(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】液滴分注装置
(51)【国際特許分類】
B01J 4/02 20060101AFI20220207BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220207BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20220207BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
B01J4/02 B
G01N1/00 101K
G01N35/10 H
B01J19/00 321
(21)【出願番号】P 2017059798
(22)【出願日】2017-03-24
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】樋口 正顕
(72)【発明者】
【氏名】海宝 敏
(72)【発明者】
【氏名】楠 竜太郎
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543042(JP,A)
【文献】特開2003-322630(JP,A)
【文献】特開2011-131145(JP,A)
【文献】特開2002-139370(JP,A)
【文献】特開2017-015466(JP,A)
【文献】特開2017-056402(JP,A)
【文献】特開2016-022416(JP,A)
【文献】特開2004-361234(JP,A)
【文献】特開2002-273308(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106391362(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00- 4/04
B01J 19/00
B05C 5/00-5/04
G01N 1/00、35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズル群を有するとともに液滴を受けるマイクロプレートに向けて液滴を噴射する液滴噴射部と、
前記液滴噴射部から前記マイクロプレートへ前記液滴を滴下する滴下動作時に、前記ノズル群の一部のノズルからの不吐出状態を検出する不吐出状態検出部と、
前記不吐出状態検出部による検出結果に基づいて前記マイクロプレートへ追加して前記液滴を滴下する追加動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記不吐出状態検出部は、滴下される前記液滴の滴下量を検出する滴下量検出部を有し、
前記滴下量検出部は、前記マイクロプレートの重量を検知する重量測定器を有し、
前記制御部は、前記マイクロプレートに前記液滴が滴下された際の前記重量測定器による前記マイクロプレートの前記重量の初期実測値と、前記初期実測値の検出時から所定時間経過後の前記マイクロプレートの前記重量の実測値とから乾燥による前記液滴の前記重量の減少値を検出する
とともに、次回の前記液滴の滴下処理時に、前記重量測定器による前記マイクロプレートの前記重量の前記実測値が前記液滴の乾燥による前記マイクロプレート内の前記液滴の重量の減少値よりも小さい場合に前記ノズル群からの前記ノズルの不吐出状態と判断する液滴分注装置。
【請求項2】
液滴を吐出するノズル群を有するとともに液滴を受けるマイクロプレートに向けて液滴を噴射する液滴噴射部と、
前記液滴噴射部から前記マイクロプレートへ前記液滴を滴下する滴下動作時に、前記ノズル群の一部のノズルからの不吐出状態を検出する不吐出状態検出部と、
前記不吐出状態検出部による検出結果に基づいて前記マイクロプレートへ追加して前記液滴を滴下する追加動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記不吐出状態検出部は、滴下される前記液滴の滴下量を検出する滴下量検出部を有し、
前記滴下量検出部は、前記マイクロプレートの透明度を検知するスキャナ部を有し、
前記制御部は、前記マイクロプレートに前記液滴が滴下された際の前記スキャナ部による前記マイクロプレートの前記透明度の初期実測値と、前記初期実測値の検出時から所定時間経過後の前記マイクロプレートの前記透明度の実測値とから乾燥による前記液滴の前記透明度の減少値を検出する
とともに、次回の前記液滴の滴下処理時に、前記スキャナ部による前記マイクロプレートの前記透明度の実測値が前記液滴の乾燥による前記マイクロプレート内の前記液滴の透明度の前記減少値よりも小さい場合に前記ノズル群からの前記ノズルの不吐出状態と判断する液滴分注装置。
【請求項3】
前記滴下量検出部は、前記マイクロプレートの1つの開口部に対し、前記ノズル群から滴下される前記液滴の滴下量を検出し、
前記制御部は、前記滴下量検出部による検出結果に基づいて前記液滴の滴下動作時にあらかじめ設定された規定量の前記液滴が検出されない場合に前記規定量に対して不足する前記液滴の不足量と同量の前記液滴を前記液滴噴射部から前記マイクロプレートへ追加して前記液滴を滴下する追加動作を制御する請求項1
または2に記載の液滴分注装置。
【請求項4】
前記ノズル群のノズルの数がa×b[個]
前記不吐出状態のノズルの数がn[個]
1ノズルからの1回の前記滴下動作時の想定吐出量がt[pl]
吐出回数がX1、追加回数がX2とすると、
不吐出量Y1は、Y1=t×n×X1
追加量Y2は、Y2=t×(a×b-n)×X2
とすると、リカバリーは、Y1-Y2の絶対値がもっとも小さくなるようにX2の回数を選択するとともに、
X1、X2ともに整数であるため、Y1=Y2とならない場合の誤差は、「Y1-Y2」の絶対値となる請求項1または2に記載の液滴分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液滴分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学、薬学などの分野の研究開発や医療診断や検査、農業試験において、ピコリットル(pL)からマイクロリットル(μL)の液体を分注するマイクロプレートを有する液滴噴射装置がある。
【0003】
この液滴噴射装置は、マイクロプレートの各ウエルの1つの開口部に対して複数のノズルから同時に液体を滴下することで、液体の滴下時間を短縮することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2014/0193309号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロプレートなどの各ウエルの1つの開口部に対して複数のノズルから同時に液体を滴下する場合、複数のノズルのうちの一部が不吐出となる可能性がある。このような場合、目的量の液体を所定量滴下することができない。そのため、誤評価などの問題が生じる可能性がある。
【0006】
本実施形態の課題は、目的量の液体を所定量滴下することができる液滴分注装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の液滴分注装置は、液滴を吐出するノズル群を有するとともに液滴を受けるマイクロプレートに向けて液滴を噴射する液滴噴射部と、前記液滴噴射部から前記マイクロプレートへ前記液滴を滴下する滴下動作時に、前記ノズル群の一部のノズルからの不吐出状態を検出する不吐出状態検出部と、前記不吐出状態検出部による検出結果に基づいて前記マイクロプレートへ追加して前記液滴を滴下する追加動作を制御する制御部と、を具備し、前記不吐出状態検出部は、滴下される前記液滴の滴下量を検出する滴下量検出部を有し、前記滴下量検出部は、前記マイクロプレートの重量を検知する重量測定器を有し、前記制御部は、前記マイクロプレートに前記液滴が滴下された際の前記重量測定器による前記マイクロプレートの前記重量の初期実測値と、前記初期実測値の検出時から所定時間経過後の前記マイクロプレートの前記重量の実測値とから乾燥による前記液滴の前記重量の減少値を検出するとともに、次回の前記液滴の滴下処理時に、前記重量測定器による前記マイクロプレートの前記重量の前記実測値が前記液滴の乾燥による前記マイクロプレート内の前記液滴の重量の減少値よりも小さい場合に前記ノズル群からの前記ノズルの不吐出状態と判断する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の液滴分注装置の全体の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、液滴分注装置の液滴噴射装置を示す上面(液滴保持容器側)の平面図である。
【
図3】
図3は、液滴分注装置の液滴噴射装置を示す下面(液滴吐出側)の平面図である。
【
図5】
図5は、液滴噴射装置の液滴噴射アレイを示す平面図である。
【
図7】
図7は、液滴分注装置の不吐出状態検出部の概略構成図である。
【
図8】
図8は、液滴分注装置の液滴噴射部からマイクロプレートへの液滴の滴下処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、液滴分注装置のマイクロプレートからの乾燥がある場合の実際の測定曲線を説明するための説明図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の液滴分注装置の不吐出状態検出部の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、第2の実施形態の液滴分注装置の制御部の接続状態を示す概略構成図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態の液滴分注装置の不吐出状態検出部の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図13】
図13は、第3の実施形態の液滴分注装置の制御部の接続状態を示す概略構成図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態の液滴分注装置の位置決め動作を説明するための説明図である。
【
図15】
図15は、第4の実施形態の液滴分注装置の位置決め動作を説明するための説明図である。
【
図16】
図16は、第5の実施形態の液滴分注装置の位置決め動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の液滴分注装置1の一例について
図1乃至
図10を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の液滴分注装置1の全体の概略構成を示す斜視図である。
図2は、液滴分注装置1に装着される液滴噴射装置2の上面図であり、
図3は液滴噴射装置2の液滴を噴射する面である下面図を示す。
図4は、
図2のF4-F4線断面図を示す。
図5は、液滴噴射装置2の液滴噴射アレイ27を示す平面図である。
図6は、
図5のF6-F6線断面図である。
図7は、液滴分注装置の不吐出状態検出部の概略構成図である。
図8は、液滴分注装置の液滴噴射部からマイクロプレートへの液滴の滴下処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図9は、液滴分注装置のマイクロプレートからの乾燥がある場合の実際の測定曲線を説明するための説明図である。
図10は、第1の実施形態の液滴分注装置の不吐出状態検出部の動作を説明するためのフローチャートである。
図11は、第1の実施形態の液滴分注装置の制御部の接続状態を示す概略構成図である。
【0010】
液滴分注装置1は、矩形平板状の基台3と、液滴噴射装置装着モジュール5と、を有する液滴分注装置1の本体1Aを備える。本実施形態では、生化学分野の分析や臨床検査などで一般的に用いられているマイクロプレートの中で、96穴のマイクロプレート(受部)4へ溶液を滴下する実施形態について説明する。マイクロプレート4は96穴に限定されず、384穴、1536穴、3456穴、6144穴等であっても良い。
【0011】
マイクロプレート4は、基台3の中央位置に配置され、基台3のプレート取付け部3aに着脱可能に固定されている。基台3の上には、マイクロプレート4の両側に、X方向に延設された左右一対のX方向ガイドレール6a、6bを有する。各X方向ガイドレール6a、6bの両端部は、マイクロプレート4上に突設された、固定台7a、7bに固定されている。
【0012】
X方向ガイドレール6a、6b間には、Y方向に延設されたY方向ガイドレール8が架設されている。Y方向ガイドレール8の両端は、X方向ガイドレール6a、6bに沿ってX方向に摺動可能なX方向移動台9にそれぞれ固定されている。
【0013】
Y方向ガイドレール8には、液滴噴射装置装着モジュール5がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動可能なY方向移動台10が設けられている。このY方向移動台10には、液滴噴射装置装着モジュール5が装着されている。この液滴噴射装置装着モジュール5には、液滴噴射部である液滴噴射装置2が固定されている。これにより、Y方向移動台10がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動する動作と、X方向移動台9がX方向ガイドレール6a、6bに沿ってX方向に移動する動作との組み合わせにより、液滴噴射装置2は、直交するXY方向の任意の位置に移動可能に支持されている。
【0014】
第1の実施形態の液滴噴射装置2は、平板状のベース部材21を有する。
図2に示すようにこのベース部材21の表面側には、複数、本実施形態では8個の溶液保持容器22がY方向に一列に並設されている。溶液保持容器22は、
図4に示すように上面が開口された有底円筒形状の容器である。ベース部材21の表面側には、各溶液保持容器22と対応する位置に円筒形状の凹陥部21aが形成されている。溶液保持容器22の底部は、この凹陥部21aに接着固定されている。さらに、溶液保持容器22の底部には、中心位置に溶液出口となる開口部22aが形成されている。上面開口部22bの開口面積は、溶液出口の開口部22aの開口面積よりも大きくなっている。
【0015】
図3に示すようにベース部材21の裏面側には、溶液保持容器22と同数の電装基板23がY方向に一列に並設されている。電装基板23は、矩形状の平板部材である。ベース部材21の裏面側には、
図4に示すように電装基板23の装着用の矩形状の凹陥部21bと、この凹陥部21bと連通する液滴噴射アレイ部開口21dとが形成されている。凹陥部21bの基端部は、ベース部材21の
図3中で上端部位置(
図4中で右端部位置)まで延設されている。凹陥部21bの先端部は、
図4に示すように溶液保持容器22の一部と重なる位置まで延設されている。電装基板23は、凹陥部21bに接着固定されている。
【0016】
電装基板23には、凹陥部21bとの接着固定面とは反対側の面に電装基板配線24がパターニング形成されている。この電装基板配線24には、後述する下部電極131の端子部131c及び上部電極133の2つの端子部133cとそれぞれ接続される3つの配線パターン24a、24b、24cが形成されている。
【0017】
電装基板配線24の一端部には、外部からの制御信号を入力するための制御信号入力端子25が形成されている。電装基板配線24の他端部には、電極端子接続部26を備える。電極端子接続部26は、
図5に示す後述する液滴噴射アレイ27に形成された下部電極端子部131c及び上側電極端子部133cと接続するための接続部である。
【0018】
また、ベース部材21には、液滴噴射アレイ部開口21dの貫通穴が設けられている。液滴噴射アレイ部開口21dは、
図3に示すように矩形状の開口部で、ベース部材21の裏面側に凹陥部21aと重なる位置に形成されている。
【0019】
溶液保持容器22の下面には、溶液保持容器22の開口部22aを覆う状態で
図5に示す液滴噴射アレイ27が接着固定されている。この液滴噴射アレイ27は、ベース部材21の液滴噴射アレイ部開口21dと対応する位置に配置されている。
【0020】
図6に示すように液滴噴射アレイ27は、ノズルプレート100と、圧力室構造体200とが積層されて形成されている。ノズルプレート100は、薬液を吐出するノズル110と、振動板120と、駆動部である駆動素子130と、保護層である保護膜150と、撥液膜160とを備える。振動板120と駆動素子130によってアクチュエータ170が構成されている。本実施形態では、アクチュエータ170は、鉛成分を含まない無鉛材料(非鉛材料)でも鉛を含む材料で作成された圧電素子でもよい。
【0021】
本実施形態の液滴噴射アレイ27は、
図5に示すように交差する第1方向と第2方向との2方向にそれぞれ複数並べたノズル群を有する。
図5では、1例として図中上下方向を第1方向、第1方向と直交する左右方向を第2方向と定義する。そして、本実施形態では、第1方向に3個のノズル110が配置され、第2方向に4個のノズル110が配置され、3×4列に配列された12個のノズル110の1つの組をノズル群と呼ぶ。すなわち、本実施形態では、
図5に示すように第1方向及び第2方向それぞれに複数のノズル110が配置されている。下部電極131の端子部131cが設けられている方向を第1方向、端子部131cの配列方向が第2方向である。
【0022】
さらに、本実施形態の液滴噴射アレイ27は、8個の溶液保持容器22の開口部22aと対応する位置にそれぞれ1組のノズル群が配置されている。本実施形態においては、液滴噴射アレイ27は、96穴のマイクロプレート4の直上に配置した際、96穴のマイクロプレート4の1つのウエル開口4bの開口内に1つのノズル群が配置される。このため、液滴噴射アレイ27の1つのノズル群の12個のノズル110は、マイクロプレート4の1つのウエル開口4bの開口内のみに配置されている。
【0023】
振動板120は、例えば圧力室構造体200と一体に形成される。振動板120は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO2(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。
【0024】
振動板120の膜厚は、1~30μmの範囲が好ましい。振動板120は、SiO2(酸化シリコン)膜に代えて、SiN(窒化シリコン)等の半導体材料、或いは、Al2O3(酸化アルミニウム)等を用いることもできる。
【0025】
駆動素子130は、各ノズル110毎に形成されている。駆動素子130は、ノズル110を囲む円環状の形状である。駆動素子130の形状は限定されず、例えば円環の一部を切り欠いたC字状でも良い。
【0026】
振動板120は、面状の駆動素子130の動作により厚み方向に変形する。液滴噴射装置2は、振動板120の変形により圧力室構造体200の圧力室210内に発生する圧力変化によって、ノズル110に供給された溶液を吐出する。
【0027】
本実施形態の液滴分注装置1の本体1Aは、
図7に示す不吐出状態検出部230を具備する。この不吐出状態検出部230は、マイクロプレート4の重量を検知する、例えば水晶振動子を用いた重量測定器231を有する。
【0028】
この重量測定器231は、液滴噴射装置2の動作、または液滴分注装置1の全体の動作を制御する制御部232に接続されている。そして、重量測定器231による検出データは、制御部232に入力される。制御部232には、例えば液滴分注装置1のモニターなどの表示部233が接続されているとともに、後述する乾燥減少曲線Dを検出するD曲線検出部234が内蔵されている。
【0029】
制御部232は、
図8に示すフローチャートに沿って液滴分注装置1の液滴噴射装置2からマイクロプレート4への液滴の滴下処理を制御する。まず、液滴分注装置1の図示しないスタートボタンが押されて吐出指示が行われる(Act1)。制御部232は、この吐出指示を受けて吐出処理制御を行う(Act2)。
【0030】
この吐出処理時には、制御部232は、液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ液滴を滴下する滴下動作時に、ノズル群の一部のノズルからの不吐出状態の有無を検出する後述する不吐出状態検出部230の制御を行う(Act3)。なお、制御部232は、不吐出状態検出部230を後述する
図10のフローチャートに沿って制御する。
【0031】
また、制御部232は、Act3で、ノズル群からのノズル110の不吐出ありの状態と判断しない場合(ノズル110の不吐出がない場合)には、液滴の滴下処理を正常終了する(Act4)。
【0032】
制御部232は、Act3で、不吐出ありの状態と判断した場合には、不吐出量の確認制御を行う(Act5)。この不吐出量の確認は、重量測定器231による検出データに基づいて例えば制御部232の図示しない滴下量検出部で検出される。ここで、不吐出量が確認されない場合は、制御部232は、不吐出のノズル110があるマイクロプレート4のウエル開口4bの情報を表示部233に表示する(Act6)。
【0033】
また、制御部232は、Act5で、不吐出量が確認された場合には、液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ追加して液滴を滴下する追加動作を制御する(Act7)。
【0034】
次に、上記構成の本実施形態の液滴分注装置1の作用について説明する。液滴噴射装置2の液滴噴射アレイ27は、液滴噴射装置装着モジュール5に固定して使用される。液滴噴射装置2の使用時には、まず、溶液保持容器22の上面開口部22bから図示しないピペッターなどにより、溶液を所定量、溶液保持容器22に供給する。溶液は、溶液保持容器22の内面で保持される。溶液保持容器22の底部の開口部22aは、液滴噴射アレイ27と連通している。溶液保持容器22に保持された溶液は、溶液保持容器22の底面の開口部22aを介して液滴噴射アレイ27の各圧力室210へ充填される。
【0035】
この状態で、電装基板配線24の制御信号入力端子25に入力された電圧制御信号は、電装基板配線24の電極端子接続部26から下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cへ送られる。このとき、駆動素子130への電圧制御信号の印加に対応して、振動板120が変形して圧力室210の容積を変化させることにより、液滴噴射アレイ27のノズル110から溶液が溶液滴として吐出される。このとき、本実施形態では、12個のノズル110から同時に溶液滴がマイクロプレート4の1つのウエル開口4bに滴下される。そして、ノズル110から、マイクロプレート4の各ウエル開口4bに所定量の液体を滴下する。
【0036】
各ノズル110から吐出される1滴の液滴の滴下回数を制御することにより、各ウエル開口4bにpLからμLのオーダーの液体を滴下制御することが可能となる。
【0037】
本実施形態の液滴分注装置1では、液滴分注処理時には、制御部232は、
図10のフローチャートに示す不吐出状態検出部230の制御を行う。まず、液滴分注装置1の図示しないスタートボタンなどが押されると制御部232は、初期測定制御を行う(Act11)。この初期測定では、
図9に示すように始動直後のt1時点で、液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ予め設定された設定量の液滴の1回目の滴下動作制御を行う。この1回目の滴下動作後、制御部232は、重量測定器231が検知したマイクロプレート4の重量w0を取得する。
図9は、上記初期実測時から所定時間経過後のマイクロプレート4の乾燥による液体減少量を考慮した実際曲線を示している。
【0038】
その後、次のt2時点の2回目の滴下動作の前に、制御部232は、マイクロプレート4の乾燥による液体減少状態を取得する(Act12)。ここでは、制御部232は、初期測定時から複数の設定時間(t11、t12、t13、…)経過後のマイクロプレート4の重量wの変化(w01、w02、w03、…)状態を取得する。そして、制御部232は、w0、w01、w02、w03、…を結ぶ特性曲線を検出し、この特性曲線を乾燥減少曲線Dと定義する。
【0039】
また、制御部232は、Act12で、乾燥減少曲線Dを検出した後、次のAct13の吐出処理に進む。このAct13の吐出処理では、制御部232は、
図9中のt2時点で、2回目の滴下動作制御を行う。
図9中で、直線eは、マイクロプレート4の重量wの予想値(吐出期待値)w1である。上記2回目の滴下動作時には、マイクロプレート4の重量wは、マイクロプレート4の中の液体の乾燥によって減少している。このため、2回目の滴下動作時には、マイクロプレート4の中の液体の重量w21は、w21<w0(w01、w02、w03)である。このとき、重量w21は、乾燥減少曲線Dに沿って決まる。そして、制御部232は、この重量w21のマイクロプレート4の中に2回目の滴下動作制御を行う。そのため、制御部232は、t2時点でのマイクロプレート4の重量wの予想値(吐出期待値)w22は、w22<w1と予想する。
【0040】
その後、上記2回目の滴下動作時から所定時間経過後のt3時点で、マイクロプレート4の重量wの実測値w31を重量測定器231が実測し、制御部232は、実測値w31を取得する(Act14)。次のAct15では、制御部232は、w31が乾燥減少曲線Dに沿って決まる予想値と同じか否かを判断する。ここでは、制御部232は、t3時点で、実測した実測値w32が乾燥減少曲線Dに沿って決まる予想値w31よりも小さい(w31>w32)場合は、ノズル群の中のいずれかのノズル110に不吐出がある状態と判断する(Act16)。この場合は、Act18の不吐出量の確認制御を行う。この不吐出量の確認は、重量測定器231による検出データに基づいて例えば制御部232の図示しない滴下量検出部で検出される。ここで、不吐出量が確認されない場合は、制御部232は、不吐出のノズル110があるマイクロプレート4のウエル開口4bの情報を表示部233に表示する(Act20)。
また、制御部232は、Act18で、不吐出量が確認された場合には、液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ追加して液滴を滴下する追加動作を制御する(Act19)。
また、制御部232は、W31が乾燥減少曲線Dに沿って決まる予想値と同じであれば、ノズル群のノズル110の不吐出がない成功状態と判断する(Act17)。この場合は、制御部232は、次のAct21に進み、全ての必要なウェルに所定の液滴が滴下されるまで液滴の滴下処理を継続し(Act13)、全ての必要なウェルに所定の液滴が滴下されたことを確認すると正常終了する。
【0041】
上記構成の第1の実施形態の液滴分注装置1においては、液滴噴射アレイ27のノズル110から液滴がマイクロプレート4の1つのウエル開口4bに滴下する液滴分注処理時に駆動される不吐出状態検出部230を設けている。制御部232は、この不吐出状態検出部230によって重量測定器231によるマイクロプレート4の重量の実測値から乾燥による液滴の重量の減少値を検出する。そして、実際の液滴の滴下処理時に、制御部232は、重量測定器231によるマイクロプレート4の重量(w)の実測値が液滴の乾燥によるマイクロプレート4内の液滴の重量の減少値(乾燥減少曲線Dを考慮した修正値)よりも小さい場合にノズル群の中のいずれかのノズル110が不吐出ありの状態と判断する。これにより、制御部232は、マイクロプレート4の1つのウエル開口4bに対し、液滴噴射アレイ27のノズル群から液滴が滴下される滴下処理時にノズル110の不吐出がない不吐出なしの状態と、不吐出ありの状態とを判別することができる。その結果、マイクロプレート4の1つのウエル開口4bに対して1つのノズル群の12個のノズル110から同時に液体を滴下する場合に、12個のノズル110うちの一部が不吐出となる吐出不良を検出することができる。
【0042】
本実施形態では、吐出不良を検出した場合には、制御部232は、
図10のフローチャートに沿ってAct18で、不吐出量を確認したのち、Act19で液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ追加して液滴を滴下する追加動作を行う。このとき、制御部232は、滴下量検出部による検出結果に基づいて液滴の滴下動作時にあらかじめ設定された規定量の液滴が検出されない場合に規定量に対して不足する液滴の不足量と同量の液滴を滴下する追加動作を行う。
【0043】
したがって、本実施形態では、液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ液滴を滴下する滴下処理時に1つのノズル群の複数のノズル110うちの一部で吐出不良を検出したとしても、正常なノズル110を介して不足分を追加で吐出することができる。そのため、液滴噴射アレイ27からマイクロプレート4のウエル開口4bに目的量の液体を所定量に滴下することができるため、実験のやり直しを防止でき、誤評価を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、ノズル群のノズル110の数がa×b[個]、不吐出状態のノズル110の数がn[個]、1ノズルからの1回の液滴滴下動作時の想定吐出量がt[pl]、吐出回数がX1、追加回数がX2とすると、
滴下処理時の不吐出量:Y1=t×n×X1
追加動作時の追加量:Y2=t×(a×b-n)×X2
である。リカバリーは、「Y1-Y2」の絶対値がもっとも小さくなるようにX2の回数を選択することである。X1、X2ともに整数であるため、Y1=Y2とならない場合もある。その際の誤差は、「Y1-Y2」の絶対値となる。
【0045】
(第2の実施形態)
図11および
図12は、第2の実施形態を示す。本実施形態は、第1の実施形態(
図1乃至
図10参照)の液滴分注装置1の不吐出状態検出部230の構成を次の通り変更した変形例である。なお、第2の実施形態にあって、前述の第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
図11は、第2の実施形態の液滴分注装置1の不吐出状態検出部241の概略構成図である。
図12は、第2の実施形態の液滴分注装置1の不吐出状態検出部241の動作を説明するためのフローチャートである。
【0047】
本実施形態では、第1の実施形態で示した重量測定器231による不吐出状態検出部230に替えてスキャナ部240を有する不吐出状態検出部241を設けたものである。このスキャナ部240は、例えばCMOSセンサーによって形成され、マイクロプレート4の透明度を検出する。
【0048】
このスキャナ部240は、液滴噴射装置2の動作、または液滴分注装置1の全体の動作を制御する制御部242に接続されている。そして、スキャナ部240による検出データは、制御部242に入力される。この制御部242には、例えば液滴分注装置1のモニターなどの表示部243が接続されているとともに、スキャナ部240による検出データからマイクロプレート4の透明度を検出する後述する透明度検出部244が内蔵されている。この制御部242は、スキャナ部240による検出データからノズル群のノズル110からの吐出の有無を検知する。
【0049】
制御部242は、第1の実施形態と同様に、
図8に示すフローチャートに沿って液滴分注装置1の液滴噴射装置2からマイクロプレート4への液滴の滴下処理を制御する。
【0050】
次に、上記構成の本実施形態の液滴分注装置1の作用について説明する。液滴分注処理時には、制御部242は、
図12のフローチャートに示す不吐出状態検出部241の制御を行う。
【0051】
液滴分注装置1の図示しないスタートボタンなどが押されると制御部242は、初期測定制御を行う(Act31)。この初期測定では、制御部242は、始動直後のt1時点で、液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ予め設定された設定量の液滴の1回目の滴下動作を行う。この1回目の滴下動作後、制御部242は、スキャナ部240が検知したマイクロプレート4の透明度v0を取得する。
【0052】
この後、制御部242は、上記初期実測時から所定時間経過後のマイクロプレート4の乾燥状態による液体の透明度の減少を考慮した第1の実施形態と同様の特性を示す次の乾燥減少曲線Dを検出する制御を行う(Act32)。ここで、マイクロプレート4の透明度(v)は、マイクロプレート4の乾燥が進むにしたがって徐々に暗くなる。
【0053】
乾燥減少曲線Dを検出する動作時には、制御部242は、初期実測時から次のt2時点の2回目の滴下動作の前に、マイクロプレート4の乾燥による液体の透明度の減少状態を検出する。ここでは、制御部242は、初期測定時から複数の設定時間(t11、t12、t13、…)経過後のマイクロプレート4の透明度(v)の変化状態を検出する。そして、制御部242は、透明度(v)の変化状態を結ぶ特性曲線を検出し、この特性曲線を乾燥減少曲線Dと定義する。
【0054】
その後、制御部242は、Act33の吐出処理に進む。このAct33の吐出処理では、制御部242は、液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ予め設定された設定量の液滴の2回目の滴下動作制御を行う。
【0055】
上記2回目の滴下動作時には、マイクロプレート4の透明度(v)は、マイクロプレート4の中の液体の乾燥によって減少している。このとき、透明度(v)は、乾燥減少曲線Dに沿って決まる。そして、制御部242は、この透明度(v)のマイクロプレート4の中に2回目の滴下動作制御を行う。制御部242は、t2時点でのマイクロプレート4の透明度(v)の予想値(吐出期待量)v32は、v32<v0と予想する。
【0056】
その後、制御部242は、上記2回目の滴下動作時から所定時間経過後のt3時点で、スキャナ部240が実測したマイクロプレート4の透明度(v)の実測値v31を取得する(Act34)。次のAct35では、制御部242は、このときの実測値v31が乾燥減少曲線Dに沿って決まる予想値と同じか否かを判断する。t3時点で、実測した実測値v32が乾燥減少曲線Dに沿って決まる予想値v31よりも小さい(v31>v32)場合は、制御部242は、ノズル群の中のいずれかのノズル110に不吐出がある状態と判断する(Act36)。この場合は、Act39の不吐出量追加処理に進む。また、制御部242は、v31が乾燥減少曲線Dに沿って決まる予想値と同じであれば、ノズル群のノズル110の不吐出がない成功状態と判断する(Act37)。この場合は、制御部242は、次のAct41に進み、全ての必要なウェルに所定の液滴が滴下されるまで液滴の滴下処理を継続し(Act33)、全ての必要なウェルに所定の液滴が滴下されたことを確認すると正常終了する。
【0057】
上記構成の第2の実施形態の液滴分注装置1においては、制御部242は、スキャナ部240によるマイクロプレート4の透明度(v)の実測値から乾燥による液滴の透明度の減少値を取得する。そして、制御部242は、実際の液滴の滴下処理時に、スキャナ部240によるマイクロプレート4の透明度(v)の実測値が液滴の乾燥によるマイクロプレート4内の液滴の透明度(v)の減少値(乾燥減少曲線Dを考慮した修正値)よりも小さい場合にノズル群の中のいずれかのノズル110が不吐出ありの状態と判断する。これにより、制御部242は、マイクロプレート4の1つのウエル開口4bに対し、液滴噴射アレイ27のノズル群から液滴が滴下される滴下処理時にノズル110の不吐出がないと判断される不吐出なしの状態と、不吐出ありの状態とを判別することができる。
【0058】
そして、本実施形態では、吐出不良を検出した場合には、制御部242は、第1の実施形態と同様に
図12のフローチャートに沿ってAct38で、不吐出量を確認したのち、Act39で液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ追加して液滴を滴下する追加動作制御を行う。このとき、制御部242は、滴下量検出部による検出結果に基づいて規定量に対して不足する液滴の不足量と同量の液滴を滴下する追加動作制御を行う。
【0059】
したがって、本実施形態では、第1の実施形態と同様に液滴噴射装置2からマイクロプレート4へ液滴を滴下する滴下処理時に1つのノズル群の複数のノズル110うちの一部で吐出不良を検出したとしても、不足分を追加で吐出することができる。そのため、液滴噴射アレイ27からマイクロプレート4のウエル開口4bに目的量の液体を所定量に滴下することができるため、実験のやり直しを防止でき、誤評価を防止することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図13および
図14は、第3の実施形態を示す。本実施形態は、第1の実施形態(
図1乃至
図10参照)の液滴分注装置1の変形例である。なお、第3の実施形態にあって、前述の第1の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
図13は、第3の実施形態の液滴分注装置1の制御部254の接続状態を示す概略構成図である。
図14は、第3の実施形態の液滴分注装置1の位置決め動作を説明するための説明図である。
【0062】
本実施形態は、液滴分注装置1の本体1Aに
図13に示す位置補正装置250を設けたものである。この位置補正装置250は、X方向移動機構251と、Y方向移動機構252と、回転機構253と、制御部254と、位置検出部256とを有する。本体1Aの基台3の上面側には、Y方向移動機構252を配置する。このY方向移動機構252は、基台3に対してY方向に移動可能な移動プレートを有する。X方向移動機構251は、Y方向移動機構252の上に配置され、Y方向と直交するX方向に移動可能な移動プレートを有する。X方向移動機構251の上には、マイクロプレート4を着脱可能に固定するプレート取付け部255が設けられている。
【0063】
回転機構253は、基台3の下側に配置され、鉛直方向に延設された図示しない回転軸を中心に基台3全体を回転駆動する。位置検出部256は、例えばスキャナ部240(
図11参照)を有し、このスキャナ部240によってマイクロプレート4の位置を検出する。制御部254には、X方向移動機構251と、Y方向移動機構252と、回転機構253と、位置検出部256とが接続されている。
【0064】
本実施形態の位置補正装置250は、液滴分注装置1の始動時に駆動される。そして、位置補正装置250は、液滴噴射装置2からマイクロプレート4に液滴が滴下される滴下処理を開始する前に液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを補正する機能を有する。
【0065】
位置補正装置250の駆動時には、位置検出部256によってマイクロプレート4の位置を検知する。このとき、本実施形態では、スキャナ部240は、
図14に示すようにマイクロプレート4の左右の角部4C1、4C2の位置を検知する。この検出データは、制御部254に入力される。制御部254では、この検出データに基づいて位置補正装置250のX方向移動機構251と、Y方向移動機構252と、回転機構253とをそれぞれ駆動して液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを補正する。
【0066】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施形態では、液滴分注装置1の始動時に位置補正装置250が駆動される。そして、液滴噴射装置2からマイクロプレート4に液滴が滴下される滴下処理が開始される前に液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを補正することができる。このとき、液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを自動で補正することにより、高速に液体吐出ずれを抑制できる。その結果、高密度のマイクロプレート4へ液滴を吐出する際、ズレにより隣接のウエル開口4bに液体が吐出されることを防止でき、最終評価結果のばらつき、または薬の性能の誤評価を防止できる効果がある。
【0067】
なお、本実施形態では、位置補正装置250による液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを補正する機能は、液滴分注装置1の始動時に駆動される構成を示した。これに替えて、液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)からの吐出時にマイクロプレート4の位置ズレを検知し、マイクロプレート4の位置ズレを自動補正しながら吐出する構成にしてもよい。
【0068】
(第4の実施形態)
図15は、第4の実施形態を示す。本実施形態は、第3の実施形態(
図13および
図14参照)の液滴分注装置1の位置補正装置250の構成を次の通り変更した変形例である。なお、第4の実施形態にあって、前述の第3の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
図15に示すように本実施形態は、液滴噴射装置2の一端に位置センサ257を設け、この位置センサ257によってマイクロプレート4の一端側の端縁部258の位置を検出する。このマイクロプレート4の一端側の端縁部258の位置に合わせて液滴噴射装置2の位置を
図15中で矢印A方向と、この矢印A方向と直交する矢印B方向とに移動する。これにより、液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを補正することができる。したがって、本実施形態でも第3の実施形態と同様に液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを自動で補正することにより、高速に液体吐出ずれを抑制できる。その結果、高密度のマイクロプレート4へ液滴を吐出する際、ズレにより隣接のウエル開口4bに液体が吐出されることを防止でき、最終評価結果のばらつき、または薬の性能の誤評価を防止できる効果がある。
【0070】
(第5の実施形態)
図16は、第5の実施形態を示す。本実施形態は、第3の実施形態(
図13および
図14参照)の液滴分注装置1の位置補正装置250の構成を次の通り変更した変形例である。なお、第5の実施形態にあって、前述の第3の実施形態と同一部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
図16に示すように本実施形態は、位置検出部256によってマイクロプレート4の位置を検知する。このとき、本実施形態では、
図16に示すようにマイクロプレート4の右上角の端縁部579の位置を検出する。このマイクロプレート4の右上角の端縁部579の位置の検出データは、制御部254に入力される。制御部254では、この検出データに基づいて位置補正装置250のX方向移動機構251と、Y方向移動機構252と、回転機構253とをそれぞれ駆動して液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを補正する。
【0072】
これにより、液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを補正することができる。したがって、本実施形態でも第3の実施形態と同様に液滴噴射装置2の吐出部(ノズル110)に対するマイクロプレート4の位置ズレを自動で補正することにより、高速に液体吐出ずれを抑制できる。その結果、高密度のマイクロプレート4へ液滴を吐出する際、ズレにより隣接のウエル開口4bに液体が吐出されることを防止でき、最終評価結果のばらつき、または薬の性能の誤評価を防止できる効果がある。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)
溶液を吐出するノズル群を有するとともに液滴を受けるマイクロプレートに向けて液滴を噴射する液滴噴射部と、
前記液滴噴射部から前記マイクロプレートへ前記液滴を滴下する滴下動作時に、前記ノズル群の一部のノズルからの不吐出状態を検出する不吐出状態検出部と、
前記不吐出状態検出部による検出結果に基づいて前記マイクロプレートへ追加して前記液滴を滴下する追加動作を制御する制御部と、
を具備する液滴分注装置。
(2)
前記不吐出状態検出部は、前記マイクロプレートの1つの開口部に対し、前記ノズル群から滴下される前記液滴の滴下量を検出する滴下量検出部を有し、
前記制御部は、前記滴下量検出部による検出結果に基づいて前記液滴の滴下動作時にあらかじめ設定された規定量の前記液滴が検出されない場合に前記規定量に対して不足する前記液滴の不足量と同量の前記液滴を前記液滴噴射部から前記マイクロプレートへ追加して前記液滴を滴下する追加動作を制御する(1)に記載の液滴分注装置。
(3)
前記滴下量検出部は、前記マイクロプレートの重量を検知する重量測定器を有し、
前記制御部は、前記マイクロプレートに前記液滴が滴下された際の前記重量測定器による前記マイクロプレートの前記重量の初期実測値と、前記初期実測値の検出時から所定時間経過後の前記マイクロプレートの前記重量の実測値とから乾燥による前記液滴の前記重量の減少値を検出し、次回の前記液滴の滴下処理時に、前記重量測定器による前記マイクロプレートの前記重量の前記実測値が前記液滴の乾燥による前記マイクロプレート内の前記液滴の重量の減少値よりも小さい場合に前記ノズル群からの前記ノズルの不吐出状態と判断する(2)に記載の液滴分注装置。
(4)
前記滴下量検出部は、前記マイクロプレートの透明度を検知するスキャナ部を有し、 前記制御部は、前記マイクロプレートに前記液滴が滴下された際の前記スキャナ部による前記マイクロプレートの前記透明度の初期実測値と、前記初期実測値の検出時から所定時間経過後の前記マイクロプレートの前記透明度の実測値とから乾燥による前記液滴の前記透明度の減少値を検出し、次回の前記液滴の滴下処理時に、前記スキャナ部による前記マイクロプレートの前記透明度の実測値が前記減少値よりも小さい場合に前記ノズル群からの前記ノズルの不吐出状態と判断する(2)に記載の液滴分注装置。
(5)
前記ノズル群のノズルの数がa×b[個]
前記不吐出状態のノズルの数がn[個]
1ノズルからの1回の前記滴下動作時の想定吐出量がt[pl]
吐出回数がX1、追加回数がX2とすると、
不吐出量Y1は、Y1=t×n×X1
追加量Y2は、Y2=t×(a×b-n)×X2
とすると、リカバリーは、Y1-Y2の絶対値がもっとも小さくなるようにX2の回数を選択するとともに、
X1、X2ともに整数であるため、Y1=Y2とならない場合の誤差は、「Y1-Y2」の絶対値となる(1)に記載の液滴分注装置。
【符号の説明】
【0074】
1…液滴分注装置、2…液滴噴射装置、4…マイクロプレート、4b…ウエル開口、5…液滴噴射装置装着モジュール、27…液滴噴射アレイ、100…ノズルプレート、110…ノズル、230…不吐出状態検出部、231…重量測定器、232…制御部、234…D曲線検出部、240…スキャナ部、241…不吐出状態検出部、242…制御部、244…透明度検出部。