(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】癌を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20220207BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220207BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
A61K31/137 ZMD
A61K31/436
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2017556627
(86)(22)【出願日】2016-04-29
(86)【国際出願番号】 US2016030316
(87)【国際公開番号】W WO2016176664
(87)【国際公開日】2016-11-03
【審査請求日】2019-04-17
(32)【優先日】2015-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517378016
【氏名又は名称】ラジウス ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ハタスリー,ガリー
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0116364(US,A1)
【文献】Mary E. W. Collier et al.,Influence of Exogenous Tissue Factor on Estrogen Receptor α Expression in Breast Cancer Cells:Involvement of β1-Integrin, PAR2, and Mitogen-Activated Protein Kinase Activation,Mol Cancer Res,2008年,Vol.6, No.12,p.1807-1818
【文献】Prasanna G. Alluri et al.,Estrogen receptor mutations and their role in breast cancer progression,Breast Cancer Research,2014年,Vol.16, No.494,p.1-8
【文献】佐治重衡、佐々木康綱,閉経後乳癌に対するホルモン療法剤の使用法-アロマターゼ阻害剤を中心に-,乳癌の臨床,2010年,Vol.25, No.2,p.109-116
【文献】Katherine Stemke-Hale et al.,An Integrative Genomic and Proteomic Analysis of PIK3CA, PTEN, and AKT Mutations in Breast Cancer,American Association for Cancer,2008年,Vol.68, No.15,p.6084-6091
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/436
A61P 35/00
A61P 35/04
A61P 43/00
A61K 31/137
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y537S、Y537C、Y537N、D538G及びS463Pからなる群から選択される1つ以上のエストロゲン受容体アルファ変異を有する薬物耐性エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において腫瘍成長を阻害するためのまたは腫瘍退縮を生じさせるための薬剤であって、
該剤が、有効成分として
、構造:
【化1】
を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を含み、該剤が、エベロリムスと組み合わせて使用さ
れ、該癌が、抗エストロゲン薬に対して耐性である、薬剤。
【請求項2】
前記癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、及び下垂体癌からなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記癌が、転移性癌である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
前記変異が、Y537Sである、請求項
1に記載の薬剤。
【請求項5】
投与後の腫瘍中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度対血漿中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度の比(T/P)が、少なくと
も15である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項6】
前記対象が、SERM及び/又はAIによるこれまでの治療後に、再発または進行している閉経後の女性である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項7】
前記その塩が、RAD1901二塩酸塩である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項8】
治療上有効量が、150mg~2,000mgである、請求項1に記載の薬剤。
【請求項9】
Y537S、Y537C、Y537N、D538G及びS463Pからなる群から選択される1つ以上のエストロゲン受容体アルファ変異を有する薬物耐性エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において乳癌を治療するための薬剤であって、
該剤が、有効成分として、構造:
【化2】
を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を含み、該剤が、
エベロリムスと組み合わせて使用さ
れ、該乳癌が、1つ以上の抗エストロゲン療法に対して耐性である、薬剤。
【請求項10】
前記1つ以上の抗エストロゲン
療法が、タモキシフェン、トレミフェン、及びフルベストラントからなる群から選択される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
前
記エストロゲン受容体アルファ
変異が、Y537Sである、請求項9に記載の薬剤。
【請求項12】
前記RAD1901が、100mg~1,500mgの合計1日投与量で投与される、請求項
9に記載の薬剤。
【請求項13】
前記対象が、まず、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2、及びVHLから選択される1つ以上の遺伝子の発現の増加における測定を介して治療のために特定される、請求項
9に記載の薬剤。
【請求項14】
前記
エベロリムスが、毎日1mg~500mgで投与される、請求項
9に記載の薬剤。
【請求項15】
前記エベロリムスが、10mgの1日用量で投与される、請求項
14に記載の薬剤。
【請求項16】
前記
エベロリムスが、1日1回投与される、請求項
9に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年4月29日に出願された米国仮特許出願第62/154,699号、2015年4月30日に出願された米国仮特許出願第62/155,451号、2015年11月6日に出願された米国仮特許出願第62/252,085号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,696号、2015年5月7日に出願された米国仮特許出願第62/158,469号、2015年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/252,916号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,774号、2015年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/192,940号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,658号、2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/323,572号、2015年7月15日に出願された米国仮特許出願第62/192,944号、2015年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/265,663号、2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/323,576号の利益を主張するものであり、これらのすべては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
乳癌は、3つの受容体:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、及びヒト上皮成長因子受容体-2(Her2)の発現に基づいて3つのサブタイプに分類される。ERの過剰発現は、多くの乳癌患者において見出される。ER陽性(ER+)の乳癌は、すべての乳癌の3分の2を含む。エストロゲン及びERは、例えば、乳癌以外の卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、及び子宮内膜癌と関連している。
【0003】
ERは、エストロゲンによって活性化し、DNAに結合する細胞核へ移行し、それにより、様々な遺伝子の活性を調節することができる。例えば、Marino et al.,“Estrogen Signaling Multiple Pathways to Impact Gene Transcription,” Curr.Genomics 7(8):497-508(2006)、及びHeldring et al.,“Estrogen Receptors:How Do They Signal and What Are Their Targets,”Physiol.Rev.87(3):905-931(2007)を参照されたい。
【0004】
エストロゲン産生を阻害する薬剤、例えば、アロマターゼ阻害剤(AI、例えば、レトロゾール、アナストロゾール、及びアロマシン)、またはER活性を直接遮断するもの、例えば、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM、例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、レボルメロキシフェン、及びEM-652(SCH 57068))ならびに選択的エストロゲン受容体ディグレーダー(SERD、例えば、フルベストラント、TAS-108(SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810(ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927、ICI182782、及びAZD9496)は、すでに使用されているか、またはER陽性乳癌の治療において開発されている。
【0005】
SERM(例えばタモキシフェン)及びAIは、ER陽性乳癌のための第1選択のアジュバント全身療法としてよく使用されている。タモキシフェンは、ER陽性乳癌に一般に使用されている。AIは、体内でアンドロゲンをエストロゲンに変える、アロマターゼの活性を遮断することによって末梢組織中のエストロゲン産生を抑える。しかしながら、AIは、卵巣がエストロゲンを生成するのを止めることができず、そのため、AIは、主に、閉経後の女性を治療するために使用される。さらに、AIは、重篤な副作用が少なく、タモキシフェンよりもさらに有効であるため、AIは、閉経前の女性を治療するために使用され、卵巣機能を抑えることもできる。例えば、Francis et al.,“Adjuvant Ovarian Suppression in Premenopausal Breast Cancer,”N.Engl.J.Med.,372:436-446(2015)を参照されたい。
【0006】
これらの薬剤による初期治療が成功し得るが、多くの患者は、最終的には、薬物耐性乳癌を再発する。ERに影響を及ぼす変異は、この抵抗性の発症のためにある潜在的機序として現れる。例えば、Robinson et al.,“Activating ESR1 mutations in hormone-resistant metastatic breast cancer,” Nat.Genet.45:1446-51(2013)を参照されたい。ERのリガンド結合ドメイン(LBD)における変異は、内分泌療法のうちの少なくとも1つの方針を受けている患者からの21%の転移性ER陽性乳癌試料に見出される。Jeselsohn,et al.,“ESR1 mutations-a mechanism for acquired endocrine resistance in breast cancer,” Nat.Rev.Clin.Oncol.,12:573-83(2015)。
【0007】
フルベストラントは、現在、抗エストロゲン療法後の疾患の進行があるER陽性転移性乳癌の治療に承認されている唯一のSERDである。その臨床的有効性にもかかわらず、フルベストラントの効用は、単回投与において投与され得る薬物の量によって、バイオアベイラビリティの低下によって制限されている。18F-フルオロエストラジオール陽電子放出断層撮影法(FES-PET)を用いた画像研究は、500mgの用量レベルでさえ、患者の中には、完全なERの阻害を有さない場合があり、不十分な投与は、治療不全の理由であり得ることを示唆している。
【0008】
エストロゲン標的療法に関連する別の課題は、子宮、骨、及びその他の組織への望ましくない効果を有し得ることである。ERは、多種多様な組織及び細胞型にエストロゲン応答性遺伝子の転写を指示する。これらの効果は、特に、エストロゲン及びその他の卵巣ホルモンの内因性レベルが、更年期中に減退する場合に、顕著であり得る。例えば、タモキシフェンは、子宮内膜における部分アゴニストとして作用するため、閉経前の女性における骨粗しょうを引き起こし、子宮内膜癌のリスクを増大させ得る。閉経後の女性では、AIは、タモキシフェンよりもさらに骨喪失及び骨折を引き起こし得る。フルベストラントで治療された患者はまた、作用機序により、骨粗鬆症のリスクにさらされ得る。
【0009】
ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/タンパク質キナーゼB(AKT)/ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)経路は、細胞周期を調節する際に重要な細胞内シグナル伝達経路である。癌におけるPI3K/AKT/mTOR経路の高頻度の活性化ならびに細胞成長及び生存におけるその極めて重要な役割は、様々な療法の開発においてこの平衡を利用するために、増殖対分化の適切な量を見つけ出す課題を提供する。例えば、Gitto et al.,“Recent insights into the pathophysiology of mTOR pathway dysregulation,”Res.Rep.Bio.,2:1-16(2015)を参照のこと。
【0010】
PI3K経路の阻害剤は、他の療法と組み合わせて施された場合に、最も有望である。例えば、アロマステリックmTOR阻害剤であるエベロリムスは、進行性ホルモン受容体陽性(HR+)、HER2乳癌(BOLERO-2試験)を有する閉経後の女性を治療するために、AIエキセメスタンと併用して使用することが2012年に承認された。例えば、PI3K及びmTORのATP競合性二重阻害剤(例えば、BEZ235、GDC-0980)、クラスI PI3Kの4つすべてのアイソフォームを阻害する汎PI3K阻害剤(例えばBKM120、GDC-0941)、様々なPI3Kアイソフォームのアイソフォーム特異的阻害剤(例えばBYL719、GDC-0032)、AKTのアロマステリック及び触媒阻害剤(MK2206、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、AZD5363)、ならびにmTORのみのATP競合性阻害剤(AZD2014、 MLN0128、及びCC-223)のようなPI3K経路の他の成分を標的とする薬剤が、HR+癌を治療するために開発中である。Dienstmann et al.,“Picking the point of inhibition:a comparative review of PI3K/AKT/mTOR pathway inhibitors,”Mol.Cancer Ther.,13(5):1021-31(2014)。
【0011】
それらの大きな潜在性にもかかわらず、mTOR阻害剤と関連する望ましくない副作用が、有効な癌療法としてのそれらの開発を妨げている。Kaplan et al.,“Strategies for the management of adverse events associated with mTOR inhibitors,” Transplant Rev (Orlando),28(3):126-133 (2014)、及びPallet et al.,“Adverse events associated with mTOR inhibitors,” Expert Opin.Drug Saf.12(2):177-186(2013)。
【0012】
進行段階の及び/または前治療への耐性がある癌と闘うために、第2の治療剤(例えば、エベロリムス、及びPI3K/AKT/mTOR経路を標的とする他の薬剤)と混合することによってさらなる利点を提供しながら、現行の内分泌療法と関連した課題を克服し得る、より永続的かつ有効なER標的療法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の一態様は、対象における1種以上の癌及び/または腫瘍を治療するための方法に関し、本方法は、対象に、治療上有効量の、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と、本明細書に記載される1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)との組み合わせを投与することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、子宮内膜癌、または前立腺癌等のエストロゲン依存性癌である。いくつかの実施形態では、癌は、ER陽性乳癌である。
【0015】
RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、必要とする対象に、併用投与される。「併用」という語句は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩が、第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)の投与前、その中、またはその後に投与され得ることを意味する。例えば、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)は、約1週間毎に、約6日間毎に、約5日間毎に、約4日間毎に、約3日間毎に、約2日間毎に、約24時間毎に、約23時間毎に、約22時間毎に、約21時間毎に、約20時間毎に、約19時間毎に、約18時間毎に、約17時間毎に、約16時間毎に、約15時間毎に、約14時間毎に、約13時間毎に、約12時間毎に、約11時間毎に、約10時間毎に、約9時間毎に、約8時間毎に、約7時間毎に、約6時間毎に、約5時間毎に、約4時間毎に、約3時間毎に、約2時間毎に、約1時間毎に、約55分間毎に、約50分間毎に、約45分間毎に、約40分間毎に、約35分間毎に、約30分間毎に、約25分間毎に、約20分間毎に、約15分間毎に、約10分間毎に、または約5分間毎に投与され得る。他の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)は、対象に、同時にまたは実質的に同時に投与される。ある特定のこれらの実施形態では、化合物は、単一製剤の一部として投与され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)は、別々の製剤で投与される。ある特定のこれらの実施形態では、製剤は、同じタイプのものであり得る。例えば、両方の製剤は、経口投与用(例えば2種の別々の丸剤を介して)または注射用(例えば2種の注射製剤を介して)に設計され得る。他の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)は、異なるタイプの製剤で製剤化され得る。例えば、ある化合物は、経口投与用に設計される製剤であり得るが、その他は、注射用に設計される製剤であり得る。
【0017】
他の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)は、単一製剤の一部として投与される。例えば、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)は、経口投与用の単一の丸剤または注射用の単一用量で製剤化される。したがって、ある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び1種以上の第2の治療剤を含む製剤が、本明細書に提供される。
【0018】
RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び/または第2の治療剤(複数可)の投与経路としては、局所投与、経口投与、皮内投与、筋肉投与、腹腔内投与、静脈内投与、膀胱腔内注入、皮下投与、経皮投与、及び経粘膜投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】RAD1901は、ESR1状態及び前内分泌療法にもかかわらず、様々な患者由来の異種移植片(PDx)モデルにおける腫瘍成長を阻害した。RAD1901で治療したPDxモデルにおける腫瘍成長の阻害(TGI)の割合を示す。
【
図2】RAD1901とエベロリムスとの組み合わせは、野生型(WT)ERα MCF-7異種移植片モデル(PR+、HER2-)における腫瘍成長の阻害及び退行を示した。(A):ビヒクル対照、エベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせ、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、ならびにRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせで治療したMCF-7異種移植片モデルの腫瘍成長;一元配置分散分析、「ns」は、有意差なし、*p値<0.05、及び***p値<0.001;(B):ビヒクル対照、エベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせ、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、ならびにRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせで治療したMCF-7異種移植片モデルのベースラインから研究終了までの個々の腫瘍サイズの変化;(C):ビヒクル対照、エベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせ、RAD1901(30もしくは60mg/kg、1日1回経口投与)、ならびにRAD1901(30もしくは60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせで治療したMCF-7異種移植片モデルの腫瘍成長。
【
図3】RAD1901とエベロリムスとの組み合わせは、WT ERα PDx-11モデル(PR+、Her2+、アロマターゼ阻害剤、フルベストラント、及び化学療法で以前に治療した)における腫瘍成長の阻害及び退行を示した。(A):ビヒクル対照、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)、エベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、ならびにRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせで治療したPDx-11モデルの腫瘍成長;(B):ビヒクル対照、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、ならびにRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせで治療したPDx-11モデルにおけるベースラインから研究の終了までの個々の腫瘍サイズの変化。n=8~10/群。
【
図4】RAD1901とエベロリムスとの組み合わせは、WT ER+PDx-2モデル(PR+、Her2+、治療ナイーブ)における腫瘍成長の阻害を示した。(A):ビヒクル対照、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)、ならびにRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)との組み合わせで治療したPDx-2モデルの腫瘍成長;(B):ビヒクル対照、エベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、ならびにRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせで治療したPDx-2モデルの腫瘍成長。n=8~10/群。
【
図5】RAD1901の有効性は、エストラジオール治療は、WT ERα PDx-4モデル(PR+、Her2+、治療ナイーブ)において継続したが、RAD1901での治療を終了してから少なくとも2カ月持続した。
【
図6】RAD1901とエベロリムスとの組み合わせは、変異体(Y537S)ERα PDx-5モデル(PR+、Her2+、アロマターゼ阻害剤で以前に治療した)における腫瘍成長の阻害を示した。(A):ビヒクル対照、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、及びフルベストラント(3mg/kg、週1回皮下注射)で治療したPDx-5モデルの腫瘍成長;(B):ビヒクル対照、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、エベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)、ならびにRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、1日1回経口投与)との組み合わせで治療したPDx-5モデルの腫瘍成長。n=8~10/群。
【
図7】ヌードマウスにおけるフルベストラントの薬物動態分析。1mg/用量(黒ひし形)、3mg/用量(黒丸)、及び5mg/用量(黒三角)のフルベストラントの血漿濃度を示す。ヌードマウスに、1日目にフルベストラントを皮下投与し、2回目を8日目に投与した。フルベストラントの血漿濃度を、2回目の投与から168時間まで指示された時点でモニタリングした。
【
図8】頭蓋内MCF-7腫瘍モデルにおけるマウス生存へのRAD1901及びフルベストラント(Faslodex)の効果。
【
図9】200及び500mgのRAD1901を1日1回の経口投与で治療を受けた対象の子宮のFES-PETスキャンの代表的な画像、及びRAD1901治療後のER関与の変化。(A):200mgのRAD1901での治療前(a)及び治療後(c)の子宮CTスキャンの横断図ならびにRAD1901での治療前(b)及び治療後(d)の子宮FES-PETスキャンの横断図;(B):500mgのRAD1901での治療前((a)上パネル)及び治療後((a)下パネル)の子宮CTスキャンの矢状図、RAD1901での治療前((b)上パネル)及び治療後((b)下パネル)の子宮FES-PETスキャンの矢状図、RAD1901での治療前((c)上パネル)及び治療後((c)下パネル)の子宮CTスキャンの横断図、RAD1901での治療前((d)上パネル)及び治療後((d)下パネル)の子宮FES-PETスキャンの横断図;(C):ベースライン(RAD1901治療前)と比較した、対象1~3(200mg)及び対象4~7(500mg)のRAD1901での治療後のER関与の変化率(%)。
【
図10】RAD1901(500mg)での治療前(ベースライン)及びその後(治療後)の子宮(A)及び下垂体(B)のFES-PETスキャンの代表的な画像。(a)側面断面図、(b)経度断面図、及び(c)経度断面図。
【
図11】ビヒクル対照、RAD1901、エベロリムス、RAD1901とエベロリムスとの組み合わせ、フルベストラント、ならびにフルベストラントとエベロリムスとの組み合わせで治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR及びER発現
【
図12】RAD1901治療は、完全なERの低下をもたらし、インビトロでのMCF-7細胞株(A)及びT47D細胞株(B)におけるERシグナル伝達を阻害した。0.001μM、0.01μM、0.1μM、及び1μMの様々な濃度で、それぞれ、RAD1901及びフルベストラントで治療した両方の細胞株において、ER発現を示した。試験した3つのER標的遺伝子:PGR、GREB1、及びTFF1によって、ERシグナル伝達を示した。
【
図13】RAD1901での治療は、MCF-7異種移植片モデルにおけるER分解及びERシグナル伝達の廃止をもたらした。(A):最後の投与から2時間または8時間後に、ビヒクル対照、30及び60mg/kgのRAD1901、ならびに3mg/用量のフルベストラントで治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR及びER発現を示すウェスタンブロット;(B):最後の投与から2時間または8時間後に、ビヒクル対照、30及び60mg/kgのRAD1901、ならびに3mg/用量のフルベストラントで治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるERタンパク質発現;(C):最後の投与から8時間後に、ビヒクル対照、30及び60mg/kgのRAD1901、ならびに3mg/用量のフルベストラントで治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPRタンパク質発現。
【
図14】RAD1901での治療は、MCF-7異種移植片モデルにおけるPRの急激な減少をもたらした。(A):単回投与から8時間または12時間後に、ビヒクル対照、30、60、及び90mg/kgのRAD1901で治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR発現を示すウェスタンブロット;(B):7回目の投与から4時間または24時間後に、ビヒクル対照、30、60、及び90mg/kgのRAD1901で処置したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR発現を示すウェスタンブロット;(C):30、60、及び90mg/kgのRAD1901で治療したMCF-7異種移植片モデルにおけるPR発現の用量依存的な減少。
【
図15】RAD1901での治療は、MCF-7異種移植片モデルにおけるPRの急激な減少をもたらした。(A):単回投与から8時間後及び4回目の投与から24時間後に、ビヒクル対照及び90mg/kgのRAD1901で治療し、増殖マーカーKi-67に対して染色した、MCF-7異種移植片モデルから採取した切片腫瘍の代表的な写真;(B):単回投与から8時間後及び4回目の投与から24時間後に、ビヒクル対照及び90mg/kgのRAD1901で治療したMCF-7異種移植片モデルにおける増殖マーカーKi-67の減少を示すヒストグラム。
【
図16】30、60、及び120mg/kgのRAD1901での治療は、56日の有効性研究の最終日において4時間のPDx-4モデルの研究腫瘍の終わりに、フルベストラント(1mg/動物)よりもさらに著しいKi67の減少をもたらした。
【
図17】60及び120mg/kgのRAD1901での治療は、PR発現の減少に伴って、PDx-5モデルにおけるインビボでのERのシグナル伝達の低下をもたらした。
【
図18】乳離れしたばかりの雌Sprague-Dawleyラットにおける子宮組織へのRAD1901の効果。(A):最終投与から24時間後に殺処分したラットの子宮湿重量;(B):子宮の組織切片における上皮重量;(C):400倍率のトルイジンブルーO染色した子宮組織の代表的な切片;(D):子宮組織から抽出し、18SリボソームRNAハウスキーピング遺伝子と比較して、補体C3発現のレベルに対して定量的RT-PCRによって分析した全RNA。
【
図19】7日目に200、500、750、及び1000mg/kgのRAD1901を投与した後の血漿薬物動態の結果。
【
図22】表11に要約されたERα LBD-アンタゴニスト複合体の重ね合わせ。
【
図23】(A)RAD1901-1R5K及び(B)GW5-1R5Kのモデリング。
【
図24】(A)RAD1901-1SJ0及び(B)E4D-1SJ0のモデリング。
【
図25】(A)RAD1901-2JFA及び(B)RAL-2JFAのモデリング。
【
図26】(A)RAD1901-2BJ4及び(B)OHT-2BJ4のモデリング。
【
図27】(A)RAD1901-2IOK及び(B)IOK-2IOKのモデリング。
【
図28】1R5K及び2OUZによるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造の重ね合わせ。
【
図29】2BJ4及び2JFAによるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造の重ね合わせ。
【
図30】2BJ4、2JFA、及び1SJ0によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造の重ね合わせ。
【
図32】IFDによって2BJ4にドックされたRAD1901のタンパク質表面相互作用。
【
図33】2BJ4によるフルベストラントのIFD。
【
図34】2BJ4によるフルベストラント及びRAD1901のIFD。
【
図35】2BJ4によるフルベストラント及びRAD1901のIFDの重ね合わせ。
【
図36】WT及びLBD変異体のERα構築物によるRAD1901のインビトロ結合アッセイ。
【
図37】40日間治療した後の、MCF7細胞を移植したマウスの血漿、腫瘍、及び脳におけるRAD1901レベル。BLQ:定量下限未満。
【
図38】200mgの用量の経口投与で、1日1回、6日間治療したヒト対象の子宮、筋肉、及び骨のSUV。
【
図39】500mgの用量の経口投与で、1日1回、6日間治療したヒト対象(n=4)の子宮、筋肉、及び骨のSUV。
【
図40】卵巣摘出ラットにおけるBMDへのRAD1901の効果。成体雌ラット(治療群当たりn=20)は、ビヒクル、E2(0.01mg/kg)、またはRAD1901(3mg/kg)で1日1回の治療開始の前に、偽手術または卵巣摘出手術のいずれかを施行した。BMDは、ベースライン及び治療から4週間後に、二重放射X線吸光光度法によって測定された。データは、平均±標準偏差で表される。*P<0.05対対応するOVX+Veh対照。BMD、骨ミネラル濃度;E2、ベータエストラジオール;OVX、卵巣摘出した;Veh、ビヒクル。
【
図41】卵巣摘出ラットにおける大腿マイクロアーキテクチャへのRAD1901の効果。成体雌ラット(治療群当たりn=20)は、ビヒクル、E2(0.01mg/kg)、またはRAD1901(3mg/kg)で1日1回の治療開始の前に、偽手術または卵巣摘出手術のいずれかを施行した。4週間後、骨マイクロアーキテクチャは、マイクロコンピュータ断層撮影法を用いて評価した。データは、平均±標準偏差で表される。*P<0.05対対応するOVX+Veh対照。ABD、見掛け骨密度;BV/TV、骨体積密度;ConnD、連結密度;E2、ベータエストラジオール;OVX、卵巣摘出した;TbN、骨梁数;TbTh、骨梁幅;TbSp、骨梁中心距離;Veh、ビヒクル。
【
図42】RAD1901の第1相用量漸増試験の重要なベースライン人口統計。
【
図43】RAD1901の第1相用量漸増試験における最も頻繁に起こる(10%超)治療関連AE。CTCAE v4.0により等級分けされたAE。同じ優先使用語の複数のシナリオを有する任意の患者は、最も重度のグレードまで1回のみ計数した。*任意の関連TEAEを有した全活性群における10%超の患者。N=所与のカテゴリーにおける少なくとも1つの治療関連AEを有する対象の数。
【
図44】RAD1901の第1相用量漸増試験における薬物動態学的パラメータ(7日目)。
【
図46】残留姿勢対3ERTにおけるER-α LBD-アンタゴニスト複合体の違い。
【
図47】RMSD計算によるER-α LBD-アンタゴニスト複合体の構造オーバーラップの評価。
【
図48】ER-α LBD-アンタゴニスト複合体におけるリガンド結合の分析。
【
図50】1R5K、1SJ0、2IFA、2BJ4、及び2OUZによるRAD1901の誘導適合ドッキングスコア。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施例の項に示されるように、RAD1901とエベロリムスとの組み合わせ(RAD1901-エベロリムスの組み合わせ)(以下の構造)は、実施例Iにおいて記載されるように、ESR1状態、及びこれまでの内分泌療法にもかかわらず、野生型(WT)ERα MCF-7異種移植片モデル(
図2A~C)、WT ERα PDx-2(
図4A~B)、及びPDx-11モデル(
図3A~B)、及び変異(例えばY537S)ERα PDx-5モデル(
図6A~B)を含む、いくつかの乳癌異種移植片モデルにおいて、RAD1901単独よりも大きな腫瘍成長の阻害を示した。PDx-2、PDx-5、及びPDx-11モデルは、WTまたは変異(例えばY537S)ERαを発現する腫瘍を有し、PRの発現を有し、高いまたは低いHer2の発現を有し、これまでに内分泌療法(例えばAI、フルベストラント)、及び/または化学療法(化学)を有するまたはそれらを有さなかった(
図1)。RAD1901単独はまた、WTまたは変異(例えばY537S)ERαを発現する腫瘍を有し、PRの発現を有し、高いまたは低いHer2の発現を有し、これまでに内分泌療法(例えばタモキシフェン(tam)、AI、フルベストラント)、化学療法(化学)、Her2阻害剤(Her2i、例えばトラスツズマブ、ラパチニブ)、ベバシズマブ、及び/またはリツキシマブを有するまたはそれらを有さない、
図1において列挙されるすべての他のPDxモデルにおいて腫瘍成長を阻害した。
【0021】
ER WT PDxモデル及びER変異体PDxモデルは、フルベストラント単独、エベロリムス単独、及び/またはフルベストラントとエベロリムスとの組み合わせ(フルベストラント-エベロリムスの組み合わせ)による治療に対する異なるレベルの反応性を有し得る。しかしながら、RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、PDxモデルがフルベストラント治療及び/またはフルベストラント-エベロリムスの組み合わせに対する反応性があったかどうかにかかわらず、RAD1901単独またはエベロリムス単独による治療と比較して、改善された腫瘍成長の阻害及び/または腫瘍退縮を示した。換言すれば、RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、フルベストラント耐性癌において腫瘍成長を阻害し、及び/または腫瘍退縮を生じ得る。
【0022】
RAD1901-エベロリムスの組み合わせ治療は、フルベストラント単独またはフルベストラント-エベロリムスの組み合わせによる治療と比較して、改善された腫瘍成長の阻害及び/または腫瘍退縮を示した。例えば、RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、これらの異種移植片モデルが、フルベストラント治療に対する多様な反応性(例えば、フルベストラント治療に対するMCF7細胞株異種移植片モデル(
図2)、フルベストラント治療に対するPDx-11モデル(
図3)、及びフルベストラント治療に対して最も反応性が少ないPDx-2モデル(
図4)を有するとしても、フルベストラント単独、RAD1901単独、またはエベロリムス単独による治療よりも、さらにWT ER+異種移植片モデルにおいて、さらに有意な腫瘍退縮を生じた。RAD1901-エベロリムスの組み合わせはまた、フルベストラント-エベロリムスの組み合わせによる治療よりも、さらにWT ER+MCF7細胞株異種移植片モデル及びPDx-11モデルにおいて、さらに有意な腫瘍退縮を生じた(
図2及び3)。RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、30mg/kgまたは60mg/kgの用量でRAD1901による同様の効果を与えたが、30mg/kgのRAD1901単独は、腫瘍成長を阻害する際に、60mg/kgのRAD1901単独ほど有効ではなかった(
図2C)。当該の結果は、より低用量(例えば30mg/kg)のRAD1901を用いたRAD1901-エベロリムスの組み合わせが、当該異種移植片モデルにおいて腫瘍成長の阻害/腫瘍退縮の効果を最大限にするのに十分であったことを示唆している。
【0023】
RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、フルベストラント治療に対してほとんど反応性がない変異体ER+(例えばY537S)PDxモデルにおいて、腫瘍退縮または改善された腫瘍成長の阻害を示した(
図6A)。例えば、PDx-5は、フルベストラント治療に対してほとんど反応性がないER Y537S変異体PDxモデル(PR+、Her2+、AIによるこれまでの治療)である。RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、PDx-5モデルにおいて腫瘍退縮を示し、一方、エベロリムス単独またはRAD1901単独が、腫瘍退縮を生じることなく、腫瘍成長のみを阻害した(
図6B)。RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、変異体PDx-5モデルにおいて、RAD1901単独、エベロリムス単独、またはフルベストラント単独よりもさらに有意な腫瘍成長の阻害を生じた(
図6B)。それ故に、エベロリムスの添加は、RAD1901と組み合わせて適用された場合、PDx-5モデルに利益をもたらした。それ故に、RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、PRの発現を有する、高いまたは低いHer2の発現を有し、フルベストラントに対する耐性を有するまたは有さない、WTまたは変異体ERを発現するER+乳癌に対する強力な抗腫瘍療法を提供する。
【化1】
【0024】
本明細書に提供される結果はまた、RAD1901が脳に送達され得ることを示し(実施例II)、当該送達は、野生型ERαを発現する頭蓋内腫瘍モデル(MCF-7異種移植片モデル、実施例I(B))においてマウス生存を改善したことを示した。エベロリムスは、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、結節硬化症(TS)で見られる脳腫瘍を治療するように承認された。それ故に、RAD1901-エベロリムスの組み合わせの成分は両方とも、脳血液関門を横断し、脳内のER+腫瘍を治療することができる可能性が高い。これは、フルベストラントが脳血液関門を横断することができないため、脳内のER+腫瘍を治療するためにフルベストラント-エベロリムスの組み合わせを上回るさらなる利点を表す(Vergote1 et al.,“Fulvestrant,a new treatment option for advanced breast cancer:tolerability versus existing agents,” Ann.Oncol.,17(2):200-204(2006))。RAD1901と、血液脳関門を横断することができる他の第2の治療剤(複数可)(例えばラパマイシン類似体等のmTOR阻害剤(Geoerger et al.,“Antitumor activity of the rapamycin analog CCI-779 in human primitive neuroectodermal tumor/medulloblastoma models as single agent and in combination chemotherapy,” Cancer Res.61:1527-1532(2001)))との組み合わせはまた、脳内のER+腫瘍への同様の治療効果を有し得る。
【0025】
RAD1901は、エストラジオール治療は継続したが、RAD1901治療を終了した後に、腫瘍成長を阻害する際に持続的な有効性を示した(例えばPDx-4モデル)。それ故に、RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、特に、第2の治療剤(複数可)での治療が、有害反応のために中断され得る(例えばエベロリムスにおいては29%)、または低減もしくは遅延され得る(エベロリムスで治療した患者においては70%)場合、治療終了後に腫瘍成長を阻害することによって患者の利益になる可能性が高い。http://www.fda.gov/Drugs/InformationOnDrugs/ApprovedDrugs/ucm488028.htm。
【0026】
A RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、エベロリムス単独またはエベロリムスと他のホルモン療法(例えば、レトロゾール等のAI及びフルベストラント等のSERD)との組み合わせによる治療よりも低い副作用を有する可能性が高い。例えば、AI及びフルベストラントは両方とも、治療した患者において骨喪失を生じ得る。RAD1901は、同様の副作用を有する可能性は低い。RAD1901は、腫瘍中に優先的に蓄積することが見出され、最大約35の腫瘍中のRAD1901レベル対血漿中のRAD1901レベル(T/P比)があった(実施例II)。子宮、筋肉、及び骨に対する標準取り込み値(SUV)は、約200mg~最大約500mgの1日用量で、RAD1901で治療したヒト対象について計算された(実施例III(A))。投与後の子宮シグナルは、「非標的組織」(エストロゲン受容体を発現しない組織)からのレベルに近く、RAD1901治療後のFES-PETの取り込みの完全な減衰を示唆している。エストロゲン受容体を有意に発現しなかった組織(例えば筋肉、骨)中の治療前対治療後PETスキャンについては、ほとんど変化が観察されなかった(実施例IIIA)。最終的に、RAD1901治療は、卵巣摘出(OVX)ラットにおける子宮組織のエストラジオール刺激に拮抗し(実施例IV(A))、治療を受けた対象の骨質を大いに保存した。例えば、RAD1901で治療したOVXラットは、維持されたBMD及び大腿マイクロアーキテクチャを示した(実施例IV(A))。それ故に、RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、特に、骨粗鬆症または骨粗鬆症のより高いリスクを有する患者において有用であり得る。
【0027】
さらに、遺伝子発現プロファイリングは、エベロリムス治療に反応する患者を特定するために有効であることが報告されている。Yoon et al.,“Gene expression profiling identifies responsive patients with cancer of unknown primary treated with carboplatin,paclitaxel,and everolimus:NCCTG N0871(alliance),”Ann.Oncol.,27(2):339-44(2016)。試験NCT00805129は、当該変異が再発の増加及びエベロリムスに対する応答時間の増加をもたらすため、エベロリムスがTSC1中の体細胞の変異を提示する患者においてより効率的であることを見出した。それ故に、本明細書に開示される方法は、より多い応答時間及び/またはより長い応答時間を有する対象を特定するために、治療を受けた対象の遺伝子プロファイリングをさらに含み得る。
【0028】
さらに、RAD1901は、MCF7細胞株異種移植片モデルにおいてインビボで野生型ERαを分解し、ERシグナル伝達を廃止することが見出され、これらのMCF7細胞株異種移植片モデルにおいて、PRの用量依存的な減少を生じた(実施例III(B))。RAD1901は、治療を受けた対象から採取した腫瘍中の増殖マーカーKi67の減少からも明らかなように、MCF-7細胞株異種移植片モデル及びPDx-4モデルにおける増殖を減少した。RAD1901はまた、フルベストラント治療に対してほとんど反応性がなかったER変異体PDxモデルにおいてインビボでERシグナル伝達を減少した(実施例III(B))。
【0029】
フルベストラント治療に対してほとんど反応性がない腫瘍の治療及び変異体ERαを発現する腫瘍におけるRAD1901-エベロリムスの組み合わせの予期せぬ有効性は、RAD1901とERαとの間の固有の相互作用によるものであり得る。RAD1901に結合するERα及び他のERαと結合する化合物の構造モデルは、特定の結合相互作用についての情報を得るために分析した(実施例V)。コンピュータモデリングは、RAD1901-ERαの相互作用が、ERαのLBDの変異、例えばY537X変異体(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、及びS463Pによって影響を受ける可能性が低いことを示し、このことは、内分泌療法のうちの少なくとも1つを施した患者からの転移性ER陽性乳房の腫瘍試料の最近の研究に見出されたLBD変異の約81.7%を説明する(表9、実施例V)。それ故に、1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)との組み合わせは、本明細書に開示されるRAD1901-エベロリムスの組み合わせと同様に比較的低い副作用を有する治療効果を有する可能性が高い。コンピュータモデリングは、結合にとって欠かせないERαのC末端リガンド結合ドメインにおける特定の残基の特定をもたらし、野生型ERαだけでなく、ある特定の変異体及びそれらのバリアントもまた結合し、拮抗する化合物を発生するために使用することができる情報は、第2の治療剤(例えばエベロリムス)と組み合わせたときに、本明細書に開示されるRAD1901-エベロリムスの組み合わせと同様に比較的低い副作用を有する強力な抗腫瘍療法を提供し得る。
【0030】
本明細書に提供される結果に基づいて、対象に、治療上有効量の、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と本明細書に記載される第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)との組み合わせを投与することによって、それらを必要とする対象においてERα陽性腫瘍の成長を阻害する、またはその退行を生じるための方法が、本明細書に提供される。
【0031】
ある特定の実施形態では、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)の投与は、腫瘍成長を阻害することに加えて、例えば、(例えば、エストラジオール結合を阻害するまたはERαを分解することによって)癌細胞の増殖を阻害するまたはERα活性を阻害することを含む、さらなる治療的有効性を有する。ある特定の実施形態では、本方法は、非標的組織(例えば、筋肉、骨)に対する負の効果をほとんど生じないまたは生じない。
【0032】
ある特定の実施形態では、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)は、ERα及び変異体ERαを調節する及び/または分解する。
【0033】
本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または腫瘍退縮の方法のある特定の実施形態では、対象に、治療上有効量の、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と本明細書に記載される1種以上の第2の治療剤(複数可)との組み合わせを投与することによって、それらを必要とする対象においてERα陽性腫瘍の成長を阻害する、またはその退行を生じるための方法が、提供される。ある特定のこれらの実施形態では、その塩は、構造:
【化2】
を有するRAD1901二塩酸塩である。
【0034】
第2の治療剤
本明細書に提供される方法で用いるための第2の治療剤は、化学療法剤、またはAKTの阻害剤、アンドロゲン受容体、血管新生、アロマターゼ、オーロラAキナーゼ、BCL2、EGFR、エストロゲン経路、エストロゲンシグナル伝達経路、エストロゲン受容体、HER2、HER3、熱ショックタンパク質90(Hsp90)、ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達経路、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)、KIT経路、mTOR(例えばTORC1及び/またはTORC2)、微小管、MYC、ヌクレオシド代謝、PARP、汎PI3K、PI3K、タンパク質キナーゼCK2、RAS経路、ステロイドスルファターゼ(STS)、TK、Top2A、チロシンキナーゼ、VEGF受容体チロシンキナーゼ、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。第2の治療剤はまた、抗TGFベータ抗体、抗1型インスリン様成長因子受容体抗体、抗TROP-2抗原抗体、抗HER3抗体、抗PD1抗体等の抗体、またはこれらの薬物複合体であり得る。
【0035】
第2の治療剤のさらなる例としては、酢酸アビラテロン、ADI-PEG20、アド-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アリセルチブ、アナストロゾール、パクリタキセル、及びパクリタキセル誘導体(例えば、ANG1005、パクリタキセル高分子ミセル)、ARN-810、アザシチジン、AZD2014、AZD5363、ベバシズマブ、BP-C1、ブパリシブ(BKM120)、BYL719、カペシタビン、カルボプラチン、マレイン酸セジラニブ、セツキシマブ、シスプラチン/AC4-CDDP4、CR1447、CX-4945、ダサチニブ、デノスマブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、エニルウラシル、エンチノスタット、エンザルタミド、エピルビシン、エリブリン、エキセメスタン、エベロリムス、フルオロウラシル、フルベストラント、フレゾリムマブ、ガネテスピブ(ganetespib)、ガニツマブ、GDC-0032、GDC-0941、ゲムシタビン、グレムバツムマブベドチン、GnRHアゴニスト(例えば酢酸ゴセレリン)、GRN1005、GSK2141795、イバンドロネート、IMMU-132、イリノテカン、イロススタット、エポチロン(例えばイキサベピロン)、ラパチニブ、ソニデギブ(LDE225)、レトロゾール、LGK974、LJM716、ルシタニブ、メトトレキサート、MK-2206、MK-3475、MLN0128、MM-302、ネラチニブ、ニラパリブ、オラパリブ、抗アンドロゲン(例えばオルテロネル)、オキサリプラチン、パゾパニブ、ペルツズマブ、PF-05280014、PM01183、プロゲステロン、ピロチニブ、ロミデプシン、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、タラゾパリブ、タモキシフェン、タキサン、T-DM1、テラプリストン(CDB-4124)、テモゾロミド、テムシロリムス、テラチオモリブデート(terathiomolybdate)、テセタクセール(tesetaxel)、TLR7アゴニスト、TPI287、トラメチニブ、トラスツズマブ、TRC105、トレバナニブ(AMG386)、トリプトレリン、ベリパリブ、ビンフルニン、ビノレルビン、ボリノスタット、ゾラデックス、及びゾレドロン酸が挙げられるが、これらに限定されず、これには、溶媒和物(例えば水和物)及びそれらの塩が含まれる。
【0036】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、アド-トラスツズマブエムタンシン、オーロラAキナーゼ阻害剤(例えばアリセルチブ)、AI(例えばアナストロゾール;エキセメスタン、レトロゾール)、ARN-810、mTOR阻害剤(例えばエベロリムス、AZD2014、BEZ235、GDC-0980、CC-223、MLN0128)、AKT阻害剤(例えば、AZD5363、GDC-0068、GSK2110183、GSK2141795、GSK690693、MK2206)、PI3K阻害剤(例えば、BKM120、BYL719、GDC-0032、GDC-0941)、選択的ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(例えばエンチノスタット)、GnRHアゴニスト(例えば酢酸ゴセレリン)、GRN1005、ならびにトラスツズマブ、ラパチニブ、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ルシタニブ、ネラチニブ)、抗抗アンドロゲン(例えばオルテロネル)、ペルツズマブ、テモゾロミド、及び抗体(例えば、keytruda及びBYM338)とのこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、AI(例えば、アナストロゾール、アロマシン、及びレトロゾール)、別のSERM(例えば、アルゾキシフェン、ドロロキシフェン、EM-652(SCH57068)、イドキシフェン、ラソフォキシフェン、レボルメロキシフェン、ミプロキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、及びトレミフェン)、または別のSERD(例えば、フルベストラント、GDC-0810(ARN-810)、GW5638/DPC974、ICI182782、RU58668、SRN-927、TAS-108(SR16234)、及びZK191703)であり得、これには、それらの溶媒和物(例えば水和物)及び塩が含まれる。*
【0038】
第2の治療剤のさらなる例としては、アブラキサン、AMG386、カバジタキセル、ケリックス(caelyx)、カペシタビン、ドセタキセル、エリブリン、ゲムシタビン、ハーセプチン、ネラチニブ、パゾパニブ(GW786034)、ラパログ(ラパマイシン及びその類似体)、タクソール(類似体/代替の製剤を含む)、TDM1、テモゾルアミド、タイケルブ、ベリパリブ(ABT-888)、及びビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されず、これには、それらの溶媒和物(例えば水和物)及び塩が含まれる。
【0039】
PI3K/AKT/mTOR経路を標的とする第2の治療剤
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的とし、mTOR阻害剤、二重mTOR阻害剤、PI3K/mTOR阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、ラパマイシン(シロリムスまたはラパミューン、Pfizer)等のラパマイシン誘導体(別名、ラパログ)、エベロリムス(アフィニトールまたはRAD001、Novartis)、リダフォロリムス(AP23573またはMK-8669、Merck and ARIAD Pharmaceuticals)、テムシロリムス(トリセルまたはCCI779、Pfizer)であり、これには、それらの溶媒和物(例えば水和物)及び塩が含まれる。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、例えば、MLN0128(去勢耐性前立腺癌(CRPC)、Memorial Sloan Kettering Cancer Center)、CC115及びCC223(Celgene)、OSI-027(OSI Pharmaceuticals)、ならびにAZD8055及びAZD2014(AstraZeneca)のようなmTORC1及びmTORC2の両方を阻害する二重mTOR阻害剤であり、これには、それらの溶媒和物(例えば水和物)及び塩が含まれる。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、例えば、GDC-0980、SAR245409(XL765)、LY3023414(Eli Lilly)、NVP-BEZ235(Novartis)、NVP-BGT226(Novartis)、SF1126、及びPKI-587(Pfizer)のようなPI3K/mTOR阻害剤であり、これには、それらの溶媒和物(例えば水和物)及び塩が含まれる。
【0040】
ある特定の実施形態では、上に開示されている1種を超える第2の治療剤は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と組み合わせて使用され得る。例えば、mTOR阻害剤は、別のmTOR阻害剤またはPI3K/mTOR阻害剤と一緒に使用され得る。また、mTOR阻害剤、二重mTOR阻害剤、及びPI3K/mTOR阻害剤を含む、上に開示されている第2の治療剤が、治療の有効性を増強するために、その他の活性剤と投与され得ることは、当該技術分野で周知である。例えば、mTOR阻害剤は、JAK2阻害剤(Bogani et al.,PLOS One,8(1):e54826(2013))、化学療法剤(Yardley,Breast Cancer(Auckl)7:7-22(2013))、またはタモキシフェンもしくはエキセメスタン(Vinayak et al.,“mTOR inhibitors in the treatment of breast cancer,”Oncology,published January 15,2013(http://www.cancernetwork.com/breast-cancer/mtor-inhibitors-treatment-breast-cancer))等の内分泌療法と組み合わせて使用され得る。したがって、第2の治療剤はまた、これらの補助活性剤も含む。
【0041】
併用療法
(1)RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と1種以上の第2の治療剤(複数可)との組み合わせ
RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は両方とも、対象に単独で投与された場合、1つ以上の癌または腫瘍への治療効果を有する(実施例I(A)及びI(B))。対象に併用投与されるとき、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩ならびに第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、癌/腫瘍への有意に改善された効果を有する(実施例I(A)及びI(B))。
【0042】
本明細書に使用されるERα陽性腫瘍の「成長を阻害すること」は、腫瘍成長の速度を減速すること、または腫瘍成長を完全に停止することを指し得る。
【0043】
本明細書に使用されるERα陽性腫瘍の「腫瘍退縮」または「退縮」は、最大サイズの腫瘍を軽減することを指し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩との組み合わせ(例えば、リボシクリブ、アベマシクリブ、及びエベロリムス)の投与は、腫瘍のサイズ対ベースライン(すなわち、治療開始前のサイズ)の減少、または腫瘍の根絶もしくは部分的根絶でさえももたらし得る。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に提供される腫瘍退縮の方法は、代替的に、腫瘍のサイズ対ベースラインを減少する方法と特徴付けられ得る。
【0044】
本明細書に使用される「腫瘍」は、悪性腫瘍であり、「癌」と同義に使用される。
【0045】
腫瘍成長の阻害または退縮は、特定の組織または臓器内の単発性腫瘍または一連の腫瘍に限局され得るか、または全身性であり得る(すなわち、すべての組織または臓器における腫瘍に影響を及ぼす)。
【0046】
RAD1901は、ERα対エストロゲン受容体ベータ(ERβ)と優先的に結合することが周知であるため、別段記述がない限り、エストロゲン受容体、エストロゲン受容体アルファ、ERα、ER、野生型ERα、及びESR1は、本明細書において同義に使用される。本明細書に使用される「エストロゲン受容体アルファ」または「ERα」は、遺伝子ESR1によってコードされる、野生型ERαアミノ酸配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる、ポリペプチドを指す。本明細書に使用される「エストロゲン受容体アルファに対して陽性である」、「ERα陽性」、「ER+」、または「ERα+」である腫瘍は、1つ以上の細胞がERαのうちの少なくとも1つのイソ型を発現する腫瘍を指す。ある特定の実施形態では、これらの細胞は、ERαを過剰発現する。ある特定の実施形態では、患者は、ERβのうちの1つ以上の型を発現する腫瘍内に1つ以上の細胞を有する。ある特定の実施形態では、ERα陽性腫瘍及び/または癌は、乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌と関連している。ある特定のこれらの実施形態では、患者は、乳部、子宮、卵巣、または下垂体組織に位置する腫瘍を有する。患者が乳部に位置する腫瘍を有するような実施形態では、腫瘍は、HER2及びHER2+腫瘍に対して陽性であり得るかまたはあり得ない、内腔乳癌と関連し得、腫瘍は、高いまたは低いHER2を発現し得る(例えば
図1)。他の実施形態では、患者は、別の組織または臓器(例えば、骨、筋肉、脳)に位置する腫瘍を有するが、それにもかかわらず、乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌(例えば、乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌の移動または転移に由来する腫瘍)とは関連しない。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または腫瘍退縮の方法のある特定の実施形態では、標的とされる腫瘍は、転移性腫瘍である、及び/または腫瘍が、他の臓器(例えば、骨及び/または筋肉)におけるERの過剰発現を有する。ある特定の実施形態では、標的とされる腫瘍は、脳腫瘍及び/または癌である。ある特定の実施形態では、標的とされる腫瘍は、別のSERD(例えば、フルベストラント、TAS-108(SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810(ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927、ICI182782、及びAZD9496)、Her2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ラパチニブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、及び/もしくはペルツズマブ)、化学療法(例えば、アブラキサン、アドリアマイシン、カルボプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、ドキシル、エレンス、フルオロウラシル、ジェムザール、ヘラベン、lxempra、メトトレキサート、マイトマイシン、ミコキサントロン(micoxantrone)、ナベルビン、タクソール、タキソテール、チオテパ、ビンクリスチン、及びキセロダ)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、及びレトロゾール)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及び/もしくはトレミフェン)、血管新生阻害剤(例えばベバシズマブ)、ならびに/またはリツキシマブによる治療よりも、本明細書に開示されるRAD1901ならびに本明細書に開示される第2の治療剤の治療に対してより感受性がある。
【0047】
本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、本方法は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)との組み合わせを投与する前に、患者がERαを発現する腫瘍を有するかどうかを決定するステップをさらに含む。本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、本方法は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)との組み合わせを投与する前に、患者が変異体ERαを発現する腫瘍を有するかどうかを決定するステップをさらに含む。本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または退縮の方法のある特定の実施形態では、本方法は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)との組み合わせを投与する前に、フルベストラント治療に応答するまたは応答しないERαを発現する腫瘍を有するかどうかを決定するステップをさらに含む。これらの決定は、当該技術分野で周知である発現の検出のうちのいずれかの方法を用いて行われ得、対象から摘出された腫瘍または組織試料を用いてインビトロで行われ得る。
【0048】
野生型ERαを発現する腫瘍において腫瘍成長を阻害するRAD1901の能力を示すことに加えて、本明細書に提供される結果は、RAD1901がERαの変異型、すなわちY537S ERαを発現する腫瘍の成長を阻害する予期しない能力を示したことを示す(実施例I(A))。ERα変異の例のコンピュータモデリング評価は、例えば、Y537X変異体(式中、Xが、S、N、またはCである)を有するERα、D538G変異体を有するERα、及びS463P変異体を有するERαからなる群から選択される1種以上の変異体を有するERαのような、これらの変異のいずれも、LBDに影響を与えるか、またはRAD1901結合を特異的に妨げることが期待されなかったことを示したことを示した(実施例V(A))。これらの結果に基づいて、対象に、治療上有効量の、1種以上の1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩との組み合わせを投与することによって、癌に罹患している対象において、Y537X1(式中、X1が、S、N、またはCである)、D538G、L536X2(式中、X2が、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、特にY537S ERαからなる群から選択される、リガンド結合ドメイン(LBD)内に1種以上の変異体を有するERαに対して陽性である腫瘍の成長を阻害するか、またはその退行を生じるための方法が、本明細書に提供される。本明細書に使用される「変異体ERα」は、ERαのアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、それからなる、または本質的にそれからなる、1つ以上の置換または欠失を含むERα、及びそれらのバリアントを指す。
【0049】
動物異種移植片モデルにおける乳癌腫瘍成長を阻害することに加えて、本明細書に開示される結果は、RAD1901が、腫瘍細胞内に有意な蓄積を示し、血液脳関門を通過することができることを示す(実施例II)。血液脳関門を通過する能力は、RAD1901の投与が、脳転移異種移植片モデルにおいて有意に生存期間の延長を示すことによって確認された(実施例I(B))。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または腫瘍退縮の方法のある特定の実施形態では、標的とされるERα陽性腫瘍は、脳または中枢神経系の他の場所に位置する。ある特定のこれらの実施形態では、ERα陽性腫瘍は、主として脳癌と関連している。他の実施形態では、ERα陽性腫瘍は、主として、別の組織または臓器から遊走してきた乳部、子宮、卵巣、または下垂体癌等の別のタイプの癌と関連している転移性腫瘍である。ある特定のこれらの実施形態では、腫瘍は、乳癌脳転移(BCBM)等の脳転移である。本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、標的腫瘍内の1つ以上の細胞に蓄積する。
【0050】
本明細書に開示される方法のある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、好ましくは、約15以上、約18以上、約19以上、約20以上、約25以上、約28以上、約30以上、約33以上、約35以上、約40以上のT/P(腫瘍中のRAD1901濃度/血漿中のRAD1901濃度)比で腫瘍に蓄積する。
【0051】
本明細書に提供される結果は、RAD1901投与が卵巣摘出ラットにおける骨量の減少を防ぐことを示す(実施例IV(A))。したがって、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または腫瘍退縮の方法のある特定の実施形態では、1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩との組み合わせは、例えば、治療を受けた対象の骨体積密度、骨表面密度、骨ミネラル濃度、骨梁数、骨梁幅、骨梁中心距離、連結密度、及び/または見掛け骨密度への望ましくない効果を含む、骨への望ましくない効果を有さない。タモキシフェンが、閉経前の女性において骨喪失と関連し得るため、フルベストラントは、作用機序により骨構造を害し得、1種以上の1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩との組み合わせは、閉経前の女性、タモキシフェンまたは抗エストロゲン療法に耐性を示す腫瘍、ならびに骨粗鬆症及び/または骨粗鬆症の高いリスクを有する患者に特に有用であり得る。
【0052】
本明細書に提供される結果は、RAD1901が卵巣摘出ラットにおける子宮組織のエストラジオール刺激を拮抗することを示す(実施例IV(A))。さらに、200mgまたは最大500mgの1日用量のRAD1901で治療したヒト対象において、ERを有意に発現しなかった子宮、筋肉、及び骨組織に対する標準取り込み値(SUV)は、治療前及び治療後のシグナルにおいてほとんど変化を示さなかった(実施例III(A))。したがって、ある特定の実施形態では、かかる投与はまた、例えば、子宮、筋肉、または乳部組織を含む、他の組織への望ましくない効果をもたらさない。
【0053】
RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、必要とする対象に、併用投与される。「併用」という語句は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩が、第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)の投与前、その中、またはその後に投与され得ることを意味する。例えば、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、約1週間毎に、約6日間毎に、約5日間毎に、約4日間毎に、約3日間毎に、約2日間毎に、約24時間毎に、約23時間毎に、約22時間毎に、約21時間毎に、約20時間毎に、約19時間毎に、約18時間毎に、約17時間毎に、約16時間毎に、約15時間毎に、約14時間毎に、約13時間毎に、約12時間毎に、約11時間毎に、約10時間毎に、約9時間毎に、約8時間毎に、約7時間毎に、約6時間毎に、約5時間毎に、約4時間毎に、約3時間毎に、約2時間毎に、約1時間毎に、約55分間毎に、約50分間毎に、約45分間毎に、約40分間毎に、約35分間毎に、約30分間毎に、約25分間毎に、約20分間毎に、約15分間毎に、約10分間毎に、または約5分間毎に投与され得る。他の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、対象に、同時にまたは実質的に同時に投与される。ある特定のこれらの実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、単一製剤の一部として投与され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と単一の第2の治療剤(例えばエベロリムス)との組み合わせが、対象に投与される。他の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と1種を超える第2の治療剤(例えばエベロリムス)との組み合わせが、対象に投与される。例えば、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、癌/腫瘍を治療するために、2種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)と混合され得る。
【0055】
(2)投与量
本明細書に開示される方法で用いるための、治療上有効量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)との組み合わせは、特定の時間間隔にわたって投与される場合、1つ以上の治療的基準の達成をもたらす(例えば、腫瘍成長を遅らせるまたは停止すること、腫瘍退縮を生じさせること、症状の停止等の)量である。現在開示されている方法で用いるための組み合わせは、対象に1回または複数回投与され得る。化合物が複数回投与されるこれらの実施形態では、それらは、一連の間隔、例えば、毎日、隔日、毎週、または毎月投与され得る。あるいは、それらは、例えば、症状、患者の健康状態等に基づいて、必要に応じて、不規則な間隔で投与され得る。治療上有効量の組み合わせは、1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、または少なくとも15日間、毎日投与され得る。任意に、癌の状態または腫瘍の退縮は、例えば、対象のFES-PETスキャンによって、治療中またはその後にモニタリングされる。対象に投与される組み合わせの投与量は、検出された癌の状態または腫瘍の退縮に応じて増加または減少させることができる。
【0056】
理想的には、治療上有効量は、治療を受けた対象の50%以上が吐き気またはさらなる薬物投与を阻む他の毒性反応を経験する最大耐性用量を超えない。治療上有効量は、様々な症状、性別、年齢、体重の範囲、または対象の一般的健康、投与モード及び塩または溶媒和物タイプ、薬物に対する感受性の変動、特定のタイプの疾患等を含む、様々な要因に応じて対象において変動し得る。
【0057】
本明細書に開示される方法で用いるための、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の治療上有効量の例としては、耐性ER駆動型腫瘍または癌を有する対象において、約150~約1,500mg、約200~約1,500mg、約250~約1,500mg、または約300~約1,500mgの1日投与量、野生型ER駆動腫瘍及び/または癌ならびに耐性腫瘍及び/または癌の両方を有する対象において、約150~約1,500mg、約200~約1,000mgまたは約250~約1,000mgまたは約300~約1,000mgの1日投与量、主に野生型ER駆動腫瘍及び/または癌を有する対象において、約300~約500mg、約300~約550mg、約300~約600mg、約250~約500mg、約250~約550mg、約250~約600mg、約200~約500mg、約200~約550mg、約200~約600mg、約150~約500mg、約150~約550mg、または約150~約600mgの1日投与量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
治療上有効量または第2の治療剤(例えばエベロリムス)の投与量は、その特定のタイプに応じて異なる。全般に、第2の治療剤(例えばエベロリムス)の1日投与量は、約1mg~約1,500mg、約1mg~約1,200mg、約1mg~約1,000mg、約1mg~約800mg、約1mg~約600mg、約1mg~約500mg、約1mg~約200mg、約1mg~約100mg、約1mg~約50mg、約1mg~約30mg、約1mg~約20mg、約1mg~約10mg、約1mg~約5mg、約50mg~約1,500mg、約100mg~約1,200mg、約150mg~約1,000mg、約200mg~約800mg、約300mg~約600mg、約350mg~約500mgの範囲に及ぶ。第2の治療剤(例えばエベロリムス)の1日投与量は、約1~約100mg/kg、約1~約75mg/kg、約1~約50mg/kg、約1~約45mg/kg、約1~約40mg/kg、約1~約30mg/kg、約1~約20mg/kg、約1~約10mg/kg、約2~約100mg/kg、約2~約75mg/kg、約2~約50mg/kg、約2~約45mg/kg、約2~約40mg/kg、約2~約30mg/kg、約2~約20mg/kg、約2~約10mg/kg、約2.5~約100mg/kg、約2.5~約75mg/kg、約2.5~約50mg/kg、約2.5~約45mg/kg、約2.5~約40mg/kg、約2.5~約30mg/kg、約2.5~約20mg/kg、または約2.5~約10mg/kgの範囲に及び得る。
【0059】
ある特定の実施形態では、治療上有効量の組み合わせは、治療上有効量の単独で投与されたいずれかの化合物を利用し得る。他の実施形態では、組み合わせによって達成される有意に改善された相乗作用の治療効果のため、併用投与されたときに、治療上有効量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、単独で投与されたときに必要とされる治療上有効量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)よりも少なくてもよく、一方または両方の化合物が、別々に投与された場合に通常投与され得る投与量よりも低い投与量で投与され得る。任意の特定の理論によって拘束するものではないが、併用療法は、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)のうちの少なくとも1つまたはすべての投与量を減少させ、それによって望ましくない毒性副作用を排除または軽減することによって、有意に改善された効果を達成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、組み合わせの一部として投与されたときに、治療上有効量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、単独で投与されたときに、治療上有効量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の約30%~約200%、約40%~約200%、約50%~約200%、約60%~約200%、約70%~約200%、約80%~約200%、約90%~約200%、約100%~約200%、30%~約150%、約40%~約150%、約50%~約150%、約60%~約150%、約70%~約150%、約80%~約150%、約90%~約150%、約100%~約150%、約30%~約120%、約40%~約120%、約50%~約120%、約60%~約120%、約70%~約120%、約80%~約120%、約90%~約120%、約100%~約120%、30%~約110%、約40%~約110%、約50%~約110%、約60%~約110%、約70%~約110%、約80%~約110%、約90%~約110%、または約100%~約110%である。いくつかの実施形態では、組み合わせの一部として投与されたときに、治療上有効量の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、単独で投与されたときに、治療上有効量の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)の約30%~約200%、約40%~約200%、約50%~約200%、約60%~約200%、約70%~約200%、約80%~約200%、約90%~約200%、約100%~約200%、30%~約150%、約40%~約150%、約50%~約150%、約60%~約150%、約70%~約150%、約80%~約150%、約90%~約150%、約100%~約150%、約30%~約120%、約40%~約120%、約50%~約120%、約60%~約120%、約70%~約120%、約80%~約120%、約90%~約120%、約100%~約120%、30%~約110%、約40%~約110%、約50%~約110%、約60%~約110%、約70%~約110%、約80%~約110%、約90%~約110%、または約100%~約110%である。
【0061】
ある特定の実施形態では、癌または腫瘍は、耐性ER駆動型癌または腫瘍(例えば、変異体ER結合ドメイン(例えば、Y537X1(式中、X1が、S、N、またはCである)、D538G、L536X2(式中、X2が、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1種以上の変異を含むERα)を有する)であり、ERまたは腫瘍及び/もしくは癌の増殖の過剰発現体がリガンド非依存性になるか、または別のSERD(例えば、フルベストラント、TAS-108(SR16234)、ZK191703、RU58668、GDC-0810(ARN-810)、GW5638/DPC974、SRN-927、ICI182782、及びAZD9496)、Her2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ラパチニブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、及び/もしくはペルツズマブ)、化学療法(例えば、アブラキサン、アドリアマイシン、カルボプラチン、サイトキサン、ダウノルビシン、ドキシル、エレンス、フルオロウラシル、ジェムザール、ヘラベン、lxempra、メトトレキサート、マイトマイシン、ミコキサントロン(micoxantrone)、ナベルビン、タクソール、タキソテール、チオテパ、ビンクリスチン、及びキセロダ)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、及びレトロゾール)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及び/もしくはトレミフェン)、血管新生阻害剤(例えばベバシズマブ)、ならびに/またはリツキシマブの治療で進行する腫瘍及び/または癌である。
【0062】
ある特定の実施形態では、成人対象において、現在開示されている方法で一般に用いるための、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と本明細書に記載される第2の治療剤(例えばエベロリムス)(例えば、リボシクリブ、アベマシクリブ、及びエベロリムス)との組み合わせの投与量は、経口投与を介して、1日当たり約30μg~2,000mg、100μg~1,500mg、または150mg~1,500mgであり得る。この1日投与量は、単回投与または複数回投与を介して達成され得る。
【0063】
1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩との組み合わせは、対象に1回または複数回投与され得る。化合物が複数回投与されるこれらの実施形態では、それらは、一連の間隔、例えば、毎日、隔日、毎週、または毎月投与され得る。あるいは、それらは、例えば、症状、患者の健康状態等に基づいて、必要に応じて、不規則な間隔で投与され得る。
【0064】
(3)製剤
いくつかの実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、別々の製剤で投与される。ある特定のこれらの実施形態では、製剤は、同じタイプのものであり得る。例えば、両方の製剤は、経口投与用(例えば2種の別々の丸剤を介して)または注射用(例えば2種の注射製剤を介して)に設計され得る。他の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、異なるタイプの製剤で製剤化され得る。例えば、ある化合物は、経口投与用に設計される製剤であり得るが、その他は、注射用に設計される製剤であり得る。
【0065】
他の実施形態では、本明細書に記載されるRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、単一製剤の一部として投与される。例えば、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、経口投与用の単一の丸剤または注射用の単一用量で製剤化される。ある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)を含む組み合わせ製剤が、本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、単一製剤における化合物の投与は、患者のコンプライアンスを改善する。
【0066】
併用投与されたときに、治療上有効量の各化合物は、単独で投与されたときに、治療上有効量の各化合物よりも低くなり得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩、第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)での1種以上、あるいはRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)の両方を含む製剤は、1種以上の薬学的賦形剤、担体、アジュバント、及び/または保存剤をさらに含み得る。
【0068】
現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、単一剤形に製剤化され得、治療を受けている対象のための単一投与量として好適な物理的に別々の単位を意味し、各単位は、任意に、好適な薬学的担体と関連して、所望の治療効果を生じるように計算された活性材料の予め決定された量を含有する。単位剤形は、単一の1日用量または複数の1日用量(例えば、1日当たり約1~4回またはそれ以上)のうちの1つであり得る。複数の1日用量が使用される場合、単位剤形は、各用量について同じであってもよく、または異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、本化合物は、制御放出のために製剤化され得る。
【0069】
現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、任意の利用可能な従来の方法に従って製剤化され得る。好ましい剤形の例としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等が挙げられる。製剤化には、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、香味剤、及び必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤のような通常用いられる添加剤を使用することができる。加えて、製剤化はまた、従来の方法に従って、一般に薬学的製剤の原料として用いられる成分を混合することによって行われる。これらの組成物の例には、例えば、(1)大豆油、牛脂、及び合成グリセリド等の油、(2)流動パラフィン、スクアラン、及び固形パラフィン等の炭化水素、(3)ミリスチン酸オクチルドデシル及びミリスチン酸イソプロピル等のエステル油、(4)セトステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級アルコール、(5)シリコーン樹脂、(6)シリコーン油、(7)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、固形ポリオキシエチレンヒマシ油、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤、(8)ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びメチルセルロース等の水溶性高分子、(9)エタノール及びイソプロパノール等の低級アルコール、(10)グリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトール等の多価アルコール、(11)グルコース及びスクロース等の糖類、(12)無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等の無機粉末、(13)精製水等が含まれる。上の製剤で用いるための添加剤には、例えば、1)希釈剤として、ラクトース、コーンスターチ、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、結晶セルロース、及び二酸化ケイ素、2)結合剤として、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカント、ゼラチン、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール-ポリオキシエチレン-ブロックコポリマー、メグルミン、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン等、3)崩壊剤として、デンプン、寒天、ゼラチン粉末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース/カルシウム等、4)滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等、5)添加が薬学的に許容される着色剤として十分である任意の着色剤、6)香味剤として、ココアパウダー、メントール、アロマタイザー、ハッカ油、及びシナモンパウダー、7)アスコルビン酸またはアルファ-トフェノール等の添加が薬学的に許容される抗酸化剤が含まれ得る。
【0070】
現在開示されている方法で用いるためのRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)は、本明細書に記載される活性化合物のうちの任意の1つ以上及び生理学的に許容される担体(薬学的に許容される担体または溶液または希釈剤とも称される)として薬学的組成物に製剤化され得る。かかる担体及び溶液には、本発明の方法で使用された化合物の薬学的に許容される塩及び溶媒和物、ならびにかかる化合物のうちの2つ以上、該化合物の薬学的に許容される塩、及び該化合物の薬学的に許容される溶媒和物を含む混合物が含まれる。かかる組成物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,ed.Alfonso R.Gennaro,Mack Printing Company,Eaton,Pa.(1990)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような許容される薬学的手順に従って調製される。
【0071】
「薬学的に許容される担体」という用語は、患者においてアレルギー反応または他の不都合な反応を生じず、該患者に投与され、製剤中の他の材料と混合可能である、担体を指す。薬学的に許容される担体は、例えば、目的の投与形態に対して適当に選択され、かつ従来の薬務と一致する、薬学的希釈剤、賦形剤、または担体を含む。例えば、固体担体/希釈剤としては、ガム、デンプン(例えば、コーンスターチ、アルファ化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース系材料(例えば微結晶性セルロース)、アクリレート(例えばポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体は、湿潤剤または乳化剤、治療剤の貯蔵期間または有効性を増強する保存剤または緩衝剤等の少量の補助物質をさらに含み得る。
【0072】
1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)及びRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩は、遊離形態で、従来の方法によって塩に変換され得る。本明細書に使用される「塩」という用語は、塩がRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩で形成され、薬理学的に許容される限り、限定されず、塩の好ましい例には、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等)、無機酸性塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)等が含まれる。加えて、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩等は、本発明に従って化合物の「薬理学的に許容される塩」として好ましい。
【0073】
RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び/または第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)の異性体(例えば、幾何異性体、光学異性体、回転異性体、互変異性体等)は、例えば、再結晶化、ジアステレオマー塩法等の光学的分解能、酵素分画法、様々なクロマトグラフ法(例えば、薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガラスクロマトグラフィー等)を含む通常の分離方法を用いて、単一異性体に精製することができる。本明細書において「単一異性体」という用語は、100%の純度を有する異性体だけでなく、従来の精製操作を通してでさえ存在する、標的物以外の異性体を含有する異性体も含む。結晶多形は、時には、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩ならびに/または第2の治療剤(例えばエベロリムス)に対して存在し、そのすべての結晶多形は、本発明に含まれる。結晶多形は、時には、単一であり、時には、混合物であり、その両方が、本明細書に含まれる。
【0074】
ある特定の実施形態では、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び/または第2の治療剤(例えばエベロリムス)は、プロドラッグ形態であり得、その活性型を達成するために、いくつかの変化(例えば、酸化または加水分解)を行わなければならないことを意味する。あるいは、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び/または第2の治療剤(例えばエベロリムス)は、その活性型への親プロドラッグの変化によって生成される化合物であり得る。
【0075】
(4)投与経路
RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び/または本明細書に開示される第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)の投与経路としては、局所投与、経口投与、皮内投与、筋肉投与、腹腔内投与、静脈内投与、膀胱腔内注入、皮下投与、経皮投与、及び経粘膜投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
(5)遺伝子プロファイリング
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される腫瘍成長の阻害または腫瘍退縮の方法は、対象を遺伝子プロファイリングすることをさらに含み、プロファイリングされた遺伝子は、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2、及びVHLから選択される1つ以上の遺伝子である。
【0077】
ある特定の実施形態では、第2の薬剤は、エベロリムスであり、対象は、TSC1において体細胞変異を提示する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明は、サブ集団の乳癌患者を治療する方法を提供し、当該サブ集団が、以下の遺伝子のうちの1つ以上の発現を増加する、治療する方法と、本開示に記載される投与の実施形態に従って、有効用量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩と本明細書に記載される1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)との組み合わせで当該サブ集団を治療する方法と、を提供する。
【0079】
(6)用量の調節
RAD1901の腫瘍成長を阻害する能力を構築することに加えて、本明細書に提供される結果は、RAD1901が、子宮及び下垂体においてERへのエストラジオール結合を阻害することを示す(実施例III(A))。これらの実験において、子宮及び下垂体組織においてERへのエストラジオール結合は、FES-PET画像化によって評価された。RAD1901による治療後、ER結合の観察されたレベルは、バックグラウンドレベルでまたはそのレベルを下回った。これらの結果は、ER活性へのRAD1901の拮抗効果は、リアルタイムの走査を用いて評価され得る。これらの結果に基づいて、結合の減少または消失が有効性を示す、1つ以上の標的組織においてエストラジオール-ER結合を測定することによって、本明細書に開示される併用療法においてRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩で治療の有効性をモニタリングするための方法が、本明細書に提供される。
【0080】
エストラジオール-ER結合に基づいて、本明細書に開示される併用療法において、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与量を調節する方法が、さらに提供される。これらの方法のある特定の実施形態では、結合は、第1の投与量の化合物のうちの1つ以上の投与後のいくつかの時点で測定される。エストラジオール-ER結合が影響を及ぼさないか、または予め決定された閾値を下回る減少(例えば、5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、または50%未満のベースラインに対する結合の減少)を示す場合、第1の投与量は、低すぎると見なされる。ある特定の実施形態では、これらの方法は、増加した第2の投与量の化合物を投与するさらなるステップを含む。これらのステップを繰り返して、エストラジオール-ER結合の所望の低下が達成されるまで、投与量を繰り返し増加させることができる。ある特定の実施形態では、これらのステップは、本明細書に提供される腫瘍成長を阻害する方法に組み込まれ得る。これらの方法において、エストラジオール-ER結合は、腫瘍成長の阻害の代用、または成長の阻害を評価する補助手段としての役割を果たし得る。他の実施形態では、これらの方法は、例えば、癌細胞増殖の阻害を含む、腫瘍成長の阻害以外の目的のために、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与と併用して使用することができる。
【0081】
ある特定の実施形態では、併用療法において、RAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩の投与量を調節するための本明細書に提供される方法は、
(1)第1の投与量のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩(例えば、約350~約500mg/日)を、3、4、5、6、または7日間投与すること、
(2)エストラジオール-ER結合活性を、例えば、本明細書に開示されるFES-PET画像化を用いて検出することであって、
(i)ER結合活性が、検出不可能である、または予め決定された閾値レベルを下回る場合、第1の投与量を継続して投与する(すなわち、投与量レベルを維持する)こと、または
(ii)ER結合活性が、検出可能である、または予め決定された閾値レベルを上回る場合、第1の投与量よりも多い第2の投与量(例えば、第1の投与量+約50~約200mg)を3、4、5、6、または7日間投与し、次いで、ステップ(3)に進むこと、
(3)エストラジオール-ER結合活性を、例えば、本明細書に開示されるFES-PET画像化を用いて検出することであって、
(i)ER結合活性が、検出不可能である、または予め決定された閾値レベルを下回る場合、第2の投与量を継続して投与する(すなわち、投与量レベルを維持する)こと、または
(ii)ER結合活性が、検出可能である、または予め決定された閾値レベルを上回る場合、第2の投与量よりも多い第3の投与量(例えば、第2の投与量+約50~約200mg)を3、4、5、6、または7日間投与し、次いで、ステップ(4)に進むこと、
(4)ER結合活性が検出されなくなるまで、第4の投与量、第5の投与量等を通して、上のステップを繰り返すこと、を含む。
【0082】
ある特定の実施形態では、本発明は、ER感受性またはER耐性癌を検出及び/または投与するために、PET画像化の使用を含む。
【0083】
(7)本明細書に開示される方法のための組み合わせ
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組み合わせ方法のために、本明細書に開示される治療上有効量で、1種以上のRAD1901またはその溶媒和物(例えば水和物)もしくは塩及び/または本明細書に開示される第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)を含む薬学的組成物に関する。
【0084】
RAD1901-ERαの相互作用
(1)内分泌療法のうちの少なくとも1つの方針を受けている患者からのER陽性乳癌腫瘍試料中の変異体ERα
過去2年間に報告された5つの研究において、内分泌療法のうちの少なくとも1つの方針を受けている患者からの合計187の転移性ER陽性乳癌腫瘍試料が、配列決定され、ER LBD変異が、39人の患者(21%)において特定された(Jeselsohn)。39人の患者の中で、6つの最も頻繁なLBD変異を、Jeselsohnから適合されたスキーム1に示す。
【表1】
【0085】
すべてのLBD変異の頻度を、表9に要約する。
【0086】
コンピュータモデリングは、RAD1901-ERαの相互作用が、ERαのLBDの変異体、例えばY537X変異体(式中、Xが、S、N、またはCである)、D538G、及びS463Pによって影響を受ける可能性が低いことを示し、これは、内分泌療法のうちの少なくとも1つを施した患者からの転移性ER陽性乳房の腫瘍試料の最近の研究に見出されたLBD変異の約81.7%を占める(表10、実施例V)。
【0087】
ERα及び/または変異体ERαと結合するRAD1901の複合体及び結晶が、本明細書に提供され、変異体ERαは、Y537X1(式中、X1が、S、N、またはCである)、D538G、L536X2(式中、X2が、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1つ以上の変異を含む。
【0088】
本明細書に提供される方法のある特定の実施形態では、ERα及び変異体ERαのLBDは、AF-2を含む。他の実施形態では、LBDは、ERαのアミノ酸299~554を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。ある特定の実施形態では、変異体ERαのLBDは、Y537X1(式中、X1が、S、N、またはCである)、D538G、L536X2(式中、X2が、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1つ以上の変異を含む。本明細書に使用される「及び/または」という用語は、「及び」の場合と「または」の場合の両方を含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、治療を必要とする対象において、ERα及び/または変異体ERαの活性または発現と関連する状態を治療する方法が、本明細書に提供され、本方法は、対象に、1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とLBDを介してERα及び/または変異体ERαと結合することができる1種以上の化合物との組み合わせを投与することを含む。ある特定の実施形態では、この対象は、哺乳動物であり、ある特定のこれらの実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、この状態は、腫瘍及び/または癌であり、これには、本明細書に開示されるER陽性腫瘍及び/または癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書に提供される化合物及び方法のある特定の実施形態では、ERα及び変異体ERαのLBDは、AF-2を含む。他の実施形態では、LBDは、ERαのアミノ酸299~554を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。ある特定の実施形態では、変異体ERαのLBDは、Y537X1(式中、X1が、S、N、またはCである)、D538G、L536X2(式中、X2が、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1つ以上の変異を含む。
【0091】
本明細書に提供される化合物及び方法のある特定の実施形態では、LBDを介してERα及び/または変異体ERαと結合することができる化合物は、選択的エストロゲン受容体ディグレーダー(SERD)または選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である。ある特定の実施形態では、LBDを介してERα及び/または変異体ERαと結合することができる化合物は、残基E353、D351、R349、及び/またはL536とのH結合相互作用ならびにERα及び/または変異体ERαの残基F404とのπ相互作用からなる群から選択される1つ以上の相互作用を介しても結合することができる。そのような化合物の一例は、RAD1901である。
【0092】
ある特定の実施形態では、Y537X1(式中、X1が、S、N、またはCである)、D538G、L536X2(式中、X2が、RまたはQである)、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1つ以上の変異を含む変異体ERαの活性または発現と関連する状態を治療する方法が、本明細書に提供され、本方法は、対象に、1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)とLBDを介してERαと結合することができる1種以上の化合物との組み合わせを投与することを含む。ある特定の実施形態では、この状態は、ER陽性癌、乳癌、ER陽性乳癌、及び転移性乳癌が挙げられるが、これらに限定されない、癌であり、ある特定の実施形態では、この化合物は、RAD1901またはその薬学的に許容される溶媒和物(例えば水和物)または薬学的に許容される塩である。
【0093】
以下の実施例は、請求された発明をよりよく例証するために提供され、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。特定の材料が言及される程度では、それは、単に例証の目的のためであり、及び本発明を限定することを意図しない。当業者は、発明能力の行使なしで、及び本発明の範囲を逸脱しない範囲で、均等な手段または反応を開発するであろう。多くの変更が、本明細書に記載される手順でなされ得るが、一方、依然として本発明の範囲内で維持されることを理解されよう。かかる変更が、本発明の範囲内に含まれることが本発明者らの意図である。
【実施例】
【0094】
材料及び方法
試験化合物
以下の実施例に使用されるRAD1901は、IRIX Pharmaceuticals,Inc.によって製造された(6R)-6-(2-(N-(4-(2-(エチルアミノ)エチル)ベンジル)-N-エチルアミノ)-4-メトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール二塩酸塩であった(Florence,SC)。RAD1901は、乾燥粉末として保存され、脱イオン水中の0.5%(w/v)メチルセルロース中の均一の懸濁液として使用するために製剤化され、動物モデルにおいては、強制経口投与によって投与された。タモキシフェン、ラロキシフェン、及びエストラジオール(E2)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から得られ、皮下注射によって投与された。フルベストラントは、Tocris Biosciences(Minneapolis,MN)から得られ、皮下注射によって投与された。その他の実験試薬は、別途記述がない限り、Sigma-Aldrichから購入した。
【0095】
細胞株
MCF-7細胞(ヒト乳房転移性腺癌)は、American Type Culture Collection(Rockville,MD)から購入し、0.01mg/mlのウシインスリン及び10%ウシ胎仔血清(Invitrogen,Carlsbad,CA)を補充した、2mMのL-グルタミン及びEarleのBSS、0.1mMの非必須アミノ酸、及び1mMのピルビン酸ナトリウムを含有するフェノールレッドフリーの最小必須培地(MEM)中で、通常、5%CO2で維持した。
【0096】
T47D細胞を、10%FBS及び5μg/mLのヒトインスリンを補充したRPMI増殖培地中で約75%コンフルエントになるまで10cmの皿中で5%CO2インキュベーターで培養した。
【0097】
インビボでの異種移植片モデル
すべてのマウスを、明暗周期(人工光の12~14時間の概日周期)ならびに制御された室温及び湿度下で、不断で滅菌食及び水へのアクセスする、滅菌した埃のない寝わらの塊(bedding cob)を有する個々に換気したケージの中に無菌ハウジングに収容した。腫瘍は、ノギスで週2回測定し、体積は、式:(L*W2)*0.52を用いて計算した。
【0098】
PDxモデル
患者由来の異種移植片モデル(PDxモデル)のいくつかの例を、
図1に示す。患者由来の乳癌腫瘍を有するPDxモデルは、腫瘍の不均一性を維持するために、動物(無胸腺ヌードマウス(Nu(NCF)-Foxn1nu))において、限定された回数、連続継代している生存ヒト腫瘍組織または液体から構築された。前試験腫瘍体積は、その推定された開始日より約1週間前に開始する各実験で記録した。腫瘍がおよそ腫瘍体積開始(TVI)の範囲(150~250mm
3)に達したとき、動物を治療及び対照群にランダム化し、投与を開始し(0日目、各群において8~10匹)、すべての試験における動物は各実験において個々に従った。投与開始は、0日目に開始、すべての群の動物は、体重別に投与した(1グラム当たり0.01mL、10ml/kg)。各群は、0日目から特定されるように、ビヒクル(対照、経口投与/エンドポイントまで1日1回)、タモキシフェン(1mg/対象、皮下注射/エンドポイントまで1日毎)、フルベストラント(Faslodex(登録商標);必要に応じて、1mg/対象または3mg/対象、皮下注射/週×5、必要に応じて延長)、またはRAD1901(30または60または120mg/対象のkg、経口投与/エンドポイントまで1日1回)で治療した。治療期間は、モデルに応じて、56~60日間続いた。これらのPDxモデルのための飲料水に、17β-エストラジオールを補充した。
【0099】
薬剤の有効性
すべての試験において、0日目に開始し、腫瘍寸法を、各群に対して記録された個々の及び平均の推定された腫瘍体積(平均TV±標準誤差)を含むデジタルキャリパーによって測定し、腫瘍体積を、式(Yasui et al.Invasion Metastasis 17:259-269(1997)、これは参照により本明細書に組み込まれる):TV=幅2×長さ×0.52を用いて計算した。腫瘍体積(TV)エンドポイントに達したらすぐに、各群または試験を終了し(時間エンドポイントは、60日であり、体積エンドポイントは、群平均2cm3であった)、2cm3以上の腫瘍体積に達する個々のマウスは、試験から除外し、最終測定は、平均が体積エンドポイントに達するかまたは試験が時間エンドポイントに達するまで群平均に含まれた。
【0100】
有効性の計算及び統計学的分析
腫瘍成長阻害(%)(TGI(%))値は、単一時点で計算し(対照群が腫瘍体積または時間エンドポイントに達したとき)、式によって初期(i)及び最終(f)腫瘍測定を用いて各治療群(T)対対照(C)について報告した(Corbett TH et al.In vivo methods for screening and preclinical testing.In:Teicher B,ed.,Anticancer Drug Development Guide.Totowa,NJ:Humana.2004:99-123.):TGI(%)=1-Tf-Ti/Cf-Ci。
【0101】
統計学
TGI試験-一元配置分散分析+Dunnett多重比較検定(Corbett THら)。
【0102】
試料採集
エンドポイントで、腫瘍を除去した。ある断片を急速冷凍し、一方、別の断片を、10% NBF中に少なくとも24時間入れ、ホルマリン固定パラフィン包埋した(FFPE)。急速冷凍した試料を、-80℃で保存し、FFPEブロックを、室温で保存した。
【0103】
ウェスタンブロット
細胞を採取し、タンパク質発現を、標準的技法を用いて分析した。腫瘍を、投与の最終日後に指示された時点で採取し、Tissuelyser(Qiagen)を用いてプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を有するRIPA緩衝液中で均質化した。等量のタンパク質を、MWによって分離し、ニトロセルロース膜に移し、標準的技法を用いて以下の抗体でブロットした:
●エストロゲン受容体(Santa Cruz(HC-20);sc-543)
●プロゲステロン受容体(Cell Signaling Technologies;3153)
●ビンキュリン(Sigma-Aldrich,v9131)
【0104】
qPCR分析を、次のように行った:細胞を採取し、mRNAを抽出し、等量が、プロゲステロン受容体、GREB1、及びTFF1(LifeTech)に特異的なプライマーを有するcDNA合成及びqPCRのために使用した。帯は、1D Quantソフトウェア(GE)を用いて定量化した。
【0105】
免疫組織化学
腫瘍を採取し、ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。包埋した腫瘍を切断し(6μM)、ER、PR、及びHer2に特異的な抗体で染色した。定量化を以下の通りに行った:5つの分野を、陽性細胞(0~100%)及び染色強度(0~3+)について計数した。Hスコア(0~300)を、以下の式:陽性(%)*強度、を用いて計算した。
【0106】
実施例I.RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、異なる事前内分泌療法を用いて、WT ERまたは変異体ER(例えばY537S)を発現する腫瘍及び/または癌において増強した腫瘍成長の阻害を提供した。
【0107】
I(A).動物異種移植片モデルにおけるRAD1901の有効性
I(A)(i)RAD1901は、ER状態及び事前内分泌療法にもかかわらず、PDxモデル(PDx-1~PDx-12)において腫瘍成長を阻害した。
【0108】
図1は、RAD1901単独で治療したマウスにおける様々なPDxモデルにおいて腫瘍成長の阻害を実証する。12の患者由来の異種移植片モデルをスクリーニングして、様々なレベルのER、PR、及びHer2を有する様々な遺伝的バッググラウンドにおけるRAD1901反応を試験した。n=8~10を有する、「*」の印が付いたPDxモデル(PDx-1~PDx-4、及びPDx-12)に対して、完全有効性試験を行った。スクリーニング試験は、n=3を有する他のPDxモデル(PDx-5~PDx-11)に対して行われた。PDxモデルを、60mg/kgの投与量のビヒクル(陰性対照)またはRAD1901で、1日1回経口投与で60日間治療した。
図1で示されるように、ER及びさらなるドライバー(例えばPR+及び/またはHer2+)で成長を引き起こしたPDxモデルに対して、RAD1901治療が有効であった。RAD1901は、前治療、ナイーブ(Rx-陰性)、またはアロマターゼ阻害剤、タモキシフェン(tam)、化学療法(chemo)、Her2阻害剤(Her2i、例えばトラスツズマブ、ラパチニブ)、ベバシズマブ、フルベストラント、及び/もしくはリツキシマブのいずれかの治療にもかかわらず、ER変異及び/または高いレベルの発現のHer2(PDx)を有するモデルにおいて腫瘍成長を阻害する際に有効であった。
【0109】
I(A)(ii)RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、WT ERを発現する異種移植片モデルにおいて、RAD1901単独よりもさらに退縮を引き起こした。
【0110】
I(A)(ii)(1)RAD1901-エベロリムスは、フルベストラント治療に反応したMCF-7異種移植片において、RAD1901単独よりもさらに退縮を引き起こした。
【0111】
MCF-7異種移植片モデル
細胞移植の2日前に、Balb/C-ヌードマウスを、17β-エストラジオールペレットで0.18/90日の放出でインキュベートした。MCF-7細胞(PR+、Her2-)を採取し、1×107細胞を、Balb/C-ヌードマウスの右脇腹に皮下移植した。腫瘍は、200mm3の平均を達した場合、マウスを、腫瘍体積別に治療群にランダム化し、試験化合物で治療した。各群は、0日目から特定されるように、ビヒクル(対照、エンドポイントまで1日1回経口投与)、フルベストラント(Faslodex(登録商標);3mg/対象、週1回皮下注射×5、必要に応じて延長)、RAD1901(30mg/kgまたは60mg/対象のkg、エンドポイントまで1日1回経口投与)、エベロリムス(2.5mg/kg、エンドポイントまで経口投与)、またはRAD1901-エベロリムスの組み合わせで治療した。治療期間は、28日間続いた。
【0112】
MCF-7異種移植片マウスは、ビヒクル(陰性対照)、RAD1901(60mg/kg、毎日経口投与)、エベロリムス(2.5mg/kg、経口投与)、RAD1901(30または60mg/kg、毎日経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、経口投与)との組み合わせ、フルベストラント(3mg/用量、毎週皮下注射)、またはフルベストラント(3mg/用量、毎週皮下注射)とエベロリムス(2.5mg/kg、経口投与)との組み合わせで治療した。腫瘍サイズを、様々な時点で27日間測定した。
【0113】
結果を
図2A~2Bに示す。RAD1901(60mg/kg)とエベロリムス(2.5mg/kg)との組み合わせによる治療は、有意な腫瘍退縮を再度もたらし、RAD1901、エベロリムス、またはフルベストラント単独、またはフルベストラントとエベロリムスとの組み合わせでの治療に対して優れた結果を有した(
図2B)。
【0114】
図2Cは、RAD1901-エベロリムスの組み合わせが、30mg/kgまたは60mg/kgの用量でRAD1901による同様の効果を与えたが、30mg/kgのRAD1901単独は、腫瘍成長を阻害する際に、60mg/kgのRAD1901単独ほど有効ではなかったことを示す。当該の結果は、より低用量(例えば30mg/kg)のRAD1901を用いたRAD1901-エベロリムスの組み合わせが、当該異種移植片モデルにおいて腫瘍成長の阻害/腫瘍退縮の効果を最大限にするのに十分であったことを示唆している。
【0115】
RAD1901とエベロリムスとの組み合わせによる治療はまた、RAD1901、エベロリムス、またはフルベストラント単独、またはフルベストラントとエベロリムスとの組み合わせによる治療よりもMCF-7異種移植片モデルにおいて、インビボでER及びPRの発現を減少させる場合にさらに有効であった(
図11);最終投与から2時間後に採取した腫瘍)。
【0116】
I(A)(ii)(2)RAD1901-エベロリムスは、フルベストラント治療に反応したPDx-11及びPDx-2モデルにおいて、RAD1901単独よりもさらに退縮を引き起こした。
【0117】
ER WT PDxモデルPDx-2(PR+、Her2-、治療ナイーブ)ならびにPDx-11(PR+、Her2+、AI、フルベストラント、及び化学療法で治療した)は、フルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)に対して異なる感受性を示した。PDx-2及びPDx-11モデルは、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)とエベロリムス(2.5mg/kg、経口投与)との組み合わせ、RAD1901単独(60mg/kg、1日1回経口投与)、エベロリムス単独(2.5mg/kg、経口投与)、またはフルベストラント単独(3mg/用量、週1回皮下注射)で治療した。
【0118】
PDx-11モデルでは、フルベストラントまたはエベロリムス単独は、腫瘍成長を有意に阻害し、フルベストラントで治療したマウスは、腫瘍成長の阻害においてより良好な効果を示した。フルベストラント治療は、わずかに腫瘍退縮を示した(
図3B)。意外にも、RAD1901単独またはエベロリムスとの組み合わせの投与は、有意な腫瘍退縮をもたらし、この組み合わせは、野生型ESR1 PDxモデルにおいてより有意な腫瘍退縮の効果を達成した(
図3B)。
【0119】
PDx-2モデルでは、RAD1901単独の経口投与は、フルベストラント単独の注射と比較して腫瘍成長を阻害する良好な効果を達成した(
図4A)。さらに、RAD1901またはエベロリムス単独の投与は、腫瘍成長を有意に阻害した。意外にも、エベロリムスと組み合わせたRAD1901の投与は、腫瘍成長を阻害する際にさらに増強した効果をもたらした(
図4B)。
【0120】
さらに、フルベストラント治療(1mg/用量、週1回皮下注射)に対して反応したPDx-4モデルにおいて、RAD1901の媒介による腫瘍成長の阻害は、RAD1901治療(30mg/kg、1日1回経口投与)期間が終了したが、エストラジオール治療は継続してから少なくとも2カ月間治療の不在下で維持された(
図5)。
【0121】
それ故に、1種以上の第2の治療剤(複数可)とRAD1901との組み合わせは、特に、1種以上の第2の治療剤(複数可)(例えばエベロリムス)が、有害反応が低減もしくは遅延され得る場合、治療終了後に腫瘍成長を阻害することによって患者の利益になる可能性が高い。http://www.fda.gov/Drugs/InformationOnDrugs/ApprovedDrugs/ucm488028.htm。
【0122】
I(A)(iii)RAD1901-エベロリムスは、変異体ER(ERα Y537S)を発現する異種移植片モデルにおいてRAD1901単独よりもさらに退縮を引き起こした。
【0123】
I(A)(iii)(1)RAD1901-エベロリムスは、フルベストラントに対してほとんど反応しなかったPDx-5モデルにおいて、RAD1901単独よりも退縮を引き起こした。
【0124】
PDx-5モデルは、PDxモデルについて上述されるように、以下の同様のプロトコルを調製した。各投与群の腫瘍サイズは、ノギスで週2回測定し、体積は、式(L*W2)*0.52を用いて計算した。
【0125】
PDx-5モデル(Y537Sエストロゲン受容体変異を有する患者由来の乳癌腫瘍を有するPDxモデル、PR+、Her2+、アロマターゼ阻害剤による前治療)において、エベロリムス(2.5mg/kg、経口投与)と組み合わせたPDxモデルにおいて、RAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)、エベロリムス(2.5mg/kg、経口投与)、及びRAD1901(60mg/kg、1日1回経口投与)による腫瘍成長の阻害は、本明細書に記載される方法を用いて評価された。ある特定のERα変異(例えばY537S)を発現する腫瘍については、RAD1901及びエベロリムスの組み合わせ治療が、いずれかの薬剤単独での治療よりも腫瘍成長を阻害する際により有効であった(
図6B)。これらのPDxモデルは、フルベストラント(3mg/用量)による治療ほど感受性ではなかった。RAD1901及びエベロリムスの組み合わせ治療が、PDx-5モデルにおいて、いずれかの薬剤単独での治療よりも腫瘍成長を阻害する際により有効であった(
図6B)。
【0126】
それ故に、これらの結果は、RAD1901が、標的薬剤の腫瘍成長の阻害を促進した有効な内分泌骨格であったことを示した。さらに、RAD1901は、フルベストラントに対して反応がないものを含む、複数の前内分泌療法を受けた患者から由来するPDxモデルにおいて強力な抗腫瘍活性を示した。
【0127】
I(A)(iv)非腫瘍担持マウスに対するフルベストラント治療の薬物動態評価。
【0128】
様々な用量のフルベストラントをマウスに投与し、これらは、対象への有意な用量曝露を示した(
図7)。
【0129】
フルベストラントを、1、3、または5mg/用量で、ヌードマウスに、1日目(D1 Rx)及び8日目(D8 Rx、n=4/用量レベル)に皮下投与した。血液を、2回目の投与から168時間まで指示された時点で採血し、遠心分離し、血漿を液体クロマトグラフィー質量分析法で分析した。
【0130】
I(B)RAD1901は、脳転移のマウス異種移植片モデル(MCF-7頭蓋内モデル)において生存を助長した。
【0131】
血液脳関門を横断し、腫瘍成長を阻害するRAD1901の潜在能力は、MCF-7頭蓋内腫瘍異種移植片モデルを用いてさらに評価された。
【0132】
雌無胸腺ヌードマウス(Crl:NU(NCr)-Foxn1nu)を、腫瘍異種移植片試験のために使用した。腫瘍細胞移植の3日前に、エストロゲンペレット(0.36mgのE2、60日の放出;Innovative Research of America,Sarasota,FL)を、滅菌套管針を用いてすべての試験動物の肩甲骨間に皮下移植した。MCF-7ヒト乳腺癌細胞は、10%ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリンG、100μg/mLの硫酸ストレプトマイシン、2mMグルタミン、10mM HEPES、0.075%重炭酸ナトリウム、及び25g/mLのゲンタマイシンを含有するRPMI-1640培地内で中間ログ相まで培養した。腫瘍細胞移植日に、細胞をトリプシン化し、ペレット化し、5×107細胞/mLの濃度で、リン酸緩衝生理食塩水中で再懸濁した。各試験マウスに、1×106 MCF-7細胞を頭蓋内に移植した。
【0133】
腫瘍細胞移植から5日後に(試験の1日目と表される)、マウスを、12匹ずつの動物の3つの群にランダム化し、上述のように、ビヒクル、フルベストラント(0.5mg/動物 毎日)、またはRAD1901(120mg/kg 毎日)で治療した。
【0134】
エンドポイントは、死亡率または対照群の3倍の生存率のいずれか早い方として定義された。体重測定、及び処置に関連した副作用の臨床症候に関する頻繁な観察により、処置耐性を評価した。1回の測定において30%を超える、または3回の測定において25%を超える体重減少を有する動物は、人道的に殺処分し、処置関連死として分類された。許容され得る毒性は、試験期間中で20%未満の群平均体重損失、及び10匹の処置動物の中で多くても1匹の処置関連死、または10%として定義された。試験の終了時に、動物は、イソフルラン麻酔下で末期的心穿刺によって殺処分した。血漿及び腫瘍中のRAD1901及びフルベストラント濃度は、LC-MS/MSを用いて決定した。
【0135】
カプランマイヤー生存分析は、RAD1901がフルベストラントと比較して有意に生存を延ばしたことを示した(P<0.0001;
図8)。対照またはフルベストラント群の動物は、それぞれ、20日目及び34日目を超えて生存したものはいなかったが、RAD1901で処置した動物のうちの41%(5/12)が、54日目の試験終了まで生存した。
【0136】
血漿中のRAD1901の濃度は、738±471ng/mLであり、頭蓋内腫瘍では、462±105ng/gであり、このことは、RAD1901が血液脳関門を有効に横断することができるという仮説を支持した。対照的に、フルベストラントの濃度は、血漿中(21±10ng/mL)及び頭蓋内腫瘍中(8.3±0.8ng/g)で実質的には低かった。
【0137】
I(C).ER+進行性乳癌のためのRAD1901治療の第1相試験。
【0138】
第1相試験では、安全性、耐性、及び薬物動態が、44人の健常な閉経後の女性において評価された。用量を制限する毒性は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。血漿曝露は、試験した用量範囲にわたって用量比例的よりも増加した。
【0139】
対象
進行性乳腺腺癌(IHCによって1%以上の染色を有するER+腫瘍、0または1のECOG一般状態を有するHER2陰性腫瘍)を有する8人の閉経後の女性を、この第1相試験の対象として登録した。対象は、以下の前治療を受けていなければならない:
●進行性/転移性の設定において2以下の前化学療法レジメン
●6か月の事前内分泌療法及び事前内分泌療法において進行した
●未治療もしくは症候性CNS転移、または以下のウィンドウ内の事前抗癌治療を有する患者は、除外された:
●タモキシフェン<1回目の用量試験処置から14日前
●フルベストラント<1回目の用量試験処置から90日前
●化学療法<1回目の用量試験処置から28日前
●LHRH類似体<1回目の用量試験処置から12か月前
DLT基準
●3以上のいかなるグレードの非血液学的毒性(最適な薬剤で治療されていない脱毛症及び吐き気、嘔吐、または下痢を含まない)
●3以上のいかなるグレードの血液学的毒性
●7日を超える試験薬物中断をもたらすいかなるグレードの毒性
●用量を制限する毒性の観察期間は、周期1のうち1~28日である
【0140】
治療中に発生した有害事象(TEAE)
TEAEは、試験を通して記録された。予備データを表12に要約する。「n」は、所与のカテゴリー中の少なくとも1つの治療に関連したAEを有する対象の数であり、AEは有害事象共通用語規準(CTCAE)v4.0のように等級分けされ、同じ優先使用語の複数のシナリオを有する任意の患者は、最も重度のグレードまで1回のみ計数した。死亡または用量を制限する毒性は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。最もAEは、グレード1または2であった。最も一般的な治療に関連したAEは、消化不良(5/8人の患者)及び吐き気(3/8人の患者)であった。2つの重篤なAE(SAE)が観察され、1つはグレード3の治療に関連した便秘で、その他は、息切れ(胸水)であったが、治療には関連しなかった。
【0141】
この第1相試験の大量にこれまでに治療を受けた対象は、複数の内分泌及び標的薬剤、例えば、CDK4/6、PI3K、及びmTOR阻害剤でこれまでに治療を受けた対象を含んだ。用量を制限する毒性は、200mgの毎日経口投与で最高6か月間及び400mgの毎日経口投与で最高2か月間、RAD1901で治療した後に観察されなかった。それ故に、RAD1901は、特に、CDK4/6、PI3K、及びmTOR阻害剤等の内分泌及び/または標的薬剤でこれまでに治療を受けた対象において、ER+進行性乳癌を治療する可能性を示した。
【0142】
実施例II.RAD1901は、好ましくは腫瘍中で蓄積し、脳に送達され得る。
【0143】
実施例I(A)(i)に記載されるように、MCF-7異種移植片を、LC-MS/MSを用いて、血漿及び腫瘍中のRAD1901濃度についてさらに評価した。試験の終了時に、血漿中のRAD1901の濃度は、344±117ng/mLであり、腫瘍中では、60mg/kgの用量レベルに対して11,118±3,801ng/mLであった。腫瘍濃度が血漿中よりも約20~30倍高かった場合に、同様の腫瘍対血漿の比率も、より低い用量レベルで観察された。40日間処置されたマウスの血漿、腫瘍、及び脳中のRAD1901レベルを、表1に要約する。有意な量のRAD1901が、処置マウスの脳に送達され(例えば、B/P比(脳中のRAD1901濃度/血漿中のRAD1901濃度)を参照のこと)、このことは、RAD1901が血液脳関門(BBB)を横断することができたことを示した。意外にも、RAD1901は、好ましくは腫瘍中で蓄積した。例えば、表1に示されるT/P(腫瘍中のRAD1901濃度/血漿中のRAD1901濃度)比を参照されたい。
【0144】
実施例III.RAD1901は、ER経路を阻害し、ERを分解した。
【0145】
III(A).RAD1901は、健常な閉経後の女性ヒト対象の子宮及び下垂体においてER関与を軽減した。
【0146】
対象は、少なくとも12か月間無月経であり、血清FSHが閉経と一致した。対象は、18.0~30kg/m2のBMIを有する、40~75歳であった。対象は、無傷子宮であった。臨床的に関連する病理の証拠を有し、卒中もしくは過去に静脈血栓塞栓事象のリスク増加がある、または臨床研究センターに登録する14日以内に併用薬(パラセタモールは、3日前まで許容された)の使用を有する患者は、除外された。
【0147】
FES-PETは、子宮内のER関与を評価するために、ベースライン及びRAD1901への曝露から6日後に行われた。RAD1901は、それぞれ、200mg(7人の対象)及び500mg(6人の対象)の用量レベルで、子宮内でERが83%及び92%を占めた。
【0148】
FES-PET画像は、200mgまたは500mgのRAD1901による治療(1日1回、経口投与、6日)後に、子宮及び下垂体の両方への標識エストラジオールの結合の有意な減少を示した。
【0149】
高いER発現により、子宮は、RAD1901治療前にベースラインで強力なFES-PETシグナル(
図9A)、200mgの用量レベルで治療した対象3の子宮FES-PETスキャンにおけるベースラインの横断図;
図9B、500mgの用量レベルで治療した対象7のベースラインの子宮FES-PETスキャンにおける、それぞれ、矢状図及び横断図)を示した。しかしながら、試験中の6日目に投与してから4時間後にスキャンした場合、子宮は、ほとんど見えなかった(バックグラウンドFES-PETシグナルでまたはそれの近くに(
図9A、対象3の子宮スキャンにおける6日目の横断図;及び
図9B、対象7の子宮スキャンにおける、それぞれ、6日目の矢状図及び横断図)。かかるデータは、ERの分解及び/または受容体への結合に対する競合と一致した。
図9A及び9Bはまた、RAD1901治療前及び後の子宮の存在を示す、FES-PETによってスキャンされた子宮のCTスキャンも含む。
【0150】
FES-PETの子宮スキャンの結果は、200mgの用量群及び500mgの用量群の例として、それぞれ、対象1~3及び対象4~7を示す、7人の対象についてベースラインから投与後のER結合の変化を示すためにさらに定量化した(
図9C)。RAD1901は、低用量(200mg)で強固なER関与を示した。
【0151】
図10A~Bは、500mgのRAD1901で、1日1回経口投与で治療する前(ベースライン)及び治療して6日後(治療後)の子宮(A)及び下垂体(B)のFES-PETスキャンの代表的な画像を示した。
図10Aは、(a)側面横断図、(b)縦横断図、及び(c)縦横断図によって子宮のFES-PETスキャンを示した。
【0152】
子宮及び下垂体の対象の投与後のFES-PETスキャンは、それぞれ、子宮(
図10A、治療後)及び下垂体(
図10B、治療後)でER結合の顕著なシグナルを示さなかった。
【0153】
それ故に、結果は、RAD1901が、200及び500mgの投与量で、1日1回経口投与で6日後のヒトにおいてERが有効に分解/不活性化したことを示した。
【0154】
子宮、筋肉、及び骨に対する標準取り込み値(SUV)を計算し、200mg及び500mgで毎日経口投与したRAD1901での治療について、それぞれ、表2及び3に要約した。投与後の子宮シグナルは、「非標的組織」からのレベルに非常に近く、RAD1901治療後のFES-PETの取り込みの完全な減衰を示唆している。エストロゲン受容体を有意に発現しなかった組織中の治療前対治療後PETスキャンについては、ほとんど変化が観察されなかった。
【0155】
それ故に、RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)は、他の臓器(例えば、骨、筋肉)への悪影響を有さない、ERの過剰発現を有する癌及び/または腫瘍細胞(例えば、乳癌、子宮癌、及び卵巣癌)を治療する際に使用することができる。RAD1901またはその塩もしくは溶媒和物(例えば水和物)は、他の臓器(例えば、骨、筋肉)への乳癌、子宮癌、及び/または卵巣癌病巣を治療するために、当該臓器への悪影響を有さない、他の臓器においてER過剰発現を有する転移性癌及び/または腫瘍、例えば、他の臓器(例えば、骨、筋肉)に移動する元の乳癌、子宮癌、及び/または卵巣癌を治療する際に特に有用であり得る。
【0156】
III(B).RAD1901は、ER発現を減少させ、ER経路を阻害した。
【0157】
III(B)(i)(1)RAD1901-エベロリムスの組み合わせは、MCF7異種移植片モデルにおいてER及びPR発現を減少させ、RAD1901、エベロリムス、またはフルベストラント単独、またはフルベストラント-エベロリムスの組み合わせによる治療においてより有効であった。
【0158】
RAD1901とエベロリムスとの組み合わせによる治療はまた、RAD1901、パルボシクリブ、またはフルベストラント単独、またはフルベストラントとエベロリムスとの組み合わせによる治療よりもMCF7異種移植片モデル(実施例I(A)(ii)で記載されるように)においてインビボでER及びPR発現を減少させる際により有効であった(
図11)、腫瘍は最終投与から2時間後に採取した)。
【0159】
III(B)(i)(2)MCF-7及びT47D細胞株におけるRAD1901及びフルベストラントの比較
【0160】
RAD1901及びフルベストラントの効果を、MCF7及びT47D細胞株(両方とも、ヒト乳癌細胞株である)を用いて、0.01μM、0.1μM、及び1μMの様々な濃度で比較した(MCF7細胞株アッセイについては
図12A、及びT47D細胞株については
図12B)。3つのER標的遺伝子、プロゲステロン受容体(PgR)、乳癌1におけるエストロゲンによる成長調節(GREB1)、及びトレフォイル因子1(TFF1)を、マーカーとして使用した。RAD1901は、ほぼ完全にERの分解を引き起こし、ERのシグナル伝達を阻害した(
図12A~B)。特に、MCF-7細胞株については、フルベストラントは、同じ濃度で投与した場合に、ERのシグナル伝達を阻害する際に同等またはさらに若干高い有効性を示した。意外にも、実施例I(A)及び実施例I(B)において、上に開示されるように、RAD1901は、腫瘍成長を阻害し、腫瘍退縮を引き起こす際に、フルベストラントと同等またはフルベストラントよりも有効であった。
【0161】
III(B)(i)(3)RAD1901治療は、実施例I(A)(ii)(1)において上述されるように、MCF7異種移植片モデルにおいて、ERの分解及びERのシグナル伝達の廃止をもたらした。
【0162】
RAD1901治療は、インビボでERの分解をもたらし(
図13A及び13B、スチューデントのt検定:*p値<0.05、**p値<0.01)、インビボでERのシグナル伝達を阻害した(
図13A及び13C、スチューデントのt検定:*p値<0.05、**p値<0.01)。
【0163】
RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、1日1回経口投与)またはフルベストラント(3mg/用量、週1回皮下注射)の最終投与から2時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、ER及びPRの発現を有意に減少したことを示した(
図13A~B)。フルベストラント治療の最終投与から8時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、PR及びERの発現を増加したことを示した。しかしながら、RAD1901治療の最終投与から8時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、PR及びERの発現を減少したことを示した(
図13A及び13C)。
【0164】
RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、または90mg/kg、1日1回経口投与)の単回投与から8時間または12時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、PRの発現を急速に減少したことを示した(
図14A~C)。RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、または90mg/kg、1日1回経口投与)の7回目の投与から4時間または24時間後にMCF-7異種移植片から採取した腫瘍は、ERのシグナル伝達の一貫した安定した阻害を示した(
図14B)。RAD1901(30mg/kg、60mg/kg、または90mg/kg、1日1回経口投与)の治療中の様々な時点でMCF-7異種移植片から採取した腫瘍のウェスタンブロット分析の定量化は、PRの用量依存的な減少を示した(
図14C)。
【0165】
RAD1901治療は、MCF-7異種移植片モデルにおいて増殖の急速な減少を起こした。例えば、RAD1901(90mg/kg、1日1回経口投与)の単回投与から8時間後及びRAD1901(90mg/kg、1日1回経口投与)の4回目の投与から24時間後に、MCF-7異種移植片モデルから採取した腫瘍を切断し、染色して、増殖マーカーKi67の急速な減少を示した(
図15A及び15B)。
【0166】
これらの結果は、RAD1901治療が、ER WT異種移植片において、インビボでERの分解及びERのシグナル伝達の阻害をもたらすことを示唆している。
【0167】
III(B)(i)(4)RAD1901治療は、実施例I(A)(ii)において上述されるように、PDx-4モデルにおいて、ERの分解及びERのシグナル伝達の廃止をもたらした。
【0168】
RAD1901治療は、PDx-4モデルにおいて増殖の急速な減少を起こした。例えば、56日の有効性試験の最終日に最終投与から4時間後に、RAD1901(30、60、または120mg/kg、1日1回経口投与)またはフルベストラント(1mg/動物、週1回)で治療したPDx-4モデルから採取した腫瘍を切断し、これは、フルベストラントで治療したPDx-4モデルと比較して、増殖マーカーKi67の急速な減少を示した(
図16)。
【0169】
これらの結果は、RAD1901治療が、ER WT異種移植片において、インビボでERの分解及びERのシグナル伝達の阻害をもたらすことを示唆している。
【0170】
III(B)(ii)RAD1901治療は、実施例I(A)(iii)(1)において上述されるように、変異体ER PDx-5モデルにおいて、ERのシグナル伝達の低下をもたらした。
【0171】
腫瘍を、投与の最終日後に指示された時点で採取し(別途特定されない限り)、Tissuelyser(Qiagen)を用いてプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を有するRIPA緩衝液中で均質化した。等量のタンパク質を、MWによって分離し、ニトロセルロース膜に移し、材料及び方法の項:プロゲステロン受容体(PR、Cell Signaling Technologies;3153)に記載されるように、以下の抗体でブロットした。
【0172】
バンドを、1D Quantソフトウェア(GE)を用いて定量化し、実施例I(A)(iii)(1)に記載されるように、PDx-5モデルから得られたPR IHC Allredスコアを、
図17に示す。フルベストラントは、PRの発現に対してほとんど影響を与えなかったが、RAD1901は、60mg/kg及び120mg/kgの両方の投与量で有効性を示した(1日1回経口投与、
図17)。
【0173】
これらの結果は、ある特定のERα変異(例えばY537S)を発現する腫瘍については、RAD1901が、腫瘍成長を阻害するときに、フルベストラントよりもさらに有効であり、フルベストラント治療に対してほとんど反応しなかった腫瘍の成長を阻害する際に特に有効であったことを示す(例えば3mg/用量の投与量で、週1回皮下注射、
図6A PDx-5)。さらに、フルベストラント治療に対してあまり反応しなかった腫瘍(例えばPDx-5)については、RAD1901は、インビボでPRの発現を減少する際に有効であったが、フルベストラントは有効でなかった(
図17)。
【0174】
実施例IV 子宮組織及び/またはBMDに対するRAD1901治療の影響
IV(A(1)):RAD1901は、子宮組織のエストラジオール刺激を拮抗した。
【0175】
RAD1901の子宮向性効果を、未成熟ラットにおいて、子宮重量、組織、及びC3遺伝子発現の変化を評価することによって調査した。代表的な試験からの結果を
図18A~Dに示す。
【0176】
子宮向性活性の評価
Sprague-Dawley仔ラットを、19日齢で乳離れさせ、群(n=4)にランダム化し、ビヒクル(水性メチルセルロース)、E2(0.01mg/kg)、ラロキシフェン(3mg/kg)、タモキシフェン(1mg/kg)、RAD1901単独(0.3~100mg/kg)、またはE2(0.01mg/kg)と組み合わせたRAD1901(0.01~10mg/kg)を、必要に応じて、皮下注射または経口投与のいずれかで(上の試薬を参照されたい)1日1回3日間連続で投与した。最終投与から24時間後、すべての動物を、二酸化炭素の吸入によって殺処分した。体重及び湿子宮重量を、各動物について記録した。同様のアッセイも、ラット及びマウス(Charles River Laboratories,Montreal,QC)において、RAD1901(0.03~100mg/kg)で行った。
【0177】
各ラットからの新鮮な子宮組織を、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、エタノールで脱水し、JB4プラスチック製樹脂に包埋した。切片を8μmで切断し、0.1%トルイジンブルーOで染色した。子宮内膜上皮組織の厚さは、Zeiss Axioskop 40顕微鏡及びSpot Advancedプログラムを用いて測定し、標本当たり9つの測定の平均を計算した。
【0178】
子宮成分の成分3(C3)遺伝子発現
処置した子宮組織中のC3の相対的発現レベルを決定するために、RNAを、製造業者の取扱説明書に従って、Micro to Midi Total RNA精製キット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて残りの組織から抽出した。RNAを定量化し、High Capacity cDNAアーカイブキット(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、等量を逆転写した。
【0179】
ABI Prism 7300 System(Applied Biosystems)を用いて、定量的PCRを行った。C3に対して及び参照遺伝子として18SリボソームRNAに対してプローブセットを有するTaqman Universal Master Mixを用いて、PCRを行った。熱サイクル条件は、95℃で10分間の初期変性ステップ、続いて、95℃で15秒、及び60℃で1分間の40サイクルを含んだ。
【0180】
相対遺伝子発現を、内因性対照(18S)に各試料を正規化し、較正器(ビヒクル)で比較することによって決定した。相対遺伝子発現を、等式:2-ΔΔCt(式中、Ct=サイクル閾値またはPCR生成物が最初に検出されたサイクル数、ΔCt=正規化した試料値、及びΔΔCt=投与された対象とビヒクルとの間の正規化差)を用いて決定した。5つの複製遺伝子発現の決定を、各試験内の各投与について行った。
【0181】
E2(0.01mg/kg)、ラロキシフェン(RAL、3mg/kg)、またはタモキシフェン(TAM、1mg/kg)による治療は、ビヒクル単独と比較して、子宮湿重量の有意な増加をもたらし、一方、0.3~100mg/kgの範囲の用量でのRAD1901治療は、子宮湿重量に有意な影響を及ぼさなかった(
図18A)。示されたデータ(
図18A)は、平均(±平均誤差)、群当たりn=4のラット、P対ビヒクル:*<0.05;対E2:‡<0.05である。さらに、E2(0.01mg/kg)と併用投与された場合に、RAD1901は、用量依存的様式においてE2の媒介による子宮の刺激を拮抗し、0.1mg/kg以上の用量で子宮向性活性の有意な阻害及び3mg/kgで完全な阻害を示した。RAD1901のEC
50は、約0.3mg/kgであった。0.03~100mg/kgのRAD1901投与もまた、子宮湿重量または上皮の厚さに影響を及ぼさなかったマウスにおいて、同様の結果を得た(データ示さず)。
【0182】
子宮組織における治療依存的変化を、定量的顕微鏡組織学によってさらに調査した。0.01及び0.3mg/kgの両方でE2による治療後の、子宮内膜上皮の厚さの統計的に有意な増加があった(
図18B)。上皮の厚さの有意な増加はまた、タモキシフェン(1mg/kg)またはラロキシフェン(3mg/kg)による治療後にも観察された。対照的に、RAD1901治療は、最も高く評価された用量の100mg/kgまで子宮内膜上皮の厚さを増加しなかった。子宮内膜上皮の代表的な画像を、
図18Cに示す。
【0183】
子宮重量及び子宮内膜上皮の厚さの両方の変化と一致して、E2、タモキシフェン、及びラロキシフェンはすべて、エストロゲンを調節した成分遺伝子C3の発現を有意に増加した(
図18D)。対照的に、RAD1901は、試験した用量のいずれか(0.3~100mg/kg)でC3遺伝子発現を増加しなかった。さらに、1、3、及び10mg/kgのRAD1901は、E2で刺激されたC3遺伝子発現を有意に抑制した。
【0184】
RAD1901は、未成熟雌ラットの子宮を刺激しなかった。
未成熟雌ラットに、ビヒクル(VEH)、エストラジオール(E2)、ラロキシフェン(RAL)、タモキシフェン(TAM)、RAD1901、またはRAD1901+E2で3日間連続して1日1回投与(経口)した。子宮湿重量を測定した。示されたデータ(
図18)は、平均(±平均誤差)、群当たりn=4のラット、P対ビヒクル:*<0.05;対E2:‡<0.05である。
【0185】
実施例II(A)(2).RAD1901による治療は、卵巣摘出ラットにおいて骨量の減少を防いだ。
RAD1901の骨特異的効果を、卵巣摘出ラットにおいて試験した。
【0186】
閉経後骨量減少のモデルとして、麻酔をかけた雌Sprague-Dawleyラットにおいて、卵巣摘出術を行い、対照として偽手術を行った。手術後、群当たり20匹の動物を有する、卵巣摘出ラットを、ビヒクル、E2(0.01mg/kg)、またはRAD1901(0.1、0.3、1、3mg/kg)で4週間1日1回処置し、上述のように投与した。偽手術群の動物は、ビヒクルで処置した。すべての動物を、最終投与から24時間後に、二酸化炭素の吸入によって殺処分した。PIXImus二重発光X線吸光光度法を用いて、骨ミネラル濃度を、ベースラインさらに処置から4週間後に評価した。
【0187】
剖検時に、各動物の左大腿骨を除去し、軟組織がないように切開し、分析前に70%エタノール中に保存した。マイクロ-CT40システム(Scanco Systems,Wayne,PA)を用いて、詳細な定性的及び定量的3D評価を行った。各標本については、大腿遠位骨幹端の250の画像枚数を必要とした。予め選択された分析領域において直接3Dアプローチを用いて、形態学的パラメータを決定した。骨梁において決定されたパラメータは、骨体積密度、骨表面密度、骨梁数、骨梁幅、骨梁中心距離、連結密度、及び見掛け骨密度を含んだ。
【0188】
卵巣摘出術後、未処置(ビヒクル対照)ラットは、ベースラインと比較して、完全大腿骨全体及び腰椎の両方の骨ミネラル濃度を減少した(表4)。E2による治療は、大腿骨及び脊椎の両方の骨量減少の防止と関連した。RAD1901による治療は、卵巣摘出術で誘発した骨量減少の用量依存的で統計的に有意な抑制をもたらした(3mg/kgの処置群について示されたデータ)。0.1mg/kg~3mg/kgの用量で、RAD1901で処置したラットにおける骨ミネラル濃度は、完全であり、E2で処置した群と統計的に有意差はなかった。
【0189】
大腿遠位のマイクロCT分析(表5)は、卵巣摘出術が、偽手術動物と比較した場合に、多数の主なマイクロアーキテクチャパラメータの有意な変化を誘発したことを示した。これらの変化は、骨量の減少と一致し、骨体積の減少、骨梁数、厚さ、及び密度の減少、ならびに骨梁間隔の増加を含む。RAD1901による処置後に観察された骨ミネラル濃度の保存と一致して、骨梁アーキテクチャの有意な保存は、主なマイクロ構造パラメータにおいて観察された(表5)。
【0190】
実施例IV(B):健常な閉経後の女性におけるRAD101の第1相用量漸増試験
【0191】
第1相試験では、安全性、耐性、及び薬物動態が、44人の健常な閉経後の女性において評価された。用量を制限する毒性(DLT)は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。血漿曝露は、試験した用量範囲にわたって用量比例的よりも増加した。
【0192】
対象
44人の健常な閉経後の女性を、この第1相試験の対象として登録した。対象は、少なくとも12か月間無月経であり、血清FSHが閉経と一致した。対象は、18.0~30kg/m2のBMIを有する、40~75歳であった。臨床的に関連する病理の証拠を有し、卒中もしくは過去に静脈血栓塞栓事象のリスク増加がある、または臨床研究センターに登録する14日以内に併用薬(パラセタモールは、3日前まで許容された)の使用を有する患者は、除外された。
【0193】
投与
対象を、それぞれ、200mg、500mg、750mg、及び1000mgの用量レベルで、軽い朝食後に、プラセボまたは少なくとも1つの経口量で毎日7日間治療した。第1相試験に登録した44人の閉経後の女性の主なベースライン人口統計を、表6に要約する。
【0194】
治療中に発生した有害事象(TEAE)
TEAEを記録し、最も頻繁に起こる(任意の関連したTEAEを有した全活性群の患者の10%超)有害事象(AE)を表7に要約し、「n」は、所与のカテゴリー中の少なくとも1つの治療に関連したAEを有する対象の数であり、AEは有害事象共通用語規準(CTCAE)v4.0のように等級分けされ、同じ優先使用語の複数のシナリオを有する任意の患者は、最も重度のグレードまで1回のみ計数した。用量を制限する毒性は観察されず、最大耐容量(MTD)は構築されなかった。
【0195】
薬物動態評価
血漿中のRAD1901の分析のための試験期間中に、一連の血液試料を採血した。留置IVカテーテルを介して、または抗凝血剤としてK
3-EDTAを含有するチューブへの直接静脈穿刺によって、5mLの血液試料をそれぞれ、採血した。定常状態は、治療から5日目で達成した。RAD1901の幾何平均(Geo-Mean)血漿濃度-時間プロファイルを評価した。試験において、7日目のRAD1901(200、500、750、または1,000mg)により治療した群(N=35)の血漿薬物動態の結果を、例として、表8及び
図19に提供する。中央値t
1/2は、37.5~42.3時間であった(表8)。RAD1901の複数回投与後、中央値t
maxは、投与後の3~4時間であった。
【0196】
実施例V(A)-1.選択公開されたER構造を用いたRAD1901-ERα結合のモデリング。
別途記述がない限り、構造をそれらのスティックモデルで示す場合、結合の各末端を、それに結合する原子と同じ色で色付けし、灰色は炭素であり、赤色は酸素であり、青色は窒素であり、白色は水素である。
【0197】
様々なERリガンド複合体形成されたERαリガンド結合ドメイン(LBD)の14の公開された構造(すなわち、モデル)を、慎重な評価によって96の公開されたモデルから選択した。これらの14のモデルのうちの1つは、3ERT(4-ヒドロキシタモキシフェンに結合したヒトERα LBD(OHT))であった。OHTは、タモキシフェンの活性代謝産物で、乳房組織中のアンタゴニストとしての役割を果たす第一世代のSERMである。
【0198】
3ERT(
図20及び21)では、ERα結合部位は、らせん3(H3)、らせん5(H5)、及びらせん11(H11)を含む疎水性ポエットを形成する3つの層「らせんサンドイッチ」を導入する(
図20)。
図21中の点線の箱は、結合部位、及び重要であるまたはOHT結合によって達成される結合部位内の残基を表す。OHTは、LXXLLコアクチベータ(複数可)を結合する部位にH12を置換することによって、アンタゴニストとして役割を果たす。OHTは、L540によって正常に充填したスペースを占有し、らせん11のC末端上に4つの残基(G521、H524、L525、及びM528)の立体構造を修飾する。OHTはまた、D351との塩橋を形成し、電荷中和をもたらす。
【0199】
その他の13のERα LBD-ERリガンドモデルを、3ERTと比較した。それらの残基構造の違いを、表10に要約する。14のモデルのERα構造の重ね合わせ(
図22)は、これらの構造が、残基E380、M421、G521、M522、H524、Y526、S527、M528、P535、Y537、L540、及びこれらの様々な組み合わせで有意に異なったことを示す。
【0200】
14のモデルの任意の対の標準偏差(RMSD)の計算を、表11に要約する。構造は、RMSDが2Å未満であった場合に、重なり合うと見なされた。表11は、すべての14のモデルが、1.5Å未満のRMSDを有したことを示す。フォーマット分析の使用は、1R5K及び3UUCが、他のモデルにあまり同様でなかったことを示唆した(分析は示さず)。したがって、1R5K及び3UUCは、試験された固有の別々の構造クラスターであると見なされた。
【0201】
14のモデルにおけるリガンドによって結合されたERα残基を、表12に要約する。表12はまた、ERα LBD-アンタゴニスト複合体におけるEC50を示す。14のモデルのうち、13のモデルは、リガンドとE353との間のH結合相互作用を示し、12のモデルは、リガンドとF404との間のπ相互作用を示し、5つのモデルは、リガンドとD351との間のH結合相互作用を示し、6つのモデルは、リガンドとH524との間のH結合相互作用を示し、4つのモデルは、リガンドとR394との間のH結合相互作用を示し、1つのモデル(3UUC)は、リガンドとT347との間の相互作用を示した。
【0202】
14のモデルの各々は、リガンドに加えて1,000の化合物のランダムライブラリーをドックするために使用し、このモデルは、周知のアンタゴニストを特定し、優先順位を付け得るかどうかを決定するために、(周知のアンタゴニスト)と共に公開された。このモデルが周知のアンタゴニストを特定し得る場合、このモデルは、それ自体が公開されたリガンドの構造を予測することができることが決定された。次いで、EF
50を計算して、ランダム選択よりもいかに良好であるかを知るためにモデルの強度を定量化した。RAD1901を、選択したモデルにドッキングした(例えば
図23A及びB~27A及びB)。モデルにおける公開されたリガンド及びRAD1901のドッキングスコアを決定した。また、EC
50も決定した。RAD1901の目視検査は、それが、1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、2OUZにおいて公開されたリガンドと共に示される相互作用に「従う」ことを示した。空間不調和は認められなかった。ある特定の実施形態では、例えば、1R5k及び2BJ4において、RAD1901は、公開されたリガンドよりも高いドッキングスコアを有した。
【0203】
9つのモデル(1ERR、3ERT、3UCC、2IOK、1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZ)の評価結果を、表13に要約する。
【0204】
1ERR及び3ERTは、それらの結晶リガンドの正確な構造を予測することができなかった。RAD1901は、3UCCにドッキングされなかった。2IOK-RAD1901においてテトラヒドロナフタアレンは非伝統的な様式で結合した。
【0205】
モデル1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZの間の大きな違いは、らせん11のC末端の残基(G521-M528)であった。
【0206】
図23A及びBは、RAD1901-1R5K(A)及びGW5-1R5K(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353、R394、及びL536とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0207】
図24A及びBは、RAD1901-1SJ0(A)及びE4D-1SJ0(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353及びD351とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0208】
図25A及びBは、RAD1901-2JFA(A)及びRAL-2JFA(B)のモデリングを示す。RAD1901は、F404とのp相互作用で結合した。
【0209】
図26A及びBは、RAD1901-2BJ4(A)及びOHT-2BJ4(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353及びR394とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0210】
図27A及びBは、RAD1901-2IOK(A)及びIOK-2IOK(B)のモデリングを示す。RAD1901は、E353、R394、及びD351とのH結合相互作用ならびにF404とのp相互作用で結合した。
【0211】
モデルにおいて公開したリガンドは、以下の構造を有する:
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0212】
実施例V(A)-2.RAD1901及びフルベストラントによるERαの誘導適合ドッキング(IFD)
ERαにおいて、RAD1901の結合立体構造は、5つのERα結晶構造1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZのIFD分析によってさらに最適化された。IFD分析は、その正確な結合立体構造に適合するために(リガンド結合時の)受容体柔軟性を明らかにした。
【0213】
各リガンド(例えばRAD1901及びフルベストラント)に対して異なる立体構造のライブラリーは、回転結合について回転の関数として局所最小値を探すことによって生成した。RAD1901のライブラリーは、25の異なる立体構造を有した。
【0214】
5つのERα結晶構造を調製し、最小化した。公開されたX線構造において対応するリガンドは、ERα結合ポケットを定義するために使用した。
【0215】
RAD1901の立体構造は、調製されたERα構造にドッキングして、結合ポケットに位置する残基への側鎖または骨格運動を誘導することを可能にした。これらの運動は、ERαがその結合部位を変化させることを可能にし、そのため、RAD1901の立体構造の形状及び結合様式にさらに密接に適合した。いくつかの例では、受容体構造における小さな骨格弛緩及び有意な側鎖の立体構造の変化が、IFD分析において可能になった。
【0216】
経験的スコアリング関数は、ドッキングスコアまたはGスコアを提供するために、リガンド結合自由エネルギーを概算するために使用した。Gスコアはまた、GlideScoreとして知られており、この実施例では、ドッキングスコアと同義に使用してもよい。ドッキングスコアは、結合親和性の推定値であった。したがって、ドッキングスコアの値が低いほど、「より良好に」リガンドがその受容体に結合した。-13~-14のドッキングスコアは、非常に良好な結合相互作用に相当した。
【0217】
1R5K、1SJ0、2JFA、2BJ4、及び2OUZによるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、それぞれ、それらの違いを示すために重ね合わせた(
図28~30A及びB、スティックモデルにおいて示される)。各RAD1901の立体構造におけるすべての結合を、
図28、29、及び30Aにおいて同じ色で示した。
【0218】
1R5K(青色)及び2OUZ(黄色)によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、前面にRAD1901のN-ベンジル-N-エチルアニリン基を有した(
図28)。2BJ4(緑色)及び2JFA(ピンク色)によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、背面にRAD1901のN-ベンジル-N-エチルアニリン基を有した(
図29)。2BJ4(緑色)、2JFA(ピンク色)、及び1SJ0(茶色)によるIFD分析から得られたRAD1901の立体構造は、それらの重ね合わせによって示されるように、ほぼ同様であった(
図30A及び30B)。RAD1901のIFDドッキングスコアを表14に要約する。
【0219】
2BJ4によるRAD1901のIFDは、E353及びD351との水素結合相互作用及びF404とのπ相互作用を示した(
図31A~31C)。
図31Aは、H結合受容体基(赤色)、H結合ドナー基(青色)、及び疎水性基(黄色)に適している結合部位内の領域を示した。
図31A及び31Bでは、薄青色は、RAD1901の炭素に対するものであった。
図32A~32Cは、RAD1901と2BJ4とのIFDのタンパク質表面の相互作用を示す。
図32A及び32Bは、正面図であり、
図32Cは、側面図である。RAD1901の分子表面は、
図32A中では青色であり、
図32C中では緑色であった。
図32B及び32Cは、ERαの溶媒接触可能性のある表面の静電気を示し、赤色は陰性を示し、青色は陽性を示した。
【0220】
上述のように、2BJ4とのフルベストラントに対して、同様のIFD分析を行った。フルベストラント-2BJ4のIFDは、-14.945のGスコアをもたらし、E353、Y526、及びH524との水素結合相互作用、ならびにF404とのπ相互作用を示した(
図33A~33C)。
図33Aは、H結合受容体基(赤色)、H結合ドナー基(青色)、及び疎水性基(黄色)に適している結合部位内の領域を示した。
図33Aでは、薄青色は、RAD1901において炭素に対するものであった。
【0221】
図34A及び34Bは、IFDによって2BJ4にドックされたRAD1901及びフルベストラントがF404とのπ相互作用及びE353との水素結合相互作用の両方を有したことを示した。さらに、RAD1901は、D351との水素結合相互作用を有した(青色は、RAD1901分子表面を表す、
図34B)が、一方、フルベストラントは、Y526及びH524との水素結合相互作用を有した(緑色は、フルベストラント分子表面を表す、
図34C)。RAD1901及びフルベストラントでドッキングされた2BJ4の重ね合わせを、
図35A及び35Bに示す。
図35Aでは、緑色は、フルベストラント分子表面を表し、青色は、RAD1901分子表面を表す。
図35Bでは、茶色構造は、フルベストラントであり、青色構造は、RAD1901である。
【0222】
実施例V(A)-3.選択ERα変異のモデリング評価。
C末端リガンド結合ドメイン上の様々なERα変異の効果を評価した。評価した特定のERα変異は、Y537X変異体(式中、Xは、S、N、またはCである)、D538G、及びS463Pであった。
【0223】
らせん12中のY537残基。それは、一旦リン酸化されると、リガンド結合、ホモ二量体化、及びDNA結合を調節し得、ERαがリン酸化によって媒介された対照を逃れ、潜在的に選択的な腫瘍形成の利点を有する細胞を提供することを可能にし得る。加えて、それは、受容体を構造的に活性にする立体構造を変化させ得る。
【0224】
Y537S変異は、リガンドによって占有されているかどうかにかかわらず、転写活性のある閉鎖したポケット構造が好ましい。閉鎖しているが、占有されていないポケットは、ERαの構成的活性を説明し得る(Carlson et al.Biochemistry 36:14897-14905(1997))。Ser537は、Asp351との水素結合相互作用を構築し、らせん11~12のループの変化した構造及び溶媒が到達しにくい位置のLeu536の埋設をもたらす。これは、Y537S変異体タンパク質の構成的活性の一因となり得る。Y537S表面変異は、LBDポケットの表面上に影響を及ぼさない。
【0225】
Y537Nは、ERα陰性転移性乳癌でよく見られる。この部位の変異は、ERαがリン酸化によって媒介された対照を逃れ、潜在的に選択的な腫瘍形成の利点を有する細胞を提供することを可能にし得る。具体的には、Y537N置換は、ホルモン結合を模倣し得るERαにおいて構造変化を誘導し、受容体の二量化する能力に影響を及ぼさないが、受容体への構成的トランス活性化機能を与える(Zhang et al.Cancer Res 57:1244-1249(1997))。
【0226】
Y537Cは、Y537Nと同様の効果を有する。
【0227】
D538Gは、より好ましくは活性構造であるが、活性及び不活性の両方の構造を安定化させることによって全エネルギー景観を変え得る。これは、ホルモン耐性乳癌において観察されるように、ホルモンの不在下でこの変異体の構成的活性をもたらし得る(Huang et al.,“A newfound cancer-activating mutation reshapes the energy landscape of estrogen-binding domain,” J.Chem.Theory Comput.10:2897-2900(2014))。
【0228】
これらの変異のいずれも、リガンド結合ドメインに影響を及ぼすまたは具体的には、RAD1901結合を妨げることを期待されない。Y537及びD538は、リガンド結合と無関係である構成的受容体の活性化をもたらす立体構造を変化させ得る。
【0229】
実施例V(B).RAD1901及び他の化合物による野生型及びLBD変異体のERα構築物のインビトロ結合アッセイ。
RAD1901による野生型(WT)及びLBD変異体のERα構築物のインビトロ結合アッセイは、RAD1901がWT ERαと同様の親和性を有する変異体ERαと結合したことを示した。
【0230】
WT及びLBD変異体のERα構築物は、発現し、N末端チオレドキシン及びTEVプロテアーゼによって切断された6xHisタグで対応するLBD残基302~552を精製することによって調製した。
【0231】
蛍光偏光(FP)は、製造業者の取扱説明書(Polar Screen,Invitrogen)のように、2nM フルオロモン、100nM WTまたはLBD変異体のERα構築物を用いて、ERαへの試験化合物(RAD1901、フルベストラント、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、及びAZD9496)の結合を決定するために使用した。各セットは、二重に行われ、異なるERα構築物に対するIC
50を決定するためにある試験化合物を試験した(RAD1901結合アッセイについては
図36)。
【0232】
上記のように、前述は、本発明の様々な実施形態を例示することを単に意図するものである。上に論じられる特定の改変は、本発明の範囲の限定と解釈されるべきではない。様々な同等物、変更、及び改変が本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、当業者にとって明らかであろうから、かかる同等の実施形態が、本明細書中に含まれるべきことも理解されるべきである。本明細書中に引用されたすべての参考文献は、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]薬物耐性エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において腫瘍成長を阻害するまたは腫瘍退縮を生じさせる方法であって、前記対象に、治療上有効量の、エベロリムスと構造:
【化1】
を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物との組み合わせを投与することを含む、方法。
[2]変異体エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において腫瘍成長を阻害するまたは腫瘍退縮を生じさせる方法であって、前記対象に、治療上有効量の、エベロリムスと構造:
【化2】
を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物との組み合わせを投与することを含む、方法。
[3]前記癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、及び下垂体癌からなる群から選択される、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記癌が、転移性癌である、[1]または[2]に記載の方法。
[5]前記癌が、Y537X
1
、L536X
2
、P535H、V534E、S463P、V392I、E380Q、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の変異を含む変異体エストロゲン受容体アルファに対して陽性であり、式中、
X
1
が、S、N、またはC、D538Gであり、X
2
がRまたはQである、[1]または[2]に記載の方法。
[6]前記変異が、Y537Sである、[5]に記載の方法。
[7]投与後の前記腫瘍中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度の、血漿中のRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物の濃度に対する比(T/P)が、少なくとも約15である、[1]または[2]に記載の方法。
[8]前記対象が、骨粗鬆症または骨粗鬆症のより高いリスクを有する、[1]または[2]に記載の方法。
[9]前記対象が、閉経前の女性である、[1]または[2]に記載の方法。
[10]前記対象が、SERM及び/またはAIによるこれまでの治療後に、再発または進行している閉経後の女性である、[1]または[2]に記載の方法。
[11]前記治療上有効量が、1日当たり約150~約1,500mgである、[1]または[2]に記載の方法。
[12]前記その塩が、RAD1901二塩酸塩である、[1]または[2]に記載の方法。
[13]前記腫瘍が、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬物に耐性を示す、[1]または[2]に記載の方法。
[14]前記抗エストロゲンが、タモキシフェンまたはフルベストラントである、[12]に記載の方法。
[15]前記アロマターゼ阻害剤が、アロマシンである、[12]に記載の方法。
[16]前記治療上有効量が、150mg~2,000mgである、[1]または[2]に記載の方法。
[17]前記治療上有効量が、200mg、400mg、または500mgである、[16]に記載の方法。
[18]エベロリムス及びRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物を含む、薬学的組成物。
[19]薬物耐性エストロゲン受容体アルファ陽性癌を有する対象において乳癌を治療する方法であって、前記対象に、治療上有効量の、m-TOR阻害剤と構造:
【化3】
を有するRAD1901またはその塩もしくは溶媒和物との組み合わせを投与することを含む、方法。
[20]前記薬物耐性乳癌が、1つ以上の抗エストロゲンまたはアロマターゼ阻害剤療法に対して耐性を示す、[19]に記載の方法。
[21]前記1つ以上の抗エストロゲンが、タモキシフェン、トレミフェン、及びフルベストラントからなる群から選択され、前記1つ以上のアロマターゼ阻害剤が、アロマシン、レトロゾール、及びアナストロゾールからなる群から選択される、[20]に記載の方法。
[22]前記女性が、D538G、Y537S、Y537N、Y537C、E380Q、S463P、L536R、L536Q、P535H、V392I、及びV534Eからなる群から選択される少なくとも1つの変異体エストロゲン受容体アルファを発現する、[19]~[21]のいずれか1項に記載の方法。
[23]前記変異体エストロゲン受容体アルファが、Y537S、Y537N、Y537C、D538G、L536R、S463P、及びE380Qからなる群から選択される、[22]に記載の方法。
[24]前記変異体受容体アルファが、Y537Sである、[22]または[23]に記載の方法。
[25]前記RAD1901が、100mg~1,500mgの合計1日投与量で投与される、[19]~[24]のいずれか1項に記載の方法。
[26]前記RAD1901が、100mg~1,000mgの合計1日投与量で投与される、[25]に記載の方法。
[27]前記RAD1901が、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または1,000mgの合計1日投与量で投与される、[26]に記載の方法。
[28]前記1日投与量が、2回分の別々の用量で送達される、[22]~[27]のいずれか1項に記載の方法。
[29]前記別々の用量が、等しい用量である、[28]に記載の方法。
[30]前記等しい用量がそれぞれ、100mg、200mg、250mg、300mg、400mg、または500mgである、[29]に記載の方法。
[31]前記投与量が、経口経路によって送達される、[25]~[30]のいずれかに記載の方法。
[32]前記女性が、閉経後の女性である、[19]~[31]のいずれか1項に記載の方法。
[33]前記女性が、まず、ABL1、AKT1、AKT2、ALK、APC、AR、ARID1A、ASXL1、ATM、AURKA、BAP、BAP1、BCL2L11、BCR、BRAF、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDH1、CDK4、CDK6、CDK8、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEBPA、CTNNB1、DDR2、DNMT3A、E2F3、EGFR、EML4、EPHB2、ERBB2、ERBB3、ESR1、EWSR1、FBXW7、FGF4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT3、FRS2、HIF1A、HRAS、IDH1、IDH2、IGF1R、JAK2、KDM6A、KDR、KIF5B、KIT、KRAS、LRP1B、MAP2K1、MAP2K4、MCL1、MDM2、MDM4、MET、MGMT、MLL、MPL、MSH6、MTOR、MYC、NF1、NF2、NKX2-1、NOTCH1、NPM、NRAS、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PML、PTEN、PTPRD、RARA、RB1、RET、RICTOR、ROS1、RPTOR、RUNX1、SMAD4、SMARCA4、SOX2、STK11、TET2、TP53、TSC1、TSC2、及びVHLから選択される1つ以上の遺伝子の発現の増加における測定を介して治療のために特定される、[19]~[32]のいずれか1項に記載の方法。
[34]前記1つ以上の遺伝子が、AKT1、AKT2、BRAF、CDK4、CDK6、PIK3CA、PIK3R1、及びMTORから選択される、[33]に記載の方法。
[35]前記m-TOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、及びリダフォロリムスからなる群から選択される、[19]~[34]のいずれかに記載の方法。
[36]前記m-TOR阻害剤が、毎日1mg~500mgで投与される、[19]~[34]のいずれかに記載の方法。
[37]前記m-TOR阻害剤が、毎日5mg~100mgで投与される、[36]に記載の方法。
[38]前記m-TOR阻害剤が、毎日10mg~50mgで投与される、[37]に記載の方法。
[39]前記m-TOR阻害剤が、エベロリムスである、[35]に記載の方法。
[40]前記エベロリムスが、10mgの1日用量で投与される、[39]に記載の方法。
[41]前記エベロリムスが、2.5mg~7.5mgで投与される、[39]に記載の方法。
[42]前記m-TOR阻害剤が、経口投与される、[19]~[41]のいずれかに記載の方法。
[43]前記m-TOR阻害剤が、1日1回投与される、[19]~[42]のいずれか1項に記載の方法。