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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】足場板
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/08 20060101AFI20220207BHJP
   E04G 7/34 20060101ALI20220207BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20220207BHJP
   E04G 7/28 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
E04G5/08 B
E04G5/08 R
E04G7/34 305C
E04G3/24 302H
E04G7/28 302
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019188729
(22)【出願日】2019-10-15
(62)【分割の表示】P 2019094128の分割
【原出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020190179
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2019-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】516106726
【氏名又は名称】株式会社ジャストビギン
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉本 澄雄
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-119040(JP,U)
【文献】特開2000-120263(JP,A)
【文献】特開2000-144641(JP,A)
【文献】特許第6685630(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3022157(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/00,3/22-3/24,5/08,7/00-7/34
E01D 21/00,22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺と短辺を有する矩形の板状の足場板本体を有し、
上記足場板本体が、長辺方向に延びる複数の中空形材が短辺方向に配列され、かつ、互いに嵌合して形成され、
上記複数の中空材のうちの一つの中空形材の上端と下端には、長辺方向に延びると共に短辺方向に突出するフランジが形成され、隣接する他の中空形材の上端と下端には、上記フランジの先端部が内部に収容されて嵌合する嵌合溝が形成され、上記一つの中空材のフランジの先端部よりも内側には、短辺方向と略平行に延在する長穴が長辺方向の異なる位置に複数個形成され、各長穴には、隣接する他の中空形材の端部を貫通するリベットが各々挿通され、隣接する他の中空形材の端部に対して、一つの中空形材のフランジが嵌合した状態で、短辺方向に摺動可能とされていることにより、中空形材の相互間の距離が、長辺方向の異なる位置で異なる値に設定可能に形成されていることを特徴とする足場板。
【請求項2】
請求項1に記載の足場板において、
上記足場板本体を形成する中空形材が、アルミニウム製の押出形材であることを特徴とする足場板。
【請求項3】
請求項1に記載の足場板において、
上記中空形材の内側に、環状の支持金具が、上記足場板本体の表面に形成された金具穴から出没可能に収容されていることを特徴とする足場板。
【請求項4】
請求項1に記載の足場板において、
上記足場板本体の一方の長辺に設けられ、この端面から突出すると共に長辺の全長に亘って延在する突出部を有する第1連結部と、
上記足場板本体の他方の長辺に設けられ、短辺方向に隣接して配置される足場板の上記突出部が挿入されると共に長辺の全長に亘って延在する挿入穴を有する第2連結部と
を備え、
上記第2連結部が設けられた長辺を形成する中空形材の内側に、上記第2連結部の挿入穴内に挿入された上記第1連結部の突出部を上記挿入穴内から離脱不可に固定する固定機構が、嵌合して収容されていることを特徴とする足場板。
【請求項5】
請求項に記載の足場板において、
上記固定機構は、上記第2連結部が設けられた長辺の近傍に、この第2連結部の挿入穴内に挿入された上記第1連結部の突出部を上記挿入穴内から離脱不可に固定するように形成されていることを特徴とする足場板。
【請求項6】
請求項に記載の足場板において、
上記固定機構は、上記足場板本体内の上記挿入穴の上側に設けられ、上記挿入穴に連通する連通穴が一部に形成された案内通路と、この案内通路内を移動可能かつ上記連通穴に挿通可能に形成された固定具とを有し、
上記第1連結部の突出部には、上記固定具が挿入可能な固定用挿入穴が形成され、
上記第2連結部の挿入穴内に上記第1連結部の突出部が挿入されたとき、この突出部の固定用挿入穴に、上記案内通路の連通穴内に挿通された固定具の先端部が挿入されることにより、この固定具で第1連結部の突出部と第2連結部の挿入穴とが係合されて固定されることを特徴とする足場板。
【請求項7】
請求項に記載の足場板において、
上記固定機構の固定具が、上記足場板本体の表面に形成された操作穴を通して、上記連通穴に対する挿通と離脱が操作可能に形成されていることを特徴とする足場板。
【請求項8】
請求項1に記載の足場板において、
上記足場板本体の短辺に、隣接して配置される足場板の短辺と連結するための短辺連結部を備え、
上記短辺連結部は、
上記足場板本体の短辺の端面に形成された開口と、
上記開口から出没可能に形成された短辺連結体と、
上記足場板本体の内側に形成され、上記開口に連通して上記短辺連結体が通過すると共に、隣接した足場板の短辺連結部の短辺連結体が挿入される通路兼挿入室と、
上記通路兼挿入室の奥側に連なって上記短辺連結体を収容する収容室と、
上記通路兼挿入室に挿入された短辺連結体を固定する固定機構と
を有し、
上記短辺連結部の固定機構が、上記複数の中空形材のうちの短辺方向の両端以外の中空形材の内側に嵌合して収容されている
ることを特徴とする足場板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事や補修工事等で用いられる足場板に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の補修工事を行う場合、高所に存在する床版や橋桁の下側で作業を行うために、吊り足場を設置している。吊り足場としては、橋桁に複数のチェーンを固定し、これらのチェーンの下端に足場板を接続し、複数の上記足場板を水平方向に順次連結して形成されるものがある。このような吊り足場を形成するための足場板として、従来、図16A及び図16Bに示すようなものがある。
【0003】
図16Aは従来の足場板100の平面図であり、図16Aは従来の足場板100の側面図である。従来の足場板100は概ね正方形に形成され、棒部材を矩形に組み合わせて形成された枠組101と、この枠組101の表面に張られた板状の床材102で大略構成されている。この足場板100は、複数の足場板100を互いに連結するための連結部が、一方の辺と、この辺に対向する他方の辺に形成されている。一辺の連結部には、この辺と直角に突出した棒状の預け金具103が設けられている一方、他辺の連結部は、この辺と平行に延びる受け金具104が設けられている。預け金具103は、側面視において、先端側が上方に開口を有すると共に基端側が長穴状に形成された概ね鉤型形状を有し、連結部が形成された辺の両端部に夫々設置されている。受け金具104は、平面視において連結部が形成された辺と平行に延びる棒部材で形成され、連結部が形成された辺の両端部に夫々設置されている。
【0004】
上記従来の足場板100で吊り足場を形成する場合、まず図17Aで示すように、橋梁の主桁107に固定されて垂下したチェーン108A,108Aに、第1の足場板100Aを取り付ける。続いて、第1の足場板100A上に第2の足場板100Bを搬入し、第1の足場板100A上で、作業者109が第2の足場板100Bを連結する作業を行う。このとき、作業者109は、図17Aに示すように、第2の足場板100Bを略鉛直方向に向けて、連結部を第1の足場板100Aの連結部に係合させる。詳しくは、第2の足場板100Bの受け金具104を、第1の足場板100Aの預け金具103の開口から挿入し、預け金具103の開口と対向する部分に接するように配置する。また、第2の足場板100Bの預け金具103の近傍に、主桁107に固定されたチェーン108の下端を接続する。
【0005】
この後、図17Bに示すように、第2の足場板100Bを、重力によって受け金具104回りに回転させ、チェーン108Bを伸張させて、第1の足場板100Aと同一平面上に向ける。続いて、第2の足場板100Bを第1の足場板100Aの側に引き寄せ、第2の足場板100Bの受け金具104を、第1の足場板100Aの預け金具103の長穴部分でスライドさせる。これにより、第2の足場板100Bの連結部を、第1の足場板100Aの連結部に密着させて、第1の足場板100Aへの第2の足場板100Bの連結作業が完了する。このような足場板100の搬入と連結を繰り返すことにより、吊り足場が構築される。
【0006】
上記足場板100により、橋梁に沿ってカーブした吊り足場を形成する場合、隣り合う足場板100の連結部の間に、楔状の隙間が形成される。この隙間を塞ぐために、足場板100の上に隙間塞ぎ材を載置して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-204333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の足場板100は、枠組101と床材102で構成されるため、特に枠組101に鋼等の強度の高い材質を採用する必要があり、質量の増加を招く不都合がある。
【0009】
また、上記従来の足場板100は、吊り足場を形成したとき、矩形の枠組101が下側に露出するため、下方から視たときの美観が悪いという問題がある。
【0010】
さらに、上記従来の足場板100は、カーブした吊り足場を形成する際、足場板100の相互間に形成される隙間を塞ぐため、別部品である隙間塞ぎ材を配置する作業が必要であり、手間がかかる問題がある。また、吊り足場を形成するための部品点数が増える問題がある。また、隙間塞ぎ材を配置する作業において、隙間から部品や工具等が落下する恐れがある。
【0011】
また、上記従来の足場板100で吊り足場を作製する際、第2の足場板100Bを第1の足場板100A上に鉛直方向に向けて配置し、重量で回転させて水平方向に向け、第1の足場板100Aの側に引き寄せる間、互いの足場板100A,100Bの連結部の間に、図18に示すような隙間110が形成される。この隙間110から、番線や金物や工具等のような、作業に用いる物が落下する恐れがある。特に、都市高速道路の高架橋のように、下方に人や車両が多く存在する場所に吊り足場を設置する場合、隙間110からの落下物は、番線のような軽量なものであっても、大きな問題を発生させる恐れがある。
【0012】
また、上記従来の足場板100は、連結部が形成された辺の両端に設けられた預け金具103と受け金具104により、隣り合う足場板100A,100Bを連結するので、足場板100A,100Bが一体化され難い問題がある。詳しくは、足場板100A,100Bは、辺の両端に設けられた預け金具103と受け金具104で連結され、これらの預け金具103と受け金具104は点接触であるため、上記辺の直角方向にモーメント荷重が伝達されない。したがって、第1の足場板100Aに比較的質量の大きい物が載置された場合、図19の正面図に示すように、第1の足場板100Aの中央が撓んで第2の足場板100Bとの間に段差111が形成される。また、図20の側面図に示すように、第1の足場板100Aと第2の足場板100Bとの間に比較的大きな角度変位θが形成される。その結果、作業者や台車が足場板100A,100Bの間を移動するときに、作業者の躓きや、台車の停止が発生する恐れがある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、従来よりも軽量かつ強度の高い足場板を提供することにある。また、吊り足場を形成したときに、下方から視た美観を向上できる足場板を提供することにある。また、湾曲した吊り足場を、隙間を形成することなく形成できる足場板を提供することにある。また、互いを連結する際に物の落下を防止できる足場板を提供することにある。また、連結部分の剛性を従来よりも高くでき、段差や角度変位を縮小できる足場板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の足場板は、
長辺と短辺を有する矩形の板状の足場板本体を有し、
上記足場板本体が、長辺方向に延びる複数中空形材が短辺方向に配列され、かつ、互いに嵌合して形成されていることを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、長辺と短辺を有する矩形の板状の足場板本体が、幅方向に配列されて嵌合した複数の中空形材によって形成されるので、従来のように裏面に枠組が露出しないから、吊り足場を形成したときの下方からの美観を向上できる。また、中空形材の材料に、例えばアルミニウム等の軽量の金属や、FRP等の樹脂等を用いることができるので、足場板の軽量化を行うことができ、吊り足場を形成する作業の負担を軽減できる。
【0016】
一実施形態の足場板は、上記足場板本体を形成する中空形材が、アルミニウム製の押出形材である。
【0017】
上記実施形態によれば、中空形材として、アルミニウム製の押出形材で足場板本体を形成することにより、軽量かつ強度の比較的高い足場板が得られる。
【0018】
一実施形態の足場板は、上記足場板本体が、隣接する中空形材の間の嵌合長さが短辺方向に変更可能に形成され、かつ、上記短辺方向の嵌合長さが長辺方向の異なる位置で異なる長さに設定可能に形成されている。
【0019】
上記実施形態によれば、中空形材で形成された足場板本体が、隣接する中空形材の間の嵌合長さが短辺方向に変更可能に形成されている。さらに、上記隣接する中空形材の間の短辺方向の嵌合長さが、長辺方向の異なる位置で、異なる長さに設定可能に形成されている。これにより、足場板を配列して吊り足場を形成する際に、隣接する足場板との間に隙間が生じる場合、中空形材の間の短辺方向の嵌合長さを適宜調節することにより、足場板の短辺方向の長さを調整して、隙間を解消することができる。また、隣り合う中空形材の間の短辺方向の嵌合長さを、長辺方向の一端は小さく設定すると共に、長辺方向の他端は大きく設定することにより、足場板本体の形状を扇状に変更することができる。したがって、橋梁に沿ってカーブした吊り足場を形成する場合、足場板本体の形状を、カーブの曲率に応じた扇形に調節することにより、吊り足場に隙間が発生する不都合を効果的に防止することができる。しかも、上記隣り合う中空形材の間の短辺方向の嵌合長さを適宜調節することにより、種々の曲率のカーブの吊り足場を、隙間無く形成することができる。さらに、足場板の相互間に形成される隙間を塞ぐための別部品が不要であるので、少ない部品点数で吊り足場を形成することができ、また、別部品で隙間を塞ぐ作業の際に部品や工具が落下する不都合を防止できる。
【0020】
一実施形態の足場板は、上記中空形材の内側に、環状の支持金具が、上記足場板本体の表面に形成された金具穴から出没可能に収容されている。
【0021】
上記実施形態によれば、足場板本体を形成する中空形材の内側に、環状の支持金具が収容されている。この支持金具は、上記足場板本体の表面に形成された金具穴から出没可能に形成されている。これにより、支持金具を使用しない場合は、足場板本体の表面から支持金具や支持金具に関する部品が突出することが無い。したがって、足場板上での作業者の作業や台車の走行が突出物で支障を来す不都合を、効果的に防止できる。また、支持金具が足場板本体内に内蔵されているので、別部品のボルトやクランプ等を用いる必要が無いから、少ない部品点数で吊り足場を形成することができる。ここで、上記支持金具は、足場板を吊下げるためのチェーンやワイヤ等に接続されてもよく、また、作業者に把持されてもよく、要は、足場板を支持するための種々の用途の金具が該当する。
【0022】
一実施形態の足場板は、上記足場板本体の一方の長辺に設けられ、この端面から突出すると共に長辺の全長に亘って延在する突出部を有する第1連結部と、
上記足場板本体の他方の長辺に設けられ、短辺方向に隣接して配置される足場板の上記突出部が挿入されると共に長辺の全長に亘って延在する挿入穴を有する第2連結部と
を備え、
上記第2連結部が設けられた長辺を形成する中空形材の内側に、上記第2連結部の挿入穴内に挿入された上記第1連結部の突出部を上記挿入穴内から離脱不可に固定する固定機構のアッセンブリブロックが、嵌合して収容されている。
【0023】
上記実施形態によれば、足場板は、第2連結部の挿入穴内に挿入された第1連結部の突出部を上記挿入穴内から離脱不可に固定する固定機構を備え、この固定機構により、隣接する足場板の連結が固定される。ここで、上記第2連結部が設けられた長辺を形成する中空形材の内側に、固定機構のアッセンブリブロックが嵌合して収容されることにより、相互に連結して固定される足場板を、容易に製造することができる。
【0024】
一実施形態の足場板は、上記固定機構は、上記第2連結部が設けられた長辺の近傍に、この第2連結部の挿入穴内に挿入された上記突出部を上記挿入穴内から離脱不可に固定するように形成されている。
【0025】
上記実施形態によれば、第1の足場板に第2の足場板を連結する工程で、第1の足場板の第1連結部の突出部が、第2の足場板の第2連結部の挿入穴に挿入され、固定機構によって、上記突出部が挿入穴内から離脱不可に固定される。これにより、第1の足場板に第2の足場板を分離不可に固定することができる。
【0026】
一実施形態の足場板は、上記固定機構は、上記足場板本体内の上記挿入穴の上側に設けられ、上記挿入穴に連通する連通穴が一部に形成された案内通路と、この案内通路内を移動可能かつ上記連通穴に挿通可能に形成された固定具とを有し、
上記第1連結部の突出部には、上記固定具が挿入可能な固定用挿入穴が形成され、
上記第2連結部の挿入穴内に上記第1連結部の突出部が挿入されたとき、この突出部の固定用挿入穴に、上記案内通路の連通穴内に挿通された固定具の先端部が挿入されることにより、この固定具で第1連結部の突出部と第2連結部の挿入穴とが係合されて固定される。
【0027】
上記実施形態によれば、第2連結部の挿入穴内に挿入された第1連結部の突出部を固定するための固定機構が、足場板本体内の挿入穴の上側に設けられた案内通路と、この案内通路内を移動可能な固定具を有する。上記案内通路は、上記挿入穴に連通する連通穴が一部に形成されている一方、上記固定具は、上記連通穴に挿通可能に形成されている。また、上記第1連結部の突出部には、上記固定具が挿入可能な固定用挿入穴が形成されている。第1の足場板に第2の足場板を連結する工程で、第2の足場板の第2連結部の挿入穴内に、第1の足場板の第1連結部の突出部が挿入された後、上記案内通路の固定具が連通穴内に挿通されると共に、この連通穴内に挿通された固定具の先端部が固定用挿入穴に挿入される。これにより、上記固定具で第1連結部の突出部と第2連結部の挿入穴とを係合して固定することができる。
【0028】
一実施形態の足場板は、上記固定機構の固定具が、上記足場板本体の表面に形成された操作穴を通して、上記連通穴に対する挿通と離脱が操作可能に形成されている。
【0029】
上記実施形態によれば、固定機構の固定具が、足場板本体の表面に形成された操作穴を通して、連通穴に対する挿通と離脱が操作可能であるので、足場板上の作業者によって、足場板相互の固定と解除の作業を、容易かつ安全に行うことができる。ここで、上記固定具は、上記操作穴を通して挿入されたシノ等の先端が尖った工具で操作可能なように、操作用の係合穴が形成されているのが好ましい。
【0030】
一実施形態の足場板は、上記足場板本体の短辺に、隣接して配置される足場板の短辺と連結するための短辺連結部を備え、
上記短辺連結部は、
上記足場板本体の短辺の端面に形成された開口と、
上記開口から出没可能に形成された短辺連結体と、
上記足場板本体の内側に形成され、上記開口に連通して上記短辺連結体が通過すると共に、隣接した足場板の短辺連結部の短辺連結体が挿入される通路兼挿入室と、
上記通路兼挿入室の奥側に連なって上記短辺連結体を収容する収容室と、
上記通路兼挿入室に挿入された短辺連結体を、上記通路兼挿入室内から離脱不可に固定する固定機構と
を有し、
上記短辺連結部の固定機構を形成するアッセンブリブロックが、上記複数の中空形材のうちの短辺方向の両端以外の中空形材の内側に嵌合して収容されている。
【0031】
上記実施形態によれば、足場板本体の短辺に、隣接して配置される足場板の短辺と連結するための短辺連結部を備えるので、短辺が接するように長辺方向に配置された足場板を相互に連結することができる。ここで、上記短辺連結部は、足場板本体の短辺の端面に形成された開口と、この開口から出没可能に形成された短辺連結体と、上記足場板本体の内側に形成され、上記開口に連通して上記短辺連結体が通過すると共に、隣接した足場板の短辺連結部の短辺連結体が挿入される通路兼挿入室と、この通路兼挿入室の奥側に連なって上記短辺連結体を収容する収容室と、上記通路兼挿入室に挿入された短辺連結体を、上記通路兼挿入室から離脱不可に固定する固定機構とを有する。したがって、隣接する足場板が、互いに短辺連結部の開口を相対するように配置されれば、いずれか一方の短辺連結体を、他方の通路兼挿入室に挿入し、他方の固定機構で上記短辺連結体を固定することにより、互いの足場板を連結することができる。したがって、作業が容易な側の短辺連結体を選んで、通路兼挿入室への挿入と固定を行うことができるので、高い自由度で連結作業を行うことができる。また、足場板本体の短辺に、同一の構造を有する短辺連結部が設けられているので、足場板を設置する際に、短辺の連結部の種類を区別する必要が無い。したがって、足場板の配列形態を高い自由度で設置することができる。また、足場板相互の短辺を、足場板本体内の部材によって連結することができるので、クランプ等の他の部品を用いる必要が無い。したがって、吊り足場を形成する作業において、使用する部品の点数を削減でき、また、吊り足場からの部品の落下を防止できる。
【0032】
また、本発明の足場板は、
長辺と短辺を有する矩形の板状の足場板本体と、
上記足場板本体の一方の長辺に設けられ、この端面から突出すると共に長辺の全長に亘って延在する突出部を有する第1連結部と、
上記足場板本体の他方の長辺に設けられ、短辺方向に隣接して配置される足場板の上記突出部が挿入されると共に長辺の全長に亘って延在する挿入穴を有する第2連結部と
を備えることを特徴としている。
【0033】
上記構成によれば、先に配置された第1の足場板の短辺方向に、第2の足場板を配列して連結するとき、第1の足場板の第1連結部の突出部の上に、第2の足場板の第2連結部が設けられた端面が接するように、この第2の足場板を立設状態で配置する。このとき、立設して配置された第2の足場板の第2連結部の挿入穴が、第1の足場板の第1連結部の突出部の先端を臨むように形成されているのが好ましい。続いて、上記第2の足場板を、上記第1の足場板の第1連結部の突出部の上で回転させて倒すことにより、上記第1の足場板の第1連結部の突出部の先端が、上記第2の足場板の第2連結部の挿入穴の内側に挿入される。この後、上記第2の足場板を第1の足場板に引き寄せ、上記第2の足場板の足場板本体の端面を、上記第1の足場板の足場板本体の端面に密着させることにより、上記第2の足場板が第1の足場板に連結される。これらの工程において、上記第1の足場板の第1連結部の突出部と、上記第2の足場板の第2連結部の挿入穴は、いずれも長辺の全長に亘って延在するので、第1の足場板と、第2の足場板との間に、隙間が形成されることがない。したがって、複数の足場板で吊り足場を形成する作業中に、足場板の相互の隙間から物が落下する不都合を、効果的に防止することができる。
【0034】
また、上記第1の足場板と第2の足場板は、第1の足場板の長辺の全長に亘って延在する突出部が、第2の足場板の長辺の全長に亘って延在する挿入穴に嵌合して連結される。したがって、第1の足場板と第2の足場板は、辺の両端で連結されるよりも、高い剛性で連結される。これにより、第1の足場板と第2の足場板の間に段差が形成される不都合を防止でき、また、第1の足場板と第2の足場板の間に形成される角度変位を低減できる。その結果、作業者や台車が足場板の相互間を移動するときに、作業者の躓きや、台車の停止が発生する不都合を、効果的に防止できる。
【0035】
一実施形態の足場板は、上記第1連結部の突出部の先端に、上記足場板の表面側に突出した突起を有する。
【0036】
上記実施形態によれば、先に配置された第1の足場板に第2の足場板を連結する工程で、第1の足場板の第1連結部の突出部が第2の足場板の挿入穴に挿入されたとき、第2の足場板が第1の足場板から離れる方向の力を受けても、第1連結部の突出部の先端に設けられた突起が、第2連結部の挿入穴の内側に係合することにより、第1の足場板から第2の足場板が離れることを防止できる。したがって、第1の足場板と第2の足場板との間に隙間が形成される不都合を防止できる。
【0037】
一実施形態の足場板は、上記第2連結部の挿入穴の縁に、上記挿入穴の内側に突出した突起を有する。
【0038】
上記実施形態によれば、先に配置された第1の足場板に第2の足場板を連結する工程で、第1の足場板の第1連結部の突出部が第2の足場板の挿入穴に挿入されたとき、第2の足場板が第1の足場板から離れる方向の力を受けても、第2連結部の挿入穴の縁に設けられた突起が、第1連結部の突出部の突起に係合する。これにより、第1の足場板から第2の足場板が離れることを防止できる。したがって、第1の足場板と第2の足場板との間に隙間が形成される不都合を防止できる。
【0039】
一実施形態の足場板は、上記第1連結部の突出部の表面に、隣接して配置される足場板の第2連結部の挿入穴の縁部が係合する凹部を有する。
【0040】
上記実施形態によれば、先に配置された第1の足場板に第2の足場板を連結する工程で、第1の足場板の第1連結部の突出部の上に、第2の足場板が、この第2の足場板の第2連結部が設けられた端面が接するように立設状態で配置される。この後、第2の足場板が倒される際、この第2の足場板の第2連結部に設けられた挿入穴の縁部が、上記第1の足場板の第1連結部の突出部の凹部に係合することにより、第2の足場板は、第1の足場板の第1連結部の突出部上で安定して回転する。したがって、第2の足場板を、第1の足場板との間に隙間を形成することなく倒すことができ、第1の足場板の同一平面上に配置することができる。
【0041】
一実施形態の足場板は、上記固定機構は、上記足場板本体内の上記通路兼挿入室の上側に設けられ、上記通路兼挿入室に連通する連通穴が一部に形成された案内通路と、この案内通路内を移動可能かつ上記連通穴に挿通可能に形成された固定具とを有し、
上記短辺連結体には、上記固定具が挿入可能な固定用挿入穴が形成され、
上記通路兼挿入室内に、隣接する足場板の上記短辺連結体が挿入されたとき、この短辺連結体の固定用挿入穴に、上記案内通路の連通穴内に挿通された固定具の先端部が挿入されることにより、この固定具で短辺連結体と通路兼挿入室とが係合されて固定される。
【0042】
上記実施形態によれば、通路兼挿入室内に挿入された短辺連結体を固定するための固定機構が、足場板本体内の通路兼挿入室の上側に設けられた案内通路と、この案内通路内を移動可能に形成された固定具とを有する。上記案内通路は、上記通路兼挿入室に連通する連通穴が一部に形成されている一方、上記固定具は、記連通穴に挿通可能に形成されている。また、上記短辺連結体には、上記固定具が挿入可能な固定用挿入穴が形成されている。第1の足場板の短辺と、第2の足場板の短辺を連結する工程で、第2の足場板の通路兼挿入室内に、第1の足場板の短辺連結体が挿入された後、上記案内通路の固定具が連通穴内に挿通されると共に、この連通穴内に挿通された固定具の先端部が固定用挿入穴に挿入される。これにより、上記固定具で第1の足場板の短辺連結体と第2の足場板の通路兼挿入室とを係合して固定することができる。
【0043】
一実施形態の足場板は、上記固定機構の固定具が、上記足場板本体の表面に形成された操作穴を通して、上記連通穴に対する挿通と離脱が操作可能に形成されている。
【0044】
上記実施形態によれば、固定機構の固定具が、足場板本体の表面に形成された操作穴を通して、連通穴に対する挿通と離脱が操作可能であるので、足場板上の作業者によって、足場板相互の固定と解除の作業を、容易かつ安全に行うことができる。ここで、上記固定具は、上記操作穴を通して挿入されたシノ等の先端が尖った工具で操作可能なように、操作用の係合穴が形成されているのが好ましい。
【0045】
一実施形態の足場板は、上記足場板本体が、長辺方向に延びる複数の中空形材が短辺方向に配列され、かつ、互いに嵌合して形成されている。
【0046】
上記実施形態によれば、足場板本体が、幅方向に配列されて嵌合した複数の中空形材によって形成されるので、従来のように裏面に枠組が露出しない。したがって、吊り足場を形成したときの下方からの美観を向上できる。また、複数の中空形材を幅方向に嵌合して板状の足場板本体が形成されるので、中空形材の材料に、例えばアルミニウム等の軽量の金属や、FRP(繊維強化プラスチック)等の樹脂等を用いることができる。したがって、足場板の軽量化を行うことができ、吊り足場を形成する作業の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態の足場板を示す平面図である。
図2】足場板を用いて形成された吊り足場の横断面図である。
図3図2中のB-B’線に沿った吊り足場の平面図である。
図4図1中のA-A’線に沿った足場板の横断面図である。
図5】足場板の第1連結部の周辺を示す部分断面図である。
図6】足場板の第2連結部の周辺を示す部分断面図である。
図7】第1の足場板の第1連結部と第2の足場板の第2連結部との連結部分を示す断面図である。
図8図7中のC-C’線に沿った連結部分の横断面図である。
図9A】第1の足場板の第1連結部と第2の足場板の第2連結部とを連結する工程を示す断面図である。
図9B図9Aに続く工程を示す断面図である。
図9C図9Bに続く工程を示す断面図である。
図10】足場板の短辺連結部を示す平断面図である。
図11図10中のE-E’線に沿った短辺連結部の断面図である。
図12A】第1の足場板と第3の足場板を、第1の足場板の短辺連結体を第3の足場板の通路兼挿入室内に挿入して連結した様子を示す平断面図である。
図12B】第1の足場板と第3の足場板を、第3の足場板の短辺連結体を第1の足場板の通路兼挿入室内に挿入して連結した様子を示す平断面図である。
図13A】吊り金具のアッセンブリブロックを示す平面図である。
図13B図13A中のG-G’線に沿った吊り金具のアッセンブリブロックの断面図である。
図14】足場板の中空形材が互いに連結された摺動嵌合部を示す断面図である。
図15】足場板の一方の短辺を短く、他方の短辺を長く調節した様子を示す平面図である。
図16A】従来の足場板を示す平面図である。
図16B】従来の足場板を示す側面図である。
図17A】従来の足場板で吊り足場を形成する工程を示す図である。
図17B図17Aに続く工程を示す図である。
図18】従来の隣接する足場板の連結部を示す平面図である。
図19】従来の足場板に荷重が作用した様子を示す正面図である。
図20】従来の足場板に荷重が作用した様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0049】
図1は、本発明の実施形態の足場板を示す平面図である。本実施形態の足場板は、建設工事や補修工事等で作業用の足場を形成するために用いられるものであり、特に、高所から吊り下げられて互いに連結されることにより、吊り足場を形成するために好適である。
【0050】
本実施形態の足場板1は、平面視において長辺2と短辺3を有する矩形の板状の足場板本体4と、この足場板本体4の一方の長辺2aに設けられた第1連結部と、上記足場板本体4の他方の長辺2bに設けられた第2連結部を備える。短辺方向に配列した複数の足場板1を、相対する上記第1連結部と第2連結部によって互いに連結することにより、短辺方向の複数の足場板1を一体化するように形成されている。また、この足場板1は、足場板本体4の両方の短辺3,3に、長辺方向に隣接した足場板1の短辺3と連結するための短辺連結部が設けられている。長辺方向に配列した複数の足場板1を、相対する上記短辺連結部によって互いに連結することにより、長辺方向の複数の足場板1を一体化するように形成されている。こうして複数の足場板1を、短辺方向と長辺方向に互いに連結することにより、足場を形成するように構成されている。
【0051】
上記足場板1の表面には、図1に示されるように、第1連結部に、一方の長辺2aに隣接する足場板1と連結する際に、この隣接した足場板1の固定具が係合する固定穴7が形成されている。また、第2連結部の近傍に、他方の長辺2bに隣接する足場板1との連結又は解除を行う際に、この隣接した足場板1の固定穴7に対して固定具を係合又は除去するための長辺固定操作穴8が形成されている。また、両方の短辺3,3の近傍に、これらの短辺3,3に隣接する足場板1との連結を行う嵌合体を進退操作するための進退操作穴41と、挿入された嵌合体に対する固定具の係合又は除去を行うための短辺固定操作穴40が形成されている。また、足場板1を吊り下げるときや、足場板1を運搬するときに金具を出没操作するための金具操作穴60と、ボルトが螺着されるボルト穴80が形成されている。また、足場板1の表面には、後述する中空形材を互いに接続するためのリベット70が現れている。
【0052】
本実施形態の足場板1の寸法は、例えば長辺2が3000mm、短辺3が600mm、かつ、厚みが60mmに形成することができる。なお、長辺2を2000mmや3850mm等の寸法に形成してもよい。また、長辺2と短辺3の長さと、長辺2と短辺3との比率は、種々の値に設定することができる。
【0053】
図2は、橋梁の補修工事のために設置された吊り足場を示す図であって、橋梁の床版の下側に、複数の足場板1で形成された吊り足場を設置した様子を模式的に示す断面図である。図3は、図2中のB-B’断面矢視図であって、上記吊り足場を模式的に示す平面図である。図2に示すように、橋梁20の床版21を支持する主桁22,22,22,・・・の下フランジに、クランプ23でチェーン24を固定し、このチェーン24の下端に、足場板1を接続して吊り下げている。図3において、65はチェーン24に接続される吊り金具であり、後に詳述する。チェーン24で吊下げられた複数の足場板1は、長辺方向と短辺方向に互いに連結されて、吊り足場10を構成している。詳しくは、複数の足場板1が、橋軸方向に延在する主桁22に沿って、第1連結部と第2連結部とで互いに連結されることにより、短辺方向に向かって設置される。また、隣の主桁22に沿って、複数の足場板1が短辺方向に向かって設置される。これらの短辺方向に設置された足場板1の列が、長辺方向に隣接する足場板1,1との間で短辺連結部によって連結されることにより、長辺方向にも連結されて、吊り足場10が形成される。図3において、X方向が長辺方向であり、Y方向が短辺方向である。すなわち、足場板1Aと足場板1Bが短辺方向に配列されて連結されており、足場板1Aと足場板1Cが長辺方向に配列されて連結されている。また、本実施形態の足場板1による吊り足場10は、橋梁以外の他の構造物に設置してもよい。
【0054】
図4は、図1中のA-A’断面矢視図であって、足場板1を短辺方向に切断した様子を示す横断面図である。図4に示すように、この足場板1は、長辺方向に延在する5個の中空形材を、幅方向すなわち短辺方向に配列して互いに嵌合することにより、板状に形成している。これらの中空形材は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、押出成形により作製されている。これらの中空形材は、短辺方向の中央に位置する中央材11と、この中央材11の両側に位置する中間材12,13と、短辺方向の一端に位置する第1端材14と、短辺方向の他端に位置する第2端材15で構成されている。
【0055】
中央材11は、幅方向において左右対称の形状を有すると共に閉断面に形成され、幅方向の両側かつ表面と裏面に、隣接する中間材12,13のフランジが嵌合する嵌合溝が形成されている。中間材12,13は、互いに同一の断面を有し、中央材11の両側に左右対称の向きに配置される。この中間材12,13は、幅方向の外側が概ね正方形の閉断面に形成され、この閉断面部の上端と下端に、幅方向の内側に向かって延びるフランジが形成されている。これらのフランジの先端部分が、中央材11の嵌合溝に嵌合している。また、中間材12,13の幅方向の外側には、各々に隣接する第1端材14と第2端材15のフランジが嵌合する嵌合溝が形成されている。第1端材14は、一方の長辺2aを形成すると共に、幅方向の端部に第1連結部が設けられている。この第1端材14は、第1連結部が設けられた側が中空の閉断面であり、この閉断面部の上端と下端に、幅方向の内側に向かって延びるフランジが形成されている。これらのフランジの先端部分が、中間材12の嵌合溝に嵌合している。第2端材15は、他方の長辺2bを形成すると共に、幅方向の端部に第2連結部が設けられている。この第2端材15は、第2連結部が設けられた側が中空の閉断面であり、この閉断面部の上端と下端に、幅方向の内側に向かって延びるフランジが形成されている。これらのフランジの先端部分が、中間材13の嵌合溝に嵌合している。中央材11と中間材12,13との間の嵌合部分と、中間材12,13と第1端材14及び第2端材15との間の嵌合部分は、互いの部材が嵌合した状態で幅方向に摺動可能に形成された摺動嵌合部90となっている。
【0056】
このように、足場板1は、閉断面を有する複数の中空形材を幅方向に配列し、互いに嵌合して構成している。これにより、軽量であるにもかかわらず、特に長辺方向の曲げ剛性を高く確保することができる。また、表面と裏面のいずれにも、中空形材の比較的平滑な面が露出するので、従来の枠組と床材で構成した足場板のように、裏面に露出した枠組によって下方から視たときの美観を損ねる不都合を防止できる。ここで、中空形材は、アルミニウム以外の他の金属で形成してもよく、或いは、FRP等の樹脂で形成してもよい。また、足場板1を構成する中空形材の個数は、5個以外の何個でもよい。また、足場板1を、中空形材である中央材11、中間材12,13、第1端材14及び第2端材15で形成し、第1端材14は第1連結部を有すると共に第2端材15は第2連結部を有したが、足場板本体4を複数の中空形材で形成する一方、第1連結部と第2連結部は、足場板本体4とは別に形成してもよい。
【0057】
図5は、足場板本体4の一方の長辺2aに設けられた第1連結部を示す断面図である。この第1連結部は、足場板1を構成する第1端材14の側面に形成されており、足場板本体4の一方の長辺2aに連なる端面25aから突出した突出部5を有する。突出部5は、足場板本体4の一方の長辺2aの全長に亘って形成されている。この突出部5は、足場板1の短辺方向の断面において、足場板本体4の厚みの20~30%程度の厚みと、この厚みの2~3倍の長さの突出量を有する寸法に形成されている。突出部5の表面は、足場板本体4の表面と平行の平面が形成され、先端部に、隣接して設置される足場板1の第2連結部の突起31が係合する凹部26,26が設けられている。また、突出部5の表面の先端には、足場板本体4の表面側に突出した突起27が設けられている。また、突出部5の先端面から裏面の間は、円弧断面の曲面に形成されている。突出部5の裏面側の付け根であって、突出部5の裏面と足場板本体4の端面25aとの間には、傾斜面29が形成されて、突出部5の付け根の厚みが増大している。
【0058】
図6は、足場板本体4の他方の長辺2bに設けられた第2連結部を示す断面図である。この第2連結部は、足場板1を構成する第2端材15の側面に形成されており、足場板本体4の他方の長辺2bに連なる端面25bに形成された挿入穴6を有する。挿入穴6は、足場板本体4の他方の長辺2bの全長に亘って形成されている。この挿入穴6は、足場板本体4の厚みの40~50%程度の高さと、この高さの1.5~1倍の奥行の寸法に形成されている。挿入穴6の内側には、挿入穴6の下側の縁から奥に向かうにつれて挿入穴6の内側に傾斜した傾斜面30が設けられている。また、挿入穴6の上側の縁には、挿入穴6の内側に突出した突起31が設けられている。
【0059】
図7は、第1の足場板1Aの第1連結部に、第2の足場板1Bの第2連結部を連結した様子を示した断面図であり、図8は、図7のC-C’線における断面図である。すなわち、図7は、第1の足場板1Aと第2の足場板1Bとの連結部分の横断面図であり、図8は、上記連結部分の縦断面図である。本実施形態の足場板1は、第2連結部に、隣接して連結された足場板1の第1連結部との連結状態を固定するための長辺固定機構9が設けられている。この長辺固定機構9は、第2連結部の挿入穴6の上側、すなわち、足場板1の表面側に配置されて、内側に案内通路を形成する案内金具32を有する。この案内金具32の内側には、案内通路内を移動可能に形成された円筒形状の固定具34が収容されている。案内金具32には、案内通路の延在方向の中央部において、案内通路の底面の一部に穴が形成されており、この案内金具32の穴と連通する穴が、挿入穴6の壁面に形成されている。この案内金具32の穴と、挿通穴6の壁面の穴により、連通穴37が形成されている。すなわち、この連通穴37により、案内通路と挿入穴6が連通されている。案内金具32は、内側の案内通路が、第2端材15の表面の長辺固定操作穴8と連通するように配置されている。
【0060】
円筒形状の固定具34には、径方向に貫通すると共に、軸方向の中央から基端に延在する案内保持穴33が形成されている。この案内保持穴33に、保持棒35が挿通され、この保持棒35の両端が、案内金具32の案内通路を区画する両壁に固定されている。上記保持棒35は、案内金具32の連通穴37の上方であって、案内通路の基端側寄りに配置されている。固定具34は、案内金具32に固定された保持棒35に、案内保持穴33が挿通されていることにより、案内通路の基端側では案内通路内に保持される一方、案内通路の先端側では連通穴37内に落下して挿通されるようになっている。また、固定具34の上側面であって、長辺固定操作穴8に臨む面には、シノ等の工具の先端部が係合可能な係合穴36が形成されている。長辺固定操作穴8を通して足場板1の表面から挿入した工具の先端を、係合穴36に係合させて、固定具34の案内通路内の進退位置と、連通穴37への落下及び引き上げを操作するようになっている。上記案内金具32、固定具34、連通穴37及び保持棒35等により、長辺固定機構9が形成されている。この長辺固定機構9は、案内金具32、固定具34及び保持棒35が、互いに固定又は連結されて、一塊のアッセンブリブロックに形成されている。この長辺固定機構9のアッセンブリブロックが、中空形材である第2端材15の内部に挿入され、リベットやボルトナット等で固定されている。長辺固定機構9のアッセンブリブロックを用いることにより、互いに固定可能な足場板1を容易に製造することができる。
【0061】
一方、第1連結部の突出部5には、この突出部5の表面から裏面に貫通した固定穴7が形成されている。第1の足場板1Aの第1連結部の突出部5を、第2の足場板1Bの第2連結部の挿入穴6に挿入した状態で、第2連結部の長辺固定機構9の固定具34が連通穴37に落下して挿通される。これにより、図8の想像線で示されるように、固定具34の先端部が固定穴7に挿入される。こうして固定具34により、第1連結部の突出部5と第2連結部の挿入穴6を係合して、第1の足場板1Aと第2の足場板1Bを互いに固定するようになっている。
【0062】
本実施形態の足場板1を用いて吊り足場を作製する際、先に吊り下げた第1の足場板1Aの上に第2の足場板1Bを載置し、この第2の足場板1Bを第1の足場板1Aと同一平面上に配置して連結する工程を繰り返して、複数の足場板1を短辺方向に配列する。図9A乃至9Cは、第1足場板1Aの上に第2足場板1Bを載置してから互いを連結するまでの工程における、第1足場板1Aの第1連結部と第2足場板1Bの第2連結部との関係を示す断面図である。なお、図9A乃至9Cには、第2連結部の長辺固定機構9と、第1連結部の突出部5の固定穴7は示していない。
【0063】
例えば橋梁の床版の下方に吊り足場を形成する場合、従来の足場板を用いた場合と同様に、まず、第1の足場板1を吊り下げる。すなわち、主桁22にチェーン24を固定して垂下させ、チェーン24の下端に足場板1を接続する。チェーン24との接続は、ボルト穴80に螺着したアイボルト等で行う。この第1の足場板1の上に第2の足場板1を搬入し、主桁22から垂下させた新たなチェーン24に第2の足場板1を接続する。続いて、第2の足場板1を、第2連結部が第1の足場板1の第1連結部に接するように、概ね鉛直方向を向くように第1の足場板1の上に立設する。図9Aは、このときの第1の足場板1の第1連結部と、第2の足場板1の第2連結部との様子を示す断面図である。図9Aに示すように、第1の足場板1Aの突出部5の表面に、第2の足場板1Bの端面25bが接すると共に、第1の足場板1Aの端面25aに、第2の足場板1Bの表面が接するように、第1の足場板1A上に第2の足場板1Bを立設する。この後、図9Bの矢印Rで示すように、第2の足場板1Bを、立設時に上側に位置する第2連結部が下方に向かうように回転させる。このとき、第2の足場板1Bの第2連結部の突起31が、第1の足場板1Aの第1連結部の突出部5の凹部26に係合する。これにより、第2の足場板1Bは、第1の足場板1Aの第1連結部の回りに安定して回転することができる。第2の足場板1Bが第1の足場板1Aの第1連結部の回りに回転し、水平方向を向くと、図9Cに示すように、第2の足場板1Bの第2連結部の挿入穴6内に、第1の足場板1Aの第1連結部の突出部5の先端が挿入された状態となる。水平方向を向いた第2の足場板1Bは、チェーン24によって主桁22に吊下げられる。ここで、第2の足場板1Bに追加のチェーン24を接続してもよく、或いは、チェーン24を掛け替えてもよい。引き続いて、第2の足場板1Bを第1の足場板1Aの側に引き寄せて、第1の足場板1Aの端面25aと、第2の足場板1Bの端面25bとを接触させる。この後、第2の足場板1Bの長辺固定操作穴8にシノ等の工具を挿入し、第2の足場板1B内の固定具34を操作して連通穴37に落下させ、固定具34を連通穴37に挿通させると共に、この固定具34の先端を第1の足場板1Aの固定穴7に挿入する。これにより、第1の足場板1Aの第1連結部と、第2の足場板1Bの第2連結部とを固定する。こうして、第1の足場板1Aの同一平面上に、第2の足場板1Bを配置して固定する。このような第1の足場板1Aへの第2の足場板1Bの搬入と固定を繰り返すことにより、足場板1を短辺方向に順次配列し、短辺方向に延在する足場を形成する。
【0064】
このような第1の足場板1A上に立設した第2の足場板1Bを倒し、第1の足場板1A側に引き寄せて第1の足場板1Aと固定する工程において、本実施形態の足場板1は、第1の連結部の突出部5と第2の連結部の挿入穴6が長辺2の全長に亘って形成されているので、第1の足場板1Aと第2の足場板1Bとの間に、隙間が形成されることが無い。したがって、第1の足場板1Aと第2の足場板1Bとの隙間から、工具や材料等が落下する不都合を、効果的に防止することができる。
【0065】
また、本実施形態の足場板1は、第1連結部の突出部5の先端に突起27を有すると共に、第2連結部の挿入穴6の縁に突起31を有するので、第2の足場板1Bを第1の足場板1Aの側に引き寄せる作業中に、誤って第2の足場板1Bを第1の足場板1Aから遠ざける方向の力が作用しても、これらの突起27,31が係合して第1の足場板1Aの第1連結部と第2の足場板1Bの第2連結部との係合が保たれる。したがって、作業者が、チェーン24で吊り下げられた第1の足場板1Aと第2の足場板1Bの操作を誤っても、第1の足場板1Aから第2の足場板2Bが離れる不都合や、第2の足場板1Bがチェーン24の下端の回りに回転する不都合が防止される。その結果、第1の足場板1Aと第2の足場板2Bの隙間から物や作業者が落下する不都合や、第2の足場板2Bの移動や回転に起因して作業者がバランスを崩す不都合を、効果的に防止することができる。
【0066】
また、本実施形態の足場板1は、第1連結部が長辺2aの全長に亘って突出した突出部5を有すると共に、第2連結部が長辺2bの全長に亘って開口した挿入穴6を有し、第1の足場板1Aの突出部5が第2の足場板1Bの挿入穴6に嵌合して連結される。したがって、第1の足場板1Aと第2の足場板1Bは、従来の足場板のように辺の両端で連結されるよりも、高い剛性で連結される。したがって、第1の足場板1Aに荷重が作用したとき、第2の足場板1Bとの間に段差が形成される不都合を防止できる。また、この足場板1は、第1の足場板1Aの第1連結部の突出部5が、第2の足場板1Bの第2連結部の挿入穴6に挿入されて嵌合することにより、第1の足場板1Aと第2の足場板1Bが連結される。したがって、短辺方向にモーメント荷重が伝達されるので、第1の足場板1A又は第2の足場板1Bに荷重が作用したとき、第1の足場板1Aと第2の足場板1Bとの間に生じる角度変位を、従来よりも大幅に低減することができる。これらにより、作業者や台車が吊り足場上を移動するとき、足場板1の相互間に形成される段差や角度変位を従来よりも小さくできる。したがって、本実施形態の足場板1で形成された吊り足場は、作業者の躓きや、台車の停止が発生する不都合を、効果的に防止できる。
【0067】
本実施形態の足場板1により吊り足場を形成するには、図3に示すように、足場板1A,1Bを短辺方向に配列して固定すると共に、長辺方向に隣接する足場板1A,1Cの相互を連結する。図10は、足場板1を短辺方向に連結して固定するための短辺連結部を示す平断面図であり、図11は、図10中のE-E’断面矢視図である。図10は、図11中のF-F’断面矢視図である。短辺連結部は、足場板本体4の短辺の中央に配置されており、足場板1を形成する中空形材のうちの中央材11の両端に内蔵されている。この短辺連結部は、足場板本体4の短辺の端面38に形成された矩形の開口39と、この開口39に連なる通路兼挿入室を形成する挿入室金具50と、この挿入室金具50で形成された通路兼挿入室内に収容されると共に開口から先端部が出没可能な短辺連結体51と、通路兼挿入室内に挿入された短辺連結体51を固定する短辺固定機構42を備える。
【0068】
挿入室金具50の内側に形成された通路兼挿入室は、短辺連結体51を収容すると共にこの短辺連結体51が長辺方向に移動可能な形状と大きさを有する。なお、図10において、挿入室金具50の通路兼挿入室の天井部分は、図示を省略している。通路兼挿入室内に収容される短辺連結体51は、平面視において先端側の幅が基端側の幅よりも狭い凸形状に形成され、先端部に、短辺固定機構42の固定具44が嵌合する短辺固定穴52が形成されている。また、短辺連結体51の基端側には、この短辺連結体51を長辺方向に移動させるために作業者に操作される操作桿53が設けられている。上記挿入室金具50は、通路兼挿入室の天井部分に、長辺方向に延在する操作用長穴56が形成されている。この操作用長穴56は、中央材11に形成された進退操作穴41と、平面視において略同じ寸法に形成されている。上記挿入室金具50の操作用長穴56に、短辺連結体51の操作桿53が挿通されていると共に、この操作桿53の上端が、中央材11の進退操作穴41から外部に臨むように、中央材11の内側に位置している。これにより、足場板1の表面から進退操作穴41内にシノ等の工具を挿入し、この工具で操作桿53を進退操作穴41に沿って移動させることにより、短辺連結体51が通路兼挿入室内を移動すると共に、開口39から出没することが可能になっている。
【0069】
短辺固定機構42は、長辺方向に隣接して配置された足場板1の短辺連結体51の先端部が、通路兼挿入室内に挿入されたとき、この短辺連結体51の先端部を固定して、長辺方向に隣接する足場板1を固定するものである。この短辺固定機構42は、挿入室金具50の先端部かつ表面側に配置され、内側に案内通路を形成する案内金具43を有する。この案内金具43の内側には、案内通路内を移動可能に形成された円筒形状の固定具44が収容されている。案内金具43には、案内通路の延在方向の中央部において、案内通路の底面の一部に穴46が形成されており、この案内金具43の穴46と連通する穴57が、挿入室金具50の通路兼挿入室の天井面に形成されている。この案内金具43の穴46と、挿入室金具50の穴57により、案内通路と通路兼挿入室内とを連通する連通穴が形成されている。案内金具43は、内側の案内通路が、中央材11の表面の短辺固定操作穴40と連通するように配置されている。
【0070】
円筒形状の固定具44は、第2連結部の長辺固定機構9の固定具34と同様に、径方向に貫通すると共に、軸方向の中央から基端に延在する案内保持穴が形成され、この案内保持穴に、案内金具43に両端が固定された保持棒が挿通されている。これにより、固定具44は、案内通路の一端側では案内通路内に保持される一方、案内通路の他端側では連通穴内に落下して挿通されるようになっている。また、固定具44の上側面であって、短辺固定操作穴40に臨む面には、シノ等の工具の先端部が係合可能な係合穴45が形成されている。短辺固定操作穴40を通して足場板1の表面から挿入した工具の先端を、係合穴45に係合させて、固定具44の案内通路内の進退位置と、連通穴への落下及び引き上げを操作するようになっている。上記案内金具43、固定具44、連通穴及び保持棒等により、短辺固定機構42が形成されている。
【0071】
図12A及び12Bは、長辺方向に隣接する2つの足場板1A,1Cを連結して固定した短辺連結部の様子を示す平断面図である。図12A及び12Bのいずれも、短辺の端面38を互いに接して配置された第1の足場板1Aと第3の足場板1Cの短辺方向の中央部を示している。図12Aでは、第1の足場板1Aの短辺連結体51を、第3の足場板1Cの通路兼挿入室内に挿入している。詳しくは、第1の足場板1Aの短辺連結体51の先端部が、第3の足場板1Cの通路兼挿入室内に挿入されると、第1の足場板1Aの短辺連結体51の先端部が、第3の足場板1Cの短辺固定機構42の下側に位置する。この状態で、第3の足場板1Cの短辺固定機構42の固定具44が、短辺固定操作穴40に挿入されたシノの先端で操作され、案内金具43の穴46に落下して連通穴に挿通される。これにより、第3の足場板1Cの固定具44の先端部が、第1の足場板1Aの短辺連結体51の短辺固定穴52に挿入される。こうして第3の足場板1Cの固定具44により、第1の足場板1Aの短辺連結体51を通路兼挿入室内に係合して、第1の足場板1Aと第3の足場板1Cが互いに固定される。
【0072】
一方、図12Bでは、第3の足場板1Cの短辺連結体51を、第1の足場板1Aの通路兼挿入室内に挿入している。詳しくは、第3の足場板1Cの短辺連結体51の先端部が、第1の足場板1Aの通路兼挿入室内に挿入されると、第3の足場板1Cの短辺連結体51の先端部が、第1の足場板1Aの短辺固定機構42の下側に位置する。この状態で、第1の足場板1Aの短辺固定機構42の固定具44が、短辺固定操作穴40に挿入されたシノの先端で操作され、案内金具43の穴46に落下して連通穴に挿通される。これにより、第1の足場板1Aの固定具44の先端部が、第3の足場板1Cの短辺連結体51の短辺固定穴52に挿入される。こうして第1の足場板1Aの固定具44により、第3の足場板1Cの短辺連結体51を通路兼挿入室内に係合して、第1の足場板1Aと第3の足場板1Cが互いに固定される。
【0073】
このように、長辺方向に隣接した第1の足場板1Aと第3の足場板1Cは、いずれか一方の短辺連結体51を、他方の通路兼挿入室内内に挿入することにより、互いに固定することができる。したがって、第1の足場板1Aと第3の足場板1Cとのうち、任意の短辺連結体51と固定具44を操作して、第1の足場板1Aと第3の足場板1Cを固定することができる。
【0074】
また、本実施形態の足場板1は、長辺方向に隣接する足場板1,1を、足場板1に内蔵された短辺連結体51によって互いに連結して固定することができる。したがって、互いの足場板1,1を固定する際に、クランプ等の別部品が不要であるから、吊り足場を形成する部品の点数を削減できる。また、吊り足場からの部品の落下を防止できる。
【0075】
図13Aは、足場板1に内蔵される支持金具としての吊り金具65のアッセンブリブロックを示す平面図であり、図13Bは、吊り金具65のアッセンブリブロック61を示す断面図である。図13Bは、図13A中のG-G’断面矢視図である。吊り金具65のアッセンブリブロック61は、互いの間に隙間が形成されて固定された2つの型材62,63と、これらの2つの型材62,63の隙間を横切るように型材62,63の内部に配置された回転支持軸64を備える。上記2つの型材62,63の隙間に、長円形状のリングで形成された支持金具としての吊り金具65が配置されており、この吊り金具65は、上記回転支持軸64に一端側が挿通されている。一方の上記型材63には、隙間に臨む位置に切り欠き66が形成されている。このアッセンブリブロック61は、中央材11に内挿され、リベットやボルトナット等で固定される。このアッセンブリブロック61の中央材11内での固定位置は、中央材11の表面に形成された金具操作穴60に、吊り金具65が臨む位置となるように調節される。金具操作穴60は、アッセンブリブロック61の隙間と切り欠き66に沿った形状に形成されている。
【0076】
吊り金具65が使用されるとき、足場板1の表面から、操作者がシノ等の工具の先端を金具操作穴60に挿入して吊り金具65の一端に係合させ、この吊り金具65の一端を引き出す。これにより、吊り金具65が回転支持軸64の回りに回転し、吊り金具65の一端側が中央材11の表面から突出する。吊り金具65を中央材11から引き出す際、アッセンブリブロック61の型材63に切り欠き66が形成されているので、容易に工具を吊り金具65に係合して引き出すことができる。中央材11の表面から突出した吊り金具65に、チェーン24を接続することにより、足場板1が吊り下げられる。なお、支持金具としての吊り金具65は、足場板1を吊り下げる用途に限定されず、例えば足場板1が作業者により運搬される際に把持され、或いは、足場板1が運搬車両に積載されたときにワイヤやロープ等で固定される等、種々の目的に使用することができる。また、吊り金具65を用いないときは、回転支持軸64回りに回転させて中央材11内に没するように収納できるので、足場板1の表面からの突出物を無くして、足場板1上で作業を行う際の安全性を高めることができる。また、支持金具としての吊り金具65は、足場板1に内蔵されているので、足場板1を吊下げ、或いは支持する際に、クランプやハンドル等の別部品が不要であるから、吊り足場を形成する部品の点数を削減できる。また、吊り足場からの部品の落下を防止できる。
【0077】
本実施形態の足場板1は、チェーン24で吊下げられる際に、チェーンと接続されるアイボルト等が、ボルト穴80に螺着される。ボルト穴80は、足場板1を形成する中央材11の表面を貫通するように形成されており、この中央材11の内部に固定された雌螺子ブロックと連通している。雌螺子ブロックは、中央材11の中空部分に嵌合可能な形状を有するアッセンブリブロックであり、中央材11のボルト穴80に臨む位置に、雌螺子を有する螺子穴が形成されている。この雌螺子ブロックは、中央材11の内部に嵌合されてリベットやボルトナット等で固定されることにより、ボルト穴80に挿通されたボルト等の雄螺子が、螺子穴に螺着可能になっている。これにより、ボルト等の雄螺子が、足場板1に固定されるようになっている。ここで、雌螺子ブロックは、型材とナットを組み合わせて形成してもよく、或いは、鋳造体で形成してもよい。また、本実施形態では、ボルト穴80を通して雌螺子ブロックの螺子穴に、足場板1を吊り下げるためのアイボルト等が螺着されたが、雄螺子を有する他の部品が、ボルト穴80及び雌螺子ブロックの螺子穴に螺着されてもよい。
【0078】
図14は、足場板1を形成する複数の中空形材が互いに連結された部分である摺動嵌合部90を示す断面図である。この断面図は、足場板1の短辺3の近傍における短辺方向の切断面である。足場板1の摺動嵌合部90は、長辺方向に延在する中央材11と中間材12,13との間と、中間材12と第1端材14との間と、中間材13と第2端材15との間に、夫々形成されている。図14は、中央材11と中間材13との間の摺動嵌合部90を示している。図14に示すように、摺動嵌合部90は、中央材11の短辺方向、すなわち幅方向の両端部の表面及び裏面に形成された嵌合溝75と、この嵌合溝75内に配置された中間材13のフランジの先端部分72とを有して形成されている。なお、図14には、中央材11の短辺方向の一方、かつ、表面側の嵌合溝75のみを示している。
【0079】
中央材11の嵌合溝75は、図14の断面視において、幅方向の端部の近傍に開口を有し、この端部から内側に向かって表面と平行に延在している。この嵌合溝75の開口から奥側に、中央材11の表面と平行に延びるフランジが挿入され、フランジの先端部分72が嵌合溝75の内部に収容されて嵌合している。上記嵌合溝75に嵌合する中間材13のフランジの先端部分72には、先端と、この先端から多少内側寄りに、嵌合溝75の底側に向かって延びる係合爪73,73が設けられている。この爪73,73は、中間材13の長辺方向に延在しており、短辺方向の抜け止めを行っている。なお、係合爪73の個数は、1個でもよく、或いは3個以上でもよい。
【0080】
上記中間材13のフランジの先端よりも内側には、短辺と平行に延在する長穴76が形成されている。この長穴76に、中央材11の端部を貫通して厚み方向に延在するリベット70が挿通されている。このリベット70は、リベット頭の径が、長穴76の幅よりも大きく形成されている。また、上記リベット70の長さは、中央材11の端部の厚みと中間材13の表裏のフランジの厚みの合計よりも、多少大きく形成されている。これにより、中央材11の端部に対して、中間材13のフランジが嵌合した状態で、短辺方向に摺動可能になっている。また、長穴76の長さによって、中央材11の端部に対する中間材13のフランジの摺動距離が画定される。その結果、中央材11の短辺方向の中心と、中間材13の短辺方向の中心との間の距離が、所定の範囲内で変更可能になっている。
【0081】
上記中央材11と中間材13との間の摺動嵌合部90には、長辺方向の両端と中央に、長穴76とこれに挿通されたリベット70が設けられている。中央材11と他の中間材12との間と、中間材12と第1端材14との間と、中間材13と第2端材15との間に形成された摺動嵌合部90も、上記中央材11と中間材13との間の摺動嵌合部90と同様に形成されている。これにより、中央材11と中間材12との間の距離と、中間材12と第1端材14との間の距離と、中間材13と第2端材15との間の距離が、各部材の短辺方向に、所定の範囲内で夫々変更可能になっている。これらの中空形材の相互間の距離は、長辺方向の異なる位置で異なる値に設定することができる。このような摺動嵌合部90の特徴を利用して、足場板1の平面における形状を調節することが可能になっている。
【0082】
図15は、中央材11、中間材12,13、第1端材14及び第2端材15の互いに隣接する位置にある摺動嵌合部90について、一方の短辺3aは相互間の距離を小さく調節する一方、他方の短辺3bは相互間の距離を大きく調節した足場板1の様子を示す平面図である。図15に示すように、足場板1は、摺動嵌合部90の調整により、一方の短辺3aが短く、他方の短辺3bが長い扇形に形成することができる。扇形の足場板1は、橋梁に沿ってカーブした吊り足場を形成する場合に、従来のように別部品の隙間塞ぎ材を用いなくても、隙間の実質的に無い吊り足場を得ることができる。また、本実施形態の足場板1は、摺動嵌合部90による中空形材の相互間の距離を調整可能であるので、カーブの曲率に適合するように足場板1の形状を調整することができる。したがって、種々の曲率のカーブを有する種々の吊り足場を、隙間を生じることなく作製することができる。さらに、本実施形態の足場板1は、足場板1の相互間に形成される隙間を塞ぐための別部品が不要であるので、少ない部品点数で吊り足場を形成することができる。また、隙間塞ぎ材等の別部品で隙間を塞ぐ作業の際に、部品や工具が落下する不都合を防止できる。ここで、本実施形態の足場板1は、扇形に限らず、他の形状に調整してもよい。
【0083】
上記実施形態において、足場板1は、複数の中空形材を幅方向に嵌合して形成された足場板本体4を有するが、足場板本体4の構造は、中空形材を用いたものに限定されず、例えば枠組みと床板を組み合わせて形成されてもよい。すなわち、本発明の足場板は、一方の長辺の全長に亘って形成された突起を有する第1連結部と、他方の長辺の全長に亘って形成された挿入穴を有する第2連結部を備えるのであれば、足場板本体の構造は特に限定されない。
【0084】
また、上記実施形態において、足場板1は、複数の中空形材を幅方向に嵌合して形成された足場板本体4に、一方の長辺の全長に亘って形成された突起を有する第1連結部と、他方の長辺の全長に亘って形成された挿入穴を有する第2連結部を形成したが、足場板の相互を連結する構造は、第1連結部及び第2連結部に限られない。すなわち、本発明の足場板は、足場板本体が、複数の中空形材を幅方向に嵌合して形成されていれば、足場板を相互に連結する手段は特に限定されない。
【0085】
また、上記実施形態において、足場板1を用いて吊り足場を形成した場合について説明したが、本発明の足場板は、吊り足場以外の種々の形態の足場を形成するために適用可能である。
【0086】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 足場板
2 長辺
3 短辺
4 足場板本体
5 突出部
6 挿入穴
7 突出部の固定穴
8 長辺固定操作穴
9 長辺固定機構
10 吊り足場
11 中央材
12,13 中間材
14 第1端材
15 第2端材
40 短辺固定操作穴
41 進退操作穴
42 短辺固定機構
60 金具操作穴
70 リベット
80 ボルト穴
90 摺動嵌合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20