(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ケース型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/40 20060101AFI20220207BHJP
B28B 7/34 20060101ALI20220207BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20220207BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220207BHJP
【FI】
B29C33/40
B28B7/34 F
B29C64/118
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2021129397
(22)【出願日】2021-08-05
【審査請求日】2021-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597006975
【氏名又は名称】有限会社内山製陶所
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】内山 祐吉
(72)【発明者】
【氏名】内山 貴文
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-011129(JP,A)
【文献】特開2014-231164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C
B22D
B28B
B28C
B29C
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型成形に用いられる成形型を製作するためのケース型であって、
前記ケース型は、
全体または略全体が樹脂組成物の積層成形体で
、少なくとも2以上の型からなる割型であり、
前記成形型は、石膏の固化体である石膏型であることを特徴とするケース型。
【請求項2】
前記
樹脂組成物は、ポリ乳酸(PLA)をベース樹脂として含む樹脂組成物であることを特徴とする請求項1記載のケース型。
【請求項3】
前記
石膏型は、陶磁器の型成形に用いられる陶磁器用石膏型であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のケース型。
【請求項4】
前記ケース型は、位置合わせ用の凹部と凸部を有し、
前記ケース型を用いて製作された成形型は、凸状の位置合わせ部と、凹状の位置合わせ部とを有し、
複数の前記成形型は、一方の前記成形型の前記凸状の位置合わせ部と、他方の前記成形型の前記凹状の位置合わせ部とが嵌合して組み合わさることを特徴とする
請求項1から請求項3
までのいずれか1項記載のケース型。
【請求項5】
前記ケース型の表面の一部または全部が、パテ材料で平滑化された面であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のケース型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型成形に用いられるケース型に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器や、鋳物を製造するための方法として鋳込み成形法などの型成形が広く用いられている。型成形では、最終製品(以下、「製品」ともいう)の素材を充填する成形型を用いて成形する。成形型には、材質の種類により、砂を固めた砂型、金属を加工した金型、石膏を固めた石膏型などの種々の型がある。石膏は、成形が容易であるとともに、短時間で固化し、固化体の表面が平滑であるため、型の素材として好適である。
【0003】
例えば、鋳物の鋳造の場合、石膏型は、複雑な形状のもの、表面に微細な凹凸のあるものの成形ができることから、金型ダイカスト同等の精度(JIS B 0403 CT7など)、面粗度での鋳造に用いることができる。また、陶磁器の成形の場合、石膏型は、吸水性に優れることから、石膏型に泥漿を流し込み着肉後、泥漿を排出する排泥鋳込成形などに用いることもできる。
【0004】
ここで、陶磁器用の石膏型の従来の製作方法について説明する。陶磁器用の成形型を製作する場合、複数の型(原型、見本型、ケース型、成形型)を順番に製作してゆき、最終的に成形型を得る。具体的には、まず、陶磁器の焼成による収縮の影響や出来上がりのイメージを基に製品の型(原型)を製作する。次に、原型を元に鋳込み成形によって転写させて、ケース型の製作に用いる見本型を製作する。見本型に転写された形状は、最終製品の製造に用いる成形型と同一の形状であるが、製品の陶磁器の素材もしくは原料を原型の形状で多数量産する場合には成形型が多数必要となるため、成形型量産のためにケース型が必要となる。見本型を元に鋳込み成形によって反転させてケース型を製作し、ケース型に石膏を流し込むことにより成形型が得られる。なお、原型とケース型は一部または全部が同一形状であるが、原型は見本型の製作に用いられ、ケース型は成形型の製作に用いられる点で異なる。ケース型は、製造の工程に応じた成形型の求める条件に対応するため、見本型と同一成形型もしくは加工を加えた成形型を作るために製作される。
【0005】
上述の通り、従来の成形型の製作方法は、成形型を製作し、最終製品の製造を開始するまでに多くの型を必要とし、多大な時間と手間を要していた。そのため、これらの時間と手間が最終製品の価格に反映され、市場からの低価格化の要請に対して、価格の低減が困難な状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような成形型の製作に要する時間と手間を削減するための手法として、成形型を3次元データから、三次元積層造形法やNC(数値制御)切削機などを用いて直接製作する方法などが提案されている。特許文献1には、鋳物砂として、耐火骨材を水溶性のバインダーにて被覆してなるコーテッドサンドに対して石膏粉末を混合せしめてなるものを用いると共に、そのような混合物にて形成される砂層の固化乃至は硬化を、水性媒体の散布によって行う積層鋳型(成形型)の製造方法が記載されている。
【0008】
特許文献1に記載の方法の場合、成形型を積層成形で製作することにより、原型や、見本型、ケース型を製作する必要がないため、1つの成形型を得るまでの時間と手間を短縮できる。
【0009】
しかし、最終製品を多数量産する場合には成形型も多数必要となる。積層成形による製作は、1回の製作に長い時間が掛かるため、多数の成形型を製作する必要がある場合には、成形型の製作の工程で多大な時間を要する。そのため、特に最終製品を多数量産する場合、成形型を迅速に製作し、最終製品の製造開始までの時間を短縮することが求められている。また、積層成形に用いる材料も比較的高価であることから、多数の成形型を積層成形することは成形型の製作費用、すなわち製品製造コストの増大にも繋がる。
【0010】
また、NC切削機などを用いて成形型を直接製作する方法の場合、NC切削機のアーム形状などの制限により、つぼ形状などのような複雑な構造の製作が困難な場合がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、成形型による製品の製造(量産)開始までの時間の短縮と、成形型の製作費用が低減できるケース型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のケース型は、型成形に用いられる成形型を製作するためのケース型であって、上記ケース型は、樹脂組成物の積層成形体であることを特徴とする。
ここで、「型成形」とは、流し込み成形、加圧鋳込み成形、プレス成形などの、型に陶土や金属、樹脂などの素材を充填もしくは押し付けて成形することをいう。
【0013】
上記成形型は、石膏の固化体である石膏型であることを特徴とする。
【0014】
上記ケース型は、少なくとも2以上の型からなる割型であることを特徴とする。上記割型は、石膏や樹脂、金属の体積変化による引っ掛かりを防ぐために有用である。
【0015】
上記ケース型は、位置合わせ用の凹部と凸部を有し、上記ケース型を用いて製作された成形型は、凸状の位置合わせ部と、凹状の位置合わせ部とを有し、複数の上記成形型は、一方の上記成形型の上記凸状の位置合わせ部と、他方の上記成形型の上記凹状の位置合わせ部とが嵌合して組み合わさることを特徴とする。上記位置合わせ部は、素材の成形過程で型同士のズレが予期される場合に有用である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のケース型は、型成形に用いられる成形型を製作するためのケース型であって、ケース型は、樹脂組成物の積層成形体であるので、ケース型を製作する前の工程が簡略化され、成形型による製品の製造開始までの時間の短縮と、成形型の製作費用が低減できる。これにより、製品製造コストと時間の低減に繋がる。また、成形型を、ケース型を用いずに積層成形などの方法で直接製作する場合よりも、成形型の製作に要する時間が短く、費用も低廉となる。
【0017】
成形型は、石膏の固化体である石膏型であるので、ケース型に水もしくは液体で溶いた石膏を入れるような成形型の製造の際、石膏が短時間で固化し、成形型の生産性により優れる。これにより、製品の製造開始までの時間をより短縮できる。
【0018】
ケース型は、液体が漏れない形状、もしくは少なくとも2以上の型からなる割型を組み合わせることで作られた液体が漏れない形状であるので、ケース型を用いて成形型を製作する際、成形型からの型抜きを容易に行うことができる。これにより、成形型製作時の歩留まりが向上し、製品製造コストのさらなる低減に繋がる。割型同士の隙間は開いていても製品製造に影響の出ない成形型の形状の場合は問題がない。
【0019】
ケース型は、位置合わせ用の凹部と凸部を有し、ケース型を用いて製作された成形型は、凸状の位置合わせ部と、凹状の位置合わせ部とを有し、複数の成形型は、一方の成形型の凸状の位置合わせ部と、他方の成形型の凹状の位置合わせ部とが嵌合して組み合わさるので、製品製造の際、複数の成形型を密接して隙間なく組み合わせることが容易にできる。これにより、製品製造時の歩留まりが向上し、製品製造コストの一層の低減に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図1に示したケース型の内側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のケース型の一実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、ケース型の斜視図である。
図1に示すように、ケース型1は、2つのケース型1a、1bから構成された割型である。ケース型1は、型成形に用いられる成形型を製作するために用いられる。ケース型1は、樹脂組成物の積層成形体であり、その表面には形状に応じた層状構造が視認される(
図2参照)。
【0022】
上述の通り、ケース型が樹脂組成物の積層成形体であることにより、原型、見本型の製作を行うことなく、最終製品の3次元データに基づき直接ケース型を製作できるため、ケース型を製作する前の工程が簡略化される。その結果、成形型による製品の製造開始までの時間の短縮と、成形型の製作費用が低減でき、製品製造コストの低減に繋がる。なお、原型や見本型、成形型は、3次元データに基づき、樹脂組成物の積層成形体によって成形し、形状を確認することができる。
【0023】
ケース型(積層成形体)の製作方法について説明する。積層成形体は、いわゆる3Dプリンターと呼ばれる積層成形装置によって製作できる。積層成形装置を用いて積層成形体を製作する方式としては、例えば、熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling方式、以下「FDM方式」ともいう)、光造形方式、インクジェット方式、粉末燃焼方式、粉末固着方式などを挙げることができる。積層成形体を製作する方式としては、装置や材料の取扱いが容易で、装置の設置環境の自由度が高いFDM方式が好ましい。FDM方式は、主に熱で溶かした樹脂組成物をノズルから押し出しながらステージ上へ積層して目的物を成形する方式である。
【0024】
上述した積層成形装置で積層成形体を製作する場合、当該装置は目的物をステージと平行な平面で輪切りにした数μm~数mmの層を、ステージ上に1層ずつ下から順番に形成していく。そのため、完成した積層成形体の側面には、積層方向(ステージに対し上下方向)に並んだ層状構造が形成される。
【0025】
図2に、ケース型の内側の拡大平面図を示す。
図2に示すように、ケース型1bの側面には、積層方向(紙面左右方向)に向かって細かい溝(段差)が一方向に並んだ層状構造が視認される。
【0026】
積層成形体の側面には、通常、層状構造が視認される。層状構造の隣接する段差の間隔および高さは、積層成形装置にもよるが、例えばそれぞれ、約0.01mm~1mmである。この層状構造は積層痕と言われる。このため、積層成形したケース型をそのまま用いて成形型を製作した場合、成形型の表面に積層痕が転写されてしまい、転写された積層痕は、成形型により製造される製品にも転写される。そのため、上記段差の間隔および高さが所定の値よりも大きいと製品外観に影響を及ぼしうる。製品外観への積層痕の影響を気にしない場合はそのまま積層成形体を使用する。
【0027】
ケース型の表面の積層痕は、パテ材料などの塗布、サンドペーパー、サンドブラスト、研磨装置などによる研磨、化学表面処理、加熱溶融などの方法により平滑化できる。平滑化の方法としては、工程の容易さの観点から、パテ材料などの塗布が好ましい。塗布するパテ材料などとしては、例えば、エポキシパテ、ポリエステルパテ、ラッカーパテ、瞬間接着パテ、石膏パテ、炭酸カルシウムパテ、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料、シリコーン系塗料などから自由に選択できる。パテ材料などとしては、層状構造の段差への充填性、非流動性、密着性などの観点から、エポキシパテやポリエステルパテが好ましい。
【0028】
ケース型の表面は、型抜きの観点から、表面の一部または全部が平滑であることが好ましい。ケース型の表面の一部または全部を平滑とすることで、成形型をケース型から型抜きする際に抵抗力を受けにくく、型抜きをより容易に行える。また、製品の表面に積層痕が転写されないため、良好な外観が得られる。ここで、「平滑」とは、製作直後の積層成形体が通常有する層状構造が目視上視認できない程度に消失している状態を意味する。作業の簡略化のために、積層痕に加工を加えない場合もある。また、層状構造成形時に製品への転写が確認できない細かい積層痕を作り、加工を省く方法もある。
【0029】
平滑化を行う前のケース型は、積層方向とそれに直交する方向それぞれの方向で測定した算術平均粗さが異なり、表面粗さに異方性がある。これに対し、平滑化を行った後のケース型は、積層方向とそれに直交する方向それぞれの方向で測定した算術平均粗さが略同一で、表面粗さに異方性が無い。
【0030】
図1におけるケース型1の大きさは、約20cm×20cm×10cmである。ケース型1の様な形状も含め、3Dプリンターの性能によって、積層成形体の大きさも選択できる。しかし、樹脂素材によっては収縮の影響によって寸法に影響を与える場合もあるため、3Dデータの設計や3Dプリンターの出力条件の設定に注意が必要である。
【0031】
ケース型の樹脂組成物は、例えば、ポリ乳酸(PLA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合体(ASA)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、シリコーン系樹脂、ワックス、ポリアミド(PA)などのナイロン系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などのウレタン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)などの種々の樹脂を含むことができる。ケース型の樹脂組成物は、寸法安定性の観点から、一般的な樹脂よりも熱収縮率が低く低廉なPLAをベース樹脂として含むことが好ましい。ケース型の樹脂組成物がPLAを含むことで、寸法安定性の確保が容易でない比較的大きな成形型であっても安定した寸法で製作できる。
【0032】
また、ケース型の樹脂組成物は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラスファイバー、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、金属微粒子、金属酸化物微粒子、石膏粉末などの充填剤を含むことができる。ケース型の樹脂組成物は、成形型との相性も鑑みて強度、寸法安定性、コストなどの観点から、体積膨張率が比較的小さく、安価である石膏粉末を含むことが好ましい。ケース型の樹脂組成物が石膏粉末を含むことで、寸法安定性の確保が容易でない比較的大きな成形型であっても安定した寸法で製作できるとともに、ケース型の価格も低減でき、最終製品の価格低減に繋がる。
【0033】
ケース型は、少なくとも2以上の型からなる割型であってもよいし、1つだけの型からなってもよい。ケース型は、樹脂組成物の積層成形体であるので、割型にしようとすると壊れるおそれのある石膏型と比べて割型にしやすい。ケース型が、少なくとも2以上の型からなる割型である場合、例えば、ケース型の材質が体積膨張率の差のある石膏と樹脂、樹脂と樹脂である場合でも、成形型が抜けなくなる(噛み込み)ことや引っ掛かりによる破損を起こすことを回避できる。また、ケース型が割型であることにより、ケース型を用いて成形型を製作する際、成形型の離型角度を鑑みて、割型の設計を行えるため作業性に優れ、成形型からの型抜きを容易に行うことができる。さらに、ケース型が樹脂組成物の積層成形体であるので、ケース型が適度に変形し、成形型に余計な力が掛からない。これにより、型抜き時の欠けや傷付きなどが起こりにくくなることで、成形型製作時の歩留まりが向上する。
【0034】
ケース型の構造について、
図3を用いて説明する。
図3は、
図1に示したケース型の内側の斜視図である。このケース型はケース型の製作個数を節約するために、左右対称の成形型を成形するためのケース型である。
図1のケース型から2つの成形型を作成することにより、
図5の成形型の四方の横面を形作る。
図3に示すように、ケース型1aは、対向して組み合わせられるケース型1bとの位置合わせ用の凹部2を有し、ケース型1bは、ケース型1aとの位置合わせ用の凸部3を有する。また、ケース型1aは、後述する複数の成形型同士を組合わせる際の位置合わせに用いる凹状の位置合わせ部を成形型に形成するための突出部4を有する。ケース型1bは、凸状の位置合わせ部と凹状の位置合わせ部を成形型に形成するための突出部5、6と、窪み部7を有する。なお、凹部2、凸部3、突出部4、5、6および窪み部7の形状は、線状、非線状に限らず自由な形状とできる。ケース型1aとケース型1bを密接して組み合わせたケース型には、例えば、石膏や樹脂組成物を流し込んで成形型として石膏型や樹脂型を作成できる。
【0035】
図1~
図3に示したケース型で製作した成形型について、
図4を用いて説明する。
図4(a)、(b)は、成形型の斜視図である。
図4(a)、(b)に示すように、上述した2つのケース型を用いて製作された成形型8は、凸状の位置合わせ部9と、凹状の位置合わせ部10、11とを有する。
【0036】
図4(c)は、2つの成形型を組み合わせた状態の平面図である。
図4(c)に示すように、2つの成形型8a、8bのうち、一方の成形型8aの凸状の位置合わせ部9a、凹状の位置合わせ部10aと、他方の成形型8bの凹状の位置合わせ部10b、凸状の位置合わせ部9bとがそれぞれ嵌合して組み合わさることにより、製品製造の際、複数の成形型を密接して隙間なく組み合わせることが容易にできる。なお、成形型が割型である場合、成形型は2つに限らず、複数の成形型を組合わせてもよい。凹状の位置合わせ部11は、別の成形型(図示省略)との組み合わせに用いることができる
【0037】
本発明のケース型を用いて製作される成形型の材質としては、例えば、石膏、樹脂、樹脂組成物、金属などの時間経過もしくは化学反応、状態変化によって液体もしくはスラリーから固化する材質などから自由に選択できる。成形型の材質としては、生産性や成形精度の観点から、石膏が好ましい。成形型の材質を石膏とすることで、成形型の製造の際、石膏が短時間で固化するため、成形型の生産性により優れる。成形型の材質として樹脂や樹脂組成物を用いる場合、熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂を含むことができる。
【0038】
図4に示したケース型で製作した最終製品について、
図5を用いて説明する。
図5は、最終製品の一例である陶磁器や樹脂成形体の斜視図である。
図5に示すように、最終製品12は板形状をしている。最終製品12は、
図4(c)に示したケース型を中型として、その上下に配置されるケース型の下型もしくは上型とを組み合わせて形成される空間に陶土もしくは樹脂を充填して製造される。
【0039】
図4では、例として単純な構造の成形型を示したが、より複雑な形状の成形型を複数組み合わせることにより、種々の構造の最終製品を製造することができる。成形型を用いて製造される最終製品の材質としては、例えば、金属、石膏、陶磁器、樹脂組成物などから自由に選択できる。成形型の材質は、最終製品の材質の体積膨張率や、表面エネルギー、表面粗さなどの物性を考慮して、剥離しやすく、型抜きがしやすい組み合わせの材質を選択してもよい。また、ケース型の材質も、成形型の材質の体積膨張率や、表面エネルギー、表面粗さなどを考慮して、剥離しやすく、型抜きがしやすい組み合わせの材質を選択してもよい。例えば、成形型の材質は、最終製品よりも低表面エネルギーとなるような材質が好ましく、ケース型の材質は、成形型の表面よりも低表面エネルギーとなるような材質が好ましい。
【0040】
本発明のケース型の製作手順の一例について説明する。ケース型は、FDM方式の積層成形装置ANYCUBIC MEGA X(ANYCUBIC JP社製)により、PLAフィラメントを積層成形することによって製作する。ケース型は、2つの型からなる割型で、組み合わせると最大四方が約30cmとなる。ケース型は、端部の反りの影響を受けないよう、約2cm程度の厚さに製作する。積層成形後、ケース型を積層成形装置のステージから剥離する。
【0041】
上記ケース型を用いた成形型の製作手順の一例について説明する。層状構造を平滑化した2つのケース型を、一方のケース型の凹部と、他方のケース型の凸部が合致するように位置決めして組み合わせ、ゴムバンドなどを用いて固定する。固定されたケース型の開口部から石膏を流し入れ、所定の時間静置することで石膏製の成形型を得ることができる。
【0042】
上記手順で製作した複数の成形型を用いた陶磁器製品の製造手順の一例について説明する。複数の成形型は、それぞれ、凸状の位置合わせ部と、凹状の位置合わせ部とを有する。複数の成形型のうち、一方の成形型の凸状の位置合わせ部と他方の成形型の凹状の位置合わせ部とが嵌合し、全ての成形型の凸状の位置合わせ部と、凹状の位置合わせ部とが相互に組み合わさるように固定する。必要に応じて他の成形型と組み合わせる。組み合わされた成形型の内部に流動性のある粘土(陶土)である泥漿もしくは樹脂を鋳込み、製品を成形する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のケース型は、成形型による製品の製造開始までの時間の短縮と、成形型の製作費用が低減できるため、製品製造コストを低減でき、流し込み成形や加圧鋳込み成形、プレス成形などの型成形に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1、1a、1b ケース型
2 凹部
3 凸部
4、5、6 突出部
7 窪み部
8、8a、8b 成形型
9、9a、9b 凸状の位置合わせ部
10、10a、10b、11 凹状の位置合わせ部
12 最終製品
【要約】
【課題】成形型による製品の製造開始までの時間の短縮と、成形型の製作費用が低減できるケース型を提供する。また、製作の自由度がより高い3Dデータに対応したモデリングの実物の成形を実現する。
【解決手段】ケース型1は、型成形に用いられる成形型を製作するためのケース型1であって、少なくとも2以上の型からなる割型であり、ポリ乳酸(PLA)やアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などを含む樹脂組成物の積層成形体であり、成形型は、石膏の固化体である石膏型である。
【選択図】
図1