(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】メタロセンポリオレフィンをベースとする低活性化温度ヒートシールホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 123/02 20060101AFI20220207BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20220207BHJP
C09J 123/14 20060101ALI20220207BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220207BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220207BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220207BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220207BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20220207BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220207BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20220207BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220207BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20220207BHJP
【FI】
C09J123/02
C09J123/08
C09J123/14
C09J11/08
C09J11/06
B32B27/00 H
B32B27/32 103
B29C48/08
B65D65/40 D
B29K23:00
B29L9:00
B29L7:00
(21)【出願番号】P 2017538580
(86)(22)【出願日】2016-01-22
(86)【国際出願番号】 US2016014483
(87)【国際公開番号】W WO2016118835
(87)【国際公開日】2016-07-28
【審査請求日】2019-01-16
(32)【優先日】2015-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313011456
【氏名又は名称】ボスティック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カンデルスキ,モニナ,デー.
(72)【発明者】
【氏名】ビトラーノ,ミハエル,デー.
【審査官】宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517851(JP,A)
【文献】特開平01-290410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0256274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装用途のための低活性化温度ホットメルト接着剤であって、前記低活性化温度
が71.11℃(160゜F)以下であり、前記ホットメルト接着剤は:
a)50重量%~90重量%のメタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーであって、
ASTM規格D792に準拠して0.900g/cc以下の密度を有し、
70ジュール/グラム以下の溶融エンタルピーを有し、かつ
ASTM規格D1238に準拠して10分間、2.16kgの重量、190℃の条件において、1g/10分~35g/10分のメルトインデックスを有する、
メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマー;
b)5重量%~50重量%の粘着性付与樹脂;
c)0.5重量%~40重量%のワックス;および
d)0.1%~5重量%の安定剤または抗酸化剤;
を含み、
前記メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーがC
4~C
10アルファ-オレフィンと、エチレンまたはプロピレンとの共重合体であって、前記ワックスは54.4℃~76.6℃の融点を有する石油ワックスであるか、または57.2℃~93.3℃の融点を有する微結晶ワックスであり、前記微結晶ワックスの融点はASTM規格D127-60に準拠して測定されたものであることを特徴とする、
ホットメルト接着剤。
【請求項2】
包装用途のための低活性化温度ホットメルト接着剤であって、前記低活性化温度
が71.11℃(160゜F)以下であり、前記ホットメルト接着剤は:
a)50重量%~90重量%のメタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーであって、
ASTM規格D792に準拠して0.900g/cc以下の密度を有し、
70ジュール/グラム以下の溶融エンタルピーを有し、かつ
ASTM規格D1238に準拠して10分間、2.16kgの重量、190℃の条件において、1g/10分~35g/10分のメルトインデックスを有する、
メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマー;
b)5重量%~50重量%の粘着性付与樹脂;
c)0.5重量%~40重量%のワックス;および
d)0.1%~5重量%の安定剤または抗酸化剤;
を含み、
前記メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーがC
4~C
10アルファ-オレフィンと、エチレンまたはプロピレンとの共重合体であって、前記ワックスは60℃~70℃の融点を有するパラフィンワックス、75℃~120℃の融点を有しかつ23℃での硬度dmmが2mm以下であるハードワックス、またはそれらのブレンドであることを特徴とする、
ホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーが、エチレンとC
4~C
10-アルファ-オレフィンとのコポリマーである、請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーが、エチレン/オクテンコポリマーである、請求項3に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーが、プロピレンとC
4~C
10-アルファ-オレフィンとのコポリマーである、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
55重量%~70重量%のメタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーを含む、請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
前記粘着性付与樹脂が、ASTM規格E28-99に準拠した環球式(Ring and Ball)試験法によって測定した場合に、80℃~140℃の軟化点を有する、請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項8】
前記粘着性付与樹脂が、非極性の粘着性付与樹脂である、請求項7に記載のホットメルト接着剤。
【請求項9】
5重量%~30重量%の前記ワックスを含む、請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の接着剤を含む、物品。
【請求項11】
多層フィルム積層物である、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記積層物の一つの層が、ポリオレフィンフィルムである、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記ポリオレフィンフィルムが、ポリエチレンフィルムである、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記ポリオレフィンフィルムが、ポリプロピレンフィルムである、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
食料品包装である、請求項10に記載の物品。
【請求項16】
共押出成形を含む、請求項10に記載の物品を作成するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には、食品および一般商品を包装するために使用されるフィルムまたはフォイルの上にコーティングされる、低活性化温度ヒートシール性能を有するホットメルト接着剤に関する。より詳しくは、メタロセン触媒によるポリオレフィンをベースとするホットメルトに関し、それらは、加工業者によって各種のフィルムの上にあらかじめ適用しておくこともできるし、あるいは生産ラインにおいて、押出法またはその他の慣用されるコーティング方法を使用して、包装基材またはフィルムの上に直接適用することもできる。本発明は、低い活性化温度で、多くの各種包装基材またはフィルムに対する良好な接着性を与える。
【背景技術】
【0002】
包装物をシールするためには、各種多くの方法が使用されている。一般的な方法の一つでは、成形-充填-シール機(Form,Fill and Seal machine)が使用されるが、それは、多くの包装用途、たとえば食品包装で広範囲に使用されている。別の方法としては、製品をプラスチック容器の中に入れ、その容器の蓋をヒートシールする方法が挙げられる。これには、液体状の製品、たとえばヨーグルトの包装、さらには乾燥状の製品、たとえば個包装(single serve)のシリアルの包装物が含まれる。その他の例としては、冷凍食品の電子レンジ調理容器の上に蓋をヒートシールすることも挙げられる。
【0003】
典型的には、その接着剤は、フィルムの上にあらかじめ適用されており、ある程度の温度での加熱によって活性化されて、製品をその包装または容器の中に封入する。充填した直後に容器を封入状態に維持して、その生産ライン上でその内容物が漏れないようにするには、高い初期剥離力を達成することが重要である。その包装はさらに、その後の製造および包装工程、さらには輸送、陳列、および貯蔵の際にも、しっかりとシールされたままの状態に保たれている必要がある。
【0004】
包装された最終製品全体の性能は、包装基材またはフィルム、およびその包装を構成している接着剤のシーリング性能に依存する。適切な包装材料を選択するための基準の一つが、製造プロセスおよび貯蔵条件での要求に応えるそれらの能力である。そのフィルムは、各種適切な材料たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどから作成することが可能であり、紙、フォイル、金属化基材などを組み入れた多層積層物であってもよい。
【0005】
近年、多くの包装材料、特にシーリングフィルムが、コスト低減および美観的な目的で、ますます薄くなってきている。そのために、それらのフィルムが熱の影響をより受けやすくなり、高い(たとえば、180゜Fより高い)活性化温度では、溶け落ち(burn through)を起こしやすい。多くの蓋閉めおよび軟包装用途においては、その装置の操作条件、たとえば熱盤温度、ヒートシール領域、ヒートシール圧力、および滞留時間は、その製造ラインであらかじめ決められている。最も好ましい条件は、熱盤温度設定を低くし、ヒートシール圧力を低くし、そして滞留時間を短くして、その結果、エネルギーを節減し、溶け落ちによるスクラップの発生を最小化し、ライン速度を最大とするような条件である。
【0006】
各種のヒートシーリング用途において、各種多くのタイプの接着剤が使用されている。それらには、水系および溶媒系のヒートシール接着剤が含まれる。それらにはさらに、フィルムの製造と同時に共押出成形するか、または、後の工程でフィルムの上に押出成形することが可能な熱可塑性ポリマー物質が含まれる。それらが、フィルムを押出成形した直後か、または、エンドユーザーでのヒートシーリングプロセスの直前に、フィルムの表面上にコーティングすることが可能なホットメルト接着剤の形態をとることもまた可能である。接着剤の選択に含まれるその他の因子は、コスト、安全性、F&DAの認可などである。
【0007】
一般的には、それらの接着剤は、フィルム加工業者によって各種のフィルムまたはフォイルの上に、あらかじめ適用されている。それらのフィルムまたはフォイルは、典型的には、ウェブの片側の面の上にコーティングされる。水系または溶媒系の接着剤よりもホットメルト接着剤が優れている点の一つは、製造ラインでの適用速度が高いこと、ならびに、乾燥オーブンや溶媒回収系などが不要であることである。それらに加えて、ホットメルトには蒸発させるべき溶媒が含まれていないので、多くの場合、より早いライン速度でコーティングさせることが可能である。
【0008】
今日、包装用途で使用されている押出加工可能なヒートシールホットメルト接着剤の多くは、典型的には、エチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマー、ワックス、ならびに、極性の粘着性付与樹脂たとえば、ロジンエステルまたはテルペンフェノール樹脂を用いて配合されている。これらのタイプのEVAベースの接着剤は一般的に、蓋閉め用途において使用され、典型的には、フィルムたとえば、クレーコーテッド紙、またはポリエチレン(PE)、または配向ポリプロピレン(OPP)の上に押出成形される。さらに、それらの接着剤は、紙またはポリエステルフィルムの上に適用し、次いである程度の活性化温度で、その他各種のフィルム(たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE))にヒートシールして、積層フィルムを形成させることができる。EVAベースのホットメルトは、ヒートシール用途には極めて効果的ではあるが、良好なシール性能を得るには、それらの活性化温度が、一般的には180゜Fよりも高い。それとは対照的に、いくつかの蓋閉め用途では、最低でも約1.0ポンド/インチの、十分な接着性能を維持しながらも、160゜Fで始まる、もっと低いヒートシール活性化温度が必要とされる。実験データに基づけば、今日市場で入手可能な、競合相手のEVAベースのホットメルトでは、本明細書の表1に示しているように、所望される160゜Fという低いヒートシール活性化温度には適合していない。
【0009】
押出成形(extrusion)とは、プラスチック原料物質を溶融させて均質なブレンド物とし、連続の形態で成形するプロセスである。原料物質、たとえばポリマー、樹脂、ワックス、可塑剤、およびその他の添加剤は、ホッパーから、エクストルーダーの加熱されたバレルの中にフィードする。回転しているスクリューが、その物質をバレルの中に押し込み、その間に、その混合物で使用されているポリマーに応じて、350゜F~500゜Fの間のどこかの温度で溶融させる。どのタイプの押出成形を実施するかに応じて、押出成形プロセスには、各種の変法が存在する。市販されているフィルムは、一般的には、インフレートフィルムまたはキャストフィルムプロセスのいずれかで作成されている。これらはいずれも、単層または多層フィルムとすることができる。フィルムの押出成形法は、同業者には周知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
いくつかのフィルム加工業者では、フィルムを作成し、多重通過操作でそのフィルムの上に接着剤を適用するために、同じダイアプリケーターヘッドを使用している。最も好ましいヒートシール接着剤は、ポリマーおよび樹脂成分と相溶性があるもので、かつ炭化を回避する目的で、392゜Fよりも高い温度でも極めて良好な熱安定性を有しているものである。さらには、最も好ましい接着剤は、ダイヘッドの設定温度に近い温度で、高い粘度を有しているものである。そのことによって、フィルム/接着剤の加工適用の際の手待ち時間(downtime)を低減させるのが可能となり、逆もまた同様である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマー、粘着性付与樹脂、ワックス、およびその他の任意成分の添加剤のブレンド物をベースとする、包装用途のための低活性化温度のヒートシールホットメルト接着剤。押出成形ヒートシール用途に適した高い粘度を達成する目的で、本発明の接着剤組成物は、そのホットメルト接着剤配合物中で最も高い分子量成分であるポリマーを多量に担持し、それにより、温度300゜Fで測定して約50,000センチポワズ(cP)以上の粘度を有しているべきである。
【0012】
したがって、そのホットメルト接着剤組成物には、約50重量%~約90重量%のメタロセン触媒によるポリオレフィンポリマー(本明細書においてはmPOと呼ばれる)、約5重量%~約50重量%の粘着性付与樹脂、約0.5重量%~約40重量%のワックス、約0.1重量%~約5重量%の安定剤もしくは抗酸化剤、および0重量%~約25重量%の任意成分の添加剤が含まれる。食品およびその他の一般商品を包装するために要求されるシーリング性能に適合させるために、そのホットメルト接着剤組成物は、約160゜F以下の活性化温度を有し、かつ約1.0ポンド/インチの最小剥離力を与え、そして好ましくは約1.0~約1.5ポンド/インチの間の最小剥離力を与えるべきである。
【0013】
これらの接着剤組成物には、メタロセン触媒重合により得られた、エチレンまたはプロピレンとC4~C10-アルファ-オレフィンをベースとするコポリマーであり、0.900g/cc以下の密度(ASTM D792)、約1g/10分~約35g/10分のメルトインデックス(ASTM D1328、10分、2.16kg、190℃)、および約70ジュール/グラム以下の溶融エンタルピーを有する、ポリオレフィンポリマー、またはポリオレフィンポリマーのブレンド物が含まれる。好ましくは、そのポリオレフィンポリマーが、0.890g/cc以下の密度、より好ましくは約0.86g/cc~約0.88g/ccの密度、約10g/10分~約30g/10分のメルトインデックスそして、約60ジュール/グラム以下の溶融エンタルピーを有しているべきである。ポリオレフィンポリマーのメルトインデックスおよび溶融エンタルピーの性質は、接着剤の活性化温度を下げるための基本的な性質である。本発明に含まれるメタロセンポリオレフィンポリマーの例のいくつかを表6に示している。
【0014】
粘着性付与樹脂は、所望の接着性を組成物にもたらすために使用し、約10重量%~約40重量%の量で使用するのが好ましい。好ましい粘着性付与樹脂は、mPOポリマーとの相溶性があるように、比較的に非極性のものであり、約80℃~約140℃、好ましくは約90℃~約130℃の範囲の軟化点を有している。
【0015】
組成物のワックス成分を使用して、ホットメルト接着剤の硬化時間を調節すると共に、さらにはホットメルト接着剤の可撓性および硬度も調節する。ワックス成分は、約5重量%~約30重量%の量で使用するのが好ましい。ワックスの量は、そのホットメルト接着剤の粘度が、所望の程度に調節されるようにするが、ただし、その組成物の接着性が過度にマイナスの影響を受けないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】2種の異なったEVAベースのホットメルト接着剤組成物を、本発明のmPOベースのホットメルト接着剤組成物と比較した、平均剥離力対シーリング温度のグラフである。
【
図2】それぞれ、表2に記載された各種のワックス構成成分を使用した、本発明の3種の異なったmPOベースのホットメルト接着剤組成物についての、平均剥離力対シーリング温度のグラフである。
【
図3】それぞれ、表3に記載された各種の粘着性付与樹脂を使用した、本発明の4種の異なったmPOベースのホットメルト接着剤組成物についての、平均剥離力対シーリング温度のグラフである。
【
図4】本発明の2種の異なったmPOベースのホットメルト接着剤組成物を、溶融エンタルピーが高すぎるmPOポリマーを使用した第三のmPOベースの組成物と比較した、平均剥離力対シーリング温度のグラフである。
【
図5】各種のフィルム基材上での、表3に記載された本発明実施例4についての、の平均剥離力対シーリング温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の組成物には、約50重量%~90重量%の、メタロセン触媒重合により作成されたポリオレフィンポリマーが含まれる。その組成物には、好ましくは約55重量%~80重量%、最も好ましくは約55重量%~70重量%の、メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーが含まれる。メタロセン触媒によるポリオレフィンポリマーは、配合物に凝集力を与える役割を果たす。このことによって、0℃~80℃の使用温度範囲全体で実質的に線形の貯蔵モジュラス(G’)が得られる。本発明において有用なメタロセン触媒技術によるポリオレフィンポリマーは、オレフィンの大きな群の中のエラストマー性ポリマーである。オレフィンは不飽和炭化水素であり、ポリオレフィンで使用される最も典型的なモノマーは、エチレンおよび最高10個までの炭素原子を含むアルファ-オレフィンである。主なオレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、4-メチルペンテン、ヘキセン、オクテン、およびそれらの組合せが挙げられる。ポリオレフィンとしては、他のC4~C10アルファ-オレフィンとの組合せも含めて、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、およびそれらの組合せが挙げられる。エラストマー性ポリオレフィンには、典型的には、エチレンおよびプロピレンが含まれ、他のC4~C10オレフィンモノマー単位が含まれていてもよい。いくつかの特に好ましいポリオレフィンポリマーは、エチレンと少なくとも1種の他のオレフィンモノマーとのコポリマー(それらは、主となるモノマーがエチレンであるので、「エチレンベースの」と呼ばれる)、たとえば、エチレン-プロピレンコポリマーおよびエチレン-オクテンコポリマーであるか、または、プロピレンと少なくとも1種の他のオレフィンモノマーとのコポリマー(それらは、主となるモノマーがプロピレンであるので、「プロピレンベースの」と呼ばれる)、たとえばプロピレン-エチレンコポリマーである。最も好ましいポリオレフィンは、エチレン/オクテンコポリマーである。本明細書において先に記載された性質の範囲に入るいかなるポリマーであっても使用することができるとは言うものの、本発明において有用な好ましいポリオレフィンポリマーは、なかんずく、Dow Chemial Co.からEngageまたはVersifyの商品名として、そしてExxonMobil ChemicalからVistamaxxの商品名として入手することが可能である。
【0018】
粘着性付与樹脂は、本明細書の記述において定義されたように、分子または巨大分子、天然由来かまたは化学的プロセスによるかまたはそれらの組合せで得られる、一般的な化合物または(一般的なポリマーに比べて)比較的低分子量のポリマーであってよく、それらは一般的に、最終的なホットメルト接着剤組成物の接着力を向上させる。接着性を付与するための粘着性付与樹脂の使用は、接着剤を適用および試験する際に、各種異なった樹脂を相互に比較する目的で、同一のプロセス条件を使用して評価することができる。
【0019】
最も一般的な粘着性付与樹脂は、石油原料からのC5またはC9ストリーム、またはそれら相互の組合せ、または、他のモノマーとの組合せ、天然由来もしくは化学プロセスから得られるものとの組合せを重合させることによって得られる。C5ストリームからの粘着性付与樹脂は脂肪族樹脂と呼ばれるが、それに対して、C9ストリームから、またはC9もしくはC10構成の純粋なモノマーから、またはそれらの誘導体もしくは混合物からのものは、芳香族樹脂と呼ばれる。C5ストリームは、直鎖状もしくは環状のモノマー、またはそれらの組合せで構成されている。脂肪族樹脂はさらに、重合させた芳香族原料を水素化させることによっても得ることができる。水素化が部分的であって、ポリマー鎖の中のモノマーの一部がその芳香族的機能を保持しながらも、その一方で幾分かが脂肪族となるようにすることもできる。モノマーの組成および水素化プロセスの点では、脂肪族樹脂または芳香族樹脂が得られるようにするか、または、実質的に脂肪族である粘着性付与樹脂と実質的に芳香族である粘着性付与樹脂との間の、各種の漸変ポイント(incremental point)を有するように、各種の組合せ方をすることが可能である。さらに、「芳香族-変性脂肪族樹脂(aromatic-modified aliphatic resin)」とは、幾分かの量のC9モノマーを、大量のC5モノマーと重合させたとき、または、C9ストリームを重合させ、次いで水素化して、そのモノマーの芳香族機能の大部分が脂肪族となるようにしたときの、両方のケースが包含される用語である。同様にして、適切であるならば、「脂肪族-変性芳香族樹脂(aliphatic-modied aromatic resin)」という用語を使用してもよい。その他のタイプのモノマーを、そのような樹脂のポリマー鎖の組成の中に組み入れることも可能である。テルペンベースのポリマーのような樹脂、たとえばスチレン化テルペン樹脂は、本明細書において炭化水素樹脂と呼ばれている一般的名称の一部であるものの、テルペンモノマーは石油誘導体からのものではなく、天然由来である。ロジン誘導体も、MMAPと呼ばれている溶媒曇り点試験法により測定したそれらの芳香族的特性により、それらが、芳香族変性した脂肪族樹脂と類似しているか、または少なくとも匹敵していると考えられるようならば、本発明の樹脂の名称に含まれることができる。最後に、実質的に芳香族モノマーから作成された粘着性付与樹脂も、芳香族樹脂と呼ぶことが可能であり、芳香族もしくは極性の化合物と相溶性があるであろう。
【0020】
物質の軟化点(SP)は、本明細書の記述においては、環球式(Ring and Ball)試験法、ASTM-E28-99によって定義され、そして、芳香族的特性または芳香族含量は、たとえば重クロロホルムに溶解させてから、標準的な1H NMR分析法で測定して、ポリマー鎖の中の芳香族結合に含まれている水素プロトンのパーセント比によるか、または、欧州特許出願公開第0 802 251A1号明細書に記載されているような、MMAPと呼ばれている溶媒曇り点試験法によるか、のいずれかにより定義される。曇り点法においては、樹脂を特定の溶媒に溶解させたときに、濁りが生ずる温度が曇り点の値である。曇り点の値が低いほど、その樹脂が、その樹脂の化学的性質に関連して、より大きな芳香族的特性を表している。脂肪族樹脂では芳香族プロトンのパーセントが通常、0.5%より低く、そして芳香族樹脂では通常、40%よりも高い。0.5%~40%の間の芳香族プロトンパーセントを有する各種の樹脂はいずれも、芳香族-変性脂肪族粘着性付与樹脂とも、あるいは脂肪族-変性芳香族粘着性付与樹脂とも呼ぶことができ、中程度のブロック(mid-block)粘着性付与樹脂とみなすことができる。
【0021】
本発明の組成物における粘着性付与樹脂の構成成分は、完全に単一の樹脂グレードから組み入れてもよいし、あるいは2種以上の樹脂のブレンド物または混合物を含んでいてもよい。それらの粘着性付与樹脂は、脂肪族炭化水素樹脂およびそれらの水素化誘導体たとえば、Eastotac H-130(Eastman Chemicalから入手可能)、水素化脂環族炭化水素樹脂たとえば、Escorez 5415(Exxon Mobil Chemicalから入手可能)、芳香族変性した脂肪族または水素化脂環族樹脂たとえば、Escorez 5615(Exxon Mobil Chemicalから入手可能)、脂肪族変性した芳香族樹脂たとえば、Norsolene M1100(Sartomer-Cray Valleyから入手可能)、部分もしくは完全水素化芳香族炭化水素樹脂たとえば、Regalite S7125(Eastman Chemicalから入手可能)、ポリテルペンおよびスチレン化ポリテルペン樹脂たとえば、Sylvares ZT115(Arizona Chemicalから入手可能)から選択するのが好ましい。粘着性付与樹脂は、水素化脂環族炭化水素樹脂、芳香族変性水素化脂環族樹脂、脂肪族変性芳香族樹脂、部分もしくは完全水素化芳香族炭化水素樹脂、ポリテルペン、およびスチレン化ポリテルペン樹脂から選択するのがより好ましい。粘着性付与樹脂を、芳香族変性水素化脂環族樹脂、および部分水素化芳香族炭化水素樹脂から選択するのが最も好ましい。使用する樹脂の量は、所望の配合および末端用途に依存するが、約5重量%~約50重量%、好ましくは約10重量%~約40重量%、最も好ましくは約15重量%~約30重量%とするべきである。好ましい粘着性付与樹脂は、mPOポリマーとの相溶性があるようにするためには、比較的に非極性のものであり、約80℃~約140℃、好ましくは約90℃~約130℃の範囲の軟化点を有している。
【0022】
接着剤組成物においては、ワックスもまた使用することが可能であり、ホットメルト構成接着剤の接着剤結合特性を顕著に低下させることなく、それらの溶融粘度を低下させるのに使用される。それらはさらに、コーティングされた基材のブロッキング抵抗性を向上させるためにも使用することができるが、その材料が、包装プロセスにおいて使用されるまでは、ロールの形態で保存されるので、ブロッキング抵抗性が重要なのである。そのロールは、典型的な貯蔵条件下(最高140゜Fまで)で長期間にわたって、ブロッキングを起こしてはならない。それらのワックスはさらに、温度性能に悪影響を及ぼすことなく、組成物のオープンタイム(open time)を低下させるためにも使用される。接着剤のワックス物質成分は、接着剤組成物の、約0.5重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約35重量%、最も好ましくは約10重量%~約25重量%の量で含まれていてよい。
【0023】
有用なワックス物質としては、以下のものが挙げられる:
(1)ASTM法D-1321によって測定して約0.1~120の硬度値、および約66℃~120℃のASTM軟化点を有する、低分子量(すなわち、100~6000g/mol)のポリエチレン;
(2)石油ワックス、たとえば、約130゜F~170゜Fの融点を有するパラフィンワックス、および約135゜F~200゜Fの融点を有する微結晶ワックス(後者の融点は、ASTM法D127-60により測定);
(3)約120℃~160℃の環球式軟化点を有するアタクチックポリプロピレン;
(4)メタロセン触媒によるプロピレンベースのワックス、たとえばClariantから「Licocene」の商品名で市販されているもの;
(5)メタロセン触媒によるワックスまたは単座触媒による(single-site catalyzed)ワックス、たとえば米国特許第4,914,253号明細書、米国特許第6,319,979号明細書、または国際公開第97/33921号パンフレットもしくは国際公開第98/03603号パンフレットに記載されているようなもの;
(6)一酸化炭素と水素を重合させることによって製造される合成ワックス、たとえばFischer-Tropschワックス;ならびに
(7)ポリオレフィンワックス。本明細書で使用するとき、「ポリオレフィンワックス」という用語は、オレフィン性モノマー単位から構成される、ポリマー性または長鎖のエンティティのものを指している。これらの物質は、Eastman Chemical Co.から「Epolene」の商品名で市販されている。本発明の組成物において好適に使用される物質は、200゜F~350゜Fの環球式軟化点を有している。これらのワックスそれぞれが、室温では固体であるということは理解されたい。その他の有用な物質としては、水素化された動物性、魚系、および植物性の油脂、たとえば水素化された獣脂、豚脂、ダイズ油、綿実油、ヒマシ油、メンハディン油(menhadin oil)、鱈肝油などが挙げられ、そしてそれらは、水素化されているために室温で固体状であるが、ワックス物質等価物としての機能に関しては、有用であることもさらに見出された。これらの水素化された物質は、接着剤業界においては、「動物性または植物性ワックス」と呼ばれることも多い。
【0024】
好ましいワックス物質は、60℃~70℃の融点を有するパラフィンワックス、ハードワックスたとえば、Sasol Waxから市販されているParaflint H1、または約100℃の融点を有するFischer Tropschワックスたとえば、Baker Hughesから市販されているBareco PX 100、または約90℃の融点を有する微結晶ワックスたとえば、IGIから入手可能なMicrosere 5909F、23℃で約2dmm以下の硬度および75℃~120℃の融点を有するハードワックス、またはパラフィンワックスとハードワックスとのブレンド物、である。好ましいハードワックスは、105℃未満の融点を有している。「ハードワックス」という用語は、各種の、低分子量で、高度に結晶性のエチレンベースのポリマーを指している。
【0025】
接着剤にはさらに、典型的には、組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で、安定剤または抗酸化剤が含まれる。本発明のホットメルト接着剤組成物において有用な安定剤を組み入れて、上述のポリマー、したがってその接着剤系全体を 熱分解および酸化分解の影響から保護するのに役立たせるが、そのような分解は、通常、その接着剤の製造および適用の際、さらにはその最終製品を周囲環境に通常に曝露させる際に起きる。そのような分解は通常、その接着剤の外観、物理的性質および性能特性における劣化に現れる。特に好ましい抗酸化剤は、Ciba-Geigy製のIrganox 1010、すなわちテトラキス(メチレン(3,5-ジ-teri-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタンである。適用可能な安定剤の中でも、高分子量のヒンダードフェノールおよび多官能フェノールたとえば、硫黄およびリン含有フェノールが好ましい。ヒンダードフェノールは、当業者には周知であって、そのフェノール性ヒドロキシル基のすぐそばに立体的にバルキーな基を含んでいる、フェノール系化合物であることを特徴としている。特に、一般的には、三級ブチル基が、ベンゼン環の上のフェノール性ヒドロキシル基に対してオルトである、少なくとも一つの位置に置換されている。ヒドロキシル基のすぐそばにこれらの立体的にバルキーな置換基が存在していることによって、伸縮振動数、それに伴ってその反応性を抑制するのに役立っている。そのため、この立体障害が、フェノール系化合物に、安定化性能を付与している。代表的なヒンダードフェノールとしては、以下のものが挙げられる:
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;
ペンタエリスリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
4,4’-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール);
4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール);
2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;
6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン;
ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;
2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;および
ソルビトールヘキサ-(3,3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート。
【0026】
これらの安定剤の性能は、それと組み合わせて以下のものを使用することによって、さらに向上させることができる;(1)相乗剤たとえば、チオジプロピオネートエステルおよびホスファイト;ならびに(2)キレート化剤および金属不活性化剤たとえば、エチレンジアミンテトラ酢酸、それらの塩、およびジサリチラルプロピレンジイミン。
【0027】
任意成分の添加剤は、特定の物理的性質を変性する目的で、0重量%~約25重量%の量で、接着剤組成物の中に組み入れることができる。それらの添加剤としては、以下のものが挙げられる:着色剤たとえば、二酸化チタン、ならびに充填剤たとえば、タルクおよびクレー、架橋剤、成核剤、反応性化合物、難燃化用の鉱物質もしくは有機の薬剤、さらには紫外光(UV)吸収剤、およびUV蛍光剤。
【0028】
本発明の方法において有用な接着剤組成物は、当業者公知の技術のいずれを使用しても製造することができる。その手順の代表例には、ジャケット付きの混合ケトルの中、好ましくはローターを備えたBaker-Perkins or Dayタイプのジャケット付きのヘビーデューティミキサーの中に、すべての物質を入れ、次いで、その混合物の温度を120℃~177℃に上げる工程が含まれる。この工程で使用される正確な温度は、固有の成分の融点に依存するであろうということは、理解されたい。そのようにして得られた接着剤組成物を撹拌して、ポリマーを完全に溶解させる。次いで真空を適用して、取り込まれた空気をすべて除去する。
【0029】
基材の上にホットメルト接着剤をコーティングするには、各種の方法が慣用されている。このことは、ロールコーティングもしくは各種の印刷タイプの方法によるか、または、スロットコーティング法によるか、押出法によるか、またはスプレーガン法によって実施することができる。スプレーガン法には各種あり、接着剤のスプレーを形成させ、その結果接着剤のパターンを形成させるであろう、圧縮空気の補助の存在下または非存在下で実施することができる。ホットメルト接着剤物質は、一般的には、タンクの中で溶融させ、次いでホースの中を通して、基材の上の最終的なコーティングスポットへポンプ輸送される。本発明においては、基材の上に接着剤を適用するための好ましい方法は、押出成形による適用、最も好ましくは、基材と接着剤とを共押出成形して積層物を形成させる方法である。フィルム製造の際に、ホットメルト接着剤をフィルムと共に共押出成形するのが好ましい。
【0030】
共押出に適合させるためには、正確なパターンおよび、その結果として正しい基材接着性能を得るために、300゜Fで測定した接着剤物質の粘度が、一般的には50,000センチポワズ(cP)より高であり、より好ましくは75,000センチポワズ(cP)より高であり、最も好ましくは100,000センチポワズ(cP)より高である必要がある。接着剤の粘度が低すぎると、共押出成形の際に、連続的な溶融された接着剤コーティングが基材の上に得られず、その結果、積層物に欠陥が生じる。ライン速度、付着レベル、さらにはオープンタイム、硬化時間、圧縮力、および圧縮時間もまた、プロセス制御パラメーターである。
【0031】
フィルム基材と、本発明の接着剤組成物のコーティングからなる共押出成形した積層物は、食品容器または包装のためのヒートシーリング層または蓋として適したものでなければならない。この目的のためには、その基材フィルムが、クレーコーテッド紙、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエステルフィルム、アルミニウムフォイル、ナイロンフィルム、またはポリオレフィンフィルムであるのが好ましく、特に好ましいのは、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)フィルムたとえば、配向ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、または高密度ポリエチレン(HDPE)である。食品加工産業においては、容器は、各種のプラスチック材料から成形され、包装すべき製品をその中に充填してから、そのような容器のための蓋として、本発明の積層物を用いてヒートシールされる。本明細書において説明したように、このヒートシーリング操作は、160゜Fで実施するのが好ましく、そのためには、本発明の接着剤が、160゜F以下の活性化温度を有していなければならない。
【0032】
実施例で使用した原料物質は以下のものである。
【0033】
【0034】
【0035】
フィルム/基材の説明およびサンプルの調製
基材/フィルムは、クレーコーテッド紙/PE/OPP/プライマーの積層物を使用して作成する。フィルムのプライマー処理した側の上に、スロットコーティングアプリケーターを介して、厚み1.0mil、および接着剤の粘度に応じて375゜F~400゜Fで、接着剤を適用する。接着剤を付着させた積層フィルムを切断して、幅1.0インチのサンプルとした。次いで、1.0×1.0インチの面積を、Sentinelヒートシーラーを使用し、圧力20psi、滞留時間2.0秒で、所定の温度を使用して、HDPEフィルム(または、記載されている他の基材)の上で加熱活性化させる。試験用サンプルは、制御された環境(72゜F、50%RH)で15~30分間、コンディショニングさせてから、Instron Tensile Testerを使用し、12.0インチ/分のクロスヘッド速度で、180度剥離試験にかけた。
【実施例】
【0036】
Bostikの分析からは、Henkelからの比較例の接着剤、Proxmelt E4090の接着剤組成物がポリエチレンワックス、テルペン樹脂、およびエチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマーをベースとしており、Bostikの比較例1の接着剤組成物に近いものであることが判明した。
図1は、比較例の接着剤の活性化温度が180゜Fよりも高く、Bostikの比較例1の熱活性化温度に比較しても、より高いということを示している。表1に示された接着剤の熱的性質は、それらの熱活性化温度と直接関連している。それらが類似のピーク温度を有しているものの、それらは、その溶融エンタルピーの点においては、顕著に異なっている。したがって、比較例の接着剤は、Bostikの比較例1に比べて、接着剤を溶融させるのにはるかに高いエネルギーを必要としている。
【0037】
【0038】
ほとんどの蓋閉め用途で必要とされる、標準初期剥離力の最小値(minimum standard initial peel force)は、少なくとも約1.0ポンド/インチであり、その最小値は、好ましくは、約1.0~約1.5ポンド/インチの間であるが、その製造充填エリアでの漏れを防止するための包装のサイズに依存する。
図1に見られるように、比較例の接着剤は、少なくとも1.0ポンド/インチの最小初期剥離力を得るための、約180゜Fよりも高い、より高いヒートシール活性化温度を有している。その結果、
図1においても見られるように、比較例の接着剤は、160~180゜Fでの剥離力が不十分である。Bostikの比較例1は、比較例のサンプルよりはわずかに低い活性化温度を有してはいるものの、その剥離力の値は、160゜Fで1.0ポンド/インチ以上という産業界での目標値よりも依然として低い。
【0039】
表1に見られるように、BostikのEVAベース品(比較例1)およびBostikのmPOベース品(本発明実施例1)では、その配合の中に粘着性付与樹脂を使用したが、それは、そのポリマー系に、より相溶性があり、すなわちより適している。組成物1では、Sylvalite RE100L、ロジンエステル樹脂を使用したが、このものは、より高い%の酢酸ビニル(表1ではVAと略記)(26~28%酢酸ビニル)を有するEVAポリマーとの相溶性が極めて高い。本発明実施例1では、Wingtack Extraの非水素化芳香族変性した-脂肪族樹脂を使用しているが、このものは、ポリオレフィンポリマーとの相溶性を有している。表5に見られるように、比較例1および本発明実施例1で使用されたEVAおよびmPOポリマーの熱的性質は、接着剤の熱的性質と直接的に関係しており、比較例1は、本発明実施例1に比較して、わずかに高い溶融ピークおよび溶融エンタルピーを有する結果となっている。したがって、比較例1は、
図1に見られるように、フィルムを相互に接着させるのには、少し高い温度と少し高いエネルギーを必要としている。さらに、本発明実施例1の剥離力は、試験温度全体にわたって、業界での最小標準必要値よりははるかに高い。このことによって、加工業者は、コーティングの重量レベルを1.0mil未満に下げ、それでもなお、良好なシール性のための1.0ポンド/インチという最小目標値に適合させることが可能となるであろう。
【0040】
【0041】
ワックスは、典型的には、ホットメルト接着剤配合物における希釈剤として使用されている。しかしながらそれは、使用したワックスのタイプおよびその性質に依存して、接着剤のセットアップ速度、可撓性、および硬度も支配する。表2に、軟化点が異なる3種のタイプのワックスの使用を示している。それら3種のワックスはさらに、表5にも見られるように、異なった熱的性質(溶融ピークおよび溶融エンタルピー)を有している。本発明実施例1では、軟化点150゜F(65.5℃)のパラフィンワックスを使用し;本発明実施例2では、軟化点212゜F(100℃)のFischer Tropschワックスを使用し;そして本発明実施例3では、軟化点194゜F(90℃)の微結晶ワックスを使用している。本発明実施例2および3の配合で得られた粘度および軟化点は、より高いであろうと予想されるが、その理由は、本発明実施例1に比較して、それらの配合物の中で、より高い分子量およびより高い軟化点のワックスを使用しているからである。
【0042】
図2において、本発明実施例1、2および3のヒートシール性能が、産業界の初期剥離力またはシールの要求値、1.0~1.5ポンド/インチよりも高いということを示している。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】