(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】電磁回転駆動装置及び回転装置
(51)【国際特許分類】
H02K 21/38 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
H02K21/38 M
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017066905
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2020-03-09
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511081820
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トマス ホーレンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】レト シェーブ
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06181040(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第103825418(CN,A)
【文献】特開2001-016887(JP,A)
【文献】特開平05-022914(JP,A)
【文献】特開平07-303357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0062239(US,A1)
【文献】特開2000-184655(JP,A)
【文献】特開2007-120635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/38
H02K 7/09
F04D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触式に磁気駆動可能なロータ(3)であって、コイルフリー且つ永久磁石フリーとして構成された、磁気有効コア(31)を有するロータ(3)と、
動作状態において前記ロータ(3)を所望の回転軸線の周りで非接触式に磁気駆動可能にするステータ(2)と
を有する、テンプルモータとして構成された電磁回転駆動装置であって、
前記ステータ(2)が、複数のコイルコア(4)を有し、各コイルコア(4)が、前記所望の回転軸線に平行な方向に第1端部(43)から第2端部(44)まで延びる棒形状の長手方向リム(41)を有し、
全ての前記第1端部(43)がリフラックス(5)によって接続され、また
電磁回転磁場を発生させるために複数の巻線(6,61)が設けられ、各巻線(6,61)が、前記長手方向リム(41)のうちの1つを包囲している、電磁回転駆動装置において、
前記複数のコイルコア(4)が、予磁化永久磁束を生成可能な複数の永久磁石(45,46)を有
し、各コイルコア(4)は、前記長手方向リム(41)の前記第1端部(43)から前記第2端部(44)まで延びる永久磁気部(46)と、それぞれが前記第1端部(43)から前記第2端部(44)まで延びる2つの永久磁石フリー部(47)とを有し、前記永久磁気部(46)が前記2つの永久磁石フリー部(47)の間に配置されていることを特徴とする、電磁回転駆動装置。
【請求項2】
前記ステータ(2)が、動作状態において前記ロータ(3)を前記ステータ(2)に対して非接触式に磁気支持可能とするベアリング駆動ステータとして構成される、請求項1に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項3】
各コイルコア(4)が、前記長手方向リム(41)の前記第2端部(44)に配置された横リム(42)であって、前記所望の回転軸線によって定められる軸線方向(A)に直交する径方向に延びる横リム(42)を有する、請求項1又は2に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項4】
前記コイルコア(4)の前記永久磁気部(46)及び2つの永久磁石フリー部(47)はそれぞれ前記横リム(42)を通して延び、前記永久磁気部(46)は前記横リム(42)において前記2つの永久磁石フリー部(47)の間に配置される、請求項3に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項5】
前記永久磁気部(46)がそれぞれ径方向及び軸線方向(A)に垂直に極性を与えられ、隣接するコイルコア(4)の前記永久磁石(46)がそれぞれ反対方向に極性を与えられている、請求項1から
4までのいずれか一項に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項6】
前記コイルコアの前記永久磁石フリー部(47)はそれぞれ、前記ロータ(3)の周囲方向に積層された複数の要素(48)から、束状積層形状として製造される、請求項1から
5までのいずれか一項に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項7】
前記ステータ(2)が、偶数個のコイルコア(4)、好ましくは6個、8個又は12個のコイルコア(4)を有する、請求項1から
6までのいずれか一項に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項8】
前記ロータ(3)に対向する前記コイルコア(4)の前記横リム(42)の前記端面(421)が、前記ロータ(3)の前記磁気有効コア(31)の軸線方向高さ(HR)より大きい前記軸線方向(A)の高さ(HS)を有する、請求項2から
7までのいずれか一項に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項9】
前記巻線(6)が、前記ロータ(3)のための電磁駆動磁場を発生させるための駆動コイル(62)と、それとは別の、前記ロータ(3)に径方向に作用する横方向力を設定するための制御コイル(63)とを有する、請求項1から
8までのいずれか一項に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項10】
前記ロータ(3)の前記磁気有効コア(31)が、ディスク状又はリング状に構成され、且つ径方向外方境界面(34,34’’)を有し、前記径方向外方境界面(34,34’’)は、前記ロータ(3)が中心に配置された状態において全ての前記コイルコア(4)から径方向に等しい間隔を有している、請求項1から
9までのいずれか一項に記載の
電磁回転駆動装置。
【請求項11】
テンプルモータとして構成された電磁回転駆動装置のためのステータであって、
動作状態においてロータ(3)がステータ(2)によって所望の回転軸線の周りで非接触式に磁気駆動されることができ、
前記ステータ(2)が複数のコイルコア(4)を有し、各コイルコア(4)が、前記所望の回転軸線に平行な方向に第1端部(43)から第2端部(44)まで延びる棒形状の長手方向リム(41)を有し、
全ての前記第1端部(43)がリフラックス(5)によって接続され、また
電磁回転磁場を発生させるための複数の巻線(6,61)が設けられ、各巻線(6,61)が前記長手方向リム(41)のうちの1つを包囲している
ステータにおいて、
前記複数のコイルコア(4)が、予磁化永久磁束を生成可能な複数の永久磁石(46)を有し、各コイルコア(4)は、前記長手方向リム(41)の前記第1端部(43)から前記第2端部(44)まで延びる永久磁気部(46)と、それぞれが前記第1端部(43)から前記第2端部(44)まで延びる2つの永久磁石フリー部(47)とを有し、前記永久磁気部(46)が前記2つの永久磁気部(47)の間に配置されることを特徴とする、ステータ。
【請求項12】
前記ステータ(2)が、動作状態において前記ロータ(3)を前記ステータ(2)に対して非接触式に磁気支持可能とするベアリング駆動ステータとして構成される、請求項
11に記載のステータ。
【請求項13】
請求項1から
10までのいずれか一項に記載のように構成された電磁回転駆動装置、
或いは請求項
11又は12に記載のように構成されたステータを有することを特徴とする、流体を搬送、圧送、混合又は撹拌するための回転装置。
【請求項14】
1回の使用のために構成された使い捨て装置(200)と、複数回の使用のために構成された再利用可能装置(300)とを有し、
前記使い捨て装置(200)が、1又は複数の流体を搬送、圧送、混合又は撹拌するための複数の羽根を有する前記ロータ(3)を少なくとも有し、
前記再利用可能装置(300)が、前記ロータ(3)を受容する支持タンク(301)と、動作状態において前記ロータ(3)を非接触式に磁気駆動及び支持できる前記ステータ(2)とを有し、
前記ステータ(2)が、予磁化永久磁束を生成するための少なくとも1つの永久磁石(45,46)と、電磁束を生成するための少なくとも1つの巻線(6,61)とを有し、
前記予磁化永久磁束及び前記電磁束が共にロータを駆動及び支持する、請求項
13に記載の回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各カテゴリの独立請求項の前提部分に記載の電磁回転駆動装置及び回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂テンプルモータ(temple motor)として構成された電磁回転駆動装置が知られている。本発明は、この実施例に関する。テンプルモータは、
図1及び
図2の斜視図にそれぞれ示すように、2つの実施例が従来知られている。より良く理解するため、
図2のテンプルモータの軸線方向の断面を
図3に示す。
図1~
図3が先行技術の装置を図示したものであることを示すために、ここでは、符号にそれぞれ逆コンマ又はダッシュが付される。テンプルモータは、全体として、符号1’によって特徴付けられる。
【0003】
テンプルモータの特徴として、ステータ2’が、軸線方向A’と平行に延在する棒形状の長手方向リム41’をそれぞれ備える複数のコイルコア4’を有する。なお、その方向は、ロータ3’の所望の回転軸線、つまり、ロータ3’が、軸線方向に直交するように配設された径方向面において、ステータ2’に対して中心且つ傾斜していない位置にある場合の動作状態で回転する回転軸線によって定義される軸線方向A’を意味する。
図1~
図3では、ロータ3’の円盤状の永久磁石としてそれぞれ構成された、ロータ3’の各磁気有効コア31’のみを示す。永久磁石の磁化は、それぞれ、符号なしの矢印によって示される。
【0004】
更に、電磁回転駆動装置は、ベアリングレスモータの原理に従って構成及び動作がなされるものが知られている。なお、ベアリングレスモータという用語は、磁気ベアリングが別途設けられることなく、ロータがステータに対して完全に磁気的に支持される電磁回転駆動装置を指す。このため、ステータは、ベアリング駆動ステータとして構成され、よって、電気駆動のステータと磁気支持のステータとの両方を兼ね備えている。回転磁場は、電気巻線を用いて作ることができ、一方では、ロータにその回転を生じさせるトルクを与え、他方では、ロータの径方向位置を能動的に制御及び調整可能となるようにロータに要望通りに設定可能なせん断力を与える。ロータの完全な磁気支持を伴う別個の磁気ベアリングの不在が、ベアリングレスモータをそう名付ける所以となる特性である。
【0005】
ところで、ベアリングレスモータは、当業者にはもう十分よく知られており、多数の様々な用途に用いられている。幾つかの基本的な説明は、例えば特許文献1及び特許文献2を参照のこと。
【0006】
機械ベアリングの不在に起因して、ベアリングレスモータは、例えば血液ポンプ等の非常に敏感な物質を搬送する装置、又は例えば製薬業界やバイオテクノロジー業界における純度に関して非常に高い要求が課される装置、又は例えば半導体産業におけるスラリー用ポンプやミキサ等の、機械ベアリングを短期間で破壊してしまう研磨物質を搬送する装置といった、特に、ポンプ装置、混合装置又は撹拌装置に適している。また、ベアリングレスモータは、半導体製造において、例えばフォトレジストや他の物質でコーティングや処理を行う際に、ウェハを支持し回転させるためにも用いられる。
【0007】
圧送、撹拌又は混合の用途におけるベアリングレスモータの原理の更なる利点は、電磁駆動装置のロータと、ポンプ、攪拌機又はミキサのロータとを兼ね備えた統合ロータとしてのロータの設計に由来する。非接触磁気支持に加えて、ここでは、非常にコンパクトで場所を取らない構成による利点もある。
【0008】
また、ベアリングレスモータの原理によれば、ロータをステータから非常に容易に分離できる設計も可能となる。このことは、例えばロータを1回きりの使用のための使い捨て部分として設計可能となるため、非常に大きな利点となる。現在、このような使い捨ての適用は、純度に対する非常に高い要求から、処理中に取り扱う物質と接触する全ての部品を、例えば蒸気滅菌による複雑且つ/又は費用のかかる方法で事前に洗浄・殺菌する必要があった処理に、しばしば取って代わっている。1回きりの使用を目的とした構成において、取り扱う物質と接触する部品は、厳密に1回だけ使用後、次回用の新しい未使用の使い捨て部品と交換される。
【0009】
ここでは、例として製薬業界及びバイオテクノロジー業界が挙げられる。ここでは、溶液及び懸濁液の調製がしばしば行われ、物質の配合又は搬送には注意を要する。
【0010】
製薬業界では、例えば、薬学的活性物質の製造において、清浄度への要求が非常に高く、多くの場合、物質と接触する部品は無菌である必要さえある。また、バイオテクノロジーの分野においても、例えば、製造される製品の有用性を脅かさないためにも極めて高い純度の確保を必要とする生物学的物質、細胞又は微生物の調製、処理又は培養において同様の要求が課される。更なる例として、ここでは、例えば組織や特殊な細胞又はその他の非常に敏感な物質の生物学的な代替物の培養が行われるバイオリアクタが挙げられる。また、ここでは、例えば、栄養液の連続的な配合を確保したり、それの混合タンク内での連続的な循環を確保したりするために、圧送、攪拌又は混合するための装置も必要となる。なお、物質や製造された製品を汚染から保護するためにも非常に高い純度の確保が必要である。
【0011】
このような用途において、圧送、撹拌又は混合するための装置は、使い捨て装置及び再利用可能装置から構成される。なお、使い捨て装置は、物質と接触する、1回きりの使用のための使い捨て部品として構成された部品を備えている。これは、例えばポンプタンク又は混合タンクであって、その内部に、例えば物質を搬送するためのインペラを備えたロータが設けられている。再利用可能装置は、恒久的に、つまり複数回使用される部品、例えばステータを備えている。このような装置は、例えば特許文献3に開示されている。
【0012】
使い捨て部品としての構成において、ポンプタンク又は混合タンクは、多くの場合、ロータをその内部に有する柔軟性のあるプラスチックの袋部又はプラスチックのサックとして設計されている。これらの袋部は、製造時又は梱包・保管後に既に滅菌済みであることが多く、梱包時に滅菌状態で顧客に提供される。
【0013】
1回きりの使用のための使い捨て部品の製造や設計においては、可能な限り簡単な方法で再利用可能装置やその部品と組み付けられることが重要な条件となる。このような組み付けは、可能な限り少ない労力と少ない作業で、素早く、好ましくは工具なしで行えることが望ましい。
【0014】
他の観点としては、こうした使い捨て部品は、可能な限り経済的且つ安価な方法で製造することが可能である。なお、特に、商業用プラスチック等の手頃な価格の簡素な出発物質も重要視される。また、環境を意識した取り扱いや利用可能資源の責任ある利用も、使い捨ての部品の設計において重要な側面である。
【0015】
また、圧送、撹拌又は混合を行う装置全体が1回きりの使用のために構成されたものも知られている。
【0016】
特に有利な既知の実施例としては、最初に説明したテンプルモータを、1回きりの使用のための部品を有するか否かに関係なく、ベアリングレスモータとして構成することである。
【0017】
図1~
図3に示すテンプルモータ1’の実施例において、コイルコア4’、ここでは例えば6個のコイルコア4’は、棒形状の長手方向リム41’と共に、ロータ3’(内部ロータ)の周りに円状且つ等距離に配置されている。外部ロータとしての実施例において、ロータは、例えば、リング形状を有し、コイルコアは、ロータに対して内向きに配設されている。軸線方向A’に延在し、寺院の柱を連想させる複数の棒形状の長手方向リム41’が、テンプルモータの名前の由来である。
【0018】
棒形状の長手方向リム41’は、それぞれ、図示の下部における第1端部から図示の上部における第2端部まで、軸線方向A’に延在している。第1端部は、隣接する2つのコイルコア4’間にそれぞれ配置された複数のセグメントを備えるリフラックス5’によって、径方向に互いに接続されている。永久磁石ロータ3’は、長手方向リム41’の第2端部間に配置され、動作状態において軸線方向A’を中心に回転する。ロータ3’は、ステータ2’に対して非接触に磁気駆動され、非接触に磁気支持される。また、ロータ3’の径方向位置は、長手方向リム41’の第2端部間の中心位置に位置付けられるように調節される。
【0019】
長手方向リム41’は、ロータ3’の磁気駆動や磁気支持に必要な電磁回転磁場を発生させる巻線を有する。
図1~
図3に示す実施例では、巻線は、例えば、個別のコイル61’が各長手方向リム41’に巻き付けられるように、つまり各コイル61’のコイル軸線がそれぞれ軸線方向A’に延在するように構成されている。なお、テンプルモータは、典型的に、コイル61’のコイル軸線が所望の回転軸線と平行に延在していたり、コイル61’又は巻線が磁気ロータ面C’内に配置されていなかったりする。磁気ロータ面C’は、ロータ3’の磁気有効コア31’の磁気中心面である。この、軸線方向A’に直交する面において、ロータ3’又はロータ3’の磁気有効コア31’が動作状態に支持される。原則として、特に、
図1~
図3に示す円盤としてのロータ3’の磁気有効コア31’の実施例において、磁気ロータ面C’は、軸線方向A’に直交するロータ3’の磁気有効コア31’の幾何学的中心面である。
図1~
図3に示すように、コイル61’は、磁気ロータ面C’の下、好ましくは、ロータ3’の磁気有効コア31’の下に配置される。
【0020】
よく実施されるテンプルモータの実施例を
図2及び
図3に示す。この実施例において、各コイルコア4’は、長手方向リム41’に加えて、長手方向リム41’の第2端部にそれぞれ設けられ、長手方向リム41’に略直角の径方向に延在する横リム42’を備えている。この実施例では、各コイルコア4’はL字形状を有し、横リム42’がそのL字形の短いリムを形成している。ロータ3’は、横リム42’の間に配置されている。
【0021】
テンプルモータとしてのこの実施例の利点の1つは、磁気ロータ面C’に、ステータの巻線又は巻線ヘッドが存在しないことである。これにより、例えば遠心ポンプにテンプルモータを適用する場合に、ステータの巻線による干渉なしに、遠心ポンプの出口をポンプロータのインペラが回転する面内に設けることが可能となる、つまり、出口を軸線方向A’に対してポンプロータの羽根と同じ高さに設けることが可能となる。このようにポンプ出口を中心、つまり中央に配置することは、流体力学的観点において、具体的には、傾斜に対するロータの受動的支持及び安定化に関しても、特に好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】欧州特許出願公開第0860046号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0819330号明細書
【文献】欧州特許第2065085号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/121571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この従来技術を発端として、本発明の目的は、テンプルモータとして構成され、複数の用途に利用可能な、異なる電磁回転駆動装置を提供することである。更に、この回転駆動装置は、1回きりの使用のための部品を使う用途用としても構成可能である。また、本発明の目的は、このような回転駆動装置用のステータを提供すること、及びこのような回転駆動装置を備える、搬送、圧送、混合又は撹拌するための回転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的を達成する本発明の要旨は、各カテゴリの独立請求項の特徴部分によって特徴付けられる。
【0025】
本発明によれば、非接触に磁気駆動可能であり、コイルフリー且つ永久磁石を含まないで構成され、磁気有効コアを備えるロータと、ロータを動作状態において所望の回転軸線を中心として非接触に磁気駆動可能にするステータとを有するテンプルモータとして構成された電磁回転駆動装置であって、ステータが、所望の回転軸線に平行な方向に第1端部から第2端部まで延在する棒形状の長手方向リムをそれぞれ備える複数のコイルコアを有し、第1端部がいずれもリフラックスによって接続され、それぞれが長手方向リムの1つを包囲し、電磁回転磁場を発生させるための複数の巻線が設けられ、コイルコアが、予磁化(pre-magnetization)永久磁束を生成可能な複数の永久磁石を備える電磁回転駆動装置が提供される。
【0026】
ステータに永久磁石を備えるテンプルモータのステータの特定の実施例に起因して、ステータにおいて全磁束を生成することが可能である。特に、ここでは、ロータが磁束の生成には寄与せず、むしろそれを伝導したり誘導したりするだけでよくなる。それにより、ロータにおいて磁束生成のための永久磁石や磁気的に高硬質な材料を省くことが可能となる。
【0027】
ロータは、駆動磁束又は制御磁束に寄与する永久磁石が完全に省かれるため、特に簡素で経済的且つ安価な方法で製造することが可能である。このことは、特に、使い捨てロータの実施例にとって大きな利点であることも示す。構成によっては、ステータとロータの磁気有効コアとの間の領域内には、様々なジャケット、ギャップ及び壁、特にロータの磁気有効コアのジャケット、流体ギャップ又はステータを包囲する分離缶が収容されている。これらの要素を全て収容するために、ステータとロータの磁気有効コアとの間には、少なくとも3ミリ、好ましくは4~6ミリの間隔があることが好ましい。本発明に係る回転駆動装置のロータは永久磁石を有さず、よって起磁力には寄与できないため、ステータにおいて全起磁力を生成せざるを得ない。ステータとロータの磁気有効コアとの間における、例えば3ミリの間隔については、確実に磁気的な方法でロータの支持や駆動を行うためには、約5000アンペアの起磁力が必要となる。ステータの励起をこれまでのように巻線だけで、つまり電磁的に行う場合、適当な大きさを有するステータの大抵狭い施工スペースでは上記のような高起磁力を実現することは不可能である。そのため、本発明によれば、予磁化の磁束を生成する複数の永久磁石がステータに装着される。しかしながら、一定の磁束では、トルクを生成するための回転磁場も、ロータの能動的な磁気支持のための調節可能な磁束も生成することができないため、可変で調節可能な電磁束を生成する巻線が更にステータに装着される。
【0028】
現在の従来技術によれば、通常、希土類金属や、これら金属の化合物又は合金は、その磁気的特性に起因して、非常に強力な永久磁場が発生可能であるため、ロータの永久磁石として用いられる。これら希土類の既知のしばしば使用される例としては、ネオジムやサマリウムが挙げられる。しかしながら、そのような金属は、それらが比較的希少であり、採掘や処理も複雑であったり費用がかかったりすることに起因して、実質的な原価要素を示している。また、例えば、1回きりの使用後に上記永久磁石を廃棄することは、技術的な環境上の側面から見ても問題又は大変な労力となる場合も多く、それによって更に費用も嵩張ることとなる。従って、本発明によって希土類からなる、又はそれらを備えるこのような永久磁石材料をロータから省略できることは、経済面、費用面及び環境面から見ても、特に使い捨て用途においても有利となる。
【0029】
特に、ステータは、ロータを動作状態でステータに対して非接触に磁気支持可能とするベアリング駆動ステータとして構成することが好ましい。ベアリングレスモータの原理に従った本実施例により、ステータを1つだけ備えることで、ロータに対する駆動機能とベアリング機能の双方が実装可能となるため、特にコンパクトな実施例が可能となる。
【0030】
好適な実施例において、各コイルコアは、長手方向リムの第2端部に配置され、所望の回転軸線によって定められる軸線方向に直交する径方向に延在する横リムを備える。ロータの磁気有効コアに対向して配設された各端面は、これらの横リムによりコイルコアに形成可能である。これらの横リムの端面によって、ステータからロータへ、またその逆も同様に、磁束の伝導を好適に行うことが可能である。
【0031】
好適な構成としては、各コイルコアは、長手方向リムの第1端部から第2端部まで延在する永久磁気部と、それぞれ第1端部から第2端部まで延在する2つの永久磁石フリー部とを備え、その永久磁気部が上記2つの永久磁石フリー部の間に配置されている。本実施例により、永久磁石を通らないように電磁束経路を導くことが可能である。永久磁石、特に、希土類磁石のみならずフェライト磁石の多くは、ほんの僅かにゼロを上回る相対浸透率を有する。そのため、もし電磁束経路が永久磁石や磁石を通った場合、その磁束経路に位置付けられる永久磁石の程度によって電磁的効果を有する空隙が増大し、更には起磁力要求も増大することになる。従って、永久磁気的に励起された磁束と電磁的に励起された磁束とは、ステータとロータ間の磁気空隙においては互いに重なり合うが、永久磁石の領域においては別々に伝導されるように誘導可能である方が有利である。電磁的に励起された磁束は、可能であれば、ロータとステータ間の空隙の領域を除き、鉄やケイ素鉄等の軟磁性材料を通って伝導されることが好ましい。空隙の磁束は、ロータの径方向位置の調整と、トルクを生じさせる接線力成分の形成の両方が行えるように、ロータとステータ間の空隙の領域において永久磁気的に励起された磁束や電磁的に励起された磁束と重なり合うことで調節が可能である。
【0032】
更にまた、コイルコアの永久磁気部及び2つの永久磁石フリー部は、それぞれ横リムを通って延在し、永久磁気部は、横リムにおいて2つの永久磁石フリー部の間に配置される方が有利である。すなわち、ここでは、ステータの電磁的に励起された磁束が永久磁石を通って誘導されなくてもよいという点では、ステータの永久磁気的に励起された磁束と電磁的に励起された磁束とをそれぞれ別々に誘導することが特に容易に可能となる。
【0033】
好適な実施例によれば、コイルコアの永久磁気部の軸線方向断面における断面は、永久磁石フリー部の軸線方向断面における断面と略同じである。こうすることで、永久磁束が電磁的に励起された磁束とは略個別に簡単な方法でステータ内を誘導可能となるステータの設計を簡単且つ安価に行うことができる。
【0034】
更に好適な構成としては、永久磁気部がそれぞれ径方向及び軸線方向に垂直に極性を与えられ、隣接するコイルコアの永久磁石がそれぞれ反対方向に極性を与えられている。これにより、ロータの駆動や支持を特に単純且つ容易に調整することが可能となる。
【0035】
特に、ステータの渦電流損失を最小限に抑えるために、コイルコアの永久磁石フリー部が、それぞれロータの周囲方向に積層している要素から、束状積層形状に製造されることが好ましい。
【0036】
技術規則の理由により、ステータは、偶数個のコイルコア、好ましくは、6個、8個又は12個のコイルコアを有することが好ましい。
【0037】
好適な実施例によれば、ロータに対向するコイルコアの横リムの端面は、ロータの磁気有効コアの軸線方向高さより大きい、軸線方向の高さを有する。これにより、特に所望の回転軸線に対する傾斜に関して、受動的な磁気安定化の増大や改善が図られる。
【0038】
好適な実施例において、上記巻線は、ロータの電磁駆動磁場を発生させるための駆動コイルと、それとは別の、ロータに作用する径方向の横方向力を設定する制御コイルとを備える。このように、本実施例では、2つの個別の巻線システム、すなわち、ロータにトルクを生じさせ回転させる電磁回転磁場を発生させることができる駆動コイルと、ロータに作用する横方向力、つまり、径方向の力を設定可能な更なる回転磁場を発生させることができる制御コイルとが設けられている。なお、駆動コイルは制御コイルと同じコイルコアに設けることもできるし、駆動コイルだけ、もしくは制御コイルだけが設けられるコイルコアが設けられたり、又は、これらを組み合わせたりした構成が採用される。制御コイルのみ、駆動コイルのみ、もしくは、その両方が個々のコイルコアに設けられる。これは、当然ながら、ステータ内のコイルコアごとに異なっていてもよい。すなわち、ステータは、駆動コイルと制御コイルのいずれか一方のみを有するコイルコアと、駆動コイルと制御コイルの両方を有するコイルコアとを備えることができる。装置としての側面から見て、駆動コイルとそれとは別の制御コイルとを区別することにより、各個々のコイルを制御するのに個別のバイポーラパワーアンプを設ける必要がなくなるという利点がある。
【0039】
好適な実施例において、ロータの磁気有効コアは、ディスク状の形状又はリング状の形状を有する。また、ロータは、ロータの中心状態において径方向の全てのコイルコアから等しい間隔を有する径方向限界外面を有することが好ましい。これにより、ロータの周辺から見て、ロータとコイルコアとの所望の間隔が一定となるため、ロータ位置の制御と調整に必要なセンサシステムを簡素化することができる。
【0040】
ロータの実施例に関する好適な構成としては、ロータが磁束に対する磁束バリアを含んで構成される。これにより、ロータの磁気異方性が要望通り実用的に設定可能となり、各用途に対して簡素な方法で最適化することが可能となる。
【0041】
更に、本発明によれば、テンプルモータとして構成された電磁回転駆動装置ためのステータであって、ロータが動作状態においてステータにより所望の回転軸線を中心として非接触に磁気駆動可能であり、ステータが、所望の回転軸線に平行な方向に第1端部から第2端部まで延在する棒形状の長手方向リムをそれぞれ備える複数のコイルコアを有し、第1端部がいずれもリフラックスによって接続され、それぞれが長手方向リムの1つを包囲し、電磁回転磁場を発生させるための複数の巻線が設けられ、コイルコアは予磁化の永久磁束を生成可能な複数の永久磁石を備え、各コイルコアは長手方向リムの第1端部から第2端部まで延在する永久磁気部と、それぞれ第1端部から第2端部まで延在する2つの永久磁石フリー部とを備え、永久磁気部は2つの永久磁石フリー部の間に配置されているステータが提供される。
【0042】
ステータに永久磁石を備えたテンプルモータのステータの具体的な実施例によれば、ステータ内の磁束の大部分又は全磁束を生成可能である。なお、既に説明したように、ロータの非接触な磁気駆動やその非接触な磁気支持を行うため、ステータを非常にコンパクトな構成とすることで、電磁的に生成された磁束と共に十分に大きな起磁力も生成するように、永久磁石によりステータに一定の予磁化磁束が既に生成されていることが特に好ましい。2つの永久磁石フリー部間に配置される永久磁気部をそれぞれ有するコイルコアを備えたステータの具体的な実施例によれば、永久磁石を通らないように電磁束経路を導くことが可能となる。それにより、永久磁気的に励起された磁束と電磁的に励起された磁束とは、ステータとロータ間の磁気空隙においては互いに重なり合うが、ステータの永久磁石の領域においては別々に導かれるように誘導することが可能である。また、電磁的に励起された磁束は、可能であれば、ロータとステータ間の空隙の領域を除き、鉄やケイ素鉄等の軟磁性材料を通って伝導されることが好ましい。
【0043】
特に好適な実施例では、ステータは、ロータを動作状態でステータに対して非接触に磁気支持可能とするベアリング駆動ステータとして構成される。
【0044】
本発明に係るステータは、ロータが、コイルを含まず、且つ永久磁石を含まないで設計されたテンプルモータにも、ロータが永久磁石及び/又はコイルを備えたテンプルモータにも適している。
【0045】
更に、本発明により構成された電磁回転駆動装置やステータを備えた、流体を搬送、圧送、混合又は撹拌するための回転装置が提案されている。
【0046】
本発明に係る回転装置は、特に、1回きりの使用のための部品を備えるように構成されてもよい。この回転装置は、本実施例では、1回きりの使用のために構成された使い捨て装置と、複数回の使用のために構成された再利用可能装置を有することが好ましく、使い捨て装置は、1つ又は複数の流体に対して搬送、圧送、混合又は撹拌するための複数の羽根を有するロータを少なくとも備え、再利用可能装置は、ロータを受容する支持タンクと、動作状態におけるロータの非接触に磁気駆動且つ支持できるステータとを備え、ステータは、予磁化の永久磁束を生成するための永久磁石を少なくとも1つ備え、電磁束を生成するための巻線を少なくとも1つ備え、その予磁化の永久磁束及び電磁束が共にロータを駆動・支持する。
【0047】
本発明の更なる有利な構成や実施例は、従属クレームから派生する。
【0048】
以下に、本発明を、実施例及び図面を参照して更に詳細に説明する。図面中には以下のものが(一部断面で)図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】従来技術に係るテンプルモータの斜視図である。
【
図2】従来技術に係る他のテンプルモータの斜視図である。
【
図3】
図2のテンプルモータの軸線方向の断面である。
【
図4】本発明に係る電磁回転駆動装置の第1実施例の斜視図である。
【
図5】本発明に係る電磁回転駆動装置の第2実施例の斜視図である。
【
図7】本発明に係る電磁回転駆動装置の第3実施例の斜視図である。
【
図9】
図7の第3実施例を磁束線の範囲と共に示す平面図である。
【
図10】第3実施例の変形例を示す、
図7に類似の図である。
【
図11】第3実施例の更なる変形例を示す、
図7に類似の図である。
【
図12】本発明に係る電磁回転駆動装置の第4実施例の斜視図である。
【
図14】巻線の実施例の第1変形例を示す、
図7に類似の図である。
【
図16】巻線の実施例の第2変形例を示す、
図11に類似の図である。
【
図17】本発明に係る電磁回転駆動装置の第5実施例の斜視図である。
【
図18】本発明に係る電磁回転駆動装置の第6実施例の斜視図である。
【
図20】コイルコアの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図21】コイルコアの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図22】コイルコアの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図23】コイルコアの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図24】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図25】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図26】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図27】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図28】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図29】ロータの実施例の変形例の軸線方向の断面である。
【
図30】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図31】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図32】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図33】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図34】ロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図35】磁束バリアを有するロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図36】磁束バリアを有するロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図37】磁束バリアを有するロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図38】磁束バリアを有するロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図39】磁束バリアを有するロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図40】磁束バリアを有するロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図41】磁束バリアを有するロータの実施例の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図42】センサの配置の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図43】センサの配置の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図44】センサの配置の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図45】センサの配置の様々な変形例をそれぞれ示す斜視図である。
【
図46】
図45に示すセンサの配置の変形例の軸線方向の断面である。
【
図47】センサの配置の更なる変形例を示す、
図46に類似の断面図である。
【
図48】混合装置として構成された、本発明に係る回転装置の第1実施例の斜視図である。
【
図50】混合装置として構成された、本発明に係る回転装置の第2実施例の斜視図である。
【
図52】使い捨て装置と再利用可能装置とを備える、本発明に係る回転装置の第3実施例の軸線方向の断面である。
【
図53】使い捨て装置と再利用可能装置とを備える、本発明に係る回転装置の第4実施例の軸線方向の断面である。
【
図54】使い捨て装置と再利用可能装置とを備える、本発明に係る回転装置の第5実施例の軸線方向の断面である。
【
図55】ポンプ装置として構成された、本発明に係る回転装置の第6実施例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
既に述べたように、従来から知られている2つのテンプルモータを
図1~
図3に示す。
【0051】
図4は、全体として符号1で示される本発明に係る電磁回転駆動装置の第1実施例を示す斜視図である。回転駆動装置1は、テンプルモータとして構成され、ステータ2と、ステータ2内に非接触に磁気支持され、コイルや永久磁石を含まず構成されたロータ3とを備える。この第1実施例では、ロータ3は、リラクタンスロータとして構成され、4つの突出したロータ歯32を有する十字形状に形成された磁気有効コア31を備える。動作状態において、ロータ3は、ステータ2によって、所望の回転軸線を中心として非接触に磁気駆動可能である。この軸線は所望回転軸線と呼ばれ、それを中心として、ロータ3がステータ2に対して中心且つ傾斜していない位置にある動作状態で回転する。この所望回転軸線によって軸線方向Aが定められる。軸線方向Aを確定する所望回転軸線Aは、典型的には、ステータ2の中心軸線と一致する。
【0052】
本発明を理解する上で十分であるため、以下に示す電磁回転駆動装置1の実施例及び変形例では、ロータ3の各磁気有効コア31だけしか示されない。当然ながら、ロータ3は、好ましくはプラスチックから製造されるジャケットやカプセル等の部品や、流体を混合、撹拌又は圧送するための羽根等の部品や、その他の部品も更に備えることが可能であることが理解される。
【0053】
以下、軸線方向Aに直交する方向が径方向と称される。更に、ロータ3の磁気有効コア31の磁気中心面が磁気ロータ面Cと称される。この軸線方向Aに直交する面において、ロータ3又はロータ3の磁気有効コア31が、ロータ3が傾斜していない動作状態で支持される。原則として、この磁気ロータ面Cは、軸線方向Aに直交して配設されたロータ3の磁気有効コア31の幾何学的中心面である。この、ロータ3が動作状態で支持される面は、径方向面とも称される。この径方向面によって、z軸線が軸線方向Aに延在する直交座標系のx-y平面が定められる。従って、ロータ3が傾斜していない場合は、径方向面と磁気ロータ面Cとが一致する。
【0054】
テンプルモータとしての設計において特徴的な点は、ステータ2は、第1端部43から第2端部44まで軸線方向Aに延在する棒形状の長手方向リム41をそれぞれ備える複数の個別のコイルコア4を備え、
図4では下端として示されるこの第1端部43は全てリフラックス5によって互いに接続されるという点である。これに関して、リフラックス5は、コイルコア4の第1端部43を、隣接するコイルコア4の第1端部43にそれぞれ接続する複数のセグメント51を備える。また、
図4に示すように、個々のコイルコア4は、内部ロータとしての一実施例では円形状にロータ3を包囲するように配置されることが好ましく、この円上で等距離に配置される。動作中は、ロータ3がコイルコア4の第2端部44間に非接触に磁気支持される。
【0055】
コイルコア4の長手方向リム41は、互いに平行に並んでいて、いずれも軸線方向Aに平行に延在し、ロータ3を包囲する(又は、外部ロータとしての一実施例では、ロータ3に包囲される)。これらの平行な長手方向リム41は、寺院の柱を連想させるため、テンプルモータの名前の由来となる。
【0056】
また、ステータ2は、電磁回転磁場を発生させるための複数の巻線6を更に備える。この巻線6は、ここでは、それぞれが長手方向リム41の1つを包囲する個々のコイル61として構成される。これは、各コイル61の軸線がそれぞれ軸線方向Aと平行に延在することを意味する。
図4に示す第1実施例では、各長手方向リム41が1個のコイル61を厳密に支持する。
【0057】
従って、テンプルモータ1の更なる特徴としては、ステータ2のコイル61が、磁気ロータ面Cの外、図示では磁気ロータ面Cの下に配置される。コイル61は、磁気有効コア31の完全に下に配置されることが好ましい。これにより、ロータ3が動作状態で駆動及び支持される面内にはコイル61が配置されない。各コイル軸線が磁気ロータ面内、つまり、ロータの駆動や支持が行われる面内に存在するようにステータのコイルが配置される他の電磁回転駆動装置とは異なり、テンプルモータ1では、コイル61の軸線が磁気ロータ面C上に垂直に立つようにステータ2のコイル61が配置される。
【0058】
本発明の枠組み内で、テンプルモータとしての実施例又はテンプルモータ1は、軸線方向Aに平行に延在する長手方向リム41をそれぞれ備える複数のコイルコア4を有し、全てのコルコア4の第1端部43がリフラックス5を介して互いに接続され、個々のコイル61のコイル軸線が軸線方向Aに平行に並ぶようにステータ2の各巻線6、61が長手方向リム41の周りに配置されるような電磁回転駆動装置1として理解される。好適な実施例では、テンプルモータ1として構成された電磁回転駆動装置は、ベアリングレスモータの原理に従って構成される。従って、この場合のテンプルモータ1は、ベアリングレスモータの具体的な実施例である。
【0059】
ベアリングレスモータの原理に従うテンプルモータ1の実施例が好ましいものであったとしても、本発明はこの実施例に限定されない。当然ながら、ロータのベアリング機能がその他の方法、例えば、1つ又は複数の個別の磁気ベアリングユニットやその他のベアリング、特に機械ベアリングによって実装される実施例も可能である。
【0060】
ベアリングレスモータにおいて、ロータ3は、ステータ2に対して非接触に磁気駆動可能であり、非接触に磁気支持可能である。このために、ステータ2は、動作状態において所望回転軸線を中心としてロータ3を非接触に磁気駆動でき、すなわち回転でき、ステータ2に対して非接触に磁気支持できるベアリング駆動ステータとして設計される。
【0061】
一方で、ベアリングレスモータは当業者にはごく周知のものであるため、その機能についての詳細な説明は最早不要である。ベアリングレスモータという用語は、磁気ベアリングを別途設けずに、ロータ3を完全に磁気的に支持するということを意味する。このため、ステータ2は、ベアリング駆動ステータとして構成され、よって、電気駆動のステータと磁気支持のステータとの両方を兼ね備える。なお、ステータ2は、回転磁場を発生可能な巻線を備え、回転磁場は、一方では、ロータ3にその回転を生じさせるトルクを与え、他方では、ロータ3の径方向位置、つまり、径方向面における位置を能動的に制御・調整可能となるようにロータに要望通りに設定可能なせん断力を与える。これにより、少なくともロータ3の3自由度を能動的に調整することができる。ロータ3は、軸線方向Aの軸線偏向に対して、リラクタンス力によって少なくとも受動的に磁気安定化が行われる、すなわち、制御不能とされる。また、同様に、実施例によっては、所望回転軸線に直交する径方向面に対する残りの2自由度、つまり傾斜に対してロータ3の安定化を行うことができる。
【0062】
電磁駆動ベアリング装置は、従来から、例えば特許文献4でも知られており、駆動のステータと磁気ベアリングのステータとが接合して構造部を形成している。ここでのステータは、上側ベアリング面と下側ベアリング面からなるベアリング部と、これらのベアリング面の間に配置される駆動部とを備えている。よってこの装置からは、ベアリング部が駆動部とは分離することができ、磁気支持としてのみ機能するということも分かる。しかしながら、このような装置は、ここでは実際、駆動機能とは別にロータの支持を実装する個別のベアリング部が存在するため、本出願の意味におけるベアリングレスモータとして理解されるべきではない。本発明の意味におけるベアリングレスモータでは、ステータをベアリング部と駆動部とに分けることは不可能である。まさにこの特性こそがベアリングレスモータがそう名付けられる所以となる特性である。
【0063】
これまでの磁気ベアリングとは異なり、ベアリングレスモータによれば、電磁回転磁場を介してモータの磁気支持及び駆動が実現される。この電磁回転磁場は、一方では、その和によってロータ3への駆動トルクや要望通り設定可能な横方向力が生成され、ロータ3の径方向位置が調整可能である。これらの回転磁場は、別々に、つまり異なるコイルを用いて発生させることもできるし、もしくは必要な電流を計算して重畳し、単一コイルシステムを用いて生成することもできる。
【0064】
本発明に係る回転駆動装置1のロータ3は、コイルフリーに構成され、つまりロータ3に巻線が設けられない。このロータ3は、構成に応じてプラスチックジャケットにより包囲することができる磁気有効コア31を備える。ロータの実施例に関する実例については更に以下に説明する。
【0065】
本発明に係る回転駆動装置1では、ロータ3又はロータ3の磁気有効コア31は永久磁石を有さないため、永久磁石が含まれない。これにより、永久磁石の製造にしばしば用いられる、特にネオジムやサマリウム等の希土類や、これら金属の化合物又は合金をロータ3の製造に必要としないため、ロータ3の、例えば使い捨て部品としても、特に安価な実施例が可能となる。これらの永久磁石をロータから省略することは、環境面においても大きな利点を意味する。
【0066】
典型的に、硬質磁性体である、つまり保磁力が高い強磁性体やフェリ磁性体を永久磁石と称する。保磁力とは、物質を消磁するのに必要な磁場強度のことである。本出願において、永久磁石とは、保磁力、より正確には10,000A/mを超える磁気分極の保磁力を有する物質として理解される。
【0067】
従って、ロータ3に永久磁石が含まれない場合、ロータ3の磁気有効コア31には保磁力が最大でも10,000A/mの物質しか含まれないということを意味する。
【0068】
ロータ3には「永久磁石フリー(又は永久磁石が含まれない)」という指定は、本発明の枠組み内においては、ロータ3を回転駆動するための駆動磁場に実質的に寄与する永久磁石がロータ3には1つも含まれていないものとして理解されるべきである。当然ながら、例えば、ロータの角度位置検出としてのみ機能する、又はロータの駆動磁束の生成とは無関係の目的を達成するその他の磁石や永久磁石をロータ3に設けることは可能である。従って、「永久磁石フリー」という指定は、ロータ3の駆動のみに関する。
【0069】
そのため、ロータに対する「永久磁石フリー」という指定は、本発明の枠組み内においては、ロータ3にはロータの駆動に寄与する永久磁石が含まれない、又はロータ3にはロータ3の駆動のための駆動磁束に寄与する永久磁石が含まれないものとして理解されるべきである。
【0070】
ロータの磁気有効コア31は、軟磁性体、例えば鉄、ニッケル鉄又はケイ素鉄から製造されることが好ましい。なお、磁気有効コア31は、例えば軟磁性粉の鋳込み、スタンピング又はプレスを行った後、金属板等の部品の焼結、鍛造、成形又は組立を行うことにより製造される。
【0071】
ロータ3の磁気有効コア31がディスク形状又はリング形状を有する
図4に示す実施例では、ロータ3は、3自由度で、能動的に磁気的に、つまり制御可能に支持される。それらは、径方向面におけるロータ3の径方向位置の2自由度及び回転の自由度である。ロータは、他の3自由度に対するリラクタンス力を介して、完全に受動的な磁気安定化、つまり制御不能な安定化が行われる。それらは、径方向面と、ロータ3の軸線方向位置、つまり軸線方向Aに対する位置とに対するロータ3の傾斜の2自由度である。
図4に示す本発明に係る回転駆動装置1の第1実施例では、ロータ3がステータ2内に配置される内部ロータとして構成される。この第1実施例では、ステータ2は、軸線方向と平行に延在する棒形状の長手方向リム41をそれぞれ備える合計6個のコイルコア4を備える。この6個のコイルコア4は、ロータ3の周りに円の形状に配置され、この円の周囲に亘って等距離間隔で分配される。図示における下部にある棒形状の長手方向リム41の第1端部43は、リフラックス5によって互いに接続され、リフラックス5は、隣接する2つの第1端部43同士をそれぞれ接続する複数のセグメント51を備える。長手方向リム41は、軸線方向Aに直交する長方形の断面を有する。更に、ステータ2は、ロータ3をステータ2に対して非接触に磁気駆動可能にし、非接触に磁気支持可能にする電磁回転磁場を発生させるための複数の巻線6を備える。第1実施例では、合計6個の個々のコイル61が巻線6として設けられ、各コイル61は各長手方向リム41に設けられる。各コイル61は、コイル軸線がそれぞれ軸線方向Aと平行に、ひいては、磁気ロータ面Cと直交に配設されるように各長手方向リム41の周りに配置される。
【0072】
リフラックス5若しくはそのセグメント51並びにコイルコア4の長手方向リム41は、磁束を伝導する磁束伝導素子として機能するため、軟磁性体からそれぞれ作られる。好適な軟磁性体としては、例えば強磁性体やフェリ磁性体、すなわち特に鉄、ニッケル鉄又はケイ素鉄が挙げられる。なお、各長手方向リム41及びセグメント51が束になった積層状に構成された、つまり積み重ねられた複数の薄い要素からなる、金属板ステータパックとしての実施例が好ましい。長手方向リムの具体的な実施例については、
図20~
図23に関連して、以下に更に説明する。
【0073】
ロータ3は、リラクタンスロータとして構成され、ここでは、4つの突出したロータ歯32を有するディスク形状の十字形に構成され、コイルコア4の長手方向リム41の第2端部44、すなわち図示における上端部間に動作状態で支持される磁気有効コア31を備える。
【0074】
本発明によれば、コイルコア4は、所望回転軸線を中心としたロータ3の回転駆動が行われる磁気駆動磁束の生成に寄与する予磁化の永久磁性を生成する複数の永久磁石45を備える。
【0075】
このため、第1実施例では、合計6個の永久磁石45が設けられ、各永久磁石45は、各長手方向リム41の第2端部に設けられ、この永久磁石は、コイルコア4の長手方向リム41において、つまり長手方向リム41のロータ3に対向する側において、径方向内方にそれぞれ配設される。そのため、全体的に見て、各コイルコア4は、軸線方向Aの断面においてL字形状の断面を有し、各長手方向リム41がそのL字形の長いリムを形成し、永久磁石45がロータ3に配向されたL字形の短いリムを形成する。ここで、永久磁石45は、略直方体形状にそれぞれ構成されており、その径方向外方に配設された境界面はそれぞれ長手方向リム41の第2端部と一致する。
【0076】
図4に符号なしの矢印で示すように、各永久磁石45に対する磁化は径方向に行われる。なお、周囲方向に隣接する永久磁石45は、それぞれ反対方向に極性を与えられる。つまり、径方向において内方に向けて磁化が行われる永久磁石45は、径方向において外方に向けて磁化が行われる2つの永久磁石45を周囲方向に隣接する永久磁石として有する。
【0077】
動作状態において、電磁回転磁場は、ベアリングレスモータに関して知られている方法でコイル61によって発生し、これにより、ロータ3上の接線力を生成可能である。電磁回転磁場は、一方では、ロータ3を回転駆動させるトルクを生じさせ、他方では、径方向においてロータ3に要望通りに設定可能な横方向力を与えることができ、径方向面内でロータ3の位置を能動的に磁気調整可能にする。この点で、永久磁石45は予磁化の永久磁束を生成し、永久磁束と電磁束とが共にロータ3を駆動する。
【0078】
既に上述したように、予磁化の永久磁束の大きな利点としては、ロータ3の駆動や支持を行うための全磁束が電磁的な方法で生成されなくてもよいという点である。
【0079】
なお、テンプルモータ1において、長手方向リム41は、軸線方向に配向され、ロータ3の駆動や支持が行われる磁気ロータ面Cにおいて、磁束や、特にコイル61により生成される電磁束も誘導する磁束誘導要素として機能する。
【0080】
コイル61の制御に必要な電力電子機器及び対応する制御調整装置は当業者には十分知られているので、ここでは更に詳細な説明は不要である。ロータ3の径方向位置や角度位置を検出する位置センサシステムの実施例や配置は、
図42~
図47に関連して、以下に更に考察する。
【0081】
第1実施例は、変形例では外部ロータとしても構成でき、そこでは、ロータ3の、好ましくはリング形状の磁気コア31が長手方向リム41の第2端部44を包囲することが理解される。そして、永久磁石45は、ロータ3に対向するように、必然的に、長手方向リム41の第2端部44の径方向外方に配設された面に同じ方法で配置される。
【0082】
図5は、本発明に係る回転駆動装置1の第2実施例の斜視図を示す。また、
図6は、この第2実施例の軸線方向Aの断面を更に示す。以下、上述の第1実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、第1実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第2実施例にも適用されるものと理解される。
【0083】
第2実施例は、主に、ステータ2における永久磁石45の設計及び配置について第1実施例と異なる。第2実施例では、永久磁石としての各コイルコア4は、軸線方向Aにおいて各コイルコア4の長手方向リム41の第1端部43から長手方向リム41の第2端部まで延在する永久磁気部46を備える。また、各長手方向リム41は、それぞれ各長手方向リム41の第1端部43から第2端部44まで延在する2つの永久磁石フリー部47を備える。ここでは、永久磁気部46は、長手方向リム41の2つの永久磁石フリー部47間に配置される。そのため、ステータ2の周囲方向から見て、各コイルコア4の各長手方向リム41は棒形状の永久磁気部46を備え、これは同様に棒形状の2つの永久磁石フリー部47間に配置される。なお、軸線方向Aにおける永久磁気部46の長さは、それに軸線方向Aに隣接する2つの永久磁石フリー部47の長さと同じである。また、永久磁気部46は、2つの永久磁石フリー部47がそれらの間に配設された永久磁気部46によって互いに完全に分離されるように、それに隣接する永久磁石フリー部47と径方向において同じ大きさを有する。軸線方向Aに直交し、径方向面と平行又はロータ3の磁気中心面Cと平行な断面において、全てのコイルコア4が、2つの永久磁石フリー部47とその間に配置される永久磁気部46とによって形成された長方形の断面を有するように、2つの永久磁石フリー部47の断面と、永久磁気部46の断面とは、ステータ2の周囲方向に直交する軸線方向の断面において同一である。このため、各コイルコア4は、互いに平行に配置され、軸線方向Aにそれぞれ延在する3つの棒形状部品、すなわち2つの永久磁石フリー部47とその間に配置される永久磁気部46とを備える。
【0084】
以下に更に説明するように、このような配置は、特に電磁的に生成された磁束のみが、磁束伝導素子として機能する永久磁石フリー部47及びリフラックス5を介して、つまり軟磁性体のみを介してステータ2内にて誘導されることができるという利点を有する。これにより、ステータ2における電磁的に生成された磁束を、その電磁的に生成された磁束に対して非常に高い抵抗を示す永久磁気部46を介して誘導しなければならないといった事態を回避することができる。
【0085】
図5及び
図6において、永久磁気部46内の符号なしの矢印で示すように、各永久磁気部46の極性付与や磁化は、ステータ2の周囲方向に行われる。すなわち、永久磁気部46はいずれも、径方向に直交し、軸線方向Aに直交して配向される磁化を有する。なお、隣接するコイルコア4の永久磁気部46はそれぞれ逆方向に磁化が行われる。つまり、コイルコア4の各永久磁気口46は、それぞれ反対方向に磁化が行われる、周囲方向から見て隣接したコイルコア4の2つの永久磁気部46によって包囲される。
【0086】
第2実施例でも合計6個のコイルコア4が設けられ、円形状且つ等距離にロータ3を包囲する。なお、コイルコア4の6個という個数は例示として理解されるべきである。当然ながら、異なる個数のコイルコア4、例えば8個や12個や4個のコイルコア4を備えることも可能であり、技術規則の理由から、偶数個のコイルコア4が好ましい。6個、8個又は12個のコイルコア4が多くの用途で有利であることが証明されている。
【0087】
図7は、本発明に係る回転駆動装置1の好適な第3実施例の斜視図を示す。より良く理解するため、この第3実施例の軸線方向の断面を
図8に示す。以下、上述の実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第3実施例にも適用されるものと理解される。
【0088】
第3実施例では、各コイルコア4は、各長手方向リム41の第2端部44に配置され、軸線方向Aに直交し、ひいては各長手方向リム41に直交する径方向に延在する横リム42を備える。
図7及び
図8に示す電磁回転駆動装置1の内部ロータとしての実施例では、横リム42は径方向において内方へ、つまりロータ3の方へ延在する。回転駆動装置1の外部ロータ(例えば
図18参照)としての実施例では、横リム42はそれぞれ径方向において外方へ、つまり、この場合も同様にロータ3の方へ延在すると理解される。
【0089】
このように、各コイルコア4はL字形状の実施例を有し、長手方向リム41は軸線方向Aに延在するL字形の長いリムを形成し、径方向においてロータ3の方へ長手方向リム41に直交して延在する横リム42はそのL字形の短いリムを形成する。
【0090】
第2実施例で既に説明したように、各コイルコア4は、第3実施例において、永久磁気部46をその間に含む2つの永久磁石フリー部47も備える。なお、各永久磁石フリー部47及び各永久磁気部46は両方ともL字形状の構成を有し、永久磁気部46に隣接する2つの永久磁石フリー部の2つの境界面は、接触している永久磁気部46の境界面と一致するようにそれぞれ構成される。このように、各コイルコア4の2つの永久磁石フリー部47は、ここでも、それらの間に配設された永久磁気部46によって互いに完全に分離される。
【0091】
これは、各コイルコアの永久磁気部46と2つの永久磁石フリー部47はそれぞれ横リム42に沿っても延在し、永久磁気部46は横リム42においても2つの永久磁石フリー部47間に配置されることを意味する。
【0092】
従って、各横リム42は、ロータ3に対向する径方向内方に配設された(又は、外部ロータとしての実施例では径方向外方に配設された)端面421を有する。なお、径方向面と平行なこの端面421の中心線は、磁気ロータ面C、すなわち、ロータ3が動作状態で支持される平面に配設される。
【0093】
図7及び
図8において、永久磁気部46内の符号なしの矢印で示すように、各永久磁気部46の極性付与や磁化は、ステータ2の周囲方向に行われる。すなわち、第3実施例では、永久磁気部46はいずれも、径方向に直交し、軸線方向Aに直交して配向される磁化を有する。なお、隣接するコイルコア4の永久磁気部46はそれぞれ逆方向に磁化が行われる。つまり、コイルコア4の各永久磁気口46は、それぞれ反対方向に磁化が行われる、周囲方向から見て隣接したコイルコア4の2つの永久磁気部46によって包囲される。
【0094】
第3実施例に係る設計によれば、電磁束が永久磁気部46によって誘導される必要がなく、それと同時にステータ2の永久磁束と電磁束とをロータ3とステータ2との間の間隙で重畳させることができるという意味では、特に簡単な方法でそれら2つの磁束を別々に誘導することが可能となる。このことは、第3実施例の軸線方向からの平面図を示す
図9を参照して以下に説明する。
【0095】
図9では、永久磁気部46によって生成された永久磁束が、参照符号PMが付され、破線で示される力線により概略的に示される。いずれの場合も、永久磁束PMは、永久磁気部46から、隣接する永久磁石フリー部47の一方へと延在し、ロータ3の磁気コア31に向かって径方向に誘導され、コイルコア4とロータ3の磁気有効コア31との間の空隙を通過し、再び空隙へと誘導された後、隣接する永久磁石フリー部47の他方へと移動する。そして、永久磁束PMは径方向外方へと誘導され、再びまた永久磁気部46へと誘導された後、力線が終結する。
【0096】
図9では、巻線6又はコイル61によって生成された電磁束が、参照符号EMが付され、実線で示される力線により概略的に示される。個々のコイルコア4の長手方向リム41上に配置されたコイル61による電流印加によって生成された電磁束EMは、このコイルコア4の2つの軟磁性永久磁石フリー部47により径方向内方へロータ3の磁気有効コア31へ向かって誘導され、このコイルコア4とロータ3の磁気有効コア31との間の空隙を通過し、再び空隙へと誘導された後、個々のコイルコア4の永久磁石フリー部47に隣接して配置された、個々のコイルコア4の、隣接する2つのコイルコア4の2つの永久磁石フリー部47へと移動する。そして、これら2つの永久磁石フリー部47によって径方向外方へと誘導され、その後、リフラックス5へと軸線方向に誘導され、力線が終結する。
【0097】
このように、ステータ2を確実に軟磁性体、すなわちコイルコア4の永久磁石フリー部47及びリフラックス5のみで誘導し、コイルコア4の永久磁気部46が作られる硬磁性体では誘導しないようにすることができる。その結果、ロータ3の支持や駆動のために、電磁束EXのエネルギーの特に効率的な利用が有利な方法で図られる。
【0098】
図10及び
図11には、第3実施例の2つの変形例が、
図7に類似の斜視図によってそれぞれ示される。
図10に示す変形例では、ステータ2は、いずれも上述と同様の構成を有する合計8個のコイルコア4を備える。この場合も、厳密に1個のコイル61が各長手方向リム41に配置される。ロータ3の磁気有効コア31は、5つの突出したロータ歯32を有する、ディスク形状及びスタート形の形状を有する。
図11に示す変形例では、ステータ2は、いずれも上述と同様の構成を有する合計12個のコイルコア4を備える。この場合も、厳密に1個のコイル61が各長手方向リム41に配置される。ロータ3の磁気有効コア31は、中央に穴を有するリング形状であり、ここでは10個の突出したロータ歯32を有する星形の形状を有する。
【0099】
本発明に係る回転駆動装置1は、コイルコア4の数及びロータ歯32の数に関して更に数多くの様々な変形例で構成することも可能であり、技術規則の理由から、コイルコア4は偶数個であることが好ましいことが理解される。当業者が用途に応じてコイルコア4の設計個数を選択したり、それに応じたロータ3の磁気有効コア31の実施例、例えば、適切な個数のロータ歯32をそれぞれ選択したりすることは問題ない。
【0100】
図12は、本発明に係る回転駆動装置1の第4実施例の斜視図を示す。より良く理解するため、この第4実施例の軸線方向の断面を
図13に示す。以下、上述の実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第4実施例にも適用されるものと理解される。
【0101】
第4実施例では、ステータ2は、上記と同様、略L字形状を有する、すなわち軸線方向Aに延在する長手方向リム41とロータ3に向けられた横リム42とを有する合計6個のコイルコア4を備える。しかしながら、第4実施例では、各コイルコア4において、横リム42の軸線方向高さがロータ3に向かって見た径方向に増大するように、長手方向リム41から横リム42への径方向外方に配設される移行部に斜角面49が設けられる。
【0102】
その他、各コイルコア4は、2つの略L字形状の永久磁石フリー部47と、その間に配設された略L字形状の永久磁気部46とで構成され、永久磁気部46及び2つの永久磁石フリー部47の互いに当接する境界面が一致する。
【0103】
第4実施例では、ロータ3に対向する、各コイルコア4の横リム42の端面421は、軸線方向から見て、これらの端面421が、軸線方向Aに対して、対向するロータ3の外面上において上方及び下方に向かってそれぞれ突出するように、ロータ3の磁気有効コア31の軸線方向高さHRよりも大きい高さHSを有して設計される。このことは
図13を見れば特によく分かる。
【0104】
HSがHRより大きい本実施例は、とりわけ、軸線方向Aへの傾斜及び偏向に対してロータ3の受動的な磁気安定化を行うという点で非常に有利である。端面421はロータ3の磁気有効部31よりも軸線方向Aに大きいので、軸線方向Aに対する傾斜又は軸線方向Aにおける偏向に対して、ロータ3の受動的な磁気安定化が大幅に向上する。
【0105】
これまでのベアリングレスモータでは、つまりテンプルモータ1としての具体的な実施例においても、典型的に駆動磁場及び制御磁場と呼ばれる2つの回転磁場の重畳によって磁気駆動ベアリング機能が発揮される。ステータ2の巻線6又はコイル61によって生成されるこれらの2つの回転磁場は、原則として、互いに異なる極対番号を有する。なお、径方向面内で作用してトルクを発生させる駆動磁場はロータ3に接線力を発生させ、それにより、ロータ3が軸線方向Aを中心に回転する。また、望み通りの設定が可能であって、ロータ3の径方向位置を調整可能な駆動磁場と制御磁場との重畳によって、ロータ4には径方向面において横方向力も更に発生する。
【0106】
一方では、2つの異なる巻線システム、すなわち1つは駆動磁場を発生させるための巻線システムで、1つは制御磁場を発生させるための巻線システムである巻線システムにより駆動磁場や制御磁場を発生させることが可能である。そして、典型的に、駆動磁場を発生させるコイルは駆動コイルと呼ばれ、制御磁場を発生させるコイルは制御コイルと呼ばれる。また、これらのコイルに与えられる電流は駆動電流又は制御電流と呼ばれる。しかしながら、他方では、駆動コイルと制御コイルとの区別がない単一の巻線システムのみにより駆動支持機能を実現することも可能である。これは、制御装置により得られた駆動電流や制御電流の各値に対して演算による、つまり、例えばソフトウェアを用いた加算や重畳を行い、そこから得られた全電流を各コイルに与えることで実現可能である。この場合、当然ながら、制御コイルと駆動コイルとを区別することは不可能となる。ここまで説明してきた第4実施例では、最後に挙げられた変形例が実施されている。すなわち、駆動コイルと制御コイルとの区別はないが、演算によって得られた駆動電流と制御電流との合計がコイル61に与えられる巻線システムが1つだけ存在する。しかし、当然ながら、これらの第1~第4実施例、更なる実施例及び上述の全ての変形例を、2つの個別の巻線システム、すなわち個別の駆動コイルと個別の制御コイルとで構成することも可能である。巻線システムの設計に関する各変形例については、
図14~
図16を参照して以下に説明する。
【0107】
図14は、変形例を
図7に対応する図で示す。この変形例では、各駆動コイル62と各制御コイル63は、各コイルコア4の長手方向リム41上に配置される。より良く理解するため、この変形例の軸線方向Aに沿った断面を
図15に示す。各長手方向リム41上の駆動コイル62及び制御コイル63は、軸線方向Aに対して互いに隣接して同軸線上に配置される。図示によれば、制御コイル63は、各コイル4の長手方向リム41上の駆動コイル62の上方にそれぞれ配置される。なお、ここでは、駆動コイル62と制御コイル63との両方が、軸線方向Aに対してロータ3の磁気有効コア31の完全に下に配設されることも好ましい。
【0108】
図16は、変形例を
図11に対応する図で示す。この変形例では、各長手方向リム41上にはコイルが1つだけ、つまり駆動コイル62又は制御コイル63のいずれかが配置される。なお、ステータ2の周囲方向から見て、隣接するコイルコア上には制御コイル63と駆動コイル62とが常に交互に設けられることが好ましい。すなわち、駆動コイル62を1つだけ有する各コイルコア4には、それぞれ制御コイル63を1つだけ有する2つのコイルコア4が周囲方向に直接隣接し、またその逆も然りである。
【0109】
上述のように、これらの様々な巻線の概念、つまり個別の駆動コイル62及び制御コイル63を有する概念や、1種類のコイル61だけを有する概念は、本発明に係る回転駆動装置1の全ての実施例に適用可能である。
【0110】
コイル61又は駆動コイル62及び制御コイル63は、それ自体が周知の方法で制御を行い、テンプルモータ1を動作させるための電磁回転磁場を発生させる。このために、アンプユニットを備え、制御調整装置により制御される不図示の調整装置が存在する。アンプユニットの構成に関しては、複数の変形例がある。1種類のコイル61のみが使用される場合、つまり、個別の駆動コイル及び制御コイルが使用されない場合、各コイル61には個別のパワーアンプが設けられることが好ましく、このコイル61についてのコイル電流やコイル電圧は、その他のコイル61のコイル電流又はコイル電圧とは独立して調整可能である。
【0111】
以下、例示として、各コイル電流が変数として調整される場合について言及する。当然ながら、特に、より多くのコイル、例えば12個以上のコイルが設けられる場合、異なるコイル61を、同じ電気位相に属することで同じパワーアンプにより制御されるコイルのグループにまとめることも可能である。そしてグループのコイル61は、同じコイル電流が同じグループの各コイル内に与えられるように、互いに直列に接続される。
【0112】
従って、それ自体が電気位相を形成する厳密に1つの別個コイルとして各コイル61をそれぞれ設計することも、複数の別個コイルを同じ電気位相に属する1つのグループにまとめることも可能である。
【0113】
例えば、
図5に示すように、それぞれ個別の電気位相に属する6個のコイル61が設けられる場合、アンプユニットには合計6個のパワーアンプが設けられる。なお、好適な変形例によれば、各パワーアンプは、Hブリッジ回路として知られる方法でバイポーラパワーアンプとして設計される。「バイポーラパワーアンプ」という名前は、位相電流と位相電圧との両方がそれぞれプラス記号とマイナス記号とを取ることを意味する。
【0114】
コイル61やコイル61のグループにおいてコイル電流(又はコイル電圧)を個別に調整するためのアンプユニットのパワーアンプについての他の変形例としては、各パワーアンプがそれぞれ、アンプユニットのブリッジ分岐であることである。アンプユニットの各ブリッジ分岐は、各コイル61又は各電気位相のための個別のバイポーラパワーアンプとして設けられる。各コイル61や各コイルグループは、一方では、それに供給を行うバイポーラパワーアンプに接続される。そして、各コイル61やコイル61の各グループは、他方では、共通の中性点、つまり中心点電位に接続される。この中性点は、ロード可能な中性点として構成されることが好ましく、つまり6個のコイル電流とは異なる追加の電流が、中性点の上方を、又はその中へ流れることができるように、ロード可能な電位に接続される。これは、中性点におけるコイル電流の合計が常にゼロでなければならないといった通常の中性点の条件がこの回路では不要であることを意味する。その結果、この変形例では、各コイル電流を他のコイル電流とは完全に独立して調整することも可能である。
【0115】
また別の好適な変形例によれば、コイル61又はコイル61のグループは、従来のACコントローラにより供給され、ACコントローラは典型的に3つの電気位相を有する。このため、例えば
図7に示す実施例では、それぞれが3個のコイル61を供給する2つの独立したACコントローラを用いて6個の個別のコイルが供給される。なお、この2つのACコントローラは互いに分離しており、つまり特にそれらの中性点が互いに分離しているか、互いに独立している。当然ながら、コイル61のグループについても同じことが言える。
【0116】
また、個別の駆動コイル62と個別の制御コイル63とを有する実施例では、従来のACコントローラを用いて駆動コイル62及び制御コイル63に各位相電流を提供することも特に有利に可能となり、ACコントローラは、典型的に3つの電気位相を供給可能である。
【0117】
上述のように、本発明に係る電磁回転駆動装置1は、内方に配設されたステータ2と径方向外方でステータを包囲するロータ3とを有する外部ロータとしても構成することができる。
図17は、外部ロータとして構成された本発明に係る電磁回転駆動装置1の第5実施例の斜視図を示す。
【0118】
以下、上述の実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第5実施例にも適用されるもの理解される。
【0119】
第5実施例は、ステータ2の構成という点では、
図5に示す実施例に対応する。ロータ3は、ここでは、外部ロータとして配置される。すなわち、径方向の外方に配設されたコイルコア4の長手方向リム41の第2端部44を包囲するように配置される。このため、磁気コア31は、複数の、ここでは8つの突出するロータ歯32を有するリング形状を有し、そのロータ歯はそれぞれ径方向の内方へ延在する、つまりコイルコア4の長手方向リム41の第2端部44に対向する。
【0120】
図18は、外部ロータとして同様に構成され、それ以外は
図7に示す実施例に対応する、本発明に係る回転駆動装置の第6実施例の斜視図を示す。より良く理解するため、この第6実施例の軸線方向の断面を
図19に示す。
【0121】
以下、上述の実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第6実施例にも適用されるものと理解される。
【0122】
第6実施例のステータ2の構成の大部分は、
図7に関連して説明した構成に対応する。各コイルコア4は、ここでも、2つのL字形状の永久磁石フリー部47と、その間に配置された1つのL字形状の永久磁気部46とを備える。しかしながら、外部ロータであるため、横リム42は、ここでは、径方向外方に、つまりロータ3側に向かって並べられる。ロータ3は、リング形状を有し、複数の、ここでは8つの突出するロータ歯32を有する磁気コア31を有し、そのロータ歯はそれぞれ径方向に対して内方へ延在する、つまりコイルコア4の横リム42に対向する。
【0123】
以下、長手方向リム41を有するコイルコア4の好適な構成に関する様々な変形例を
図20~
図23を参照して説明する。この構成では、各コイルコア4が、2つの永久磁石フリー部47とその間に配置された永久磁気部46とを有する。これらの説明は、横リム42を1つも有さないコイルコア4(例えば
図5参照)にも、長手方向リム41と横リム42との両方を有し、永久磁石フリー部47及び永久磁気部46がそれぞれL字形状を有するコイルコア4にも略同様に適用される。
【0124】
上述のように、コイルコア4の永久磁石フリー部47は、容易に磁束を伝導する軟磁性体から作られる。好適な軟磁性体は、鉄、ニッケル鉄又はケイ素鉄を備える。
【0125】
各コイルコア4の永久磁石フリー部47は、束になった積層状に構成されることが好ましい。これは、コイルコア4の構成の変形例の斜視図をそれぞれ示す
図20~
図23を見れば分かる。束になった積層状の構成では、各永久磁石フリーのステータ部47が、互いに平行に積み重ねられた複数の薄い要素48から作り上げられる。これらの要素48は全て同一の構成を有し、すなわち、ここでは、L字形状を有し、同じ厚さを有する。
図20~
図23から分かるように、永久磁石フリー部47を形成する要素48は、ロータ3又はステータ2の周囲方向に積み重なる。そのため、複数の対応する平行な要素48によって永久磁石フリー部47が形成される。個々の要素48が共にとどまるように、プラスチックで接着接合又は成形を行うこともできる。この成形は、当然ながら、全コイルコア4を備えることができる。このような束になった積層状の構成により、永久磁石フリー部47の渦電流が効果的に抑制又は軽減される。
【0126】
図20に示す変形例では、2つの永久磁石フリー部47間に配置されたL字形状の永久磁気部46は、単一の部材である。符号なしの矢印によってその磁化が示される。
【0127】
図21に係る変形例では、永久磁気部46は、1つは軸線方向Aに長く、もう1つは径方向に長い2つの棒形状のセグメント461から構成される。
【0128】
図22に係る変形例では、永久磁気部46は、2つは軸線方向Aに長く、残りの1つは径方向に長い3つの棒形状又は直方体形状のセグメント461から構成される。
【0129】
図23は、L字形状のコイルコア4の構成に関して、多くの用途で有利な方法を示す。この変形例では、ロータ3に対向する、横リム41の端面421が屈曲し、実際には、ロータ3の径方向外側の曲率に沿うように屈曲する。端面421の曲率がロータ3に適応する場合、例えばディスク形状のロータ3では、コイルコア4とロータ3との間の空隙が、端面421全体から見て、径方向に一定の大きさを有する。この空隙では、空間的に非常に均一な磁束が実現できる。このような構成は、例えば、個々の要素が径方向に対して連続して互いに僅かにずれて、端面421の曲率を達成することで実現可能である。
図23では、コイルコア4を径方向内方に配設するように界する内円が、参照記号S1が付された円で示される。永久磁石フリー部47の個々の要素48は、各端面421を形成する端部が内円S1の輪郭に沿うように、それぞれ互いに径方向にずれて配置される。
【0130】
端面421は、
図23に示すような内部ロータとしての構成では、周囲方向に凹状に曲げられ、一方、外部ロータとしての構成では、凸状に曲げられることが理解される。
【0131】
以下、ロータ3の構成に関する、より正確には、ロータ3の磁気有効コア31の構成に関する更なる様々な実施例について、内部ロータとしての構成を参照しながら説明する。ロータ3は、リラクタンスロータとして、コイルフリーであって、永久磁石を含まない。ロータ3の磁気有効コア31又はその全ての部分は、軟磁性体、例えば、鉄、ニッケル鉄又はケイ素鉄から作られることが好ましい。なお、磁気有効コア31は、例えば、軟磁性粉の鋳込み、スタンピング又はプレスを行った後、金属板等の部品の焼結、鍛造、成形又は組立を行うことにより製造することができる。このように、ロータ3は、コイルコア4に関して説明したのと同様の方法で、特に束になった積層状に、つまり、互いに平行に積み重ねられた、例えばプラスチックジャケットやプラスチックの鋳型で固定された複数の薄い要素から構成することも可能である。コイルコア4とは異なり、ロータ3の磁気有効コア31の束になった積層形状の構成では、個々の要素が軸線方向Aに積み重ねられることが好ましい。当然ながら、個々の要素は、隣接する要素間で境界面が軸線方向Aと平行に延在するように、束になった積層形状の構成で径方向に積み重ねることもできる。
【0132】
まず、ロータ3の磁気有効コア31の構成に関する幾つかの変形例と方法について説明する。ここでは、ロータ3の磁気有効コア31の幾何学的構成によって、つまり、例えば突出したロータ歯32によってリラクタンスロータに必要なロータ磁化の異方性が実現される。ロータ歯32のそれぞれの個数は例示的なものとして理解されるべきである。当業者であれば、用途に応じて、特にステータ2の構成に応じて、とりわけコイルコア4の個数に応じて、問題なくロータ歯の最適な個数を判定することができる。当然ながら、個々の変形例に関連して説明した方法を互いに、又はロータ3の上記構成と組み合わせることも可能である。
【0133】
以下に説明するロータ3の磁気有効コア31の構成に関する変形例では、磁気有効コア31は、常に、軸線方向Aに対してディスク形状又はリング形状を有し、磁気コア31(
図13参照)の軸線方向高さHRは、対向するコイルコア4の端面421の軸線方向Aにおける高さHSとせいぜい同じであることが好ましい。
【0134】
図24に示される斜視図では、ロータ3の磁気有効コア31は略十字形状を有し、4つの突出したリング歯32を有する。なお、各ロータ歯32は、径方向にステータ2に向かって先細りする台形である。各ロータ歯32の径方向外方に配設された境界面33は、ここでは凸状にそれぞれ湾曲する。
図23に示すようなコイルコア4の端面421の湾曲構造に伴い、ロータ歯32の径方向外方に配設された境界面33と端面421との間の空隙は、周囲方向から見て一定の径方向の大きさを有する。これは、この空隙において磁束を非常に均一に分布させるのに有利となる。
【0135】
図25の斜視図に示す磁気コア31の変形例は、
図24に示すものに略対応するが、
図25に係る変形例では、各ロータ歯23の径方向内方に配設された境界面33は平面的な構造を有し、つまり湾曲されない。この構成は、特にコイルコア4の端面421も平面的である、つまり湾曲されない場合に好ましい。
【0136】
図26の斜視図に示す磁気コア31の変形例は、
図25に示すものと多く対応する。しかしながら、
図26に係る変形例の磁気コア31は、径方向外方に配設された閉鎖リング34、例えば鉄ブリッジを更に備え、このリング34は、磁気有効コア31の全周囲に亘って延在し、径方向に界する。このように、リング34は、磁気有効コア31の径方向外方境界面を形成する。径方向外方に配設されたリング34の構成は、特に、ロータ3の径方向位置やその回転位置を決定するセンサシステムにおいて有利である。すなわち、径方向外方に配設されたリング34によって、ロータ3の磁気有効コア31とステータ3との所望の間隔が磁気コア31の全周囲から見て一定の値になることを確実にできる。なお、この所望の間隔とは、ロータ3が径方向面において中心且つ傾斜していない位置にある場合のロータ3とステータ2との径方向の間隔である。ロータ3の周囲方向に亘る、つまりリング34に沿った所望の間隔が均一であることにより、特に、動作状態のロータ3の径方向位置をより簡単に度量衡学的に検出することができる。これは、磁気コア31の所望の間隔が等しい大きさであり、その時点でのロータ3の角度位置とは関係なく全てのコイルコア4に対して一定であるためである。
【0137】
図27は、ロータ3の磁気有効コア31が略リング形状を有し、突出したロータ歯32を有する変形例の斜視図を示す。従って、磁気有効コア31は、その中心に円形の穴35を有する。磁気コア31をリング形状に、つまり穴35を有した設計とすることにより、ディスク形状の構成、つまり穴35を有さない構成と比較して、磁気有効コア31の質量を軽減することが可能となる。また、ロータ3全体の重量を軽減した構成も可能となり、幾つかの用途で有利となる。また、軟磁性体が節約できることで、ロータ3の製造における材料費が軽減される。一方、磁気有効ロータ31は、複数の、ここでは10個の突出したロータ歯32を有する。なお、このロータ歯32は、径方向外方に配設された端部が丸められ、隣接する2つのロータ歯32間の移行領域も丸められる。これらの丸い部分は、全体的に磁気有効コア31の周囲方向から見て正弦関数等の調和的な関数に少なくとも大体沿うように設計可能である。
【0138】
図28は変形例の斜視図を示す。この変形例では、ロータ3の磁気有効コア31が2つの円形カバーディスク、すなわち下部カバーディスク37と上部カバーディスク36とを備え、両ディスクが磁気有効コア31を軸線方向Aの上方及び下方に界する。また、磁気有効コア31を径方向に界する径方向外方に配設されたリング34が設けられる。
【0139】
図28に係る構成の磁気有効コア31は、例えば、
図26の実施例に、上部カバーディスク36と下部カバーディスク37とを更に設けることで製造できる。これら2つのカバーディスク36,37は、鉄等の軟磁性体から構成されることが好ましい。この径方向外方に配設されたリング34及び2つのカバーディスク36,37を用いたカプセル化により、磁気有効コア31に、全体として、円形状ディスク又は高さHRを有する円筒の外形、ひいては特に対称な外形が提供される。これは、径方向位置や角度位置を検出するためのセンサシステムにおいて有利となる場合が多い。このことは、リング34について
図26に関連して既に説明した。また、上記カバー板36,37によって、軸線方向Aから見て可能な限り均一且つ対称な外形が磁気有効コア31に提供される。これは、センサシステムが、軸線方向Aに対して磁気ロータ面Cの外側に、例えば磁気有効コア31の上方又は下方に配置された位置センサを備える場合に特に有利である。このようなセンサにより、例えば、ロータ3の磁気有効コア31とコイルコア4との間の空隙の外側で生成される磁界を意味する、ロータ3の磁気有効コア31の軸線方向における漂遊磁界を計測することができる。
【0140】
また、磁気有効コア31のディスク形状の外部設計は、磁気コア31が特に簡単な方法でその他の部品、例えばプラスチックジャケット、羽根又は混合素子等と接合してロータ3を形成できるという利点を有する。
【0141】
リング34及び2つのカバーディスク36,37を用いたカプセル化は、ロータの磁気有効コア31のその他全ての実施例においても更なる方法として利用可能なことが理解される。
図29は、例として、
図27の変形例の磁気有効コア31の軸線方向Aの断面を示す。この例では、径方向外方に配設されたリング34と2つのカバーディスク36,37とが更に設けられる。
【0142】
図30は、ロータ3の磁気有効コア31を
図24に係る変形例と同様に設計した変形例の斜視図を示す。一方、この
図30に係る例では、磁気有効コア31は6つの突出したロータ歯32を有する。
【0143】
図31は、ロータ3の磁気有効コア31を
図25に係る変形例と同様に設計した変形例の斜視図を示す。一方、この
図31に係る例では、磁気有効コア31は7つの突出したロータ歯32を有する。
【0144】
図32は、ロータ3の磁気有効コア31を
図31に係る変形例と同様に設計した変形例の斜視図を示す。一方、この
図32に係る例では、磁気有効コア31は8つの突出したロータ歯32を有し、略リング形状に構成されるように、円形の穴35が磁気有効コア31の中心に更に設けられる。
【0145】
図33は、ロータ3の磁気有効コア31を
図32に係る変形例と同様に設計した変形例の斜視図を示す。一方、この
図33に係る例では、磁気有効コア31は10個の突出したロータ歯32を有し、穴35の直径はより径方向に大きい。
【0146】
図34は、ロータ3の磁気有効コア31を
図33に係る変形例と同様に設計した変形例の斜視図を示す。一方、この
図34に係る例では、磁気有効コア31は
図26に関連して説明した径方向外方に配設されたリング34を更に有する。
【0147】
ロータ3の磁気有効コア31の設計に関しては、例えば対応する上記変形例を組み合わせたり、ロータ歯32の個数やそれらの幾何学的形状を変更したりすることで、その他多くの変形例が可能であることが理解される。例えば、当業者には、より多くのロータ歯32を備えること、又はそれらの形状を変化させることで、コギングを大幅に軽減できることが知られている。
【0148】
ロータ3の磁気有効コア31の設計に関する他の可能性において、それ自体が周知の方法で磁束バリアを設けた磁気有効コア31を備えることもできる。なお、磁気有効コア31は、その外部幾何学的形状に対してディスク形状又はリング形状に、例えば軸線方向の高さHRを有する円筒状のディスク(ディスク形状)、又は中心穴35を有するディスク(リング形状)として設計される。本実施例では、磁束バリアを磁気有効コア31内に追加することで、ロータ3の磁気有効コア31の磁気異方性が達成される。磁束バリアとは、磁気有効コア31の強磁性構造やフェリ磁性構造における凹部、例えば、スリット又はバリア面であり、空気又は他の非軟磁性体、特にプラスチックを充填可能である。軟磁性体を磁気導体と見なすことができる一方で、磁束は、非軟磁性体、つまり、例えば空気又はプラスチックから非常に高い磁気抵抗を受けるため、これらの磁束バリアの配置や構成を適切に行うことにより、磁気有効コア31に対して所望の磁気異方性を与えることができる。特に、このような磁束バリアを用いた駆動及び磁気支持の両方の要求に対して、磁束の誘導を最適化することができる。また、特に、突出したロータ歯31については、このような磁束バリアを用いた対応する配置により想定することもできる。すなわち、磁気有効コア31は、ロータ歯32を幾何学的に形成することで実現されるのと略同様の磁気異方性を有することになる。
【0149】
このように、例えば、
図5に示す十字形の磁気有効コア31に対してコギングを大幅に軽減することができる。原則として、磁気駆動に関して、傾斜及びロータの軸線方向位置の受動的な磁気安定化と、径方向面におけるロータ3の能動的な磁気安定化との両方が最適化された磁束バリアを用いて、所望の極番号のロータ3を実装することができる。
【0150】
次に、磁束バリアを用いてロータ3の磁気有効コア31を構成する方法に関する様々な変形例については、
図35~
図41を参照して例により説明する。
【0151】
図35は、4つの極対の磁気効果を磁気有効コア31に与える複数の磁束バリア38を有するロータ3の磁気有効コア31の斜視図を示す。磁束バリア38の合計4つのグループ39が設けられている。隣接するグループ39は、対ごとに直径方向に向かい合うように、周囲方向に対してそれぞれ互いに90°にオフセットして配置される。各グループ39は、四分円状の同心ギャップとして設計され、それぞれ軸線方向Aに磁気有効コア31を完全に通って延在する複数の磁束バリア38を備える。これらの四分円状のギャップのそれぞれは、磁気有効コア31の径方向外方に配設された境界面34’’にその始まりと終わりがある。なお、径方向外方に配設された境界面34’’は、ギャップが貫通しない隣接面である。こうして、リング34に関して
図26に関連して説明したのと同様の利点がセンサシステムについても得られる。この磁束バリア38を形成するギャップは、空隙として構成するか、磁気的に伝導しにくい物質、特にプラスチックを充填することができる。
【0152】
図36は、ロータ3の磁気有効コア31を
図35に係る変形例と同様に設計した変形例の斜視図を示す。一方、この
図36に係る例では、磁気有効コア31は、略リング形状に形成された中心穴35を更に有する。
【0153】
図37は、ロータ3の磁気有効コア31を
図36に係る変形例と同様に構成した変形例の斜視図を示す。一方、この
図37に係る例では、磁束バリア38の個々のギャップは四分円状ではなく、略台形を有する。各ギャップは、それぞれ境界面34’’から径方向内方へ互いに直交して延在する2つの部分を備える。これら2つの部分の径方向内方に配設された端部は、略台形の構成となるように互いに接続される。
【0154】
図38は、ロータ3の磁気有効コア31を
図37に係る変形例と同様に構成した変形例の斜視図を示す。一方、この
図38に係る例では、磁束バリア38の個々のギャップは略三角形である。各ギャップは、それぞれ境界面34’’から内方へ延在する2つの部分を備える。しかしながら、これら2つの部分はここでは径方向に延在せず、それらの径方向内方に配設された端部が接触又は略接触するように互いに向かって延在する。
【0155】
図39は、ロータ3の磁気有効コア31を
図37に係る変形例と同様に構成した変形例の斜視図を示す。ここでも磁束バリア38の個々のギャップは略台形であり、各ギャップは、それぞれ境界面34’’から径方向内方へ延在する2つの部分を備える。一方で、この
図39に係る変形例では、これら2つの部分の径方向内方に配設された端部同士の接続が連続せず、ウェブによって断続される。
【0156】
図40は、ロータ3の磁気有効コア31を
図39に係る変形例と同様に構成した変形例の斜視図を示す。一方、この
図40に係る例では、10個の極対の磁気効果を磁気有効コア31に与える磁束バリア38の合計10個のグループ39が設けられる。また、中央穴35の直径はより径方向に大きくなるよう構成される。
【0157】
図41は、ロータ3の磁気有効コア31が外部ロータ用に構成された変形例の斜視図を示す。磁束バリア38の構成は、
図40に係る変形例と略同様に設計されている。一方、
図41の配置については、外部ロータ用の設計がされている。つまり、磁気有効コア31の径方向内方に配設された境界面341の2つの部分は、ここでは、磁束バリア38の略台形のギャップにおいて径方向に見て外方へ延在する。
図41に係る外部ロータとしての変形例においても、磁気有効コア31には10個の極対の磁気効果が与えられる。
【0158】
磁束バリア38を有する磁気有効コアの製造方法としては周知のものが数多く知られている。そのため、例えばスタンピングやカッティング又はその他の切削法により、ディスク形状又はリング形状のベース体に磁束バリア38を形成することも可能である。磁気有効コア31の束に積層された実施例では、個々の要素には、例えば、要素の積層後に所望の磁束バリア38の配置や構成が得られるように、積層前にカッティング又はスタンピングにより、対応する凹部又はギャップを設けることができる。
【0159】
以下、位置センサシステムの実施例及び位置センサの構成について説明する。ここでは、模範例として
図7に係るステータ2の構成及び
図7に係るロータ3の構成を参照する。また、以下の説明は、ステータ2及びロータ3の構成に限定されるものではなく、ステータ2、ロータ3及びその他全ての構成並びにそれらの組み合わせにも略同様に適用されることが理解される。
【0160】
ベアリングレスモータの調整、制御及びひいてはテンプルモータ1としての具体的な構成についても、径方向ロータ位置及び回転角度の算出又は度量衡学的な判定が必要となる。なお、径方向ロータ位置は、ロータ3の径方向面における径方向位置を意味する。径方向面とは、ロータ3が動作状態で磁気支持される面である。そのため、ロータ3が傾斜していない場合、径方向面は、磁気ロータ面Cと一致する。ロータ3の回転角度は、ロータ3が軸線方向Aを中心に回転する際の、ステータ2に対する相対角度位置を示す。この回転角度は、例えば所望の向きのx軸線及びそれに直交するy軸線が固定されたx-y平面、つまり径方向面において計測される。これらの軸線はステータ2に対して固定位置にある。ロータ3の回転の瞬間角度は、x軸線に対して(又は、当然ながら、y軸線に対しても同様に)瞬間角度として定めることができる。
【0161】
図42は、
図27に係る変形例のロータ3の磁気有効コア31と共に
図7に係るステータの斜視図を示す。
【0162】
更に、
図42には合計6つの位置センサ7が示され、これらのセンサによって径方向ロータ位置、すなわち径方向面又はx-y平面におけるロータ位置を決定することができる。位置センサ7は、磁場センサであり、ホールセンサ又はGMRセンサとして構成されることが好ましい。これらの位置センサは、不図示の信号線を介して、不図示の制御調整装置と信号通信を行う。
【0163】
径方向面におけるロータ3の位置を決定するために合計4つの位置センサ7を設けることは慣習的且つ既知の方法である。なお、位置センサ7は、対ごとに直径方向に向かい合うように配設される。原則として、x-y平面におけるロータ3の位置を決定するのに位置センサ7は2つ、すなわち、1つの座標方向につき1つあれば十分である。一方、上述のように、対ごとに対向して配設された位置センサ7の差異信号から更に正確にロータ3の位置を決定できるようにするためには、4つの位置センサ7を設けることが好ましい。また、更にロータ3の回転角度も決定する必要があるため、更なる位置センサ7が必要となる。
図42に示すロータ3又は磁気有効コア31では、ロータ位置及び回転角度の両方の決定に少なくとも合計5つの位置センサ7が一般的に必要である。磁気有効コア31が、
図26に関連して説明したような径方向外方に配設されたリング34を有する場合、必要な位置センサ7の数は4つに削減される。
【0164】
図42に示す構成では、対ごとに直径方向に向かい合う合計6つの位置センサ7が設けられる。これらの位置センサ7は全て、ロータ3が支持される径方向面、つまりロータ3が傾斜されていない状態における磁気中心面Cに配置される。そして、位置センサ7は、周囲方向に等距離間隔で分配される。各位置センサ7は、隣接する2つのコイルコア4の横リム42の間にそれぞれ配置される。
【0165】
このようにセンサ信号を用いて位置センサ7を配置することにより、径方向ロータ位置及びロータ3の回転角度の両方を決定することができる。位置センサ7はそれぞれ、例えば渦電流センサ、光学センサ、容量センサ又はホールセンサやGMRセンサ等の磁場センサでありうる。
【0166】
また、磁場又は漂遊磁場が位置センサ7の部位において十分に正確な計測を行うには不十分である場合に、小さい永久磁石(不図示)をセンサの後方に配置することが磁場に関しては有利な方法となりうる。
【0167】
図43は、位置センサ7の配置の更なる変形例を示す斜視図である。
図42に示す変形例に加えて、複数(ここでは4つ)の位置センサ7が、
図43に係る変形例における傾斜していないロータの磁気ロータ面Cと一致する径方向面において、ロータ3のリング形状の磁気有効コア31に対して径方向内方に配置される。磁気コア31に対して径方向内方に配設された4つの位置センサ7は、対ごとに直径方向に向かい合って配置されることも好ましく、周囲方向に亘って等距離間隔で分配される。この方法によりロータの径方向ロータ位置及び回転角度の両方を確実に決定するためには、磁気有効コア31に対して、少なくとも、2つの位置センサ7を径方向内方に配設し、そして2つの位置センサ7を径方向外方に配設しなければならない。
【0168】
図44は、位置センサ7の配置の更なる変形例を示す斜視図である。
図42に示す変形例に加えて、この
図44の変形例では更に複数(ここでは6つ)の位置センサ7が設けられる。それらの位置センサ7は、対ごとに直径方向に互いに向かい合って配置されることが好ましく、周囲方向に亘って等距離間隔で分配され、径方向面ひいては磁気ロータ面Cの外側、つまり図示での下側に全て配置される。これらの更なる位置センサ7のそれぞれは、径方向面に配置された位置センサ7のうちの1つと同じ箇所での径方向の配置に対して、つまり軸線方向Aに対して下側なだけで同じ径方向位置に配置される。この配置にすることで、磁気有効コアの位置を更に軸線方向に対しても決定することができるという利点がある。磁気有効コア31の軸線方向Aに対する傾斜も検出可能である。
【0169】
図45は、位置センサ7の配置の更なる変形例を示す斜視図である。より良く理解するため、
図45に示す変形例の軸線方向の断面を
図46に示す。この変形例では、合計12個の位置センサ7が設けられ、全て径方向面の外側に配置される。厳密に2つの位置センサ7が各コイルコア4に設けられ、軸線方向Aに対して、各コイルコア4の横リム42の上下に、実際には各位置センサ7が横リム42の永久磁気部46の上又は下に位置付けられるように配置される。各位置センサは、ホールセンサ又は磁場センサとして構成されるのが好ましい。構成によっては、位置センサ7の部位における漂遊磁場が回転角度の又はロータ3の径方向位置の各現在値を決定するには不十分である場合がある。このように漂遊磁場が不十分な場合は、位置センサ7のそれぞれに、例えば各位置センサ7に接着接合された小さい永久磁石(不図示)を備えることが可能である。
【0170】
このように位置センサ7を横リム42の上下に配置することは、施工面においても特に有利である。このため、6つの位置センサをそれぞれプリント基板(PCB)上に集積し、そのプリント基板の1つを横リム42上に、そしてまた他のプリント基板を横リム42の下に配置することができる。
【0171】
図47は、位置センサ7の配置の更なる変形例を示す軸線方向Aの断面である。この配置では、合計8つの位置センサ7の内、
図47の断面図において完全に認識できるものは2つだけで、4つは断面、つまりその半分が図示されている。それぞれが2つの位置センサ7を有する4つのグループ71が設けられるように、センサ7をそれぞれ2つずつ組み合わせてグループ71を形成する。全ての位置センサ7は、長手方向リム41に包囲されたスペースにおいて、径方向面の外側に、すなわち軸線方向Aにおける磁気有効コア31の下に配置される。4つのグループ71は、対ごとに直径方向に向かい合って配置され、周囲方向に沿って等距離間隔で分配される。つまり、2つの隣接するグループ71がそれぞれ周囲方向に対して90°でオフセットされる。各グループ71は、軸線方向Aに対して両方とも同じ高さに配置された2つの位置センサ7を備え、その内の一方の位置センサ7は、このグループ71の他方の位置センサ7よりも更に径方向内方に配設される。
【0172】
上記ステータ2の実施例や変形例は、一般的に、その他の種類のロータにも、つまりコイルを有するロータや、磁気駆動磁束の生成に寄与する永久磁石を少なくとも1つ有するロータにも適している。更に、本発明によれば、テンプルモータとして構成された電磁回転駆動装置のステータも提案されている。このステータ2は、必ずしもではないが、ロータを所望の回転軸線を中心として非接触に磁気駆動可能であり、動作状態においてステータ2に対して非接触に磁気支持可能なベアリング駆動ステータとして構成されることが好ましく、ステータは上記のように構成される。ステータ2(例えば
図7参照)は、所望の回転軸線に平行な方向に第1端部43から第2端部44まで延在する棒形状の長手方向リム41をそれぞれ備える複数のコイルコア4を有し、全ての第1端部43がリフラックス5によって互いに接続される。それぞれが長手方向リム41の1つを包囲し、電磁回転磁場を発生させるための複数の巻線6,61が更に設けられる。コイルコア4は、ロータ3を駆動するための永久磁気駆動磁束を生成可能な複数の永久磁石46を備える。各コイルコア4は、長手方向リム41の第1端部43から第2端部44まで延在する永久磁気部46と、それぞれ第1端部43から第2端部44まで延在する2つの永久磁石フリー部47とを備える。永久磁気部46は、2つの永久磁石フリー部の間に配置される。
【0173】
本発明に係るステータ2は、ロータがコイル及び永久磁石を含まないで設計されたテンプルモータにも、ロータが永久磁石及び/又はコイルを備えるテンプルモータにも適している。
【0174】
本発明に係るステータは、ベアリングレスモータの原理に従って構成されずに、ロータ3を支持するために、駆動を生じさせるステータ2に加えて、個別のベアリングや又はベアリングユニット、例えば磁気ベアリング又は機械ベアリングが設けられたテンプルモータにも適している。
【0175】
更に、本発明によれば、本発明により構成された電磁回転駆動装置1又はステータ2を備えることを特徴とする、流体の搬送、圧送、混合又は撹拌するための回転装置も更に提案されている。電磁回転駆動装置1、ステータ2及びロータ3に関する上記説明は、本発明に係る回転装置にも同様に又は略同様に適用される。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。
【0176】
図48は、流体の混合又は撹拌を行うための混合装置として構成され、全体として符号100により示される、本発明に係る回転装置の第1実施例を示す斜視図である。より良く理解するため、この第1実施例の軸線方向の断面を
図49に示す。混合装置100は、本発明により構成された、つまり、例えば上記実施例又は変形例の1つにより構成されたステータ2を備える。更に、混合装置100は、例えば、先行の説明により構成され、混合装置100を不図示の混合タンクに挿入可能にするフランジ101を備えるロータ3も備える。ここで、フランジ101は、その中心にロータ3を受容する安定した形状のバケツ102を有する安定した形状の略円形ディスクとして構成され、そのバケツ102を含む状態でプラスチックから製造することが好ましい。好適なプラスチックの例については更に以下に挙げられる。
【0177】
ロータ3は、好ましくは同様にプラスチックからなるジャケット8で囲まれた磁気有効コア31を備える。更に、ロータ3は、磁気有効コア31の又はそのジャケット8の軸線方向境界面の1つに配置された、ここでは4つの複数の羽根9を備える。
図48及び
図49に係る図においては、羽根9が上側の軸線方向境界面に配置され、磁気回転面Cの完全に上方に位置付けられる。羽根9もプラスチックから製造されることが好ましい。また、羽根9は、ジャケット8を有する単一の部材として、又は、例えば溶接や接着によりジャケット8に締結される個別の部品として製造することができる。また、羽根9はいずれも、例えば接着や溶接により磁気有効コア31又はそのジャケットに固定される個別のインペラの部品であってもよい。
【0178】
羽根9の構成及び個数に関しては当然ながら多くの変形例が知られているため、ここでは更に詳細には考察しない。
【0179】
バケツ102は、磁気有効コア31を受容するように機能し、適切な大きさを有する。バケツ102は、軸線方向Aに直交する円形の断面を有することが好ましく、バケツ102が、ステータ2のコイルコア4の横リム42間に可能な限りぴったりと又はごく僅かな隙間だけ残して挿入できるように、その直径が設定される。バケツ102の軸線方向Aの深さは、ロータ3の磁気有効コア31の軸線方向高さHRよりも若干大きくなるように設定される。これにより、ロータ3が動作中に磁力によってバケツ102の基部から持ち上げられ、自由に回転可能となる。
【0180】
フランジ101は、流体を混合するために不図示の混合タンク内に挿入される、又は混合装置100を動作させるために接続される。原則として、フランジ101は、混合タンクの基部の少なくとも一部を形成する。混合タンクを柔軟性のあるプラスチック袋として構成する場合、例えば、フランジ101を、この袋を有する混合タンクに接着又は溶接することができる。フランジ101を混合タンクに接続又は挿入する場合、バケツ102は混合タンクに対して外側へスリーブを形成する。バケツ102は、典型的には混合タンクの外側に配置されるステータ2内に挿入される。ロータ3は、ロータ3の磁気有効コア31が完全にステータ2のコイルコア4間に、より正確には横リム42間に位置するように、バケツ102内に追加される。
【0181】
そして、ロータ3は、動作中のベアリングレスモータの原理に従って、非接触に回転駆動され、ステータ2により非接触に磁気支持されることで混合タンク内の1つ又は複数の流体を混合させる。なお、ロータ3の3自由度、すなわちその回転と径方向面の位置は、ステータ2により能動的且つ磁気的に調整や制御を行うことが可能である一方、ロータ3は、その他の3自由度、すなわちその軸線方向位置及び径方向面に対する傾斜に関しては、受動的且つ磁気的に安定化が行われる、つまり、制御不能に安定化が行われる。ロータ3が傾斜していない場合、磁気ロータ面Cは、ロータ3又はその磁気有効コア31が支持される径方向面と同一である。
【0182】
バケツ102は、磁気有効コア31の軸線方向高さHRよりも軸線方向で若干深く、更に直径が磁気有効コア31よりも若干大きいため、ロータ3は動作状態でバケツ102に対して非接触に回転することができる。ロータ3が僅かに傾斜したり、その径方向及び/又は軸線方向位置がずれたりしても、磁気有効コア31又はそのジャケット8とバケツ102との物理的な接触は回避可能である。
【0183】
図50は、同様に混合装置100として構成された、本発明に係る回転装置の第2実施例を示す斜視図である。より良く理解するため、この第2実施例の軸線方向の断面を
図51に示す。以下、回転装置の第1実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第2実施例にも適用されるものと理解される。
【0184】
第2実施例では、ステータ2は、
図12及び
図13に示す実施例により構成され、コイルコア4の横リム42の端面421は、軸線方向Aの高さがHSであり、この高さHSは、ロータ3の磁気有効コア31の軸線方向高さHRよりも高い。
【0185】
バケツ102は、ここでは、その基部がディスク形状のフランジ101の残りの部分と略同一平面に位置するように構成され、このことは
図51からも特に容易に認識できる。図示のバケツ102の外壁の上縁は、コイルコア4の横リム42を受容可能な凹部104をバケツ102とフランジ101の残りの部分との間位に形成するように構成された安定した形状の接続部103を介してフランジ101の残りの部分と接続される。
【0186】
ロータ3は、ジャケット8、及びここでは4枚の羽根9である複数の羽根9が図示の上側における磁気有効コア31又はそのジャケット8の軸線方向境界面に配置された磁気有効コア31を備える。各羽根9は、径方向に凹部104をまたいで延在し、凹部104に対して径方向外方に配設され、軸線方向Aに、フランジ101の直前まで図示の下方へ延在する混合ブレード91を備える。本実施例では、羽根9は、より正確には混合ブレード91が磁気ロータ面Cと交差するように構成される。なお、軸線方向Aと直交する中心線である各混合ブレード91の中心線は、磁気ロータ面Cに位置することが好ましい。
【0187】
このようなステータ2の構成により、特に受動的磁気支持の安定性が向上するため、この混合ブレード91を有するロータ3も動作中にステータ2に対して非接触に磁気支持可能となる。
【0188】
接続部103には、混合タンクを空にする際に流体やその流体の残留物を流出させるための開口部105が設けられることが好ましい。
【0189】
図52は、流体の搬送、圧送、混合又は撹拌するためのポンプ装置や混合装置100として構成された、本発明に係る回転装置の第3実施例を示す軸線方向Aの断面図である。以下、回転装置の上記実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第3実施例にも適用されるものと理解される。
【0190】
この回転装置の第3実施例では、ステータ2、ロータ3及びフランジ101が、
図48及び
図49に関連して説明したのと略同様に構成される。
【0191】
第3実施例は、その使用目的に応じて厳密に1回だけ使用可能で、その後は交換が必要となる、1回きりの使用のために構成された使い捨て装置200と、複数回の使用のために構成された再利用可能装置300とを備える。使い捨て装置200は、1つ又は複数の流体の搬送、圧送、混合又は撹拌するための羽根9を有するインペラ92を有したロータ3を備える。一方、再利用可能装置300は、ロータ3を受容するための安定した形状の支持タンク301と、ロータ3を動作状態で非接触に磁気駆動可能且つ支持可能にできるステータ2とを備え、ステータ2は、本発明に係る構成を有する。
【0192】
また、使い捨て装置200は、混合又は搬送される物質を受容するための、プラスチックから製造される柔軟性のある混合タンク201を更に備える。混合タンク201は、収納時に可能な限り場所を取らないよう折り畳める柔軟な袋部202、例えばプラスチックサックや合成材料からできたサックを備えることが好ましい。混合タンク201は、その中心に安定した形状のバケツ102を有するフランジ101を更に備える。フランジ101は、同様に安定した形状を有することが好ましく、詳細については不図示の方法で、柔軟な袋部202に対して流体密封状に接続、例えば溶接又は接着される。ロータ3が混合タンク201に配置され、バケツ102内に位置付けられると、そのバケツ102をステータ2内へ挿入することができる。使い捨て装置200の柔軟性のある混合タンク201は、その混合タンク201を支持する再利用可能装置300の支持タンク301内へと取り付けられる。なお、バケツ102は、磁気有効コア31が完全にコイルコア4の横リム42間に配置されるようにステータ2内に挿入される。
【0193】
混合タンク201及び/又は支持タンク301は、例えば流体の供給及び流出を行うための開口部や、混合タンク201内に位置付けられた物質の性質を検出可能なセンサ又はプローブを受容するための開口部を更に有することができることが理解される。この
図52に係る構成では、例えば液体、ガス、又はその他の物質を混合タンク201内へと導入できる入口203が混合タンク201に設けられる。また、混合タンク201を空にしたり、物質を混合タンクから流出させたりすることができる出口305も更に設けられる。
【0194】
このような再利用可能装置300及び使い捨て装置200を有する回転装置の構成は、例えば製薬業界やバイオテクノロジー業界において有利に利用可能である。また、この構成は、混合される物質又は流体と接触する部品に関して非常に高い純度や滅菌が重要となる用途に特に適している。この、本発明に係る回転装置の構成は、バイオリアクタ又は発酵槽としても形成できるが、極めて一般的に、媒体又は物質を混合できるポンプ装置や混合装置にもなりうることが理解される。特に、このような物質は流体又は固体、好ましくは粉体である。このようなポンプ装置又は混合装置は、液体同士の混合、及び/又は少なくとも1つの液体と粉体やその他の固体との混合、及び/又はガスと液体及び/又は固体との混合を行うのに適している。
【0195】
支持タンク301は、その基部に、略シリンダー形状を有し、ステータ2を受容するための中央に配置された缶部302を備える。この缶部302は、典型的に軸線方向Aと一致するシリンダー軸線の方向に延在し、例えばねじ303で支持タンク301の基部に締結される。缶部302の基部には供給口304が設けられ、供給口304は、ステータ2の供給及び調整を行うための電気線を備える。この供給口304には、ステータ2のエネルギー供給や制御、並びに、不図示の制御調整装置を用いたセンサと測定装置との間のデータ交換に必要な全ての電気的接続が統合される。上記缶部302は、金属材料から作られてもよいし、プラスチックから作られてもよい。
【0196】
ロータ3を含む使い捨て装置200の混合タンク201と、再利用可能装置300の支持タンク301との組み付けは、特に工具を使わず非常に簡単且つ迅速に行うことができる。このため、典型的に、収納のため内部に位置付けられたロータ3と共に折り畳まれる混合タンク201がパッケージから取り除かれて支持タンク301内へ取り付けられ、内部にロータ3が配設されたバケツ102が、バケツ102がコイルコア4の横リム42間に位置するように、缶部302内に取り付けられる。こうして、ポンプ装置又は混合装置100として構成された回転装置の使用準備が整う。使用後は、バケツ102とロータ3とを有する混合タンク201は支持タンク301から簡単に引き抜かれる。なお、バケツ102は、缶部302から簡単に解放される。この、特に簡単且つ問題のない接続や分離により、第3実施例は、1回きりの使用のために構成された混合タンク201及びロータ3により1回きりの使用に利用可能となる。一方、支持タンク301及び缶部302を有するステータ2は、恒久的な利用又は複数回の使用のために設計される。
【0197】
ステータ2は、缶部302において、熱伝導性を有する化合物により、成形及びひいては固定されうる。
【0198】
混合タンク201のバケツ102及びフランジ101は安定した形状に構成されることが好ましいが、袋部202は柔軟性を有するため、必要とは限らないが、バケツ102及びフランジ101を、後に流体密封状で袋部202に接続される個別の部品として製造することが有利である。
【0199】
更に有利な観点としては、ロータ3は、電磁駆動装置1のロータ3と磁気支持のロータ3との両方を兼ね備えるため、つまりミキサのロータ3でもあるため、一体型ロータとして構成される。これにより、非常にコンパクトで場所を取らない設計となる利点が得られる。
【0200】
ロータ3及び混合タンク201を1回きりの使用のために設計する場合、プラスチックから作られた部品を可能な限り安価な商業用プラスチックから製造するべきである。1回きりの使用のための構成において更に重要な側面としては、使い捨て部品は、あるエリアでの用途では滅菌可能でなければならないということである。なお、使い捨て部品には、特に、ガンマ線滅菌が行えることが好ましい。このタイプの滅菌法では、ガンマ線が滅菌対象の要素に作用する。例えば蒸気滅菌と比較した場合に、ガンマ線滅菌は、特にパッケージを通した滅菌も可能であるという利点がある。使い捨て部品に関しては、その製造後は発送用に梱包がなされ、顧客へ配送されるまではしばらく保管されるというのが一般的である。このような場合、顧客へと配送される直前に滅菌が行われる。これは、蒸気滅菌又はその他の滅菌法では不可能である。
【0201】
また、原則として、混合タンク201及びロータ3等の使い捨て部品が複数回滅菌可能である必要はない。このことは、特に、ガンマ線滅菌法に非常に有利となる。なぜなら、プラスチックへのガンマ線照射は劣化を招くこともあり、複数回のガンマ線滅菌でプラスチックが使い物にならなくなる場合もあるためである。
【0202】
また、原則として、使い捨て部品には高温及び/又は高(蒸気)圧の滅菌を行わないため、例えば、高温に耐えられないプラスチックや、何度も高温や高圧に晒すことができないプラスチック等、より安価なプラスチックを利用することができる。
【0203】
このように、上記を全て考慮すると、1回きりの使用を目的とした構成では、ガンマ線滅菌が少なくとも1回行うことができる、使い捨て装置の製造用のプラスチックを使用することが好ましい。なお、材料は、ガンマ線滅菌を1回行えるように、少なくとも40kGyの線量のガンマ線に対して耐ガンマ線性を有さなければならない。また、ガンマ線滅菌は毒性物質を生じるべきではない。更に、混合される物質と接触する全ての材料がUSPクラスVI基準を満たすことが好ましい。
【0204】
例えば柔軟性がある袋部202の製造に好ましいプラスチックとしては、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)及びシリコンが挙げられる。
【0205】
例えばプラスチックを備えるバケツ102及びロータ3の部品、つまりインペラ92、羽根9及びジャケット8の製造に好ましいプラスチックとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリアクリル及びポリカーボネート(PC)が挙げられる。
【0206】
プラスチック部品の製造にはあまり向いていない又は不適切な材料としては、例えばテフロン(登録商標)(Teflon)の商標名で知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が挙げられる。つまり、これらの材料をガンマ線滅菌に使用すると、フッ化水素酸(HF)等の毒性化合物又は有害化合物を形成しうるフッ素等の有害ガスを生じる危険がある。このような材料は、当然ながら、とりわけ、ロータ3が1回きりの使用のために設計されていないような用途においては使用できる。
【0207】
上記ステータ2及びロータ3は、上述のようにテンプルモータとして構成された、第3実施例ではベアリングレスモータの原理に従って動作する電磁回転駆動装置1を共に形成する。ベアリングレスモータでは、少なくともロータ3の3自由度、すなわちその所望回転軸線Aを中心とした回転及び径方向位置が、常に能動的に磁気調整可能である。一方、ロータ3の軸線方向位置の自由度は、受動的に磁気安定化が行われる。つまり、個別の軸線方向の磁気ベアリング又は機械ベアリングを必要としない。ロータ3は、一方では特に簡素で安価となり、他方ではステータ2や缶部302から容易に分離可能となる。軸線方向においてベアリング部品が不要となることに起因して、ロータ3は、バケツ102と共に、缶部302又はステータ2から特に容易に分離可能となる。
【0208】
なお、ロータ3の磁気有効コア31は、ステータ2から発生する磁場により軸線方向Aに偏向(deflection)が発生した場合、磁気ばね力によって引き戻される。ロータ3を軸線方向Aに対して所望の位置に安定させるこれらの受動的且つ磁気的復元力は、ロータ3が軸線方向Aにずれた際に偏向と共にまずは増加し、ロータ3の磁気有効コア31の形状、コイルコア4の横リム42の端面421の形状、永久磁気部46の形状や磁気特性及びステータ2とロータ3との間の空隙に応じたある特定の偏向で最大に達し、その後再び減少する。本発明の構成では、ロータ3に作用する軸線方向力が全動作範囲において軸線方向受動磁気ベアリングの最大力未満となり、ロータ3がステータ2から容易に分離可能でなくてはならないような用途において、軸線方向受動磁気ベアリングの最大力が、混合タンク201を任意に備えるロータ3を工具無しでステータ2から容易に分離可能とするのに十分なくらいに小さくなるように、本来の軸線方向の受動的な磁石ベアリングの特性が選択される。なお、ポンプ装置又は混合装置としての構成では、工具や付加的装置なしに最大200ニュートンの軸線方向受動磁石ベアリングの最大力まで対処可能であることが分かっている。もっと小さい混合装置の場合、大幅に小さくなった軸線方向受動磁気ベアリングの最大力を選択して、可能な限り簡単な方法で挿入や除去の設計が行われる。50リットル~1000リットルの低粘度の液体に用いられる混合装置では、典型的に、10ニュートン~80ニュートンの範囲の値となる。
【0209】
全ての実施例において、受動的な磁気安定化は、残りの2自由度、すなわち径方向面に対するロータ3の傾斜についても同様に実現可能である。このような構成では、テンプルモータとして構成されたベアリングレスモータの調整が特に簡単になり、パワーアンプチャンネルの数も削減可能になる。一方、このようにロータ3を傾斜に対して完全に受動的に安定させることは、ある一定の幾何学的条件が満たされた場合にしか確実に実現されない。ロータ3の磁気有効コア31の直径がdで、磁気有効コア31の軸線方向の高さがHRの場合、直径は少なくとも高さHRの2.6倍の大きさでなくてはならない。そのため、d>2.6×HRという条件を満たす必要があり、つまり直径dは高さHRの2.6倍より大きくなければならない。
【0210】
ロータ3を外部ロータ(例えば
図54参照)として構成した場合、この幾何学的関係における磁気有効コア31の直径は、磁気有効コア31の内径に置き換えられる。すなわち、幾何学的条件は、磁気有効コア31の内径が高さHRの少なくとも2.6倍大きいこととなる。このd>2.6×HRという条件を満たす必要があり、つまり内径dは高さHRの2.6倍より大きくなければならない。
【0211】
このため、本発明に係る回転装置は、径方向面への傾斜(2自由度)に対するロータ3の磁気的安定化が完全に受動的に行われ、ロータ3の直径(又は外部ロータとしての構成では内径)が磁気有効コア31の軸線方向Aの高さHRより少なくとも2.6倍大きい方が好ましい。
【0212】
本発明の実施例において、この幾何学的条件が満たされない場合は、その他の適した方法により、これらの傾斜に対するロータ3の安定化又は調整を行うことができる。
【0213】
図53は、流体の搬送、圧送、混合又は撹拌するためのポンプ装置又は混合装置100として構成された本発明に係る回転装置の第4実施例軸線方向Aの断面を示す。以下、回転装置の上記実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、第1、第2及び第3実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、全ての上記の変形例、実施例及び方法は全て同様に又は結果的に同様に第4実施例にも適用されるものと理解される。
【0214】
第4実施例は、第3実施例と略一致するが、第4実施例では、ステータ2とロータ3が
図50及び
図51に関連して説明したように構成される。
【0215】
図54は、本発明に係る回転装置100の第5実施例を示す軸線方向Aの断面を示す。以下、回転装置の上記実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、先行する実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第5実施例にも適用されるものと理解される。
【0216】
第5実施例も、流体の搬送、圧送、混合又は撹拌するためのポンプ装置又は混合装置100として構成される。必ずしもではないが、第5実施例でも1回きりの使用のための部品、すなわち1回きりの使用のために構成された使い捨て装置200と、複数回の使用のために構成された再利用可能装置300とを備えることが好ましい。使い捨て装置200は、1つ又は複数の流体の搬送、圧送、混合又は撹拌するためのインペラ92と羽根9とを有するロータ3と、柔軟な袋部202を有する柔軟な混合タンク201とを備える。再利用可能装置300は、混合タンク201を受容するための安定した形状の支持タンク301と、ロータ3を動作状態で非接触に磁気駆動可能且つ支持可能とするステータ2とを備える。
【0217】
第5実施例では、ロータ3は外部ロータとして構成される。すなわち、ロータ3は、コイルコア4の横リム42に対して径方向外方に配設され、横リム2は、コイルコア4の端面421が径方向外方に配設されるように径方向外方へ、ひいてはロータ3の方へ延在する。
【0218】
また、ステータ2は、例えば
図18及び
図19に関連して説明したように構成される。ロータ3の磁気有効コア31も、例えば
図18及び
図19に示すように構成される。磁気コア31は、上述のように、好ましくはプラスチックで構成されるジャケット8で包囲される。また、例えば磁気有効コア31をプラスチックで成形してジャケット8を形成することが可能である。一方、ロータ3は、流体又は物質の混合、圧送又は撹拌を行うここでは4枚の複数の羽根9を有するインペラ92を備える。この羽根9又はインペラ91は、好ましくはプラスチックから製造され、ジャケット8を有する1つの部材として、又は例えば接着や溶接によって後にジャケット8に固定される個別の部品として製造することができる。羽根9は、磁気コア31が軸線方向Aに対して各羽根9の略中心を通って延在するように構成され配置されることが好ましい。ここで、動作中に羽根9がロータ3に伝送する力が、磁気ロータ面3の上下両方に与えられ、ロータ一の磁気の安定化に対して有利となる。
【0219】
ここで説明した外部ロータとしての実施例では、安定した形状のバケツ102が、混合タンク201に対して内側へと押し出されるように、つまり混合タンク201内へ突出するように、フランジ101上に配置される。そして、ロータ3は、磁気コア31がバケツ102に対して径方向外方に延在して包囲するように配設される。このようにして、コイルコア4の横リム42がバケツ102内に配設され、横リム42の端面421が磁気有効コア31に対向して配置されて配設されるようにステータ2を置くことが可能である。なお、バケツ102の直径は、バケツ102がごく小さな隙間だけを残して、又は全く隙間なく横リム42を包囲するが、問題なくステータ2から分離可能となるように、径方向に対して設定される。ステータ2を受容する缶部302は、軸線方向Aにおいてバケツ102と重なり、つまりバケツ102内へと延在して、横リム42の直上で終端する。
【0220】
図55は、本発明に係る回転装置の第6実施例の斜視図を示す。より良く理解するため、この第6実施例の軸線方向の断面図を
図56に示す。以下、上記実施例との相違点のみを考察する。特に、符号は、上述の実施例に関連して既に説明されているものと同じ意味を有する。また、上記の説明は全て同様に又は結果的に同様に第6実施例にも適用されるものと理解される。
【0221】
第6実施例は、流体を圧送又は搬送するポンプ装置400として構成され、例えば
図7及び
図8に関連して説明したように構成されたステータ2を備える。
【0222】
また、ポンプ装置400は、好ましくはプラスチックから製造されるポンプハウジング401を更に備える。ポンプハウジング401は、軸線方向Aに延在し、ポンプハウジング401の中央に配置され、軸線方向Aの円筒状菅として構成された、流体を搬送するための入口402と、径方向に延在し、円筒状菅として構成された、流体を搬送するための出口403とを有する。インペラとして構成され、磁気有効コア31と複数の羽根404とを備えて流体を入口402から出口403へと搬送するロータ3は、ポンプハウジング401内に設けられる。羽根404は、軸線方向Aに対して、図示における磁気有効コア31の上方に配置される。このように、ポンプ装置400は、ここでは、遠心ポンプとして構成される。当然ながら、例えば軸線流ポンプ又はらせん状軸線流ポンプとして他の構成も可能である。
【0223】
ロータ3の磁気有効コア31は、羽根404と全く同様に、好ましくはプラスチックから作られるジャケット8によって包囲される。ポンプハウジング401は、ロータ3の磁気有効コア31を包囲する下部405と、その下部405に軸線方向に隣接し、ロータの羽根404を包囲する上部406とを備える。これらの上下部405及び406はいずれも、軸線方向に直交する略円形の断面を有し、上部406よりも下部405の方が直径が小さい。なお、下部405の直径は、可能な限り隙間なくコイルコア4の横リム42間に挿入され、ここでもステータ2からの解放が容易に行えるように設定される。上部406の直径は、径方向に対して横リム42と重なり、横リム42上に位置できるように設定される。
【0224】
ロータ3が内部に配置されたポンプハウジング401がステータ2内に挿入されると、磁気ロータ面Cが径方向面内に配設され、磁気有効コア31が軸線方向Aに対して完全に横リム42の端面421間に位置するように、コイルコア4の横リム42が、磁気有効コア31が内部に位置付けられたポンプハウジング401の下部405を包囲する。こうして、ロータ3は、動作状態でステータに対して非接触に磁気駆動可能且つ非接触に磁気支持可能となる。
【0225】
ポンプハウジング401の上部406は、軸線方向Aに対してコイルコア4の横リム42の直上に位置付けられる。この上部406内に開口する出口403は、軸線方向Aに対して羽根404と同じ高さに配設される。このことは、動作中のロータ3に作用する流体力の観点からも特に有利である。そのため、このような流体力は可能な限り均一にロータ3に分配される。このように出口403と羽根404との相対的な配置は、ここでは出口403を上記のように配置することを少なくとも大幅に難しくするであろう巻線が横リム42に含まれないため、特にテンプルモータとしての回転駆動装置1の構成により可能となる。
【0226】
また、ポンプ装置400として構成された回転装置は、1回きりの使用のための部品を用いることでも好適に構成することができ、使い捨て装置200と再利用可能装置300とを有することができる。このような用途では、使い捨て装置200は、好ましくはポンプハウジング401とその内部に配置されたロータ3とを1回きりの使用のための使い捨て部品として備える。この使い捨て部品は、その使用目的に応じて1回だけ使用可能であり、その後は次の利用のための新しい未使用の部品との交換が必要となる。再利用可能装置300は、この構成ではステータ2を備える。
【0227】
機械ベアリングの不在に起因して、ポンプ装置400は、例えば血液ポンプ等の非常に敏感な物質を搬送する用途、又は例えば製薬業界又はバイオテクノロジー業界における純度に関して非常に高い要求が課される用途、又は例えば半導体産業におけるスラリー用ポンプ等の、機械ベアリングを即座に破壊してしまう研磨物質を搬送する用途に特に適している。
【0228】
また、ロータ3は、電磁駆動装置1のロータ3と、磁気支持のロータ3と、搬送される流体を圧送するポンプ装置400のロータ3とを兼ねているため、一体型ロータとして構成されることもポンプ装置400の有利な点である。これにより、非常にコンパクトで場所を取らない設計となる利点が得られる。