熱交換流体の加熱処理についても確実に実行することができる。これにより、第1熱交換流体の冷却処理を実行することなく第2熱交換流体の加熱を正常に実行して加熱設定温度の第2熱交換流体を加熱対象に対して確実に供給することができる。
【0021】
請求項2記載の冷温同時温度調整装置では、制御部が、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも大きいとの第4条件が満たされ、かつ外部熱源と熱交換する第3熱交換流体の温度が、外部熱源の温度よりも高い予め規定された第2温度以上との第5条件が満たされたときに、第3熱交換流体の第1流路の流量よりも第3熱交換流体の第2流路の流量の方が多くなるように第2調整部に調整させつつ、高温側冷媒が第1熱交換器および第6熱交換器の双方を通過するように第1調整部に調整させる第3制御態様で冷温同時温度調整装置を制御する。
【0022】
したがって、請求項2記載の冷温同時温度調整装置によれば、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも大きく、第2熱交換流体の過加熱や第1熱交換流体の冷却不足を招くおそれのある使用環境下において、外部熱源と熱交換する第3熱交換流体の温度が外部熱源の温度よりも高いとき([第5条件]が満たされる状態のとき)に、第3制御態様で冷温同時温度調整装置が制御されて、高温側冷凍回路において第3熱交換器を介して第2熱交換流体に放熱することのできない熱が、第6熱交換器を介して第3熱交換流体に放熱されて第4熱交換器において第3熱交換流体から外部熱源に放熱されるため、高温側冷凍回路における第2熱交換流体の過加熱を招くことなく、第1熱交換流体を冷却設定温度まで冷却するのに必要な十分な量の低温側冷媒を第1熱交換器において凝縮させて第2熱交換器に供給させ、第1熱交換流体を冷却設定温度まで十分に冷却することができる。
【0023】
請求項3記載の冷温同時温度調整装置によれば、制御部が、第1制御態様において高温側冷媒が第6熱交換器を通過することなく第1熱交換器を通過するように第1調整部を制御することにより、第1制御態様において高温側冷媒が第1熱交換器および第6熱交換器の双方を通過するように調整させる構成とは異なり、第6熱交換器における第3熱交換流体および高温側冷媒の間の熱交換が生じないため、外部熱源から第3熱交換流体に吸熱した熱を効率よく第1熱交換流体に吸熱させ、この熱を第2熱交換器において第1熱交換流体から低温側冷媒に吸熱させる容易な制御によって、高温側冷凍回路において第2熱交換流体を加熱設定温度まで十分に加熱させつつ、高温側冷凍回路における第1熱交換流体の過冷却を好適に回避することができる。
【0024】
請求項4記載の冷温同時温度調整装置によれば、制御部が、第4熱交換器に対して外部熱源としての周囲の空気を送風する送風ファンを制御して送風量を変更することで第4熱交換器における第3熱交換流体と空気との熱交換量を調整することにより、例えば、ポンプによる第3熱交換流体の圧送量を変化させることで第5熱交換器や第6熱交換器における熱交換量を変化させる構成と比較して、高温側冷媒や第1熱交換流体と熱交換させる第3熱交換流体の温度を比較的容易に所望の温度に調整することができるため、第5熱交換器や第6熱交換器における熱交換量を確実かつ容易に所望の熱交換量に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】冷温同時温度調整装置1の構成を示す構成図である。
【
図2】冷温同時温度調整装置1の始動時の動作、および冷却処理負荷と加熱処理負荷とがバランスしている状態の動作について説明するための説明図である。
【
図3】第1吸熱モードでの動作について説明するための説明図である。
【
図4】放熱モードでの動作について説明するための説明図である。
【
図5】第2吸熱モードでの動作について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、冷温同時温度調整装置の実施の形態について説明する。
【0027】
最初に、冷温同時温度調整装置1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0028】
図1に示す冷温同時温度調整装置1は、「冷温同時温度調整装置」に相当し、一例として、高温の洗浄液によって対象物を洗浄する洗浄装置(図示せず)において洗浄液を加熱する加熱器(「加熱対象」の一例:以下、「加熱対象XH」ともいう)に熱媒液循環路LHを介して高温の熱媒液Wh(「第2熱交換流体」の一例)を供給すると共に、加熱対象XH(加熱器)における加熱によって気化した洗浄液を冷却して液化させる冷却器(「冷却対象」の一例:以下、「冷却対象XC」ともいう)に対して熱媒液循環路LCを介して低温の熱媒液Wc(「第1熱交換流体」の一例)を供給することができるように構成されている。
【0029】
この冷温同時温度調整装置1は、二元冷凍サイクル2、熱媒液循環路3、操作部4、表示部5、制御部6および記憶部7を備えている。なお、本例では、洗浄装置の付帯設備である熱媒液循環路LH,LCを利用して加熱対象XHに対する熱媒液Whの供給や冷却対象XCに対する熱媒液Wcの供給を行う例について説明するが、「第1熱交換流体」を供給する供給用配管(上記の熱媒液循環路LC)や、「第2熱交換流体」を供給する供給用配管(上記の熱媒液循環路LH)を「冷温同時温度調整装置」の構成要素として備えることもできる。
【0030】
一方、二元冷凍サイクル2は、「多元冷凍サイクル」の一例であって、「低温側冷凍回路」の一例である低温側冷凍回路(低段側冷凍回路)2Cと、「高温側冷凍回路」の一例である高温側冷凍回路(高段側冷凍回路)2Hとを備えている。この二元冷凍サイクル2は、低温側冷凍回路2C内を循環させられる低温側冷媒Rc(「低温側冷媒」の一例)と、高温側冷凍回路2H内を循環させられる高温側冷媒Rh(「高温側冷媒」の一例)とが「第1熱交換器」の一例であるカスケードコンデンサ12において相互に熱交換可能に構成されている。
【0031】
低温側冷凍回路2Cは、高温側冷凍回路2Hと共用の上記のカスケードコンデンサ12に加え、圧縮機11、流量調整弁13および蒸発器14を備えて構成されている。圧縮機11は、制御部6の制御に従って低温側冷媒Rcを圧縮(圧送)する。カスケードコンデンサ12は、前述したように、低温側冷凍回路2C内の低温側冷媒Rcと高温側冷凍回路2H内の高温側冷媒Rhとの熱交換が可能に配設されると共に、高温側冷媒Rhとの熱交換によって低温側冷媒Rcを凝縮させる「凝縮器」として機能する。
【0032】
流量調整弁13は、低温側冷媒Rcの流路における蒸発器14の上流側に配設されており、「膨張弁」として機能して、蒸発器14を通過させる(蒸発器14において蒸発させる)低温側冷媒Rcの流量を制御部6の制御に従って調整する。蒸発器14は、「第2熱交換器」の一例であって、後述するように流量調整弁13を通過させられた低温側冷媒Rcと熱媒液循環路LC内の熱媒液Wc(冷却対象XCに対して供給される熱媒液Wc)との熱交換によって熱媒液Wcを冷却すると共に低温側冷媒Rcを蒸発させる。
【0033】
高温側冷凍回路2Hは、低温側冷凍回路2Cと共用の前述のカスケードコンデンサ12に加え、圧縮機21、凝縮器22、流量調整弁23、流量調整弁24、熱交換器25および開閉弁26a~26cを備えて構成されている。圧縮機21は、制御部6の制御に従って高温側冷媒Rhを圧縮(圧送)する。凝縮器22は、「第3熱交換器」の一例であって、圧縮機21によって圧送された(圧縮機21から吐出された)高温側冷媒Rhと熱媒液循環路LH内の熱媒液Wh(加熱対象XHに対して供給される熱媒液Wh)との熱交換によって熱媒液Whを加熱すると共に高温側冷媒Rhを凝縮させる。
【0034】
流量調整弁23は、高温側冷媒Rhの流路におけるカスケードコンデンサ12の上流側に配設されており、「膨張弁」として機能して、カスケードコンデンサ12を通過させる(カスケードコンデンサ12において蒸発させる)高温側冷媒Rhの流量を制御部6の制御に従って調整する。なお、高温側冷凍回路2Hにおいては、カスケードコンデンサ12が低温側冷媒Rcとの熱交換によって高温側冷媒Rhを蒸発させる「蒸発器」として機能する。流量調整弁24は、低温側冷媒Rcの流路における熱交換器25の上流側に配設されており、「膨張弁」の他の1つとして機能すると共に、熱交換器25を通過させる(熱交換器25において蒸発または凝縮させる)低温側冷媒Rcの流量を制御部6の制御に従って調整する。
【0035】
熱交換器25は、「第6熱交換器」の一例であって、凝縮器22において熱媒液Whと熱交換した高温側冷媒Rh、および後述の熱媒液循環路3内の熱媒液W3(「第3熱交換流体」の一例)の両流体の熱交換が可能に配設されている。開閉弁26a~26cは、制御部6の制御に従い、圧縮機21によって圧送されて凝縮器22において熱媒液Whと熱交換した高温側冷媒Rhのカスケードコンデンサ12の通過量、および流量調整弁24の通過量を調整する。この場合、本例の冷温同時温度調整装置1(高温側冷凍回路2H)では、流量調整弁23,24および開閉弁26a~26cが相俟って「第1調整部」が構成されている。
【0036】
熱媒液循環路3は、「流体循環路」の一例であって、熱媒液W3を循環可能に構成されている。具体的には、熱媒液循環路3は、高温側冷凍回路2Hと共用の前述の熱交換器25に加え、ポンプ31、熱交換器32,33および三方弁34を備えて構成されている。ポンプ31は、制御部6の制御下で熱媒液W3を循環させる。なお、本例の冷温同時温度調整装置1(熱媒液循環路3)では、一例として、圧送量固定型の液送ポンプでポンプ31が構成されている。
【0037】
熱交換器32は、「第4熱交換器」の一例であって、熱媒液W3と、「外部熱源」の一例である「外気(熱交換器32の周囲の空気)」との熱交換(外気が有する熱の熱媒液W3への吸熱、または、熱媒液W3が有する熱の外気への放熱)が可能に配設されている。この熱交換器32には、制御部6の制御下で熱交換器32に対して外気を送風する回転数可変型の送風機32a(「送風ファン」の一例)が配設されている。これにより、本例の冷温同時温度調整装置1(熱媒液循環路3)では、熱交換器32に対する送風量を変更することで熱交換器32における熱媒液W3と外気との熱交換量を調整することができるように構成されている。熱交換器33は、「第5熱交換器」の一例であって、冷却対象XCの冷却によって温度上昇した熱媒液Wc、および熱交換器32において外気と熱交換した熱媒液W3の両流体の熱交換が可能に配設されている。
【0038】
三方弁34は、「第2調整部」の一例であって、制御部6の制御下で、熱交換器32において外気と熱交換した熱媒液W3の熱交換器33の通過量を調整可能に配設されている。この場合、本例の熱媒液循環路3は、熱交換器32において外気と熱交換した熱媒液W3が熱交換器33を通過した後に熱交換器25を通過する「第1流路」と、熱媒液W3が熱交換器33を通過せずに熱交換器25を通過する「第2流路」とを備えている。また、本例の熱媒液循環路3では、三方弁34が、制御部6の制御に従って熱媒液W3の「第1流路」の流量、および熱媒液W3の「第2流路」の流量を調整することによって「第3熱交換流体の第5熱交換器の通過量(熱媒液W3の熱交換器33の通過量)」を調整する構成が採用されている。
【0039】
操作部4は、熱媒液循環路LCを介して冷却対象XCに供給する熱媒液Wcの温度(冷温同時温度調整装置1による熱媒液Wcの冷却設定温度)や、熱媒液循環路LHを介して加熱対象XHに供給する熱媒液Whの温度(冷温同時温度調整装置1による熱媒液Whの加熱設定温度)などの各種の動作条件を設定するための操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を制御部6に出力する。表示部5は、制御部6の制御下で、冷温同時温度調整装置1の動作条件を設定するための動作条件設定画面や、冷温同時温度調整装置1の動作状態を示す動作状態表示画面(いずれも図示せず)などを表示する。
【0040】
制御部6は、「制御部」の一例であって、冷温同時温度調整装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部6は、熱媒液Wcを冷却すべき冷却設定温度(利用者によって指定される冷却目標温度)、および熱媒液Whを加熱すべき加熱設定温度(利用者によって指定される加熱目標温度)に応じて二元冷凍サイクル2や熱媒液循環路3の動作を制御する。この場合、制御部6は、低温側冷凍回路2Cによる熱媒液Wcの冷却処理、および高温側冷凍回路2Hによる熱媒液Whの加熱処理を並行して実行するか、或いは、加熱処理だけを単独で実行するかに応じて各部を制御する。また、冷却処理および加熱処理を並行して実行するときに、制御部6は、主として、熱媒液Wcを冷却設定温度まで冷却するための冷温同時温度調整装置1の冷却処理負荷と、熱媒液Whを加熱設定温度まで加熱するための冷温同時温度調整装置1の加熱処理負荷との大小関係に応じて各部を制御する。
【0041】
この冷却処理負荷や加熱処理負荷は、冷却設定温度、加熱設定温度、熱媒液Wcの冷却処理前の温度、熱媒液Whの加熱処理前の温度、熱媒液Wcの流量、熱媒液Whの流量および外気温など(以下、これらのパラメータを総称して「使用環境」ともいう)に応じて変化する。したがって、本例の冷温同時温度調整装置1では、一例として、低温側冷凍回路2Cにおける低温側冷媒Rcの凝縮温度に基づいて冷却処理負荷を逐次特定すると共に、高温側冷凍回路2Hにおける高温側冷媒Rhの凝縮温度に基づいて加熱処理負荷を逐次特定する構成が採用されている。なお、制御部6による二元冷凍サイクル2(低温側冷凍回路2Cおよび高温側冷凍回路2H)や熱媒液循環路3の各構成要素の制御については、後に具体的な例を挙げて詳細に説明する。記憶部7は、制御部6の動作プログラムや、制御部6の演算結果などを記憶する。
【0042】
なお、冷温同時温度調整装置1は、実際には、低温側冷凍回路2C内の低温側冷媒Rcの圧力や温度、高温側冷凍回路2H内の高温側冷媒Rhの圧力や温度、熱媒液循環路3内の熱媒液W3の温度、外気温、熱媒液Wcの温度、および熱媒液Whの温度などを検出する各種センサが配設されているが、冷温同時温度調整装置1の構成に関する理解を容易とするために、これらのセンサについての図示や詳細な説明を省略する。
【0043】
この冷温同時温度調整装置1による熱媒液Wcの冷却処理および熱媒液Whの加熱処理に際して、制御部6は、
図2に示すように、まず、熱媒液循環路3のポンプ31を制御して熱媒液W3の圧送を開始させ、かつ送風機32aを制御して送風を開始させると共に、低温側冷凍回路2Cおよび高温側冷凍回路2Hの動作を開始させる。なお、同図および後に参照する
図3~5では、低温側冷凍回路2Cにおいて低温側冷媒Rcの通過が許容されている流路を実線で図示し、かつ低温側冷媒Rcの通過が規制されている流路を破線で図示すると共に、熱媒液循環路3において熱媒液W3の通過が許容されている流路を実線で図示し、かつ熱媒液W3の通過が規制されている流路を破線で図示している。
【0044】
具体的には、制御部6は、開閉弁26bを開口状態に制御し、かつ開閉弁26a,26c,26cを閉塞状態に制御すると共に、流量調整弁24を最小の開度(閉塞状態)に制御し、かつ流量調整弁23を「膨張弁」として機能させるのに必要な開度に制御することにより、圧縮機21によって圧縮(圧送)される高温側冷媒Rhが、凝縮器22、開閉弁26b、流量調整弁23およびカスケードコンデンサ12を経て圧縮機21に吸引される冷媒流路を形成する。この際には、圧縮機21から吐出された高温の高温側冷媒Rhが凝縮器22において熱媒液Whに放熱して温度低下させられることで凝縮させられると共に熱媒液Whを加熱する。これにより、高温側冷凍回路2Hによって加熱された高温の熱媒液Whが加熱対象XHに供給される。
【0045】
また、凝縮器22において凝縮させられた高温側冷媒Rhが流量調整弁23を通過後にカスケードコンデンサ12内において低温側冷媒Rcから吸熱して温度上昇させられることで蒸発すると共に低温側冷媒Rcを冷却する。さらに、カスケードコンデンサ12における放熱によって凝縮させられた低温側冷媒Rcは、流量調整弁13を通過後に蒸発器14内において熱媒液Wcから吸熱して蒸発させられると共に熱媒液Wcを冷却する。これにより、低温側冷凍回路2Cによって冷却された低温の熱媒液Wcが冷却対象XCに供給される。
【0046】
なお、圧縮機11の回転数(低温側冷媒Rcの圧送量)や「膨張弁(流量調整弁13)」の開度などを冷却設定温度および熱媒液Wcの温度に応じて変化させる制御、並びに圧縮機21の回転数(高温側冷媒Rhの圧送量)や「膨張弁(この時点では、流量調整弁23)」の開度などを加熱設定温度および熱媒液Whの温度に応じて変化させる制御については、多元冷凍サイクルを有する冷温同時温度調整装置において一般的に行われる制御と同様のため、これらの制御に関する詳細な説明を省略する。
【0047】
この場合、本例の冷温同時温度調整装置1では、前述したように、制御部6が、主として冷却処理負荷および加熱処理負荷の大小関係に基づいて二元冷凍サイクル2や熱媒液循環路3の各部の動作を制御する。具体的には、制御部6は、冷温同時温度調整装置1の動作を開始したときから、低温側冷媒Rcや高温側冷媒Rhの凝縮温度を特定し、特定した温度に基づいて冷却処理負荷および加熱処理負荷をそれぞれ特定する。この際に、特定される冷却処理負荷および加熱処理負荷の両負荷が、予め規定された許容相違範囲内でバランスするような使用環境であるときに、制御部6は、高温側冷媒Rhの流路を始動時の状態(
図2に示す状態)のまま維持する(通常モードでの動作)。なお、このような使用環境で長時間に亘って動作を継続したとき(後述の吸熱モードや放熱モードでの動作に直ちに移行しない可能性が高いとき)には、熱媒液循環路3のポンプ31や送風機32aを停止させてもよい。
【0048】
一方、冷却設定温度と冷却処理前の熱媒液Wcの温度差が小さい使用環境下や、加熱設定温度と加熱処理前の熱媒液Whとの温度差が大きいような使用環境下では、特定される冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも小さくなる(「第1条件」が満たされたときの一例)。このような使用環境下であって、かつ外気の温度が、冷却設定温度よりも高い予め規定された第1温度以上のときに(「第2条件」が満たされたときの一例)、制御部6は、二元冷凍サイクル2および熱媒液循環路3を制御して第1吸熱モードで動作させる(「第1制御態様」の一例)。
【0049】
具体的には、制御部6は、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも小さいときに、
図3に示すように、まず、ポンプ31および送風機32aが停止しているときには、これらの動作を開始させると共に、熱媒液W3が前述の「第1流路」および「第2流路」の双方を通過するように三方弁34を制御する。また、制御部6は、一例として、熱交換器32を通過した直後の熱媒液W3の温度が外気の温度と同程度となるように送風機32aを制御して熱交換器32に対する外気の送風量を調整させる。これにより、外気温と同程度の温度の熱媒液W3がポンプ31によって圧送された状態となる。
【0050】
また、制御部6は、開閉弁26bを開口状態に制御し、かつ開閉弁26a,26cを閉塞状態に制御すると共に、流量調整弁24を最小の開度(閉塞状態)に制御し、かつ流量調整弁23を高温側冷凍回路2Hの「膨張弁」として機能させるのに必要な開度に制御する。これにより、高温側冷凍回路2Hにおいて、圧縮機21によって圧縮(圧送)される高温側冷媒Rhが、凝縮器22、開閉弁26b、流量調整弁23およびカスケードコンデンサ12を経て圧縮機21に吸引される(熱交換器25を通過することなくカスケードコンデンサ12を通過する)冷媒流路が形成される(「高温側冷媒が第6熱交換器を通過する通過量よりも高温側冷媒が第1熱交換器を通過する通過量の方が多くなるように第1調整部に調整させる」との制御の一例)。また、制御部6は、熱交換器33の通過後の熱媒液W3の温度に応じて三方弁34を制御して熱媒液W3の「第1流路」の流量および「第2流路」の流量を調整させる。これにより、冷温同時温度調整装置1が第1吸熱モードで動作した状態となる。
【0051】
この第1吸熱モードにおいて、熱媒液循環路3では、熱交換器32における外気との熱交換によって外気の温度と同程度の温度(冷却設定温度よりも高い温度)となった熱媒液W3がポンプ31によって圧送され、その一部が熱交換器33を通過させられる際に、冷却対象XCの冷却によって温度上昇させられた熱媒液Wcと熱交換させられる。これにより、冷却対象XCの冷却、および熱媒液W3との熱交換によって熱媒液Wcが十分に温度上昇させられると共に、熱媒液W3がある程度温度低下させられる。この熱媒液W3は、熱交換器32を通過させられる際に外気と熱交換させられることで外気の温度と同程度の温度まで再び加熱される。
【0052】
また、低温側冷凍回路2Cでは、圧縮機11から吐出された高温の低温側冷媒Rcがカスケードコンデンサ12において高温側冷媒Rhに放熱して凝縮させられると共に高温側冷媒Rhを蒸発(温度上昇)させ、凝縮させられた低温側冷媒Rcが流量調整弁13を通過後に蒸発器14内において熱媒液Wcから吸熱して温度上昇させられる。この際に、熱交換器33において熱媒液W3の熱を吸熱した熱媒液Wcが、蒸発器14内における低温側冷媒Rcとの熱交換によって冷却設定温度まで冷却される。また、高温側冷凍回路2Hでは、カスケードコンデンサ12において蒸発させられて圧縮機21における圧縮によってさらに温度上昇させられた高温の高温側冷媒Rhが凝縮器22において熱媒液Whに放熱して凝縮させられると共に熱媒液Whを加熱する。
【0053】
つまり、冷却処理負荷が小さく、かつ外気の温度がある程度高い使用環境下において移行させられる第1吸熱モードでは、低温側冷凍回路2C(蒸発器14)による冷却に先立ち、熱交換器32において外気から熱媒液W3に吸熱した熱を熱交換器33において熱媒液W3から熱媒液Wcに吸熱させることにより、蒸発器14において熱媒液Wcの熱を低温側冷媒Rcに十分に吸熱させても熱媒液Wcの過冷却を招くことなく冷却設定温度に冷却することが可能となっている。また、蒸発器14において吸熱した熱の分だけ、カスケードコンデンサ12において高温側冷媒Rhを十分に蒸発させることができる結果、凝縮器22において熱媒液Whを加熱設定温度まで十分に加熱することが可能となっている。
【0054】
なお、上記の第1吸熱モードでの動作時に外気の温度が冷却設定温度よりも十分に高いときには、三方弁34によって熱交換器33を通過させる熱媒液W3の通過量を減少させることで低温側冷凍回路2Cに対する放熱量(熱媒液W3から低温側冷媒Rcへの吸熱量)が過剰に多くなる(低温側冷媒Rcが過剰に温度上昇する)のを回避する。また、外気の温度が冷却設定温度に近い温度のときには、三方弁34によって熱交換器33を通過させる熱媒液W3の通過量を増加させることで、蒸発器14において低温側冷媒Rcを十分に蒸発させ得る高温の熱媒液Wcを蒸発器14に供給させる。これにより、冷却設定温度まで冷却された低温の熱媒液Wcが冷却対象XCに供給されると共に、加熱設定温度まで加熱された高温の熱媒液Whが加熱対象XHに供給される。
【0055】
この場合、この第1吸熱モードで動作させる際の判別条件の1つである前述の「第1温度」については、一例として、冷却設定温度を超える温度であって、冷却設定温度よりも10℃程度高い温度を上限とする範囲内の温度(一例として、冷却設定温度よりも5℃程度高い温度)に規定することで、熱媒液Wcの過冷却や、熱媒液Whの加熱不足を好適に回避することができる。
【0056】
また、冷却設定温度と冷却処理前の熱媒液Wcの温度差が大きい使用環境や、加熱設定温度と加熱処理前の熱媒液Whとの温度差が小さいような使用環境下では、特定される冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも大きくなる(「第4条件」が満たされたときの一例)。このような使用環境下であって、かつ熱交換器32において外気と熱交換する熱媒液W3の温度が、外気の温度よりも高い予め規定された第2温度以上のときに(「第5条件」が満たされたときの一例)、制御部6は、二元冷凍サイクル2および熱媒液循環路3を制御して放熱モードで動作させる(「第3制御態様」の一例)。
【0057】
具体的には、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも大きいときに、制御部6は、
図4に示すように、まず、ポンプ31および送風機32aが停止しているときには、これらの動作を開始させると共に、熱媒液W3が前述の「第2流路」だけを通過するように三方弁34を制御する(「第3熱交換流体の第1流路の流量よりも第3熱交換流体の第2流路の流量の方が多くなるように第2調整部に調整させる」との制御の一例)。また、制御部6は、一例として、熱交換器32を通過した直後の熱媒液W3の温度が外気の温度と同程度となるように送風機32aを制御して熱交換器32に対する外気の送風量を調整させる。これにより、外気温と同程度の温度の熱媒液W3がポンプ31によって圧送される状態となる。
【0058】
また、制御部6は、開閉弁26aを開口状態に制御し、かつ開閉弁26b,26cを閉塞状態に制御すると共に、流量調整弁24を最小の開度(閉塞状態)に制御し、かつ流量調整弁23を高温側冷凍回路2Hの「膨張弁」として機能させるのに必要な開度に制御する。これにより、高温側冷凍回路2Hにおいて、圧縮機21によって圧縮(圧送)される高温側冷媒Rhが、凝縮器22、開閉弁26a、熱交換器25、流量調整弁23およびカスケードコンデンサ12を経て圧縮機21に吸引される(熱交換器25およびカスケードコンデンサ12の双方を通過する)冷媒流路が形成される(「高温側冷媒が第1熱交換器および第6熱交換器の双方を通過するように第1調整部に調整させる」との制御の一例)。これにより、冷温同時温度調整装置1が放熱モードで動作した状態となる(「第3制御態様」の一例)。
【0059】
この放熱モードにおいて、熱媒液循環路3では、熱交換器32における外気との熱交換によって外気の温度と同程度の温度となった熱媒液W3がポンプ31によって圧送されて熱交換器25を通過させられる。また、高温側冷凍回路2Hでは、圧縮機21から吐出された高温の高温側冷媒Rhが凝縮器22において熱媒液Whに放熱して凝縮させられると共に熱媒液Whを温度上昇させる。これにより、高温側冷媒Rhとの熱交換によって加熱設定温度まで加熱された熱媒液Whが加熱対象XHに供給される。
【0060】
また、凝縮器22において凝縮させられた高温側冷媒Rh、および冷却処理負荷に応じてカスケードコンデンサ12において大量の低温側冷媒Rcを凝縮させるために圧縮機21から大量の高温側冷媒Rhが吐出されていることで凝縮器22において凝縮し切れなかった気化状態の高温側冷媒Rhが開閉弁26aを経て熱交換器25を通過させられる。この際には、気液混合状態の高温の高温側冷媒Rhが、熱交換器25において外気の温度と同程度の温度の熱媒液W3に放熱して十分に凝縮させられる。また、高温側冷媒Rhとの熱交換によって温度上昇した熱媒液W3は、熱交換器32において外気と熱交換(外気に放熱)して外気と同程度の温度まで冷却された後にポンプ31によって再び圧送される。
【0061】
また、熱交換器25において凝縮させられた高温側冷媒Rhは、流量調整弁23を経てカスケードコンデンサ12を通過させられる際に、低温側冷媒Rcとの熱交換によって温度上昇させられて蒸発させられ、再び圧縮機21によって圧縮される。これにより、カスケードコンデンサ12において大量の低温側冷媒Rcが凝縮させられる。また、低温側冷凍回路2Cでは、圧縮機11によって圧送されて、上記のようにカスケードコンデンサ12における高温側冷媒Rhとの熱交換によって凝縮させられた大量の低温側冷媒Rcが、流量調整弁13を通過後に蒸発器14を通過させられる際に、熱媒液Wcとの熱交換によって温度上昇させられて蒸発させられると共に、熱媒液Wcを冷却する。これにより、大量の低温側冷媒Rcによって熱媒液Wcが十分に冷却され、冷却設定温度まで冷却された熱媒液Wcが冷却対象XCに供給される。
【0062】
つまり、冷却処理負荷が大きく、かつ外気と熱交換する熱媒液W3の温度が、外気の温度よりもある程度高い使用環境下において移行させられる放熱モードでは、高温側冷凍回路2Hにおいて凝縮器22を介して熱媒液Whに放熱することのできない熱(熱媒液Whの過加熱を招くおそれのある放熱)が、熱交換器25において熱媒液W3に放熱され、この熱が熱交換器32を介して外気に放熱される。これにより、高温側冷凍回路2Hにおける熱媒液Whの過加熱を招くことなく、低温側冷凍回路2Cにおいて熱媒液Wcを冷却設定温度まで冷却するのに必要な十分な量の低温側冷媒Rcをカスケードコンデンサ12において凝縮させて蒸発器14に供給することが可能となっている。
【0063】
なお、この放熱モードで動作させる際の判別条件の1つである前述の「第2温度(熱交換器32の入口における熱媒液W3の温度)」については、外気と熱交換させられる熱媒液W3の温度以上の温度であって、外気の温度よりも10℃程度高い温度を上限とする範囲内の温度(一例として、外気よりも5℃程度高い温度)に規定する。
【0064】
一方、この種の「冷温同時温度調整装置」の用途のなかには、熱媒液Wcの冷却処理を不要としつつ、熱媒液Whの加熱処理を必要とする用途が存在する。一例として、洗浄装置において洗浄液を加熱する加熱器に高温の熱媒液Whを供給する本例の冷温同時温度調整装置1では、冷却器(冷却対象XC)に対する熱媒液Wcの供給を行うことなく、加熱器(加熱対象XH)に対して熱媒液Whを供給する処理を実行するときがこれに該当する。このような用途での動作に際して、制御部6は、第2吸熱モードで冷温同時温度調整装置1を動作させる(「第2制御態様」の一例)。
【0065】
具体的には、操作部4の操作によって熱媒液Wcの冷却処理を行うことなく熱媒液Whの加熱処理を行うように指示されたとき(「第1熱交換流体の冷却が不要で第2熱交換流体の加熱を行うとの[第3条件]が満たされたとき」の一例)に、制御部6は、
図5に示すように、まず、三方弁34を制御して熱媒液W3が前述の「第2流路」だけを通過するように(「第2調整部に第1流路を閉鎖させ、かつ第2流路を介して第3熱交換流体を第6熱交換器に流入させる」との制御の一例)流路を切り替えさせると共に、ポンプ31および送風機32aが停止しているときには、これらの動作を開始させる。また、制御部6は、一例として、熱交換器32を通過した直後の熱媒液W3の温度が外気の温度と同程度となるように送風機32aを制御して熱交換器32に対する外気の送風量を調整させる。これにより、外気温と同程度の温度の熱媒液W3がポンプ31によって圧送されて、三方弁34を経て熱交換器25に供給される状態となる。
【0066】
さらに、制御部6は、低温側冷凍回路2Cによる熱媒液Wcの冷却処理を実行していないときには、低温側冷凍回路2Cを停止させた状態を維持すると共に、低温側冷凍回路2Cによる熱媒液Wcの冷却処理を実行しているときには、低温側冷凍回路2Cを停止させる(「低温側冷凍回路を停止させ」との制御の一例)。また、制御部6は、開閉弁26cを開口状態に制御し、かつ開閉弁26a,26bを閉塞状態に制御すると共に、流量調整弁23を最小の開度(閉塞状態)に制御し、かつ流量調整弁24を高温側冷凍回路2Hの「膨張弁」として機能させるのに必要な開度に制御する。これにより、高温側冷凍回路2Hにおいて、圧縮機21によって圧縮(圧送)される高温側冷媒Rhが、凝縮器22、流量調整弁24、熱交換器25、および開閉弁26cを経て圧縮機21に吸引される(カスケードコンデンサ12を通過することなく熱交換器25を通過する)冷媒流路が形成される。
【0067】
さらに、制御部6は、高温側冷凍回路2Hによる熱媒液Whの加熱処理を実行しているときには、高温側冷凍回路2Hを制御して加熱処理を継続して実行させ、高温側冷凍回路2Hによる熱媒液Whの加熱処理を実行していないときには、高温側冷凍回路2Hを制御して加熱処理を開始させる(「高温側冷凍回路による第2熱交換流体の加熱を実行させる」との制御の一例)。これにより、冷温同時温度調整装置1が第2吸熱モードで動作した状態となる。
【0068】
この第2吸熱モードにおいて、高温側冷凍回路2Hでは、圧縮機21によって圧縮(圧送)された高温側冷媒Rhが、凝縮器22において熱媒液Whに放熱して凝縮させられると共に熱媒液Whを加熱する。これにより、熱媒液循環路LHを介して加熱対象XHに高温の熱媒液Whが供給される。また、凝縮器22において凝縮させられた高温側冷媒Rhは、流量調整弁24を通過した後に熱交換器25において熱媒液W3と熱交換させられる。この際に、熱交換器32における外気との熱交換(外気からの吸熱)によって十分に温度上昇させられた熱媒液W3と熱交換させられることで、熱媒液Whが十分に温度上昇させられて蒸発させられる。これにより、凝縮器22における熱媒液Whの加熱に必要な十分な量の高温側冷媒Rhを圧縮機21によって圧縮(圧送)することが可能となる。
【0069】
また、熱媒液循環路3では、熱交換器25における高温側冷媒Rhとの熱交換によって温度低下した熱媒液W3が、熱交換器32において外気との熱交換によって外気から吸熱して十分に温度上昇させられた後に、再び熱交換器25に供給されて高温側冷媒Rhと熱交換させられる。
【0070】
つまり、冷却処理が不要で加熱処理だけを行う(冷却処理負荷がゼロで加熱処理負荷が生じる)使用環境下において移行させられる上記の第2吸熱モードでは、高温側冷凍回路2Hの凝縮器22における熱媒液Whの加熱に必要な高温側冷媒Rhを熱交換器25において蒸発させる(温度上昇させる)ために、熱媒液循環路3の熱交換器32において外気の熱を吸熱した熱媒液W3を熱交換器25に供給させる。これにより、低温側冷凍回路2Cを停止させた状態、すなわち、熱媒液Wcの冷却処理を行わない状態において、熱媒液Whを加熱設定温度まで十分に加熱することが可能となっている。
【0071】
このように、この冷温同時温度調整装置1では、制御部6が、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも小さいとの「第1条件」が満たされ、かつ外気の温度が、冷却設定温度よりも高い予め規定された「第1温度」以上との「第2条件」が満たされたときに、冷却設定温度に応じて熱媒液W3の「第1流路」の流量および「第2流路」の流量を「第2調整部」に調整させつつ、高温側冷媒Rhが熱交換器25を通過する通過量よりも高温側冷媒Rhがカスケードコンデンサ12を通過する通過量の方が多くなるように「第1調整部」に調整させる「第1制御態様」と、熱媒液Wcの冷却が不要で熱媒液Whの加熱を行うとの「第3条件」が満たされたときに、「第2調整部」に「第1流路」を閉鎖させ、かつ「第2流路」を介して熱媒液W3を熱交換器25に流入させると共に、低温側冷凍回路2Cを停止させ、かつ高温側冷凍回路2Hによる熱媒液Whの加熱を実行させる「第2制御態様」とで冷温同時温度調整装置1を制御する。
【0072】
したがって、この冷温同時温度調整装置1によれば、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも小さく、外気の温度が冷却設定温度よりも高いとき(「第2条件」が満たされる状態のとき)には、「第1制御態様」で冷温同時温度調整装置1が制御されて、蒸発器14による冷却に先立ち、熱交換器32において外気から熱媒液W3に吸熱した熱を熱交換器33において熱媒液W3から熱媒液Wcに吸熱させて、蒸発器14において熱媒液Wcの熱を低温側冷媒Rcに十分に吸熱させることで、熱媒液Wcを冷却設定温度まで冷却しつつ熱媒液Wcの過冷却を好適に回避することができ、蒸発器14において低温側冷媒Rcに吸熱した熱と、圧縮機11における圧縮によって生じた熱とをカスケードコンデンサ12において高温側冷媒Rhに吸熱させて、凝縮器22において熱媒液Whを加熱設定温度まで十分に加熱することができる。また、熱媒液Wcを冷却することなく熱媒液Whを加熱する必要があるとき(「第3条件」が満たされる状態のとき)には、「第2制御態様」で冷温同時温度調整装置1が制御されて低温側冷凍回路2Cが停止させられ、熱媒液Wcの不要な冷却が行われる事態を回避することができると共に、外気から熱媒液W3に吸熱された熱を利用して熱交換器25において高温側冷媒Rhを蒸発させる(熱媒液W3から高温側冷媒Rhに吸熱させる)ことで高温側冷凍回路2Hによる熱媒液Whの加熱処理についても確実に実行することができる。これにより、熱媒液Wcの冷却処理を実行することなく熱媒液Whの加熱を正常に実行して加熱設定温度の熱媒液Whを加熱対象XHに対して確実に供給することができる。
【0073】
また、この冷温同時温度調整装置1では、制御部6が、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも大きいとの「第4条件」が満たされ、かつ外気と熱交換する熱媒液W3の温度が、外気の温度よりも高い予め規定された「第2温度」以上との「第5条件」が満たされたときに、熱媒液W3の「第1流路」の流量よりも熱媒液W3の「第2流路」の流量の方が多くなるように「第2調整部」に調整させつつ、高温側冷媒Rhがカスケードコンデンサ12および熱交換器25の双方を通過するように「第1調整部」に調整させる「第3制御態様」で冷温同時温度調整装置1を制御する。
【0074】
したがって、この冷温同時温度調整装置1によれば、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも大きく、熱媒液Whの過加熱や熱媒液Wcの冷却不足を招くおそれのある使用環境下において、外気と熱交換する熱媒液W3の温度が外気の温度よりも高いとき(「第5条件」が満たされる状態のとき)に、第3制御態様で冷温同時温度調整装置1が制御されて、高温側冷凍回路2Hにおいて凝縮器22を介して熱媒液Whに放熱することのできない熱が、熱交換器25を介して熱媒液W3に放熱されて熱交換器32において熱媒液W3から外気に放熱されるため、高温側冷凍回路2Hにおける熱媒液Whの過加熱を招くことなく、熱媒液Wcを冷却設定温度まで冷却するのに必要な十分な量の低温側冷媒Rcをカスケードコンデンサ12において凝縮させて蒸発器14に供給させ、熱媒液Wcを冷却設定温度まで十分に冷却することができる。
【0075】
さらに、この冷温同時温度調整装置1によれば、制御部6が、「第1制御態様」において高温側冷媒Rhが熱交換器25を通過することなくカスケードコンデンサ12を通過するように「第1調整部」を制御することにより、「第1制御態様」において高温側冷媒Rhがカスケードコンデンサ12および熱交換器25の双方を通過するように調整させる構成とは異なり、熱交換器25における熱媒液W3および高温側冷媒Rhの間の熱交換が生じないため、外気から熱媒液W3に吸熱した熱を効率よく熱媒液Wcに吸熱させ、この熱を蒸発器14において熱媒液Wcから低温側冷媒Rcに吸熱させる容易な制御によって、高温側冷凍回路2Hにおいて熱媒液Whを加熱設定温度まで十分に加熱させつつ、高温側冷凍回路2Hにおける熱媒液Wcの過冷却を好適に回避することができる。
【0076】
また、この冷温同時温度調整装置1によれば、制御部6が、熱交換器32に対して外部熱源としての周囲の空気(外気)を送風する送風機32aを制御して送風量を変更することで熱交換器32における外気と熱媒液W3との熱交換量を調整することにより、例えば、ポンプ31による熱媒液W3の圧送量を変化させることで熱交換器25や熱交換器33における熱交換量を変化させる構成と比較して、高温側冷媒Rhや熱媒液Wcと熱交換させる熱媒液W3の温度を比較的容易に所望の温度に調整することができるため、熱交換器25や熱交換器33における熱交換量を確実かつ容易に所望の熱交換量に制御することができる。
【0077】
なお、「冷温同時温度調整装置」の構成は、上記の冷温同時温度調整装置1の構成の例に限定されない。例えば、第2吸熱モードでの動作時(第2制御態様での制御時)に、制御部6が、三方弁34を制御して熱媒液W3が「第2流路」だけを通過するように流路を切り替えさせる構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、熱媒液W3が「第1流路」および「第2流路」の双方を通過するように流路を切り替える構成を採用することもできる。この場合、低温側冷凍回路2Cによる冷却処理を行っていない熱媒液Wcが、冷却対象XCからの吸熱や外気からの吸熱によってある程度温度上昇しているときには、第2吸熱モードでの動作時(第2制御態様での制御時)に、「第2流路」に加え、「第1流路(熱交換器33)」を通過するように流路を切り替えることにより、熱交換器32における外気から熱媒液W3への吸熱に加え、熱交換器33においても熱媒液Wcから熱媒液W3に吸熱させることができる。これにより、外気の温度がやや低めのときには、そのような構成を採用することで、熱交換器25における熱交換によって高温側冷媒Rhを十分に温度上昇させることができる。
【0078】
また、冷媒の凝縮温度に基づいて冷却処理負荷や加熱処理負荷を特定する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、冷媒の凝縮圧力、冷凍回路内の任意の部位における冷媒温度、冷凍回路内の任意の部位における冷媒圧力、冷凍回路内の任意の2点における冷媒温度差、冷凍回路内の任意の2点における冷媒圧力差、冷媒圧縮機における電動機の単位時間当りの消費電力量、および冷媒圧縮機の任意の部位の温度などの各種のパラメータに基づいて特定する構成を採用することができる。また、蒸発器14の入口および出口における熱媒液Wcの温度差と蒸発器14を通過する熱媒液Wcの単位時間当りの流量とに基づいて冷却処理負荷を特定する構成や、凝縮器22の入口および出口における熱媒液Whの温度差と凝縮器22を通過する熱媒液Whの単位時間当りの流量とに基づいて加熱処理負荷を特定する構成を採用することもできる。
【0079】
また、「第1制御態様」において低温側冷媒Rcが熱交換器25を通過することなくカスケードコンデンサ12を通過させられる構成を例に挙げて説明したが、「低温側冷媒が第6熱交換器を通過する通過量よりも第1熱交換器を通過する通過量の方が多い」との条件を満たす範囲内において「低温側冷媒」が「第1熱交換器」および「第6熱交換器」の双方を通過させられる構成を採用することもできる。
【0080】
さらに、開閉弁26a~26cの開閉、および流量調整弁23,24の開度の変更によって高温側冷媒Rhがカスケードコンデンサ12を通過する量、および高温側冷媒Rhが熱交換器25を通過する量を調整する構成を例に挙げて説明したが、「第1調整部」の構成はこれに限定されない。例えば、「第1熱交換器を通過させられる高温側冷媒の流路」、および「第6熱交換器を通過させられる高温側冷媒の流路」に「流量調整弁」をそれぞれ配設して「第1調整部」を構成し、各「流量調整弁」の開度の変更によって「高温側冷媒」の通過量を調整する構成を採用することもできる。また、三方弁34によって熱媒液W3の「第1流路」の流量および「第2流路」の流量を変化させる構成を例に挙げて説明したが、「第2調整部」の構成はこれに限定されない。例えば、「第1流路」および「第2流路」に「流量調整弁」をそれぞれ配設して「第2調整部」を構成し、各「流量調整弁」の開度の変更によって「第1流路」の流量および「第2流路」の流量を調整する構成を採用することもできる。
【0081】
また、圧送量固定型の液送ポンプで構成されたポンプ31を備えた例について説明したが、圧送量可変型の液送ポンプによって熱媒液W3を圧送させる構成を採用することもできる。さらに、「第1熱交換流体」、「第2熱交換流体」および「第3熱交換流体」として、熱媒液Wc,Wh,W3などの「液体」を使用する構成を例に挙げて説明したが、「第1熱交換流体」、「第2熱交換流体」および「第3熱交換流体」のいずれか、またはすべてについて、不活性ガスや空気などの「気体」を使用する構成を採用することもできる。
【0082】
また、「第1制御態様」での制御(第1吸熱モードでの動作)、および「第2制御態様」での制御(第2吸熱モードでの動作)に加え、「第3制御態様」での制御(放熱モードでの動作)が可能な冷温同時温度調整装置1の構成を例に挙げて説明したが、「第3制御態様」での制御を行わない(放熱モードで動作させない)構成を採用することもできる。さらに、「外部熱源」として外気(冷温同時温度調整装置1の周囲の空気)を利用する構成の冷温同時温度調整装置1を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、水道水、河川の水、井戸水および貯水した水などの各種の液体(水)や、雪および氷などを「外部熱源」として利用する構成を採用することもできる。また、「冷温同時温度調整装置」の設置場所の床、壁および天井や、動作時に発熱する機械設備などを「外部熱源」として利用する構成を採用することもできる。
【0083】
加えて、低温側冷凍回路2Cおよび高温側冷凍回路2Hを有する二元冷凍サイクル2を備えて構成した例について説明したが、「二元冷凍サイクル」に代えて「三元冷凍サイクル」や「四元冷凍サイクル」などの「多元冷凍サイクル」を備えて「冷温同時温度調整装置」を構成することもできる。この場合、例えば、「低温冷凍回路(低段冷凍回路)」、「中温冷凍回路(中段冷凍回路)」および「高温冷凍回路(高段冷凍回路)」の3つの冷凍回路を備えた「三元冷凍サイクル」では、「低温冷凍回路」を「低温側冷凍回路」としたときには「中温冷凍回路」が「高温側冷凍回路」に相当し、「中温冷凍回路」を「低温側冷凍回路」としたときには「高温冷凍回路」が「高温側冷凍回路」に相当する。
【符号の説明】
【0084】
1 冷温同時温度調整装置
2 二元冷凍サイクル
2C 低温側冷凍回路
2H 高温側冷凍回路
3 熱媒液循環路
4 操作部
5 表示部
6 制御部
7 記憶部
11,21 圧縮機
12 カスケードコンデンサ
13,23,24 流量調整弁
14 蒸発器
22 凝縮器
25,32,33 熱交換器
26a~26c 開閉弁
31 ポンプ
32a 送風機
34 三方弁
LC 熱媒液循環路
LH 熱媒液循環路
Rc 低温側冷媒
Rh 高温側冷媒
W3,Wc,Wh 熱媒液
XC 冷却対象
XH 加熱対象
【要約】
【課題】冷却処理負荷が小さい使用環境下においても冷却および加熱を正常に実行可能とする。
【解決手段】制御部6は、冷却処理負荷が加熱処理負荷よりも小さいとの第1条件が満たされ、かつ外気の温度が、冷却設定温度よりも高い予め規定された第1温度以上との第2条件が満たされたときに、冷却設定温度に応じて熱媒液W3の第1流路の流量および第2流路の流量を第2調整部に調整させつつ、高温側冷媒Rhが熱交換器25を通過する通過量よりもカスケードコンデンサ12を通過する通過量の方が多くなるように第1調整部に調整させる第1制御態様と、熱媒液Wcの冷却が不要で熱媒液Whの加熱を行うとの第3条件が満たされたときに、第2調整部に第1流路を閉鎖させ、かつ第2流路を介して熱媒液W3を熱交換器25に流入させると共に、低温側冷凍回路2Cを停止させ、かつ高温側冷凍回路2Hよる熱媒液Whの加熱を実行させる第2制御態様とで制御する。
【選択図】
図1