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特許7019218ワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレインを有するSi-MOSFET、及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレインを有するSi-MOSFET、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20220207BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220207BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
H01L29/78 301S
H01L29/78 301Q
H01L29/78 616V
H01L29/78 616T
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020188266
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2021087012
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】108142879
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】598139748
【氏名又は名称】國立交通大學
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 翼
(72)【発明者】
【氏名】張 懋中
(72)【発明者】
【氏名】莊 ▲けつ▼晰
(72)【発明者】
【氏名】林 雨潔
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0019865(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0088670(KR,A)
【文献】特開2013-004594(JP,A)
【文献】特開2011-165859(JP,A)
【文献】特表2010-527153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレインを有するSi-MOSFETであって、
基板、誘電層、金属ゲート、ソース、孔、及びIII-V族ドレインを有し、
前記基板は、(100)結晶面の主表面を有するシリコン基板、及び前記主表面に位置する半導体層を含み、
前記誘電層は、前記半導体層上に位置し、
前記金属ゲートは、前記誘電層に位置し、
前記ソースは、前記金属ゲートの一側下方の前記半導体層内に位置し、
記孔は、前記金属ゲートのもう一側に位置し、前記半導体層を通り抜けて前記シリコン基板内まで延伸され、
前記孔の壁面は、側壁及び前記側壁の下方に延伸する傾斜面からなり、
前記基板における前記孔の前記側壁の長さは100~500nmであり、
前記傾斜面に前記シリコン基板の(111)結晶面露出前記傾斜面の上に緩衝層形成され
前記III-V族ドレインは、前記孔に形成されていることを特徴とする、
Si-MOSFET。
【請求項2】
前記基板は、前記シリコン基板と前記半導体層の間に形成される絶縁層をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載のSi-MOSFET。
【請求項3】
前記絶縁層は、窒化ケイ素層、二酸化ケイ素層、又はそれらを積層してなる多層構造であることを特徴とする、請求項2に記載のSi-MOSFET。
【請求項4】
前記絶縁層の厚さは100nmであることを特徴とする、請求項3に記載のSi-MOSFET。
【請求項5】
前記側壁は、前記(100)結晶面の主表面に垂直することを特徴とする、請求項1に記載のSi-MOSFET。
【請求項6】
前記傾斜面の表面と前記シリコン基板の主表面となす角度が54.74°であることを特徴とする、請求項1に記載のSi-MOSFET。
【請求項7】
前記ワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレイン、立方晶窒化ガリウムを含む窒化ガリウムドレインであることを特徴とする、請求項1に記載のSi-MOSFET。
【請求項8】
ワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレインを有するSi-MOSFETの製造方法であって、
(100)結晶面の主表面を有するシリコン基板、及び前記主表面に位置する半導体層を含む基板を提供する工程と、
前記半導体層にダミーゲート(dummygate)を形成する工程と、
前記ダミーゲートをハードマスクとして前記半導体層へのイオンドーピングを行うことで、前記ダミーゲートの下方に位置するチャネル領域、及び前記チャネル領域の両側にそれぞれ位置する2つの浅いドーピング領域を形成し、それらの浅いドーピング領域にドレイン位置及びソース位置を設ける工程と、
前記ドレイン位置に対して選択的にエッチングすることで、孔を形成する工程と、
記孔は、前記半導体層を通り抜けて前記シリコン基板内まで延伸され、
記孔の壁面は、側壁、及び前記側壁の下方に延伸する傾斜面からなり、
前記基板における前記孔の前記側壁の長さは100~500nmであり、
前記傾斜面に前記シリコン基板の(111)結晶面を露出させ、
有機金属気相成長法によって前記孔にIII-V族エピタキシャル層を形成すると同時に、前記III-V族エピタキシャル層にシリコンドーピングによってIII-V族ドレインを形成する工程と、
前記ソース位置に対して重イオンドーピングを行うことで、ソースを形成する工程と、
前記ダミーゲートを除去して前記半導体層を露出させる工程と、
前記ダミーゲートを除去して露出した前記半導体層上に誘電層を形成する工程と、
前記誘電層に金属ゲートを形成する工程と、を有することを特徴とする、
Si-MOSFETの製造方法。
【請求項9】
前記基板は、前記シリコン基板と前記半導体層の間に形成される絶縁層をさらに有することを特徴とする、請求項8に記載のSi-MOSFETの製造方法
【請求項10】
前記絶縁層は、窒化ケイ素層、二酸化ケイ素層、又はそれらを積層してなる多層構造であることを特徴とする、請求項に記載のSi-MOSFETの製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層の厚さは100nmであることを特徴とする、請求項に記載のSi-MOSFETの製造方法。
【請求項12】
前記主表面が側壁の下方に延伸する前記傾斜面に繋げる場合に、前記側壁は前記(100)結晶面の主表面に垂直することを特徴とする、請求項に記載のSi-MOSFETの製造方法。
【請求項13】
前記傾斜面の表面と前記シリコン基板の主表面となす角度が54.74°であることを特徴とする、請求項に記載のSi-MOSFETの製造方法。
【請求項14】
前記傾斜面の表面は、III-V族ドレインの底部に繋がり、前記シリコン基板の前記(111)結晶面を有し、
前記傾斜面の表面に前記(111)結晶面に格子整合するh-GaN核形成層を形成することを特徴とする、請求項に記載のSi-MOSFETの製造方法。
【請求項15】
前記h-GaN核形成層は、前記傾斜面の表面に成長を始め、最終的に前記孔の両側に成長した前記h-GaN核形成層と結合することで、前記孔の頂部に高品質のc-GaNドレインを形成し、
前記c-GaNドレインにシリコンイオンを重ドーピングすることで、前記III-V族ドレインを形成することを特徴とする、前記請求項14に記載のSi-MOSFETの製造方法。
【請求項16】
前記III-V族ドレインは窒化ガリウムドレインであり、高電子移動度を有する立方晶窒化ガリウムを含むことを特徴とする、請求項に記載のSi-MOSFETの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ統合Si-MOSFET(金属酸化物シリコン半導体電界効果トランジスタ)、特にワイドギャップIII-V族化合物半導体(例えば、Siに対しては1.1eVであり、GaNに対しては3.4eVである)ドレインを有するSi-MOSFET及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III-V族化合物の半導体、例えば窒化ガリウム(GaN)材料は、例えば、材料の価電子帯と伝導帯との間のワイドギャップ(3.4eV)、低電子衝撃分離係数(Siに対しては、1X10-6より低い)による高降伏電圧、高電子ドリフト速度等、色々な独特な物理的な特性を有するため、高出力処理、高降伏電圧、及び高速な電子部品に利用されている。近年、各国の研究チームは、有機金属気相成長法(MOCVD)によってシリコン(100)基板に、薄い(nmサイズ)窒化ガリウムエピタキシャル層及び超格子バッファー層構造を形成することで、様々な指向性シリコン基板(directional silicon substrates)へのIII-V族化合物半導体ヘテロ成長を実現している。しかし、III-V族化合物半導体は、大体LED関連用途であるフォトニック応用(photonic applications)に用いられる。
【0003】
ムーアの法則によれば、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)は、のゲートサイズを10nm以下に縮小(scaling down)することで、デジタルスイッチ及び論理機能の方面では今までなかった優れた性能を得ている。しかしながら、CMOS装置のダイナミックオペレーションレンジ(dynamic operation range)及びパワー処理能力が、縮小につれて制限される。例えば、極縮小化のMOSFETは、非常に低いドレイン絶縁破壊電圧(<2V)を有するため、その信号スイングが1V以下に厳しく制限される。そのため、セルラー方式の基地局及びスマートフォンの通信では、III-Vヘテロ接合面(HBTs)からなる外部高周波(RF)又はマイクロ波パワー増幅器を使用しなければならない。しかし、電気通信(5G/6G)において、より高いマイクロ波及び/又はミリ波周波数を使用して広い帯域幅、及びより高い転送速度を得ようとする場合、前記方法の価格性能比が激しく落ちることになる。mm-Wave無線通信/レーダーバンドでは、外部接続したパワー増幅器/スイッチがボード/パッケージを通った時の信号損失が大きく,高い直線性及び高性能という厳しい要求を満足できない。特に、低い電力付加効率によってスマートフォンの通話時間の要求が制限される。また、この規模なCMOS装置が低いドレイン降伏電圧を有するため、ダイナミックオペレーションレンジが制限され、将来の高周波無線通信、レーダー、撮像素子、及び他の検出器/センサーのデータ変換の解像度(resolution)の要求を支持できない。
【0004】
従来のSi-MOSFETは、主にソース/ドレイン材料としてシリコンゲルマニウム(SiGe)を利用する。例えば、米国特許第6218711号において、短チャネル効果(short channel effect)を解決するために、ソース/ドレインにSiGe材料を選択的に成長させて突出させ、両電極の位置を高くしている。しかし、SiGe材料の絶縁破壊電圧がSiより低いため、高ダイナミックレンジ(high dynamic range)の回路要求を達成できない。
【発明の概要】
【発明が解決すようする課題】
【0005】
それに鑑みて、本発明の主な目的は、ワイドギャップIII-V族材料ドレインを有するSi-MOSFET、及びその製造方法を提供することにある。MOSFETドレイン領域のみにシリコン(100)基板にエッチングしてSi(111)結晶面が露出した開口にIII-V族材料を選択的に成長させることで、高エピタキシャル品質のIII-V族ドレイン構造を製造する。ワイドギャップを有する材料の特性によって、高周波及び高解像度応用におけるSi-MOSFETのパワー及び範囲処理能力(range handling capability)の不足を避けると同時に、素子の小型化に伴い生じる低絶縁破壊電圧の問題を実質的に改善できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明は、ワイドギャップIII-V族化合物材料のドレインを有するSi-MOSFETを提出する。
前記Si-MOSFETは、標準のSOI(Semiconductor-on-Insulator)プロセスによって製造できる。前記プロセスは、(100)結晶面の主表面を有するシリコン基板、主表面に形成される絶縁層絶縁層、及び絶縁層に形成される能動半導体層からなる。能動半導体層に誘電層を設け、且つ誘電層に金属ゲートを設ける。金属ゲートの一側下方の半導体層内にはソースを設け、金属ゲートのもう一側には、半導体層を通り抜けてシリコン基板内まで延伸する数百nm単位の孔を形成する。前記数百nm単位の孔の壁面は、側壁及び側壁の下方に延伸する傾斜面からなる。傾斜面にシリコン基板の(111)結晶面を露出させ、緩衝層を形成する。III-V族化合物材料のドレインは、数百nm単位の孔に選択的に形成される。
【0007】
また、本発明は、ワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレインを有するSi-MOSFETの製造方法を提供する。その工程としては、まず、(100)結晶面の主表面を有する底部のシリコン基板、主表面に設ける絶縁層、及び絶縁層に設ける半導体層を含む、基板を提供する。その後、半導体層にダミーゲートを形成する。そして、ダミーゲートをマスクとして半導体層へのイオンドーピングを行うことで、ダミーゲートの下方に位置するチャネル領域、及びチャネル領域の両側にそれぞれ位置する2つの浅いドーピング領域を形成する。また、2つの浅いドーピング領域にそれぞれドレイン位置及びソース位置を設ける。ドレイン位置に対して選択的にエッチングすることで、数百nm単位の孔を形成し、前記数百nm単位の孔は、半導体層を通り抜けてシリコン基板内まで延伸する。数百nm単位の孔の壁面は、側壁、及び側壁の底部に延伸するV-grooved工程によって形成した傾斜面からなり、傾斜面が選択的にエッチングされてシリコン基板の(111)結晶面を露出させる。有機金属気相成長法によって傾斜面に緩衝層を成長させ、数百nm単位の孔にIII-V族エピタキシャル層を形成すると同時に、シリコンドーピングを行うことで、N型III-V族化合物半導体ドレインを形成する。その後、ソース位置に対して重イオンドーピングを行うことで、ソースを形成する。ダミーゲートを除去し、ダミーゲートを除去して露出させた半導体層に誘電層を形成する。最後、誘電層に金属ゲートを形成する。
【0008】
本発明のワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレインを有するSi-MOSFET、及びその製造方法によれば、まず、選択的なエッチング技術によって元のシリコンドレインを除去し、エッチングされたSi(111)結晶面を有するドレイン領域にIII-V族化合物半導体のエピタキシャル(例えば、GaN)の材料で置換し、GaNの格子定数と整合する。そして、他のシリコントランジスタと比べ、ドレイン構造として高品質のワイドギャップIII-V族化合物半導体材料(例えば、GaN)を利用することで、高出力処理及び高解像度応用におけるCMOSのドレイン絶縁破壊電圧及びダイナミックオペレーションレンジを大きく向上できる。
【0009】
以下、図面を参照しながら具体的な実施例を挙げて、本発明の目的、技術的な内容、特徴、及び達成できる効果を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A-F】本発明の実施例のワイドギャップIII-V族化合物半導体ドレインを有するSi-CMOSFETの製造方法を示し、図1A~1Fは、それぞれ各工程に対応する断面構造図である。
図2A-D】本発明の実施例の数百nm単位の孔の製造方法である。図2A~2Dは、それぞれ各工程の断面構造図である。
図3】GaNドレインMOSFETのエネルギーバンド図である。
図4】異なるドリフト領域の長さのGaNドレインを有するMOSFETの横電界である。
図5】本発明の実施例のGaNドレイン構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6】本発明の実施例のGaNドレイン構造の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、主にワイドギャップIII-V族化合物材料(例えば、GaN)ドレインを有するSi-MOSFET及びその製造方法を提供する。下記実施例において、SOI(Silicon-on-Insulator)基板に窒化ガリウムドレインを製作する例を説明するが、本発明は、前記実施例に限定されていない。図1A図1Fは、本発明の実施例の窒化ガリウムドレインを有するSi-MOSFETの製造方法において、各工程に対応する断面構造図である。前記製造方法は、下記工程を有する。
【0012】
まず、図1Aに示すように、基板100を提供する。本実施例において、SOI基板を利用する。前記基板100は、シリコン基板10、絶縁層20、及び半導体層30を含む。そのうち、シリコン基板10は、(100)結晶面の主表面11を有する。絶縁層20は主表面11に位置し、半導体層30は絶縁層20に位置する。具体的に、絶縁層20は、窒化ケイ素層、二酸化ケイ素層、又は窒化ケイ素層及び二酸化ケイ素層が積層してなる多層構造であってもよい。絶縁層20の厚さは100nmである。
【0013】
第1B図に示すように、半導体層30にダミーゲート(dummygate)20を形成する。ダミーゲート層40は、多結晶シリコンからなるものが好ましい。そして、ダミーゲート層40をパターン化した後、ダミーゲート層40をハードマスクとして、半導体層30へのイオンドーピングを行う。本実施例において、リンイオンによってN型ドーピングを行うことで、2つのN型の浅いドーピング領域32、33をそれぞれ定義する。前記2つのN型の浅いドーピング領域32、33は、ダミーゲート層40の下方に位置するP型チャネル領域31、及びチャネル領域31の両側にそれぞれ位置する。さらに、半導体層30にダミーゲート層40の上を覆う誘電層41を形成する。
【0014】
ここで、LDD(Lightly Doped Drain)の長さの模擬結果を利用して、前記1つの浅いドーピング領域32にドレイン位置321を設け、もう1つの浅いドーピング領域33にソース位置331を設ける。
【0015】
そして、図1Cに示すように、ドレイン位置321で選択的にエッチングすることで、数百nm単位の孔50を形成する。
【0016】
図2A~2Dによって本実施例の数百nm単位の孔50の形成工程を説明する。
先ず、数百nm単位の孔のパターンを設計し、電子線リソグラフィ(electron beam Lithography)によって誘電層41のパターン化を行い、前記誘電層41をハードマスクとする。図2Aに示すように、反応性イオンエッチング(Reactive-ionetching、RIE)によって基板100に数百nm単位の孔50を形成する。
【0017】
図2Bに示すように、プラズマCVD(Plasma enhanced chemical vaporde position、PECVD)によって、数百nm単位の孔50の壁面に、1層の所定厚さを有する窒化層60を成長させる。具体的には、前記窒化層60は窒化シリコン(SiNx)であり、窒化層60の厚さは200nmである。前記工程において、基板100における数百nm単位の孔50の深さは約250nmである。実際の応用において、基板100における数百nm単位の孔50の深さは、100~500nmの範囲にある。
【0018】
そして、図2Cに示すように、誘導結合プラズマ(Inductively coupled plasma、ICP)エッチングによって数百nm単位の孔50底壁51の窒化層54を除去し、下方のシリコン基板10の(100)結晶面を露出させ、数百nm単位の孔50の側壁(sidewall)52の窒化層54を残す。
【0019】
さらに、図2Dに示すように、阻止層として側壁52の窒化層54を利用し、エッチング液として水酸化カリウム(KOH)を利用して、80℃まで110秒加熱する。シリコン基板10の(111)結晶面を有する傾斜面53が露出するまで、数百nm単位の孔50の底壁から露出したシリコン基板10の(100)結晶面をウェットエッチングする。前記工程では、図2Cにおいて、数百nm単位の孔50の底壁51から下にエッチングしてV溝を形成する。前記基板100における数百nm単位の孔50の深さは、基板100における数百nm単位の孔50の側壁52の長さと定義され、100~500nmの範囲にある。前記深さ(長さ)は、V溝の部分を含まない。
【0020】
数百nm単位の孔50を製作した後、図1Dに示すように、有機金属気相成長法(MOCVD)によって数百nm単位の孔50に窒化アルミニウム(AlN)緩衝層60を成長させ、更に窒化ガリウム(GaN)エピタキシャル層を成長させながら、シリコンドーピングを行うことで、窒化ガリウムドレイン70を形成する。具体的には、シリコンドーピングは、窒化ガリウムエピタキシャル層を成長させる時に、シラン(Sillane、SiH4)を水素気体で希釈してなるドーピング気体を導入することで、窒化ガリウムにおけるシリコンのドーピング濃度を向上、制御する。それによって、理想な窒化ガリウムドレイン70を得る。さらに、エッチングによって誘電層41の一部を除去し、残った誘電層41でダミーゲート40の側壁を囲む。
【0021】
その後、図1Eに示すように、ソース位置331に対して重イオンドーピングを行うことで、重ドーピング領域34を形成し、それによってソース80を定義する。本実施例において、高濃度のN型イオン、例えばリンイオンをドーピングすることで、チャネル領域31に電子の流れを生成する。
【0022】
そして、図1Fに示すように、エッチングプロセスによってダミーゲート40を除去することで、その下の半導体層30を露出させ、ダミーゲート40を除去し、露出した半導体層30に誘電層90を形成する。最後、誘電層90に金属ゲート91を形成する。このようにして、窒化ガリウムドレインを有するSi-MOSFETを製作する。
【0023】
図に示すように、本発明の実施例の窒化ガリウムドレインを有するSi-MOSFETは、基板100、誘電層90、金属ゲート91、ソース80、数百nm単位の孔50、及び窒化ガリウムドレイン70からなる。そのうち、基板100は、底部から頂部まで順にシリコン基板10、絶縁層20、及び半導体層30を含む。また、シリコン基板10は(100)結晶面の主表面11を有する。半導体層30の上には順に誘電層90及び金属ゲート91を設ける。ソース80は、金属ゲート91の一側の下方の半導体層30内に位置し、窒化ガリウムドレイン70は、金属ゲート91のもう一側の数百nm単位の孔50に形成される。数百nm単位の孔50は、順に半導体層30及び絶縁層20を通り抜けてシリコン基板10まで延伸する。数百nm単位の孔50の壁面は、側壁52、及び側壁52と繋がり下方に延伸する傾斜面53からなり、傾斜面53は、シリコン基板10の(111)結晶面を有する。なお、窒化アルミニウム緩衝層60は、数百nm単位の孔50の傾斜面53に形成される。窒化ガリウムドレイン70は、数百nm単位の孔50内に形成され、窒化アルミニウム緩衝層60の上に位置する。
【0024】
本発明の実施例において、数百nm単位の孔50の側壁52は、シリコン基板10の(100)結晶面の主表面11と略垂直する。側壁52の底部に繋がる傾斜面53はV溝となる。V溝を含まない場合、基板100における数百nm単位の孔50の側壁52の長さは、約250~700nmの範囲にある。
【0025】
シリコン基板(100)に形成されるGaNエピタキシャル層において、(111)結晶面の傾斜面の表面53とシリコン基板(100)となす角度が54.74°である。他のIII-V族材料を使用すると、前記V溝が、他のより大きい六方晶の角度で格子と整合できる。
【0026】
本発明の実施例において、シリコン基板に高品質の窒化ガリウム選択的に成長させてドレインを製作することで、前記Si-MOSFET素子を得る。このようにして、窒化ガリウム材料の特性を利用して、ドレインの高絶縁破壊電圧を得る。
図5に示すように、シリコン基板の表面において、前記窒化ガリウムドレインは、約5.27μmの長さ及び1.20μmの幅を有する長方形パターンとなる。図6は、その断面構造を示す。窒化ガリウムドレインは、数百nm単位の孔の底部の中央が格子欠陥領域となり、両側壁から表面部位まで結晶領域を成長させる。また、上記実施例のドレイン構造は、ダミーゲートを利用してSOI基板へのN型ドーピングを行うことで得られたが、同じドレイン構造を非SOIシリコン基板にも利用できる。
【0027】
さらに、本発明の実施例において、シリコン(100)基板にV-grooved工程を経て且つウェットエッチングで前記シリコン(100)基板の(111)結晶面を生成する。これによって、窒化アルミニウム緩衝層及び窒化ガリウムエピタキシャル層の好ましい核形成結晶面を提供する。単結晶の六方晶窒化ガリウム(h-GaN)は(111)結晶面の上方から成長させ、結晶途中の格子転位(dislocaiton)を数百nm単位の孔の側壁で中止させる。2つの側壁に成長させる六方晶窒化ガリウムが数百nm単位の孔の中間で合併して、高結晶度の立方晶窒化ガリウム(c-GaN)を得る。前記選択的な成長技術は、窒化ガリウムエピタキシャル層の大きさ及び形状を有効に制御、設計できる。成長途中で適切なシランを導入することで、窒化ガリウムエピタキシャル層のシリコンドーピング濃度を調整できる。前記ドーピング濃度によって垂直リーク電流を制御して、理想なワイドギャップ窒化ガリウムドレインを得る。また、Si-MOSFETに統合することで、本来のMOSFETのドレインを置換できる。窒化ガリウムエピタキシャル層の格子構造分析の詳しい内容は、台湾特許出願第108117447号に記載の、シリコン基板に窒化ガリウムをヘテロ統合した半導体構造、及びその製造方法で参照できる。
【0028】
また、本発明の実施例において、従来のSi-CMOSにおける均一のシリコンドレインの代わりにヘテロ窒化ガリウムのドレインを利用することで、MOSFETのドレインの絶縁破壊電圧が低い、という課題を解決できる。本発明の実施例において、まず、V溝優先エッチング技術(V-Grooved preferential etching)によって本来のシリコンドレイン材料を除去し、残った露出した側壁の(111)表面で窒化ガリウムエピタキシャル層を成長させる。そして、独自の選択的な横方向の堆積技術によって、側壁から中心まで六方晶窒化ガリウム(h-窒化ガリウム)を成長させ、さらに頂部の接触面と合併させて立方晶窒化ガリウム(c-窒化ガリウム)とし、ドレインを再構成する。このようなヘテロ材料成長方法によって、CMOSのグリッドをドレインのキャリヤ伝送チャネルに転換し、装置の高速性能を保つだけでなく、シリコンと比べて窒化ガリウムがより広いギャップ(窒化ガリウム、シリコンのギャップは、それぞれ3.4eV、1.1eV)を有するため、電子衝突電離係数を大幅に低減(<1X10-6)し、絶縁破壊電圧を向上できる。
【0029】
以下、素子の表現を確かめるために、GaNドレインを有するMOSFET素子の電圧及び電界特性を模擬分析する。
【0030】
図3は、LD(Lateral diffusion、横方向拡散)-GaNドレインのMOSFETのエネルギーバンドを示す。窒化ガリウムは、シリコン(又はシリコンゲルマニウム)ドレインのエネルギーバンドと比べて、高いギャップを有するため、GaNドレインが絶縁破壊電圧を受けた場合、従来のSi又はSiGeドレインより優れた表現が期待できる(ゲルマニウムのバンドギャップは約0.67eVである)。
【0031】
図4は、TCADシミュレーションによって得られた、La-GaNドレインを有するMOSFETの横電界を示す。前記La-GaNドレインは、異なるドリフト領域(Drift Region)の長さLを有する。そのうち、曲線(a)、曲線(b)は、LD-GaNドレインMOSFETが異なる浅いドーピングドレイン(LDD)偏移長さを有する場合の、チャネル/LDD PN接合の横電界の大きさを示す。曲線(a)、及び曲線(b)は、ドリフト領域の長さLをそれぞれ100nm、及び40nmに延長した場合である。x軸がチャネル方向(channel direction)であり、ドリフト領域の長さLがゲートからドレインまでの距離である。なお、ゲートの辺縁を0.00の基準位置(図1Fを参照)とする。図に示すように、ピーク(最大)横電界は3.6MV/cmであり、ドレイン側のゲート辺縁に生じる。しかし、LDD偏移長さを0nmから10nmに伸ばした場合、最大の横電界は変わらないが、電界の大きさが明らかに低減し、且つゲート-ドレインの重複領域に移動する。
【0032】
GaNドレイン構造は、他の先進のシリコントランジスタと比べると、素子の小型化に伴う絶縁破壊(breakdown)の課題を解決できる。過去にIII-V技術分野しかできなかった応用をSi-CMOSに実現できる。しかし、例えば、シリコン基板に結合又はエピタキシャルによって高品質の化合物材料を成長させ難い。CMOSの処理について、他のIII-V装置との交差汚染、及び熱サイクルの要求の問題が存在している。上記問題を回避しながら化合物半導体のメリットを発揮するために、高集積のシリコン集積回路埋め込み式のIII-V族ドレインが求められている。本発明は、ドレイン構造として窒化ガリウムを利用することで、非常に高い絶縁破壊能及び高いダイナミックオペレーションレンジを有するRF-MOSFETを得る。本発明の主な概念は、MOSFETのドレイン領域におけるシリコンをワイドギャップ半導体窒化ガリウムに置換する。
【0033】
ここ数年で、小面積のナノヘテロエピタキシャル(Nano Heteroepitaxial、NHE)材料の合成、及びアスペクト比トラッピング(Aspect ratio trapping、ART)の原理は、MOSFETのドレインの(111)結晶面に高い電気的な性質(high electronic quality)及び低欠陥密度(low-defect-density)のc-GaNを成長する可能性が既に証明されている。その場合、最初にh-GaNに格子整合する。その理論は、装置/回路の出力及び解像度の性能にとって非常に重要である。前記の装置は、5G又は6Gのミリ波用の次世代の高圧/パワーRFトランジスタに有利である。
【0034】
ワイドギャップ材料の特性以外に、窒化ガリウムは、高い電子移動度を有するため、高周波素子の開発、及び薄膜エピタキシャル成長に関して充分研究されていた。本発明は、従来の薄膜エピタキシャル成長と異なり、選択的なエピタキシャル成長技術によって窒化ガリウムを堆積して窒化ガリウムドレインを得る。現在、実験では、GaNドレイン材料の成長について、SiO/Si基板の数百nm単位の孔にGaNヘテロエピタキシャルを成長させることに成功した。TEMの結果によると、高品質且つ低欠陥したGaNエピタキシャルを確認できる。前記技術によって製作したMOSFETは、高周波応用におけるSi-MOSFETのパワー処理能力及び資料解像度の不足を避けるとともに、MOSFETの低絶縁破壊電圧の欠点を改善できる。
【0035】
もちろん、本発明は、シリコン(100)基板に窒化ガリウム以外のワイドギャップIII-V族化合物材料を選択的に成長させることを含む。選択的なエッチングによって格子不整合が事前に選択される低いシリコン(111)結晶面を生成することで、高品質のIII-V族化合物半導体ドレインを成長させ、それによって、III-V族ドレインをSi-MOSFETに統合する。
【0036】
上記内容をまとめると、本発明のワイドギャップIII-V族ドレインを有するSi-MOSFET、及びその製造方法によれば、III-V族材料のワイドギャップ特性及び選択的なエピタキシャル技術によって、高品質、低欠陥のIII-V族ドレイン構造が得られ、素子の絶縁破壊電圧及び回路作動範囲の問題を改善できる。将来的にSi-MOSFETに統合することで、素子の小型化に伴う素子絶縁破壊電圧が低い、という問題の解決が期待できる。また、シリコンVLSI(very-large-scale integration)プラットフォームに利用することで、多くの広いダイナミックレンジのSoCに利用できる。特に高い直線性、高周波電力増幅器の高効率、及び高精度資料転換回路、例えば、5G/6G、RF/microwave/Millimeter-waveレーダー及び無線通信の高線性/効率の後端(backend)送信機、及び高解像度のベースバンドのデジタル-アナログ/アナログ-デジタル変換回路等に利用できる。
【0037】
当業者が本発明の内容を理解、実施できるように、上記実施例によって本発明の技術的な思想及び特徴を説明したが、本発明は、これらに限定されない。本発明の精神に基づいてなされた均等的な変形、改良等は、いずれも本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
100 基板
10 シリコン基板
11 主表面
20 絶縁層
30 半導体層
31 チャネル領域
32 浅いドーピング領域
321 ドレイン位置
33 浅いドーピング領域
331 ソース位置
34 重ドーピング領域
40 ダミーゲート
41 誘電層
50 数百nm単位の孔
51 底壁
52 側壁
53 傾斜面
54 窒化層
60 窒化アルミニウム緩衝層
70 窒化ガリウムドレイン
80 ソース
90 誘電層
91 金属ゲート
L ドリフト領域の長さ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6