(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ベルクランク装置及びベルクランクユニット
(51)【国際特許分類】
E05B 79/22 20140101AFI20220207BHJP
E05B 77/34 20140101ALI20220207BHJP
E05B 81/30 20140101ALI20220207BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
E05B79/22 A
E05B77/34
E05B81/30
B60J5/00 M
(21)【出願番号】P 2017148488
(22)【出願日】2017-07-31
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】矮竹 尚基
(72)【発明者】
【氏名】瀧 健裕
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145167(JP,A)
【文献】特開平11-125046(JP,A)
【文献】実開昭51-042928(JP,U)
【文献】特開昭59-024077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に収容されたウィンドガラスの昇降範囲の最下点に位置した前記ウィンドガラスの下端部よりも下方位置に配置されるベルクランク装置であって、
前記インナーパネルに固定されるブラケットと、
基部と、前記基部から別々の方向に延びる第1部分及び第2部分とを有し、回転可能に前記ブラケットに支持されたベルクランクレバーと、
前記ブラケットに取り付けられ、前記基部を回動可能に支持する摺動部と、を有し、
前記第1部分は、前記アウターパネルに設けられたドアハンドルに接続される第1の伝達部材が接続される第1の接続部を有し、
前記第2部分は、前記インナーパネルに設けられたリモートコントロール装置に接続される第2の伝達部材が接続される第2の接続部を有し、
前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記第1の接続部
及び前記第2の接続部は、前記摺動部よりも上方に位置している
ベルクランク装置。
【請求項2】
前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において
、前記第2の接続部
は、前記第1の接続部よりも上方に位置している
請求項1に記載のベルクランク装置。
【請求項3】
前記ベルクランクレバーは、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記第1の接続部から下方に流れる液体を前記摺動部以外の部分に案内するための案内部を含む
請求項1又は2に記載のベルクランク装置。
【請求項4】
前記案内部は、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記ベルクランクレバーに一体に形成された下方に延びる突起を含む
請求項3に記載のベルクランク装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のベルクランク装置と、
前記ベルクランク装置に装着されるプロテクタと、
を備えるベルクランクユニット。
【請求項6】
前記プロテクタは、前記ウィンドガラス側に開口し、前記第1の伝達部材が挿入される開口部を含み、
前記第1部分は、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記開口部と鉛直方向に重なる位置に配置されている
請求項5に記載のベルクランクユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルクランク装置及びベルクランクユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両ドアには、ウィンドガラスの降下を許容しながらアウターパネルに設けられたドアハンドルの操作力をリモートコントロール装置に伝達するためのベルクランク装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。このベルクランク装置は、車両ドアのインナーパネルにおいてウィンドガラスの最下点よりも下方に固定されるブラケットと、ブラケットに回動可能に支持されたクランクレバーと、クランクレバーの第1の接続部に一端が連結されて上方に延び、その他端がドアハンドルに連結される第1の伝達部材とを有する。そしてベルクランク装置は、クランクレバーの第2の接続部に連結された第2の伝達部材を介してリモートコントロール装置にドアハンドルからの動力を伝達する。一般に、第2の伝達部材は、金属製のワイヤーが樹脂製のチューブ内に挿通されてなるケーブルが用いられる。第2の伝達部材は、チューブから導出されたワイヤーが第2の接続部に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車両ドアでは、ドアハンドルから第1の伝達部材を介して車両ドアにおけるインナーパネルとアウターパネルとの間に雨水が浸入することがある。第1の伝達部材を伝わる雨水は、ベルクランク装置に伝達される。
【0005】
ところで、特許文献1のベルクランク装置のベルクランクレバーは、第1の接続部の鉛直方向の下方に第2の接続部が位置する構成である。このため、第1の伝達部材からベルクランク装置に伝わる雨水は、第1の接続部から第2の接続部を介して第2の伝達部材のワイヤーに伝わる場合がある。ワイヤーの防腐及び防錆の観点から第2の伝達部材に雨水が伝わることを抑制することが好ましい。
【0006】
本発明の目的は、第1の伝達部材からベルクランク装置を介して第2の伝達部材に液体が伝わることを抑制できるベルクランク装置及びベルクランクユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するベルクランク装置は、車両ドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に収容されたウィンドガラスの昇降範囲の最下点に位置した前記ウィンドガラスの下端部よりも下方位置に配置されるベルクランク装置であって、前記インナーパネルに固定されるブラケットと、基部と、前記基部から別々の方向に延びる第1部分及び第2部分とを有し、回転可能に前記ブラケットに支持されたベルクランクレバーと、前記ブラケットに取り付けられ、前記基部を回動可能に支持する摺動部と、を有し、前記第1部分は、前記アウターパネルに設けられたドアハンドルに接続される第1の伝達部材が接続される第1の接続部を有し、前記第2部分は、前記インナーパネルに設けられたリモートコントロール装置に接続される第2の伝達部材が接続される第2の接続部を有し、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記第1の接続部及び前記第2の接続部は、前記摺動部よりも上方に位置している。
【0008】
この構成によれば、車両ドアがロックされた状態におけるベルクランクレバーの回転位置において第1の接続部及び第2の接続部が鉛直方向に重ならないため、第1の伝達部材から伝わる液体がベルクランクレバーに伝わった場合、液体が第2の接続部に伝わることを抑制できる。したがって、第1の伝達部材からベルクランク装置に伝わった液体が第2の伝達部材に伝わることを抑制できる。
【0009】
上記ベルクランク装置において、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記第2の接続部は、前記第1の接続部よりも上方に位置していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1の伝達部材を介して第1の接続部に伝わった液体が第2の接続部に伝わることを効果的に抑制できる。したがって、第1の伝達部材からベルクランク装置に伝わった液体が第2の伝達部材に伝わることを一層抑制できる。
【0011】
上記ベルクランク装置において、前記ベルクランクレバーは、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記第1の接続部から下方に流れる液体を前記摺動部以外の部分に案内するための案内部を含むことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1の伝達部材を介して第1の接続部に伝わった液体が案内部によって摺動部以外の部分に案内される。したがって、第1の伝達部材からベルクランク装置に伝わった液体が摺動部、ひいては第2の伝達部材に伝わることを一層抑制できる。
【0013】
上記ベルクランク装置において、前記案内部は、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記ベルクランクレバーに一体に形成された下方に延びる突起を含むことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、案内部を設けるための専用部材を追加しなくてもよいため、ベルクランク装置の部品点数の増加を抑制できる。
上記課題を解決するベルクランクユニットは、上記ベルクランク装置と、前記ベルクランク装置に装着されるプロテクタと、を備える。
【0015】
例えばウィンドガラスに付着した雨水等の液体がウィンドガラスから落下してベルクランク装置に被水する場合のように第1の伝達部材を介して第1の接続部に伝わる以外の経路によってベルクランク装置に液体が付着する場合がある。この構成によれば、プロテクタによって第1の伝達部材を介して第1の接続部に伝わる以外の経路からの液体がベルクランク装置に付着することを抑制できる。したがって、第1の伝達部材を介して第1の接続部に伝わる以外の経路からの液体が第2の接続部及び摺動部に付着することを抑制できる。
【0016】
上記ベルクランクユニットにおいて、前記プロテクタは、前記ウィンドガラス側に開口し、前記第1の伝達部材が挿入される開口部を含み、前記第1部分は、前記車両ドアがロックされた状態における前記ベルクランクレバーの回転位置において、前記開口部と鉛直方向に重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、プロテクタの開口部を介してプロテクタ内に浸入する液体が第1部分に付着しやすくなる。しかし、第2の接続部が第1の接続部と鉛直方向に重ならないため、第1部分に付着した液体は、第2の伝達部材に伝わることが抑制される。したがって、第1の伝達部材が挿入される開口部がプロテクタに設けられたとしても、第2の伝達部材に液体が伝わることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
上記ベルクランク装置及びベルクランクユニットによれば、第1の伝達部材からベルクランク装置を介して第2の伝達部材に液体が伝わることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】車両ドアに設けられたドアハンドル、リモートコントロール装置、ウィンドガラス、及びベルクランクユニットの位置関係を模式的に示す説明図。
【
図3】車両ドアのインナーパネルに設けられたベルクランク装置を示す側面図。
【
図5】ベルクランクレバーが第1位置のときのベルクランク装置の側面図。
【
図6】ベルクランクレバーが第2位置のときのベルクランク装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、ベルクランク装置及びベルクランクユニットを備える車両ドアを具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両ドア1は、車両前後方向に移動することにより車両のボディ側面に設けられた開口部(図示略)を開閉するスライドドアとして構成されている。より詳細には、車両ドア1は、車両前方側(同図中、左側)に移動することにより、ボディの開口部を閉塞する閉状態となり、車両後方側(同図中、右側)に移動することにより、その開口部を介して乗員が乗降可能な開状態になる。そして、
図2に示すように、車両ドア1の外表面(意匠面)を構成するアウターパネル2には、当該車両ドア1を開閉すべく操作されるドアハンドル3が設けられている。
【0021】
詳述すると、
図1に示すように、車両ドア1には、当該車両ドア1を全閉位置で拘束するための全閉ロック(リアロック)4aが設けられている。また、車両ドア1には、当該車両ドア1を全開位置で拘束するための全開ロック4bが設けられている。そして、これらの各ロック機構(ラッチ機構)4は、リモートコントロール装置5(リモコン)から延びる各伝達部材Tを介してドアハンドル3と機械的に連結されている。
【0022】
即ち、ドアハンドル3に対する操作入力は、リモートコントロール装置5を介して機械的に各ロック機構4に伝達されるようになっている。そして、その伝達される操作力によってロック機構4による車両ドア1の拘束が解除されることにより、全閉位置になる車両ドア1の開方向への移動、又は全開位置になる車両ドア1の閉方向への移動が許容されるようになっている。
【0023】
また、車両ドア1は、図示しない昇降機(ウィンドウレギュレータ)を用いてウィンドガラス6を昇降することが可能な構成となっている。即ち、
図2に示すように、ウィンドガラス6は、その開作動によって車両ドア1を構成するアウターパネル2とインナーパネル7との間に収容される。そして、車両ドア1には、このウィンドガラス6を迂回して、そのドアハンドル3に対する操作入力をリモートコントロール装置5に伝達するためのベルクランクユニット10が設けられている。
【0024】
具体的には、
図2に示すように、リモートコントロール装置5は、インナーパネル7に固定されている。また、ベルクランクユニット10は、同じくインナーパネル7におけるリモートコントロール装置5よりも下方、その車両ドア1内に収容されるウィンドガラス6の下端よりも下方側の位置に固定されている。詳しくは、インナーパネル7における車両前方側(
図3中、右側)の側壁部7a近傍に固定されている。尚、ウィンドガラス6の下端とは、当該ウィンドガラス6が車両ドア1内で昇降できる領域(昇降範囲)のうち最下点にある場合のウィンドガラス6の下端である。そして、ベルクランクユニット10は、このウィンドガラス6を迂回する下方位置において、ドアハンドル3に接続される第1の伝達部材T1とリモートコントロール装置5に接続される第2の伝達部材T2とを連結する。本実施形態では、第1の伝達部材T1には、金属製のロッドが用いられている。また、第2の伝達部材T2には、金属製のワイヤーを樹脂製のチューブ内に挿通してなる周知のワイヤーケーブルが用いられている。ワイヤーの一例は、ステンレス鋼である。
【0025】
図4~
図8を参照して、ベルクランクユニット10の詳細な構成について説明する。
図4に示すように、ベルクランクユニット10は、ベルクランク装置20と、ベルクランク装置20に装着されるプロテクタ70とを備える。
【0026】
図4~
図6に示すように、ベルクランク装置20は、インナーパネル7(
図3参照)に固定されるブラケット30と、このブラケット30に対して回動可能となるベルクランクレバー40と、ブラケット30に対してベルクランクレバー40を回動可能に支持する摺動部50とを備える。本実施形態のブラケット30及びベルクランクレバー40は、板材を曲げ加工することにより形成されている。
【0027】
ブラケット30は、基部31と、基部31から別々の方向に延びる複数の腕部32とを有する。基部31及び複数の腕部32は、一体に形成されている。本実施形態では、ブラケット30は、3本の腕部32を有する。各腕部32の先端部には、固定部33が形成されている。固定部33がインナーパネル7に接触した状態で、ボルト(図示略)が固定部33に挿通されてインナーパネル7に締結されることにより、ブラケット30がインナーパネル7に固定される。
【0028】
ベルクランクレバー40は、ドアハンドル3(
図1参照)の操作に基づいて回動する。ベルクランクレバー40は、ドアハンドル3が操作されていない第1位置(
図5参照)と、ドアハンドル3が操作されている第2位置(
図6参照)との間で回動可能である。即ち、ベルクランクレバー40が第1位置のとき、車両ドア1がロックされた状態になり、ベルクランクレバー40が第2位置のとき、車両ドア1のロックが解除された状態になる。ベルクランクレバー40は、ブラケット30においてベルクランクレバー40の回動方向に沿って延びる長孔34と、ベルクランクレバー40において長孔34に挿入される係合爪44とによって規定される回動可能範囲で回動可能である。回動可能範囲は、第1位置と第2位置との間の回動範囲よりも大きい。これにより、ベルクランクレバー40が第1位置と第2位置との間の回動範囲よりも大きく回動しても係合爪44が長孔34に接触することによってベルクランクレバー40の回動が規制される。
【0029】
ベルクランクレバー40は、摺動部50の回転軸Jに沿う方向から見て、略V字状に形成されている。ベルクランクレバー40は、摺動部50が取り付けられる基部41と、基部41から別々の方向に延びる第1部分42及び第2部分43とを有する。第1部分42には第1の伝達部材T1が回動可能に接続され、第2部分43には第2の伝達部材T2が回動可能に接続されている。
【0030】
基部41における第1部分42及び第2部分43側の部分には、第1部分42及び第2部分43からブラケット30側に向けて折り曲げられる折曲部41aが形成されている。基部41は、第1部分42よりもブラケット30側に位置している。係合爪44は、基部41における第2部分43側に設けられている。
【0031】
図5に示すように、第1部分42は、回転軸Jに沿う方向から見て基部41から鉛直方向と交差する方向のうちの所定の一方向に延びている。本実施形態の第1部分42は、回転軸Jに沿う方向から見て基部41から車両前方側に向かうにつれて上方に延びている。第2部分43は、回転軸Jに沿う方向から見て基部41から鉛直方向と交差する方向のうちの所定の一方向とは異なる方向に延びている。本実施形態の第2部分43は、ベルクランクレバー40が第1位置(
図4参照)において回転軸Jに沿う方向から見て基部41から車両後方側に向かうにつれて上方に延びている。詳細には、第1の伝達部材T1とベルクランクレバー40との接続点P1と回転軸Jとを結んだ線分L1と、第2の伝達部材T2とベルクランクレバー40との接続点P2と回転軸Jとを結んだ線分L2との成す角度θが90°未満である。また線分L1の長さと線分L2の長さとは、互いに概ね等しい。なお、接続点P1は、第1部分42に対する第1の伝達部材T1の回動中心である。接続点P2は、第2部分43に対する第2の伝達部材T2の回動中心である。
【0032】
第1部分42の先端部には、第1の伝達部材T1が接続される第1の接続部42aが形成されている。第2部分43は、第2部分43をブラケット30とは反対側に折り返して形成された第2の接続部43aを有する。第2部分43において第2の接続部43aよりも基部41側には、反ブラケット30側に向けて第2部分43が折り曲げられる折曲部43bが形成されている。
【0033】
第1部分42には、第1部分42に付着した雨水等の液体を摺動部50以外の部分に案内する案内部45が形成されている。案内部45は、第1部分42の外縁のうちの第2部分43とは反対側の外縁に形成されている。案内部45は、第1部分42において基部41と第1の接続部42aとの間に形成されている。
図5に示すとおり、ベルクランクレバー40が第1位置のとき、案内部45は、第1の接続部42aの下方に位置している。本実施形態では、案内部45は、ベルクランクレバー40と一体に形成され、第1部分42の外縁から下方に延びる突起45aである。
【0034】
図7に示すように、摺動部50は、ピン51を有する。ピン51は、ベルクランクレバー40の基部41の一部をブラケット30とは反対側から覆う頭部52と、基部41の貫通孔41bに挿入される第1挿入部53と、ブラケット30の貫通孔35に挿入される第2挿入部54と、ブラケット30に固定される固定部55とを有する。頭部52、第1挿入部53、及び第2挿入部54は、円柱状に形成され、頭部52、第1挿入部53、及び第2挿入部54の順に外径が小さくなる。本実施形態では、固定部55がブラケット30に対してベルクランクレバー40とは反対側に突出した状態で固定部55がかしめ加工されることによりピン51がブラケット30に固定されている。ベルクランクレバー40は、頭部52とブラケット30とにより挟まれている。ベルクランクレバー40と頭部52との間、及びベルクランクレバー40とブラケット30との間のそれぞれには、僅かな隙間が形成されている。このため、摺動部50は、ブラケット30に固定され、ベルクランクレバー40の基部41を摺動可能に支持している。このように、ベルクランクレバー40の回動を支持する摺動部50の構造がピン51と貫通孔41bとからなり、専用の軸受部材(例えば、転がり軸受)を必要としない。したがって、ベルクランク装置20の部品点数の増加を抑制でき、ベルクランク装置20のコストアップを抑制できる。
【0035】
図4に示すように、ブラケット30においてベルクランクレバー40よりも車両後方側には、第2の伝達部材T2の遊動長を調整可能な遊動長調整機構60が設けられている。遊動長調整機構60は、ブラケット30に対してスライド可能に第2の伝達部材T2を保持する保持部61と、保持部61をスライド方向の一方向に付勢する付勢部材62とを備える。本実施形態の付勢部材62は、コイルばねである。付勢部材62の一端はブラケット30に連結され、付勢部材62の他端は保持部61に連結されている。本実施形態では、コイルばね(付勢部材62)はベルクランクレバー40が第1位置のときに自然長であり、第2位置のときに伸長される。
【0036】
図8に示すように、プロテクタ70は、ベルクランク装置20を覆っている。プロテクタ70は、摺動部50と、ベルクランクレバー40の基部41及び第2部分43(第2の接続部43a)と、遊動長調整機構60とを覆っている。プロテクタ70は、第1の伝達部材T1が挿通されるための第1開口部71と、第2の伝達部材T2が挿通されるための第2開口部72とを有する。ベルクランクユニット10の平面視において、第1開口部71は、ベルクランクレバー40の第1部分42に対応する部分を開口している。第1開口部71は、ウィンドガラス6側(上方側)に向けて開口している。第2開口部72は、車両前方側に向けて開口している。
【0037】
プロテクタ70の第1開口部71において、第1開口部71に挿入された第1の伝達部材T1よりもブラケット30(インナーパネル7(
図3参照))側には、略平板状の開口閉塞部73が設けられている。開口閉塞部73の一端は、第1開口部71の周縁に連結されており、他端は、第1開口部71から離れている。このため、開口閉塞部73と第1開口部71との間を介して第1開口部71に第1の伝達部材T1を挿入することができるため、ベルクランク装置20へのプロテクタ70の装着が容易となる。
【0038】
開口閉塞部73は、プロテクタ70と一体に形成されている。開口閉塞部73は、先端側から基端側に向かうにつれて下方に傾斜している。このため、開口閉塞部73上に雨水が付着したとき、雨水は開口閉塞部73の基端側に流れる。このため、第1開口部71に雨水が浸入しにくくなる。
【0039】
上記のように構成されたベルクランクユニット10の作用について説明する。なお、
図9の太線矢印は、雨水の流れを示している。
図2に示すように、ベルクランクユニット10は、ウィンドガラス6の昇降範囲の最下点におけるウィンドガラス6の下端部よりも下方に位置するため、ウィンドガラス6から落下した雨水を被水する場合がある。しかし、ベルクランクユニット10のプロテクタ70によって、ベルクランク装置20のベルクランクレバー40、摺動部50、及び第2の伝達部材T2に被水することを抑制できる。
【0040】
一方、
図8に示すように、プロテクタ70は、第1開口部71を通じて第1の伝達部材T1が挿入されているため、第1の伝達部材T1に伝わる雨水がプロテクタ70の内部に浸入する。第1の伝達部材T1に伝わる雨水は、
図9に示すように、ベルクランクレバー40の第1の接続部42aに伝わる。第1の接続部42aに伝わる雨水は、重力の作用により第1の接続部42aの下方に流れる。そして第1の接続部42aと基部41との間に設けられた案内部45によって、雨水がベルクランクレバー40から下方に落下する。このため、ベルクランクレバー40に伝わった雨水は、基部41に設けられた摺動部50、及び第2の接続部43aに伝わることが抑制される。
【0041】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ベルクランクレバー40が第1位置のとき、ベルクランクレバー40の回動方向において、第1の接続部42aが摺動部50に対して一方側に配置され、第2の接続部43aが摺動部50に対して他方側に配置され、第1の接続部42a及び第2の接続部43aが摺動部50よりも上方に位置している。この構成によれば、ベルクランクレバー40が第1位置のときに第1の接続部42a及び第2の接続部43aが鉛直方向に重ならないため、第1の伝達部材T1から伝わる雨水がベルクランクレバー40に伝わった場合、雨水が第2の接続部43aに伝わることを抑制できる。したがって、第1の伝達部材T1からベルクランク装置20に伝わった雨水が第2の伝達部材T2に伝わることを抑制できる。このように、第2の伝達部材T2に雨水が伝わることを抑制できるため、第2の伝達部材T2のワイヤーをステンレス鋼よりも防錆性能が低く安価な金属材料を用いることができる。
【0042】
また、摺動部50の回転軸Jに沿った方向において、第1部分42及び第2部分43が重なる構成と比較して、回転軸Jに沿った方向のベルクランクレバー40の厚さを薄くできる。したがって、回転軸Jに沿った方向におけるベルクランク装置20の薄型化を図ることができる。
【0043】
(2)ベルクランクレバー40が第1位置のとき、第2の接続部43aは、第1の接続部42aよりも上方に位置しているため、第1の伝達部材T1を介して第1の接続部42aに伝わった雨水が第2の接続部43aに伝わることを効果的に抑制できる。したがって、第1の伝達部材T1からベルクランク装置20に伝わった雨水が第2の伝達部材T2に伝わることを一層抑制できる。またベルクランクレバー40が第2位置のときも、第2の接続部43aが第1の接続部42aよりも上方に位置しているため、第1の伝達部材T1を介して第1の接続部42aに伝わった雨水が第2の接続部43aに伝わることを効果的に抑制できる。
【0044】
(3)ベルクランクレバー40が第2位置のとき、第1の接続部42aは、摺動部50よりも下方に位置している。このため、ベルクランクレバー40が第2の位置のとき、第1の伝達部材T1を介して第1の接続部42aに伝わった雨水が摺動部50に伝わることを抑制できる。
【0045】
(4)案内部45は、ベルクランクレバー40に一体に形成された突起45aを含む。これにより、案内部45を設けるための専用部材を追加しなくてもよいため、ベルクランク装置20の部品点数の増加を抑制できる。
【0046】
(5)案内部45は、ベルクランクレバー40における第1の接続部42aと基部41との間に設けられている。このため、第1の接続部42aに伝わった雨水は、案内部45を介して下方に落下する、すなわち雨水が摺動部50以外の部分に案内される。したがって、雨水が摺動部50に伝わることを抑制できる。
【0047】
(6)例えばウィンドガラス6に付着した雨水がウィンドガラス6から落下してベルクランク装置20に被水する場合のように第1の伝達部材T1を介して第1の接続部42aに伝わる以外の経路によってベルクランク装置20に雨水が付着する場合がある。本実施形態では、ベルクランクユニット10がプロテクタ70を備えるため、プロテクタ70によって第1の伝達部材T1を介して第1の接続部42aに伝わる以外の経路からの雨水がベルクランク装置20に付着することを抑制できる。したがって、第1の伝達部材T1を介して第1の接続部42aに伝わる以外の経路からの雨水が第2の接続部43a及び摺動部50に付着することを抑制できる。
【0048】
(7)プロテクタ70の第1開口部71と第1部分42とが鉛直方向において重なる位置に設けられる。これにより、第1開口部71を介してプロテクタ70内に浸入する雨水が第1部分42に付着しやすくなる。これにより、案内部45を介して第2の接続部43a及び摺動部50以外の部分に雨水が案内されるため、第2の接続部43a及び摺動部50に雨水が伝わることを抑制できる。
【0049】
(8)ベルクランクレバー40が回動するとき、摺動部50のピン51とベルクランクレバー40とが摺動する。このため、ピン51及びベルクランクレバー40の少なくとも一方に錆が発生すると、ベルクランクレバー40の円滑な回動が困難となる。しかし、ベルクランク装置20は、案内部45により摺動部50に雨水が浸入することが抑制されるため、ピン51、及びベルクランクレバー40においてピン51と摺動する部分である基部41が錆びにくくなる。したがって、ベルクランクレバー40の円滑な回動を維持しやすい。
【0050】
上記実施形態に関する説明は、本発明に従うベルクランク装置及びベルクランクユニットが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うベルクランク装置及びベルクランクユニットは、上記実施形態以外に例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合せられた形態を取り得る。
【0051】
・上記実施形態において、案内部45の形状は任意に変更可能である。例えば、
図10に示すように、案内部45は、第1の伝達部材T1の周りを囲う第1の溝46と、第1の溝46の下端部から下方に延びる第2の溝47とを有する溝形状であってもよい。第2の溝47は、ベルクランクレバー40の外縁まで延びている。この構成によれば、第1の伝達部材T1から第1の接続部42aに伝わる雨水は、第1の溝46に流れ、第2の溝47を介してベルクランクレバー40から下方に落下する。これにより、摺動部50及び第2の接続部43aに雨水が伝わることを抑制できる。加えて、第1の溝46及び第2の溝47は、ベルクランクレバー40をプレス加工で形成するときに一体に形成される。このため、案内部45の専用の部材を追加することを回避できるため、ベルクランク装置20の製造コストの増加を抑制できる。
【0052】
また例えば、
図11に示すように、係合爪44が案内部45を兼ねる構成であってもよい。係合爪44は、ベルクランクレバー40において第1の接続部42aと摺動部50との間に設けられている。この構成によれば、第1の伝達部材T1から第1の接続部42aに伝わる雨水は、係合爪44を介してベルクランクレバー40から下方に落下する。これにより、摺動部50及び第2の接続部43aに雨水が伝わることを抑制できる。加えて、案内部45の専用の部材を追加することを回避できるため、ベルクランク装置20の製造コストの増加を抑制できる。
【0053】
・上記実施形態では、
図6に示すように、ベルクランクレバー40が第2位置のとき、第1の接続部42aが摺動部50よりも下方に位置したが、ベルクランクレバー40が第2位置のときの第1の接続部42aの位置はこれに限られない。例えば、ベルクランクレバー40が第2位置のとき、第1の接続部42aが摺動部50よりも上方に位置してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、摺動部50のピン51がブラケット30に固定された固定軸であったが、これに限られず、ピン51がベルクランクレバー40に固定された回転軸であってもよい。この構成においても、摺動部50は、ブラケット30に対してベルクランクレバー40を回動可能に支持できる。
【0055】
・ベルクランクユニット10からプロテクタ70を省略したベルクランク装置20が車両ドア1に設けられてもよい。
・上記実施形態では、第1の伝達部材T1に金属製のロッドが用いられ、第2の伝達部材T2にワイヤーが用いられたが、これに限られず、例えば第1の伝達部材T1及び第2の伝達部材T2の両方にロッドを用いる等、任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…車両ドア、2…アウターパネル、3…ドアハンドル、5…リモートコントロール装置、6…ウィンドガラス、7…インナーパネル、10…ベルクランクユニット、20…ベルクランク装置、30…ブラケット、40…ベルクランクレバー、41…基部、42…第1部分、42a…第1の接続部、43…第2部分、43a…第2の接続部、45…案内部、45a…突起、50…摺動部、70…プロテクタ、71…第1開口部(開口部)、T1…第1の伝達部材、T2…第2の伝達部材。