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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】薬液滴下装置及び薬液吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20220207BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20220207BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20220207BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
B01J4/00 103
B05C5/00 101
B05C11/00
G01N1/00 101K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017159482
(22)【出願日】2017-08-22
(65)【公開番号】P2019037910
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】横山 周平
(72)【発明者】
【氏名】海宝 敏
(72)【発明者】
【氏名】楠 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 誠也
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-086080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0190185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00- 7/02
G01N 1/00
B05C 5/00
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を吐出する薬液吐出装置であって、
使用済みであるかを示す使用履歴を格納する記憶部と、
薬液滴下装置に装着するための係合部と、
前記係合部により係合された前記薬液滴下装置からの前記使用履歴に応じた制御に基づいて薬液を吐出する吐出部と、
前記薬液滴下装置とデータを送受信する通信部と、
前記通信部を通じて前記記憶部が記憶する前記使用履歴を前記薬液滴下装置へ送信し、前記吐出部が薬液を吐出した後に、前記薬液滴下装置から前記通信部を通じて受信するコマンドに従って、前記使用履歴として使用済みであることを示す情報を前記記憶部に格納する制御部と、
を備える薬液吐出装置。
【請求項2】
前記吐出部は、ピエゾジェット方式で薬液を吐出する、
前記請求項1に記載の薬液吐出装置。
【請求項3】
薬液滴下装置であって、
薬液を吐出する薬液吐出装置が装着される装着部と、
前記装着部に装着された前記薬液吐出装置が備える記憶部から前記薬液吐出装置が使用済みであるかを示す使用履歴を取得するためのインターフェースと、
前記インターフェースを通じて前記薬液吐出装置から取得する前記使用履歴に応じて前記薬液吐出装置に前記薬液を吐出させ、前記薬液吐出装置に前記薬液を吐出させた後に前記薬液吐出装置へ前記使用履歴として前記薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報を送信する制御部と、
を備える薬液滴下装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記薬液吐出装置に前記薬液を吐出させると、前記薬液吐出装置に前記記憶部前記使用履歴として前記薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報を格納させ
前記薬液吐出装置の吐出部は、ピエゾジェット方式で前記薬液を吐出する、
前記請求項3に記載の薬液滴下装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記薬液吐出装置の薬液保持容器に前記薬液が充填されたことを検知すると、前記薬液吐出装置に前記記憶部前記使用履歴として前記薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報を格納させ
前記薬液吐出装置の吐出部は、ピエゾジェット方式で前記薬液を吐出する、
前記請求項3に記載の薬液滴下装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬液滴下装置及び薬液吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液滴下装置には、薬液吐出装置をセットして、薬液吐出装置に充填された薬液を吐出するものがある。薬液吐出装置は、薬液滴下装置から脱着可能である。薬液吐出装置は、コンタミネーション防止のため、一度薬液を吐出すると破棄される。
しかしながら、従来、薬液滴下装置は、一度薬液を吐出した薬液吐出装置がセットされた場合であっても、薬液の吐出動作を行ってしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-15466号公報
【文献】特開2017-13042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の課題を解決するため、一度使用した薬液吐出装置を用いて吐出動作を行うことを防止することができる薬液滴下装置及び薬液吐出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、薬液を吐出する薬液吐出装置は、記憶部と、係合部と、吐出部と、通信部と、制御部と、を備える。記憶部は、使用済みであるかを示す使用履歴を格納する。係合部は、薬液滴下装置に装着する。吐出部は、前記係合部により係合された前記薬液滴下装置からの前記使用履歴に応じた制御に基づいて薬液を吐出する。通信部は、前記薬液滴下装置とデータを送受信する。制御部は、前記通信部を通じて前記記憶部が記憶する前記使用履歴を前記薬液滴下装置へ送信し、前記吐出部が薬液を吐出した後に、前記薬液滴下装置から前記通信部を通じて受信するコマンドに従って、前記使用履歴として使用済みであることを示す情報を前記記憶部に格納する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る吐出システムの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る薬液吐出装置を示す上面(薬液保持容器側)の平面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る薬液吐出装置を示す下面(薬液吐出側)の平面図である。
図4図4は、図2のF4-F4線断面図である。
図5図5は、図4のF5-F5線断面図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る吐出システムの制御系を示すブロック図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るICモジュールの構成例を示すブロック図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る薬液滴下装置の動作例を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態に係る薬液滴下装置の動作例を示すフローチャートである。
図10図10は、第3の実施形態に係る図4のF10-F10線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際のものと異なる個所があるが、これらは適宜、設計変更することができる。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
実施形態に係る吐出システムは、ピエゾジェット方式で所定の薬液を吐出する。たとえば、吐出システムは、オペレータの操作に従って、マイクロプレートなどに数ピコリットル(pL)から数マイクロリットル(μL)の薬液を吐出する。たとえば、吐出システムは、生物学、化学又は薬学などの分野における研究所などで用いられる。
【0009】
実施形態の吐出システムの物理的な構成例について図1乃至図5を参照して説明する。図1は、吐出システム500の概略構成を示す斜視図である。図2は、薬液吐出装置2の上面図である。図3は、薬液吐出装置2の液滴を吐出する面である下面図を示す。図4は、図2のF4-F4線断面図を示す。図5は、図4のF5-F5線断面図である。
【0010】
図1に示すように、吐出システム500は、薬液滴下装置1、薬液吐出装置2及び後述するホストコンピュータ18などから構成される。なお、吐出システム500は、図1に示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、特定の構成を除外したりしてもよい。
【0011】
薬液滴下装置1(上位装置)は、薬液吐出装置2を制御して薬液吐出装置2に充填された薬液を滴下する。
薬液滴下装置1は、矩形平板状の基台3と、薬液吐出装置2を装着する装着モジュール5(装着部)と、を有する。実施形態では、薬液滴下装置1が1536穴のマイクロプレート4へ薬液を滴下するものとする。ここでは、基台3の前後方向をX方向、基台3の左右方向をY方向と称する。X方向とY方向とは直交する。
【0012】
マイクロプレート4は、基台3に固定される。マイクロプレート4は、複数個のウエル開口300を備える。マイクロプレート4の各ウエル開口300は、所定の薬液を保持する。たとえば、薬液は、細胞、血球、細菌、血漿、抗体、DNA、核酸又はタンパク質を含有した溶液などである。
【0013】
薬液滴下装置1は、基台3の上に、マイクロプレート4の両側に、X方向に延設された左右一対のX方向ガイドレール6a及び6bを有する。各X方向ガイドレール6a及び6bの両端部は、基台3上に突設された固定台7a及び7bに固定される。
【0014】
X方向ガイドレール6a及び6b間には、Y方向に延設されたY方向ガイドレール8が架設される。Y方向ガイドレール8の両端は、X方向ガイドレール6a及び6bに沿ってX方向に摺動可能なX方向移動台9にそれぞれ固定される。
【0015】
Y方向ガイドレール8には、装着モジュール5がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動可能なY方向移動台10が設けられる。Y方向移動台10には、装着モジュール5が装着される。装着モジュール5には、実施形態の薬液吐出装置2が固定される。
【0016】
Y方向移動台10がY方向ガイドレール8に沿ってY方向に移動する動作と、X方向移動台9がX方向ガイドレール6a及び6bに沿ってX方向に移動する動作との組み合わせにより、薬液吐出装置2は、直交するXY方向の任意の位置に移動可能に支持される。
【0017】
装着モジュール5には、薬液吐出装置2を固定するスリット32が形成される。スリット32の前面開口部側から薬液吐出装置2がスリット32の内部に挿入されると、薬液吐出装置2は、薬液滴下装置1に固定される。
【0018】
装着モジュール5は、駆動回路11及びリーダライタ40など備える。
駆動回路11は、後述するプロセッサ15からの信号に基づいて薬液吐出装置2を駆動させる。たとえば、駆動回路11は、薬液吐出装置2から薬液を吐出させるために信号及び電力などを薬液吐出装置2へ供給する。
【0019】
リーダライタ40(通信部)は、薬液吐出装置2のICモジュール50とデータを送受信するためのインターフェース装置である。リーダライタ40は、ICモジュール50の通信方式に応じたインターフェースにより構成される。たとえば、ICモジュール50が接触型のモジュールである場合、リーダライタ40は、ICモジュール50のコンタクト部と物理的かつ電気的に接続するための接触部などにより構成される。
【0020】
また、ICモジュール50が非接触型のモジュールである場合、リーダライタ40は、ICモジュール50との無線通信を行うためのアンテナ及び通信制御部などにより構成される。リーダライタ40では、ICモジュール50に対する電源供給、クロック供給、リセット制御及びデータの送受信などが行われる。
【0021】
このような機能によってリーダライタ40は、プロセッサ15による制御に基づいてICモジュール50に対する電源供給、ICモジュール50の活性化(起動)、クロック供給、リセット制御、種々のコマンドの送信、及び送信したコマンドに対する応答(レスポンス)の受信などを行なう。
【0022】
リーダライタ40は、薬液吐出装置2のICモジュール50の位置に対応した位置に設置される。即ち、リーダライタ40は、薬液吐出装置2が装着モジュール5にセットされた場合に、ICモジュール50と通信可能な位置に設置される。
【0023】
薬液吐出装置2は、薬液滴下装置1の制御に基づいて薬液を吐出する。
薬液吐出装置2は、矩形板状の板体である平板状のベース部材21を有する。図2に示すようにこのベース部材21の表面側には、複数の薬液保持容器22がY方向に一列に並設される。実施形態では8個の薬液保持容器22で説明しているが、個数は8個に限らない。薬液保持容器22は、図4に示すように上面が開口された有底円筒形状の容器である。ベース部材21の表面側には、各薬液保持容器22と対応する位置に円筒形状の薬液保持容器用凹陥部21aが形成される。
【0024】
薬液保持容器22の底部は、薬液保持容器用凹陥部21aに接着固定される。さらに、薬液保持容器22の底部には、中心位置に薬液出口となる下面開口部22aが形成される。薬液保持容器22の上面開口部22bの開口面積は、薬液出口の下面開口部22aの開口面積よりも大きくなっている。
【0025】
また、ベース部材21の両端には、装着モジュール5へ装着固定させるための装着固定用切欠き28(係合部)がそれぞれ形成される。装着固定用切欠き28は、装着モジュール5に係合する。ベース部材21の2つの切欠き28は、半長円形の切欠き形状に形成される。なお、装着固定用切欠き28は、半円形、半楕円形又は三角形の切欠き形状等であってもよい。実施形態では2つの切欠き28の形状は、互いに異なる。これにより、ベース部材21の左右の形状が異なり、ベース部材21の姿勢の確認が行いやすくなっている。
【0026】
また、薬液吐出装置2は、ベース部材21上にICモジュール50を備える。薬液吐出装置2は、薬液滴下装置1にセットされた場合に、リーダライタ40と通信可能な位置にICモジュール50を備える。図2に示す例では、薬液吐出装置2は、Y軸方向において中心部にICモジュール50を備える。
【0027】
ICモジュール50は、薬液吐出装置2の使用履歴を格納する。ICモジュール50は、リーダライタ40からのコマンドに対して、使用履歴を含むレスポンスを送信する。また、ICモジュール50は、リーダライタ40からのコマンドに従って使用履歴を更新する。ICモジュール50については、後に詳述する。
【0028】
図3に示すようにベース部材21の裏面側には、薬液保持容器22と同数の電装基板23がY方向に一列に並設される。電装基板23は、矩形状の平板部材である。ベース部材21の裏面側には、図4に示すように電装基板23の装着用の矩形状の電装基板用凹陥部21bと、電装基板用凹陥部21bと連通する薬液吐出アレイ部開口21dとが形成される。電装基板用凹陥部21bの基端部は、ベース部材21の図3中で上端部近傍位置(図4中で右端部近傍位置)まで延設される。電装基板用凹陥部21bの先端部は、図4に示すように薬液保持容器22の一部と重なる位置まで延設される。電装基板23は、電装基板用凹陥部21bに接着固定される。
【0029】
電装基板23には、電装基板用凹陥部21bとの接着固定面とは反対側の面に電装基板配線24がパターニング形成される。電装基板配線24には、駆動素子130にそれぞれ接続する配線パターン24a及び24bが形成される。
【0030】
電装基板配線24の一端部には、駆動回路11からの電気信号(駆動信号ともいう)を入力するための制御信号入力端子25が形成される。電装基板配線24の他端部には、電極端子接続部26を備える。
【0031】
また、ベース部材21には、薬液吐出アレイ部開口21dが設けられる。薬液吐出アレイ部開口21dは、図3に示すように矩形状の開口部で、ベース部材21の裏面側に薬液保持容器用凹陥部21aと重なる位置に形成される。
【0032】
薬液保持容器22の下面には、薬液保持容器22の下面開口部22aを覆う状態で薬液吐出アレイ27が接着固定される。薬液吐出アレイ27は、ベース部材21の薬液吐出アレイ部開口21dと対応する位置に配置される。
【0033】
図5に示すように薬液吐出アレイ27は、ノズルプレート100と、圧力室構造体200とが積層されて形成される。ノズルプレート100は、薬液を吐出するノズル110と、振動板120と、駆動部である駆動素子130と、駆動素子130を絶縁する絶縁膜140と、保護層である保護膜150と、撥液膜160とを備える。振動板120と駆動素子130とによってアクチュエータ170が構成される。複数のノズル110は、例えば3×3列に配列される。実施形態の複数のノズル110は、薬液保持容器22の薬液出口の下面開口部22aの内側に位置する。薬液保持容器22、圧力室構造体200及びアクチュエータ170などは、薬液を吐出する吐出部を形成する。
【0034】
振動板120は、例えば圧力室構造体200と一体に形成される。圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理すると、シリコンウエハ201の表面にSiO(酸化シリコン)膜が形成される。振動板120は、酸素雰囲気で加熱処理して形成されるシリコンウエハ201の表面のSiO(酸化シリコン)膜を用いる。振動板120は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。
【0035】
振動板120の膜厚は、1~30μmの範囲が好ましい。振動板120は、SiO(酸化シリコン)膜に代えて、SiN(窒化シリコン)等の半導体材料、或いは、Al(酸化アルミニウム)等を用いることもできる。
【0036】
駆動素子130は、各ノズル110に形成される。駆動素子130は、ノズル110を囲む円環状の形状である。駆動素子130の形状は限定されず、例えば円環の一部を切り欠いたC字状でも良い。
【0037】
駆動素子130は、電極端子接続部26と電気的に接続する。駆動素子130は、電極端子接続部26から供給される電力で駆動する。
【0038】
駆動素子130は、圧電材料である圧電体膜を備え、PZT(Pb(Zr,Ti)O:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いた。駆動素子130が備える圧電体膜は、例えばPTO(PbTiO:チタン酸鉛)、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO)、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O-PbTiO)、KNN(KNbOとNaNbOの化合物)、ZnO、AlN等の圧電材料を用いることもできる。
【0039】
駆動素子130が備える圧電体膜は、厚み方向に分極を発生する。分極と同じ方向の電界を駆動素子130に印加すると、駆動素子130は、電界方向と直交する方向に伸縮する。即ち、駆動素子130は、膜厚に対して直交する方向に収縮又は伸長する。
【0040】
ノズルプレート100は、保護膜150を備える。保護膜150は、振動板120のノズル110に連通する円筒状の薬液通過部141を備える。
【0041】
ノズルプレート100は、保護膜150を覆う撥液膜160を備える。撥液膜160は、薬液をはじく特性のある例えばシリコン系樹脂をスピンコーティングして形成される。撥液膜160は、フッ素含有樹脂等の薬液をはじく特性を有する材料で形成することもできる。
【0042】
圧力室構造体200は、振動板120と反対側の面に、反り低減層である反り低減膜220を備える。圧力室構造体200は、反り低減膜220を貫通して振動板120の位置に達し、ノズル110と連通する圧力室210を備える。圧力室210は、例えばノズル110と同軸上に位置する円形に形成される。
【0043】
圧力室210は薬液保持容器22の下面開口部22aに連通する開口部を備える。圧力室210の開口部の幅方向のサイズDより、深さ方向のサイズLを大きくすることが好ましい。深さ方向のサイズL>幅方向のサイズDとすることにより、ノズルプレート100の振動板120の振動により、圧力室210内の薬液にかかる圧力が、薬液保持容器22へ逃げるのを遅らせる。
【0044】
圧力室構造体200は、圧力室210の振動板120が配置される側を第1の面200aとし、反り低減膜220が配置される側を第2の面200bとする。圧力室構造体200の反り低減膜220側には例えばエポキシ系接着剤により薬液保持容器22が接着される。圧力室構造体200の圧力室210は、反り低減膜220側の開口部で、薬液保持容器22の下面開口部22aに連通する。
【0045】
振動板120は、面状の駆動素子130の動作により厚み方向に変形する。薬液吐出装置2は、振動板120の変形により圧力室構造体200の圧力室210内に発生する圧力変化によって、ノズル110に供給された薬液を吐出する。
【0046】
次に、吐出システム500の制御系について説明する。
前述のように、吐出システム500は、薬液滴下装置1、薬液吐出装置2及びホストコンピュータ18などを備える。
【0047】
ホストコンピュータ18は、オペレータからの操作に従って薬液滴下装置1を制御する。ホストコンピュータ18は、操作部18a及び表示部18bなどを備える。また、ホストコンピュータ18は、プロセッサ、RAM、ROM及びNVMなどから構成される。
【0048】
操作部18aは、オペレータの操作の入力を受け付ける。操作部18aは、たとえば、キーボード、マウス又はタッチパネルなどである。
【0049】
表示部18bは、プロセッサ15の制御により種々の情報を表示する。表示部18bは、たとえば、液晶モニタから構成される。操作部18aがタッチパネルなどで構成される場合、表示部18bは、操作部18aと一体的に形成されてもよい。
【0050】
ホストコンピュータ18は、操作部18aを通じて種々の操作を受け付ける。たとえば、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22に薬液を充填したことを示す操作を受け付ける。また、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22から薬液を吐出する操作を受け付ける。
【0051】
ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22から薬液を吐出する操作を受け付けると、薬液滴下装置1に薬液を吐出させる信号を送信する。
なお、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22ごとに操作を受け付けてもよい。たとえば、ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22ごとに薬液を充填したことを示す操作又は薬液を吐出する操作を受け付けてもよい。
【0052】
図6に示すように、薬液滴下装置1は、X方向移動台制御回路9a、X方向移動台モータ9b、Y方向移動台制御回路10a及びY方向移動台モータ10b、駆動回路11、プロセッサ15、メモリ16、インターフェース17及びリーダライタ40などを備える。これらの各部は、データバスを介して互いに接続される。なお、薬液滴下装置1は、図6に示すような構成の他に必要に応じた構成を具備したり、特定の構成を除外したりしてもよい。
【0053】
プロセッサ15は、薬液滴下装置1全体の動作を制御する機能を有する。プロセッサ15は、内部キャッシュ及び各種のインターフェースなどを備えてもよい。プロセッサ15は、内部キャッシュ、メモリ16などが予め記憶するプログラムを実行することにより種々の処理を実現する。
【0054】
なお、プロセッサ15がプログラムを実行することにより実現する各種の機能のうちの一部は、ハードウエア回路により実現されるものであってもよい。この場合、プロセッサ15は、ハードウエア回路により実行される機能を制御する。
【0055】
メモリ16は、種々のデータを格納する。たとえば、メモリ16は、制御プログラム及び制御データなどを記憶する。制御プログラム及び制御データは、薬液滴下装置1の仕様に応じて予め組み込まれる。制御プログラムは、薬液滴下装置1で実現する機能をサポートするプログラムなどである。
【0056】
また、メモリ16は、プロセッサ15の処理中のデータなどを一時的に格納する。また、メモリ16は、アプリケーションプログラムの実行に必要なデータ及びアプリケーションプログラムの実行結果などを格納してもよい。
【0057】
インターフェース17は、ホストコンピュータ18とデータを送受信するためのインターフェースである。たとえば、インターフェース17は、有線又は無線回線を介してホストコンピュータ18と接続する。たとえば、インターフェース17は、LAN接続、USB接続又はbluetooth接続をサポートするものであってもよい。
【0058】
X方向移動台制御回路9aは、プロセッサ15からの信号に基づいてX方向移動台モータ9bを駆動する。X方向移動台制御回路9aは、X方向移動台モータ9bに信号又は電力を供給してX方向移動台モータ9bを駆動する。
【0059】
X方向移動台モータ9bは、X方向移動台9をX方向に移動させる。たとえば、X方向移動台モータ9bは、ギアなどを介してX方向移動台9に接続し、X方向移動台9をX方向に移動させる。
【0060】
Y方向移動台制御回路10aは、プロセッサ15からの信号に基づいてY方向移動台モータ10bを駆動する。Y方向移動台制御回路10aは、Y方向移動台モータ10bに信号又は電力を供給してY方向移動台モータ10bを駆動する。
【0061】
Y方向移動台モータ10bは、Y方向移動台10をY方向に移動させる。たとえば、Y方向移動台モータ10bは、ギアなどを介してY方向移動台10に接続し、Y方向移動台10をY方向に移動させる。
薬液吐出装置2、駆動回路11及びリーダライタ40は、前述の通りである。
【0062】
次に、ICモジュール50について説明する。
図7は、ICモジュール50の構成例を示す。
ICモジュール50は、ICチップCa及び通信部としての外部インターフェース(たとえば、通信部55)とが接続された状態で一体的に形成される。
【0063】
ICモジュール50は、通信部55及びICチップCaなどを備える。ICチップCaは、プロセッサ51、ROM52、RAM53及びNVM54などを備える。プロセッサ51と、ROM52、RAM53、NVM54及び通信部55とは、データバスを介して互いに接続する。なお、ICモジュール50は、適宜必要な構成を追加し、又は、不要な構成を削除してもよい。
【0064】
プロセッサ51は、ICモジュール50全体の制御を司る制御部として機能する。プロセッサ51は、ROM52又はNVM54に記憶される制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。プロセッサ51は、プログラムを実行することにより、ICモジュール50内の各部の制御及び情報処理を実現する。たとえば、プロセッサ51は、ROM52に記憶されているプログラムを実行することにより、ICモジュール50の動作制御又はICモジュール50の運用形態に応じた種々の処理を行う。
なお、プロセッサ51がプログラムを実行することにより実現する各種の機能のうちの一部は、ハードウエア回路により実現されるものであっても良い。この場合、プロセッサ51は、ハードウエア回路により実行される機能を制御する。
【0065】
ROM52は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。ROM52は、製造段階で制御プログラム及び制御データなどを記憶した状態でICモジュール50に組み込まれる。即ち、ROM52に記憶される制御プログラム及び制御データは、予めICモジュール50の仕様などに応じて組み込まれる。
【0066】
RAM53は、揮発性のメモリである。RAM53は、プロセッサ51の処理中のデータなどを一時的に格納する。たとえば、RAM53は、計算用バッファ、受信用バッファ及び送信用バッファとして機能する。計算用バッファは、プロセッサ51が実行する種々の演算処理の結果などを一時的に保持する。受信用バッファは、通信部55を介して薬液滴下装置1から受信するコマンドデータなどを保持する。送信用バッファは、通信部55を介して薬液滴下装置1へ送信するメッセージ(レスポンスデータ)などを保持する。
【0067】
NVM54(記憶部)は、例えば、EEPROM(登録商標)又はフラッシュROMなどのデータの書き込み及び書換えが可能な不揮発性のメモリにより構成される。NVM54は、ICモジュール50の運用用途に応じて制御プログラム、アプリケーション、及び種々のデータを格納する。例えば、NVM54では、プログラムファイル及びデータファイルなどが作成される。作成された各ファイルは、制御プログラム及び種々のデータなどが書き込まれる。
NVM54は、使用履歴を格納する記憶領域54aを備える。使用履歴については、後述する。
【0068】
通信部55は、薬液滴下装置1とデータを送受信するためのインターフェースである。即ち、通信部55は、薬液滴下装置1のリーダライタ40との通信を行うためのインターフェースである。ICモジュール50が接触型のICカードとして実現される場合、通信部55は、薬液滴下装置1のリーダライタ40と物理的かつ電気的に接触して信号の送受信を行うための通信制御部とコンタクト部とにより構成される。たとえば、ICモジュール50は、コンタクト部を介して薬液滴下装置1からの動作電源及び動作クロックの供給を受けて活性化される。
【0069】
ICモジュール50が非接触型のICカードとしての実現される場合、通信部55は、薬液滴下装置1のリーダライタ40との無線通信を行うための変復調回路などの通信制御部とアンテナとにより構成される。たとえば、ICモジュール50は、アンテナ及び変復調回路などを介して薬液滴下装置1のリーダライタ40からの電波を受信する。ICモジュール50は、その電波から図示しない電源部により動作電源及び動作クロックを生成して活性化する。
【0070】
次に、記憶領域54aが格納する使用履歴について説明する。
使用履歴は、薬液吐出装置2が使用済みであるか否かを示す。たとえば、使用履歴は、薬液吐出装置2から薬液を吐出したか否かを示す。薬液吐出装置2が(少なくとも1つの薬液保持容器22から)一度薬液を吐出した場合、使用履歴は、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す。
【0071】
たとえば、使用履歴は、薬液吐出装置2が使用済みであるか否かを示すビットなどである。たとえば、「0」である場合、使用履歴は、薬液吐出装置2が使用済みでない(未使用である)ことを示す。また、「1」である場合、使用履歴は、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す。
【0072】
薬液吐出装置2の製造時において、使用履歴は、薬液吐出装置2が使用済みでない(未使用である)ことを示す。
【0073】
次に、ICモジュール50のプロセッサ51が実現する機能について説明する。以下の機能は、プロセッサ51がNVM54などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0074】
まず、プロセッサ51は、通信部55を通じてリーダライタ40に使用履歴を送信する機能を有する。
たとえば、プロセッサ51は、通信部55を通じて使用履歴を要求するコマンドをプロセッサ15から受信する。当該コマンドを受信すると、プロセッサ51は、記憶領域54aから使用履歴を取得する。使用履歴を取得すると、プロセッサ51は、通信部55を通じて使用履歴を含むレスポンスをプロセッサ15へ送信する。
【0075】
また、プロセッサ51は、リーダライタ40からのコマンドに従って使用履歴を書き換える機能を有する。
たとえば、プロセッサ51は、通信部55を通じて使用済みであることを示す情報を記憶領域54aに書き込むことを指示するコマンドを受信する。当該コマンドを受信すると、プロセッサ51は、使用履歴として、記憶領域54aに薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報(たとえば、ビット)を格納する。記憶領域54aに薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納すると、プロセッサ51は、通信部55を通じて書き換えに成功したことを示すレスポンスをリーダライタ40へ送信する。
【0076】
なお、プロセッサ51は、使用履歴として、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納した場合には、記憶領域54aをロックしてもよい。
【0077】
次に、薬液滴下装置1のプロセッサ15が実現する機能について説明する。以下の機能は、プロセッサ15がメモリ16などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0078】
まず、プロセッサ15は、ICモジュール50から使用履歴を取得する機能を有する。
プロセッサ15は、薬液吐出装置2が装着モジュール5にセットされたか判定する。たとえば、プロセッサ15は、図示されないセンサからの信号に従って薬液吐出装置2が装着モジュール5にセットされたか判定する。
【0079】
薬液吐出装置2が装着モジュール5にセットされたと判定すると、プロセッサ15は、リーダライタ40を通じて、使用履歴を要求するコマンドをICモジュール50へ送信する。プロセッサ15は、ICモジュール50から、コマンドに対するレスポンスとして、使用履歴を含むレスポンスを受信する。
【0080】
また、プロセッサ15は、取得された使用履歴に基づいて薬液吐出装置2から薬液を吐出させる機能を有する。
プロセッサ15は、取得された使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みでないことを示す場合、薬液吐出装置2から薬液を吐出させる。
たとえば、オペレータは、薬液保持容器22の上面開口部22bからピペッターなどにより、薬液を所定量、薬液保持容器22に供給する。薬液は、薬液保持容器22の内面で保持される。薬液保持容器22の底部の下面開口部22aは、薬液吐出アレイ27と連通する。薬液保持容器22に保持された薬液は、薬液保持容器22の底面の下面開口部22aを介して薬液吐出アレイ27の各圧力室210へ充填される。
【0081】
薬液吐出装置2内に保持される薬液は、例えば低分子化合物、蛍光試薬、タンパク質、抗体、核酸、血漿、細菌、血球又は細胞のいずれかを含有する。薬液の主溶媒(もっとも重量比、又は体積比が高い物質)は、一般的に、水、グリセリン、ジメチルスルホキシドである。
【0082】
オペレータは、薬液を充填すると、ホストコンピュータ18の操作部18aに薬液を吐出する操作を入力する。オペレータは、特定の薬液保持容器22から薬液を吐出する操作を入力してもよい。
【0083】
ホストコンピュータ18は、薬液を吐出する操作を受け付けると、薬液滴下装置1に対して薬液を吐出することを指示する信号(吐出信号)を送信する。なお、吐出信号は、特定の薬液保持容器22から薬液を吐出することを指示するものであってもよい。
【0084】
プロセッサ15は、インターフェース17を通じて吐出信号を受信する。取得された使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みでないことを示す場合、プロセッサ15は、吐出信号に基づいて薬液吐出装置2から薬液を吐出させる。
【0085】
プロセッサ15は、X方向移動台モータ9b及びY方向移動台モータ10bを制御して、装着モジュール5にセットされた薬液吐出装置2を所定の位置に移動させる。たとえば、プロセッサ15は、薬液吐出装置2を複数のノズル110がウエル開口300内に収まる位置に移動させる。なお、プロセッサ15は、吐出信号に従って薬液吐出装置2を所定の位置に移動させてもよい。
【0086】
薬液吐出装置2を所定の位置に移動させると、プロセッサ15は、駆動回路11を用いて駆動素子130に薬液を吐出するための電圧を印加する。
【0087】
プロセッサ15は、駆動回路11へ信号を送り、駆動回路11から駆動素子130に電圧制御信号を入力する。駆動素子130は、電圧制御信号の印加に対応して、振動板120を変形させ圧力室210の容積を変化させる。そのため、薬液吐出アレイ27のノズル110から薬液が薬液滴として吐出される。その結果、薬液吐出装置2は、ノズル110から、マイクロプレート4のウエル開口300に所定量の液体を滴下する。
【0088】
マイクロプレート4の各ウエル開口300に所定量の液体を滴下するため、プロセッサ15は、X方向移動台制御回路9aとY方向移動台制御回路10aと駆動回路11とへ信号を送る動作を繰り返す。
【0089】
なお、プロセッサ15が薬液を吐出する回数及び位置は、特定の構成に限定されるものではない。
【0090】
また、プロセッサ15は、使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みでないことを示す場合、薬液吐出装置2が未使用であることを示す信号をホストコンピュータ18へ送信してもよい。ホストコンピュータ18は、当該信号に基づいて、表示部18bなどに薬液吐出装置2が未使用であることを表示してもよい。
【0091】
また、プロセッサ15は、取得された使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す場合、薬液吐出装置2から薬液を吐出させない。
たとえば、プロセッサ15は、取得された使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す場合、吐出信号を受信しても薬液を吐出しない。また、プロセッサ15は、インターフェース17を通じて、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す信号をホストコンピュータ18に送信する。
【0092】
ホストコンピュータ18は、当該信号を受信すると、表示部18bなどに薬液吐出装置2が使用済みであることを示す警告などを表示する。
【0093】
また、プロセッサ15は、薬液を吐出させると、薬液吐出装置2のICモジュール50に使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納する機能を有する。
【0094】
プロセッサ15は、薬液の吐出が完了すると、使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納するコマンドを生成する。たとえば、プロセッサ15は、使用済みであることを示す情報を記憶領域54aに書き込むことを指示するコマンドを生成する。プロセッサ15は、リーダライタ40を通じて、生成したコマンドをICモジュール50へ送信する。
【0095】
プロセッサ15は、リーダライタ40を通じて、ICモジュール50から、書き換えが完了したことを示すレスポンスを受信する。なお、プロセッサ15は、書き換えに失敗したことを示すレスポンスを受信した場合、又は、レスポンスを受信しない場合、再度、生成したコマンドをICモジュール50へ送信してもよい。
【0096】
次に、薬液滴下装置1のプロセッサ15の動作例について説明する。
図8は、薬液滴下装置1のプロセッサ15の動作例について説明するためのフローチャートである。
【0097】
まず、プロセッサ15は、装着モジュール5に薬液吐出装置2がセットされたか判定する(ACT11)。装着モジュール5に薬液吐出装置2がセットされていないと判定すると(ACT11、NO)、プロセッサ15は、ACT11に戻る。
【0098】
装着モジュール5に薬液吐出装置2がセットされたと判定すると(ACT11、YES)、プロセッサ15は、ICモジュール50から使用履歴を読み取る(ACT12)。使用履歴を読み取ると、プロセッサ15は、使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みであることを示すか判定する(ACT13)。
【0099】
使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みでない(未使用である)ことを示すと判定すると(ACT13、NO)、プロセッサ15は、インターフェース17を通じて吐出信号を受信したか判定する(ACT14)。インターフェース17を通じて吐出信号を受信していないと判定すると(ACT14、NO)、プロセッサ15は、ACT14に戻る。
【0100】
インターフェース17を通じて吐出信号を受信したと判定すると(ACT14、YES)、プロセッサ15は、吐出信号に従って薬液吐出装置2に薬液を吐出させる(ACT15)。
【0101】
薬液吐出装置2に薬液を吐出させると、プロセッサ15は、ICモジュール50に使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納する(ACT16)。
【0102】
使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みであることを示すと判定すると(ACT13、YES)、プロセッサ15は、インターフェース17を通じて、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す信号をホストコンピュータ18へ送信する(ACT17)。
【0103】
ICモジュール50に使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納した場合(ACT16)、又は、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す信号をホストコンピュータ18へ送信した場合(ACT17)、プロセッサ15は、動作を終了する。
【0104】
なお、薬液吐出装置2は、ICモジュール50の代わりに、使用履歴を格納するメモリを備えてもよい。薬液滴下装置1は、メモリに直接アクセスして使用履歴を取得してもよい。また、薬液滴下装置1は、メモリに直接アクセスして、使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納してもよい。
【0105】
また、ホストコンピュータ18は、使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納する信号をプロセッサ15へ送信してもよい。プロセッサ15は、当該信号に従って、使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報をICモジュール50に格納してもよい。
【0106】
また、ICモジュール50は、薬液保持容器22ごとの使用履歴を格納してもよい。即ち、ICモジュール50は、薬液保持容器22ごとに、薬液保持容器22が使用済みであるか否かを示す情報を格納する。
【0107】
たとえば、プロセッサ15は、ICモジュール50から、薬液保持容器22ごとの使用履歴を取得する。使用履歴を取得すると、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18から吐出信号を受信する。吐出信号を受信すると、プロセッサ15は、吐出信号が薬液を吐出させる薬液保持容器22に対応する使用履歴が使用済みを示すか判定する。当該使用履歴が使用済みでない(未使用を示す)場合、プロセッサ15は、吐出信号に従って、当該薬液保持容器22から薬液を吐出する。吐出動作を終了すると、プロセッサ15は、ICモジュール50において当該薬液保持容器22に対応する使用履歴を使用済みに書き換える。
【0108】
また、当該薬液保持容器22に対応する使用履歴が使用済みを示す場合、プロセッサ15は、吐出信号を受信しても吐出動作を行わない。また、この場合、プロセッサ15は、当該薬液保持容器22が使用済みであることを示す信号をホストコンピュータ18へ送信してもよい。
【0109】
以上のように構成された吐出システムは、薬液吐出装置が備えるICモジュールに当該薬液吐出装置の使用履歴を格納する。吐出システムは、薬液吐出装置から薬液を吐出する際に、使用履歴をチェックする。吐出システムは、ICモジュールが格納する使用履歴が使用済みであることを示す場合、薬液吐出装置から薬液を吐出させない。
【0110】
また、吐出システムは、薬液吐出装置が薬液を吐出すると、使用履歴として薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報をICモジュールに格納する。
その結果、吐出システムは、一度使用した薬液吐出装置を再度用いて薬液を吐出することを防止することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る薬液滴下装置1は、薬液保持容器22に薬液が充填されるとICモジュール50に使用履歴として薬液保持容器22が使用済みであることを示す情報を格納する点で第1の実施形態のそれと異なる。従って、他の点については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0111】
ホストコンピュータ18は、操作部18aを通じて、薬液保持容器22に薬液を充填したことを示す操作を受け付ける。たとえば、オペレータは、薬液保持容器22に薬液を充填すると、操作部18aに、薬液を充填したことを示す操作を入力する。
【0112】
ホストコンピュータ18は、薬液保持容器22に薬液を充填したことを示す操作を受け付けると、インターフェース17を通じて、薬液保持容器22に薬液が充填されたことを示す充填信号を薬液滴下装置1へ送信する。
【0113】
次に、薬液滴下装置1のプロセッサ15が実現する機能について説明する。以下の機能は、プロセッサ15がメモリ16などに格納されるプログラムを実行することで実現される。
【0114】
プロセッサ15は、薬液保持容器22に薬液が充填されたことを検知する機能を有する。
たとえば、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18から充填信号を受信したか判定する。プロセッサ15は、ホストコンピュータ18から充填信号を受信したと判定すると、薬液保持容器22に薬液が充填されたことを検知する。
【0115】
なお、薬液滴下装置1又は薬液吐出装置2は、薬液保持容器22内に薬液が充填されたことを検知するセンサを備えてもよい。プロセッサ15は、当該センサを用いて薬液保持容器22に薬液が充填されたことを検知してもよい。
プロセッサ15が薬液保持容器22に薬液が充填されたことを検知する方法は、特定の方法に限定されるものではない。
【0116】
また、プロセッサ15は、薬液保持容器22に薬液が充填されたことを検知すると、薬液吐出装置2のICモジュール50に使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納する機能を有する。
【0117】
プロセッサ15がICモジュール50に使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納する動作については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0118】
次に、薬液滴下装置1のプロセッサ15の動作例について説明する。
図9は、薬液滴下装置1のプロセッサ15の動作例について説明するためのフローチャートである。
【0119】
まず、プロセッサ15は、装着モジュール5に薬液吐出装置2がセットされたか判定する(ACT21)。装着モジュール5に薬液吐出装置2がセットされていないと判定すると(ACT21、NO)、プロセッサ15は、ACT21に戻る。
【0120】
装着モジュール5に薬液吐出装置2がセットされたと判定すると(ACT21、YES)、プロセッサ15は、ICモジュール50から使用履歴を読み取る(ACT22)。使用履歴を読み取ると、プロセッサ15は、使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みであることを示すか判定する(ACT23)。
【0121】
使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みでない(未使用である)ことを示すと判定すると(ACT23、NO)、プロセッサ15は、インターフェース17を通じて充填信号を受信したか判定する(ACT24)。インターフェース17を通じて充填信号を受信していないと判定すると(ACT24、NO)、プロセッサ15は、ACT24に戻る。
【0122】
インターフェース17を通じて充填信号を受信したと判定すると(ACT24、YES)、プロセッサ15は、ICモジュール50に使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納する(ACT25)。
【0123】
ICモジュール50に使用履歴として薬液吐出装置2が使用済みであることを示す情報を格納すると、プロセッサ15は、インターフェース17を通じて吐出信号を受信したか判定する(ACT26)。インターフェース17を通じて吐出信号を受信していないと判定すると(ACT26、NO)、プロセッサ15は、ACT26に戻る。
【0124】
インターフェース17を通じて吐出信号を受信したと判定すると(ACT26、YES)、プロセッサ15は、吐出信号に従って薬液吐出装置2に薬液を吐出させる(ACT27)。
【0125】
使用履歴が、薬液吐出装置2が使用済みであることを示すと判定すると(ACT23、YES)、プロセッサ15は、インターフェース17を通じて、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す信号をホストコンピュータ18へ送信する(ACT28)。
【0126】
薬液吐出装置2に薬液を吐出させた場合(ACT27)、又は、薬液吐出装置2が使用済みであることを示す信号をホストコンピュータ18へ送信した場合(ACT28)、プロセッサ15は、動作を終了する。
【0127】
なお、第1の実施形態と同様に、ICモジュール50は、薬液保持容器22ごとの使用履歴を格納してもよい。即ち、ICモジュール50は、薬液保持容器22ごとに、薬液保持容器22が使用済みであるか否かを示す情報を格納する。
【0128】
たとえば、プロセッサ15は、ICモジュール50から、薬液保持容器22ごとの使用履歴を取得する。使用履歴を取得すると、プロセッサ15は、ホストコンピュータ18から充填信号を受信する。充填信号を受信すると、プロセッサ15は、充填信号が示す、薬液を充填した薬液保持容器22に対応する使用履歴が使用済みを示すか判定する。当該使用履歴が使用済みでない(未使用を示す)場合、プロセッサ15は、ICモジュール50において当該薬液保持容器22に対応する使用履歴を使用済みに書き換える。
【0129】
また、当該薬液保持容器22に対応する使用履歴が使用済みを示す場合、プロセッサ15は、吐出信号を受信しても吐出動作を行わない。また、この場合、プロセッサ15は、当該薬液保持容器22が使用済みであることを示す信号をホストコンピュータ18へ送信してもよい。
【0130】
以上のように構成された吐出システムは、薬液保持容器に薬液が充填された時点で、使用履歴として薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報をICモジュールに格納する。その結果、吐出システムは、オペレータが薬液保持容器に薬液を充填したが吐出の動作を行わなかった場合であっても、薬液吐出装置のICモジュールに薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報を格納することができる。
【0131】
したがって、吐出システムは、オペレータが薬液保持容器に薬液を充填したが吐出の動作を行わなかった場合であっても、コンタミネーションを防止することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態に係る薬液吐出装置は、サーマルジェット方式で薬液を吐出する点で第1の実施形態のそれと異なる。従って、他の点については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0132】
第3の実施形態に係る吐出システム500’は、薬液吐出装置2’を備える。
薬液吐出装置2’は、薬液吐出アレイ27に代えて、薬液吐出アレイ27’を備える。
【0133】
図10は、図4のF10-F10線断面図である。
図10に示すように薬液吐出アレイ27’は、シリコン基板400と感光性樹脂450とが積層されて形成される。シリコン基板400の表面側(第2の面400a)には、薬液保持容器22の薬液出口の下面開口部22aと連通する導入口411が形成される。シリコン基板400の裏面側(第1の面400b)には、アクチュエータである薄膜伝熱ヒータ432と、薄膜伝熱ヒータ432に接続された図示しない配線が形成される。薄膜伝熱ヒータ432は、電極端子接続部26と電気的に接続する。
【0134】
感光性樹脂450は、圧力室410が形成される基板である。感光性樹脂450には、導入口411と連通する流路451と圧力室410と、ノズル110とが形成される。圧力室410は、流路451の中の薄膜伝熱ヒータ432が形成される領域である。薄膜伝熱ヒータ432は、配線から供給される電力によって発熱する。薄膜伝熱ヒータ432によって圧力室410内の薬液が加熱沸騰されることで、薬液は、ノズル110から吐出される。
【0135】
複数のノズル110は、例えばX方向に6列、Y方向に2列配列される。実施形態の複数のノズル110は、薬液保持容器22の薬液出口の下面開口部22aの内側に位置する。
【0136】
次に、実施形態の薬液吐出の動作について説明する。薬液保持容器22の底部の下面開口部22aは、薬液吐出アレイ27’の導入口411と流路451に連通する。薬液保持容器22に保持された薬液は、薬液保持容器22の底面の下面開口部22aから、シリコン基板400に形成された導入口411を介して、感光性樹脂450に形成された流路451の中の各圧力室410まで充填される。
【0137】
この状態で、駆動回路11から電装基板配線24の制御信号入力端子25に入力された電圧制御信号は、薬液吐出アレイ27’の複数の薄膜伝熱ヒータ432に印加される。これにより、複数の薄膜伝熱ヒータ432が発熱し圧力室410内の薬液が加熱沸騰する。その結果、ノズル110から薬液が薬液滴として吐出される。そして、ノズル110から、マイクロプレート4のウエル開口300に所定量の薬液を滴下する。
【0138】
サーマルジェット方式では、薬液は300℃以上となる薄膜伝熱ヒータ432と接触する。このため、サーマルジェット方式は、300℃以上のヒータに接触しても変質しない耐熱性の高い薬液を吐出するのが好ましい。
【0139】
以上のように構成された吐出システムは、薬液吐出装置が備えるICモジュールに当該薬液吐出装置の使用履歴を格納する。吐出システムは、薬液吐出装置から薬液を吐出する際に、使用履歴をチェックする。吐出システムは、ICモジュールが格納する使用履歴が使用済みであることを示す場合、薬液吐出装置から薬液を吐出させない。
【0140】
なお、吐出システム500’は、第2の実施形態の特徴を備えてもよい。即ち、吐出システム500’の薬液滴下装置1のプロセッサ15は、薬液吐出装置2の薬液保持容器22に薬液が補充されたことを検知すると、ICモジュール50に使用済みを示す使用履歴を格納する。
【0141】
以上のように構成された薬液吐出装置は、ピエゾジェット方式と比較して構造が簡単であるため、アクチュエータを小型化できる。そのため、薬液吐出装置は、ピエゾジェット方式と比べてノズルを高密度に配置することが可能である。
【0142】
以上説明した実施形態では、駆動部である駆動素子130を円形としたが、駆動部の形状は限定されない。駆動部の形状は、例えばひし形或いは楕円等であっても良い。また圧力室210の形状も円形に限らず、ひし形或いは楕円形、更には矩形等であっても良い。
【0143】
また、実施形態では、駆動素子130の中心にノズル110を配置したが、圧力室210の薬液を吐出可能であれば、ノズル110の位置は限定されない。例えばノズル110を、駆動素子130の領域内ではなく、駆動素子130の外側に形成しても良い。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
薬液を吐出する薬液吐出装置であって、
使用済みであるかを示す使用履歴を格納する記憶部と、
薬液滴下装置に装着するための係合部と、
前記係合部により係合された前記薬液滴下装置からの前記使用履歴に応じた制御に基づいて薬液を吐出する吐出部と、
を備える薬液吐出装置。
[C2]
前記薬液滴下装置とデータを送受信する通信部と、
前記通信部を通じて前記記憶部が記憶する前記使用履歴を前記薬液滴下装置へ送信し、前記薬液滴下装置から前記通信部を通じて受信するコマンドに従って、前記使用履歴として使用済みであることを示す情報を前記記憶部に格納する制御部と、
を備える、
前記C1に記載の薬液吐出装置。
[C3]
薬液滴下装置であって、
薬液を吐出する薬液吐出装置が装着される装着部と、
前記装着部に装着された前記薬液吐出装置が備える記憶部から前記薬液吐出装置が使用済みであるかを示す使用履歴を取得するためのインターフェースと、
前記インターフェースを通じて前記薬液吐出装置から取得する前記使用履歴に応じて前記薬液吐出装置に前記薬液を吐出させる制御部と、
を備える薬液滴下装置。
[C4]
前記制御部は、
前記薬液吐出装置に前記薬液を吐出させると、前記記憶部に前記使用履歴として前記薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報を格納する、
前記C3に記載の薬液滴下装置。
[C5]
前記制御部は、
前記薬液吐出装置の薬液保持容器に前記薬液が充填されたことを検知すると、前記記憶部に前記使用履歴として前記薬液吐出装置が使用済みであることを示す情報を格納する、
前記C3に記載の薬液滴下装置。
【符号の説明】
【0145】
1…薬液滴下装置、2及び2’…薬液吐出装置、4…マイクロプレート、5…装着モジュール、11…駆動回路、15…プロセッサ、17…インターフェース、18…ホストコンピュータ、40…リーダライタ、50…ICモジュール、51…プロセッサ、54…NVM、54a…記憶領域、130…駆動素子、170…アクチュエータ、200…圧力室構造体、300…ウエル開口、432…薄膜伝熱ヒータ、500及び500’…吐出システム。
図1
図2
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図10