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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-04
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】ステータおよび回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/52 20060101AFI20220207BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
H02K3/52 E
H02K3/46 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018031428
(22)【出願日】2018-02-26
(65)【公開番号】P2019149848
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(72)【発明者】
【氏名】野見山 豊
(72)【発明者】
【氏名】鬼橋 隆之
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 光将
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211956(JP,A)
【文献】特開2015-133808(JP,A)
【文献】特開2012-135188(JP,A)
【文献】特開2009-177985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/52
H02K 3/46
H02K 11/30
H02K 3/44
H02K 3/34
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックヨーク部と該バックヨーク部から周方向に所定の間隔を隔てて径方向内側に突出する複数のティース部とを有するコアと、前記ティース部を覆うティース絶縁部を有して、前記コアに装着された絶縁性のボビンと、前記ボビンの前記ティース絶縁部を介して前記コアの各前記ティース部にそれぞれ巻回され、前記ティース部間に形成されたスロットに収納されるコイルと、を備え、
前記ティース部に巻回された前記コイル間の少なくとも一つは、渡り線により接続されるステータにおいて、
前記ボビンは、前記コアの軸方向一端側において、前記ティース絶縁部ごとに前記ティース絶縁部から径方向外側に延出する延出部を有し、
少なくとも一つの前記延出部は、
前記コアの径方向外側の外周面よりも径方向外側となる箇所を有し、該箇所において前記渡り線の少なくとも一部を案内する渡り部が形成され、
前記コアは、少なくとも一つの前記ティース部を有するように、前記バックヨーク部において周方向に分割された複数の分割コアにより構成され、
周方向に隣接する前記ティース部の前記延出部同士は、該延出部間において周方向に空隙を有して形成され、
前記分割コアの前記バックヨーク部の周方向端部は、前記延出部間の前記空隙の位置において互いに接続され、
前記延出部間において引き回しされ前記渡り部に案内される前記渡り線は、前記延出部間の前記空隙の位置における、前記バックヨーク部の周方向端部同士の接続位置の軸方向一端側においては配置されず、前記コアの外周面よりも第1寸法分、径方向外側の位置に配置される、
ステータ。
【請求項2】
周方向に隣接する前記ティース部の前記延出部間において引き回しされる前記渡り線は、
一方の前記延出部の前記渡り部を引き出し位置として、他方の前記延出部に向かって、前記延出部間に引き回される、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記渡り部は、
前記コアの外周面よりも前記渡り線の径寸法以上分、径方向外側に形成される、
請求項1または請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
所定の前記延出部上において2本の前記渡り線が引き回される構成において、
前記所定の延出部の前記渡り部は、前記延出部の径方向外側の外周面に形成され、径方向内側に窪む凹設部を有し、
一方の前記渡り線は、前記渡り部の前記凹設部に引き回され、他方の前記渡り線は、前記延出部の軸方向一端側の端面上に引き回され、
前記凹設部は、前記延出部の軸方向一端側の端面の軸方向位置よりも、第2寸法分、軸方向他端側に形成される、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
周方向に隣接する前記ティース部の前記延出部の少なくとも一方は、
隣接する前記延出部間において引き回された前記渡り線を軸方向他端側から支持する支持部を備える、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
周方向に隣接する前記ティース部の前記延出部の少なくとも一方は、
隣接する前記延出部間において引き回された前記渡り線を軸方向他端側から支持する支持部を備え、
前記支持部の軸方向一端側の端面と、前記凹設部の軸方向一端側の内壁との間の距離は、渡り線の径以下に構成される、
請求項4に記載のステータ。
【請求項7】
全ての前記ティース絶縁部の前記延出部は、前記渡り部を備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項8】
前記コアの外周面を径方向外側から支持するフレームを備え、
前記フレームの軸方向一端側の端面は、前記延出部の軸方向他端側の端面よりも、軸方向他端側の位置に構成された、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項9】
前記渡り線に接続される配線パターンを有する制御基板を備え、
前記ボビンの前記延出部は、軸方向一端側の端面において軸方向一端側に延びる突出部を有し、
前記制御基板は、前記突出部により軸方向他端側から支持されて前記コアの軸方向一端側に配設される、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項10】
周方向に隣接する前記ティース部の一方を第1ティース部とし他方を第2ティース部とし、
前記第1ティース部と前記第2ティース部との間の前記スロットを第1スロット、
前記第1ティース部の前記第1スロットと反する側の前記スロットを第2スロット、
前記第2ティース部の前記第1スロットと反する側の前記スロットを第3スロットとし、
前記第1ティース部に巻回された前記コイルの、前記第1スロットから延出する前記渡り線を第1渡り線、
前記第1ティース部に巻回された前記コイルの、前記第2スロットから延出する前記渡り線を第2渡り線、
前記第2ティース部に巻回された前記コイルの、前記第1スロットから延出する前記渡り線を第3渡り線、
前記第2ティース部に巻回された前記コイルの、前記第3スロットから延出する前記渡り線を第4渡り線とし、
前記第1渡り線と前記第3渡り線とが接続され、
前記第4渡り線の少なくとも一部は、前記第2ティース部の前記延出部の前記渡り部に沿って案内されて前記第2渡り線に接続される、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項11】
前記ボビンの前記延出部は、軸方向一端側の端面において軸方向一端側に延びる突出部を有し、
前記第1渡り線または前記第3渡り線の一方が、前記第2ティース部の前記延出部の前記突出部の外周面に沿って案内されて、前記第1渡り線と前記第3渡り線とが接続される、
請求項10に記載のステータ。
【請求項12】
前記ティース部は、径方向内側の端部から周方向両側に突出する先端突出部を有し、
周方向に隣接する前記ティース部の前記先端突出部間に電子部品が配設され、
前記ボビンは、前記先端突出部を覆うと共に、前記電子部品から所定の距離を確保するように形成された先端絶縁部を有する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項13】
前記電子部品は、前記コアの径方向内側に配置されるロータの位置を検出するセンサである、
請求項12に記載のステータ。
【請求項14】
周方向に隣接する前記ティース部の前記延出部がそれぞれ前記渡り部を有する構成において、
一方の前記ティース部の前記渡り部の周方向の長さと、他方の前記ティース部の前記渡り部の周方向の長さとが、それぞれ異なるように形成される、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項15】
前記コアと前記コイルと前記ボビンとを、絶縁樹脂にて覆うモールド部を備えた、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のステータと、
前記ステータの径方向内側に、該ステータの内周面と所定の間隔を設けて、かつ同心円状に配設されたロータとを備える、
回転電機。
【請求項17】
前記コアの外周面を径方向外側から支持するフレームを備え、
前記フレームは、前記コアの径方向内側に配設されるロータを支持する回転軸を、前記コアの軸方向他端側においてのみ回転可能に支持する、
請求項16に記載の回転電機。
【請求項18】
前記ロータの位置を検出するセンサを備えた、
単相ブラシレスモータあるいは3相ブラシレスモータである、
請求項16または請求項17に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回転電機に用いられるステータ及び、かかるステータを組み込んだ回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機の電機子において、コイルは、コアを覆っている絶縁用ボビンを介してコアの各ティース部に巻回される。各コイルの巻始め線、巻終わり線は、他のコイルの巻始め線、巻終わり線と結線され、この結線においてコイル間を繋ぐ渡り線が絶縁用ボビン上に配置される。絶縁用ボビンを介してコイルが巻回された電動機では、特に電位差の大きい渡り線同士の接触を避ける必要がある。そのために、各渡り線における軸方向および周方向の配置を固定するため、絶縁用ボビン上に渡り線を固定する溝や突起を設けた、以下のようなステータが開示されている。
即ち、第3ヨーク被膜部には、分割コアの分割環状部に沿って延びる内壁が軸方向一側方向に延出形成されている。第3ヨーク被膜部の内壁の径方向の外側面にはそれぞれ、軸方向に並ぶ3つの案内溝が周方向に沿って形成されている。この3つの渡り線案内溝について、軸方向において第3ヨーク被膜部から最も離れた順に第1渡り線案内溝、第2渡り線案内溝、第3渡り線案内溝とする(例えば、先行文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-133808号公報 (段落[0050]~[0052]、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のステータでは、コアの形状に沿って絶縁用ボビンである被膜部が形成されている。そのため、昨今、小型化、軽量化が要求される回転電機において、コアの外径寸法を小さく構成すると、それに応じて絶縁用ボビンの外径が小さくなる。
絶縁用ボビンは、成形工程上、また、その構造の耐久上、細い溝の壁を設けるのが困難である。また渡り線が複数本、絶縁用ボビン上に配置される場合、渡り線間の十分な距離を確保する必要がある。よって、絶縁用ボビンは、所定の大きさを確保する必要があるため、従来のステータではコアの小型化、軽量化が困難であるという問題点があった。
【0005】
本願は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、コイル間を繋ぐ渡り線間における十分な距離を確保できるステータと、当該ステータを組み込んだ回転電機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示されるステータは、
バックヨーク部と該バックヨーク部から周方向に所定の間隔を隔てて径方向内側に突出する複数のティース部とを有するコアと、前記ティース部を覆うティース絶縁部を有して、前記コアに装着された絶縁性のボビンと、前記ボビンの前記ティース絶縁部を介して前記コアの各前記ティース部にそれぞれ巻回され、前記ティース部間に形成されたスロットに収納されるコイルと、を備え、
前記ティース部に巻回された前記コイル間の少なくとも一つは、渡り線により接続されるステータにおいて、
前記ボビンは、前記コアの軸方向一端側において、前記ティース絶縁部ごとに前記ティース絶縁部から径方向外側に延出する延出部を有し、
少なくとも一つの前記延出部は、
前記コアの径方向外側の外周面よりも径方向外側となる箇所を有し、該箇所において前記渡り線の少なくとも一部を案内する渡り部が形成され、
前記コアは、少なくとも一つの前記ティース部を有するように、前記バックヨーク部において周方向に分割された複数の分割コアにより構成され、
周方向に隣接する前記ティース部の前記延出部同士は、該延出部間において周方向に空隙を有して形成され、
前記分割コアの前記バックヨーク部の周方向端部は、前記延出部間の前記空隙の位置において互いに接続され、
前記延出部間において引き回しされ前記渡り部に案内される前記渡り線は、前記延出部間の前記空隙の位置における、前記バックヨーク部の周方向端部同士の接続位置の軸方向一端側においては配置されず、前記コアの外周面よりも第1寸法分、径方向外側の位置に配置される、
ようにしたものである。
また、本願に開示される回転電機は、
上記のように構成されたステータと、
前記ステータの径方向内側に、該ステータの内周面と所定の間隔を設けて、かつ同心円状に配設されたロータとを備える、
ようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示されるステータおよび回転電機によれば、小型化及び軽量化のためにコアの外径寸法を小さく構成した場合でも、各コイルを繋ぐ渡り線間における十分な距離を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による回転電機の断面を、軸方向一端側から見た図である。
図2】実施の形態1による回転電機の断面を、軸方向他端側から見た図である。
図3】実施の形態1による回転電機において、コアと絶縁用ボビンとの寸法関係を示す図である。
図4】実施の形態1による回転電機の断面図である。
図5】実施の形態1によるステータのコイルの接続関係を示す図である。
図6】比較例のステータにおけるコイルの渡り線の配置位置を示す模式図である。
図7】実施の形態1によるステータにおけるコイルの渡り線の配置位置を示す模式図である。
図8】実施の形態1による回転電機の断面を、軸方向一端側から見た図である。
図9】実施の形態1による回転電機の斜視図である。
図10】実施の形態1による回転電機の断面図である。
図11】絶縁用ボビンと渡り線との配置関係を示す模式図である。
図12】実施の形態1による回転電機において、周方向に隣接する延出部間における空間領域を明示した図である。
図13】比較例による回転電機において、周方向に隣接する延出部間における空間領域を明示した模式図である。
図14】実施の形態1による回転電機の全体構成を示す斜視図である。
図15】実施の形態1による回転電機の全体構成を示す断面図である。
図16】実施の形態1による回転電機の他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本願の実施の形態1によるステータ10および回転電機100について図を用いて説明する。
図1は、実施の形態1による回転電機100の断面を、図4の軸方向一端側G1から見た図である。
図2は、実施の形態1による回転電機100の断面を、図4の軸方向他端側G2から見た図である。
図3は、図1に示した回転電機100において、コアと絶縁用ボビンの寸法関係を示した図である。
図4は、図1に示した回転電機における軸方向に並行な断面図である。
なお、上記図1図4においてコイル間を繋ぐ渡り線の図示は便宜上省略している。また、図4においてはコイルの図示も省略している。
【0010】
なお、以下の説明において、ステータ10における各方向を、回転電機100の周方向S、軸方向G、軸方向一端側G1、軸方向他端側G2、径方向内側K1、径方向外側K2としてそれぞれを示す。
【0011】
図1図3に示すように、回転電機100は、ステータ10と、このステータ10の径方向内側K1において回転軸としてのシャフト11により回転可能に支持されたロータ13とを備える。ロータ13は、シャフト11に支持された4極の永久磁石12を有する。
回転電機100は、4極の永久磁石12に対し、スロット5の数が4つの単相ブラシレスモータである。
【0012】
ステータ10は、電磁鋼板を積層して形成されたコア1と、このコア1に装着された絶縁性を有するボビンとしての絶縁用ボビン2(2X、2Y)と、この絶縁用ボビン2X、2Yを介してコア1に集中巻にて巻回されたコイル3(3a、3b、3c、3d)とを備える。
コア1は、環状のバックヨーク部1aと、このバックヨーク部1aから周方向Sに所定の間隔を隔てて径方向内側K1に突出する複数のティース部1bと、このティース部1bの径方向内側K1の端部から、周方向Sの両側に突出する先端突出部1cとを有する。
【0013】
コア1は、少なくとも一つのティース部1bを有するように、バックヨーク部1aにおいて周方向Sに4分割された4つの分割コア1Xにより構成される。
各分割コア1Xのバックヨーク部1aの周方向Sの端部には、凹凸形状の切り込み(図示せず)が設けられており、この切り込みにより各分割コア1Xを互いに精度良く接続させることができる。なお、本実施の形態では、この切り込みの形状については限定はしない。
【0014】
コア1の各ティース部1b間に形成されたスロット5には、ティース部1bに絶縁用ボビン2を介して巻回された一対の電磁的に励磁可能なコイル3(3a、3b、3c、3d)が収納されている。コイル3aとコイル3b間、コイル3cとコイル3d間は、渡り線30により接続される。この渡り線30による各コイル3の結線関係の詳細については後述する。
なお、各コイル3の巻部の総数は、ステータ10の電磁気要件によって決まる。また、各コイル3は生産性を良くするため、全て同じ巻線方向を有する。
【0015】
また、コア1の周方向に隣接する先端突出部1c間においては、ロータ13の位置を検出するための、センサとしてのホールセンサ15が配設される。
【0016】
絶縁用ボビン2は、コア1とコイル3との絶縁距離を確保する役目を果たすものであり、それぞれ形状が異なる2種類の絶縁用ボビン2X、2Yがある。端子20a、20cが設けられている絶縁用ボビン2を絶縁用ボビン2Xとし、端子20b、20dが設けられている絶縁用ボビン2を絶縁用ボビン2Yとしている。
図に示すように、絶縁用ボビン2X、2Yは、コア1の外周面よりも径方向外側K2に突出していることがわかる。
なお、以降の説明において、絶縁用ボビン2X、2Yを区別する必要がない場合は、単に絶縁用ボビン2と称す。
【0017】
絶縁用ボビン2は、それぞれ、コア1のティース部1bを覆うティース絶縁部2bと、このティース絶縁部2bから径方向外側K2に延出する延出部2aと、コア1の先端突出部1cを覆うようにティース絶縁部2bから周方向Sの両側に突出する先端絶縁部2cとを有する。
【0018】
この絶縁用ボビン2の先端絶縁部2cは、コア1の先端突出部1cを所定の寸法分大きく覆うものであるが、この所定の寸法分大きく形成された箇所は、コア1の先端突出部1c間に配設されたホールセンサ15に干渉しないように、その一部が切り欠かれた構造を有する。よって、図1に示すように絶縁用ボビン2の先端絶縁部2cは、ホールセンサ15から所定の距離を確保するように形成されている。
【0019】
図4に示すように、絶縁用ボビン2の延出部2aは、コア1の軸方向Gの一端側に設けられる。また、図2に示すように、軸方向他端側G2における絶縁用ボビンは、その外周面がコア1の外周面よりも径方向内側K1に形成され、ティース絶縁部2bごとに同じ形状を有している。
また、絶縁用ボビン2の延出部2aは、ティース絶縁部2bごとに設けられるものである。また、周方向Sに隣接する延出部2aは、この隣接する延出部2a間において延出部2aが形成されない空隙としての空間領域を持つように、その形状が形成される。
また、分割コア1Xのバックヨーク部1aの周方向Sの端部は、この延出部2aが形成されていない空間領域がある位置において互いに接続される。
【0020】
図3に示すように、コア1の径方向の中心点Cから絶縁用ボビン2の外周面までの寸法L1と、中心点Cからコア1の外周面までの寸法L2とは、寸法関係L1>L2が成り立つ。即ち、絶縁用ボビン2の延出部2aは、コア1の径方向外側の外周面よりも径方向外側K2となるように形成された箇所を有する。そして延出部2aの、コア1の外周面よりも径方向外側K2となるこの箇所において、渡り線30を案内する渡り部2e(図8図9参照)が形成されている。
【0021】
また、絶縁用ボビン2X、2Yの延出部2aの軸方向一端側G1の上端面には、後述する制御基板40とコア1とを接続するための、軸方向一端側G1に延びる突出部としてのボス部21(21a、21b)がそれぞれ形成される。
なお、絶縁用ボビン2X、2Yの更なる詳細構造は、後述する渡り線30の結線手順において説明する。
【0022】
ここで、絶縁用ボビン2とコア1とが上記寸法関係L1>L2を満たした本実施の形態1のステータ10における、各コイル3の接続関係と接続手順について図5図11を用いて説明する。
図5は、実施の形態1によるステータ10の各コイル3の接続関係を示す結線図である。
図6は、比較例のステータにおけるコイル3の渡り線30の配置位置を示す模式図である。
図7は、実施の形態1によるステータ10におけるコイル3の渡り線30の配置位置を示す模式図である。
図8は、実施の形態1による回転電機100の断面を、軸方向一端側G1から見た図である。
図9は、図8に示した回転電機100において、一点鎖線73から図中上半分のみを矢印72の方向から見た斜視図である。
図10は、図8に示した回転電機100を一点鎖線73において切断した断面図である。
図11は、絶縁用ボビン2と渡り線30との配置関係を示す模式図である。
【0023】
以降の渡り線30の接続関係、接続手順の説明において、ステータ10の4つのティース部1bにおいて、周方向Sに隣接するティース部1bの一方を第1ティース部1b1とし、他方を第2ティース部1b2とする。また、第1ティース部1b1と第2ティース部1b2との間のスロット5を第1スロット5aとし、第1ティース部1b1の第1スロット5aと反する側のスロット5を第2スロット5bとし、第2ティース部1b2の第1スロット5aと反する側のスロット5を第3スロット5cとする。
【0024】
また、第1ティース部1b1に巻回されたコイル3aの、第1スロット5aから延出する渡り線30を第1渡り線とし、第1ティース部1b1に巻回されたコイル3aの、第2スロット5bから延出する渡り線30を第2渡り線とし、第2ティース部1b2に巻回されたコイル3bの、第1スロット5aから延出する渡り線30を第3渡り線とし、第2ティース部1b2に巻回されたコイル3bの、第3スロット5cから延出する渡り線30を第4渡り線として説明する。
【0025】
先ず、コイル3間の接続関係について図5を用いて説明する。
図5に示すように、コイル3a(N1)の上記第1渡り線としての巻始め線30aと、コイル3b(S1)の上記第3渡り線としての巻終わり線30xは、端子20bに接続される。同様に、コイル3b(S1)の上記第4渡り線としての巻始め線30bとコイル3a(N1)の上記第2渡り線としての巻終わり線30wは、端子20aに接続される。
【0026】
コイル3c(N2)、コイル3d(S2)についても同様に、コイル3c(N2)の上記第1渡り線としての巻始め線30dとコイル3d(S2)の上記第3渡り線としての巻終わり線30zは端子20dに接続される。同様に、コイル3d(S2)の上記第4渡り線としての巻始め線30cとコイル3c(N2)の上記第2渡り線としての巻終わり線30yは端子20cに接続される。
そして、端子20aと端子20d、端子20bと端子20cは後述する制御基板40において接続される。
【0027】
以下、上記に示した接続関係のステータ10上における配置位置について、図6の比較例におけるステータと、図7の本実施の形態のステータ10とを比較して説明する。
上記図5に示したような結線を行う場合であって、且つ、端子20a、20b、20c、20dが、それぞれ絶縁用ボビン2X、2Yに設けられている場合、通常であれば、図6の比較例における渡り線30の配置位置に示すように、コイル3b(S1)の巻始め線30bを、絶縁用ボビン2X上の端子20aに向かって真っ直ぐに直接接続することが製造上、作業性がよい。しかしながら、隣り合うティース部1bの先端突出部1c間にはホールセンサ15が挿入されるため、このようにコイル3b(S1)の巻始め線30bを、真っ直ぐに端子20aに接続させると、図6に示すように、巻始め線30bとホールセンサ15とが干渉する恐れがある。これは、コイル3d(S2)の巻始め線30cについても同様である。
【0028】
そこで、図7の本実施の形態の渡り線30の配置関係に示すように、コイル3b(S1)の巻始め線30bが、コア1の外周面よりもさらに径方向外側K2において引き回されるような配置を行うと、巻始め線30bはホールセンサ15には干渉しない。
【0029】
以下、上記図7に示したような配置位置を有するように、渡り線30(巻始め線30a、30b、30c、30d、巻終わり線30w、30x、30y、30z)を実際の回転電機100としての単相ブラシレスモータにおいて引き回す手順について、図8図11を用いて順に説明する。
図8では、各コイル3(3a、3b、3c、3d)から出た巻始め線30a、30b、30c、30d、及び巻終わり線30v、30w、30x、30yを、絶縁用ボビン2X、2Y上において這わせ、各端子20a、20b、20d、20cにそれぞれ接続した状態が示されている。
なお、各コイル3の結線は、一点鎖線73を境に図中上下で対称であるため、図8の図中上半分のコイル3aとコイル3bとの間の渡り線30の引き回し手順についてのみ説明する。
【0030】
先ず、コイル3aの巻終わり線30wを、絶縁用ボビン2Xの端子20aへ接続する。
次に、コイル3aの巻始め線30aを、絶縁用ボビン2Yの端子20bへ接続する。
【0031】
次に、コイル3bの巻終わり線30xを、ボス部21bの外周面に沿って案内されるようにボス部21bを経由させた後に絶縁用ボビン2Yの端子20bへ接続する。
このように、巻終わり線30xがボス部21bを経由させる理由としては、第1スロット5aから延出した巻終わり線30xを、直接、端子20bへ接続させると、コイル3aの巻始め線30aとの距離が近くなる。この場合、ステータ10が搭載されるモータによる振動、作業バラつき等により、巻終わり線30xと巻始め線30aとが接触する可能性があるため、このように巻終わり線30xをボス部21bを経由する構成としている。
【0032】
次に、残るコイル3bの巻始め線30bを、絶縁用ボビン2Xの端子20aに接続する流れを説明していく。また、この説明において、絶縁用ボビン2X、2Yの詳細な構成についても説明する。
図9図10に示すように、絶縁用ボビン2X、2Yの径方向外側K2の外周面に形成された渡り部2eにはそれぞれ、径方向内側K1に窪んで、周方向Sに延存する凹設部2e1が形成されている。この凹設部2e1は、絶縁用ボビン2X、2Yの軸方向一端側G1の上端面の軸方向位置よりも、第2寸法X2分、軸方向他端側G2に形成されている。
【0033】
そして、第3スロット5cから延出するコイル3bの巻始め線30bは、絶縁用ボビン2Yの凹設部2e1の内壁に沿うように周方向Sに案内されて、絶縁用ボビン2Xに向かって引き出し位置Pから引き出される。この時、第1スロット5cから延出した巻始め線30bは、図10に示すように、第2寸法X2分軸、方向他端側G2に形成された凹設部2e1に向かって引き出された状態となる。このように引き出された巻始め線30bは、凹設部2e1の軸方向一端側G1の内壁によって軸方向一端側G1から支持された状態となるため、ステータ10に振動が生じた場合でも、軸方向一端側G1にずれ上がることがなく、その軸方向位置は固定された状態となる。
【0034】
このように、周方向Sに隣り合う絶縁用ボビン2X、2Y間における空間上を渡る渡り線30の、軸方向Gの位置を決めるものとして、凹設部2e1が設けられている。
なお、凹設部2e1の軸方向Gの寸法は、巻始め線30bをしっかりと保持できるように巻始め線30bの線径より大きいものとする。
【0035】
また、図10に示すように、コイル3bの巻終わり線30xは、絶縁用ボビン2Yの軸方向一端側G1の上端面上において引き回される。これにより、コイル3bの巻終わり線30xとコイル3bの巻始め線30bとが、軸方向Gにおいて第2寸法X2分の距離を確保するように配置された構成となる。
【0036】
更に、図9に示すように、絶縁用ボビン2Yの延出部2aは、周方向Sに隣り合う絶縁用ボビン2X、2Y間における空間上において引き回された巻始め線30bを、軸方向他端側G2から支持する支持部としての突起22を備える。突起22の径方向の位置はステータ10のコア1の外周面よりも径方向外側K2に位置している必要がある。また突起22の軸方向Gの位置は、凹設部2e1と同じ軸方向Gの位置にはない。即ち、突起22の軸方向一端側G1の上端面と、凹設部2e1の軸方向一端側G1の内壁との間の距離が、渡り線30の径寸法以下の寸法となるように形成されている。これにより、図9に示すように、巻始め線30bを突起22と凹設部2e1の内壁とで上下で挟みこんだ構成となる。
【0037】
なお、図11においては、渡り線30は、突起22の軸方向一端側G1の端面と、凹設部2e1の軸方向一端側G1の内壁との間に隙間があるように図示されているが、これは便宜上、図面を明確にするためであり、実物においてこのような隙間は生じていない。
【0038】
このように、凹設部2e1と突起22とを設けたことで、周方向Sに隣り合う絶縁用ボビン2X、2Y間における空間上において引き回された渡り線30が軸方向Gに動くことを防ぐことができる。また、図8に示すように、コア1の外周面よりも径方向外側K2に設けられた渡り部2eを渡り線30が経由することで、延出部2a間において引き回された渡り線30は、径方向の位置がコア1の外周面よりも第1寸法分X1、径方向外側K2の位置に配置される構成となる。
【0039】
こうして、引き回された巻始め線30bは、これら凹設部2e1、突起22を経由した後に、絶縁用ボビン2Yの軸方向一端側G1の上端面に引き上げられて端子20aへ接続される。
【0040】
また、図8に示すように、絶縁用ボビン2Yから、絶縁用ボビン2Xに向かって渡り線30が引き出される引き出し位置Pにおいて、渡り部2eが形成されている。即ち、渡り線30を絶縁用ボビン2Yから引き出す際の径方向Kの位置は、コア1の外周面よりも径方向外側K2となる。よって、隣接する延出部2a間における渡り線30を確実にコア1の径方向外側K2に配置できる。
また、絶縁用ボビン2Xに形成された渡り部2eの周方向Sの長さは、絶縁用ボビン2Yに形成された渡り部2eの周方向Sの長さより短く構成されている。このような構成とすることで、コイル3bを最短距離で端子20aに接続できる。
【0041】
このように結線が行われた後に、端子20aおよび端子20d、端子20bおよび端子20cは、それぞれ後述する制御基板40に接続される。そして、図5においてコイル3の接続関係を示したように、コイル3a(N1)、コイル3b(S1)は、対となるコイル3c(N2)、コイル3d(S2)と制御基板40上で接続される。
なお各端子20a、20b、20c、20dと、各渡り線30とは、はんだ付けで電気的に接続するが、電気的な接続方法については限定をしない。
【0042】
以下、分割コア1Xのバックヨーク部1aの周方向Sの端部が、隣接する延出部2a間における空間領域の位置において互いに接続される構成とし、且つ、延出部2a間において引き回しされる渡り線30が、前記コアの外周面よりも径方向外側K2の位置に配置される構成とすることの利点について図を用いて説明する。
【0043】
図12は、図8において示した回転電機100において、周方向Sに隣接する延出部2a間における空間領域25を示した図である。
図13は、コア1の中心点Cから絶縁用ボビン2の外周面までの寸法L1と、中心点Cからコア1の外周面までの寸法L2との寸法関係がL1<L2となる比較例による回転電機において、空間領域25を示した図である。
【0044】
図13の比較例における回転電機における接続関係は、図5に示したものと同様である。このような、寸法関係がL1<L2、即ち絶縁用ボビン2の延出部2aがコア1の外周面よりも径方向内側K1に位置する回転電機において、コイル3bの巻始め線30bが、ホールセンサ15を避けるように、絶縁用ボビン2の外周面を経由するように渡り線を配置した場合、巻始め線30bは、コア1のバックヨーク部1a上の空間領域25に配置される。
【0045】
複数の分割コア1Xを接続してコア1を構成する場合、隣り合う分割コア1Xの軸方向Gの位置ズレを防止するために、バックヨーク部1aの周方向Sの端部の接続部分を治具等で軸方向Gに押下して位置揃えを行う必要がある。よって、この空間領域25は、分割コア1同士の軸方向高さの位置揃えのための加圧領域として利用できる。この空間領域25に巻始め線30bが引き回しされていると、加圧する治具等と巻始め線30bが干渉する恐れがある。巻始め線30bとの干渉を防ぐため、コア1の側方から治具等を挿入すると、製造上煩雑になる。
【0046】
そこで、図12に示す本実施の形態の回転電機100のように、周方向Sに隣接する延出部2aが、延出部2a間において周方向Sに空間領域25を持つような形状に構成し、分割コア1Xのバックヨーク部1aの周方向Sの端部がこの空間領域25の位置において互いに接続されるように構成し、更に、延出部間において引き回される渡り線30が、コア1の外周面よりも第1寸法分X1、径方向外側K2の位置に配置されるように構成することにより、加圧治具と渡り線との干渉を避けつつ、空間領域25において分割コア1の軸方向Gの位置揃えが可能となる。
【0047】
以下、回転電機100の制御を行う制御基板40を含めた、回転電機100の全体構成について図を用いて説明する。
図14は、制御基板40を含めた回転電機100の全体構成を示す斜視図である。
図15は、図14に示す回転電機100における縦断面図である。
【0048】
回転電機100は、コア1の外周面を径方向外側K2から支持するフレーム50を備える。このフレーム50の軸方向一端側G1の上端面は、延出部2aの軸方向他端側G2の下端面よりも、軸方向他端側G2の位置になるように構成されている。また、フレーム50は、シャフト11を、コア1の軸方向他端側G2の下端面よりも軸方向他端側G2においてのみ、軸受け51を介して回転可能に支持する。フレームとコア1とは、例えば焼きばめにより固定される。
【0049】
更に回転電機100は、渡り線30に接続される配線パターンと、電子部品41とを有する制御基板40を備える。この制御基板40は、絶縁用ボビン2X、2Yに設けられたボス部21a、21bにより軸方向他端側G2から支持されて、コア1の軸方向一端側G1に配設される。そして、制御基板40とコア1とは、ボス部21a、21bにおいてネジ締結される。
【0050】
絶縁用ボビン2X、2Yに設けられた端子20a、20b、20c、20dは、このように絶縁用ボビン2X、2Yの直上に配設された制御基板40に接続される。また、ホールセンサ15も制御基板40と接続される。こうして、コイル3a、3b、3c、3dは、端子20a、20b、20c、20dを介して制御基板40に接続されて電磁的に励磁される。
【0051】
前述のようにコア1の軸方向一端側G1においては制御基板40が設けられるため、シャフト11は、コア1の軸方向他端側G2においてのみ支持される片持ち構造となる。このように片持ち構造としたため、フレーム50は、コア1の軸方向一端側G1には延出しない。即ち、コア1に装着される絶縁用ボビン2の径方向外側K2においてはフレーム50が配設されない。
【0052】
一般的に、フレームを焼きばめなどでコアに固定する場合、絶縁用ボビンは、フレームによる熱の影響を避けるために、フレーム50から所定の空隙を有するように形成される。
本実施の形態のステータ10では、絶縁用ボビン2X、2Yの外径寸法を、フレーム50の外径寸法に合わせて形成する必要がない。よって、コア1の外径寸法を小さく構成した場合においても、コア1の外周面よりも径方向外側K2になるように、絶縁用ボビン2X、2Yの延出部2aを形成して、渡り線30の十分な配線領域を確保できる。
【0053】
以下、上記とは異なる構成の回転電機100aについて説明する。
図16は、実施の形態1による回転電機100aの断面を、軸方向一端側G1から見た図である。
回転電機100aは、コア1とコイル3と絶縁用ボビン2とを絶縁樹脂にて覆うモールド部42を有する。絶縁樹脂としては、例えば、POMまたはポリオキシメチレンなど、オキシメチレン、またはPPSを用いることが考えられる。これにより渡り線30、コイル3の固定、冷却が有利である。
【0054】
上記のように構成された本実施の形態のステータ、およびこのステータを組み込んだ回転電機によると、絶縁用ボビンの延出部は、コアの径方向外側の外周面よりも径方向外側となる箇所を有し、この箇所においてコイル間を繋ぐ渡り線を案内する渡り部が形成されている。これにより、コアの径方向外側の領域を渡り線の配線領域として使用できる。そのため、小型化及び軽量化の目的でコアの外径寸法を小さく構成した場合でも、各コイルを繋ぐ渡り線間における十分な距離を確保できる。こうして、渡り線同士の接触を回避することができ、絶縁被膜の損傷を防止できる。更に、渡り線の結線作業における十分な作業スペースが確保できるため、作業性が向上すると共に、配線ミス等を防止して信頼性を向上できる。
【0055】
また、絶縁用ボビン自体が所定の大きさを確保できるため、絶縁用ボビンに細い溝等の複雑な加工を行う必要がなく、絶縁用ボビンの構造の簡略化を図ることができる。そのため、絶縁用ボビンの生産性が向上し製造コストの抑制が可能となる。つまり、コアとこのコアを用いた回転電機の品質を保ちながら、重量のあるステータコアの小型化及び軽量化が可能となり、モータの小型化及び軽量化、そして製造コストの抑制を実現できる。
こうして、複雑な形状の絶縁用ボビンを形成する必要がないため、成形金型にスライドコアを入れる必要等がなくなり、製造コストを下げることができる。
【0056】
さらに、周方向に隣接するティース部の先端突出部間にセンサなどの電子部品等を配設する構成とした場合でも、電子部品と渡り線との干渉を防止することができる。
【0057】
また、周方向Sに隣接するティース部に装着される延出部間において、渡り線は、一方の延出部の渡り部を引き出し位置として、延出部間に引き回される。このように、絶縁用ボビンから渡り線を引き出す引き出し位置は、コア1の外周面よりも径方向外側K2となる。よって、隣接する延出部間において引き回される渡り線を確実にコアの外周面よりも径方向外側に配置できる。
【0058】
また、絶縁用ボビンの渡り部は、コアの外周面よりも渡り線の径寸法以上分、径方向外側に形成してもよい。これにより、例えば径の大きい渡り線を用いる場合においても、更に確実にコアの外周面よりも径方向外側に渡り線を配置することができ、渡り線間の十分な距離を確実に確保できる。
【0059】
また、周方向に隣接する延出部間において引き回しされる渡り線を、コアの外周面よりも所定の第1寸法分、径方向外側の位置に配置する構成としてもよい。この場合、この第1寸法に、結線作業における誤差等を含む寸法を設定することで、製造工程のばらつきによらず確実に渡り線間の距離を確保することができる。
【0060】
また、コアは、複数の分割コアから構成されるものでもよい。分割されたコアの形状はコア金型の製作コストを抑制ができる利点がある。
また、このように分割コアを用いる場合において、周方向に隣接する延出部同士を、絶縁ボビンで覆われていない空間領域が延出部間において形成されるような形状にする。そして、分割コアのバックヨーク部の周方向端部を、この空間領域の位置において互いに接続する。このように、空間領域において分割コアの接続位置が配置され、分割コア上に渡り線が配置されない構成とすることで、空間領域を分割コアの軸方向の位置決めの加圧領域として利用できる。こうして簡易的な製造装置で位置決めができ、製造方法の簡易化を図ることができるため、製造上有利である。
【0061】
また、1つの延出部上において2本の渡り線が引き回される場合においては、一方の渡り線を渡り部の凹設部に引き回し、他方の渡り線を延出部の軸方向一端側G1の上端面上に引き回す。そして、この凹設部を、延出部の軸方向一端側G1の上端面よりも、第2寸法分X2、軸方向他端側G2に形成することで、軸方向Gにおいて2本の渡り線間の十分な距離を確保できる。
【0062】
また、周方向に隣接する延出部の少なくとも一方が、隣接する延出部間において引き回された渡り線を軸方向他端側G2から支持する支持部を備える。これにより、モータの振動などにより渡り線が軸方向他端部側に動くことを抑止でき、信頼性の向上が可能となる。
また、全てのティース絶縁部に装着された絶縁用ボビンの延出部が、渡り部を備える構成とすることで、より確実に、渡り線をコアの外周面よりも径方向外側に配置できる。
また、支持部の軸方向一端側の端面と、凹設部の軸方向一端側の内壁との間の距離を、渡り線の径以下に構成することで、渡り線を挟みこんで、軸方向に動くことを防ぐことができる。
【0063】
また、コアの外周面を支持するフレームの軸方向一端側G1の上端面を、絶縁用ボビンの延出部の軸方向他端側G2の下端面よりも、軸方向他端側G2の位置となるように構成することで、隣接する延出部間においてフレームの上端面が渡り線と干渉することを防止できる。これにより、更に信頼性を向上させることが可能となる。
【0064】
また、ボビンの延出部の軸方向一端側G1の上端面において、軸方向一端側G1に延びる突出部を形成し、この突出部上に制御基板を配置することで、各コイル3と制御基板との配線距離を短くすることができる。これにより、意図しない電圧降下等を抑止して、回転電機の運転性能を向上できる。
【0065】
更に、周方向に隣接するティース部間において、コイルの巻線方向を同一方向とした上で、一方のコイルの第1渡り線と前記第3渡り線とを接続する。そして、第4渡り線の少なくとも一部を、第2ティース部の延出部の渡り部に沿って案内して第2渡り線に接続する。そして、第1渡り線と前記第3渡り線との接続位置と、第4渡り線と第2渡り線との接続位置に、制御基板に接続される端子を設けることで、電位差が生じる第4渡り線と第1渡り線との間の距離を十分に確保できる。こうして、更なる信頼性の向上が可能である。
また、第1渡り線または第3渡り線の一方が、第2ティース部の延出部の突出部の外周面に沿って案内した構成とすることで、第1渡り線と第3渡り線との距離を確保できる。
【0066】
また、絶縁用ボビンの先端絶縁部は、ティース部の先端突出部間に配設されたセンサから所定の距離を確保するように形成される。こうして、センサとボビンとが干渉することを抑止できる。
また、周方向に隣接するティース部の延出部間において、一方のティース部の渡り部の周方向の長さと、他方のティース部の渡り部の周方向の長さとを、それぞれ異なるように形成することで、渡り線を最短距離で接続できる。
また、コアとコイルと絶縁用ボビンとを、絶縁樹脂にて覆うモールド部を備える構成とすることで、渡り線、コイルの固定、冷却が有利となる。
【0067】
なお、上記では、単相の回転電機100について説明したが、これに限定するものではない。上記構成は、コイル3が、U相、V相、W相の3相構成の回転電機にも同様に適用可能である。
また、ブラシレスモータに限定するものではなく、その他の構成の回転電機においても同様に適用可能である。
また、コア1は、分割コア1Xにより構成するものに限定するものではなく、バックヨーク部1aにおいて分割されていない一体型のコア1を用いるものでもよい。
また、分割コア1Xは、それぞれ一つのティース部1bを有するものに限定するものではなく、各分割コア1Xが複数のティース部1bを有するものでもよい。
【0068】
また、絶縁用ボビン2は、2種類の絶縁用ボビン2X、2Yを用いるものを示したが、例えば、絶縁用ボビン2Yのみを用いる構成でもよい。この場合においても同様に、渡り線30を絶縁用ボビン2Yの渡り部2eに沿うように案内することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、渡り線30がコア1の外周面の径方向外側K2に配置される構成にすることができれば、絶縁用ボビンの延出部2aの全てが、渡り部2eを有する必要はない。
【0069】
また、周方向Sに隣接する絶縁用ボビン2間において、空間領域25が形成された例を示したが、これに限定するものではない。絶縁用ボビン2の周方向Sの端面が、隣り合う絶縁用ボビン2の周方向Sの端面と接触するような、空間領域25を有さない構成でもよく、この場合においても渡り線30をコア1の径方向外側K2に配置することができ、渡り線30間の距離を確保可能である。
また、渡り部2eは、延出部2aの径方向外側K2の外周面に設けられる構成を示したが、これに限定するものではない。例えば、渡り部2eを、延出部2aの軸方向一端側G1の上端面に設けてもよい。この場合においても渡り線30をコア1の径方向外側K2に配置することができ、渡り線30間の距離を確保可能である。
【0070】
また、延出部2aに設けられる突起22は、周方向に隣接する絶縁用ボビン2X、2Yにおいて、絶縁用ボビン2Yにのみ設けられる構成を示したが、これに限定するものではない。絶縁用ボビン2Xにのみ設けてもよいし、あるいは、絶縁用ボビン2X、2Yの両方に設けてもよい。
【0071】
また、絶縁用ボビン2X、2Yにおいてそれぞれ設けられた渡り部2eは、各スロット5から延出された渡り線30の一部のみを案内する構成を示したが、渡り線30の全長を案内するような構成でもよい。
【0072】
また、絶縁用ボビン2X、2Yは、軸方向Gにおいて上下に分割された構成のボビンを用いてもよい。この場合、分割されたコア1の軸方向上端側からと軸方向下端側とから絶縁用ボビンを装着する構成となり、それぞれを分割コア1へ装着する作業が煩雑になりやすい。この場合、コア1の軸方向Gの両端に装着する絶縁用ボビンをコア1と共に一体的に成形することも考えることができる。それにより作業性の向上が見込める。
また、絶縁用ボビン2のティース絶縁部2bとして、絶縁シートを用いてもよい。
【0073】
また、コア1の先端突出部1c間にホールセンサ15を配設した例を示したが、設計上、別の電子部品などの部品が配置されることもある。
【0074】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 コア、1X 分割コア、2 絶縁用ボビン、3 コイル、30 渡り線、
2e 渡り部、22 突起、15 センサ、40 制御基板、50 フレーム、
10 ステータ、13 ロータ、42 モールド部、100,100a 回転電機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16