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特許7019306ディスクドライブ用サスペンションための多層せん断モード型PZTマイクロアクチュエータ及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ディスクドライブ用サスペンションための多層せん断モード型PZTマイクロアクチュエータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/596 20060101AFI20220207BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20220207BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20220207BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20220207BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20220207BHJP
   H01L 41/257 20130101ALI20220207BHJP
   H01L 41/297 20130101ALI20220207BHJP
   H01L 41/293 20130101ALI20220207BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
G11B5/596
G11B21/21 D
G11B21/10 N
H01L41/09
H01L41/083
H01L41/257
H01L41/297
H01L41/293
H01L41/047
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017088500
(22)【出願日】2017-04-27
(65)【公開番号】P2017199449
(43)【公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】62/328,360
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/496,607
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517151084
【氏名又は名称】マグネコンプ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MAGNECOMPCORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】クエン, チー イー
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-158676(JP,A)
【文献】特開2009-230847(JP,A)
【文献】特開2014-022016(JP,A)
【文献】特開2002-118302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/596
G11B 21/21
G11B 21/10
H01L 41/09
H01L 41/083
H01L 41/257
H01L 41/297
H01L 41/293
H01L 41/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクドライブのためのサスペンションであって、
ロードビームと、
前記ロードビームに支持されるフレキシャと、
少なくとも第1マイクロアクチュエータと、を含み、
前記フレキシャは、ヘッドスライダが取り付けられ、データディスクが前記ヘッドスライダの下で移動するときに前記ヘッドスライダをピッチ及びロールにさせるように構成されているジンバルを含み、
前記第1マイクロアクチュエータは、第1面と、反対側の第2面とを有する多層PZTデバイスを含み、前記多層PZTデバイスの各層は、作動電圧によって作動される時、それのd15モードで作動するように構成され、層は、前記各層が前記第1面が前記第2面に対するせん断において移動するように作動されたときに同じ方向に作用するように構成された、スタックとして構成されており
前記多層PZTデバイスの前記第1面は、前記ロードビームに取り付けられ、前記ジンバルは、前記多層PZTデバイスの前記第1面と反対側の第2面に作動可能に接続される、
ことを特徴とするサスペンション。
【請求項2】
少なくとも第2マイクロアクチュエータをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション。
【請求項3】
前記第2マイクロアクチュエータは、第2多層PZTデバイスを含み、前記第2多層PZTデバイスが、前記第2多層PZTデバイスの第1面と、前記第2多層PZTデバイス反対側の第2面とを有し、前記第2多層PZTデバイスの各層は、作動電圧によって作動される時、それのd15モードで作動するように構成され、層は、前記各層が前記第2多層PZTデバイスの前記第1面が前記第2多層PZTデバイスの前記第2面に対するせん断において移動するように作動されたときに同じ方向に作用するように構成された、スタックとして構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のサスペンション。
【請求項4】
前記多層PZTデバイスの前記第2面は、前記多層PZTデバイスが作動される時、前記第2面が前記ジンバルを移動させるためにせん断において移動するように構成されているように、前記ジンバルに作動可能に接続される、
ことを特徴とする請求項に記載のサスペンション。
【請求項5】
前記第2多層PZTデバイスの前記第1面は、前記ロードビームの一部に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載のサスペンション。
【請求項6】
記第2多層PZTデバイスの前記第1面、前記ロードビームに取り付けられ、
記第2多層PZTデバイスの前記第2面は、前記多層PZTデバイス及び前記第2多層PZTデバイスが作動される時、前記第2面がせん断において反対方向に移動することにより前記ヘッドスライダを回転させるように、前記ジンバルに作動可能に接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載のサスペンション。
【請求項7】
前記第1マイクロアクチュエータ及び前記第2マイクロアクチュエータは、前記サスペンションの対向する側方に配置され、前記ヘッドスライダと垂直に積み重ねられない、
ことを特徴とする請求項2に記載のサスペンション。
【請求項8】
多層せん断モード型圧電デバイスを製造する方法であって、
複数の圧電層のスタックを形成するステップと、
前記複数圧電層の圧電層ペアのそれぞれの間にそれぞれに配置された複数の導電層を形成するステップと、
第1極性を有する第1組の交互圧電層をポーリングするように、前記複数の圧電層の前記第1組の交互圧電層にわたって、第1方向に第1電界を印加するステップと、
前記第1極性と反対する第2極性を有する第2組の交互圧電層をポーリングするように、前記複数の圧電層の前記第2組の交互圧電層にわたって、第2方向に第2電界を印加するステップと、
第1電極を形成するために、前記第1組の交互圧電層上に前記導電層を電気的に一群とするように導電材料を供給するステップと
第2電極を形成するために、前記第2組の交互圧電層上に前記導電層を電気的に一群とするように導電材料を供給し、前記第1電極と前記第2電極にわたって電位が印加されると、前記第1組の交互圧電層および前記第2組の交互圧電層がせん断において変形し、せん断における移動が、せん断において全体的に前記圧電デバイスが変形するように、アディティブ法で作用するステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
全ての前記導電層より少ない前記導電層は、前記複数の圧電層の端部に伸びる、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1組の交互圧電層上に形成される前記複数の導電層が電気的にアクセスすることができ、前記第2組の交互圧電層上に形成される前記複数の導電層が電気的にアクセスすることができるように、前記多層せん断モード型圧電デバイスの少なくとも1つの端部から材料が取り外されるステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
複数の圧電層のスタックを形成し、前記複数の圧電層の圧電層ペアのそれぞれの間にそれぞれに配置された複数の導電層を形成した後、前記第1組の交互圧電層の端部に第1組の側電極を堆積するステップをさらに含み、
前記第1電界を印加するステップは、前記第1組の側電極にわたってポーリング電圧を印加するステップを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1組の交互圧電層上に形成される第1組の端部電極を取り外すステップと、
前記第2組の交互圧電層の端部に第2組の側電極を堆積するステップと、をさらに含み、
前記第2電界を印加するステップは、前記第2組の側電極にわたってポーリング電圧を印加するステップを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1電界を印加するステップの後、前記第2組の交互圧電層の端部に側電極を堆積するステップをさらに含み、
前記第2電界を印加するステップは、前記側電極にわたってポーリング電圧を印加するステップを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1組の交互圧電層の端部に第1組の側電極を堆積した後、前記第1組の側電極が
取り外されるステップと、
前記第1組の側電極にわたってポーリング電圧を印加した後、前記第2組の交互圧電層の端部に第2組の側電極を堆積するステップと、をさらに含み
前記第2電界を印加するステップは、前記第2組の側電極にわたってポーリング電圧を印加するステップを含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1電界及び前記第2電界のそれぞれを印加するステップは、
選択された前記圧電層のそれぞれの端部に前記第1電極および前記第2電極を堆積するステップと、
前記第1電極及び前記第2電極は、ポーリング電圧に作動可能に接続され、これにより、前記複数の圧電層の選択されたものをポーリングすると、を含む
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1電界及び前記第2電界のそれぞれを印加するステップは、
選択された前記複数の圧電層のそれぞれの端部に前記第1電極および前記第2電極が押し付けられるステップと、
前記第1電極及び前記第2電極にわたってポーリング電圧を印加し、これにより、選択された前記圧電層をポーリングすると、を含む
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の圧電層は、少なくとも4つの圧電層を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項18】
多層せん断モード型圧電デバイスを製造する方法であって、
少なくとも四つの圧電材料層のZ方向の、隣接の前記圧電材料層の間にそれぞれに配置される複数の導電層を備えるスタックを含む未完成のデバイスを形成するステップと、
第1極性を有する奇数層をポーリングするために、一組の前記奇数層を形成する第1組の交互圧電材料層にわたって正のX方向に第1電界を印加するステップと、
前記第1極性と反対する第2極性を有し、前記奇数層とインタリーブされる偶数層をポーリングするために、一組の前記偶数層を形成する第2組の交互圧電材料層にわたって負のX方向に第2電界を印加するステップと、
奇数層上に導電層が電気的に接続され、それによって第1電極を形成するステップと、
偶数層上に導電層が電気的に接続され、それによって第2電極を形成するステップと、
前記第1電極と前記第2電極にわたって電位が印加されると、前記奇数層及び前記偶数層がせん断において変形し、
せん断における移動が、せん断において全体的に前記圧電デバイスが変形するように、アディティブ法で作用するステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項19】
サスペンションのためのマイクロアクチュエータであって、
多層PZTデバイスを含み、前記多層PZTデバイスは、第1面と、反対側の第2面とを有し、前記第1面は前記第1面の少なくとも半分をしめる第1電極を含み、前記反対側の第2の面は前記第2面の少なくとも半分をしめる第2電極を含み、前記多層PZTデバイスは、前記第1電極を含む前記第1面が前記第2電極を含む前記反対側の第2面に対するせん断において移動するように構成され、前記多層PZTデバイスの各層は、作動電圧によって作動される時、それのd15モードで作動するように構成され、層は、前記各層が前記第1面が前記第2面に対するせん断において移動するように作動されたときに同じ方向に作用するように構成された、スタックとして構成されている、
ことを特徴とするマイクロアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、2016年4月27日に出願された米国仮出願第62/328,320号の優先権利益を主張し、そのすべての内容が本明細書に参考として援用される。
【0002】
本発明は、ディスクドライブ用サスペンションの分野に関する。特に、ディスクドライブ用サスペンションのための多層せん断モード(シアモード)型PZTマイクロアクチュエータの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気ハードディスクドライブおよび光ディスクドライブのような他のタイプのスピニングメディアドライブは周知である。一般的なハードディスクドライブにおいて、回転データディスク上の正しいデータトラックにおける読み取り/書き込みヘッドを保持する部分は、サスペンションと呼ばれる。サスペンションは、アクチュエータアームに固定されたベースまたはベースプレートと、ベースに取り付けられるスプリング部または単に「スプリング」と、スプリングの端部に取り付けられるビーム部またはロードビームと、を一般的に含む。ビーム部は、それに取り付けられるフレキシャを有する。フレキシャは、ステンレス鋼金属支持層と、ポリイミドのような絶縁層と、銅または銅合金製の導電層と、を一般的に含む。絶縁層及び導電層は、金属支持層で回路を形成する。フレキシャは、レーザスポット溶接などによってロードビームに固定される固定部と、ジンバル部または単にジンバルと、を有する。ジンバルは、読み取り/書き込みデータトランスデューサを含むヘッドスライダを保持し、データディスクがヘッドスライダの下で移動するときにヘッドスライダが自由にピッチ及びロールにさせることを可能にし、それは、データディスク表面での僅かな凹凸およびディスク内の振動を可能にする。スライダは、回転ディスクによる風によって形成された空気軸受を介して、回転ディスクプラッタ上の正しい高さに維持される。
【0004】
二段作動(DSA)サスペンションにおいて、サスペンション全体を移動させるボイスコイルモータに加えて、サスペンションのどこかに配置されるアクチュエータは、ヘッドスライダの速く正確な位置決めのためにヘッドスライダの微動をもたらす。DSAサスペンションは、ベースプレート上、ロードビーム上、またはフレキシャのジンバル部上において、プッシュプル方法で作用するか、または、フレキシャのジンバル部で直接に作用する通常2つの圧電アクチュエータ又は1つのアクチュエータを取り付けることが提案される。そのようなアクチュエータは、特にアクチュエータがジンバル上に配置されるか、または、ジンバルで直接に作用する場合、ミクロアクチュエータまたはマイクロアクチュエータと呼ばれることがある。マイクロアクチュエータがジンバルに取り付けられ、又はジンバルで直接に作用するサスペンション設計は、ジンバル作動サスペンションまたはGSAサスペンションと呼ばれることがある。
【0005】
他の材料は圧電特性を示し、圧電デバイスを製造するために用いられることがあるが、圧電デバイスは、多くの場合、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)から製造される。一般に、圧電デバイスに関して、「PZT」という用語は、省略形として使用されることが多い。本明細書ではこの簡略用語を使用するが、「PZT」デバイスは厳密にチタン酸ジルコン酸鉛から製造される必要はないことが理解される。
【0006】
Hahnらに発行され、本出願の譲受人に譲渡された米国特許第9,219,624号で、GSAサスペンションは、フレキシャの相対的に固定された部分からヘッドジンバルに、すなわち可撓性リボン状コネクタを介してフレキシャのジンバル部に延びるPZTマイクロアクチュエータを有することを開示する。この特許は本明細書の圧電マイクロアクチュエータとジンバルの間の接続を含むフレキシャ構造のためにその全体が参考として援用される。
【0007】
より大きいトラック密度とより速く読み取り/書き込み速度の要求が続くにつれて、軽量、高速で応答性の高いDSAサスペンション設計に依然として必要である。
【発明の概要】
【0008】
サスペンションためのマイクロアクチュエータが記載される。マイクロアクチュエータは、第1面及び反対側の第2面を有する多層PZTデバイスを含む。多層PZTデバイスの各層は、作動電圧によって作動される時、それのd15モードで作動するように構成されている。層は、前記各層が前記第1面が前記第2面に対するせん断において移動するように作動されたときに同じ方向に作用するように構成された、スタック(積層体)として構成されている。
【0009】
本発明の実施形態の他の特徴および利点は、添付図面および以下の詳細な説明から明らかになろう。
【0010】
本発明の実施形態は、添付の図面の図に限定ではなく例として示す。図面中、同じ参照番号は同じ要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態による2つの多層せん断モードPZTデバイスを用いるディスクドライブサスペンション先端部の斜めの上面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による多層せん断モードPZTの斜視図である。
図3図3は、作動される時のデバイスのせん断モード変形を示す破線を有する多層せん断モードPZTの側面図である。
図4A-B】図4A-Bは、図2のデバイスを製造する第1製造方法を示すプロセスフロー図を構成し、処理中の未完成のデバイスの側断面図を示す。
図4C-D】図4C-Dは、図2のデバイスを製造する第1製造方法を示すプロセスフロー図を構成し、処理中の未完成のデバイスの側断面図を示す。
図4E-F】図4E-Fは、図2のデバイスを製造する第1製造方法を示すプロセスフロー図を構成し、処理中の未完成のデバイスの側断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
Hahnらに発行された特許第9,219,624号に示されるPZTは、PZT材料の圧電係数d31を用いる。つまり、デバイスの伸縮が印加電界の方向に対して垂直な方向にあるd31モードで作動した。せん断モード圧電係数d15は係数d31よりも大きいことが知られて、したがって、少なくとも理論的にd15モードで作動するPZTは、アクチュエーション電圧の単位入力あたり、より大きなストローク長さを示すことができる。このようなデバイスの製造において、デバイスをポーリングすることを含む困難が生じる。d15モードで作動する多層PZTが提案されたが、それらをポーリングすることを含むこれらのデバイスを製造する上でより大きな困難を呈する。米国出願第2004/0061969号に、多層せん断モード型PZTは示唆されているが、その製造プロセスは開示されていない。
【0013】
本発明の実施形態は、d15モードで作動する多層せん断モード(シアモード)型PZTアクチュエータ、このようなデバイスを用いるサスペンション、およびこのような多層せん断モード型PZTデバイスの製造方法に関する。
【0014】
サスペンションにおいて、それらのd15モードで作動する2つの多層せん断モード型PZTマイクロアクチュエータは、サスペンションの比較的固定された部分に取り付けられ、ヘッドスライダが薄い柔軟なリボン状コネクタを介して取り付けられるサスペンションのジンバル部で作用する。PZTマイクロアクチュエータは、横方向および/または縦方向のいずれかにヘッドスライダから水平方向に離れるように、取り付けられる。それらはヘッドスライダと並置されず、ヘッドスライダと垂直に積み重ねられていないことを意味する。
【0015】
図4A-4Fに対応する例示的な製造プロセスを以下に示す。
【0016】
4A デバイスの端部まで伸びず、交互にオフセットされた電極を有する連続する層を有する多層PZTを製造する。
【0017】
4B 端部電極は奇数PZT層と呼ばれる交互PZT層の端部に配置され、これらの奇数層をX方向にポーリングする。
【0018】
4C 奇数PZT層で電極を研磨又は切断する。
【0019】
4D 端部電極は偶数PZT層の端部に配置され、これらの偶数層をX方向にポーリングする。
【0020】
4E 偶数PZT層で電極を研磨又は切断する。次の電極が端部に露出するまで研磨または切断する。奇数層の上での電極はデバイスの左側で露出するが、偶数層の上での電極はデバイスの右側で露出する。
【0021】
4F インタリーブ櫛形電極を形成するために側電極を配置する。すなわち、左側電極は奇数PZT層にわたって取り付けられるが、右側電極は偶数PZT層にわたって取り付けられる。
【0022】
電極は、スパッタリング、化学気相成長(CVD)および/または電着のような薄い金属層の堆積によって、ステップ4Bおよび4Dのように配置することができる。スパッタリングは、電着のような別の堆積ステップの後のシード層のスパッタリングであってもよい。それから、ポーリング電圧は、デバイスをポーリングするために、これらの電極に作動可能に接続される。
【0023】
あるいは、金属層を堆積させて端部電極を形成する代わりに、外部金属電極が単にPZT層の選択されたものの端部に押し付けることができ、それから、電極間に位置する関連のPZT層をポーリングするためにこれらの電極にわたって電圧差を加える。例えば、自身から伸びる多数の金属指(指状のもの)を有する櫛状のデバイスは、奇数PZT層の端部に押し付けることができ、それから、奇数PZT層を正のX方向にポーリングする電圧が印加される。次に、指は奇数層から偶数層に移動させられ、偶数層を負のX方向にポーリングする反対の電圧が印加される。
【0024】
ポーリングプロセスで用いられる電極が堆積されるか、PZT層の端部に一時的のみに押し付けられるかにかかわらず、ポーリング後の結果は、インタリーブ層を有する多層PZTデバイスは正のX方向および負のX方向に交互にポーリングされる。
【0025】
本発明の例示的な実施形態は、同様の番号が同様の部分を示す図面を参照して以下にさらに説明される。図面は縮尺通りではない場合があり、特定の構成要素は、一般化された形態または概略的な形態で示され、明確さと簡潔のために商業的名称で示される。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による2つの多層せん断モード(シアモード)PZTデバイス100a、bを用いるディスクドライブサスペンション10の先端部の斜めの上面図である。サスペンション10は、ロードビーム2と、フレキシャ6と、読み取り/書き込み磁気トランスデューサが搭載されるヘッドスライダ8とを含む。PZTデバイス100a、bへの電気的接続は、説明を明確にするために省略される。PZTデバイス100の下側は、ロードビーム2の一部に固定され、PZTデバイス100a、bの上側のそれぞれは対応の接触パッド60a、bに固定され、該接触パッド60a、bのそれぞれがフレキシャ6のジンバル部にコネクタ62a、bによって作動可能に接続される。様々な実施形態では、コネクタ62a、62bは、薄く柔軟なリボン状コネクタである。このようなサスペンションの機械的構造は、本出願の譲受人に譲渡され、本明細書中に参考として援用されるHahnらの米国特許第9,219,624号にさらに詳しく記載されている。
【0027】
様々な実施形態によれば、PZTデバイス100a、bのそれぞれは、せん断において移動するように構成されている。PZTデバイス100a、bが作動される時、PZTデバイス100a、bの両方は、一方のデイバイの上面または面がより遠位の方向に移動し、他方のデイバイの上面または面がより近位の方向に移動するようにせん断において移動する。したがって、2つのPZTデバイスは、プッシュプル方式でタンデムに作動する。このように、ジンバル7に取り付けられたヘッドスライダ8は、PZTデバイスの作用により回転される。この回転により、ヘッドスライダ8内に埋め込まれた読み取り/書き込みトランスデューサ(別個に図示せず)は、回転磁気媒体データディスク(図示せず)の表面を横切って放射状に移動して、これらのトランスデューサを所望のデータトラック上に正確に位置決めする。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態による多層せん断モードPZTデバイス200の斜視図である。PZTデバイス200は、負電極50と、正電極54と、PZT層202a、b、c間に伸びる電極の指204a、bを備えて櫛状にインタリーブされる負電極と正電極の指を有する複数のPZT層202a、b、cと、を含む。
【0029】
図3は、作動される時のデバイスのせん断モード変形を示す破線302を有する、例示的な実施形態による多層せん断モードPZTデバイス300の側面図である。
【0030】
図4A図4Fは、様々な実施形態による、PZTデバイスを製造する例示的な第1製造方法を示すプロセスフロー図を構成し、処理中の未完成のデバイス20の側断面図を示す。
【0031】
図4において、多層PZTデバイスは、カプトン(Kapton、登録商標)搭載テープのような基板11上にアディティブ法を用いて形成され、その結果、当技術分野で知られている技術を含む技術によってスタックを形成するために、PZT材料の多数の層12、14、16、18が互いの上に積み重ねられる。PZTデバイスのいくつかの実施形態は、PZT材料の少なくとも4つの層を含む。導電材料層22、24、26、28は、一般的に堆積された金属であり、それぞれのPZT材料層の上にそれぞれに配置される。様々な実施形態によれば、堆積された金属層は最終的にデバイスの電極の一部となる。説明を明確にするために、PZT材料層22、24、26、28の間の隙間23、25、27は充填されていないものとして示されている。いくつかの実施形態によれば、間隙は、PZT材料層22、24、26、28が堆積されると同時に、PZT材料によって一般に充填される。埋め込まれないそれらの層を表示すると、デバイスの異なる層を明確にするのに役立つ。図4に示すような未完成の多層スタックは、一般に、未完成のPZTデバイス20と呼ばれる。
【0032】
説明のため、図4Aに示すような未完成のデバイス20を参照し、図面の下側から第1PZT層12と、図面の下側から第3のPZT層16と、を奇数PZT層と呼ばれ、図面の下側から第2PZT層14と、図面の下側から第4のPZT層18と、を偶数PZT層と呼ばれる。
【0033】
導電層28がPZT層18の上に形成され、図4Aを示すようにPZT層18の上にわたって配置されながら、導電層22、24、26は、隣接の圧電層の間に配置される。例えば、導電層22は、隣接の圧電層12、14の間に配置される。いくつかの実施形態によれば、全ての導電層22、24、26、28より少ない導電層は、未完成のデバイス20の側面に伸びる。特に、図4A~4Fを示すような実施形態において、導電層22、24、26、28のいずれも、デバイスの側面に伸びない。
【0034】
図4Bにおいて、側端電極32及び34は、第1PZT層12に加えられ、側端電極36及び38は、第3のPZT層16に加えられた。それらの側端電極32、34、36、38は、例えば、マスキング及びスパッタリングによって配置され得る。側端電極32、34及び側端電極36、38は、正のポーリング方向の矢印43および45によって示されるように、PZT材料をポーリングするのに十分な正のX方向の電界を生成するために、各電極対32、34および36、38にわたってポーリング電圧を印加することにより、未完成のデバイス20をポーリングするために用いられる。
【0035】
代替的に、奇数PZT層12、16に側端電極32、34及び側端電極36、38が形成される代わりに、導電指がそれらの層の側端に押し付けることができ、それらの層をポーリングする電界を誘導するために導電指にポーリング電圧が印加される。
【0036】
図4Cにおいて、側端電極32、34及び側端電極36、38は、切断(ダイシング)又は、研磨若しくはレーザーアブレーションなどによるアブレーションのような当技術分野で知られている技術を含む技術によって、取り外される。
【0037】
図4Dにおいて、側端電極42、44及び側端電極46、48は、偶数PZT層に加えられ、それらの偶数層は、奇数PZT層12、16と反対方向にポーリングされる。
【0038】
図4Eにおいて、デバイスの端部は、PZT層12、14、16、18のすべてが同一の広がりを持つように切断、研磨、または他の方法でアブレーションされる。図示のように、このステップは、関連するPZT層12、14、16、18の端部に加えられた側端電極42、44及び側端電極46、48を取り外す。しかし、それらの電極を全面にまたは完全に取り外すことが厳密に必要ではない。
【0039】
図4Fにおいて、電極は、それぞれの導電層と電気的に接触させるために、デバイスの端部に配置される。特に、負(-)電極と呼ばれる第1電極50は、当技術分野で知られている技術を含む技術を用いて、デバイスの右側の追加の堆積金属によって電気的に互いにグループにまとめる導電層24、28を含む。また、正(+)電極と呼ばれる第2電極54は、デバイスの左側の追加の堆積金属によって電気的に互いに電気的にグループにまとめる導電層22、26を含む。第1電極50および第2電極54の追加により、デバイスは完成したPZTデバイス100になる。様々な実施形態によれば、基板11は、当技術分野で知られている技術を含む技術によって、完成したPZTデバイス100から取り外される。
【0040】
代替の実施形態は、図4Fに示すようなデバイスの端部の代わりに第1電極50および第2電極54をそれぞれ形成するために、図4Eに示すようなデバイスを参照して、デバイスの表面およびデバイスの背面で電極を配置することを含む。具体的に、図4Eを参照して、説明のため、未完成のデバイス20の水平方向はX軸であり、Y軸はページから出ている。図4Eに示すように、本明細書に記載される技術を含む技術によって、第1電極50は、未完成のデバイス20の表面に配置され、第2電極は、Y軸に沿って未完成のデバイスの反対側に、すなわち、デバイスの背面に配置される(図4Eに示せず)。未完成のデバイス20は、本明細書に記載される技術を含む技術によって、さらに処理することができる。
【0041】
例示的なPZTデバイス200を図2に示す。作動電圧が電極50および54にわたって印加されると、PZT層202a、b、cのそれぞれは、d15モードでせん断において変形する。図3に示すポーリング方向矢印308、310、312に示すように、交互のPZT層は反対方向にポーリングされ、かつ、電極に印加される作動電圧によって引き起こされる電界の極性は、交互に反対の方向にあるので、デバイスのPZT層202a、b、cのそれぞれは、せん断において同じの方向に変形する。その結果、図3にPZTデバイス300によって示されるように、デバイス全体がせん断において変形する。つまり、せん断モード変形を示す破線302によって示されるように、デバイスの上面または第1面304は、デバイスの下面または第2面306に対してせん断において移動する。圧電係数d15は圧電係数d31よりも高いので、上面304の水平変位は、従来のd31モードで動作する同様のサイズのPZTデバイスの水平変位よりも大きいと予想される。
【0042】
本明細書および特許請求の範囲の「上」、「下」、「上側」、「下側」、およびX方向、Y方向及びZ方向などの用語は、特定の空間的または重力的方向ではなく、互いに対する相対的な部分の空間的関係を示す便宜上の用語であることが理解される。従って、アセンブリが、図面に示され、かつ明細書に記載される特定の向きに向けられるか、その方向または任意の他の回転変動から上下反転されるかどうかにかかわらず、用語は、構成部品のアセンブリを包含することが意図される。
【0043】
本明細書の用語「本発明」は、単一の必須要素または要素群を有する単一の発明のみが提示されることを意味すると解釈されるべきではないことが理解される。同様に、「本発明」という用語は、多数の別個の技術革新を包含し、該別個の技術革新のそれぞれが、別個の発明とみなされ得ることも理解される。本発明は、その好ましい実施形態および図面に関連して詳細に説明されたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な適応および修正が達成され得ることは、当業者には明らかであろう。例えば、電極は必ずしも金属層である必要はなく、導電性エポキシのような他の導電性材料であってもよい。また、本明細書で説明した例示的な4層デバイスを含み、2、3、4、5、6またはそれ以上のPZT層を有するデバイスを製造するために、本明細書に記載のプロセスを用いることができる。よって、上述した詳細な説明および添付の図面は、本発明の範囲を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの適切に解釈される法的同等物からのみ推測されるべきであることを理解されたい。

図1
図2
図3
図4A-B】
図4C-D】
図4E-F】